JP2016072187A - リチウムイオン二次電池及びその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池及びその製造方法

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竜一 夏井
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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池の容量を増やすための技術を提供する。【解決手段】正極に含まれた正極活物質は、空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属M(MはMo、もしくはMoと、Mn、Co、Ni、W、及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)を含有するリチウム含有遷移金属化合物を含み、遷移金属Mに対する前記リチウムのモル比が2.7以上3.3以下であり、正極21に含まれた全ての正極活物質の合計の質量に対するこのリチウム含有遷移金属酸化物の質量の比率が0.8以上である。正極活物質の粒子の平均粒径が5μm未満である。【選択図】図1

Description

本開示は、リチウムイオン二次電池及びその製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、大きい容量及び大きいエネルギー密度を有するだけでなく、小型化及び軽量化が容易である。リチウムイオン二次電池は、携帯用小型電子機器、電気自動車などの電源として広く利用されており、その需要は年々拡大している。
リチウムイオン二次電池の開発においては、その容量を増やすことが1つの重要な技術課題である。正極材料として、従来から、LixMeO2(Meは、Co、Ni、Mn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種)で表されるリチウム含有遷移金属化合物が使用されている。LixMeO2の容量を増やすために、充電電圧を上げたり、表面構造を最適化したりするなどの試みがなされている(特許文献1及び2)。しかし、LixMeO2の容量は、頭打ちになりつつある。
特開2006−185794号公報 特開2007−66745号公報
上記の事情に鑑み、本開示は、リチウムイオン二次電池の容量を増やすための技術を提供することを目的とする。
本開示は、正極と、負極と、正極と負極との間に配置されたセパレータと、非水電解質と、を備え、正極に含まれた正極活物質は、空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属M(MはMo、もしくはMoと、Mn、Co、Ni、W、及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)を含有するリチウム含有遷移金属化合物を含み、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であり、正極に含まれた全ての正極活物質の合計の質量に対するリチウム含有遷移金属化合物の質量の比率が0.8以上であり、正極活物質の粒子の平均粒径が5μm未満である、リチウムイオン二次電池を提供する。
上記の技術によれば、大きい容量を有するリチウムイオン二次電池を提供できる。
本開示の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池の概略断面図 Li6Mo27のX線回折図 Li6Mo1.50.57のX線回折図 Li6Mo27の初回放電曲線を示す図 Li6Mo1.50.57の初回放電曲線を示す図 Li6MoMnO7のX線回折図 Li6MoMnO7の初回放電曲線を示す図 微粒子化されていないLi6Mo27(比較例2)の初回放電曲線を示す図
本開示者らは、鋭意検討の結果、充放電反応に複数の電子が関与する正極活物質を使用することによって、大きい容量を有するリチウムイオン二次電池を提供できることを見出した。
本開示の一態様に係るリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配置されたセパレータと、非水電解質と、を備え、正極に含まれた正極活物質は、空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属M(MはMo、もしくはMoと、Mn、Co、Ni、W、及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)を含有するリチウム含有遷移金属化合物を含み、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であり、正極に含まれた全ての正極活物質の合計の質量に対するリチウム含有遷移金属化合物の質量の比率が0.8以上であり、正極活物質の粒子の平均粒径が5μm未満である。
このリチウム含有遷移金属化合物を正極活物質として使用すると、充放電反応に複数の電子が関与する。従って、大きい容量を有するリチウムイオン二次電池を提供できる。また、正極活物質の粒子が微粒子化(<5μm)されていると、リチウムの拡散性が向上し、これに伴って電池の特性も向上する。
また、正極活物質の粒子の平均粒径が500nm以下であってもよい。正極活物質の粒子が500nm以下の平均粒径を有していると、リチウムの拡散性が十分に向上し、これに伴って電池の特性も向上する。
また、正極活物質の粒子の平均粒径が50nm以上であってもよい。平均粒径が50nm以上であれば、正極活物質の粒子の生産性が大幅に低下する可能性も低い。
また、リチウム含有遷移金属化合物は、Liαβγ(2.7β≦α≦3.3β、1.8≦β≦2.2、6.4≦γ≦7.6)であってもよい。
Liαβγ(2.7β≦α≦3.3β、1.8≦β≦2.2、6.4≦γ≦7.6)を正極活物質として使用すると、充放電反応に複数の電子が関与することにより、大きい容量を有するリチウムイオン二次電池を提供できる。
また、リチウム含有遷移金属化合物がLi627であってもよい。
Li6Mo27を正極活物質として使用すると、充放電反応に複数の電子が関与する。従って、大きい容量を有するリチウムイオン二次電池を提供できる。
また、リチウム含有遷移金属化合物がLiαMoβ-xMexγ(0≦x≦1.5、MeはMn、Co、Ni、W、及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)であってもよい。また、正極活物質が、Li6Mo2-xMex7(0≦x≦1.5)であってもよい。遷移金属Mを他の元素で置換しても、大きい容量を有するリチウムイオン二次電池を提供できる。
また、正極は、上記のリチウム含有遷移金属化合物以外の少なくとも1種の他の正極活物質を含むものであってもよい。
また、少なくとも1種の他の正極活物質は、リチウムを可逆的に挿入及び脱離することができるリチウム含有遷移金属化合物であってもよい。
また、少なくとも1種の他の正極活物質であるリチウム含有遷移金属化合物は、Li2MeO3、LiMeO2、Li4MeO5、Li2MeO4及びLiMe24(Meは、Mo、Mn、Co、Ni、Fe、W、Cr及びVからなる群より選択される少なくとも1種である)からなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
これらの物質は、電池の正極活物質として好適に使用できる。
また、リチウム含有遷移金属化合物は、充放電反応を経た後も空間群Fd3−mを維持していてもよい。初回放電時には、16cサイト及び16dサイトに加え、8aサイトにリチウムが吸蔵される。つまり、3電子反応が起こる。この3電子反応に基づき、電池は大きい容量を有する。
また、非水電解質は、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート及びフルオロジメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素溶媒を含んでいてもよい。これらのフッ素溶媒が非水電解質に含まれていると、非水電解質の耐酸化性が向上する。その結果、高い電圧で電池を充電する場合にも、電池を安定して動作させることが可能となる。
また、本開示の一態様に係るリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極、負極及びセパレータを準備する工程と、正極と負極との間にセパレータが配置されるように、正極、セパレータ及び負極を組み合わせる工程と、を含み、正極に含まれた正極活物質は、空間群Fd3−mに属する。正極活物質は、更にリチウムと、遷移金属M(MはMo、もしくはMoと、Mn、Co、Ni、W及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)を含有するリチウム含有遷移金属化合物を含み、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であり、正極に含まれた全ての正極活物質の合計の質量に対するリチウム含有遷移金属化合物の質量の比率が0.8以上であり、正極活物質の粒子の平均粒径が5μm未満であり、負極として、充放電反応に関与するリチウムを予め有している負極を準備する。
電池を組み立てた後に実施される初回の充電工程において、Li6Mo27がLi2Mo27に変化する。また、初回の放電工程において、Li2Mo27がLi8Mo27に変化する。初回放電時には、16cサイト及び16dサイトに加え、8aサイトにリチウムが吸蔵される。このような反応を起こさせるために、充放電反応に関与するリチウムを予め有している負極を準備する。これにより、大きい容量を有するリチウムイオン二次電池を提供できる。また、正極活物質の粒子が微粒子化(<5μm)されていると、リチウムの拡散性が向上し、これに伴って電池の特性も向上する(容量が増加する)。
また、正極活物質の粒子の平均粒径が500nm以下であってもよい。正極活物質の粒子が500nm以下の平均粒径を有していると、リチウムの拡散性が十分に向上し、これに伴って電池の特性も向上する。
また、正極活物質の粒子の平均粒径が50nm以上であってもよい。平均粒径が50nm以上であれば、正極活物質の粒子の生産性が大幅に低下する可能性も低い。
また、リチウム含有遷移金属化合物は、Liαβγ(2.7β≦α≦3.3β、1.8≦β≦2.2、6.4≦γ≦7.6)であってもよい。
また、リチウム含有遷移金属化合物は、Li627であってもよい。
また、リチウム含有遷移金属化合物はLiαMoβ-xMexγ(0≦x≦1.5、MeはMn、Co、Ni、W、及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)であってもよい。
また、正極活物質は、Li6Mo2-xMex7(0≦x≦1.5)であってもよい。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
図1に示すように、本実施形態のコイン型の電池10は、正極21、負極22及びセパレータ14を備えている。セパレータ14は、正極21と負極22との間に配置されている。正極21、負極22及びセパレータ14には、非水電解質(非水電解液)が含浸されている。電池10は、さらに、ケース11、封口板15及びガスケット18を備えている。正極21、負極22及びセパレータ14によって電極群が形成されている。電極群は、ケース11の中に収められている。ガスケット18及び封口板15でケース11が閉じられている。
正極21は、正極集電体12と、正極集電体12の上に配置された正極活物質層13とを備えている。正極集電体12は、例えば、アルミニウム、ステンレス、アルミニウム合金などの金属材料で作られている。正極集電体12を省略し、ケース11を正極集電体として使用することも可能である。正極活物質層13は、正極活物質として、例えば、Li6Mo27を含んでいる。正極活物質層13は、必要に応じて、導電剤、イオン伝導補助剤、結着剤などの添加剤を含んでいてもよい。
正極活物質層13に含まれた正極活物質は、空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属Mを含有し、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であるリチウム含有遷移金属化合物のみを実質的に含むものであってもよい。また、正極活物質層13は、正極活物質としてこのリチウム含有遷移金属化合物以外の少なくとも1種の他の正極活物質を含んでいてもよい。前者の場合において、「空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属Mを含有し、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であるリチウム含有遷移金属化合物のみを実質的に含む」とは、このリチウム含有遷移金属化合物以外の活物質が意図的に正極活物質層13に加えられていないことを意味する。言い換えると、正極活物質総量に占める、空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属Mを含有し、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であるリチウム含有遷移金属化合物の質量の比率が0.98よりも大きいことを意味する。後者の場合においては、正極活物質総量に占める、空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属Mを含有し、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であるリチウム含有遷移金属化合物の質量の比率が0.80よりも大きいことを意味する。
また、正極活物質は、実質的にLi6Mo27のみであってもよい。また、正極活物質層13は、正極活物質としてのLi6Mo27とLi6Mo27以外の少なくとも1種の他の正極活物質とを含んでいてもよい。前者の場合において、「正極に含まれた正極活物質が実質的にLi6Mo27のみである」とは、Li6Mo27以外の活物質が意図的に正極活物質層13に加えられていないことを意味する。言い換えると、正極21に不可避的に含まれた1又は複数の正極活物質とLi6Mo27との合計の質量に対するLi6Mo27の質量の比率が0.98よりも大きいことを意味する。後者の場合において、Li6Mo27が正極活物質の主成分である。正極活物質の副成分は特に限定されず、充放電反応に寄与する物質を副成分として使用できる。例えば、正極活物質層13に含まれた全ての正極活物質の合計の質量に対するLi6Mo27の質量の比率は0.8以上である。Li6Mo27の比率の上限は特に限定されない。前者の場合と後者の場合とを区別する観点から、Li6Mo27の比率の上限は、例えば0.98である。正極活物質層13におけるLi6Mo27の含有比率を上げることによって、電池10の容量を十分に確保することができる。
なお、空間群Fd3−mに属し、リチウムと遷移金属Mを含有し、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であるリチウム含有遷移金属化合物以外、もしくはLi6Mo27以外の正極活物質の例として、リチウムを可逆的に挿入及び脱離することができるリチウム含有遷移金属化合物が挙げられる。リチウム含有遷移金属化合物として、Li2MeO3、LiMeO2、Li4MeO5、Li2MeO4及びLiMe24(Meは、Mo、Mn、Co、Ni、Fe、W、Cr及びVからなる群より選択される少なくとも1種)からなる群より選択される少なくとも1種を使用できる。Li6Mo27以外の正極活物質の例として、LiMoO2、Li2MoO3、Li4MoO5、Li2MnO3、LiMn24、Li(Ni,Co,Mn)O2、Li5FeO4、Li6MnO4、Li6CoO4、Li1.2(Mn,Co,Ni)O2、LiCrO2及びLiWO2が挙げられる。これらの物質は、電池10の正極活物質として好適に使用できる。
なお、Li5FeO4、Li6MnO4及びLi6CoO4に関して言えば、これらの初回充放電効率は低い(初回充電容量が初回放電容量よりも大きい)。そのため、Li5FeO4、Li6MnO4及びLi6CoO4からなる群より選択される少なくとも1種と、初回充電容量が初回放電容量よりも小さいLi6Mo27とを最適な比率で混合することによって、初回充放電効率を100%に近づけることが可能である。
なお、空間群Fd3−mに属し、リチウムと遷移金属Mを含有し、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であるリチウム含有遷移金属化合物は、充放電を経た後も空間群Fd3−mを維持している。同様に、このリチウム含有遷移金属化合物の一種であるLi6Mo27は、充放電反応を経た後も空間群Fd3−mを維持している。詳細には、電池10を組み立てた後に実施される初回の充電工程において、Li6Mo27がLi2Mo27に変化する。また、初回の放電工程において、Li2Mo27がLi8Mo27に変化する。初回放電時には、16cサイト及び16dサイトに加え、8aサイトにリチウムが吸蔵される。つまり、3電子反応が起こる。この3電子反応に基づき、電池10は大きい容量を有する。
空間群Fd3−mに属し、リチウムと遷移金属Mを含有し、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であるリチウム含有遷移金属化合物、もしくは、Li6Mo27の1次粒子の平均粒径は、例えば、5μm未満である。言い換えれば、正極活物質の粒子の平均粒径が5μm未満である。正極活物質の粒子がこのような平均粒径を有していると、優れた特性(特に、充放電特性)を有する電池10を提供できる。
正極活物質の粒子の大きさは、正極活物質に含まれたリチウム(リチウムイオン)の拡散性を左右する。具体的には、正極活物質の粒子が小さければ小さいほど、充放電時におけるリチウムの移動距離も小さい。言い換えれば、充放電時におけるリチウムの脱離反応及び挿入反応がスムーズに進行すると推測される。例えば、Li6Mo27のリチウムは、16cサイト及び16dサイトに吸蔵されている。16dサイトは、モリブデンとリチウムとによって半分ずつ占有されている。そのため、モリブデンがリチウムの移動を阻害する。粒子が大きい場合(≧5μm)、モリブデンによってリチウムの拡散が顕著に阻害される。その結果、優れた特性を持った電池が得られないと推測される。言い換えれば、分極抵抗の増加によって電池の容量が減少する。これに対し、正極活物質の粒子が微粒子化(<5μm)されていると、リチウムの拡散性が向上し、これに伴って電池の特性も向上する(容量が増加する)。
正極活物質の粒子の平均粒径は、望ましくは、500nm以下である。正極活物質の粒子が500nm以下の平均粒径を有していると、リチウムの拡散性を十分に向上させることができる。なお、正極活物質の粒子の平均粒径の下限は、例えば、50nmである。平均粒径が50nm以上であれば、正極活物質の粒子の生産性が大幅に低下する可能性も低い。
また、平均粒径が適切に調整されていると、正極活物質と電解質との副反応を抑制できる。さらに、良好なレート特性が発揮される。正極活物質の粒子の平均粒径は、以下の方法で算出されうる。まず、正極活物質の粒子を電子顕微鏡(SEM)で観察する。得られた像における正極活物質の粒子の面積Sの平方根を正極活物質の粒子の粒径aと定義する(a=S1/2)。50個の正極活物質の粒子の粒径aを算出する。算出された粒径aの平均値を正極活物質の1次粒子の平均粒径と定義する。なお、後述するように、今回Li6Mo27がほぼ単相で得られたため、算出された(平均)粒径はLi6Mo27の粒径であると類推される。また、Li6Mo27の製造工程において得られる最終生成物からLi6Mo27を単離することが困難である場合には、Li6Mo27と不可避的不純物とを含む粒子をLi6Mo27の粒子と見なすことができる。
正極活物質の粒子に良好な電子伝導性を付与するために、正極活物質(例えば、Li6Mo27)の粒子は、適切な導電剤(例えば、カーボン)と複合化されていてもよい。具体的には、Li6Mo27の粒子の表面の一部が導電剤で被覆されていてもよい。例えば、正極活物質の粒子とアセチレンブラックの粒子とを複合化させることができる。アセチレンブラックの粒子の平均粒径は数nm〜数十nm程度と小さい。そのため、正極活物質の粒子の表面にアセチレンブラック(カーボン)の粒子が被着していたとしても、アセチレンブラックの粒子は正極活物質の粒子の平均粒径に大きな変化を及ぼさない。つまり、カーボンと複合化された正極活物質の粒子の平均粒径は、カーボンと複合化されていない正極活物質の粒子の平均粒径に概ね等しい。
空間群Fd3−mに属し、リチウムと遷移金属Mを含有し、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であるリチウム含有遷移金属化合物の一例であるLi6Mo27の粒子は、例えば、次の方法で作製されうる。まず、リチウム化合物の粒子とモリブデン化合物の粒子とを混合して原料混合物を得る。リチウム化合物の例として、水酸化リチウム、炭酸リチウム及び酸化リチウムが挙げられる。モリブデン化合物の例として、各種酸化モリブデン及びモリブデン酸アンモニウムが挙げられる。リチウム化合物の粒子とモリブデン化合物の粒子とを混合する工程は、乾式法で実施してもよいし、湿式法で実施してもよい。混合工程において、ボールミルなどの混合装置を使用することができる。得られた原料混合物を焼成することによって、Li6Mo27が得られる。焼成工程は、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気で実施される。また、焼成工程は、例えば、500〜900℃の温度条件かつ12〜24時間の時間条件にて実施される。混合工程の条件、焼成工程の条件などを最適化すれば、実質的にLi6Mo27のみを含む活物質粒子を得ることができる。
なお、Li6Mo27に代えて、又はLi6Mo27とともに、Li6Mo27に含まれたMoの一部が他の金属元素で置き換えられた化合物を正極活物質として使用してもよい。そのような化合物は、Li6Mo2-xMex7で表される(0<x<2、又は0.1≦x≦1.5)。Meは、Mn、Co、Ni、W及びVからなる群より選択される少なくとも1種である。Li6Mo27に含まれたMoの一部を他の金属元素で置き換えることによって、サイクル特性などの諸特性を改善できる可能性がある。なお、Li6Mo27はLi6Mo2-xMex7(x=0)に相当する。すなわち、xは0以上であればよい。
負極22は、負極集電体16と、負極集電体16の上に配置された負極活物質層17とを備えている。負極集電体16は、例えば、アルミニウム、ステンレス、アルミニウム合金などの金属材料で作られている。負極集電体16を省略し、封口板15を負極集電体として使用することも可能である。負極活物質層17は、負極活物質を含んでいる。負極活物質層17は、必要に応じて、導電剤、イオン伝導補助剤、結着剤などの添加剤を含んでいてもよい。
負極活物質として、金属材料、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物などを使用できる。金属材料は、単体の金属であってもよいし、合金であってもよい。金属材料の例として、リチウム金属及びリチウム合金が挙げられる。炭素材料の例として、天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、人造黒鉛及び非晶質炭素が挙げられる。容量密度の観点から、珪素(Si)、錫(Sn)、珪素化合物又は錫化合物を好適に使用できる。珪素化合物及び錫化合物は、それぞれ、合金又は固溶体であってもよい。珪素化合物の例として、SiOx(0.05<x<1.95)が挙げられる。また、SiOxの一部の珪素を他の元素で置換することによって得られた化合物(合金又は固溶体)も使用できる。他の元素は、ホウ素、マグネシウム、ニッケル、チタン、モリブデン、コバルト、カルシウム、クロム、銅、鉄、マンガン、ニオブ、タンタル、バナジウム、タングステン、亜鉛、炭素、窒素及び錫からなる群より選択される少なくとも1種である。錫化合物の例として、Ni2Sn4、Mg2Sn、SnOx(0<x<2)、SnO2及びSnSiO3が挙げられる。これらから選択される1種の錫化合物を単独で使用してもよいし、これらから選択される2種以上の錫化合物の組み合わせを使用してもよい。
負極活物質の形状は特に限定されず、粒子状、繊維状などの公知の形状を有する負極活物質を使用できる。
なお、リチウムを含まない材料を負極活物質として使用する場合には、負極22の不可逆容量を超える量のリチウムが負極22(負極活物質層17)に予め補填されていることが望ましい。つまり、電池10を製造するとき、負極22として、充放電反応に関与するリチウムを予め有している負極を準備することが推奨される。電池10を組み立てた後に実施される初回の充電工程において、Li6Mo27がLi2Mo27に変化する。また、初回の放電工程において、Li2Mo27がLi8Mo27に変化する。初回放電時には、16cサイト及び16dサイトに加え、8aサイトにリチウムが吸蔵される。このような反応を起こさせるために、充放電反応に関与するリチウムを予め有している負極22を準備する。これにより、大きい容量を有する電池10を提供できる。
リチウムを負極活物質層17に補填する(吸蔵させる)ための方法は特に限定されない。具体的には、(a)真空蒸着法などの気相法によってリチウムを負極活物質層17に堆積させる方法、(b)リチウム金属箔と負極活物質層17とを接触させて両者を加熱する方法がある。いずれの方法においても、熱によってリチウムを負極活物質層17に拡散させることができる。また、リチウムを電気化学的に負極活物質層17に吸蔵させる方法もある。具体的には、リチウムを有さない負極22及びリチウム金属箔(正極)を用いて電池を組み立て、負極22にリチウムが吸蔵されるようにその電池を充電する。
正極21及び負極22の結着剤として、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどを使用できる。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸及びヘキサジエンからなる群より選択される2種以上の材料の共重合体を結着剤として使用してもよい。さらに、上述の材料から選択される2種以上の材料の混合物を結着剤として使用してもよい。
正極21及び負極22の導電剤として、グラファイト、カーボンブラック、導電性繊維、フッ化黒鉛、金属粉末、導電性ウィスカー、導電性金属酸化物、有機導電性材料などを使用できる。グラファイトの例として、天然黒鉛及び人造黒鉛が挙げられる。カーボンブラックの例として、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック及びサーマルブラックが挙げられる。金属粉末の例として、アルミニウム粉末が挙げられる。導電性ウィスカーの例として、酸化亜鉛ウィスカー及びチタン酸カリウムウィスカーが挙げられる。導電性金属酸化物の例として、酸化チタンが挙げられる。有機導電性材料の例として、フェニレン誘導体が挙げられる。
セパレータ14として、大きいイオン透過度及び十分な機械的強度を有する材料を使用できる。そのような材料の例として、微多孔性薄膜、織布及び不織布が挙げられる。具体的に、セパレータ14は、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンで作られていることが望ましい。ポリオレフィンで作られたセパレータ14は、優れた耐久性を有するだけでなく、過度に加熱されたときにシャットダウン機能を発揮できる。セパレータ14の厚さは、例えば、10〜300μm(又は10〜40μm)の範囲にある。セパレータ14は、1種の材料で構成された単層膜であってもよいし、2種以上の材料で構成された複合膜(又は多層膜)であってもよい。セパレータ14の空孔率は、例えば、30〜70%(又は35〜60%)の範囲にある。「空孔率」とは、セパレータ14の全体の体積に占める空孔の体積の割合を意味し、例えば、水銀圧入法によって測定される。
非水電解液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶けたリチウム塩とを含む。非水溶媒として、環状炭酸エステル溶媒、鎖状炭酸エステル溶媒、環状エーテル溶媒、鎖状エーテル溶媒、環状エステル溶媒、鎖状エステル溶媒、フッ素溶媒などを使用できる。環状炭酸エステル溶媒の例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートが挙げられる。鎖状炭酸エステル溶媒の例として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートが挙げられる。環状エーテル溶媒の例として、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及び1,3−ジオキソランが挙げられる。鎖状エーテル溶媒として、1,2−ジメトキシエタン及び1,2−ジエトキシエタンが挙げられる。環状エステル溶媒の例として、γ−ブチロラクトンが挙げられる。鎖状エステル溶媒の例として、酢酸メチルが挙げられる。フッ素溶媒の例として、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート及びフルオロジメチレンカーボネートが挙げられる。これらから選択される1種の非水溶媒を単独で使用してよいし、これらから選択される2種以上の非水溶媒の組み合わせを使用してもよい。
非水電解液電解質には、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート及びフルオロジメチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種のフッ素溶媒が含まれていることが望ましい。これらのフッ素溶媒が非水電解液に含まれていると、非水電解液の耐酸化性が向上する。その結果、高い電圧で電池10を充電する場合にも、電池10を安定して動作させることが可能となる。
リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252、LiN(SO2CF3)(SO249)、LiC(SO2CF33などを使用できる。これらから選択される1種のリチウム塩を単独で使用してもよいし、これらから選択される2種以上のリチウム塩の混合物を使用してもよい。リチウム塩の濃度は、例えば、0.5〜2mol/リットルの範囲にある。
本開示はコイン型のリチウムイオン二次電池に限定されない。円筒型、角型、シート型、ボタン型、扁平型、積層型などの種々の形状を有するリチウムイオン二次電池に本開示が適用されうる。
(実施例1)
酸化リチウムの粒子(高純度化学社製、Li2O、純度99.9%)と酸化モリブデンの粒子(高純度化学社製、MoO2、純度99.9%)とをボールミルによって湿式粉砕及び混合し、粉末状の原料混合物を得た。得られた原料混合物をアルゴン気流中、800℃で焼成することによって活物質粒子を得た。得られた活物質粒子の粉末X線回折測定を実施した。結果を図2に示す。図2のX線回折図は、Li6Mo27がほぼ単相で得られていることを示している。各ピークがブロードであることから、結晶性が低いことを理解できる。X線回折のデータをリートベルト法で解析することによって、活物質粒子の組成を調べた。活物質粒子は、Li6Mo27、Li2MoO3及びLi4MoO5を含んでいた。活物質粒子の質量に対するLi6Mo27の質量の比率は0.95であった。活物質粒子の質量に対するLi2MoO3の質量の比率は0.03であった。活物質粒子の質量に対するLi4MoO5の質量の比率は0.02であった。活物質粒子とカーボン(アセチレンブラック)とをボールミルによって乾式混合し、活物質粒子の微粒子化を行うとともに、活物質粒子とカーボンとの複合化を行った。カーボンと複合化された活物質粒子の平均粒径(平均1次粒径)は、約200nmであった。なお、LiとMoのモル比(Li/Mo)は、2.7以上3.3以下の範囲でばらつきが見られた。ただし、これらの活物質粒子はいずれも空間群Fd3−mに帰属しており、かつ後述する電池の初回放電容量も、Li/Mo=3の場合と同等であった。
また、化学式がLiαβγ場合に、βは1.8≦β≦2.2程度のばらつきが見られる。同じく、酸素量のモル比については、±0.6程度のばらつきが観測される。酸素欠損及び酸素過剰状態が存在することが理由であると考えられるが、酸素のモル比率が変動した場合であっても、活物質粒子は、空間群Fd3−mに帰属しており、また、Li6Mo27と同等の初回放電容量が得られた。このことから、活物質は、Liαβγ(2.7β≦α≦3.3β、1.8≦β≦2.2、6.4≦γ≦7.6)であると考えられる。
次に、70質量部の活物質粒子と、20質量部の導電剤と、10質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、適量の2−メチルピロリドン(NMP)とを混合することによって、正極合剤スラリーを得た。20μmの厚さのアルミニウム箔で形成された正極集電体の片面に正極合剤スラリーを塗布した。正極合剤スラリーを乾燥及び圧延することによって、正極活物質層を備えた厚さ60μmの正極板を得た。得られた正極板を直径12.5mmの円形状に打ち抜くことによって正極を得た。
厚さ300μmのリチウム金属箔を直径が14.0mmの円形状に打ち抜くことによって、負極を得た。
フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)及びエチルメチルカーボネート(EMC)を1:1:6の体積比で混合して非水溶媒を得た。この非水溶媒にLiPF6を1.0mol/リットルの濃度で溶解させることによって非水電解液を得た。
セパレータ(セルガード社製、品番2320、厚さ25μm)に非水電解液を染み込ませ、露点が−50℃に管理されたドライボックスの中でCR2032規格のコイン型の電池を作製した。セルガード(登録商標)2320は、ポリプロピレン層、ポリエチレン層及びポリプロピレン層で形成された3層セパレータである。
(実施例2)
酸化リチウムの粒子(高純度化学社製、Li2O、純度99.9%)と酸化モリブデンの粒子(高純度化学社製、MoO2、純度99.9%)と酸化タングステンの粒子(高純度化学社製、WO3、純度99.9%)とをボールミルによって湿式粉砕及び混合し、粉末状の原料混合物を得た。得られた原料混合物をアルゴン気流中、800℃で焼成することによって活物質粒子を得た。得られた活物質粒子の粉末X線回折測定を実施した。結果を図3に示す。図3のX線回折図は、Li6Mo1.50.57がほぼ単相で得られていることを示している。各ピークがブロードであることから、結晶性が低いことを理解できる。X線回折のデータをリートベルト法で解析することによって、活物質粒子の組成を調べた。活物質粒子は、Li6Mo1.50.57、Li2MoO3及びLi5MoO4を含んでいた。活物質粒子の質量に対するLi6Mo1.50.57の質量の比率は0.95であった。活物質粒子の質量に対するLi2MoO3の質量の比率は0.03であった。活物質粒子の質量に対するLi5MoO4の質量の比率は0.02であった。活物質粒子とカーボン(アセチレンブラック)とをボールミルによって乾式混合し、活物質粒子の微粒子化を行うとともに、活物質粒子とカーボンとの複合化を行った。カーボンと複合化された活物質粒子の平均粒径(平均1次粒径)は、約200nmであった。この活物質粒子を用い、実施例1と同じ方法でコイン型の電池を作製した。
(実施例3)
酸化リチウムの粒子(高純度化学社製、Li2O、純度99.9%)と酸化モリブデンの粒子(高純度化学社製、MoO2、純度99.9%)と、マンガン源としてMnMoO4の焼結体をボールミルによって湿式粉砕及び混合し、粉末状の原料混合物を得た。得られた原料混合物を窒素気流中、800℃で焼成することによって活物質粒子を得た。
なお、MnMoO4の焼結体はMnO(高純度化学社製、MnO、純度99.9%)とMoO3(高純度化学社製、MoO3、純度99.9%)をボールミルで粉砕・混合後、450℃、大気雰囲気中で焼成することにより得たものである。
上述のように作製した活物質粒子のICP組成分析を行った結果、Li/(Mn+Mo)比が3であった。
また、得られた活物質粒子の粉末X線回折測定を実施し図6に示す。その結果、実施例1で得られた活物質粒子の場合と比較して、図6に示すようにX線回折図のピークがシフトしたことより、Li6MoMnO7がほぼ単相で得られていることが理解できる。
また、X線回折のデータをリートベルト法で解析することによって、活物質粒子の組成を調べた。活物質粒子は、Li2MeO3やLiMeO2、Li4MoO5を含んでいた。
上記の活物質粒子とカーボン(アセチレンブラック)とをボールミルによって乾式混合し、活物質粒子の微粒子化を行うとともに、活物質粒子とカーボンとの複合化を行った。カーボンと複合化された活物質粒子の平均粒径(平均1次粒径)は、約200nmであった。本実施例ではこの活物質粒子を用い、実施例1と同じ方法でコイン型の電池を作製した。
(比較例1)
公知の方法により、水酸化リチウムの粒子とニッケル・コバルト・アルミニウム複合水酸化物の粒子とを合成し、これらをボールミルによって混合し、粉末状の原料混合物を得た。得られた原料混合物を大気雰囲気中、800℃で焼成することによって、リチウムニッケル複合酸化物の粒子を得た。リチウムニッケル複合酸化物の粒子の平均2次粒径は10μm(1次粒径は約200nm)であった。リチウムニッケル複合酸化物の粒子を用い、実施例1と同じ方法でコイン型の電池を作製した。なお、リチウムニッケル複合酸化物の粒子とカーボンとの複合化は行わなかった。
(比較例2)
活物質粒子の微粒子化を行わなかったこと、及び、活物質粒子とカーボンとの複合化を行わなかったことを除き、実施例1と同じ方法で活物質粒子を得た。この活物質粒子の平均粒径(平均1次粒径)は5μmであった。得られた活物質粒子を用い、実施例1と同じ方法でコイン型の電池を作製した。
(電池の評価)
図4はLi6Mo27の初回放電曲線、図5はLi6Mo1.50.57の初回放電曲線、図7はLi6MoMnO7の初回放電曲線を示す。
評価は以下のように行った。正極に対する電流密度を0.005mA/cm2に設定し、4.8Vの電圧に達するまで実施例1の電池を充電した。その後、放電終止電圧を1.0Vに設定し、0.005mA/cm2の電流密度で実施例1の電池を放電させた。実施例1の電池の初回放電容量は図4に示すように450mAh/gであった。同じ方法で実施例2の電池の初回放電容量を測定した。実施例2の電池の初回放電容量は図5に示すように450mAh/gであった。
また、実施例1、2と同じ方法で実施例3の電池の初回放電容量を測定した。その結果、図7に示すように実施例3の電池の初回放電容量は450mAh/gであった。
比較例1においては、正極に対する電流密度を0.005mA/cm2に設定し、4.5Vの電圧に達するまで比較例1の電池を充電した。その後、放電終止電圧を2.5Vに設定し、0.005mA/cm2の電流密度で比較例1の電池を放電させた。比較例1の電池の初回放電容量は210mAh/gであった。
比較例2においては、正極に対する電流密度を0.005mA/cm2に設定し、4.8Vの電圧に達するまで比較例2の電池を充電した。その後、放電終止電圧を1.0Vに設定し、0.005mA/cm2の電流密度で比較例2の電池を放電させた。比較例2の電池の初回放電容量は図8に示すように100mAh/gであった。
上記のように、実施例1、実施例2及び実施例3の電池は、大きい初回放電容量を有していた。これは、複数の電子が充放電に関与することによって得られた効果であると推測される。実施例1、実施例2及び実施例3の電池の初回放電容量(450mAh/g)は、3電子反応に相当する。このことから、初回充電時において、充電前には空孔であった8aサイトにリチウムが吸蔵されたものと推測される。
また、実施例1、実施例2及び実施例3の電池が大きい初回放電容量を有していた他の理由は、これらの実施例に使用された活物質粒子の平均粒径が小さかったことにあると推測される。事実、比較例2の正極活物質の粒子の組成は、実施例1の正極活物質の粒子の組成と同じであったにもかかわらず、比較例2の電池の初回放電容量は、実施例1の電池の初回放電容量よりも遥かに小さかった。比較例2では、活物質粒子とカーボンとの複合化を行わなかった。しかし、比較例2の電池を作製するときにも、十分な量の導電剤(カーボン)を正極に加えた。そのため、比較例2の電池の正極の導電性が実施例1の電池の正極の導電性に比べて大きく劣るわけではない。したがって、初回放電容量の違いを生じさせた主な要因は、活物質粒子の平均粒径の違い、言い換えれば、リチウムの拡散性の差にあると考えられる。
なお、実施例2、実施例3共に複数サンプルを準備した結果、LiとMのモル比(Li/M)は、実施例1と同等の範囲でばらつきが見られた。これらの活物質粒子はいずれも空間群Fd3−mに帰属していた。また、β、γについて実施例1と同様にばらつきが生じた場合も、活物質粒子は、空間群Fd3−mに帰属していた。すなわち、本実施の形態の正極活物質は、Liαβγ(2.7≦α/β≦3.3β、1.8≦β≦2.2、6.4≦γ≦7.6)を含むと考えられる。
なお、実施例3では、Moの一部をMn、及びWで置換した化合物について説明したが、置換元素はMnおよびWに限られない。例えば、Moの一部をCo、Niのうち少なくともひとつの元素で置換してもよい。Moの少なくとも一部をCoで置き換えるためには、原料にCoOやCoMoO4を用いればよい。また、Moの少なくとも一部をNiで置き換えるためには、原料にNiOやNiMoO4を用いればよい。また、Moの少なくとも一部をVで置き換えるためには、原料にVO2を用いればよい。
言い換えると、正極活物質は、空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属M(MはMo、もしくはMoと、Mn、Co、Ni、W、Vからなる群より選択される少なくとも一種を含む)を含有し、遷移金属Mに対するリチウムのモル比が2.7以上3.3以下であるするリチウム含有遷移金属化合物を主成分とすればよい。正極活物質がLiαβγ(2.7β≦α≦3.3β、1.8≦β≦2.2、6.4≦γ≦7.6)で表される場合も、遷移金属Mの種類は同様であり、正極活物質はLiαMoβ-xMexγ(0<x<2、又は0.1≦x≦1.5。MeはMn、Co、Ni、W、及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)であればよい。
また、実施例3ではマンガン源としてMnMoO4の焼結体を用いたが、マンガン源としてMnO、Mn23、MnO2などの遷移金属酸化物を適宜使用してもよい。同様に、実施例2では酸化タングステンの粒子としてWO3を用いたが、タングステン源としてWO2などを用いてもよい。また、原料混合物に2種類以上の遷移金属酸化物または複合遷移金属酸化物を複数種類含ませることで、MoをMo以外の2種類以上の金属元素で置換することができる。
また、原料混合物中の、Mn、Co、Ni、W及びV遷移金属酸化物または複合遷移金属酸化物の量を調整することで、Moに対するMn、Co、Ni、W及びVの置換量を変化させることができる。
本開示のリチウムイオン二次電池は、携帯電話、PDA、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、携帯ゲーム機などの携帯用電子機器の電源として有用である。本開示のリチウムイオン二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両の駆動用電源としても有用である。
10 電池
14 セパレータ
21 正極
22 負極


Claims (19)

  1. 正極と、
    負極と、
    前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、
    非水電解質と、を備え、
    前記正極に含まれた正極活物質は、空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属M(MはMo、もしくはMoと、Mn、Co、Ni、W、及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)を含有するリチウム含有遷移金属化合物を含み、
    前記遷移金属Mに対する前記リチウムのモル比が2.7以上3.3以下であり、
    前記正極に含まれた全ての前記正極活物質の合計の質量に対する前記リチウム含有遷移金属化合物の質量の比率が0.8以上であり、
    前記正極活物質の粒子の平均粒径が5μm未満である、リチウムイオン二次電池。
  2. 前記正極活物質の粒子の前記平均粒径が500nm以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
  3. 前記正極活物質の粒子の前記平均粒径が50nm以上である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池。
  4. 前記リチウム含有遷移金属化合物は、Liαβγ(2.7β≦α≦3.3β、1.8≦β≦2.2、6.4≦γ≦7.6)である請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  5. 前記リチウム含有遷移金属化合物は、Li627である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  6. 前記リチウム含有遷移金属化合物はLiαMoβ-xMexγ(0≦x≦1.5、MeはMn、Co、Ni、W、及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)である、請求項4に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 前記正極活物質は、Li6Mo2-xMex7(0≦x≦1.5)である請求項6に記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 前記正極は、前記リチウム含有遷移金属化合物以外の少なくとも1種の他の正極活物質を含む、請求項4に記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記少なくとも1種の他の正極活物質は、リチウムを可逆的に挿入及び脱離することができるリチウム含有遷移金属化合物である、請求項7に記載のリチウムイオン二次電池。
  10. 前記少なくとも1種の他の正極活物質である前記リチウム含有遷移金属化合物は、Li2MeO3、LiMeO2、Li4MeO5、Li2MeO4及びLiMe24(Meは、Mo、Mn、Co、Ni、Fe、W、Cr及びVからなる群より選択される少なくとも1種である)より選択される少なくとも1種を含む、請求項9に記載のリチウムイオン二次電池。
  11. 前記リチウム含有遷移金属化合物は、充放電反応を経た後も空間群Fd3−mを維持している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  12. 前記非水電解質は、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピオン酸メチル、フルオロベンゼン、フルオロエチルメチルカーボネート及びフルオロジメチレンカーボネートより選択される少なくとも1種のフッ素溶媒を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
  13. 正極、負極及びセパレータを準備する工程と、
    前記正極と前記負極との間に前記セパレータが配置されるように、前記正極、前記セパレータ及び前記負極を組み合わせる工程とを含み、
    前記正極に含まれた正極活物質は、空間群Fd3−mに属し、リチウムと、遷移金属M(MはMo、もしくはMoと、Mn、Co、Ni、W及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)を含有するリチウム含有遷移金属化合物を含み、
    前記遷移金属Mに対する前記リチウムのモル比が2.7以上3.3以下であり、
    前記正極に含まれた全ての前記正極活物質の合計の質量に対する前記リチウム含有遷移金属化合物の質量の比率が0.8以上であり、
    前記正極活物質の粒子の平均粒径が5μm未満であり、
    前記負極として、リチウムを予め有している負極を準備する、リチウムイオン二次電池の製造方法。
  14. 前記正極活物質の粒子の前記平均粒径が500nm以下である、請求項13に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  15. 前記正極活物質の粒子の前記平均粒径が50nm以上である、請求項13又は14に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  16. 前記リチウム含有遷移金属化合物は、Liαβγ(2.7β≦α≦3.3β、1.8≦β≦2.2、6.4≦γ≦7.6)である請求項13〜15のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  17. 前記リチウム含有遷移金属化合物は、Li627である、請求項13〜15のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  18. 前記リチウム含有遷移金属化合物はLiαMoβ-xMexγ(0≦x≦1.5、MeはMn、Co、Ni、W、及びVからなる群より選択される少なくとも1種を含む)である、請求項16に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
  19. 前記正極活物質は、Li6Mo2-xMex7(0≦x≦1.5)である請求項17に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。


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