JP2016087613A - 連続鋳造用鋳型 - Google Patents
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Abstract
Description
連続鋳造設備の中心的な要素をなす鋳型は、図7に示すように、溶融炉で溶融された溶湯101は、外壁面を水冷ジャケットにより冷却されている鋳型(チューブモールド)21内へ流入口21aから流し込まれ、表面側が凝固した凝固シェル102をなした鋳片103として取出口21bから引抜ローラにより引き抜かれる。
引抜ローラにより鋳片103が引き抜かれる際に、凝固シェル102が、冷却、凝固により収縮しているため、鋳型21の内壁面21cと鋳片103の表面との間にエアギャップ31が発生する。エアギャップ31が発生すると、鋳片103に対する鋳型21の冷却能力が著しく低下し、鋳片103は、不均一に冷却され、引き抜きの際に変形不良を発生してしまう。特許文献1は、このことに鑑みて、内壁面が溶湯のパスライン下流側ほど漸減する所定のテーパ率となる鋳型を提案している。
また、特許文献2は、鋳片コーナー部の表面縦割れを防止できる角ビレットの連続鋳造用の鋳型として、外壁面コーナー部を四分円半径の曲線とし、内壁面コーナー部を直線状に面取りすることを提案している。
本発明は、このような課題に基づいてなされたもので、鋳片のコーナー部の温度低下を抑制できる連続鋳造用の鋳型を提供することを目的とする。
また、本発明の連続鋳造用鋳型は、互いに対向する直辺部の間隔Aが、100〜200mmの範囲の角ビレットの鋳造に適している。
さらに連続鋳造用鋳型において、内壁面が溶湯のパスライン下流側ほど漸減するテーパ率となるように、y=k2 x2 +c2 x…式(1)を満たす曲面をなしていることが好ましい。
ただし、xは当該鋳型の取出口の周縁端部を原点とした場合の長手方向の座標位置、yは前記取出口の周縁端部を原点とした場合の前記取出口の開口面に沿う方向の座標位置、k2,c2は定数である。
本実施の形態における鋳型(チューブモールド)1は、角ビレットを連続鋳造により得るためのものであり、図1に示すように、チューブモールド2と、チューブモールド2の内部に設けられ、鋳造時に溶湯101が注がれる中空のキャビティ3と、を備えている。チューブモールド2は、キャビティ3を区画する内壁面2aと、内壁面2aと対向する外壁面2bとを備えている。チューブモールド2の外壁面2bには、図示しない水冷ジャケットが設けられている。キャビティ3は、上端には溶湯101が流し込まれる流入口2cが設けられ、下端には流し込まれた溶湯101が冷却されながら引き抜かれる取出口2dが設けられる。
チューブモールド2は、通常、熱伝導性を考慮して、銅又は銅合金から構成される。
また、チューブモールド2は、4つの等しい長さの直辺部Sと、隣接する直辺部S,Sを繋ぐコーナー部Cとを備え、横断面の外形が正方形をなしており、四つのコーナー部Cはアール形状とされている。なお、図1(b)に示すように、対向する直辺部Sの内壁面2a,2aの間隔をA(以下、モールドサイズAということがある)とし、当該コーナー部の曲率半径をRとする。
チューブモールド2の軸方向の長さLは、モールドサイズA、鋳造速度などに応じて適宜設定されるが、例えば、500〜1000mmの範囲から選択される。
また、チューブモールド2は、横断面及び縦断面において、肉厚が一定に形成されている。
通常、溶湯101は凝固して収縮するので、鋳片103の凝固シェル102とチューブモールド2の内壁面2aとの間にはエアギャップGが形成される。
本実施形態の鋳型1は、チューブモールド2の内壁面2aにおけるコーナー部Cの曲率半径Rを所定の範囲に設定することにより、コーナー部Cの温度低下を抑制することを提案する。具体的には、鋳型1は、R/Aを0.15〜0.3の範囲を満たすことにより、コーナー部Cと直辺部Sにおける鋳片の抜熱量の差が抑えられ、コーナー部Cが直辺部Sに比べて著しく温度低下するのを抑制することができる。なお、チューブモールド2の長さLの全域において、R/Aが0.15〜0.3を満たすことを前提とする。
図2(c)に、R/Aと温度差△Tの関係を、シミュレーションにより評価した結果を示す。なお、温度差△Tは、取出口2dにおいて、図2(b)に示す、コーナー部Cの中央の表面温度Tcと、直辺部Sの中央の表面温度Tsの差である。また、シミュレーションを行ったのと同じ仕様の鋳型1を用いて連続鋳造を行って、コーナー部Cを観察する実機評価を行った。
モールドサイズ(A×A):143×143mm
コーナー半径(R):30mm
モールド長さ(L):800mm(湯面101aから取出口2dまでの距離は700mm)
鋳造速度:2.9m/分
鋼種:炭素鋼(JIS SD345)
はじめに、コーナー部Cの曲率半径Rが小さい場合は、図3(a)に示すように、チューブモールド2の直辺部Sに接する鋳片の表面が長く、その部分の熱収縮に伴うエアギャップGの量がコーナー部Cに集中する。そのために、コーナー部Cにおける抜熱能力が低下し、直辺部Sの中央とコーナー部Cの温度差(△T)が大きくなる。なお、矢印が収縮の向きを示しており、図3(b)も同様である。
つぎに、コーナー部Cの曲率半径Rが大きい場合は、図3(b)に示すように、鋳片が円形に近くなるために、鋳片が収縮すると、鋳片の中心部に向って収縮する量が大きく、エアギャップGの量が大きくなって、温度差(△T)が大きくなる。
以上より、R/Aの好ましい下限値は0.175であり、さらに好ましい下限値は0.2である。また、R/Aの好ましい上限値は0.275であり、さらに好ましい上限値は0.25である。
次に、湯面101aから取出口2dの方向に向う方向の鋳片102の温度分布をシミュレーションにより評価した。評価に用いたチューブモールド2の仕様は以下の通りであり、比較例1は本実施形態に対して、コーナー部Cの曲率半径Rを小さくしたもの、比較例2は比較例1のコーナー部Cの内壁面の側を面取りしたものである。また、湯面101aから取出口2dまでの距離、鋳造速度及び鋳造に供した鋼種は、第1実施例と同じである。なお、温度分布は、横断面の中央部おける湯面(メニスカス)101aから距離が700mm(取出口2d)の位置までと、コーナー部Cの中央(図4(a),(b)のTcの位置)又は面取りの中央(図4(c)のTcの位置)における湯面101aから距離700mmの位置までの、二つの異なる部位について求めた。
本実施形態:R/A=0.21(図4(a))
モールドサイズ(A×A):143×143mm
コーナー半径(R):30mm
比較例1:R/A=0.07(図4(b))
モールドサイズ(A×A):143×143mm
コーナー半径(R):4mm
比較例2:R/A=0.07(図4(c))
モールドサイズ(A×A):143×143mm
コーナー半径(R):4mm
面取り:20mm
本実施形態:120℃
比較例1:500℃
比較例2:200℃
例えば、チューブモールド2は、R/A=0.15〜0.3の条件を備えていれば、基本的には他の制約はないが、本実施形態の効果をより顕著に得るためには、チューブモールド2の内壁面2aが溶湯101のパスライン下流側ほど漸減するテーパ率となるように、y=k2 x2 +c2 x…式(1)を満たす曲面をなしていることが好ましい。これにより、鋳型1内の溶湯101の界面位置を製造条件に対応して調節することにより、常に最適なテーパ率で鋳片が製造され、チューブモールド2の内壁面2aと鋳片とのエアギャップが、常に最小となり、鋳片に対する冷却能率が大幅に向上し、不均一冷却による鋳片の変形が防止されると共に、鋳片の引抜抵抗が小さくなり、引き抜きが容易になる。
y=k2・x2+c2・x … (1)
但し、式(1)において、図1(c)に示すように、xは取出口2dの周縁端部を原点とした場合の長手方向の座標位置、yは取出口2dの周縁端部を原点とした場合の取出口2dの開口面に沿う方向の座標位置、k2,c2は定数である。
本発明が対象としている鉄鋼材料において、機械的性質に最も影響する合金元素は炭素(C)である。ここで、本発明に関係のある凝固シェルの温度は平均1000℃である。本発明が対象とする鉄鋼材料の炭素量は0.4質量%以下が主体であり、これら鋼種の1000℃における組織はオーステナイトが主体である点で一致している。したがって、他鋼種、特に炭素量が0.4質量%以下の炭素鋼に展開できる。この範囲をFe−C系平衡状態図に表すと、図6に示す通である。
連続鋳造機においては、取出口2dにおける固体部分(凝固シェル)の厚さは10mm程度である。これは溶鋼の静圧に対して安定な形状を保持するために必要な厚さとされている。鋳造速度を遅くすれば凝固シェルは厚くなるが、生産性が低下するため、その様な事態は避けられている。そのため、モールド長さL及び鋳造速度は変化しても、凝固シェル厚さは同じになる様に運転されるため、生成されるエアギャップ量は同じになる。したがって、モールド長さLの長短及び鋳造速度の遅速に関わらずに、本発明の効果が得られる。
また、モールドサイズAについて言及すると、モールドサイズAが大きくなると、溶湯からチューブモールド2に供給される熱量が増加するため、鋳造速度はそれに応じて低下する傾向にある。しかし、本発明が主に対象とする100〜200mm、特に120〜150mmの範囲のモールドサイズAでは、当該熱量及びこれに伴う鋳造速度は、第1実施例に対して大きな変化はないと解される。
また、以上の説明では、四つの直辺部SのモールドサイズAが等しい、いわば正方形型の鋳型について説明したが、矩形型の鋳型についても成立する。矩形型の鋳型の場合には、短辺の側のモールドサイズをA1、長辺の側のモールドサイズをA2とすると、等価辺長=2A1・A2/(A1+A2)とし、R/Eが0.15〜0.3の範囲にある。
2 チューブモールド
2a 内壁面
2b 外壁面
2c 流入口
2d 取出口
3 キャビティ
21 鋳型
21a 流入口
21b 取出口
21c 内壁面
101 溶湯
101a 湯面
102 鋳片
103 凝固シェル
A モールドサイズ
C コーナー部
R 曲率半径
S 直辺部
Tc 表面温度
Ts 表面温度
Claims (4)
- 溶湯が注がれる中空のキャビティが内部に形成され、
前記キャビティに臨む内壁面と、前記内壁面と対向する外壁面とを、備え、連続鋳造により角ビレットを得るための鋳型であって、
前記内壁面において互いに対向する直辺部の間隔をAとし、
隣接する前記直辺部を繋ぐコーナー部の前記内壁面における曲率半径をRとすると、
R/Aが0.15〜0.3を満たす、
ことを特徴とする連続鋳造用鋳型。 - 炭素鋼からなる前記角ビレットを得るのに用いられる、
請求項1に記載の連続鋳造用鋳型。 - 前記Aは、100〜200mmの範囲にある、
請求項1又は請求項2に記載の連続鋳造用鋳型。 - 前記内壁面が前記溶湯のパスライン下流側ほど漸減するテーパ率となるように、
y=k2 x2 +c2 x…式(1)を満たす曲面をなしている、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の連続鋳造用鋳型。
ただし、式(1)において、xは当該鋳型の取出口の周縁端部を原点とした場合の長手方向の座標位置、yは前記取出口の周縁端部を原点とした場合の前記取出口の開口面に沿う方向の座標位置、k2,c2は定数である。
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2014
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