JP2015216195A - 超音波プローブ - Google Patents

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Abstract

【課題】膜内にクラックを発生させることなく圧電ひずみ定数を向上させることができる圧電素子を備えた超音波プローブを提供する。【解決手段】素子チップ17と、素子チップ17を支持する筐体と、を備え、素子チップ17は基板21に形成された下部電極24と、この下部電極24上に形成された圧電体膜26と、を備え、圧電体膜26は菱面体晶系の結晶構造を備え、かつ、その結晶構造の、X線回折薄膜法で測定した(100)、(110)、(111)、(210)、及び(211)の結晶面反射強度の総和に対する(100)面の配向度が、30%以上である。【選択図】図4

Description

本発明は、超音波プローブに関するものである。
超音波プローブに設置された超音波トランスデューサー素子チップから生体に超音波を照射し反射波を解析する超音波診断装置が広く活用されている。超音波トランスデューサー素子チップには圧電素子であるPZT素子が用いられることが多い。PZT素子は、一般に、多結晶体からなる圧電体薄膜と、この圧電体薄膜を間に挟んで配置される上電極及び下電極と、を備えた構造を有している。
PZT素子の組成は、一般に、チタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする二成分系、または、この二成分系のPZTに第三成分を加えた三成分系からなる。これらの組成の圧電体薄膜は、例えば、スパッタ法、ゾルゲル法、レーザアブレーション法及びCVD法等により形成される。PZT素子を超音波プローブに適用する場合、圧電体薄膜には、高い圧電ひずみ定数が要求される。
このような高い圧電ひずみ定数を備えた圧電体薄膜を得るためには、通常、700℃以上の温度でPZT膜の熱処理を行い、この圧電体薄膜の結晶粒を成長させることが必要であるとされている。
圧電体の結晶粒の製造方法が特許文献1に開示されている。それによると、基板面が(111)面に配向した白金基板上にチタン酸ジルコン酸鉛またはランタン含有チタン酸ジルコン酸鉛の前駆体溶液を塗布し、加熱して強誘電体薄膜を形成する。この方法では前駆体溶液を基板上に塗布した後、まず所望の結晶配向をもたらす150〜550℃の温度範囲で熱処理を行う。次に、その後550〜800℃で焼成して結晶化させることにより、基板面方向に薄膜の特定結晶面を熱処理温度に従って優先的に配向させている。
特開平6−116095号公報
膜厚の圧電体薄膜を形成する場合、高い圧電ひずみ定数を得るために既述の熱処理を行うと膜内にクラックが発生することがある。これにより、PZT素子は不良な素子となり生産性が低下する。そこで、膜内にクラックを発生させることなく圧電ひずみ定数を向上させることができる圧電素子を備えた超音波プローブが望まれていた。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例にかかる超音波プローブであって、超音波トランスデューサー素子チップと、前記超音波トランスデューサー素子チップを支持する筐体と、を備え、前記超音波トランスデューサー素子チップは基板上に形成された金属膜と、前記金属膜上に形成されたPZT薄膜と、を備え、前記PZT薄膜は菱面体晶系の結晶構造を備え、かつ、その結晶構造の、X線回折薄膜法で測定した(100)、(110)、(111)、(210)、及び(211)の結晶面反射強度の総和に対する(100)面の配向度が、30%以上であることを特徴とする。
本適用例によれば、超音波プローブは超音波トランスデューサー素子チップを備え、超音波トランスデューサー素子チップは筐体に支持されている。超音波トランスデューサー素子チップは基板上に形成された金属膜と、この金属膜上に形成されたPZT薄膜と、を備えている。PZT薄膜は菱面体晶系の結晶構造を備えている。そして、結晶構造の、X線回折薄膜法で測定した(100)、(110)、(111)、(210)、及び(211)の結晶面反射強度の総和に対する(100)面の配向度が、30%以上となっている。
このとき、PZT薄膜の結晶体の粒界が、金属膜に対して略垂直方向に存在する。粒界が同一方向に整列するためPZT薄膜はクラックを生じ難くすることができる。その結果、PZT薄膜はクラックを発生させることなく圧電ひずみ定数を向上させることができる。
第1の実施形態にかかわる超音波診断装置の構成を示す概略斜視図。 超音波プローブの構成を示す組織側面図。 素子チップの構成を示す模式平面図。 素子チップの構成を示す模式側断面図。 補強板を示す模式平面図。 補強板を示す要部模式拡大図。 装置端末及び超音波プローブの回路図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 900℃でアニールしたPZT薄膜の薄膜法によるX線回折パターンを示す図。 750℃でアニールしたPZT薄膜の薄膜法によるX線回折パターンを示す図。 (a)は、PZT膜の断面を示すSEM写真、(b)はPZT膜の平面を示すSEM写真。 PZT膜の好ましい組成範囲を説明するための図。 PZT膜の好ましい組成範囲を説明するための図。 比較品1のPZT膜の断面を示すSEM写真。 比較品1のPZT膜の平面を示すSEM写真。 他の圧電体薄膜素子を構成する下電極の断面を示すSEM写真。 比較品2を構成する下電極の断面を示すSEM写真。 素子の模式断面拡大図。 第2の実施形態にかかわる圧電体素子の構成を示す模式断面図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 PZT結晶の形成過程を示す模式図。 PZT結晶を示す電子顕微鏡写真。 島状チタンを形成した下部電極上に圧電体薄膜PZTを成膜した場合のX線回折解析図。 島状チタンを形成しない下部電極上に圧電体薄膜PZTを成膜した場合のX線回折解析図。 圧電体薄膜の透過型電子顕微鏡写真、本実施形態で得られたもの。 比較例の圧電体薄膜の透過型顕微鏡写真。 圧電ひずみ定数の測定グラフ。 圧電ひずみ定数の測定グラフ。 比較例に係わるPZT結晶粒界の電子線回析パターンを示す図。 PZT結晶粒界の電子線回析パターンを示す図。 圧電体素子の結晶構造の膜厚方向の断面を示す電子顕微鏡写真。 圧電体素子の平面における結晶構造を示す電子顕微鏡写真。 第3の実施形態にかかわる圧電体素子の構造を模式断面図。 圧電体素子の製造方法を説明する為の模式図。 圧電体素子の製造方法を説明する為の模式図。 結晶粒成長の原理を説明するための模式図。 圧電体素子の1層の膜厚と限界膜厚との関係を示すグラフ。 圧電体薄膜と下部電極膜との界面付近の断面TEM写真の模写図。 第4の実施形態にかかわる圧電体素子の構成を示す模式断面図。 PZT膜の断面を示すSEM写真。 PZT膜の平面を示すSEM写真。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 電子顕微鏡によって確認されたPZT結晶の形成過程を示す模式図。 PZT結晶の電子顕微鏡写真、Pt電極の上に柱状のPZTの結晶が形成されている。 島状チタンを形成した下部電極上に圧電体薄膜PZTを成膜した場合のX線回折解析図。 島状チタンを形成しない下部電極上に圧電体薄膜PZTを成膜した場合のX線回折解析図。 下部電極の結晶粒上にチタンからなる結晶源が形成された場合の説明図。 島状チタンと圧電ひずみ定数との関係を示した特性図。 電極上のチタンの厚みと圧電ひずみ定数との関係を示す特性図。 第5の実施形態にかかわる圧電体素子の構成を示す模式断面図。 圧電体素子の製造方法を説明するための模式断面図。 圧電体素子の製造方法を説明するための模式断面図。 (a)は結晶化後の圧電体薄膜層のTEM写真、(b)はTEM写真の模写図。 第6の実施形態にかかわる(a)は、圧電体素子の構造を説明するための模式断面図、(b)及び(c)は、圧電体素子の構造を説明するための要部模式断面図。 圧電体素子の製造方法を説明するための模式図。 圧電体素子の製造方法を説明するための模式図。 圧電体素子の積層構造を示す模式断面図。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。尚、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の総てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(第1の実施形態)
本実施形態では、超音波診断装置の特徴的な例について図1〜図22に従って説明する。
(1)超音波診断装置の全体構成
図1は超音波診断装置の構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、超音波診断装置11は装置端末12と超音波プローブ13(プローブ)とを備える。装置端末12と超音波プローブ13とはケーブル14で相互に接続される。装置端末12と超音波プローブ13とはケーブル14を通じて電気信号をやりとりする。装置端末12にはディスプレイパネル15(表示装置)が組み込まれる。ディスプレイパネル15の画面は装置端末12の表面で露出する。装置端末12では、後述されるように、超音波プローブ13で検出された超音波に基づき画像が生成される。画像化された検出結果がディスプレイパネル15の画面に表示される。
図2は超音波プローブの構成を示す組織側面図である。図2に示すように、超音波プローブ13は筐体16を有する。筐体16内には超音波トランスデューサー素子チップ17(以下「素子チップ」という)が収容される。超音波トランスデューサー素子チップとしての素子チップ17の表面は筐体16の表面で露出することができる。素子チップ17は表面から超音波を出力するとともに超音波の反射波を受信する。その他、超音波プローブ13は、プローブ本体13aに着脱可能に連結されるプローブヘッド13bを備えることができる。このとき、素子チップ17はプローブヘッド13bの筐体16内に組み込まれることができる。
図3は素子チップの構成を示す模式平面図である。図3に示すように、素子チップ17は基板21を備える。基板21には素子アレイ22が形成される。素子アレイ22は超音波トランスデューサー素子としての素子23の配列で構成される。配列は複数行複数列のマトリックスで形成される。個々の素子23は圧電素子部を備える。圧電素子部は金属膜としての下部電極24、上部電極25及びPZT薄膜としての圧電体膜26で構成される。個々の素子23ごとに下部電極24及び上部電極25の間に圧電体膜26が挟み込まれる。
下部電極24は複数本の第1導電体24aを有する。第1導電体24aは配列の行方向に相互に平行に延びる。1行の素子23ごとに1本の第1導電体24aが割り当てられる。1本の第1導電体24aは配列の行方向に並ぶ素子23の圧電体膜26に共通に配置される。第1導電体24aの両端は一対の引き出し配線27にそれぞれ接続される。引き出し配線27は配列の列方向に相互に平行に延びる。したがって、総ての第1導電体24aは同一長さを有する。こうしてマトリックス全体の素子23に共通に下部電極24は接続される。
上部電極25は複数本の第2導電体25aを有する。第2導電体25aは配列の列方向に相互に平行に延びる。1列の素子23ごとに1本の第2導電体25aが割り当てられる。1本の第2導電体25aは配列の列方向に並ぶ素子23の圧電体膜26に共通に配置される。列ごとに素子23の通電は切り替えられる。こうした通電の切り替えに応じてラインスキャンやセクタースキャンは実現される。1列の素子23は同時に超音波を出力することから、1列の個数すなわち配列の行数は超音波の出力レベルに応じて決定されることができる。行数は例えば10〜15行程度に設定されればよい。図中では省略されて5行が描かれる。配列の列数はスキャンの範囲の広がりに応じて決定されることができる。列数は例えば128列や256列に設定されればよい。図中では省略されて8列が描かれる。その他、配列では千鳥配置が確立されてもよい。千鳥配置では偶数列の素子23群は奇数列の素子23群に対して行ピッチの2分の1でずらされればよい。奇数列及び偶数列の一方の素子数は他方の素子数に比べて1つ少なくてもよい。さらにまた、下部電極24及び上部電極25の役割は入れ替えられてもよい。すなわち、マトリックス全体の素子23に共通に上部電極が接続される一方で、配列の列ごとに共通に素子23に下部電極が接続されてもよい。
基板21の輪郭は、相互に平行な一対の直線29で仕切られて対向する第1辺21a及び第2辺21bを有する。素子アレイ22の輪郭と基板21の外縁との間に広がる周縁領域31には、第1辺21aと素子アレイ22の輪郭との間に1ラインの第1端子アレイ32aが配置され、第2辺21bと素子アレイ22の輪郭との間に1ラインの第2端子アレイ32bが配置される。第1端子アレイ32aは第1辺21aに平行に1ラインを形成することができる。第2端子アレイ32bは第2辺21bに平行に1ラインを形成することができる。第1端子アレイ32aは一対の下部電極端子33及び複数の上部電極端子34で構成される。同様に、第2端子アレイ32bは一対の下部電極端子35及び複数の上部電極端子36で構成される。1本の引き出し配線27の両端にそれぞれ下部電極端子33、35は接続される。引き出し配線27及び下部電極端子33、35は素子アレイ22を二等分する垂直面で面対称に形成されればよい。1本の第2導電体25aの両端にそれぞれ上部電極端子34、36は接続される。第2導電体25a及び上部電極端子34、36は素子アレイ22を二等分する垂直面で面対称に形成されればよい。ここでは、基板21の輪郭は矩形に形成される。基板21の輪郭は正方形であってもよく台形であってもよい。
基板21には第1フレキシブルプリント基板としての第1フレキ37が連結される。第1フレキ37は第1端子アレイ32aに覆い被さる。第1フレキ37の一端には下部電極端子33及び上部電極端子34に個別に対応して導電線すなわち第1信号線38が形成される。第1信号線38は下部電極端子33及び上部電極端子34に個別に向き合わせられ個別に接合される。同様に、基板21には第2フレキシブルプリント基板としての第2フレキ41が覆い被さる。第2フレキ41は第2端子アレイ32bに覆い被さる。第2フレキ41の第1端41aには下部電極端子35及び上部電極端子36に個別に対応して導電線すなわち第2信号線42が形成される。第2信号線42は下部電極端子35及び上部電極端子36に個別に向き合わせられ個別に接合される。
図4は素子チップの構成を示す模式側断面図である。図4に示すように、個々の素子23は振動膜43を有する。振動膜43の構築にあたって基板21の基体44には個々の素子23ごとに開口45が形成される。開口45は基体44に対してアレイ状に配置される。基体44の表面には可撓膜46が一面に形成される。可撓膜46は、基体44の表面に積層される酸化シリコン層47(SiO2)と、酸化シリコン層47の表面に積層される上面層48とで構成される。上面層48は酸化ジルコニウム(ZrO2)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO)またはこれらが複合した膜となっている。可撓膜46は開口45に接する。こうして開口45の輪郭に対応して可撓膜46の一部が振動膜43として機能する。酸化シリコン層47の膜厚は共振周波数に基づき決定される。
振動膜43の表面に下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25が順番に積層される。下部電極24には例えばチタン(Ti)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)及びチタン(Ti)の積層膜やプラチナの膜を用いられることができる。圧電体膜26は例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)で形成されることができる。上部電極25は例えばイリジウム(Ir)や白金(Pt)で形成されることができる。下部電極24及び上部電極25にはその他の導電材が利用されてもよく、圧電体膜26にはその他の圧電材料が用いられてもよい。ここでは、上部電極25の下で圧電体膜26は完全に下部電極24を覆う。圧電体膜26の働きで上部電極25と下部電極24との間で短絡は回避されることができる。
基板21の表面には保護膜49が積層される。保護膜49は例えば全面にわたって基板21の表面に覆い被さる。その結果、素子アレイ22や第1端子アレイ32a及び第2端子アレイ32b、第1フレキ37及び第2フレキ41は保護膜49で覆われる。保護膜49には例えばシリコーン樹脂膜が用いられることができる。保護膜49は、素子アレイ22の構造や、第1端子アレイ32a及び第1フレキ37の接合、第2端子アレイ32b及び第2フレキ41の接合を保護する。
隣接する開口45同士の間には仕切り壁51が区画される。開口45同士は仕切り壁51で仕切られる。仕切り壁51の壁厚みtは開口45の空間同士の間隔に相当する。仕切り壁51は相互に平行に広がる平面内に2つの壁面を規定する。壁厚みtは壁面同士の距離に相当する。すなわち、壁厚みtは壁面に直交して壁面同士の間に挟まれる垂線の長さで規定されることができる。仕切り壁51の壁高さHは開口45の深さに相当する。開口45の深さは基体44の厚みに相当する。したがって、仕切り壁51の壁高さHは基体44の厚み方向に規定される壁面の長さで規定されることができる。基体44は均一な厚みを有することから、仕切り壁51は全長にわたって一定の壁高さHを有することができる。仕切り壁51の壁厚みtが縮小されれば、振動膜43の配置密度は高められ、素子チップ17の小型化に寄与することができる。壁厚みtに比べて仕切り壁51の壁高さHが大きければ、素子チップ17の曲げ剛性は高められることができる。こうして開口45同士の間隔は開口45の深さよりも小さく設定される。
基体44の裏面には補強板52(補強部材)が固定される。補強板52の表面に基体44の裏面が重ねられる。補強板52は素子チップ17の裏面で開口45を閉じる。補強板52はリジッドな基材を備えることができる。補強板52は例えばシリコン基板から形成されることができる。基体44の板厚は例えば100μm程度に設定され、補強板52の板厚は例えば100〜150μm程度に設定される。ここでは、仕切り壁51は補強板52に結合される。補強板52は個々の仕切り壁51に少なくとも1カ所の接合域で接合される。接合には接着剤を用いてもよい。
補強板52の表面には直線状の溝53(直線状溝部)が形成される。溝53は補強板52の表面を複数の平面54に分割する。複数の平面54は1つの仮想平面HP内で広がる。その仮想平面HP内で基体44の裏面は広がる。仕切り壁51は平面54に接合される。溝53は仮想平面HPから窪む。溝53の断面形状は四角形であってもよく三角形であってもよく半円形その他の形状であってもよい。
図5は補強板を示す模式平面図である。図5に示すように、開口45は第1方向D1に列を形成する。開口45の輪郭形状の図心45bは第1方向D1の1直線56上で等ピッチに配置される。開口45の輪郭45aは1つの形状の複写で象られることから、同一形状の開口45が一定のピッチで繰り返し配置される。開口45の輪郭45aは例えば四角形に規定される。具体的には矩形に形成される。矩形の長辺は第1方向D1に合わせ込まれる。こうして開口45は矩形の輪郭45aを有することから、仕切り壁51は全長にわたって一定の壁厚みtを有することができる。このとき、仕切り壁51の接合域は長辺の中央位置を含む領域であればよい。特に、仕切り壁51の接合域は長辺の全長を含む領域であればよい。仕切り壁51は長辺の全長にわたって開口45同士の間の全面で補強板52に面接合されることができる。さらに、仕切り壁51の接合域は四角形の各辺に少なくとも1カ所ずつ配置されることができる。仕切り壁51の接合域は四角形を途切れなく囲むことができる。仕切り壁51は四角形の全周にわたって開口45同士の間の全面で補強板52に面接合されることができる。
溝53は一定の間隔Lで相互に平行に第1方向D1に並べられる。溝53は第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる。溝53の両端は補強板52の端面57a及び端面57bで開口する。1本の溝53は1列(ここでは1行)の開口45の輪郭45aを順番に横切る。個々の開口45には少なくとも1本の溝53が接続される。ここでは、第2方向D2は第1方向D1に直交する。したがって、溝53は矩形の短辺方向に開口45の輪郭45aを横切る。
図6は補強板を示す要部模式拡大図である。図6に示すように、平面54同士の間で溝53は基体44と補強板52との間に通路58a及び通路58bを形成する。こうして溝53内の空間は開口45の内部空間に連通する。通路58a及び通路58bは開口45の内部空間と基板21の外部空間との間で通気を確保する。基板21の表面に直交する方向すなわち基板21の厚み方向から見た平面視で、1本の溝53は1列(ここでは1行)の開口45の輪郭45aを順番に横切ることから、次々に開口45同士は通路58aで接続される。溝53の両端は補強板52の端面57a及び端面57bで開口する。こうして列端の開口45から基板21の輪郭の外側に通路58bは開放される。
溝53の間隔Lは開口45の開口幅Sよりも小さく設定される。開口幅Sは、溝53の並び方向すなわち第1方向D1に開口45を横切る線分のうち最大の長さのもので規定される。言い換えると、開口幅Sは、開口45の輪郭45aに外接する平行線59同士の間隔に相当する。開口45ごとに開口45の輪郭45aに外接する平行線59は特定される。平行線59は第2方向D2に延びる。仮に開口45ごとに開口幅Sが相互に相違する場合には、開口幅Sの最小値よりも小さい間隔Lで溝53は並べられればよい。ここでは、溝53の間隔Lは、開口45の開口幅Sの3分の1以上であって2分の1よりも小さく設定される。
(2)超音波診断装置の回路構成
図7は装置端末及び超音波プローブの回路図である。図7に示されるように、超音波プローブ13には素子チップ17と接続する集積回路チップ55が設置されている。集積回路チップ55はマルチプレクサー61及び送受信回路62を備える。マルチプレクサー61は素子チップ17側のポート群61aと送受信回路62側のポート群61bとを備える。素子チップ17側のポート群61aには第1配線60経由で第1信号線38及び第2信号線42が接続される。こうしてポート群61aは素子アレイ22に繋がる。ここでは、送受信回路62側のポート群61bには集積回路チップ55内の規定数の信号線63が接続される。規定数はスキャンにあたって同時に出力される素子23の列数に相当する。マルチプレクサー61はケーブル14側のポートと素子チップ17側のポートとの間で相互接続を管理する。
送受信回路62は規定数の切り替えスイッチ64を備える。個々の切り替えスイッチ64はそれぞれ信号線63に接続される。送受信回路62は個々の切り替えスイッチ64ごとに送信経路65及び受信経路66を備える。切り替えスイッチ64には送信経路65と受信経路66とが並列に接続される。切り替えスイッチ64はマルチプレクサー61に選択的に送信経路65または受信経路66を接続する。送信経路65にはパルサー67が組み込まれる。パルサー67は振動膜43の共振周波数に応じた周波数でパルス信号を出力する。受信経路66にはアンプ68、ローパスフィルター69(LPF)及びアナログデジタル変換器71(ADC)が組み込まれる。個々の素子23の検出信号は増幅されてデジタル信号に変換される。
送受信回路62は駆動/受信回路72を備える。送信経路65及び受信経路66は駆動/受信回路72に接続される。駆動/受信回路72はスキャンの形態に応じて同時にパルサー67を制御する。駆動/受信回路72はスキャンの形態に応じて検出信号のデジタル信号を受信する。駆動/受信回路72は制御線73によりマルチプレクサー61に接続される。マルチプレクサー61は駆動/受信回路72から供給される制御信号に基づき相互接続の管理を実施する。
装置端末12には処理回路74が組み込まれる。処理回路74は例えば中央演算処理装置(CPU)やメモリーを備えることができる。超音波診断装置11の全体動作は処理回路74の処理に従って制御される。ユーザーから入力される指示に応じて処理回路74は駆動/受信回路72を制御する。処理回路74は素子23の検出信号に応じて画像を生成する。画像は描画データで特定される。
装置端末12には描画回路75が組み込まれる。描画回路75は処理回路74に接続される。描画回路75にはディスプレイパネル15が接続される。描画回路75は処理回路74で生成された描画データに応じて駆動信号を生成する。駆動信号はディスプレイパネル15に送り込まれる。その結果、ディスプレイパネル15に画像が映し出される。
(3)超音波診断装置の動作
次に超音波診断装置11の動作を簡単に説明する。処理回路74は駆動/受信回路72に超音波の送信及び受信を指示する。駆動/受信回路72はマルチプレクサー61に制御信号を供給するとともに個々のパルサー67に駆動信号を供給する。パルサー67は駆動信号の供給に応じてパルス信号を出力する。マルチプレクサー61は制御信号の指示に従ってポート群61bのポートにポート群61aのポートを接続する。ポートの選択に応じて下部電極端子33、下部電極端子35、上部電極端子34及び上部電極端子36を通じて列ごとにパルス信号が素子23に供給される。パルス信号の供給に応じて振動膜43は振動する。その結果、対象物(例えば人体の内部)に向けて所望の超音波が発せられる。
超音波の送信後、切り替えスイッチ64が切り替えられる。マルチプレクサー61はポートの接続関係を維持する。切り替えスイッチ64は送信経路65及び信号線63の接続に代えて受信経路66及び信号線63の接続を確立する。超音波の反射波は振動膜43を振動させる。その結果、素子23から検出信号が出力される。検出信号はデジタル信号に変換されて駆動/受信回路72に送り込まれる。
超音波の送信及び受信は繰り返される。繰り返しにあたってマルチプレクサー61はポートの接続関係を変更する。その結果、ラインスキャンやセクタースキャンが実現される。スキャンが完了すると、処理回路74は検出信号のデジタル信号に基づき画像を形成する。形成された画像はディスプレイパネル15の画面に表示される。
(4)超音波トランスデューサー素子チップの製造方法
図8〜図12は超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図である。図8に示されるように、シリコンウエハー78(基板)の表面には酸化シリコン膜79及び酸化ジルコニウム膜81が相次いで形成される。酸化ジルコニウム膜81の表面には導電膜が形成される。導電膜はチタン、イリジウム、白金及びチタンの積層膜で構成される。フォトリソグラフィ技術に基づき導電膜から下部電極24、引き出し配線27、図示しない下部電極端子33及び下部電極端子35が形成される。下部電極24、引き出し配線27、下部電極端子33及び下部電極端子35は個々の素子チップ17ごとに形成される。
図9に示されるように、下部電極24の表面で個々の素子23ごとに圧電体膜26及び上部電極25が形成される。圧電体膜26及び上部電極25の形成にあたってシリコンウエハー78の表面に圧電材料膜及び導電膜が成膜される。圧電材料膜はPZT膜から構成される。導電膜はイリジウム膜から構成される。フォトリソグラフィ技術に基づき個々の素子23ごとに圧電材料膜及び導電膜から圧電体膜26及び上部電極25が形成される。
続いて、図10に示されるように、シリコンウエハー78の表面に導電膜82が成膜される。導電膜82は個々の素子チップ17内で列ごとに上部電極25を相互に接続する。そして、フォトリソグラフィ技術に基づき導電膜82から上部電極25、上部電極端子34及び上部電極端子36が成形される。
その後、図11に示されるように、シリコンウエハー78の裏面からアレイ状の開口45が形成される。開口45の形成にあたってエッチング処理が施される。酸化シリコン膜79はエッチングストップ層として機能する。酸化シリコン膜79及び酸化ジルコニウム膜81からなる振動膜43は開口45により区画される。
補強板用のウエハー83の表面には直線状の溝84が形成される。溝84は相互に平行に等間隔で延びる。溝84の少なくとも一端はウエハー83の端面で開放される。溝84は、開口45の開口幅Sよりも小さい間隔Lで並べられる。こうして溝84の間隔Lが設定されると、シリコンウエハー78と補強板用のウエハー83との間で相対的に位置ずれが生じても、少なくとも1本の溝84は開口45の輪郭45aを横切ることができる。例えば図12に示されるように、シリコンウエハー78に対して補強板用のウエハー83が第1方向D1にずれて溝84aが隣り合う開口45の間に位置しても、2つの開口45にはそれぞれ少なくとも1本の溝84bが配置されることができる。シリコンウエハー78から個々の素子チップ17が切り出された際に、溝84は補強板52の溝53を提供する。
こうして溝84が形成されると、シリコンウエハー78及びウエハー83が大気中またはその他の気体雰囲気下で相互に重ね合わせられる場合でも、比較的に簡単に重ね合わせは実現されることができる。その一方で、シリコンウエハー78の裏面が均一な平面に重ね合わせられると、個々の開口45内に補強板用のウエハーの平面で気体が押し詰められる。大気圧では開口45内の空間の体積よりも大きい体積の気体が開口45内に留まろうとする。開口45の封鎖と同時に、シリコンウエハー78及び補強板用のウエハーの隙間から余分な気体が逃げないと、シリコンウエハー78及び補強板用のウエハーの貼り合わせは実現されることができない。
図11に戻って、シリコンウエハー78の裏面に補強板用のウエハー83(補強部材)の表面が重ね合わせられる。重ね合わせに先立ってウエハー83はハンドリング機構やステージ上に保持される。ウエハー83には例えばリジッドな絶縁性基板が用いられることができる。絶縁性基板にはシリコンウエハーが用いられることができる。接合にあたって例えば接着剤を用いても良い。接合後、シリコンウエハー78から個々の素子チップ17が切り出されて素子チップ17が完成する。
(5)圧電体膜の製造方法と構造
次に、素子23に用いられる圧電体膜26について詳細に説明する。
I. まず、具体的な圧電体薄膜素子の構造を図面を用いて説明する。図4に示すように、圧電体薄膜素子は、基体44(Si)と、下部電極24と、圧電体膜26(例えば、2成分系PZT)と、上部電極25とから構成される。
下部電極24を例えばプラチナから形成することにより、下電極の格子定数とPZT膜の格子定数を近づけて、下部電極24と後に形成されるPZT膜との密着性を向上させることができる。
(実施例1)
この実施例1においては、まず、基体44上に下部電極24として白金をスパッタ法で形成した。次に、圧電体膜26をゾルゲル法により形成した。ゾルは次のように調製した。酢酸鉛0.105モル、ジルコニウムアセチルアセトナート0.045モル、酢酸マグネシウム0.005モルと30ミリリットルの酢酸を、100℃に加熱して溶解させた。
このゾルを室温まで冷却し、チタンテトライソプロポキシド0.040モル、ペンタエトキシニオブ0.010モルをエチルセラソルブ50ミリリットルに溶解させて添加した。アセチルアセトンを30ミリリットル添加して安定化させた後、ポリエチレングリコールをゾル中の金属酸化物に対し30重量%添加し、よく攪拌して均質なゾルとした。
下電極を形成した基板上に調製したゾルをスピンコートで塗布し、400℃で仮焼成し、非晶質の多孔質ゲル薄膜を形成し、さらに、ゾルの塗布と400℃の仮焼成を2度繰り返し、多孔質ゲル薄膜を形成した。この加熱の際に、ゾル中のポリエチレングルコールが蒸発して、多孔質を形成する。
次に、ペロブスカイト結晶を得るためRTA(Raid Thermal Anneaing)炉を用いて酸素雰囲気中、5秒間で650℃に加熱して1分間保持しプレアニールを行い、緻密なPZT薄膜とした。
再びこのゾルをスピンコートで塗布して400℃に仮焼成する工程を3度繰り返し、非晶質の多孔質ゲル薄膜を積層した。次に、高速熱処理装置(RTA炉(Rapid Thermal Annealing))を用いて650℃でプレアニールして1分間保持することにより、結晶質の緻密な薄膜とした。このプレアニールの際の温度を400乃至800℃、好ましくは、450乃至750℃、さらに好ましくは、550乃至750℃にすることによって、既述の多孔質薄膜の積層界面を一体化することができる。
さらに、RTA炉を用いて酸素雰囲気中750、800、850、900、950、1000、1050℃の各温度に加熱し1分間保持してアニールした。その結果1.0μmの膜厚の圧電体膜26が得られた。
このようにして得られたPZT薄膜をX線回折薄膜法によって分析を行った。測定は、理学電機製 RINT−1400を用い、銅管球でX線入射角度1゜で行った。
図13は、900℃でアニールしたPZT薄膜の薄膜法によるX線回折パターンを示す図であり、図14は、750℃でアニールしたPZT薄膜の薄膜法によるX線回折パターンを示す図である。
図13、図14に示したX線回折パターンの総てのピークがペロブスカイト構造のPZTの反射ピークである。さらに、このPZT薄膜は結晶系としては菱面体晶あるいは正方晶を採るが、(100)、(110)等のピークが分離せず1つの鋭いピークになっていることから、菱面体晶系の結晶である。
また、圧電薄膜上にアルミニウム電極を蒸着法で形成し、圧電定数d31を測定した。表1にアニール温度と(100)配向度と圧電定数d31の関係を示す。
ここで、(100)の配向度P(100)は、P(100)=I(100)/ΣI(hkl)で表す。ΣI(hkl)は、X線回折薄膜法で、波長にCuKα線を用いたときの2θが20度〜60度のPZTの全回折強度の和を表す。
ただし、(200)面は(100)面と等価な結晶面であるため、ΣI(hkl)には含めない。具体的には、(100)、(110)、(111)、(210)、(211)、結晶面反射強度の総和である。I(100)は、同じくPZTの(100)結晶面反射強度を表す。
(100)の配向度P(100)が高くなるほど、圧電定数d31が大きくなっており、素子23として特性が向上する。
(実施例2)
基体44上に下電極として金をスパッタ法で形成した。次に、圧電体薄膜をゾルゲル法により形成した。ゾルは次のように調製した。酢酸鉛0.105モル、ジルコニウムアセチルアセトナート0.030モル、酢酸マグネシウム0.007モルと30ミリリットルの酢酸を、100℃に加熱して溶解させた。
このゾルを室温まで冷却し、チタンテトライソプロポキシド0.050モル、ペンタエトキシニオブ0.013モルをエチルセラソルブ50ミリリットルに溶解させて添加した。アセチルアセトンを30ミリリットル添加して安定化させた後、ポリエチレングリコールをゾル中の金属酸化物に対し30重量%添加し、よく攪拌して均質なゾルとした(Zr/Ti=30/50)。
同様にジルコニウムアセチルアセトナート0.035モル、チタンテトライソプロポキシド0.045モル(Zr/Ti=35/45)のゾル液を調製した。更にジルコニウムアセチルアセトナート0.040モル、チタンテトライソプロポキシド0.040モル(Zr/Ti=40/40)のゾル液を調製した。更に、ジルコニウムアセチルアセトナート0.045モル、チタンテトライソプロポキシド0.035モル(Zr/Ti=45/35)のゾル液を調製した。ジルコニウムとチタンの組成の異なる4種類のゾル液を調製した。
以降は実施例1と同様に、各ゾル液で積層し圧電体薄膜素子を作製し、評価を行った。表2にZr/Tiと(100)配向度と圧電定数d31の関係を示す。
実施例1と同様に(100)配向度P(100)が高くなるほど、圧電定数d31が大きくなっており、素子23として特性が向上する。
以上の実施例1及び2に於いて、下部電極として、Pt,Auを用いて説明したが、PZT薄膜の(100)配向度が、30%以上となれば良く、Au、Pt−Ir、Pt−Pd、Pt−Ni、Pt−Ti等他の金属膜でも良い。
さらに、第3成分としてマグネシウムニオブ酸鉛を用いて説明したが、PZT薄膜の(100)配向度が、30%以上となれば良く、ニッケルニオブ酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、等ほかのものでも良く、不純物としてNb、La、Mo、W、Ba、Sr、Bi等が含有されることを妨げない。
II. 次に、電極面に対して、結晶粒が略垂直方向に形成された圧電体薄膜を備えた圧電体素子について説明する。図15(a)は、PZT膜の断面を示すSEM写真であり、図15(b)はPZT膜の平面を示すSEM写真である。
圧電体膜26は、多結晶体からなり、この結晶体の粒界が、図15に示すように、上下の電極の平面に対して略垂直方向に存在している。図15(a)において、中間の白く表示されているのがPZT膜であり、その結晶粒が図の上下に延びる柱状に形成されているのが確認される。このPZT膜の下方にある白く表示される層が下部電極であり、この下部電極のさらに下にSiO2が配置されている。結晶体の粒界とは、隣接する結晶粒の境界であり、結晶粒がペロブスカイト型構造を持つ結晶であるのに対して、結晶粒界は非晶質から構成されている。
この結晶体は、結晶粒の膜厚方向(図15(a)においてYで示す。)の幅が、結晶粒の膜面方向(図15(a)においてXで示す。)の幅より大きく、結晶粒の膜厚方向の幅と、結晶粒の膜面方向の幅との関係が、膜面方向の幅/膜厚方向の幅=1/10以上1/3以下の範囲内とされる。
さらに、このPZT膜の結晶構造は、菱面体晶であり、面方位(111)の結晶面に強く配向している。ここで示す、「配向度」とは、例えば、広角XRD法にてPZT膜の面方位(XYZ)面の反射強度をI(XYZ)で表した時に、次のように定義される。
I(XYZ)/{i(100)+i(110)+i(111)}
面方位(111)の配向度と、圧電ひずみ定数との関係は、以下の通りである。
(111)面の配向度 圧電ひずみ定数
50% 80pC/N
70% 120pC/N
90% 150pC/N
既述の実施例1,2では、(100)の配向度が30%であることが好適であると説明した。ここで明らかなように、(111)の配向度を50%以上にすることにより、実施例1,2と同様な圧電ひずみ定数を得て圧電特性を得ることができる。
圧電ひずみ定数は、比誘電率と圧電出力係数の積に比例する。この比誘電率は、電界印加方向(図15(a)のY方向)の結晶粒の大きさが大きいほど大きく、圧電出力係数は、結晶粒が横方向(図15(a)のX方向)に大きく、結晶粒界の幅が狭いほど大きい、という理由から、このような構造を備えた圧電体膜26は、圧電ひずみ定数が向上される。
この理由から、既述のように、圧電体薄膜の結晶の膜面方向の幅/膜厚方向の幅の値が1/10以上1/3以下の範囲内におかれている。好ましくは1/8以上3/10以下であり、さらに好ましくは、1/6以上3/11以下である。
ここで、PZT膜は、二成分系を主成分とするもの、この二成分系に第三成分を加えた三成分系を主成分とするものが好適に用いられる。二成分系PZTの好ましい具体例としては、ゾルゲルによって、PZT膜を形成する場合は、例えば、次の化学式の組成を有するものである。
Pb(ZrxTi1−x)O3+YPbO
(ここで、0.40≦X≦0.6,0≦Y≦0.1)
また、スパッタリング法によって、PZT膜を形成する場合の二成分系のPZT膜は、例えば、次の化学式で表わされる組成を有するものである。
Pb(ZrxTi1-x)O3+YPbO
(ここで、0.40≦X≦0.6,0≦Y≦0.3)
また、三成分系PZTの好ましい具体例としては、スパッタリング法では、前記二成分系のPZTに、例えば、第三成分(好適には、マグネシウムニオブ酸鉛である。)を添加した以下に示す化学式で表わされる組成を有するものが挙げられる。
PbTibZra(AgBh)cO3+ePbO+(fMgO)n・・・(I式)(ここで、Aは、Mg,Co,Zn,Cd,Mn及びNiからなる群から選択される2価の金属またはY,Fe,Sc,Yb,Lu,In及びCrからなる群から選択される3価の金属を表す。また、Bは、Nb,Ta及びSbからなる群から選択される5価の金属、またはW及びTeからなる群から選択される6価の金属を表す。また、a,b,cをそれぞれモル比とした場合、a+b+c=1,0.10≦a≦0.55,0.25≦b≦0.55,0≦c≦0.5,0≦e≦0.3,0≦f≦0.15c,g=h=1/2,n=0であるが、但し、Aが3価の金属であり、かつBが6価の金属でなく、また、Aが2価の金属であり、かつBが5価の金属である場合、gは1/3であり、hは2/3であり、また、AはMg、BがNbの場合に限り、nは1を表す。)
三成分系のより好ましい具体例としては、マグネシウムニオブ酸鉛で、AがMgであり、BがNbであり、gが1/3、hが2/3であるものが挙げられる。
ゾルゲル法に依る場合の、第3成分としてマグネシウムニオブ酸鉛を加えたPZT膜は、例えば、Pb(Mg1/3Nb2/3)0.2ZrxTi0.8-x3(xが0.35〜0.45)からなる組成で表示される。
さらに、これら二成分系PZT及び三成分系PZTのいずれであっても、その圧電特性を改善するために、微量のBa,Sr,La,Nd,Nb,Ta,Sb,Bi,W,Mo及びCa等が添加されてもよい。とりわけ、三成分系では、0.10モル%以下のSr,Baの添加が圧電特性の改善に一層好ましい。また、三成分系では、0.10モル%以下のMn,Niの添加が、その焼結性を改善するので好ましい。第3成分の一部を第4成分で置き換えても良い。その場合、第4成分は、上記第3成分の内の1つを用いる。
尚、PZT膜は、前述した配向の他、面方位(100)の結晶面、あるいは面方位(111)と面方位(100)の結晶面のいずれかに強く配向していても良い。また、PZT膜の結晶構造が、正方晶であり、面方位(001)の結晶面に強く配向していてもよい。
(実施例3)
次に、この構造を備えた圧電体薄膜素子の製造方法について図8〜10を参照して説明する。図8に示す工程では、シリコンウエハー78に熱酸化を行い、シリコンウエハー78上に、酸化シリコン膜79を形成する。次に、スパッタ法により、酸化シリコン膜79上にチタン酸化膜87を形成する。
次いで、チタン酸化膜87上に、プラチナからなる下部電極24を、0.2〜0.8μm程度の膜厚で形成する。次に、図9に示す工程では、下部電極24上に圧電体膜26を、0.5〜3.0μm程度の膜厚で形成する。尚、さらに、PZT膜の製造をスパッタ法を依った場合と、ゾルゲル法に依った場合について説明する。
実施例3−1:スパッタ法によるPZT膜の製造方法
まず、特定成分のPZT焼結体をスパッタリングのターゲットとして用い、基板温度を200℃以下とし、Arガス100%雰囲気中で、RFマグネトロンスパッタリングにより、アモルファス、またはパイロクロア相からなるPZT膜の前駆体膜を基板上に形成する。
次に、この前駆体膜を加熱し結晶化して焼結させる。この加熱は、酸素雰囲気中(例えば、酸素中、または酸素とアルゴン等の不活性ガスとの混合ガス中)において、二段階に分けて行われるのが好ましい。
すなわち、第1の加熱工程においては、アモルファス状の前駆体膜を、酸素雰囲気中で500〜700℃程度の温度で加熱し、これによって前駆体膜を結晶化させる。この第1の加熱工程は、前駆体膜が均一に結晶化した時点で終了させれば良い。
次に、第2の加熱工程においては、生じた結晶粒を成長させ、さらに結晶粒同士の焼結を促進させる。具体的には、第1の加熱工程で結晶化した前駆体膜を750〜1200℃程度の温度で加熱する。この加熱は、結晶体の粒界が、下部電極24面に対して略垂直方向に存在し、結晶粒の膜厚方向の幅と、当該結晶粒の膜面方向の幅との関係が、膜面方向の幅/膜厚方向の幅=1/3〜1/10の範囲で構成されるまで実施される。
このようにして、下電極上に、多結晶体からなり、かつ粒界が下電極面に対して略垂直方向(図15(a)のY方向)に存在するとともに、結晶体の結晶粒の膜厚方向(図15(a)のY方向)の幅が結晶粒の膜面方向の幅(図15(a)のX方向)より長く、結晶粒の膜厚方向の幅と、当該結晶粒の膜面方向の幅との関係が、膜面方向の幅/膜厚方向の幅=1/3〜1/10の範囲にあるPZT膜を形成した。
ここで、第1の加熱工程と、第2の加熱工程は、連続して行ってもよく、また第1の加熱工程を行った後、室温まで冷却し、その後に第2の加熱工程を行ってもよい。
第1及び第2の加熱工程では、前駆体膜が前述した構造の圧電体膜26を形成させ得る限り、種々の加熱炉が使用されるが、昇温速度の大きな加熱炉を利用することが好ましい。例えば、ランプアニール炉の利用が好ましい。尚、第1及び第2の加熱工程における好ましい昇温速度は、50℃/秒以上であり、より好ましくは、100℃/秒以上である。
図16及び図17は、PZT膜の好ましい組成範囲を説明するための図である。図16は、スパッタ法によってPZTの前駆体膜を形成する場合における、PZT膜(または、PZTターゲット)の好ましい組成範囲を示している。ここでは、第3成分として、既述の(I式)のPb(AgBh)O3の中から、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3を用いている。図16のA,B,C,D,E,Fで囲まれた領域がこの組成範囲に相当する。
PbZrO3:PbTiO3:Pb(Mg1/3Nb2/3)O3=a:b:cとおいたとき、(a,b,c)をモル%で表すと、次のようになる。
A:(45,55,0)
B:(50,50,0)
C:(25,25,50)
D:(10,40,50)
E:(10,45,40)
F:(35,45,20)
すなわち、10≦a≦50,20≦b≦55,0≦c≦50である。この範囲は、前記(I)式で説明した範囲の好適な範囲である。
図16の右側の境界(C−B)を定めた意義は、次のとおりである。
PbTiO3を、PbZrO3より、多くすることにより、スパッタ成膜の手法にて、柱状の膜が好適に形成されることが判明した。
また、図16の左側の境界(D−E−F−A)は、高い圧電ひずみ定数(100pC/N以上)を得るために定められた。さらに、図16の上側の境界(D−C)は、キュリー温度が室温に近づくため、デバイスとしての安定性が悪くなる虞があるので、この虞を避けるために定められた。尚、キュリー温度以上では、圧電体素子の圧電特性が十分には発揮されない。また、前記(I)式で示される組成範囲が、図17に示されている。
実施例3−2:ゾルゲル法による製造方法
この製造方法では、PZT膜を形成可能な金属成分の水酸化物の水和錯体、すなわちゾルを脱水処理してゲルとし、このゲルを加熱焼成して無機酸化物を調整する二つの方法について説明する。これらのゾルゲル法は、先に説明した実施例1及び2とほぼ同様であるが、ここに改めて詳説することとする。
(その1)
a. ゾル組成物の成膜工程
本実施例において、PZT膜を構成する金属成分のゾルは、PZT膜を形成可能な金属のアルコキシドまたはアセテートを、例えば酸で加水分解して調整することができる。本実施例においては、ゾル中の金属の組成を制御することで、既述のPZT膜の組成を得ることができる。すなわち、チタン、ジルコニウム、鉛、さらには他の金属成分のそれぞれのアルコキシドまたはアセテートを出発原料とする。
本実施例では、最終的にPZT膜(圧電体薄膜)とされるまでに、PZT膜を構成する金属成分の組成がほぼ維持されるという利点がある。すなわち、焼成及びアニール処理中に金属成分、とりわけ鉛成分の蒸発等による変動が極めて少なく、したがって、これらの出発原料における金属成分の組成は、最終的に得られるPZT膜中の金属組成と一致することになる。つまり、ゲルの組成は生成しようとする圧電体膜(本実施例ではPZT膜)に応じて決定される。
また、本実施例では、既述の鉛成分が過剰となるPZT膜を得るため、ゾルにおいて鉛成分を化学量論から要求される量よりも20モル%まで好ましくは15モル%まで過剰にすることが好ましい。
本実施例では、このゾルは有機高分子化合物と混合された組成物として用いられるのが好ましい。この有機高分子化合物は、乾燥及び焼成時に薄膜の残留応力を吸収して、この薄膜にクラックが生じることを有効に防止する。具体的には、この有機高分子を含むゲルを用いると、後述するゲル化された薄膜に細孔が生じる。この細孔が、さらに後述するプレアニール及びアニール工程において薄膜の残留応力を吸収するものと考えられる。
好ましく用いられる有機高分子化合物としては、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリアミク酸、アセチルセルロース及びその誘導体、ならびにそれらの共重合体がある。
尚、本実施例では、ポリ酢酸ビニルを添加することで、0.05μmφ程度の細孔を多数有する多孔質ゲル薄膜を、ヒドロキシプロプルセルロースを添加することで、0.1μm以下の大きさでかつ広い分布の細孔を持った多孔質ゲル薄膜を形成することができる。
本実施例では、ポリエチレングリコールとして、平均分子量285〜420程度のものが好適に用いられる。また、ポリプロピレングリコールとしては、平均分子量300〜800程度のものが好適に用いられる。
本実施例にかかる製造方法では、まず、このゾル組成物をPZT膜を形成しようとする下部電極24上に塗布する。この時の塗布方法は特に限定されず、通常行われている方法、例えば、スピンコート、ディップコート、ロールコート、バーコート等によって行うことができる。また、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等によって塗布することもできる。
また、塗布により形成された膜の厚さは、それ以降の工程を考慮すると、後述するゲル化工程において形成される多孔質ゲル薄膜の厚さが0.01μm以上となるように制御することが望ましく、より好ましくは0.1〜1μm程度とすることがよい。
次に、塗布されたゾル組成物を自然乾燥、または200℃以下の温度で加熱する。ここで、この乾燥(加熱)された膜上に、ゾル組成物をさらに塗布して膜厚を厚くすることもできる。この場合は、下地となる膜は、80℃以上の温度で乾燥されることが望ましい。
b. ゾル組成物からなる膜のゲル化工程
次に、前述したゾル組成物の成膜工程で得た膜を焼成し、残留有機物を実質的に含まない非晶質の金属酸化物からなる多孔質ゲル薄膜を形成する。
焼成は、ゾル組成物の膜をゲル化し、かつ膜中から有機物を除去するのに十分な温度で、十分な時間加熱することによって行う。
本実施例では、焼成温度を300〜450℃にすることが好ましく、350〜400℃にすることがさらに好ましい。焼成時間は、温度及び使用する炉の形式によって変化するが、例えば、脱脂炉を用いた場合には、10〜120分程度が好ましく、15〜60分程度とすることがより好ましい。また、ホットプレートを用いた場合には、1〜60分程度が好ましく、5〜30分程度とすることがさらに好ましい。以上の工程によって、下電極上に多孔質ゲル薄膜が形成された。
c. プレアニール工程
次に、多孔質ゲル薄膜を加熱焼成し、この膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換する。焼成は、多孔質ゲル薄膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換するために必要な温度で行うが、結晶中にペロブスカイト型結晶が大部分を占めるまで行う必要はなく、ゲル薄膜が均一に結晶化された時点で終了させればよい。
本実施例では、焼成温度として400〜800℃の範囲が好ましく、550〜750℃の範囲で焼成することが、より好ましい。焼成時間は、焼成温度及び使用する炉の形式によって変化するが、例えばアニール炉を使用する場合は、0.1〜5時間程度が好ましく、0.5〜2時間程度がより好ましい。また、RTA炉を用いた場合、0.1〜10分程度が好ましく、1〜5分程度がより好ましい。
また、本実施例では、このプレアニール工程を二段階に分けて実施している。具体的には、まず、第一段階として、400〜600℃の範囲の温度でプレアニールを行い、次に、第二段階として、600〜800℃の範囲の温度でプレアニールを行う。また、さらに好ましくは、第一段階として、450〜550℃の範囲の温度でプレアニールを行い、次に、第二段階として、600〜750℃の範囲の温度でプレアニールを行う。この工程によって、多孔質ゲル薄膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換させた。
d. 繰り返し工程
次に、前述した工程a、b及びcを少なくとも1回以上繰り返し、結晶質の金属酸化物の膜を積層する。ここで、この繰り返し工程で得られる膜の膜厚、焼成温度、プレアニール条件は、下電極上に第1回の膜を形成した場合と同様である。
この繰り返し工程の結果得られる積層膜の膜厚は、最終的なPZT膜の膜厚を考慮して適宜決定すればよいが、後述する次工程(工程e)においてクラック等が発生しない適切な膜厚であることが好ましい。
この繰り返し工程では、先に形成した膜上に新たに多孔質ゲル薄膜を形成し、その後のプレアニールの結果、新たに形成された多孔質ゲル薄膜は、先に形成された膜と実質的に一体化された膜となる。
ここで、実質的に一体化された膜とは、積層された層間に不連続層がない場合のみならず、本実施例にかかる最終的に得られる圧電体膜26の場合と異なり、積層された層間に不連続層があってもよい。そして、さらに工程a、b及びcを繰り返す場合には、さらに新たな多孔質ゲル薄膜が形成され、その後のプレアニールの結果、この新たな多孔質ゲル薄膜は、先に得た結晶質の積層膜と実質的に一体化された膜となる。
尚、圧電体薄膜素子を形成するためのパターニングや、上電極の形成は、この段階で行うことが好ましい。
e. ペロブスカイト型結晶成長工程
次に、工程dで得た膜に、焼成温度600〜1200℃、さらに好ましくは800〜1000℃の範囲でアニールを行う。焼成時間は、焼成温度や、使用する炉の形式によって変化するが、例えば、アニール炉を用いた場合、0.1〜5時間程度が好ましく、0.5〜2時間程度がより好ましい。また、RTA炉を用いた場合には、0.1〜10分程度が好ましく、0.5〜3分程度がより好ましい。
このペロブスカイト型結晶成長工程、すなわち、アニールを二段階に分けて実施することもできる。具体的には、第一段階では、600〜800℃程度の温度でアニールを行い、第二段階では、800〜1000℃の温度でアニールを行う。また、さらに好ましくは、第一段階では、600〜750℃程度の温度でアニールを行い、第二段階では、800〜950℃の温度でアニールを行うことができる。
以上の操作によって、下部電極24上に、多結晶体からなり、かつ粒界が下部電極24面に対して略垂直方向に存在するとともに、結晶体の結晶粒の膜厚方向の幅が、当該結晶粒の膜面方向の幅より長く、結晶粒の膜厚方向の幅と、当該結晶粒の膜面方向の幅との関係が、膜面方向の幅/膜厚方向の幅=1/10〜1/3の範囲である圧電体膜26を形成した。
(その2)
次に、もう1つのゾルゲル法を利用した圧電体薄膜素子の製造方法について説明する。
f. 多孔質ゲル薄膜形成工程
まず、前述した工程a及びbを、少なくとも1回以上繰り返し、多孔質ゲル薄膜の積層膜を形成する。尚、工程a及びbにおいて形成される膜厚、焼成温度は、前述した製造工程(その1)に準じる。
本実施例では、積層膜の膜厚を、1μm以下に設定することが好ましく、0.5μm以下にすることがさらに好ましい。この積層膜の膜厚をこの程度にすることで、次の工程(工程c')におけるプレアニールの際に、膜にクラックが発生することを防止することができる。この工程によって、 多孔質ゲル薄膜が複数枚積層された積層膜が得られた。
c'. プレアニール工程
次に、工程fで得た積層膜を焼成して、この積層膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換する。この焼成は、積層膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換するのに必要な温度で行うが、結晶中にペロブスカイト型結晶が大部分を占めるまで行う必要はなく、ゲル薄膜が均一に結晶化した時点で終了させればよい。また、この焼成の温度及び時間は、工程cとほぼ同じにすればよい。そしてまた、この焼成は、工程cと同様に、二段階に分けて行ってもよい。この工程により、多孔質ゲル薄膜が複数枚積層された積層膜が、結晶質の薄膜に変換された。
d'. 繰り返し工程
次に、工程f及びc' を、少なくとも1回以上繰り返す。すなわち、この工程では、工程a及びbを少なくとも1回以上繰り返して、多孔質ゲル薄膜の積層膜を形成し、これを焼成して結晶質の金属酸化物からなる膜に変換する工程をさらに1回以上繰り返す。このようにして、結晶質の金属酸化物からなる膜を複数枚積層した積層膜を形成する。尚、繰り返される工程a、b及びc'における種々の条件は、前述した条件と同様にした。
この工程d'によって得られた積層膜の膜厚は、最終的に得られる圧電体膜26の膜厚を考慮して適宜決定されるが、後述する次工程(工程e)において、膜にクラック等が発生しない膜厚にすることが好ましい。
この繰り返し工程では、先に形成した膜上に新たに多孔質ゲル薄膜を形成し、その後のプレアニールの結果、新たに形成された多孔質ゲル薄膜は、先に形成された膜と実質的に一体化された膜となる。ここで、実質的に一体化された膜の定義は、前述した通りである。
尚、圧電体薄膜素子を形成するためのパターニングや、上部電極25の形成は、この段階で行うことが好ましい。
その後、工程eを行い、下部電極24上に、多結晶体からなり、かつ粒界が下部電極24面に対して略垂直方向に存在するとともに、結晶体の結晶粒の膜厚方向の幅が、当該結晶粒の膜面方向の幅より長く、結晶粒の膜厚方向の幅と、当該結晶粒の膜面方向の幅との関係が、膜面方向の幅/膜厚方向の幅=1/10〜1/3の範囲であるPZT膜を形成した。このPZT膜が圧電体膜26に相当する。
次に、図10に示す工程では、図9に示す工程で得た圧電体膜26上に、スパッタ法によって、膜厚が、0.2〜1.0μm程度のアルミニウムからなる上部電極25を形成する。
このようにして、図4に示す素子23を得た。尚、得られた圧電体膜26には、クラックの発生がなく、また断面には前述した積層による層状の不連続面も存在していないことが確認された。
(実施例4)
次に、実施例3にかかる圧電体薄膜素子(発明品1と称す)と、PZT膜を構成する結晶体の粒界が下電極の面に対して略垂直方向に存在していない以外は、発明品1と同様の構造を備えた圧電体薄膜素子(比較品1と称す)との圧電ひずみ定数(pC/N)を測定したところ、発明品1の圧電ひずみ定数は、150pC/Nであり、比較品1の圧電ひずみ定数は、100pC/Nであった。
この結果、発明品1は、比較品1に比べ、高い圧電ひずみ定数を示すことが確認された。尚、圧電ひずみ定数の測定は、2mmφのPZTドットパターンのインピーダンスアナライザーを用いた誘電率測定と、片持ち梁の自由端に加重をかけた時に、ドットパターンに発生する電圧より求めた圧電出力係数との積により求めた。図18は、比較品1のPZT膜の断面を示すSEM写真であり、図19は、比較品1のPZT膜の平面を示すSEM写真である。SEMは走査型電子顕微鏡とも称す。図18及び図19に比べて図15のSEM写真が示すように発明品1は、反りや歪みが少なく、良好な外観を備えていた。
尚、実施例3ではPZT膜をスパッタ法あるいはゾルゲル法によって製造する場合について説明したが、これに限らず、結晶体の粒界が下電極の面に対して略垂直方向に存在した構造を備えたPZT膜を形成可能であれば、他の方法により製造してもよいことは勿論である。
また、実施例3では、結晶体の粒界が、電極の平面に対して略垂直方向に存在し、結晶体の結晶粒の膜厚方向の幅が、この結晶粒の膜面方向の幅より長く、結晶粒の膜厚方向の幅と、当該結晶粒の膜面方向の幅との関係が、膜面方向の幅/膜厚方向の幅=1/10〜1/3の範囲で構成されているPZT膜について説明したが、PZT膜は、少なくとも結晶体の粒界が、電極の平面に対して略垂直方向に存在していれば良い。
(実施例5)
図20は、他の圧電体薄膜素子を構成する下電極の断面を示すSEM写真である。尚、この実施例では、既述の実施例4との相違点について説明し、実施例3と同様の構成及び工程に関しては、同一の符号を使用して、その詳細な説明は省略する。
この実施例にかかる圧電体薄膜素子と、実施例3の圧電体薄膜素子と異なる点は、下電極の構造及び製造方法についてである。すなわち、本実施例にかかる圧電体薄膜素子の下電極は、プラチナと酸化チタンとの化合物(プラチナ99重量%、酸化チタン1重量%)からなり、かつ、この化合物の結晶体の粒界が、図20に示すように、基板の表面に対して略垂直方向に存在した構造を有している。
また、この下電極を構成する結晶体は、その粒界が、PZT膜の膜面に対して略垂直方向に存在し、結晶粒の膜厚方向の幅と、膜面方向の幅との関係が、膜面方向の幅/膜厚方向の幅=1/10〜1/3となる範囲で構成されている。
このような構造を備えた下電極は、酸化チタンがプラチナの収縮を抑制するという理由から、PZT膜を形成する際に行われる熱処理によって、基板が、反ったり、歪んだりすることを抑制することができる。また、PZT膜及びチタン酸化膜との密着性を向上させることができる。
次に、この構造を備えた下電極の製造方法について説明する。
まず、図8に示す工程と同様の方法で、シリコンウエハー78上に、酸化シリコン膜79及びチタン酸化膜87を形成する。次に、チタン酸化膜87上に、プラチナターゲットと酸化チタンターゲットを同時に放電させ、成膜するマルチスパッタ法により、下部電極24を形成する。このようにすることで、プラチナと酸化チタンとの化合物(プラチナ99重量%、酸化チタン1重量%)からなり、かつ、この化合物の結晶体の粒界が、シリコンウエハー78の表面に対して略垂直方向に存在した構造を有し、さらに結晶粒の膜厚方向の幅と、膜面方向の幅との関係が、膜面方向の幅/膜厚方向の幅=1/10〜1/3となる範囲で構成された下部電極24を得ることができる。
その後、前述した実施例3と同様の方法で、下部電極24上に圧電体膜26及び上部電極25を形成し、圧電体薄膜素子を得た。この実施例5にかかる圧電体薄膜素子も、高い圧電ひずみ定数を示すことが確認された。
次に、実施例5に係わる圧電体薄膜素子(発明品2)と、下電極をプラチナのみで形成した以外は、発明品2と同様の構造を備えた圧電体薄膜素子(比較品2)について、反りや歪みの発生を調査した。尚、図21は、この比較品2を構成する下電極の断面を示すSEM写真である。図21は、図20に対する比較例であり、PZTが柱状でない構造を示している。この調査は、素子23が形成されたシリコンウエハー78の反りを測定することによって行った。
この結果、発明品2は、反りや歪みが殆ど生じなかったが、比較品2は、発明品2に比べ、反りや歪みの発生が大きいことが確認された。
また、発明品2と比較品2について、下部電極24の圧電体膜26との接着性、及び下部電極24とチタン酸化膜87との接着性を調査した。尚、この調査は、スクラッチ試験機によって行った。この結果、発明品2は、比較品2に比べ、下電極とPZT膜との接着性、及び下電極とチタン酸化膜との接着性とも、良好であることが確認された。
尚、本実施例では、下部電極24を既述の組成としたが、これに限らず、プラチナと酸化チタンの含有率は、プラチナが90〜99.5重量%、酸化チタンが0.5〜10重量%とすることができる。
また、本実施例では、下部電極24の結晶体の粒界が、基体44の表面に対して略垂直方向に存在し、さらに結晶粒の膜厚方向の幅と、膜面方向の幅との関係が、膜面方向の幅/膜厚方向の幅=1/10〜1/3となる範囲で構成された下部電極24について説明したが、これに限らず、下部電極24は、少なくとも結晶体の粒界が、基体44の表面に対して略垂直方向に存在していればよい。
また、本実施例では、下部電極24を、プラチナと酸化チタンとの化合物から構成した場合について説明したが、これに限らず、下電極は、プラチナとPZT膜の構成要素である他の金属元素の酸化物との化合物から構成してもよい。この酸化物としては、酸化チタンの他、例えば、酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム及び酸化ニオブ等が挙げられる。
(実施例6)
次に、閉気孔(気孔)の径を制御することにより、圧電体薄膜中のクラックの発生を防止するようにした本発明の実施例について説明する。図22は、素子の模式断面拡大図である。図22に示すように、圧電体膜26中には、気孔88が存在しており、しかもその気孔88は、角が丸く、結晶粒内、あるいは、結晶粒と結晶粒の間に、閉じこめられた閉気孔(個々の結晶粒は、図中に記載していない。)であり、その平均気孔径が、0.01〜0.1μmで且つ、面積密度が0.3〜5%である。
圧電体膜26の膜厚は、0.5〜25μm程度が好ましく、より好ましくは、1〜5μm程度である。更に、他の膜の厚さは、適宜決定されて良いが、例えば、上電極及び下電極は0.05〜2μm程度が好ましい。
以下に、この圧電体膜を用いた圧電体素子の製造方法を詳細に説明するが、製造方法は、これら実施例の製造方法に限定されない。
厚さ400μm、直径3インチのSi基板を硫酸で洗浄した後、1000℃で4時間、水蒸気を含む酸素雰囲気中で、加熱して湿式酸化を行い、1μmの厚さのSi熱酸化膜を形成した。次に、直流マグネトロンスパッタ法によって、膜厚200オングストロームのTi膜と、膜厚2000オングストロームのPt膜とを連続して形成した。更に、スパッタリングターゲットとして組成の制御されたPZTの焼結体を用い、RFマグネトロンスパッタ法によって、Pt膜上に膜厚1μmの圧電体膜前駆体膜を形成した。加熱せず、スパッタ成膜した為に、この前駆体膜は、アモルファス状態であった。
前駆体膜が形成されたSi基板を、拡散炉中で酸素雰囲気中にて加熱して、前駆体膜を結晶化し、焼結させて圧電体膜とした。その際の温度条件は、第1加熱工程として600℃で結晶化するまで加熱し、更にその後第2加熱工程として、750℃で焼結を行った。圧電体膜中の気孔の平均気孔径と面積密度の調整には、主にアモルファス状態での膜中のPb組成比、第1加熱工程温度、第2加熱工程時間が効く。アモルファス膜中Pbが多いと気孔径及び面積密度とも大きくなる傾向がある。第2加熱工程の温度が高いこと、あるいは、その加熱時間が長いと、気孔径が大きくなる傾向がある。
圧電体膜の上にさらに、直流マグネトロンスパッタ法によって、膜厚2000オングストロームのPt膜を形成し、最終的には、図4に示すように加工して、圧電体膜26の形状とした。
上記に示すような製造条件の変更により、気孔88の平均気孔径を変えて、圧電体膜26を作成したところ、圧電体膜26中のクラックの発生と上下電極間の電気リークは、表3に示すようになった。
気孔88の観察は、サンプルを破断し、その破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて、観察することによって行った。
但し、表3中に示すサンプルの気孔の面積密度は、1〜2%の範囲内とした。電気リークの測定は、直径2mmの円形の上電極を形成したサンプルを用い、電圧100Vを上下電極間に印加し測定した。クラックのあるサンプルは、クラック部でリークが生じていると思われる。
この結果により、平均気孔径が、0.01〜0.1μmで、クラックもなく、電気リークもない素子23を得ることが出来ることが分かった。
この理由は、以下のようであると考えられる。圧電体は、キュリー温度を境にして、結晶構造が変わる相転移を起こすが、結晶化する為の熱処理温度は、キュリー温度より高いために、室温まで温度降下するときに、圧電体膜が緻密でありすぎると、その時の歪みを吸収できなくなり、クラックを生じてしまう。
また、熱膨張係数もシリコン基板に比べて大きいため、その熱応力を圧電体膜が吸収できない場合には、クラックを発生する可能性がある。つまり、気孔88がある程度あったほうが、歪み及び応力を吸収できるために、クラックなしの膜を得ることができるのである。一方、気孔88の直径が上記範囲より大きい場合には、圧電体膜に実行的にかかる電界強度が大きくなるために、リーク破壊の虞がある。
また、圧電体素子としての耐久加速試験を行った。条件としては、上下電極間にデューティー10%、周波数10KHz、30Vのパルス電圧を印加し、圧電体素子先端の変位量の変化を調べた。
その結果、平均気孔径が0.05μm以下の場合には、2×109回以上の繰り返し耐久性を示したが、平均気孔径が0.05μmを越え、0.1μm以下の場合に於いては、2×109回までに、変位量が低下してしまう。
(実施例7)
実施例6と同様にして、気孔88の面積密度を変えて、素子23を作成したところ、圧電体膜26中のクラックの発生と上下電極間の電気リークは、表4に示すようになった。
但し、表4中に示すサンプルの気孔の平均気孔径は、0.03〜0.07μmの範囲内とした。この結果により、気孔の面積密度が0.3〜3%で、クラックもなく、電気リークもない素子23を得ることが出来ることが分かった。気孔の面積密度が上記範囲より大きい場合には、圧電体膜に実行的にかかる電界強度が大きくなるために、リーク破壊の虞がある。
また、素子23としての耐久加速試験を行った。条件としては、実施例6と同じとした。その結果、気孔の面積密度が1%以下の場合には、2×109回以上の耐久性を示したが、気孔の面積密度が、1%を越え、5%以下の場合に於いては、2×109回までに、変位量が低下してしまう。
実施例6及び7に於いて、基板としてSi基板を用いたが、マグネシア、アルミナ、ジルコニア等のセラミック基板を用いても良い。圧電体膜として、2成分系PZTを用いて、説明したが、もちろん用途によって、圧電体膜26の材料を変えることが望ましい。例えば、キュリー点が200℃以上で、高い圧電定数d31を得ることが出来る3成分系PZTであることが望ましい。更に望ましくは、第3成分としてマグネシウムニオブ酸鉛を用いた、3成分系PZTであることが望ましい。
以上述べたように本発明の圧電体薄膜素子は、最適な結晶配向性を持ったPZT薄膜を用いることにより、圧電特性を向上することができる。
本実施形態の素子23は、この構成要素である圧電体膜26の結晶体の粒界が、電極面に対して略垂直方向に存在しているため、クラックを発生させることなく、圧電ひずみ定数を向上させることができる。この結果、信頼性の高い、高性能な素子23を提供することができる。
また、結晶体の結晶粒の膜厚方向の幅を、結晶粒の膜面方向の幅より長くすることで、この効果を向上することができる。結晶体の結晶粒の膜厚方向の幅と、当該結晶粒の膜面方向の幅との関係を、既述の範囲に具体的に定めることによって、この効果をより一層向上することができる。
そしてまた、下部電極24をプラチナと、圧電体膜26の構成要素である金属元素の酸化物との化合物から構成することで、圧電体膜26を形成する際に行われる熱処理によって、基体44が、反ったり、歪んだりすることを抑制することができる。また、圧電体膜26や可撓膜46との密着性を向上させることもできる。
また、下部電極24を構成する結晶体の粒界を、基体44の表面に対して略垂直方向に存在させることで、この効果を向上させることができる。さらにまた、下部電極24を構成する結晶体の結晶粒の膜厚方向の幅を、この結晶粒の膜面方向の幅より長くすることで、この効果をさらに向上することができる。
また、本実施形態の素子23は、膜厚が、0.5μm以上と比較的厚い薄膜でもクラックなしで、容易に製造することが可能となり、素子チップ17に用いた場合に於いても、高密度の素子チップ17を歩留り良く製造できる。さらに、本実施例の素子23は、変位駆動させた時の繰り返し耐久性試験に於いても、良好な再現性を示す。
(第2の実施形態)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図23〜図36を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、圧電体膜の結晶粒から析出した異物の許容含有量が設定されている点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
図23は圧電体素子の構成を示す模式断面図である。すなわち、本実施形態では図23に示すように、超音波診断装置91は素子92を備えている。素子92は第1の実施形態における素子23に相当する。素子92は、シリコン基板93と、シリコン基板93上に形成されたシリコン酸化膜94と、シリコン酸化膜94上に形成されたチタン酸化膜95(Ti/TiO2/Ti等)と、チタン酸化膜95上に形成された下部電極96と、下部電極96上に形成されたPZT膜97と、PZT膜97上に形成された上部電極98を、備えて構成されている。上部電極98の上には保護膜99が設置されている。チタン酸化膜95は、下部電極96とPZT膜97との密着性を向上するためのものである。下部電極96及び上部電極98は、それぞれ例えば、プラチナから構成される。
PZT膜97は多結晶体からなる。図35は圧電体素子の結晶構造の膜厚方向の断面を示す電子顕微鏡写真である。図36は圧電体素子の平面における結晶構造を示す電子顕微鏡写真である。この結晶粒の粒界が図35,図36に示すように、上部電極98及び下部電極96の平面に対して略垂直方向、圧電体薄膜の膜厚方向に延びる方向に存在している。すなわち、PZTの結晶粒が後述のように柱状構造を成している。
このPZT膜97の結晶構造は、既述の何れかの面方位の結晶面に主に配向している。ここで、「配向度」とは、例えば、広角XRD法にてPZT膜の面方位(XYZ)面の反射強度をI(XYZ)で表した時に、
I(XYZ)/{I(100)+I(110)+I(111)}
と表わされるものであると定義する。
このPZT膜97は、二成分系を主成分とするもの、この二成分系に第三成分を加えた三成分系を主成分とするものが好適に用いられる。二成分系PZTの好ましい具体例としては、
Pb(ZrxTi1-x)O3+YPbO
(ここで、0.40≦X≦0.6, 0≦Y≦0.3)の化学式で表わされる組成を有するものが挙げられる。
また、三成分系PZTの好ましい具体例としては、前記二成分系のPZTに、例えば、第三成分を添加した以下に示す化学式で表わされる組成を有するものが挙げられる。
PbTiaZrb(AgBh)cO3+ePbO+(fMgO)n
(ここで、Aは、Mg,Co,Zn,Cd,Mn及びNiからなる群から選択される2価の金属またはSb,Y,Fe,Sc,Yb,Lu,In及びCrからなる群から選択される3価の金属を表す。また、Bは、Nb,Ta及びSbからなる群から選択される5価の金属、またはW及びTeからなる群から選択される6価の金属を表す。また、a+b+c=1,0.35≦a≦0.55,0.25≦b≦0.55,0.1≦c≦0.4,0≦e≦0.3,0≦f≦0.15c,g=f=1/2,n=0であるが、但し、Aが3価の金属であり、かつBが6価の金属でなく、また、Aが2価の金属であり、かつBが5価の金属である場合、gは1/3であり、hは2/3であり、また、AはMg、BがNbの場合に限り、nは1を表す。)
三成分系のより好ましい具体例としては、マグネシウムニオブ酸鉛、すなわちAがMgであり、BがNbであり、gが1/3、hが2/3であるものが挙げられる。
さらに、これら二成分系PZT及び三成分系PZTのいずれであっても、その圧電特性を改善するために、微量のBa,Sr,La,Nd,Nb,Ta,Sb,Bi,W,Mo及びCa等が添加されてもよい。とりわけ、三成分系では、0.10モル%以下のSr,Baの添加が圧電特性の改善に一層好ましい。また、三成分系では、0.10モル%以下のMn,Niの添加が、その焼結性を改善するので好ましい。
次に、この構造を備えた圧電体薄膜素子の製造方法について図面を参照して説明する。図24は超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図である。図24(a)に示す工程では、シリコン基板93に熱酸化を行い、シリコン基板93上に、シリコン酸化膜94を形成する。次に、スパッタ法により、シリコン酸化膜94上に、膜厚が0.01μm乃至0.04μm程度のチタン酸化膜95を形成する。次いで、スパッタ法により、チタン酸化膜95上に、プラチナからなる下部電極96を、結晶粒径が0.01乃至0.3μmで、0.2〜0.8μm程度の膜厚で形成する。
次に、図24(b)に示す工程では、下部電極96上に、チタンをスパッタ法により島状に形成する。このチタンを、例えば、40乃至60オングストロームの膜厚にすることにより島状チタンが形成可能である。
このチタンを結晶源として成長した圧電体薄膜の結晶構造は、(001)または(100)面への配向を有し、かつ、結晶粒が0.1μm乃至0.5μmになる。PZT薄膜の結晶系を菱面体晶系(111)にする場合には、島状チタンを形成する工程を使用しない。
この製造方法は、アルカノールアミン、或いはアセチルアセトン等を用いて、金属アルコキシド、酢酸塩の加水分解を抑制して安定分散したゾルを加熱焼成して無機酸化物を調整する方法である。この製造方法は次の各工程からなる。
a. ゾル組成物の成膜工程
本実施形態において、PZT薄膜製造用の組成物は、PZT膜を構成するためのゾルの金属成分である、PZT膜を形成可能な金属のアルコキシドまたはアセテートを、例えば、主溶媒としての2−n−ブトキシエタノール中分散させて調整することができる。このとき、2,2'イミノジエタノール(アルコキシドまたはアセテートに対する加水分解抑制剤)を溶液中に同時に入れる。
本実施形態においては、ゾル中の金属の組成を制御することで、前述したPZT膜の組成を得ることができる。すなわち、チタン、ジルコニウム、鉛、さらには他の金属成分それぞれのアルコキシドまたはアセテートを出発原料とする。
ここでは、最終的にPZT膜(圧電体薄膜)とされるまでに、PZT膜を構成する金属成分の組成がほぼ維持されるという利点がある。すなわち、焼成及びアニール処理中に金属成分、とりわけ鉛成分の蒸発等による変動が極めて少なく、したがって、これらの出発原料における金属成分の組成は、最終的に得られるPZT膜中の金属組成と一致することになる。つまり、ゾルの組成は生成しようとする圧電体膜(本実施形態ではPZT膜)に応じて決定される。
また、本実施形態では、前述した鉛成分の蒸発により鉛成分の不足のないPZT膜を得るため、ゾルにおいて鉛成分を化学量論から要求される量よりも20モル%まで好ましくは15モル%まで過剰にすることが好ましい。
本実施形態では、このゾルは有機高分子化合物と混合された組成物として用いられるのが好ましい。この有機高分子化合物は、乾燥及び焼成時に薄膜の残留応力を吸収して、この薄膜にクラックが生じることを有効に防止する。具体的には、この有機高分子を含むゲルを用いると、後述するゲル化された薄膜に細孔が生じる。この細孔が、さらに後述するプレアニール及びアニール工程において薄膜の残留応力を吸収するものと考えられる。
ここで、好ましく用いられる有機高分子化合物としては、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリアミック酸、アセチルセルロース及びその誘導体、ならびにそれらの共重合体が挙げられる。
尚、本実施形態では、ポリ酢酸ビニルを添加することで、0.05μm程度の細孔を多数有する多孔質ゲル薄膜を、ヒドロキシプロプロピセルロースを添加することで、1μm以下の大きさでかつ広い分布を持った多孔質ゲル薄膜を形成することができる。
本実施形態では、ポリエチレングリコールとして、平均分子量285〜800程度のものが好適に用いられる。また、ポリプロピレングリコールとしては、平均分子量300〜800程度のものが好適に用いられる。
ゾル組成物を、PZT膜97を形成しようとする下部電極96上に塗布する。この時の塗布方法は特に限定されず、通常行われている方法、例えば、スピンコート(1500回転/分)、ディップコート、ロールコート、バーコート等によって行うことができる。また、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等によって塗布することもできる。
また、前記塗布により形成される一層あたりの膜の厚さは、それ以降の工程を考慮すると、後述するゲル化工程において形成される多孔質ゲル薄膜の厚さが0.1〜0.3μmとなるように制御することが望ましく、より好ましくは0.15μm程度とすることがよい。
次に、塗布されたゾル組成物を自然乾燥、または200℃以下の温度(例えば、摂氏180度10分)で加熱する。ここで、この乾燥(加熱)された膜上に、前記ゾル組成物をさらに塗布して膜厚を厚くすることもできる。この場合は、下地となる膜は、80℃以上の温度で乾燥されることが望ましい。
b. ゾル組成物からなる膜のゲル化工程
次に、前述したゾル組成物の成膜工程で得た膜を焼成し、残留有機物を実質的に含まない非晶質の金属酸化物からなる多孔質ゲル薄膜を形成する。焼成は、ゾル組成物の膜をゲル化し、かつ膜中から有機物を除去するのに十分な温度で、十分な時間加熱することによって行う。
本実施形態では、焼成温度を300〜500℃にすることが好ましく、380〜420℃にすることがさらに好ましい。焼成時間は、温度及び使用する炉の形式によって変化するが、例えば、脱脂炉を用いた場合には、10〜120分程度が好ましく、15〜60分程度とすることがより好ましい。また、ホットプレートを用いた場合には、1〜60分程度が好ましく、5〜30分程度とすることがさらに好ましい。以上の工程によって、下部電極96上に多孔質ゲル薄膜が形成される。
c. プレアニール工程
次に、前述した工程bで得た多孔質ゲル薄膜を加熱焼成し、この膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換する。焼成は、多孔質ゲル薄膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換するために必要な温度で行うが、結晶中にペロブスカイト型結晶が大部分を占めるまで行う必要はなく、ゲル薄膜が均一に結晶化した時点で終了させればよい。本実施形態では、焼成温度として500〜800℃の範囲が好ましく、550〜750℃の範囲で焼成することが、より好ましい。焼成時間は、焼成温度及び使用する炉の形式によって変化するが、例えばアニール炉を使用する場合は、0.1〜5時間程度が好ましく、0.5〜2時間程度がより好ましい。また、RTA(Rapid Thermal Annealing)炉を用いた場合、0.1〜10分程度が好ましく、1〜5分程度がより好ましい。ここでは、RTAにおいて酸素雰囲気中摂氏600度5分+摂氏725度1分の加熱を行った。
また、本実施形態では、このプレアニール工程を二段階に分けて実施することができる。具体的には、まず、第一段階として、500〜600℃の範囲の温度でアニールを行い、次に、第二段階として、600〜800℃の範囲の温度でアニールを行うことができる。また、さらに好ましくは、第一段階として、500〜550℃の範囲の温度でアニールを行い、次に、第二段階として、600〜750℃の範囲の温度でアニールを行うことができる。この工程によって、多孔質ゲル薄膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換させた。
d. 繰り返し工程
次に、以後、前述した工程a、bをさらに3回繰り返し、多結晶ゲル薄膜を4層積層した後、工程cのプレアニール工程により金属酸化物からなる膜に変換する。
次いで、(100)または(001)配向の圧電体薄膜を形成する場合には、チタンをPZT上に既述の方法によって島状に形成し、既述の工程a、b及びcをさらに4回繰り返す。
この繰り返し工程の結果得られる積層膜の積層数は、最終的なPZT膜97の膜厚を考慮して適宜決定すればよい。ここでは、一層当たり0.15μmであることが良い。尚、後述する次工程(工程e)においてクラック等が発生しない膜厚であることが好ましいことは言うまでもない。
この繰り返し工程では、先に形成した膜上に新たに多孔質ゲル薄膜を形成し、その後のプレアニールの結果、新たに形成された多孔質ゲル薄膜は、先に形成された膜と実質的に一体化された膜となる。
ここで、実質的に一体化された膜とは、積層された層間に不連続層がない場合のみならず、本実施形態にかかる最終的に得られるPZT膜97の場合と異なり、積層された層間に不連続層があってもよい。そして、さらに工程a、bを繰り返す場合には、さらに新たな多孔質ゲル薄膜が形成され、その後のプレアニールの結果、この新たな多孔質ゲル薄膜は、前記で得た結晶質の積層膜と実質的に一体化された膜となる。
e. ペロブスカイト型結晶成長工程(ファイナルアニール)
次に、前記工程dで得た膜に、焼成温度600〜1200℃、さらに好ましくは800〜1000℃の範囲でアニールを行う。焼成時間は、焼成温度や、使用する炉の形式によって変化するが、例えば、アニール炉を用いた場合、0.1〜5時間程度が好ましく、0.5〜2時間程度がより好ましい。また、RTA炉を用いた場合には、0.1〜10分程度が好ましく、0.5〜3分程度がより好ましい。ここでは、前記RTAにおいて、摂氏650度5分+900度1分、酸素雰囲気中で本工程を行った。
また、本実施形態では、このペロブスカイト型結晶成長工程、すなわち、アニールを二段階に分けて実施することができる。具体的には、第一段階では、600〜800℃程度の温度でアニールを行い、第二段階では、800〜1000℃の温度でアニールを行う。また、さらに好ましくは、第一段階では、600〜750℃程度の温度でアニールを行い、第二段階では、800〜950℃の温度でアニールを行うことができる。
以上の操作によって、下部電極96上に、柱状の多結晶体からなる、粒径が0.1μm乃至0.5μmで膜厚が1.2μmのPZTが形成される。ここで、チタンがPZTの結晶化について与える効果について説明する。この効果は、本発明者によって電子顕微鏡を用いて確認されている。
図23において、下部電極96の粒界上には、島状のチタンがスパッタ法によって形成されている。下部電極の結晶粒径は0.01乃至0.3μmである。下部電極をこのような結晶粒径を持った柱状結晶にすることはプラチナがFCC(face−centered cubic)構造であるため、柱状結晶になりやすく、結晶粒径はスパッタ時の成膜速度により制御できるという理由から可能である。
下部電極の表面に島状のチタン結晶を形成しようとすると、プラチナの表面エネルギーの低いプラチナ結晶間の粒界にチタンの島状結晶が形成される傾向となる。このとき、チタンを核として成長するPZT結晶粒は、複数のチタン結晶に跨って及んで形成される。
図25は、PZT結晶の形成過程を示す模式図であり、電子顕微鏡によって確認された図である。図25(a)はPZT結晶の高さ方向に沿った図であり、図25(b)はPZT結晶の径(幅)方向に沿った図である。図26はPZT結晶を示す電子顕微鏡写真である。図25及び図26に示すように、Pt電極の上に柱状のPZTの結晶が形成されている。チタン結晶は、下部電極96の結晶の粒界96aに形成されている。
チタン結晶を核としてPZTを成長させると、PZTは隣接する下部電極96の複数の白金結晶に跨るようにその結晶粒が成長する。通常、Ptは(111)の配向が安定で生産も容易であるが、白金の配向の影響をより受け難い結晶粒界にチタンの種結晶を形成すると、PZTの結晶を白金の結晶面方位の影響を受けない(100)、(001)方向の柱状結晶にすることが可能である。さらに、PZTの結晶粒は複数の下部電極96に跨って形成されているので、下部電極96との密着性がより向上することが期待される。
図27は島状チタンを形成した下部電極上に圧電体薄膜PZTを成膜した場合のX線回折解析図である。X線回折解析はXRD(X―ray diffraction)とも称す。図28は島状チタンを形成しない下部電極上に圧電体薄膜PZTを成膜した場合のX線回折解析図である。図27と図28とを互いに比較すると、島状チタンを形成しない時には、PZT膜の配向は(111)配向が強くなり、圧電定数も180pC/Nである。一方、島状チタンを形成した場合は、PZTの(100)または(001)配向が強くなってその割合も(111)配向に対して多くなることにより、圧電定数も190pC/Nと高くなる。ここで、圧電定数とは、変位(歪み)−電圧特性から求めたもので、印加電場250kv/cmのときの圧電効果を示すものである。
さらに、チタンが島状に形成されたPZT層を3層順次形成し、さらにチタンを島状に形成し、さらにPZTを4層順次形成したものを結晶化させると、チタンを核にしてPZTが既述のように結晶化し、他のPZTも隣接するPZTの結晶粒径や結晶構造に合わせて結晶化する。PZT層とPZT層との間の島状チタンもチタン上のPZTの結晶化を既述のように制御する。
図31及び図32は圧電ひずみ定数の測定グラフであり、カンチレバーの歪み−電場特性から求められている。変位δは次式で得られるから測定されたδ及びSi基板の厚みH、ヤング率YSi、また、ポアソン比v、圧電体膜のヤング率YPZT、及び、カンチレバーの自由長Lと印加電圧Vとから圧電定数(d31)が算出される。
δ=d31・V・(YPZT/YSi)・(3L2/H2)・((1−νSi)/(1−νPZT))
また、歪みをεとすると変位δとの間には、以下の関係があり、歪みεを計算できる。
tは圧電体薄膜の厚さである。
ε={H2/(3(1−νsi)t L2)}・δ
図29は、圧電体薄膜の透過型電子顕微鏡写真であり、本実施形態で得られたものである。隣接する二つの結晶(grain1とgrain2)との間の結晶粒界(grain boundary)は、本発明者が検討したところ、ほぼ5nm以下であった。結晶粒界をほぼ観察できないものもあった。一方、図30は、比較例の圧電体薄膜の透過型顕微鏡写真である。この比較例としての膜は、まずゾル中にPZT1モルに対して10モルの過剰な水を加え加水分解を必要以上に加速し、且つファイナルアニール温度を650℃で5分、700℃で1分で行って作成した。このものの結晶粒界は、本発明者が測定したところ、7〜12nm以上の幅を持っていた。
さらに、図30の圧電体薄膜を比較例として、本実施形態によって得られた圧電体薄膜との電界印加に対する残留ひずみを測定した。
図31,図32は、両者の残留ひずみを温度を一定、電場を徐々に増加減少させるという条件で測定した時の測定結果を示す特性図である。図31は比較例の特性図である。一方、図32はMODプロセスによって作成したものの結果である。後者の結果は、前者に比べて格段に残留ひずみが減少していることが分かる。残留ひずみが低下することにより、本実施形態の圧電体薄膜の圧電特性は、圧電定数d31以上となり、従来のものに比較してほぼ1.2倍の圧電ひずみ特性を発揮することが可能となる。残留ひずみの測定は、カンチレバーを用いて行った。電圧が零のときの初期変位が残留ひずみに相当する。結晶粒が柱状方向に揃っている圧電体薄膜、すなわち、結晶粒界が上下電極に対してほぼ直角なものに対して、結晶粒の粒界方向がランダムなバルクのものでは、残留ひずみが大きくなる。
さらに、本実施形態によって得られた圧電体薄膜の粒界における異物に対する試験を行った。この試験は、制限視野回析の条件によって得た電子線回析パターンによった。図33は比較例に係わるPZT結晶粒界の電子線回析パターンを示す図である。図34は本実施形態に係わるPZT結晶粒界の電子線回析パターンを示す図である。図33及び図34に示す白いドットはPZT結晶のPZT結晶粒界に相当する部分であり、この部分において△で囲む部分が、PZT結晶組成とは異なる組成の異物分である。図33は、比較例に係わるパターンであり、図34は本実施形態に係わるパターンである。図34のパターンは、図33のパターンに比較して明らかに不純物の存在量が少ないことが分かる。
図24(b)の工程を終了した後図24(c)に示す工程に移行する。この工程ではPZT膜97上に、スパッタ法によって、膜厚が、0.05〜0.2μm程度のプラチナからなる上部電極98を形成する。続いて、シリコン基板93の表面に導電膜100が成膜される。導電膜100は個々の素子チップ内で列ごとに上部電極98を相互に接続する。そして、フォトリソグラフィ技術に基づき導電膜100から上部電極98、上部電極端子34及び上部電極端子36が成形される。
このようにして、図23に示すような圧電体薄膜素子を得た。尚、得られたPZT膜97には、クラックの発生がなく、また断面には前述した積層による層状の不連続面も存在していないことが確認された。
前記結晶源として、チタンを取り上げて説明したが、これに限られず圧電体膜の構成元素であってかつ種結晶となり、圧電体薄膜と合金化できるものであれば、チタンに限られず使用される。また、下部電極を白金としたが、同じFCC構造を持つイリジウムでも、同様な効果が得られるものである。
また、既述のMOD(Metal Organic Deposition)プロセスは、ゾルの作成手段がゾルゲル法と異なるだけで、その他の条件はゾルゲル法と同じである。MODプロセスに於けるゾルの調合は、調合後のゾル液中で分散ゾルが加水分解をしない。すなわち、脱水重縮合あるいはゲルネットワークを形成する以上のゾル−ゲル反応をさせないことを目的、特徴とする。
具体的には、ゾル液の出発原料の1つにアルカノールアミンの1つ、モノエタノールアミンを金属アルコキシドや金属酢酸塩の加水分解抑止剤として選択する。モノエタノールアミンの働きによって、金属アルコキシドや金属酢酸塩は、ゾル液中で均一な分散状態を保つ。従って、ゾルゲル法に見られるゲルネットワークを形成しないから、ゾルゲル法により更に均質な結晶を得ることができる。ゾルの塗布工程から結晶を得るための焼結工程までの一切は、ゾル−ゲル法と同じである。前述のモノエタノールアミンの他に、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アセチルアセトン、酢酸等をゾルの加水分解抑止剤として利用できる。
以上説明したように、本発明によれば、残留ひずみが少なく、圧電ひずみ特性に優れた圧電体薄膜素子を得ることが可能である。この圧電体薄膜素子は、電界が印加された際優れた変位を発揮することができるので、これを備えた超音波診断装置91は、超音波発生強度を大きくすることができる。
(第3の実施形態)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図37〜図42を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、圧電体膜が複数の層から構成され微結晶粒を含む点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
図37は、圧電体素子の構造を模式断面図である。すなわち、本実施形態では図37に示すように、超音波診断装置112は圧電体素子113を備えている。圧電体素子113ではシリコン基板114上に絶縁膜115及び下部電極膜116が積層して構成されている。さらに、下部電極膜116上には複数の圧電体薄膜117〜120、上部電極膜121を積層して構成されている。積層数は2つ以上であれば良く特に限定されない。さらに、絶縁膜115、下部電極膜116、圧電体薄膜117〜圧電体薄膜120及び上部電極膜121を覆って保護膜122が設置されている。
絶縁膜115は、導電性のない材料、例えば、シリコン基板を熱酸化等して形成された二酸化珪素により構成されている。
下部電極膜116は、上部電極膜121と対になる、圧電体薄膜に電圧を印加するための電極であり、導電性を有する複数の材料、例えば、白金(Pt)で構成されている。また、圧電体素子113の下部における厚みとその他の領域における厚みとを異ならせて形成してもよい。
上部電極膜121は、圧電体素子に電圧を印加するための電極であり、導電性を有する材料、例えば厚み0.1μmの白金(Pt)で形成されている。
圧電体薄膜117〜120は、圧電特性を有する圧電性材料に高分子有機化合物を混合した前駆体を結晶化させて構成されている。例えば、チタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr、Ti)O3):PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン酸鉛(Pb(Zr0.56Ti0.4409(Mg1/3Nb2/30.13)等で構成される。
圧電体薄膜117〜120は、高分子有機化合物が作用して各層に微結晶粒123を備えている。微結晶粒の直径は20nm〜80nm程度である。各圧電体薄膜に含まれる微結晶粒は下部電極膜に近い圧電体薄膜ほど面密度が高く上部電極膜に近いほど面密度が低くなる傾向にある。例えば圧電体薄膜が4層で構成されている場合、下部電極膜116に最も近い圧電体薄膜117における微結晶粒の面密度は5×109/cm2程度となる。また中央付近の圧電体薄膜118または圧電体薄膜119における微結晶粒の面密度は1×109/cm2程度となる。また上部電極膜121に最も近い圧電体薄膜120における微結晶粒の面密度は1×108/cm2程度となる。尚、この面密度の変化は必ずしも厳密なものではなく全体として上記した傾向を備えるという意味である。
圧電体薄膜の厚みは、圧電体薄膜一層当たり40nm以上80nm以下程度であることが好ましく、さらに圧電体薄膜一層当たり略65nmの厚みであることが好ましい。これらの厚みであればクラック等の発生なく多数層を積層して最も厚い圧電体素子を形成できるからである(図41参照)。
さらに圧電体薄膜は従来より多く積層することが可能である。最大1.6μm〜2.0μmまで積層させることが可能である。余りに厚く積層すると高い駆動電圧が必要となり、あまりに薄くすると駆動電圧を印加する際、PZT膜内に高電場が生じ、膜の特性が低下したり、膜が絶縁破壊したりして信頼性を損ねるからである。
(作用)
図40は微結晶粒成長の原理を説明するための模式図である。図40を参照して微結晶粒ができる理由を考察する。一般にPZT等の圧電性材料を含んだ前駆体を熱処理すると、アモルファス状態であった分子構造からペロブスカイト結晶構造の緻密な結晶構造が発達する。結晶が発達する方向は下から上に向かってである。すなわち下部電極と接している下層では、下部電極の結晶構造が前駆体へ伝達され、界面から一定の速度V2で結晶粒が成長していく。複数の点から結晶粒が成長して結晶粒同士が接触すると柱状構造の結晶粒が成長していくのである。一方、アモルファス層内にも一定の速度V1で成長する結晶粒が存在する。
本実施形態の高分子有機化合物を含んだ前駆体では、熱処理が加えられると、下部電極の白金等の影響が多いほど、すなわち下部電極に近い層ほど、層内における結晶粒が成長する速度V1が大きい傾向がある。よって下部電極に近い圧電体薄膜では層内からの結晶の成長速度V1が界面からの結晶の成長速度V2に比べ相対的に大きいので多数の微結晶粒が結晶後に残留する。一方下部電極から遠いほど層内から結晶粒が成長する速度V1が相対的に小さい。相対的に圧電体薄膜の境界から結晶粒が成長する速度V2の方が大きくなると、層内からの微結晶粒が圧電体薄膜の境界から成長した結晶粒に飲み込まれて消滅する場合が多くなる。よって下部電極から遠い圧電体薄膜では層内から成長した結晶が界面から成長した柱状の結晶に飲み込まれ消滅し結晶後に相対的に少ない微結晶粒しか残留しなくなる。上記作用ゆえに下部電極膜116に近い圧電体薄膜ほど微結晶粒123が多く残留する傾向が生ずるのである。
さて圧電体素子の製造時、圧電体薄膜には結晶の成長に伴って複雑な内部応力が生ずる。圧電体薄膜内部に生じた内部応力は結晶構造上弱い点から破壊(クラック)を生ずる。圧電体薄膜を厚くすればするほど内部応力が大きく加算される。このため余りに厚く形成した圧電体素子では、熱処理の過程でクラックが生ずるのである。従来はこのクラック発生があるため、ある程度以上(例えば1.0μm以上)圧電体素子を厚くすることができなかった。
本実施形態によれば、微結晶粒123が各部に存在するため、圧電体薄膜内に多くの粒界が存在する。これらの粒界によって圧電体薄膜内部に生じた内部応力を緩和する。すなわち微結晶粒123が結晶構造に生じた内部応力を緩和しているのである。一方微結晶粒123はそれ自体圧電性材料の結晶であるため圧電体素子全体の圧電特性を阻害することはない。したがって本実施形態の圧電体素子によれば、圧電特性を阻害することなく応力集中による破壊(クラック)を防止できるのである。その結果、圧電体素子の信頼性が高いため超音波診断装置112の信頼性も高い。
(製造方法の説明)
次に、超音波診断装置112における圧電体素子113の製造方法を説明する。図38及び図39は圧電体素子の製造方法を説明する為の模式図である。
絶縁膜形成工程(図38(a)): まず、シリコン基板114に絶縁膜115、例えば二酸化ケイ素の膜を形成する。シリコン基板114は、例えば200μm程度、絶縁膜115は、1μm程度の厚みに形成する。絶縁膜の製造には公知の熱酸化法等を用いる。
下部電極膜形成工程(図38(a)): 次いで絶縁膜115の上に下部電極膜116を形成する。下部電極膜116は、例えば白金層を0.5μmの厚みで積層する。これら層の製造は公知の直流スパッタ法等を用いる。次に、下部電極膜116を所定の形状に形成する。下部電極膜116の形成方法は公知のフォトグラフィー法とエッチング法を用いて形成する。
塗布・乾燥・脱脂工程(図38(b)): 次いで圧電体薄膜117〜圧電体薄膜120を形成する。まずPZT等の圧電性材料の前駆体に高分子有機化合物を混入させて溶解液を生成する。高分子有機化合物としては、例えばポリエチレングリコール等を混入する。高分子有機化合物の含有量は、圧電性材料の前駆体に含まれる鉛の量に対して70乃至135mol%程度含有させる。この程度の含有量が最も効率よく微結晶粒を成長させることができるからである。
次いで高分子物質を混入した溶解液を、下部電極膜116上に一定の厚みに塗布する。この厚みは前述したとおりである。例えば公知のスピンコート法を用いる。一回のコーティングは、毎分500回転で30秒、毎分1500回転で30秒、最後に毎分500回転で10秒程度行う。塗布後、一定温度(例えば180度)で一定時間(例えば10分程度)乾燥させる。乾燥により溶媒が蒸発する。乾燥後、さらに大気雰囲気下において所定の高温(例えば400度)で一定時間(30分間)脱脂する。脱脂により金属に配位している有機の配位子が熱分解され、金属が酸化されて金属酸化物となる。
上記塗布→乾燥→脱脂の各工程を所定回数、例えば4回繰り返して4層積層する。これらの乾燥や脱脂により、溶液中の金属アルコキシドが加水分解や重縮合され金属−酸素−金属のネットワークが形成される。尚、繰り返し回数は特に限定されない。
熱処理工程(図38(c)): 4層重ねるごとに、さらに圧電体層の結晶化を促進し圧電体としての特性を向上させるために所定の雰囲気下で熱処理する。例えば、4層積層後、酸素雰囲気下において、高速熱処理(RAT)で、600度で5分間、さらに900度で1分間加熱する。この熱処理によりアモルファス状態のゲルからペロブスカイト結晶構造が形成される。この結晶化の際に、上記したような微結晶粒も上記した分布にしたがって残留することになる。
上記塗布・乾燥・脱脂を4回繰り返して熱処理を1回行うという一連の工程をさらに所定回数、例えば4回繰り返すことになり圧電体薄膜117〜圧電体薄膜120が形成される。
圧電体エッチング工程(図38(d)): 各層を形成後、圧電体薄膜117〜圧電体薄膜120を、所定の形状に合わせた形状になるようマスクし、その周囲をエッチングする。エッチングする際、スピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジストを塗布し、露光・現像して、レジストを形成する。これに、通常用いるイオンミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、不要な層構造部分を除去する。エッチングで不要部分を取り除く。
上部電極膜形成工程(図39(a)): 圧電体薄膜の上に、さらに電子ビーム蒸着法、スパッタ法等の技術を用いて、上部電極膜121を形成する。上部電極の材料は、白金(Pt)等を用いる。厚みは100nm程度にする。次に、上部電極膜121を、所定の形状に合わせた形状になるようマスクし、その周囲をエッチングする。エッチングする際、スピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジストを塗布し、露光・現像して、レジストを形成する。これに、通常用いるイオンミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、不要な部分の白金膜を除去して取り除く。次に、図39(b)に示すように、絶縁膜115、下部電極膜116、圧電体薄膜117〜圧電体薄膜120及び上部電極膜121を覆って保護膜122を設置する。以上の工程により圧電体素子113が形成される。
(実施例)
上記実施形態の製造方法に沿って製造した圧電体素子の実施例を示す。圧電体層を構成する圧電性材料には、
Pb(Zr0.56Ti0.440.9(Mg1/3Nb2/30.13
を用いた。
表5に、上記本発明の製造方法によって製造した圧電体素子113の実施例と、従来の製造方法によって製造した圧電体素子の比較例との比較結果を示す。比較項目は、圧電体素子の圧電特性を決定する圧電定数d、圧電定数g及び誘電率εと、信頼性、クラックを生ずることなく形成可能な圧電体素子の最大の厚みである。尚、圧電定数d及び圧電定数gの添え字31は、圧電体素子の厚み方向についての定数であることを示す。信頼性は障害を発生することなく使用できた回数等を相対値で示した。比較例は通常の前駆体を用い、熱処理を600度で5分間、900で1分間行ったものである。
表5から判るように、圧電特性は変わらないまま、圧電体素子の厚みを2倍以上にし、信頼性を3倍にすることができた。
図41は圧電体素子の1層の膜厚と限界膜厚との関係を示すグラフである。図41に、圧電体薄膜一層当たりの膜厚と全体としてクラックを生ずることなく積層可能であった圧電体素子の膜厚の最大値との関係を示す。同図に示すように、一層当たりの膜厚を一定の範囲に抑えて多層積層にすれば全体としての膜厚を厚くすることができる。
図42は、圧電体薄膜と下部電極膜との界面付近の断面TEM写真の模写図であり、本実施例おける断面TEM(Transmission Electron Microscopy)写真の模写図である。図42に示すように、微結晶粒が残留していることがはっきりと確認できる。また下部電極膜116から離れるほど微結晶粒の個数が減少していく傾向が現れている。
上記したように本実施形態によれば、圧電性材料に高分子有機化合物を混合すること及び圧電体薄膜一層当たりの厚みを制御することにより微結晶粒を生じさせることができる。微結晶粒が内部応力を緩和するので、積層数を多くして圧電体素子の厚みを厚く形成することができる。圧電体素子を厚くしたので、圧電体薄膜にかかる電界の強さを抑えることができ圧電体素子や超音波診断装置の信頼性を向上させることができる。
<その他の変形例>
本実施形態は、上記各実施形態によらず種々に変形して適応することが可能である。例えば、上記実施形態では、ゾル−ゲル法を用いて圧電体層を形成したが、それ以外の方法、例えばスパッタリング法を用いて圧電体層を形成してもよい。
また、上記実施形態では、単一の圧電性材料により圧電体層を形成したが、層ごとに異なる圧電性材料を用いてもよい。異なる圧電性材料を用いる場合にも、高分子有機化合物を混ぜること及び圧電体薄膜一層当たりの厚みを制御することにより微結晶粒を成長させることができる。
また、本実施形態の圧電体素子113は、超音波診断装置112に使用する圧電体素子のみならず、不揮発性半導体記憶装置、薄膜コンデンサー、パイロ電気検出器、センサー、表面弾性波光学導波管、光学記憶装置、空間光変調器、ダイオードレーザー用周波数二倍器等のような圧電体装置、誘電体装置、パイロ電気装置、及び電気光学装置の製造に適応することができる。
本実施形態によれば、圧電体薄膜117〜圧電体薄膜120中に微結晶粒123を備えたので、厚膜化を可能とし信頼性を向上させることのできる圧電体素子113を提供できる。
本実施形態によれば、圧電体薄膜117中に微結晶粒123を備えた圧電体素子113を備えたので、信頼性を向上させることのできる超音波診断装置112を提供できる。また、信頼性を向上させることのできる超音波診断装置112の製造方法を提供できる。
(第4の実施形態)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図43〜図53を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、圧電体膜の結晶粒が柱状構造であり、結晶粒の縦横の比が規定されている点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
図43は、圧電体素子の構成を示す模式断面図である。すなわち、本実施形態では図43に示すように、超音波診断装置128は圧電体素子129を備えている。圧電体素子129は、シリコン基板130と、シリコン基板130上に形成されたシリコン酸化膜131と、シリコン酸化膜131上に形成されたチタン酸化膜132と、チタン酸化膜132上に形成された下部電極133と、下部電極133上に形成されたPZT膜134と、PZT膜134上に形成された上部電極135を、備えて構成されている。上部電極135の上には保護膜136が設置されている。
前記下部電極133は、プラチナから形成されている。図中には表示していないがPZT膜134の密着性を向上させるために、シリコン酸化膜131とチタン酸化膜132の間にチタン膜(Ti/TiO2/Ti等)を形成することが好ましい。
図44はPZT膜の断面を示すSEM写真であり、図45はPZT膜の平面を示すSEM写真である。PZT膜134は多結晶体からなり、この結晶体の粒界が、図44,図45に示すように、下部電極133及び上部電極135の平面に対して略垂直方向に存在している。すなわち、PZT膜134の結晶粒が後述のように柱状構造を成している。この結晶体は、結晶粒の膜厚方向の幅が、当該結晶粒の粒径方向の幅より長く、結晶粒の膜厚方向の幅と、当該結晶粒の粒径方向の幅との関係が、粒径方向の幅/膜厚方向の幅=1/3乃至1/10の範囲内で構成されている。
さらに、このPZT膜134の結晶構造は、面方位(100)の結晶面に強く配向して、圧電体薄膜の膜厚方向に延びる柱状結晶を示す。さらに、好適には、圧電体薄膜の1つの柱状結晶は、0.1乃至0.3μmの幅に形成されている。
ここで、「配向度」とは、例えば、広角XRD法にてPZT膜の面方位(XYZ)面の反射強度をI(XYZ)で表した時に、
I(XYZ)/{I(100)+I(110)+I(111)}
と表わされるものであると定義する。本発明では、圧電体薄膜の面方位(100)が、0.15以上であることにより圧電体薄膜がその膜厚方向に伸びるほぼ柱状構造となる。
圧電ひずみ定数は、比誘電率と圧電出力係数の積に比例する。この比誘電率は、電界印加方向の結晶粒の大きさが大きいほど大きく、圧電出力係数は、圧電体薄膜の結晶粒が幅方向(図43の図中上下方向)に大きく、結晶粒界の幅が狭いほど大きい、という理由から、本実施形態では既述のような柱状構造を備えることにより、PZT膜134の圧電ひずみ定数を向上することができる。
このPZT膜134は、二成分系を主成分とするもの、この二成分系に第三成分を加えた三成分系を主成分とするものが好適に用いられる。二成分系PZTの好ましい具体例としては、
Pb(ZrxTi1-x)O3+YPbO
(ここで、0.40≦X≦0.6,0≦Y≦0.3)
の化学式で表わされる組成を有するものが挙げられる。
また、三成分系PZTの好ましい具体例としては、前記二成分系のPZTに、例えば、第三成分を添加した以下に示す化学式で表わされる組成を有するものが挙げられる。
PbTiaZrb(Agh)cO3+ePbO+(fMgO)n
(ここで、Aは、Mg,Co,Zn,Cd,Mn及びNiからなる群から選択される2価の金属またはSb,Y,Fe,Sc,Yb,Lu,In及びCrからなる群から選択される3価の金属を表す。また、Bは、Nb,Ta及びSbからなる群から選択される5価の金属、またはW及びTeからなる群から選択される6価の金属を表す。また、a+b+c=1,0.35≦a≦0.55,0.25≦b≦0.55,0.1≦c≦0.4,0≦e≦0.3,0≦f≦0.15c,g=f=1/2,n=0であるが、但し、Aが3価の金属であり、かつBが6価の金属でなく、また、Aが2価の金属であり、かつBが5価の金属である場合、gは1/3であり、hは2/3であり、また、AはMg、BがNbの場合に限り、nは1を表す。)三成分系のより好ましい具体例としては、マグネシウムニオブ酸鉛、すなわちAがMgであり、BがNbであり、gが1/3、hが2/3であるものが挙げられる。
さらに、これら二成分系PZT及び三成分系PZTのいずれであっても、その圧電特性を改善するために、微量のBa,Sr,La,Nd,Nb,Ta,Sb,Bi,W,Mo及びCa等が添加されてもよい。とりわけ、三成分系では、0.10モル%以下のSr,Baの添加が圧電特性の改善に一層好ましい。また、三成分系では、0.10モル%以下のMn,Niの添加が、その焼結性を改善するので好ましい。
次に、この構造を備えた圧電体薄膜素子の製造方法について図面を参照して説明する。図46は超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図である。図46(a)〜図46(c)は、前述した圧電体素子129の製造工程を示す断面図である。図46(a)に示す工程では、シリコン基板130に熱酸化を行い、シリコン基板130上に、膜厚が0.3〜1.2μm程度のシリコン酸化膜131を形成する。次に、スパッタ法により、シリコン酸化膜131上に、膜厚が0.01μm乃至0.04μm程度のチタン酸化膜132を形成する。次いで、スパッタ法により、チタン酸化膜132上に、プラチナからなる下部電極133を、結晶粒径が0.01乃至0.3μmで、0.2〜0.8μm程度の膜厚で形成する。次に、下部電極133を所定の形状に形成する。下部電極133の形成方法は公知のフォトグラフィー法とエッチング法を用いて形成する。
次に、図46(b)に示す工程では、図46(a)に示す工程で形成した下部電極133上に、チタンをスパッタ法により島状に形成する。このチタンを、例えば、40〜60オングストロームの膜厚にすることにより島状チタンが形成可能である。
このチタンを結晶源として成長した圧電体薄膜の結晶構造は、(100)面への配向を有し、かつ、結晶粒が0.1μm〜0.5μmになる。このことの詳細を後ほど説明する。
このPZT膜134をゾルゲル法によって製造した場合について説明する。ここでは、ゾルゲル法を用いてPZTを多層コートによって製造することとする。このゾルゲル法は次のとおりである。
この製造方法は、PZT膜134を形成可能な金属成分の水酸化物の水和錯体、すなわちゾルを脱水処理してゲルとし、このゲルを加熱焼成して無機酸化物を調整する方法である。この製造方法は次の各工程からなる。
a. ゾル組成物の成膜工程
本実施形態において、PZT膜を構成する金属成分のゾルは、PZT膜を形成可能な金属のアルコキシドまたはアセテートを、例えば酸で加水分解して調整することができる。本実施形態においては、ゾル中の金属の組成を調製することで、前述したPZT膜の組成を得ることができる。すなわち、チタン、ジルコニウム、鉛、さらには他の金属成分それぞれのアルコキシドまたはアセテートを出発原料とする。
ここでは、最終的にPZT膜134(圧電体薄膜)とされるまでに、PZT膜を構成する金属成分の組成がほぼ維持されるという利点がある。すなわち、焼成及びアニール処理中に金属成分、とりわけ鉛成分の蒸発等による変動が極めて少なく、したがって、これらの出発原料における金属成分の組成は、最終的に得られるPZT膜中の金属組成と一致することになる。つまり、ゾルの組成は生成しようとする圧電体薄膜(本実施形態ではPZT膜134)に応じて決定される。
また、前述した鉛成分の蒸発により鉛成分の不足のないPZT膜を得るため、ゾルにおいて鉛成分を化学量論から要求される量よりも20モル%まで好ましくは15モル%まで過剰にすることが好ましい。
このゾルは有機高分子化合物と混合された組成物として用いられるのが好ましい。この有機高分子化合物は、乾燥及び焼成時に薄膜の残留応力を吸収して、この薄膜にクラックが生じることを有効に防止する。具体的には、この有機高分子を含むゲルを用いると、後述するゲル化された薄膜に細孔が生じる。この細孔が、さらに後述するプレアニール及びアニール工程において薄膜の残留応力を吸収するものと考えられる。
ここで、好ましく用いられる有機高分子化合物としては、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアミド、ポリアミック酸、アセチルセルロース及びその誘導体、ならびにそれらの共重合体が挙げられる。
尚、本実施の形態では、ポリ酢酸ビニルを添加することで、0.05μm程度の細孔を多数有する多孔質ゲル薄膜を、ヒドロキシプロプロピセルロースを添加することで、1μm以下の大きさでかつ広い分布を持った多孔質ゲル薄膜を形成することができる。
本実施の形態では、ポリエチレングリコールとして、平均分子量285〜420程度のものが好適に用いられる。また、ポリプロピレングリコールとしては、平均分子量300〜800程度のものが好適に用いられる。
まず、このゾル組成物を、PZT膜134を形成しようとする下部電極133(図46(b)参照)上に塗布する。この時の塗布方法は特に限定されず、通常行われている方法、例えば、スピンコート、ディップコート、ロールコート、バーコート等によって行うことができる。また、フレキソ印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等によって塗布することもできる。
また、前記塗布により形成される一層あたりの膜の厚さは、それ以降の工程を考慮すると、後述するゲル化工程において形成される多孔質ゲル薄膜の厚さが0.1〜0.3μmとなるように制御することが望ましく、より好ましくは、0.15μm程度とすることがよい。
次に、塗布されたゾル組成物を自然乾燥、または200℃以下の温度で加熱する。ここで、この乾燥(加熱)された膜上に、前記ゾル組成物をさらに塗布して膜厚を厚くすることもできる。この場合は、下地となる膜は、80℃以上の温度で乾燥されることが望ましい。
b. ゾル組成物からなる膜のゲル化工程
次に、前述したゾル組成物の成膜工程で得た膜を焼成し、残留有機物を実質的に含まない非晶質の金属酸化物からなる多孔質ゲル薄膜を形成する。
焼成は、ゾル組成物の膜をゲル化し、かつ膜中から有機物を除去するのに十分な温度で、十分な時間加熱することによって行う。焼成温度を300〜500℃にすることが好ましく、350〜400℃にすることがさらに好ましい。焼成時間は、温度及び使用する炉の形式によって変化するが、例えば、脱脂炉を用いた場合には、10〜120分程度が好ましく、15〜60分程度とすることがより好ましい。また、ホットプレートを用いた場合には、1〜60分程度が好ましく、5〜30分程度とすることがさらに好ましい。以上の工程によって、下部電極133上に多孔質ゲル薄膜が形成された。
c. プレアニール工程
次に、前述した工程bで得た多孔質ゲル薄膜を加熱焼成し、この膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換する。焼成は、多孔質ゲル薄膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換するために必要な温度で行うが、結晶中にペロブスカイト型結晶が大部分を占めるまで行う必要はなく、ゲル薄膜が均一に結晶化した時点で終了させればよい。
本実施の形態では、焼成温度として500〜800℃の範囲が好ましく、550〜750℃の範囲で焼成することが、より好ましい。焼成時間は、焼成温度及び使用する炉の形式によって変化するが、例えばアニール炉を使用する場合は、0.1〜5時間程度が好ましく、0.5〜2時間程度がより好ましい。また、RTA(Rapid Thermal Annealing)炉を用いた場合、0.1〜10分程度が好ましく、1〜5分程度がより好ましい。
また、このプレアニール工程を二段階に分けて実施することができる。具体的には、まず、第一段階として、500〜600℃の範囲の温度でアニールを行い、次に、第二段階として、600〜800℃の範囲の温度でアニールを行うことができる。また、さらに好ましくは、第一段階として、500〜550℃の範囲の温度でアニールを行い、次に、第二段階として、600〜750℃の範囲の温度でアニールを行うことができる。この工程によって、多孔質ゲル薄膜を結晶質の金属酸化物からなる膜に変換させた。
d. 繰り返し工程
次に、以後、前述した工程a、bをさらに3回繰り返し、多結晶ゲル薄膜を4層積層した後、工程cのプレアニール工程により金属酸化物からなる膜に変換する。
次いで、島状のチタンをPZT上に既述の方法によって島状に形成し、既述の工程a、b及びcをさらに4回繰り返す。この繰り返し工程の結果得られる積層膜の積層数は、最終的なPZT膜134の膜厚を考慮して適宜決定すればよい。ここでは、一層当たり0.15μmであることが良い。尚、後述する次工程(工程e)においてクラック等が発生しない膜厚であることが好ましいことは言うまでもない。
この繰り返し工程では、先に形成した膜上に新たに多孔質ゲル薄膜を形成し、その後のプレアニールの結果、新たに形成された多孔質ゲル薄膜は、先に形成された膜と実質的に一体化された膜となる。
ここで、実質的に一体化された膜とは、積層された層間に不連続層がない場合のみならず、本実施の形態にかかる最終的に得られるPZT膜134の場合と異なり、積層された層間に不連続層があってもよい。そして、さらに工程a、bを繰り返す場合には、さらに新たな多孔質ゲル薄膜が形成され、その後のプレアニールの結果、この新たな多孔質ゲル薄膜は、前記で得た結晶質の積層膜と実質的に一体化された膜となる。
e. ペロブスカイト型結晶成長工程
次に、前記工程dで得た膜に、焼成温度600〜1200℃、さらに好ましくは800〜1000℃の範囲でアニールを行う。焼成時間は、焼成温度や、使用する炉の形式によって変化するが、例えば、アニール炉を用いた場合、0.1〜5時間程度が好ましく、0.5〜2時間程度がより好ましい。また、RTA炉を用いた場合には、0.1〜10分程度が好ましく、0.5〜3分程度がより好ましい。
また、このペロブスカイト型結晶成長工程、すなわち、アニールを二段階に分けて実施することができる。具体的には、第一段階では、600〜800℃程度の温度でアニールを行い、第二段階では、800〜1000℃の温度でアニールを行う。また、さらに好ましくは、第一段階では、600〜750℃程度の温度でアニールを行い、第二段階では、800〜950℃の温度でアニールを行うことができる。
以上の操作によって、下部電極133上に、チタンを核として成長した柱状の多結晶体からなる、粒径が0.1μm乃至0.5μmで膜厚が1.2μmのPZTが形成される。ここで、チタンがPZTの結晶化について与える効果について説明する。この効果は、本発明者によって電子顕微鏡を用いて確認されている。
図43において、下部電極133の粒界上には、島状のチタンがスパッタ法によって形成されている。下部電極の結晶粒径は0.01〜0.3μmである。下部電極をこのような結晶粒径を持った柱状結晶にすることはプラチナがFCC構造であるため、柱状結晶になりやすく、結晶粒径はスパッタ時の成膜速度により制御できるという理由から可能である。
下部電極の表面に島状のチタン結晶を形成しようとすると、プラチナの表面エネルギーの低いプラチナ結晶間の粒界にチタンの島状結晶が形成される傾向となる。このとき、チタンを核として成長するPZT結晶粒は、複数のチタン結晶に跨って及んで形成される。
図47は電子顕微鏡によって確認されたPZT結晶の形成過程を示す模式図である。図47(a)はPZT結晶の高さ方向に沿った図であり、図47(b)はPZT結晶の径(幅)方向に沿った図である。図48はPZT結晶の電子顕微鏡写真であり、Pt電極の上に柱状のPZTの結晶が形成されている。チタン結晶は図47に示す下部電極133の結晶の粒界133aに形成されている。
チタン結晶を核としてPZTを成長させると、PZTは隣接する下部電極の複数の白金結晶に跨るようにその結晶粒が成長する。通常、Ptは(111)の配向が安定で生産も容易であるが、白金の配向の影響をより受け難い結晶粒界にチタンの種結晶を形成すると、PZTの結晶は白金の結晶面方位の影響を受けない(100)方向の柱状結晶に形成されやすくなる。さらに、PZTの結晶粒は複数の下部電極の結晶粒に跨って形成されているので、下部電極との密着性がより向上することが期待される。
図49は島状チタンを形成した下部電極上に圧電体薄膜PZTを成膜した場合のX線回折解析図であり、図50は島状チタンを形成しない下部電極上に圧電体薄膜PZTを成膜した場合のX線回折解析図である。図49と図50とを互いに比較すると、島状チタンを形成しない時には、PZT膜の配向は(111)配向のみとなり、圧電定数も90pC/Nと低い。一方、島状チタンを形成した場合は、PZTの(100)配向が出現し、その割合も(111)配向に対して多くなることにより、圧電定数も133pC/Nと高くなる。
さらに、チタンが島状に形成されたPZTの上に他のPZT層を3層順次形成し、さらにチタンを島状に形成し、さらにPZTを4層順次形成したものを結晶化させると、チタンを核にしてPZTが既述のように結晶化し、他のPZTも隣接するPZTの結晶粒径や結晶構造に合わせて結晶化する。PZT層とPZT層の層との間の島状チタンもチタン上のPZTの結晶化を既述のように制御する。
島状のチタンがない場合は、PZTの結晶はプラチナの影響を受けて(111)面に配向するために、既述のような(100)面への配向性を持った柱状構造とならずに優れた圧電特性を示さない。
図51は、下部電極の結晶粒上にチタンからなる結晶源が形成された場合の説明図である。図51(a)に示すように下部電極133の結晶粒の上には、島状のチタンがスパッタ法によって形成される。下部電極の結晶粒径は0.1〜0.3μmである。
下部電極上に既述のゾルゲル法によって形成されたPZTはこのチタンを核にして結晶化する。図51(b)に示す合金133bは結晶化しているPZTとチタンとの合金である。それぞれのチタンを核にして成長している各PZTの結晶は、下部電極133の粒界133cで成長が止まった後、圧電体薄膜の膜厚方向に結晶がさらに成長するために、面方位(100)に強度をより持った柱状結晶がPZTの膜厚方向に成長する。このときPZTの各結晶の粒径は下層の下部電極の粒径によって制御されるために、下電極の粒径を調整することにより、図51(c)に示すように、PZTの層は柱状(PZTの厚さ方向へ向かった柱状)の結晶であり、かつ結晶粒径が0.1〜0.5μmの結晶となる。
図52は、島状チタンと圧電ひずみ定数との関係を示した特性図である。チタンの膜厚が40乃至60オングストロームの範囲で高い圧電ひずみ定数が得られ、かつこの時の(100)面の配向度が高いことが確認された。本発明の(111)面に対する(100)面の配向度は20〜30であり、好ましくは、20以上であることにより、既述の柱状結晶構造を得ることができる。
このチタンの膜厚の範囲内で、PZTの結晶粒径も好適な範囲になっていることが確認された。チタンの膜厚はスパッタパワーを一定にしスパッタ時間を比例配分して設定した。(100)面配向度は、広角X線解析における(100)面と(111)面の強度比で、(111)面の強度を(100)として算出した。ここで、スパッタによる膜厚を40乃至60オングストロームにすることにより、チタンが連続した膜ではなく島状になる。スパッタによる膜厚がこの範囲にある場合、膜が連続膜とならずに島状になることは、例えば、(株)エヌ・ティー・エス 薄膜作成応用ハンドブック 第25頁乃至27頁により周知である。
チタンの厚みが20オングストローム以下では、下電極の結晶質の白金を種としてPZTの結晶が成長しているために(111)面配向度が高くなる。また、80オングストローム以上ではチタンの膜が連続膜となりかつ膜厚が小さいためにPZTが非晶質となりPZTの結晶サイズが大きくなったと考えられる。
図53は下電極上のチタンの厚みと圧電ひずみ定数との関係を示す特性図であり、チタンが20〜80オングストロームの膜厚の時に好適な圧電特性を得ることができる。圧電特性は、チタンの厚みが50オングストローム付近で最大値を持つ。一方、既述のように(100)面配向度はチタンの膜厚が40乃至60オングストロームであることにより、チタンの膜厚は20乃至80オングストロームであり、好ましくは40〜60オングストロームである。また、チタンが50オングストローム付近でのPZTの結晶は(100)面の配向が強い。
尚、圧電ひずみ定数の測定は、2mmφのPZTドットパターンのインピーダンスアナライザーを用いた誘電率測定と、片持ち梁の自由端に加重をかけた時に、ドットパターンに発生する電圧より求めた圧電出力係数との積により求めた。
図46(b)に示す工程ではPZT膜134上に、スパッタ法によって、膜厚が、0.05〜0.2μm程度のプラチナからなる上部電極135を形成する。続いて、図46(c)に示す工程ではシリコン基板130の表面に導電膜137が成膜される。導電膜137は個々の素子チップ内で列ごとに上部電極135を相互に接続する。そして、フォトリソグラフィ技術に基づき導電膜137から上部電極135、上部電極端子34及び上部電極端子36が成形される。
このようにして、図43に示すような圧電体素子129を得た。尚、得られたPZT膜134には、クラックの発生がなく、また断面には前述した積層による層状の不連続面も存在していないことが確認された。
尚、結晶源としてチタンについて説明したが、これに限らず圧電体薄膜の構成元素であってかつ種結晶となり、圧電体薄膜と合金化できるものであれば、使用できる。また、下部電極133を白金としたが、同じFCC構造を持つイリジウムでも、同様な効果が得られるものである。
また、ゾルゲル法に代えて、MODプロセスを利用することも可能である。このプロセスは、ゾルの作成手段がゾルゲル法と異なるだけで、工程とその条件はゾルゲル法と同じである。MODプロセルに於けるゾルの調合は、調合後のゾル液中で分散ゾルが加水分解、脱水重縮合をした後ゲルネットワークを形成する以上のゾル−ゲル反応をさせないことを目的、特徴とする。
具体的には、ゾル液の出発原料の1つにアルカノールアミンの1つ、モノエタノールアミンを金属アルコキシドや金属酢酸塩の加水分解抑止剤として選択する。モノエタノールアミンの働きによって、金属アルコキシドや金属酢酸塩は、ゾル液中で均一な分散状態を保つ。従って、ゾルゲル法に見られるゲルネットワークを形成しないから、ゾルゲル法に比べ更に均質な結晶を得ることができる。ゾルの塗布工程から結晶を得るための焼結工程までの一切は、ゾル−ゲル法と同じである。前述のモノエタノールアミンの他に、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アセチルアセトン、酢酸等をゾルの加水分解抑止剤として利用できる。
以上説明したように、圧電体素子129は、多結晶体からなるPZT膜134(圧電体薄膜)と、PZT膜134を挟んで配置される上部電極135と下部電極133と、を備えている。下部電極133の面に圧電体の結晶の核となる結晶源が島状に形成されてなるので、圧電体の結晶を(100)面に配向させた柱状にすることができて圧電特性を向上することができる。
さらに、圧電体素子129は、下部電極133の結晶を圧電体が圧電特性を発揮する上で好ましい粒径に設定し、圧電体の結晶の粒径が結晶源を核として成長することにより、下部電極133の粒径により圧電体薄膜の粒径が変動するということを防ぎ、圧電体薄膜の結晶粒径を圧電体特性が発揮される上で好適な値にすることが可能となる。
結晶源を所定膜厚のチタンから構成することにより、圧電体特性をより好適な値にすることが可能となる。
圧電体薄膜が結晶源を核にして成長した結晶からなり、この結晶は面方位(100)の結晶配向を持ち、柱状の粒径0.1μm乃至0.5μmの結晶構造を持つようにすることにより、圧電体特性をさらに好適な値にすることが可能となる。
さらに本発明の圧電体薄膜素子の製造方法によれば、圧電特性に優れた圧電体薄膜を製造することが可能となる。また、圧電体素子129は、製造中膜内にクラックの発生がなく、高い圧電ひずみ定数を有するとともに、下部電極133との密着性が良好となる。
さらにまた、PZT膜134の結晶が、下部電極133の結晶粒間の結晶源を核として成長するために、圧電体素子129の結晶構造を好適な面方位に設定することが可能となる。
(第5の実施形態)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図54〜図57を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、圧電体膜が微結晶粒を包含する柱状結晶により構成されている点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
図54は、圧電体素子の構成を示す模式断面図である。すなわち、本実施形態では図54に示すように、超音波診断装置140は圧電体素子141を備えている。圧電体素子141はシリコン基板142上に設置され、下部電極144、圧電体薄膜層145及び上部電極146により構成されている。圧電体素子141のみを独立して製造し使用することが可能である。圧電体素子141を覆って保護膜149が設置されている。
下部電極144が絶縁膜143と同じく全面に形成される形態や、圧電体素子の領域にのみ下部電極が形成されている形態も採用可能である。絶縁膜143は、導電性のない材料、例えばシリコン基板を熱酸化等して形成された二酸化珪素により構成されている。下部電極144は、圧電体層に電圧を印加するための上部電極146と対になる電極であり、導電性を有する材料、例えば白金(Pt)で構成されている。また圧電体素子の密着性を高めるために複数積層構造、例えば、チタン(Ti)層、白金(Pt)層、チタン(Ti)層の積層構造で下部電極を形成してもよい。上部電極146は、圧電体層に電圧を印加するための他方の電極となり、導電性を有する材料、例えば膜厚0.1μmの白金(Pt)で構成されている。
圧電体薄膜層145は、電気機械変換作用を示す誘電性セラミックスの結晶であり、具体的には、微結晶粒148を包含する柱状結晶147の束により構成されている。柱状結晶147の径は、例えば0.1μm〜0.5μmの範囲である。微結晶粒148の平均粒径は、50nm以下の範囲にある。微結晶粒148の密度(圧電体薄膜の断面をSEMやTEM等で観察した場合に観察される微結晶粒の単位面積当たりの個数)は、1×108個/cm2以上である。圧電体薄膜層145において、微結晶粒148と微結晶粒以外の部分とは同一の組成である。すなわち、圧電体薄膜層は、金属アルコキシド溶液を結晶化することにより形成される。その組成は、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3)、ジルコニウム酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)O3:PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)により構成される群から選ばれる一種の圧電性セラミックスの出発原料となる有機金属を含む。
本発明の圧電体薄膜が微結晶粒を含む点は重要である。微結晶粒が存在するために結晶に生ずる応力が随所で分断され、全体として発生する応力が一部に集中し難い構造になっている。このために圧電体薄膜層を熱処理により金属アルコキシド溶液が結晶化する際に生ずる応力が緩和され、クラックを生ずることなく厚い圧電体薄膜層が形成されるのである。その結果として圧電体薄膜を1.0μm以上の厚みで形成することが可能である。
尚圧電体薄膜層の具体的な組成として代表的なものは、
0.8PbZr0.5Ti0.53−0.2Pb(Mg1/3Nb2/3)O3・・・(1)
という組成比からなるPMN−PZTである。
(製造方法の説明)
次に、圧電体素子の製造方法を説明する。図55及び図56は圧電体素子の製造方法を説明するための模式断面図である。まず圧電体薄膜層の原料となる圧電性セラミックスのゾルを製造する。
(ステップ1):圧電体薄膜層の溶質の基本溶媒として、2−n−ブトキシエタノール中に、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(OC374)、ペンタエトキシニオブ(Nb(OC255)を加えて攪拌しこれらを溶解させる。
(ステップ2):次いでモノエタノールアミンをこの溶液に加えて攪拌する。モノエタノールアミンの作用としては、これら金属アルコキシドが加水分解を起さないように前記2種の金属アルコキシドを化学的に安定させるキレート剤としての作用である。加えるモノエタノールアミンのモル数は以下のように調整する。
すなわち、上記金属アルコキシド溶液を構成する金属の種類単位にその金属のモル数にその金属の電荷数を乗じた値をゾルを形成する総ての金属について加算した総和をN1とし、モノエタノールアミンのモル数をN2とおくと、
N2=α・N1 …(2)
0.5 ≦ α ≦ 1.0 …(3)
が成り立つように調整する。ここでN1は、
N1 = [Ti(OC374]×4 + [Nb(OC255]×5と表される。[Ti(OC374]はチタニウムテトライソプロポキシド、[Nb(OC255]はペンタエトキシニオブのモル数である。式(3)において、通常は、αが0.7程度となるように調整するとよい。
(ステップ3):酢酸鉛3水和物と酢酸マグネシウム5水和物、ジルコニウムアセチルアセトナートとを加え、80℃に加温する。加温した状態で30分間〜60分間攪拌し、その後室温になるまで自然冷却する。
(ステップ4):さらに高分子有機材料として、平均分子量400〜800のポリエチレングリコール(PEG)を加えてゾルを完成させる。ポリエチレングリコールの添加量は、鉛(Pb)1モルに対して0.1モルから0.5モル程度、好適には0.25モル程度加える。完成したゾルの溶質濃度(全金属のモル濃度)は、0.3〜1.0M(モル/リットル)とする。好適には0.5M(モル/リットル)となるように設定する。
次に、上記製造方法によって製造されたゾルを用いて圧電体素子141を製造する。圧電体素子141の製造方法は下部電極形成工程、圧電体薄膜層形成工程及び上部電極形成工程により構成されている。
絶縁膜形成工程(図55(a)): 絶縁膜形成工程は、シリコン基板142に絶縁膜143を形成する工程である。シリコン基板142は、例えば200μm程度、絶縁膜143は1μm程度の厚みに形成する。絶縁膜の製造には、公知の熱酸化法等を用いる。
下部電極形成工程(図55(a)): 下部電極形成工程では、絶縁膜143の上に下部電極144を形成する工程である。下部電極144は、例えば絶縁膜側から順にチタン層、白金層、チタン層を20nm、200nm、5nmの厚みで積層する。これら層の製造は公知の直流スパッタ法等を用いる。次に、下部電極144を所定の形状に形成する。下部電極144の形成方法は公知のフォトグラフィー法とエッチング法を用いて形成する。
圧電体薄膜層形成工程(図55(b)、図55(c)): 圧電体薄膜層形成工程は、前記ゾルを使用してゾルゲル法により圧電体薄膜層145を形成する工程である。まず上記ゾルを下部電極144上に一定の厚みに塗布する。例えば公知のスピンコート法を用いる場合には、毎分500回転で30秒、毎分1500回転で30秒、最後に毎分500回転で10秒間塗布する。塗布した段階では、圧電体薄膜層を構成する各金属原子は有機金属錯体として分散している。塗布後、一定温度(例えば180度)で一定時間(例えば10分程度)乾燥させる。乾燥により溶媒であるブトキシエタノールが蒸発する。乾燥後、さらに大気雰囲気下において一定の脱脂温度で一定時間(30分間)脱脂する。この脱脂温度は、400℃以上で500℃以下の範囲がよく、好ましくは450℃程度にする。脱脂により金属に配位している有機物が金属から解離してから酸化燃焼反応を生じ、大気中に飛散する。
上記したゾルの塗布→乾燥→脱脂の各工程を所定回数n、例えば12回繰り返して12層の薄膜層150nを積層する。薄い層を多層積層するのはクラックの発生を確実に防止しながら、厚みのある圧電体薄膜層を形成するためである。高速熱処理前の厚みで圧電体薄膜層の前駆体膜全体の厚みが1.6μmとなるようにする。
圧電体薄膜層145の前駆体膜150を形成した後に、一定の温度下で高速熱処理(RTA)する。例えば酸素雰囲気下において、650度で5分間、さらに900度で1分間加熱する。この高速熱処理によりアモルファス状態のゲルからペロブスカイト結晶構造が形成される。モノエタノールアミンが金属アルコキシドの加水分解を生じ難く作用するために、結晶化の過程で多くの微結晶粒が柱状結晶中に残された状態で結晶する。高速熱処理を経た後、圧電体薄膜の厚みは、多少厚みが減るが、1.2μm以上の厚みにすることが可能である。圧電体薄膜層の前駆体膜150は結晶化して圧電体薄膜層145になる。
圧電体エッチング工程(図55(d)): 圧電体エッチング工程は、上記圧電体薄膜層145を所定の形状になるようマスクし、その周囲をエッチングする工程である。具体的には、まずスピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジスト材料を塗布する。次いでマスクを圧電体素子の形状に形成してから露光し現像して、レジストパターンを圧電体薄膜層145上に形成する。これに通常用いるイオンミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、圧電体薄膜層145の不要な部分をエッチングし除去する。
上部電極形成工程(図56(a)): 圧電体薄膜層145の上に、さらに電子ビーム蒸着法、スパッタ法等の技術を用いて、上部電極146を形成する。上部電極の材料は、白金(Pt)等を用いる。厚みは100nm程度にする。次に、上部電極146を所定の形状になるようマスクし、その周囲をエッチングする工程である。具体的には、まずスピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジスト材料を塗布する。次いでマスクを圧電体素子の形状に形成してから露光し現像して、レジストパターンを上部電極146上に形成する。これに通常用いるイオンミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、不要な部分の白金膜を除去して取り除く。次に、図56(b)に示すように、絶縁膜143、下部電極144、圧電体薄膜層145及び上部電極146を覆って保護膜149を設置する。以上の工程により圧電体素子141が形成される。この圧電体素子141を上部電極及び下部電極間に電圧を印加可能に構成すれば、独立した電気機械変換素子として機能させることが可能である。
(実施例)
上記実施形態の実施例を以下に説明する。表6にモノエタノールアミンをキレート剤として使用した実施例と、アミンを使用しない従来の方法で結晶化して製造された比較例との特性を示す。
前駆体の限界膜厚とは、結晶化するための高速熱処理直前においてクラックが発生せずに積層可能であった最大の膜厚である。結晶化膜の限界膜厚とは、高速熱処理後にもクラックが発生せずに結晶化できた場合の最大膜厚である。
図57(a)は結晶化後の圧電体薄膜層のTEM写真であり、モノエタノールアミンを用いた実施例の結晶化後の圧電体薄膜層を示す。TEMは透過型電子顕微鏡と称す。図57(b)はTEM写真の模写図である。図57から判るように、圧電体薄膜層中にははっきりと微結晶粒が存在していることが確認できる。このようにモノエタノールアミンを用いることで微結晶粒が生じ、応力を緩和し、クラックが発生しにくくなっていることが確認された。
尚アミンには、モノエタノールアミンの他に、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等各種存在するが、実験の結果モノエタノールアミンが最も厚膜化に貢献することが確認された。
(その他の変形例)
本発明は、上記各実施形態によらず種々に変形して適応することが可能である。例えば、上記実施形態ではPMN−PZTについて説明していたが、他の強誘電性の圧電性セラミックスについても同様に考えることができる。
また上記製造方法では、ゾルゲル法により結晶化を行っていたが、他の方法、例えばMOD法等によって圧電体セラミックスの結晶化を行ってもよい。モノエタノールアミンを使用する限り、熱処理過程における加水分解が抑制され微結晶粒が発生し、応力を緩和することが期待される。
また本発明で製造した圧電体素子は上記超音波診断装置の圧電体素子のみならず、不揮発性半導体記憶装置、薄膜コンデンサー、パイロ電気検出器、センサー、表面弾性波光学導波管、光学記憶装置、空間光変調器、ダイオードレーザー用周波数二倍器等のような強誘電体装置、誘電体装置、パイロ電気装置、圧電装置、及び電気光学装置の製造に適応することができる。すなわち、本発明の圧電体素子は厚膜化が可能であり良好な圧電特性を備えるために、あらゆる用途に適する。
本実施形態によれば、モノエタノールアミンをキレート剤として使用したことにより、微結晶粒が生じ、応力によるクラックが発生し難い構造の圧電体素子を形成することが可能である。したがって、厚膜化が可能な結晶構造を備えた圧電体素子を提供することができる。また厚膜化が可能な結晶構造を備えた圧電体素子を備えた超音波診断装置140を提供することができる。
また本発明によれば、モノエタノールアミンをキレート剤とするゾルを形成することにより、製造時にクラックが発生し難い圧電体素子の製造方法を提供することができる。
(第6の実施形態)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図58〜図61を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、圧電体膜と電極層との間に混合層が形成されている点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
図58(a)は、圧電体素子の構造を説明するための模式断面図である。図58(b)及び図58(c)は、圧電体素子の構造を説明するための要部模式断面図である。図58(b)は図58(a)の領域Aを拡大した図である。図58(c)は図58(b)の領域Bを拡大した図である。すなわち、本実施形態では図58(a)に示すように、超音波診断装置155は圧電体素子156を備えている。超音波診断装置155はシリコン基板157を備え、シリコン基板157には振動板158が設置されている。そして、振動板158上に圧電体素子156が設置されている。圧電体素子156は下部電極層159、圧電体薄膜層160及び上部電極層161を積層して構成されている。上部電極層161上には保護膜162が設置されている。
振動板158は、導電性のない材料、例えば二酸化珪素(SiO2)や酸化ジルコニウム(ZrO2)等により構成され、圧電体層への電圧印加により変形する。振動板層の結晶化を水熱合成法により行うのであれば、この水熱合成法により結晶化が可能な材料であることを要する。
下部電極層159は、圧電体層に電圧を印加するための一方の電極であり、導電性を有する材料、例えば、酸化錫(SnO)や酸化バナジウム(VO2)等により構成されている。特に水熱合成法により結晶化が可能な材料であることを要する。下部電極層159は、シリコン基板157上に形成される複数の圧電体素子156に共通な電極として機能するように振動板158上に形成される。下部電極層159は、圧電体薄膜層160と同様の大きさに、すなわち上部電極層161と同じ形状に形成することも可能である。上部電極層161は、圧電体薄膜層160に電圧を印加するための他方の電極となり、導電性を有する材料、例えば酸化錫(SnO)や酸化バナジウム(VO2)等により構成されている。特に水熱合成法により結晶化が可能な材料であることを要する。
圧電体素子156は、例えばペロブスカイト構造を持つ圧電性セラミックスの結晶であり、振動板158上に所定の形状で形成されて構成されている。特に、本実施形態の圧電体薄膜層160は、水熱合成法で結晶化させられるため、柱状をなす結晶粒子(柱状結晶粒)が主として膜厚方向に(110)配向を呈するか、あるいは結晶方向の一定しないランダムな配向をしている。例えば、これら柱状結晶粒は、電極膜に平行な面方向の幅、すなわち平均粒径dが100nm乃至15000nmの範囲にある。圧電体薄膜層160の上部電極層161と接することとなる面は、従来の水熱法に比べ平坦化されている。例えば、表面粗さが最大高さで20nm以下になっている。表面粗さが小さいことも、ゾルゲル法を併用した本水熱法による結晶構造の特徴である。
圧電体薄膜層の組成は、例えばジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3)、ジルコニウム酸チタン酸鉛ランタン((Pb、La)(Zr、Ti)O3:PLZT)またはマグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)のうちいずれかの圧電性セラミックス等である。ただし、上記組成に限定されるものではない。
特に本実施形態の圧電体素子156は、図58(b)に示すように、各層間に両層の組成が混合された混合層を備えている点を特徴的な構造としている。例えば、振動板158と下部電極層159との間には第1混合層168が、下部電極層159と圧電体薄膜層160との間には第2混合層169が、圧電体薄膜層160と上部電極層161との間には第3混合層170がそれぞれ存在している。これらの混合層は、図58(c)に示すように、上下の層における結晶粒が互いに混じり合った界面領域を形成している。これらの混合層は、後述する製造方法に従って未結晶状態で積層していった際に、双方の組成が混じり合って結晶化が促進されたために形成されたものとなっている。
(製造方法の説明)
次に、圧電体素子156の製造方法を説明する。図59及び図60は圧電体素子の製造方法を説明するための模式図である。
振動板層形成工程(図59(a)): 振動板層形成工程は、シリコン基板157に振動板158を形成する工程である。シリコン基板157の厚みは、例えば200μm程度のものを使用する。振動板158は例えば1μm程度の厚みに形成する。振動板158の製造には公知の熱酸化法等を用いる。尚、振動板層の材料に酸化ジルコニウム等を用いる場合には、このゾルを一定の厚みに塗布し、後の水熱合成処理によって結晶化させて製造してもよい。
下部電極層形成工程(図59(b)): 下部電極層形成工程では、振動板158の上に下部電極層159を形成する工程である。まず下部電極層を形成するためのゾルを製造する。このゾルは、塩化錫(SnCl2・H2O)を所定の濃度、例えば0.5M[mol/l]の濃度でエタノールに溶解させ、ジルコニウムイソプロポキシド(Zr(O−i−C374)を1〜2[mol%]錫に対してドーピングして製造される。ゾルの製造方法は上記に限定されない。
次いで、スピンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ロールコート法等任意の塗布法で振動板158上に上記ゾルを塗布する。例えば、スピンコート法により、厚みが2[μm]程度になるようにゾルを塗布する。塗布後、溶媒を蒸発させるため、所定温度(例えば180℃)で所定時間(例えば10分間)程度乾燥させる。さらに金属元素に配位した有機物を乖離させるために乾燥したゾルを所定温度(例えば300℃)で所定時間(例えば10分間)脱脂させる。このような処理を行って形成された下部電極層159では、ドーパントの金属元素Zrが導電性を向上させる働きをする。次に、下部電極層159を所定の形状に形成する。下部電極層159の形成方法は公知のフォトグラフィー法とエッチング法を用いて形成する。
圧電体薄膜層形成工程(図59(c)): 圧電体薄膜層形成工程は、ゾルの塗布とその乾燥・脱脂とを繰り返して、複数の薄膜からなる圧電体薄膜層を形成する工程である。まず、圧電体薄膜層の原料となる圧電性セラミックスのゾルを製造する。例えば、2−n−ブトキシエタノールを主溶媒としイミノジエタノールを添加した溶媒に、酢酸鉛三水和物(Pb(CH3COO)2・3H2O)、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti(CH3CH2CH2O)4)、ペンタエトキシニオブ(Nb(OC255)、テトラ−n−プロポキシジルコニウム(Zr(O−n−C374)及び酢酸マグネシウム(Mg(CH3COO)2・5H2O)を溶かして圧電体セラミックスのゾルを製造する。ただし、ゾルの製造方法は上記に限定されるものではない。
次いで上記のようにして製造したゾルを下部電極層159上に一定の厚みに塗布する。塗布法は上記したように各種用いることができる。例えばスピンコート法を用いる場合には、毎分500回転で30秒、毎分1500回転で30秒、最後に毎分500回転で10秒間塗布する。塗布した段階では、PZTを構成する各金属原子は有機金属錯体として分散している。塗布後、所定温度(例えば180℃)で所定時間(例えば10分間)乾燥させる。乾燥後、さらに大気雰囲気下において所定温度(例えば300℃)で所定時間(例えば10分間)脱脂する。このゾルの塗布→乾燥→脱脂の各工程を所定回数、例えば20回繰り返して圧電体薄膜層160を所定の厚み(例えば2μm)に積層する。多層化するのはクラックの発生を防止しながら厚膜化するためである。
圧電体エッチング工程(図59(d)): 各層を形成後、圧電体薄膜層160を、所定の形状に合わせた形状になるようマスクし、その周囲をエッチングする。エッチングする際、スピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジストを塗布し、露光・現像して、レジストを形成する。これに、通常用いるイオンミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、不要な層構造部分を除去する。エッチングで不要部分を取り除く。
上部電極層形成工程: 上部電極層形成工程では、圧電体薄膜層160の上に上部電極層161を形成する工程である。上記下部電極層を形成するためのゾルと同様のゾルを用い、下部電極層形成工程と同様にしてスピンコート等の塗布法によりゾルを一定の厚み(例えば0.2μm)に形成する。そして乾燥や脱脂を上記下部電極層形成工程と同様に施す。
上部電極層エッチング工程: エッチング工程は、上部電極層161を所定の形状に形成する工程である。まず、上部電極層161を所定の形状に合わせた形状となるようマスクする。そしてその周囲をエッチングし上部電極層161を形成する。具体的には、まずスピンナー法、スプレー法等の方法を用いて均一な厚さのレジスト材料を塗布する。次いでマスクを圧電体素子の形状に形成してから露光し現像して、レジストパターンを上部電極層161上に形成する。マスクはレジスト材料がポジ型かネガ型かに合わせて形成する。そして通常用いるイオンミリング、あるいはドライエッチング法等を適用して、上部電極層161の不要な部分をエッチングして除去する。
水熱合成工程(図59(e)): 水熱処理工程は、所定のアルカリ溶液中で熱処理することにより、上記電極層及び圧電体薄膜層160の結晶化を一時に行う工程である。まず、アルカリ性溶液166を、圧力を加えることが可能に構成されている水槽165に満たす。そして上記の工程で積層された圧電体素子の積層構造を基板ごと水槽165に浸し、オートクレーブ(autoclave)中で一定条件で結晶化を促進させる。処理液は、アルカリ性溶液を用いる場合には、溶質として、KOH、Ba(OH)2、Ba(OH)2とPb(OH)2の混合液またはKOHとPb(OH)2の混合液のうちいずれかを用いる。これらのアルカリ性溶液で圧電性セラミックスが結晶することが確認されているからである。アルカリ溶液の濃度としては、2M[mol/l]より低い濃度に調整する。これ以上の濃度であると、アルカリが強く、圧電体薄膜層160及び基板等を侵食するおそれがあるからである。例えば、0.5M[mol/l]の濃度に調整する。水熱処理の温度は、100℃以上で200℃以下に設定する。この範囲より低い温度では結晶化が促進されず、この範囲より高い温度では、圧電体薄膜層160及びシリコン基板157がエッチングされるからである。例えば処理温度を140℃程度にする。水熱処理の圧力は、2kg/cm2以上で10kg/cm2以下に設定する。この範囲からはずれる圧力では、良好な結晶が得られないからである。例えば圧力を4kg/cm2程度にする。水熱処理の時間は、10分以上で60分以下に設定する。この範囲より短い時間では十分な結晶ができず、この範囲より長い時間では圧電体薄膜層160や基板が侵食されたりするおそれがあるからである。例えば処理時間を30分程度にする。
上記水熱合成処理により、各層の結晶化が促進される。この処理がされる前には、各層が結晶化されないまま積層されたので、隣接する層間の界面には両層の組成が混合している部分が存在している。この混合部分が水熱合成工程を経ることにより組成ごとに結晶粒を形成し、図58に示したように、両層の結晶粒が緻密に配置された第2混合層169及び第3混合層170が形成される。振動板層をゾルの塗布で形成した場合には、第1混合層168も形成される。
上記工程により図60(a)に示すように圧電体素子156の層構造が完成する。上記の製造工程では工程毎に結晶化を促進するための熱処理を必要としないため、全体として製造工程数が削減される。このためコストダウンが図れる。また上記製造方法によって製造された圧電体素子156は、層間に混合層が存在するため層間の密着性がきわめて高い。このため層の剥離が生じにくく製造工程における歩留まりが向上する。また製品となった圧電体素子において層間の剥離が生じ難いので信頼性が向上し、寿命を延ばすことができる。
以上で超音波診断装置ヘッドに適合した圧電体素子156が形成できる。
保護膜設置工程(図60(b)): 保護膜設置工程では、振動板158、下部電極層159、圧電体薄膜層160及び上部電極層161を覆って保護膜162を設置する。保護膜162はスピンナー法、スプレー法等の方法を用いて材料を塗布し、加熱乾燥して固化する。以上の工程により圧電体素子156が形成される。
(実施例)
上記製造方法の実施例1として、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr0.56Ti0.44)O3:PZT)を圧電体薄膜層とする圧電体素子を製造した。積層構造は上部から、上部電極層SnO/圧電体薄膜層PZT/下部電極層SnO/振動板層SiO2/圧力室基板Siというものである。振動板層のみ熱酸化法で製造し、残りの層にはスピンコート法により塗布を適用した。最後に水熱合成法により電極層と圧電体薄膜層の結晶化を行った。
また実施例2として、積層構造を上部から、上部電極層VO2/圧電体薄膜層PZT/下部電極層VO2/振動板層SiO2/圧力室基板Siとした圧電体素子を製造した。この実施例では、上部電極層及び下部電極層の組成が上記SnOと異なる。そのため上記したSnOのゾルに代わり、エタノール中に、トリエトキシバナジル(VO(OC253)及びドーパントとしてチタニウムテトライソプロポキシド(Ti(CH3CH2CH2O)4)を溶解させてゾルを形成した。ゾルの塗布法等についてはSnOの電極層形成方法と同様である。
また実施例3として、積層構造を上部から、上部電極層SnO/圧電体薄膜層PZT/下部電極層SnO/振動板層ZrO/圧力室基板Siとした圧電体素子を製造した。この実施例では、振動板層を熱酸化法の代わりにゾルの塗布により製造した。この振動板層形成のためのゾルは、2−n−ブトキシエタノール中に、テトラ−n−プロポキシジルコニウム(Ti(CH3CH2CH2O)4)を溶解させて製造した。そして振動板層の厚みが1μm程度になるようにスピンコーティング法により10回程繰り返して塗布した。この実施例では振動板層もゾルから形成されているので、振動板層と下部電極層との間にも混合層が形成された。
上記実施例では、製造工程においてスピンコート法を主体に塗布を行ったので、従来より製造装置が少なくて済んだ。また熱処理が水熱合成一回だけなので、工数が少なくて済んだ。また、従来の熱処理を繰り返すことによる膜の劣化ももちろんのこと観察されず、信頼性向上に本実施形態の製造方法が有効であることが証明できた。
(利点)
a)本実施形態によれば、圧電体素子を構成するほとんどの層を塗布法で形成可能なので、製造装置を多く用いる必要がない。
b)本実施形態によれば、各層を形成するごとに熱処理を加えず、積層完了後に水熱合成処理するので、製造工程数の削減がされ、生産性良く製造することができる。
c)本実施形態によれば、結晶前の状態で各層を積層してから一時に全体の結晶化がされるので、各層間に両層の組成が混合された混合層が発生する。この混合層では複雑に両層の結晶が密集しているので、層間の密着性がよく剥離等を生じない。したがって製造時には歩留まりがよい。また製品としては信頼性が高く、寿命が長い。
d)本実施形態によれば、水熱合成処理のため高熱処理をしないため下部電極元素が圧電体薄膜中に拡散することがなく、圧電体素子156の特性劣化を防止できる。
e)本実施形態によれば、高熱処理をしないので、各膜に特性変化や熱ストレスが発生することなく、圧電体素子156の信頼性を向上させることができる。
f)本実施形態によれば、高熱処理が不要であり、また不良の発生率も少なくなるので、コストを下げることができる。
g)本実施形態によれば、高熱処理をせず内部応力(熱応力を含む)の発生が少ないため、大面積の圧電体素子を製造してもクラックが発生することがない。
(変形例1)
本変形例はいわゆるバイモルフとしての積層構造を備えた圧電体素子に関する。図61に、圧電体素子の積層構造を示す模式断面図を示す。本実施形態と同様の層構造については説明を省略する。
ただし、本実施例の圧電体素子167は、図61に示すように、圧電体薄膜層160と上部電極層161との間に、中間層163と圧電体薄膜層164をさらに備えている。このような積層構造は一般にバイモルフと呼ばれ、ひずみが拡大されるという作用効果を奏する。
中間層163は、下部電極層159及び上部電極層161と同様の組成及び製造方法で製造される。例えばSnOやVO2で製造することが可能である。圧電体薄膜層164は、圧電体薄膜層160と同様のものでよいが、組成を異ならせたり、膜厚を異ならせたりしてもよい。
さらに、圧電体薄膜層160と中間層163との間には第4混合層171が、中間層163と圧電体薄膜層164との間には第5混合層172が、圧電体薄膜層164と上部電極層161との間には第6混合層173がそれぞれ形成されている。これら混合層は、本実施形態で説明したのと同様に、混合層を挟む両層の結晶が混じり合っている層である。混合層の厚みについては本実施形態と同様に考えることができる。
上記積層構造を有する圧電体素子167の製造工程についても、本実施形態に準じて考えることが可能である。ただし圧電体薄膜層160のゾルを塗布し乾燥及び脱脂を行った後、上部電極層の代わりに上部電極と同様の方法で中間層163を形成する。中間層163の形成後、さらに圧電体薄膜層160の形成と同様にして圧電体薄膜層164を形成する。水熱合成工程もついても、本実施形態と同様に考えることができる。このような製造方法によれば、結晶前の各層を積層して両層の材料が混合された後に、水熱合成により結晶化が促進されるので、製造工程を省略でき、生産性良く製造することができる。また、各層間に混合層が存在するので層間の密着性が高く、層の剥離が生じ難い。このため、製造工程においては歩留まりを向上させることができ、製品においては信頼性を向上させ、寿命を長くすることができる。
尚、本実施形態は上記層構造に限らず、さらに多くてもよい。すなわち、上記変形例では、圧電体薄膜層は2層であるが、さらに3層以上であってもよい。圧電体薄膜層が1層増えるたびに電極層は中間層を含めて1層増える。つまり圧電体薄膜層がn層(nは自然数)であれば電極層はn+1層存在することになる。製造方法としては、本実施形態の方法を繰り返し適用すればよい。
(その他の変形例)
本実施形態によらず種々に変形して適応することが可能である。例えば、本実施形態は、機能性薄膜として圧電体素子を適用したものであるが、これに限定されることなく、複数の薄膜を利用して一定の機能を奏する薄膜構造一般に本実施形態を適用可能である。異なる成分の層間に混合層が存在するため両層の密着性が極めて高く、界面で剥離することが無い。このため、歪を生ずるような薄膜であったりストレスが加えられたりしても層構造を保つことができ、経年変化に強く信頼性の高い機能性薄膜を提供可能である。
尚、機能性薄膜の製造方法は、熱処理等によって両層の成分を拡散させ、両層の成分が混合した混合層を形成する等の方法を利用する。
圧電体素子はPZTを適用したが、他の強誘電性の圧電性セラミックスについても同様に水熱法による結晶化が可能である。
本実施形態で製造した圧電体素子は、不揮発性半導体記憶装置、薄膜コンデンサー、パイロ電気検出器、センサー、表面弾性波光学導波管、光学記憶装置、空間光変調器、ダイオードレーザー用周波数二倍器等のような強誘電体装置、誘電体装置、パイロ電気装置、圧電装置、及び電気光学装置の製造に適応することができる。すなわち、本実施形態の圧電体素子は大面積化が可能でコストダウンを図れるため、従来品にない用途を提供したり、従来の機能をさらに安く提供したりできる。
(発明の効果)
本実施形態によれば、各層間に結晶構造の混在した混合層が存在するので層間の密着性が高い。したがって信頼性が高く寿命の長い圧電体素子156及び圧電体素子167を提供することができる。
また本実施形態によれば、結晶化に必要な工程が複数層を積層した後に行う水熱合成工程のみであるため、製造総工程が従来品製造時より少ない。したがって、生産性の良い圧電体素子の製造方法を提供することができる。
13…超音波プローブ、16…筐体、17…超音波トランスデューサー素子チップとしての素子チップ、21…基板、24…金属膜としての下部電極、26…PZT薄膜としての圧電体膜。

Claims (1)

  1. 超音波トランスデューサー素子チップと、
    前記超音波トランスデューサー素子チップを支持する筐体と、を備え、
    前記超音波トランスデューサー素子チップは基板上に形成された金属膜と、前記金属膜上に形成されたPZT薄膜と、を備え、
    前記PZT薄膜は菱面体晶系の結晶構造を備え、かつ、その結晶構造の、X線回折薄膜法で測定した(100)、(110)、(111)、(210)、及び(211)の結晶面反射強度の総和に対する(100)面の配向度が、30%以上であることを特徴とする超音波プローブ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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