JP2015227779A - 二次イオン質量分析装置の制御方法及び制御プログラム、二次イオン質量分析装置 - Google Patents

二次イオン質量分析装置の制御方法及び制御プログラム、二次イオン質量分析装置 Download PDF

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Abstract

【課題】試料の異なる深さ方向位置から飛散し、分析対象となる試料の表面に付着した元素の影響を排除しながら、試料の深さ方向の元素濃度分布を正確に取得できるようにする。【解決手段】二次イオン質量分析装置を用いて、試料1の表面の一次イオンビーム4を照射する照射範囲を一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、照射範囲を一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行し、外向きスパイラルスキャンの実行時に一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する。【選択図】図1

Description

本発明は、二次イオン質量分析装置の制御方法及び制御プログラム、二次イオン質量分析装置に関する。
二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)は、一次イオンビームを試料表面に照射し、試料表面から放出される二次イオンの質量分析をする分析法(表面分析法)である。SIMSは、その検出感度の高さから、半導体産業をはじめとして、様々な分野において広く活用されている。
そして、SIMSでは、試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲(測定対象となる試料表面)を一次イオンビームでラスタースキャン又はスパイラルスキャンすると、一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって、照射範囲の試料の表面がエッチングされることになる。このため、一次イオンビームのラスタースキャン又はスパイラルスキャンを繰り返すことで、試料の深さ方向の元素濃度分布を測定することができる。
特開平3−285241号公報 特開2013−44563号公報 特開2008−232838号公報 特開平7−280754号公報
ところで、上述のようにして一次イオンビームのラスタースキャン又はスパイラルスキャンを繰り返すと、照射範囲で試料のエッチングが進行していくことになる(図7参照)。
例えば、照射範囲を一次イオンビームで1回スキャンすると、試料の表面がエッチングされて、試料の表面位置は点線a0で示す位置から点線a1で示す位置となり、点線a1で示す位置の試料の表面が底部(底面)となるクレータ(凹部)が形成されることになる(図7参照)。以後、1回スキャンする毎に、試料の表面位置は点線a2で示す位置、点線a3で示す位置、a4で示す位置となり、それぞれの位置の試料の表面が底部となるクレータとなり、クレータの深さが少しずつ大きくなっていくことになる。
このため、このようにしてエッチングの進行とともにその深さが増していくクレータの底部から放出される二次イオンの質量分析を行なうことで、試料の深さ方向の元素濃度分布を測定することができる。
しかしながら、上述のようにして照射範囲の試料の表面がエッチングされると、クレータの底部を取り囲むように側壁(試料の断面)が形成される。
そして、照射範囲を一次イオンビームでスキャンして、クレータの底部に一次イオンビームを照射する際に、クレータの側壁にも一次イオンビームが照射されてしまうことになる。なお、一次イオンビームは、ビームの断面内における一次イオンの密度が均一ではなく、一次イオンの密度が最も高い部分を中心として、その周囲にわずかではあるが一次イオンが広がって分布している。このため、クレータの底部のみに一次イオンビームを照射しようとしても、クレータの側壁にも一次イオンビームが照射されてしまうことになる。
このようにして、クレータの側壁にも一次イオンビームが照射されてしまうと、スパッタリングによって、クレータの側壁からイオンや原子(元素)が放出されることになる。このようにしてスパッタリングによって放出された元素は、あらゆる方向に飛散し、クレータの底部に付着(再付着)することになる。
そして、クレータの側壁には、クレータの底部と異なる深さ方向位置に存在する元素が露出している。
このため、クレータの側壁に一次イオンビームが照射されてクレータの側壁から放出された元素が、クレータの底部に付着してしまうと、クレータの底部に、この底部を構成している元素とともに、クレータの側壁から飛散して付着した元素が存在することになる。
そして、クレータの底部に、異なる深さ方向位置にあった元素が混在している状態で、クレータの底部に一次イオンビームが照射されると、スパッタリングによって、クレータの底部を構成している元素に起因する二次イオンとともに、クレータの側壁を構成している元素に起因する二次イオンが放出されることになる。
この結果、クレータの底部を構成している元素に起因する二次イオンに、クレータの側壁を構成している元素に起因する二次イオンが混入してしまい、試料の深さ方向の元素濃度分布の測定における深さ分解能が低下することになる。
なお、クレータの底部及び側壁に一次イオンビームが照射されて、クレータの底部から放出された二次イオンに、クレータの側壁から放出された二次イオンが混入してしまい、試料の深さ方向の元素濃度分布の測定における深さ分解能が低下してしまうのを回避するための方法として、エレクトリックゲート法がある(図8参照)。このエレクトリックゲート法では、クレータの底部の中央部(測定対象となる試料表面)に一次イオンビームが照射されているときだけ、二次イオンを質量分析器に取り込むようにして、クレータの側壁に一次イオンビームが照射されてクレータの側壁から放出される二次イオンが混入しないようにする。しかしながら、このエレクトリックゲート法を用いたとしても、上述の課題、即ち、クレータの側壁に一次イオンビームが照射されるとクレータの側壁から元素が飛散してクレータの底部(測定対象となる試料表面)に付着してしまい、試料の深さ方向の元素濃度分布の測定における深さ分解能を低下させるという課題を解決することはできない。
また、ここでは、クレータの側壁に一次イオンビームが照射される場合の課題として説明しているが、試料の断面に一次イオンビームが照射される場合であれば同様の課題がある。
例えば、事前に周囲に溝を形成して、島状に残しておき、一次イオンビームの照射範囲を溝が形成されている部分までとし、島状に残された島状部分の中央部(測定対象となる試料表面)に一次イオンビームが照射されているときだけ、二次イオンを質量分析器に取り込むようにする方法がある。しかしながら、このような方法を用いる場合、島状部分の外周に壁面(試料の断面)が形成されるため、この壁面に一次イオンビームが照射されると、スパッタリングによって、この壁面からイオンや原子(元素)が放出されることになる。このようにしてスパッタリングによって放出された元素は、あらゆる方向に飛散し、島状部分の上面(測定対象となる試料表面を含む)に付着することになる。そして、島状部分の壁面には、島状部分の上面と異なる深さ方向位置に存在する元素が露出している。このため、島状部分の壁面に一次イオンビームが照射されてその壁面から放出された元素が、島状部分の上面に付着してしまうと、島状部分の上面に、この上面を構成している元素とともに、島状部分の壁面から飛散して付着した元素が存在することになる。そして、島状部分の上面に、異なる深さ方向位置にあった元素が混在している状態で、島状部分の上面に一次イオンビームが照射されると、スパッタリングによって、島状部分の上面を構成している元素に起因する二次イオンとともに、島状部分の壁面を構成している元素に起因する二次イオンが放出されることになる。この結果、島状部分の上面を構成している元素に起因する二次イオンに、島状部分の壁面を構成している元素に起因する二次イオンが混入してしまうことになり、試料の深さ方向の元素濃度分布の測定における深さ分解能が低下することになる。
このように、試料の断面に一次イオンビームが照射されると、試料の断面から元素が飛散して、即ち、試料の異なる深さ方向位置から元素が飛散して、測定対象となる試料の表面に付着してしまい、試料の深さ方向の元素濃度分布の測定における深さ分解能を低下させることになる。
そこで、試料の異なる深さ方向位置から飛散し、測定対象となる試料の表面に付着した元素の影響を排除しながら、試料の深さ方向の元素濃度分布を正確に取得できるようにしたい。
本二次イオン質量分析装置の制御方法は、試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲を一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、照射範囲を一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行し、外向きスパイラルスキャンの実行時に一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する。
本二次イオン質量分析装置の制御プログラムは、コンピュータに、試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲を一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、照射範囲を前記一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行し、外向きスパイラルスキャンの実行時に一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する、処理を実行させる。
本二次イオン質量分析装置は、試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲を一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、照射範囲を一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する制御部と、外向きスパイラルスキャンの実行時に一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する演算部とを備える。
したがって、本二次イオン質量分析装置の制御方法及び制御プログラム、二次イオン質量分析装置によれば、試料の異なる深さ方向位置から飛散し、測定対象となる試料の表面に付着した元素の影響を排除しながら、試料の深さ方向の元素濃度分布を正確に取得できるという利点がある。
(A)〜(G)は、本実施形態にかかる二次イオン質量分析装置及びその制御方法を説明するための模式的断面図である。 本実施形態にかかる二次イオン質量分析装置の構成を示す模式図である。 本実施形態にかかる二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータのハードウェア構成を示す模式図である。 本実施形態にかかる二次イオン質量分析装置による試料の深さ方向の測定の流れを例示した図である。 本実施形態にかかる二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータにおいて実行される処理(二次イオン質量分析装置の制御方法)を説明するためのフローチャートである。 一般的な二次イオン質量分析装置において行なわれる一次イオンビームのラスタースキャンを説明するための模式図である。 二次イオン質量分析装置における一次イオンビームの照射によるスパッタリングによってエッチングが進行する様子を説明するための模式図である。 (A)、(B)は、二次イオン質量分析装置においてエレクトリックゲート法を適用した場合について説明するための模式図であって、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。 二次イオン質量分析装置を用いた測定における、クレータ側壁から放出された元素(不純物原子)がクレータ底部に再付着するという課題を説明するための模式的断面図である。 (A)、(B)は、二次イオン質量分析装置を用いた測定における、クレータ側壁から放出された元素(不純物原子)がクレータ底部に再付着することの影響を小さくするための方法を説明するための模式図であって、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。 二次イオン質量分析装置において行なわれる一次イオンビームの内向きスパイラルスキャンを説明するための模式図である。 二次イオン質量分析装置において行なわれる一次イオンビームの外向きスパイラルスキャンを説明するための模式図である。 (A)〜(D)は、二次イオン質量分析装置において一次イオンビームの内向きスパイラルスキャンを行なった場合にクレータ側壁から放出された元素(不純物原子)が再付着する様子を説明するための模式的断面図である。 (A)〜(D)は、二次イオン質量分析装置において一次イオンビームの外向きスパイラルスキャンを行なった場合にクレータ側壁から放出された元素(不純物原子)が再付着する様子を説明するための模式的断面図である。 本実施形態にかかる二次イオン質量分析装置及びその制御方法による効果を確認するための実験に使用した試料の層構成を示す模式的断面図である。 (A)、(B)は、本実施形態にかかる二次イオン質量分析装置及びその制御方法による効果を確認するための実験の結果を示す図であり、(A)は比較のために一般的な方法で行なった実験の結果を示す図であり、(B)は本実施形態の二次イオン質量分析装置及びその制御方法による実験の結果を示す図である。
以下、図面により、本発明の実施の形態にかかる二次イオン質量分析装置の制御方法及び制御プログラム、二次イオン質量分析装置について、図1〜図16を参照しながら説明する。
本実施形態の二次イオン質量分析装置は、試料の深さ方向の元素濃度分布を取得するために用いられる。つまり、本二次イオン質量分析装置は、試料の材料組成の深さ方向分布を測定するために用いられる。
このため、本実施形態の二次イオン質量分析装置は、図1、図2、図11、図12に示すように、試料1の表面の一次イオンビーム4を照射する照射範囲7を一次イオンビーム4で外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン[図1(A)〜図1(C)、図11参照]、及び、照射範囲7を一次イオンビーム4で中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャン[図1(D)〜図1(G)、図12参照]を連続して、繰り返し実行する制御部51と、外向きスパイラルスキャンの実行時に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによって試料1の表面から放出される二次イオン5の検出情報に基づいて、試料1の深さ方向の元素濃度分布を取得する演算部52とを備える。
また、本実施形態の二次イオン質量分析装置の制御方法では、試料1の表面の一次イオンビーム4を照射する照射範囲7を一次イオンビーム4で外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、照射範囲7を一次イオンビーム4で中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する。そして、外向きスパイラルスキャンの実行時に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによって試料1の表面から放出される二次イオン5の検出情報に基づいて、試料1の深さ方向の元素濃度分布を取得する。
これにより、試料1の異なる深さ方向位置から飛散し、測定対象となる試料1の表面に付着した元素の影響を排除しながら、試料1の深さ方向の元素濃度分布を正確に取得できることになる。つまり、試料1の断面からスパッタリングによって放出された原子やイオン(元素)の再付着の影響を排除しながら、試料1の材料組成の深さ方向分布を正確に測定できることになる。
以下、本二次イオン質量分析装置の制御方法、即ち、本二次イオン質量分析装置を用いた、試料1の深さ方向の元素濃度分布の取得方法について、具体的に説明する。
ここでは、まず、二次イオン質量分析装置の構成及び動作について説明する。
二次イオン質量分析装置は、図2に示すように、例えば固体試料などの試料1を載置して固定する試料台2と、試料1の表面に向けて一次イオンビーム4を照射する一次イオンガン3と、試料1の表面からスパッタリングによって放出される二次イオン5を取り込み、質量分析を行なう質量分析器6と、これらの制御及び各種演算を行なう制御演算部としてのコンピュータ(コントローラ)50とを備える。
ここで、一次イオンガン3では、内部のイオン源で発生させた一次イオンを、例えば数百eVから数千eVのエネルギーにまで電気的に加速する。この一次イオンには、例えばO イオン(酸素イオン)やCsイオン(セシウムイオン)などが用いられる。
このようにして加速された一次イオンの流れは、何段階かの静電レンズを通過させることによって、空間的に収束されて細いビーム状となり、試料1の表面に照射される。この試料1の表面に当たった一次イオンビーム4の直径は、例えば0.1μm〜数μmの程度にまで絞られている。
また、一次イオンガン3の内部には、一次イオンビーム4のイオンの流れに垂直な方向に電場を発生させることが可能な偏向電極が、一次イオンビーム4を挟むように2枚1組で設置されている。ここでは、偏向電極が2組設けられ、これらの偏向電極が発生させる電場の向きが互いに直交するように設置されており、これらの偏向電極によって生じる電場を制御することによって、一次イオンビーム4を自在に走査(スキャン)させることができるようになっている。本実施形態では、試料表面の所定の大きさの照射範囲7(測定対象となる試料表面)を一次イオンビーム4でスパイラルスキャンしながら、照射範囲7に一次イオンビーム4を照射するようになっている。
そして、一次イオンビーム4が試料1の表面に照射されると、試料1の表面では、入射した一次イオンと試料1を構成している原子(元素)の間で、エネルギーと運動量の複雑なやり取りが発生する。その結果、試料1の最表面から、試料1を構成している原子が空間に放出されるスパッタリング現象が起こる。このスパッタリング現象によって空間に放出された原子のうちの一部は、イオン化して二次イオン5となる。なお、二次イオン5は、空間内のあらゆる方向に向かって飛散するが、図2では、簡単のため、質量分析器6へと向かう二次イオン5の流れだけを矢印で示している。
質量分析器6は、試料表面から空間にスパッタリングによって放出された二次イオン5を内部に取り込み、質量分析を行なう。ここでは、質量分析器6は、質量分離器28と、イオン検出器29とを備える。そして、二次イオン5には様々な質量数の二次イオンが混ざっているため、質量分離器28で特定の質量数の二次イオンだけを分離し、分離された二次イオンをイオン検出器29で検出することで、質量分析を行なうようになっている。
コンピュータ50は、一次イオンガン3に対する制御、及び、質量分析器6に対する制御を行なう。このため、コンピュータ50は、その機能として、偏向電極制御部26、ブランキング電極制御部32、引き出し電極制御部27を備える。なお、これらについては後述する。
また、コンピュータ50は、質量分析器6によって検出された二次イオン5の検出情報に基づいて、試料1の深さ方向の元素濃度分布を取得するための演算を行なう。ここでは、コンピュータ50は、質量分析器6によって検出された二次イオン5の検出情報に基づいて、試料1の表面を構成している元素の情報、さらには、試料1の深さ方向の元素濃度分布を取得するための演算を行なう。
具体的には、質量分析器6に備えられるイオン検出器29が、分離された特定の質量数の二次イオン5を検出し、二次イオン5を検出する毎にパルス状の電気信号(二次イオン信号)を発生し、発生したパルス状の電気信号をコンピュータ50へ送るようになっている。
そして、コンピュータ50が、イオン検出器29から送られてきたパルス状の電気信号に基づいて、単位時間あたりの信号数を算出する。このようにして、単位時間あたりの信号数を算出することによって、単位時間あたりに検出した二次イオン5の数、即ち、二次イオン信号強度が計測(算出)されることになる。このため、コンピュータ50は、その機能として、イオン強度計測部30を備える。なお、これについては後述する。
この二次イオン信号強度は、その質量数の元素の濃度に比例している。つまり、各質量数の二次イオン信号強度は、試料1の表面を構成している元素の濃度に比例した強度を示す。また、試料1の表面の一次イオンビーム4を照射する照射範囲7に対して、一次イオンビーム4の照射を繰り返すと、試料1の最表面部分を構成する原子(元素)はスパッタリング現象によって空間へと放出されて失われるため、試料1の表面は一次イオンビーム4によってエッチングされていく。このため、一次イオンビーム4の照射を繰り返して、試料1の表面を一次イオンビーム4によってエッチングして掘り進みながら、コンピュータ50が、試料1の深さ方向位置とその深さ方向位置における各質量数(各元素)の二次イオン信号強度の対応関係を得ることで、試料1を構成する元素の深さ方向の濃度分布を取得することができる。
なお、図2では省略しているが、図2において示した機器及び試料は、すべて真空チャンバーの内部に収容されており、上述したSIMS測定は、真空ポンプによって高度に真空排気された環境において行なわれる。
次に、このように構成される二次イオン質量分析装置の制御方法、即ち、このように構成される二次イオン質量分析装置を用いた、試料1の深さ方向の元素濃度分布の取得方法について具体的に説明する。
本二次イオン質量分析装置の制御方法では、図1(A)〜図1(G)に示すように、まず、試料1の表面の一次イオンビーム4を照射する照射範囲7に対して、一次イオンビーム4の内向きスパイラルスキャン(図11参照)及び外向きスパイラルスキャン(図12参照)を連続して、繰り返し実行する。
ここでは、試料表面の所定の大きさの範囲を、一次イオンビーム4を照射する照射範囲(一次イオンビーム照射範囲)7とし、この照射範囲7に対して、一次イオンビーム4の内向きスパイラルスキャンと外向きスパイラルスキャンとを、照射範囲7に対して行なう1回のスパイラルスキャン毎に切り替えて、繰り返し実行する。
このように、本実施形態では、照射範囲7の内部に一次イオンビーム4を均一に照射する手段として、一般的なラスタースキャンを用いるのではなく、スパイラルスキャンを用い、さらに、内向きスパイラルスキャンと外向きスパイラルスキャンとを連続して行なうようにしている。つまり、一次イオンビーム4が試料1の表面に衝突する点、即ち、試料1の表面上の一次イオンビーム4が照射される点である照射点が、照射範囲7の最外周から中心へ向かって渦巻状の軌跡を描いて移動する内向きスパイラルスキャン(図11参照)と、逆に、照射点が、照射範囲7の中心から最外周へ向かって渦巻状の軌跡を描いて移動する外向きスパイラルスキャン(図12参照)とを、連続して行なうようにしている。そして、連続して行なわれる1回の内向きスパイラルスキャンと1回の外向きスパイラルスキャンを一つの単位として、この一つの単位を繰り返し行なうようにしている。なお、内向きスパイラルスキャンと外向きスパイラルスキャンは連続して行なえば良く、プロセス工程において、どちらが先に行なわれるようになっていても良い。
そして、図1(D)〜図1(G)、図2に示すように、外向きスパイラルスキャンの実行時に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによって試料1の表面から放出される二次イオン5の検出情報に基づいて、試料1の深さ方向の元素濃度分布を取得する。
つまり、図1(A)〜図1(C)に示すように、内向きスパイラルスキャンの実行時には、照射範囲7を一次イオンビーム4でスパイラルスキャンするだけで、一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによって試料1の表面から放出される二次イオン5の検出、さらには、試料1の深さ方向の元素濃度分布の取得は行なわない。これに対し、図1(D)〜図1(G)、図2に示すように、外向きスパイラルスキャンの実行時には、照射範囲7を一次イオンビーム4でスパイラルスキャンするとともに、一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによって試料1の表面から放出される二次イオン5の検出、さらには、試料1の深さ方向の元素濃度分布の取得を行なう。
ここで、照射範囲7を一次イオンビーム4でスパイラルスキャンすると、照射範囲7は、一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによってエッチングされることになる。
このため、本実施形態では、内向きスパイラルスキャンによって、照射範囲7のエッチングを行なう工程と、外向きスパイラルスキャンによって、照射範囲7のエッチングを行なうとともに、二次イオン5の検出、さらには、試料1の深さ方向の元素濃度分布の取得を行なう工程とが連続して行なわれることになる。そして、これらの連続して行なわれる2つの工程を一つの単位として、この一つの単位が繰り返し行なわれることになる。
上述のようにして、内向きスパイラルスキャンと外向きスパイラルスキャンを連続して行なうことで、試料1の断面、即ち、試料1の異なる深さ方向位置から飛散し、測定対象となる試料1の表面に付着した元素の影響を排除しながら、試料1の深さ方向の元素濃度分布を正確に取得できることになる。
つまり、内向きスパイラルスキャンの実行時の一次イオンビーム4の照射によるスパッタリング又はエッチングによって、例えばクレータの側壁や島状部分の壁面などの試料1の断面から飛散し、測定対象となる試料の表面に付着した原子やイオン(元素)が除去されて、測定対象となる試料の表面が清浄な表面となる。
このため、これに連続して行なわれる外向きスパイラルスキャンの実行時に、一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによって、試料1の断面から飛散して付着した原子やイオン(元素)が存在しない清浄な表面になっている試料1の表面から放出される二次イオン5を検出することが可能となる。この結果、試料1の断面から飛散して付着した原子やイオン(元素)が存在しない清浄な試料表面での二次イオン5の検出情報に基づいて、試料1の深さ方向の元素濃度分布を取得することが可能となる。
したがって、試料1の断面、即ち、試料1の異なる深さ方向位置から飛散し、測定対象となる試料の表面に付着した元素の影響を排除しながら、試料1の深さ方向の元素濃度分布を正確に取得できることになる。この結果、試料1の深さ方向の元素濃度分布の測定(即ち、試料1の深さ方向の元素濃度分析)における深さ分解能を向上させることが可能となる。つまり、試料1の深さ方向の元素濃度分布の測定において高い深さ分解能を得ることが可能となる。
特に、内向きスパイラルスキャン及び外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する処理において、外向きスパイラルスキャンの実行時に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによってエッチングされる量が内向きスパイラルスキャンの実行時に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによってエッチングされる量よりも多くなるように、内向きスパイラルスキャン及び外向きスパイラルスキャンを実行するのが好ましい。このように、二次イオン5の検出、即ち、二次イオン信号強度の計測を行なう外向きスパイラルスキャンの実行時にエッチングされる量が多くなるようにすることで、二次イオン5の量が多くなるため、感度が上がることになる。
また、内向きスパイラルスキャン及び外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する処理において、外向きスパイラルスキャンのスキャン速度(走査速度)が内向きスパイラルスキャンのスキャン速度よりも遅くなるように、内向きスパイラルスキャン及び外向きスパイラルスキャンを実行するのが好ましい。このように、二次イオン5の検出、即ち、二次イオン信号強度の計測を行なう外向きスパイラルスキャンの実行時にスキャン速度が遅くなるようにすることで、エッチングされる量が多くなり、二次イオン5の量が多くなるため、感度が上がることになる。
また、試料1の深さ方向の元素濃度分布を取得する処理において、照射範囲7内の照射範囲7よりも狭い範囲(測定対象となる試料表面;図8の二次イオン計測範囲15参照)に一次イオンビーム4が照射されている時に試料1の表面から放出される二次イオン5の検出情報に基づいて、試料1の深さ方向の元素濃度分布を取得するのが好ましい。この場合、照射範囲7内の照射範囲7よりも狭い範囲は、二次イオン5の検出対象範囲(二次イオン信号強度の計測対象範囲)であって、例えば照射範囲7の中心部とすれば良い。これにより、測定対象となる試料1の表面とともに試料1の断面にも一次イオンビーム4が照射されてしまい、測定対象となる試料1の表面から放出された二次イオン5に、試料1の断面から放出された二次イオン5が混入してしまい、試料1の深さ方向の元素濃度分布の測定における深さ分解能が低下してしまうのを回避することが可能となる。
以下、より詳細に説明する。
従来、二次イオン質量分析装置では、高い深さ分解能を得るために、一次イオンガン3の内部の偏向電極を制御することによって、試料1の表面に一次イオンビーム4を照射するのに、一次イオンビーム4にラスタースキャンを行なわせている。
ここで、図6は、試料1の表面において一次イオンビーム4が照射される照射範囲(一次イオン照射範囲)7を示す図であり、この照射範囲7は、一次イオンビーム4にラスタースキャンを行なわせることによって、一次イオンビーム4が照射される範囲を示している。
図6の走査線8−1、8−2、・・・、8−nは、一次イオンビーム4が試料1の表面に衝突する点、即ち、試料1の表面に一次イオンビーム4が照射されている照射点のラスタースキャンによる運動の軌跡を示している。
一次イオンビーム4の試料1への照射を開始すると、まず、照射点は、始点9−1を出発して、1本目の走査線8−1に沿って移動し、終点10−1へと到達する。ここで一次イオンビーム4はオフにされ、試料1への一次イオンビームの照射が中断される。
そして、一次イオンビーム4がオフになっている間に、照射点は、終点10−1から2本目の走査線8−2の始点である始点9−2へと移動する。
なお、図6では、終点10−1と始点9−2が点線で結ばれているが、この点線は、照射点の移動の流れを説明するためにあくまでも便宜的に表示しているだけであり、この点線に沿って試料1への一次イオンビーム4の照射が実際に行われるわけではない。
このようにして照射点が始点9−2に移動すると、再び、一次イオンビーム4がオンにされ、試料1への一次イオンビームの照射が再開される。
そして、照射点は、始点9−2を出発して、2本目の走査線8−2に沿って移動し、終点10−2へと到達する。
同様にして、照射点は、次々と走査線8−3、・・・、8−nに沿って移動を繰り返し、やがてn本目の走査線8−nの終点である終点10−nへと到達する。
照射点が終点10−nに到達すると、一次イオンビーム4はオフにされ、その間に、照射点は、1本目の走査線8−1の始点である始点9−1へと戻される。
このように、一次イオンビーム4のラスタースキャンによって、照射点は、始点9−1を出発して再び始点9−1に戻ってくるまでに、一次イオン照射範囲7の内側を漏れなく塗りつぶすように運動する。
その間、n本の走査線8−1、8−2、・・・、8−nに沿って、試料1の表面への一次イオンビーム4の照射が行われ、一次イオン照射範囲7の全面に一次イオンビーム4が照射される。
照射点が、図6の始点9−1を出発してから、一次イオン照射範囲7の内側を漏れなく塗りつぶすように動き、再び始点9−1に戻ってくるまでの運動は、繰り返し行われるラスタースキャンの運動の最小単位と考えることができる。
以後、照射点が始点9−1を出発してからすべての走査線を一巡して再び始点9−1まで戻るまでの運動を、1フレームと呼ぶことにする。
ところで、このようにして一次イオンビーム4のラスタースキャンを繰り返すと、例えば図7に示すように、照射範囲7で試料1のエッチングが進行していくことになる。
ここで、図7は、一次イオンビーム4の照射によって試料1のエッチングが進行していく様子を、試料1の断面方向から示した図である。
一次イオンビーム4には、図6で説明したようにラスタースキャンを行なわせており、一次イオンビーム4の空間的な位置は、スキャン範囲11の中で時間とともに変化する。
また、一次イオンビーム4のラスタースキャンの間、走査線上での照射点の移動速度は常に一定である。
このため、一次イオン照射範囲7の内側では、どの位置においても、単位面積および単位時間当たりに試料1の表面に照射される一次イオンの数は等しい。
したがって、一次イオン照射範囲7の内側では、試料1の表面を構成している原子がスパッタリングによって失われる数も、単位面積および単位時間当たりで均一であるため、一次イオン照射範囲7の内側は、均一な速度でエッチングされることになる。
そして、一次イオンビーム4によって試料1のエッチングが開始されると、一次イオン照射範囲7の内側では均一な速度でエッチングが行われるため、エッチングによって形成されるクレータ12の底の平坦なクレータ底部13は、元々の試料1の表面であった点線a0に対して常に平行な向きを維持したまま、ラスタースキャンが1フレームずつ繰り返されるにつれて、点線a1、点線a2、点線a3、実線a4と、その深さを少しずつ増して行く。
当然のことながら、試料1の表面には、一次イオン照射範囲7の外周に沿って段差が生じ、クレータ底部13をぐるりと取り囲むように側壁14が形成される。
二次イオン質量分析装置によって、エッチングの進行とともにその深さを増して行くクレータ底部13から放出される二次イオン5を検出することによって、試料1の材料組成の深さ方向分布を測定する場合、図7に示したように、進行するエッチングのどの段階においても、クレータ底部13は、エッチング開始前の試料1の表面に対して平行であり、クレータ底部13の内部の各点は試料1の表面からの深さが等しいため、深さ分解能の良い測定を行うことが可能となる。
ところで、一次イオンビーム4は、ビームの断面内における一次イオンの密度が均一ではなく、一次イオンの密度が最も高い部分を中心として、その周囲にわずかではあるが一次イオンが広がって分布しており、照射点の周囲にも一次イオンが照射される領域が存在する。
このため、照射点が一次イオン照射範囲7の最外周、即ち、クレータ底部13の最外周にやって来ると、一次イオンビーム4の一部は側壁14にも照射されることになる。
この結果、側壁14の表面でもスパッタリング現象が発生し、側壁14の表面に存在している原子やそのイオンが空間に放出される。
そして、平坦なクレータ底部13から放出された二次イオンとともに、側壁14から放出された二次イオンが同時に検出されると、その時刻におけるクレータ底部13の深さ位置とは異なる深さ位置からの二次イオン信号が混入することになり、結果的に、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における分解能(深さ分解能)が低下してしまうことになる。
これに対処するために、例えばエレクトリックゲート法という手法を用いることが考えられる。
エレクトリックゲート法では、図8に示すように、クレータ底部13の中央部に二次イオン計測範囲15を設定する。
そして、照射点が一次イオン照射範囲7の内部を移動する途上で、二次イオン計測範囲15の内部を移動している間だけ、質量分析器6によって二次イオン5の検出が行われるようにする。
なお、二次イオン計測範囲15は、側壁14からは大きく離れているため、照射点が二次イオン計測範囲15の内部にある時には、側壁14に一次イオンビーム4が照射されることはない。このため、二次イオン計測範囲15から放出された二次イオン5には、側壁14から放出された二次イオン5が混入することはない。また、照射点が二次イオン計測範囲15の外にある時には、そもそも二次イオン5の検出自体が行なわれない。
この場合、二次イオン計測範囲15の内外での二次イオン5を検出(計測)するか、しないかの切り替えは、ラスタースキャンによって運動させている一次イオンビーム4の位置と、質量分析器6の動作を連携させることによって行なう。
質量分析器6には、質量分析器6に二次イオン5を取り込むための引き出し電極が設けられている。そして、この引き出し電極に電圧をかければ、二次イオン5が質量分析器6に取り込まれて検出が行なわれる。一方、この引き出し電極に電圧をかけなければ、質量分析器6に二次イオン5が取り込まれることはなく、二次イオン5の検出は行なわれない。
照射点が一次イオン照射範囲7の中のどの位置にいるかに応じて、この引き出し電極にかける電圧をオン・オフし、二次イオン5を検出するか、しないかを切り替えることによって、照射点が二次イオン計測範囲15の内部にある時だけ、二次イオン5が検出されるようにすることができる。
このように、エレクトリックゲート法を用いることによって、クレータ側壁14から放出された二次イオン5が同時に検出されるのを防止して、クレータ底部13の深さ位置から放出された二次イオン5だけが検出されるようにすることができる。これにより、クレータ底部13の深さ位置とは異なる深さ位置からの二次イオン信号の混入を防止することが可能となり、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における深さ分解能を向上させることができる。
しかしながら、クレータ側壁14でスパッタリング現象が発生することによって、クレータ側壁14から放出された原子やイオン(元素)がクレータ底部13に付着(再付着)してしまい、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における深さ分解能(即ち、試料1の深さ方向の元素濃度分析における深さ分解能)を低下させるという課題もあり、これは、エレクトリックゲート法を用いても解決することができない。
ここでは、このような再付着の現象について、図9を参照しながら表面から一定の深さの範囲に高濃度で不純物を含有した不純物含有層16が存在する試料1について組成の深さ方向分布を測定する場合を例に挙げて説明する。
図9に示すように、照射点がクレータ底部13の最外周にやって来ると、クレータ側壁14にも一次イオンビーム4が照射される。
クレータ側壁14には、不純物含有層16の断面が露出している。この露出部分に一次イオンビーム4が照射されると、スパッタリングによって不純物の二次イオン5が放出される。
しかしながら、先に説明したエレクトリックゲート法が適用されていれば、クレータ側壁14から放出された二次イオン5は検出されない。
このため、クレータ側壁14から放出された不純物の二次イオン5が、あたかもクレータ底部13の深さの位置から放出された二次イオン5であるかのように検出されることはない。
しかしながら、不純物含有層16の断面からスパッタリングによって放出された不純物原子(元素)17は、あらゆる方向に飛散するため、クレータ底部13の全面に飛び散り、再付着する。
当然ながら、クレータ底部13の中央部にある二次イオン計測範囲15にも不純物原子17が再付着することになる。
その後、照射点が二次イオン計測範囲15の内部へと移動してくると、もともと二次イオン計測範囲15の最表面に存在していた原子とともに、側壁14から飛散して再付着した不純物原子17も、スパッタリングによってイオン化されて、二次イオン5として放出されることになる。
二次イオン計測範囲15の内部から放出された二次イオン5は検出の対象となるので、再付着した不純物原子17に起因する不純物の二次イオン5も検出されてしまうことになる。
そして、あたかも試料1のその深さの位置に、もともと不純物原子17が存在していたかのような、実際の組成の深さ方向分布とは異なる分布が測定されてしまうことになる。
このようなクレータ側壁14から放出された原子やイオン(元素)がクレータ底部13に再付着してしまうのを抑制するためには、例えば、以下のようにして測定を行なうことが考えられる。
例えば、図10に示すように、試料1の深さ方向の組成分布の測定を行なう範囲である測定実施領域18の周囲をぐるりと一周するように、事前加工領域19を設定する。
そして、事前加工領域19の部分を、あらかじめイオンビームによってエッチングし、掘り下げておく。この事前加工領域19は、少なくとも測定実施領域18で測定を行う深さよりも深い位置までは掘っておく。
この加工の結果、測定実施領域18が、事前加工領域19の中央に、島状に残されることになる。
事前加工領域19の加工が完了したら、測定実施領域18の中央部分に、測定実施領域18よりも小さくなるよう二次イオン計測範囲15を設定する。
そして、測定実施領域18の全体が内部にすっぽりと含まれるように一次イオン照射範囲7を設定した上で、測定実施領域18を最上部からエッチングしながら、試料1の深さ方向の組成分布の測定を行なう。
このような測定方法を採用することによって、上述のクレータ側壁14から放出された原子やイオン(元素)がクレータ底部13に再付着してしまうのを抑制することができ、再付着の影響は少なくなる。
しかしながら、このような測定方法を採用したとしても、異なる形での再付着が発生し、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における深さ分解能(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分析における深さ分解能)を低下させることになる。
つまり、事前加工領域19の中央に島状に残された測定実施領域18をエッチングするためのラスタースキャンの途上で、一次イオンビーム4が測定実施領域18の最外周に移動すると、測定実施領域18の周囲にあらかじめ形成されている壁面20に一次イオンビーム4が照射され、スパッタリングが発生し、壁面20から原子やイオン(元素)が放出される。
そして、壁面20からスパッタリングによって放出された原子やイオン(元素)は、二次イオン計測範囲15に再付着することになる。この結果、上述のクレータ側壁14から放出された原子やイオン(元素)がクレータ底部13に再付着してしまう場合と同様に、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における深さ分解能(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分析における深さ分解能)を低下させることになる。
このように、二次イオン質量分析装置による測定において、一次イオンビーム4を照射して試料1をエッチングして掘り進めながら、同時に試料1の深さ方向の組成分布を測定する場合、試料1の断面が形成され、この断面1にも一次イオンビーム4が照射されることになる。この結果、この断面からスパッタリングによって放出される原子やそのイオン(元素)に起因する二次イオンが、測定対象となる試料表面を構成している元素に起因する二次イオンに混入してしまい、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における深さ分解能(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分析における深さ分解能)を低下させることになる。
そこで、本実施形態では、試料1の異なる深さ方向位置から飛散し、測定対象となる試料1の表面に付着した元素の影響を排除しながら、試料1の深さ方向の元素濃度分布を、より正確に取得できるようにすべく、以下のようにしている。
つまり、一般的な二次イオン質量分析装置における一次イオンビーム4による試料1のエッチングでは、1フレームのラスタースキャンの間に、照射点が図6で説明したような軌道を描きながら、一次イオン照射範囲7の内部を一筆書きで漏れなく塗りつぶすように移動し、一次イオン照射範囲7の内部の全領域に一次イオンビーム4が均一に照射されるようにしている。
これに対して、本実施形態では、図11及び図12に示すような、渦巻状の軌道に沿って照射点を走査させるスパイラルスキャンを用いる。
このスパイラルスキャンも、先に説明したラスタースキャンと同様に、一次イオンガン3の内部に設けられた偏向電極によって生じる電場を制御することによって、一次イオンビーム4を走査させて実行することが可能である。
また、図11及び図12に示すスパイラルスキャンでは、渦巻状(スパイラル状)の軌道に沿って移動する照射点の移動の向きが異なっている。つまり、図11では、照射点が一次イオン照射範囲7の最外周から中心へ向かって移動する内向きスパイラルスキャンを示している。一方、図12では、照射点が一次イオン照射範囲7の中心から最外周へ向かって移動する外向きのスパイラルスキャンを示している。
まず、図11に示す内向きスパイラルスキャンについて説明する。
一次イオンビーム4の試料1への照射を開始すると、まず、照射点は、一次イオン照射範囲7の最外周に位置する始点21を出発して、渦巻状の軌道22に沿って移動を開始する。
照射点は、ぐるぐると渦巻状に回りながら、一次イオン照射範囲7の中心に接近していく。
照射点が一次イオン照射範囲7の中心に位置する終点23に達すると、一次イオンビーム4はオフにされ、その間に、照射点は、再び始点21へと戻される。
照射点が始点21に戻ると、一次イオンビーム4はオンにされ、照射点は、再び、軌道22に沿って移動を開始し、以下、同様の運動を繰り返す。
なお、図11では、終点23と始点21が点線で結ばれているが、この点線は、照射点の移動の流れを説明するためにあくまでも便宜的に表示しただけであり、この点線に沿って試料1への一次イオンビーム4の照射が実際に行なわれるわけではない。
このような一次イオンビーム4の内向きスパイラルスキャンによって、照射点は、始点21を出発して再び始点21に戻ってくるまでの間に、一次イオン照射範囲7の内側を漏れなく塗りつぶすように運動する。
次に、図12に示す外向きスパイラルスキャンについて説明する。
図12に示す外向きスパイラルスキャンの場合、渦巻状の軌道22に沿って移動する照射点の移動の向きが、図11の内向きスパイラルスキャンとは逆であり、照射点は、一次イオン照射範囲7の中心に位置する始点21を出発して、渦巻状の軌道22に沿って、一次イオン照射範囲7の最外周に位置する終点23へと向かうように移動する。
照射点が終点23に達すると、一次イオンビーム4がオフにされ、その間に、照射点は、再び始点21に戻される。
始点21で一次イオンビーム4はオンにされ、それ以降、照射点は同じ運動を繰り返す。
なお、図12では、終点23と始点21が点線で結ばれているが、この点線は、照射点の移動の流れを説明するためにあくまでも便宜的に表示しただけであり、この点線に沿って試料1への一次イオンビーム4の照射が実際に行なわれるわけではない。
このような一次イオンビーム4の外向きスパイラルスキャンによって、照射点は、始点21を出発して再び始点21に戻ってくるまでの間に、一次イオン照射範囲7の内側を漏れなく塗りつぶすように運動する。
なお、このようなスパイラルスキャンの場合も、照射点が始点21を出発して再び始点21に戻ってくるまでの運動は、一次イオン照射範囲7の内部での走査の最小単位と考えられ、この運動が1フレームであると解釈することができる。
また、このようなスパイラルスキャンの場合も、照射点の移動速度を一定とすることにより、一次イオン照射範囲7の内側では、どの位置においても、単位面積および単位時間当たりに試料1の表面に照射される一次イオンの数は等しくなり、一次イオン照射範囲7の内側は、均一な速度でエッチングされることになる。
ところで、一般的な二次イオン質量分析装置には、一次イオンビーム4の走査の方法として、図6示したラスタースキャンだけでなく、このようなスパイラルスキャンも選択できるようになっているものもある。
しかしながら、一般に、二次イオン質量分析装置においてスパイラルスキャンを選択する場合、内向きスパイラルスキャン及び外向きスパイラルスキャンのどちらか一方だけを何フレームにもわたって繰り返し行なって、一次イオン照射範囲7の内部の均一なエッチングを進めながら、同時に二次イオン信号強度の計測を行なうにすぎない。
この場合、上述のラスタースキャンを行なう場合と同様に、クレータ側壁14でスパッタリング現象が発生することによって、クレータ側壁14から放出された原子やイオン(元素)がクレータ底部13に付着(再付着)してしまい、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における深さ分解能(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分析における深さ分解能)を低下させることになる。
ここでは、表面から一定の深さの範囲に高濃度で不純物を含有した不純物含有層16が存在する試料1(図9参照)に対してスパイラルスキャンを行なった場合の、1フレームの間のクレータ底部13への不純物原子17の付着の挙動を例に挙げて説明する。
ここで、図13、図14は、一次イオンビーム4のスパイラルスキャンが行なわれている場合について、クレータ12を断面方向から見た様子を示しており、図13は内向きスパイラルスキャンの場合を示しており、図14は外向きスパイラルスキャンの場合を示している。
なお、図13、図14中、垂直方向下向きの矢印は照射点の位置を示しており、また、水平方向の矢印は照射点の移動の方向を示している。また、クレータ底部13を示す直線のうち、太い線は、側壁14から放出された不純物原子17が再付着している部分を示しており、細い線は、再付着していた不純物原子17がスパッタリングによって除去されて清浄な試料表面が露出した部分を示している。
まず、内向きスパイラルスキャンの場合、図13(A)に示すように、あるフレームがスタートすると、一次イオンビーム4は、一次イオン照射範囲7の最外周、即ち、クレータ底部13の最外周に照射されるため、クレータ側壁14に一次イオンビーム4が照射され、側壁14から不純物原子17が放出され、クレータ底部13の全面に不純物原子17が飛散して再付着する。
その後、内向きスパイラルスキャンが進行し、照射点が側壁14から離れると、側壁14には一次イオンビーム4が照射されなくなり、側壁14からの不純物原子17の新たな放出は止まる。
また、一次イオンビーム4によってクレータ底部13の最表面がエッチングされた部分では、図13(B)に示すように、クレータ底部13に再付着していた不純物原子17も除去され、清浄なクレータ底部13の表面が露出する。
このため、内向きスパイラルスキャンの進行に伴って、図13(C)に示すように、最表面から不純物原子17が除去された清浄なクレータ底部13の領域が、最外周から内側に向かって徐々に広がっていく。
そして、図13(D)に示すように、照射点がクレータ底部13の中心に到達すると、クレータ底部13の全面が、不純物原子17が除去された清浄な試料表面となる。
その後、次のフレームに進むため、照射点は、クレータ底部13の最外周へと戻され、図13(A)に示すように、最外周に一次イオンビーム4が照射されると、クレータの側壁14から不純物原子17が放出され、クレータ底部13の全面は、再び、不純物原子17によって覆われる。
このように、内向きスパイラルスキャンを繰り返して試料1のエッチングが行なわれると、クレータ底部13への不純物原子17の再付着と、エッチングによる不純物原子17の除去とが繰り返し行なわれることになる。
次に、外向きスパイラルスキャンの場合、図14(A)に示すように、あるフレームがスタートする時点で、クレータ底部13の全面に不純物原子17が再付着した状態になっている。つまり、あるフレームの直前のフレームで、照射点がクレータ底部13の最外周に到達し、最外周に一次イオンビーム4が照射されると、クレータの側壁14から不純物原子17が放出され、クレータ底部13の全面は不純物原子17によって覆われる。この状態で、照射点は、クレータ底部13の中心へ戻され、あるフレームがスタートする。このため、あるフレームがスタートする時点で、クレータ底部13の全面に不純物原子17が再付着した状態になっている。
その後、あるフレームで外向きスパイラルスキャンが進行していくと、図14(B)、図14(C)に示すように、最表面から不純物原子17が除去された清浄なクレータ底部13の領域が、中央から最外周に向かって徐々に広がっていく。
そして、照射点がクレータ底部13の最外周に到達する直前に、クレータ底部13の全面が、不純物原子17が除去された清浄な試料表面となる。そして、照射点がクレータ底部13の最外周に到達し、最外周に一次イオンビーム4が照射されると、図14(D)に示すように、クレータの側壁14から不純物原子17が放出され、クレータ底部13の全面は、再び、不純物原子17によって覆われる。
このように、外向きスパイラルスキャンを繰り返して試料1のエッチングが行なわれると、クレータ底部13への不純物原子17の再付着と、エッチングによる不純物原子17の除去とが繰り返し行なわれることになる。
上述のように、内向きスパイラルスキャンを繰り返して行なう場合も、外向きスパイラルスキャンを繰り返して行なう場合も、クレータ側壁14に一次イオンビーム4が照射されることによって側壁14から放出された不純物原子17がクレータ底部13の全面に再付着する過程と、一次イオンビーム4によるエッチングによって不純物原子17が除去された清浄な試料表面が露出し、その領域が一次イオン照射範囲7内で徐々に拡大していく過程とが交互に繰り返されることになる。
しかしながら、このように内向きスパイラルスキャン又は外向きスパイラルスキャンを繰り返して行なう場合、クレータ底部13が一次イオンビーム4によってエッチングされる時には、一次イオンビーム4が照射される位置に、クレータの側壁14から放出されて再付着した不純物原子17が存在することになる。
このため、クレータ底部13から放出される二次イオンには、このような再付着した不純物原子17がイオン化した二次イオンも必ず含まれることになる。したがって、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における深さ分解能(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分析における深さ分解能)を低下させることになる。
そこで、本実施形態では、上述のように内向きスパイラルスキャン又は外向きスパイラルスキャンを何フレームにもわたって繰り返して行なうのではなく、内向きスパイラルスキャンと外向きスパイラルスキャンを、1フレームずつ交互に連続して行なうようにしている。これにより、クレータ側壁14から放出された原子やイオン(元素)がクレータ底部13に付着(再付着)してしまい、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における深さ分解能(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分析における深さ分解能)が低下してしまうのを防止する。
この場合、通常、試料1のある深さにおける特定の二次イオン信号強度の計測には、1フレームが充てられるのに対し、本実施形態では、特定の二次イオン信号強度の計測に、連続する2フレームが充てられることになる。
ここでは、この連続する2フレームのうち、1フレーム目で内向きスパイラルスキャンを行ない、2フレーム目で外向きスパイラルスキャンを行なうようにしている。そして、1フレーム目の内向きスパイラルスキャン中は二次イオン信号強度の計測は行なわず、2フレーム目の外向きスパイラルスキャン中にのみ、二次イオン信号強度の計測を行ない、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分析)を行なうようにしている。
ここで、本実施形態における内向きスパイラルスキャン及び外向きスパイラルスキャンと二次イオン信号強度の計測の流れを説明する。
ここでは、表面から一定の深さの範囲に高濃度で不純物を含有した不純物含有層16が存在する試料1(図9参照)に対して、1フレーム目の内向きスパイラルスキャンを行ない、連続して、2フレーム目の外向きスパイラルスキャンを行なった場合を例に挙げ、クレータ底部13への不純物原子17の付着の挙動も説明する。
ここで、図1(A)〜図1(G)は、内向きスパイラルスキャン及び外向きスパイラルスキャンが行なわれている場合について、クレータ12を断面方向から見た様子を示している。また、図1(A)〜図1(C)は、1フレーム目の内向きスパイラルスキャンが行なわれている様子を示しており、図1(D)〜図1(G)は、2フレーム目の外向きスパイラルスキャンが行なわれている様子を示している。
なお、図1(A)〜図1(G)中、垂直方向下向きの矢印は照射点の位置を示しており、また、水平方向の矢印は照射点の移動の方向を示している。また、クレータ底部13を示す直線のうち、太い線は、側壁14から放出された不純物原子17が再付着している部分を示しており、細い線は、再付着していた不純物原子17がスパッタリングによって除去されて清浄な試料表面が露出した部分を示している。
まず、図1(A)に示すように、1フレーム目の内向きスパイラルスキャンがスタートすると、クレータ12の側壁14に一次イオンビーム4が照射され、側壁14から不純物原子17が放出され、クレータ底部13の全面に不純物原子17が飛散して再付着する。
その後、図1(B)、図1(C)に示すように、内向きスパイラルスキャンが進行することで、クレータ底部13の最外周から中心に向かって、不純物原子17が除去された清浄なクレータ底部13の領域が広がっていく。
そして、1フレーム目が終了した時点では、クレータ底部13の全面が清浄な表面となる[図1(D)参照]。
なお、この内向きスパイラルスキャンによるエッチングで放出される二次イオン5には、側壁14から放出されて再付着した不純物原子17がイオン化した二次イオン5が含まれているため、この内向きスパイラルスキャンが行なわれている間は、敢えて二次イオン5の検出、即ち、二次イオン信号強度の計測は行なわない。
このように、1フレーム目の内向きスパイラルスキャンを行なう工程は、二次イオン信号強度の計測は行なわず、クレータ底部13の表面から再付着した不純物原子17を除去して清浄にするための工程とする。
このような1フレーム目の内向きスパイラルスキャンが終了したら、照射点をクレータ底部13の中心から最外周に戻すことはせず、そのまま、図1(D)〜図1(G)に示すように、次の2フレーム目の外向きスパイラルスキャンを行なう。
そして、2フレーム目の外向きスパイラルスキャンがスタートする時点では、クレータ底部13の表面は不純物原子17が除去された清浄な状態となっている。
このため、図1(D)〜図1(G)に示すように、2フレーム目の外向きスパイラルスキャンが進行している間に、クレータ底部13から放出される二次イオン5の検出、即ち、二次イオン信号強度の計測を行ない、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分析)を行なう。
その後、2フレーム目の外向きスパイラルスキャンが完了したら、以降、同様の処理を繰り返す。
なお、2フレーム目の外向きスパイラルスキャンにおいて、照射点がクレータ底部13の最外周に到達し、最外周に一次イオンビーム4が照射されると、クレータ側壁14に一次イオンビーム4が照射され、側壁14から不純物原子17が放出され、図1(G)に示すように、クレータ底部13の全面に不純物原子17が飛散して再付着することになる。このため、2フレーム目の外向きスパイラルスキャンが完了した時点では、クレータ底部13の全面は不純物原子17によって覆われた状態となる。
上述のように、内向きスパイラルスキャンと外向きスパイラルスキャンを連続して行ない、外向きスパイラルスキャンを行なっている間だけ、クレータ底部13から放出される二次イオンの検出、即ち、二次イオン信号強度の計測を行ない、この2つの連続する工程を繰り返すことによって、クレータ側壁14から放出される不純物原子17の影響を受けることなく、試料1の材料組成の深さ方向分布(プロファイル)の測定を行なうことができる。つまり、クレータ側壁14から放出された不純物原子17の再付着の影響を受けないで、試料1の深さ方向の元素濃度分布を取得することができる。
ところで、外向きスパイラルスキャンを行なっている間は、二次イオン信号強度の計測が行なわれているが、照射点が側壁14に接近すると、一次イオンビーム4がクレータ側壁14にも照射されるようになり、側壁14から放出された二次イオン5が直接検出されてしまい、試料1の深さ方向の元素濃度分布の測定における深さ分解能を低下させることになる。
これを回避するため、上述の実施形態の場合にも、エレクトリックゲート法(図8参照)を適用し、一次イオン照射範囲7の中心部を二次イオン計測範囲15に設定し、その内部に照射点がある時にのみ二次イオン5の検出、即ち、二次イオン信号強度の計測を行ない、照射点が二次イオン計測範囲15の外に出てからは、二次イオン信号強度の計測を行なわないようにするのが好ましい。
具体的には、一次イオン照射範囲7の面積のうち、その中心部の最大約25%程度の広さの領域を二次イオン計測範囲15として設定し、その領域からいずれの向きにおいても、クレータ側壁14との間に充分な距離が確保されるようにすることが望ましい。
また、上述の実施形態では、向きの異なるスパイラルスキャンを1フレームずつ連続して行なうが、内向きスパイラルスキャンは、あくまでも、クレータ底部13の表面に再付着した原子やイオン(元素)を除去して、クレータ底部13を清浄な表面にするために行なわれる。これに対し、外向きスパイラルスキャンは、二次イオン5の検出、即ち、二次イオン信号強度の計測を行ない、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分析)を行なうためのものである。
このため、外向きスパイラルスキャンを行なう場合の条件(例えばエッチング条件)は、SIMS測定の感度などに直結する重要な測定条件の一つであるため、試料の内容や測定の目的に応じて最適化するのが好ましい。
一方、内向きスパイラルスキャンを行なう場合の条件(例えばエッチング条件)は、外向きスパイラルスキャンを行なう場合の条件と同一である必要はなく、クレータ底部13の表面に再付着した原子やイオン(元素)をスパッタリングによって除去できるようになっていれば良い。
例えば、内向きスパイラルスキャンを行なう場合に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによってごくごく浅いエッチングが行なわれるだけでも良い。つまり、外向きスパイラルスキャンを行なう場合の条件、即ち、外向きスパイラルスキャンを行なう場合に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによって行なわれるエッチングの条件に対して、大幅にエッチングレートを小さくした、ごくごく浅いエッチングが行なわれるような条件に、内向きスパイラルスキャンを行なう場合の条件、即ち、内向きスパイラルスキャンを行なう場合に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによって行なわれるエッチングの条件を設定すれば良い。
このように、外向きスパイラルスキャンを行なう場合に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによってエッチングされる量が、内向きスパイラルスキャンを行なう場合に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによってエッチングされる量よりも多くなるようにするのが好ましい。
これにより、外向きスパイラルスキャンを行なって二次イオン5の検出、即ち、二次イオン信号強度の計測を行なう際に、エッチングされる量が多くなり、二次イオンの量が多くなるため、感度が上がることになる。
但し、良好な感度を確保することができるのであれば、内向きスパイラルスキャンを行なう場合に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによってエッチングされる量が、外向きスパイラルスキャンを行なう場合に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによってエッチングされる量よりも多くなるようにしても良い。
また、内向きスパイラルスキャンを行なう場合に一次イオンビーム4の照射によるスパッタリングによってエッチングされる量を少なくすることによって、試料1を無駄に掘り進んでしまうことがなくなり、外向きスパイラルスキャンを行なう場合に行なわれる二次イオンの検出、即ち、二次イオン信号強度の計測の深さ方向の間隔を短くすることも可能となる。
このようにして、フレーム毎にエッチング量を変化させるための最も確実で効果的な方法は、フレーム毎に一次イオンビーム4の走査速度、即ち、試料表面での照射点の移動速度を変化させることである。
具体的には、外向きスパイラルスキャンのスキャン速度(走査速度)が内向きスパイラルスキャンのスキャン速度よりも遅くなるようにするのが好ましい。つまり、外向きスパイラルスキャンが行なわれる際の一次イオンビーム4の走査速度が、内向きスパイラルスキャンが行なわれる際の一次イオンビーム4の走査速度よりも遅くなるようにするのが好ましい。この場合、二次イオン質量分析装置を、一次イオンビーム4の走査速度をフレーム毎に異なる値に設定できるようになっていることになる。
これにより、外向きスパイラルスキャンを行なって二次イオン5の検出、即ち、二次イオン信号強度の計測を行なう際に、スキャン速度が遅くなり、エッチングされる量が多くなり、二次イオンの量が多くなるため、感度が上がることになる。
但し、良好な感度を確保することができるのであれば、内向きスパイラルスキャンのスキャン速度が外向きスパイラルスキャンのスキャン速度よりも遅くなるようにしても良い。
なお、ある条件のもとで実験を行なった結果、外向きスパイラルスキャンにおける一次イオンビーム4の走査速度に対して、内向きスパイラルスキャンにおける一次イオンビーム4の走査速度を約10倍に設定しても、内向きスパイラルスキャンによるエッチングにおいて、クレータ底部13の表面に付着した原子やイオン(元素)を除去する効果が充分に得られることが確認できた。一般的には、内向きスパイラルスキャンと外向きスパイラルスキャンの一次イオンビーム4の走査速度は、試料の内容や測定の目的に応じて、個々に最適化するのが好ましい。
ところで、SIMS測定では、1つもしくは複数の元素の二次イオン信号強度を計測する作業を、エッチングによって試料を掘り進みながら繰り返し行ない、各元素の二次イオン信号強度の深さ方向での変化を計測する。
ここで、図4は、SIMS測定における試料1の深さ方向の測定の流れの例を示すもので、試料1中に含まれる3つの元素、即ち、質量数aの元素A、質量数bの元素B、質量数cの元素Cについて、深さ方向の濃度分布を測定する場合について示している。
二次イオン質量分析装置に備えられる質量分析器6では、同時に二次イオン5の数を検出できるのは、1つの質量数についてのみである。このため、異なる3つの質量数の二次イオン5の数を検出する場合には、質量数a、質量数b、質量数cを交互に一つずつ検出することになる。
したがって、図4に示すように、連続して行なうこれら3つの質量数の二次イオンの検出、即ち、二次イオン信号強度の計測を1サイクルとして、これを何サイクルも繰り返し行なうことによって、各質量数の二次イオン信号強度の深さ方向での変化、即ち、各元素の深さ方向での変化を測定することになる。なお、各サイクルで試料1の深さ方向位置が異なることになる。
なお、図4の例では、測定する元素は3種類としたが、さらに多くの種類の元素を並行して測定する場合もまったく同様で、一般的にn種類の元素を測定する場合には、測定のあるサイクルにおいて、1番目、2番目、3番目というように、順に異なる質量数の二次イオン信号強度の計測を進めていき、最後のn番目の質量数の二次イオン信号強度の計測が終わったら、そのサイクルの測定は終了となり、測定は次のサイクルへと移り、再び1番目の質量数の二次イオン信号強度の計測が始められる。
図4に示した例でその測定の流れに沿って順に見ていくと、測定開始直後の1フレーム目では質量数aの二次イオン信号強度を計測し、続く2フレーム目では質量数bの二次イオン信号強度を計測し、3フレーム目では質量数cの二次イオン信号強度を計測して、各元素A〜Cの1サイクル目の測定を行なう。
次いで、その次の4フレーム目から各元素A〜Cの2サイクル目の測定に入り、4フレーム目で再び質量数aの二次イオン信号強度を計測し、続く5フレーム目では質量数bの二次イオン信号強度を計測し、6フレーム目では質量数cの二次イオン信号強度を計測する。
以降、同様に、各元素A〜Cの各サイクルの測定、即ち、各質量数a〜cの二次イオン信号強度の計測が進められる。
本実施形態では、1回の二次イオン信号強度の計測には、連続する2つのフレームが充てられる。
つまり、本実施形態では、連続する2つのフレームのうち、1フレーム目で内向きスパイラルスキャンが行なわれるが、クレータ底部13の最表面をエッチングして付着している原子やイオン(元素)を除去するだけであって、二次イオン信号強度の計測は行なわれない。そして、2フレーム目で外向きスパイラルスキャンが行なわれ、この2フレーム目で二次イオン信号強度の計測が行なわれる。
このため、1回の二次イオン信号強度の計測、即ち、1つの質量数の二次イオン信号強度の計測に、連続する2つのフレームが充てられる。
この場合、連続する2つのフレームのうち、外向きスパイラルスキャンが行なわれる2フレーム目で、1つの質量数の二次イオン信号強度の計測が行なわれる。
このため、3つの質量数の二次イオン信号強度の計測に、連続する2つのフレームを3回繰り返すことになり、合計6フレームのスパイラルスキャンが充てられることになる。
したがって、各元素A〜Cの各サイクルの測定に、連続する2つのフレームを3回繰り返すことになり、合計6フレームのスパイラルスキャンが充てられることになる。
これは、エッチングの進行の観点からは、次の質量数の二次イオン信号強度の計測に移るたびに、2フレーム分だけエッチングが進行することになる。また、同一の質量数の検出を追って行くと、隣り合うサイクルの間では、6フレーム分だけエッチングが進行することになる。
次に、上述の二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50のハードウェア構成について、図3を参照しながら説明する。
本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50のハードウェア構成は、例えば図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)102、メモリ101、通信制御部109、入力装置106、表示制御部103、表示装置104、記憶装置105、可搬型記録媒体108のドライブ装置107を備え、これらがバス110によって相互に接続された構成になっている。なお、ハードウェア構成はこれに限られるものではない。
ここで、CPU102は、コンピュータ全体を制御するものであり、プログラムをメモリ101に読み出して実行し、本二次イオン質量分析装置に必要な処理を含む様々な処理を行なうようになっている。
メモリ101は、例えばRAMなどの主記憶装置であり、プログラムの実行、データの書き換え等を行なう際に、プログラム又はデータを一時的に格納するものである。
通信制御部109(通信インターフェース)は、例えばLANやインターネットなどのネットワークを介して、他の装置と通信するために用いられるものである。この通信制御部109は、コンピュータに元から組み込まれていても良いし、後からコンピュータに取り付けられたNIC(Network Interface Card)でも良い。
入力装置106は、例えば、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイス、キーボードなどである。
表示装置104は、例えば液晶ディスプレイなどの表示装置である。
表示制御部103は、例えば試料1の材料組成の深さ方向分布(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分布)の測定の結果などを表示装置104に表示させるための制御を行なうものである。
記憶装置105は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やSSDなどの補助記憶装置であり、各種のプログラム及び各種のデータが格納されている。本実施形態では、記憶装置105には、後述の二次イオン質量分析装置の制御プログラムが格納されている。なお、メモリ101として、例えばROM(Read Only Memory)を備えるものとし、これに各種のプログラムや各種のデータを格納しておいても良い。
ドライブ装置107は、例えばフラッシュメモリ等の半導体メモリ、光ディスク、光磁気ディスク等の可搬型記録媒体108の記憶内容にアクセスするためのものである。
本実施形態では、入力装置106及び表示装置104として、図2に示すように、操作盤24を備える。そして、オペレータが、操作盤24、即ち、操作盤24の表示画面を操作することで、二次イオン質量分析装置の各部分に対して、例えば測定動作の指示などの様々な指示を与えることができるようになっている。また、操作盤24は、二次イオン質量分析装置の運転状況についての様々な情報、例えば試料1の材料組成の深さ方向分布(即ち、試料の深さ方向の元素濃度分布)の測定の結果などを画面に表示し、オペレータに伝えるようになっている。
このようなハードウェア構成を備えるコンピュータ50において、CPU102が、例えば記憶装置105に格納されている二次イオン質量分析装置の制御プログラムをメモリ101に読み出して実行することで、後述の本二次イオン質量分析装置の制御演算機能が実現される。
つまり、図2に示すように、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、その制御演算機能として、主制御部25と、偏向電極制御部26と、引き出し電極制御部27と、ブランキング電極制御部32と、イオン強度計測部30と、記録処理部31とを備える。
なお、主制御部25、偏向電極制御部26、引き出し電極制御部27、ブランキング電極制御部32は、制御機能であるため、制御部51ともいう。また、主制御部25、イオン強度計測部30、記録処理部31は、演算機能であるため、演算部52ともいう。
そして、操作盤(表示画面)24を介して二次イオン質量分析装置に与えられた指示は、まず、装置全体の動作を制御する中心的な部分である主制御部25に伝えられる。主制御部25は、装置内部の各部分に対して動作の指示を与えるとともに、各部分から戻された情報を処理する。
まず、主制御部25は、与えられた条件に従って一次イオンガン3に一次イオンビーム4の照射指示を出す。
つまり、主制御部25は、偏向電極制御部26に指示を出し、一次イオンガン3の内部に設置された偏向電極を動作させて、一次イオンビーム4に指定した動作でのスパイラルスキャンを行なわせる。ここでは、内向きスパイラルスキャンと外向きスパイラルスキャンとを連続して、繰り返し行なわせる。
また、主制御部25は、一次イオンガン3の内部に設けられたブランキング電極を制御するためのブランキング電極制御部32にも指示を出す。ここで、ブランキング電極は、一次イオンガン3の内部にあって、一次イオンビーム4のオンとオフを切り替えるための電極である。
このようにして、主制御部25は、偏向電極制御部26とブランキング電極制御部32とを連携させながら、試料1への一次イオンビーム4の照射を自在に操る。
また、主制御部25は、引き出し電極制御部27に指示し、質量分析器6に付属する引き出し電極を動作させ、試料1からスパッタリングによって放出された二次イオン5を質量分析器6の内部に取り込む。
ここで、質量分析器6の内部は、質量分離器28とイオン検出器29とに分けられる。
質量分析器6に取り込まれた二次イオン5は、まず、質量分離器28によって処理される。
質量分析器6に取り込まれた二次イオン5は、様々な質量数の二次イオンが一緒になった状態であるが、これらは質量分離器28の動作によってフルイにかけられ、主制御部25の指示によって設定された特定の質量数の二次イオン5のみが、イオン検出器29に送り込まれる。
イオン検出器29は、二次イオン5を捕獲するごとにパルス状の電気信号を発生させる。
そして、イオン検出器29が発生したパルス状の電気信号(二次イオン電気信号)は、イオン強度計測部30へと送られ、単位時間当たりの信号数、即ち、単位時間当たりに検出された二次イオン5の数が計測される。
このようにして得られた単位時間当たりに検出された二次イオン5の数が、二次イオン信号強度として扱われる。
各々の時刻における二次イオン信号強度の値は、記録処理部31において、測定開始からの経過時間、即ち、エッチング開始からの経過時間との組にされ、主制御部25に送られて記憶される。
二次イオン信号強度は、その質量数の元素の濃度に比例しているため、記録処理部31で、エッチング開始からの経過時間と二次イオン信号強度の関係をプロットすれば、測定中のその質量数の元素の深さ方向の濃度分布が得られる。
また、質量分析器6では、同時に一つの質量数の二次イオン信号強度しか計測できないが、図4に例を示したような測定の流れにしたがって、質量分離器28を通過させる二次イオン5の質量数の設定を切り替えて、複数の異なる質量数について二次イオン信号強度を交互に計測することを繰り返すことによって、並行して複数の元素の試料1の深さ方向の濃度分布を測定することができる。
特に、本実施形態では、主制御部25が、主として偏向電極制御部26と引き出し電極制御部27の間の連携を取り、1フレームごとに、スパイラルスキャンの向きを変えたり、二次イオン信号強度の計測をするか、しないかを切り替えたりすることによって、試料1の深さ方向の元素濃度分布の測定、即ち、試料1の深さ方向の元素濃度分析を、より正確に行なえるようにしている。
以下、本実施形態の二次イオン質量分析装置を構成するコンピュータにおいて、CPU102がメモリ101に読み込まれた二次イオン質量分析装置の制御プログラムに従って実行する処理(二次イオン質量分析装置の制御方法)について、図5を参照しながら、より具体的に説明する。
ここで、図5は、本二次イオン質量分析装置を用いた試料1の材料組成の深さ方向分布の測定における測定開始から測定終了に至るまでの処理の流れを示したフローチャートである。
なお、ここでは、エレクトリックゲート法(図8参照)を適用し、一次イオン照射範囲7の中心部を二次イオン計測範囲15に設定し、その範囲内をスキャンしている間だけ二次イオン5の検出を行ない、その範囲の外に出てからは、二次イオン5の検出を行なわない場合を例に挙げて説明する。
まず、オペレータ(測定者)は、予め、測定条件などの測定に必要なすべての設定を、操作盤(表示画面)24を通じて、測定装置である二次イオン質量分析装置に指示しておく。このオペレータが指示したすべての設定内容は補助記憶装置105に記憶される。
そして、オペレータが、操作盤(表示画面)24から測定の開始を指示すると、測定を開始する。
まず、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、主制御部25によって、補助記憶装置105に記録されている測定条件などの設定値を読み込む(ステップS1)。
次に、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、主制御部25によって、ブランキング電極制御部32に指示を出し、一次イオンガン3の内部のブランキング電極を操作して、一次イオンガン3、即ち、一次イオンビーム4をONにする(ステップS2)。これにより、一次イオンガン3から試料1の表面に一次イオンビーム4が照射される。
次に、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、主制御部25によって、検出する二次イオン5の質量数の設定を行なう。
ここでは、N種類の元素の試料1の深さ方向の濃度分布を同時に並行して測定することとする。
このため、主制御部25には、検出を行なう順番を示す1からNまでの整数を添え字とするN個の配列m(1)、m(2)、・・・、m(k)、・・・、m(N)が用意され、これらのそれぞれに、測定を行なう元素、即ち、検出する二次イオン5の質量数の値が格納されている。
そして、検出する二次イオン5の質量数m(k)の設定を、添え字kを1からNまで1ずつ増やし、m(1)、m(2)、・・・、m(N)のように、順に変えながら測定を進める。N種類の元素の測定が一通り終わったら、添え字をNから1に戻して、再び、m(1)から順に測定を行なう。
このような測定サイクルを繰り返すことによって、N種類の元素の試料1の深さ方向の濃度分布の測定を行なっていく。
具体的には、検出する二次イオン5の質量数の設定を行なうべく、まず、k=Nかどうかの判定を行なう(ステップS3)。
そして、k=Nでないと判定した場合には、NOルートへ進み、検出する二次イオン5の質量数、即ち、質量分離器28で分離する二次イオン5の質量数をm(k+1)に設定する(ステップS4)。このように、直前に設定されていた、検出する二次イオン5の質量数m(k)の添え字kの値に1を加えることで、次に検出する二次イオン5の質量数をm(k+1)に設定して、これによって特定される質量数の二次イオン5の検出が行なわれる。
一方、k=Nであると判定した場合には、YESルートへ進み、検出する二次イオン5の質量数、即ち、質量分離器28で分離する二次イオン5の質量数をm(1)に設定する(ステップS5)。つまり、k=Nであると判定した場合は、検出する二次イオン5の質量数m(k)の添え字kの値をNから1に戻し、検出する二次イオン5の質量数をm(1)に設定して、再び、これによって特定される質量数の二次イオン5の検出が行なわれる。
ここでは、測定開始時には、検出する二次イオン5の質量数m(k)の添え字kにまだ値は代入されておらず、k=0となっている。このため、ステップS3でk=Nでないと判定し、NOルートへ進み、検出する二次イオン5の質量数、即ち、質量分離器28で分離する二次イオン5の質量数を、m(k+1)、即ち、m(1)に設定する(ステップS4)。このため、以降の処理で、質量数m(1)の二次イオン5の検出、二次イオン信号強度の計測及びこれのプロットが行なわれる。
次に、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、主制御部25によって、一次イオンビーム4の運動設定を内向きスパイラルスキャンに設定する(ステップS6)。
なお、ここでは、スパイラルスキャンでの一次イオンビーム4の運動のさせ方は、内向きと外向きとでそれぞれ個別に経路や速度などの詳細が設定されている。
ここでは、まず、主制御部25が、内向きスパイラルスキャンの動作設定を、偏向電極制御部26へ送る。
次に、主制御部25から送られてきた内向きスパイラルスキャンの動作設定に基づいて、偏向電極制御部26は、一次イオンガン3の内部の偏向電極に印加する電圧の時間変化の制御を開始し、一次イオンビーム4が内向きスパイラルスキャンの動作を開始する(ステップS7)。
その後、一次イオンビーム4が内向きスパイラルスキャンを行なって、やがて一次イオン照射範囲7の中心に到達すると、内向きスパイラルスキャンの動作を終了する(ステップS8)。
そして、内向きスパイラルスキャンが終了したら、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、主制御部25によって、一次イオンビーム4の運動設定を外向きスパイラルスキャンに設定する(ステップS9)。
ここでは、まず、主制御部25が、外向きスパイラルスキャンの動作設定を、偏向電極制御部26へ送る。
次に、主制御部25から送られてきた外向きスパイラルスキャンの動作設定に基づいて、偏向電極制御部26は、一次イオンガン3の内部の偏向電極に印加する電圧の時間変化の制御を開始し、一次イオンビーム4が外向きスパイラルスキャンの動作を開始する(ステップS10)。
これと同時に、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、主制御部25によって、引き出し電極制御部27に指示し、質量分析器6の内部の引き出し電極をONにし、試料1からスパッタリングによって放出された二次イオン5の質量分析器6の内部への取り込みを開始する(ステップS11)。
そして、一次イオン照射範囲7の中心部に設定されている二次イオン計測範囲15の内部で、一次イオンビーム4が外向きスパイラルスキャンを続けている間、試料1からスパッタリングによって放出された二次イオン5の質量分析器6の内部への取り込みを続ける。
このようにして、二次イオン計測範囲15の内部で一次イオンビーム4が外向きスパイラルスキャンを続けている間に、試料1からスパッタリングによって放出された二次イオン5が質量分析器6の内部へ取り込まれると、設定されている質量数[この時点ではm(1)]の二次イオン5が質量分離器28によって分離され、イオン検出器29に送り込まれる。そして、イオン検出器29は、設定されている質量数[この時点ではm(1)]の二次イオン5を検出し、この二次イオン5を検出する毎にパルス状の電気信号(二次イオン信号)を発生し、イオン強度計測部30へ送る(ステップS12)。
このように、内向きスパイラルスキャンと外向きスパイラルスキャンが連続して行なわれ、外向きスパイラルスキャンが行なわれている間だけ二次イオン5を検出するため、クレータ側壁14から放出される原子やイオン(元素)の影響を受けることなく、後述するようにして、試料1の材料組成の深さ方向分布の測定、即ち、試料の深さ方向の元素濃度分布の測定を行なうことができる。
その後、一次イオンビーム4が、外向きスパイラルスキャンを続けていき、二次イオン計測範囲15の外側に移動したら、クレータ側壁14から放出される二次イオン5が検出されないように、設定されている質量数[この時点ではm(1)]の二次イオン5の検出を終了する。なお、主制御部25は、偏向電極制御部26に対する制御を通じて、一次イオンビーム4がどの位置にあるかを常に監視している。
ここでは、一次イオンビーム4が、外向きスパイラルスキャンを続けていき、二次イオン計測範囲15の外側に移動したら、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、主制御部25によって、引き出し電極制御部27に指示し、質量分析器6の内部の引き出し電極をOFFにし、試料1からスパッタリングによって放出された二次イオン5の質量分析器6の内部への取り込みを打ち切り、設定されている質量数[この時点ではm(1)]の二次イオン5の検出を終了する(ステップS13)。
そして、設定されている質量数[この時点ではm(1)]の二次イオン5の検出を終了すると、一次イオンビーム4が二次イオン計測範囲15の内部に照射されている間に検出された二次イオン5の総数がわかる。このため、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、イオン強度計測部30によって、一次イオンビーム4が二次イオン計測範囲15の内部に照射されている間に検出された二次イオン5の総数を元に、単位時間当たりに検出された二次イオン5の数を算出する(ステップS14)。このようにして、単位時間当たりに検出された二次イオン5の数を算出することで、設定されている質量数[この時点ではm(1)]の二次イオン信号強度が計測されたことになる。
このようにして計測された二次イオン信号強度の値は、記録処理部31へ送られ、質量数[この時点ではm(1)]、時刻の情報と組にして、記録処理部31に記録される(ステップS15)。
そして、質量数[この時点ではm(1)]、時刻及び二次イオン信号強度の値は、記録処理部31から主制御部25へ送られ、主制御部25で例えば測定開始からの経過時間との関係としてプロットされ、操作盤24の表示画面上に表示されて、オペレータに対してリアルタイムに伝えられる(ステップS16)。
ところで、一次イオンビーム4が二次イオン計測範囲15の外に出た時点で、二次イオン5の検出は打ち切られているが、一次イオンビーム4は、その後も二次イオン計測範囲15の外側で外向きのスパイラルスキャンを続ける(ステップS17)。
その後、一次イオン照射範囲7の最外周の終点に到達したら、外向きスパイラルスキャンを終了する(ステップS18)。
そして、測定開始からの経過時間が、オペレータが予め設定した測定終了時間に達しているかどうかを判定し(ステップS19)、まだ測定終了時間に達していないと判定した場合には、Yesルートへ進み、ステップS3へ戻って、k=Nかどうかの判定を行なう。この時点では、ステップS3でk=Nでないと判定し、NOルートへ進み、検出する二次イオン5の質量数、即ち、質量分離器28で分離する二次イオン5の質量数を、m(k+1)、即ち、m(2)に設定する(ステップS4)。以降、同様の処理が繰り返されて、質量数m(2)の二次イオン5の検出、二次イオン信号強度の計測及びこれのプロットが行なわれる。
その後、ステップS3でk=Nであると判定されるまで、同様の処理が繰り返されて、質量数m(1)の二次イオン5の検出、二次イオン信号強度の計測及びこれのプロットから質量数m(N)の二次イオン5の検出、二次イオン信号強度の計測及びこれのプロットまでが順番に行なわれる。
そして、質量数m(N)の二次イオン5の検出、二次イオン信号強度の計測及びこれのプロットが終わり、ステップS3でk=Nであると判定した場合、検出する二次イオン5の質量数m(k)の添え字kの値をNから1に戻し、検出する二次イオン5の質量数をm(1)に設定して、再び、質量数m(1)の二次イオン5の検出、二次イオン信号強度の計測及びこれのプロットが行なわれる。そして、同様の処理が繰り返されて、再び、質量数m(1)の二次イオン5の検出、二次イオン信号強度の計測及びこれのプロットから質量数m(N)の二次イオン5の検出、二次イオン信号強度の計測及びこれのプロットまでが順番に行なわれる。
このようにして、各質量数の二次イオン5の検出、二次イオン信号強度の計測及びこれのプロットが順番に行なわれていく過程で、質量数、時刻及び二次イオン信号強度の値が、例えば測定開始からの経過時間との関係としてプロットされていくことで、N種類の元素の深さ方向の濃度分布が同時に並行して測定されることになる。
その後、ステップS19で測定開始からの経過時間が測定終了時間に達したと判定した場合に、NOルートへ進む。
そして、本二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータ50は、主制御部25によって、ブランキング電極制御部32に指示を出し、一次イオンガン3の内部のブランキング電極を操作して、一次イオンガン3、即ち、一次イオンビーム4をOFFにし、一次イオンビーム4の照射を停止して(ステップS20)、処理を終了する。
したがって、本実施形態にかかる二次イオン質量分析装置及びその制御方法によれば、試料1の異なる深さ方向位置から飛散し、測定対象となる試料1の表面に付着した元素の影響を排除しながら、試料1の深さ方向の元素濃度分布を正確に取得できるという利点がある。
ここで、このような効果が得られることを確認すべく、実験を行なったところ、以下のような結果が得られた。
ここで、図15は、実験に使用した試料の断面図を示している。
図15に示すように、この試料は、試料の表面側から順に、GaN(厚さ100nm)、AlGaN(厚さ20nm)、GaN(厚さ1200nm)の各層が積層されたものである。
この試料について、まず、比較のために、一般的な二次イオン質量分析装置を使用し、試料の表面側から組成の深さ方向分布の測定を行なった。
ここで、一次イオンには酸素イオン(O イオン)を使用し、加速エネルギーは5keVとした。また、一次イオンビームの試料表面への入射角度は0度、即ち、試料表面に対して垂直に入射させて測定を行なった。また、一次イオンビームのラスタースキャンは、1辺300μmの正方形で行なった。また、一次イオンビームのスキャン範囲の中央に1辺100μmの正方形の二次イオン計測範囲を設定し、その内部から放出される二次イオンのみを検出(計測)した。
次に、本実施形態の二次イオン質量分析装置を使用して測定を行なった。
ここで、一次イオンには酸素イオン(O イオン)を使用し、加速エネルギーは5keVとし、ビーム電流値やビームの絞り調整など、一次イオンビームに関係する諸条件はすべて上述の一般的な二次イオン質量分析装置を使用した測定と同一とした。
また、本実施形態の二次イオン質量分析装置を使用した測定でも、一次イオンビームのスパイラルスキャンは、1辺300μmの正方形で行なった。また、一次イオンビームのスキャン範囲の中央に1辺100μmの正方形の二次イオン計測範囲を設定し、その内部から放出される二次イオンのみを検出(計測)した。
また、今回の実験では、内向きスパイラルスキャンの走査速度と外向きスパイラルスキャンの走査速度は等しい大きさに設定した。
そして、両装置を使用した測定とも、測定開始からの経過時間と、27Al69Ga14の各二次イオンの信号強度との関係を記録した。
このような測定によって得られた、試料の表面側からの組成の深さ方向分布は、図16(A)、図16(B)に示すようになった。
ここで、図16(A)は一般的な二次イオン質量分析装置による測定結果を示しており、図16(B)は本実施形成の二次イオン質量分析装置による測定結果を示している。
一般的な二次イオン質量分析装置による測定結果では、図16(A)に示すように、AlGaN層から深い位置での27Alの信号が測定終了まで落ち切ることなく測定され続けている。これは、クレータの側壁に露出したAlGaN層の断面から飛散したAl原子がクレータ底部に再付着し、この再付着したAl原子が測定され続けたためである。
これに対して、本実施形態の二次イオン質量分析装置による測定結果では、図16(B)に示すように、AlGaN層から深い位置での27Alの信号強度が、一般的な二次イオン質量分析装置を使用した場合と比べて、1桁以上も低くなっている。この結果は、本実施形態の二次イオン質量分析装置を使用したことによって、AlGaN層からのAl原子の再付着の影響を除去しながら、深さ方向の組成分布の測定ができたことを示している。
このように、本実施形態の二次イオン質量分析装置によれば、上述のような効果が得られることが確認できた。
なお、上述の実施形態では、二次イオン質量分析装置を、コンピュータに二次イオン質量分析装置の制御プログラムをインストールしたものとして構成しているが、上述の実施形態における処理をコンピュータに実行させる二次イオン質量分析装置の制御プログラム(上述のような機能をコンピュータに実現させるための二次イオン質量分析装置の制御プログラム)は、コンピュータ読取可能な記録媒体に格納した状態で提供される場合もある。
ここで、記録媒体には、例えば半導体メモリなどのメモリ,磁気ディスク,光ディスク[例えばCD(Compact Disc)−ROM,DVD(Digital Versatile Disk),ブルーレイディスク等],光磁気ディスク(MO:Magneto optical Disc)等のプログラムを記録することができるものが含まれる。なお、磁気ディスク,光ディスク,光磁気ディスク等を可搬型記録媒体ともいう。
この場合、ドライブ装置を介して、可搬型記録媒体から二次イオン質量分析装置の制御プログラムを読み出し、読み出された二次イオン質量分析装置の制御プログラムを記憶装置にインストールすることになる。これにより、上述の実施形態で説明した二次イオン質量分析装置及びその制御方法が実現され、上述の実施形態の場合と同様に、記憶装置にインストールされた二次イオン質量分析装置の制御プログラムを、CPUがメインメモリ上に読み出して実行することで、上述の実施形態の各処理が行なわれることになる。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。
また、上述の実施形態における処理をコンピュータに実行させる二次イオン質量分析装置の制御プログラムは、例えば伝送媒体としてのネットワーク(例えばインターネット,公衆回線や専用回線等の通信回線等)を介して提供される場合もある。
例えば、プログラム提供者が例えばサーバなどの他のコンピュータ上で提供している二次イオン質量分析装置の制御プログラムを、例えばインターネットやLAN等のネットワーク及び通信インタフェースを介して、記憶装置にインストールしても良い。これにより、上述の実施形態で説明した二次イオン質量分析装置及びその制御方法が実現され、上述の実施形態の場合と同様に、記憶装置にインストールされた二次イオン質量分析装置の制御プログラムを、CPUがメインメモリ上に読み出して実行することで、上述の実施形態の各処理が行なわれることになる。なお、コンピュータは、例えばサーバなどの他のコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
また、ここでは、CPU102、メモリ101、通信制御部109、入力装置106、表示制御部103、表示装置104、記憶装置105、可搬型記録媒体108のドライブ装置107などのハードウェア構成を備える単体のコンピュータを備えるものとして本二次イオン質量分析装置を実現する場合を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。例えば、上述の実施形態の二次イオン質量分析装置の各機能(即ち、二次イオン質量分析装置に備えられるコンピュータの各機能)及び二次イオン質量分析装置の制御方法の各処理が実現されるのであれば、単体のコンピュータでなくても良く、例えば、複数のコンピュータからなるシステムであって、例えばLAN、WAN等のネットワークを介して処理が行なわれるシステムであっても良い。例えば、クラウドサーバなどのサーバが上述の実施形態の二次イオン質量分析装置の各機能及び二次イオン質量分析装置の制御方法の各処理を実現するものとして構成され、インターネットやイントラネットのようなコンピュータネットワークを介して利用可能になっていても良い。
また、上述の実施形態では、コンピュータにおいてCPUがメモリ上に読み出したプログラムを実行することによって、上述の実施形態の二次イオン質量分析装置の各機能及び二次イオン質量分析装置の制御方法の各処理が実現される場合を例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSや他のプログラムなどが実際の処理の一部又は全部を行なって、上述の実施形態の二次イオン質量分析装置の各機能及び二次イオン質量分析装置の制御方法の各処理が実現されるようになっていても良い。
なお、本発明は、上述した実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
以下、上述の実施形態に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲を前記一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、前記照射範囲を前記一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行し、
前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得することを特徴とする二次イオン質量分析装置の制御方法。
(付記2)
前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する処理において、前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによってエッチングされる量が前記内向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによってエッチングされる量よりも多くなるように、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを実行することを特徴とする、付記1に記載の二次イオン質量分析装置の制御方法。
(付記3)
前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する処理において、前記外向きスパイラルスキャンのスキャン速度が前記内向きスパイラルスキャンのスキャン速度よりも遅くなるように、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを実行することを特徴とする、付記1又は2に記載の二次イオン質量分析装置の制御方法。
(付記4)
前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する処理において、前記照射範囲内の前記照射範囲よりも狭い範囲に前記一次イオンビームが照射されている時に前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得することを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の二次イオン質量分析装置の制御方法。
(付記5)
コンピュータに、
試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲を前記一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、前記照射範囲を前記一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行し、
前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する、処理を実行させることを特徴とする二次イオン質量分析装置の制御プログラム。
(付記6)
前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する処理において、前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによってエッチングされる量が前記内向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによってエッチングされる量よりも多くなるように、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを実行する処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、付記5に記載の二次イオン質量分析装置の制御プログラム。
(付記7)
前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する処理において、前記外向きスパイラルスキャンのスキャン速度が前記内向きスパイラルスキャンのスキャン速度よりも遅くなるように、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを実行する処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、付記5又は6に記載の二次イオン質量分析装置の制御プログラム。
(付記8)
前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する処理において、前記照射範囲内の前記照射範囲よりも狭い範囲に前記一次イオンビームが照射されている時に前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする、付記5〜7のいずれか1項に記載の二次イオン質量分析装置の制御プログラム。
(付記9)
試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲を前記一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、前記照射範囲を前記一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する制御部と、
前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する演算部とを備えることを特徴とする二次イオン質量分析装置。
(付記10)
前記制御部が、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する場合に、前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによってエッチングされる量が前記内向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによってエッチングされる量よりも多くなるように、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを実行することを特徴とする、付記9に記載の二次イオン質量分析装置。
(付記11)
前記制御部が、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する場合に、前記外向きスパイラルスキャンのスキャン速度が前記内向きスパイラルスキャンのスキャン速度よりも遅くなるように、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを実行することを特徴とする、付記9又は10に記載の二次イオン質量分析装置。
(付記12)
前記演算部が、前記照射範囲内の前記照射範囲よりも狭い範囲に前記一次イオンビームが照射されている時に前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得することを特徴とする、付記9〜11のいずれか1項に記載の二次イオン質量分析装置。
1 試料
2 試料台
3 一次イオンガン
4 一次イオンビーム
5 二次イオン
6 質量分析器
7 一次イオン照射範囲(照射範囲)
8−1〜8−n 走査線
9−1〜9−n 始点
10−1〜10−n終点
11 スキャン範囲
12 クレータ
13 クレータ底部
14 クレータ側壁
15 二次イオン計測範囲
16 不純物含有層
17 不純物原子
18 測定実施領域
19 事前加工領域
20 壁面
21 始点
22 渦巻状の軌道
23 終点
24 操作盤
25 主制御部
26 偏向電極制御部
27 引き出し電極制御部
28 質量分離器
29 イオン検出器
30 イオン強度計測部
31 記録処理部
32 ブランキング電極制御部
50 コンピュータ
51 制御部
52 演算部
101 メモリ
102 CPU
103 表示制御部
104 表示装置
105 記憶装置
106 入力装置
107 ドライブ装置
108 可搬型記録媒体
109 通信制御部
110 バス

Claims (6)

  1. 試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲を前記一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、前記照射範囲を前記一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行し、
    前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得することを特徴とする二次イオン質量分析装置の制御方法。
  2. 前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する処理において、前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによってエッチングされる量が前記内向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによってエッチングされる量よりも多くなるように、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを実行することを特徴とする、請求項1に記載の二次イオン質量分析装置の制御方法。
  3. 前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する処理において、前記外向きスパイラルスキャンのスキャン速度が前記内向きスパイラルスキャンのスキャン速度よりも遅くなるように、前記内向きスパイラルスキャン及び前記外向きスパイラルスキャンを実行することを特徴とする、請求項1又は2に記載の二次イオン質量分析装置の制御方法。
  4. 前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する処理において、前記照射範囲内の前記照射範囲よりも狭い範囲に前記一次イオンビームが照射されている時に前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次イオン質量分析装置の制御方法。
  5. コンピュータに、
    試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲を前記一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、前記照射範囲を前記一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行し、
    前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する、処理を実行させることを特徴とする二次イオン質量分析装置の制御プログラム。
  6. 試料の表面の一次イオンビームを照射する照射範囲を前記一次イオンビームで外周から中心へ向けてスパイラル状にスキャンする内向きスパイラルスキャン、及び、前記照射範囲を前記一次イオンビームで中心から外周へ向けてスパイラル状にスキャンする外向きスパイラルスキャンを連続して、繰り返し実行する制御部と、
    前記外向きスパイラルスキャンの実行時に前記一次イオンビームの照射によるスパッタリングによって前記試料の表面から放出される二次イオンの検出情報に基づいて、前記試料の深さ方向の元素濃度分布を取得する演算部とを備えることを特徴とする二次イオン質量分析装置。
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