JP2016134498A - 磁性材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁気特性に優れる磁性材料の製造方法を提供する。【解決手段】SmとFeとを含有するSm−Fe系合金を準備する準備工程と、Sm−Fe系合金に、SmおよびFeと反応しない雰囲気中または減圧雰囲気中、2T以上4T以下の磁場を印加しながら、250℃以上350℃以下の温度で熱処理を施す磁場熱処理工程と、磁場熱処理工程の後、Sm−Fe系合金に、SmおよびFeと反応しない雰囲気中または減圧雰囲気中、磁場熱処理工程における加熱温度から600℃以上800℃以下まで5分以内に急速に昇温し、その温度で2分以上10分以下保持してから、500℃以下まで5分以内に急速に冷却する熱処理を施す急速熱処理工程と、を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、希土類磁石の材料となる磁性材料の製造方法に関する。特に、磁気特性に優れる磁性材料の製造方法に関する。
モータや発電機などに使用される永久磁石として、希土類元素(RE)と鉄(Fe)とを含有する希土類−鉄系化合物を主相とする希土類−鉄系合金(RE−Fe系合金)を用いた希土類磁石が広く利用されている。希土類磁石としては、Nd2Fe14B相を主相とするNd2Fe14B合金を用いたNd−Fe−B磁石(ネオジム磁石)が代表的である(特許文献1,2を参照)。その他、Sm2Fe17相を主相とするSm2Fe17合金を原料とし、これを窒化したSm2Fe17N3相を主相とするSm2Fe17N3合金を用いたSm−Fe−N磁石が知られている(特許文献1,2を参照)。
また、希土類磁石の高性能化を目指して、ナノコンポジット磁石の研究が進められている(特許文献1を参照)。ナノコンポジット磁石は、ナノサイズの微細な軟磁性相と硬磁性相とを有し、例えば、両相がナノメートルオーダーの間隔で周期的に配置されたナノコンポジット組織を有する。ナノコンポジット磁石は、軟磁性相と硬磁性相との間に働く交換相互作用により軟磁性相が硬磁性相に束縛されて、軟磁性相と硬磁性相とがあたかも単相磁石のように振る舞う。その結果、軟磁性相が持つ高い磁化と硬磁性相が持つ高い保磁力とを併せ持つことができ、磁気特性に優れる磁性材料として期待されている。
希土類磁石の更なる高性能化が求められており、磁気特性に優れる磁性材料の開発が強く望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、本発明の目的の一つは、磁気特性に優れる磁性材料の製造方法を提供することにある。
本発明の一態様に係る磁性材料の製造方法は、準備工程と、磁場熱処理工程と、急速熱処理工程とを備える。準備工程は、SmとFeとを含有するSm−Fe系合金を準備する工程である。磁場熱処理工程は、前記Sm−Fe系合金に、SmおよびFeと反応しない雰囲気中または減圧雰囲気中、2T以上4T以下の磁場を印加しながら、250℃以上350℃以下の温度で熱処理を施す工程である。急速熱処理工程は、前記磁場熱処理工程の後、前記Sm−Fe系合金に、SmおよびFeと反応しない雰囲気中または減圧雰囲気中、前記磁場熱処理工程における加熱温度から600℃以上800℃以下まで5分以内に急速に昇温し、その温度で2分以上10分以下保持してから、500℃以下まで5分以内に急速に冷却する熱処理を施す工程である。
上記磁性材料の製造方法は、磁気特性に優れる磁性材料を製造できる。
[本発明の実施形態の説明]
本発明者らは、希土類−鉄系合金としてSm−Fe合金を選択し、Sm5Fe17相を主相とするSm5Fe17合金を磁性材料として使用した希土類磁石に着目した。Sm5Fe17合金は、希土類磁石として高い保磁力を有するためである。そこで、希土類磁石の更なる高性能化を目指して、Fe相からなる軟磁性相と、Sm5Fe17相からなる硬磁性相とを含むナノコンポジット組織を有する磁性材料の開発に取り組んだ。
本発明者らは、希土類−鉄系合金としてSm−Fe合金を選択し、Sm5Fe17相を主相とするSm5Fe17合金を磁性材料として使用した希土類磁石に着目した。Sm5Fe17合金は、希土類磁石として高い保磁力を有するためである。そこで、希土類磁石の更なる高性能化を目指して、Fe相からなる軟磁性相と、Sm5Fe17相からなる硬磁性相とを含むナノコンポジット組織を有する磁性材料の開発に取り組んだ。
特許文献1では、急冷法によりアモルファス状態の急冷薄帯合金を作製した後、その合金に600℃以上の温度で熱処理を施すことで、軟磁性相と硬磁性相とを含むナノコンポジット磁石を製造する方法が記載されている。しかし、特許文献1に記載の製造方法では、Fe相からなる軟磁性相とSm5Fe17相からなる硬磁性相とを含むナノコンポジット磁石は作製できないのが現状である。その理由は、熱処理によって結晶化すると、安定なSm2Fe17相やSmFe3相が主として析出するからである。
そこで、本発明者らは、Fe相からなる軟磁性相と、Sm5Fe17相からなる硬磁性相とを含むナノコンポジット組織とすることを鋭意検討した。その結果、磁場を印加しながら低温で熱処理する磁場熱処理工程と、その後、急速に高温まで昇温して急速に冷却する急速熱処理工程との二段階の熱処理を行うことで、Fe相とSm5Fe17相とが混在するナノコンポジット組織を有する磁性材料を得られるとの知見を得て本発明を完成するに至った。以下、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)実施形態に係る磁性材料の製造方法は、準備工程と、磁場熱処理工程と、急速熱処理工程とを備える。準備工程は、SmとFeとを含有するSm−Fe系合金を準備する工程である。磁場熱処理工程は、前記Sm−Fe系合金に、SmおよびFeと反応しない雰囲気中または減圧雰囲気中、2T以上4T以下の磁場を印加しながら、250℃以上350℃以下の温度で熱処理を施す工程である。急速熱処理工程は、前記磁場熱処理工程の後、前記Sm−Fe系合金に、SmおよびFeと反応しない雰囲気中または減圧雰囲気中、前記磁場熱処理工程における加熱温度から600℃以上800℃以下まで5分以内に急速に昇温し、その温度で2分以上10分以下保持してから、500℃以下まで5分以内に急速に冷却する熱処理を施す工程である。
原料のSm−Fe系合金に熱処理を施すにあたり、磁場熱処理工程⇒急速熱処理工程という二段階の工程を行うことで、微細かつ結晶性の高いFe相およびSm5Fe17相を含むナノコンポジット組織を有する磁性材料を得ることができる。まず、磁場熱処理工程において、磁場を印加しながら熱処理を施すことで、磁場中でのエネルギー安定性の高いFe相が析出する。このとき、250℃以上350℃以下といった低温で熱処理を施すため、Fe相の粗大化を抑制でき、微細なFe相を析出できる。低温であっても磁場を印加することによって、Fe相は、熱エネルギーによって析出できない分、磁場のエネルギーによって析出することができる。この磁場熱処理工程における加熱温度と印加磁場とを調整することによって、Fe相の析出量を制御でき、残るSm5Fe17相を得ることができる。次に、急速熱処理工程において、急速な昇温⇒短時間での高温保持⇒急速な冷却を行うことで、Fe相を粗大化させずに、Fe相およびSm5Fe17相の結晶化を促進しでき、微細かつ結晶性の高いFe相およびSm5Fe17相を生成できる。Sm5Fe17相を生成できることで、高い保磁力を有する磁性材料を得ることができる。
(2)実施形態の磁性材料の製造方法として、前記準備工程におけるSm−Fe系合金は、非晶質状態であり、Smの含有量が10質量%以上45質量%以下であることが挙げられる。
上記構成によれば、原料のSm−Fe系合金が非晶質状態であり、Smの含有量が上記範囲内であることで、Sm5Fe17相を生成し易く、Fe相およびSm5Fe17相を含むナノコンポジット組織を有する磁性材料を製造し易い。
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態の詳細を、以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施形態の詳細を、以下に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<実施形態1>
〔磁性材料の製造方法〕
実施形態1の磁性材料の製造方法は、準備工程と、磁場熱処理工程と、急速熱処理工程とを備える。以下、図1に基づいて、各工程について詳しく説明する。
〔磁性材料の製造方法〕
実施形態1の磁性材料の製造方法は、準備工程と、磁場熱処理工程と、急速熱処理工程とを備える。以下、図1に基づいて、各工程について詳しく説明する。
(準備工程)
準備工程は、SmとFeとを含有するSm−Fe系合金を準備する工程である。Sm−Fe系合金は、Smの含有量が10質量%以上45質量%以下であることが挙げられる。Smの含有量が10質量%以上であることで、Sm5Fe17相を生成し易く、保磁力を向上させることができる。一方、Smの含有量が45質量%以下であることで、Feの含有量が相対的に多くなり、残留磁化を向上させることができる。Smの含有量は、さらに12質量%以上27質量%以下、特に18質量%以上25質量%以下が挙げられる。Sm−Fe系合金は、SmとFe以外にもBまたはC,F,Nb,Zrを5質量%以下程度含んでいてもよい。また、Feの一部をCo,Cuなどの他の遷移金属元素やAl,Siで置換してもよい。Fe(Feの一部を置換したものを含む)の含有量は、71質量%以上88質量%以下含有することが挙げられる。
準備工程は、SmとFeとを含有するSm−Fe系合金を準備する工程である。Sm−Fe系合金は、Smの含有量が10質量%以上45質量%以下であることが挙げられる。Smの含有量が10質量%以上であることで、Sm5Fe17相を生成し易く、保磁力を向上させることができる。一方、Smの含有量が45質量%以下であることで、Feの含有量が相対的に多くなり、残留磁化を向上させることができる。Smの含有量は、さらに12質量%以上27質量%以下、特に18質量%以上25質量%以下が挙げられる。Sm−Fe系合金は、SmとFe以外にもBまたはC,F,Nb,Zrを5質量%以下程度含んでいてもよい。また、Feの一部をCo,Cuなどの他の遷移金属元素やAl,Siで置換してもよい。Fe(Feの一部を置換したものを含む)の含有量は、71質量%以上88質量%以下含有することが挙げられる。
Sm−Fe系合金は、非晶質状態であることが挙げられる。Sm−Fe系合金が非晶質状態であり、Smの含有量が上記範囲内であると、後述する二段階の熱処理工程によって結晶質のSm5Fe17相を生成し易く、Fe相およびSm5Fe17相を含むナノコンポジット組織を有する磁性材料を製造し易い。
Sm−Fe系合金は、上記組成範囲となるように配合した合金の溶湯を超急冷法により急冷することで得られる。超急冷法としては、メルトスパン法が挙げられる。冷却速度は、例えば2×105℃/秒以上、好ましくは1×106℃/秒以上である。図1の左図に示すように、メルトスパン法で得られたSm−Fe系合金(急冷薄帯30)は適宜粉砕して、Sm−Fe系合金粉末20としてもよい。Sm−Fe系合金粉末30の平均粒子径は、例えば5μm以上50μm以下、好ましくは10μm以上30μm以下である。「平均粒子径」とは、レーザ回折法で測定された体積基準の粒度分布において、小径側から累積体積が50%になる粒子径(D50:50体積%粒径)のことである。Sm−Fe系合金の粉砕は、例えばジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、ブラウンミル、ピンミル、ディスクミル、ジョークラッシャーなどの公知の粉砕機を用いることができる。Sm−Fe系合金の段階では粉砕せず、磁性材料の製造後、磁性材料を粉砕して粉末にしてもよい。
(磁場熱処理工程)
磁場熱処理工程は、図1の中図に示すように、Sm−Fe系合金粉末20に、不活性雰囲気中または減圧雰囲気中、2T以上4T以下の磁場を印加しながら、250℃以上350℃以下の温度で熱処理を施す工程である。250℃以上350℃以下といった低温で磁場を印加しながら熱処理を施すことで、Fe相が粗大化せずに、磁場中でのエネルギー安定性の高いFe相が析出する。
磁場熱処理工程は、図1の中図に示すように、Sm−Fe系合金粉末20に、不活性雰囲気中または減圧雰囲気中、2T以上4T以下の磁場を印加しながら、250℃以上350℃以下の温度で熱処理を施す工程である。250℃以上350℃以下といった低温で磁場を印加しながら熱処理を施すことで、Fe相が粗大化せずに、磁場中でのエネルギー安定性の高いFe相が析出する。
雰囲気は、SmおよびFeと反応しない雰囲気または減圧雰囲気とする。SmおよびFeと反応しない雰囲気は、酸素や水素、窒素を含まない雰囲気であり、Arが挙げられる。減圧雰囲気は、標準の大気雰囲気よりも圧力を低下させた真空状態をいい、最終真空度は10Pa以下、さらに1Pa以下が好ましい。
加熱温度は、250℃以上350℃以下とする。加熱温度が250℃以上であると、Fe相の析出を行うことができる。一方、加熱温度が350℃以下であることで、Fe相の粗大化を抑制できる。この加熱温度への昇温速度は特に問わない。熱処理の保持時間は、30分以上10時間以下が挙げられる。加熱温度が低いことでFe相の析出がし難いため、保持時間は30分以上とする。一方、10時間以下とすることで、保持時間が過度に長くなることなく十分にFe相を析出することができる。この保持時間は、1時間以上3時間以下が好ましい。
印加磁場は、2T以上4T以下とする。加熱温度が低温であることで熱エネルギーによってFe相は析出し難いが、2T以上の磁場を印加することで、磁場のエネルギーによってFe相は析出する。つまり、Fe相は、熱エネルギーによって析出できない分、磁場のエネルギーによって析出することができる。そのため、低温であっても、十分にFe相は析出できる。一方、磁場が4T以下であることで、Fe相の粗大化を抑制できる。このような磁場は、例えば、高温超電導磁石を用いることで安定して形成することができる。
磁場熱処理工程において、加熱温度と印加磁場とを調整することによって、Fe相の析出量を制御でき、残るSm5Fe17相を得ることができる。加熱温度と印加磁場とは、加熱温度が低いときには印加磁場を大きくし、加熱温度が高いときには印加磁場を小さくすることで、熱エネルギーと磁場エネルギーとによって、効果的にFe相を粗大化せずに所望量を析出することができる。
Fe相の平均粒径は、実質的に、この磁場熱処理工程によって決まる。Fe相の平均粒径は、150nm以下、好ましくは100nm以下であることが挙げられる。
(急速熱処理工程)
急速熱処理工程は、図1の右図に示すように、Sm−Fe系合金粉末20に、急速な昇温(低温T1→高温T2)⇒短時間での高温保持(高温T2)⇒急速な冷却(500℃以下)を行う工程である。この急速熱処理工程は、磁場熱処理工程の後に連続して行う。つまり、急速な昇温を行う前の低温T1とは、磁場熱処理工程における加熱温度のことである。急速な昇温および短時間での高温保持によって、Fe相を粗大化させずに、Fe相およびSm5Fe17相の結晶化を促進でき、微細かつ結晶性の高いFe相およびSm5Fe17相を生成できる。
急速熱処理工程は、図1の右図に示すように、Sm−Fe系合金粉末20に、急速な昇温(低温T1→高温T2)⇒短時間での高温保持(高温T2)⇒急速な冷却(500℃以下)を行う工程である。この急速熱処理工程は、磁場熱処理工程の後に連続して行う。つまり、急速な昇温を行う前の低温T1とは、磁場熱処理工程における加熱温度のことである。急速な昇温および短時間での高温保持によって、Fe相を粗大化させずに、Fe相およびSm5Fe17相の結晶化を促進でき、微細かつ結晶性の高いFe相およびSm5Fe17相を生成できる。
雰囲気は、磁場熱処理工程と同様に、SmおよびFeと反応しない雰囲気または減圧雰囲気とする。SmおよびFeと反応しない雰囲気は、酸素や水素、窒素を含まない雰囲気であり、Arが挙げられる。減圧雰囲気は、標準の大気雰囲気よりも圧力を低下させた真空状態をいい、最終真空度は10Pa以下、さらに1Pa以下が好ましい。
まず、Sm−Fe系合金粉末20に、磁場熱処理工程における加熱温度T1(250℃以上350℃以下)から600℃以上800℃以下の高温T2まで5分以内に急速に昇温する。昇温速度としては、50℃/分以上、70℃/分以上、90℃/分以上、110℃/分以上とすることが挙げられる。昇温時間t1は5分以内であれば特に問わない。
高温T2となったら、その温度T2で2分以上10分以下保持する(図1右図のt1−t2間)。そうすると、Fe相およびSm5Fe17相の結晶化が起こり、Fe相からなる軟磁性相11と、Sm5Fe17相からなる硬磁性相12とを含む結晶相を含有する複合組織が形成され、軟磁性相と硬磁性相とがコンポジット化した組織となる。急速熱処理工程は、磁場を印加せずに行うことが好ましい。磁場を印加すると、Fe相が粗大化するためである。
その後、500℃以下まで5分以内に急速に冷却する。そうすることで、コンポジット化されたFe相およびSm5Fe17相の粗大化を抑制でき、微細かつ結晶性の高いFe相(軟磁性相11)およびSm5Fe17相(硬磁性相12)のコンポジット化した組織の磁性材料10を得ることができる。冷却速度としては、20℃/分以上、さらに60℃/分とすることが挙げられる。500℃以下とするまでの冷却時間t3は5分以内であれば特に問わない。500℃以下となれば、それ以降の冷却速度は特に問わない。
急速熱処理工程は、磁場熱処理工程の後に常温に冷却し、常温から再加熱して高温T2としてもよい。その場合であっても、常温から昇温して、温度T1となってからの高温T2への急速な昇温⇒短時間での高温保持⇒急速な冷却は必須である。急速熱処理工程は、上述したように、磁場熱処理工程の後に連続して行う方が効率的である。
〔磁性材料〕
上述した磁性材料の製造方法によって得られた磁性材料10は、図1の右拡大図に示されるように、Fe相からなる軟磁性相11と、Sm5Fe17相からなる硬磁性相12とを含む結晶相を含有する。Fe相は、例えばα−Fe相である。硬磁性相12は、Sm5Fe17相の結晶粒である。なお、図1において、軟磁性相11と硬磁性相12との区別を明確にするために、軟磁性相11にはハッチングを付している。
上述した磁性材料の製造方法によって得られた磁性材料10は、図1の右拡大図に示されるように、Fe相からなる軟磁性相11と、Sm5Fe17相からなる硬磁性相12とを含む結晶相を含有する。Fe相は、例えばα−Fe相である。硬磁性相12は、Sm5Fe17相の結晶粒である。なお、図1において、軟磁性相11と硬磁性相12との区別を明確にするために、軟磁性相11にはハッチングを付している。
磁性材料10は、結晶相として、Fe相からなる軟磁性相11とSm5Fe17相からなる硬磁性相12とを含有し、両相が混在する複合組織(コンポジット組織)である。高磁化を有するFe相(軟磁性相11)と高保磁力を有するSm5Fe17相(硬磁性相12)とが混在する複合組織であることで、両相の間に働く交換相互作用より両相が交換結合して、高磁化と高保磁力とを併せ持つ磁気特性を有することが可能であり、磁気特性を改善できる。
特に、磁性材料10は、軟磁性相11と硬磁性相12とがナノサイズであり、軟磁性相11と硬磁性相12とのナノコンポジット組織を有することが好ましい。ナノコンポジット組織を有することで、軟磁性相と硬磁性相との間に強い交換相互作用が働き、両相の交換結合により高磁化と高保磁力とを併せ持つことができ、磁気特性を更に改善できる。「ナノサイズ」とは、平均結晶粒径(結晶粒サイズ)が300nm以下、さらに150nm以下、特に100nmであることを意味する。磁性材料10中の磁性相の平均結晶粒径(結晶粒サイズ)は、X線回折(XRD)による回折ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めることができる。ナノコンポジット組織としては、軟磁性相と硬磁性相とが層状に交互に配列した周期構造を有する形態や、粒状の軟磁性相が硬磁性相中に分散した分散構造を有する形態が挙げられる。磁性材料の組織構造としては、分散構造よりも周期構造の方が硬磁性相の周期間隔が小さくなり、磁気特性的に好ましいと考えられる。
上記磁性材料10は、磁石とする場合、窒化処理を行う。窒化処理は、磁性材料に、窒素を含む雰囲気中で、窒化温度以上の温度で熱処理を施す。窒化温度は、結晶相のSm5Fe17相を窒化して、Sm5Fe17Nx(X=0.5〜3)相が生成される温度とする。この窒化温度は、例えば、300℃以上500℃以下とすることが挙げられる。加熱温度を300℃以上とすることで、窒化を促進でき、Sm5Fe17Nx(X=0.5〜3)相を形成し易い。一方、加熱温度を500℃以下とすることで、Fe相の粗大化を抑制し、Sm5Fe17Nxの過剰窒化や分解を抑制できる。
<試験例>
以下の準備工程⇒磁場熱処理工程⇒急速熱処理工程という手順で磁性材料(試料No.1〜20)を作製し、得られた磁性材料の磁気特性およびFe相(α−Fe相)の平均結晶粒径を調べた。また、比較例として、磁場熱処理工程を行わず、準備工程⇒急速熱処理工程という手順で磁性材料(試料No.21〜33)を作製し、得られた磁性材料の磁気特性およびFe相(α−Fe相)の平均結晶粒径を調べた。
以下の準備工程⇒磁場熱処理工程⇒急速熱処理工程という手順で磁性材料(試料No.1〜20)を作製し、得られた磁性材料の磁気特性およびFe相(α−Fe相)の平均結晶粒径を調べた。また、比較例として、磁場熱処理工程を行わず、準備工程⇒急速熱処理工程という手順で磁性材料(試料No.21〜33)を作製し、得られた磁性材料の磁気特性およびFe相(α−Fe相)の平均結晶粒径を調べた。
準備工程では、原料のSm−Fe系合金を準備する。Smを13質量%含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成を有する合金の溶湯を、メルトスパン法により急冷(冷却速度5×105℃/秒以上)して、厚み10μm程度の急冷薄帯のSm−Fe系合金を作製した。このSm−Fe系合金は、非晶質合金である。
磁場熱処理工程では、Sm−Fe系合金に、アルゴン雰囲気中、表1および表2に示す磁場を印加しながら、表1および表2に示す温度T1で熱処理を施した。この加熱温度T1の保持時間は3時間とした。試料No.21〜33では、この工程は行わなかった。
急速熱処理工程では、加熱温度T1での熱処理に連続して、5分以内に表1および表2に示す温度T2まで昇温し、その温度T2で表1及び表2に示す保持時間で保持し、さらに5分以内に500℃以下まで冷却した。試料No.21〜33では、室温から温度T2までを5分以内に昇温した。以上のようにして、表1及び表2に示す試料No.1〜No.33の磁性材料を製造した。
試料No.1〜No.33の磁性材料について、磁気特性を評価した。具体的には、振動試料型磁力計(東英工業株式会社製 VSM−5SC−5HF型)を用いて残留磁化(T)および保磁力(kA/m)を測定した。各試料の残留磁化および保磁力を表1および表2に示す。
また、試料No.1〜No.33の磁性材料について、XRD装置(株式会社リガク製 SmartLab)を用いて結晶相の分析を行うと共に、XRDによる回折ピークの半値幅からシェラーの式を用いてFe相(α−Fe相)の平均結晶粒径(結晶粒サイズ)を求めた。各試料のFe相の平均結晶粒径を表1および表2に示す。
XRDによる結晶相分析の結果から、2T以上4T以下の磁場を印加しながら250℃以上350℃以下の熱処理⇒600℃以上800℃以下まで急速に昇温⇒2分以上10分以下保持⇒500℃以下まで急速に冷却、を行った試料No.1〜9は、結晶相として、Fe相およびSm5Fe17相の存在が確認でき、Fe相(軟磁性相)とSm5Fe17相(硬磁性相)とが混在する組織(コンポジット組織)となっていた。これに対し、磁場熱処理において磁場が小さい試料No.12,13や、磁場熱処理を行わずかつ急速熱処理での加熱温度が低い試料No.21ではナノコンポジット組織とはなっていなかった。
試料No.1〜9は、残留磁化が0.72T以上で、かつ保磁力が1000kA/m以上であった。これに対し、磁場熱処理の加熱温度が低い試料No.10、磁場熱処理の加熱温度が高い試料No.11、磁場熱処理の印加磁場が小さい試料No,12,13、磁場熱処理の印加磁場が大きい試料No.14,15、急速熱処理の保持時間が短い試料No.16、急速熱処理の保持時間が長い試料No.17,18、急速熱処理の加熱温度が低い試料No.19、急速熱処理の加熱温度が高い試料No.20、磁場熱処理を行わなかった試料No.21〜33は、残留磁化が0.70T未満、保磁力が950kA/m未満と低かった。それは、微細かつ結晶性の高いFe相およびSm5Fe17相を十分に析出することができなかったからと考えられる。試料No.1〜9は、Fe相とSm5Fe17相とが混在するコンポジット組織となっていることで、Fe相によって残留磁化を向上でき、かつSm5Fe17相によって保磁力を向上できたと考えられる。
また、試料No.1〜9は、Fe相の平均結晶粒径は150nm以下であり、Sm5Fe17相の平均結晶粒径は120nm以下であった。特に、急速熱処理工程での加熱温度を700℃以下とした試料No.1〜8は、Fe相の平均結晶粒径が100nm以下であり、さらに微細な組織となっていた。それは、磁場熱処理における加熱温度が低く、かつ磁場も小さい上に、急速熱処理での加熱温度も低いことで、Fe相の粗大化がより抑制されたからと考えられる。これに対し、磁場熱処理⇒急速熱処理の二段階の熱処理を行った場合で、磁場熱処理での磁場が大きい試料No.14,15、急速熱処理での加熱温度が高い試料No.20、急速熱処理での保持時間が長い試料No.17,18では、Fe相の平均結晶粒径は150nm超と粗大化していた。磁場熱処理⇒急速熱処理の二段階の熱処理を行った場合で、磁場熱処理での加熱温度が低い試料No.10、急速熱処理での保持時間が短い試料No.16、急速熱処理での加熱温度が低い試料No.19では、Fe相の平均結晶粒径は100nm未満と小さいが、Fe相が十分に析出・結晶化されていないため残留磁化が小さく、Sm5Fe17相が生成されなかったため保磁力が小さくなったと考えられる。
本発明の磁性材料の製造方法は、各種モータ、特に、ハイブリッド車(HEV)やハードディスクドライブ(HDD)などに具備される高速モータに用いられる永久磁石の原料、素材の製造に好適に利用することができる。
10 磁性材料
11 軟磁性相(Fe相)
12 硬磁性相(Sm5Fe17相)
20 SM−Fe系合金粉末
30 急冷薄帯
11 軟磁性相(Fe相)
12 硬磁性相(Sm5Fe17相)
20 SM−Fe系合金粉末
30 急冷薄帯
Claims (2)
- SmとFeとを含有するSm−Fe系合金を準備する準備工程と、
前記Sm−Fe系合金に、SmおよびFeと反応しない雰囲気中または減圧雰囲気中、2T以上4T以下の磁場を印加しながら、250℃以上350℃以下の温度で熱処理を施す磁場熱処理工程と、
前記磁場熱処理工程の後、前記Sm−Fe系合金に、SmおよびFeと反応しない雰囲気中または減圧雰囲気中、前記磁場熱処理工程における加熱温度から600℃以上800℃以下まで5分以内に急速に昇温し、その温度で2分以上10分以下保持してから、500℃以下まで5分以内に急速に冷却する熱処理を施す急速熱処理工程と、を備える磁性材料の製造方法。 - 前記準備工程におけるSm−Fe系合金は、非晶質状態であり、Smの含有量が10質量%以上45質量%以下である請求項1に記載の磁性材料の製造方法。
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2015
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