JP2016024056A - 疲労限度応力特定システムおよび疲労限度応力特定方法 - Google Patents

疲労限度応力特定システムおよび疲労限度応力特定方法 Download PDF

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Abstract

【課題】測定対象物の疲労限度応力を正確に求めることができる疲労限度応力特定システムを提供することを目的とする。【解決手段】測定対象物(1b)に対して加振機(1a)によって荷重を繰り返し加え、そのときの測定対象物を赤外線カメラ(1c)で撮影し、これを情報処理装置(1d)で処理する。情報処理装置(1d)は、画像をフーリエ変換処理して、加振の基本周波数の成分および第2高調波の成分の温度振幅画像を取得し、第2高調波の成分の温度振幅画像の最大を示す領域内において、基本周波数の成分の温度振幅画像に対する荷重特性の傾きが最大であるピクセル領域の散逸エネルギーを抽出する散逸エネルギー測定工程(21)と、散逸エネルギー測定工程(21)の測定結果から疲労限度応力を特定する疲労限度応力特定工程(22)とを有しており、疲労限度応力特定プロセスを標準化し、疲労限度応力を正確に求めることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、繰り返し応力振幅を測定対象物に加えて、材料内部のエネルギー散逸によって生じる平均温度上昇量の一定領域内における分布を赤外線サーモグラフィによって測定する散逸エネルギー測定手段を用いた疲労限度応力特定システムおよび疲労限度応力特定方法に関するものである。
従来、疲労限度応力の特定方法としては、例えば、非特許文献1〜5、特許文献1,2に記載されているようなものが報告されている。
図13は、非特許文献1に示された疲労限度応力の特定方法を示している。
これは、XC55スチール試験片に加えられる周期的な引張−圧縮荷重を段階的に変化させて、温度上昇量を赤外線サーモグラフィで測定した結果を示す。荷重380Mpa付近で、荷重に対する温度上昇量の傾きが変化する様子を示している。非特許文献1では、この傾きが変化する点がXC55スチール試験片の疲労限度応力荷重とほぼ一致することを述べている。
非特許文献2では、焼鈍された鋳物(UNI3545−68)でノッチなしの試験片、および棒溶接接合された自動車部品に対して、非特許文献1と同様の報告がされている。
非特許文献3では、クランクシャフトなど自動車部品への適応例が示されている。
非特許文献4では、XC48(カーボン含有量0.48%の炭素鋼)スチール、残留応力を除去したステンレス鋼SUS316L、及びアルミニウムAl7010、Al2024(Al−Cu系)について、試験片レベルであるが非特許文献1と同様の疲労限度応力の特定方法が述べられている。
また、非特許文献5では、鋼のエネルギー散逸を疲労限度応力以下の荷重では擬弾性変化に関連付け、応力の二乗に比例するとして二次の関数による近似線を用い、疲労限度応力以上の荷重ではミクロな塑性変形と関連付け、応力を負荷したときにミクロな塑性変形が単位体積あたりいくつの粒子において発生するのかを確率分布を求めることによって、応力の累乗に比例することが述べられている。
特許文献1では、応力集中係数を評価する工程、散逸エネルギーを測定する工程、疲労限度を特定する工程から構成される。応力集中係数を評価する工程では応力集中係数3を基準値として、それ以上、未満であることを判断する。散逸エネルギーを測定する工程では、撮影された温度画像を加振周波数の2〜3倍の周波数で高速フーリエ変換することで得られる温度振幅画像、または応力分布画像を用いて、温度振幅または応力振幅の分布画像の最大を示すピクセルに着目し、散逸エネルギー曲線を作成することが記載されている。疲労限度を特定する工程では、作成された散逸エネルギー曲線を構成する測定点の内、少なくとも3点以上用いて、統計処理によって引かれる近似線の交点によって求められることが記載されている。更に、応力集中係数を評価する工程で求められた情報をもとに、応力集中係数が3以上であれば散逸エネルギー曲線の屈曲点の初段を疲労限度とし、それ未満では初段以降の屈曲点を疲労限度とすることが記載されている。また、特許文献1で示される疲労限度応力の特定方法は、少なくとも1つ以上のボルトまたはネジからなる締結体と、締結体によって締結される1つ以上の被締結体から構成される金属締結体へも適応可能で、それらを構成する材料は主成分が主に鉄からなる、炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼であることが記載されている。
特許文献2では、散逸エネルギーを測定する工程、疲労限度を特定する工程から構成される。散逸エネルギーを測定する工程では、散逸エネルギーを測定するタイミングについて具体的に記載され、散逸エネルギーとひずみ量で表されるグラフのヒステリシスループの面積が一定、もしくは、発生応力範囲の周波数成分の1倍、2倍、3倍の周波数成分が一定変化になるタイミングで測定することが記載されている。また、この時着目するピクセルについては主応力和もしくは、発生応力範囲の周波数成分が最大を示すピクセルである。疲労限度を特定する工程では、疲労限度の特定に用いるデータ範囲について、高サイクル疲労である荷重領域か、横軸を荷重、縦軸を温度変化量もしくは主応力和のグラフ、横軸を主応力和、縦軸を散逸エネルギーとしたグラフで急激な変化をしない領域と記載されている。更に、疲労限度の特定に用いる近似線は、2本の近似線と近似に用いるデータ点の残差の二乗和が最小となるように引かれることが記載されている。
特許第5411020号公報 特開2012−163420号公報
M.P. Luong,"Fatigue limit evaluation of metals using an infrared thermographic technique"Mechanics of Materials Vol. 28,Issues 1−4 (July 1998),p.155-163 G. La Rosa and A. Risitano,"Thermographic methodology for rapid determination of the fatigue limit of materials and mechanical components"International Journal of Fatigue Vol. 22,Issues 1 (January 2000),p.65-73 矢尾板達也、「赤外線サーモグラフィによる応力画像と散逸エネルギー測定による疲労限界予測」日本非破壊検査協会,2002年第51巻第6号,p.333-337 J.C. Krapez and D. Pacou,"Thermography detection of damage initiation during fatigue tests",Proceedings of SPIE Vol. 4710(March 2002)p.435-449 F. Cura, A. E. Gallinatti and R. Sesana, "Dissipative aspects in thermographic methods"Journal of Fatigue & Fracture of Engineering Materials & Structures, Vol.35, Issue 12 (December 2012), p.1133-1147
しかしながら、散逸エネルギー測定による疲労限度応力の特定方法については、以前から多くの報告がなされているものの、その多くは研究者各々が独自の主観的判断に基づいた測定および疲労限度応力特定を行っていた。例えば、散逸エネルギーを抽出するピクセルの選択方法や近似線の求め方、使用するデータ範囲など基本的な条件についての決定方法である。
これらの理由として、散逸エネルギー測定による疲労限度応力の特定方法については、測定対象物の疲労試験から求められた疲労限度応力と散逸エネルギー測定から求められた疲労限度応力の比較による現象論から特定可能かどうかの議論が殆どであった。また、特定に用いられる近似線の引き方も疲労限度応力以下の荷重では擬弾性変化に関連付けられることから二次関数で示されているが、測定データによる裏付けは示されず、鋼が擬似弾性的な変化をしているであろうという推測をもとに二次関数での近似が述べられている。
一方、疲労限度応力以上では、応力を負荷したときにミクロな塑性変形が単位体積あたりいくつの結晶粒において発生するのかを確率分布として求めた結果から、応力の累乗に比例するとしてn次の多項式で近似するとしているが、測定データに対して次数を高くすることによってフィッティング性を高めているだけで、決して疲労のメカニズムであるミクロな塑性変形の発生を反映したものではない。
更に、応用面においても引張、圧縮など荷重の負荷方法によっても異なる結果が得られるなど不明な点が多く、物性値として定性的あるいは定量的に適応可能な範囲が不明である点などが挙げられる。
このため、単品部品や非常に単純な部品および複雑な構成の応力集中部に関して疲労限度応力を客観的に特定できる方法およびシステムは無かった。
本発明は、応力集中を有する材料や部品の疲労限度応力を客観的に特定可能な方法およびそれらを実現するシステムを提供することを目的とする。
それ故に、本発明の目的は、上記課題を解決するものであり、散逸エネルギーを抽出するピクセルの選択から近似線を表現する関数の次数など基本的な散逸エネルギーによる疲労限度応力特定プロセスや測定対象物の適応可能な範囲を明確にすると共に、高精度に散逸エネルギー測定が可能な疲労限度応力特定システム、および疲労限度応力特定方法を提供することである。
本発明は、疲労限度応力特定システムおよび疲労限度応力特定方法に向けられている。そして、上記目的を達成するために、本発明の疲労限度応力特定システムは、測定対象物に作用させる荷重を段階的に増加させ、前記荷重毎に発生する前記測定対象物の温度振幅を測定する疲労限度応力特定システムであって、測定対象物に対して荷重を繰り返し加える加振機と、前記測定対象物の温度画像を得る赤外線カメラと、前記赤外線カメラから得た前記測定対象物の温度画像を処理するフーリエ変換手段を有する情報処理装置とを備え、前記情報処理装置は、散逸エネルギーを測定する散逸エネルギー測定工程と、前記散逸エネルギー測定工程から得られた測定結果から疲労限度応力を特定する疲労限度応力特定工程を有し、前記散逸エネルギー測定工程は、前記赤外線カメラが撮影した温度画像より、加振の基本周波数の成分および第2高調波の成分の温度振幅画像を取得し、前記第2高調波の成分の温度振幅画像の最大を示す領域内において、前記基本周波数の成分の温度振幅画像に対する荷重特性の傾きが最大であるピクセル領域の散逸エネルギーを抽出する、ことを特徴とする。
前記疲労限度応力特定システムの概要を、一例として図1(a)(b)に示す。加振機1aに固定した測定対象物としての試験片1bの温度を赤外線カメラ1cによって測定する。赤外線カメラ1cから得た温度画像を処理する情報処理装置1dは、散逸エネルギー測定工程21と疲労限度応力特定工程22を有している。情報処理装置1dにはモニタ1eが接続されている。
散逸エネルギー測定工程21は、加振の基本周波数fの成分およびその2倍の周波数2f(これを第2高調波と称す)の成分の温度振幅画像を取得し、図3(a)に示されるように第2高調波の成分の温度振幅画像の最大を示す領域23内において、図3(b)に示す基本周波数成分の温度振幅画像に対する荷重特性の傾きが最大であるピクセルを選択する。なお、図3(a)における仮想線24は、測定対象物としての試験片1bの輪郭を示している。
疲労限度応力特定工程22は、横軸に前記加振の基本周波数の成分である温度振幅、縦軸に第2高調波の成分である温度振幅をプロットすることを特徴とする。
図4は、横軸に基本周波数の成分の主応力和(Δσ=−ΔT/(k・T)、ΔT:温度変化量,k:熱弾性係数,T:絶対温度)、縦軸に加振の基本周波数の第2高調波の成分である温度振幅をプロットした図である。試験片など単純な形状をした測定対象物であれば、加振機などから負荷された荷重と測定対象物に発生する応力は比例するが、実物の測定対象物は接合部や切り欠きなど複雑な形状をしているため、加振機で負荷された荷重と実物に発生する応力は必ずしも比例するとは限らない。一方、第2高調波の成分の温度振幅が得られる部分の基本周波数の成分の温度振幅成分は、測定対象物に発生する応力成分に依存している。そのため、横軸に荷重ではなく、基本周波数の成分の温度振幅を用いることが望ましい。
疲労限度応力特定工程22では、自由度調整済み決定係数およびGauss - Newton法によって求められる2本の近似線の交点から疲労限度応力を特定する。
また、疲労限度応力特定工程22で用いられる近似線は、y=ax+bで表される多項式と直線であることを特徴とする。
また、疲労限度応力特定工程22において、前記y=ax+bで表される多項式の次数nは2であることを特徴とする。
測定対象物に加えられる荷重が低い領域、すなわち疲労限度応力以下の領域において、内部摩擦によって生じるエネルギー散逸が熱として発生しているという仮定のもとに行ったシミュレーションの結果と赤外線カメラによって測定された実験結果とを比較検証するとともに、実験結果に対して関数の次数を変えてフィッティングすることで適切な次数を求めるために検証した。その結果、散逸されるエネルギーの荷重振幅に対する増加が次数n=2とする2次関数で表されることを導き出した。ここで前記y=ax+bで表される多項式の切片bは赤外線カメラで測定された散逸エネルギーのノイズに相当する。
また、疲労限度応力特定工程22において、前記直線はy=cx+dで表されることを特徴とする。
測定対象物に加えられる荷重が高い領域、すなわち疲労限度応力以上の領域において、3次元の弾塑性解析を行うことで荷重振幅に比例して増加し、直線で近似できることを導き出した。また、その弾塑性解析で得られた結果は、赤外線カメラを用いた散逸エネルギー測定の結果と非常に良く一致する結果が得られることからもy=cx+dで表される直線で近似することが望ましい。
また、疲労限度応力特定工程22で用いられる自由度調整済み決定係数およびGauss - Newton法によって求められる2本の近似線は、2本の近似線とデータのフィッティングによって求められる残差の二乗和が最小になるように近似されることを特徴とする。
詳細には、荷重または主応力和の低い方から最低3点の実験データをy=ax+bの2次関数に対してGauss - Newton法で近似し、残りのデータを用いてy=cx+dでGauss - Newton法を用い近似し、2つの近似線の残差の二乗和を求める。次に2次関数y=ax+bで近似するデータを1つ増やして近似し、残りのデータを直線y=cx+dで近似し、2つの近似線の残渣の二乗和を求める。その作業を繰り返すことによって図5の荷重振幅の境界に対する残差の二乗和の値が得られる。この残差の二乗和が最小になる近似線の組み合わせが最も実験結果に対してフィッティングされた近似線となる。
また、疲労限度応力特定工程22で用いられる前記2本の近似線は、2本の近似曲線の自由度調整済み決定係数Rの相乗平均が最大になる場合のデータ範囲を用いることによって求められることを特徴とする。
上記残差の二乗和が最小値となる2つの近似線を求め、その2つの近似線の交点から疲労限度応力を特定することは可能であるが、データの使用範囲によっては、異なる疲労限度応力が求まる場合がある。そこで、2つの近似線の残差の二乗和の最小を求め、同時に2つの近似線の自由度調整済み決定係数の相乗平均が最大となる近似線を求めることで適切な疲労限度応力を特定できる。
自由度調整済み決定係数とは、多項式回帰モデルに対する決定係数(寄与率)の自由度を調整して、多項式回帰モデルを安定させる手法である。例えば、多項式の次数を大きくすると、自由度は増えるがモデルが不安定になる。一方、次数を減らせば自由度は減るが、モデルは安定する。
多項式回帰モデルに対する決定係数Rは回帰曲線を
とし、そのx部分にx,x,・・・,xを代入した時の予測値をそれぞれ、
とすると
となる。この時、決定係数Rは以下の式で定義できる。
自由度調整済み決定係数は以下の形で与えられる。
この値が1に近づくほど、モデルが安定し、フィッティングが良好という結果となる。通常、自由度調整済み決定係数は、近似線を表す関数の次数を求めることも可能であるが、2つの近似線を求め、その交点から得られる疲労限度応力を特定するためのデータ範囲も限定することも可能であり、疲労限度応力の特定精度を向上することができる。
本発明によれば、測定対象物に対して加振機によって荷重を繰り返し加え、そのときの測定対象物を赤外線カメラで撮影し、これを散逸エネルギー測定工程と、疲労限度応力特定工程によって処理して疲労限度応力を特定するので、疲労限度応力特定プロセスを標準化し、応力集中を有する材料や部品の疲労限度応力を、主観的な判断に頼ることなく客観的に疲労限度応力を正確に求めることができる。
(a)本発明の実施の形態1における試験片を加振機に固定した状態を示す正面図と、(b)その側面図と試験片を撮影する赤外線カメラの情報処理装置の構成図 本発明の実施の形態1における散逸エネルギー測定工程のフローチャート図 (a)本発明の第2高調波の成分の温度振幅画像分布を示す図と、(b)本発明における荷重振幅に対する基本周波数の温度振幅を示す図 本発明の横軸に基本周波数の成分の温度振幅の主応力和、縦軸に第2高調波の成分である温度振幅をプロットした図 本発明の荷重振幅の境界に対する残差の二乗和の値を示す図 本発明の実施の形態1における曲率半径rhを有する測定対象物である試験片1bの形状及び寸法を示す図 本発明の実施の形態1における散逸エネルギー測定の原理を説明する図 (a)疲労試験前の試験片と(b)疲労試験後の試験片の破断箇所を示す写真 (a)本発明の実施の形態1における切欠き部の曲率半径がrh=2mmの試験片における散逸エネルギー測定の結果を示す図と、(b)ノッチ部の曲率半径がrh=1mmの試験片の散逸エネルギー測定の結果を示す図 (a)本発明の実施の形態1における切欠き部の曲率半径がrh=2mmの試験片の疲労SN曲線を示す図と、(b)ノッチ部の曲率半径がrh=1mmの試験片の疲労SN曲線を示す図 (a)本発明の実施の形態2における荷重振幅に対する第2高調波の成分である温度振幅をプロットした図、(b)本発明の実施の形態2における加振の基本周波数の成分の主応力和に対する第2高調波の成分である温度振幅をプロットした図 (a)本発明の実施の形態7における全てのデータ範囲で残差の二乗和が最小になる近似線を引いた図と、(b)不自然な第2高調波の温度振幅の上昇を除去した状態で残差の二乗和が最小になる近似線を引いた図 従来の疲労箇所の特定方法に用いられるスチール試験片の荷重に対する温度上昇量を示す図
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1〜図10は本発明の実施の形態1を示す。
図1(a)(b)は、本発明の実施の形態1における疲労限度応力特定システムを示す。疲労限度応力特定システムは、加振機1aに固定した測定対象物としての試験片1bの温度を、高精度赤外線カメラ(以下、単に赤外線カメラと記す)1cによって測定する。
試験片1bは、図6に示すように幅Bで厚みtの短冊状で、長さ方向の中央には両側から中心に向かって深くなるノッチ25が形成されている。ノッチ25は曲率半径rhで、ノッチ25の深さがd、bは、応力集中部の最小断面の幅の半分である。
加振機1aとしては、油圧サーボ疲労試験機(島津製作所,サーボパルサ,最大試験能力:10kN)を用いた。加振機1aの荷重振幅は、荷重制御により0kN〜8.5kNまで0.1kN毎に引張荷重を変えて測定した。加振による基本周波数fは25Hz一定とした。
赤外線カメラ1cとしては、Cedip社のSilver480Mを用いた。赤外線カメラ1cで測定した温度画像は、フーリエ変換手段を有する情報処理装置1dでデータ処理する。情報処理装置1dには、モニタ1eが接続されている。
情報処理装置1dには、後述するピクセル選択法のフローチャートが構築されている。
散逸エネルギー測定の原理について図7を用いて説明する。
繰り返し負荷を受けた試験片1bは、熱弾性効果によって、加振機1aによる加振周波数と同一周波数の繰り返し温度変化2aを生じるが、それに加えて材料内部のエネルギー散逸によって平均温度上昇2cを生じる。ただし、熱弾性効果による温度変化2aおよび散逸エネルギーによる平均温度上昇2cは、外乱の温度変化2bに比べて小さい。このため試験片1bの温度変化量ΔTを表すと下記(式1)のようになる。
ΔT=r−T+D+T・・・・・・ (式1)
ΔT:温度変化量
:外的要因(風や周囲の温度変化)
:熱の伝導(温度の高い箇所と低い箇所が均一化を図る働き)
:散逸エネルギー(繰り返しサイクルにおける温度上昇量)
:熱弾性効果
実際の散逸エネルギーの測定では、赤外線カメラで試験片1bの温度測定を行うと同時に、疲労試験機1aからの制御信号である同期入力信号を取り込み、同期入力信号に基づく特定の周波数成分についてフーリエ変換による赤外線応力画像処理を行うことで外乱の影響を除外して、試験片1bの熱弾性効果による温度変化だけを測定する。
熱弾性効果による温度上昇・下降から、更に小さな繰り返しサイクル毎の機械的現象に基づく材料内部の散逸エネルギーによる温度上昇量を分離して測定すると、繰り返しサイクルにおける温度上昇量の散逸エネルギーDの測定画像が描かれる。
赤外線カメラ1cを用いて、試験片1bの散逸エネルギーを測定した結果を図3(a)に示す。
図3(a)を見て分かるように、試験片1bのノッチ25の付近に非常に温度が高くなっている部分が見られる。この温度振幅が高く示される部分を含む領域23に着目し、領域23内の各ピクセルにおいて図3(b)に示すような荷重振幅に対する加振による基本周波数の温度振幅グラフを作成し、傾きを求める。
この傾きが最大のピクセルは主応力和の大きさが最大であり、最大応力集中部のピクセルである。よって、加振の基本周波数fの2倍の周波数2f(第2高調波と称す)の成分の温度振幅が大きく、かつ荷重振幅と加振による基本周波数の温度振幅のグラフの傾きが最大のピクセルを選択することにより、疲労損傷と応力集中の両方が発生しているピクセルを選択できる。
この処理は情報処理装置1dの散逸エネルギー測定工程21において図2のように演算処理されている。
ステップS1では、各荷重振幅における第2高調波の成分の温度振幅の分布画像を作成する。
ステップS2では、加振の基本周波数の第2高調波の成分の温度振幅が大きい領域である領域23に注目する。
ステップS3では、着目した領域内のすべてのピクセルにおいて加振振幅に対する加振周波数の温度振幅のグラフを作成する。
ステップS4では、ステップS3で求めたグラフの傾きが最大のものを疲労限度推定に用いるピクセルに決定する。
図8(a)(b)は確認のため行った疲労試験の前後の試験片を示す。図8(b)に示される疲労試験後の試験片の破断箇所も、図3(a)に示された散逸エネルギーにより温度振幅が大きくかつ荷重振幅と加振周波数の温度振幅のグラフの傾きが最大である部分である。
図6に示されるような切欠き形状を有する試験片の切欠き部の曲率半径rhを1mmと2mmの2種類の試験片を用いた。なお、試験片の幅B、切欠き深さ(ノッチ)d、応力集中部の最小断面の幅の半分b、厚みtはそれぞれ3mm一定とした。
それらの試験片に対して、荷重振幅を変化させて測定を行った散逸エネルギーの測定結果から求めた変曲点と、同様の試験片を用いて機械的疲労試験から求めた疲労限度荷重を比較した結果の一例を図9及び図10に示す。
図9(a)(b)は、切欠き部の曲率半径がrh=2mm、1mmの試験片を疲労試験機1aに取付け、荷重を徐々に上げながら散逸エネルギー測定を行った結果を示す。図10(a)(b)は、切欠き部の曲率半径がrh=2mm、1mmの試験片を加振機1aに取付け、求めた疲労SN曲線である。
散逸エネルギー測定の結果および疲労試験による疲労SN曲線から求めた疲労限界荷重振幅の結果を表1に示す。
表1に示されるように、散逸エネルギー測定から求めた変曲点にあたる荷重振幅値と疲労SN曲線から求めた疲労限界荷重振幅値とが一致することは明らかである。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2では、横軸に加振の基本周波数の成分である温度振幅、縦軸に第2高調波の成分である温度振幅をプロットする散逸エネルギー曲線を用いる疲労限度応力特定システムおよび疲労限度応力特定方法について説明する。実施の形態1の図1に示した装置を使用して、加振機1aの荷重振幅は、荷重制御により0kN〜9.0kNまで0.1kN毎に引張荷重を変えて測定した。加振による基本周波数は25Hz一定とした。
疲労限度応力特定方法に用いられる散逸エネルギー曲線は、横軸が荷重振幅、縦軸が平均温度上昇量もしくは加振の基本周波数の第2高調波の成分の温度振幅のグラフから疲労限度応力特定を行うことが一般的である。しかし、実製品のような複雑な形状をしている場合、試験機により負荷された荷重に対応した応力が生じているとは限らない。また、切欠き試験片のように応力集中部がある場合、塑性変形が起きると応力の再分配が起き応力分布が荷重ごとに変化する可能性があるため、横軸を荷重振幅にすると実際に生じている応力や応力分布の変化の影響を無視した第2高調波の成分である温度振幅のグラフから疲労限度応力特定を行うことになる。そこで横軸に加振の基本周波数の成分の温度振幅をとることにより、第2高調波の成分である温度振幅の挙動を忠実に表すことが可能になる。
図11(a)は、荷重振幅に対する第2高調波の成分である温度振幅をプロットした図である。図11(b)は、加振の基本周波数の成分の主応力和に対する第2高調波の成分である温度振幅をプロットした図を示す。図11(a)は、応力集中部16aと16aから1mm離れた部分16bの散逸エネルギー曲線を示し、測定から得られるデータは殆ど重なっていて差が見られない。一方、図11(b)では、基本周波数の成分の主応力和に対する第2高調波の成分である温度振幅が応力集中部16aと1mm離れた16bの部分では傾きが顕著に異なり、想定される応力集中部16aの傾きがのほうが大きい傾向が見られる。また、図11(a)(b)で求めた疲労限度応力の特定値を比べると、図11(b)の16aで求めた疲労限度応力が疲労試験により求めた疲労限度応力に近い値が得られた。
以上の結果から、横軸に加振の基本周波数の成分の主応力和、縦軸に第2高調波の成分である温度振幅をプロットする散逸エネルギー曲線を用いることで、疲労限度応力を正確に求めることが可能なのは明らかである。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3では、自由度調整済み決定係数もしくはGauss - Newton法によって求められる2本の近似線の交点から疲労限度応力を特定する疲労限度応力特定方法および疲労限度応力特定システムについて説明する。実施の形態1の図1に示した装置を使用して、加振機1aの荷重振幅は、荷重制御により0kN〜9.0kNまで0.1kN毎に引張荷重を変えて測定した。加振による基本周波数は25Hz一定とした。
横軸が加振による基本周波数の温度振幅、縦軸が加振の第2高調波の成分の温度振幅のグラフから屈曲点決定をするための関数として、疲労限度応力以下の荷重振幅の値が低い領域について、適切な関数の次数を検討した。検討した関数は、1次関数y=ax+b、2次関数y=ax+b、3次関数y=ax+b、4次関数y=ax+bとした。適切な関数の次数を選択するための方法として、自由度調整済み決定係数とGauss - Newton法を用いて検討を行った。使用した試験片はノッチ半径2mmを3本用いて荷重4kNまで散逸エネルギーを測定し、その時の自由度調整済み決定係数の値を求めた。その結果を表2に示す。
表2の結果から自由度調整済み決定係数の相乗平均が最も高い値を示したのは、2次関数であった。次に、非線形近似法であるGauss - Newton法を用いてフィッティングを行った。なお、近似する関数の形はyを第2高調波の成分の温度振幅、xを荷重振幅とするy=C+Cである。その結果を表3に示す。
表3の結果からGauss - Newton法を用いたフィッティングで次数nは2に近い値が得られ、また、係数Cは10-5代、係数Cも0.001〜0.002の非常に小さな範囲内であることから、次数nは2が最適と判断される。
以上の結果から、加振の荷重振幅が低い弾性領域の近似線は、次数n=2とする2次関数が最適であり、その関数の形はyを第2高調波の成分の温度振幅、xを荷重振幅とするy=ax+bが最適なのは明らかである。
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4では、散逸エネルギーを測定工程21で抽出された結果から疲労限度応力を特定する疲労限度応力特定工程22で用いられる近似線は、y=ax+bで表される多項式と直線の交点から疲労限度応力を特定する疲労限度応力特定方法および疲労限度応力特定システムについて説明する。実施の形態1の図1に示した装置を使用して、加振機1aの荷重振幅は、荷重制御により0kN〜9.0kNまで0.1kN毎に引張荷重を変えて測定した。ここで加振による基本周波数は25Hz一定とした。多項式y=ax+bは、実施の形態3において、次数n=2が最適であることが求められたので、ここでは疲労限度応力以上の荷重振幅における近似線について1次関数、2次関数、3次関数、4次関数での近似を行い、どの次数の関数で近似した場合が、フィッティングが最適か検証した。そして、荷重振幅が増加すると、エネルギーの散逸も増加し、測定される第2高調波の成分の温度振幅も増加すると考えられるので、近似する関数はyを第2高調波の成分の温度振幅、xを荷重振幅とすると、1次関数はy=ax+b、2次関数はy=ax+b、3次関数はy=ax+b、4次関数はy=ax+bとした。試験片はノッチ半径5mmを3本用いて散逸エネルギーを測定した。なお、使用したデータ範囲は6.4kN〜9.0kNである。またそれぞれの近似関数のデータに対する自由度調整済み決定係数もしくはGauss - Newton法により、最適な関数の次数および多項式を求めた。表4に近似関数のデータに対する自由度調整済み決定係数の相乗平均を示す。
表4の結果から、1次関数近似による多項式回帰が最も良いモデルとなった。次に非線形関数のフィッティングとして用いられる、Gauss - Newton法を用いてフィッティングを行った。近似する関数の形はyを第2高調波の成分の温度振幅、xを荷重振幅とすると、y=c+cである。Gauss - Newton法を用いてフィッティングを行った結果を表5に示す。
表5の結果から、次数n=1に最も近い値が得られた。以上の結果から、疲労限度応力以上の荷重振幅においては、1次関数、すなわち直線で近似することが最適であり、y=ax+bで表される多項式と直線によって近似されることは明らかである。
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5では、2本の近似線は、2本の近似線とデータのフィッティングによって求められる残渣の二乗和が最小になるように近似される疲労限度応力特定方法および疲労限度応力特定システムについて説明する。実施の形態1の図1に示した装置を使用して、加振機1aの荷重振幅は、荷重制御により0kN〜9.0kNまで0.1kN毎に引張荷重を変えて測定した。加振による基本周波数は25Hz一定とした。試験片1bはノッチ半径5.0mm、2.0mm、1.0mmを用いて検証した。疲労限度応力特定に用いた近似線は、実施の形態3および実施の形態4で最適な関数の形態として求めたy=ax+bで表されるn=2の多項式と直線はy=cx+dである。2つの近似線は荷重振幅の低い方から最低3つのデータとその他のデータに対してフィッティングされ残差の二乗和を求める。次に荷重振幅の低い方から一つデータを加えた4つのデータとその他のデータに対してフィッティングされ残差の二乗和を求める。このようにデータを一つずつ増やしながら残差の二乗和を求めた。残差の二乗和が最小となる近似線の組み合わせが取得データに対して最適な近似線の組み合わせであり、この手法によって求められた2つの近似線の交点から求められた疲労限度応力の特定値と疲労試験によって求められた疲労限度応力を表6に示す。また参考までに従来方法である2本の直線による近似線の交点によって求められた疲労限度応力とCuraらによる多項式と直線の近似線の交点によって求められた疲労限度応力を示す。
表6の結果から、2本のy=ax+bで表されるn=2の多項式と直線はy=cx+dである近似線は、2本の近似線とデータのフィッティングによって求められる残渣の二乗和が最小になるように近似される2本の近似線の交点から求めることで疲労限度応力を精度よく求められることは明らかである。
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6では、横軸に前記加振の基本周波数の成分である温度振幅、縦軸に前記第2高調波の成分である温度振幅をプロットすることによって求められる疲労限度応力特定方法および疲労限度応力特定システムについて説明する。赤外線カメラ1cは、Cedip社のSilver480Mを用いた。また、加振機1aとしては、油圧サーボ疲労試験機(島津製作所,サーボパルサ,最大試験能力:10kN)を用い、加振機1aの荷重振幅は、荷重制御により0kN〜9.0kNまで0.1kN毎に引張荷重を変えて測定した。加振による基本周波数は25Hz一定とした。試験片1bはノッチ半径5.0mm、2.0mm、1.0mmを用いて検証した。表7に、疲労試験から求めた疲労限度応力と横軸に加振荷重、縦軸に第2高調波の温度振幅成分でプロットしたグラフから求めた疲労限度応力と、横軸に基本周波数の温度振幅成分、縦軸に第2高調波の温度振幅成分をプロットしたグラフから求めた疲労限度応力を比較した結果を示す。なお、近似線はy=ax+bで表されるn=2の多項式と直線はy=cx+dである2本の近似線を用いてフィッティングし、2本の近似線の最小二乗和が最小となる組み合わせの近似線の交点から疲労限度応力は求めた。
表7の結果から、横軸に加振の基本周波数の成分である温度振幅、縦軸に前記第2高調波の成分である温度振幅をプロットすることによって疲労限度応力の特定精度が向上することは明らかである。
(実施の形態7)
本発明の実施の形態7では、疲労限度応力を特定する疲労限度応力特定工程22で用いられる前記2本の近似線は、2本の近似曲線の自由度調整済み決定係数Rの相乗平均が最大になる場合のデータ範囲を用いることによって求められる疲労限度応力特定方法および疲労限度応力特定システムについて説明する。実施の形態1の図1に示した装置を使用して、加振機1aの荷重振幅は、荷重制御により0kN〜9.0kNまで0.1kN毎に引張荷重を変えて測定した。加振による基本周波数は25Hz一定とした。試験片1bはノッチ半径5.0mmを用いて検証した。疲労限度応力特定に用いた近似線は、実施の形態3および実施の形態4で最適な関数の形態として求めたy=ax+bで表されるn=2の多項式と直線はy=cx+dである。実施の形態5で用いた2本の近似線とデータのフィッティングによって求められる残渣の二乗和が最小になるように近似すると同時にデータの使用上限を1つずつ減らし、そのたび二本の直線の決定係数を求めていき、二本の近似線の自由度調整済み決定係数の相乗平均が最大の場合のデータの使用上限を求めることによって最適なデータ範囲を求めることが可能である。表8に二本の近似線の自由度調整済み決定係数の相乗平均と疲労試験で求めた疲労限度応力との差を示す。
表8から、最大荷重値から3つのデータを除去した場合が最も二本の直線の自由度調整済み決定係数の相乗平均が最大の1に近くなり、過大な荷重振幅での微小き裂など不自然な第2高調波の成分の温度振幅の上昇が本手法によって除去できていることがわかる。
図12(a)に過大な荷重振幅での微小き裂など不自然な第2高調波の成分の温度振幅の上昇を含んだ状態で残差の二乗和が最小になる近似線を引いた図を示す。また図12(b)に表8の結果を反映させて不自然な第2高調波の成分の温度振幅の上昇を除去した状態で残差の二乗和が最小になる近似線を引いた図を示す。この結果から、残差の二乗和が最小かつ自由度調整済み決定係数の相乗平均が最大になるような二本の近似線をフィッティングし、更に自由度調整済み決定係数の相乗平均が最大になるようなデータ範囲を用いることによって最適な近似線を引くことが可能であり、その2本の近似線の交点から疲労限度応力を特定可能であることは明らかである。
(実施の形態8)
本発明の実施の形態8では、実施の形態1〜7まで説明した疲労限度応力特定方法をシステムとして構築した疲労限度応力特定システムを用いて疲労限度応力を特定した。実施の形態1の図1に示した装置を使用して、加振機1aの荷重振幅は、荷重制御により0kN〜9.0kNまで0.1kN毎に引張荷重を変えて測定した。加振による基本周波数は25Hz一定とした。試験片1bはノッチ半径5.0mm、2.0mm、1.0mmを用いて検証した。加振機1aを用いて荷重を段階的に増加させ、荷重毎に発生する温度振幅を赤外線カメラ1cで取得し、取得した画像をフーリエ変換して、加振の基本周波数と第2高調波の温度振幅成分を抽出し、2次元画像としてデータ化した。次に第2高調波の成分の画像から温度振幅の高い領域について横軸に荷重、縦軸に基本周波数の温度振幅成分のグラフを作成し、その傾きが大きなピクセルを選び出す。選び出したピクセルについて、横軸に基本周波数である主応力和、縦軸に第2高調波の成分を荷重の低い順番にプロットする。プロットされたデータについて、荷重の低い領域は、y=ax+bで表されるn=2の多項式と直線y=cx+dでデータに対しGauss - Newton法を用いてフィッティングを行い、2つの近似線の残差の二乗和が最小でかつ自由度調整済み決定係数の相乗平均が最大になる条件を満たす近似線を求めた。その2つの近似線の交点から疲労限度応力を求めた。このような手法で求めた疲労限度応力を疲労試験の結果の比較を表9に示す。
以上の結果から、疲労限度応力を精度よく特定可能なのは明らかである。
なお、上記の各実施の形態では、加振の基本周波数の成分およびその第2高調波の成分の温度振幅を取得し、前記第2高調波の成分の温度振幅画像の最大を示す領域内において、加振の基本周波数の成分の温度振幅画像に対する荷重特性の傾きが最大であるピクセル領域の散逸エネルギーを抽出したが、測定対象物の形状や材質、測定対象物の実際の使用条件などによっては、第3高調波あるいはそれよりも高次の高調波の成分の温度振幅画像に基づいて散逸エネルギーを抽出することも有効である。
本発明にかかる疲労限度応力特定システムおよび疲労限度応力特定方法は、基本的な散逸エネルギーによる疲労限度応力特定プロセスを標準化し、システム化することで誰にでも高精度に散逸エネルギー測定が可能になり、従来の疲労試験と同等な精度かつ短時間で正確な疲労限度応力を求められるため、製品の強度における信頼性を効率よく向上させる上で有用である。
1a 加振機
1b 試験片
1c 赤外線カメラ
1d 情報処理装置
1e モニタ
2a 加振周波数と同一周波数の繰り返し温度変化
2b 外乱の温度変化
2c エネルギー散逸によって生じる平均温度上昇
21 散逸エネルギー測定工程
22 疲労限度応力特定工程

Claims (9)

  1. 測定対象物に作用させる荷重を段階的に増加させ、前記荷重毎に発生する前記測定対象物の温度振幅を測定する疲労限度応力特定システムであって、
    測定対象物に対して荷重を繰り返し加える加振機と、
    前記測定対象物の温度画像を得る赤外線カメラと、
    前記赤外線カメラから得た前記測定対象物の温度画像を処理するフーリエ変換手段を有する情報処理装置とを備え、
    前記情報処理装置は、
    散逸エネルギーを測定する散逸エネルギー測定工程と、
    前記散逸エネルギー測定工程から得られた測定結果から疲労限度応力を特定する疲労限度応力特定工程を有し、
    前記散逸エネルギー測定工程は、
    前記赤外線カメラが撮影した温度画像より、加振の基本周波数の成分および第2高調波成分の温度振幅画像を取得し、
    前記第2高調波の成分の温度振幅画像の最大を示す領域内において、前記基本周波数の成分の温度振幅画像に対する荷重特性の傾きが最大であるピクセル領域の散逸エネルギーを抽出する、
    疲労限度応力特定システム。
  2. 前記疲労限度応力特定工程は、
    横軸に前記加振の基本周波数の成分である温度振幅、縦軸に前記第2高調波の成分である温度振幅をプロットすることを特徴とする、
    請求項1記載の疲労限度応力特定システム。
  3. 前記疲労限度応力特定工程は、
    自由度調整済み決定係数もしくはGauss - Newton法によって求められる2本の近似線の交点から疲労限度応力を特定することを特徴とする、
    請求項2記載の疲労限度応力特定システム。
  4. 前記疲労限度応力特定工程で用いられる近似線は、y=ax+bで表される多項式と直線であることを特徴とする、
    請求項3記載の疲労限度応力特定システム。
  5. 前記y=ax+bで表される多項式の次数nは2であることを特徴とする、
    請求項4記載の疲労限度応力特定システム。
  6. 前記疲労限度応力特定工程において、前記直線はy=cx+dで表されることを特徴とする、
    請求項4記載の疲労限度応力特定システム。
  7. 前記2本の近似線は、2本の近似線とデータのフィッティングによって求められる残渣の二乗和が最小になるように近似されることを特徴とする、
    請求項3〜6の何れかに記載の疲労限度応力特定システム。
  8. 前記2本の近似線は、2本の近似曲線の自由度調整済み決定係数Rの相乗平均が最大になる場合のデータ範囲を用いることによって求められることを特徴とする、
    請求項3〜7の何れかに記載の疲労限度応力特定システム。
  9. 測定対象物に作用させる荷重を段階的に増加させ、前記荷重毎に発生する前記測定対象物の温度振幅を測定する疲労限度応力特定方法であって、
    測定対象物に対して加振機によって荷重を繰り返し加え、そのときの前記測定対象物の温度画像を赤外線カメラで撮影し、
    前記赤外線カメラから得た前記測定対象物の温度画像をフーリエ変換処理して、前記赤外線カメラが撮影した温度画像より加振の基本周波数の成分および第2高調波の成分の温度振幅画像を取得し、前記第2高調波の成分の温度振幅画像の最大を示す領域内において、前記基本周波数の成分の温度振幅画像に対する荷重特性の傾きが最大であるピクセル領域の散逸エネルギーを抽出する散逸エネルギー測定工程を実行し、
    前記散逸エネルギー測定工程の測定結果から疲労限度応力を特定する疲労限度応力特定工程を実行する、
    疲労限度応力特定方法。
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