JP2016029159A - 樹脂組成物、多層構造体、多層シート、ブロー成形容器及び熱成形容器 - Google Patents

樹脂組成物、多層構造体、多層シート、ブロー成形容器及び熱成形容器 Download PDF

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Abstract

【課題】回収再利用を繰り返した場合でも優れた外観性及び耐衝撃性を維持することができる樹脂組成物と、この樹脂組成物を用いた多層構造体、多層シート、ブロー成形容器及び熱成形容器との提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体及びポリオレフィンを含有し、上記エチレン−ビニルアルコール共重合体が、示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器を備えるゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、窒素雰囲気下、220℃、50時間熱処理後に測定した分子量が、下記式(1)で表される条件を満たす樹脂組成物である。
(Ma−Mb)/Ma<0.45 ・・・(1)
Ma:示差屈折率検出器で測定されるピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
Mb:紫外可視吸光度検出器で測定される波長220nmでの吸収ピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物、多層構造体、多層シート、ブロー成形容器及び熱成形容器に関する。
エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」ともいう)は、溶融成形が可能でガスバリア性に優れる材料として広く用いられている。EVOHは、例えば溶融成形により形成されるフィルムやシートの材料として用いられる。このシート等からなるEVOH層は、ポリオレフィン系樹脂等を主成分とする熱可塑性樹脂層と共に積層されることで包装材として用いられている。このようなEVOH層を含む包装材は、熱成形することで包装容器として利用される。かかる包装容器は、EVOH層を含むことで酸素バリア性に優れるため、酸素バリア性が要求される用途、例えば食品、化粧品、医化学薬品、トイレタリー等の種々の分野で広く使用されている。このとき、上記各種成形品を製造する際に発生する端部や不良品等を回収し、溶融成形してポリオレフィン層とEVOH層とを含む多層構造体の少なくとも1層として再使用する場合がある。このような回収技術は、廃棄物削減や経済性の点で有用であり、広く採用されている。
しかしながら、ポリオレフィン層とEVOH層とを含む多層構造体の回収物を再使用する際には、溶融成形時の熱劣化によりゲル化を起こしたり、劣化物が押出機内に付着したりして、長期間の連続溶融成形を行うことが困難である。また、このような劣化物が押出機内に付着すると、得られる成形品において、凹凸が発生するという不都合がある。さらに、これらの不都合は、多層構造体の回収物の再使用を繰り返すにつれ顕著になる。
このような不都合を解決する方法として、例えば特開平3−72542号公報には、ポリオレフィンと、エチレン含有率が20モル%以上65モル%以下、かつ酢酸ビニル成分のけん化度が96モル%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物と、炭素数8〜22の高級脂肪酸金属塩、エチレンジアミン四酢酸金属塩及びハイドロタルサイトから選ばれる少なくとも1種の化合物と、エチレン含有率が68モル%以上98モル%以下、かつ酢酸ビニル成分のけん化度が20%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物とからなる樹脂組成物が記載されている。さらに、上記公報には、炭素数8〜22の高級脂肪酸金属塩としては、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸と、カルシウム、マグネシウム又は亜鉛との金属塩が好適であると記載されている。上記公報に記載の樹脂組成物は優れた相容性を有しており、この樹脂組成物を用いて得られた成形物の表面には波模様の発生がなく、外観が美麗であるとされている。しかし、上記公報の実施例に記載されているステアリン酸カルシウムを配合した樹脂組成物は、押出機のスクリューへの付着物を生じることがあり、得られる成形品に凹凸が生じることがある。
特開2001−348017号公報には、マグネシウム、カルシウム及び亜鉛から選ばれる少なくとも1種を10ppm以上500ppm以下含有し、エチレン含有量が10モル%以上60モル%以下、かつ酢酸ビニル成分のけん化度が95モル%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物を中間層とし、少なくとも両最外層に熱可塑性樹脂を積層した積層体の粉砕物をリグラインド層(回収層)に用いることを特徴とする燃料容器の製造方法が記載されている。特開2001−348017号公報では、リグラインド層に用いる積層体の中間層に、脂肪酸金属塩を配合したエチレン−酢酸ビニル共重合体けん化物が用いられている。また、脂肪酸金属塩としては、マグネシウム塩、カルシウム塩及び亜鉛塩から選ばれる少なくとも1種が用いられている。さらに、脂肪酸としては、低級脂肪酸及び/又は高級脂肪酸が用いられている。この製造方法によれば、溶融成形性、機械的特性当に優れた燃料容器が得られるとされている。しかしながら、特開2001−348017号公報の実施例に記載されたステアリン酸亜鉛の配合量では、積層体の溶融成形時に劣化物が押出機のスクリューに付着し、得られる成形品に凹凸が生じるという不都合がある。
さらに、特開平3−72542号公報及び特開2001−348017号公報に記載の方法は、回収物の再利用を複数回行った場合の成形不良や成形不良に伴う耐衝撃性の低下を抑制するという観点では未だ改善の余地がある。このように、上記従来の方法では、熱成形における欠陥の発生の抑制と、優れた外観性と、十分な強度とを共に満たし、さらに回収再利用した場合にこれらの性能を維持することはできていない。
特開2001−348017号公報 特開平3−72542号公報
本発明は、回収再利用を繰り返した場合でも優れた外観性及び耐衝撃性を維持することができる樹脂組成物と、この樹脂組成物を用いた多層構造体、多層シート、ブロー成形容器及び熱成形容器とを提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH(A)」ともいう)及びポリオレフィン(以下、「PO(B)」ともいう)を含有し、上記EVOH(A)が、示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器を備えるゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、窒素雰囲気下、220℃、50時間熱処理後に測定した分子量が、下記式(1)で表される条件を満たす樹脂組成物である。
(Ma−Mb)/Ma<0.45 ・・・(1)
Ma:示差屈折率検出器で測定されるピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
Mb:紫外可視吸光度検出器で測定される波長220nmでの吸収ピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
当該樹脂組成物は、上記特定条件を満たすエチレン−ビニルアルコール共重合体とポリオレフィンとを含有することで、回収再利用を繰り返した場合でも優れた外観性及び耐衝撃性を維持することができる。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体が、示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器を備えるゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、窒素雰囲気下、220℃、50時間熱処理後に測定した分子量が、下記式(2)で表される条件をさらに満たすとよい。
(Ma−Mc)/Ma<0.45 ・・・(2)
Mc:紫外可視吸光度検出器で測定される波長280nmでの吸収ピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
このように、EVOH(A)が上記特定条件をさらに満たすことで、上述の回収再利用時の外観性及び耐衝撃性をより高いレベルで維持させることができる。
当該樹脂組成物は、有機酸のアルカリ金属塩をさらに含有するとよい。この場合、上記アルカリ金属塩の含有量としては、金属換算で1ppm以上1,000ppm以下が好ましい。このように、当該樹脂組成物が有機酸のアルカリ金属塩を上記特定量含有することで、着色を抑制することができ、その結果、外観性をより向上させることができる。
当該樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィンをさらに含有するとよい。このように、当該樹脂組成物が酸変性ポリオレフィンをさらに含有することで、樹脂組成物中におけるEVOH(A)のミクロの領域での凝集を抑制することができ、その結果、耐衝撃性をより向上させることができる。
当該樹脂組成物は、脂肪酸多価金属塩をさらに含有するとよい。このように、当該樹脂組成物が脂肪酸多価金属塩をさらに含有することで、外観性及び耐衝撃性をさらに向上させることができる。
本発明は、当該樹脂組成物から形成される層を少なくとも有する多層構造体を含む。当該多層構造体は、上述の当該樹脂組成物から形成される層を有しているので、外観性及び耐衝撃性に優れる。
当該多層構造体は、上記層の少なくとも一方の面に積層される熱可塑性樹脂層をさらに有するとよい。このように、当該多層構造体が上記層に積層される熱可塑性樹脂層をさらに有することで、耐衝撃性をより向上させることができる。
本発明は、当該多層構造体から形成されるブロー成形容器を含む。また、本発明は、当該多層構造体からなる多層シートを含む。また、本発明は、当該多層シートから形成される熱成形容器を含む。当該ブロー成形容器及び熱成形容器は、当該多層構造体又は当該多層構造体からなる当該多層シートから形成されるので、外観性及び耐衝撃性に優れる。
ここで、各成分の含有量を「ppm」で表す場合、この「ppm」は各成分の含有量の質量割合を意味し、1ppmは0.0001質量%である。
以上説明したように、本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)及びPO(B)を含有し、EVOH(A)として特定条件を満たすものを用いることで、回収再利用を繰り返した場合でも優れた外観性及び耐衝撃性を維持することができる。本発明の多層構造体及び多層シートは、外観性、耐衝撃性及び加工特性に優れるため、ボトル、カップ、トレイ、燃料容器等の各種熱成形容器、ブロー成形容器、包装材等の成形材料として好適であり、外観性及び耐衝撃性に優れる成形品を製造することができる。
EVOHの分子量(対数値)と、示差屈折率検出器で測定されたシグナル値(RI)及び吸光度検出器(測定波長220nm及び280nm)で測定された吸光度(UV)との関係を模式的に示したグラフである。
本発明は、樹脂組成物、多層構造体、多層シート、ブロー成形容器及び熱成形容器を含む。以下、これらについて説明する。但し、本発明は、以下の説明に限定されない。また、以下において例示される材料は、特に記載がない限り、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)及びPO(B)を含有する。当該樹脂組成物は、EVOH(A)及びPO(B)以外に、有機酸のアルカリ金属塩(C)、酸変性ポリオレフィン(D)、脂肪酸多価金属塩(E)、その他の任意成分等を含有していてもよい。
当該樹脂組成物の樹脂分の下限としては、70質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましい。ここで「樹脂分」とは、EVOH(A)及びPO(B)と他の樹脂とを全て含む全樹脂成分をいう。
[EVOH(A)]
EVOH(A)は、エチレン−ビニルエステル共重合体をけん化したものである。
EVOH(A)のエチレン含有量の下限としては、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、25モル%がさらに好ましい。一方、EVOH(A)のエチレン含有量の上限としては、60モル%が好ましく、55モル%がより好ましく、50モル%がさらに好ましく、40モル%が特に好ましい。エチレン含有量が上記下限未満であると、当該樹脂組成物の溶融成形等の際に熱安定性が低下してゲル化しやすくなり、ストリーク、フィッシュアイ等の欠陥を発生し易くなるおそれがある。特に、一般的な溶融押出時の条件よりも高温又は高速の条件下で長時間運転を行うと、当該樹脂組成物のゲル化は顕著となるおそれがある。一方、エチレン含有量が上記上限を超えると、当該樹脂組成物のガスバリア性等が低下し、EVOH本来の特性を十分に発揮できないおそれがある。
EVOH(A)中のビニルエステル単位のけん化度の下限としては、通常85モル%であり、90モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、98モル%がさらに好ましく、98.9モル%が特に好ましい。上記けん化度が上記下限未満だと、当該樹脂組成物の熱安定性が不十分となるおそれがある。上記けん化度の上限としては、99.99モル%が好ましく、99.9モル%がより好ましい。
EVOH(A)の製造に用いるビニルエステルとしては、酢酸ビニルが代表的なものとして挙げられるが、それ以外にも、例えばプロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のその他の脂肪酸ビニルエステルなども挙げられる。
上記酢酸ビニルは、通常不可避的不純物として少量のアセトアルデヒドを含有する。この酢酸ビニルのアセトアルデヒドの含有量としては、100ppm未満が好ましい。この酢酸ビニルのアセトアルデヒドの含有量の上限としては、60ppmがより好ましく、25ppmがさらに好ましく、15ppmが特に好ましい。酢酸ビニルのアセトアルデヒドの含有量を上記範囲とすることで、後述する式(1)を満たすEVOH(A)を調製し易くなる。
EVOH(A)は、エチレン及びビニルエステルを重合させて製造することができるが、これらに加えて、さらにビニルシラン系化合物を共重合成分として使用することができる。EVOH(A)におけるビニルシラン系化合物に由来する単位の含有率としては、EVOH(A)を構成する全構造単位に対して、通常0.0002モル%以上0.2モル%以下である。
さらに、EVOH(A)の製造においては、本発明の効果を損なわない範囲で、エチレン、ビニルエステル及びビニルシラン系化合物以外のその他の単量体を共重合成分として使用してもよい。
(ピークトップ分子量(Ma))
ピークトップ分子量(Ma)は、窒素雰囲気下、220℃で50時間熱処理した後のEVOH(A)をゲルパーミションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう)を用いて分離し、このときにカラムから溶出されるEVOH(A)の図1に模式的に示すように示差屈折率検出器において測定されるシグナル(図1中の「RI」)のメインピークの最大値に対応する値である。本発明におけるピークトップ分子量(Ma)は、後述の方法により作成される検量線を用いて算出されるポリメタクリル酸メチル換算(以下、「PMMA換算」ともいう)の値である。
ピークトップ分子量(Ma)の下限としては、30,000が好ましく、35,000がより好ましく、40,000がさらに好ましく、50,000が特に好ましい。一方、ピークトップ分子量(Ma)の上限としては、100,000が好ましく、80,000がより好ましく、65,000がさらに好ましく、60,000が特に好ましい。
(吸収ピーク分子量(Mb)及び(Mc))
吸収ピーク分子量(Mb)及び(Mc)は、図1に模式的に示すようにピークトップ分子量(Ma)の測定と同じ条件でGPCによりEVOH(A)を分離し、紫外可視吸光度検出器において測定される特定波長でのシグナル(図1中の「UV」)の吸収ピークの最大値に相当する値である。この吸収ピーク分子量(Mb)及び(Mc)は、ポリメタクリル酸メチル換算の分子量である。なお、波長220nmにおける吸収ピークの分子量は、「Mb」として表記し、波長280nmにおける吸収ピークの分子量は「Mc」として表記する。
吸収ピーク分子量(Mb)の下限としては、30,000が好ましく、35,000がより好ましく、40,000がさらに好ましく、50,000が特に好ましい。一方、吸収ピーク分子量(Mb)の上限としては、75,000が好ましく、60,000がより好ましく、55,000がさらに好ましい。
吸収ピーク分子量(Mc)の下限としては、35,000が好ましく、40,000がより好ましく、45,000がさらに好ましく、48,000が特に好ましい。一方、吸収ピーク分子量(Mc)の上限としては、75,000が好ましく、55,000がより好ましく、50,000がさらに好ましい。
(検量線の作成)
検量線は、例えば標品としてAgilent Technologies社の単分散のPMMA(ピークトップ分子量:1,944,000、790,000、467,400、271,400、144,000、79,250、35,300、13,300、7,100、1,960、1,020、690)を測定し、示差屈折率検出器及び吸光度検出器のそれぞれについて作成する。検量線の作成には、解析ソフトを用いることが好ましい。なお、本測定のPMMAの測定においては、例えば1,944,000と271,400との両分子量の標準試料同士のピークが分離できるカラムを用いる。
(EVOH(A)の分子量相関)
EVOH(A)は、下記式(1)で表される条件を満たすものである。
(Ma−Mb)/Ma<0.45 ・・・(1)
式(1)の左辺(Ma−Mb)/Maとしては、0.40未満であることが好ましく、0.30未満がより好ましく、0.10未満がさらに好ましい。ここで、MaとMbとの差(Ma−Mb)が小さくなれば、図1における示差屈折率検出器から得られるメインピーク(PRI)と紫外可視吸光度検出器から得られる吸収ピーク(PUV(220nm))とが近接していることを意味する。逆に、分子量差(Ma−Mb)の値が大きくなれば、これら両ピーク(PRI、PUV(220nm))が離れていること意味する。すなわち、両ピーク(PRI、PUV(220nm))の分子量差(Ma−Mb)の値が大きい場合には、比較的低分子量の成分に波長220nmの紫外線を吸収する成分が多いことを意味する。そのため、EVOH(A)が上記式(1)を満たさない場合、比較的低分子量の成分に波長220nmの紫外線を吸収する成分が多いことを意味する。そして、この場合、EVOH(A)を含有する樹脂組成物を用いた溶融成形時にEVOH(A)が溶融成形時に熱劣化して着色したり、ゲル化による増粘及び凝集が生じて分散不良を起こし、その結果、回収再利用時の外観性及び耐衝撃性の低下が顕在化する傾向にある。
上述の式(1)を満たすことによる効果は、以下の理由により生じると考えられる。すなわち、EVOHは、脱水等の熱劣化を生じることにより、波長220nmの紫外線を吸収する炭素−炭素二重結合やカルボニル基を分子内に生じ、これらの基によって樹脂組成物のゲル化を促進する。上述のゲル化の促進作用は、熱劣化したEVOHの分子量に依存し、熱劣化したEVOHの分子量が大きい場合には上記促進作用が弱く、分子量が小さくなるほど上記促進作用が強くなる。そのため、EVOHが上述の式(1)を満たす場合、つまり熱劣化しても比較的高分子量を維持できる場合、着色とゲル化による増粘及び凝集とを抑制できると考えられる。
EVOH(A)は、好ましくは下記式(2)の条件を満たすものである。
(Ma−Mc)/Ma<0.45 ・・・(2)
式(2)の左辺(Ma−Mc)/Maとしては、0.40未満がより好ましく、0.30未満がさらに好ましく、0.15未満が特に好ましい。ここで、式(2)の左辺(Ma−Mc)/Maの値が大きくなれば、示差屈折率検出器から得られるメインピーク(PRI)と紫外可視吸光度検出器から得られる吸収ピーク(PUV(280nm))とが離れており、比較的低分子量の成分に波長280nmの紫外線を吸収する成分が多くなる。この場合、EVOH(A)が溶融成形時に熱劣化して着色したり、ゲル化による増粘及び凝集が生じて分散不良を起こし、その結果、回収再利用時の外観性及び耐衝撃性の低下が顕在化する傾向にある。
上述の式(2)を満たすことによる効果は、以下の理由により生じると考えられる。すなわち、EVOHは、上述の熱劣化によって炭素−炭素二重結合やカルボニル基が分子内に生じた後、熱劣化がさらに進行することにより、波長280nmの紫外線を吸収する共役二重結合が分子内に生じ、この共役二重結合によって樹脂組成物の黄変を促進する。上述の黄変の促進作用は、上述のゲル化の促進作用と同様に、熱劣化したEVOHの分子量に依存し、熱劣化したEVOHの分子量が大きい場合には上記促進作用が弱く、分子量が小さくなるほど上記促進作用が強くなる。そのため、EVOHが上述の式(2)を満たす場合、つまり熱劣化が進行しても比較的高分子量を維持できる場合、着色とゲル化による増粘及び凝集とをより抑制できると考えられる。
(式(1)で表される条件を満たすEVOH(A)を調製する方法
式(1)で表される条件を満たすEVOH(A)を調製する方法としては、従来のEVOHの調製において、
(A)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ビニルエステルに含まれるラジカル重合禁止剤を予め除去する方法、
(B)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ラジカル重合に用いるビニルエステルに含まれる不純物を特定量とする方法、
(C)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合温度を特定範囲とする方法、
(D)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合工程、又は上記重合工程後に未反応のビニルエステルを回収再利用する工程において有機酸を添加する方法、
(E)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合に用いる溶媒の不純物を特定量とする方法、
(F)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合に用いる溶媒とビニルエステルとの質量比(溶媒/ビニルエステル)を高める方法、
(G)エチレンとビニルエステルモノマーとをラジカル重合する際に使用するラジカル重合開始剤として、アゾニトリル系開始剤又は有機過酸化物系開始剤を用いる方法、
(H)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ラジカル重合後にラジカル重合禁止剤を添加する場合の添加量を残存する未分解のラジカル重合開始剤に対して特定量とする方法、
(I)残存するビニルエステルが極力除去されたエチレンとビニルエステルとの共重合体のアルコール溶液をけん化反応に用いる方法、
(J)けん化に用いるエチレンとビニルエステルとの共重合体に酸化防止剤を添加する方法等
が挙げられ、(A)〜(J)を適宜組み合わせてもよい。また、(A)〜(J)により、式(2)で表される条件を満たすEVOH(A)を調製することもできる。(A)〜(J)の方法について以下で説明する。
((A)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ビニルエステルに含まれるラジカル重合禁止剤を予め除去する方法)
上記ラジカル重合禁止剤としては、後述する(H)でラジカル重合後に添加するラジカル重合禁止剤として例示するものと同様のもの等が挙げられる。また、ラジカル重合禁止剤を除去する方法としては、カラムクロマトグラフィーを用いる方法、再沈法、蒸留法等が挙げられ、通常蒸留法が採用される。蒸留法によりラジカル重合禁止剤を除去する場合、ビニルエステルの沸点はラジカル重合禁止剤の沸点よりも低いため、蒸留塔頂部から重合禁止剤が除去されたビニルエステルを得ることができる。
((B)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ラジカル重合に用いるビニルエステルに含まれる不純物を特定量とする方法)
ラジカル重合に用いるビニルエステルに含まれる不純物の合計含有量の下限としては、1ppmが好ましく、3ppmがより好ましく、5ppmがさらに好ましい。また、上記不純物の合計含有量の上限としては、1,200ppmが好ましく、1,100ppmがより好ましく、1,000ppmがさらに好ましい。
上記不純物としては、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン等のアルデヒド;このアルデヒドが溶媒のアルコールによりアセタール化したアセトアルデヒドジメチルアセタール、クロトンアルデヒドジメチルアセタール、アクロレインジメチルアセタール等のアセタール;アセトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステルなどが挙げられる。
なお、上記不純物のうちアセトアルデヒドは、酢酸ビニルの製造等で生じ易く、かつEVOH(A)が式(1)を満たすことを妨げ易い。そのため、本方法においては、特にアセトアルデヒドの含有量を低減するとよい。
((C)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合温度を特定範囲とする方法)
エチレンとビニルエステルとの共重合体の重合温度の下限としては、20℃が好ましく、40℃がより好ましい。一方、上記重合温度の上限としては、90℃が好ましく、70℃がより好ましい。
((D)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、アルコール溶媒を用い、かつ重合工程、又は重合工程後に未反応のビニルエステルを回収再利用する工程において有機酸を添加する方法)
本方法は、重合系への有機酸の添加により、ビニルエステルのアルコールによる加アルコール分解や微量の水分による加水分解を抑制することで、アセトアルデヒド等のアルデヒドの生成を抑制できる。上記有機酸としては、グリコール酸、グリセリン酸、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸;マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、シュウ酸、グルタル酸等の多価カルボン酸などが挙げられる。
上記有機酸の添加量の下限としては、1ppmが好ましく、3ppmがより好ましく、5ppmがさらに好ましい。上記有機酸の添加量の上限としては、500ppmが好ましく、300ppmがより好ましく、100ppmがさらに好ましい。
((E)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合に用いる溶媒の不純物を特定量とする方法)
重合に用いる溶媒の不純物の合計含有量の下限としては、1ppmが好ましく、3ppmがより好ましく、5ppmがさらに好ましい。上記不純物の合計含有量の上限としては、1,200ppmが好ましく、1,100ppmがより好ましく、1,000ppmがさらに好ましい。重合に用いる溶媒の不純物としては、例えば上述のビニルエステルに含まれる不純物として例示したもの等が挙げられる。
((F)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、重合に用いる溶媒とビニルエステルとの質量比(溶媒/ビニルエステル)を高める方法)
上記重合に用いる溶媒とビニルエステルとの質量比(溶媒/ビニルエステル)の下限としては、0.03が好ましい。一方、上記質量比(溶媒/ビニルエステル)の上限としては、例えば0.4である。
((G)エチレンとビニルエステルモノマーとをラジカル重合する際に使用するラジカル重合開始剤として、アゾニトリル系開始剤又は有機過酸化物系開始剤を用いる方法)
アゾニトリル系開始剤としては、例えば2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えばアセチルパーオキシド、イソブチルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(メトキシイソプロピル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
((H)原料であるエチレンとビニルエステルとの共重合体の調製において、ラジカル重合後にラジカル重合禁止剤を添加する場合の添加量を残存する未分解のラジカル重合開始剤に対して特定量とする方法)
ラジカル重合後にラジカル重合禁止剤を添加する場合の添加量としては、残存する未分解のラジカル重合開始剤に対して、5モル当量以下が好ましい。上記ラジカル重合禁止剤としては、例えば共役二重結合を有する分子量1,000以下の化合物であって、ラジカルを安定化させて重合反応を阻害する化合物等が挙げられる。具体的な上記ラジカル重合禁止剤としては、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、3−エチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1−メトキシ−1,3−ブタジエン、2−メトキシ−1,3−ブタジエン、1−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−エトキシ−1,3−ブタジエン、2−ニトロ−1,3−ブタジエン、クロロプレン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、1−ブロモ−1,3−ブタジエン、2−ブロモ−1,3−ブタジエン、フルベン、トロポン、オシメン、フェランドレン、ミルセン、ファルネセン、センブレン、ソルビン酸、ソルビン酸エステル、ソルビン酸塩、アビエチン酸等の2個の炭素−炭素二重結合の共役構造を含む共役ジエン;1,3,5−ヘキサトリエン、2,4,6−オクタトリエン−1−カルボン酸、エレオステアリン酸、桐油、コレカルシフェロール等の3個の炭素−炭素二重結合を含む共役構造を含む共役トリエン;シクロオクタテトラエン、2,4,6,8−デカテトラエン−1−カルボン酸、レチノール、レチノイン酸等の4個以上の炭素−炭素二重結合の共役構造を含む共役ポリエンなどのポリエンが挙げられる。なお、1,3−ペンタジエン、ミルセン、ファルネセン等のように、複数の立体異性体を有するものについては、そのいずれを用いても良い。上記ラジカル重合禁止剤としては、p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2−フェニル−1−プロペン、2−フェニル−1−ブテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、3,5−ジフェニル−5−メチル−2−ヘプテン、2,4,6−トリフェニル−4,6−ジメチル−1−ヘプテン、3,5,7−トリフェニル−5−エチル−7−メチル−2−ノネン、1,3−ジフェニル−1−ブテン、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、3,5−ジフェニル−5−メチル−3−ヘプテン、1,3,5−トリフェニル−1−ヘキセン、2,4,6−トリフェニル−4,6−ジメチル−2−ヘプテン、3,5,7−トリフェニル−5−エチル−7−メチル−3−ノネン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン等の芳香族系化合物も挙げられる。
((I)残存するビニルエステルが極力除去されたエチレンとビニルエステルとの共重合体のアルコール溶液をけん化反応に用いる方法)
残存モノマーの除去率の下限としては、99モル%が好ましく、99.5モル%がより好ましく、99.8モル%がさらに好ましい。残存モノマーを除去する方法としては、例えばカラムクロマトグラフィーを用いる方法、再沈法、蒸留法等が挙げられ、蒸留法が好ましい。蒸留法で残存モノマーを除去する場合、ラシヒリングを充填した蒸留塔の上部からエチレンとビニルエステルとの共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、蒸留塔下部よりメタノール等の有機溶媒蒸気を吹き込む。これにより、蒸留塔頂部より上記有機溶媒と未反応ビニルエステルとの混合蒸気を留出させることができ、蒸留塔底部より未反応のビニルエステルが除去されたエチレンとビニルエステルとの共重合体溶液を取り出すことができる。ここで、「残存モノマーの除去率」とは、エチレンとビニルエステルとの共重合体のアルコール溶液について除去処理前後のモノマー含有量を測定し、以下の式で算出される値である。
残存モノマーの除去率(モル%)={1−(除去後の残存モノマー含有量/除去前の残存モノマー含有量)}×100
((J)けん化に用いるエチレンとビニルエステルとの共重合体に酸化防止剤を添加する方法)
上記酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。上記酸化防止剤としては、これらの中でフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤がより好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等のアクリレート系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−)ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス(3−シクロヘキシル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メタン、3,9−ビス(2−(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、6−(4−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物などが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン等のモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジアルキル(炭素数12〜15)ホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(ジフェニルモノアルキル(炭素数12〜15)ホスファイト)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスファイト等のジホスファイト系化合物などが挙げられる。リン系酸化防止剤としては、これらの中で、モノホスファイト系化合物が好ましい。
硫黄系酸化防止剤としては、例えばジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
エチレンとビニルエステルとの共重合体に酸化防止剤を添加する場合、酸化防止剤の含有量の下限としては、特に限定されないが、上記共重合体100質量部に対して、0.001質量部が好ましく、0.01質量部がより好ましい。一方、酸化防止剤の含有量の上限としては、特に限定されないが、上記共重合体100質量部に対して、5質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。酸化防止剤の含有量が上記下限未満であると、式(1)を満たすEVOH(A)の調製が困難となるおそれがある。逆に、酸化防止剤の含有量が上記上限を超えると、含有量の増加によるコスト上昇等に見合う効果が得られないおそれがある。
なお、上記(A)、(C)〜(J)の方法でEVOH(A)を調製する場合、ビニルエステル(酢酸ビニル)中に含まれるアセトアルデヒドの含有量は上記範囲でなくてもよい。この場合のアセトアルデヒドの含有量の下限としては、150ppmが好ましく、250ppmがより好ましく、350ppmがさらに好ましい。このように、アセトアルデヒドの含有量を上記範囲とすることで、酢酸ビニルからアセトアルデヒドを除去する工程を省略できるため、製造コストを低減できる。なお、この場合のアセトアルデヒドの含有量の上限としては、特に限定されないが、例えば1,000ppmである。
(EVOH(A)の溶融粘度(メルトフローレート))
EVOH(A)のメルトフローレートの下限としては、0.5g/10minが好ましく、1.0g/10minがより好ましく、1.4g/10minがさらに好ましい。一方、EVOH(A)のメルトフローレートの上限としては、30g/10minが好ましく、25g/10minがより好ましく、20g/10minがさらに好ましく、15g/10minが特に好ましく、10g/10minがさらに特に好ましく、1.6g/10minが最も好ましい。EVOH(A)のメルトフローレートが上記下限未満である場合、又は上記上限を超える場合、当該樹脂組成物の成形性及び外観性が悪化するおそれがある。
なお、メルトフローレートは、JIS−K7210(1999)に準拠し、温度190℃、荷重2,160gで測定した値である。
当該樹脂組成物の樹脂分におけるEVOH(A)の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましく、2質量%が特に好ましい。一方、上記含有量の上限としては、99.9質量%が好ましく、99質量%がより好ましく、50質量%がさらに好ましく、30質量%が特に好ましく、10質量%がさらに特に好ましい。EVOH(A)の含有量を上記範囲とすることで、耐衝撃性をより高めることができる。
[PO(B)]
PO(B)は、例えばポリエチレン(低密度、直鎖状低密度、中密度、高密度等);エチレンと、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン類又はアクリル酸エステルとを共重合したエチレン系共重合体;ポリプロピレン;プロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン類とを共重合したプロピレン系共重合体;ポリ(1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、アイオノマー樹脂などを含んでいる。PO(B)としては、これらの中で、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体等のポリプロピレン系樹脂、及びポリエチレン、エチレン系共重合体等のポリエチレン系樹脂が好ましい。特に、当該樹脂組成物からなる層を有する多層構造体を食品包装材として用いる場合には、二次加工性に優れる観点から、ポリエチレン系樹脂が好ましく用いられる。また、PO(B)としては、未変性ポリオレフィンが好ましい。なお、PO(B)には、酸変性ポリオレフィンを含まない。つまり、当該樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン以外のポリオレフィン(B)を必須成分として含む。
当該樹脂組成物中のEVOH(A)とPO(B)との質量比(A/B)の下限としては、0.1/99.9が好ましく、1/99がより好ましく、2/98がさらに好ましく、4/96が特に好ましい。上記質量比(A/B)の上限としては、99.9/0.1が好ましく、99/1がより好ましく、50/50がさらに好ましく、30/70が特に好ましく、10/90がさらに特に好ましい。また、当該樹脂組成物の樹脂分におけるEVOH(A)及びPO(B)の合計含有量の下限としては、50質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。当該樹脂組成物は、各樹脂成分の含有比を上記範囲とすることで、耐衝撃性をより高めることができる。
当該樹脂組成物の樹脂分におけるPO(B)の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましく、25質量%がさらに好ましく、35質量%が特に好ましく、45質量%が特に好ましい。一方、上記含有量の上限としては、99.9質量%が好ましく、99質量%がより好ましく、98質量%がさらに好ましく、96質量%が特に好ましい。PO(B)の含有量を上記範囲とすることで、耐衝撃性をより高めることができる。
[有機酸のアルカリ金属塩(C)]
当該樹脂組成物は、有機酸のアルカリ金属塩(C)を含有することで、着色を抑制することができ、その結果、外観性をより高めることができる。また、ロングラン性及び多層構造体とした際の層間接着力を向上させることができる。
アルカリ金属塩(C)を構成するアルカリ金属としては、単独の金属種であってもよく、複数の金属種からなるものであってもよい。上記アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられるが、工業的入手の点からはナトリウム及びカリウムがより好ましい。
上記有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、コハク酸、リノール酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸;安息香酸、サリチル酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸;乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸などのカルボン酸やp−トルエンスルホン酸等のスルホン酸などが挙げられる。上記有機酸としては、これらの中で、カルボン酸が好ましく、脂肪族カルボン酸がより好ましく、酢酸がさらに好ましい。
アルカリ金属塩(C)としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。アルカリ金属塩(C)としては、この中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムがより好ましい。
当該樹脂組成物がアルカリ金属塩(C)を含有する場合、アルカリ金属塩(C)の含有量(乾燥樹脂組成物中の含有量)の下限としては、金属換算で、1ppmが好ましく、5ppmがより好ましく、10ppmがさらに好ましく、80ppmが特に好ましい。一方、アルカリ金属塩(C)の含有量の上限としては、金属換算で、1,000ppmが好ましく、800ppmがより好ましく、550ppmがさらに好ましく、250ppmが特に好ましく、150ppmがさらに特に好ましい。アルカリ金属塩(C)の含有量が上記下限より小さいと、層間接着性が低下するおそれがある。アルカリ金属塩(C)の含有量が上記上限を超えると、当該樹脂組成物の着色の低減が困難となり、外観性が悪化するおそれがある。
[酸変性ポリオレフィン(D)]
当該樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン(D)をさらに含有するとよい。当該樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン(D)を含有することで、樹脂組成物中のEVOH(A)のミクロの領域での凝集が抑制され、その結果、熱成形における欠陥発生の抑制性、外観性及び強度がより向上する。
酸変性ポリオレフィン(D)としては、例えば不飽和カルボン酸又はその誘導体を化学結合で導入したオレフィン系重合体等を挙げることができる。不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、例えばエチレン性不飽和カルボン酸、そのエステル及びその無水物等が挙げられる。具体的には、エチレン性不飽和モノカルボン酸及びそのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸及びそのモノ又はジエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物等が挙げられ、これらの中でもエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好ましい。エチレン性不飽和ジカルボン酸としては、具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル等が挙げられ、これらの中で無水マレイン酸が好ましい。
上記オレフィン系重合体とは、ポリエチレン(低圧、中圧、高圧等)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテンなどのポリオレフィン、又はオレフィンと他のモノマー(ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル等)との共重合体(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体等)を意味する。これらの中でも、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの含有量が5質量%以上55質量%以下)、及びエチレン−アクリル酸エチルエステル共重合体(アクリル酸エチルエステルの含有量が8質量%以上35質量%以下)が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
酸変性ポリオレフィン(D)としては、具体的には、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン等の無水マレイン酸グラフト変性ポリオレフィン;無水マレイン酸グラフト変性エチレン−プロピレン(ブロック又はランダム)共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体等のオレフィンとビニル系単量体の共重合体の無水マレイン酸グラフト変性物などが挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物のオレフィン系重合体への付加量又はグラフト量(変性度)の下限としては、オレフィン系重合体に対し0.0001質量%が好ましく、0.001質量%がより好ましい。上記付加量又はグラフト量の上限としては、15質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物のオレフィン系重合体への付加反応又はグラフト反応の方法としては、例えば溶媒(キシレン等)、及び触媒(過酸化物等)の存在下でのラジカル重合法などにより行うことができる。このようにして得られたカルボン酸変性ポリオレフィン(D)の210℃で測定したメルトフローレートの下限としては、0.2g/10分が好ましく、0.5g/10分がより好ましい。一方、上記メルトフローレートの上限としては、30g/10分が好ましく、10g/10分がより好ましい。
当該樹脂組成物が酸変性ポリオレフィン(D)を含有する場合、樹脂分における酸変性ポリオレフィン(D)の含有量の下限としては、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。酸変性ポリオレフィン(D)の含有量の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。
[脂肪酸多価金属塩(E)]
当該樹脂組成物は、脂肪酸多価金属塩(E)を含有することで、外観性及び耐衝撃性をより向上できる。脂肪酸多価金属塩(E)としては、例えばラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の炭素数10〜26の高級脂肪酸の金属塩、特に周期律表第2族及び第3族の金属塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。また、上記した脂肪酸の亜鉛塩を用いることもできる。脂肪酸多価金属塩(E)としては、これらの中で、カルシウム塩、マグネシウム塩等の周期律表第2族の金属塩が好ましい。
当該樹脂組成物が脂肪酸多価金属塩(E)を含有する場合、脂肪酸多価金属塩(E)の含有量の下限としては、50ppmが好ましく、100ppmがより好ましく、150ppmがさらに好ましく、200ppmが特に好ましく、500ppmがさらに特に好ましく、1,200ppmが最も好ましい。脂肪酸多価金属塩(E)の含有量の上限としては、10,000ppmが好ましく、8,000ppmがより好ましく、5,000ppmがさら好ましく、4,000ppmが特に好ましく、2,000ppmがさらに特に好ましい。
[他の任意成分]
他の任意成分としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、充填剤、ヒンダードフェノール系化合物やヒンダードアミン系化合物等の熱安定剤、ポリアミド等の他の樹脂、ハイドロタルサイト化合物等が挙げられる。当該樹脂組成物の他の任意成分の合計含有量としては、通常1質量%以下である。
充填剤としては、例えばグラスファイバー、バラストナイト、ケイ酸カルシウム、タルク、モンモリロナイト等が挙げられる。
なお、ゲル化対策として例えば上記熱安定剤として例示したヒンダードフェノール系化合物及びヒンダードアミン系化合物、上記脂肪酸多価金属塩(E)、ハイドロタルサイト化合物等を当該樹脂組成物に添加してもよい。当該樹脂組成物にゲル化対策のための化合物を添加する場合、その添加量としては、通常0.01質量%以上1質量%以下である。
[樹脂組成物の溶融粘度(メルトフローレート)]
当該樹脂組成物のメルトフローレートの下限としては、0.5g/10minが好ましく、1.0g/10minがより好ましく、1.4g/10minがさらに好ましい。一方、当該樹脂組成物のメルトフローレートの上限としては、30g/10minが好ましく、25g/10minがより好ましく、20g/10minがさらに好ましく、15g/10minが特に好ましく、10g/10minがさらに特に好ましく、1.6g/10minが最も好ましい。当該樹脂組成物のメルトフローレートが上記下限未満である場合、又は上記上限を超える場合、成形性及び外観性が悪化するおそれがある。
<樹脂組成物の製造方法>
当該樹脂組成物の製造方法としては、例えばEVOH(A)、PO(B)及び有機酸のカルボン酸塩(C)等の任意成分を均一にブレンドできる方法であれば特に限定されない。なお、各成分のブレンドには、例えばリボンブレンダー、高速ミキサーコニーダー、ミキシングロール、押出機、インテンシブミキサー等を用いることができる。
ブレンドに用いる装置としては、これらの中でも、後述する実施例で示しているように、樹脂を溶融ブレンドする際に用いられる単軸又は二軸スクリュー押出機を好適に用いることができる。各成分の添加順序としては、特に限定されず、EVOH(A)を含有する樹脂成分、PO(B)及び脂肪酸多価金属塩(E)等のその他の任意成分を同時に又は適当な順序で押出機へ投入し溶融混練させる方法が好適に採用される。また、任意成分を溶融混練時に添加してもよい。
<多層構造体>
当該多層構造体は、上述の当該樹脂組成物から形成される層(以下、「EVOH樹脂組成物層」ともいう)を少なくとも有するものである。当該多層構造体は、EVOH樹脂組成物層以外に、他の成分からなる層を有していてもよい。当該多層構造体は、その層構成及び層の総数、層の厚みや比率、他の層に用いられる樹脂の種類、接着性樹脂の有無及びその種類等は特に限定されない。
[他の成分からなる層]
上記他の成分からなる層としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層、及びポリオレフィンからなる層が好ましい。
上記他の成分からなる層を構成するポリオレフィンとしては、例えば上述のPO(B)として例示したもの等が挙げられ、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体等のポリプロピレン系樹脂、及びポリエチレン、エチレン系共重合体等のポリエチレン系樹脂が好ましい。
[接着性樹脂層]
当該多層構造体の各層間は接着性樹脂を介して積層されていてもよい。この接着性樹脂層として使用される接着性樹脂としては、上述の酸変性ポリオレフィン(D)が好適である。
[多層構造体の用途]
当該多層構造体は、後述する方法により、フィルム、シート、テープ、カップ、トレイ、チューブ、ボトル、パイプ等の任意の成形品に成形できる。ここでフィルムとは、通常300μm未満の平均厚みを有するものをいい、シートとは、通常300μm以上の平均厚みを有するものをいう。
<多層構造体の製造方法>
当該多層構造体の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば押出ラミネート法、ドライラミネート法、押出ブロー成形法、共押出ラミネート法、共押出成形法、共押出パイプ成形法、共押出ブロー成形法、共射出成形法、溶液コート法等が挙げられる。当該多層構造体の製造方法としては、汎用性の観点から、共押出成形法及び共射出成形方が好ましい。なお、共押出成形法又は共射出成形法を用いるときには、EVOH(A)、PO(B)、他の熱可塑性樹脂、接着性樹脂等の各樹脂をそれぞれ個別に熱成形装置に供給することがより好ましい。
当該多層構造体を製造する方法としては、これらの中で、共押出ラミネート法及び共押出成形法が好ましく、共押出成形法がより好ましい。当該多層構造体は、EVOH樹脂組成物層と他の成分からなる層とを上記方法により積層することで、容易かつ確実に製造することができる。その結果、良好な外観性、耐衝撃性及び加工特性を効果的に達成することができる。
当該多層構造体の各層を押出成形により形成する場合、各層の押出成形は、単軸スクリューを備えた押出機を所定の温度で運転することにより行われる。この場合、EVOH樹脂組成物層を形成する押出機の温度は、例えば200℃以上240℃以下とされる。他の成分からなる層を形成する押出機の温度は、例えば200℃以上240℃以下とされる。接着剤層を形成する押出機の温度は、例えば160℃以上220℃以下の温度とされる。
<成形品及びその製造方法>
当該多層構造体は、2次加工により目的の形状の成形品に成形してもよい。2次加工の方法としては、例えば延伸法、熱成形法、ブロー成形法等が挙げられる。延伸法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法、延伸ブロー法等が挙げられる。延伸法で二軸延伸する場合には、同時二軸延伸方式及び逐次二軸延伸方式のいずれの方式も採用できる。熱成形法としては、真空成形法、圧空成形方、真空空圧成形方等が挙げられる。熱成形法により、フィルム状又はシート状の当該多層構造体をカップやトレイ状に成形することができる。また、ブロー成形法としては、パリソン状の当該多層構造体をブローによりボトル、チューブ状に成形する方法が挙げられる。このブロー成形法により、ブロー成形容器等を成形できる。これらの2次加工は、通常EVOH(A)の融点以下の温度範囲で行われる。当該多層構造体の2次加工の方法としては、これらの中で、真空圧空成形法が好ましい。真空圧空成形法は、当該多層構造体を加熱し、真空と圧空とを併用して成形する方法である。上記成形品は、上述の当該多層構造体を用いて真空圧空成形法により形成されることで、容易かつ確実に製造することができ、その結果、外観性及び耐衝撃性により優れる。
当該多層構造体を成形する際の溶融成形温度としては、EVOH(A)の融点等により異なるが、150℃以上250℃以下程度が好ましい。上記溶融成形温度が250℃を越えると、EVOH(A)の熱劣化が加速し、繰り返し回収時に熱劣化による外観不良や耐衝撃性の低下を誘発するおそれがある。
当該多層構造体により形成された成形品は、必要に応じ、曲げ加工、真空成形、ブロー成形、プレス成形等をさらに行って目的の形状に成形してもよい。
上記成形品は上述の性質を有する当該樹脂組成物から形成される層を備えているので、熱成形容器、例えば食品包装容器又は燃料容器に好適に用いることができる。
[ブロー成形容器]
当該ブロー成形容器は、上述の2次加工により、当該多層構造体から形成される。当該ブロー成形容器は、当該多層構造体から形成されるので、外観性及び耐衝撃性に優れる。
[多層シート]
当該多層シートは、当該多層構造体からなる。当該多層シートは、そのまま用いてもよいが、熱成形容器の材料として好適に用いることができる。当該多層シートを熱成形等に成形する方法としては、当該多層構造体を2次加工する方法として例示した成形法と同様の方法等が挙げられる。
[熱成形容器]
当該熱成形容器は、当該多層シートから形成され、外観性及び耐衝撃性に優れる。当該熱成形容器は、目的にあわせて成形し、必要に応じてヒートシールを行い容器とし、その容器内に内容物を充填して輸送、保存等に使用することができる。この内容物としては、食品及び非食品のいずれも使用することができ、乾燥物、水分を含むもの、及び油分を含むもののいずれであっても構わない。また、当該多層構造体からなる容器をボイル処理やレトルト処理に供することもできる。この場合、ポリプロピレンが両外層に使われているもの、又はEVOH層が厚いものが好適に用いられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
[EVOHの合成]
[合成例1](EVOHペレットの合成)
(エチレン−酢酸ビニル共重合体の重合)
ジャケット、攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口及び開始剤添加口を備えた250L加圧反応槽に、酢酸ビニルを83kg、メタノールを14.9kg仕込み、60℃に昇温した後、反応液に窒素ガスを30分間バブリングして反応槽内を窒素置換した。次いで反応槽圧力(エチレン圧力)が4.0MPaとなるようにエチレンを導入した。反応槽内の温度を60℃に調整した後、開始剤として12.3gの2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社の「V−65」)をメタノール溶液として添加し、重合を開始した。重合中はエチレン圧力を4.0MPaに、重合温度を60℃に維持した。5時間後、酢酸ビニルの重合率が40%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽からエチレンを排気し、さらに反応液に窒素ガスをバブリングしてエチレンを完全に除去した。次いで減圧下で未反応の酢酸ビニルを除去した後、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、「EVAc」ともいう)を得た。合成に使用する酢酸ビニルは、下記表1に示す含有量のアセトアルデヒドを添加したものを用いた。
(けん化)
得られたEVAc溶液にメタノールを加え、濃度15質量%のEVAc溶液を得た。このEVAcのメタノール溶液253.4kg(溶液中のEVAcが38kg)に、水酸化ナトリウムを10質量%含むメタノール溶液76.6L(EVAc中の酢酸ビニルユニットに対してモル比0.4)を添加して60℃で4時間撹拌することにより、EVAcのけん化を行った。反応開始から6時間後、酢酸9.2kg及び水60Lを添加して上記反応液を中和し、反応を停止させた。
(洗浄)
中和した上記反応液を反応器からドラム缶に移して16時間室温で放置し、ケーキ状に冷却固化させた。その後、遠心分離機(国産遠心器株式会社の「H−130」、回転数1200rpm)を用いて、上記ケーキ状の樹脂を脱液した。次に、遠心分離機の中央部に、上方よりイオン交換水を連続的に供給しながら洗浄し、上記樹脂を水洗する工程を10時間行った。洗浄開始から10時間後の洗浄液の伝導度は、30μS/cm(東亜電波工業株式会社の「CM−30ET」で測定)であった。
(造粒)
上記洗浄後の樹脂を乾燥機を用いて60℃で48時間乾燥し、粉末状のEVOHを得た。乾燥した粉末状のEVOH20kgを水及びメタノール混合溶液(質量比:水/メタノール=4/6)43Lに溶解させ、80℃で12時間撹拌した。次に、撹拌を止めて溶解槽の温度を65℃に下げて5時間放置し、上述のEVOHの水及びメタノール溶液の脱泡を行った。そして、直径3.5mmの円形の開口部を有する金板から、5℃の水及びメタノール混合溶液(質量比:水/メタノール=9/1)中に押出してストランド状に析出させ、切断することで直径約4mm、長さ約5mmの含水EVOHペレットを得た。
(精製)
上記含水EVOHペレットを遠心分離機で脱液し、さらに大量の水を加え脱液する操作を繰り返し行って洗浄し、EVOHペレットを得た。得られたEVOHのけん化度は99モル%であった。
得られたEVOHのペレット20kgを酢酸水溶液及びイオン交換水を用いて洗浄した後、酢酸ナトリウムを含む水溶液で浸漬処理を行った。この浸漬処理用水溶液と樹脂組成物ペレットとを分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で4時間乾燥を行い、さらに100℃で16時間乾燥を行って、酢酸ナトリウム含有EVOH(A)ペレットを得た。
[合成例2〜4及び比較合成例1]
酢酸ビニルのアセトアルデヒド含有量、EVOHのエチレン含有量及びけん化度、並びにアルカリ金属の含有量を表1に示すものとした以外は合成例1と同様にしてEVOHのペレットを合成した。
以下に説明する方法にて、表1に示すEVOHのけん化度、エチレン含有量、アルカリ金属の含有量等の測定を行った。
[EVOHのエチレン含有量及びけん化度]
乾燥EVOHペレットを凍結粉砕により粉砕した。得られた粉砕EVOHを呼び寸法1mmのふるい(標準フルイ規格JIS−Z8801準拠)でふるい分けした。このふるいを通過したEVOH粉末5gを100gのイオン交換水中に浸漬し、85℃で4時間撹拌した後、脱液して乾燥する操作を二回行った。得られた洗浄後の粉末EVOHを用いて、下記の測定条件でH−NMRの測定を行い、下記解析方法でエチレン含有量及びけん化度を求めた。
(測定条件)
装置名 :超伝導核磁気共鳴装置(日本電子株式会社の「Lambda500」)
観測周波数 :500MHz
溶媒 :DMSO−d
ポリマー濃度 :4質量%
測定温度 :40℃及び95℃
積算回数 :600回
パルス遅延時間:3.836秒
サンプル回転速度:10Hz〜12Hz
パルス幅(90°パルス):6.75μsec
(解析方法)
40℃での測定では、3.3ppm付近に水分子中の水素のピークが観測され、EVOHのビニルアルコール単位のメチン水素のピークのうちの、3.1ppm〜3.7ppmの部分と重なった。一方、95℃での測定では、上記40℃で生じた重なりは解消するものの、4ppm〜4.5ppm付近に存在するEVOHのビニルアルコール単位の水酸基の水素のピークが、EVOHのビニルアルコール単位のメチン水素のピークのうちの、3.7ppm〜4ppmの部分と重なった。すなわち、EVOHのビニルアルコール単位のメチン水素(3.1ppm〜4ppm)の定量については、水又は水酸基の水素のピークとの重複を避けるために、3.1ppm〜3.7ppmの部分については、95℃の測定データを採用し、3.7ppm〜4ppmの部分については40℃の測定データを採用し、これらの合計値として当該メチン水素の全量を定量した。なお、水又は水酸基の水素のピークは測定温度を上昇させることで高磁場側にシフトすることが知られている。従って、以下のように40℃及び95℃の両方の測定結果を用いて解析した。上記の40℃で測定したスペクトルより、3.7ppm〜4ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)及び0.6ppm〜1.8ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)を求めた。
一方、95℃で測定したスペクトルより、3.1ppm〜3.7ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)、0.6ppm〜1.8ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)及び1.9ppm〜2.1ppmのケミカルシフトのピークの積分値(I)を求めた。ここで、0.6ppm〜1.8ppmのケミカルシフトのピークは、主にメチレン水素に由来するものであり、1.9ppm〜2.1ppmのケミカルシフトのピークは、未けん化の酢酸ビニル単位中のメチル水素に由来するものである。これらの積分値から下記式(3)によりエチレン含有量を計算し、下記式(4)によりけん化度を計算した。
Figure 2016029159
Figure 2016029159
[アルカリ金属含有量]
アルカリ金属含有量の測定は、分光分析装置を用いて定量した。具体的には、乾燥EVOHペレット0.5gをアクタック社のテフロン(登録商標)製耐圧容器に添加し、硝酸(和光純薬工業社の精密分析用)5mLを添加した。30分放置後、ラプチャーディスク付きキャップリップにて容器に蓋をし、マイクロウェーブ高速分解システム(アクタック社の「スピードウェーブ MWS−2」)にて150℃、10分、次いで180℃、10分の処理を行って乾燥EVOHペレットを分解させた。なお、上述の処理では乾燥EVOHペレットの分解が完了できていない場合、処理条件を適宜調節した。得られた分解物を10mLのイオン交換水で希釈し、全液を50mLのメスフラスコに移しとり、イオン交換水で定容することで分解溶液を得た。ICP発光分光分析装置(パーキンエルマージャパン社の「Optima 4300 DV」)を用い、上記分解溶液をNaの波長589.592nmで定量分析することで、アルカリ金属含有量を測定した。
[溶融粘度(メルトフローレート)]
溶融粘度(メルトフローレート)は、JIS−K7210(1999)に準拠し、温度190℃、荷重2,160gで測定した。
[EVOHの分子量の測定]
(測定サンプルの準備)
測定サンプルは、窒素雰囲気下、EVOHを220℃で50時間加熱することで作製した。
(GPC測定)
GPC測定は、VISCOTECH社の「GPCmax」を用いて行った。分子量は、示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器で検出されるシグナル強度に基づいて算出した。示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器としては、VISCOTECH社の「TDA305」及び「UV Detector2600」を用いた。この吸光度検出器の検出用セルとしては、光路長が10mmのものを用いた。GPCカラムとしては、昭和電工株式会社の「GPC HFIP−806M」を用いた。また、解析ソフトとしては、装置付属の「OmniSEC(Version 4.7.0.406)」を用いた。
(測定条件)
測定サンプルを採取し、トリフルオロ酢酸ナトリウム20mmol/Lを含有するヘキサフルオロイソプロパノール(以下、「HFIP」ともいう)に溶解し、0.100wt/vol%溶液を調製した。測定には、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過した溶液を用いた。測定サンプルの溶解は、室温にて一晩静置することで行った。
移動相には、20mmol/Lトリフルオロ酢酸ナトリウム含有HFIPを用いた。移動相の流速は1.0mL/分とした。試料注入量は100μLとし、GPCカラム温度40℃にて測定した。
(検量線の作成)
標品として、Agilent Technologies社のポリメタクリル酸メチル(以下、「PMMA」と略記する)(ピークトップ分子量:1,944,000、790,000、467,400、271,400、144,000、79,250、35,300、13,300、7,100、1,960、1,020又は690)を測定し、示差屈折率検出器及び吸光度検出器のそれぞれについて、溶出容量をPMMA分子量に換算するための検量線を作成した。各検量線の作成には、上記解析ソフトを用いた。なお、本測定においてはPMMAの測定において、1,944,000及び271,400の両分子量の標準試料同士のピークが分離できるカラムを用いた。
なお、示差屈折率検出器から得られるピーク強度は、「mV」で表され、標準サンプルとしてAmerican Polymer Standard Corp.社のPMMAサンプル(PMMA85K:重量平均分子量85,450、数平均分子量74,300、固有粘度0.309)を1.000mg/mL濃度として用いた場合のピーク強度は358.31mVであった。
また、紫外可視吸光度検出器から得られるピーク強度は吸光度(アブソーバンスユニット)で表され、紫外可視吸光度検出器の吸光度は解析ソフトにおいて、1アブソーバンスユニット=1,000mVに変換した。
Figure 2016029159
<樹脂組成物の調製>
[実施例1]
合成例1のEVOH樹脂組成物5.5質量部、PO(B)として未変性ポリオレフィンである低密度ポリエチレン(LDPE)87質量部(株式会社プライムポリマーの「HZ8200B」)、酸変性ポリオレフィン(D)としてマレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社の「アドマーGT−6A」)7.5質量部、及び脂肪酸多価金属塩(E)としてステアリン酸亜鉛0.15質量部を混合して混合物を得た。
下記に示すペレタイズ条件にて、上記混合物を溶融混練し表2に示す組成を持つ実施例1のEVOH樹脂組成物を20kg得た。得られたEVOH樹脂組成物を再度溶融混練し、混練機から取り出す操作を繰り返し、溶融混練の回数(以下、「回収回数」ともいう)が5回、又は10回の樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(F)」ともいう)もそれぞれ20kg得た。なお、これら樹脂組成物の溶融混練温度は通常のEVOHの混練温度条件が150℃から250℃程度であることに対して、通常より高温側の250℃で実施した。また、脂肪酸多価金属塩(E)は、混合物を調製する際の質量を持って含有量とした。
(ペレタイズ条件)
押出機:株式会社東洋精機製作所製二軸押出機「ラボプラストミル」
スクリュー径:25mmφ
スクリュー回転数:100rpm
フィーダー回転数:100rpm
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/C4/C5/D
=180℃/230℃/250℃/250℃/250℃/250℃
[実施例2〜4及び比較例1]
表2に記載の種類及び配合量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様にしてEVOH樹脂組成物と、このEVOH樹脂組成物を複数回溶融混練した樹脂組成物(F)とを作製した。
[多層構造体の作製]
共押出成形装置を用い、実施例1〜4及び比較例1のEVOH樹脂組成物、ポリオレフィン(ポリエチレン)、カルボン酸変性ポリオレフィン(三井化学アドマー社の「QF−500」)、及び樹脂組成物(F)を別々の押出機に仕込み、全層厚みが1000μmの4種6層となる多層シート(層構成:ポリオレフィン層300μm/カルボン酸変性ポリオレフィン層50μm/EVOH層50μm/カルボン酸変性ポリオレフィン層50μm/樹脂組成物(F)層400μm/ポリオレフィン層150μm)を作製した。
(各押出機及び押出条件)
EVOH樹脂組成物の押出機:単軸スクリュー、直径40mm、L/D=26、温度170℃〜240℃
ポリオレフィンの押出機:単軸、スクリュー直径40mm、L/D=22、温度160℃〜210℃
樹脂組成物(F)の押出機:単軸スクリュー、直径65mm、L/D=22、温度200℃〜240℃
カルボン酸変性ポリオレフィンの押出機:単軸スクリュー、直径40mm、L/D=26、温度160℃〜220℃)
(共押出シート成形装置の成形条件)
フィードブロック型ダイ(巾600mm)、温度255℃
<熱成形容器の作製>
共押出成形装置にて得られた多層シート(共押出成形装置の立ち上げから30分後、及び24時間後を採取)を15cm角に裁断し、浅野製作所社のバッチ式熱成形試験機にてシート温度150℃の条件で、カップ状(金型形状70φ×70mm、絞り比S=1.0)に熱成形(圧空:5kg/cm2、プラグ:45φ×65mm、シンタックスフォーム、プラグ温度:150℃、金型温度:70℃)することで熱成形容器を作製した。
<ブロー成形容器の製造>
[実施例5〜8及び比較例2]
実施例1〜4及び比較例1のEVOH樹脂組成物、ポリエチレン(株式会社プライムポリマーの「HZ8200B」)、接着性樹脂(三井化学株式会社の「アドマーGT−6A」)、及び樹脂組成物(F)を用い、ブロー成形機(鈴木製工所社の「TB−ST−6P」)にて210℃、金型内温度15℃で20秒間冷却して、全層平均厚み700μm((内側)ポリエチレン層240μm/接着性樹脂層40μm/EVOH層40μm/接着性樹脂層40μm/回収層100μm/ポリオレフィン層240μm(外側))の4種6層となる3Lのブロー成形容器を成形した。この容器の底面平均直径は100mm、平均高さは400mmであった。
<ブロー成形容器の評価>
[外観性評価]
回収回数が10回目の樹脂組成物(F)層を回収層に使用してブロー成形した3L容器について、目視にてスジ及び着色を下記基準にて評価し、外観性の評価とした。
(スジの評価基準)
「良好(A)」:スジは認められなかった。
「やや良好(B)」:スジが確認された。
「不良(C)」:多数のスジが確認された。
(着色の評価基準)
「良好(A)」:無色
「やや良好(B)」:黄変
「不良(C)」:激しく黄変
[耐衝撃性評価]
回収回数1、5、10回のEVOH樹脂組成物又は樹脂組成物(F)を回収層に使用してブロー成形した3L容器に、プロピレングリコールを2.5L充填し、開口部をポリエチレン40μm/アルミ箔12μm/ポリエチレンテレフタレート12μm構成のフィルムで熱シールして蓋をした。このタンクを−40℃で3日間冷却し、開口部が上になるように6mの高さから落下させ、破壊した個数で評価した(n=10)。
(耐衝撃性の評価基準)
「良好(A)」:3個未満
「やや良好(B)」:3個以上6個未満
「不良(C)」:6個以上
[回収層に含まれるEVOHの平均分散粒子径]
ブロー成形容器を該容器側面と直角の方向にミクロトームで丁寧に切断し、さらにメスを用いて回収層を取り出した。露出した断面に減圧雰囲気下で白金を蒸着した。白金が蒸着された断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて10,000倍に拡大して写真撮影した。この写真中のEVOHの粒子20個程度を含む領域を選択し、該領域中に存在する各々の粒子像の粒径を測定し、その平均値を算出して、これを平均分散粒子径とした。なお、各々の粒子の粒径については、写真中に観察される粒子の長径(最も長い部分)を測定し、これを粒径とした。なお、上記フィルム又はシートの切断は押出方向に垂直に行い、切断面に対して、垂直方向からの写真撮影を行った。
(平均分散粒子径の評価基準)
「良好(A)」:1.5μm未満
「やや良好(B)」:1.5μm以上2.5μm未満
「不良(C)」:2.5μm以上
Figure 2016029159
表2に示すように、実施例のブロー成形容器は比較例のものに比べ、スジの発生及び着色が抑制され、外観性に優れることがわかった。また、実施例1〜4のブロー成形容器は、繰り返し回数5回行った樹脂組成物(F)を含む多層容器において耐衝撃性に優れた。さらに、実施例2〜4のブロー成形容器は、繰り返し回数10回行った樹脂組成物(F)を含む多層容器においても耐衝撃性に優れていた。そのため、PO(B)を含有する当該ブロー成形容器は、繰り返し回収性に優れた当該樹脂組成物を用いることで、繰り返し回収時のEVOH成分の熱劣化による増粘を防止し、樹脂組成物中のEVOH成分の凝集を抑制し、耐衝撃性の低下を防ぐ効果を示すことがわかった。そのため、ポリオレフィン(D)を含有する当該樹脂組成物は、ブロー成形容器等に好適に用いることができることが分かった。
以上説明したように、本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)及びPO(B)を含有し、EVOH(A)として特定条件を満たすものを用いることで、回収再利用を繰り返した場合でも優れた外観性及び耐衝撃性を維持することができる。本発明の多層構造体及び多層シートは、外観性、耐衝撃性及び加工特性に優れるため、ボトル、カップ、トレイ、燃料容器等の各種熱成形容器、ブロー成形容器、包装材等の成形材料として好適であり、外観性及び耐衝撃性に優れる成形品を製造することができる。

Claims (10)

  1. エチレン−ビニルアルコール共重合体及びポリオレフィンを含有し、
    上記エチレン−ビニルアルコール共重合体が、
    示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器を備えるゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、窒素雰囲気下、220℃、50時間熱処理後に測定した分子量が、下記式(1)で表される条件を満たす樹脂組成物。
    (Ma−Mb)/Ma<0.45 ・・・(1)
    Ma:示差屈折率検出器で測定されるピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
    Mb:紫外可視吸光度検出器で測定される波長220nmでの吸収ピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
  2. 上記エチレン−ビニルアルコール共重合体が、
    示差屈折率検出器及び紫外可視吸光度検出器を備えるゲルパーミエーションクロマトグラフを用い、窒素雰囲気下、220℃、50時間熱処理後に測定した分子量が、下記式(2)で表される条件をさらに満たす請求項1に記載の樹脂組成物。
    (Ma−Mc)/Ma<0.45 ・・・(2)
    Mc:紫外可視吸光度検出器で測定される波長280nmでの吸収ピークの最大値におけるポリメタクリル酸メチル換算の分子量
  3. 有機酸のアルカリ金属塩をさらに含有し、
    上記アルカリ金属塩の含有量が金属換算で1ppm以上1,000ppm以下である請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 酸変性ポリオレフィンをさらに含有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載の樹脂組成物。
  5. 脂肪酸多価金属塩をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成される層
    を少なくとも有する多層構造体。
  7. 上記層の少なくとも一方の面に積層される熱可塑性樹脂層
    をさらに有する請求項6に記載の多層構造体。
  8. 請求項6又は請求項7に記載の多層構造体から形成されるブロー成形容器。
  9. 請求項6又は請求項7に記載の多層構造体からなる多層シート。
  10. 請求項9に記載の多層シートから形成される熱成形容器。
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