JP2016150919A - 塗布用化粧品組成物 - Google Patents

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Koichi Nakaoji
浩一 仲尾次
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和彦 濱田
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Abstract

【課題】肌の保湿性を保つ成分を含む塗布用化粧品組成物を提供する。【解決手段】本発明の塗布用化粧品組成物は、肌の保湿性を保つ成分を含む。塗布用化粧品組成物は、歯髄幹細胞の培養上清と、該培養上清を安定化させるためのジェルと、を含む。ジェルは、肌の保湿性を保つ高分子化合物を含む。【選択図】図7

Description

本発明は、塗布用化粧品組成物に関し、特に、肌の保湿性を保つ成分を含む塗布用化粧品組成物に関する。
従来より、肌の保湿性を保つ成分を含む塗布用化粧品組成物が広く使用されている。しかしながら、一般的な塗布用化粧品組成物は、主として、肌の正常な部分に使用されることを前提としているものが多い。
したがって、例えば、肌に炎症性の疾患がある場合、塗布用化粧品組成物は、炎症部分を避けて肌に使用されるか、刺激性の低い化粧品が使用される場合が多い。そのため、肌に炎症性の疾患がある場合、市販の化粧品等の一般的な化粧品の中で、自分の肌に合った化粧品を自由に選んで使用することが難しい、という問題がある。
特に、炎症性の疾患として、アトピー性皮膚炎が近年問題となっている。アトピー性皮膚炎は、アレルギー反応と関連があるもののうち皮膚の湿疹などの炎症を伴うもので、表皮、特に角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリア機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患である。
したがって、アトピー性皮膚炎に罹患した人が化粧品を使用する場合、炎症部分を避けて一般的な化粧品を肌に使用するか、刺激性の弱い化粧品等の、アトピー性皮膚炎を悪化させない化粧品を肌に使用するかの何れかを選択する必要があった。
そこで、アトピー性皮膚炎に使用可能な外用剤、及び化粧品が、例えば、特開2004−75602号公報(特許文献1)、特開2000−143487号公報(特許文献2)に開示されている。
特許文献1には、ステビア抽出液を酵母(Saccharomyces類)によって発酵させたステビア発酵液剤を有効成分とする、アトピー性皮膚炎のための治療作用を有する皮膚外用剤並びにこれを含む化粧品が開示されている。
より具体的には、特許文献1では、基剤、ステビア抽出液を酵母(Saccharomyces類)によって発酵させたステビア発酵液、保湿成分及び保存剤等を含むステビアモイスチャークリームを作成している。そして、アトピー疾患の認められる男女15名を対象に、医師の診断を受けて使用部位を決定した後、ステビアモイスチャークリームを用いて、紅斑、乾燥・落屑、蘇苔化、かゆみ等における改善の程度を評価している。その結果は、15名すべてのモニター患者に対して上記改善の程度は良好であり、しかも副作用の出現は、全く見られなかった、とされている。
また、特許文献2には、アトピー性皮膚炎を含めたアレルギー性皮膚炎などの症状を示している敏感症の肌にも適用できる化粧品、および外用剤が記載されている。
より具体的には、特許文献2では、抗アレルギー用組成物としてユーカリ油とアミノ酸とを有する化粧品が使用されている。該化粧品を、普通肌でアレルギー性皮膚炎の症状を示している患者8名に対して使用し、アレルギー症状の改善を「非常に良い」、「良い」、「普通」、「あまり良くない」及び「良くない」の5段階で評価したところ、特に「良い」の評価区分に評価が集中していた、とされている。
また、特許文献2に記載の発明では、上記化粧品を、アトピー性皮膚炎を起こしている肌の患者5名に対して使用し、アレルギー症状の改善を上記5段階で評価したところ、使用後の経過が、「普通」と「良い」を行き来する者、「普通」から「良い」へ推移する者、「普通」から「余り良くない」へ推移する者など、普通肌の患者に対して行った上記使用評価とは異なり種々の結果が現れたが、本発明の化粧品は、アトピー性皮膚炎の患者にも使用できるとの結果を示している、とされている。
特開2004−75602号公報 特開2000−143487号公報 国際公開2003/147082号公報
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、ステビアモイスチャークリームの適用(塗布)部位が、医師の診断に基づいたアトピー疾患部位のみであり、化粧品でありながら、適用(塗布)部位が限定されている、といった問題がある。
また、特許文献2に記載の発明では、普通肌の人にも適用可能な化粧品であるものの、アトピー性皮膚炎の患者に対しては使用可能であるとの結果に止まっており、アトピー性皮膚炎の症状が有意に改善されるといった記載はなく、改善の余地がある。
さらに、再生医療や移植医療等の分野で広く利用されている幹細胞由来の培養細胞及び培養上清に着目し、幹細胞由来の培養細胞の培養上清を含み、アトピー性皮膚炎に適用可能な薬剤が、例えば、国際公開2003/147082号公報(特許文献3)に開示されている。
特許文献3には、脱落した乳歯及び永久歯から得られた幹細胞である歯髄幹細胞を改変した不死化細胞(SHED‐T)の培養上清を用いた、アトピー性皮膚炎に対する培養上清の治療効果が開示されている。
より具体的には、特許文献3には、アトピー性皮膚炎を起こしているイヌ(ラブラドール)の患部に、ヒト歯髄幹細胞より得た不死化細胞(SHED‐T)の培養上清を塗布することで、治療後は、毛も生え揃い、皮膚炎が起きていた部位が分からないほどきれいに治癒していた、との記載がある。
しかしながら、特許文献3の発明では、幹細胞由来の培養細胞の培養上清は、アトピー性皮膚炎に対する薬剤として用いられているものであり、アトピー性皮膚炎に対する化粧品の用途として考慮されたものではない。さらに、アトピー性皮膚炎に適用可能な、幹細胞由来の培養細胞及び培養上清を含む化粧品は、現在までのところ、知られていない。
そこで、発明者らは、肌の正常な部分の保湿性を保つ成分を含み、かつ幹細胞由来の培養細胞及び培養上清を含む化粧品組成物としての可能性を見出した。本発明は、斯かる実情に鑑み、肌の正常な部分と炎症部分の両方に適用可能であり、炎症部分を含めた肌の保湿性を高めるとともに、炎症部分の組織の炎症環境を鎮め(皮膚炎症状の改善)、痒みを抑制すること、再生修復能を高めることのできる塗布用化粧品組成物を提供することを目的とする。
本発明の塗布用化粧品組成物は、肌の保湿性を保つ成分を含む塗布用化粧品組成物であって、歯髄幹細胞の培養上清と、該培養上清を安定化させるためのジェルと、を含み、前記ジェルは、肌の保湿性を保つ高分子化合物を含む、ことを特徴とする。
上記構成の塗布用化粧品組成物によれば、肌の保湿性を保つ成分を含むため、一般的な化粧品に含まれる保湿性を保つ成分(保湿成分)と同程度の保湿性を担保できる。また、歯髄幹細胞の培養上清を含むため、例えば、脱落した乳歯、永久歯等から歯髄幹細胞を作製し培養すればよく、大量に作製でき入手が容易である。
また、ジェルが高分子化合物を含むため、温度等の影響を受けにくい組成物としての安定化が向上される。そして、例えば、塗布用化粧品組成物を肌に塗布した場合、ジェルに含まれる高分子化合物の作用によって肌の保湿性を高めるとともに、幹細胞の培養上清(抗炎症成分等)の作用によって炎症部分の炎症環境を鎮め(皮膚炎症状の改善)、痒みを抑制でき、再生修復能を高めることができる。
本発明の一態様として、前記幹細胞はブタ由来の歯髄幹細胞であるのが好ましい。
上記構成の塗布用化粧品組成物によれば、歯髄幹細胞として、ブタ由来の歯髄幹細胞を用いている。このため、食肉用のブタを使用でき、屠殺後のブタから顎骨を入手し、顎骨から抜歯した歯を用いるため、比較的容易に入手可能である。そして、ヒトとブタとでは、遺伝子解析における類似性が高く、ブタ由来の歯髄幹細胞をヒトの肌に適用するのに適している。
本発明の他態様として、歯髄幹細胞は不死化していないのが好ましい。
上述のように、不死化された歯髄幹細胞を作製するためには、予め歯髄から歯髄幹細胞を作製し、大量培養をした後、作製した歯髄幹細胞に癌遺伝子等を含む数種類の遺伝子を、外部から導入して不死化細胞を樹立する等の特殊な操作を必要とする。しかしながら、上記構成の塗布用化粧品組成物によれば、歯髄から作製された歯髄幹細胞及び該歯髄幹細胞の培養上清を用いるだけでよいので、特殊な操作をする必要がなく、作製が容易である。
本発明のさらに他の態様として、高分子化合物は、アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム‐ビニルピロリドンコポリマーを含むのが好ましい。
上記構成の塗布用化粧品組成物によれば、高分子化合物としてのアクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム‐ビニルピロリドンコポリマーによって、培養細胞又は培養液中の活性因子等の変性が抑制され得る。また、培養細胞又は培養液中の活性因子等の活性が高められ得る。
本発明のさらに別の態様として、前記培養上清の一部としてまたは前記培養上清から単離された種々のサイトカインを含むのが好ましい。
上記構成の塗布用化粧品組成物によれば、培養上清中に含まれる種々のサイトカインの作用によって、肌の炎症環境が改善されるとともに、再生修復能がさらに高められる。
本発明のさらに別の態様として、前記サイトカインは、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)、MCP‐1(単球走化性タンパク),HGF(肝細胞増殖因子)からなる群より選択される少なくとも一つのサイトカインであるのが好ましい。
MCP‐1(単球走化性タンパク)は、炎症において免疫細胞であるリンパ球の組織浸潤を促進させる(単球、NK細胞及びNKT細胞等を炎症に集積させる)ことができる。VEGF(血管内皮細胞増殖因子)及びHGF(肝細胞増殖因子)は、それぞれ、血管内皮細胞、肝細胞等の種々の細胞内の生理活性物質を活性化させることで、細胞の増殖(再生能)を活性化させる。
このため、上記構成の塗布用化粧品組成物によれば、培養細胞又は培養上清中に元々含まれるVEGF(血管内皮細胞増殖因子)、MCP‐1(単球走化性タンパク),HGF(肝細胞増殖因子)の作用によって、肌の炎症環境が改善されるとともに、再生修復能がさらに高められ得る。
本発明のさらに別の態様として、前記培養上清のみを含み、前記歯髄幹細胞を含まなくてもよい。この場合でも、幹細胞を含む場合に比し、同程度の上記効果を奏することができる。
本発明のさらに別の態様として、アトピー性皮膚炎に適用可能であるのが好ましい。
上記構成の塗布用化粧品組成物によれば、肌の保湿性を保つことができるのみならず、アトピー性皮膚炎の炎症部位にも適用可能であり、アトピー性皮膚炎における肌の正常部分及び炎症部分の炎症環境が改善されるとともに、再生修復能がさらに高められ得る。
本発明のさらに別の態様として、上記何れかに記載の塗布用化粧品組成物を含む化粧品であるのが好ましい。
本発明の化粧品によれば、上記何れかに記載の塗布用化粧品組成物を含むため、肌の保湿性を保ち、大量に作製でき入手が容易であるとともに、安定化が向上される。また、炎症部分の炎症環境を鎮め(皮膚炎症状の改善)、痒みを抑制でき、再生修復能を高めることができる。そして、本発明の塗布用化粧品組成物を含む化粧品以外にも、既存の(従来の)化粧品にも適用可能であり、肌の正常部分及び炎症部分の両方に適用可能な化粧品の汎用性が高まる。
以上のように、本発明によれば、肌の正常な部分と炎症部分の両方に適用可能であり、炎症部分を含めた肌の保湿性を高めるとともに、炎症部分の炎症環境を鎮め、痒みを抑制でき、再生修復能を高められ得る塗布用化粧品組成物を提供することができる、といった優れた効果を奏し得る。
本発明の一実施形態に係る塗布用化粧品組成物の安定性試験の結果を示すグラフである。 同実施形態に係る塗布用化粧品組成物の肌荒れ回復及び保湿効果評価試験の結果を示すグラフである。 同実施形態に係る塗布用化粧品組成物のアトピー性皮膚炎における合計皮疹スコアの推移(平均値)を示すグラフである。 同実施形態に係る塗布用化粧品組成物のアトピー性皮膚炎における皮疹スコアの各項目別におけるスコアの推移(平均値)を示すグラフである。 同実施形態に係る塗布用化粧品組成物のアトピー性皮膚炎における被験部位に占める皮疹面積の割合(平均)を示すグラフである。 同実施形態に係る塗布用化粧品組成物のアトピー性皮膚炎における各被験者の皮疹スコア4項目の合計スコアの推移を示すグラフである。 同実施形態に係る塗布用化粧品組成物のアトピー性皮膚炎における各被験者の被験部位に占める皮疹面積率及び皮疹面積の変化率の推移を示すグラフである。 同実施形態に係る塗布用化粧品組成物のアトピー性皮膚炎における各被験者のEASIスコアの推移を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る塗布用化粧品組成物について、添付図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る塗布用化粧品組成物は、肌の保湿性を保つ成分を含む塗布用化粧品組成物である。
本実施形態に係る塗布用化粧品組成物は、歯髄幹細胞の培養上清と、該培養上清を安定化させるためのジェルと、を含む。ジェルは、肌の保湿性を保つ高分子化合物を含む。
本実施形態に係る幹細胞は、ブタ由来の歯髄幹細胞である。また、本実施形態において、歯髄幹細胞は不死化していないものが用いられている。本実施形態において、食肉用のブタを使用し、歯髄幹細胞は、屠殺後のブタから顎骨を入手し、顎骨から抜歯した歯の歯髄から作製される。ブタ由来の歯髄幹細胞及び該歯髄幹細胞の培養上清を作製する手順については後述する。
なお、歯髄幹細胞として、ブタ由来の歯髄幹細胞を用いる理由としては、食肉用のブタを利用でき、比較的入手し易く安全性が高いこと、ヒトとブタとでは、遺伝子解析における類似性が高く、ブタ由来の歯髄幹細胞をヒトの炎症部分を含めた肌に適用するのに適していること、等が挙げられる。
高分子化合物は、アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム‐ビニルピロリドンコポリマーを含む。アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム‐ビニルピロリドンコポリマーは、アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウムとビニルピロリドンとの共重合体である。アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム‐ビニルピロリドンコポリマーとしては、例えば、商品名「Aristoflex AVC」(Clariant社製)が用いられる。
本実施形態に係る塗布用化粧品組成物は、培養上清の一部としてまたは培養上清から単離された種々のサイトカインを含む。また、本実施形態において、サイトカインは、培養上清の一部としてまたは培養上清から単離されたサイトカインの混合物として使用され得る。培養上清から単離されたサイトカインの混合物中において、サイトカインの一部を一又は複数の公知の対応するサイトカインで置き換えてもよい。
サイトカインは、細胞から放出され、細胞間の情報伝達分子として微量生理活性を有するタンパク質であり、その働きは、免疫、炎症に関係したものが多く知られるが、細胞の増殖、分化、細胞死、あるいは創傷治癒など多岐に亘っている。
本実施形態において、サイトカインは、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)、MCP‐1(単球走化性タンパク),HGF(肝細胞増殖因子)からなる群より選択される少なくとも一つのサイトカインである。なお、培養上清中には、数百種類のサイトカインが含まれると考えられている。
MCP‐1(単球走化性タンパク)は、76個のアミノ酸からなる塩基性タンパク質であり、免疫細胞である単球に対して特異的な遊走活性を示す。また、MCP‐1は、単球表面の接着分子の発現に関与しており、炎症局所への単球の遊走、内皮細胞との接着及び内皮下への浸潤等に関与していると考えられている。そして、MCP‐1は、炎症において免疫細胞であるリンパ球の組織浸潤を促進させる(NK細胞やNKT細胞を炎症に集積させる)ことができる。
VEGF(血管内皮細胞増殖因子)は、脈管形成及び血管新生に関与する一群の糖タンパク質である。VEGFは、主に、血管内皮細胞表面にある血管内皮細胞増殖因子受容体 (VEGFR))にリガンドとして結合し、細胞***や遊走、分化を刺激したり、微小血管の血管透過性を亢進させたりする働きを有する。また、VEGFは、免疫細胞である単球・マクロファージの活性化にも関与する。
HGF(肝細胞増殖因子)は、生体の自然治癒力を支える内因性の組織再生・修復因子ある。HGFは、肝細胞の増殖を促進するサイトカインとして発見されたが、肝細胞のみならずc‐Met受容体を発現している様々な細胞に作用する。HGFは、抗炎症性、抗線維化、血管新生促進、細胞死抑制作用等の様々な作用を有する。
本実施形態において、塗布用化粧品組成物は、培養上清のみを含み、歯髄幹細胞自体を含まない。培養上清は、そのままの状態で、若しくは凍結乾燥されて培養上清の凍結乾燥粉末とされた後に、上述のジェルによって培養上清含有ジェルとして形成される。培養上清含有ジェルは、肌に直接塗布されるように使用される。
また、本実施形態に係る塗布用化粧品組成物は、アトピー性皮膚炎に適用可能である。なお、塗布用化粧品組成物のアトピー性皮膚炎に対する評価試験については後述する。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ブタ由来の歯髄幹細胞及び該歯髄幹細胞の培養上清の作製>
まず、以下のようにして、ブタから採取した歯髄の歯髄細胞から歯髄幹細胞を作製し、培養上清の凍結乾燥粉末を作製した。
入手した食肉用ブタの下顎歯及び顎骨を用い、下顎全体の表面を殺菌するために、例えば、イソジン等の消毒液を用いて消毒した。次に、例えば、歯科用のダイヤモンドポイント等を用いて、歯冠及び歯根部を採取した。そして、採取した歯冠及び歯根部から、例えば、歯科用手用スケーラ、歯科用手用ファイル等を用いて歯髄を採取した。
得られた歯髄を、例えば、眼下用穿刀等を用いてせん断し、所望の血清や抗生物質を含有する基本培地に懸濁させた。使用する基本培地としては、5〜20%(v/v)のウシ血清、1%(v/v)の5×10〜5×10U/mlのペニシリン及び5〜50mg/mlのストレプトマイシンを添加したダルベッコ改変イーグル培地等を挙げることができる。
次に、例えば、1〜5mg/mlのコラゲナーゼとディスパーゼとを含む酵素溶液を調製し、酵素溶液中に歯髄を懸濁させた。その後、約1500rpmで約2〜5分間、懸濁液を遠心分離し、酵素処理により単離された歯髄細胞を回収した。
得られた歯髄細胞を、2〜8mlの上記基本培地中に再懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種した。10%FCS(fetal calf serum)を含むダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco‘s Modified Eagle’s Medium、以下、DMEM)を添加した後、5%CO存在下、インキュベータ中で、約35〜38℃で、約10〜20日間、培養した。
培地を除去した後、PBS等を用いて細胞を1〜数回洗浄した。或いは、培地の除去及び細胞の洗浄の代わりに、コロニーを形成した接着性細胞を回収してもよい。そして、選択した接着性細胞を、上記と同様の付着性細胞培養用ディッシュに播種し、同様の条件下で培養し、必要に応じて、必要な細胞数に達するまで継代培養を行うことで、ブタの脱落した乳歯等から歯髄幹細胞を得た。
そして、得られた歯髄幹細胞を所定の条件で培養し、その後、遠心分離等によって幹細胞を除去することによって、歯髄幹細胞由来の培養上清を得た。このようにして得られた培養上清を、例えば、ドライアイス−アセトン中で凍結させた後に乾燥させることで、培養上清の凍結乾燥粉末を得ることができる。或いは、得られた培養上清を、例えば、遠心、濃縮、溶媒の置換、透析、脱塩等の処理を行うことも可能である。
基本培地としては、DMEMの他、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(GIBCO社製等)、ハムF12培地(HamF12)(SIGMA社製、GIBCO社製等)、RPMI1640培地等を用いることができる。また、二種以上の基本培地を併用することも可能である。
基本培地に添加するものとしては、例えば、ウシ胎仔血清(fetal bovine serum又はfetal calf serum、(FBS又はFCS)、ヒト血清、羊血清及びその他の血清、血清代替物(Knockout serum replacement等)、ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin、(BSA)、ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質、各種ビタミン、各種ミネラル等を挙げることができる。
<培養上清の凍結乾燥粉末のジェル化剤(培養上清含有ジェル)の作製>
次に、上述の培養上清の凍結乾燥粉末に、水、上述の高分子化合物を含むジェルを下記表1の組成に従って添加、混合し、塗布用化粧品組成物(75倍希釈相当)としての培養上清含有ジェル(75倍希釈相当)(以下、培養上清含有ジェル)を調製した。
詳しくは、まず、全量に対して下記パート1(5%の1,3‐ブチレングリコール、5%のグリセリン、0.2%のメチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)及び9.8%の精製水)を添加して撹拌、混和し、混合物(水溶液)を調製した(手順1)。続いて、パート2の2%アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム‐ビニルピロリドンコポリマー(商品名「Aristoflex AVC」(Clariant社製))の水溶液を調製、秤量した(手順2)。そして、パート3の培養上清の凍結乾燥粉末を精製水に溶解し、凍結乾燥前の培養上清(原液)の15倍希釈相当の濃度になるように調製した(手順3)。最後に、手順1〜3で調製した水溶液を混合し、培養上清の終濃度が75倍希釈相当となるように調製した。

(実施例1)
<培養上清含有ジェルの安定性試験>
上記培養上清含有ジェルの安定性を確認するために、種々の温度環境下における経時的な総タンパク質濃度を、以下の手順でBCA法により定量した。
[BCA法の測定原理]
BCA法によるタンパク質定量は、2段階の反応に基づいている。まず、第1段階では、タンパク質溶液中のペプチド結合によって、二価銅イオン(Cu2+)が一価銅イオン(Cu)に還元される。還元されるCu2+の量は、溶液に含まれるタンパク質の量に比例する。
第2段階では、2分子のビシンコニン酸(bicinchoninic acid(BCA))がCuに配位して、波長562nmに強い吸収を示す青紫色の錯体を形成する。紫色の発色強度は、サンプル中に存在するタンパク質の濃度に依存する。タンパク質濃度が明らかな試料(バックグラウンド)とともにサンプルの562nmの吸光度を測定し、バックグラウンドと比較して、サンプル中のタンパク質濃度を決定する。
[測定方法]
上記培養上清含有ジェルを、PBS(−)で5倍希釈し、ビシンコニン酸(BCA)試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)と混和し、サンプルとした。総タンパク質濃度を測定するまで、サンプル作製から2週間及び4週間の間、5℃,25℃及び45℃の環境下で、サンプルを保存した。2週間後及び4週間後に、波長562nmにおけるバックグラウンドとサンプルとの吸光度の差を分光光度計(大日本製薬株式会社製)で測定し、バックグラウンドの吸光度から描いた標準直線から、サンプルの総タンパク質濃度を定量した。測定結果を図1に示す。なお、培養上清の原液相当の総タンパク質濃度は、3.03mg/ml、培養上清の75倍希釈相当の総タンパク質濃度は、40.3μg/mlであった。
[測定結果]
図1に示すように、サンプル作製から2週間後の5℃,25℃及び45℃における総タンパク質濃度は、それぞれ、約37μg/ml,約37μg/ml及び約34μg/mlであった。この結果より、サンプル作製から2週間後まで、45℃における総タンパク質濃度がやや下がっているものの、温度差に関係なく、サンプルの総タンパク質濃度が維持されており、上記培養上清含有ジェルは、経時的に高い温度安定性を有するものと言える。
また、サンプル作製から4週間後の5℃,25℃及び45℃における総タンパク質濃度は、それぞれ、約35μg/ml,約34μg/ml及び約33μg/mlであった。この結果より、サンプル作製から4週間後まで、温度差に関係なく、サンプルの総タンパク質濃度が維持されており、上記培養上清含有ジェルは、経時的に高い温度安定性を有するものと言える。
(実施例2)
<培養上清含有ジェルの肌荒れ回復及び保湿効果評価試験>
[目的]
人為的に肌荒れを起こした皮膚(肌)及び正常皮膚に対する(I)即時的な保湿効果、並びに(II)経時的な保湿効果及びバリア機能の回復効果を検証するために、上記培養上清含有ジェルを用いたモニターテストを実施した。
[被験者、試験期間及び試験品]
より具体的には、健康な男女10名の被験者に対して、3週間(2014年10月28日〜11月17日)、試験品として(1)本実施形態において作製した培養上清含有ジェル(75倍希釈相当)と、(2)培養上清を含有していないジェル(培養上清非含有ジェル)とを用いた。培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルを、試験期間中は冷蔵保存した。
[被験者の被験部位における肌荒れ形成]
そして、被験者の上腕内側部の4ヶ所を被験部位とし、そのうち2ヶ所に3%(肌荒れの状態によっては1%や5%)のSDS溶液を湿らせたコットンを10分間静置した。この処理を3日間(同10月28日〜10月30日)連続で行うことで、2ヶ所の被験部位に肌荒れを形成させた。
[塗布及び評価方法]
(I)即時的な保湿性評価
試験開始3日後の測定時(肌荒れ形成直後)に、指定した被験部位(肌荒れ部位及び正常部位)に試験品(培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェル)を塗布し、30分後及び60分後に、SKICON−200EX(株式会社ヤヨイ社製)を用いて、角層水分量を測定することで即時的な保湿効果を調べた。測定結果を図2(a)に示す。なお、図2(a)中、肌荒れ部位における培養上清含有ジェルの結果を◆印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を▲印で示す曲線で表す。また、図2(a)中、正常部位における培養上清含有ジェルの結果を■印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を×印で示す曲線で表す。
[測定結果]
測定の結果、図2(a)に示すように、試験開始直後及び肌荒れ形成直後に比し、塗布30分後において、正常部位及び肌荒れ部位の両方で、角層水分量が劇的に増加し、塗布60分後まで緩やかに減少しつつもほぼ維持された。この結果より、(I)即時的な保湿効果として、正常部位及び肌荒れ部位の両方で、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルに、皮膚の水分量を即時的に増加させる効果があることが確認された。また、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルに保湿効果の差はなかった。
(II)継続使用時の保湿性評価
肌荒れ形成後より、指定した被験部位(肌荒れ部位及び正常部位)に、朝晩の1日2回、18日間(同10月31日〜11月17日)、試験品(培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェル)を塗布した。試験開始0,3,7,14,21日後に恒温恒湿環境下にて、SKICON−200EX(株式会社ヤヨイ社製)を用いて角層水分量を測定するとともに、サイクロン水分蒸散モニター(アサヒバイオメッド社製)を用いて経皮水分蒸散量(TEWL)を測定することで、経時的な保湿効果及びバリア機能の回復効果を調べた。測定結果を図2(b),(c)に示す。なお、図2(b),(c)中、肌荒れ部位における培養上清含有ジェルの結果を◆印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を▲印で示す曲線で表す。また、図2(b),(c)中、正常部位における培養上清含有ジェルの結果を■印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を×印で示す曲線で表す。
[測定結果]
(II)経時的(持続的)な保湿効果として、図2(b)に示すように、肌荒れ部位及び正常部位において、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルを用いた角層水分量に大きな変化はなかった。しかしながら、図2(c)に示すように、肌荒れ部位において、経皮水分蒸散量(TEWL)が21日目にかけて経時的に抑制された。その結果、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルにおいて、肌荒れ部位に、経皮水分蒸散量(TEWL)を抑制することによるバリア機能の回復が確認された。また、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルにおける経皮水分蒸散量(TEWL)の抑制効果の差はなかった。
(実施例3)
<培養上清含有ジェルのアトピー性皮膚炎における有用性評価試験>
[被験者、試験期間及び試験方法]
乾燥状態を示す、アトピー素因を有する20〜60歳代の男女11名(医師の診断後、試験に適することを確認済)を被験者とした。関連病院において、8週間(2014年10月〜12月)評価試験を行った。被験部位として上肢、腹部及び首部の何れかに、試験品として(1)本実施形態において作製した培養上清含有ジェル(75倍希釈相当)と、(2)培養上清を含有していないジェル(培養上清非含有ジェル)とを、被験部位全体に塗布してもらい、(1)培養上清含有ジェルと、(2)培養上清非含有ジェルとにおける初回、1週間後、2週間後、4週間後、6週間後、8週間後(合計6回)の経過を比較した。
なお、培養上清含有ジェルについては、原液で1週間塗布して問題がないことを確認した後、試験品として使用した。また、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルはともに、使用するまで冷蔵保存され、2週間毎に新しく調製した試験品を、被験者に使用してもらった。そして、各被験者に血液検査を行うことで、肝機能等の二次的な影響を評価し、試験品の使用において問題がないことを確認した。
[評価方法]
臨床において現在最もよく用いられているアトピー性皮膚炎の重症度診断法であるEASIに基づき、被験部位の評価方法を決定した。EASIは、全身を対象に、病変部の皮膚症状のうち紅斑、浸潤/丘疹、掻破痕、苔癬化の各項目について皮疹のシリアスさ(以下の表2に示す(I)皮疹スコア)と、以下の表3に示す体表に占める(II)皮疹面積の割合とから、アトピー性皮膚炎の重症度を評価する手法である。この方法を、局所での試験の評価法に一部改変して本試験に用いた。
[皮膚所見(皮膚炎症状の評価):(I)皮疹スコア及び(II)皮疹面積)]

[(I)皮疹スコアを用いた皮疹の改善度の判定]
より具体的には、上述の皮膚所見(皮膚炎症状の評価)を、表2に示す(I)皮疹スコアを用いて、被験部位の皮膚症状のうち紅斑、浸潤/丘疹、掻破痕、苔癬化の4項目について担当医が判定した。そして、皮疹スコアの各項目を重症度に応じて3点満点とし、4項目の総計スコア(3点×4項目=12点満点)の推移から、皮疹の改善度を判定した。試験結果について、上記11名の合計皮疹スコアの推移(平均値)を図3に示す。なお、図3中、培養上清含有ジェルの結果を◆印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を▲印で示す曲線で表す。
[試験結果]
図3に示すように、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルを用いた4項目の合計皮疹スコアにおいて、2週〜8週にかけてやや改善傾向が見られた。また、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルにおける改善効果に大きな差は見られなかった。
また、上記11名の皮疹スコアの各項目別(表2)におけるスコアの推移(平均値)を図4(a)〜(d)に示す。なお、図4(a)〜(d)中、培養上清含有ジェルの結果を◆印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を▲印で示す曲線で表す。
[試験結果]
図4(a)に示すように、紅斑スコアはやや悪化傾向を示した。しかしながら、図(b)〜(d)に示すように、浸潤/丘疹スコア、掻破痕スコア及び苔癬化スコアの3項目は、改善傾向がみられた。皮疹スコアの何れの項目においても、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルにおける改善効果に大きな差は見られなかった。
[(II)皮疹面積を用いた皮疹の改善度の判定]
また、被験部位を占める皮疹面積の割合(皮疹部位全体を100%とする)について、担当医が評価し(スコア判定を行い)、上記表3に示す(II)皮疹面積の通り面積の範囲に応じて6点満点とし、スコア化した。試験結果を図5に示す。なお、図5中、培養上清含有ジェルの結果を◆印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を▲印で示す曲線で表す。
[試験結果]
図5に示すように、培養上清非含有ジェルは、初回値に比し、+5.0%(4週)〜+1.2%(8週)の間で推移したのに対して、培養上清含有ジェルは、初回値に比し、+2.9%(4週)〜−2.2%(8週)の間で推移した。この結果より、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、皮疹面積の拡大を抑える効果を有することが確認された。
[EASIに基づいた被験部位の改善度の評価]
(I)皮疹スコア4項目の合計スコアの推移
各被験者(11名)の上記(I)皮疹スコア4項目の合計スコアの推移を図6に示す。なお、図6中、培養上清含有ジェルの結果を◆印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を▲印で示す曲線で表す。
[試験結果]
図6に示すように、被験者No.1,No.3,No.8及びNo.10(合計4名)において、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、皮疹スコア4項目の合計スコアにおける改善効果が見られた。また、被験者No.2,No.6,No.9及びNo.11(合計4名)において、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、皮疹スコア4項目の合計スコアにおける改善効果が見られなかった。
(II)皮疹面積における被験部位に占める皮疹面積率及び皮疹面積の変化率
また、各被験者の上記(II)皮疹面積において、被験部位に占める皮疹面積率及び皮疹面積の変化率(開始時を100とする)を、図7(a)及び(b)に示す。なお、図7(a)及び(b)中、培養上清含有ジェルの結果を◆印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を▲印で示す曲線で表す。
[試験結果]
図7(a)及び(b)に示すように、被験者No.1,No.3〜No.6,No.8及びNo.10(合計7名)において、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、上述の被験部位に占める皮疹面積率及び皮疹面積の変化率における大きな改善効果が見られた。また、被験者No.2,No.7,No.9及びNo.11(合計4名)において、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、上述の被験部位に占める皮疹面積率及び皮疹面積の変化率における改善効果が見られなかった。
(III)EASIスコアを用いた改善度の評価
また、上記(I)皮疹スコア4項目の合計スコア(12点満点)、及びこれに上記(II)皮疹面積の面積スコア(6点満点)を乗じた(III)EASIスコア(12×6=72点満点)を用いて、改善度を評価した。試験結果を図8に示す。なお、図8中、培養上清含有ジェルの結果を◆印で示す曲線で、培養上清非含有ジェルの結果を▲印で示す曲線で表す。
[試験結果]
図8に示すように、被験者No.1,No.3,No.5,No.7,No.8及びNo.10(合計6名)において、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、EASIスコアにおける改善効果が見られた。また、被験者No.2,No.9及びNo.11(合計3名)において、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、EASIスコアにおける改善効果が見られなかった。
すなわち、図6〜図8において、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、特に、被験部位に占める皮疹面積率及び皮疹面積の変化率における大きな改善効果の結果、EASIスコアにおける改善効果が認められた。これにより、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、(II)皮疹面積(被験部位に占める皮疹面積率及び皮疹面積の変化率)の抑制において、より改善効果を有することが確認された。
なお、本実施形態における評価試験は、冬場の乾燥状態の環境下で行われたため、特に、肌荒れ回復及び保湿効果評価試験、並びにアトピー性皮膚炎の有用性評価試験において、改善効果が見られない例が認められた。今後は、季節等の環境条件や、ジェルの成分等の条件を適宜変更して、さらに、同様の実験を行う予定である。
以上のように、本実施形態に係る培養上清含有ジェルとしての塗布用化粧品組成物によれば、大量に作製でき、入手が容易である。また、組成物としての経時的な温度安定化が維持され得る。そして、以下のような肌の保湿性を担保できる。
(I)即時的な保湿効果として、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルに、角層水分量を即時的に増加させる効果があることが確認された。また、(II)経時的(持続的)な保湿効果として、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルに、肌荒れ部位のバリア機能を回復させる効果があることが確認された。
また、培養上清含有ジェル及び培養上清非含有ジェルは、紅斑スコアの4項目のうち、浸潤/丘疹スコア、掻破痕スコア及び苔癬化スコアの3項目に改善傾向が見られた。そして、培養上清含有ジェルは、培養上清非含有ジェルに比し、皮疹面積の拡大を抑える効果、及びそれに伴うEASIスコアにおける改善効果があることが確認された。
これらの結果から、塗布用化粧品組成物を肌に塗布した場合、ジェルに含まれる高分子化合物の作用によって肌の保湿性を維持できるとともに、幹細胞の培養上清(抗炎症成分)の作用によって炎症部分の炎症環境を鎮め(皮膚炎症状の改善)、痒みを抑制でき、再生修復能を高めることができる可能性が高い。
尚、本発明の塗布用化粧品組成物は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更し得ることは勿論のことである。
上記実施形態において、幹細胞はブタ由来の歯髄幹細胞であるが、これに限定されるものではなく、例えば、ヒト、ウマ、サル等の哺乳類の幹細胞から作製されたものであってもよい。この場合、脱落した乳歯や抜歯した永久歯等を用いるため、侵襲的処置に伴う苦痛がない。また、歯髄幹細胞以外の幹細胞から作製されたものであってもよい。
上記実施形態において、歯髄幹細胞は不死化していないものが用いられているが、これに限定されるものではない。
上記実施形態において、高分子化合物は、アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム‐ビニルピロリドンコポリマーを含むが、これに限定されるものではない。例えば、一般的な化粧品組成物及び化粧品に含まれるような肌の保湿性を保つ成分であり、かつ培養上清の抗炎症作用を維持できるものであればよい。
上記実施形態において、培養上清の一部としてまたは培養上清から単離された種々のサイトカインを含むが、これに限定されるものではなく、例えば、ケモカイン、リンホカイン及びホルモン等の生理活性物質を含んでいてもよい。要は、本実施形態における上記効果と同様の効果を奏するものであればよい。
本実施形態において、サイトカインは、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)、MCP‐1(単球走化性タンパク),HGF(肝細胞増殖因子)からなる群より選択される少なくとも一つのサイトカインであるが、これらに限定されるものではなく、他のサイトカインも含まれ得る。要は、本実施形態における上記効果と同様の効果を奏するものであればよい。
なお、本実施形態に係る塗布用化粧品組成物の形態は、特に限定されるものではなく、一般の塗布用化粧品組成物及び化粧品において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
例えば、塗布用化粧品組成物の形態は、液状、ローション状、乳液状、クリーム状、軟膏状、半固形状、オイルジェル状、及びシート状等の剤型とすることができる。また、本実施形態に係る塗布用化粧品組成物の剤型に応じて、例えば、オイル、色素、防腐剤、界面活性剤、香料、顔料等を適宜配合することができる。
本実施形態において、培養上清のみを含み、歯髄幹細胞を含まないようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、歯髄幹細胞を含むようにしてもよい。この場合でも、上記と同様の効果を奏することができる。
本実施形態において、塗布用化粧品組成物は、アトピー性皮膚炎に適用可能であるが、これに限定されるものではなく、例えば、接触性皮膚炎等のアトピー性皮膚炎以外の皮膚の炎症性疾患や、皮膚以外の他の部位の疾患にも適用可能である。
そして、本実施形態の塗布用化粧品組成物は、本発明の化粧品以外にも、既存の(従来の)化粧品にも適用可能であり、肌の正常部分及び炎症部分の両方に適用可能な化粧品の汎用性が高まる。さらに、化粧品以外にも、外用剤や薬剤等にも適用可能である。
本発明の塗布用化粧品組成物は、肌の保湿性を保つ成分を含む塗布用化粧品組成物及び化粧品に有効に利用される。

Claims (9)

  1. 肌の保湿性を保つ成分を含む塗布用化粧品組成物であって、
    歯髄幹細胞の培養上清と、
    該培養上清を安定化させるためのジェルと、を含み、
    前記ジェルは、肌の保湿性を保つ高分子化合物を含む、塗布用化粧品組成物。
  2. 前記幹細胞はブタ由来の歯髄幹細胞である、請求項1に記載の塗布用化粧品組成物。
  3. 前記歯髄幹細胞は不死化していない、請求項1又は2に記載の塗布用化粧品組成物。
  4. 前記高分子化合物は、アクリル酸ジメチルタウリンアンモニウム‐ビニルピロリドンコポリマーを含む、請求項1〜3の何れかに記載の塗布用化粧品組成物。
  5. 前記培養上清の一部としてまたは前記培養上清から単離された種々のサイトカインを含む、請求項1〜4の何れかに記載の塗布用化粧品組成物。
  6. 前記サイトカインは、VEGF(血管内皮細胞増殖因子)、MCP‐1(単球走化性タンパク),HGF(肝細胞増殖因子)からなる群より選択される少なくとも一つのサイトカインである、請求項5に記載の塗布用化粧品組成物。
  7. 前記培養上清のみを含み、前記歯髄幹細胞を含まない、請求項1〜6の何れかに記載の塗布用化粧品組成物。
  8. アトピー性皮膚炎に適用可能である、請求項1〜7の何れかに記載の塗布用化粧品組成物。
  9. 請求項1〜8の何れかに記載の塗布用化粧品組成物を含む化粧品。
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