JP2016024285A - 近視矯正を必要としない人のためのサングラス用のレンズの設計方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】通常の生活において近視矯正を必要とせず、屈折値が暗所視でプラスとならず暗所視での屈折値から明所視での屈折値を差し引いた値がマイナスとなる人のためのサングラス用のレンズの設計方法であって、レンズにC度数を設定せず、−0.75ディオプター〜0ディオプターの範囲でS度数のみを設定するようにする。
【選択図】図1
Description
サングラスを装用する場合、通常の生活において眼鏡やコンタクトレンズによって近視を矯正する必要がある人がその矯正のための眼鏡やコンタクトレンズをせずにサングラスを装用する場合には、そのサングラス用のレンズにはその人の視力に応じたレンズ度数(S度数やC度数)を設定する必要がある。一方、通常の生活において近視矯正を特に必要としない人であれば、サングラス用のレンズには敢えてレンズ度数を設定することはない。つまり、その場合にはレンズの透過率のみが低く設定された視力矯正機能のないレンズとなるはずである。
そのため、このような潜在的な近視の人にとってはサングラスを装用する場合には本来その人についての暗い場所における視力を測定し、矯正したレンズ度数を設定したサングラスを使用するべきである。しかし、実際には通常の生活においてすら近視を矯正していない人が敢えてサングラスを装用するためだけに自身のサングラスを装用した場合の視力を測定してそれに応じた矯正をするということはわざわざすることはない。そのため、従来では暗くなると周囲の景色が見えにくくなるという潜在的な近視の人であっても近視矯正をしていないレンズのサングラスを使用しなければならなかった。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、暗くなると周囲の景色が見えにくくなるという潜在的な近視の人において特に有利なサングラス用のレンズの設計方法を提供することにある。
このレンズは特に暗いところでの眼の屈折値(S度数+(C度数/2))がプラスとならず、暗所視での屈折値から明所視での屈折値を差し引いた値がマイナスである人に適用される。
上記において「−0.75ディオプター〜0ディオプター」という場合には−0.75ディオプタと±0ディオプターをいずれも含む概念である(つまり「〜」はその両端の数値を含む)。また、レンズは単焦点を意図している。
本発明における「通常の生活において近視矯正を必要とせず」とは、日常的に眼鏡やコンタクトレンズによって近視を矯正していないことをいう。
尚、近視とはその人の屈折力においてS度数がマイナスとなる場合であって、はっきりと見える最も遠い物体から眼までの距離数(cm)を100で割った逆数として算出する。この単位をディオプターという。近視をレンズによって矯正するとはレンズをかけた状態でS度数が0ディオプターとなる正視状態にすること(近づけること)をいう。眼鏡やコンタクトレンズによって視力の矯正をしていない人が必ずしも±0ディオプターの視力であるわけではなく、一般に−0.5〜+0.5ディオプター程度であれば視力の矯正の必要はない。
好適な近視矯正として−0.75ディオプターよりもS度数が小さくなることはないが、特にこの範囲であればより多くの近視矯正を必要としない人に好適となる。
また、第3の手段として、S度数を−0.25ディオプターに設定することを特徴とすることをその要旨とする。このように設定することで、より多くの近視矯正を必要としない人に好適となる。特にレンズの透過率が高い場合によい。
また、第4の手段として、−0.75ディオプター〜0ディオプターの範囲内において前記サングラス用のレンズの透過率が高いほどより高いS度数を設定するようにしたことをその要旨とする。
つまり、サングラス用のレンズの色を濃くしてレンズの透過率が低いなるような場合には−0.75ディオプター〜0ディオプターの範囲内においてS度数を高くし、逆にあまりレンズの色が濃くなく普通の色のついていないレンズに近づくほど−0.75ディオプター〜0ディオプターの範囲内においてS度数を低くするような設定である。レンズの色が濃いほど近視矯正を必要としないにも関わらず暗くなると周囲の景色が見えにくくなる傾向が大きくなるためである。
(1)明所視と暗所視での瞳孔径の大きさの違い
サングラスを装用した場合とそうでない場合の瞳孔径の大きさを検証し、瞳孔径の変化が明所と暗所での見やすさの違いにどのような因果関係を有するかを判断するためである。
眼鏡やコンタクトレンズによって視力の矯正をしていない18人の被験者に対して、170lux以上の照度を確保して明所視において通常の屈折検査を行った後に、非常に暗い夜間をイメージした透過率の極めて低いレンズ(視感透過率6%)のサングラスを装用した状態で再度屈折検査を行った。その結果を表1に示す。この結果、明所視では3.6mmであり、暗所視では5.8mmに拡大した。拡大率は164%であった。この暗所視の条件は実際には暗すぎて通常サングラス用のレンズとすることはない場合である。尚、普通の日本人の最大の瞳孔径(月のない夜間等の条件で)は7mm程度である。
上記のレンズのサングラスを装用させた際の装用者の自覚的な見やすさについて検証した。つまり、暗くなると周囲の景色が見えにくくなる人がどの程度の割合で存在し、その人たちにはどのような屈折異常が発現するかを検証した。
眼鏡やコンタクトレンズによって視力の矯正をしていない42人の被験者に対して、サングラスを装用していない時(上記(1)の明所視での見え方)との自覚的な比較をS度数の測定とともに行った。S度数の測定は各人について上記の明所視と暗所視の状態でトライアルレンズを用いて測定し、暗所視のS度数から明所視のS度数を差し引いて差を求めるようにした。その結果、表2に示すように、「夜、見づらいと感じる群」は18人、「夜、見づらいと感じない群」は24人であった。そしてそれぞれの群についてS度数の差の平均を求めたところ、前者では−0.31ディオプターであり、後者では−0.08ディオプターであった。この結果から、夜、見づらいと感じる人は瞳孔が大きくなることに伴って近視の屈折異常が大きく発現していると考えられる。但し、ここではあくまで平均値で算出しているため、近視の度合いのばらつき度合いはよく分からない。
上記(2)では自覚的に見づらいと感じるかどうかを検証した。しかし、他覚的(つまり、客観的)に明所視と暗所視でどのような眼の屈折値の違いがあるのか不明である。また、上記のような平均値だけではサングラス用のレンズにどの程度のS度数を設定すればよいのかは分かりにくい。そのため、発明者は屈折力解析装置(ニデック社製:OPD−scanII)を用いて眼鏡やコンタクトレンズによって視力の矯正をしていない36人の被験者に対して3mm瞳孔時と5mm瞳孔時の屈折値(S度数+(C度数/2))を測定し図1のような散布図を作成し、これを検証した。左右各眼について行ったがここでは左目のデータを示す。
図1は横軸(x軸)を3mm瞳孔時の屈折値(S度数+(C度数/2))とし、縦軸(y軸)を5mm瞳孔時の屈折値から3mm瞳孔時の屈折値を差し引いた値とした散布図である(単位はディオプター)。この図を分析すると、第三象限(x 座標とy 座標とがともに負の値)に属する被験者が最も多く、他覚的に暗所視で見えにくくなる人たちであるといえる。第二象限と第四象限は暗所視の方がむしろ正視に近い状態となるため、これらの被験者には近視を矯正したサングラスは不要である。第一象限は特異なケースと考えられる。
しかし、この結果は屈折値でありC度数を数値に含むものである。そのため、この結果に基づいてそのままS度数の単独値として反映することがよいかどうか、つまり暗所視においてマイナスのC度数のみを有する人に対してこのような弱いS度数のみを与えたレンズのサングラスを装用させても近視が改善されるかどうかについて検証する。今、明所視でのS ±0、C −0.0で、暗所視でS ±0、C −0.5の被験者が居ると仮定する(以下、被験者Aとする)。この被験者Aの屈折値は−0.25であり、第三象限にふくまれる。この被験者AがS−0.25の度数を与えたレンズをサングラス用レンズとして装用する場合を想定する。その結果、暗所視でS +0.25、C ±0となり、S度数がプラス方向に変位するものの絶対値において0.5であったC度数が小さくなるため、全体の見え方としては改善されることとなる。そのため、図1の結果から屈折値において第三象限に含まれる人のサングラス用のレンズをS度数として−0.75ディオプター〜0ディオプターとすることは妥当である。
尚、実際のサングラス用レンズを装用した場合でも5mm瞳孔となることはまれである。それはサングラスの周囲からも間接的に瞳孔に光が達するため、実際には暗すぎて実用に適さない透過率が非常に小さなサングラス用レンズであっても5mm瞳孔よりも小さな瞳孔を維持している。そのため、第三象限においてサンプルが−0.75ディオプター以下の位置となる可能性はない。
Claims (4)
- 通常の生活において近視矯正を必要とせず、少なくとも屈折値が暗所視でプラスとならず暗所視での屈折値から明所視での屈折値を差し引いた値がマイナスとなる人のためのサングラス用のレンズの設計方法であって、
−0.75ディオプター〜0ディオプターの範囲でS度数のみをレンズに設定し、C度数を設定しないようにすることを特徴とする近視矯正を必要としない人のためのサングラス用のレンズの設計方法。 - S度数を−0.50〜−0.25ディオプターの間に設定することを特徴とする請求項1に記載の近視矯正を必要としない人のためのサングラス用のレンズの設計方法。
- S度数を−0.25ディオプターに設定することを特徴とする請求項1に記載の近視矯正を必要としない人のためのサングラス用のレンズの設計方法。
- −0.75ディオプター〜0ディオプターの範囲内において前記サングラス用のレンズの透過率が高いほどより高いS度数を設定するようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の近視矯正を必要としない人のためのサングラス用のレンズの設計方法。
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