JP2016141842A - 高強度アルミニウム合金板 - Google Patents

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Abstract

【課題】曲げ加工性を阻害せずに高強度化させた、骨格材あるいはパ補強材などの構造材用途の6000系アルミニウム合金板を提供する。
【解決手段】Al−Mg−Si系アルミニウム合金板の、MgとSiの含有量を、(Mg含有量)+(Si含有量)≧1.5%、かつ0.6≦(Mg含有量)/(Si含有量)≦2.0を満たすようバランスさせ、図1に示す、この板の示差走査熱分析曲線において、230〜330℃の温度範囲内に特定高さの発熱ピークを1つだけ存在させるような組織として、室温時効後でも、曲げ加工性を阻害せずにBH後の高強度化を図る。
【選択図】図1

Description

本発明はAl−Mg−Si系アルミニウム合金板に関するものである。本発明で言うアルミニウム合金板とは、熱間圧延板や冷間圧延板などの圧延板で、溶体化処理および焼入れ処理などの調質が施された後であって、使用される部材に、曲げ加工や塗装焼付硬化処理される前のアルミニウム合金板を言う。また、以下の記載ではアルミニウムをアルミやAlとも言う。
近年、地球環境などへの配慮から、自動車等の車両の軽量化の社会的要求はますます高まってきている。かかる要求に答えるべく、自動車の材料として、鋼板等の鉄鋼材料にかえて、成形性や塗装焼付硬化性(ベークハード性、以下BH性とも言う)に優れた、より軽量なアルミニウム合金材の適用が増加しつつある。
自動車のアウタパネル、インナパネルなどの大型パネル材用のアルミニウム合金板としては、代表的にはAl−Mg−Si系のAA乃至JIS 6000系(以下、単に6000系とも言う)アルミニウム合金板が例示される。この6000系アルミニウム合金板は、Si、Mgを必須として含む組成を有し、成形時には低耐力(低強度)で成形性を確保し、成形後のパネルの塗装焼付処理などの人工時効(硬化)処理時の加熱により耐力(強度)が向上し、必要な強度を確保できる、塗装焼付硬化性が優れている。
自動車車体の更なる軽量化のためには、自動車部材のうちでも、前記パネル材を除く、フレーム、ピラーなどの骨格材あるいは、バンパ補強材、ドアビームなどの補強材などの自動車構造部材にアルミニウム合金材料の適用を拡大することが望まれる。
ただ、これら自動車構造部材は、前記自動車パネルに比べて一層の高強度化が必要である。このため、前記自動車パネル材に使用されている6000系アルミニウム合金板を、これら骨格材あるいは補強材に適用するためには、更に高強度化する必要がある。
しかし、このような高強度化を、従来の6000系アルミニウム合金板の組成や製造条件を大きく変えることなく、また曲げ加工性などを阻害せずに達成することは、そうたやすいことではない。
従来から、BH性など、前記パネル材としての6000系アルミニウム合金板の特性を向上させるために、板のミクロな組織として、Mg−Si系クラスタを制御することが、種々提案されている。そして、これらMg−Si系クラスタを、6000系アルミニウム合金板の示差走査熱分析曲線(示差走査熱量分析曲線とも言い、以下、DSCとも言う)の吸熱ピークや発熱ピークにて制御する技術も、種々提案されている。
例えば、特許文献1では、過剰Si型の6000系アルミニウム合金材の溶体化および焼入れ処理を含む調質処理後のDSCにおいて、Si/空孔クラスタ(GPI)の溶解に相当する150〜250℃の温度範囲におけるマイナスの吸熱ピーク高さが1000μW以下であり、かつMg/Siクラスタ(GPII)の析出に相当する250〜300℃の温度範囲におけるプラスの発熱ピーク高さを2000μW以下とすることが提案されている。このアルミニウム合金材は、室温時効を抑制した上で、2%のひずみ付与後150℃×20分の低温時効処理時の耐力が180MPa以上である。
特許文献2では、低温短時間のBH性を得るため、6000系アルミニウム合金板の調質処理後のDSCにおいて、100〜200℃の温度範囲における発熱ピーク高さW1を50μW以上とし、かつ、200〜300℃の温度範囲における発熱ピーク高さW2と、前記発熱ピーク高さW1との比W2/W1を20.0以下とすることが提案されている。
特許文献3では、DSCにおいて、BH性に特に関わる、特定の温度範囲における発熱ピーク高さを3つ(3箇所)選択して各々制御し、BH性(焼き付け塗装硬化特性)を高めることが提案されている。この3つの発熱ピークとは、230〜270℃のピークA、280〜320℃のピークB、330〜370℃のピークCである。その実施例表3の発明例27(表1の合金番号9)では、前記ピークBの高さを20μW/mg以上、最大で31μW/mg程度とすることで、前記ピークの比A/Bを0.45以下、C/Bを0.6以下とすることとも合わせて、2%のひずみ付与後に170℃×20分の人工硬化処理を施した際の0.2%耐力を最大で259MPa程度としている。
特開2003−27170号公報 特許第4117243号公報 特開2013−167004号公報
これら従来のDSCの吸熱ピークや発熱ピークの制御では、前記パネル材を用途としており、成形性を高くするために、塗装前の強度を低く制御しているため、塗装時の硬化量(BH性)を高くしても、BH後の強度が、0.2%耐力で260MPa未満程度であり、前記パネル材を除く、前記骨格材あるいは補強材としては、強度が不足している。
また、前記骨格材あるいは補強材としては、前記パネル材のような高いプレス成形性は不要ではあるものの、素材板を前記骨格材あるいは補強材への加工の際には、主として曲げ加工されるため、V曲げ加工にて割れない程度の曲げ加工性は要求される。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、前記骨格材あるいは補強材用として、従来の6000系アルミニウム合金板の組成や製造条件を大きく変えることなく製造でき、部材へも加工できる、高強度な6000系アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
この目的を達成するために、本発明の高強度アルミニウム合金板の要旨は、質量%で、Mg:0.6〜2.0%、Si:0.6〜2.0%、Fe:0.5%以下(但し、0%を含まず)を各々含み、かつ(Mg含有量)+(Si含有量)≧1.5%、かつ0.6≦(Mg含有量)/(Si含有量)≦2.0を満たし、残部がAl及び不可避不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、この板の示差走査熱分析曲線において、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが1つだけ存在し、この発熱ピークの高さが30〜70μW/mgの範囲であることとする。
本発明では、従来のアルミニウム合金組成や製造条件を大きく変えないことを前提に、6000系アルミニウム合金板の組成と前記DSCの発熱ピークの傾向とを見直した。この結果、特定の温度範囲内の発熱ピークの個数と高さを特定の範囲として、BH時の析出相の発生挙動を制御することで、室温時効後でも、曲げ加工性を低下させずに、185℃×20分のBH後の0.2%耐力を260MPa以上、好ましくは280MPa以上、より好ましくは300MPa以上とできることを知見した。
6000系アルミニウム合金板のBH時の析出相の発生挙動をDSCによって模擬すると、強化相1(β'')や強化相2(β’)の析出の発熱ピークは、自動車用パネルとして使用される通常の6000系アルミニウム合金板では、230〜330℃の範囲で、互いにより広く離れて存在する。
これに対して、本発明では、Mg、Siの組成や製造方法を複合的に工夫することで、強化相1(β'')や強化相2(β’)の析出の発熱ピークを分離させずに、互いの発熱ピークが重なり合うように制御する。これによって、β’’に加えてβ’も塗装焼付処理(BH)時に多く生成させることができ、この結果、塗装焼付処理後(BH後)の強度を著しく高くできる。
このため、本発明は、自動車パネル材よりも高強度な、自動車などの骨格材用あるいは補強材用としての、要求強度を満たすことができる。
実施例における代表的な例のDSCを示す説明図である。
以下に、本発明の実施の形態につき、要件ごとに具体的に説明する。
(化学成分組成)
先ず、本発明のAl−Mg−Si系(以下、6000系とも言う)アルミニウム合金板の化学成分組成について、以下に説明する。本発明では、前記パネル材を除く、前記骨格材あるいは補強材用として、従来の組成や製造条件を大きく変えることなく、曲げ加工性を低下させずに、高強度化する。
このような課題を組成の面から満たすようにするため、6000系アルミニウム合金板の組成は、質量%で、Mg:0.6〜2.0%、Si:0.6〜2.0%、Fe:0.5%以下(但し、0%を含まず)を各々含み、かつ(Mg含有量)+(Si含有量)≧1.5%、かつ0.6≦(Mg含有量)/(Si含有量)≦2.0を満たし、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとする。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
上記6000系アルミニウム合金における、各元素の含有範囲と意義、あるいは許容量について以下に説明する。
Si:0.6〜2.0%
Siは、Mgとともに、塗装焼き付け処理などの人工時効処理時に、強度向上に寄与する時効析出物を形成して、人工時効硬化能を発揮し、前記骨格材あるいは補強材用としての必要な強度(耐力)を得るための必須の元素である。Si含有量が少なすぎると、人工時効処理後の時効析出物量が少なくなりすぎて、強度が低くなってしまう。一方、Si含有量が多すぎると、板の製造時に熱延割れを生じやすくなる。また、粗大な晶出物および析出物が形成されて、曲げ加工性も著しく低下する。したがって、Siの含有量は0.6〜2.0%の範囲とする。
Mg:0.6〜2.0%
Mgも、Siとともに強度向上に寄与する時効析出物を形成して、人工時効硬化能を発揮し、高い強度(耐力)を得るための必須の元素である。Mg含有量が少なすぎると、人工時効処理後の析出物の析出量が少なくなりすぎて、強度が低くなってしまう。一方、Mg含有量が高すぎると、板の製造時に熱延割れを生じやすくなる。また、粗大な晶出物および析出物が形成されて、曲げ加工性も著しく低下する。したがって、Mgの含有量は0.6〜2.0%の範囲とする。
(Mg含有量)+(Si含有量)≧1.5%
0.6≦(Mg含有量)/(Si含有量)≦2.0
MgとSiとの合計含有量である(Mg含有量)+(Si含有量)と、MgのSiに対する含有量の比である(Mg含有量)/(Si含有量)は、ともに、6000系アルミニウム合金板の組織として、この板の示差走査熱分析曲線における、Mg/Siクラスタ(GPII)の析出に相当する230〜330℃の温度範囲内の発熱ピークの数と高さとに大きく影響する。
後述する適切な製造方法をとることを前提に、(Mg含有量)+(Si含有量)を1.5%以上、(Mg含有量)/(Si含有量)を0.6〜2.0の範囲とすることによって、230〜330℃の温度範囲内の発熱ピークを1つだけ存在させることができ、この発熱ピークの高さを30〜70μW/mgの範囲とすることができる。
このために、(Mg含有量)+(Si含有量)は、1.5%以上の、できるだけ大きい方が好ましく、(Mg含有量)+(Si含有量)が1.5%未満では、230〜330℃の温度範囲内に存在する発熱ピークを1つだけとすることができないか、この発熱ピークの高さを30〜70μW/mgの範囲とすることができない。このため、室温時効後で、BH後の強度を、少なくとも260MPa以上、好ましくは280MPa以上、より好ましくは300MPa以上に、高強度化できなくなる。
(Mg含有量)+(Si含有量)の上限は、前記した板を熱延割れを生じずに製造できる限度量によって決まり、(Mg含有量)+(Si含有量)の上限は、好ましくは2.5%とする。
(Mg含有量)/(Si含有量)は、2.0以下の、できるだけ小さい方が好ましく、2.0を超えて大きくなりすぎると、後述する適切な製造条件によっても、規定範囲内にDSCの発熱ピークを制御することが難しくなる。すなわち、230〜330℃の温度範囲内に存在する発熱ピークを1つだけとすることができないか、この発熱ピークの高さを30〜70μW/mgの範囲とすることができない。このため、室温時効後に、BH後の強度を、少なくとも260MPa以上、好ましくは280MPa以上、より好ましくは300MPa以上に、高強度化できなくなる。
(Mg含有量)/(Si含有量)の下限は、前記した板を、熱延割れを生じずに製造できる限度によって決まるので、(Mg含有量)/(Si含有量)の下限は0.6とする。
Fe:0.5%以下(但し、0%を含まず)
Feは晶出物を生成して、再結晶粒の核となり、結晶粒の粗大化を阻止する役割を果たす。このため、好ましくは0.05%以上含有させるが、0.5%を超えると、粗大な化合物を形成し、破壊の起点となり、強度や曲げ加工性が低下する。したがって、Feの含有量は0.5%以下(但し、0%を含まず)とする。
その他の元素
その他、本発明では、アルミニウム合金板の高強度化のために、更に、Mn:0.5%以下(但し、0%を含まず)、Cr:0.3%以下(但し、0%を含まず)、Zr:0.1%以下(但し、0%を含まず)、V:0.1%以下(但し、0%を含まず)、Ti:0.1%以下(但し、0%を含まず)、Cu:1.0%以下(但し、0%を含まず)、Ag:0.1%以下(但し、0%を含まず)、Zn:0.30%以下(但し、0%を含まず)、Sn:0.005〜0.15%、の1種または2種以上を含んでも良い。
これらの元素は、共通して板を高強度させる効果があるので、高強度化の同効元素と見なせるが、その具体的な機構には、共通する部分も、異なる部分も勿論ある。
Mn、Cr、Zr、Vは、均質化熱処理時に分散粒子(分散相)を生成し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる効果があり、結晶粒を微細化して高強度化する役割を果たす。また、Tiは晶出物を生成して、再結晶粒の核となり、結晶粒の粗大化を阻止し、結晶粒を微細化して高強度化する役割を果たす。Cu、Zn、Agは人工時効硬化能(BH性)を向上させるのに有用で、比較的低温短時間の人工時効処理の条件で、板組織の結晶粒内へのGPゾーンなどの化合物相の析出を促進させて高強度化する効果がある。Snは原子空孔を捕獲することで、室温でのMgやSiの拡散を抑制し、室温における強度増加(室温時効)を抑制し、人工時効処理時に、捕獲していた空孔を放出し、MgやSiの拡散を促進し、BH性を高くして高強度化する効果がある。
但し、これらの元素各々含有量が大きすぎると、粗大な化合物を形成するなどして、板の製造が困難となり、強度や曲げ加工性も低下する。また、耐食性も劣化する。したがって、含有させる場合には、前記した各上限値以下の含有量とする。
(示差走査熱分析曲線、示差走査熱量分析曲線、DSC):
以上のような組成とした上で、本発明では、自動車部材などの骨格材あるいは補強材用としての高強度を保証するために、この板の示差走査熱分析曲線において、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークを1つだけ存在させ、この発熱ピークの高さを30〜70μW/mgの範囲、好ましくは35〜70μW/mgの範囲とする。
これによって、従来のアルミニウム合金組成や製造条件を大きく変えずに、また、曲げ加工性を低下させずに、185℃×20分のBH後(焼付け塗装後)の0.2%耐力を260MPa以上、好ましくは280MPa以上、より好ましくは300MPa以上とすることができる。
ここで、示差走査熱分析曲線(DSC)とは、前記調質処理後のアルミニウム合金板の融解過程における熱的変化を、後述する条件による示差走査熱分析により測定して得られた固相からの加熱曲線である。したがって、このDSCによって、6000系アルミニウム合金板のBH時の析出相の発生挙動を、正確に反映あるいは模擬することができる。
より具体的に、6000系アルミニウム合金では、クラスタ、GPゾーン、強化相1(β'')、強化相2(β’)、平衡相(MgSi)など、人工時効温度によって種々の析出相が生成する。この中で、焼付け塗装(人工時効処理)後の強度を高くするためには、焼付け塗装時に強化相1(β'')や強化相2(β’)を生成させることが有効である。そして、これらβ’’やβ’のBH時(塗装焼き付け処理時)の発生挙動の変化は、前記DSCにおいて模擬することが可能であり、これが本発明でのDSCによる組織の規定の土台となっている。
前記強化相1(β'')や強化相2(β’)のDSCにおける発熱ピークは、自動車用パネルとして使用される通常の6000系アルミニウム合金板は、常法による製造では、230〜330℃の範囲で、互いにより広く離れて存在する。すなわち、従来のβ’’の発熱ピークは、前記温度範囲の中の温度が低い前半の240〜260℃近傍に多く存在し、一方の、従来のβ’の発熱ピークは、前記温度範囲の中の温度が高い後半の280〜300℃近傍に各々存在していた。この典型例としては、後述する図1に示す実施例表2における比較例11などがこれに相当する。
このような自動車用パネル用6000系アルミニウム合金板のように、230〜330℃の範囲で2つ以上の発熱ピークが個別に(独立してあるいは分離して)存在することは、強度に寄与する前記強化相1(β'')や強化相2(β’)分散して存在するため、BH時における実質的な強化相の絶対的な(トータルの)生成量(析出量)が、少なくなることを意味する。言い換えると、前記強化相1(β'')や強化相2(β’)のDSCにおける、各々の発熱ピークの高さを大きくする(高くする)ことには限界があることを意味する。
しかも、重要な点は、例えば、前記特許文献3のように、240〜260℃近傍に存在するβ’’の発熱ピークの高さを下げ、310〜320℃近傍に存在するβ’の発熱ピークの高さを上げたとしても、あるいは、これらβ''やβ’のDSCにおける各々の発熱ピークの高さを高くしても、その発熱ピークの高さの割には、あまり高強度化につながらないことである。すなわち、これら発熱ピークの高さが高くても、パネル材よりも高強度が要求される、自動車などの骨格材用あるいは補強材用に求められる高強度化にはつながらない。
これに対して、組成とともに、製法を変えて、板の圧延後の調質において、溶体化および焼入れ処理後の予備時効処理の条件を変えた場合に、β’’やβ’の発熱ピークは、互いのピークの温度差が少なくなって、互いのピークが重なり合うように発生することを知見した。
本発明者らの知見によれば、β’’の発熱ピーク(1つ目あるいは前半のピークとも言う)の発生温度は、それまでの温度が低い位置(温度)から、温度が高い270〜290℃近傍の位置(温度)へと移動する。一方のβ’の発熱ピーク(2つ目あるいは後半のピークとも言う)の発生温度は、それまでの温度が高い位置(温度)から、温度が低い290〜300℃近傍の位置(温度)へと移動する。
このように、β’’とβ’との互いの発熱ピークの、互いのピーク間の温度差が少なくなって、互いのピークが重なり合い、合成されて発生した場合には、BH後の耐力を高くする人工時効析出物量を確保できる。すなわち、本発明では、Mg、Siの組成や製造方法を複合的に工夫することで、強化相1(β'')や強化相2(β’)の析出の発熱ピークを分離させずに、互いの発熱ピークが重なり合うように制御する。これによって、塗装焼付処理(BH)時に、β’’に加えてβ’も多く生成させることができ、β''やβ’の絶対的な生成量(析出量)を増すことができ、塗装焼付処理後(BH後)の強度を、自動車などの骨格材用あるいは補強材用に求められる高強度まで、高くすることができる。
ここで、前記DSCにおいて、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが1つだけ存在するとともに、この発熱ピークが高いということは、示差走査熱分析中に、あるいは、これにより模擬される塗装焼付時(人工時効硬化処理時)に、β’’やβ’が多く生成していることを意味しており、塗装焼付前の時点でのβ’’やβ’の核となるクラスタが少ないことを意味する。
すなわち、この発熱ピークが高すぎると、塗装焼付前(人工時効硬化処理前)の時点でのβ’’やβ’の核となるクラスタの生成が不十分となり、焼付塗装前の強度が低くなりすぎるため、塗装後の強度を高くすることができない。したがって、230〜330℃の温度範囲内の単一の発熱ピークの高さは、70μW/mg以下とする。
一方で、この発熱ピークが低すぎると、示差走査熱分析中に、あるいは、これにより模擬される塗装焼付時(人工時効硬化処理時)に、生成するβ’’やβ’が少ないことを意味する。すなわち、塗装焼付前(人工時効硬化処理前)の時点で、β’’やβ’やその核となるクラスタが生成しすぎており、塗装焼付後のBH量が低くなるとともに、焼付塗装前の曲げ加工時に強度が高くなりすぎ、曲げ加工性が劣化する。したがって、230〜330℃の温度範囲内の単一の発熱ピークの高さは、30μW/mg以上、好ましくは35μW/mg以上とする。
以上のように本発明で規定する、示差走査熱分析曲線における発熱ピークは、MgおよびSiが十分に固溶している状態において、後述する通り、冷延板の溶体化・焼入れ処理後に、高温長時間の予備時効処理を行うことで、得ることができる。
(製造方法)
次ぎに、本発明アルミニウム合金板の製造方法について以下に説明する。本発明アルミニウム合金板は、製造工程自体は常法あるいは公知の方法であり、上記6000系成分組成のアルミニウム合金鋳塊を鋳造後に均質化熱処理し、熱間圧延、冷間圧延が施されて所定の板厚とされ、更に溶体化焼入れなどの調質処理が施されて製造される。
但し、これらの製造工程中で、本発明のDSCで規定する組織を得るためには、後述する通り、溶体化および焼入れ処理後の予備時効処理条件を、好ましい範囲とする。なお、他の工程においても、本発明のDSCで規定する組織を得るための好ましい条件もある。このような好ましい条件としなければ、本発明のDSCで規定する組織を得ることが難しくなる。
(溶解、鋳造冷却速度)
先ず、溶解、鋳造工程では、上記6000系成分組成範囲内に溶解調整されたアルミニウム合金溶湯を、連続鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等の通常の溶解鋳造法を適宜選択して鋳造する。ここで、本発明の規定範囲内にクラスタを制御するために、鋳造時の平均冷却速度について、液相線温度から固相線温度までを30℃/分以上と、できるだけ大きく(速く)することが好ましい。
このような、鋳造時の高温領域での温度(冷却速度)制御を行わない場合、この高温領域での冷却速度は必然的に遅くなる。このように高温領域での平均冷却速度が遅くなった場合、この高温領域での温度範囲で粗大に生成する晶出物の量が多くなって、鋳塊の板幅方向,厚さ方向での晶出物のサイズや量のばらつきも大きくなる。この結果、本発明の範囲に前記規定クラスタを制御することができなくなる可能性が高くなる。
(均質化熱処理)
次いで、前記鋳造されたアルミニウム合金鋳塊に、熱間圧延に先立って、均質化熱処理を施す。この均質化熱処理(均熱処理)は、通常の目的である、組織の均質化(鋳塊組織中の結晶粒内の偏析をなくす)の他に、SiやMgを充分に固溶させるために重要である。この目的を達成する条件であれば、特に限定されるものではなく、通常の1回または1段の処理でも良い。
均質化熱処理温度は、500℃以上で、560℃以下、均質(保持)時間は1時間以上の範囲から適宜選択して、SiやMgを充分に固溶させる。この均質化温度が低いと、SiやMgの固溶量を確保できず、後述する溶体化・焼入れ処理後の予備時効処理(再加熱処理)によっても、前記したDSCの発熱ピークの規定とできなくなる。また、結晶粒内の偏析を十分に無くすことができず、これが破壊の起点として作用するために、曲げ加工性が低下する。
この均質化熱処理を行った後、450℃以上で熱間圧延を行うが、均質化熱処理後の熱間での粗圧延開始まで、500℃以下には、鋳塊の温度を下げずに、SiやMgの固溶量を確保することが必要である。粗圧延開始までに、550℃以下に鋳塊の温度が下がった場合、SiやMgが析出して、前記したDSCの発熱ピークの規定とするための、SiやMgの固溶量が確保できない可能性が高くなる。
(熱間圧延)
熱間圧延は、圧延する板厚に応じて、鋳塊(スラブ)の粗圧延工程と、仕上げ圧延工程とから構成される。これら粗圧延工程や仕上げ圧延工程では、リバース式あるいはタンデム式などの圧延機が適宜用いられる。
熱間粗圧延の開始から終了までの圧延中には、450℃以下には温度を下げることなく、SiやMgの固溶量を確保することが必要である。このためには、熱間粗圧延のパス間における粗圧延板が最低となる温度を450℃以上とした熱間粗圧延を行うことが好ましい。熱間粗圧延中に、450℃以下に粗圧延板の温度が下がった場合、SiやMgが析出して、前記したDSCの発熱ピークの規定とするための、SiやMgの固溶量が確保できない、可能性が高くなる。
このような熱間粗圧延後に、終了温度を300〜360℃の範囲とした熱間仕上圧延を行う。前記した均熱温度や、この仕上げ圧延の終了温度が低すぎる場合には、均熱や熱延中に、Mg、Si系の化合物が生成し、添加したMg、Si組成のMg/Siと比較して、固溶Mg/Siのバランスが変化して、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが2つ以上の複数個生成しやすく、焼付け塗装後の強度を、前記所望の値に高くすることが難しくなる。
(熱延板の焼鈍)
この熱延板の冷間圧延前の焼鈍(荒鈍)は必要ではないが、実施しても良い。
(冷間圧延)
冷間圧延では、上記熱延板を圧延して、所望の最終板厚の冷延板(コイルも含む)に製作する。但し、結晶粒をより微細化させるためには、冷間圧延率は60%以上であることが望ましく、また前記荒鈍と同様の目的で、冷間圧延パス間で中間焼鈍を行っても良い。
(溶体化および焼入れ処理)
冷間圧延後、溶体化処理と、これに続く、室温までの焼入れ処理を行う。この溶体化焼入れ処理については、通常の連続熱処理ラインを用いてよい。しかし、Mg、Siなどの各元素の十分な固溶量を得ること、および、結晶粒はより微細であることが望ましいことから、520℃以上、溶融温度以下の溶体化処理温度に、加熱速度5℃/秒以上で加熱して、0.1〜20秒保持する条件で行うことが望ましい。
また、曲げ加工性を低下させる粗大な粒界化合物形成を抑制する観点から、溶体化温度から、室温の焼入れ停止温度までの平均冷却速度を20℃/s以上とすることが望ましい。溶体化処理後の室温までの焼入れ処理の平均冷却速度が小さいと、冷却中に粗大なMg2Siおよび単体Siが生成してしまい、曲げ加工性が劣化してしまう。また、溶体化後の固溶量が低下し、BH性が低下してしまう。この冷却速度を確保するために、焼入れ処理は、ファンなどの空冷、ミスト、スプレー、浸漬等の水冷手段や条件を各々選択して用いる。
(予備時効処理:再加熱処理)
このような溶体化処理後に焼入れ処理して室温まで冷却した後、1時間以内に冷延板を予備時効処理(再加熱処理)する。室温までの焼入れ処理終了後、予備時効処理開始(加熱開始)までの室温保持時間が長すぎると、室温時効により溶解しやすいクラスタが生成してしまい、本発明のDSCで規定する発熱ピークが形成されにくくなる。したがって、この室温保持時間は短いほど良く、溶体化および焼入れ処理と再加熱処理とが、時間差が殆ど無いように連続していても良く、下限の時間は特に設定しない。
この予備時効処理は、60〜120℃での保持時間を10時間以上、40時間以下保持する。これによって、本発明のDSCで規定する発熱ピークが形成される。
予備時効温度が60℃未満か、または保持時間が10時間未満であると、この予備時効処理をしない場合と同様となって、析出核の生成が不十分であり、230〜330℃の温度範囲での発熱ピークのピーク高さが70μW/mgを超えて大きくなり、焼付塗装後の耐力が低くなりやすい。
一方、予備時効条件が120℃を超える、または、40時間を超えては、析出核の生成量が多すぎてしまい、示差走査熱分析曲線において、230〜330℃の温度範囲における発熱ピークのピーク高さが30μW/mg未満となって低くなりやすく、その結果、焼付け塗装前の曲げ加工時の強度が高くなりすぎ、曲げ加工性が劣化しやすい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明のDSCで規定する組織が異なる6000系アルミニウム合金板を、組成や製造条件を変えて作り分けて製造した。そして、板製造後室温に100日間保持後の、As耐力やBH性(塗装焼付け硬化性)、曲げ加工性を各々測定、評価した。これらの結果を表1、2に示す。
具体的な前記作り分け方は、表1に示す組成の6000系アルミニウム合金板を、表2に示すように、均熱温度、熱間粗圧延のパス間における粗圧延板が最低となる温度(表2には最低温度と記載)、熱間仕上げ圧延の終了温度、予備時効処理の温度や保持時間などの条件を種々変えて行った。ここで、表1中の各元素の含有量の表示において、各元素における数値をブランクとしている表示は、その含有量が検出限界以下であることを示す。
アルミニウム合金板の具体的な製造条件は以下の通りとした。表1に示す各組成のアルミニウム合金鋳塊を、DC鋳造法により共通して溶製した。この際、各例とも共通して、鋳造時の平均冷却速度について、液相線温度から固相線温度までを50℃/分とした。続いて、鋳塊を、各例とも表2に示す温度条件にて、共通して6時間の均熱処理をした後、その温度で熱間粗圧延を開始した。この際の熱間粗圧延の最低(パス)温度も表2に示す。
そして、各例とも共通して、続く仕上げ圧延にて、各例とも表2に示す終了温度にて、厚さ5.0mmまで熱延し、熱間圧延板とした。熱間圧延後のアルミニウム合金板を、各例とも共通して、500℃×1分の荒焼鈍を施した後、冷延パス途中の中間焼鈍無しで加工率60%の冷間圧延を行い、厚さ2.0mmの冷延板とした。
更に、この各冷延板を、各例とも共通して、連続式の熱処理設備で巻き戻し、巻き取りながら、連続的に調質処理(T4)した。具体的には、溶体化処理を、500℃までの平均加熱速度を10℃/秒として、540℃の目標温度に到達後5秒保持して行い、その後、平均冷却速度を100℃/秒とした水冷を行うことで室温まで冷却した。この冷却直後に、表2に示す温度(℃)、保持時間(hr)にて、予備時効処理を行った。予備時効処理後は徐冷(放冷)を行った。
これら調質処理後100日間室温放置した後の各最終製品板から供試板(ブランク)を切り出し、各供試板の前記DSCや特性を測定、評価した。これらの結果を表2に示す。
(DSC)
前記供試板の板厚中央部の10箇所における組織の前記DSCを測定し、これら10箇所の平均値にて、この板のDSC(示差走査熱分析曲線)において、230〜330℃の温度範囲に存在する発熱ピークにつき測定した。この場合、この温度範囲に発熱ピークが2つある場合には、これら各々の発熱ピークのピーク高さ(μW/mg)を求めた。
これらの前記供試板の各測定箇所における示差走査熱分析においては、試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G、標準物質:アルミ、試料容器:アルミ、昇温条件:15℃/min、雰囲気:アルゴン(50ml/min)、試料重量:24.5〜26.5mgの同一条件で各々行い、得られた示差走査熱分析のプロファイル(μW)を試料重量で割って規格化した(μW/mg)後に、前記示差走査熱分析プロファイルでの0〜100℃の区間において、示差走査熱分析のプロファイルが水平になる領域を0の基準レベルとし、この基準レベルからの発熱ピーク高さを測定した。これらの結果を表2に示す。
(塗装焼付硬化性)
前記供試板の機械的特性として、0.2%耐力(As耐力)を引張試験により求めた。また、これらの各供試板を各々共通して、曲げ加工を模擬した2%のストレッチ後に、185℃×20分の人工時効硬化処理した後(BH後)の、供試板の0.2%耐力(BH後耐力)を引張試験により求めた。そして、これら0.2%耐力同士の差(耐力の増加量)から各供試板のBH性を評価した。
前記引張試験は、前記各供試板から、各々JISZ2201の5号試験片(25mm×50mmGL×板厚)を採取し、室温にて引張り試験を行った。このときの試験片の引張り方向を圧延方向の直角方向とした。引張り速度は、0.2%耐力までは5mm/分、耐力以降は20mm/分とした。機械的特性測定のN数は5とし、各々平均値で算出した。なお、前記BH後の耐力測定用の試験片には、この試験片に、板のプレス成形を模擬した2%の予歪をこの引張試験機により与えた後に、前記BH処理を行った。
(曲げ加工性)
曲げ加工性は前記各供試板について行った。試験は、圧延方向に長軸をとって、幅30mm×長さ35mmの試験片を作成し、JISZ2248に準拠して、2000kgfの荷重をかけて、曲げ半径2.0mmで90°のV字曲げを行った。
このV曲げ部の、肌荒れ、微小な割れ、大きな割れの発生などの表面状態を目視観察し、以下の9〜1の段階の基準にて目視評価して、数値が多いほど曲げ性が良いものとし、6以上を合格とした。
9;割れなし、肌荒れなし、8;割れなし、僅かに肌荒れ、7;割れなし、肌荒れあり、6;微小な割れが僅かにあり、5;微小な割れあり、4;微小な割れが全面にあり、3;大きな割れ有、2;大きな割れがあり破断寸前、1;破断。
表1、2に各々示す通り、発明例1〜8は、本発明の成分組成範囲内で、かつ好ましい条件範囲で製造されている。このため、これら各発明例は、表2に示す通り、DSCが本発明で規定する通り、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが1つだけ存在し、この発熱ピークの高さが規定範囲内である。
この結果、各発明例は、室温時効後であっても、表2に示す通り、BH性に優れ、曲げ加工性にも優れている。
これに対して、表2の比較例1〜5は、表1の発明例と同じ合金例1を用いている。しかし、これら各比較例は、表2に示す通り、均熱温度、熱間粗圧延の最低温度、熱間仕上げ圧延の終了温度、予備時効処理の温度や保持時間などの製造条件が、好ましい条件を外れている。この結果、DSCが本発明で規定する範囲から外れ、同じ合金組成である発明例1に比して、室温時効後のBH性か曲げ加工性のいずれか、あるいは両方が劣っている。
このうち、比較例1は均熱温度、熱間粗圧延の最低温度、熱間仕上げ圧延の終了温度などが低すぎる。このため、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが2つ生じており、比較的BH性が低く、BH後の0.2%耐力が低すぎる。
比較例2は、予備時効処理の温度が低すぎる。このため、230〜330℃の温度範囲内に存在する発熱ピークは一つであるが、ピーク高さが高すぎ、BH後の0.2%耐力が低すぎる。
比較例3は、予備時効処理の温度が高すぎる。このため、230〜330℃の温度範囲内に存在する発熱ピークは一つであるが、ピーク高さが低すぎ、BH後の0.2%耐力は高いが、曲げ加工性が低すぎる。
比較例4は、予備時効処理の保持時間が短すぎる。このため、230〜330℃の温度範囲内に存在する発熱ピークは一つであるが、ピーク高さが高すぎ、BH後の0.2%耐力が低すぎる。
比較例5は、予備時効処理の保持時間が長すぎる。このため、230〜330℃の温度範囲内に存在する発熱ピークは一つであるが、ピーク高さが低すぎ、BH後の0.2%耐力は高いが、曲げ加工性が低すぎる。
表2の比較例6〜13は、前記予備時効処理条件を含めて好ましい範囲で製造しているものの、表1の合金番号10〜17を各々用いており、合金組成が各々本発明範囲を外れている。
このため、これら比較例は、表2に示す通り、この結果、DSCなどが本発明で規定する範囲から外れ、発明例に比して、室温時効後のBH性か曲げ加工性のいずれか、あるいは両方が劣っている。
比較例6は表1の合金10であり、Mgが少なすぎ、(Mg含有量)/(Si含有量)が下限を外れている。このため、このため、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが2つ生じており、BH性が発明例に比して劣っている。
比較例7は表1の合金11であり、Siが少なすぎ、(Mg含有量)/(Si含有量)が上限を外れる。このため、このため、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが2つ生じており、BH性が発明例に比して劣っている。
比較例8は表1の合金12であり、Siが多すぎる。このため、熱延割れを生じて、圧延板が製造できなかった。
比較例9は表1の合金13であり、(Mg含有量)+(Si含有量)が下限を外れている。このため、BH性が発明例に比して劣っている。
比較例10は表1の合金14であり、(Mg含有量)/(Si含有量)が下限を外れている。このため、このため、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが2つ生じており、BH性が発明例に比して劣っている。
比較例11は表1の合金15であり、Mg含有量や(Mg含有量)/(Si含有量)が下限を外れている。このため、このため、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが2つ生じており、BH性が発明例に比して劣っている。
比較例12は表1の合金16であり、Fe含有量が上限を超えて多すぎる。このため、BH性や曲げ加工性が発明例に比して劣っている。
比較例13は表1の合金17であり、Mnの含有量が上限を超えて多すぎる。このため、BH性や曲げ加工性が発明例に比して劣っている。
これら発明例、比較例から選択したDSCを図1に示す。図1において、太い実線が表2の発明例2、点線が表2の比較例11、破線(鎖線)が表2の比較例6を示す。
以上の実施例の結果から、室温時効後でも、曲げ加工性を阻害せずに、185℃×20分のBH後の0.2%耐力を260MPa以上、好ましくは280MPa以上、より好ましくは300MPa以上と高強度化させるためには、本発明で規定する組成やDSCの各条件を全て満たす必要性があることが裏付けられる。
Figure 2016141842
Figure 2016141842
本発明によれば、曲げ加工性を阻害せずに高強度化させた6000系アルミニウム合金板を提供できる。この結果、パネル材を除く、フレーム、ピラーなどの骨格材あるいは、バンパ補強材、ドアビームなどの補強材などの自動車構造部材として、6000系アルミニウム合金板の適用を拡大できる。

Claims (2)

  1. 質量%で、Mg:0.6〜2.0%、Si:0.6〜2.0%、Fe:0.5%以下(但し、0%を含まず)を各々含み、かつ(Mg含有量)+(Si含有量)≧1.5%、かつ0.6≦(Mg含有量)/(Si含有量)≦2.0を満たし、残部がAl及び不可避不純物からなるAl−Mg−Si系アルミニウム合金板であって、この板の示差走査熱分析曲線において、230〜330℃の温度範囲内に発熱ピークが1つだけ存在し、この発熱ピークの高さが30〜70μW/mgの範囲であることを特徴とする高強度アルミニウム合金板。
    但し、前記板の各測定箇所における示差走査熱分析においては、試験装置:セイコ−インスツルメンツ製DSC220G、標準物質:アルミ、試料容器:アルミ、昇温条件:15℃/min、雰囲気:アルゴン(50ml/min)、試料重量:24.5〜26.5mgの同一条件で各々行い、得られた示差走査熱分析のプロファイル(μW)を試料重量で割って規格化した(μW/mg)後に、前記示差走査熱分析プロファイルでの0〜100℃の区間において、示差走査熱分析のプロファイルが水平になる領域を0の基準レベルとし、この基準レベルからの発熱ピーク高さを測定する。
  2. 前記アルミニウム合金板が、更に、Mn:0.5%以下(但し、0%を含まず)、Cr:0.3%以下(但し、0%を含まず)、Zr:0.1%以下(但し、0%を含まず)、V:0.1%以下(但し、0%を含まず)、Ti:0.1%以下(但し、0%を含まず)、Cu:1.0%以下(但し、0%を含まず)、Ag:0.1%以下(但し、0%を含まず)、Zn:0.30%以下(但し、0%を含まず)、Sn:0.005〜0.15%、の1種または2種以上を含む請求項1に記載の高強度アルミニウム合金板。
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