JP2016134258A - 燃料電池システムの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】フラッディングの判定精度を向上させる。【解決手段】燃料電池システム100の制御装置200が、燃料電池システム100の運転履歴に基づいて単セル1の触媒の劣化度合いに応じた適正IV特性を推定し、適正IV特性に基づいて燃料電池スタック10の負荷に応じた単セル1の適正温度を算出し、単セル1の中から選択された代表セルと、代表セルよりもフラッディングが生じやすいフラッディング判定用セルと、の少なくとも2つの単セル1の温度を取得し、フラッディング判定用セルの温度が適正温度以上であって、フラッディング判定用セルと代表セルとの温度差が所定値以上のときに、少なくともフラッディング判定用セルでフラッディングが生じていると判定するように構成される。【選択図】図1
Description
本発明は燃料電池システムの制御装置に関する。
従来の燃料電池システムの制御装置として、所定の閾値よりも電圧が低い燃料電池単セル(以下「単セル」という。)があるか否かを判定し、所定の閾値よりも電圧が低い単セルがあった場合には、さらに電圧低下の原因が電解質膜の過剰な加湿(フラッディング)によるものか、過剰な乾燥によるものかを判定し、判定結果に応じて水排出運転(フラッディング解消運転)又は乾燥抑制運転のいずれか一方を行うように構成されたものがある(特許文献1参照)。
しかしながら、単セルの電圧低下は、前述したような電解質膜の乾湿状態の変化による一時的なIV特性の悪化に起因する場合に限らず、触媒の経時劣化による永続的なIV特性の悪化に起因する場合がある。
したがって、前述した従来の燃料電池システムの制御装置のように、所定の閾値よりも低い単セルがあった場合に必ず水排出運転又は乾燥抑制運転のいずれか一方を実施するように構成すると、単セルの電圧低下の原因が触媒の経時劣化によるIV特性の悪化に起因するものであった場合には、電解質膜の乾湿状態が適切な状態であるにもかかわらず必ず水排出運転又は乾燥抑制運転のいずれか一方が実施されることになる。そのため、更なる電圧低下を招くおそれがある。
つまり、前述した従来の燃料電池システムの制御装置は、フラッディングが生じているか否かを判定するにあたって、触媒の経時劣化によるIV特性の悪化を考慮していなかったので、フラッディングの判定精度に問題があった。
本発明はこのような問題に着目してなされたものであり、触媒の経時劣化によるIV特性の悪化を考慮した精度の高いフラッディング判定を行うことを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様によれば、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電力を発生する燃料電池単セルを複数積層して構成された燃料電池スタックを備える燃料電池システムを制御する制御装置が、燃料電池システムの運転履歴に基づいて燃料電池単セルの触媒の劣化度合いに応じた適正IV特性を推定し、適正IV特性に基づいて燃料電池スタックの負荷に応じた燃料電池単セルの適正温度を算出し、燃料電池単セルの中から選択された代表セルと、代表セルよりもフラッディングが生じやすいフラッディング判定用セルと、の少なくとも2つの燃料電池単セルの温度を取得し、フラッディング判定用セルの温度が適正温度以上であって、フラッディング判定用セルと代表セルとの温度差が所定値以上のときに、少なくともフラッディング判定用セルでフラッディングが生じていると判定するように構成されている。
この態様によれば、フラッディングが生じているか否かを判定するにあたって、フラッディング判定用セルの温度が、触媒の経時劣化度合いに応じた単セルの適正温度よりも高いか否かを判定するので、フラッディングによる一時的なIV特性の悪化によってフラッディング判定用セルの温度が高くなっているのか、又は触媒の経時劣化による永続的なIV特性の悪化よってフラッディング判定用セルの温度が高くなっているのかを判別することができる。その上でさらにフラッディング判定用セルと代表セルとの温度差が所定値以上か否かを判定するので、フラッディング判定用セルからの放熱量が少ないためにフラッディング判定用セルの温度が高くなっているのか、又はフラッディングによる一時的なIV特性の悪化によってフラッディング判定用セルの温度が高くなっているのかを判別することができる。よって、触媒の経時劣化を考慮した精度の高いフラッディング判定を実施することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
図1は、本発明の一実施形態による燃料電池システム100及び燃料電池システム100を制御する電子制御ユニット200の概略構成図である。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック10と、燃料電池スタック10に対して燃料ガスの給排を行うための燃料ガス給排装置20と、燃料電池スタック10に対して酸化剤ガスの給排を行うための酸化剤ガス給排装置30と、燃料電池スタック10を冷却する冷却水を循環させるための冷却水循環装置40と、燃料電池スタック10の出力端子に電気的に接続される電気負荷部50と、を備える。
燃料電池スタック10は、複数の燃料電池単セル(以下「単セル」という。)1を積層方向に沿って互いに積層し、各単セル1を電気的に直列に接続したものである。各単セル1は、膜電極接合体1aを備える。膜電極接合体1aは、電解質膜と、電解質膜の一側に形成されたアノード極と、電解質膜の他側に形成されたカソード極と、を備える。
燃料電池スタック10で発電が行われているときは、アノード極及びカソード極の各電極で以下の電気化学反応が起こる。
アノード極 : 2H2→4H++4e−
カソード極 : 4H++4e−+O2 →2H2O
アノード極 : 2H2→4H++4e−
カソード極 : 4H++4e−+O2 →2H2O
各単セル1内には、アノード極に燃料ガスとしての水素を供給するための水素流通路2aと、カソード極に酸化剤ガスとしての空気を供給するための空気流通路3aと、が形成される。また、隣接する2つの単セル1同士間に、冷却水を供給するための冷却水流通路4aが形成される。
各単セル1の水素流通路2a、空気流通路3a及び冷却水流通路4aは、それぞれ燃料電池スタック10内で並列に接続されており、これにより、燃料電池スタック10内に水素通路2、空気通路3及び冷却水通路4が形成される。水素通路2、空気通路3及び冷却水通路4の入口及び出口は、それぞれ燃料電池スタック10の積層方向一端側に設けられる。本実施形態では、燃料電池スタック10内で水素及び空気の流れる向きが逆向きとなるように、水素通路2及び空気通路3にそれぞれ水素及び空気を供給しているが、同じ向きとなるように水素及び空気を供給しても良い。また、本実施形態では、冷却水の流れる向きを水素の流れる向きと同じ向きとしているが、逆向きとしても良い。
燃料ガス給排装置20は、水素供給管21と、水素源としての高圧水素タンク22と、水素供給制御弁23と、バッファ部24と、パージ管25と、パージ制御弁26と、を備える。
水素供給管21は、水素通路2に供給する水素が流れる配管であって、一端が高圧水素タンク22に連結され、他端が水素通路2の入口に連結される。
高圧水素タンク22は、水素供給管21を介して水素通路2に供給するための水素を貯蔵する。
水素供給制御弁23は、遮断弁231と、レギュレータ232と、インジェクタ233と、を含んで構成される。
遮断弁231は、電子制御ユニット200によって開閉される電磁弁であり、水素供給管21に設けられる。遮断弁231が開かれると、高圧水素タンク22から水素供給管21に水素が流出する。遮断弁231が閉じられると、高圧水素タンク22から水素供給管21に水素が流出しなくなる。
レギュレータ232は、遮断弁231よりも下流の水素供給管21に設けられる。レギュレータ232は、連続的又は段階的に開度を調整することができる圧力制御弁であり、その開度は電子制御ユニット200によって制御される。レギュレータ232の開度を制御することで、レギュレータ232下流の水素の圧力、すなわちインジェクタ233から噴射される水素の圧力が制御される。
インジェクタ233は、レギュレータ232よりも下流の水素供給管21に設けられる。インジェクタ233は、例えばニードル弁であり、電子制御ユニット200によって開閉制御される。インジェクタ233の開弁期間を制御することで、インジェクタ233から噴射される水素の流量が制御される。
このように、水素供給制御弁23によって、高圧水素タンク22から水素通路2への水素の供給が制御される。すなわち、水素供給制御弁23によって、所望の圧力及び流量に制御された水素が、間欠的に水素通路2に供給される。
インジェクタ233よりも下流の水素供給管21には、アノード圧力センサ211が設けられる。アノード圧力センサ211は、水素通路2内の水素の圧力(以下「アノード圧力」という。)を代表する値として、インジェクタ233よりも下流の水素供給管21内の水素の圧力を検出する。
バッファ部24は、例えば水素通路2の出口と連通させたタンクであり、水素通路2から流出してきたアノードオフガスを一時的に貯蔵する。アノードオフガスは、各単セル1内で電気化学反応に使用されなかった余剰の水素と、空気通路3から膜電極接合体1aを介して水素通路2にリークしてきた窒素等の不活性ガスや水蒸気と、の混合ガスである。バッファ部24は、アノードオフガスを一時的に貯蔵する機能を有していればよく、例えば水素通路2の下流側(出口近傍)にアノードオフガスを一時的に貯蔵できる程度の空間を形成し、その空間をバッファ部24としても良い。すなわち、水素通路2の下流側がバッファ部24として機能するように水素通路2を形成しても良い。
パージ管25は、一端がバッファ部24に連結され、他端が後述するカソードオフガス管37に設けられた希釈器39に連結される。
パージ制御弁26は、電子制御ユニット200によって開閉される電磁弁であり、パージ管25に設けられる。パージ制御弁26は、通常は閉弁されており、周期的に短時間にわたり開弁される。パージ制御弁26が開弁されると、バッファ部24内のアノードオフガスがパージ管25を介して希釈器39に流入する。
酸化剤ガス給排装置30は、空気供給管31と、エアクリーナ32と、コンプレッサ33と、インタークーラ34と、バイパス制御弁35と、バイパス管36と、カソードオフガス管37と、カソード圧力制御弁38と、希釈器39と、を備える。
空気供給管31は、空気通路3に供給する空気が流れる配管であって、一端がエアクリーナ32に連結され、他端が空気通路3の入口に連結される。
エアクリーナ32は、空気供給管31に吸入される空気中の異物を取り除く。エアクリーナ32は、酸素源32aとなる大気中に配置される。すなわち、酸素源32aはエアクリーナを介して空気供給管31と連通している。
コンプレッサ33は、例えば遠心式又は軸流式のターボコンプレッサであり、空気供給管31に設けられる。コンプレッサ33は、エアクリーナ32を介して空気供給管31に吸入した空気を圧縮して吐出する。
インタークーラ34は、コンプレッサ33よりも下流の空気供給管31に設けられ、コンプレッサ33から吐出された空気を例えば走行風や冷却水などで冷却する。
コンプレッサ33とインタークーラ34との間の空気供給管31には、第1流量センサ212が設けられる。第1流量センサ212は、コンプレッサ33から吐出された空気の流量(以下「吐出空気流量」という。)を検出する。なお、第1流量センサ212をコンプレッサ33よりも上流の空気供給管31に設け、第1流量センサ212によってコンプレッサ33が吸入する空気の流量を検出するようにしても良い。
バイパス管36は、コンプレッサ33から吐出された空気の一部又は全部を、必要に応じて燃料電池スタック10を経由させずにカソードオフガス管37に直接流入させるための配管である。バイパス管36は、一端がバイパス制御弁35の第2出口ポート35cに連結され、カソード圧力制御弁38と希釈器39との間のカソードオフガス管37に連結される。
バイパス管36には、第2流量センサ213が設けられる。第2流量センサ213は、バイパス制御弁35を介してバイパス管36に流入してきた空気(以下「バイパス空気」という。)の流量を検出する。
バイパス制御弁35は、連続的又は段階的に開度を調整することができる電動三方弁であって、入口ポート35aと、第1出口ポート35bと、第2出口ポート35cと、を備える。バイパス制御弁35の開度は、電子制御ユニット200によって制御される。入口ポート35aは、インタークーラ34側の空気供給管31に連結される。第1出口ポート35bは、燃料電池スタック10側の空気供給管31に連結される。第2出口ポート35cは、バイパス管36に連結される。バイパス制御弁35の開度を調整することで、入口ポート35aと、第1出口ポート35b及び第2出口ポート35cと、の連通状態が調整される。
具体的には、バイパス制御弁35が全閉にされたときは、入口ポート35aと第1出口ポート35bとが連通状態となり、入口ポート35aと第2出口ポート35cとが非連通状態となる。その結果、コンプレッサ33から吐出された空気はバイパス管36に流入せず、バイパス制御弁35を介して全て空気供給管31から空気通路3に流入する。
一方でバイパス制御弁35が全開にされたときは、入口ポート35aと第1出口ポート35bとが非連通状態となり、入口ポート35aと第2出口ポート35cとが連通状態となる。その結果、コンプレッサ33から吐出された空気はバイパス制御弁35を介して全てバイパス管36に流入し、空気通路3には流入しなくなる。
そして、バイパス弁制御弁が全閉及び全開以外の開度(任意の中間開度)にされたときは、入口ポート35aは、第1出口ポート35b及び第2出口ポート35cとそれぞれ連通した状態となる。その結果、バイパス制御弁35の開度に応じてコンプレッサ33から吐出された空気の一部がバイパス制御弁35を介してバイパス管36に流入し、残りがバイパス制御弁35を介して空気供給管31から空気通路3に流入する。バイパス制御弁35の開度を大きくするほど、コンプレッサ33から吐出された空気のうち、バイパス管36に流入する空気の比率が高くなる。
このようにバイパス制御弁35は、コンプレッサ33から吐出された空気のうち、空気通路3に供給される空気の量及びバイパス管36内へ流れ込む空気の量を制御する。
カソードオフガス管37は、空気通路3の出口から流出したカソードオフガスが流れる配管であって、一端が空気通路3の出口に連結され、他端が大気に開口している。カソードオフガスは、各単セル1内で電気化学反応に使用されなかった余剰の酸素と、窒素等の不活性ガスと、電気化学反応によって生じた水蒸気と、の混合ガスである。
カソード圧力制御弁38は、カソードオフガス管37に設けられる。カソード圧力制御弁38は、連続的又は段階的に開度を調整することができる電磁弁であり、その開度は電子制御ユニット200によって制御される。カソード圧力制御弁38の開度を制御することで、空気通路3内の圧力であるカソード圧力が制御される。
カソード圧力制御弁38よりも上流のカソードオフガス管37には、カソード圧力センサ214が設けられる。カソード圧力センサ214は、空気通路3内の圧力(カソード圧力)を代表する値として、カソード圧力制御弁38よりも上流のカソードオフガス管37内の圧力を検出する。
希釈器39は、カソード圧力制御弁38よりも下流のカソードオフガス管37に設けられる。前述したように、希釈器39にはパージ管25が連結されており、カソードオフガス管37を介してカソードオフガス及びバイパス空気が流入し、パージ管25を介してアノードオフガスが流入する。その結果、希釈器39の内部でカソードオフガス、バイパス空気及びアノードオフガスが混合され、それらの混合ガスが排出ガスとして希釈器39よりも下流のカソードオフガス管37から大気に排出される。このように、希釈器39の内部でカソードオフガス、バイパス空気及びアノードオフガスを混合させることで、アノードオフガス中の水素をカソードオフガス及びバイパス空気によって希釈し、大気に排出される排出ガスの水素濃度が基準濃度(例えば4%)未満になるようにしている。
このように本実施形態では、水素通路2からパージ管25に流出したアノードオフガスを、水素供給管21に戻すことなくカソードオフガス管37から大気に排出している。すなわち本実施形態による燃料電池システム100は、水素非循環式である。
水素非循環式の燃料電池システム100の場合、アノードオフガスを水素供給管21に戻して循環させる水素循環式のシステムに比べ、アノードオフガスを水素供給管21に戻して循環させるための循環ポンプなどが不要となる。そのため、水素非循環式の燃料電池システム100は、水素循環式のシステムと比べて、循環ポンプを駆動するための電力が不要となって燃費の向上を図ることができると共に、構成を簡素化してコストを低減することができる。
冷却水循環装置40は、冷却水循環配管41と、冷却水ポンプ42と、ラジエータ43と、ラジエータバイパス管44と、ラジエータバイパス制御弁45と、を備える。
冷却水循環配管41は、燃料電池スタック10を冷却するための冷却水を循環させる配管であって、一端が冷却水通路4の入口に接続され、他端が冷却水通路4の出口に接続される。以下では、冷却水通路4の出口側を冷却水循環配管41の上流と定義し、冷却水通路4に入口側を冷却水循環配管41の下流と定義して説明する。
冷却水ポンプ42は、冷却水循環配管41の下流側に設けられ、冷却水を循環させる。
ラジエータ43は、冷却水ポンプ42よりも上流の冷却水循環配管41に設けられ、冷却水通路4の出口から流出した冷却水を、例えば走行風やラジエータファン46によって吸い込んだ空気によって冷却する。
ラジエータバイパス管44は、ラジエータ43を経由させずに冷却水を循環させることができるように設けられた配管であって、一端がラジエータバイパス制御弁45に接続され、他端がラジエータ43と冷却水ポンプ42との間の冷却水循環配管41に接続される。
ラジエータバイパス制御弁45は、例えばサーモスタットであり、ラジエータ43よりも上流の冷却水循環配管41に設けられる。ラジエータバイパス制御弁45は、冷却水の温度に応じて冷却水の循環経路を切り替える。具体的には、冷却水の温度が予め設定された基準温度よりも高いときは、冷却水通路4から冷却水循環配管41に流出した冷却水が、ラジエータ43を経由して再び冷却水通路4に流入するように冷却水の循環経路を切り替える。逆に、冷却水の温度が基準温度以下のときは、冷却水通路4から冷却水循環配管41に流出した冷却水が、ラジエータ43を経由せずにラジエータバイパス管44を流れて直接冷却水通路4に流入するように冷却水の循環経路を切り替える。
ラジエータバイパス制御弁45よりも上流の冷却水循環配管41には、水温センサ215が設けられる。水温センサ215は、冷却水通路4から冷却水循環配管41に流出した冷却水の温度を検出する。この水温センサ215で検出された冷却水の温度が予め定められた目標温度(例えば60℃)となるように、冷却水ポンプ42が電子制御ユニット200からの制御信号に基づいて制御される。
電気負荷部50は、第1コンバータ51と、回路遮断器52と、バッテリ53と、第2コンバータ54と、モータジェネレータ55と、インバータ56と、を備える。
電気負荷部50と燃料電池スタック10の出力端子との接続ライン57には、燃料電池スタック10から取り出される電流(以下「スタック電流」という。)を検出するための電流センサ216と、燃料電池スタック10の出力端子の端子間電圧(以下「スタック電圧」という。)を検出するための電圧センサ217と、が設けられる。この電流センサ216で検出されたスタック電流が、燃料電池スタック10(又は単セル1)の負荷に相当する。
第1コンバータ51は、一次側端子の端子間電圧を昇降圧させることが可能な電気回路を備えた双方向性のDC/DCコンバータであり、一次側端子が回路遮断器52を介して燃料電池スタック10の出力端子に接続され、二次側端子がインバータ56の直流側端子に接続される。第1コンバータ51は、電子制御ユニット200からの制御信号に基づいて一次側の端子間電圧となるスタック電圧を昇降圧させ、スタック電圧を燃料電池システム100の運転状態に応じて設定される目標スタック電圧に制御する。
回路遮断器52は、電子制御ユニット200によって開閉され、燃料電池スタック10と電気負荷部50とを電気的に接続又は遮断する。なお、回路遮断器52は必ずしも設ける必要はない。
バッテリ53は、例えばニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル・水素蓄電池、リチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池である。バッテリ53には、燃料電池スタック10の余剰電力及びモータジェネレータ55の回生電力が充電される。バッテリ53に充電された電力は、必要に応じてモータジェネレータ55やコンプレッサ33等の燃料電池システム100が備える各制御部品を駆動するために使用される。
第2コンバータ54は、例えば二次側端子の端子間電圧を昇降圧させることが可能な電気回路を備えた双方向性のDC/DCコンバータであり、一次側端子がバッテリ53の出力端子に接続され、二次側端子がインバータ56の直流側端子に接続される。第2コンバータ54は、電子制御ユニット200からの制御信号に基づいて二次側の端子間電圧となるインバータ56の入力電圧を昇降圧させ、入力電圧を燃料電池システム100の運転状態に応じて設定される目標入力電圧に制御する。
モータジェネレータ55は、例えば三相の永久磁石型同期モータであり、燃料電池システム100が搭載される車両の動力を発生させるモータとしての機能と、車両の減速時に発電するジュネレータとしての機能と、を備える。モータジェネレータ55は、インバータ56の交流側端子に接続され、燃料電池スタック10の発電電力及びバッテリ53の電力によって駆動される。
インバータ56は、電子制御ユニット200からの制御信号に基づいて直流側端子から入力された直流電流を交流電流に変換して交流側端子から出力し、逆に電子制御ユニット200からの制御信号に基づいて交流側端子から入力された交流電流を直流電流に変換して直流側端子から出力することが可能な電気回路を備える。インバータ56の直流側端子は第1コンバータ51及び第2コンバータ54の二次側端子に接続され、インバータ56の交流側端子はモータジェネレータ55の入出力端子に接続される。インバータ56は、モータジェネレータ55をモータとして機能させるときは、燃料電池スタック10のスタック電流及びバッテリ53のスタック電流の合成直流電流を交流電流(本実施形態では三相交流電流)に変換してモータジェネレータ55に供給する。一方でインバータ56は、モータジェネレータ55をジュネレータとして機能させるときは、モータジェネレータ55からの交流電流を直流電流に変換してバッテリ53等に供給する。
電子制御ユニット200は、デジタルコンピュータから構成され、双方性バス201によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)202、RAM(ランダムアクセスメモリ)203、CPU(マイクロプロセッサ)204、入力ポート205及び出力ポート206を備える。
入力ポート205には、前述したアノード圧力センサ211や第1流量センサ212、第2流量センサ213、カソード圧力センサ214、水温センサ215、電流センサ216、電圧センサ217の他にも、第1単セル温度センサ218や第2単セル温度センサ219、燃料電池スタック10のインピーダンスを検出するためのインピーダンスセンサ(図示せず)などの出力信号が、対応する各AD変換器207を介して入力される。また、入力ポート205には、燃料電池システム100の起動及び停止を判断するためのスタートスイッチ220からの出力信号が入力される。
第1単セル温度センサ218は、各単セル1の中から選択された1枚の単セル(以下「代表セル」という。)の温度T1を検出するためのセンサであって、例えば熱電対を用いることができる。本実施形態では、燃料電池スタック10の積層方向中央部に位置し、各単セル1の中でも平均的な電圧挙動を示す単セルを代表セルとしている。
第2単セル温度センサ219は、各単セル1の中から代表セルよりもフラッディングが生じやすい単セルとして選択されたフラッディング判定用セルの温度T2を検出するためのセンサであって、例えば熱電対を用いることができる。本実施形態では、燃料電池スタック10の積層方向他端側(空気通路の入口が形成されている側の反対側)に位置し、各単セル1の中で最もフラッディングが生じやすいエンドセルをフラッディング判定用セルとしている。
出力ポート206には、対応する駆動回路208を介して水素供給制御弁23(遮断弁231、レギュレータ232及びインジェクタ233)やパージ制御弁26、コンプレッサ33、バイパス制御弁35、カソード圧力制御弁38、冷却水ポンプ42、第1コンバータ51、回路遮断器52、第2コンバータ54、モータジェネレータ55、インバータ56などの各制御部品が電気的に接続される。
このように、入力ポート205には燃料電池システム100を制御するために必要な各種センサの出力信号が入力されており、電子制御ユニット200は、入力ポート205に入力された各種センサの出力信号に基づいて、各制御部品を制御するための制御信号を出力ポート206から出力する。
ここで、燃料電池スタック10で発電が行われているときは、前述した電気化学反応によって単セル1のカソード極内の触媒層で水が生成される。この生成水がカソード極内のガス拡散層に過剰に蓄積されると、ガス拡散層に蓄積された生成水によって触媒層への空気供給が阻害されるフラッディングと呼ばれる現象が生じる。フラッディングが生じている単セル1では、ガス拡散層に蓄積された生成水によって触媒層への空気供給が阻害されることになる。そのため、フラッディングが生じている単セル1では、一時的に他の正常な単セル1(フラッディングが生じていない単セル1)よりもIV特性が悪化し、当該単セル1の電圧も低下することになる。
このように単セル1のIV特性は、単セル1の電解質膜が過剰に加湿された状態になると一時的に悪化するが、電解質膜が過剰に乾燥された状態になっても同様に一時的に悪化する。すなわち単セル1の電圧は、単セル1の電解質膜が過剰に加湿された状態になると一時的に低下し、同様に電解質膜が過剰に乾燥された状態になっても一時的に低下する。
そこで、前述した従来の燃料電池システムの制御装置では、所定の閾値よりも電圧が低い単セルがあるか否かを判定し、所定の閾値よりも電圧が低い単セルがあった場合には、さらに電圧低下の原因が電解質膜の過剰な加湿(フラッディング)によるものか、過剰な乾燥によるものかを判定し、判定結果に応じて水排出運転(フラッディング解消運転)又は乾燥抑制運転のいずれか一方を行うようにしていた。
しかしながら、単セル1のIV特性の悪化は、上記のような電解質膜の乾湿状態の変化による一時的なものに限らず、触媒の経時劣化による永続的なものがある。以下、この触媒の経時劣化による永続的なIV特性の悪化について説明する。
単セル1の両電極内の触媒層に含まれている触媒(例えば白金)は、電極電位が所定電位(例えば0.8V)以上になるとイオン状態となって電解質膜中に溶出し、所定電位未満になると電解質膜中などで再析出する。つまり、スタック電圧が所定の触媒劣化電圧(電極電位が所定電位以上になるスタック電圧)以上になると、触媒層に含まれる白金が溶出し始め、触媒劣化電圧未満になると、溶出した白金が析出し始める。
そして、燃料電池システム100の運転中は、燃料電池スタック10の負荷変動(スタック電流の変化)に応じてスタック電圧が触媒劣化電圧を跨いで繰り返し上下動することになるので、特にアノード極の電位が所定電位を跨いで繰り返し上下動することになる。その結果、アノード極内の触媒層に含まれる触媒の溶出と析出が繰り返されて触媒の表面積が徐々に減少し、触媒が経時的に劣化していく。このような触媒の経時劣化が生じて触媒の表面積が減少すると、その分電気化学反応が起こりにくくなるので、単セル1のIV特性が永続的に悪化する。
したがって、前述した従来の燃料電池システムの制御装置のように、所定の閾値よりも電圧が低い単セルがあった場合に必ず水排出運転又は乾燥抑制運転のいずれか一方を実施すると、単セルの電圧低下の原因が触媒の経時劣化によるIV特性の悪化によるものであった場合には、電解質膜の乾湿状態が適切な状態であるにもかかわらず必ず水排出運転又は乾燥抑制運転のいずれか一方が実施されることになる。そのため、更なる単セルの電圧低下を招くおそれがある。
つまり、前述した従来の燃料電池システムの制御装置では、触媒の経時劣化によるIV特性の悪化を考慮していなかったため、フラッディングが生じているか否かの判定精度に問題があった。
以下ではまず、図2を参照して、単セル1のIV特性と、発電時における単セル1の発熱量と、の関係について説明する。図2において実線は、触媒の経時劣化が生じておらず、また、一時的なIV特性の悪化も生じていない単セルのIV特性(以下「初期IV特性」という。)である。一方で破線は、何らかの要因で初期IV特性からIV特性が悪化している単セルのIV特性である。
図2に示すように、燃料ガスのとしての水素が有する化学エネルギを全て電気エネルギに変換できた場合、単セル電圧は理論電圧(1.23V)となる。
しかしながら発電時には、単セル1の内部で抵抗分極や活性化分極、拡散分極などの様々な損失が発生するため、化学エネルギを全て電気エネルギに変換することはできず、化学エネルギの一部は損失として熱エネルギに変換される。この発電時に発生する損失分が、発電時における単セル1の発熱量となる。
そして、図2に破線で示すように、何らかの要因で単セル1のIV特性が悪化した場合には、同じ負荷で発電していたとしてもIV特性が悪化した分だけ損失が増加するので、発電時における単セル1の発熱量が増加する。つまり、IV特性が悪化している単セル1の温度は、他の正常な単セル1の温度よりも高くなる傾向にある。
そこで本実施形態では、発電時における単セル1の発熱量が単セル1のIV特性に応じて変化し、結果としてIV特性が悪化している単セル1の温度が他の正常な単セル1の温度よりも高くなることに着目して、触媒の経時劣化による単セル1のIV特性の悪化を考慮した精度の高いフラッディング判定を実施する。以下、図3及び図4を参照して、本実施形態によるフラッディング判定制御について説明する。
図3に破線で示すように、燃料電池システム100が運転されると、その運転履歴に応じて触媒の経時劣化が生じ、単セル1のIV特性が初期IV特性から徐々に悪化していく。触媒の経時劣化による単セル1のIV特性の悪化は永続的なものである。
したがって、燃料電池システム100の運転時における現在の単セル1のIV特性は、電解質膜の乾湿状態が適切な状態であれば、触媒の経時劣化によって悪化したIV特性となる。つまり、触媒の経時劣化によって悪化したIV特性が、単セル1の適正なIV特性となる。
ここで、発電時における単セル1の温度は、発電時における単セル1の発熱量に応じて変化し、発電時における単セル1の発熱量は、前述したように単セル1のIV特性に応じて変化する。つまり、発電時における単セル1の温度は、単セル1のIV特性に応じて変化する。したがって、単セル1のIV特性が分かれば、発電時における単セル1の温度を推定することができる。
そこで本実施形態では、燃料電池システム100の運転履歴に基づいて、触媒の経時劣化度合いに応じた単セル1の適正IV特性を推定し、適正IV特性に基づいて、触媒の経時劣化度合いを考慮した単セル1の適正温度を燃料電池スタック10の負荷に応じて算出する。この触媒の経時劣化度合いを考慮した単セル1の適正温度は、換言すれば、単セル1のIV特性が適正IV特性の状態で発電が行われたときの当該単セル1の発熱量(損失)から予想される当該単セル1の温度である。
そして、図3に一点鎖線で示すように、フラッディングが生じている単セル1のIV特性は、適正IV特性からさらに悪化することになるので、フラッディングが生じている単セル1の温度は、基本的に適正温度よりも高くなる。
一方で、発電時における単セル1の温度は、発電時における単セル1の発熱量以外にも、発電時に冷却水や外気との熱交換によって単セル1から奪われる熱量(以下「単セル1からの放熱量」という。)の大きさによっても変化する。したがって、例えば単セル1からの放熱量が想定よりも少なくなれば、フラッディングが生じていなくても、単セル1の温度が適正温度よりも高くなる場合がある。なお、各単セル1が接する冷却水や外気の温度は基本的に同じなので、各単セル1からの放熱量も基本的に同じになる。
そこで本実施形態では、フラッディングが生じているおそれがあるか否かを単セル1の温度が適正温度よりも高くなっているか否かで判定し、さらに単セル1からの放熱量の影響を排除するために、温度が適正温度よりも高くなっている単セル1と、当該単セル1とは別の単セル1と、の少なくとも2つの単セル1の温度差を比較し、その比較結果に基づいて最終的にフラッディングが生じているか否かを判定する。
図4は、電子制御ユニット200が実施する本実施形態によるフラッディング判定制御について説明するフローチャートである。
ステップS1において、電子制御ユニット200は、以下の(1)式に基づいて、カソード極上の液水量を算出する。
カソード極上の液水量=生成水量+極間水移動量−液水排出量−蒸気排出量 …(1)
カソード極上の液水量=生成水量+極間水移動量−液水排出量−蒸気排出量 …(1)
生成水量は、発電時における電気化学反応によってカソード極上で生成される液水量である。生成水量は、例えばスタック電流(負荷)に基づいて、予めROM202に記憶されたテーブルを参照することで算出できる。
極間水移動量は、電解質膜を介して電極間を移動する水の収支であって、発電時にプロトンが移動するのに伴ってアノード極からカソード極に移動する電気浸透による水移動量から、電解質膜の厚み方向の含水率の勾配によってカソード極からアノード極に移動する拡散による水移動量を減算した値である。極間水移動量については公知の種々の方法で算出することが可能である。電気浸透による水移動量は、例えばスタック電流(負荷)に基づいて、予めROM202に記憶されたテーブルを参照することで算出できる。また、拡散による水移動量は、例えば電解質膜の含水率や電解質膜中の水拡散係数、カソード圧力とアノード圧力との差圧などに基づいて、演算や予めROM202に記憶されたマップ等を参照することで算出できる。電解質膜の含水率は、例えば燃料電池スタック10のインピーダンスから算出することができる。電解質膜中の水拡散係数は、電解質膜の厚みや素材等に応じて定まる物性値である。
液水排出量は、空気通路3から排出される液水量である。液水排出量は、例えばスタック電流(負荷)と、空気通路3に流入する空気の流量(=吐出空気流量−バイパス空気流量)とに基づいて、予めROM202に記憶されたマップ等を参照することで算出できる。
蒸気排出量は、空気通路3から排出される水蒸気量である。蒸気排出量は、例えば冷却水の温度と、空気通路3に流入する空気の流量とに基づいて、予めROM202に記憶されたマップ等を参照することで算出できる。
ステップS2において、電子制御ユニット200は、燃料電池システム100の運転履歴に基づいて、触媒の経時劣化度合いに応じた単セル1の適正IV特性を推定する。
前述したように触媒の経時劣化は、スタック電圧が触媒劣化電圧を跨いで繰り返し上下動することによって、触媒の溶出と再析出が繰り返されることによって生じる。したがって触媒の経時劣化度合いは、燃料電池システム100の運転履歴、例えば燃料電池システム100の全運転時間と、スタック電圧が触媒劣化電圧以上になっている時間とから判断することができる。
そこで本実施形態では、燃料電池システム100の運転履歴と触媒の経時劣化度合いとを関連付けたマップを予め実験等によって作成し、予めROM202に記憶させている。そして、燃料電池システム100の運転履歴に基づいて、前述したマップを参照して触媒の経時劣化度合いを算出し、初期IV特性を触媒の経時劣化度合いに基づいて補正することで、触媒の経時劣化度合いに応じた単セル1の適正IV特性を推定するようにしている。
なお、触媒の溶出は、高温、高湿潤状態のほうが起こりやすいので、スタック電圧が触媒劣化電圧以上になっているときの冷却水の温度及び電解質膜の乾湿状態と相関関係にあるパラメータ(例えばカソード極上の液水量や燃料電池スタック10のインピーダンス)の一方又は双方に基づいて触媒の経時劣化度合いを補正した上で、触媒の経時劣化度合いに応じた単セル1の適正IV特性を推定しても良い。
また、電流センサ216で検出されたスタック電流と、電圧センサ217で検出されたスタック電圧と、に基づく実際のIV特性に基づいて、適正IV特性を逐次補正するようにしても良い。
ステップS3において、電子制御ユニット200は、フラッディングが生じやすい運転状態にあるか否かを判定する。電子制御ユニット200は、カソード極上の液水量が所定量未満であれば、フラッディングが生じやすい運転状態ではないと判定してステップS4の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、カソード極上の液水量が所定量以上であれば、フラッディングが生じやすい運転状態であると判定してステップS5の処理に進む。
ステップS4において、電子制御ユニット200は、燃料電池システム100を通常運転させる。具体的には、電子制御ユニット200は、吐出空気流量及びカソード圧力がスタック電流(負荷)に応じた目標吐出空気流量及び目標カソード圧力となるように、コンプレッサ及びカソード圧力制御弁を制御する。また、冷却水の温度が予め定められた目標温度となるように、冷却水ポンプを制御する。
ステップS5において、電子制御ユニット200は、電流センサ216によって検出されたスタック電流と、第1単セル温度センサ218によって検出された代表セルの温度T1と、第2単セル温度センサ219によって検出されたフラッディング判定用セルの温度T2と、を取得する。
ステップS6において、電子制御ユニット200は、ステップS2で推定した適正IV特性に基づいて、燃料電池スタック10の負荷に応じた単セル1の適正温度を算出する。具体的には、電子制御ユニット200は、適正IV特性と燃料電池スタック10の負荷としてのスタック電流とに基づいて、予めROM202に記憶された複数のマップの中から選択された最適なマップを参照して単セル1の適正温度を算出する。
このROM202に記憶された各マップは、触媒の経時劣化度合いに応じたIV特性ごとに、スタック電流に応じた単セル1の適正温度を格納したものである。電子制御ユニット200は、触媒の経時劣化度合いに応じた各IV特性の中から、適正IV特性と一致するIV特性又は適正IV特性に近いIV特性を選択し、その選択したIV特性に対応するマップを参照して、ステップS3で取得したスタック電流に応じた単セル1の適正温度を算出する。
なお、適正温度は、前述したように単セル1のIV特性が適正IV特性の状態で発電が行われたときの当該単セル1の発熱量(損失)から予想される当該単セル1の温度である。したがって、単セル1の初期温度が異なると、適正温度も変化するおそれがある。そこで、適正IV特性に基づいて算出した適正温度を、単セル1の初期温度、例えば外気温度やシステム起動直後の冷却水の温度等に基づいて補正しても良い。
また、ステップS6では適正IV特性から直接的に適正温度を算出しているが、適正IV特性から間接的に適正温度を算出しても良く、例えば、適正IV特性に基づいて燃料電池スタック10の負荷に応じた単セル1の発熱量を算出し、単セル1の発熱量に基づいて適正温度を算出しても良い。このように、適正IV特性に基づいて適正温度を算出する方法については特に限定されるものではない。
また、ステップS6では、燃料電池スタック10の負荷としてのスタック電流が単セル1の負荷としてもみなせるので、スタック電流から単セル1の適正温度を算出しているが、例えばスタック電流をスタック枚数で除算した単セル1の負荷としての単セル電流から単セル1の適正温度を算出しても良い。
ステップS7において、電子制御ユニット200は、フラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高いか否かを判定する。このような判定を行うのは、フラッディング判定用セルの温度が適正温度よりも高ければ、適正IV特性から一時的にIV特性が悪化し、その結果として発熱量が増加してフラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高くなっている可能性があると考えられるからである。すなわち、フラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高ければ、フラッディング判定用セルにおいてフラッディングが生じている可能性があると考えられるからである。
したがって電子制御ユニット200は、フラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高ければ、フラッディング判定用セルにおいてフラッディングが生じている可能性があると判定してステップS8の処理に進む。一方で、フラッディング判定用セルの温度T2が適正温度以下であれば、フラッディング判定用セルにおいてフラッディングが生じている可能性はないと判定してステップS4の処理に進む。
ステップS8において、電子制御ユニット200は、フラッディング判定用セルと代表セルとの温度差が所定値以上か否かを判定する。このような判定を行うのは、以下の理由による。
前述したように、発電時における単セル1の温度は、発電時における単セル1の発熱量以外にも、発電時における単セル1からの放熱量の大きさによっても変化する。したがって、フラッディング判定用セルでフラッディングが生じていなくても、フラッディング判定用セルからの放熱量が想定よりも少ない場合は、フラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高くなることがある。そして、フラッディング判定用セルからの放熱量が想定よりも少ない場合は、代表セルからの放熱量も同様に少なくなっているので、放熱量の減少に伴って代表セルの温度T1も高くなる。そのため、両セルの温度差にほとんど差はでない。
一方で、フラッディング判定用セルでフラッディングが生じていて、代表セルではまだフラッディングが生じていない場合は、フラッディング判定用セルのIV特性だけが一時的に悪化して発熱量が増加するので、両セルの間に温度差が生じる。
したがって、温度差が所定値未満であれば、単に放熱量が少ないためにフラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高くなっていると考えることができる。つまり、IV特性の一時的な悪化以外の要因で、フラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高くなっていると考えることができる。そして、温度差が所定値以上であれば、フラッディングによるIV特性の一時的な悪化によって発熱量が増加してフラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高くなっていると考えることができる。
したがって電子制御ユニット200は、温度差が所定値以上であれば、フラッディング判定用セルでフラッディングが生じているためにフラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高くなっていると判定し、ステップS9の処理に進む。一方で電子制御ユニット200は、温度差が所定値未満であれば、単にフラッディング判定用セルからの放熱量が少ないためにフラッディング判定用セルの温度T2が適正温度よりも高くなっていると判定し、ステップS4の処理に進む。
ステップS9において、電子制御ユニット200は、フラッディング解消運転を実施する。具体的には、電子制御ユニット200は、スタック電流(負荷)に応じた目標吐出空気流量よりも吐出空気流量を増加させる制御、スタック電流(負荷)に応じた目標カソード圧力よりもカソード圧力を低下させる制御、及び、予め定められた目標温度よりも冷却水の温度を上昇させる制御の少なくとも1つを実施する。
以上説明した本実施形態によれば、燃料ガスしての水素と酸化剤ガスとしての空気の電気化学反応により電力を発生する単セル1を複数積層して構成された燃料電池スタック10を備える燃料電池システム100を制御する電子制御ユニット(制御装置)200が、燃料電池システム100の運転履歴に基づいて単セル1の触媒の劣化度合いに応じた適正IV特性を推定し、適正IV特性に基づいて燃料電池スタック10の負荷に応じた単セル1の適正温度を算出し、単セル1の中から選択された代表セルと、代表セルよりもフラッディングが生じやすいフラッディング判定用セルと、の少なくとも2つの単セル1の温度を取得し、フラッディング判定用セルの温度T2が適正温度以上であって、フラッディング判定用セルと代表セルとの温度差が所定値以上のときに、少なくともフラッディング判定用セルでフラッディングが生じていると判定するように構成されている。
このように本実施形態によれば、燃料電池システム100の運転履歴から触媒の経時劣化度合いに応じた適正IV特性を推定し、その推定した適正IV特性から触媒の経時劣化度合いに応じた単セル1の適正温度を算出する。
そして、フラッディングが生じているか否かを判定するにあたって、フラッディング判定用セルの温度が適正温度よりも高いか否かを判定するので、フラッディングによる一時的なIV特性の悪化によってフラッディング判定用セルの温度が高くなっているのか、又は触媒の経時劣化による永続的なIV特性の悪化よってフラッディング判定用セルの温度が高くなっているのかを判別することができる。
その上でさらにフラッディング判定用セルと代表セルとの温度差が所定値以上か否かを判定するので、フラッディング判定用セルからの放熱量が少ないためにフラッディング判定用セルの温度が高くなっているのか、又はフラッディングによる一時的なIV特性の悪化によってフラッディング判定用セルの温度が高くなっているのかを判別することができる。
よって、触媒の経時劣化度合いを考慮した精度の高いフラッディング判定を実施することができる。すなわち、触媒の経時劣化度合いに応じた発電時における単セル1の発熱量の変化と、発電時における単セル1からの放熱量の変化と、を考慮した精度の高いフラッディング判定を実施することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば上記の実施形態では、図4のフローチャートのステップS1でカソード極上の液水量を算出し、ステップS3でカソード極上の液水量を所定量と比較することでフラッディングが生じやすい運転状態にあるか否かを判定していたが、電解質膜の乾湿状態(含水率)と燃料電池スタック10のインピーダンスとの間には相関関係があるため、例えばステップS1で燃料電池スタック10のインピーダンスを算出し、ステップS3で燃料電池スタック10のインピーダンスを所定値と比較することでフラッディングが生じやすい運転状態にあるか否かを判定しても良い。
また上記の実施形態では、触媒の経時劣化度合いを判断するための燃料電池システム100の運転履歴として、燃料電池システム100の全運転時間と、スタック電圧が触媒劣化電圧以上になっている時間と、を使用していたが、これに限らずスタック電圧の変動幅やスタック電圧が触媒劣化電圧を跨いだ回数などを運転履歴として使用しても良い。
また上記の実施形態では、水素非循環式の燃料電池システム100を例に説明したが、水素循環式の燃料電池システムであっても良い。
1 燃料電池単セル
10 燃料電池スタック
100 燃料電池システム
200 電子制御ユニット(制御装置)
10 燃料電池スタック
100 燃料電池システム
200 電子制御ユニット(制御装置)
Claims (1)
- 燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により電力を発生する燃料電池単セルを複数積層して構成された燃料電池スタックを備える燃料電池システムの制御装置であって、
前記燃料電池システムの運転履歴に基づいて、前記燃料電池単セルの触媒の劣化度合いに応じた適正IV特性を推定し、
前記適正IV特性に基づいて、前記燃料電池スタックの負荷に応じた前記燃料電池単セルの適正温度を算出し、
前記燃料電池単セルの中から選択された代表セルと、前記代表セルよりもフラッディングが生じやすいフラッディング判定用セルと、の少なくとも2つの前記燃料電池単セルの温度を取得し、前記フラッディング判定用セルの温度が前記適正温度以上であって、前記フラッディング判定用セルと前記代表セルとの温度差が所定値以上のときに、少なくとも前記フラッディング判定用セルでフラッディングが生じていると判定するように構成された、
ことを特徴とする燃料電池システムの制御装置。
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JP2015007150A JP2016134258A (ja) | 2015-01-16 | 2015-01-16 | 燃料電池システムの制御装置 |
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Cited By (2)
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---|---|---|---|---|
CN113675438A (zh) * | 2020-05-15 | 2021-11-19 | 丰田自动车株式会社 | 燃料电池*** |
JP2022131744A (ja) * | 2021-02-26 | 2022-09-07 | 三菱重工業株式会社 | 燃料電池の温度評価装置、制御装置、及び、温度評価方法 |
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2015
- 2015-01-16 JP JP2015007150A patent/JP2016134258A/ja active Pending
Cited By (3)
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