JP2016010753A - 粉体の製造方法 - Google Patents

粉体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016010753A
JP2016010753A JP2014133073A JP2014133073A JP2016010753A JP 2016010753 A JP2016010753 A JP 2016010753A JP 2014133073 A JP2014133073 A JP 2014133073A JP 2014133073 A JP2014133073 A JP 2014133073A JP 2016010753 A JP2016010753 A JP 2016010753A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solvent
powder
substance
surface area
specific surface
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014133073A
Other languages
English (en)
Inventor
真也 山中
Shinya Yamanaka
真也 山中
良壽 空閑
Yoshihisa Kuga
良壽 空閑
敏行 藤本
Toshiyuki Fujimoto
敏行 藤本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Muroran Institute of Technology NUC
Original Assignee
Muroran Institute of Technology NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Muroran Institute of Technology NUC filed Critical Muroran Institute of Technology NUC
Priority to JP2014133073A priority Critical patent/JP2016010753A/ja
Publication of JP2016010753A publication Critical patent/JP2016010753A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Disintegrating Or Milling (AREA)
  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)

Abstract

【課題】粉砕助剤を用いるのとは異なる処理によって微粒子を取得し易くする。【解決手段】溶媒への溶解し易さが相対的に異なる易溶解領域と難溶解領域が粉砕後の粉砕物中の各粒子に生じるように金属化合物の結晶を含む物質に乾式粉砕処理を施す(S1)。最終的に得られる粉体の比表面積が大きくなるように溶媒を調整する(S2)。乾式粉砕処理後の粉砕物に調整後の溶媒を添加する(S3)。粉体を溶媒中から取得する(S4)。【選択図】図1

Description

本発明は、金属化合物の結晶を含む物質を乾式粉砕処理する粉体の製造方法である。
金属化合物を粉砕する方法として、乾式粉砕法が広範囲に用いられている。しかし、乾式粉砕法を用いると、通常、1マイクロメートル未満の大きさ、つまり、ナノメートルサイズの微粒子(以下、ナノ粒子ともいう)を得ることは極めて困難である。乾式粉砕処理を継続すると、粉砕され混ざり合った粒子同士が凝集することで粒子サイズが大きくなる、逆粉砕と呼ばれる現象が生じること等の理由からである。
このような乾式粉砕法の欠点を補うため、粉砕時に粉砕助剤を添加する手法が用いられている。特許文献1においては、粉砕助剤として、メタノール、エタノール等のアルコール類や、ヘキサン、トルエン、アセトン等の低温で揮発する液体が用いられている。添加時に液体である粉砕助剤は、添加時に気体である粉砕助剤と比べて取り扱い易いと考えられる。また、添加後に揮発するので固体や液体のままの助剤と比べて分散性に優れていると考えられる。
特開2003−305378号公報
しかし、揮発性の高い粉砕助剤を用いるとしても、添加時においては液状である。このため、気体の助剤を添加する場合と比較して分散性が低い。一方、液体や固体の粉砕助剤と比べて気体の助剤は取り扱いが困難である。このように、どのような形態の粉砕助剤を用いるとしても、分散性や扱い易さの点でそれぞれ問題がある。このことから、粉砕助剤を用いたとしても、微粒子(特に、ナノ粒子)を得る方法としては限界がある。
本発明の目的は、粉砕助剤を用いるのとは異なる処理によって微粒子を取得し易くした粉体の製造方法を提供することにある。
本発明者は、乾式粉砕法によってナノ粒子を取得できない理由について鋭意研究した結果、以下のような知見に到達した。粉砕後の物質においては、互いに性質の異なる2つの領域からなる比較的大きな粒子が形成される。種々の実験結果から、かかる2つの領域の一方は結晶質部からなる領域であり、他方は非晶質部からなる領域であると考えられる。結晶質部は単結晶又は多結晶から主に構成される。これに対し、非晶質部は結晶構造を有しない領域から主に構成される。粉砕によって結晶質部がある程度微粒子になったとしても、かかる結晶質部同士が非晶質部からなる領域を介して互いに凝集していることで、全体として大きな粒子となっている。このため、乾式粉砕法では最終的にナノ粒子が取得されにくいのはこのような理由によると考えられる。
一方、非晶質部は主に結晶構造を有しない領域からなることから、結晶質部より水などの溶媒に溶解し易い。このため、粉砕後に生じる粉砕物の各粒子中には、溶媒への溶解し易さが相対的に異なる2つの領域が含まれていることになる。
上記知見に基づき、本発明者は、乾式粉砕法を用いつつも微粒子の粉体を取得し易い以下の粉体の製造方法に到達した。すなわち、金属化合物の結晶を含む物質の粉体を取得する粉体の製造方法であって、溶媒への溶解し易さが相対的に異なる易溶解領域と難溶解領域が粉砕後の粉砕物中の各粒子に生じるように前記物質に乾式粉砕処理を施す粉砕工程と、溶媒を調整する調整工程と、前記乾式粉砕処理後の前記粉砕物に調整後の前記溶媒を添加する添加工程と、前記物質の前記粉体を前記溶媒中から取得する取得工程とを備えており、前記調整工程において、前記取得工程で取得される前記粉体の比表面積が大きくなるように前記溶媒を調整する。
本発明によれば、まず、乾式粉砕によって粉砕後の粉砕物中の各粒子に、溶媒に溶解し易い易溶解領域と溶解しにくい難溶解領域を生じさせる。そして、粉砕後の粉砕物に溶媒を添加することで、易溶解領域を溶媒中に溶解させる。このとき、溶媒は、最終的に取得される粉体の比表面積が大きくなるように調整しておく。調整の方法としては、易溶解領域が溶解し易くなるように調整してもよい。この調整は、例えば温度やpHに関する。易溶解領域が溶媒に溶解していくと、各粒子中には主に難溶解領域が残る。このため、粉体中には、主に難溶解領域からなる微粒子が生じ易くなる。溶媒調整工程において、最終的に取得される粉体の比表面積が大きくなるように調整するため、比表面積が大きい粉体を取得できる。
このように、本発明によれば、粉砕助剤を用いるのとは異なる処理によって微粒子の粉体を取得し易くした粉体の製造方法が実現する。
また、本発明においては、前記調整工程において、前記溶媒の温度及びpHの少なくともいずれかを調整することが好ましい。これによると、例えば、易溶解領域が溶媒の温度変化に応じて溶け易くなる場合には、易溶解領域が溶媒に溶解し易くなるように溶媒の温度を変化させる。また、金属化合物の酸性、塩基性の度合いに応じて、粉体の比表面積が大きくなるようなpHに溶媒を調整する。これらによって、微粒子の粉体を得ることができる。
また、本発明においては、前記調整工程において、前記物質が温度上昇に応じて前記溶媒への溶解度が高くなる物質である場合には前記溶媒を加熱し、前記物質が温度上昇に応じて前記溶媒への溶解度が低くなる物質である場合には前記溶媒を冷却することが好ましい。これによると、溶媒の温度変化に対する物質の溶解度の変化に応じて溶媒の温度を変化させることにより、易溶解領域を溶媒に溶け易くできる。温度変化に対して溶解度がどのように変化するかは多くの物質においてあらかじめ知られている。このため、温度変化に対する易溶解領域の溶け易さを実際に調べなくても、すでに存在する知識に基づいて易溶解領域が溶け易くなるように溶媒を調整できる。
また、本発明においては、前記金属化合物が、無機炭酸塩及び金属酸化物の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
また、本発明においては、前記溶媒の主成分が水であってもよい。溶媒が水の場合に、比表面積の大きい微粒子の粉体が得られることが確認されている。
また、本発明においては、前記物質が貝殻である場合に、前記溶媒の温度が5℃〜60℃であることが好ましい。貝殻を粉砕する場合には、水の温度が5℃〜60℃の範囲で微粒子の粉体を多く取得できる。
また、本発明においては、前記物質が貝殻である場合に、前記調整後の溶媒のpHが0.5〜7.0における値までの範囲であることが好ましい。貝殻を粉砕する場合、pHの条件としては、水のpHが0.5〜7.0における値の範囲で微粒子の粉体を多く取得できる。
また、本発明においては、前記調整工程において、前記金属化合物が酸化アルミニウムである場合に、前記溶媒の温度を40℃以上まで加熱することが好ましい。酸化アルミニウムの結晶を含む物質を粉砕する場合には、前記水の温度を40℃以上まで加熱した際に微粒子の粉体を多く取得できる。
図1は、本発明の粉体の製造方法のフロー図である。 図2は、金属化合物の結晶を含む物質の粒子状態に関するモデルを説明する模式図である。 図3は、実施例1及び比較例1において炭酸カルシウム粉体の比表面積を測定した結果を示すグラフである。 図4は、実施例2及び比較例2において炭酸ストロンチウム粉体の比表面積を測定した結果を示すグラフである。 図5は、実施例3及び比較例3において炭酸マグネシウム粉体の比表面積を測定した結果を示すグラフである。 図6は、実施例4において酸化アルミニウム粉体の比表面積を測定した結果を示すグラフである。 図7は、実施例5において炭酸カルシウム粉体の比表面積を測定した結果を示すグラフである。 図8は、実施例6において炭酸カルシウム粉体の比表面積を測定した結果を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る粉体の製造方法について、図1及び図2を参照しつつ説明する。本粉体の製造方法は、金属化合物の結晶を含む物質から粉体を取得する方法である。粉砕対象となる物質(以下、「対象物質」とする)としては、貝殻などの自然界に存在する物質も含む。金属化合物としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム又は炭酸ストロンチウムなどの無機炭酸塩や、酸化アルミニウム、酸化チタンなどの金属酸化物が考えられる。
本粉体の製造方法は、図1に示すフローに従って実行される。まず、S1の乾式粉砕工程において、対象物質を乾式粉砕する。本発明の所望の効果を損なわない限り、必要に応じて適宜粉砕助剤を添加することができる。乾式粉砕は、ボールミル、ジェットミル、振動ミル等、従来公知の任意の方法を用いることができる。例えばボールミルを採用する場合、ボールミルに用いるボールの素材(ジルコニア、ステンレス等)、サイズ、及び直径、並びに、ボールミルの回転数及び粉砕時間は、粉砕によって得られる粉体の比表面積が大きくなるように適宜調整されることが望ましい。比表面積は、粉体に含まれる粒子の単位質量当たりの表面積のことである(m2/g)。粉体中の粒子が小さくなると単位質量当たりの粒子の表面積は大きくなる。このため、比表面積は粒子の大きさの指標となる。
次に、S2の溶媒調整工程において、S1の工程後の粉砕物に添加する溶媒について、温度、pHなどを調整する。なお、本実施形態においては、水を使用しているが、対象物質の特性により、水を主成分とするものでなくともよい。温度を調整する場合、対象物質が温度上昇に応じて溶媒への溶解度が高くなる物質であるときには溶媒を加熱する。一方、対象物質が温度上昇に応じて前記溶媒への溶解度が低くなる物質であるときには溶媒を冷却する。pHの調整には、硝酸、酢酸、塩酸等の酸の添加や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基の添加、又は脱塩精製により水を蒸留水に調製することで行う。蒸留水の場合、pHが7.0付近に調整されることになる。対象物質が貝殻である場合には、溶媒の温度は5℃〜60℃であることが好ましい。また、溶媒のpHが0.5〜7.0の範囲であることが好ましい。対象物質に含まれる金属化合物が酸化アルミニウムである場合には、溶媒の温度を40℃以上まで加熱することが好ましい。なお、S2の工程を行うタイミングはS1の後に限らない。この工程は、S3の工程より前であればいつ行ってもよく、例えば、S1と並列に行ってもよい。
S3の溶媒添加工程において、S1の工程で取得した粉砕物にS2の工程で調整した溶媒を添加する。添加した後、対象物の種類によっては、粉砕物を溶解するために、適切な時間、静置、あるいは撹拌などを行ってもよい。S4の粉体取得工程において、S3の工程で得られた粉砕物と溶媒の混合物から粉体を取得する。S4の工程としては、混合物に遠心分離、濾過、フィルタープレスなどの固液分離を施した後に乾燥機で乾燥させてもよいし、混合物をそのまま乾燥機で乾燥又は自然乾燥させてもよい。このように、S4の工程にはさまざまな方法を用いることができる。例えば固液分離として遠心分離を行う場合には、遠心分離後、混合物から溶媒の上澄みを除去し溶媒中の沈殿物を取り出す。遠心分離の回転数及び回転時間は、粉砕物と溶媒の混合物から沈殿物を取得できるものであればよい。遠心分離後、溶媒から取り出した沈殿物質を乾燥する場合には、乾燥時間、乾燥温度について、対象物質により適宜変更できる。また、遠心分離後、溶媒から取り出した沈殿物を自然乾燥させてもよい。混合物を遠心分離すると混合物から溶媒の多くをあらかじめ除去できる。このため、固液分離を行う場合には、その後の乾燥に必要な時間を短縮できたり、乾燥に投入するエネルギーを削減できる場合がある。
次に、S1、S3及びS4の工程における対象物質の粒子状態に関するモデルについて説明する。後述の実施例と矛盾しないモデルとして、図2に示すようなモデルが推定される。対象物質1から、S1の乾式粉砕工程によりある程度微小な結晶質部2が生成される。結晶質部2は単結晶又は多結晶から主に構成される。しかし、かかる微粒子の結晶質部2が生成されたとしても、かかる微粒子同士が非晶質部3からなる領域を介して互いに凝集することで、粉砕の結果物としての粉砕物には全体として大きな粒子が形成されてしまう。非晶質部3は、主に、結晶構造を有しない領域からなる。乾式粉砕法で最終的にナノ粒子の粉体が取得されにくいのはこのような理由によると考えられる。
ところで、非晶質部3は結晶質部2と比べて溶媒に溶け易い。つまり、S1の乾式粉砕工程後には、溶媒への溶解し易さが相対的に異なる易溶解領域と難溶解領域の2つの領域が対象物1中に生じることになる。非晶質部3が易溶解領域に相当し、結晶質部2が難溶解領域に相当する。なお、本実施形態において易溶解領域及び難溶解領域とは、粉砕直後の粉砕物中の各粒子に生じる領域であって、溶媒への溶解し易さが粉砕直後の粒子中において相対的に異なる領域をいう。
そこで、本実施形態では、乾式粉砕法でナノ粒子の粉体が形成されにくい理由であると考えられる結晶質部2が非晶質部3を介して凝集した状態になるまで、S1の乾式粉砕工程において対象物1を粉砕する。さらに、S2の溶媒調整工程で、最終的に取得される粉体5の比表面積が大きくなるように溶媒を調整する。例えば、易溶解領域である非晶質部3が調整前に比べて溶解し易くなるように溶媒の温度を調整する。これによって、物質中に含まれる金属化合物が炭酸カルシウムなどの難溶性の物質であっても、S3の溶媒添加工程で非晶質部3が溶媒に溶解し、もって、凝集していた難溶解領域である結晶質部2が粒子4として分散する。なお、場合によっては、易溶解領域である非晶質部3が調整前に比べて溶解しにくくなるように溶媒のpH等を調整してもよい。最終的に取得される粉体5の比表面積が大きくなるように溶媒を調整すればよい。
そして、S4の粉体取得工程で、結晶質部2から主に構成される比表面積の大きい微粒子からなる粉体5を取得することができる。この方法によれば、例えば炭酸カルシウムに係る後述の実施例では、比表面積が12.4〜26.4m2/gの微粒子の粉体が得られた。比表面積が12.4〜26.4m2/gであることは、平均粒子径(比表面積球相当径)が82〜175nmであることに相当する。したがって、本実施形態によればナノ粒子が得られることが分かる。
[実施例1](炭酸カルシウムを乾式粉砕した後に水を添加した場合の比表面積)
炭酸カルシウム(比表面積0.55m2/g)とジルコニアボール(直径3mm)をあらかじめ、60℃で12時間乾燥させた。次に乾燥させた炭酸カルシウム10.0gとジルコニアボール100.0gをステンレス製のミルポット(80cm3)に投入し、遊星ボールミル装置(FRITSCH製 Premium line P−7)を用いて乾式粉砕処理した(S1)。回転数は900rpmで、15分間〜240分間(15分間、30分間、60分間、120分間及び240分間)粉砕処理した。
次に、蒸留による脱塩精製(ヤマト科学製、WG250)を水に施し、蒸留水を調製して、溶媒を調整した(S2)。粉砕後の粉砕物に蒸留水40mLを添加した(S3)。採取した混合物に3500rpmの回転速度で15分間遠心分離(久保田商事製、ユニバーサル冷却遠心機5800)を施した。遠心分離を施した混合物から上澄みを除去し、沈殿物をすぐに取り出し、60℃で一晩乾燥させ炭酸カルシウム粉体を取得した(S4)。その後、炭酸カルシウム粉体の比表面積を、窒素吸着量測定装置(日機装製、Adsotrac−DN−04)で測定した。
[比較例1](炭酸カルシウムを乾式粉砕した後に水を添加しない場合の比表面積)
実施例1に記載した乾式粉砕処理までを同様に行い、その後、実施例1と同様に比表面積を測定した。
実施例1と比較例1を比較したところ、すべての粉砕時間において、実施例1の方が比表面積の大きい粉体を取得できた(図3)。なお、図3において黒く塗りつぶされた四角は、原料の炭酸カルシウムの比表面積を示す。
[実施例2](炭酸ストロンチウムを乾式粉砕した後に水を添加した場合の比表面積)
実施例1の炭酸カルシウムを炭酸ストロンチウム(比表面積5.9m2/g)に変えて、他は実施例1と同様に処理を行った。
[比較例2](炭酸ストロンチウムを乾式粉砕した後に水を添加しない場合の比表面積)
実施例2に記載した乾式粉砕処理までを同様に行い、その後、実施例2と同様に比表面積を測定した。
実施例2と比較例2を比較したところ、すべての粉砕時間において、実施例2の方が比表面積の大きい粉体を取得できた(図4)。なお、図4において黒く塗りつぶされた四角は、原料の炭酸ストロンチウムの比表面積を示す。
[実施例3](炭酸マグネシウムを乾式粉砕した後に水を添加した場合の比表面積)
実施例1の炭酸カルシウムを炭酸マグネシウム(比表面積1.4m2/g)に変えて、他は実施例1と同様に処理を行った。
[比較例3](炭酸マグネシウムを乾式粉砕した後に水を添加しない場合の比表面積)
実施例3に記載した乾式粉砕処理までを同様に行い、その後、実施例3と同様に比表面積を測定した。
実施例3と比較例3を比較したところ、すべての粉砕時間において、実施例3の方が比表面積の大きい粉体を取得できた(図5)。なお、図5において黒く塗りつぶされた四角は、原料の炭酸マグネシウムの比表面積を示す。
[実施例4](乾式粉砕した酸化アルミニウムに異なる温度の水を添加した場合の比表面積)
酸化アルミニウム(比表面積0.8m2/g)と、ジルコニアボール(直径3mm)をあらかじめ、60℃で12時間乾燥させた。ジルコニアボール100.0gをステンレス製のミルポット(80cm3)に投入し、遊星ボールミル装置(FRITSCH製 Premium line P−7)を用いて、回転数は1000rpmで、30分間乾式粉砕処理を行った(S1)。蒸留による脱塩精製(ヤマト科学製、WG250)を水に施し、蒸留水を調製した。そして、蒸留水の温度が5℃〜70℃(5℃、20℃、40℃、50℃、60℃又は70℃)になるよう、蒸留水を冷却又は加熱することで、温度が異なる複数種類の蒸留水を用意した(S2)。
次に、粉砕処理を行った酸化アルミニウム1.0gに、S2の工程で調整した溶媒10mLを添加し、添加した溶媒と同じ温度に設定した恒温槽中に酸化アルミニウムを30分間静置した(S3)。3500rpmの回転速度で15分間、酸化アルミニウムの粉砕物と溶媒の混合物に遠心分離を施した。遠心分離を施した混合物から上澄みを除去し、沈殿物をすぐに取り出し、60℃で一晩乾燥させ、酸化アルミニウム粉体を取得した(S4)。その後、酸化アルミニウム粉体の比表面積を、窒素吸着量測定装置(日機装製、Adsotrac−DN−04)で測定した。
[比較例4](乾式粉砕せずに酸化アルミニウムに異なる温度の水を添加した場合の比表面積)
乾式粉砕処理を行っていない酸化アルミニウム(比表面積0.8m2/g)1.0gに5℃〜70℃(5℃、20℃、40℃、50℃、60℃又は70℃)に調整した蒸留水10mLを添加し、添加した蒸留水と同じ温度に設定した恒温槽中に30分間静置した。3500rpmの回転速度で15分間、酸化アルミニウムの粉砕物と溶媒の混合物に遠心分離を施した。混合物から上澄みを除去し、沈殿物をすぐに取りし、60℃で一晩乾燥させ、酸化アルミニウム粉体を取得した。
実施例4と比較例4を比較すると、40℃以上の蒸留水で、実施例4の酸化アルミニウム粉体の方が、比表面積が飛躍的に大きくなっている。つまり、乾式粉砕処理を行わずに40℃以上の蒸留水を添加した酸化アルミニウム粉体に比べて、乾式粉砕処理を行って40℃以上の蒸留水を添加した酸化アルミニウム粉体の方が、比表面積が大きいということになる。酸化アルミニウムは温度が高いほど溶解度も高くなる物質であることと上記の比較結果とに基づくと、温度を上昇させたことによって粉砕処理後の粉砕物において、易溶解領域である非晶質部が溶媒に溶解したものと捉えられる。これに対し、乾式粉砕処理を経ておらず易溶解領域が形成されていない比較例4の酸化アルミニウム粉体は、実施例4に比較して、比表面積がかなり小さい結果となったものと捉えられる(図6)。なお、図6において黒く塗りつぶされた四角は、原料の酸化アルミニウムの比表面積を示す。
[実施例5](乾式粉砕後のホタテ貝殻にpHを変化させた水を添加した場合の比表面積)
炭酸カルシウムと少量の有機化合物を主成分とするホタテ貝殻粗粉(常呂町産業振興公社製、比表面積1.5m2/g、平均粒子径20μm)とジルコニアボール(3mm)をあらかじめ80℃で8時間以上乾燥させた。ジルコニアボール60.0gとホタテ貝殻粗粉5.00gをステンレス製のミルポット(45cc)に投入し、遊星ボールミル装置(FRITSCH製 Premium line P−7)を用いて、400rpmで、24時間乾式粉砕処理を行った(S1)。
次に、蒸留による脱塩精製(ヤマト科学製、WG250)を水に施して蒸留水を調製し、得られた蒸留水のpHを、硝酸(純度60〜61%、関東化学製)を使用して、pH0.5〜pH7.0(pH0.5、pH1.0、pH3.0、pH5.0又はpH7.0)に調整することで、pHが異なる複数種類の溶媒を用意した(S2)。乾式粉砕処理を行ったホタテ貝殻粗粉1.00gに、S2の工程にて調整した各溶媒10mLを添加し、30分間静置した(S3)。その後、微量高速冷却遠心機(トミー精工製 MX−301)を使用して、20℃、3500rpmの回転速度で1分間、ホタテ貝殻粗粉の粉砕物と溶媒の混合物に遠心分離を施した。遠心分離後の混合物から上澄みを除去し、12時間以上真空乾燥させ、炭酸カルシウム粉体を取得した(S4)。
実施例5の結果によると、pH7.0の溶媒を添加した時の炭酸カルシウム粉体の比表面積が最大となっており、添加した溶媒の酸性が強くなるほど比表面積が小さくなっている(図7)。溶出した炭酸カルシウムが析出する際に微粒子同士が結合することで比表面積が減少したものと考えられる。なお、炭酸カルシウムは酸性が強い溶媒に溶けやすい。このため、pHの低い水からpH7.0の蒸留水を調製する場合、易溶解領域が溶けにくくなると考えられる。一方、実施例5からは、pHを7.0に調整することにより、最終的に取得される粉体の比表面積が大きくなることが導かれる。このように、易溶解領域が溶けにくくなるような調整であっても、最終的に取得される粉体の比表面積が大きくなるように溶媒を調整することが好ましい。
[実施例6](乾式粉砕後のホタテ貝殻に温度を変化させた蒸留水を添加した場合の比表面積)
水に蒸留による脱塩精製(ヤマト科学製、WG250)を施し、蒸留水を調製した。そして、蒸留水の温度が5℃〜90℃(5℃、20℃、40℃、60℃、70℃又は90℃)になるよう、蒸留水を冷却又は加熱し、溶媒を調整した(S2)。その後、実施例5の方法で乾式粉砕処理した粉砕物に調整した溶媒を添加して、溶媒と同じ温度に設定した恒温槽(AS ONE製 LTB−125)中でホタテ貝殻粗粉の粉砕物と溶媒の混合物を30分間静置した(S3)。その他の処理は、実施例5と同様である。
実施例6の結果によると、70℃以上の高温の溶媒になると、炭酸カルシウム粉体の非表面積が小さくなっている(図8)。これは、炭酸カルシウムは、温度が高くなると溶けにくくなることから、炭酸カルシウムの溶解度が低くなるにつれて、炭酸カルシウム粉砕物中の各粒子の易溶解領域の溶解量が減少してしまい、比表面積が増加しなかったものと考えられる。
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に
限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々
な変更が可能なものである。
本発明よれば、ナノ粒子に粉砕したホタテ貝殻粉体を利用し、ホルムアルデヒドを吸着するような吸着剤を開発することができる。また、紫外線遮蔽効果等の優れた化粧料等、ナノ粒子を応用可能なさまざまな分野に利用できる。

Claims (8)

  1. 金属化合物の結晶を含む物質の粉体を取得する粉体の製造方法であって、
    溶媒への溶解し易さが相対的に異なる易溶解領域と難溶解領域が粉砕後の粉砕物中の各粒子に生じるように前記物質に乾式粉砕処理を施す粉砕工程と、
    溶媒を調整する調整工程と、
    前記乾式粉砕処理後の前記粉砕物に調整後の前記溶媒を添加する添加工程と、
    前記物質の前記粉体を前記溶媒中から取得する取得工程とを備えており、
    前記調整工程において、前記取得工程で取得される前記粉体の比表面積が大きくなるように前記溶媒を調整することを特徴とする粉体の製造方法。
  2. 前記調整工程において、前記溶媒の温度及びpHの少なくともいずれかを調整することを特徴とする請求項1に記載の粉体の製造方法。
  3. 前記調整工程において、前記物質が温度上昇に応じて前記溶媒への溶解度が高くなる物質である場合には前記溶媒を加熱し、前記物質が温度上昇に応じて前記溶媒への溶解度が低くなる物質である場合には前記溶媒を冷却することを特徴とする請求項2に記載の粉体の製造方法。
  4. 前記金属化合物が、無機炭酸塩及び金属酸化物の少なくともいずれかを含んでいることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉体の製造方法。
  5. 前記溶媒の主成分が水であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体の製造方法。
  6. 前記物質が貝殻である場合に、前記溶媒の温度が5℃〜60℃であることを特徴とする請求項5に記載の粉体の製造方法。
  7. 前記物質が貝殻である場合に、前記調整後の溶媒のpHが0.5〜7.0の範囲であることを特徴とする請求項5に記載の粉体の製造方法。
  8. 前記調整工程において、前記金属化合物が酸化アルミニウムである場合に、前記溶媒の温度を40℃以上まで加熱することを特徴とする請求項5に記載の粉体の製造方法。
JP2014133073A 2014-06-27 2014-06-27 粉体の製造方法 Pending JP2016010753A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014133073A JP2016010753A (ja) 2014-06-27 2014-06-27 粉体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014133073A JP2016010753A (ja) 2014-06-27 2014-06-27 粉体の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016010753A true JP2016010753A (ja) 2016-01-21

Family

ID=55227831

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014133073A Pending JP2016010753A (ja) 2014-06-27 2014-06-27 粉体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016010753A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021000034A (ja) * 2019-06-21 2021-01-07 株式会社ナックス 機能性経口組成物及びその製造方法

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11504311A (ja) * 1995-04-29 1999-04-20 インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク 弱く凝集したナノスカラー粒子の製造方法
JP2003305378A (ja) * 2002-04-15 2003-10-28 Kcm Corp 水酸化マグネシウム系難燃剤の製造法
JP2004182556A (ja) * 2002-12-05 2004-07-02 Showa Denko Kk 水酸化アルミニウムの製造方法、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム含有組成物

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11504311A (ja) * 1995-04-29 1999-04-20 インスティトゥート フィア ノイエ マテリアーリエン ゲマインニュッツィゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクタ ハフトゥンク 弱く凝集したナノスカラー粒子の製造方法
JP2003305378A (ja) * 2002-04-15 2003-10-28 Kcm Corp 水酸化マグネシウム系難燃剤の製造法
JP2004182556A (ja) * 2002-12-05 2004-07-02 Showa Denko Kk 水酸化アルミニウムの製造方法、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム含有組成物

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021000034A (ja) * 2019-06-21 2021-01-07 株式会社ナックス 機能性経口組成物及びその製造方法
JP7123404B2 (ja) 2019-06-21 2022-08-23 株式会社ナックス 機能性経口組成物及びその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6976597B2 (ja) 銅粒子混合物及びその製造方法、銅粒子混合物分散液、銅粒子混合物含有インク、銅粒子混合物の保存方法及び銅粒子混合物の焼結方法
JP2014148716A (ja) 銅ナノワイヤーの製造方法
JP6267042B2 (ja) 砒素の処理方法
TW593651B (en) Description method for producing cerium-based abrasive and cerium-based abrasive produced thereby
CN111051241A (zh) 疏水性二氧化硅粉末
CN105693734B (zh) 一种特质ε-HNIW晶体及其制备方法
JP2017014079A (ja) 活性炭の製造方法、活性炭及び電気二重層キャパシタ用電極材料
JP2016010753A (ja) 粉体の製造方法
JP2018149520A5 (ja)
JPH036170B2 (ja)
WO2017168906A1 (ja) スパッタリングターゲット材及びその製造方法、並びにスパッタリングターゲット
JP5640749B2 (ja) 酸化ガリウム及びその製造方法
TWI615359B (zh) 吸附材料分散液及吸附方法
JP2021134393A (ja) 銅粉の製造方法
KR100622106B1 (ko) 폐 ito 타겟으로부터 ito 분말을 제조하는 방법
JP2002356328A (ja) 酸化ニオブスラリー、酸化ニオブ粉末およびそれらの製造方法
JP2012162432A (ja) 酸化ガリウム粉末及びその製造方法並びに酸化物焼結体スパッタリングターゲット及びその製造方法
TW201436948A (zh) 廢拋光粉之資源再生方法
JP7126922B2 (ja) 酸化ガリウム粉末の製造方法
WO2009119395A1 (ja) 2-アミノ-2-[2-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]エチル]-1,3-プロパンジオール塩酸塩の結晶化方法
JP2560235B2 (ja) 微粒子天然高分子の新規な製造方法
JP6375324B2 (ja) 植物部位からバイオモルフィックシリカのナノ粒子を得る方法であって、前記植物部位はその高含有量によって特徴付けられる方法。
JP2015209401A (ja) カフェオイルキナ酸類抽出方法及びカフェオイルキナ酸類製造方法
JP2004175602A (ja) 酸化タンタルスラリー、酸化タンタル粉末およびそれらの製造方法
TW201336516A (zh) 改質複合微粒、其製造方法及其防曬配方

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170623

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180220

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180222

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20180911