以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る多層フレキシブル配線板1の断面模式図である。図2は、図1に示す多層フレキシブル配線板のリジッド部10aの部分拡大図である。図1に示すように、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板1は、両面フレキシブル配線板からなるコア基板10を用いて製造される。コア基材10は、接着性樹脂硬化物を含む接着性樹脂硬化物層11と、この接着性樹脂硬化物層11の両主面上に設けられた一対の導電層12a,12b(以下、「内部導電層12a,12b」という)と、を備える。接着性樹脂硬化物層11は、一対の内部導電層12a,12b間を絶縁する層間絶縁層として機能すると共に、一対の内部導電層12a,12b間を接着する層間接着層として機能する。内部導電層12a,12bには、配線回路が形成されている。
多層フレキシブル配線板1は、両端部に設けられ各種電子部品が実装されるリジッド部10aと、リジッド部10a間に設けられ屈曲性を有するフレキシブル部10bとを有する。リジッド部10aは、接着性樹脂硬化物層11の両主面上に設けられた一対の内部導電層12a,12bと、この内部導電層12a,12b上に接着性樹脂硬化物層13a,13bを介して設けられた一対の導電層14a,14b(以下、「外部導電層14a,14b」という)と、一対の外部導電層14a,14bの一部を覆うように設けられたカバーコート15とを有する。接着性樹脂硬化物層13a,13bは、絶縁性を有する接着性樹脂硬化物を含み、内部導電層12aと外部導電層14aとの間及び内部導電層12bと外部導電層14bとの間を絶縁する層間絶縁層として機能すると共に、内部導電層12aと外部導電層14aとの間及び内部導電層12bと外部導電層14bとの間を接着する層間接着層として機能する。なお、接着性樹脂硬化物層11及び接着性樹脂硬化物層13a,13bは、同一の接着性樹脂を用いて形成することができる。外部導電層14a,14bには、配線回路が形成されている。
コア基板10は、内部導電層12a,12b及び接着性樹脂硬化物層11を貫通するように設けられた貫通ビアホール16を有する。この貫通ビアホール16を介して一対の内部導電層12a,12bが電気的に接続されている。貫通ビアホール16内には、接着性樹脂硬化物13が充填されている。このように、接着性樹脂硬化物を貫通ビアホール16内に充填することにより、貫通ビアホール壁の導電層を固定し、半田リフロー耐性などの耐熱性や冷熱リサイクル試験での信頼性を向上できる。
内部導電層12aと外部導電層14aとの間及び内部導電層12bと外部導電層14bとの間には、ブラインドビアホール17が設けられている。このブラインドビアホール17を介して内部導電層12aと外部導電層14aとの間及び内部導電層12bと外部導電層14bとの間は、電気的に接続されている。ブラインドビアホール17内には、カバーコート15が充填されていてもよい。
図2に示すように、貫通ビアホール16の内壁には、導電性粒子層16aを介してめっき16bが設けられている。導電性粒子層16aは、貫通ビアホール16内の接着性樹脂硬化物層11を覆うように設けられており、その一部が一対の内部導電層12a,12bと接触している。この導電性粒子層16aを介して一対の内部導電層12a,12bが電気的に接続される。導電性粒子層16aは、例えば、カーボン微粒子などにより構成され、接着性樹脂硬化物層11との高い密着性を有する。このため、導電性粒子層16aを介してめっき16bを設けることにより、接着性樹脂硬化物層11と導電性粒子層16aとの間への他の成分の混入を防ぐことができる。なお、導電性粒子層16aは、必ずしも設ける必要はない。
ブラインドビアホール17の内壁には、導電性粒子層17aを介してめっき17bが設けられている。導電性粒子層17aは、ブラインドビアホール17内の接着性樹脂硬化物層13a,13bを覆うように設けられており、その一部が内部導電層12a及び外部導電層14a、又は内部導電層12b及び外部導電層14bと接触している。この導電性粒子層17aを介して内部導電層12a及び外部導電層14a、並びに内部導電層12b及び外部導電層14bが電気的に接続される。導電性粒子層17aは、例えば、カーボン微粒子などにより構成され、接着性樹脂層13a,13bとの高い密着性を有する。このため、導電性粒子層17aを介してめっき17bを設けることにより、接着性樹脂硬化物層13a,13bと導電性粒子層17aとの間への他の成分の混入を防ぐことができる。なお、導電性粒子層17aは、必ずしも設ける必要はない。
フレキシブル部10bは、接着性樹脂硬化物層11の一方の主面上に設けられた内部導電層12aと、この内部導電層12aを覆うように設けられた接着性樹脂硬化物層13aとを有する。フレキシブル部10bの内部導電層12aは、両端側のリジッド部10aに延在するように設けられ、貫通ビアホール16及び/又はブラインドビアホール17を介してリジッド部10aの内部導電層12b及び外部導電層14a,14bと電気的に接続される。
接着性樹脂硬化物層13a,13bに含まれる接着性樹脂硬化物は、アルカリ溶解速度が0.0001μm/sec以上0.01μm/sec以下の範囲内である。アルカリ溶解速度が0.0001μm/sec以上であれば、耐折性及び冷熱サイクル(耐熱性)に優れ、アルカリ溶解速度が0.01μm/sec以下であれば、絶縁信頼性やめっき時の残膜性に優れる。接着性樹脂硬化物のアルカリ溶解速度としては、0.0003μm/sec以上0.008μm/sec以下であることが好ましく、0.0005μm/sec以上0.005μm/sec以下であることがより好ましい。
本実施の形態においては、接着性樹脂硬化物のアルカリ溶解速度の測定は、ルータ加工(外形加工)によりリジッド部10aの外部導電層14a,14bを除去した後、露出した接着性樹脂硬化物層13a,13bに対して実施する。なお、接着性硬化物のアルカリ溶解速度は、外部導電層14a,14bを薄く残した状態で外部導電層14a,14bをエッチングにより除去した後、露出した接着性樹脂硬化物層13a,13bに対して測定することも可能である。
また、接着性樹脂硬化物は、残存溶剤量が0.5質量%以下である。接着性樹脂硬化物の残存溶剤量が0.5質量%以下であれば、ビア形状及び半田リフロー耐性に優れる。接着性樹脂硬化物の残存溶剤量としては、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることがさらに好ましい。また、接着性樹脂硬化物の残存溶剤量の下限値としては、密着性の観点から0質量%を超えていることが好ましい。
接着性樹脂硬化物は、ガラス転移温度(Tg)125℃以下である。ガラス転移点が125℃以下であれば、冷熱サイクル耐性及び絶縁信頼性が向上する。接着性樹脂硬化物のガラス転移温度は、さらに冷熱サイクル耐性及び絶縁信頼性を向上させる観点から、100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましい。また、接着性樹脂硬化物のガラス転移温度としては、耐熱性の観点から、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。
また、接着性樹脂硬化物は、熱機械分析(TMA)(条件:荷重0.5μN/(μm・μm)、窒素気流下、昇温速度10℃/min)における30℃から160℃までの伸度が、破断することなく50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。30℃から160℃までの伸度が、破断することなく50%以下であることで、耐折性がより向上し、半田リフロー耐性や冷熱サイクル耐性などの耐熱性がより向上する。
また、接着性樹脂硬化物の上記熱機械分析における最大熱膨張係数は、30℃から180℃まででの最大熱膨張係数が、5000ppm以上であることが好ましく、10000ppm以上であることがより好ましく、15000ppm以上であることがさらに好ましい。30℃から180℃まででの最大熱膨張係数が、5000ppm以上であることで、耐折性がより向上し、半田リフロー耐性や冷熱サイクル耐性などの耐熱性がより向上する。
また、接着性樹脂硬化物の引張弾性率としては、反りを低減すると共に、低反発性となり配線板を機器に組み込む作業を容易にする観点から、0.2GPa以上3GPa以下の範囲内であることが好ましく、0.3GPa以上2GPa以下の範囲内であることがより好ましい。
本実施の形態においては、接着性樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)、熱機械分析及び引張弾性率の測定は、ルータ加工(外径加工)によりフレキシブル部10bの接着性樹脂硬化物層11及び内部導電層12aを除去した後、露出した接着性樹脂硬化物層13aを用いて実施する。接着性樹脂硬化物層13aを必要なサイズにカットして測定した。
次に、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板1の製造方法について説明する。
本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板1の製造方法は、コア基板10の内部導電層12a,12b上に未硬化接着性樹脂を含む未硬化接着性樹脂層を介して外部導電層14a,14bを設ける工程と、外部導電層14a,14bにコンフォーマルマスクを形成する工程と、コンフォーマルマスクを介して未硬化接着性樹脂層を溶解除去してブラインドビアホール17を形成する工程と、未硬化接着性樹脂層を加熱硬化して接着性樹脂硬化物層13a,13bを形成する工程と、ブラインドビアホール17内にめっき17aを施して内部導電層12a,12bと外部導電層14a,14bとを電気的に接続する工程と、外部導電層14a,14bに配線回路を形成する工程と、を有する。
以下、図3を参照して、各工程について詳細に説明する。図3は、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板1の製造工程の概略図である。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、未硬化接着性樹脂層及び接着性樹脂硬化物層については、同一の番号の符号(未硬化接着性樹脂層11’,13’又は接着性樹脂硬化物層11,13)を付して説明する。
コア基板10としては、詳細については後述する接着性樹脂ワニスを塗工・乾燥して得られる未硬化接着性樹脂層11’と、この未硬化接着性樹脂層11’の両主面上に設けられた一対の内部導電層12a,12bと、を備えた両面フレキシブル基板を用いる。この接着性樹脂硬化物層11の接着性樹脂は、アルカリ可溶性樹脂を含む。なお、コア基板10の接着性樹脂硬化物層11としては、必ずしも未硬化接着性樹脂を含むものでなくともよい。例えば、コア基板10としては、従来公知の一般的な絶縁材料を用いて形成された絶縁層と、この絶縁層を介して積層された一対の内部導電層とを有するフレキシブル配線板を用いてもよい。
まず、未硬化接着性樹脂層11’の両主面上に銅箔を積層して内部導電層12a,12bを設ける。次に、内部導電層12a、12bにドライフィルム(不図示)をラミネートした後、ドライフィルムの露光・現像及び内部導電層12a、12bのエッチングにより、内部導電層12a,12bの一部を除去してコンフォーマルマスク(不図示)を形成する。次に、コンフォーマルマスクを介して内部導電層12a,12bのエッチング領域に露出した未硬化接着性樹脂層11’をアルカリ溶液により溶解除去して貫通ビアホール16を形成する。
アルカリ溶液としては、未硬化接着性樹脂層11’を溶解除去できるものであれば特に制限はない。アルカリ溶液としては、例えば、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などを用いることができる。また、アルカリ溶液による未硬化接着性樹脂層11’の溶解除去においては、一般的なフレキシブル配線板の製造工程で用いられているアルカリスプレー装置などを用いることができる。次に、乾燥炉を用いて、150℃〜200℃で10分〜2時間加熱することにより、未硬化接着性樹脂層11’の未硬化接着性樹脂を硬化させる。
次に、貫通ビアホール16内の接着性樹脂硬化物層11に導電性微粒子(例えば、カーボン微粒子)を付着させて導電性粒子層16a(図3において不図示、図2参照)を形成した後、電解銅めっきを施してめっき16bを形成して内部導電層12a,12bを電気的に接続する。次に、サブトラクティブ法などにより内部導電層12a、12bに配線回路を形成することにより、両面フレキシブル配線板10を製造する(図3A参照)。なお、内部導電層12a,12bは、ブラインドビアを介して電気的に接続してもよい。
次に、両面フレキシブル配線板10の内部導電層12a,12b上に、接着性樹脂ワニスを塗布・乾燥して未硬化接着性樹脂13’を含む未硬化接着性樹脂層13a’,13b’を設ける。次に、未硬化又は半硬化状態の未硬化接着性樹脂層13a’,13b’上に銅箔などを積層して外部導電層14a,14bを設ける(図3B参照)。ここでは、未硬化接着性樹脂は、コア基板10の貫通ビアホール16内に充填される。なお、銅箔上に接着性樹脂ワニスを塗布・乾燥して未硬化接着性樹脂層13a’(13b’)を有する積層体(樹脂付き銅箔)を内部導電層12a,12b上に積層してもよい。外部導電層14a,14bは、真空プレスや真空ラミネーターを用いることにより、50℃〜140℃、好ましくは70℃〜120℃、より好ましくは90℃〜110℃で積層できる。
次に、外部導電層14a,14b上にドライフィルム18をラミネートした後、ドライフィルム18の露光・現像により外部導電層14a,14bの一部を露出させる(図3C)。続いて、外部導電層14a,14bをエッチングして外部導電層14a,14bの一部を除去してコンフォーマルマスクを形成すると共に、フレキシブル部10bとなる領域の外部導電層14bを除去する(図3D)。
次に、コンフォーマルマスクを介して外部導電層14a,14bのエッチング領域に露出した未硬化接着性樹脂層13a’、13b’をアルカリ溶液により溶解除去して、ブラインドビアホール17を形成すると共に、アルカリ溶液によりドライフィルム18を剥離する。ここでは、フレキシブル部10bとなる領域の未硬化接着性樹脂層13b’も共に溶解除去する(図3E)。このように、ブラインドビアホール17の形成とドライフィルム18の剥離とをアルカリ溶液で行うことができるので、生産効率が向上する共に、ビア形成コストを低減できる。アルカリ溶液としては、例えば、ドライフィルムの剥離液である3質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いることができる。
次に、乾燥炉を用いて、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’を加熱硬化させて、接着性樹脂硬化物層13a,13bとする。加熱硬化は、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の反応性の観点から120℃以上、400℃以下の温度で実施することが好ましい。より好ましくは、150℃以上、250℃以下である。
加熱硬化における反応雰囲気は、空気雰囲気下でも不活性ガス雰囲気下でも実施可能である。高温では窒素気流下であることが導電層の酸化を抑制するために好ましい。加熱硬化に要する時間は、反応条件によって異なるが、通常は24時間以内であり、特に好ましくは0.1時間から8時間の範囲で実施される。
次に、ブラインドビアホール17内の接着性樹脂硬化物層13a,13bにカーボン微粒子を付着させて導電性粒子層(図3において不図示、図2参照)を形成した後、電解銅めっきによりめっき17bを形成する。これにより、内部導電層12a及び外部導電層14a、並びに内部導電層12b及び外部導電層14bが電気的に接続される(図3F)。
次に、サブトラクティブ法により外部導電層14a、14bをパターニングして回路形成を行う(図3G)。次に、従来のフレキシブル基板の配線板方法と同様にして、カバーコート15の形成などの表面処理を行い、多層フレキシブル配線板を製造する(図3H)。
このように、上記多層フレキシブル配線板の製造方法においては、コンフォーマルマスクを介してアルカリ溶液により未硬化接着性樹脂層13a’,13b’を溶解除去するので、ブラインドビアホール17の形成に伴うスミアの発生を抑制できる。また、アルカリ溶液により未硬化接着性樹脂層13a’,13b’及びドライフィルムレジスト18を共に溶解除去できるので、多層フレキシブル配線板1の製造工程の簡略化も可能である。さらに、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’は、アルカリ溶解速度が所定範囲であるため、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’を短時間で溶解除去できる。さらに、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の残存溶剤量が所定範囲となるので、ブラインドビアホール17形成後の加熱工程における溶剤の揮発量を低減でき、多層フレキシブル配線板1の膨れなどを低減できる。これにより、回路品質に優れる多層フレキシブル配線板を高い生産効率で製造することが可能となる。
なお、上述した製造方法においては、両面フレキシブル配線板10を用いた例について説明したが、両面フレキシブル配線板10に代えて片面フレキシブル配線板、又は多層フレキシブル配線板などを多層フレキシブル配線板1の製造に用いてもよい。
なお、図4に示すように、外部導電層14a,14bは、外部導電層14a,14bを挟むように補強材を有するラバー基材20を押し当てた状態で外部導電層14a,14bを加熱及び加圧して積層してもよい。これにより、多層フレキシブル配線板1の平坦性を向上できる。
また、硬化前の半硬化状態の未硬化接着性樹脂層13a’,13b’としては、熱重量分析(TG)による260℃における熱重量減少が0.5%以下であり、50℃における3質量%NaOH水溶液に対するアルカリ溶解速度が0.3μm/sec以上であることが好ましい。これにより、アルカリ溶液による未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の溶解除去が容易となるので、多層フレキシブル配線板の生産性が向上する。また、アルカリ水溶液によるブラインドビアの形成が十分できる。また、アルカリ溶解除去後の未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の残存溶剤量を低減できるので、多層フレキシブル配線板の品質を向上できる。熱重量分析(TG)による260℃における熱重量減少としては、0.3質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。50℃における3%NaOH水溶液に対するアルカリ溶解速度としては、0.4μm/sec以上であることが好ましく、0.5μm/sec以上であることがより好ましい。
次に、接着性樹脂ワニスの構成について詳細に説明する。本実施の形態に係る接着性樹脂ワニスは、(A)水酸基を含有する水酸基含有樹脂と、(B)水酸基含有樹脂の水酸基と反応する反応性化合物とを含むものを用いる。
本実施の形態においては、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’をアルカリ溶液で溶解除去してブラインドビアを形成する観点から、接着性樹脂ワニスを構成する樹脂としては、アルカリ可溶性官能基を有するアルカリ可溶性樹脂を用いる。アルカリ溶解性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基などが挙げられる。これらの中でも、アルカリ可溶性官能基としては、外部導電層14a,14bを積層する際のプレス時などにおける未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の熱反応を抑制する観点から、熱安定性に優れる水酸基が好ましい。また、水酸基は、カルボキシル基と異なり、加熱による脱炭酸が生じないことから、高温で半田リフローした場合においても、熱分解によるアウトガスの発生を抑制できる。このため、本実施の形態においては、接着性樹脂ワニスとしては、(A)水酸基を含有する水酸基含有樹脂を用いることが好ましい。
(A)水酸基含有樹脂
水酸基含有樹脂としては、分子内に少なくとも1つの水酸基を含有するものあれば特に制限はない。水酸基としては、(B)反応性化合物との間で反応するものであれば、特に制限はない。これらの中でも、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の硬化時における反応性化合物とのの間の反応性に優れる観点から、フェノール性水酸基が好ましい。
水酸基含有樹脂のアルカリ溶解速度としては、アルカリ水溶液を用いて形成するブラインドビアホール17の形状の観点から、0.2μm/sec以上3μm/sec以下の範囲内であることが好ましい。水酸基含有樹脂のアルカリ溶解速度としては、0.3μm/sec以上3μm/sec以下の範囲内であることがより好ましく、0.5μm/sec以上3μm/sec以下の範囲内であることがさらに好ましい。
水酸基含有樹脂としては、ポリビニルフェノール樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体、フェノール性水酸基を有するポリビニルアセタール樹脂及びフェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルフェノール樹脂、ノボラック樹脂及びフェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂が好ましい。
ポリビニルフェノール樹脂としては、例えば、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレン、テトラヒドロキシスチレン、ペンタヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレンなどのヒドロキシスチレン類を単独又は2種以上を、ラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤の存在下で重合させた樹脂が挙げられる。
ポリビニルフェノール樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(MW)が500〜100,000のものが好ましく、1,000〜50,000のものがより好ましい。
ノボラック樹脂としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、4,4’−ビフェニルジオール、ビスフェノール−A、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノールなどのフェノール類の少なくとも1種を、酸触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類(尚、ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いてもよい。)、又はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類の少なくとも1種と重縮合させた樹脂が挙げられる。これらの中でも、フェノール類としてのフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてのホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましい。特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で1〜100:0〜70:0〜60の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の溶融粘度を下げて埋込み性を向上させる観点から、ノボラック樹脂として、分子内に4,4’−ビフェニリレン基、2,4’−ビフェニリレン基、2,2’−ビフェニリレン基、1,4−キシリレン基、1,2−キシリレン基、1,3−キシリレン基などの架橋基を含有するフェノール樹脂及びメチレン架橋基を含有するフェノール樹脂の重合単位を共に有するノボラック樹脂も好ましい。
ノボラック樹脂としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(MW)が500〜15,000のものが好ましく、1,000〜10,000のものが更に好ましい。
また、水酸基含有樹脂としては、耐折性や絶縁信頼性に優れる観点から、フェノール性水酸基を有するポリイミドが特に好ましい。
フェノール性水酸基を有するポリイミド樹脂としては、フェノール性水酸基を主鎖に有するポリイミド樹脂及び/又は末端に有するポリイミド樹脂が挙げられる。これらの中でも、少なくとも主鎖にフェノール性水酸基を有していることが好ましい。
以下、水酸基含有樹脂として用いられるフェノール性水酸基を有するポリイミドについて詳細に説明する。フェノール性水酸基を有するポリイミドとしては、例えば、以下の実施の形態に示すものが挙げられる。
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係るフェノール性水酸基を有するポリイミドは、下記一般式(1)〜下記一般式(3)で表される構造を有するアルカリ可溶性シロキサンポリイミドである。このアルカリ可溶性シロキサンポリイミドは、カルボキシル基無水物を取り除いた残基が下記一般式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、アミノ基を取り除いた残基が下記一般式(3)で表されるジアミンと、を反応させることにより得られる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係るポリイミドは、下記一般式(4)及び下記一般式(5)で表される構造を含むアルカリ可溶性ポリイミドである。このアルカリ可溶性ポリイミドは、下記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、アミノ基を取り除いた残基が下記一般式(5)で表されるジアミンと、を反応させることにより得られる。
第1の実施の形態に係るアルカリ可溶性ポリイミドの合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、上記一般式(2)中、R1は、互いに独立であり、炭素数1〜炭素数30の一価の炭化水素基である。R1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基などのアルケニル基などが挙げられる。これら中でも、原料の入手の容易さの観点から、R1としては、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基が好ましい。
また、R2としては、アルキルコハク酸無水物、例えば、プロピルコハク酸無水物、ノルボニル酸無水物、プロピルナジック酸無水物などからカルボキシル基無水物を取り除いた残基が挙げられる。これらの中でも、プロピルコハク酸無水物、ノルボニル酸無水物、プロピルナジック酸無水物からカルボキシル基無水物を取り除いた残基であることが好ましい。nは、1〜50、好ましくは3〜30、更に好ましくは5〜15の整数である。nは、同じであってもよく、異なっていてもよい。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、下記式群(7)に示すシリコーン鎖を有するテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
フェノール性水酸基を有するポリイミドにおけるシリコーン鎖を有するテトラカルボン酸二無水物由来の成分の含有量としては、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。
シリコーン鎖を有するテトラカルボン酸二無水物を用いて得られるフェノール性水酸基を有するポリイミドは、アルカリ溶解速度と低反り性に優れる。また、シリコーン鎖を有するテトラカルボン酸二無水物は、溶剤に対する溶解性に優れるので、例えば、NMPなどのアミド構造を有する重合溶剤を用いずにフェノール性水酸基を有するポリイミドを得ることが可能となる。これにより、乾燥性に優れた重合溶剤を用いることができるので、接着性樹脂硬化物層13a,13bの残存溶剤量を低減することができる。
アミノ基を取り除いた残基が上記一般式(3)で表されるジアミンとしては、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジオール、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。これらの中でも、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが特に好ましい。
第2の実施の形態に係るアルカリ可溶性ポリイミドの合成に用いられる上記一般式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’−オキシジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ポリジメチルシロキサン含有酸二無水物などを挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上混合しても用いてもよい。
アミン基を取り除いた残基が上記一般式(5)で表されるジアミンとしては、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジオール、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’−ジオール、4,3’−ジアミノビフェニル−3,4’−ジオール、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’,5,5’−テトラオール、3,3’−ジアミノビフェニル−4,4’,5,5’−テトラオール、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−2,4−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。これらのジアミンは、単独で用いてもよく、2種以上を混合しても用いてもよい。これらのジアミンの中でも、ポリイミドの溶解性、絶縁信頼性や重合速度や入手性の観点から、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジオール、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが好ましい。
上記一般式(5)で表されるジアミンの含有量としては、全ジアミンに対して5モル%〜30モル%であることが好ましく、10モル%〜25モル%であることがより好ましい。上記一般式(5)で表されるジアミンの含有量が5モル%以上であれば、アルカリ溶解性が向上し、30モル%以下であれば、溶剤溶解性が向上する。
また、上記テトラカルボン酸二無水物以外に、本発明の効果を奏する範囲で従来公知のテトラカルボン酸二無水物を合わせて用いることもできる。このようなテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシベンゾイルオキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物などの芳香族テトラカルボン酸や、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのテトラカルボン酸二無水物の中でも、ポリイミドの柔軟性、溶解性、絶縁信頼性及び重合速度の観点から、4,4’−オキシジフタル酸二無水物を用いることが好ましい。
また、上記ジアミン以外に、本発明の効果を奏する範囲で従来公知のジアミノを合わせて用いることができる。このようなジアミンとしては、例えば、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、1,3−ビス(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェニル)エーテル、ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェニル)エーテル、1,3−ビス(3−(3−(3−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−(4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ)フェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。
これらのジアミンの中でも、ポリイミドの弾性率を低減させる場合には、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、その他炭素鎖数の異なるオキシアルキレン基を含むポリオキシアルキレンジアミンなどを用いることが好ましい。ポリオキシアルキレンジアミン類としては、ハンツマン社製のジェファーミンED−600、ED−900、ED−2003、EDR−148、HK−511などのポリオキシエチレンジアミンや、ジェファーミンD−230、D−400、D−2000、D−4000、BASF社製のポリエーテルアミンD−230、D−400、D−2000などのポリオキシプロピレンジアミンや、ジェファーミンXTJ−542、XTJ−533、XTJ−536などのポリテトラメチレンエチレン基を有するジアミンなどが挙げられる。さらに、ポリイミドの溶解性を向上させる場合には、α,ω−ビス(2−アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(4−アミノフェニル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン、α−(2−アミノプロピル)−ω−アミノポリ(オキシプロピレン)などを用いることができる。
上記ジアミンの含有量としては、全ジアミンに対して25モル%〜65モル%であることが好ましく、40モル%〜65モル%であることがより好ましい。上記ジアミンの含有量が25モル%〜65モル%であることで、ポリイミドの弾性率が好適な範囲となる。また、上記ジアミンの含有量が25モル%以上であれば、柔軟性及び溶剤溶解性が向上し、65モル%以下であれば、アルカリ可溶性が向上する。
次に、ポリイミドの製造方法について説明する。ポリイミドの製造方法としては、公知方法を含めた全てのポリイミドの製造方法が適用できる。これらの中でも、有機溶剤中で反応を行うことが好ましい。ポリイミドの合成に用いられる溶剤としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、トリグライム、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
接着性樹脂硬化物層13a,13bの残存溶剤量を好ましい範囲とする観点から、ポリイミドの重合に用いる溶剤としては、乾燥性に優れる溶剤が好ましい。乾燥性に優れる溶剤としては、アミド構造を含まない溶剤が挙げられる。これらの中でも、揮発性に優れるγ−ブチロラクトン、トリグライム、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどが好ましい。
ポリイミドを合成する際に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド構造を有する溶剤を使用した場合、減圧条件下においても、ポリイミドとアミド構造を有する溶剤との間の水素結合により、溶剤残存量を0.5%以下にすることは難しい。アミド構造を有する溶剤を用いてポリイミドを重合した場合には、重合後に貧溶剤を添加してポリマーを析出させ、析出したポリマーを回収、乾燥させた後、揮発性の良い溶剤に再溶解させて使用することが好ましい。
ポリイミドの合成における反応原料の濃度としては、2質量%〜80質量%であることが好ましく、20質量%〜50質量%であることがより好ましい。
ポリイミドの合成に用いるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比は、0.8〜1.2の範囲内であることが好ましい。この範囲内の場合、ポリイミドの分子量を上げることができ、伸度なども向上する。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとのモル比は、0.9〜1.1であることがより好ましく、0.92〜1.07であることがさらに好ましい。
ポリイミドの重量平均分子量としては、5000以上100000以下であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。重量平均分子量は10000以上60000以下がより好ましく、15000以上50000以下がさらに好ましい。重量平均分子量が5000以上100000以下であると接着剤樹脂ワニスを用いて得られる接着性樹脂硬化物層13a,13bの伸度が改善され、機械物性が向上する。さらに、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の塗工時に所望する膜厚に滲み無く塗工できる。
ポリイミドは、具体的には以下のような方法で合成される。まず、反応原料を室温から80℃の範囲内で重縮合反応することにより、ポリアミド酸構造からなるポリイミド前駆体を製造する。次に、このポリイミド前駆体を好ましくは100℃〜400℃に加熱してイミド化するか、または無水酢酸などのイミド化剤を用いて化学イミド化することにより、ポリアミド酸に対応する繰り返し単位構造を有するポリイミドが得られる。加熱してイミド化する場合、副生する水を除去するために、共沸剤(好ましくは、トルエンやキシレン)を共存させて、ディーンシュターク型脱水装置を用いて、還流下、脱水を行うことも好ましい。
また、80℃〜220℃で反応を行うことにより、ポリイミド前駆体の生成と熱イミド化反応を共に進行させて、ポリイミドを得ることも好ましい。すなわち、ジアミン成分と酸二無水物成分とを有機溶剤中に懸濁または溶解させ、80℃〜220℃の加熱下に反応を行い、ポリイミド前駆体の生成と脱水イミド化とを共に行わせることにより、ポリイミドを得ることも好ましい。
また、ポリイミド前駆体のポリマー主鎖の末端を、モノアミン誘導体またはカルボン酸誘導体からなる末端封止剤で末端封止することも可能である。ポリイミドのポリマー主鎖の末端が封止されることで、末端官能基に由来する貯蔵安定性に優れる。
モノアミン誘導体からなる末端封止剤としては、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、2,3−キシリジン、2,6−キシリジン、3,4−キシリジン、3,5−キシリジン、o−クロロアニリン、m−クロロアニリン、p−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、m−ブロモアニリン、p−ブロモアニリン、o−ニトロアニリン、p−ニトロアニリン、m−ニトロアニリン、o−アミノフェノール、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール,o−アニシジン、m−アニシジン、p−アニシジン,o−フェネチジン、m−フェネチジン、p−フェネチジン、o−アミノベンズアルデヒド、p−アミノベンズアルデヒド、m−アミノベンズアルデヒド、o−アミノベンズニトリル、p−アミノベンズニトリル、m−アミノベンズニトリル,2−アミノビフェニル,3−アミノビフェニル、4−アミノビフェニル、2−アミノフェニルフェニルエーテル、3−アミノフェニルフェニルエーテル,4−アミノフェニルフェニルエーテル、2−アミノベンゾフェノン、3−アミノベンゾフェノン、4−アミノベンゾフェノン、2−アミノフェニルフェニルスルフィド、3−アミノフェニルフェニルスルフィド、4−アミノフェニルフェニルスルフィド、2−アミノフェニルフェニルスルホン、3−アミノフェニルフェニルスルホン、4−アミノフェニルフェニルスルホン、α−ナフチルアミン、β−ナフチルアミン、1−アミノ−2−ナフトール、5−アミノ−1−ナフトール、2−アミノ−1−ナフトール、4−アミノ−1−ナフトール、5−アミノ−2−ナフトール、7−アミノ−2−ナフトール、8−アミノ−1−ナフトール、8−アミノ−2−ナフトール、1−アミノアントラセン、2−アミノアントラセン、9−アミノアントラセンなどの芳香族モノアミンを挙げることができ、この中で好ましくはアニリンの誘導体が使用される。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
カルボン酸誘導体からなる末端封止剤としては、主に無水カルボン酸誘導体が挙げられる。カルボン酸誘導体からなる末端封止剤としては、例えば、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル無水物、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物などの芳香族ジカルボン酸無水物が挙げられる。これらの芳香族ジカルボン酸無水物の中で、も、無水フタル酸を用いることが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
重合より得られたポリイミド溶液は、脱溶剤することなくそのまま用いてもよい。また、必要な溶剤、添加剤など加えて接着性樹脂ワニスとすることもできる。
(B)反応性化合物
反応性化合物とは、上述したアルカリ可溶性の水酸基含有樹脂の水酸基と反応するものである。反応性化合物が水酸基含有化合物の水酸基と反応することにより、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’が加熱硬化して接着性樹脂硬化物層13a,13bのアルカリ耐性が発現される。本実施の形態においては、反応性化合物とは、分子内に水酸基含有樹脂の水酸基と反応する反応性官能基を少なくとも1つ有するものである。反応性官能基としては、例えば、オキサゾリン基、オキサジン基、エポキシ基、オキセタン基などが挙げられる。
本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板の製造方法においては、外部導電層14a,14bに形成したコンフォーマルマスクを介して未硬化接着性樹脂層13a’,13b’を溶解除去してブラインドビアホール17を形成する。そして、ブラインドビアホール17を形成してから未硬化接着性樹脂層13a’,13b’を加熱硬化する。このため、未硬化接着性樹脂層13a,13b’においては、加熱前には十分なアルカリ溶解性が必要とされ、加熱硬化後には、接着性樹脂硬化物層13a,13bのアルカリ溶解性を低下させる必要がある。このため、本実施の形態においては、反応性化合物としては、100℃以下、好ましくは120℃以下で水酸基含有樹脂の水酸基との反応の進行が遅く、170℃以上、好ましくは150℃以上で反応が速やかに進行して十分に未硬化接着性樹脂層13a’,13b’が硬化するものを用いる。
反応性化合物としては、例えば、オキサゾリン化合物、ベンゾオキサジン化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。これらの中でも、オキサゾリン化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキセタン化合物が好ましく、水酸基含有樹脂の水酸基との反応により水を副生することの無いオキサゾリン化合物が特に好ましい。ここで、オキサゾリン化合物とは、分子内に少なくとも1個のオキサゾリン基を有する化合物である。また、オキサゾリン化合物としては、水酸基含有化合物の水酸基を封止し、さらに水酸基含有化合物間に架橋を形成する観点から、分子内に2個以上のオキサゾリン基を有するものが好ましい。
本実施の形態においては、水酸基を有する水酸基含有樹脂(例えば、ポリイミド)に反応性化合物(例えば、オキサゾリン化合物)を適正な量添加し、適正な温度で乾燥する。これにより、所定温度(例えば、48℃)にて3質量%の水酸化ナトリウム水溶液により未硬化接着性樹脂層13a’,13b’を溶解除去して貫通ビア、ブラインドビア、又はスルーホールを形成することが可能となる。また、所定温度(例えば、180℃)にて1時間の熱処理により水酸基含有樹脂の水酸基と反応性化合物(例えば、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基)とが反応し、アルカリ水溶液耐性を示すことが可能となる。また、複数のオキサゾリン基を含有する反応化合物を使用した場合、水酸基含有化合物(例えば、ポリイミド)の分子間に架橋が形成される。
オキサゾリン化合物としては、例えば、1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン、日本触媒社製のK−2010E、K−2020E、K−2030E、2,6−ビス(4−イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,6−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2,2’−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2’−イソプロピリデンビス(4−ターシャルブチル−2−オキサゾリン)などが挙げられる。これらのオキサゾリン化合物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
オキサゾリン化合物の添加量としては、水酸基含有化合物の水酸基とオキサゾリン化合物のオキサゾリン基とのモル比が、水酸基/オキサゾリン基=0.5〜4であることが好ましく、0.7〜3であることがより好ましい。水酸基/オキサゾリン基=0.5以上であれば、接着性樹脂硬化物層13a,13bの柔軟性、耐熱性が向上し、水酸基/オキサゾリン基=4以下であれば、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’のアルカリ加工性が向上する。
未硬化接着性樹脂層13a’,13b’は、溶剤、残存モノマーなどの揮発成分を十分に除去し、アルカリ水溶液に可溶とする観点から、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’は、真空乾燥法などで50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱することが好ましい。50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱した未硬化接着性樹脂層13a’,13b’は、アルカリ水溶液に可溶となるため、フレキシブルプリント配線板の製造で用いられるレーザードリリング加工などを不要とし、アルカリ水溶液でブラインドビアを加工できる未硬化接着性樹脂層13a’,13b’として使用できる。
アルカリ水溶液でブラインドビアを形成した後、残存した未硬化接着性樹脂層13a’,13b’をさらに高温(例えば160℃〜200℃)で加熱することにより、水酸基含有化合物と反応性化合物との間で主として架橋反応が生じ、アルカリ水溶液へ不溶となる。具体的には、形成される未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の膜厚いもよるが、オーブン又はホットプレートで最高温度を150℃〜220℃の範囲とし、5分間〜100分間、空気又は窒素などの不活性雰囲気下で加熱することにより、架橋反応が進行する。加熱温度は、処理時間の全体に亘って一定であってもよく、徐々に昇温させてもよい。
反応性化合物としてオキサゾリン化合物を用いた場合、架橋反応を経て得られる多層フレキシブル配線板1の硬化した接着性樹脂硬化物層13a,13bには、遊離する成分が実質的にない。この接着性樹脂硬化物13a,13bは、アミド構造とエーテル構造とを有する反応物を含む。この反応物のアミド構造及びエーテル構造は、顕微赤外分光法などで解析できる。
(C)難燃剤
また、本実施の形態に係る接着性樹脂ワニスは、難燃性を向上する観点から、難燃剤を含有させて用いることもできる。難燃剤としては、特に制限されないが、含ハロゲン化合物、含リン化合物及び無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
含ハロゲン化合物としては、塩素を含む有機化合物や臭素を含む有機化合物などが挙げられる。含ハロゲン化合物としては、例えば、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA及びヘキサブロモシクロドデカンテトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。
含リン化合物としては、ホスファゼン、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル及び亜リン酸エステルなどのリン化合物が挙げられる。特に、水酸基含有化合物としてポリイミドを用いる場合には、ポリイミドとの相溶性の面から、ホスファゼン、ホスファイオキサイド又はリン酸エステルを用いることが好ましい。
ホスファゼンとしては、フェノキシ基を有する環状ホスファゼンが好ましく、フェノキ基に加えてシアノ基や水酸基を有する環状ホスファゼンがより好ましい。また、水酸基及びフェノキシ基を有する環状ホスファゼンは、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’の加熱硬化時に環状ホスファゼンの水酸基と反応性化合物(例えば、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基)とが反応してアルカリ可溶性を低下させることができるため好ましい。特に、フェノキシ基にシアノ基を有する環状ホスファゼンとフェノキシ基に水酸基を有する環状ホスファゼンとを混合して用いることが好ましい。
無機難燃剤としては、アンチモン化合物や金属水酸化物などが挙げられる。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモンや五酸化アンチモンが挙げられる。アンチモン化合物と上記含ハロゲン化合物との併用することにより、所定の温度(例えば、プラスチックの熱分解温度域)で、アンチモン化合物が含ハロゲン化合物からハロゲン原子を引き抜いてハロゲン化アンチモンを生成するため、相乗的に難燃性を上げることができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
無機難燃剤は、有機溶剤に溶解しないため、その粉末の粒径は100μm以下のものを用いることが好ましい。粉末の粒径は100μm以下であれば、未硬化接着性樹脂層13a’,13b’に混入しやすく、硬化後の接着性樹脂硬化物の透明性を損ねることがないため好ましい。さらに難燃性を上げるためには、粉末の粒径としては、50μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
難燃剤の添加量としては、特に制限されず、用いる難燃剤の種類に応じて適宜選択する。一般的には、水酸基含有化合物の含有量を基準として、5質量%から50%の範囲で用いる。
未硬化接着性樹脂層13a’,13b’は、接着性樹脂ワニスを用いて塗工膜にする時、その塗工方式に応じて粘度とチクソトロピーの調整を行う。必要に応じて、フィラーやチクソトロピー性付与剤を添加して用いることも可能である。また、公知の消泡剤やレベリング剤や顔料等の添加剤を加えることも可能である。
(D)密着材
また、本実施の形態に係る接着性樹脂ワニスは、内部導電層12a,12b及び外部導電層14a,14bとの密着性を向上する観点から、密着材を含有させて用いることもできる。密着材としては特に制限されないが、フェノール化合物、含窒素有機化合物、アセチルアセトン金属錯体などが挙げられる。これらの中でも、フェノール化合物が特に好ましい。
なお、接着性樹脂ワニスは、水酸基含有化合物、反応性化合物などのほか、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤に溶解した状態とすることにより、ワニスとして好ましく使用することができる。
このような有機溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶剤、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン溶剤、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ヘキサメチルスルホキシドなどの含硫黄系溶剤、クレゾール、フェノールなどのフェノール系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライム、ジオキサン、テトラヒドロフラン、安息香酸ブチル、安息香酸エチル、安息香酸メチルなどのエーテル溶剤が挙げられる。また、これらの有機溶剤は、単独で使用してもよいし、複数併用してもよい。
本実施の形態においては、ブラインドビアの形成性、及び、多層板の半田リフローや冷熱サイクル試験の耐熱性を発現させるためには、水酸基含有化合物と反応性化合物との反応を抑えつつ、溶剤を揮発させることが必要となる。アミド系溶剤を用いた場合、水酸基含有化合物(例えば、ポリイミド)の水酸基とアミド系溶剤との水素結合が強く、アミド系溶剤が揮発しにくくなる。このため、接着性樹脂ワニスの溶剤としては、アミド構造を含まない溶剤であって、揮発性に優れるγ−ブチロラクトン、トリグライム、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、クレゾール、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどの溶剤を用いることが好ましい。これらの溶剤は、常圧下で乾燥することにより、残存溶剤量を低減できるので、生産性に優れる。
接着性樹脂ワニスは、熱架橋性官能基を有する架橋性化合物を含有しても良い。熱架橋性化合物としては、熱架橋性官能基を介して架橋を形成するものであれば特に制限はないが、例えば、トリアジン系化合物、ベンゾオキサジン化合物などが挙げられる。
トリアジン系化合物としては、メラミン類およびシアヌル酸メラミン類などが好ましい。メラミン類としては、メラミン誘導体、メラミンと類似の構造を有する化合物およびメラミンの縮合物等が挙げられる。メラミン類の具体例としては、例えば、メチロール化メラミン、アンメリド、アンメリン、ホルモグアナミン、グアニルメラミン、シアノメラミン、アリールグアナミン、メラム、メレム、メロンなどが挙げられる。
シアヌル酸メラミン類としては、シアヌル酸とメラミン類との等モル反応物が挙げられる。また、シアヌル酸メラミン類中のアミノ基または水酸基のいくつかが、他の置換基で置換されていてもよい。このうちシアヌル酸メラミンは、例えば、シアヌル酸の水溶液とメラミンの水溶液とを混合し、90℃〜100℃で撹拌下反応させ、生成した沈殿を濾過することによって得ることができ、白色の固体であり、市販品をそのまま、またはこれを微粉末状に粉砕して使用できる。
ベンゾオキサジン化合物は、モノマーのみからなるものでも良いし、数分子が重合してオリゴマー状態となっていてもよい。また、異なる構造を有するベンゾオキサジン化合物を同時に用いても良い。具体的には、ビスフェノールベンゾオキサジンが好ましく用いられる。
また、本実施の形態に係る未硬化接着性樹脂層13a’,13b’は、接着性樹脂ワニスを金属箔上に塗布して乾燥することにより、樹脂付金属箔として用いることも可能である。この場合、銅箔の表面への未硬化接着性樹脂層13a’,13b’を形成するための接着性樹脂ワニスの塗工方法及び乾燥方法については特に制限はない。例えば、接着性樹脂ワニスを銅箔の表面にエッジコータ、グラビアコータ、スピンコータなどを用いて塗工し、加熱炉内で加熱乾燥することにより、銅箔上に半硬化状態の未硬化接着性樹脂層13a’,13b’が形成され樹脂付銅箔が得られる。乾燥後に得られる膜厚は、平均厚さ5μm〜50μmである。未硬化接着性樹脂層13a’,13b’中の溶剤を低減するために、常圧又は減圧にて、50℃〜140℃において1分間〜60分間加熱することが好ましい。
また、本実施の形態に係る接着性樹脂硬化物13は、基材上に形成された配線パターンを覆うように接着性樹脂硬化物層13a,13bを設けることにより、配線板の配線パターンの保護膜として好適に用いることができる。
以下、本発明の効果を明確にするために行った実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
<試薬>
実施例及び比較例において、用いた試薬は以下である。
ポリイミド成分:BPDA(三井化学社製)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−N)(三井化学社製)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)(マナック社製)、ポリアルキルエーテルジアミンBaxxodur(TM)EC302(BASF社製)、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)(CHANGZHOU SUNLIGHT MEDICAL RAW MATERIAL CO.,LTD.製)。
オキサゾリン化合物:1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)(三國製薬工業社製)。
ホスファゼン化合物:(商品名)FP−300、FP−400(伏見製薬所社製)。
溶剤:1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)(ネオス社製)。
その他:トルエン、γ―ブチロラクトン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、フェノール、4,4’−ジ(クロロメチル)ビフェニル、ホルマリン水溶液、メタノール、苛性ソーダは、和光純薬工業社製の試薬を特別な精製を実施せずに用いた。
<重量平均分子量測定>
重量平均分子量の測定法であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、下記の条件により測定を行った。溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
また、重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
<接着性樹脂硬化物のアルカリ溶解速度の測定>
接着性樹脂硬化物のアルカリ溶解速度は、ルータ加工(外形加工)により作製した多層フレキシブルプリント配線板のリジッド部の外部導電層を薄く残し、外部導電層をエッチングにより除去した後、露出した接着性樹脂硬化物層の表面に対して測定した。接着性樹脂硬化物の表面に48℃、3%の水酸化ナトリウム溶液を5〜60min間噴霧した後、水洗し、50℃で5時間、乾燥した。室温にて残存する膜厚を測定し、溶解した膜厚を溶解に掛かった時間で除して、減膜速度を求めた。
<接着性樹脂硬化物の残存溶剤量の測定>
接着性樹脂硬化物の残存溶剤量の測定は、ルータ加工(外形加工)により作製した多層フレキシブルプリント配線板のリジッド部の外部導電層を薄く残し、外部導電層をエッチングにより除去した後、露出した接着性樹脂硬化物を用いて実施した。接着性樹脂硬化物を細かくカットして、溶剤DMFに浸漬し、約60℃で一昼夜、加温して残存溶剤を抽出した。Quadrex社製、#007−17(ID−0.32mm、膜厚0.50μm、長さ30m)カラムを用いて、ガスクロマトグラフィー(GC分析)を行って、残存溶剤量を求めた。
<接着性樹脂硬化物のガラス転移温度、伸度、熱膨張係数、弾性率の測定>
接着性樹脂硬化物のガラス転移温度(Tg)、熱機械分析及び引張弾性率の測定は、以下のようにして得た接着性硬化物層を用いて実施した。まず、ルータ加工(外径加工)によりフレキシブル部の接着性樹脂硬化物層を除去すると共に、内部導電層を薄く残した状態とした後、内部導電層をエッチングにより除去して接着性樹脂硬化物層を得る。次に、接着性樹脂硬化物層を水洗した後、50℃で5時間、乾燥した接着性樹脂硬化物を使用した。接着性樹脂硬化物層の膜厚が30μmとなるように試料を作製した。
ガラス転移温度(Tg)、伸度及び熱膨張係数(CTE)は、試料をTMA試験機(EXSTAR6000/セイコーインスツルメント社製)にセットして測定した。加重1.25mN/μm、窒素下、10℃/minの昇温速度で測定し、室温から220℃まで昇温させて、ガラス転移温度、伸度を求めた。最大の熱膨張係数は、30℃から180℃まで昇温させて得られた伸度−温度曲線の傾きの接線で得られる熱膨張係数において、その最大値を用いた。弾性率(引張弾性率)は、JIS C 2318に準じて測定した。
<ビア形状の測定>
作製した多層フレキシブル配線板をエポキシ樹脂で包埋した後、断面研磨を行い、光学顕微鏡でブラインドビアの形状を観察した。ブラインドビアの壁面や底部に樹脂残渣が観測されない場合を○とし、ブラインドビアの壁面や底部に樹脂残渣が観測された場合を×とした。
<ハゼ折試験>
耐折性は、ハゼ折試験で評価した。エスパネックス MC−12−20−00CEM(新日鐵化学社製)を用いた銅エッチアウト後の配線面(ラインアンドスペースが20μm/20μm、ベースフィルム厚みが20μm)のくし型基板上に樹脂付銅箔を積層し、所定の乾燥、硬化を行った後、樹脂付銅箔部分の銅層をエッチング除去した。次に、50℃で乾燥して試料を作製し、作製した試料を用いて180度ハゼ折(1往復で1回とカウント)を実施した。ハゼ折部分を光学顕微鏡(ECLIPS LV100 ニコン社製)で観察して、2回以上、樹脂層及び銅層にクラックが入っていない場合を◎とし、2回目にクラックが入ったものを○とし、1回目でクラックが入った場合を×とした。
<半田リフロー耐性試験>
半田リフロー耐性試験は、JPCA−BM02規格に準じ、銅箔に樹脂付銅箔を積層して所定の乾燥、硬化を行った後、3cm×3cmに切断した試料をハンダ浴に260℃で60秒間浸漬して実施した。500倍の光学顕微鏡で表面を観察し、膜表面に膨れ・焦げなどの異常は見られない場合は○とし、異常が見られた場合は×とした。なお、ここでの膨れは上記のハンダ浴浸漬をした後、硬化膜の表面に5μm以上の盛り上がりがあったことを指し、焦げは1%以上の面積が変色したことを指す。
<冷熱サイクル耐性(冷熱衝撃試験)>
冷熱衝撃試験は、JPCA−HD01−2003規格に準じ、作製した4層の配線板を−40℃、120℃、1000サイクルで評価した。サイクル中の接続抵抗の変動が10%以内の場合を○とし、10%を越えた場合を×とした。
<絶縁信頼性試験(85℃、湿度85%)>
絶縁信頼性試験は、以下のように実施した。フレキシブルなプリント回路基板の基材としてエスパネックスM(新日鉄化学社製)(絶縁層の厚さ25μm、導体層は銅箔F2−WS(18μm))を使用し、ライン/スペース:50μm/50μmの櫛形配線板を作成した。この回路基板上に、樹脂付銅箔(樹脂部の乾燥後の膜厚が15ミクロン)を積層し、所定の乾燥、硬化を行った後、樹脂層付銅箔の銅箔をエッチング除去した。DC50V、85℃、湿度85%の条件下で8時間放置しながら抵抗を測定し、絶縁抵抗が10の9乗Ω以上の場合を◎とし、10の8乗Ω台の場合を◎とし、10の8乗Ωに達しない場合を×とした。
<絶縁信頼性試験(HAST耐性)>
絶縁信頼性試験は、以下のように実施した。ラインアンドスペースが20μm/20μmのくし型基板上に接着性樹脂ワニスを塗布し、乾燥、180℃、1時間焼成を行った。マイグレーションテスタのケーブルを半田付けし、下記条件にて絶縁抵抗値を測定した。
絶縁劣化評価システム:SIR−12(楠本化成社製)
HASTチャンバー:EHS−211M(エスペック社製)
温度:110℃
湿度:85%
印加電圧:2V
印加時間:528時間
絶縁抵抗値:絶縁抵抗が10の8乗Ω以上の場合を◎とし、10の7乗Ω台の場合を○とし、10の7乗Ωに達しない場合を×とした。
<外観(デンドライト)>
上記絶縁信頼性試験の後のくし型基板を光学顕微鏡(ECLIPS LV100 ニコン社製)、透過光、200倍の条件で観察し、デンドライトの発生がみられるものを×とし、見られないものを○とした。
[調製例1]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、トリエチレングリコールジメチルエーテル(22.5g)、γ―ブチロラクトン(52.5g)、トルエン(20.0g)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)1.00g、両末端酸二無水物変性シリコーン(酸無水物当量=約500g/モル)(上記式群(7)参照:X−22−2290AS、信越化学社製)35.00gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)14.00g、を少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、2時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを除去して室温まで冷却した。次に、生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドAワニスを得た。重量平均分子量は27000であった。
樹脂組成物の中のポリイミドAが69質量%、オキサゾリン化合物としての1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が6質量%、難燃剤として伏見製薬社製のFP300が25質量%となるように接着性樹脂ワニスを調合した。樹脂付き金属箔を作成し、その評価を行った。
[調製例2]
三口セパラブルフラスコに窒素導入管、温度計、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。オイルバス室温で、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)344g、トルエン90g、ジメチルスルホキシド78.4g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)48.8g、ポリアルキルエーテルジアミンBaxxodur(登録商標)EC302(BASF社製)112.8gを入れ均一になるまで攪拌した。さらに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)120gを少しずつ添加した後、180℃まで昇温し、3時間加熱した。反応中、副生する水は、トルエンと共沸し、水分分離トラップを備えた玉付冷却管を用いて、還流下、脱水を行った。副生水を抜いた後、還流を止め、トルエンを除去して室温まで冷却した。次に、生成物を5μmのフィルターで加圧ろ過することでポリイミドBワニスを得た。重量平均分子量は28000であった。
続いて、重合溶液にメタノールを添加してポリマーを析出させ、回収したポリマーを50℃、真空下で24時間乾燥した。その後、γ―ブチロラクトン/ジメチルスルホキシド(80/20質量比)混合溶剤を用いて、樹脂組成物の中のポリイミドBが60質量%、オキサゾリン化合物としての1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)が15質量%、難燃剤としての伏見製薬社製のFP300とFP400をそれぞれ6質量%と18質量%、酸化防止剤としてのイルガノックス245(IRG245、BASF製)を1質量%になるよう接着性樹脂ワニスを調合した。
[調製例3]
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)7.50g、両末端酸二無水物変性シリコーン(酸無水物当量=約500g/モル)(上記式群(7)参照:X−22−2290AS、信越化学社製)25.00g、2,2’−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)17.50gとした以外は調製例1と同様にしてポリイミドCを得た。
[調製例4]
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール404.2g(4.30モル)、4,4’−ジ(クロロメチル)ビフェニル150.70g(0.6モル)を仕込み100℃で3時間反応させ、その後42%ホルマリン水溶液28.57g(0.4モル)を添加し、その後、100℃で3時間反応させた。その間、生成するメタノールを留去した。反応終了後、得られた反応溶液を冷却し、水洗を3回行った。油層を分離し、減圧蒸留により未反応フェノールを留去することにより251gのフェノールノボラック樹脂Dを得た。
得られたフェノールノボラック樹脂を10g、オキサゾリン化合物として1,3−ビス(4,5−ジヒドロ−2−オキサゾリル)ベンゼン(PBO)を2g、難燃剤として伏見製薬社製のFP300を4g、溶剤としてN−メチルピロリドンを40g用いて、接着性樹脂ワニスを調合した。
[実施例1]
コア基板としては、両面フレキシブル配線板(エスパネックスM、新日鉄化学製、銅箔厚み12μm、絶縁性樹脂層厚20μm)を用いた。この両面フレキシブル配線板にドリル加工及び銅めっき処理により100μmφの貫通ビアホールを形成した。また最少130μmピッチの銅配線回路(28μm厚)を形成した。
樹脂付銅箔(積層体)としては、調製例1より得られた接着性樹脂ワニスを12μm厚の電解銅箔(F2−WS、古河電工製)上にバーコータを用いて塗布し、その後90℃に加温されたオーブン中で30分乾燥処理をして得た。この樹脂付銅箔をコア基板の上下面に重ねて置き、更に両面から離形用フィルムで挟んだものを準備した。
真空積層装置としては、真空プレス(北川精機社製)の上下両面定盤に内部にガラスクロスを含んでいる硬度50%の耐熱シリコンラバーを全面に貼りあわせたものを用いた。シリコンラバーは50cm角サイズとした。積層方法としては、シリコンラバー表面温度を100℃に予め加温した状態で、前記の積層体を入れ、2分間加圧しない状態で真空引きを行い、その後圧力1MPaで2分間加圧し積層した。
次に、コア基板の銅箔と積層体の銅箔との間の接続のため、積層体の銅箔上にドライフィルムをラミネートした後、露光・現像、及びエッチングにより、所定の位置の銅箔を除去してブラインドビアが必要な部位に100μmφのコンフォーマルマスクを形成した。
次に、銅箔が除去された部位に、露出した未硬化接着性樹脂層に、48℃に加温した3%水酸化ナトリウム水溶液を約30秒間スプレーして該樹脂層を除去し、ドライフィルムの剥離を行うと共に、ブラインドビアホールを形成した。
次に、硬化乾燥炉を用いて、180℃で1時間加熱することにより、半硬化状態の未硬化接着性樹脂層を硬化して接着性樹脂硬化物層とした。得られたブラインドビアの壁面や底部には、樹脂残渣が観測されず、ブラインドビアホールの形成は良好であり、過マンガン酸カリウム水溶液などによるデスミア工程は不要であった。
次に、内層コア基板との電気的接続を取るためブラインドビアホールへのめっき処理を行った。まず穴内壁の接着性樹脂硬化物層にカーボン微粒子を付着させ導電性粒子層を形成した。形成方法としてカーボンブラック分散液に浸漬後、酸系水溶液で分散煤を除去した。その後電解銅めっきを施して両面の電気的接続を完了させた。
次に、従来の多層フレキシブル配線板と同様の回路形成工程を行った。以降の工程も従来の多層フレキシブル配線板の製造方法と同様にして実施した。
このようにして作製した多層フレキシブル配線板のコア基板への接着性樹脂硬化物埋め込み性や、銅配線回路での表面平滑性については、エポキシ樹脂で包埋した後に断面研磨を行い、光学顕微鏡で観察を行った。貫通ビアホールへの接着性樹脂硬化物埋め込みでは埋め込み不良による空隙などは確認されなかった。また表面平滑性についても銅配線上と配線間での基板厚の差異は3μm以内であった。評価結果を下記表2に示す。
以上のように、実施例1で作製した多層フレキシブル基板は、従来のレーザー加工機を用いる製造方法と異なり、露光・現像工程を通すことにより瞬時に穴あけ加工が可能で、また簡易な積層方法で樹脂埋め込みや表面平滑性が得られる連続生産プロセス化が可能となった。
実施例1の接着性樹脂硬化物のアルカリ溶解速度、残存溶剤量、Tg(℃)、伸度(%)、最大熱膨張係数(CTE、ppm)、弾性率について下記表1に記載する。実施例1の多層フレキシブル配線板は、ビアホールの形状、耐折性、半田リフロー耐性、冷熱サイクル耐性、及び絶縁信頼性に優れていた。
[実施例2〜実施例7及び比較例1〜比較例5]
樹脂組成物ワニスの組成を変えて作製した多層フレキシブル配線板を評価した。実施例2〜実施例7の条件及び結果を下記表1及び下記表2に示す。また、比較例1〜比較例5の条件及び結果を下記表3及び下記表4に示す。実施例2では、樹脂付銅箔を作製する際に90℃、15分、減圧で乾燥した。実施例4〜実施例7、比較例3、4では、調製例2に記載したようにポリマーを貧溶剤に加えることで沈殿させ、回収、乾燥を行った後、組成物を調製した。また、実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例5の乾燥条件及び加熱硬化条件を表1及び表3に示す。
表1及び表2から分かるように、本実施の形態に係る多層フレキシブル配線板においては、接着性樹脂硬化物のアルカリ溶解速度を所定範囲とすると共に、溶剤残存量を所定値以下とすることにより、耐折性や絶縁信頼性に優れ、しかも耐熱性にも優れた多層フレキシブル配線板を実現できることが分かる。
表3及び表4から分かるように、比較例に係る多層フレキシブル配線板においては、接着性樹脂硬化物のアルカリ溶解速度、溶剤残存量、ガラス転移温度の少なくともいずれかが所定範囲外となることから、耐折性、絶縁信頼性、耐熱性の少なくともいずれかが劣っていることが分かる。