JP2016077743A - ラケット用ストリング - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリオキシメチレン(POM)フィラメントを特定の位置に配置し、ストリング性能として高反発性、低い剛性となり、S−S曲線は直線的であり、かつ実用上問題のない耐久性を有するラケット用ストリングを提供する。【解決手段】本発明のラケット用ストリング(10)は、ポリオキシメチレンフィラメントとその他の合成繊維フィラメントを含むラケット用ストリングであって、前記ラケット用ストリングは、複数本の芯糸(1)と、前記芯糸(2)を被覆する皮糸(2,3)と、前記皮糸(2,3)の外側に表面被覆樹脂(4)を含み、前記複数本の芯糸(1)の少なくとも一部はポリオキシメチレンフィラメントであり、前記皮糸(2,3)の少なくとも一部はその他の合成繊維フィラメントである。【選択図】図1
Description
本発明は、硬式テニス、ソフトテニス、スカッシュ、バドミントン等に用いられるラケット用合成ストリング(ガットともいう)に関する。とくに反発性、ソフト感など打球感に優れたラケット用ストリング関するものである。
従来、テニス、スカッシュ、バドミントン等に用いられるラケット用合成ストリングの素材としては、ポリアミドやポリエステルが主に用いられている。ストリングに要求される主要な特性としては、打球感、耐久性、張設性(ラケットへの張りやすさ)などがある。このなかで打球感としては反発性(パワー)、ソフト感、コントロール性、スピン性、振動吸収性などが重要特性とされている。前記主要特性のなかでは、打球感がとくに重要である。打球感については牛、羊の腸から作られるナチュラルガットが高反発、低剛性(ソフト)である特徴があり、最も打球感が良いガットと評価されている。従来から合成繊維製ストリングをナチュラルガットの打球感に近づけるために、ナイロン6、ナイロン66繊維などをベースにして種々検討されているが、ナチュラルガット並みの高反発、低剛性は得られていない。これは素材特性の面で限界があるためと考えられる。
ナチュラルに近い打球感が得られる可能性のある素材の一つとしてポリオキシメチレン(以下POMともいう)が挙げられる。POMがラケット用ストリングとして検討された例として特許文献1〜5などが挙げられる。特許文献1においては特定の見かけ密度、引張り弾性率のポリアセタール(POMの別名)を張設したラケットが開示され、ガットの強伸度特性(S−Sカーブ)が直線的でナチュラルガット(天然シープ)に近いことが記載されている。特許文献2においては、POMモノフィラメントのボイド部分に樹脂を含浸させることが提案されている。特許文献3においては細いPOMモノフィラメントを集束撚糸した撚糸体のストリングが提案されている。特許文献4においては、ボイドなどに起因するフィッシュアイ欠点が軽減されたモノフィラメントが提案されており、特許文献5においてはPOMが最外層にあって摩擦係数の低いガットが提案されている。
本発明者らの検討によるとPOM自体は高反発、低剛性であって、強伸度曲線も直線状であり、素材特性としては、ナチュラルガットに近い特性が期待できるが、問題点としては、(1)POMモノフィラメントの紡糸延伸性とくに太いモノフィラメントの安定紡糸延伸が困難であること、(2)接着性が悪いことなどが挙げられる。前者は、モノフィラメント単体として使用するタイプのガットの場合、ボイドや欠点のない太いPOMモノフィラメントを安定して製造することが困難であるという問題がある。一方、後者については細いフィラメントの集束体として使用するタイプのガットの場合に、フィラメント間の接着性が十分でなく、使用中にフィラメントがばらけてしまい、耐久性が低いという問題がある。このためPOMを使用した実用的なラケット用ストリングは得られていないのが現状である。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、POMフィラメントを特定の位置に配置し、ストリング性能として高反発性、低い剛性となり、S−S曲線は直線的であり、かつ実用上問題のない耐久性を有するラケット用ストリングを提供する。
本発明のラケット用ストリングは、ポリオキシメチレンフィラメントとその他の合成繊維フィラメントを含むラケット用ストリングであって、前記ラケット用ストリングは、複数本の芯糸と、前記芯糸を被覆する皮糸と、前記皮糸の外側に表面被覆樹脂を含み、前記複数本の芯糸の少なくとも一部はポリオキシメチレンフィラメントであり、前記皮糸の少なくとも一部はその他の合成繊維フィラメントであることを特徴とする。
本発明は、POMフィラメントを特定の位置に配置したことにより、ストリング性能として高反発性と、低い剛性を有し、S−S曲線も直線的となり、ナチュラルガットに近い強伸度特性が得られ、かつ実用上問題のない耐久性を有するラケット用ストリングを提供できる。
本発明のポリオキシメチレンとは、通常ホルムアルデヒドまたはトリオキサンを重合して得られるホモポリマーまたは90モル%以上がポリオキシメチレンであるコポリマーをいい、ポリアセタール樹脂とも呼ばれる。好ましいコポリマーとしては例えばエチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを0.5〜10モル%程度共重合したコポリマーが挙げられる。本発明においてはホモポリマー、コポリマーいずれも用いることができる。市販されている樹脂としては“デルリン”(デュポン)、“ジュラコン”(ポリプラスチックス)、“テナック”(旭化成)、“ユピタール”(三菱エンプラ)などが挙げられる。
本発明で用いるポリオキシメチレンフィラメントは、前記のポリオキシメチレン樹脂を溶融紡糸し、延伸して得られるフィラメントであり、好ましい単糸繊度は10〜1000デシテックス、さらに好ましくは20〜700デシテックスである。単糸が太いとボイドや欠点のない安定した紡糸は困難となる。また、単糸繊度が前記範囲より太くなるとフィラメント間の接着が不十分で耐久性が低くなる問題がある。細い場合は高い反発性が得られにくくなる。
また、好ましいフィラメントの強伸度特性としては、切断伸度は15%〜40%程度、強度は3CN/dtex以上である。また、フィラメントの断面形状としては通常の丸断面のほか、楕円(扁平)、多角形などの異形断面形状であっても良い。また、POMフィラメントには、本発明の効果を阻害しない範囲で各種添加剤や改質ポリマーを含んでいても良い。
本発明は、複数本の芯糸と、前記芯糸を被覆する皮糸と、前記皮糸表面の被覆樹脂を含み、前記複数本の芯糸の少なくとも一部はポリオキシメチレンフィラメントであり、前記皮糸の少なくとも一部はその他の合成繊維フィラメントである。
本発明者らの検討によれば、ラケット用ストリングの原料としてPOMフィラメントを使用し、その高反発、低剛性の性質を発揮し、良好なストリング特性を得るためには、ストリング中のPOMフィラメントの混用率が重要である。好ましい混用率は25〜65重量%である。25重量%未満であると、高反発・低剛性の打感の改善効果が不十分であり、65重量%を超えると使用中に接着性の悪いPOMフィラメントがばらけやすく耐久性不足となる問題がある。より好ましくは30〜60重量%である。さらに好ましくは33〜55重量%である。
前記その他の合成繊維フィラメントの主成分は、ポリアミドフィラメントが好ましい。前記において主成分とは50重量%をいう。ポリアミドはポリエステルにくらべ高反発でナチュラルにより近いこと、接着性が良い点が挙げられる。
ポリアミドフィラメント素材としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン56、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612などの脂肪族ポリアミドおよびこれらの共重合ポリアミド、ナイロン9T、ナイロンMXT6などの半芳香族ポリアミドなどが挙げられる。また、メタアラミドなどの耐熱性芳香族ポリアミド繊維も必要に応じて適宜混用して使用できる。
ポリアミドフィラメントの単糸太さ(繊度)としてはとくに制限はないが、マルチフィラメントとして用いる場合は2〜20デシテックス、モノフィラメントとして用いる場合は20〜2000デシテックス程度が好ましい。
本発明のラケット用ストリングの構成成分としては前記のPOM,ポリアミド以外の繊維を必要に応じて本発明の目的を阻害しない範囲で使用することもできる。素材としてはとくに限定されないが、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリオレフィンなどが挙げられる。
本発明において、高反発、低剛性でかつ十分な耐久性を有するストリングを得るには、POMフィラメントを、主としてストリングの中心部すなわち芯部にストリングの軸と平行に直線状に配置するのが好ましいことがわかった。
POMフィラメントをストリングの表層部に配置した場合は、POMの接着性が低いため、使用中早期にPOM部分が剥離しやすく耐久性が低くなる問題があるが、部分的に少量配置することは可能である。
本発明においては、芯となるPOMフィラメントの本数に限定されるものではないが好ましくは一本以上、より好ましくは7本以上が用いられる。これらの芯糸は無撚りの引きそろえまたは、50回/m以下の低撚りフィラメントとして用いるのが打感上好ましい。芯成分としてはPOMフィラメントのほか必要に応じ他のフィラメントを併用することもできる。各フィラメントは断面において、対称的に配置するのが好ましく、非対称や偏芯した配置では、得られるストリングがコイル状になる場合がある。
次に芯成分のPOMフィラメントは、好ましくはポリアミドマルチフィラメントで被覆接着して、フィラメントを集束させる。ポリアミドマルチフィラメントは、(1)POMフィラメントと共に接着剤を含浸させて集束固着するか、(2)POM芯糸の束の外周部に複数本のマルチフィラメント糸を隙間のないように巻き付け接着することで得ることができる。後者の巻き付け接着する方が、芯糸をより強固に集束固着できるので好ましく用いられる。
被覆するポリアミドマルチフィラメント糸の単糸繊度は、芯糸のPOMフィラメントの単糸繊度より小さいものが、芯糸間の凹凸隙間に入りやすく、接着性も良いので好ましく用いられる。好ましいポリアミドマルチフィラメントの単糸繊度は2〜20dtex程度である。ポリアミドマルチフィラメントは無より糸または50回/m以下の撚りが掛けられている甘撚り糸が被覆性の点で好ましく用いられる。
接着剤についてはとくに限定されず、ナイロン樹脂をフェノール等の溶剤に溶解した溶液のほか、ウレタン系樹脂、UV硬化樹脂などが使用できる。このほか、熱接着性繊維をPOMフィラメントに混用及び/又は被覆し、熱融着させることもできる。
本発明においては前記マルチフィラメント被覆の外側に、皮糸としてナイロンモノフィラメントを用いて巻き付け接着することがとくに耐久性の点から好ましい。使用するナイロンモノフィラメントの太さとしては、通常のストリング製造工程で用いられるものと同じく直径が0,05〜0.25mm程度(20〜500dtex)の太さのフィラメントを複数本用いて隙間のないように均等に巻き付け接着することができる。通常モノフィラメントは一本ずつボビンに巻き、複数本のボビンを用いて芯に巻きつけ接着するが、単糸繊度が小さいマルチフィラメントは複数本(2〜4本程度)引き揃えてボビン巻きし、これを芯に巻きつけることもできる。
これらの皮糸として使用するナイロンモノフィラメントの一部をモノフィラメントと同径かやや細い径のPOMフィラメントに置き換えることもできる。また、一部をメタアラミド繊維糸など他素材の糸に置き換えることもできるが、皮糸の50重量%以上はポリアミドモノフィラメントであるのが好ましい。
本発明者らの検討によれば、芯糸の外側にマルチフィラメントを被覆し、その外側のモノフィラメント被覆と2層で被覆したストリング場合は、前記のいずれか1層の場合に比べ耐久性が大幅に改善されるので、とくに好ましい。
本発明のストリングは、表面部が樹脂被覆されたものが好ましい。ここで表面樹脂の被覆方法としてはとくに限定されないが、各種熱可塑性樹脂の溶融コーティング法あるいは樹脂の溶剤溶液、分散液を用いた樹脂加工法によるコーティング法が採用される。樹脂としてはとくに限定されないが、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂などが挙げられる。これらのなかでとくにポリアミド系樹脂、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12やこれらの共重合体が好ましく用いられる。その他ナイロン9Tなどの半芳香族の熱可塑性ポリアミドが挙げられる。本発明の表層樹脂には、樹脂成分のほか必要に応じ、無機粒子、染顔料、光沢顔料、耐熱剤、耐光剤、摩擦・摩耗改良剤などの添加剤、改質剤を適宜配合することもできる。
本発明のラケット用ストリングの好ましい材料構成比率としては、ストリング100重量%に対し、ポリオキシメチレンフィラメントが25〜65重量%、ポリアミド成分(フィラメントおよび表面被覆樹脂、接着剤成分を含む)が35〜75重量%、その他成分(フィラメント成分、表面被覆樹脂成分、接着剤成分も含む)が0〜30重量%程度である。
本発明において好適なストリング構造としては、芯部に少なくとも一本以上POMフィラメントを配置し、その外側にポリアミドマルチフィラメント、さらにその外側に皮糸としてポリアミドモノフィラメントを巻き付け、表層として樹脂被覆する構造が挙げられる。
このような本発明のストリングの断面構造の例を図1、図2に示す。図において同一符号は同一物を示す。芯糸1のPOMモノフィラメント(図1では7本の例を示す)の外側に下巻皮糸2としてナイロンマルチフィラメントと、その外側に上巻皮糸3としてナイロンモノフィラメントを巻き付け、その表面に表面被覆樹脂層4を被覆する。図2はより細いPOMフィラメントを多数本束ねた芯糸1の例を示す。下巻皮糸2と上巻皮糸3の撚り方向は異なることが好ましく、例えば下巻皮糸2をS撚りとした場合、上巻皮糸3はZ撚りとするのが好ましい。このようにすると、ストリングの捻じれが発生しにくい。同じ撚り方向の場合、ストリングの捻じれが発生しやすくなり好ましくない。
本発明のラケット用ストリングは、硬式テニス、ソフトテニス、バドミントン、スカッシュなどに適用できるが、とくにソフトテニス用ストリングとして好適である。
以下実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、評価は下記の方法で行った。
<物性>
ストリングの強力・伸度はJIS L1013に準じ引張試験機(島津製作所、オートグラフAGS−100NX)にて測定した。直径はマイクロメーターを用いて測定した。測定数はN=5の平均値を示した。
ストリングの強力・伸度はJIS L1013に準じ引張試験機(島津製作所、オートグラフAGS−100NX)にて測定した。直径はマイクロメーターを用いて測定した。測定数はN=5の平均値を示した。
<混用率>
ストリングを正確に1.00mにカットし重量測定し、m当り目付けを測定した。混用したPOMフィラメント糸のmあたりの重量は糸の繊度と本数から計算により求めた。
混用率=100×(混用POMフィラメントの重量(g/m)/ストリング重量(g/m))
ストリングを正確に1.00mにカットし重量測定し、m当り目付けを測定した。混用したPOMフィラメント糸のmあたりの重量は糸の繊度と本数から計算により求めた。
混用率=100×(混用POMフィラメントの重量(g/m)/ストリング重量(g/m))
<耐久性>
ストリングの耐久性を評価するため、ストリングを40ポンドで硬式テニスラケットに張設し、24時間放置後、このラケットに硬式テニスボールを打ち出し(条件:ボールスピード100km/時、打ち出し間隔15回/分、打ち出し距離50cm、打ち出し角度40度でラケットの4点に順次打撃)、ストリングが切断するまでの打ち出し回数を測定した。合計3回のテストでの平均値を示した。
ストリングの耐久性を評価するため、ストリングを40ポンドで硬式テニスラケットに張設し、24時間放置後、このラケットに硬式テニスボールを打ち出し(条件:ボールスピード100km/時、打ち出し間隔15回/分、打ち出し距離50cm、打ち出し角度40度でラケットの4点に順次打撃)、ストリングが切断するまでの打ち出し回数を測定した。合計3回のテストでの平均値を示した。
<反発・剛性>
ストリング1本を50ポンドの張力で引張り両端をクランプで固定する(つかみ間隔30cm)。振り子式のハンマーを用いて、ストリングの中央部にストリングに対して直角、水平方向に衝突するように一定位置から振り下ろし、衝突後のストリングの動き(変位量)と応力を1/1000秒間隔で測定し、以下の方法で剛性(ポンド/インチ)と反発率(%)を求めた。
剛性(ポンド/インチ)=最大応力P(ポンド)/最大変位量L(水平方向、インチ)
反発率(%)=(S2/S1)×100
但し、S1:応力―ひずみ(変位量)曲線(往復)における衝突から最大変位までの部分(往部)の面積
S2:応力―ひずみ曲線の最大変位位置からゼロ変位まで(復部)の面積
剛性値の数値が高いほど、ラケットに張った状態で打感が硬いことを示し、数値が低いほど柔らかい(ソフト感)ことを示す。
反発率は数値が高いほど、衝突におけるエネルギーロスが少なく反発性が大きいことを示す。反発率、剛性率については、参考文献;Rod Cross"Laboratory testing of tennis string" Sports Engineering(2000) 3,219-230)に詳しく説明されている。
ストリング1本を50ポンドの張力で引張り両端をクランプで固定する(つかみ間隔30cm)。振り子式のハンマーを用いて、ストリングの中央部にストリングに対して直角、水平方向に衝突するように一定位置から振り下ろし、衝突後のストリングの動き(変位量)と応力を1/1000秒間隔で測定し、以下の方法で剛性(ポンド/インチ)と反発率(%)を求めた。
剛性(ポンド/インチ)=最大応力P(ポンド)/最大変位量L(水平方向、インチ)
反発率(%)=(S2/S1)×100
但し、S1:応力―ひずみ(変位量)曲線(往復)における衝突から最大変位までの部分(往部)の面積
S2:応力―ひずみ曲線の最大変位位置からゼロ変位まで(復部)の面積
剛性値の数値が高いほど、ラケットに張った状態で打感が硬いことを示し、数値が低いほど柔らかい(ソフト感)ことを示す。
反発率は数値が高いほど、衝突におけるエネルギーロスが少なく反発性が大きいことを示す。反発率、剛性率については、参考文献;Rod Cross"Laboratory testing of tennis string" Sports Engineering(2000) 3,219-230)に詳しく説明されている。
<実施例1>
ポリオキシメチレンモノフィラメント(直径0.20mm;東レ・モノフィラメント社製、繊度440dtex、強力25N、伸度20%)と、上巻皮糸用としてナイロン6モノフィラメント(直径0.115mm;東レモノフィラメント社製、製品番号“120Y0.115WX”)を準備した。下巻皮糸用としてナイロン6マルチフィラメント、東レ社製、商品名アミランフィラメント(製品番号“122T−30F−T100”)を使用した。
ナイロンをフェノール系溶剤に溶解した接着剤を用いて、POMフィラメント糸を11本引き揃えて芯材とした。前記芯材表面に前記接着剤を付与し、その外周部に前記下巻皮糸用ナイロン6マルチフィラメント糸20本を隙間のないように巻き付け乾燥した。前記下巻皮糸はS撚りとし、撚り数は91回/mとした。
次いで、この下巻皮糸用マルチフィラメント被覆糸の外側に、前記接着剤を使用して上巻皮糸用ナイロン6モノフィラメントを25本巻き付けて乾燥した。前記上巻皮糸はZ撚りとし、撚り数は92回/mとした。
得られた糸条に表面被覆樹脂としてナイロン6樹脂を溶融コーティングして直径約1.27mmのテニス用ストリングを得た。このストリングの33重量%がPOMフィラメントであった。物性・ガット特性を表1に示す。
ポリオキシメチレンモノフィラメント(直径0.20mm;東レ・モノフィラメント社製、繊度440dtex、強力25N、伸度20%)と、上巻皮糸用としてナイロン6モノフィラメント(直径0.115mm;東レモノフィラメント社製、製品番号“120Y0.115WX”)を準備した。下巻皮糸用としてナイロン6マルチフィラメント、東レ社製、商品名アミランフィラメント(製品番号“122T−30F−T100”)を使用した。
ナイロンをフェノール系溶剤に溶解した接着剤を用いて、POMフィラメント糸を11本引き揃えて芯材とした。前記芯材表面に前記接着剤を付与し、その外周部に前記下巻皮糸用ナイロン6マルチフィラメント糸20本を隙間のないように巻き付け乾燥した。前記下巻皮糸はS撚りとし、撚り数は91回/mとした。
次いで、この下巻皮糸用マルチフィラメント被覆糸の外側に、前記接着剤を使用して上巻皮糸用ナイロン6モノフィラメントを25本巻き付けて乾燥した。前記上巻皮糸はZ撚りとし、撚り数は92回/mとした。
得られた糸条に表面被覆樹脂としてナイロン6樹脂を溶融コーティングして直径約1.27mmのテニス用ストリングを得た。このストリングの33重量%がPOMフィラメントであった。物性・ガット特性を表1に示す。
<実施例2>
芯糸として実施例1で用いたPOMモノフィラメントを14本引き揃えたものを使用した以外は同様の工程で加工した。得られたストリングの直径は1.28mm、POM含有率は40%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
芯糸として実施例1で用いたPOMモノフィラメントを14本引き揃えたものを使用した以外は同様の工程で加工した。得られたストリングの直径は1.28mm、POM含有率は40%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
<実施例3>
芯糸として実施例1のPOMモノフィラメントを20本引き揃え、その外側を下巻皮糸用として無撚りのN66マルチフィラメント(東レ社製、商品名プロミラン、製品番号“122T−30F−T1100”、無より糸)を用いて巻きつけ接着した。前記下巻皮糸はS撚りとし、撚り数は92回/mとした。
次いで、外側に上巻皮糸用として細いN6モノフィラメント(直径0.065mm)を3本引き揃えて巻いたボビン18本を用いて皮糸総本数54本として巻きつけ接着した。前記上巻皮糸はZ撚りとし、撚り数は92回/mとした。
得られた糸条に表面被覆樹脂としてナイロン6樹脂を溶融コーティングした。得られたストリングの直径は1.29mm、POM含有率は55%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
芯糸として実施例1のPOMモノフィラメントを20本引き揃え、その外側を下巻皮糸用として無撚りのN66マルチフィラメント(東レ社製、商品名プロミラン、製品番号“122T−30F−T1100”、無より糸)を用いて巻きつけ接着した。前記下巻皮糸はS撚りとし、撚り数は92回/mとした。
次いで、外側に上巻皮糸用として細いN6モノフィラメント(直径0.065mm)を3本引き揃えて巻いたボビン18本を用いて皮糸総本数54本として巻きつけ接着した。前記上巻皮糸はZ撚りとし、撚り数は92回/mとした。
得られた糸条に表面被覆樹脂としてナイロン6樹脂を溶融コーティングした。得られたストリングの直径は1.29mm、POM含有率は55%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
<比較例1>
実施例1の芯糸のポリオキシメチレンフィラメントに替えてナイロン6モノフィラメント(直径0.78mm)一本を使用し、他は実施例1と同様に加工した。得られたストリングの直径は1.25mm、POMフィラメント含有率は0%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
実施例1の芯糸のポリオキシメチレンフィラメントに替えてナイロン6モノフィラメント(直径0.78mm)一本を使用し、他は実施例1と同様に加工した。得られたストリングの直径は1.25mm、POMフィラメント含有率は0%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
<参考例1>
実施例1の芯糸のPOMフィラメント11本のうち4本をほぼ同径のナイロン6モノフィラメント(直径0.19mm)に置き換え引き揃えしたものを芯糸として、実施例1と同様に加工した。得られたストリングの直径は1.28mm、POM含有率は22重量%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
実施例1の芯糸のPOMフィラメント11本のうち4本をほぼ同径のナイロン6モノフィラメント(直径0.19mm)に置き換え引き揃えしたものを芯糸として、実施例1と同様に加工した。得られたストリングの直径は1.28mm、POM含有率は22重量%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
<参考例2>
芯糸として実施例3のPOMモノフィラメントを26本引き揃え、その外側を下巻皮糸用として無撚りのN66マルチフィラメント(東レ社製、商品名プロミラン、122T−30F−T1100、無より糸)を用いて巻きつけ接着した。前記下巻皮糸はS撚りとし、撚り数は92回/mとした。
ほぼ同じ直径のストリングでPOM比率を上げるためにはナイロン成分を少なくしなければならないため、上巻き皮糸の巻きつけをせず、得られた糸条にナイロン6樹脂を溶融コーティングした。すなわち、実施例3のように上巻きをすると、POM比率が下がり、直径も太くなるので比較できないため上巻きを省略した。得られたストリングの直径は1.28mm、POM含有率は68%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
芯糸として実施例3のPOMモノフィラメントを26本引き揃え、その外側を下巻皮糸用として無撚りのN66マルチフィラメント(東レ社製、商品名プロミラン、122T−30F−T1100、無より糸)を用いて巻きつけ接着した。前記下巻皮糸はS撚りとし、撚り数は92回/mとした。
ほぼ同じ直径のストリングでPOM比率を上げるためにはナイロン成分を少なくしなければならないため、上巻き皮糸の巻きつけをせず、得られた糸条にナイロン6樹脂を溶融コーティングした。すなわち、実施例3のように上巻きをすると、POM比率が下がり、直径も太くなるので比較できないため上巻きを省略した。得られたストリングの直径は1.28mm、POM含有率は68%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
<実施例4>
芯糸に実施例1のPOMモノフィラメントより太いPOMモノフィラメント(直径0.26mm、繊度740dtex、強力40N、伸度21%)7本を引きそろえたものを芯糸として、他は実施例1と同様に加工した。このストリングの直径は、1.27mm、POM含有率は34重量%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
芯糸に実施例1のPOMモノフィラメントより太いPOMモノフィラメント(直径0.26mm、繊度740dtex、強力40N、伸度21%)7本を引きそろえたものを芯糸として、他は実施例1と同様に加工した。このストリングの直径は、1.27mm、POM含有率は34重量%であった。物性・ガット特性を表1に示す。
表1に実施例、比較例及び参考例の評価結果をまとめて示す。図3に実施例3で得られたストリングのS−S曲線の例と比較例1(POM0%)および参考例として市販ナチュラルガットのS−S曲線例も示した。また、図4には本発明の実施例1及び実施例2の強伸度曲線(S−Sカーブ)のグラフを示した。なお、図3及び図4はある一つの試料を測定したグラフであり、表1は前記のとおり測定試料数はN=5の平均値であるから、多少相違する。
これらの結果から以下のことがわかる。
(1)POMを芯糸に使用することで、使用しない場合に比べてガットの剛性が低下し、反発率が高くなる傾向があり、ナチュラルガット(反発率87%、剛性16.5ポンド/インチ)に近い特性となる。
(2)POM混用率33−55%では反発率、剛性には大きな差は見られない。S−Sカーブについても33%以上の含有率でほぼ直線状となる。図3に示すとおり、実施例3で得られたストリングは、S−S曲線の直線性および傾きもナチュラルガットに非常に近いものが得られた。このことは張りテンションが変わっても反発、剛性などの打球感はほぼ一定で変わらないことを意味する。図4についても、実施例1及び2のS−S曲線の直線性および傾きはナチュラルガットに非常に近いことがわかる。
(3)POM混用率が65%以上ではその他繊維(ナイロン)層が薄くなりストリングの耐久性が大きく低下し、結節強力の低下など物性面でも問題となる
(1)POMを芯糸に使用することで、使用しない場合に比べてガットの剛性が低下し、反発率が高くなる傾向があり、ナチュラルガット(反発率87%、剛性16.5ポンド/インチ)に近い特性となる。
(2)POM混用率33−55%では反発率、剛性には大きな差は見られない。S−Sカーブについても33%以上の含有率でほぼ直線状となる。図3に示すとおり、実施例3で得られたストリングは、S−S曲線の直線性および傾きもナチュラルガットに非常に近いものが得られた。このことは張りテンションが変わっても反発、剛性などの打球感はほぼ一定で変わらないことを意味する。図4についても、実施例1及び2のS−S曲線の直線性および傾きはナチュラルガットに非常に近いことがわかる。
(3)POM混用率が65%以上ではその他繊維(ナイロン)層が薄くなりストリングの耐久性が大きく低下し、結節強力の低下など物性面でも問題となる
次に試打評価を行った。ソフトテニスの上級プレーヤー(4名)で試打して、打球感を反発性、ソフト感、コントロール性、スピン性の各項目で5段階評価した。比較品を3点(普通)として、5点;良い、4点;やや良い、2点;やや悪い、1点;悪いとして4名の平均で示した。結果を表2に示す。
表2からも明らかなとおり、実施例1〜4のストリングは比較例1、参考例1〜2のストリングに比べて反発性、ソフト感、コントロール性、スピン性ともに優れており、打球感は高いことが確認できた。
1,5:芯糸
2,6:下巻皮糸
3,7:上巻皮糸
4,8:表面被覆樹脂層
10,11:ストリング
2,6:下巻皮糸
3,7:上巻皮糸
4,8:表面被覆樹脂層
10,11:ストリング
Claims (9)
- ポリオキシメチレンフィラメントとその他の合成繊維フィラメントを含むラケット用ストリングであって、
前記ラケット用ストリングは、複数本の芯糸と、前記芯糸を被覆する皮糸と、前記皮糸の外側に表面被覆樹脂を含み、前記複数本の芯糸の少なくとも一部はポリオキシメチレンフィラメントであり、
前記皮糸の少なくとも一部はその他の合成繊維フィラメントであることを特徴とするラケット用ストリング。 - 前記ラケット用ストリング重量を100%としたとき、ポリオキシメチレンフィラメント重量は25〜65%である請求項1に記載のラケット用ストリング。
- 前記ポリオキシメチレンフィラメントの単糸繊度は、10〜1000デシテックスである請求項1又は2に記載のラケット用ストリング。
- 前記ポリオキシメチレンフィラメントは、無撚りまたは50回/m以下の撚りが掛けられている請求項1〜3のいずれかに記載のラケット用ストリング。
- 前記その他の合成繊維フィラメントの主成分は、ポリアミドフィラメントである請求項1〜4のいずれかに記載のラケット用ストリング。
- 前記皮糸は前記芯糸の外側に巻き付けられている請求項1〜5のいずれかに記載のラケット用ストリング。
- 前記ラケット用ストリングは、芯部に少なくとも1本のポリオキシメチレンフィラメントが配置され、その外周部はポリアミドマルチフィラメントで被覆かつ接着されている請求項1〜6のいずれかに記載のラケット用ストリング。
- 前記ラケット用ストリングは、芯部に少なくとも一本のポリオキシメチレンフィラメントが配置され、その外周部に下巻皮糸としてポリアミドマルチフィラメントが被覆かつ接着され、さらにその外側に上巻皮糸としてポリアミドモノフィラメントが巻きつけられ、表層が樹脂被覆されている請求項1〜7のいずれかに記載のラケット用ストリング。
- 前記下巻皮糸と上巻皮糸の撚り方向が異なる請求項8に記載のラケット用ストリング。
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CN110846759A (zh) * | 2019-11-08 | 2020-02-28 | 扬州克林体育用品有限公司 | 一种球拍用网线 |
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-
2014
- 2014-10-21 JP JP2014214776A patent/JP2016077743A/ja active Pending
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