以下、本発明の一実施形態を、図1〜10を参照して説明する。なお、図2及び図3では、説明の便宜上、背凭れ3を構成する背支持部材である張地32や、座や脚を省略したものを示している。
この実施形態は、本発明を、オフィス等において好適に使用される事務用回転椅子である椅子Cに適用したものである。
椅子Cは、脚1と、脚1の上端に水平旋回可能に取り付けられた図示しない支持基部と、支持基部の上側に支持された座2と、下端部を支持基部に回転可能に支持されたパイプフレームを主体に構成されてなる図示しない背支桿と、背支桿に支持された背凭れ3とを具備している。背凭れ3には、着座者Pの背を支持するためのランバーサポートSが設けられている。この椅子Cは、座2と背凭れ3とを連動させて後傾動作させるための図示しない支持基部を主体に構成されたシンクロロッキング機構を備えている。
以下、この椅子Cについて詳述する。
脚1は、下端にキャスタ11を備えた複数本の脚羽根12と、脚羽根12の上端部が集合する部位から起立する図示しない脚支柱とを備えている。
支持基部は、金属製の部材を主体に構成されたものであり、前記脚支柱の上端部分に支持されている。
座2は、座クッション(図示せず)と、この座クッションに張り設けられた表皮材21と、前記座クッションの下面に配された図示しない板材とを備えている。板材は、支持基部の上に回動可能に設けられた図示しない座受に支持されるものであり、座受に対してビスにより止着されている。
背支桿は、背凭れ3を支持するものであり、支持基部と背凭れ3との間に介在している。背支桿は、その下部が支持基部に回転可能に支持されており、その上部が背凭れ3における左右方向中間部の下端部分に接続されている。
次いで、本実施形態における背凭れ3、及び、ランバーサポートSについて説明する。
背凭れ3は、四角枠状をなす背枠31の内側に着座者Pからの荷重に応じて厚み方向に弾性的に撓む背支持部材である張地32を配してなる。
背枠31は、左右方向に延びる上枠部分w1、及び下枠部分w2と、これら上枠部分w1と下枠部分w2とを繋ぐ上下方向に延びる左右の側枠部分w3、w4とを主体に構成されている。左右の側枠部分w3、w4は側面視くの字状をなしている。換言すれば、左右の側枠部分w3、w4は、その上下方向中間部における着座者Pの腰部に対応する部分が前方に最も突出するように湾曲した形状をなしている。
背枠31は、張地32を支持した前枠部材31fと、この前枠部材31fを前面側に添接させた状態で当該前枠部材31を保持する後枠部材31rとを主体に構成されている。張地32は、その周縁部を前枠部材31fの周縁部に支持させている。
前枠部材31fは、正面視において四角枠状をなし、樹脂により一体に形成されている。前枠部材31fは、左右方向に延びる上枠部f1、及び下枠部f2と、これら上枠部f1と下枠部f2とを繋ぐ上下方向に延びる左右の側枠部f3、f4とを備えている。前枠部材31fには、所定箇所に前後方向にビス挿通孔hが設けられている。前枠部材31fにおける左右の側枠部f3、f4は、ランバーサポートSを上下方向にスライド移動可能に支持するための前側の保持部311、312を備えている。前側の保持部311、312は、後述する後枠部材31rの保持部313、314とともに、ランバーサポートSを支持するためのランバーサポート支持部を構成するものである。前側の保持部311、312は、ランバーサポートSにおける係合レール513、523の前面513a、523aと係合し得る前壁311a、312aと、係合レール513、523の外側面513d、523dと係合し得る側壁311b、312bとを備えている。なお、受け止め部材5の係合レール513、523については後で詳述する。
後枠部材31rは、左右方向に延びる上枠部r1及び下枠部r2と、これら上枠部r1と下枠部r2とを繋ぐ上下方向に延びる左右の側枠部r3、r4と、前記下枠部r2の左右方向中間部に突設され背支桿と接続するための背支桿接続部r5とを備えている。後枠部材31rは、樹脂により一体に形成されている。
後枠部材31は、上枠部r1、下枠部r2、及び左右の側枠部r3、r4を主体にして、正面視において四角枠状をなした四角枠状部を構成している。四角枠状部は、その外周縁側の前面に前枠部材31fの外側に位置して外部に露出した外周縁領域m1と、前記四角枠状部の内周縁側の前面に前枠部材31fの背面側が添接する内周縁領域m2とを有している。後枠部材31rには、内周縁領域m2の所定箇所に、前述した前枠部材31fのビス挿通孔hを通過したビスvが螺着するナットnが設けられている。
後枠部材31rにおける左右の側枠部r3、r4は、ランバーサポートSを上下方向にスライド移動可能に支持するための後側の保持部313、314を備えている。後側の保持部313、314は、前側の保持部311、312とともに、ランバーサポートSを支持するためのランバーサポート支持部を構成するものである。後側の保持部313、314は、ランバーサポートSにおける係合レール513、523の背面513b、523bと係合し得る後壁313a、314aと、係合レール513、523の内側面513c、523cと係合し得る側壁313b、314bとを備えている。
張地32は、伸縮性を有したメッシュ状をなすものであり、その外周端部が前記前枠部材31fと後枠部材31rとの間に挟持されている。
次いで、ランバーサポートSについて詳述する。
ランバーサポートSは、両端部を前記背枠31に支持させて前記背凭れ3の背面側に配設されている。ランバーサポートSは、張地32が後方に撓んだ段階で当該張地32の背面を直接的に受け止めて支持するプレート部材4と、このプレート部材4の後側に配され張地32が後方に撓んだ段階で前記張地32の背面を間接的に受け止めて当該張地32の撓みを抑制する受け止め部材5とを備えている。すなわち、ランバーサポートSは、前記張地32の背面に添接するプレート部材4と、このプレート部材4の背面側に配設され前記張地32の背面をこのプレート部材4を介して間接的に受け止め得る受け止め部材5とを有する。
なお、プレート部材4は、張地32が撓む前から当該張地32の背面を受け止めているものであってもよい。
この実施形態では、プレート部材4が受け止め部材5に装着されたものであり、これらプレート部材4と受け止め部材5とを主体にして前記背枠31に対して着脱可能なユニット体を構成している。つまり、プレート部材4及び受け止め部材5からなるユニット体を、背枠31に対して着脱可能に取り付け得るものとなっている。
プレート部材4は、横長の矩形状をなした板状部分を主体に構成されており、樹脂により形成されている。プレート部材4は、その両端部を前記受け止め部材5の両端部に撓みが許容され得る態様で支持されている。換言すれば、プレート部材4は、その両端部を前記受け止め部材5の両端部に回動及び左右方向にスライド可能に支持されている。より具体的には、プレート部材4の一端側である左端部は受け止め部材5を構成するベルト51に支持されており、プレート部材4の他端側である右端部は受け止め部材5を構成するバックル52に支持されている。換言すれば、プレート部材4は、受け止め部材5に設けられた上下方向に延びる軸Jの端部を支持するための軸支持部42を備えている。
プレート部材4は、着座者Pの腰部分を比較的広い面積で受け止めて着座者Pに対して好適なホールド感を提供するためのものである。プレート部材4は、その左右端部が前枠部材31fと張地32との間に位置する左右方向の大きさに設定されたプレート状をなすプレート部材本体41と、このプレート部材本体41の背面側の四隅に設けられ後述する受け止め部材5の軸jを支持する軸支持部42とを備えている。プレート部材4は、直接的に背枠31に対して支持されておらず、受け止め部材5を介して背枠31に対して間接的に支持されている。
プレート部材本体41は、着座者Pの荷重を受けていない場合には平面視において左右方向に略直線状をなしており、着座者Pの荷重を受けた場合には後方に向けて凸をなすように撓み得る板状のものである。プレート部材本体41は、着座者Pの荷重を受けた場合に、前面側が張地32の背面に添接し得るようになっているとともに後面側が受け止め部材5の正面に添接し得るようになっている。
軸支持部42は、受け止め部材5のプレート部材支持部514、524と協働して、プレート部材本体41を受け止め部材5に対して回動可能且つ左右方向にスライド可能に支持するものである。軸支持部42は、プレート部材本体41から後方に延出しプレート部材本体41の受け止め部材5に対する上下方向の移動を規制するための水平壁421と、この水平壁421の後端部から内方に延出しプレート部材41の受け止め部材5に対する前方向の移動を規制するための後壁422と、前記水平壁421の内方端部から下方に延出しプレート部材41の受け止め部材3に対する左右方向の移動を規制するための内壁423とを具備している。なお、プレート部材本体41は、後述する受け止め部材5の突出板514a、524aと係わり合い当該突出板514a、524aと係わり合う部分において後方への移動が規制されている。
受け止め部材5は、基端部を一方の側枠部分である左の側枠部分w3に支持させ先端側を他方の側枠部分である右の側枠部分w4方向に延伸させたベルト51と、基端部を他方の側枠部分である右の側枠部分w4に支持させ前記ベルト51の先端側を保持するバックル52とを備えている。受け止め部材5は、ベルト51とバックル52との協働により左右方向の長さを変更可能に構成されている。換言すれば、受け止め部材5は、撓み量調整機構Jにより、後方に向けて凸をなす撓みの程度を調整できるように構成している。受け止め部材5は、着座者Pの荷重による張地32のたわみを受けて変形したプレート部材41のたわみを直接受け止めるものである。
ベルト51は、左右方向に延びた帯状部分を主体に構成され初期状態において後方に向かって凸をなすように撓んだ形状をなすベルト本体511と、このベルト本体511の基端に設けられ上下に指掛け用の凹み部512aを配したブロック状をなす指掛け部512と、この指掛け部512の外側端部に設けられ背枠31における左の側枠部分w3と係わり合う左側の係合レール513と、前記指掛け部512の外側端部から前方に向かって突設され前記プレート部材4を支持する左側のプレート部材支持部514とを備えている。ベルト51は、樹脂により一体に形成されている。
ベルト本体511は、バックル52が配されている側である先端部分における背面側に、左右方向に複数の被係合部である係合凹部511aが設けられている。この実施形態では3箇所に前記係合凹部511aが設けられており、最も先端側に位置する係合凹部511aの先端側にはバックル52からの抜き出ることを抑制するための一定の高さ寸法を有した端縁壁511bが設けられている。ベルト本体511は、左右方向及び上下方向の中間部に手指を挿通可能な指掛け部である貫通孔511cを備えている。貫通孔511cは左右方向に延びる矩形状のものであり、特にバックル52とベルト51とを相互に寄る方向に操作する際に機能を発揮するものとなっている。
指掛け部512は、ベルト本体511よりも後方に突出した形状をなしたものであり、その上端部及び下端部に操作者の指を掛けられるように凹ませた凹み部512aを備えている。この凹み部512aは、特にバックル52とベルト51とを相互に離れる方向に操作する際に機能を発揮するものとなっている。
係合レール513は、指掛け部512の外側部に平面視L字状をなすように突設された上下方向に延びる柱状のものである。係合レール513は、前枠部材31f及び後枠部材31rと係わり合う前面513a、背面513b、内側面513c、外側面513dを有している。
プレート部材支持部514は、プレート部材4を支持するためのものであり、指掛け部512の外側部から前方に向かって突出した矩形板状の突出板514aと、この突出板514aの先端部から上下に突出した軸jとを備えている。軸jは、プレート部材4の軸支持部42と係わり合うようになっている。
バックル52は、前記ベルト51の先端部が挿入されるベルト挿通孔521aを有した背面視枠状をなすバックル本体521とこのバックル本体521に片持ち状態で設けられ自由端側が前記ベルト51に対して接離する方向に弾性変形可能な操作アーム522と、前記バックル本体521の外方端部に設けられ背枠における右の側枠部分w4と係わり合う右側の係合レール523と、前記バックル本体521の外側端部から前方に向かって突設され前記プレート部材4を支持する右側のプレート部材支持部524とを備えている。バックル52は、樹脂により一体に形成されている。
バックル本体521は、ベルト51の先端部が挿入されるベルト挿通孔521aを有したバックル先端部521bと、このバックル先端部521bの上端部から外方に延出したバックル上壁部521cと、前記バックル先端部521bの下端部から外方に延出したバックル下壁部521dと、前記バックル上壁部521cとバックル下壁部521dの外方端部間を繋ぐバックル外壁部521eとを備えている。
バックル先端部521bは、ベルト本体511の前面側を添接させて当該ベルト本体511をベルト挿通孔521aに案内するためのベルト案内部521fをベルト挿通孔521aよりも前側の位置に内方に突出させて設けている。 バックル上壁部521cとバックル下壁部521dは内方から外方に向かって漸次前後方向寸法が大きくなるように形成された三角形状をなしている。バックル上壁部521cとバックル下壁部521dには、ベルト本体511の前面側が添接し得る案内用の突出片521g、521hがそれぞれの前端縁から内方に向かって突設されている。
バックル外壁部521eは、後端部側の上下方向中間部分を凹ませた形状をなしており、手指が操作アーム522にアクセスしやすい形状をなしている。バックル本体521は、バックル外壁部521eの内側面における前後方向中間部からバックル上壁部521c及びバックル下壁部521dの内側面における前後方向中間部に亘って、補強用のリブrbを突設させている。
操作アーム522は、その一端部をバックル本体521に片持ち状態に支持させており、樹脂の弾性変形を利用して前後方向に回動可能に構成されている。具体的には操作アーム522の内方端部がバックル先端部521bに一体に接続している。操作アーム522は、枠状をなすバックル本体521の内側に配されている。操作アーム522は、操作者の指を掛ける操作アーム本体522aとこの操作アーム本体522aから前方に突設して設けられた係合部である係合凸部522bを備えている。係合凸部522bは、操作アーム本体522aの自由端側に前方に向かって突出する形状で設けられており、適宜の箇所がリブにより補強されている。
係合レール523は、バックル本体521の外側部に平面視L字状をなすように突設された上下方向に延びる柱状のものである。係合レール523は、前枠部材31f及び後枠部材31rと係わり合う前面523a、背面523b、内側面523c、外側面523dを有している。
プレート部材支持部524は、プレート部材4を支持するためのものであり、バックル本体521の外側部から前方に向かって突出した矩形板状の突出板524aと、この突出板524aの先端部から上下に突出した軸jとを備えている。軸jは、プレート部材4の軸支持部42と係わり合うようになっている。
次いで、撓み量調整機構Jについて詳述する。
撓み量調整機構Jは、バックル52に設けられた係合凸部522bと、ベルト51に設けられ左右方向に間隔をあけて配された複数の係合凹部511aとを備えている。撓み量調整機構Jは、前記係合凸部522bを前記複数の係合凹部511aの何れかに選択的に係合させ得るようにしたものである。
すなわち、ランバーサポートSは、張地32を受け止めるための受け止め部材5の受け止め位置を前後方向に変化させる前記撓み量調整機構Jを設けている。撓み量調整機構Jは、張地32をプレート部材4を介して間接的に受け止める当該受け止め部材5の受け止め位置をその撓み度合いを変えることによって前後方向に変化し得るようにしている。受け止め部材5は、撓み量調整機構Jにより、ベルト51を主体とした前記受け止め部材5の撓み度合い(湾曲度合い)を、撓み度合いの相対的に小さな前位置(F)と、当該前位置(F)にある状態よりも撓み度合いの大きな後位置(R)との間で撓み度合いを変化させることができるようになっている。受け止め部材5は、前位置(F)においても一定程度後方に撓んだ状態に設定されている。なお、本実施形態では、バックル52の操作アーム522に設けられた係合凸部522bとベルト51の先端側に複数並び配された3箇所の係合凹部511aとを係合させることにより、前述した前位置(F)と後位置(R)に加えて、受け止め部材5の撓み度合いを前位置(F)にある状態よりも大きく且つ後位置(F)にある状態よりも小さくなる位置となる中間位置にある状態を設定できるようにしてある。
以上に説明したランバーサポートSは、上下方向に移動可能に前記背凭れ3に支持されている。すなわち、ランバーサポートSにおける左右の係合レール513、523が、背凭れ3の左右の側枠部分w3、w4に設けられたランバーサポート支持部に上下方向にスライド移動可能に支持されている。この実施形態では、左右の係合レール513、523が上下方向に延びる柱状をなしているため、ランバーサポートSは、水平姿勢を維持して安定的に上下昇降し得るものとなっている。プレート部材4は受け止め部材5に支持されているため、操作者が受け止め部材5の所定箇所を把持しつつ当該受け止め部材5を上下方向にスライド移動させればプレート部材4は受け止め部材5とともに上下方向にスライド移動する。
次いで、本実施形態におけるランバーサポートSの作用について主として図9及び図10を参照して説明する。
図10に示すように、ランバーサポートSの受け止め部材5は、前位置(F)においても、後方に凸をなすように一定の撓みが保持されている。着座者Pが張地32に凭れていない状態では、受け止め部材5は、張地32に対して前方に積極的に押圧していない状態にある。
図10に示すように、着座者Pが張地32に凭れた結果、張地32に後方への荷重が作用すると、受け止め部材5に対してスライド可能に支持されたプレート部材4が張地32を介して後方に湾曲することになる。この際、プレート部材4の軸支持部42は、受け止め部材5のプレート部材支持部514、524に対して相対移動する。具体的には、軸支持部42がプレート部材支持部514、524に対して内側にスライド移動することになる。その後、プレート部材4は、前位置(F)に設定されている受け止め部材5により、後方への撓み量が比較的小さな段階で後方への撓みが阻止されることになる。プレート部材4の撓みが受け止め部材5により阻止されると、着座者Pの後方への荷重が受け止め部材5により受け止められることになり、着座者Pの腰部を支持するいわゆるランバーサポート機能を発揮することとなる。
一方で、図9に示すように、ランバーサポートSの受け止め部材5は、後位置(R)において、前位置(F)と比べて大きく後方に凸をなすように撓んだ状態になっている。なお、受け止め部材5が前位置(F)にある場合と同様に、着座者Pが張地32に凭れていない状態では、受け止め部材5は、張地32に対して前方に積極的に押圧していない状態にある。
図9に示すように、着座者Pが張地32に凭れた結果、張地32に後方への荷重が作用すると、受け止め部材5に対してスライド可能に支持されたプレート部材4が張地32を介して後方に湾曲することになる。この際、プレート部材4の軸支持部42は、受け止め部材5のプレート部材支持部514、524に対して相対移動する。具体的には、軸支持部42がプレート部材支持部514、524に対して内側に比較的大きくスライド移動することになる。その後、プレート部材4は、後位置(R)に設定されている受け止め部材5により、前位置(F)の場合と比べて大きく後方に撓んだ段階で後方への撓みが阻止されることになる。例えば、張地32の張力により、プレート部材4が後位置(R)にある受け止め部材5により阻止されるまで撓まないような場合には、ランバーサポートSによって着座者Pの腰部を支持するいわゆるランバーサポート機能は作用しないことになる。図9に具体的に示す一例のように、張地32の張力に抗して着座者Pの荷重をうけて、プレート部材4が後位置(R)にある受け止め部材5により阻止されるまで撓んだ場合には、ランバーサポートSによって着座者Pの腰部を支持するいわゆるランバーサポート機能を奏し得るものとなる。
以上説明したように、本実施形態に係る椅子Cは、背枠31の内側に着座者Pからの荷重に応じて厚み方向に弾性的に撓む背支持部材たる張地32を配してなる背凭れ3と、この背凭れ3に設けられるランバーサポートSとを備えている。そして、前記ランバーサポートSが、両端部を前記背枠31に支持させて前記背凭れ3の背面側に配設され前記張地32が後方に撓んだ段階で当該張地32の背面を間接的に受け止めて当該張地32の撓みを抑制する受け止め部材5と、この受け止め部材5による受け止め位置を前後方向に変化させる撓み量調整機構Jとを備えている。このため、ランバーサポートSを有する椅子Cにおいて、ランバーサポートSに関連する部位における構造の簡素化や軽量化を図るための設計の自由度に優れたものとなる。つまり、従来のランバーサポートと異なり、本実施形態のランバーサポートSは、受け止め部材5が張地32が後方に撓んだ段階で初めて張地32の背面を間接的に受け止めて張地32の撓みを抑制し、着座者Pの腰部分を支持するようにしている。このため、所期状態において、足場を強固にするべくランバーサポートSに関連する部位を過度に手当てする必要性が軽減されるものとなる。
また、受け止め部材5は、張地32が後方に撓んだ段階で当該張地32の背面を間接的に受け止めて当該張地32の撓みを抑制するものであるため、着座者Pの荷重を受けていない段階で一定程度後方に撓んだ状態を保持するものとなっている。このため、受け止め部材5を目視により把握するだけで、容易に腰部を支持する度合いを確認することができるものとなっている。
前記ランバーサポートSが、前記張地32の背面に添接するプレート部材4と、このプレート部材4の背面側に配設され前記張地32の背面を前記プレート部材4を介して間接的に受け止め得る受け止め部材5とを備えているので、着座者Pの腰部を好適に支持させ得るものとなる。すなわち、着座者Pの荷重を受けて後方に凸をなすようにしなりが生じるプレート部材4を介して、受け止め部材5が着座者Pの腰部を支持する構成をなすためいわゆる当たりの強さに伴うを緩和する作用を発揮し得るものとなる。
また、着座者Pの腰部を支持する強さの程度を、プレート部材4の後方へのしなりの程度により調整することができるため、腰部に対するサポート力を調整するための設計の自由度が向上するものとなる。
前記プレート部材4が、その両端部を前記受け止め部材5の両端部に回動及び左右方向にスライド可能に支持させたものであるため、プレート部材4が受け止め部材5に対して好適に相対移動し得るものとなる。このため、受け止め部材5が前位置(F)と後位置(F)との間で姿勢変更するものであっても、適切な撓みを実現することができるものとなる。
前記背枠31が、左右の側枠部分w3、w4を備えたものであり、前記受け止め部材5が、基端部を一方の側枠部分である左の側枠部分w3に支持させ先端側を他方の側枠部分である右の側枠部分w4の方向に延伸させたベルト51と、基端部を他方の側枠部分である右の側枠部分w4に支持させ前記ベルト51の先端側を保持するバックル52とを備えたものである。このため、ベルト51及びバックル52の協働により着座者Pの腰部分を好適に支持し得るものとなる。
前記撓み量調整機構Jが、前記バックル52に設けられた係合凸部522bと、ベルト51に設けられ左右方向に間隔をあけて配された複数の係合凹部511aとを備え、前記係合凸部522bを前記係合凹部511aの何れかに選択的に係合させ得るようにしたものであるため、多段階式に係合位置を変更することができ、好適に撓み量を調整することができるものとなる。
前記バックル52が、前記ベルト51の先端部が挿入されるベルト挿通孔521aを有したバックル本体521とこのバックル本体521に片持ち状態で設けられ自由端側が前記ベルト51に対して接離する方向に弾性変形可能な操作アーム522とを備えている。そして、前記操作アーム522の自由端側に前記係合凸部522bが設けられているとともに、前記ベルト51に、前記複数の係合凹部511aが設けられている。このため、バックル52の操作により、ベルト51とバックル52との相対位置を好適に変更操作することができるものとなる。
前記ベルト51が手指を掛けるための指掛け部たる貫通孔511cを備えたものであり、当該貫通孔511c及び前記バックル52にそれぞれ片手側の手指を掛けて双方を相寄る方向に操作可能に構成されている。このため、ベルト51とバックル52との協働による撓み量の調整を好適に行うことができるものとなる。
前記ランバーサポートSが、上下方向に移動可能に前記背凭れ3に支持されているため、着座者Pの体格等に応じて腰部を適切に支持することができるものとなる。
この実施形態では、背凭れ3に背支持部材たる張地32を備えているため、着座者Pの背中を張地32の弾性変形を利用して好適に支持し得るものとなる。
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
上述した実施形態では、背支持部材が、張地を主体に構成されているものを示したが、これに限定されるものではない。背支持部材には、張地の他、いわゆる樹脂メッシュと称される硬質樹脂により網状に構成されたものや、クッション材に表皮材を被覆したものなどが考えられる。
受け止め部材は、ベルトとバックルにより構成されたものには限られない。すなわち、受け止め部材は、その撓みの程度を大小調節することができるものであればよく、種々の構成のものが考えられる。例えば、2本の帯状部材を備えたものであってもよい。この場合、2本の帯状部材の外方端をそれぞれ背枠に止着させるとともにそれぞれの内方端部同士を所定の方法により係わり合わせるようにしたものが好適である。
ランバーサポートは、少なくとも受け止め部材を備えているものであればよく、プレート部材が存在しないものであってもよい。
ランバーサポートは、背凭れに対して上下動可能に構成されたもので無くてもよい。
撓み量調整機構は、ベルト及びバックルの一方に設けられた係合部と、他方に設けられ左右方向に間隔をあけて配された複数の被係合部とを備えているものであればよく、本実施形態に示されるような係合凹部や係合凸部を備えた態様のものに限定されるものではない。
また、座や支持基部に対して適宜肘掛けを取り付けてもよいし、背凭れにヘッドレストやハンガーを適宜取り付けてもよいのはもちろんのことである。
ベルトに手指を挿通可能な貫通孔が設けられているものにおいては、その形状等は種々のものが考えられ、上述した実施形態のものに限定されるものではない。
上述した実施形態では、ベルトが手指を掛けるための指掛け部を有し、ベルト又はバックルの一方側に設けた係合部と他方に設けた被係合部とを係合させていない状態において、指掛け部及びバックルにそれぞれ片手側の手指を掛けて双方を相寄る方向に操作可能に構成されているが、このようなものに限られるものではない。すなわち、前記係合部と前記被係合部とが係合している状態において、指掛け部及びバックルの双方を相寄る方向に操作可能に構成したものであってもよい。
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。