JP2016145174A - 含フッ素ジエンの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】含フッ素オレフィンとアセチレンとのエンインメタセシス反応により、含フッ素ジエンを温和な条件下で、簡便かつ効率的に製造する方法の提供。【解決手段】オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物の存在下、置換アセチレン化合物と含フッ素オレフィン化合物とを反応させることにより、下記式のように含フッ素ジエンを製造する方法。【選択図】なし
Description
本発明は、エンインメタセシス反応により含フッ素ジエンを製造する新規な方法に関する。
二重結合を2つ有するオレフィンであるジエンにおいて、水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置換された化合物、すなわち含フッ素ジエンには、産業上有用な化合物が知られているが、これらの化合物を簡便かつ効率的に製造する方法は確立されていない。
一方、金属触媒による二重結合組み換え反応であるオレフィンメタセシス反応(以下、単に、「オレフィンメタセシス」ということもある。)は多彩な置換基を有するオレフィンの製造方法として広く利用されている。また、オレフィンメタセシス反応のひとつであるエンインメタセシス反応は、共役ジエンを合成する有力な手法として知られている。しかし、電子求引性置換基を有する電子不足オレフィンは反応性が低いため、オレフィンメタセシスに利用することは容易ではない。例えば非特許文献1では、種々の置換基を有するオレフィンの反応性が調べられており、電子不足オレフィンの反応性が低いと記載されている。実際、フッ素原子や塩素原子等、ハロゲン原子を有するオレフィンも電子不足オレフィンであるため、オレフィンメタセシスに用いた報告はほとんどない。
Chatterjee,A.K.et al.,Journal of American Chemical Society,2003,125,11360−11370.
Macnaughtan,M.L.et al.,Journal of American Chemical Society,2007,129,7708−7709.
このように、ハロゲン原子を有するオレフィンをオレフィンメタセシスに利用することは実用的ではない。非特許文献2にはトリメチルシリルアセチレンと塩化ビニルを原料として、エンインメタセシス反応により塩素原子が導入されたジエンを製造する方法が開示されているものの、フッ素原子を含むオレフィン(含フッ素オレフィン)を用いたエンインメタセシス反応により含フッ素ジエンを製造した報告例はこれまでなかった。
そこで本発明では、含フッ素オレフィンとアセチレンとのエンインメタセシス反応により、含フッ素ジエンを温和な条件下で、簡便かつ効率的に製造する方法を提供することを課題とする。さらには、分子内に炭素−炭素二重結合(オレフィンユニット)と炭素−炭素三重結合(アセチレンユニット)を併せ持つ分子を用いて、分子内で閉環反応及びエンインメタセシス反応を行い、含フッ素ジエンを製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研鑽を積んだ結果、金属−炭素二重結合を有する金属触媒の存在下、含フッ素オレフィンとアセチレンとが温和な条件下で含フッ素ジエンを与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記<1>〜<5>に関するものである。
<1>オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、下記式(21)で表される化合物と下記式(31)で表される化合物または下記式(32)で表される化合物とを反応させることにより、下記式(51)で表される化合物、下記式(52)で表される化合物、下記式(53)で表される化合物、下記式(54)で表される化合物、下記式(55)で表される化合物、下記式(56)で表される化合物、下記式(57)で表される化合物、及び、下記式(58)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を製造する方法。
<1>オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、下記式(21)で表される化合物と下記式(31)で表される化合物または下記式(32)で表される化合物とを反応させることにより、下記式(51)で表される化合物、下記式(52)で表される化合物、下記式(53)で表される化合物、下記式(54)で表される化合物、下記式(55)で表される化合物、下記式(56)で表される化合物、下記式(57)で表される化合物、及び、下記式(58)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を製造する方法。
ただし、式中の記号は以下の意味を表す。
A11及びA12はそれぞれ独立して、下記官能基(i)、官能基(ii)、官能基(iii)、及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基である。A11及びA12は互いに結合して環を形成してもよい。
官能基(i):水素原子。
官能基(ii):ハロゲン原子。
官能基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基。
R11及びR12はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基からなる群より選ばれる官能基である。
RF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
X11〜X13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
A11及びA12はそれぞれ独立して、下記官能基(i)、官能基(ii)、官能基(iii)、及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基である。A11及びA12は互いに結合して環を形成してもよい。
官能基(i):水素原子。
官能基(ii):ハロゲン原子。
官能基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基。
R11及びR12はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基からなる群より選ばれる官能基である。
RF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
X11〜X13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
<2>オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、下記式(22)で表される化合物を反応させることにより、下記式(61)で表される化合物を製造する方法。
ただし、式中の記号は以下の意味を表す。
R13は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数5〜20のアリール基からなる群より選ばれる官能基である。
RF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
X14は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
Zは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基からなる群より選ばれる官能基であり、前記炭素数1〜20のアルキレン基及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基及びエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1の置換基を有していてもよい。
R13は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数5〜20のアリール基からなる群より選ばれる官能基である。
RF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
X14は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
Zは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基からなる群より選ばれる官能基であり、前記炭素数1〜20のアルキレン基及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基及びエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1の置換基を有していてもよい。
<3>前記金属−カルベン錯体化合物(10)における金属が、ルテニウム、モリブデンまたはタングステンである、前記<1>または<2>に記載の化合物を製造する方法。
<4>前記式(31)で表される化合物が下記式で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1の化合物である、前記<1>または<3>に記載の化合物を製造する方法。
<4>前記式(31)で表される化合物が下記式で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1の化合物である、前記<1>または<3>に記載の化合物を製造する方法。
ただし、式中のRPFは炭素数1〜12のペルフルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12のペルフルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
<5>前記式(32)で表される化合物が下記式で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1の化合物である、前記<1>または<3>に記載の化合物を製造する方法。
ただし、式中のORFは炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基からなる群より選ばれる官能基である。
本発明に係る含フッ素ジエンの製造方法によれば、エンインメタセシス反応によって含フッ素オレフィンとアセチレンから簡便かつ効率的に含フッ素ジエンを製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。また、本発明は金属触媒によるエンインメタセシスに関するものであり、従来技術と共通する一般的特徴については記載を省略することがある。
なお本明細書において、「式(X)で表される化合物」のことを、単に「化合物(X)」と称する場合がある。
また、本明細書において、一置換オレフィンとは、二重結合の一方の炭素原子に1つの水素原子またはハロゲン原子と1つの有機基が結合したオレフィンを意味する。1,2−二置換オレフィンとは、二重結合の両方の炭素原子に一つずつ、同一又は異なる有機基が結合したオレフィンを意味する。
ペルハロゲン化アルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。ペルハロゲン化アルコキシ基とは、アルコキシ基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。ペルハロゲン化アルコキシ基及びペルハロゲン化アリール基についても同様である。
また(ペル)ハロゲン化アルキル基とは、ハロゲン化アルキル基とペルハロゲン化アルキル基とを合わせた総称で用いる。すなわち該基は1個以上のハロゲン原子を有するアルキル基である。(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、(ペル)ハロゲン化アリール基、及び(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基についても同様である。
アリール基とは、芳香族化合物において芳香環を形成する炭素原子の内いずれか1つの炭素原子に結合した1つの水素原子を取り去った残基に相当する一価の基を意味し、炭素環化合物から誘導されるアリール基と、ヘテロ環化合物から誘導されるヘテロアリール基とを合わせた総称で用いる。
炭化水素基の炭素数とは、ある炭化水素基全体に含まれる炭素原子の総数を意味し、該基が置換基を有さない場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数を、該基が置換基を有する場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数に置換基中の炭素原子の数を加えた総数を表す。
なお本明細書において、「式(X)で表される化合物」のことを、単に「化合物(X)」と称する場合がある。
また、本明細書において、一置換オレフィンとは、二重結合の一方の炭素原子に1つの水素原子またはハロゲン原子と1つの有機基が結合したオレフィンを意味する。1,2−二置換オレフィンとは、二重結合の両方の炭素原子に一つずつ、同一又は異なる有機基が結合したオレフィンを意味する。
ペルハロゲン化アルキル基とは、アルキル基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。ペルハロゲン化アルコキシ基とは、アルコキシ基の水素原子が全てハロゲン原子で置換された基を意味する。ペルハロゲン化アルコキシ基及びペルハロゲン化アリール基についても同様である。
また(ペル)ハロゲン化アルキル基とは、ハロゲン化アルキル基とペルハロゲン化アルキル基とを合わせた総称で用いる。すなわち該基は1個以上のハロゲン原子を有するアルキル基である。(ペル)ハロゲン化アルコキシ基、(ペル)ハロゲン化アリール基、及び(ペル)ハロゲン化アリールオキシ基についても同様である。
アリール基とは、芳香族化合物において芳香環を形成する炭素原子の内いずれか1つの炭素原子に結合した1つの水素原子を取り去った残基に相当する一価の基を意味し、炭素環化合物から誘導されるアリール基と、ヘテロ環化合物から誘導されるヘテロアリール基とを合わせた総称で用いる。
炭化水素基の炭素数とは、ある炭化水素基全体に含まれる炭素原子の総数を意味し、該基が置換基を有さない場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数を、該基が置換基を有する場合は炭化水素基骨格を形成する炭素原子の数に置換基中の炭素原子の数を加えた総数を表す。
<反応機構>
本発明はエンインメタセシス反応による含フッ素ジエンの製造方法に関するものであり、例えば下記スキーム(a)に表すように、含フッ素オレフィン化合物とアセチレンとを、触媒の存在下エンインメタセシス反応させることにより、含フッ素ジエン化合物を得ることができる。
本発明はエンインメタセシス反応による含フッ素ジエンの製造方法に関するものであり、例えば下記スキーム(a)に表すように、含フッ素オレフィン化合物とアセチレンとを、触媒の存在下エンインメタセシス反応させることにより、含フッ素ジエン化合物を得ることができる。
上記スキーム(a)において、[L]は配位子であり、Mはルテニウム、モリブデン又はタングステンであり、A1及びA2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、並びに、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基からなる群から選ばれる官能基である。A1及びA2は互いに結合して環を形成してもよい。R11及びR12はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基からなる群より選ばれる官能基である。RF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。X11〜X13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
またエンインメタセシス反応は可逆である。すなわちスキーム(a)において逆向きの反応(逆向きの方向の矢印で表わされる反応)が存在する。しかしこの点についての詳細は説明を省略する。また生成するジエンについては幾何異性体が存在する可能性がある。しかしこの点の詳細については、個々の反応に強く依存するので、説明を省略する。
また、スキーム(a)では2種類の異なる含フッ素オレフィン化合物とアセチレンとを原料として用い、分子間でエンインメタセシス反応させることにより含フッ素ジエン化合物を得るが、炭素−炭素二重結合(オレフィンユニット)と炭素−炭素三重結合(アセチレンユニット)を共に有する分子を原料として用いると、分子内でエンインメタセシス反応が進み、含フッ素ジエン化合物を得ることも可能である。
本発明は、下記スキーム(b)に表すように、例えば化合物(11)の存在下、化合物(21)と化合物(31)を反応させることにより、化合物(51)、化合物(52)、化合物(53)及び化合物(54)からなる群より選ばれる少なくとも1の化合物を製造することを特徴とする。
なお、スキーム(b)において、化合物(31)に代えて、下記に示す化合物(32)を用いることもできる。その場合には、下記に示す化合物(55)、化合物(56)、化合物(57)及び化合物(58)からなる群より選ばれる少なくとも1の化合物を製造することができる。
また、化合物(21)と化合物(31)または化合物(32)を反応させる代わりに、下記に示す化合物(22)を原料化合物として用いることもできる。化合物(22)は分子内にオレフィンユニットとアセチレンユニットを併せ持つ化合物である。化合物(22)を原料とした場合には、下記に示す化合物(61)が生成する。
なお、スキーム(b)において、化合物(31)に代えて、下記に示す化合物(32)を用いることもできる。その場合には、下記に示す化合物(55)、化合物(56)、化合物(57)及び化合物(58)からなる群より選ばれる少なくとも1の化合物を製造することができる。
また、化合物(21)と化合物(31)または化合物(32)を反応させる代わりに、下記に示す化合物(22)を原料化合物として用いることもできる。化合物(22)は分子内にオレフィンユニットとアセチレンユニットを併せ持つ化合物である。化合物(22)を原料とした場合には、下記に示す化合物(61)が生成する。
上記エンインメタセシス反応は、錯体として化合物(11)の存在下で進行する。化合物(11)は金属−カルベン錯体化合物(10)の代表例として記載したものであり、金属−カルベン錯体化合物(10)としては、ルテニウム−カルベン錯体、モリブデン−カルベン錯体、又はタングステン−カルベン錯体(以下、「金属−カルベン錯体」とも総称する。)が例示できる。金属−カルベン錯体としては化合物(11)の他に、後述する化合物(12)、化合物(13)、化合物(14)、化合物(15)、化合物(16)、化合物(17)、または化合物(18)であってもよく、いずれの錯体を用いた場合でも、上述したスキーム(a)と同様の反応機構でエンインメタセシス反応が進んでいくものと考えられる。以下金属−カルベン錯体については同様である。
本明細書において、式中の記号は以下の意味を表す。
[L]は配位子である。
Mはルテニウム、モリブデン又はタングステンである。
A1、A2、A11及びA12はそれぞれ独立して、下記官能基(i)、官能基(ii)、官能基(iii)、及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基である。A1及びA2は互いに結合して環を形成してもよい。A11及びA12は互いに結合して環を形成してもよい。ただし、A1及びA2の一方がハロゲン原子である場合、他方は官能基(i)、官能基(iii)、及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基である。
X1及びX2はそれぞれ独立して、下記官能基(i)及び官能基(ii)からなる群から選ばれる官能基である。
ただし官能基(i)〜官能基(iv)は、それぞれ下記を意味する。
官能基(i):水素原子。
官能基(ii):ハロゲン原子。
官能基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基。
R11〜R13はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基からなる群より選ばれる官能基である。
RF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
X11〜X14はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化、アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
Zは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基からなる群より選ばれる官能基であり、前記炭素数1〜20のアルキレン基及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基及びエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1の置換基を有していてもよい。
[L]は配位子である。
Mはルテニウム、モリブデン又はタングステンである。
A1、A2、A11及びA12はそれぞれ独立して、下記官能基(i)、官能基(ii)、官能基(iii)、及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基である。A1及びA2は互いに結合して環を形成してもよい。A11及びA12は互いに結合して環を形成してもよい。ただし、A1及びA2の一方がハロゲン原子である場合、他方は官能基(i)、官能基(iii)、及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基である。
X1及びX2はそれぞれ独立して、下記官能基(i)及び官能基(ii)からなる群から選ばれる官能基である。
ただし官能基(i)〜官能基(iv)は、それぞれ下記を意味する。
官能基(i):水素原子。
官能基(ii):ハロゲン原子。
官能基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基。
R11〜R13はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基からなる群より選ばれる官能基である。
RF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
X11〜X14はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化、アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
Zは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基からなる群より選ばれる官能基であり、前記炭素数1〜20のアルキレン基及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基及びエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1の置換基を有していてもよい。
<オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)>
オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)は本発明に係る製造方法において触媒としての役割を果たすが、試薬として投入するもの及び反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。ここで、化合物(10)は反応条件下、配位子のいくつかが解離することで触媒活性を示すようになるものと、配位子の解離なしで触媒活性を示すものが知られているが、本発明ではいずれでもよく限定されない。また一般に、エンインメタセシス反応は触媒へのオレフィンの配位と解離を繰り返しながら進行するため、反応中、触媒上にオレフィン以外の配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明確でない。したがって本明細書中、[L]は配位子の数や種類を特定するものではない。また、金属−カルベン錯体化合物(10)における金属はルテニウム、モリブデンまたはタングステンであることが好ましい。
オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)は本発明に係る製造方法において触媒としての役割を果たすが、試薬として投入するもの及び反応中で生成するもの(触媒活性種)の両方を意味する。ここで、化合物(10)は反応条件下、配位子のいくつかが解離することで触媒活性を示すようになるものと、配位子の解離なしで触媒活性を示すものが知られているが、本発明ではいずれでもよく限定されない。また一般に、エンインメタセシス反応は触媒へのオレフィンの配位と解離を繰り返しながら進行するため、反応中、触媒上にオレフィン以外の配位子がいくつ配位しているかは必ずしも明確でない。したがって本明細書中、[L]は配位子の数や種類を特定するものではない。また、金属−カルベン錯体化合物(10)における金属はルテニウム、モリブデンまたはタングステンであることが好ましい。
以下具体的な化合物(11)について説明する。
化合物(11)におけるA1及びA2は、前記定義と同様である。すなわち化合物(11)におけるA1及びA2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、または、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、互いに結合して環を形成してもよい。ただし化合物(11)としては、A1及びA2の両方がハロゲン原子である場合は除く。
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が入手容易性の点から好ましい。
炭素数1〜20の一価炭化水素基としては炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基が好ましく、直鎖状、分岐状、又は環状でもよい。
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基としては、好ましくは、当該原子を含む炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、当該原子を含む炭素数5〜20のアリール基、炭素数5〜20のアリールオキシ基が例示できる。該一価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、又は環状でもよい。これらの好ましい基は少なくとも一部の炭素原子にハロゲン原子が結合していてもよい。すなわち例えば(ペル)フルオロアルキル基、(ペル)フルオロアルコキシ基であってもよい。またこれらの好ましい基は、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有していてもよい。またこれらの好ましい基は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む置換基を有していてもよい。該置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アミド基(カルボニルアミノ基)、カルバメート基(オキシカルボニルアミノ基)、ニトロ基、カルボキシル基、エステル基(アシルオキシ基またはアルコキシカルボニル基)、チオエーテル基、及びシリル基等が例示できる。これらの基は更にアルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。例えばアミノ基(−NH2)はモノアルキルアミノ基(−NHR)、モノアリールアミノ基(−NHAr)、ジアルキルアミノ基(−NR2)、またはジアリールアミノ基(−NAr2)であってもよい。
これらのA1及びA2の組み合わせを有する化合物(11)としては、入手容易性の点で、下記式に示すものが好ましく例示できる。なお、下記式中、Cyとはシクロヘキシル基を意味する。
化合物(11)におけるA1及びA2は、前記定義と同様である。すなわち化合物(11)におけるA1及びA2はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、または、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基であり、互いに結合して環を形成してもよい。ただし化合物(11)としては、A1及びA2の両方がハロゲン原子である場合は除く。
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子が入手容易性の点から好ましい。
炭素数1〜20の一価炭化水素基としては炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基が好ましく、直鎖状、分岐状、又は環状でもよい。
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基としては、好ましくは、当該原子を含む炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、当該原子を含む炭素数5〜20のアリール基、炭素数5〜20のアリールオキシ基が例示できる。該一価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、又は環状でもよい。これらの好ましい基は少なくとも一部の炭素原子にハロゲン原子が結合していてもよい。すなわち例えば(ペル)フルオロアルキル基、(ペル)フルオロアルコキシ基であってもよい。またこれらの好ましい基は、炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有していてもよい。またこれらの好ましい基は、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む置換基を有していてもよい。該置換基としては、ヒドロキシル基、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アミド基(カルボニルアミノ基)、カルバメート基(オキシカルボニルアミノ基)、ニトロ基、カルボキシル基、エステル基(アシルオキシ基またはアルコキシカルボニル基)、チオエーテル基、及びシリル基等が例示できる。これらの基は更にアルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。例えばアミノ基(−NH2)はモノアルキルアミノ基(−NHR)、モノアリールアミノ基(−NHAr)、ジアルキルアミノ基(−NR2)、またはジアリールアミノ基(−NAr2)であってもよい。
これらのA1及びA2の組み合わせを有する化合物(11)としては、入手容易性の点で、下記式に示すものが好ましく例示できる。なお、下記式中、Cyとはシクロヘキシル基を意味する。
具体的には、化合物(11)においてMがルテニウムの場合、下記式(11−A)で表すことができる。式(11)における配位子[L]は式(11−A)においてL1、L2、L3、Z11及びZ12で表される。L1、L2、L3、Z11及びZ12の位置に限定はなく、式(11−A)において互いに入れ替わっていてもよい。すなわち例えばZ11及びZ12はトランス位にあっても、シス位にあってもよい。
式(11−A)中、L1、L2及びL3はそれぞれ独立して、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子(中性の電子供与性配位子)である。具体的には、カルボニル基、アミン類、イミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエーテル類、スルホキシド類、スルホン類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類、ヘテロ原子含有カルベン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ホスフィン類、ピリジン類、ヘテロ原子含有カルベン化合物が好ましく、トリアルキルホスフィンやN−ヘテロ環状カルベン化合物がより好ましい。
ただし前記配位子の組み合わせによっては、立体的要因及び/又は電子的要因により、すべての配位子が中心金属に配位できず、結果としていくつかの配位座が空になる場合もある。例えば、L1、L2及びL3としては下記組合せが挙げられる。L1:ヘテロ原子含有カルベン化合物、L2:ホスフィン類、L3:なし(空配位)。L1:ヘテロ原子含有カルベン化合物、L2:ピリジン類、L3:ピリジン類
ただし前記配位子の組み合わせによっては、立体的要因及び/又は電子的要因により、すべての配位子が中心金属に配位できず、結果としていくつかの配位座が空になる場合もある。例えば、L1、L2及びL3としては下記組合せが挙げられる。L1:ヘテロ原子含有カルベン化合物、L2:ホスフィン類、L3:なし(空配位)。L1:ヘテロ原子含有カルベン化合物、L2:ピリジン類、L3:ピリジン類
式(11−A)中、Z11及びZ12はそれぞれ独立して、中心金属から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子(アニオン性配位子)である。具体的には、ハロゲン原子、水素原子、置換ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が5〜20のアリール基、炭素数が1〜20の置換アルコキシ基、炭素数が5〜20の置換アリールオキシ基、炭素数が1〜20の置換カルボキシレート基、炭素数が6〜20の置換アリールカルボキシレート基、炭素数が1〜20の置換アルキルチオレート基、炭素数炭素数が6〜20の置換アリールチオレート基及びナイトレート基等が挙げられる。中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
式(11−A)中、A1及びA2は式(11)におけるA1及びA2とそれぞれ同様である。
また、L1、L2、L3、Z11、Z12、A1及びA2のうち2〜6個で互いに結合し、多座配位子を形成してもよい。
また、L1、L2、L3、Z11、Z12、A1及びA2のうち2〜6個で互いに結合し、多座配位子を形成してもよい。
上記触媒は一般的に「ルテニウム−カルベン錯体」と称されるものであり、例えばVougioukalakis,G.C.et al.,Chem.Rev.,2010,110,1746−1787.に記載されているルテニウム−カルベン錯体を利用することができる。また、例えばAldrich社やUmicore社から市販されているルテニウム−カルベン錯体を利用することができる。
ルテニウム−カルベン錯体の具体例としては、ビス(トリフェニルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)−3−メチル−2−ブテニリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2−メチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ジシクロヘキシル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[ビス(3−ブロモピリジン)]ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(2−イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPr等が挙げられ、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)(2−イソプロポキシフェニルメチリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデン)[(トリシクロヘキシルホスホラニル)メチリデン]ジクロロルテニウムテトラフルオロボラート、UmicoreM2、UmicoreM51、UmicoreM52、UmicoreM71SIMes、UmicoreM71SIPr、UmicoreM73SIMes、UmicoreM73SIPrが特に好ましい。なお上記錯体のうち、「Umicore」で始まる名称は、Umicore社の製品の商品名である。
なお、上記ルテニウム−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
なお、上記ルテニウム−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
化合物(11)においてMがモリブデン又はタングステンの場合、下記式(11−B)または式(11−C)で表すことができる。
また化合物(11)としては、これらにさらに配位性溶媒(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等)が配位していてもよい。
また化合物(11)としては、これらにさらに配位性溶媒(テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等)が配位していてもよい。
式(11)における配位子[L]は式(11−B)において=NR1、−R4、−R5で表される。=NR1、−R4、−R5の位置に限定はなく、式(11−B)において互いに入れ替わっていてもよい。Mは、モリブデンまたはタングステンであり、R1としては、アルキル基、アリール基等が例示できる。R4、R5としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホネート基、アミノ基(アルキルアミノ基、η1−ピロリド、η5−ピロリド等)等が例示できる。R4とR5は連結して二座配位子となっていてもよい。
また式(11−C)は、式(11−B)で表わされる化合物の金属−炭素二重結合部分に、オレフィン(C2(R6)4)が環化付加([2+2] cycloaddition)して、メタラシクロブタン環を形成した化合物である。ただし4個のR6は互いに同じでも異なっていてもよい一価の官能基であり、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基等が例示できる。式(11−C)で表わされる化合物は、式(11−B)で表わされる化合物と等価と考える。
式(11−B)及び式(11−C)中、A1及びA2は式(11)におけるA1及びA2とそれぞれ同様である。
式(11−B)及び式(11−C)中、A1及びA2は式(11)におけるA1及びA2とそれぞれ同様である。
上記触媒は一般的に「モリブデン−カルベン錯体」「タングステン−カルベン錯体」と称されるものであり、例えばGrela,K.(Ed)Olefin Metathesis:Theory and Practice,Wiley,2014.に記載されているモリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体を利用することができる。また、例えばAldrich社やStrem社から市販されているモリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体を利用することができる。
なお、上記モリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
なお、上記モリブデン−カルベン錯体又はタングステン−カルベン錯体は、単独で用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。さらに必要に応じてシリカゲルやアルミナ、ポリマー等の担体に担持して用いてもよい。
化合物(11−B)の具体例を下記に示す。なお、Meとはメチル基を、i−Prとはイソプロピル基を、t−Buとはターシャリーブチル基を、Phとはフェニル基を、それぞれ意味する。
化合物(11−C)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
<アセチレン>
原料として用いる化合物(21)におけるR11及びR12は、前記定義と同様である。
すなわち化合物(21)におけるR11及びR12はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基からなる群より選ばれる官能基であるが、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜8の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜8のアリール基が入手容易性の点から好ましい。
化合物(21)の具体例としては、より好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
原料として用いる化合物(21)におけるR11及びR12は、前記定義と同様である。
すなわち化合物(21)におけるR11及びR12はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基からなる群より選ばれる官能基であるが、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜8の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜8のアリール基が入手容易性の点から好ましい。
化合物(21)の具体例としては、より好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
<含フッ素オレフィン>
原料として用いる化合物(31)におけるRF’、X11、X12及びX13は、それぞれ前記定義と同様である。すなわち、化合物(31)におけるRF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基であり、X11〜X13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。化合物(31)は末端及び内部オレフィンのどちらも利用することができる。
原料として用いる化合物(31)におけるRF’、X11、X12及びX13は、それぞれ前記定義と同様である。すなわち、化合物(31)におけるRF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基であり、X11〜X13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。化合物(31)は末端及び内部オレフィンのどちらも利用することができる。
RF’は炭素数1〜8のペルフルオロアルキル基が入手容易性の点から好ましく、X11〜X13は水素原子、フッ素原子または塩素原子が入手容易性の点から好ましい。RF’とX11〜X13の組み合わせとしては、好ましくはRF’が炭素数6〜8のペルフルオロアルキル基、X11〜X13が水素原子である。
原料として用いる化合物(32)におけるA11及びA12は、それぞれ前記定義と同様である。すなわち、化合物(32)におけるA11及びA12はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の一価炭化水素基、並びに、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基からなる群から選ばれる官能基である。A11及びA12は互いに結合して環を形成してもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が入手容易性の点から好ましい。
炭素数1〜20の一価炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数5〜20のアリール基、または炭素数5〜20のアリールオキシ基が好ましく、特にメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、(2−エチル)ヘキシルオキシ基、またはドデシルオキシ基が入手容易性の点から好ましい。また、炭化水素基骨格としては直鎖状、分岐状、又は環状でもよい。
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基としては、当該原子を含む炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、当該原子を含む炭素数5〜20のアリール基、炭素数5〜20のアリールオキシ基が好ましい。
炭素数1〜20の一価炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数5〜20のアリール基、または炭素数5〜20のアリールオキシ基が好ましく、特にメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、(2−エチル)ヘキシルオキシ基、またはドデシルオキシ基が入手容易性の点から好ましい。また、炭化水素基骨格としては直鎖状、分岐状、又は環状でもよい。
ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基としては、当該原子を含む炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、当該原子を含む炭素数5〜20のアリール基、炭素数5〜20のアリールオキシ基が好ましい。
化合物(31)または化合物(32)において、二重結合上の置換基の数に特に限定はないが、ハロゲン化エチレン、一置換オレフィン、1,1−二置換オレフィン、1,2−二置換オレフィンが高い反応性を有する点で好ましい。また二重結合上の幾何異性も特に限定はない。
化合物(31)または化合物(32)の具体例としては、より好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。なお本明細書において、波線はE/Zの異性体のうち、いずれか一方または両方の混合物であることを意味する。
化合物(31)または化合物(32)の具体例としては、より好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。なお本明細書において、波線はE/Zの異性体のうち、いずれか一方または両方の混合物であることを意味する。
上記式中のRPFは炭素数1〜12のペルフルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12のペルフルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基であり、ORFは炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルコキシ基からなる群より選ばれる官能基である。
化合物(22)は分子内に炭素−炭素二重結合(オレフィンユニット)と炭素−炭素三重結合(アセチレンユニット)を共に有する化合物である。そのため、化合物(22)を原料化合物とした場合には分子内でエンインメタセシス反応が起こり、含フッ素ジエンを得ることができる。
化合物(22)において、RF’、X14、R13及びZは、それぞれ前記定義と同様である。すなわち、化合物(22)におけるRF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基であり、X14は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基であり、R13は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数5〜20のアリール基からなる群より選ばれる官能基であり、Zは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基からなる群より選ばれる官能基であり、前記炭素数1〜20のアルキレン基及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基及びエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1の置換基を有していてもよい。
化合物(22)において、RF’、X14、R13及びZは、それぞれ前記定義と同様である。すなわち、化合物(22)におけるRF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基であり、X14は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基であり、R13は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数5〜20のアリール基からなる群より選ばれる官能基であり、Zは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基からなる群より選ばれる官能基であり、前記炭素数1〜20のアルキレン基及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基及びエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1の置換基を有していてもよい。
RF’は炭素数1〜10のペルフルオロアルキル基が反応性の点から好ましく、X14は水素原子が反応性の点から好ましい。R13は水素原子が反応性の点から好ましく、Zは炭素数3〜5のアルキレン基が反応性の点から好ましい。RF’、X14、R13及びZの組み合わせとしては、好ましくはRF’が炭素数4〜8のペルフルオロアルキル基、X14が水素原子、R13が水素原子、Zが炭素数4のアルキレンであり、より好ましくはRF’が炭素数8のペルフルオロアルキル基、X14が水素原子、R13が水素原子、Zが炭素数4のアルキレンである。
化合物(22)において、二重結合上の置換基の数に特に限定はないが、一置換オレフィン、1,2−二置換オレフィンが高い反応性を有する点で好ましい。また二重結合上の幾何異性も特に限定はない。
なお、上述した化合物(21)、化合物(22)、化合物(31)及び化合物(32)をまとめて、以後「原料化合物」と称することがある。
<含フッ素ジエン>
本発明のエンインメタセシスにより得られる含フッ素ジエン化合物は、含フッ素オレフィンとアセチレンとの分子間でエンインメタセシス反応させた場合には、下記に示す化合物(51)〜化合物(58)からなる群より選ばれる少なくとも1の化合物が得られる。また、化合物(22)を用いて分子内でエンインメタセシス反応させた場合には、下記に示す化合物(61)が生成する。
本発明のエンインメタセシスにより得られる含フッ素ジエン化合物は、含フッ素オレフィンとアセチレンとの分子間でエンインメタセシス反応させた場合には、下記に示す化合物(51)〜化合物(58)からなる群より選ばれる少なくとも1の化合物が得られる。また、化合物(22)を用いて分子内でエンインメタセシス反応させた場合には、下記に示す化合物(61)が生成する。
化合物(51)〜化合物(58)または化合物(61)の具体例としては、より好ましくは、下記に示す化合物が挙げられる。
<製造方法>
本発明はエンインメタセシスによる含フッ素ジエンの製造方法に関するものであり、典型的には、含フッ素オレフィンとアセチレンとを金属−カルベン錯体存在下接触させることによって、または、分子内に含フッ素オレフィン構造とアセチレン構造とを有する分子を金属−カルベン錯体存在下接触させることによって、エンインメタセシスを行い、含フッ素ジエンを得るものである。
本発明はエンインメタセシスによる含フッ素ジエンの製造方法に関するものであり、典型的には、含フッ素オレフィンとアセチレンとを金属−カルベン錯体存在下接触させることによって、または、分子内に含フッ素オレフィン構造とアセチレン構造とを有する分子を金属−カルベン錯体存在下接触させることによって、エンインメタセシスを行い、含フッ素ジエンを得るものである。
原料となるアセチレンである上述の式(21)で表される化合物は、末端及び内部アセチレンのどちらも利用することができる。目的物収率向上の点で、原料となるオレフィンは脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。原料となるオレフィンについて、前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
また原料となるオレフィンは微量の不純物(例えば過酸化物等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
また原料となるオレフィンは微量の不純物(例えば過酸化物等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
原料となる含フッ素オレフィンのうち、上述の式(31)で表される化合物は、末端及び内部オレフィンのどちらも利用することができる。上述の式(32)で表される化合物は、末端オレフィンである。これらは二重結合上の置換基の数に特に限定はないが、エチレン、一置換オレフィン、1,2−二置換オレフィンが高い反応性を有する点で好ましい。また二重結合上の幾何異性も特に限定はない。目的物収率向上の点で、原料となるオレフィンは脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。原料となるオレフィンについて、前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
また原料となるオレフィンは微量の不純物(例えば過酸化物等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
また原料となるオレフィンは微量の不純物(例えば過酸化物等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
分子内でエンインメタセシス反応を行う場合の原料となる、上述の式(22)で表される化合物は、オレフィンユニットが末端及び内部のどちらにあっても利用することができ、また、アセチレンユニットが末端及び内部のどちらにあっても利用することができる。目的物収率向上の点で、原料となる化合物は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。原料となる化合物について、前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
また原料となる化合物は微量の不純物(例えば過酸化物等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
また原料となる化合物は微量の不純物(例えば過酸化物等)を含むことがあるので、目的物収率向上の点で精製してもよい。精製方法については特に制限はない。例えば文献(Armarego,W.L.F.et al.,Purification of Laboratory Chemicals(Sixth Edition),2009,Elsevier)記載の方法に従って行うことができる。
原料となる化合物が2種以上存在する場合、すなわち分子間でエンインメタセシス反応を行う場合には、それら原料化合物は、反応容器にあらかじめ混合してから投入しても、別々に投入しても構わない。含フッ素オレフィンを金属−カルベン錯体と接触させて得られた混合物に、アセチレンを接触させる場合もある。
原料となる含フッ素オレフィンとアセチレンのモル比に特に限定はないが、通常基準となる含フッ素オレフィン1モルに対して、もう一方のアセチレンを0.01〜100モル程度用い、好ましくは0.1〜10モル程度用いる。
原料となる含フッ素オレフィンとアセチレンのモル比に特に限定はないが、通常基準となる含フッ素オレフィン1モルに対して、もう一方のアセチレンを0.01〜100モル程度用い、好ましくは0.1〜10モル程度用いる。
金属−カルベン錯体は試薬として投入しても、系内で発生させてもよい。
試薬として投入する場合、市販の金属−カルベン錯体をそのまま用いてもよく、あるいは市販試薬から公知の方法で合成した市販されていない金属−カルベン錯体を用いてもよい。
系内で発生させる場合、公知の方法で前駆体となる金属錯体から調製した金属−カルベン錯体を本発明に用いることができる。
試薬として投入する場合、市販の金属−カルベン錯体をそのまま用いてもよく、あるいは市販試薬から公知の方法で合成した市販されていない金属−カルベン錯体を用いてもよい。
系内で発生させる場合、公知の方法で前駆体となる金属錯体から調製した金属−カルベン錯体を本発明に用いることができる。
用いる金属−カルベン錯体の量としては、特に制限はないが、原料となる含フッ素オレフィン1モルに対して、通常0.0001〜1モル程度用い、好ましくは0.001〜0.2モル程度用いる。
用いる金属−カルベン錯体は、通常固体のまま反応容器に投入するが、溶媒に溶解又は懸濁させて投入してもよい。この時用いる溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさない範囲で特に制限はなく、有機溶媒、含フッ素有機溶媒、イオン液体、水等を単独又は混合して用いることができる。なお、これらの溶媒分子中、一部又はすべての水素原子が重水素原子で置換されていてもよい。
有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−,m−,p−キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、グライム、ジグライム等のエーテル系溶媒等を使用することができる。含フッ素有機溶媒としては、例えば、ヘキサフルオロベンゼン、m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン、ジクロロペンタフルオロプロパン等を使用することができる。イオン液体としては、例えば、各種ピリジニウム塩、各種イミダゾリウム塩等を用いることができる。上記溶媒の中でも、金属−カルベン錯体の溶解性等の点で、ベンゼン、トルエン、o−,m−,p−キシレン、メシチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ジエチルエーテル、ジオキサン、THF(テトラヒドロフラン)、ヘキサフルオロベンゼン、m−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、α,α,α−トリフルオロメチルベンゼン等、及びこれらの混合物が好ましい。
なお、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
なお、目的物収率向上の点で、前記溶媒は脱気及び脱水されたものを用いることが好ましい。脱気操作について、特に制限はないが、凍結脱気等を行うことがある。脱水操作について、特に制限はないが、通常モレキュラーシーブ等と接触させる。前記脱気及び脱水操作は通常金属−カルベン錯体と接触させる前に行う。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる雰囲気としては、特に限定はないが、触媒の長寿命化の点で、不活性気体雰囲気下が好ましく、中でも窒素又はアルゴン雰囲気下が好ましい。ただし、反応条件において気体となる化合物を原料として用いる場合、これらの気体雰囲気下で行うことができる。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる相としては、特に制限はないが、反応速度の点で、通常は液相が用いられる。原料となる化合物が反応条件下で気体の場合、液相で実施するのが難しいため、気−液二相で実施することもできる。なお、液相で実施する場合には溶媒を用いることができる。このとき用いる溶媒としては、上記、金属−カルベン錯体の溶解又は懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用することができる。なお、原料となる化合物が2種以上ある場合であって、それら化合物のうち少なくとも一方が反応条件下で液体の場合、無溶媒で実施できることがある。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる相としては、特に制限はないが、反応速度の点で、通常は液相が用いられる。原料となる化合物が反応条件下で気体の場合、液相で実施するのが難しいため、気−液二相で実施することもできる。なお、液相で実施する場合には溶媒を用いることができる。このとき用いる溶媒としては、上記、金属−カルベン錯体の溶解又は懸濁に用いた溶媒と同様のものを利用することができる。なお、原料となる化合物が2種以上ある場合であって、それら化合物のうち少なくとも一方が反応条件下で液体の場合、無溶媒で実施できることがある。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる容器としては、反応に悪影響を与えない範囲で特に制限はなく、例えば金属製容器又はガラス製容器等を用いることができる。なお、本発明にかかるエンインメタセシスは反応条件下、気体状態のオレフィン及び/またはアセチレンを扱うことがあるので、高気密が可能な耐圧容器が好ましい。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる温度としては、特に制限はないが、通常−100〜200℃の範囲で実施することができ、反応速度の点で、0〜150℃が好ましい。なお、低温では反応が開始せず、高温では錯体の速やかな分解が生じることがあるので適宜温度の下限と上限を設定する必要がある。通常、用いる溶媒の沸点以下の温度で実施される。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる時間としては、特に制限はないが、通常1分〜48時間の範囲で実施される。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる圧力としては、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001〜10MPa程度、好ましくは0.01〜1MPa程度である。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる時間としては、特に制限はないが、通常1分〜48時間の範囲で実施される。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる圧力としては、特に制限はないが、加圧下でも、常圧下でもよいし、減圧下でもよい。通常0.001〜10MPa程度、好ましくは0.01〜1MPa程度である。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させる際に、反応に悪影響を及ぼさない範囲で無機塩や有機化合物、金属錯体等を共存させてもよい。エチレンを添加することにより、反応速度が加速する場合がある。エチレンを添加する場合、基準となる含フッ素オレフィン1モルに対して0.0001〜1モルであることが好ましい。
また、反応に悪影響を及ぼさない範囲で、原料化合物と金属−カルベン錯体の混合物を攪拌してもよい。このとき、攪拌の方法としては、メカニカルスターラーやマグネティックスターラー等を用いることができる。
また、反応に悪影響を及ぼさない範囲で、原料化合物と金属−カルベン錯体の混合物を攪拌してもよい。このとき、攪拌の方法としては、メカニカルスターラーやマグネティックスターラー等を用いることができる。
原料化合物と金属−カルベン錯体を接触させた後、目的物は通常複数の含フッ素ジエンの混合物として得られるため、公知の方法で単離してもよい。単離方法としては、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィー、リサイクル分取HPLC等が挙げられ、必要に応じてこれらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。
本反応で得られた目的物は通常の有機化合物と同様の公知の方法で同定することができる。例えば、1H−、19F−、13C−NMRやGC−MS等が挙げられ、必要に応じてこれらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。<市販試薬>
本実施例において、触媒は、特に記載しない場合においては、市販品をそのまま反応に用いた。溶媒(m−キシレン−d10)及び内部標準物質(p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)は、市販品をあらかじめ凍結脱気したあと、モレキュラーシーブ4Aで乾燥してから反応に用いた。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置(JNM−AL300)により1H−NMR、19F−NMR測定を行うことで同定した。また、分子量は株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS−QP2010Ultra)を用いて、電子イオン化法(EI)により求めた。
本実施例において、触媒は、特に記載しない場合においては、市販品をそのまま反応に用いた。溶媒(m−キシレン−d10)及び内部標準物質(p−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)は、市販品をあらかじめ凍結脱気したあと、モレキュラーシーブ4Aで乾燥してから反応に用いた。
<評価方法>
本実施例において、合成した化合物の構造は日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置(JNM−AL300)により1H−NMR、19F−NMR測定を行うことで同定した。また、分子量は株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS−QP2010Ultra)を用いて、電子イオン化法(EI)により求めた。
<実施例1>
UmicoreM73SIPr触媒による4−フェニル−1−ブチンとC8F17−CH=CH2のエンインメタセシス
窒素雰囲気下、4−フェニル−1−ブチン(0.1mmol、0.014mL)、UmicoreM73SIPr触媒(50mol%、0.05mmol)、C8F17−CH=CH2(0.2mmol、0.053mL、2mmol等量)及びm−キシレン−d10(0.6mL)をNMR測定管の中に量り入れた。NMR管を140℃で加熱し、その温度で3時間反応させた。反応終了後、NMR及びGC−MSを測定して下記に示す生成物A及び/又は生成物Bの生成を確認した。
これら一連の反応を以下に示す。
UmicoreM73SIPr触媒による4−フェニル−1−ブチンとC8F17−CH=CH2のエンインメタセシス
窒素雰囲気下、4−フェニル−1−ブチン(0.1mmol、0.014mL)、UmicoreM73SIPr触媒(50mol%、0.05mmol)、C8F17−CH=CH2(0.2mmol、0.053mL、2mmol等量)及びm−キシレン−d10(0.6mL)をNMR測定管の中に量り入れた。NMR管を140℃で加熱し、その温度で3時間反応させた。反応終了後、NMR及びGC−MSを測定して下記に示す生成物A及び/又は生成物Bの生成を確認した。
これら一連の反応を以下に示す。
生成物A、生成物BのGC−MS(CI):=577(M+H+).
<実施例2>
UmicoreM73SIPr触媒による4−フェニル−1−ブチンとテトラフルオロエチレンのエンインメタセシス
窒素雰囲気下、4−フェニル−1−ブチン(0.04mmol、0.0056mL)、UmicoreM73SIPr触媒(100mol%、0.04mmol)、テトラフルオロエチレン(0.12mmol、3mol等量)及びm−キシレン−d10(0.6mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を140℃で加熱し、その温度で1時間反応させる。反応終了後、NMR及びGC−MSを測定して所期の反応進行を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
UmicoreM73SIPr触媒による4−フェニル−1−ブチンとテトラフルオロエチレンのエンインメタセシス
窒素雰囲気下、4−フェニル−1−ブチン(0.04mmol、0.0056mL)、UmicoreM73SIPr触媒(100mol%、0.04mmol)、テトラフルオロエチレン(0.12mmol、3mol等量)及びm−キシレン−d10(0.6mL)をNMR測定管の中に量り入れる。NMR管を140℃で加熱し、その温度で1時間反応させる。反応終了後、NMR及びGC−MSを測定して所期の反応進行を確認する。
これら一連の反応を以下に示す。
本発明によれば、含フッ素オレフィンとアセチレンとのエンインメタセシス反応により、含フッ素ジエンを簡便かつ効率的に製造することができる。
Claims (5)
- オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、下記式(21)で表される化合物と下記式(31)で表される化合物または下記式(32)で表される化合物とを反応させることにより、下記式(51)で表される化合物、下記式(52)で表される化合物、下記式(53)で表される化合物、下記式(54)で表される化合物、下記式(55)で表される化合物、下記式(56)で表される化合物、下記式(57)で表される化合物、及び、下記式(58)で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を製造する方法。
A11及びA12はそれぞれ独立して、下記官能基(i)、官能基(ii)、官能基(iii)、及び官能基(iv)からなる群から選ばれる官能基である。A11及びA12は互いに結合して環を形成してもよい。
官能基(i):水素原子。
官能基(ii):ハロゲン原子。
官能基(iii):炭素数1〜20の一価炭化水素基。
官能基(iv):ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子、及びケイ素原子からなる群から選ばれる原子を1以上含む炭素数1〜20の一価炭化水素基。
R11及びR12はそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15の(ペル)フルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数5〜20のアリール基及び炭素数5〜20の(ペル)ハロゲン化アリール基からなる群より選ばれる官能基である。
RF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
X11〜X13はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。 - オレフィンメタセシス反応活性を有する金属−カルベン錯体化合物(10)の存在下、下記式(22)で表される化合物を反応させることにより、下記式(61)で表される化合物を製造する方法。
ただし、式中の記号は以下の意味を表す。
R13は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1〜15のペルフルオロアルキル基、炭素数1〜12のアルキル基及び炭素数5〜20のアリール基からなる群より選ばれる官能基である。
RF’はフッ素原子、炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基及び炭素原子と炭素原子の間にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜20の(ペル)フルオロアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
X14は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の(ペル)ハロゲン化アルキル基及び炭素数1〜12のアルキル基からなる群より選ばれる官能基である。
Zは単結合、炭素数1〜20のアルキレン基、及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基からなる群より選ばれる官能基であり、前記炭素数1〜20のアルキレン基及びヘテロ原子を含む炭素数1〜20のアルキレン基は、ハロゲン原子、ヒドロキシル基及びエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1の置換基を有していてもよい。 - 前記金属−カルベン錯体化合物(10)における金属が、ルテニウム、モリブデンまたはタングステンである、請求項1または2に記載の化合物を製造する方法。
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