以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず検査対象となるPTPシートについて詳しく説明する。
図1(a)〜(c)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。
容器フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する透明又は半透明の熱可塑性樹脂材料によって構成されている。カバーフィルム4は、アルミニウムによって構成されている。
PTPシート1は、平面視略矩形状に形成されており、シート長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、シート短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。各ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている〔図1(c)参照〕。
さらに、PTPシート1には、ポケット部2等の非取着部分を除いた取着領域全体(以下、「シート部」という)において、カバーフィルム4側に微小なへこみによる模様が形成されている。前記へこみは、容器フィルム3とカバーフィルム4とが強固にシールされた部分であり、へこみが所定の格子模様として表れている。該模様は、本実施形態では、図2(a),(b)に示すように、シール線6から構成されており、シール線6により同一形状の複数の平行四辺形部Qが形成されている。なお、本実施形態では、平行四辺形部Qとして、任意の平行四辺形状をなすこととしているが、これには、正方形、長方形、菱形も含まれる。
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及びカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム20〔図1(b)参照〕が打抜かれることで、シート状に製造される。
次に、上記PTPシート1を製造するためのPTP包装機11の概略について図3を参照して説明する。
PTP包装機11の最上流側には、ロール状に巻回された容器フィルム3の原反が配置されている(図示略)。容器フィルム3は、ここから間欠的に搬送される。PTP包装機11には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、まず加熱装置14とポケット形成装置15とが順に配設されている。これら加熱装置14及びポケット形成装置15は、容器フィルム3に対しポケット部2を形成するためのものであり、本実施形態におけるポケット形成手段を構成する。
また、PTP包装機11には、ポケット部2が形成された容器フィルム3の移送経路に沿って、錠剤投入装置16とフィルム受けロール17とが順に配設されている。錠剤投入装置16は、容器フィルム3の各ポケット部2に対し錠剤5を充填するためのものであり、本実施形態における充填手段を構成する。
さらに、錠剤投入装置16とフィルム受けロール17との間には、シール前検査部21が設けられている。シール前検査部21には、上流側より順に、第1検査装置T1,第2検査装置T2,第3検査装置D,第4検査装置Aが設けられている。これら各検査装置T1,T2,D,Aにより、錠剤5に関する異常や、容器フィルム3(シート部)に関する異常が検査される。各検査装置T1,T2,D,Aのより詳細な構成に関しては後述する。
一方、ロール状に巻回されたカバーフィルム4の原反の引出し端は、前記フィルム受けロール17の方へと案内されている。フィルム受けロール17には、加熱ロール18が圧接可能となっている。加熱ロール18の外周面には、僅かに凸状に形成された格子状の線(図示略)が設けられている。そして、両フィルム3,4が両ロール17,18間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3にカバーフィルム4が貼着(シール)されると共に、カバーフィルム4に格子状のシール線6が形成される。これにより、錠剤5が各ポケット部2に充填されたPTPフィルム20が製造される。従って、フィルム受けロール17及び加熱ロール18により、本実施形態における取着手段(シール機構)が構成される。
また、フィルム受けロール17の下流側におけるPTPフィルム20の移送経路には、シール後検査部22が設けられている。シール後検査部22には、上流側より順に、第5検査装置E,第6検査装置S,第7検査装置Hが設けられている。これら各検査装置E,S,Hにより、錠剤5に関する異常や、PTPフィルム20(シート部)に関する異常が検査される。各検査装置E,S,Hのより詳細な構成に関しては後述する。
その後、PTPフィルム20は、図示しないシート打抜手段によってPTPシート単位に打抜かれる。本実施形態では、PTPフィルム20の幅方向にPTPシート1を2枚同時に打抜く構成となっている。これにより、PTPフィルム20の搬送方向をシート短手方向としたPTPシート1が製造される。
尚、上記検査装置T1,T2,D,A,E,S,Hのいずれかによって不良判定された場合には、図示しない排出手段としての不良シート排出機構に不良品信号が送られる。これにより、その不良判定となったPTPシート1は、不良シート排出機構によって別途排出され、図示しない不良品ホッパに移送される。
また、PTP包装機11は、上記各種装置のほか、主制御装置60や表示装置61などを備えている。
主制御装置60は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAMなどを備えた、いわゆるコンピュータシステムとして構成されている。
主制御装置60は、例えば上記加熱装置14、ポケット形成装置15、錠剤投入装置16などの各種装置の駆動制御や、フィルム受けロール17などの各種ローラの駆動制御などを司る。
これらの駆動制御は、主制御装置60のRAM等に事前に設定された設定データ(各種機構の駆動量のデータなど)に基づき、主制御装置60がPTP包装機11内の各種装置に対し制御信号を出力することにより行われる。
また、主制御装置60は、シール前検査部21(各検査装置T1,T2,D,A)、及び、シール後検査部22(各検査装置E,S,H)とそれぞれ電気的に接続されており、これら各種検査装置との間で各種情報を送受信可能に構成されている。主制御装置60により本実施形態における管理手段(所定の装置)が構成され、主制御装置60、シール前検査部21(各検査装置T1,T2,D,A)、及び、シール後検査部22(各検査装置E,S,H)により本実施形態における検査システムが構成される。
表示装置61は、主制御装置60やシール前検査部21(各検査装置T1,T2,D,A)、シール後検査部22(各検査装置E,S,H)とそれぞれ電気的に接続されており、これらに記憶された各種情報を表示可能に構成されている。
表示装置61の表示部は、表示手段及び入力手段として機能するタッチパネルにより構成されており、ここから主制御装置60やシール前検査部21(各検査装置T1,T2,D,A)、シール後検査部22(各検査装置E,S,H)に対し、各種情報を入力可能に構成されている。勿論、これに代えて又は加えて、入力手段としてキーボードやマウス等を備えた構成としてもよい。
さて、PTP包装機11の概略は以上のとおりであるが、以下においては各検査装置T1,T2,D,A,E,S,Hのより具体的な構成について図4を参照しつつ説明する。
各検査装置T1,T2,D,A,E,S,Hは、それぞれ照射手段としての照明装置25、撮像手段としてのカメラ26、処理実行装置27などを備えている。
照明装置25は、ポケット部2の開口部側又は突出部側から容器フィルム3又はPTPフィルム20に対し所定の光(例えば近赤外光や可視光)を照射可能に構成されている。
本実施形態では、カメラ26として、照明装置25から照射される光の波長領域に感度を有するCCDカメラが採用されている。これに限らず、CMOSカメラを採用してもよい。尚、第4検査装置Aなど一部の検査装置のカメラ26には、色識別可能なようにカラーCCDカメラが採用されている。
そして、カメラ26によって撮像された画像データ(輝度画像データ又はカラー画像データ)は、カメラ26内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で処理実行装置27に入力される。
処理実行装置27は、上記主制御装置60と同様、いわゆるコンピュータシステムとして構成されており、画像処理等の各種処理を実行可能となっている。
処理実行装置27は、画像メモリ31、検査結果及び統計データメモリ32、判定用メモリ33、カメラタイミング制御装置35、及び、CPU及び入出力インターフェース36を備えており、二値化処理や塊処理などの各種画像処理、各種検査処理等を実施可能となっている。
画像メモリ31は、カメラ26から出力される撮像画像の二次元イメージデータ(画像データ)を記憶する。この画像メモリ31に記憶された画像データに基づいて検査が実行される。勿論、検査の実行に際し、画像データに対し加工処理を施してもよい。例えばマスキング処理や、シェーディング補正などの処理を施すことが考えられる。シェーディング補正は、容器フィルム3等の撮像範囲全体を照明装置25の光で均一に照らすことは技術的に限界があることから、位置の相違により生じる光の明度のばらつきを補正するためのものである。尚、検査時において画像データに対し二値化処理が行われた二値化画像データや、マスキング処理が行われたマスキング画像データなども、当該画像メモリ31に記憶されることとなる。
検査結果及び統計データメモリ32は、イメージデータに関する座標等のデータ、外観検査結果データ、及び、該外観検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。これらの外観検査結果データや統計データは、CPU及び入出力インターフェース36の制御に基づき、表示装置61に表示させることができる。また、これらの外観検査結果データや統計データに基づいてCPU及び入出力インターフェース36が主制御装置60に制御信号を送出することもできる。
判定用メモリ33は、検査に用いられる判定値(閾値等)を記憶するものである。判定値は、検査項目毎に設定される。検査に用いられる判定値には、例えばPTPシート1やポケット部2、錠剤5などの寸法、各種検査領域を画定するための各種ウインドウ枠の形状や寸法、二値化処理に係る閾値、面積判定に係る判定値、色識別検査に係る色基準値などが含まれる。
カメラタイミング制御装置35は、カメラ26の撮像タイミングを制御するものである。かかるタイミングはPTP包装機11に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3又はPTPフィルム20を所定量送るごとにカメラ26による撮像が行われる。
CPU及び入出力インターフェース36は、本実施形態における検査手段を構成するものであり、各検査装置T1,T2,D,A,E,S,Hにおける各種制御を司る。例えば判定用メモリ33の記憶内容などを使用しつつ各種処理プログラムを実行すると共に、PTP包装機11の主制御装置60に対し制御信号を送信し又はPTP包装機11の主制御装置60から動作信号などの各種信号を受信する機能を有する。これによって、PTP包装機11の主制御装置60が不良シート排出機構などを制御することが可能となる。また、CPU及び入出力インターフェース36は、表示装置61に表示データを送信する機能を有し、画像データや検査結果などを表示装置61に表示させることができる。
次に各検査装置T1,T2,D,A,E,S,Hの構成についてより詳しく説明する。
第1検査装置T1は、シール前に容器フィルム3のポケット部2突出部側(錠剤5の表面側)から検査を行う透過光式の検査装置である。第1検査装置T1では、照明装置25が容器フィルム3のポケット部2開口部側に配置され、カメラ26が容器フィルム3のポケット部2突出部側に設けられている。そして、照明装置25から照射される光(近赤外光)のうち、容器フィルム3を透過した光を二次元撮像する構成となっている。
第2検査装置T2は、シール前に容器フィルム3のポケット部2開口部側(錠剤5の裏面側)から検査を行う透過光式の検査装置である。第2検査装置T2では、照明装置25が容器フィルム3のポケット部2突出部側に配置され、カメラ26が容器フィルム3のポケット部2開口部側に設けられている。そして、照明装置25から照射される光(近赤外光)のうち、容器フィルム3を透過した光を二次元撮像する構成となっている。
第1検査装置T1及び第2検査装置T2では、錠剤5の表裏両面側から、それぞれ後述する「錠剤割れ」、「錠剤破片混入」、「欠錠」、「錠剤形状・大きさ違い」、「錠剤欠け」及び「錠剤表面剥離」の検査項目について検査が行われる(図10参照)。尚、図10は、各検査装置T1,T2,D,A,E,S,Hと、これらにより行われる検査項目との対応関係を示した図である。
第3検査装置Dは、シール前に容器フィルム3のポケット部2開口部側(錠剤5の裏面側)から検査を行う反射光式の検査装置である。第3検査装置Dでは、照明装置25及びカメラ26が容器フィルム3のポケット部2開口部側に配置されている。そして、照明装置25から照射される光(近赤外光)のうち、錠剤5に反射した光を二次元撮像する構成となっている。
第3検査装置Dでは、錠剤5の裏面側から、「錠剤上毛髪」、「錠剤上異物」、「錠剤割れ」、「錠剤破片混入」、「欠錠」、「錠剤形状・大きさ違い」及び「錠剤欠け」の検査項目について検査が行われる。
第4検査装置Aは、シール前に容器フィルム3のポケット部2突出部側及び開口部側(錠剤5の表裏面側)から検査を行う透過光式及び反射光式の両機能を備えた検査装置である。第4検査装置Aでは、照明装置25が容器フィルム3のポケット部2突出部側及び開口部側の両側に1つずつ配置され、2つのカメラ26が容器フィルム3のポケット部2開口部側に設けられている。そして、ポケット部2突出部側の照明装置25から照射される光(可視光)のうち、容器フィルム3を透過した光が一方のカメラ26により二次元撮像され、ポケット部2開口部側の照明装置25から照射される光(可視光)のうち、錠剤5に反射した光を他方のカメラ26(カラーCCDカメラ)により二次元撮像する構成となっている。
第4検査装置Aでは、「シート上錠剤粉」、「錠剤割れ」、「錠剤破片混入」、「シート上毛髪」、「シート上巨塊異物」、「欠錠」、「錠剤形状・大きさ違い」、「錠剤欠け」及び「錠剤色」の検査項目について検査が行われる。
第5検査装置E,第6検査装置S及び第7検査装置Hは、シール後に容器フィルム3(PTPフィルム20)のポケット部2突出部側(錠剤5の表面側)から検査を行う反射光式の検査装置である。第5検査装置E,第6検査装置S及び第7検査装置Hでは、それぞれ照明装置25及びカメラ26が容器フィルム3(PTPフィルム20)のポケット部2突出部側に配置されている。
尚、これら検査装置E,S,Hにおける照明装置25は、図5に示すように、所定の光(近赤外光又は可視光)を照射可能な光源28、主として平行光を透過させるための平行光フィルター29、及び、近赤外光又は可視光用のハーフミラー30を有している。
これに対し、カメラ26は、PTPフィルム20の平面に対して、略垂直方向から撮像可能となっている。また、照明装置25において、光源28から照射された光は、ハーフミラー30によって反射され、カメラ26の撮像方向と略同一方向から照射されるように構成されている。すなわち、照明装置25は、カメラ26に対して同軸照明が可能となっている。
そして、照明装置25から照射される光が、容器フィルム3越しに錠剤5及びカバーフィルム4を照らし、錠剤5及びカバーフィルム4から反射した光が、カメラ26によって二次元撮像されるように構成されている。ここで、第5検査装置E及び第6検査装置Sでは、それぞれ照明装置25から近赤外光が照射される。第7検査装置Hでは、照明装置25から可視光が照射され、錠剤5等に反射した可視光をカメラ26(カラーCCDカメラ)により二次元撮像する構成となっている。
このとき、照射光は、カバーフィルム4の平面部分では正反射し、エッジ部分等では乱反射する。このため、カメラ26で撮像された画像データにおいては、シール線6の明度が、シール線6により囲まれた平行四辺形部Qの明度よりも低くなり、当該平行四辺形部Qとシール線6とのコントラストが大きくなる〔図6(b)参照〕。
さらに、カバーフィルム4にしわF〔図6(a)参照〕が生じたり、ノンシール部(シール線6の未形成部分)が生じたり、異物が付着する等の異常がある場合には、シール線6の位置以外に明度の低い部分〔図6(b)参照〕が生じたり、平行四辺形部Qの位置以外に明度の高い部分が生じたり、シール線6の間隔が乱れたりする。
尚、カバーフィルム4に品種等の印刷された印刷部がある場合において、印刷部は近赤外光や赤外光を透過させやすいため、カバーフィルム4自体と印刷部との明度差が極めて小さくなる。これにより、本実施形態では印刷部を無視して検査することができるようになっている。
上記構成の下、第5検査装置Eでは、「シート上錠剤粉」、「錠剤上毛髪」、「錠剤上異物」、「錠剤割れ」、「錠剤破片混入」、「シート上毛髪」、「シート上巨塊異物」、「欠錠」、「錠剤形状・大きさ違い」及び「錠剤欠け」の検査項目について検査が行われる。
第6検査装置Sでは、「ノンシール・しわ」の検査項目について検査が行われる。また、第7検査装置Hでは、「コーティング剥離」及び「錠剤色」の検査項目について検査が行われる。
ここで上記各検査項目について説明する。「シート上錠剤粉」は、容器フィルム3又はPTPフィルム20上に、錠剤粉など大きさが数mm(例えば5mm)未満の小さな異物が存在するか否かを検査するための項目である。
「コーティング剥離」は、糖衣錠等の錠剤5において、コーティングが剥離しているか否かを検査するための項目である。
「錠剤上毛髪」は、錠剤5上に、毛髪などの線状異物が存在するか否かを検査するための項目である。
「錠剤上異物」は、錠剤5上に、大きさが数mm(例えば5mm)以上という大きな異物が存在するか否かを検査するための項目である。
「錠剤割れ」は、錠剤5に割れが発生しているか否かを検査するための項目である。
「錠剤破片混入」は、ポケット2内に、錠剤5の破片など、錠剤5以外の異物が存在するか否かを検査するための項目である。
「シート上毛髪」は、容器フィルム3又はPTPフィルム20上に、毛髪などの線状異物が存在するか否かを検査するための項目である。
「シート上巨塊異物」は、容器フィルム3又はPTPフィルム20上に、大きさが数mm(例えば5mm)以上という大きな異物が存在するか否かを検査するための項目である。
「欠錠」は、ポケット部2内に、錠剤5が充填されているか否かを検査するための項目である。
「錠剤形状・大きさ違い」は、錠剤5の形状や大きさが、製造品種と適合しているか否かを検査するための項目である。
「錠剤欠け」は、錠剤5に欠けが発生しているか否かを検査するための項目である。
「錠剤色」は、錠剤5の色が、製造品種と適合しているか否かを検査するための項目である。
「錠剤表面剥離」は、錠剤5の表面層が剥離しているか否かを検査するための項目である。
「ノンシール・しわ」は、カバーフィルム4が適正に取着されているか否か、すなわちシール不良を検査する項目である。
次に、本実施形態におけるシート上異物検査装置に相当する第4検査装置Aや第5検査装置Eにて行われるシート上異物検査(「シート上錠剤粉」、「シート上毛髪」、「シート上巨塊異物」などの検査)について図7のフローチャートを参照して説明する。この処理は、CPU及び入出力インターフェース36によって実行される。
ステップS1では、カメラ26により撮像され画像メモリ31に記憶されている輝度画像データに対して「マスキング処理」が行われる。より詳しくは、予め設定したマスキングデータを用いて、容器フィルム3とカバーフィルム4とが取着されないポケット部2内の領域(ポケット部領域)に対しマスキング処理を施し、ポケット部2外のシート部領域を検査対象領域として設定する。ここで、マスキング処理が行われたマスキング画像データは画像メモリ31に記憶される。
ステップS2では、画像メモリ31に記憶されたマスキング画像データに対して「二値化処理」が行われる。より詳しくは、予め設定した所定の閾値以上を「1(明)」、所定の閾値未満を「0(暗)」として、マスキング画像データが二値化画像データに変換される。ここで、二値化処理が行われた二値化画像データは画像メモリ31に記憶される。
ステップS3では、画像メモリ31に記憶された二値化画像データに対して「塊処理」が実行される。ここでは、塊処理として、二値化画像データの「0(暗)」について各連結成分を特定する処理と、それぞれの連結成分についてラベル付けを行うラベル付け処理とが行われる。
ステップS4では、ステップS3で塊処理した連結成分の面積Sxが算出される。
ステップS5では、連結成分の面積Sxが、判定用メモリ33に記憶された判定基準値Pxと比較される。ここで、連結成分の面積Sxが判定基準値Pxよりも小さい場合には、ステップS6において正常判定が行われ、本処理を終了する。
一方、連結成分の面積Sxが判定基準値Px以上の場合には、ステップS7において異常判定が行われ、ステップS8へ移行する。
ステップS8では、ステップS7にて異常判定された連結成分(シート上異物)の位置情報を取得する。かかる機能が本実施形態における異物位置情報取得手段を構成する。
より詳しくは、まず図9(a)に示すように、シート上異物Zを囲む枠部(外接四角形枠)Wを設定する。かかる機能により本実施形態における枠部設定手段が構成される。
そして、検査対象であるPTPシート1に含まれる所定のポケット部2の中心点P1を原点として、枠部Wの座標位置をシート上異物Zの位置情報として取得する。
続くステップS9では、シート上異物Zを検出した旨の異物検出情報、及び、ステップS8において取得したシート上異物Zの位置情報(枠部Wの座標位置)を、検査対象を特定するための特定情報である通し番号と共に、PTP包装機11の主制御装置60へ出力する。その後、本処理を終了する。かかるステップS9の機能により本実施形態における情報出力手段が構成される。
尚、上記異物検出情報等を受信したPTP包装機11の主制御装置60は、これらの情報を検査対象(通し番号)毎にまとめて記憶すると共に、第6検査装置Sに対し出力する。さらに、PTP包装機11の主制御装置60から、これらの情報を受信した第6検査装置Sは、これらの情報を検査対象(通し番号)毎にまとめて、検査結果及び統計データメモリ32に記憶する。ここで、これらの情報を受信する第6検査装置Sの機能により本実施形態における情報入力手段が構成される。
次に、本実施形態におけるシール不良検査装置に相当する第6検査装置Sにて行われるシール不良検査について図8のフローチャートを参照して説明する。この処理は、CPU及び入出力インターフェース36によって実行される。
ステップS11では、上記シート上異物検査と同様に、カメラ26により撮像され画像メモリ31に記憶されている輝度画像データに対して「マスキング処理」が行われる。
ステップS12では、画像メモリ31に記憶されたマスキング画像データに対して「検査枠による輝度判定処理」が行われる。尚、ここで行われる輝度判定処理は、検査枠を用いて行う上記特許文献1に記載された公知技術と同様であるため、その詳細な説明については省略する。
ステップS13では、ステップS12の輝度判定結果に基づき、画像メモリ31に記憶されたマスキング画像データに対して「二値化処理」が行われる。これにより、シール線6やしわFの部分が「0(暗)」となり、平行四辺形部Qやノンシール部が「1(明)」となった二値化画像データが形成される。ここで、二値化処理が行われた二値化画像データは画像メモリ31に記憶される。
ステップS14では、画像メモリ31に記憶された二値化画像データに対して「塊処理」が実行される。ここでは、塊処理として、二値化画像データの「0(暗)」について各連結成分を特定する処理と、それぞれの連結成分についてラベル付けを行うラベル付け処理とが行われる。但し、ノンシール部の検出に関しては、二値化画像データに対して色反転(ネガポジ反転)が行われた後、塊処理が実行される。
ステップS15では、ステップS14で塊処理した連結成分の面積Syが算出される。
ステップS16では、連結成分の面積Syが、判定用メモリ33に記憶された判定基準値Pyと比較される。ここで、連結成分の面積Syが判定基準値Pyよりも小さい場合には、ステップS17において正常判定が行われ、本処理を終了する。
一方、連結成分の面積Syが判定基準値Py以上の場合には、ステップS18において異常判定が行われ、ステップS19へ移行する。
ステップS19では、上記主制御装置60から受信した情報(異物検出情報等)を参照して、自身の検査対象について、第4検査装置A又は第5検査装置Eにてシート上異物(「シート上錠剤粉」、「シート上毛髪」、「シート上巨塊異物」)が検出されているか否かを判定する。
ここでシート上異物が検出されていると判定された場合には、ステップS20において、上記のように検出されたシール不良(しわFやノンシール部など)の位置情報を取得し、ステップS21へ移行する。かかるステップS20の機能により本実施形態におけるシール不良位置情報取得手段が構成される。
より詳しくは、図9(b)に示すように、検査対象であるPTPシート1に含まれる所定のポケット部2の中心点P1を原点として、シール不良Lが存在する領域の位置情報を取得する。
ステップS21では、ステップS20において取得したシール不良の位置情報と、上記主制御装置60から取得したシート上異物の位置情報とを比較し、当該シール不良が前記シート上異物に起因したものであるか否かを判定する。かかるステップS21の機能により本実施形態における判定手段が構成される。
より詳しくは、図9(b)に示すように、シール不良Lが存在する領域の少なくとも一部が、上記枠部(外接四角形枠)Wに含まれるか否かを判定する。
ここで、シール不良がシート上異物に起因したものであると判定した場合には、ステップS22にて、その旨の情報を検査結果及び統計データメモリ32に記憶し、本処理を終了する。
一方、上記ステップS19において、第4検査装置A又は第5検査装置Eにてシート上異物が検出されていないと判定された場合、又は、ステップS21において、シール不良がシート上異物に起因したものではないと判定された場合には、ステップS23にて、その旨の情報、すなわちシール不良がシール機構に起因したものである旨の情報を検査結果及び統計データメモリ32に記憶し、ステップS24へ移行する。
ステップS24では、シール不良がシート上異物に起因したものでない(シール不良がシール機構に起因したものである)と判定した回数を検査結果及び統計データメモリ32に加算記憶する計数処理を行い、その後、本処理を終了する。かかるステップS24の機能により本実施形態における計数手段が構成される。
尚、第6検査装置Sは、上記ステップS24の計数処理が行われることにより、シール不良検査の進行に伴い検査結果及び統計データメモリ32に順次記憶されていくシール機構に起因したシール不良の発生回数が、予め設定された所定回数以上となった場合には、その旨の情報を表示装置61へ出力し報知させる。かかる機能により本実施形態における報知手段が構成される。これに代えて又は加えて、主制御装置60に対しPTP包装機11を停止させる旨の停止信号を出力する構成としてもよいし、所定の音声発生手段により警告音を発する処理などを行う構成としてもよい。
そして、上記表示装置61における上記報知表示を見た作業者は、シール機構の清掃作業や点検作業、シール圧の調整作業等を行う。
以上詳述したように、本実施形態によれば、第4検査装置A又は第5検査装置Eによって、毛髪や錠剤粉などのシート上異物が検出された場合には、当該シート上異物が検出された旨の情報及びシート上異物の位置情報が主制御装置60を介して第6検査装置Sへ出力される。
一方、第6検査装置Sにおいて、シール不良が検出された場合には、当該シール不良の位置情報と、前記シート上異物の位置情報とを比較する。そして、両位置情報が一致する等した場合には、当該シール不良がシート上異物に起因したものであると判断することができる。逆に、両位置情報が一致等しない場合には、当該シール不良がシール機構の不具合に起因したものであると判断することができる。
これにより、シール機構において発生している何らかの不具合を早期に発見し、点検や清掃等を行うことができるなど、利便性の向上を図ることができる。
ひいては、シール機構が異常を抱えたまま、長期間、生産が継続されるといった事態を防ぐことができる。結果として、不良品の発生を低減し、歩留まりの向上を図ることができる。
また、本実施形態では、シート上異物に外接する枠部Wを設定し、シール不良が存在する領域の少なくとも一部が前記枠部Wに含まれるか否かを判定することにより、シール不良がシート上異物に起因したものであるか否かを判定する構成となっている。これにより、第4検査装置A又は第5検査装置Eによってシール前にシート上異物を検出した位置と、シール後に当該シート上異物に起因したシール不良が発生する位置とが若干ずれた場合であっても、それを許容し、前記シール不良が前記シート上異物に起因したものであると特定することができる。
さらに、本実施形態によれば、検査対象であるPTPシート1に含まれる所定のポケット部2の中心点P1を原点として、シート上異物Zの位置情報(枠部Wの座標位置)やシール不良Lが存在する領域の位置情報を取得する構成となっている。このように所定のポケット部2を基準とすることにより、シート上異物やシート不良の位置情報を精度よく取得することができる。
加えて、本実施形態によれば、シール不良がシート上異物に起因したものでないと判定した回数を計数し、その回数が所定回数以上となった場合に、その旨を報知する構成となっている。これにより、効率よく点検作業等を行うことができ、生産性の低下抑制を図ることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態では、内容物が錠剤5である場合について具体化しているが、内容物の種別、形状等については特に限定されるものではなく、例えば食品や電子部品等が内容物として充填される構成であってもよい。勿論、これらの内容物に対応して形成されるポケット部2の形状や数、配列、大きさ等に関しても上記実施形態に限定されるものではない。
(b)上記実施形態では、容器フィルム3がPP等の透明の熱可塑性樹脂材料により形成され、カバーフィルム4がアルミニウムにより形成されている。各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。
例えば容器フィルム3が、アルミラミネートフィルムなど、アルミニウムを主材料とした金属素材により形成された構成としてもよい。
尚、両フィルム3,4がアルミニウムを主材料とした金属素材等の不透明素材により形成されている場合には、シール前に容器フィルム3に付着した異物を、シール後(カバーフィルム4の取着後)には検出できなくなるため、シール後の検査だけでは、シール不良とシート上異物との因果関係を確認することができない。この点、上記実施形態によれば、シール前に容器フィルム3に付着した異物の位置情報に基づき、シール不良がシート上異物に起因したものであるか否かの判断を行うことができる。
(c)上記実施形態では、カバーフィルム4のシール形態として、複数のシール線6が格子状に交差した構成となっているが、シール形態はこれに限定されるものではなく、例えばドット状の点シール等を採用してもよい。
(d)シール前検査部21やシール後検査部22の構成、各検査装置T1,T2,D,A,E,S,Hの構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、シール前検査部21やシール後検査部22を1つの装置として一体に設けた構成としてもよい。
また、各検査装置T1,T2,D,A,E,S,Hによる検査項目や検査方法、シート上異物の検出方法、シート不良の検出方法などに関しても、上記実施形態に限定されるものではなく、他の構成を採用してもよい。
(e)上記実施形態では、シート上異物に外接する枠部Wを設定し、シール不良が存在する領域の少なくとも一部が前記枠部Wに含まれるか否かを判定することにより、シール不良がシート上異物に起因したものであるか否かを判定する構成となっているが、判定方法はこれに限定されるものではない。例えば、枠部Wを省略し、シート上異物の範囲とシート不良の範囲とが一部又は全部重なるか否かにより判定する構成としてもよい。
(f)上記実施形態では、検査対象であるPTPシート1に含まれる所定のポケット部2の中心点P1を原点として、シート上異物Zの位置情報やシール不良Lが存在する領域の位置情報を取得する構成となっているが、これに限らず、例えば各検査装置において検査範囲の共通化を図るなど、座標系が一致するような構成の下では、シート上の任意の点を原点として設定することも可能となる。
(d)上記実施形態によれば、シール不良がシート上異物に起因したものでないと判定した回数を計数し、その回数が所定回数以上となった場合に、その旨を報知する構成となっている。これに限らず、シール不良がシート上異物に起因したものでないと1回でも判定した場合に、その旨を報知するような構成としてもよい。