JP2016108881A - 石積擁壁の補強構造及び石積擁壁の補強方法 - Google Patents

石積擁壁の補強構造及び石積擁壁の補強方法 Download PDF

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【課題】施工時の労力の増大を抑制しつつ、土圧に対する構造耐力を高めることができる石積擁壁の補強構造及び石積擁壁の補強方法を提供する。【解決手段】法面に沿って積み重ねられた複数の積み石13が壁面14を形成する石積擁壁15の補強構造は、壁面14に付着する付着膜21と、基端部に付着膜21に対する係合部を有して先端側が地山11に挿入される補強材22と、を備える。付着膜21は、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料にイソシアネートを混合して硬化させることによって形成される。【選択図】図2

Description

本発明は、法面に沿って石やコンクリートブロックなどを積み重ねた石積擁壁の補強構造及び同石積擁壁の補強方法に関する。
地山を形成する地盤の横圧(水平土圧)に抗して法面の崩壊を防ぐための擁壁の一種として、石やコンクリートブロックなど(以下、これらを「積み石」という)を法面に沿って積み重ねた石積擁壁がある。こうした石積擁壁は、背面の地山が締まっている切土部や比較的良質な裏込め材料で十分な締固めがされる盛土部等、背面地盤からの土圧が小さい場合に適用される。
一方、背面地盤からの土圧が大きい場合には、鉄筋等の補強材を地山に打ち込んで、その引抜き抵抗力によって法面をより強固に補強する鉄筋補強土工法や補強土壁工法などの補強方法が採用される。こうした鉄筋補強土工法や補強土壁工法により補強された法面は、高い耐震性を示すことが被災事例や模型実験の結果を通じて立証されている。
石積擁壁は、材料の入手が容易であることから、古くから用いられている。しかし、こうした石積擁壁では、上部の積み石が地震時の振動等によって沈下し、その沈下によってその下側にある積み石が前方に押し出されることにより、壁面が変形したり崩壊したりすることがある。
そこで、既存の石積擁壁に対して、積み石同士が接する目地部に短い補強材を打ち込んでそれら積み石を外方に押しやり、積み石同士を相互に拘束することで壁面の変形を抑制したり、さらにその壁面を網やシートで覆って石の崩落を抑制したりする石積壁の補強方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかし、こうした補強では、水平土圧に抗する構造耐力を高めるほどの強度向上は望めず、あくまでも壁面を形成する積み石が沈下したり崩落したりするのを抑制する効果しかない。そのため、当初の想定よりも大きな地震が発生した場合には、土圧に抗して法面を維持することができなくなる。
そこで、土圧に抗する構造耐力をより高めるために、既存の石積擁壁に対して、補強土壁工法等を採用することも考えられる。すなわち、既存の石積擁壁の壁面を覆うように壁面材となるコンクリートプレキャスト板を配置して、そのコンクリートプレキャスト板に異形鉄筋などの長い補強材を挿通してすべり面より奥側の安定領域まで打ち込むことで、石積擁壁の補強を行う(例えば、特許文献2)。
特許第4316939号公報 特開平9−324433号公報
ところで、既存の石積擁壁を補強土壁工法によって補強する場合には、コンクリートプレキャスト板の運搬や設置にクレーンを要するために施工に広い空間を要する。また、コンクリートプレキャスト板ごとに長い補強材を打ち込む必要があるため、施工期間も長くなる。このように、既存の石積擁壁において、土圧に抗する構造耐力を高める補強を施す場合には、単に積み石の崩落を抑制するための補強をする場合より、施工の際の労力が大幅に増大してしまうという課題がある。
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、施工時の労力の増大を抑制しつつ、土圧に対する構造耐力を高めることができる石積擁壁の補強構造及び石積擁壁の補強方法を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する石積擁壁の補強構造は、法面に沿って積み重ねられた複数の積み石が壁面を形成する石積擁壁の補強構造であって、前記壁面に付着する付着膜と、基端部に前記付着膜に対する係合部を有して先端側が地山に挿入される補強材と、を備え、前記付着膜は、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料にイソシアネートを混合して硬化させることによって形成される。
この構成によれば、壁面を形成する積み石に付着膜が付着することによって積み石同士を連結して一体化するので、土圧によって積み石が個々に変位することによる壁面の部分的なはらみ出しや積み石の崩落が抑制される。また、こうした付着膜に係合部が係合する補強材を地山に挿入することにより、一体化した積み石の変位を抑制することができる。したがって、一体化した積み石の全体で土圧を受け、その土圧を補強材に伝達することにより、土圧に対する構造耐力を高めることができる。さらに、付着膜は、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料にイソシアネートを混合して硬化させることによって形成されるので、吹き付け等によって壁面に容易に付着させることができる。したがって、積み石の壁面を覆うように壁面材となるコンクリートプレキャスト板を配置する場合と比較して、施工時の労力の増大を抑制しつつ、土圧に対する構造耐力を高めることができる。
上記石積擁壁の補強構造において、前記補強材の設置数は、前記積み石の数よりも少ない複数であって、少なくとも1つの前記補強材の先端部は、前記地山のすべり面より奥側の安定領域まで挿入されることが好ましい。
この構成によれば、複数の積み石は付着膜によって一体化されるので、積み石よりも少ない数の補強材で土圧に抗することができる。また、補強材の先端部を地山のすべり面より奥側の安定領域(すべり面を境界面とした場合に法面側にある移動土塊と区分される不動土塊)まで挿入することにより、補強材による補強効果をより高めることができる。
上記石積擁壁の補強構造において、前記補強材は、前記壁面に設けられた有底の挿入孔に挿入される軸材と、前記軸材が挿入された前記挿入孔に充填されるグラウト材と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、補強材を構成する軸材とグラウト材によって、法面を構成する移動土塊のすべり力に抵抗するせん断抵抗力を確保することができる。また、挿入孔に充填したグラウト材によって、地山との間に生じる摩擦抵抗力を増加させるとともに、軸材の変質を抑制することができる。
上記石積擁壁の補強構造において、前記係合部は、前記付着膜に接する位置に配置される支圧板と、前記支圧板を前記付着膜に押しつける固定具と、を含むことが好ましい。
この構成によれば、固定具により、付着膜を壁面に対して固定することができる。また、固定具と付着膜との間に支圧板を配置することにより、固定具によって支圧板を押しつける力を、付着膜によって一体化された石積擁壁に伝達して、補強効果を高めることができる。
上記課題を解決する構造物の補強方法は、法面に沿って積み重ねられた複数の積み石が壁面を形成する石積擁壁の補強方法であって、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料にイソシアネートを混合した液状物を前記複数の積み石が形成する前記壁面に膜状に付着させる付着工程と、前記壁面に付着した前記液状物を硬化させて付着膜を形成させる硬化工程と、前記付着膜を貫通するように地山に挿入される補強材によって前記付着膜を前記壁面に固定する固定工程と、を備える。
この構成によれば、上記構造物の補強構造と同様の作用効果を得ることができる。
本発明によれば、施工時の労力の増大を抑制しつつ、石積擁壁の土圧に対する構造耐力を高めることができる。
石積擁壁の補強構造の一実施形態を模式的に示す正面図。 石積擁壁の補強構造の一実施形態を模式的に示す断面図。
以下、石積擁壁の補強構造及び石積擁壁の補強方法の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の補強構造は、地山11の法面12(本実施形態では、斜面)に沿って積み重ねられた複数の積み石13が壁面14を形成する石積擁壁15の補強構造である。なお、積み石13は石材であってもよいし、コンクリート等からなるブロックなどの人工物であってもよく、また、それらの形状も特に限定されない。
図2に示すように、本実施形態の積み石13は、壁面14を形成する前面が正面視略矩形状をなすとともに、後方に錐状の控え部分を有する間知ブロック(間知石)として例示している。石積擁壁15の構成は任意に変更することができるが、積み石13が間知ブロックである場合には、その控え部分同士を連結する胴込めコンクリート16や、コンクリートや砕石等からなる裏込層17を備えていてもよい。
石積擁壁15の補強構造は、複数の積み石13が形成する壁面14に付着する付着膜21と、基端部に付着膜21に対する係合部を有して先端側が法面12に挿入される補強材22と、を備える。付着膜21は、少なくとも積み石13同士の接続部分を被覆し、好ましくは、積み石13が形成する壁面14の全面を被覆する。
付着膜21は、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料を主剤として、この主剤に硬化剤としてのイソシアネートを混合して液状の被覆材としたものを、壁面14に薄く(例えば、厚さ2〜10mm程度に)付着させて硬化させることによって形成される。被覆材の主剤としてポリオールを用いてイソシアネートを混合すると、ポリオールとイソシアネートがウレタン結合によって重合したウレタン樹脂となる。
また、主剤としてポリアミンを用いてイソシアネートを混合すると、ポリアミンとイソシアネートとがウレア結合によって重合した超速硬化型のポリウレア樹脂となる。ポリウレア樹脂は、ウレタン樹脂と比較して硬化するまでの時間が短く、空気中の湿気や水分の影響を受けにくいために施工性や耐久性に優れるので、付着膜21の材料としてより好ましい。なお、付着膜21を形成する被覆材として、ポリオール及びポリアミンの両方を含む主剤にイソシアネートを混合した樹脂を用いることもできる。
例えば、ポリウレア樹脂としては、LINE-X LLC(所在地:米国アラバマ州ハンツビル)製の「LINE-X・XS-100」や「LINE-X・XS-350」が好適に用いられるが、それ以外の他のポリウレア樹脂を用いることも可能である。
因みに、「LINE-X・XS-100」は、イソシアネート混合物のLINE-X・XS-100・A剤(硬化剤)とポリオール・芳香族ジアミン混合物であるLINE-X・XS-100・B剤(樹脂)を加熱混合したポリウレア・ポリウレタン混成のエラストマー(ゴムのような高弾性を示す高分子物質)である。一方、「LINE-X・XS-350」は、イソシアネート混合物のLINE-X・XS-350・A剤(硬化剤)とポリオール・芳香族ジアミン混合物であるLINE-X・XS-350・B剤(樹脂)を加熱混合したポリウレアエラストマーである。
そして、これらのポリウレア樹脂の物性(ASTM規格)について、例えば引っ張り強度(試験方法:ASTM D412)については、10〜50N/mm程度であることが好ましく、「LINE-X・XS-100」の場合が14.80N/mmである一方、「LINE-X・XS-350」の場合は23.7N/mmである。同様に、引き裂き強さ(試験方法:ASTM D624)については、30〜150N/mmであることが好ましく、「LINE-X・XS-100」の場合が51.7N/mmである一方、「LINE-X・XS-350」の場合は138.2N/mmである。
このような材料で形成された樹脂層である付着膜21は、引張強度や耐摩耗性、耐油性に優れた補強膜となって各積み石13の表面に密着し、同時に、隣り合う積み石13同士を連結して強固に一体化させる。その結果、付着膜21が付着した石積擁壁15に対して、地震時等に地山11を形成する地盤の横圧(水平土圧)が作用したとしても、積み石13の位置が個々にずれたり移動したりすることが抑制される。
補強材22は、いわゆる地山補強土工法に用いられる基本的な構造のものであり、付着膜21を貫通するように壁面14に設けられた有底の挿入孔23に挿入される軸材25と、軸材25が挿入された挿入孔23に充填されるグラウト材24と、を含むことが好ましい。
補強材22の設置数は、積み石13の数よりも少ない複数であって、少なくとも1つの補強材22の先端部は、法面12を構成する地山11のすべり面18より奥側の安定領域19まで挿入されることが好ましい。なお、安定領域19とは、すべり面18を境界面とした場合に、法面12側となる主働領域にある移動土塊と区分される不動土塊が存在する不動地山のことをいう。
補強材22の設置位置は、積み石13同士の境目部分であってもよいし、積み石13と重なる位置であってもよいが、壁面14において概ね2mに1カ所程度設けることが好ましい。
軸材25は、基端部にねじ部(図示略)を有し、そのねじ部に螺合する固定具としてのナット27を締め付けることにより、付着膜21を壁面14に押しつける。このとき、付着膜21に接する位置に支圧板28を配置すると、ナット27による締め付け力(固定具によって支圧板を押しつける力)を、支圧板28を介して付着膜21に効果的に伝えることができるので、好ましい。すなわち、係合部は、付着膜21に接するように配置される支圧板28と、支圧板28を付着膜21に押しつけるナット27などの固定具と、を含む。
次に、石積擁壁15の補強方法について説明する。
まず、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料に硬化剤となるイソシアネートを混合した液状物である被覆材を、複数の積み石13が形成する壁面14に吹き付けまたは塗布によって、膜状に付着させる(付着工程)。
そしてその後、所定時間静置することによって壁面14に付着させた液状物を硬化させて、付着膜21を形成させる(硬化工程)。付着膜21は被覆材を対象物に直接吹き付けまたは塗布することで形成されるので、壁面14を構成する積み石13の表面に凹凸がある場合にも、その表面に密着させることができる。
付着膜21の形成にあたっては、付着工程の前に、壁面14に1種または2種以上の下地材による下地処理を施す下地処理工程を追加してもよい。例えば、壁面14がコンクリートブロックからなる場合には、ポリマーセメントやエポキシ樹脂などを下地材として塗布すると、付着膜21を壁面14に対して良好に付着させることができる。この場合には、下地材も付着膜21の一部を構成する。
なお、石積擁壁15に水抜き管20が設けられている場合には、その水抜き管20の部分を避けて付着膜21を設けてもよいし、付着膜21を形成した後に、水抜き管20の部分に孔を開けて水抜き管20を開口させてもよい。
次に、付着膜21が付着した状態の壁面14に、付着膜21を貫通するように有底の挿入孔23を掘削により形成する(挿入孔形成工程)。挿入孔23は、地山11において想定されるすべり面18より奥側の安定領域19まで到達する深さにすることが好ましい。
続いて、掘削した挿入孔23にグラウト材24であるセメントミルク等を注入する(注入工程)。また、注入工程の前または後に、挿入孔23に軸材25を挿入する(挿入工程)。このとき、軸材25のねじ部は挿入孔23から突出させておく。そして、1日程度養生して、グラウト材24を硬化させる。
グラウト材24の硬化後、挿入孔23から突出した軸材25のねじ部に、支圧板28を噛ませた状態でナット27を螺合させる。そして、ナット27を締め付けることにより、付着膜21を貫通するように法面12に挿入される補強材22によって、係合部を構成する支圧板28を付着膜21に係合させるとともに、付着膜21を壁面14に押しつけて固定する(固定工程)。これにより、石積擁壁15の補強が完了する。
次に、石積擁壁15の補強構造及び補強方法の作用について説明する。
図2に白抜き矢印で示すように、石積擁壁15に対して、地震等によって大きな水平土圧が作用した場合には、上部の積み石13が沈下してその下側の積み石13がはらみ出し、壁面14が変形したり積み石13が落下したりするおそれがある。
その点、本実施形態における石積擁壁15の壁面14を構成する積み石13は、ポリウレア樹脂等の硬化型樹脂からなる付着膜21によって強固に一体化されているので、土圧によって積み石13が個々に変位することによる壁面14の部分的なはらみ出しや積み石13の崩落が抑制される。
また、付着膜21と一体化した積み石13は、補強材22によって地山11に固定されているので、地震時等に積み石13が受ける水平土圧は、付着膜21を介して補強材22に伝達される。すると、補強材22と地山11との間に作用する摩擦力からなる引き抜き抵抗力を主とする補強効果により、一体化した積み石13の倒壊が抑制される。すなわち、積み重ねられた複数の積み石13は付着膜21により一体化した壁部となってその全体で土圧を受け、その土圧を補強材22の引き抜き抵抗力によって支えることにより、一体化した壁部の倒壊が抑制される。
このように、石積擁壁15においては、付着膜21により積み石13を一体化した壁部とするとともにその壁部を補強材22によって地山11に固定することにより、構造耐力が向上される。この点について、石積擁壁15の壁面14をシートや網などで覆った場合には、部分的な積み石13の落下を抑制することはできたとしても、土圧を受ける構造耐力を向上させることはないので、地震時等に法面12(地山11)の崩壊を抑えることはできない。
また、付着膜21は、液状の樹脂材料の吹き付けによって壁面14に容易に付着させることができるので、壁面材となるコンクリートプレキャスト板を配置する場合と比較して、部材の入手に伴うコストが安くなる上、施工時の労力の増大が抑制される。また、付着膜21をしてポリウレア樹脂等を用いることにより、表面材として格子枠やシート、網等を配置する場合と比較して靭性が大きく向上して高い強度が得られる上、壁面14の全面に密着させることができるので、個々の積み石13の変位を抑制する効果が高い。さらに、付着膜21をしてポリウレア樹脂等を用いることにより、表面材として金網等を用いる場合と比較して、酸化による変質など、劣化が生じにくいので、耐久性が高くなる。
以上詳述した第1実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)壁面14を形成する積み石13に付着膜21が付着することによって積み石13同士を連結して一体化するので、土圧によって積み石13が個々に変位することによる壁面14の部分的なはらみ出しや積み石13の崩落が抑制される。また、こうした付着膜21に係合部が係合する補強材22を法面12に挿入することにより、一体化した積み石13の変位を抑制することができる。したがって、一体化した積み石13の全体で土圧を受け、その土圧を補強材22に伝達することにより、土圧に対する構造耐力を高めることができる。さらに、付着膜21は、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料にイソシアネートを混合して硬化させることによって形成されるので、吹き付け等によって壁面14に容易に付着させることができる。したがって、積み石13の壁面14を覆うように壁面材となるコンクリートプレキャスト板を配置する場合と比較して、施工時の労力の増大を抑制しつつ、土圧に対する構造耐力を高めることができる。
(2)複数の積み石13は付着膜21によって一体化されるので、積み石13よりも少ない数の補強材22で土圧に抗することができる。また、補強材22の先端部を地山11のすべり面18より奥側の安定領域19(すべり面18を境界面とした場合に法面12側にある移動土塊と区分される不動土塊)まで挿入することにより、補強材22による補強効果をより高めることができる。
(3)補強材22を構成する軸材25とグラウト材24によって、法面12を構成する移動土塊のすべり力に抵抗するせん断抵抗力を確保することができる。また、挿入孔23に充填したグラウト材24によって、地山との間に生じる摩擦抵抗力を増加させるとともに、軸材25の変質を抑制することができる。例えば、金属製の軸材25を用いた場合には、グラウト材24によって軸材25の酸化を抑制することができる。
(4)固定具であるナット27を締め付けることにより、付着膜21を壁面14に対して固定することができる。また、ナット27と付着膜21との間に支圧板28を配置することにより、ナット27によって支圧板28を押しつける力を、付着膜21によって一体化された石積擁壁15に伝達して、補強効果を高めることができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ナット27と付着膜21との間に支圧板28を設けなくてもよい。
・固定具はナット27に限らず、例えば、ねじ部を有さない軸材25の端部が挿通される挿通孔を有する定着具と、定着具の挿通孔に差し込まれるくさびとを固定具としてもよい。この場合には、挿通部材の挿通孔に軸材25を挿通した後にくさびを差し込むことにより、支圧板28を付着膜21に対して押しつけることができる。
・石積擁壁15は、隣り合う積み石13の間にセメントやモルタルなどを充填しない空積み式であってもよいし、隣り合う積み石13の間にセメントやモルタルなどを充填して積み石13同士を連結した練積み式であってもよい。
・例えば耐震基準の強化や地盤の強度の変化などにより、法面に対してさらに補強が必要になった場合などには、上記実施形態の付着膜21を覆うように複数の板部材(例えば、コンクリートプレキャスト板)を配置して、その板部材を補強材で法面に固定するようにしてもよい。すなわち、上記実施形態の補強を施した後に、さらにその法面を地山補強土工法により補強してもよい。
さらに、上記実施形態及び各変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(イ)法面に沿って積み重ねられた複数の積み石が壁面を形成する石積擁壁の補強構造であって、
前記壁面に沿って配置される複数の板部材と、
基端部に前記板部材に対する係合部を有して先端側が地山に挿入される補強材と、
前記複数の板部材の表面に付着する付着膜と、
を備え、
前記被覆膜は、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料にイソシアネートを混合して硬化させることによって形成されることを特徴とする石積擁壁の補強構造。
この構成によれば、壁面に沿って配置される複数の板部材によって、積み石が個々に変位することによる壁面の部分的なはらみ出しや積み石の崩落が抑制される。また、補強材を地山に挿入することにより、板部材を地山に固定することができる。さらに、複数の板部材に付着膜が付着することによって、板部材が形成する壁部の強度が増す。したがって、土圧に対する構造耐力を高めることができる。この付着膜は、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料にイソシアネートを混合して硬化させることによって形成されるので、吹き付け等によって複数の板部材に容易に付着させることができる。
(ロ)前記補強材を第1の補強材とすると、
基端部に前記付着膜に対する係合部を有して先端側が地山に挿入される第2の補強材をさらに備えることを特徴とする上記(イ)に記載の法面の補強構造。
この構成によれば、付着膜に係合部が係合する第2の補強材を地山に挿入することにより、付着膜を地山に固定して、土圧に対する構造耐力をより高めることができる。
11…地山、12…法面、13…積み石、14…壁面、15…石積擁壁、18…すべり面、19…安定領域、21…付着膜、22…補強材、23…挿入孔、24…グラウト材、25…軸材、27…固定具としてのナット、28…支圧板。

Claims (5)

  1. 法面に沿って積み重ねられた複数の積み石が壁面を形成する石積擁壁の補強構造であって、
    前記壁面に付着する付着膜と、
    基端部に前記付着膜に対する係合部を有して先端側が地山に挿入される補強材と、
    を備え、
    前記付着膜は、ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料にイソシアネートを混合して硬化させることによって形成される
    ことを特徴とする石積擁壁の補強構造。
  2. 前記補強材の設置数は、前記積み石の数よりも少ない複数であって、
    少なくとも1つの前記補強材の先端部は、前記地山のすべり面より奥側の安定領域まで挿入される
    ことを特徴とする請求項1に記載の石積擁壁の補強構造。
  3. 前記補強材は、前記付着膜を貫通するように前記壁面に設けられた有底の挿入孔に挿入される軸材と、前記軸材が挿入された前記挿入孔に充填されるグラウト材と、を含む
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の石積擁壁の補強構造。
  4. 前記係合部は、前記付着膜に接するように配置される支圧板と、前記支圧板を前記付着膜に押しつける固定具と、を含む
    ことを特徴とする請求項3に記載の石積擁壁の補強構造。
  5. 法面に沿って積み重ねられた複数の積み石が壁面を形成する石積擁壁の補強方法であって、
    ポリオール及びアミンのうち少なくとも一方を含む樹脂材料にイソシアネートを混合した液状物を前記複数の積み石が形成する前記壁面に膜状に付着させる付着工程と、
    前記壁面に付着した前記液状物を硬化させて付着膜を形成させる硬化工程と、
    前記付着膜を貫通するように地山に挿入される補強材によって前記付着膜を前記壁面に固定する固定工程と、
    を備えることを特徴とする石積擁壁の補強方法。
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