本発明にかかる冷却室について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は冷却庫の前面図である。なお、以下の説明において、上下左右は図1に示すように冷却庫の前面に正対したときの上下左右とする。また、同様に前後は冷却庫の前面側(図1の紙面手前側)を前、背面側(図1の紙面奥側)を後とする。
図1に示すように、冷却庫Rfでは、最上段に冷蔵室1が配置されており、その下部に左右に並んだ製氷室2と上段冷凍室3とが配置されている。そして、製氷室2及び上段冷凍室3との下部に下段冷凍室4が配置されているとともに、最下段には野菜室5が配置されている。
図1に示すように、冷蔵室1の前面には、回転軸を中心として横方向(左又は右)に回動するヒンジ扉11、12が備えられている。ヒンジ扉11、12は独立して開閉可能な扉である。
製氷室2、上段冷凍室3、下段冷凍室4及び野菜室5は、いずれも、前後方向に水平に摺動することで貯蔵室ごと開閉する引出型の貯蔵室である。製氷室2、上段冷凍室3、下段冷凍室4及び野菜室5は前面側にそれぞれ、引出扉21、31、41及び51を備えている。また、各引出扉21、31、41及び51には、使用者が開閉操作するための把持部211、311、411及び511がそれぞれ設けられている。なお、把持部211、311、411及び511は引出扉21、31、41及び51の前面上部に設けられているが、これに限定されるものではない。
下段冷凍室4及び野菜室5は、箱型の貯蔵室40、50と、引出扉41、51と、物品を収納するための収納容器42、52とを備えている。
下段冷凍室4及び野菜室5は引出扉41及び51を摺動させるとき、収納容器42及び52も一体的に摺動する。近年、冷却庫Rfは、下段冷凍室4及び野菜室5は大型であり、内部に物品を収納すると、各収納容器42及び52は重くなる。そのため、本発明の冷却庫Rfにおいて、下段冷凍室4及び野菜室5には、使用者が引出扉41及び51を開くとき、開動作を補助する補助機構が備えられている。
下段冷凍室4及び野菜室5は大きさ等が異なる以外、実質的に同じ構成を有しており、以下の説明では、両者を代表して下段冷凍室4を参照して説明する。図2は本発明にかかる冷却庫の下段冷凍室の概略配置図であり、図3は図2に示す下段冷凍室の引出扉を取り外した状態の背面側から見た斜視図である。なお、図2において、右が冷却庫Rfの前面側(手前側)であり、左が背面側(奥側)である。
図2、図3に示すように、下段冷凍室4は、貯蔵室40と、引出扉41と、収納容器42と、容器支持部43と、連結部44と、固定レール45と、固定ローラ46と、移動ローラ47と、開方向付勢部6と、扉変位検知部7とを備えている。なお、上述の補助機構は開方向付勢部6と扉変位検知部7とを含んでいる。
図2に示すように、下段冷凍室4において、貯蔵室40は、冷却庫Rfの筐体の一部であり、内部は断熱体で形成されているとともに冷気が流入するダクト(不図示)を備えている。貯蔵室40は前面に物品を出し入れするための開口400が形成されており、引出扉41は開口400を開閉可能なように配置される。また、引出扉41も内部が断熱体で形成されており、貯蔵室40及び引出扉41で囲まれた下段冷凍室4の内部の空間への外部の熱の伝導を抑制している。
下段冷凍室4は、貯蔵室40の内部を引出扉41で密閉する構造を有しており、密閉することで貯蔵室40内部の冷気の外部への漏れを抑制する。引出扉41の背面側には、パッキン412が設けられている。パッキン412は引出扉41で開口400を閉じたとき、貯蔵室40の前面の開口400を囲む部分接触するように設けられている。
パッキン412は、ゴム、シリコンゴム等の弾性変形可能な材料で形成されている。これにより、貯蔵室40の前面と引出扉41の背面とに多少のずれがあっても、パッキン412が弾性変形し、開口400の前面に密着する。パッキン412を備えていることで、引出扉41は貯蔵室40に対してずれている場合でも貯蔵室40の開口400を確実に閉鎖(密閉)する。また、パッキン412を設けていることで、引出扉41と貯蔵室40の前面との間の緩衝材としても用いられるため、衝突による音、変形或いは破損等を抑制できる。
引出扉41が貯蔵室40に対し前方に移動することで、貯蔵室40の開口400が開状態になる。引出扉41の背面側には、引出扉41の移動方向に延びる容器支持部43が取り付けられている。容器支持部43は引出扉41の左右両端部に平行となるように取り付けられた一対の長尺部材である(図2、図3参照)。容器支持部43は板金を曲げて形成された部材であり、前面側を折り曲げて構成した固定部432を備えている。そして、容器支持部43は、固定部432を引出扉41の背面にねじ止めすることで固定されている。なお、この固定は、ねじ止めに限定されるものではなく、引出扉41と容器支持部43とをしっかり固定できる方法を広く採用することができる。
また、一対の容器支持部43の後端部(引出扉41に固定されるのと反対側)を連結する連結部44が取り付けられている。連結部44は、クランク状に形成された線材であり、両端部が一対の容器支持部43のそれぞれに回転可能に取り付けられている。容器支持部43及び連結部44は、収納容器42を下方から支持する。
収納容器42は、上部に開口を有する箱体である。収納容器42は、左右の外面から外側に突出する係合凸部421を備えている。係合凸部421を容器支持部43の上部に係合させることで、収納容器42は容器支持部43に支持される。収納容器42の背面側(奥側)の外面が連結部44と接触することで、容器支持部43が引出扉41とともに移動するときに、後にずれるのを抑制する。なお、係合凸部421を容器支持部43で支持するとき、容器支持部43の上部に収納容器42が移動しないように係合凸部421と係合する係合部を備えていてもよい。
下段冷凍室4では収納容器42が容器支持部43に支持されるとともに容器支持部43が引出扉41に固定される。そのため、下段冷凍室4において、収納容器42は引出扉41の移動とともに開口400から外部に排出され、或いは、貯蔵室40の内部に収納される。
容器支持部43は、収納容器42を支持する以外にも、引出扉41及び収納容器42の移動をガイドするガイド部材としても用いられる。容器支持部43による引出扉41及び収納容器42の移動ガイドについて説明する。
図2、図3に示すように、容器支持部43は外側に突出した移動レール430を備えている。移動レール430は、容器支持部43の長手方向(前後方向)に延びる凸部材である。また、貯蔵室40の左右両側壁の内面には、内側に向かって突出した固定レール45を備えている。固定レール45は、引出扉42が開口400を開閉するときの容器支持部43が摺動する方向(前後方向)に沿って延びるように形成されている。
移動レール430及び固定レール45は、いずれも前後に延びる凸部材が上下に並んで形成されており、それぞれ、断面コの字形状を有している。そして、貯蔵室40の左右両側の内壁の前側に回転可能に設けられた固定ローラ46と、容器支持部43の後側端部の移動レール430が突出している面に回転可能に設けられている移動ローラ47とを備えている。
容器支持部43は収納容器42を支持した状態で、移動ローラ47が固定レール45と転動可能に嵌るとともに、固定ローラ46が移動レール430に転動可能に嵌るように貯蔵室40に配置される。これにより、固定ローラ46が移動レール430の上壁の下面と摺動し、移動ローラ47が固定レール45の下壁の上面又は上壁の下面と摺動することで、容器支持部43の前後方向の移動がガイドされる。なお、移動ローラ47は引出扉41の位置によって、換言すると、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43を含む全体の重心の位置によって、固定レール45と接触する部分が下壁か上壁か切り替わる。
例えば、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43の重心が固定ローラ46よりも後側にあるときは、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が後下がりになり、移動ローラ47は固定レール45の下壁の上面と接触する。一方、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43の重心が固定ローラ46よりも前にあるときは、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が前下がりになるため、移動ローラ47は固定レール45の上壁の下面と接触する。
また、移動レール430の上壁の前端には前方が上方に向かって傾斜した上方傾斜部431が形成されている。固定レール45の後端は後方が下がる下方傾斜部451が形成されている。固定ローラ46が上方傾斜部431と摺動するとき、移動ローラ47が下方傾斜部451と摺動するようになっている。上方傾斜部431及び下方傾斜部451によって、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が奥まで移動した際に所定量(例えば、2.5mm)下がるようになっている。
引出扉41を後に移動させ、固定ローラ46が上方傾斜部431と摺動し、移動ローラ47が傾斜部451と摺動するとき、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43は自重により下方に移動とともに後方に移動し、引出扉41が開口400を閉鎖する。このときの、引出扉41の状態を閉鎖位置とする。このことから、下方傾斜部451及び上方傾斜部431とそれぞれ摺動する移動ローラ47及び固定ローラ46とが引出扉41(扉)が閉鎖位置から一定の範囲にあるとき、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43を閉方向に付勢する閉方向付勢部を構成する。
引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が閉方向付勢部から閉方向に付勢されているとき、引出扉41の背面に設けられているパッキン412は、引出扉41と貯蔵室40の前面とにはさまれて圧縮された状態となっている。
また、固定レール45前端の上壁の下面には、下方に向かって突出したストッパ452が備えられている。ストッパ452は容器支持部43とともに前方に移動する移動ローラ47が接触するようになっている。移動ローラ47がストッパ452に接触することで、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43の前方への移動が制限される。
なお、本実施形態において、閉方向付勢部として、レールの傾斜と引出扉41、収納容器42及び容器支持部43の自重とを利用したものを採用しているが、これに限定されるものではない。例えば、磁力を利用するもの、ばねとフックを利用したもの等を採用することも可能である。また、これらに限定するものではなく、引出扉41が閉鎖位置から一定の範囲内にあるときに引出扉41、収納容器42及び容器支持部43を閉方向に付勢するものを広く採用することができる。
次に、開方向付勢部6の詳細について図面を参照して説明する。図4は開方向付勢部の構成を示す図である。図1、図2に示すように、開方向付勢部6は下段冷凍室4の貯蔵室40の下壁の上面に配置されている。そして、開方向付勢部6は、後述する扉付勢部62で引出扉41の下部を押すように配置されている。すなわち、下段冷凍室4において、引出扉41では開方向付勢部6からの付勢力が引出扉41の下部の中央部分に作用することで、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が開方向に移動する。
図4に示すように、開方向付勢部6は、モータ61、扉付勢部62及び動力伝達部63を備えている。モータ61は、電力が供給されることで、出力軸611を回転する回転電動機である。扉付勢部62は、前方向に移動するとき、引出扉401を押圧し、引出扉401及び収納容器402を開方向に押す部材である。扉付勢部62は、前後方向に摺動可能に設けられている。
動力伝達部63は、モータ61の出力軸611の動力(回転)を、扉付勢部62に伝達するものである。動力伝達部63は、ウォーム630、第1歯車631、第2歯車632、第3歯車633及びラックギア634を備えている。
ウォーム630は、モータ61の出力軸611に固定され、螺旋状の溝を備えたねじ歯車である。ウォーム630は出力軸611と一体的に回転する。第1歯車631はウォーム630と歯合することができるウォームホイールであり、ここでは、はすば歯車である。モータ61の出力軸611が回転することで、その動力(回転力)は、ウォーム630を介して第1歯車631に伝達され、第1歯車631は回転する。
第1歯車631と第2歯車632とは歯合しており、第1歯車631の回転が第2歯車632に伝達される。第2歯車632と第3歯車633とは同一軸を有するように一体的に回転する。ラックギア634は扉付勢部62の側面に設けられており、第3歯車633と歯合する。第3歯車633の回転力がラックギア634を介して、扉付勢部62の直線方向の力として伝達される。
開方向付勢部6では、モータ61から出力された動力(回転力)を、動力伝達部63を利用して、扉付勢部62の直線移動に変換している。モータ61の動力をウォーム630から第1歯車631に伝達するとき、回転速度は小さくなる(減速する)が、トルクは大きくなる(増幅される)。
第1歯車631から第2歯車632に動力が伝達する際にも回転速度が減速する。また、第2歯車632と一体的に回転する第3歯車633は、第2歯車632よりも回転半径が小さいため、同じ回転角であっても歯車外周の移動量が小さくなり、結果として減速する。したがって、動力伝達部63は、モータ61の回転を減速するとともに、動力を増幅して扉付勢部62に伝達している。すなわち、モータ61のトルクが小さくても、扉付勢部62は大きな力で引出扉41を押圧することが可能である。なお、開方向付勢部6として、動力の伝達に3個の歯車と、ウォーム、ラックギアを用いているものとしているが、これに限定されるものではなく、モータの動力で引出扉を開方向に移動させるように付勢できる構成のものを広く採用することが可能である。
次に、閉方向付勢部と開方向付勢部との付勢力の作用範囲について説明する。図5は引出扉の位置と作用する力を示す図である。通常、下段冷凍室4の引出扉41を使用者が開く場合、開方向付勢部6からの付勢が終了した後、使用者が引出扉を引っ張り引出扉41には引っ張り力が作用するが、便宜上、ここでは使用者が引出扉41を引っ張る力を無視している。
図5において縦軸は閉方向付勢部及び開方向付勢部6から引出扉41に作用する力を、横軸は引出扉41の位置を示している。縦軸は引出扉41に付勢する力の大きさを示している。なお、閉方向付勢部は引出扉41を閉方向に付勢し、開方向付勢部6は引出扉41を開方向に付勢するものであり、閉方向付勢部及び開方向付勢部6の引出扉41を付勢する方向は逆向きである。また、横軸である扉位置は引出扉41が開口400を閉鎖している閉鎖位置P0を基準とし、閉方向付勢部による付勢が終了する閉方向付勢前端位置P1、開方向付勢部6による付勢が終了する開方向付勢前端位置P2としている。
上述したとおり、閉鎖位置P0から閉方向付勢前端位置P1までの間、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43は、閉方向付勢部から閉方向に付勢力F1が付勢されている。ここで、閉鎖位置P0から閉方向付勢前端位置P1までの間とは、固定ローラ46が上方傾斜部431の範囲にある及び移動ローラ47が下方傾斜部451の範囲にあるときである。なお、図5において、閉鎖位置P0の近傍で閉方向の付勢力F1が大きくなっている。これは、パッキンに備えられた磁石の磁力等による力が付与されるためである。
引出扉41が閉鎖位置P0から閉方向付勢前端位置P1まで、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43を開方向に移動させるためには、付勢力F1よりも大きな力が必要である。本発明の下段冷凍室4では、少なくとも、閉方向付勢前端位置P1に引出扉41が移動するまで、開方向付勢部6で引出扉41を開方向に付勢することが好ましい。
引出扉41、収納容器42、容器支持部43或いは貯蔵室40のばらつき等により、閉方向付勢前端位置P1に個体差が発生する場合がある。開方向付勢部6は閉方向付勢前端位置P1よりも開方向に一定距離移動した開方向付勢前端位置P2まで、引出扉41に開方向の付勢力F2を付勢する。なお、開方向付勢部6からの付勢力F2は閉方向付勢部からの付勢力F1の最大値(閉鎖位置P0近傍での付勢力)よりも大きいものとする。
上述したように、使用者が下段冷凍室4の引出扉41を開くとき、引出扉41が閉鎖位置P0から閉方向付勢前端位置P1に至る最も力が必要な領域で、開方向付勢部6が引出扉41を開方向に付勢する。これにより、使用者の引出扉41を開くときの負担を減らすことができる。
次に、開方向付勢部6の補助を開始するための検知部である扉変位検知部7について説明する。図2に示すように、扉変位検知部7は、下段冷凍室4の貯蔵室40の上壁及び引出扉41に設けられている。扉変位検知部7は、引出扉41の貯蔵室40の前面に対する変位を検出するための検出器である。扉変位検知部7の詳細について図面を参照して説明する。
図6Aは図2に示す下段冷凍室の引出扉が閉鎖位置にあるときの扉変位検知部を示す拡大断面図であり、図6Bは引出扉が貯蔵室に対して変位したときの扉変位検知部を示す拡大断面図である。扉変位検知部7はマイクロスイッチを含む構成であり、接点71、コンタクト部73、貫通孔74及び突出部75を備えている。また、扉変位検知部7は図示を省略した外装ケースに内部に、接点71及びコンタクト部73を配置している。扉変位検知部7は、マイクロスイッチを突出部75で作動させる構成となっている。
接点71は、信号線が接続されており、コンタクト部73が接触していないとき(図6Aの状態のとき)接点71はOFFで信号(変位検知信号)は出力されない。また、コンタクト部73が接触しているとき(図6Bの状態のとき)接点71がONになり信号が検出される。コンタクト部73は、少なくとも接点71と接触する部分が導電性を有する部材で形成されている。また、コンタクト部73はばね70(弾性部材の1例)によって、貫通孔74側に押されており、突出部75と接触していない状態のとき、接点がONになり信号(変位検知信号)が出力される。なお、コンタクト部73を、弾性変形可能な梁形状とすることで、ばね70を省略することも可能である。
貯蔵室40には、突出部75が挿入される貫通孔74を有している。突出部75は貫通孔74を貫通した先端部でコンタクト部73を押す。突出部75は、引出扉41の内面より内側に突出するように配置されている。
このような構成の扉変位検知部7の動作について説明する。まず、引出扉41が閉鎖位置にあるとき、突出部75が貫通孔74を貫通し、コンタクト部73を押す。コンタクト部73はばね70の弾性力に抗して移動しており、接点71はOFFである(図6Aの状態)。
引出扉41が開方向に変位すると、突出部75が貫通孔から抜ける方向に移動する。このとき、コンタクト部73がばね70の弾性力によって押され、接点がONになる。
以上示したように、扉変位検出部7は、引出扉41が貯蔵室40に対して変位することを、検知する。そして、扉変位検出部7は引出扉41の貯蔵室40に対する小さな変位を検出することが可能な構成となっている。なお、以下の説明において、扉変位検知部7の接点71がOFFからONに切り替わったときの引出扉41位置を、扉変位検知部7が引出扉41の変位を検知した位置、すなわち、変位検知位置PS1とする。接点がONになったときのコンタクト73の移動量、すなわち、マイクロスイッチのストロークをL1とすると、(PS1)-(P0)=L1である。
引出扉41が閉鎖位置にあるとき、パッキン412は引出扉41の背面と貯蔵室40の前面とに挟まれて圧縮された状態となっている。この状態から引出扉41が開方向に引っ張られ、引出扉41が移動すると、引出扉41の背面と貯蔵室40の前面との距離が長くなり、圧縮されていたパッキン412は元の形状に戻る。そして、引出扉41の移動量が一定よりも大きくなると、引出扉41の背面に備えられているパッキン412は貯蔵室40の前面から離れる。
また、引出扉41が開閉のために移動するとき、容器支持部43の後端に設けられた移動ローラ47が固定レール45に沿って回転しつつ摺動(転動)する。このとき、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が円滑に移動するため、固定レール45と移動ローラ47との間には、あそびがある。また、固定ローラ46と移動レール430との間にも、同様のあそびがある。
なお、以下の説明では、固定レール45と移動ローラ47のあそび、及び、固定ローラ46と移動レール430のあそびを単にあそびと称する場合がある。下段冷凍室4では、開口400を閉鎖している状態を維持しつつ、引出扉41があそびの範囲内で変位する。
上述のようなあそびの範囲で引出扉41が変位したとき、パッキン412は元の形状に戻るように変形する。下段冷凍室4では、パッキン412が貯蔵庫40の前面から離れない状態を維持し引出扉41があそびの範囲で変位したとき、扉変位検知部7が引出扉41の変位を検知する。これにより、閉鎖位置P0にある引出扉41を開方向に引いたとき、パッキン412が貯蔵庫40の前面から離れる前に、扉変位検知部7が引出扉41が変位したことを検知する。つまり、引出扉41が開口400を閉鎖している状態を維持している状態で扉変位検知部7は引出扉41の変位を検知する。
なお、扉変位検知部7は引出扉41があそびの範囲で変位したとき、接点71がONになるように、コンタクト部73及び突出部75の形状、大きさ、移動範囲等が決定されている。
扉変位検出部7が変位を検知したときの引出扉41の貯蔵室40に対する位置について図面を参照して説明する。図7Aは本発明にかかる冷却庫に用いられる引出扉の開動作時の変位の一例を示す図であり、図7Bは図7Aとは異なる引出扉の変位を示す図であり、図7Cは図7A、図7Bとは異なる引出扉の変位を示す図である。
収納容器42にあまり物品が入っていないとき、使用者が把持部411を引くと、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43は一体性を有したまま、引っ張り方向に変位する(図7A参照)。
図7Aでは、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が一体的に引出扉41の開方向に変位する構成を示した。一方、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43がある程度以上の重量を有している場合がある。このとき、引出扉41の前面の上部に設けられた把持部411を引くと、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43は、あそびの範囲で、固定ローラ46と移動レール430との接触部分を中心として、回転する方向に移動する(図7B参照)。
扉変位検知部7の貫通孔74の内径を、突出部75の外径よりも大きく形成しておくことで、引出扉41が回転方向に移動したときにも、突出部75が貫通孔に正確に挿入される。これにより、コンタクト部73が摺動して、接点71がOFFからONに切り替わる。
引出扉41、収納容器42及び容器支持部43の重量が一定以上ある場合、把持部411を閉方向付勢部の付勢力以下の力で引っ張っても、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43がまとまって摺動したり(図7A)、回動したり(図7B)しにくい。
上述のとおり固定部432は、板金で形成された容器支持部43の前端を折り曲げて形成しており、固定部432の折曲部分は他の部分に比べて変形しやすい構成となっている。このことから、下段冷凍室4において、把持部411が引っ張られたとき、引出扉41に作用した力によって、固定部432の折曲部分が変形し、引出扉41だけが、回動(貯蔵室に対して傾斜)する。扉変位検知部7はこの引出扉41の回動を検知することが可能な構成となっている。すなわち、固定部432が変位許容機構を構成している。
なお、変位許容機構については、折曲形成された固定部432を挙げているがこれに限定されるものではなく、ピンによる連結機構等、引出扉41を積極的に変形させる構造を広く採用することが可能である。また、扉変位検知部7の構成は、上述と同様であり、貫通孔74の内径を突出部75の外径よりも大きく形成している。
以上示したように、下段冷凍室4において、把持部411を使用者が引っ張った場合、引っ張り力が閉方向付勢部の付勢力よりも小さくても、少なくとも引出扉41は変位(回動)する。扉変位検知部7は引出扉41の変位を検知することができる構成となっている。
次に、開方向付勢部6の引出扉41を開方向に付勢する手順について新たな図面を参照して説明する。図8は冷却庫の電気的な接続を示すブロック図である。なお、図8に示すブロック図には下段冷凍室4に関係する部分のみが記載されているが、実際には他の収納室に関する部分も含まれる。
冷却庫Rfには、制御部Contが設けられており、制御部Contには、開方向付勢部6(のモータ61)、扉変位検知部7(の接点71)、計時部Tm、扉開検知部8等が接続されている。また、図示を省略しているが、制御部Contは、扉変位検知部7の接点71に電圧を印加している。
扉開検知部8は、引出扉41(のパッキン412)と貯蔵室40の前面との間に隙間が開いている(扉が開いている)ことを検知する検知部である。扉開検知部8はパッキン412が貯蔵室40から離れたときの引出扉41(又は収納容器42或いは容器支持部43)の位置(以下の説明では扉開位置とする)を検知するような構成を有している。
扉開検知部8は、例えば、ホールセンサ等のセンサを備えており、引出扉41が貯蔵室40の前面から一定距離以上離れていることを検知する。そして、扉開検知部8は、引出扉41と貯蔵室40の前面とが離れていること(扉が開いていること)を検知すると、扉開信号を制御部Contに送る。計時部Tmは、制御部Contと接続されており、一定の時間経過を計測するタイマー回路を備えている。
扉変位検知部7は上述のような構成を有しており、扉が変位し、接点71がONになると、変位を検知した変位検知信号(電圧信号)を制御部Contに送る。
扉変位検知部7及び扉開検知部8はいずれも、引出扉41が移動(変位)したことを検知する。扉変位検知部7は、引出扉41が閉鎖位置からあそびの範囲で変位したことを検知するものであり、扉開検知部8は引出扉41(パッキン412)と貯蔵室40の前面との間に隙間が形成されていることを検知するものである。そのため、変位検知位置PS1は扉開位置よりも閉鎖位置に近くなる。
制御部Contは、CPU、MPU等の演算回路を備えた構成となっている。制御部Contは、扉変位検知部7からの変位検知信号の入力及び扉開検知部8からの扉開信号の入力を受け付けており、これらの信号に基づいて引出扉41の位置、開方向付勢部6による補助の開始(終了)を制御する。制御部Contには、計時部Tmが接続されており、各制御動作の開始からの時間、検知信号を取得してからの時間等の時間を計時部Tmから取得している。
扉開検知部8からの扉開信号及び扉変位検知部7からの変位検知信号の両方が取得されていないとき、制御部Contは引出扉41が閉鎖位置にあると判断する。この状態から、引出扉41が貯蔵室40の前面に対して変位すると、扉変位検知部7からの変位検知信号が制御部Contに入力される。このとき制御部Contは、引出扉41が変位検知位置PS1に移動した、すなわち、使用者が引出扉41を開く方向に操作していると判断し、開方向付勢部6のモータ61を駆動する。これにより、開方向付勢部6は扉付勢部62で引出扉41を開方向に付勢する。
また、扉開検知部8からの扉開信号の入力を受け付けると、制御部Contは引出扉41が開状態になった(開状態である)と判断する。制御部Contでは、一般的によく知られた扉が開状態である警告を行う。すなわち、扉開信号が入力されている状態が予め決められた時間を超えると、制御部Contは音声、光等を利用して使用者に引出扉41が開状態である旨の警告を行う。
また、引出扉41が閉方向に移動し、扉開位置に引出扉41が到達すると、扉開検知部8からの扉開信号が入力されなくなる。このことを利用して、制御部Contは、扉開信号の入力が無くなったことを確認したとき、引出扉41が閉方向に向けて移動していると判断する。そして、引出扉41が閉鎖位置に移動すると、突出部75が押え部74の貫通孔を貫通しアクチュエータ部72を押し、さらにアクチュエータ部72からコンタクト部73が操作される。これにより接点71がOFFになり変位検知信号が出力されなくなる。すなわち、制御部Contは、変位検知信号の入力が無くなったことを確認したとき、引出扉41が閉鎖位置に移動したと判断する。
通常、引出扉41が閉じるとき、扉開位置に到達すると扉開信号が制御部Contに入力されなくなり、閉鎖位置に到達すると変位検知信号が入力されなくなる。制御部Contは、扉開信号と変位検知信号との入力状態で、引出扉41の状態を検知することができる。しかしながら、物品や使用者の体の一部が挟まる等で、引出扉41が閉鎖位置に戻らなくなる場合もある。
そこで、制御部Contは扉開信号が入力されなくなったときから一定時間経過後に変位検知信号の入力を受け付けている場合、制御部Contは、引出扉41が閉鎖位置に戻らない(戻っていない)状態であると判断する。制御部Contは、音声、光等を利用して使用者に対して引出扉41が閉鎖位置に移動できない旨の警告を行う。なお、そのまま放置すると物品が破損したり、食品として使えなくなったりする場合がある。このような場合も考慮し、制御部Contは、警告を行った後、開方向付勢部6を駆動して引出扉41を開方向に移動させるようにしてもよい。
扉開位置は、引出扉41と貯蔵室40の前面との間に隙間が形成されるときの引出扉41の位置であればよい。例えば、扉開位置として、図5に示す閉鎖位置P0と閉方向付勢前端位置P1の間としてもよい。制御部Contは、引出扉41が扉開位置よりも開方向に進んだ位置にあれば引出扉41が開状態で放置されていることを検知可能である。これにより、制御部Contは、引出扉41が開状態で放置されていることに加えて、閉方向付勢部が動作しているにもかかわらず引出扉41が閉鎖位置に移動しないことを認識することが可能である。
閉鎖位置P0にある引出扉41の把持部411を閉方向付勢部による付勢力よりも小さい力で開方向に引っ張ったとき、あそびの範囲で、引出扉41は貯蔵室40の前面に対して変位する。扉変位検知部7がこの変位を検知し、変位の検知に基づいて開方向付勢部6が引出扉41を開方向に付勢する。
以上のことから、使用者は把持部411を引出扉41が貯蔵室40の前面に対して変位する程度の小さい力で引いても、引出扉41が開方向付勢部6から開方向に付勢力を受け、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43を引き出すことができる。
使用者が把持部411を引くことで引出扉41に作用する力と開方向付勢部6から引出扉41に作用する力とが同じ方向であり、使用者が把持部411を引っ張る動作を行っている状態で開方向付勢部6からの力が作用するので、使用者が違和感を覚えにくい。
また、引出扉41の貯蔵室40の前面に対する変位は、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43の重量(収納容器42の収納重量)によって異なることは、上述のとおりである。引出扉41は重さによって次のような異なる状態に変位する。
すなわち、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が軽いときは図7Aに示すようにこれらの部材が一体的で直線的に移動し(図7A)、貯蔵室40の前面に対しする引出扉41の変位を扉変位検知部7が検知する。また、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43がある程度以上の重量がある場合、固定ローラ46と移動レール430との接触部を支点としてこれらの部材が一体的に回動する(図7B)。扉変位検知部7はこの一体的に回動するときの引出扉41の貯蔵室40の前面に対する角度の変位を検知する。さらに、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43がさらに重いとき、容器支持部43の引出扉41と固定されている固定部432の一部が変形することで、引出扉41は貯蔵室40の前面に対して回動(傾き角度が変化)する(図7C)。扉変位検知部7はこの引出扉41が容器支持部43とは別に傾いたことを検知する。
以上のように扉変位検知部7が引出扉41の変位の状態にかかわらず引出扉41の変位を検知するようにすることで、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43の重さにかかわらず、引出扉41の変位を検知し、開方向付勢部6が開方向に付勢する。これにより、本発明にかかる冷却庫Rfでは、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43の重さ、すなわち、収納容器42の収納量にかかわらず、使用者は引出扉41が変位する程度の小さい力で把持部411を引くことで、引出扉41を開くことが可能である。
なお、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が一体的に回動する場合、固定ローラ46の位置を調整することで、扉変位検知部7が引出扉41の変位を検知するときの把持部411を使用者が引く力を調整することができる。また、引出扉41が容器支持部43と別に傾く場合、容器支持部43の固定部432の形状、大きさを調整することで、引出扉41が容器支持部43と別に傾き扉変位検知部7が引出扉41の変位を検知するときの把持部411を使用者が引く力を調整することができる。
このことを利用して、固定ローラ46の位置、容器支持部43の固定部432の形状、大きさを調整することで、収納容器42の収納重量にかかわらず、把持部411を引っ張る力が一定に達すると扉変位検知部7が引出扉41の変位を検知するようにできる。このように調整することで、収納容器42に収納する物品の重量にかかわらず、使用者は一定の力で把持部411を引っ張ることで、引出扉41を開く(引出扉41、収納容器42及び容器支持部43を移動させる)ことができる。
また、開方向付勢部6からの付勢力が徐々に大きくなるように制御することで、引出扉41に付勢する力が急激に増加するのを抑制し、引出扉41の引っ張り操作の補助を使用者が違和感を覚えないように行うことが可能である。
本実施形態の下段冷凍室4において、把持部411が引出扉41の前面の上側に配置されている構成となっている。しかしながら、これに限定されるものではなく、使用者が引っ張る方向に操作しやすく、把持部411を引っ張ったときに引出扉41が貯蔵室40の前面に対して変位しやすい位置を広く採用することができる。しかしながら、引出扉41、収納容器42及び容器支持部43が、固定ローラ46と移動レール430との接触点を支点として回転すること、引出扉41が固定部432の変形で傾斜することから、引出扉41の上部に引っ張り力を作用させることができる構成が好ましい。
以上、本発明にかかる冷却庫の構成及び動作について、下段冷却室4を例に説明したが、同様の構成を、前側に摺動することで開閉する製氷室2、上段冷凍室3及び野菜室5にも適用することが可能である。なお、固定ローラ46の代わりに点又は線で支持するような支持部材を用いる場合もあるが、この場合も、同様に動作させることが可能である。
開口を閉鎖した状態での扉の変位として、固定レールと移動ローラ、移動レールと固定ローラのあそびの範囲内で且つパッキンが密閉している範囲の移動、一体的な回動又は扉だけの傾斜の3種の動作を挙げているが、これに限定されるものではない。これら3種の動作のうち1種又は2種の動作が発生するものであってもよい。また、これらとは別の動作で扉が変位する構成であってもよい。
(第2実施形態)
本発明にかかる冷却庫の他の例について図面を参照して説明する。図9Bは本発明にかかる冷却庫の引出扉の通常閉鎖位置にあるときの扉変位検知部を示す拡大断面図であり、図9Bは引出扉が変位検知位置にあるときの扉変位検知部を示す拡大断面図であり、図9Cは引出扉が図9Aに示す状態から閉扉方向にずれたときの扉変位検知部を示す拡大断面図である。図9A〜図9Cに示す扉変位検知部7Aは、減衰部72を備えている以外、扉変位検知部7と同じ構成である。そのため、実質上同じ部分は、扉変位検知部7と同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。
冷却庫Rfにおいて、下段冷凍室4の引出扉41は、閉鎖後、閉鎖位置P0で停止する。この引出扉41の位置を通常閉鎖状態の閉鎖位置P0とする。このとき、突出部75の先端が貫通孔74を貫通し、コンタクト部73を押すことで、ばね70が押されて縮むことで、扉変位検知部7Aの接点71がOFFになる。
下段冷凍室4では、通常閉鎖状態から時間が経過すると閉鎖位置P0から貯蔵室40側に変位する(ずれる)ことがある。この閉鎖位置のずれは、例えば、収納容器42の収納重量の変化、扉閉鎖からの時間経過等による貯蔵室40内の温度低下に伴う引出扉41の内外気圧差等が原因である。引出扉41がずれたときの引出扉41の位置をずれ閉鎖位置P01とする(図9C参照)。
この、引出扉41の位置のずれは、主に以下の理由によることが多い。すなわち、貯蔵室40が引出扉41で密閉されている場合、引出扉41の閉鎖から時間が経過することで貯蔵室40内の温度は低下する。貯蔵室40内の温度が低下すると同時に気圧も下がり、貯蔵室40の内外気圧差が増加することで、引出扉41が貯蔵室40に引き込まれまる。また、パッキン412の経年変化(潰れ)によっても、製造当初の閉鎖位置P0から貯蔵室40側にずれることもある。
扉変位検知部7では、引出扉41が閉鎖位置P0からずれると、突出部75の先端が奥に移動し、コンタクト部73が閉鎖位置P0よりも奥に押し込まれる。このことから、出扉41の位置が閉鎖位置P0からずれると、扉変化検知部7の検知変位量(閉鎖状態から扉の変化を検知するまでの変位量)が変化する。また、引出扉41がずれるときの突出部75の先端の変位量がコンタクト部73の変位を許容できる長さよりも長いと、引出扉41が貯蔵室40側にずれたときに、マイクロスイッチが破損したり、誤作動したりの不具合が発生する場合もある。
そこで、本実施形態では、引出扉41のずれが発生しても、破損、誤作動等の不具合の発生を抑制できる扉変位検知部7Aを用いている。図9A〜図9Cに示すように、扉変位検知部7Aは、引出扉41と突出部75との間に減衰部72を備えている。それ以外は、扉変位検知部7と同じ構成であり、同じ部分については同じ符号を付すともに、詳細な説明は省略する。
減衰部72は、引出扉41と突出部75とが接近するように力が付勢されたとき、変形することで、引出扉41と突出部75との間の力の伝達を減衰するための部材である。
引出扉41が閉鎖位置P0からずれ閉鎖位置P01にずれるとき、減衰部72及び突出部75には同じ方向への力が作用する。
これにより、引出扉41が閉鎖位置P0からずれ閉鎖位置P01にずれるとき、減衰部72が変形するため、突出部75の変位量は引出扉41に比べて小さくなる又は変位しない。これにより、コンタクト部73の変位量も小さくなるあるいは変位しないため、コンタクト部73が許容範囲を超えて押されるのを抑制し、扉変位検知部7Aが故障したり、破損したりするのを抑制することができる。
以下に、扉変位検知部7Aの動作について図面を参照して説明する。減衰部72は、扉変位検知部7Aが引出扉41の変位を検知したとき(図9Bに示す状態のとき)力が作用していない。このとき、減衰部72は変形していない状態(自然状態とする)になっている。そして、引出扉41が閉じられ、閉鎖位置P0にあるとき、突出部75は、コンタクト部73を押しており、ばね70は圧縮されている(図9A参照)。このとき、突出部75にはコンタクト部73を介してばね70の圧縮による弾性力が開方向に作用しており、この圧縮力は、減衰部72に作用している。減衰部72はこの弾性力によって変形している。
引出扉41は上述したような理由により、閉鎖位置P0からずれ閉鎖位置P01にずれる。このとき、突出部75がコンタクト部73と接しているため、コンタクト部73を押圧しているばね70の圧縮による弾性力によって突出部75は開方向に付勢される。この突出部75に作用している弾性力は減衰部72に伝達される。減衰部72は弾性変形する部材であるため、伝達された弾性力によって変形する。なお、減衰部72はばね70の弾性力によって変形するが、その反作用として減衰部72は突出部75を閉方向に押す。そのため、コンタクト部73は突出部75に押され、閉鎖位置P0から第2ずれ閉鎖位置P02まで移動する。
閉鎖位置P0からずれ閉鎖位置P01までの引出扉41の変位量をL2、減衰部72の変形量をL3、閉鎖位置P0から第2ずれ閉鎖位置P2までのコンタクト部73の変位量をL4とすると、L4=L2−L3となる。引出扉41の変位量L2が同じであれば、コンタクト部73の変位量L4は、減衰部72の変形量L3によって決定される。つまり、減衰部72の特性を適切なものとすることで、コンタクト部73の変位を許容範囲内に収めることができる。なお、減衰部72の変形量は、減衰部72の特性(弾性係数、粘性係数等)のよって決まる。
そして、扉変位検知部7Aでは、コンタクト部73の変位が許容範囲内に収まるような特性を有する減衰部72を備えている。そのため、引出扉41が閉鎖位置P0からずれ閉鎖位置P01に変位したとき、減衰部72が変形することで、引出扉41の変位量が減衰されて突出部75に伝達されるため、突出部75に押されてもコンタクト部73の変位量は、許容範囲内に収まる。これにより、引出扉41が閉鎖時に貯蔵室40側にずれても、扉変位検知部7Aの故障、破損等の不具合の発生を抑制できる。
なお、引出扉41の変位量L2と減衰部72の変形量L3が同じ場合、コンタクト部73の変位量L4は“0”になる。つまり、引出扉41が閉鎖位置P0からずれ閉鎖位置P01に移動するとき、減衰部72が変形するとともにばね70がさらに変形しないような特性を有する減衰部72を使用することで、コンタクト部73の変位量を“0”にすることが可能である。
また、減衰部72の特性の他の例について以下に説明する。引出扉41が貯蔵室の内外圧力差で閉鎖位置P0からずれ閉鎖位置P01に移動するとき、引出扉41はゆっくり(例えば、およそ[1mm/日]未満)移動する。一方、引出扉41を開く(開方向に移動する)ときは、内外圧力差で閉鎖位置P0から閉方向にずれる時よりもはやい速度(例えば、およそ[1mm/sec]以上)である。
このように、引出扉41のずれるときの移動速度と、開くときの移動速度との差を利用し、減衰部72の物理特性(圧縮変形するときと元の形状に戻るときの反力の特性等)を適宜調整することで、減衰部72を引出扉41がずれる時は変形し、開くときは変形しないものとすることができる。これにより、減衰部72は、内外圧力差による引出扉41がずれるときは変形するが、引出扉41を開くときには変形せず、引出扉41が開放されている間に減衰部72が元の形状に戻るような構造とすることができる。
さらに、変形するときにも同様に、減衰部72が一定の力が作用している又は作用している力が緩やかに変化する場合には、変形するが、急激に大きな力が作用するときには、変形しない(変形しにくい)特性を有するようにしてもよい。このような特性の減衰部72を備えることで、引出扉41が開放状態から閉鎖位置P0に移動するときは、速い速度で移動するため、突出部75がコンタクト部73と接触した直後、減衰部72に作用する力が急激に大きくなる。そのため、減衰部72は変形せず又は略変形しない。これにより、引出扉41が閉鎖位P0に到達するときに、突出部75がコンタクト部73を押し、接点71が確実にOFFになる。
このとき、減衰部72にはばね70の圧縮による弾性力が作用しており、減衰部72は反力がばね70の弾性力と均衡する力になるまで、変形する。減衰部72の変形量は、突出部75がコンタクト部73を押して、コンタクト部73が変位した変位量よりも小さい。そのため、減衰部72の変形によりコンタクト部73が、開方向に少し変位しても接点71はOFFのまま維持される。そして、引出扉41が内外圧力差でずれるときの移動は緩やかであり、減衰部72及び突出部75も緩やかに移動する。このとき、ばね70も緩やかに圧縮される。このため、ばね70の圧縮による弾性力は緩やかに増加する。
減衰部72は緩やかに変化する力が作用しているときには、その力に応じてゆっくり変形する。そのため、引出扉41が内外圧力差でずれるときには、減衰部72が変形することで、突出部75の変位量を一部又はすべて吸収するため、コンタクト部73の変位量を小さく又はなくすことができる。これにより、引出扉41が閉鎖時に貯蔵室40側にずれても、扉変位検知部7Aの故障、破損等の不具合の発生を抑制できる。
なお、減衰部72としては、例えば、ゴム、樹脂材料、発泡材料等を挙げることができる。また、空気等の流体の粘性を利用して力を減衰する構成のものも挙げることができる。これらに限定されるものではなく、引出扉41のずれによって扉変位検知部7Aの誤作動、故障、破損等を抑制するために、引出扉41のずれを吸収できる構成のものを広く採用することができる。
(第3実施形態)
本発明にかかる冷却庫の他の例について図面を参照して説明する。図10Aは本発明にかかる冷却庫に用いられる扉変位検知部の概略構成を示す断面図であり、図10Bは図10Aに示す扉変位検知部が扉の変位を検知した状態を示す断面図であり、図10Cは扉変位検知部によって使用者の操作を検知した状態を示す断面図である。図10A、図10B、図10Cに示す扉変位検知部7Bは、突出部75に変えて操作検知部76を備えている以外、扉変位検知部7と同じ構成である。そのため、実質上同じ部分は、扉変位検知部7と同じ符号を付すとともに、同じ部分の詳細な説明は省略する。本実施形態も上述の実施形態と同様、下段冷凍室4を例に説明を行う。なお、操作検知部76を配置する構成の引出扉41bについても説明する。
図10Aに示すように、引出扉41bは、全面の上部に使用者が手(ゆび)を挿入するように構成された凹形状の把持部411bを備えている。そして、把持部411bの奥部から一部が露出するように操作検知部76が配置されている。
扉変位検知部7Bは、扉変位検知部7と同様、ばね70、接点71、コンタクト部73及び貫通孔74を備えている。なお、扉変位検知部7Bも扉変位検知部7と同様、外装ケースは省略している。
扉変位検知部7Bの操作検知部76は、突出部761、リンクアーム762、押し込み部763、接触部764及びばね765を備えている。リンクアーム762は、中間部分が回転可能に支持された長尺部材である。リンクアーム762の一方の端部は突出部761の端部が回転可能に接続(例えばピン接続)しており、他方の端部は押し込み部763の端部が回転可能に接続(例えばピン接続)している。
突出部761は、棒状の部材であり、リンクアーム762と接続している端部と逆の端部が引出扉41bの背面から突出可能であるとともに、引出扉41bの背面と直交する方向に摺動可能に支持されている。図10Aに示すように、引出扉41bが閉鎖位置にあるとき、突出部761の先端は、押え部74の貫通孔を貫通する。そして、突出部761の先端がコンタクト部73を押している。
押し込み部763は、把持部411bの奥部から引出扉41bの前面側に露出するように形成された接触部764に一体的に形成された棒状の部材である。押し込み部763は接触部764と反対側の端部がリンクアーム762の他方の端部と回転可能に接続している。
接触部764は引出扉41bの把持部411bの奥部から突出するように配置されているとともに、奥側に向かって摺動可能に配置されている。接触部764はばね765によって、引出扉41bの前側に向かって付勢されている。なお、接触部764がばね765に前側に押されていることで、押し込み部763も前側に摺動する。このとき、押し込み部763と連結されているリンクアーム762は、ピンを中心にして他方の端部が前側に、一方の端部が後側に回転する。リンクアーム762の一方の端部には突出部761が接続されており、突出部761はリンクアーム762に押されて、引出扉41bの後側に摺動し、先端部が引出扉41bの背面から突出する。
そして、引出扉41bが閉鎖位置にあるとき、突出部761の先端がコンタクト部73を押すことで、接点71がOFFになっている。このことから、突出部761を押すリンクアーム762の力は、ばね70の力よりも強い必要がある。ばね765の弾性力を強くすることで、突出部761を押すリンクアーム762の力を強くすることが可能である。また、リンクアーム762を回転支持するピンの位置を突出部761に近づけることで、てこの原理で突出部761を押すリンクアーム762の力を強くすることも可能である。
後述するように、接触部764は使用者が把持部411bを操作しようとしたとき、手で押すことで作動する。ばね765の弾性力が強すぎると、接触部764に使用者の手が触れても摺動しにくくなる。そのため、ばね765は接触部764が使用者の手が触れたときに摺動する程度の弾性力を有し、ばね765の弾性力を突出部761が接点71をOFFにできるように伝達できる構成であることが好ましい。
つぎに、操作検知部76に触れることなく使用者が把持部411bを引いて、引出扉41bが貯蔵室40に対して変位した場合について説明する。図10Bは引出扉41bが開口を閉鎖した状態で変位したときの扉変位検知部7Bを示している。図10Bに示すように、使用者が把持部411bを引くと、引出扉41bは開口を閉鎖した状態で変形する。このとき、扉変位検知部7Bの操作検知部76の突出部761が貫通孔74から抜ける。これにより、突出部761に押されていたコンタクト部73がばね70に押される。これにより、接点71がONになり、扉変位検知部7Bが引出扉41bの変位を検知する。
また、使用者の手が引出扉41bの把持部411bに挿入されるとき、使用者の手が接触部764に接触し、使用者の手が接触部764を押す場合がある。このとき、接触部764が押され、押し込み部763が奥に移動する。このとき、リンクアーム762に他方の端部が奥に移動するとともに一方の端部が前側に移動する。リンクアーム762に突出部761が前側に引っ張られる。そして、突出部761の先端が貫通孔74から抜ける。これにより、突出部761に押されていたコンタクト部73がばね70に押される。これにより、接点71がONになり、扉変位検知部7Bが引出扉41bを開く操作を行おうとする使用者の操作を検知する(図10C)。
扉変位検知部7Bが、引出扉41bの変位又は使用者の引出扉41bを開く操作を検知した後は、開方向付勢部6を操作する。このように、引出扉41bの変位又は使用者の引出扉41bを開く操作を容易に検知し、引出扉41bを容易に開口することが可能である。
また、これ以外の特徴については、第1実施形態の特徴と同じである。
(第4実施形態)
本発明にかかる冷却庫の他の例について図面を参照して説明する。本実施形態にかかる冷却庫では、扉変位検知部7Cとしてホールセンサを利用している。図11は本実施形態にかかる冷却庫の電気的な接続を示すブロック図であり、図12は扉変位検知部として用いられるホールセンサの磁束と距離の関係を示す図である。本実施形態も上述の実施形態と同様、下段冷凍室4を例に説明を行う。
図11に示すように、冷却庫Rfは、扉変位検知部7Cを備えているとともに、扉開検知部8を省略している。扉変位検知部7Cは、ホール素子77と永久磁石78と備えた、ホールセンサを有している。扉変位検知部7Cは、ホール素子77が貯蔵室40に取り付けられているとともに、永久磁石78が引出扉41に取り付けられる。ホール素子77は永久磁石78の磁束を検知する素子であり、検知した磁束に基づいた検知信号を制御部Contに送信する。
図12はホール素子77で検知される磁束を示している。図12に示すように、扉変位検知部7Cにおいて、ホール素子77と永久磁石78とが接触している状態のとき磁束が最も強い(この磁束を基準磁束G0とする)。そして、引出扉41が開方向に移動し永久磁石78がホール素子77から離れると磁束が小さくなる。
本実施形態にかかる扉変位検知部7Cでは、引出扉41が開口40を閉鎖した状態で変位したとき(変位検知位置PS1)の磁束を第1磁束G1とし、引出扉41が扉開位置(図11においてPS2)にあるときの磁束を第2磁束G2と設定している。なお、第1磁束G1は第2磁束G2よりも大きい。
引出扉41の把持部411が使用者に引かれ、引出扉41の貯蔵室40の前面からの位置が変位するとホール素子77で検出される磁束も変位する。そして、ホール素子77が検出する磁束が第1磁束G1以下となったとき、制御部Contは、引出扉41が変位検知位置PS1にある、すなわち、引出扉41が開口400を閉鎖した状態で貯蔵室40の前面に対して変位ししたことを認識する。上述のとおり制御部Contは、引出扉41が変位位置PS1に到達したことを認識すると、開方向付勢部6(のモータ61)を駆動し、引出扉41に対する開方向の力の付勢を開始する。
また、ホール素子77で検出される磁束が第2磁束G2以下となったとき、制御部Contは、引出扉41が扉開位置PS2に移動したこと、すなわち、貯蔵室40と引出扉41との間に隙間が形成され、内部の冷気が外部に逃げる状態になったことを認識する。制御部Contは、引出扉41が開状態で一定時間経過したとき、警告を行う。警告については上述しているとおりであり詳細は省略する。
また、引出扉41が閉じるときは、ホール素子77が第2磁束G2よりも大きな磁束を検知したときから、第1磁束G1を検知するまでの時間で警告したり、再度、開方向付勢部6を駆動したり等の制御を行う。警告、開方向付勢部6の駆動については、上述しているものと同じであるため、詳細は省略する。
また、ホール素子は磁束を検出し続けるセンサであるため、検出された磁束を比較することで、容易に引出扉41が開方向に移動しているか閉方向に移動しているか検知することが可能である。さらに、磁束の情報から引出扉41の概略位置を検知することも可能である。
このような構成の扉変位検知部7Cを用いることで、扉開検知部8を省略することができるとともに、引出扉41の動作、状態の細かい情報を検知することが可能である。
また、本実施形態の扉変位検知部7Cを用い、第1磁束G1、第2磁束G2を変更可能としていてもよい。このようにすることで、使用者の必要に応じて開方向付勢部6による付勢を停止することもできる。また、開方向付勢部6の付勢が開始されるときの使用者が引出扉41を引っ張る力を調整することも可能である。
なお、本発明にかかる冷却庫では、扉変位検知部として引出扉41の変位、位置を検知するため、マイクロスイッチ、ホールセンサを用いているが、これに限定されるものではない。引出扉41の所定位置と貯蔵室40の前面に対する変位、距離を検知できる検知器や、引出扉41の貯蔵室40の前面に対する傾きを検知できる検知器を広く採用することが可能である。なお、所定位置としては、引出扉41が開口400を閉鎖した状態で変位したとき、変位が最も大きくなる部分(以上の説明では引出扉41の上部)が好ましい。
これ以外の特徴については、第1実施形態と同じである。
また、上述の各実施形態では、扉として前方に引っ張る引出扉を例に説明しているが、軸を中心として回転するヒンジ扉に適用することも可能である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。