JP2016012228A - 半導体ウェーハの温度制御装置、半導体ウェーハの温度制御方法 - Google Patents
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このため、それぞれの温度調整手段に対して制御ループを設け、複数の温度調整手段によって半導体ウェーハを同時に温度制御する方法が知られている。
ここで、このような多入力多出力系の制御方法として、モデル追従サーボ制御という方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
モデル追従サーボ制御では、一般に規範モデルとして望ましい動特性を持つモデル(例えば2次遅れ系)を選ぶ。
そのため、目標値応答はそのモデルのステップ応答を参照軌道として制御量を追従させることになる。
複数の温度調整手段により半導体ウェーハの温度を調整するために、前記複数の温度調整手段の温度制御を行う半導体ウェーハの温度制御装置であって、
前記複数の温度調整手段のそれぞれに設定された複数の制御ループと、
それぞれの制御ループに設けられ、それぞれの温度調整手段で温度調整された半導体ウェーハの温度を検出する複数の温度検出手段と、
それぞれの温度検出手段で検出された温度に基づいて、それぞれの制御ループの温度調整手段に与える操作量を演算する操作量演算手段とを備え、
前記操作量演算手段は、
前記複数の制御ループのうち、最も応答速度の遅い制御ループの操作量を100%として、他のループはこれに追従するように制御された応答から生成された規範モデルと、
前記規範モデルを用い、目標温度に最短時間で到達させるための操作量パターンを探索する最適操作量パターン探索手段と、
前記規範モデルに対して、前記最適操作量パターン探索手段で探索された最適操作量パターンの操作量を与える規範モデル出力生成手段と、
前記規範モデル出力生成手段によって得られた前記規範モデルの出力を、規範モデル出力として使用するモデル追従サーボ演算手段とを備えていることを特徴とする。
前記最適操作量パターン探索手段は、目標温度をSV、時間tにおける応答出力をPVとしたときに、式(1)で与えられる評価関数Jが最小となる時間を最短時間とすることを特徴とする。
複数の温度調整手段により半導体ウェーハの温度を調整するために、前記複数の温度調整手段の温度制御を行う半導体ウェーハの温度制御方法であって、
前記複数の温度調整手段の温度制御を行う温度制御装置は、
前記複数の温度調整手段のそれぞれに設定され、互いに独立した複数の制御ループと、
それぞれの制御ループに設けられ、それぞれの温度調整手段で温度調整された半導体ウェーハの温度を検出する複数の温度検出手段と、
それぞれの温度検出手段で検出された温度に基づいて、それぞれの制御ループの温度調整手段に与える操作量を演算する操作量演算手段とを備え、
前記操作量演算手段は、
前記複数の制御ループのうち、最も応答速度の遅い制御ループの操作量を100%として、他のループはこれに追従するように制御された応答から生成された規範モデルを用い、目標温度に最短時間で到達させるための操作量パターンを探索する手順と、
前記規範モデルに対して、前記最適操作量パターン探索手段で探索された最適操作量パターンの操作量を与えて規範モデルの出力を生成する手順と、
得られた前記規範モデルの出力を、規範モデル出力として使用するモデル追従サーボ演算を実行して制御対象への操作量を演算する手順とを実施することを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、前述の第1の態様と同様の作用及び効果を享受することができる。
[1]温度調整装置1の構成
図1には、本発明の第1実施形態に係る温度調整装置1が示されている。温度調整装置1は、プレート状のステージ2上に載置されたシリコンウェーハWの温度を目標温度に制御し、シリコンウェーハWの面内の温度分布を制御するための装置である。この温度調整装置1は、たとえばドライプロセスに使用される。
温度調整装置1は、プレート状のステージ2であり、温度調整手段3を備えている。尚、温度調整手段3としては、加熱冷却制御を行う場合は、チラー装置や熱電素子を採用するのが好ましく、専ら加熱制御だけの場合は、加熱用ヒータを採用することができる。
ドライプロセス時には、真空チャンバー4内は真空引きされ、所定の低圧状態に維持される。
ステージ2内には、図2(A)、(B)に示されるように、ステージ2上に載置されたシリコンウェーハWの面内温度分布を調整できるように、複数の温度調整手段3が配置されている。
図2(B)は、ステージ2の平面図であり、ステージ2は、同心円状に3つのゾーン2A(後述するゾーン1)、2B(後述するゾーン2)、2C(後述するゾーン3)に分割され、各領域に温度調整手段3が配置される。また、プレート5内の温度センサ6は、温度調整手段3に応じた位置に配置される。
図3には、本実施形態に係るコントローラ24のブロック図が示されている。コントローラ24は、操作量演算部30を備える。この操作量演算部30は、規範モデル出力生成部31、偏差算出部32、積分器33、及び偏差算出部34を備え、一般的なモデル追従制御を実施する。また、ステージ2の温度センサ6からの出力には、状態フィードバックゲインK1、規範モデル出力生成部31からの出力には、状態フィードフォワードゲインK2、及び積分器33に対するゲインK3が設定されている。尚、各ブロック図の各要素に対する入出力は、以下に示されるものである。
r:目標温度
yr:参照軌道
xr:規範モデルの状態量
e:偏差
u:操作量
y:制御量(温度)
xp:制御対象の状態量
なお、図3では制御対象の状態量xpは制御対象より直接観測可能としているが、観測できない場合は推定器等を用いた推定値をxpの代わりに用いてもよい。
各部のゲイン(K1,K2,K3)は最適制御の手法を用いて決定する。本手法を用いれば最適制御の長所(安定性の保証、ロバスト性)を持ち、かつ非干渉化を考慮することなく取り入れることができ、本制御対象のような干渉のある多入力多出力系には好適である。
しかしながら、プロセスのスループットを増加させるために制御対象の能力を最大限に使用するためには、従来のモデル追従制御では、以下のような問題がある。
すなわち、詳しくは後述するが、多入力多出力系の制御において、それぞれの制御ループの応答速度が異なり、いずれかの制御ループの操作量に飽和が発生すると、飽和が発生した制御ループの制御量が参照軌道に追従できず、過渡状態でのループ間の制御量の均一性が維持できない場合が発生するという問題がある。
しかし、その結果得られる参照軌道は、あくまでその伝達関数のステップ応答であり、制御系の操作量からみると、「目標温度にできるだけ早く到達する」という要求仕様のためには、操作量をできる限り飽和させて、すなわち最大出力で目標値を目指すのが望ましい。
そこで、要求仕様を満たす理想的な応答をまず説明し、次いでその応答を実現する。
最終目標値SVに最短時間で到達させるための操作量パターンは、図4に示すように、途中のポイントXまでは最大操作量で加速し、XからSVまでは最小操作量で減速させ、SV到達後はその位置を維持するために必要な操作量MVssに切り替える方法である。
多入力多出力系の場合、図5(B)の様な操作量パターンが制御ループの数だけ必要となり、しかも各制御ループの制御量が、干渉下で均一にならなければ追従するための参照軌道も均一にならない。このような操作量パターンをステップ状信号の組み合わせだけで作るのは非常に困難となるため次に示す方法をとることとした。
(2)(1)で得られた応答波形のうち一番遅い制御ループを選び、これをステップ入力による応答と仮定し、システム同定によって無駄時間+1次遅れ系の規範モデルGm(s)を得る。
(3)(2)で得た規範モデルGm(s)に対して、最適時間制御を実現する操作量パターンを逐次シミュレーションで決定する。ここでは最大操作量から定常時操作量に制御開始からt1秒後に切り替えるものとしてt1の最適値を探索する。
最適値の探索に用いる評価関数としては、例えば下記式(5)で表されるIAE(Integral of Absolute Error) 評価規範を採用し、評価関数が最小になるような操作量パターンを探索する。
このため、目標温度SVから操作量パターンMVrefへ対応させる必要がある。
シミュレータ31Aは、目標温度SVが入力された時点で、切り替え時間の逐次探索を実施し、操作量パターンMVrefを決定する。尚、本実施形態では、シミュレータ31Aを用いて、オンラインで逐次探索を実施して最適時間を求めているが、これに限らず、予め制御対象等で目標温度SVと、その目標温度に最短で達する最適時間とを対応させた操作量パターンのテーブルを準備しておき、目標温度SVが入力されたら、このテーブルを参照して最適操作量パターンを探索するようにしてもよい。
次に、本実施形態における制御演算の手順を、図7に示されるフローチャートに基づいて説明する。
各ゾーンの目標温度SVが規範モデル出力生成部31に入力されると(手順S1)、シミュレータ31Aによって最適操作量パターンが探索される (手順S2) 。
探索によって得られた最適操作量パターンは、規範モデル31Bに入力され、規範モデル出力として参照軌道yr、規範モデル状態量xrが生成される(手順S3)。
参照軌道yrと各ゾーンの温度センサ6からの出力yから偏差eを生成する(手順S4)。
制御対象状態量xp、規範モデル状態量xr、さらに手順S4で求めた偏差eの積分値に対して、それぞれゲインK1、K2、K3を乗じて、それらを加減算したものを操作量uとする(手順S5)。操作量uを各ゾーン1〜ゾーン3の温度調整手段3に出力する(手順S6)
[4-1]シミュレーションにおける制御システムの構成
3入力3出力系の制御を、図8に示した制御システムをモデル化したシミュレーション結果を例に説明する。この制御システムは、図9に示されるように、400×150×t4のアルミプレートの温度を制御するシステムであり、アクチュエータとして加熱・冷却可能なサーモモジュールを、3個を使用している。アルミプレートの温度はモジュールの近くに配した3つのK熱電対によって測定する。サーモモジュール及び熱電対はプレート長手方向に対してわざと非対称になるように配置しており図9にその寸法詳細を示す。左からゾーン1、2、3とする。
このテストプラントに対してモデル追従制御コントローラを設計し、目標値応答制御実験として平衡温度約25℃から目標温度50℃までの加熱実験を行った。目標値応答特性の結果を図10に示す。図10(A)は、各ゾーンの温度(PV1,PV2,PV3)、規範モデルの参照軌道(SVF1)、及び均一性を示すゾーン間の温度差(dPV)である。尚、ゾーン間温度差dPVは、その時刻での最大のゾーン温度と最小のゾーン温度の差である。図10(B)は、各ゾーンへの操作量である。
ここで、規範モデルには、2次遅れ系を使用し、操作量が飽和しない応答として固有角周波数ω0=45(rad/sec)、減衰係数ζ=0.9とした。図10からわかるように、各ゾーン1〜3の温度は参照軌道に非常に良く追従しており、ゾーン間温度差も最大0.35℃と小さい。また、操作量は各ゾーン1からゾーン3とも飽和しない範囲に収まっている。
ところが、操作量飽和のためゾーン3は、これ以上の速度を出すことができず、ゾーン1、2に対して、参照軌道への追従が遅れ、その結果ゾーン間の温度均一性が過渡応答中に2.1℃まで悪化している。
このように従来のモデル追従制御では多入力多出力系の制御において、操作量飽和が発生すると飽和が発生したループの制御量が参照軌道に追従できず、過渡状態でのループ間の制御量の均一性が維持できない場合が発生する。
これに対して、本実施形態について、テストプラントを用いてシミュレーションによる効果を確認したところ、以下のような結果となった。
(1)最大速度応答の測定
図12に制御対象が均一性を保持しながら達成可能な最大速度応答波形を示す。図中PV1〜PV3は、ゾーン1〜3の温度、MV1〜MV3は、ゾーン1〜3に与える操作量、dPVは均一性である。
これは、たとえば速度の一番遅いゾーン3を最大操作量で固定してマスターとし、残りの2ゾーンをスレーブとしたPID制御で容易に実現できる。
ゾーン3の操作量が最大であることより、これ以上速い応答は望めない。ゾーン間の温度差は最初の50秒以後はほぼ0.1℃以下であることがわかる。
この応答のうちのゾーン3の波形を、ステップ応答とみなしてむだ時間+1次遅れ系に同定した結果、下記式(7)で与えられる規範モデルGm(s)を得た。
図13(A)には操作量パターンが示され、図13(B)には式(7)の規範モデル出力が示されている。式(5)で与えられる評価関数(図13(B)の斜線部分)を用いて、
逐次探索シミュレーションによりΔT=25℃に対する切り替え切換時間の最適値は148秒であることがわかった。
また、定常時の操作量は、25/44.2=0.566であることがわかった。
Claims (3)
- 複数の温度調整手段により半導体ウェーハの温度を調整するために、前記複数の温度調整手段の温度制御を行う半導体ウェーハの温度制御装置であって、
前記複数の温度調整手段のそれぞれに設定された複数の制御ループと、
それぞれの制御ループに設けられ、それぞれの温度調整手段で温度調整された半導体ウェーハの温度を検出する複数の温度検出手段と、
それぞれの温度検出手段で検出された温度に基づいて、それぞれの制御ループの温度調整手段に与える操作量を演算する操作量演算手段とを備え、
前記操作量演算手段は、
前記複数の制御ループのうち、最も応答速度の遅い制御ループの操作量を100%として、他のループはこれに追従するように制御された応答から生成された規範モデルと、
前記規範モデルを用い、目標温度に最短時間で到達させるための操作量パターンを探索する最適操作量パターン探索手段と、
前記規範モデルに対して、前記最適操作量パターン探索手段で探索された最適操作量パターンの操作量を与える規範モデル出力生成手段と、
前記規範モデル出力生成手段によって得られた前記規範モデルの出力を規範モデル出力として使用するモデル追従サーボ演算手段とを備えていることを特徴とする半導体ウェーハの温度制御装置。 - 複数の温度調整手段により半導体ウェーハの温度を調整するために、前記複数の温度調整手段の温度制御を行う半導体ウェーハの温度制御方法であって、
前記複数の温度調整手段の温度制御を行う温度制御装置は、
前記複数の温度調整手段のそれぞれに設定され、互いに独立した複数の制御ループと、
それぞれの制御ループに設けられ、それぞれの温度調整手段で温度調整された半導体ウェーハの温度を検出する複数の温度検出手段と、
それぞれの温度検出手段で検出された温度に基づいて、それぞれの制御ループの温度調整手段に与える操作量を演算する操作量演算手段とを備え、
前記操作量演算手段は、
前記複数の制御ループのうち、最も応答速度の遅い制御ループの操作量を100%として、他のループはこれに追従するように制御された応答から生成された規範モデルを用い、目標温度に最短時間で到達させるための操作量パターンを探索する手順と、
前記規範モデルに対して、前記最適操作量パターン探索手段で探索された最適操作量パターンの操作量を与える手順と、
得られた前記規範モデルの出力を、規範モデル出力として使用するモデル追従サーボ演算を実行して制御対象への操作量を演算する手順とを実施することを特徴とする半導体ウェーハの温度制御方法。
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