JP2015202503A - ろう付構造体の製造方法、これによって製造されるろう付構造体、アルミニウム−樹脂複合構造体、ならびに、前記製造方法に用いるアルミニウム材 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂組成物を複合するのに適したろう付構造体の製造方法、これによって製造されるろう付構造体、アルミニウム−樹脂複合構造体及び前記製造方法に用いるアルミニウム材を提供する。【解決手段】一方のアルミニウム材と他方のアルミニウム材とを非酸化性雰囲気中でフラックスろう付するろう付構造体の製造方法で、アルミニウム材が表面の少なくとも一部に厚さ50〜400nmの易接着性酸化処理皮膜を有し、易この皮膜は表面側のポア構造層と、素地側の厚さ3〜30nmのバリア層とを備え、ポア構造層に5〜30nmの小孔が表面から見て1000〜10000個/μm2存在し、ろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜の少なくとも一部を樹脂組成物に対する接着下地として用いるろう付構造体の製造方法、これによって製造されるろう付構造体、アルミニウム−樹脂複合構造体及び前記製造方法に用いるアルミニウム材。【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂組成物を複合化するのに適した表面状態を有するろう付構造体の製造方法、これによって製造されるろう付構造体、アルミニウム−樹脂複合構造体、前記製造方法に用いるアルミニウム材に関し、具体的には、プリント基板、ヒータ、熱交換器などの製造に有用な技術を提示するものである。
近年では電気・自動車分野などを中心としアルミニウム材と樹脂材料の一体化が注目されており、それらを接合するための技術が開発されている。例として、アルミニウム板の持つ高い熱伝導性に注目し、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等を絶縁層として接着したアルミニウム基板に、銅箔等の金属箔を貼り付けたプリント配線基板としての用途が増加している。これらの樹脂とアルミニウム板表面の密着性を向上させるため、様々な表面処理方法が提案されている。
アルミニウム材と樹脂材料を接着するためのアルミニウムの表面処理方法については、特許文献1に記載される、酸性溶液中で陽極酸化処理して多孔性の酸化皮膜を設ける方法や、特許文献2に記載される、アルカリ性水溶液中にて交流波形で電解処理を施して枝分かれしたマイクロポアを有する酸化皮膜を設ける方法が挙げられる。
また従来、電子部品からの発熱をより容易に放熱するために、アルミニウム基板の裏側に放熱フィンが更に取付けられている。この放熱フィンの金属基板への取付けは、コンパウンドやサーマルシートなどを介して接合されており、熱伝導性及び熱伝達性の良好なコンパウンドやサーマルシートを選択したとしても、熱抵抗が大きくなり十分な放熱量が得られない場合があった。そこで、放熱フィンと金属基板を金属接合で一体化する方法が提案されている。例えば特許文献3には、押し出し加工や切りおこし加工によって、一体型としたプリント基板が開示されている。しかしながら、近年の電機・電子製品の急速な小型化に伴い、プリント配線基板の熱伝導性の重要性はますます増大しており、冷却性をより向上させるために、放熱フィンの複雑化や形状の自由度を考慮すると、一体型プリント基板の製造としてはろう付による方法が望ましいといえる。
その場合、複雑形状のろう付構造体に対して前記のような表面処理を施すことは、立体の凹凸や、ろう付構造体中で合金組成の相違による導電率の差が原因となって、部位により皮膜の形成挙動に差意が生じ、必要部に皮膜が形成されない場合がある。また、ろう付構造体ごとに表面処理が必要となるため、生産性も低下する。そのため、表面処理を必要とする部材に対しては、先に単純な板形状で表面処理を施しておき、所定の形状に加工後に他の部材とろう付する方法が望ましい。
アルミニウム合金に表面処理を施した後、ろう付する方法については、特許文献4において、表面に1〜5μm厚の陽極酸化皮膜を形成したアルミニウム合金をろう付する方法が開示されている。
しかしながら、上記で提案されている技術における陽極酸化皮膜は、ろう付後に樹脂と接着するための下地とするためのものではない。また、1〜5μmの陽極酸化皮膜ではろう付中に多数のクラックが発生して分断・破壊されることから、上記陽極酸化皮膜ではろう付後に樹脂組成物との良好な接着性は得ることは困難であった。
特公昭55―12754号公報 特開平6―297639号公報 特開平8―204294号公報 特開2009−215595号公報
ろう付加熱後においても樹脂組成物との接着性を維持することができる表面処理方法については、これまでに報告されていない。また、設計上、表面処理を施した面に対してろう付する必要がある場合には、ろう付が阻害される虞がある。このような現状に鑑み、本発明は、ろう付後も樹脂組成物との良好な接着性を備えた表面状態を有し、かつ、良好なろう付性を有するろう付構造体及びその製造方法、当該ろう付構造体を用いたアルミニウム−樹脂複合構造体、ならびに、当該製造方法に用いるアルミニウム材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する表面処理技術について検討を重ねた結果、アルカリ交流電解処理によって形成される酸化処理皮膜において、ろう付後においても樹脂組成物との接着性を維持することが可能な条件を見出した。これによって樹脂組成物との良好な接着性を示す表面状態を有するろう付構造体を容易に得ることができる。
すなわち、本発明は請求項1において、一方のアルミニウム材と他方のアルミニウム材とを非酸化性雰囲気中でフラックスろう付する工程を備えるろう付構造体の製造方法であって、前記一方のアルミニウム材がその表面の少なくとも一部に厚さ50〜400nmの易接着性酸化処理皮膜を有し、当該易接着性酸化処理皮膜は表面側に形成されたポア構造層と、素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア層とを備え、前記ポア構造層には、5〜30nmの小孔が表面側から見て1000〜10000個/μm存在し、ろう付加熱された前記易接着性酸化処理皮膜の少なくとも一部を樹脂組成物に対する接着下地として用いることを特徴とするろう付構造体の製造方法とした。
本発明は請求項2では請求項1において、前記ろう付工程において、前記接着下地としての易接着性酸化処理皮膜の部分にはフラックスを塗布せず、一方のアルミニウム材の他の部分及び他方のアルミニウム材の少なくともいずれかにフラックスを塗布してろう付するものとした。
本発明は請求項3では請求項1又は2において、前記易接着性酸化処理皮膜が、前記ろう付工程の前において、前記一方のアルミニウム材をアルカリ水溶液中で交流電解することにより形成されるものとした。
本発明は請求項4では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるろう付構造体において、前記一方のアルミニウム材の片面の少なくとも一部にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が前記接着下地として存在し、前記一方のアルミニウム材の他面が他方のアルミニウム材とろう付されていることを特徴とするろう付構造体とした。
本発明は請求項5では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるろう付構造体において、前記一方のアルミニウム材の片面が他方のアルミニウム材とろう付されており、当該片面のろう付部を除いた部分にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が前記着下地として存在することを特徴とするろう付構造体とした。
本発明は請求項6では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるろう付構造体において、前記一方のアルミニウム材の片面の少なくとも一部にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が接着下地として存在し、前記一方のアルミニウム材の他面が他方のアルミニウム材とろう付されており、当該他面のろう付部を除いた部分にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が前記接着下地として存在することを特徴とするろう付構造体とした。
本発明は請求項7では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるろう付構造体において、前記一方のアルミニウム材の片面及び他面がそれぞれ他方のアルミニウム部材とろう付されており、当該片面及び他面のろう付部を除いた部分にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が前記着下地として存在することを特徴とするろう付構造体とした。
本発明は請求項8では、請求項4〜7のいずれか一項に記載のろう付構造体のろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜を前記接着下地として用いて、当該接着下地において樹脂組成物がろう付構造体に接着されていることを特徴とするアルミニウム−樹脂複合構造体とした。
本発明は請求項9では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法に用いる一方のアルミニウム材であって、前記易接着性酸化処理皮膜を片面に有し、5〜13mass%のSiを含有するろう材層を他面に有するブレージングシートから構成されることを特徴とするアルミニウム材とした。
本発明により、樹脂密着性に優れた接着下地を有するろう付構造体の製造方法、これによって製造されるろう付構造体、アルミニウム−樹脂複合構造体及び前記製造方法に用いるアルミニウム材を提供することができる。
本発明に係るろう付構造体の一実施形態の断面図を示す。 本発明に係るろう付構造体の他の実施形態の断面図を示す。 本発明に係るろう付構造体の更に他の実施形態の断面図を示す。 本発明に係るろう付構造体の更に他の実施形態の断面図を示す。 本発明に係るアルミニウム−樹脂複合構造体の一実施形態であって、冷却フィンと一体化した断面図を示す。 図5のアルミニウム−樹脂複合構造体を用いたプリント配線板の一例を示す断面図である。 本発明に係るアルミニウム−樹脂複合構造体の他の実施形態であって、冷却フィンと一体化した断面図を示す。 図7のアルミニウム−樹脂複合構造体を用いたプリント配線板の他例を示す断面図である。 実施例におけるろう付構造体示す断面図である。 実施例におけるろう付構造体示す断面図である。
以下、本発明の詳細を順に説明する。
本発明は、ろう付される一方のアルミニウム材が、アルミニウム素地側の緻密なバリア層と表面側のポア構造とを有し、その膜厚を適切な範囲に制御した易接着性酸化処理皮膜を表面に備え、フラックスの塗布箇所を制限して、この一方のアルミニウム材と他方のアルミニウム材を非酸化性雰囲気中でろう付することにより、ろう付後も易接着性酸化処理皮膜の特性を維持したろう付構造体を得るものである。
A.アルミニウム材
本発明では、一方及び他方のアルミニウム材同士をろう付することによってろう付構造体を製造する。一方のアルミニウム材は、樹脂組成物に対する接着下地としての易接着性酸化処理皮膜を少なくとも表面の一部に有する。接合される他方のアルミニウム材についても樹脂組成物と接着させる場合には、その表面の少なくとも一部に易接着性酸化処理皮膜を同様に有しているのが好ましい。
一方及び他方のアルミニウム材としては、純アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができ、用途や要求特性に応じて材質が適宜選択される。アルミニウム合金としては、JIS A 1070、1050、1100、1200、3003、3004、5005、5N01、6951、6061、6063、6N01等の規格合金、或いは、これらに種々の合金元素を更に添加した合金から選択することができる。一方、純アルミニウムとしては、99.9mass%(以下、単に「%」と記す)以上の純度を有するものが用いられる。
本発明における易接着性酸化処理皮膜を少なくとも表面の一部に有する一方のアルミニウム材は、上記皮膜を形成後にプレス加工や曲げ加工等で成形されていてもよい。このような成形が施された場合のアルミニウム材の表面とは、成形前における形状の表面を指す。なお、一方及び他方のアルミニウム材の形状としては、板状、円筒状など特に限定されるものではないが、板状のものが好適に用いられる。
B.ろう材
本発明で一方及び他方のアルミニウム材同士をろう付するために用いるろう材としては、Al−Si系合金が好適に用いられる。ろう材は、一方又は他方のアルミニウム材を心材として、上記心材にクラッドしたブレージングシートとして使用してもよく、置きろう材やペーストろう材として使用してもよい。
ろう材としては、必須元素としてSiを5〜13%含有するAl−Si系合金を用いるのが好ましい。具体的には、Si:5〜13%を含有し、残部Al及び不可避的不純物からなるAl−Si系合金が用いられる。Si含有量が5%未満では、ろう付温度において溶融するろう材の量が少なくなり、ろう付性が低下する。一方、Si含有量が13%を超えると、ろう材の液相温度が上昇するとともに心材への浸食が顕著となる。
ろう材は、必須元素の他に選択的添加元素として、Cu:0.10〜2.00%、Zn:0.50〜4.00%、Bi:0.01〜1.00%を含有していてもよい。Cu、Znはろう材の融点を低下させ、低温でのろう付を可能にする。Cu含有量が0.10%未満またはZn含有量が0.50%未満では、ろう材の融点低下効果が十分に得られない。一方、Cu含有量が2.00%を超えると腐食環境に曝された場合、カソードとして作用するため、他の部位に腐食が発生し易くなる。またZn含有量が4.00%を超えると、フィレットの電位が卑になり過ぎ、場合によっては接合部に貫通腐食が発生したり、接合強度が低下したりする。Biは、溶融したろう材の濡れ性を向上させる。Bi含有量が0.01%未満では、ろう材の濡れ性向上効果が十分に得られない。一方、Bi含有量が1.00%を超えると、効果が飽和し、材料コストが増大するため好ましくない。
また、更にFe:0.1〜1.5%、Ti:0.05〜0.20%等の不可避的不純物が含有されていてもよい。
上記ブレージングシートとしては、一方の又は他方のアルミニウム材を心材としその表面にろう材をクラッドしたものが用いられるが、必要に応じて、ろう材の上に皮材を更に設けたものや、心材とろう材の間に中間材を設けたものや、これら皮材と中間材の両方を設けたものとしてもよい。ろう材のクラッド率は、1〜25%、好ましくは2〜20%である。また、皮材と中間材のクラッド率はそれぞれ、1〜25%、好ましくは2〜20%である。
上記ブレージングシートの製造方法としては、公知の技術を用いることができる。すなわち、ブレージングシートの製造方法は、所定の組成を有するろう材と心材、必要に応じて皮材、中間材を連続鋳造によって造塊し、得られたスラブを切断して所定の厚さに調整して重ね合わせ、或いは、必要に応じて均質化処理、熱間圧延を施して重ね合わせ、次いで、熱間圧延によりクラッド圧延し、その後、冷間圧延を施し、更に必要に応じて中間焼鈍を加えるものである。
C.易接着性酸化処理皮膜
本発明における易接着性酸化処理皮膜とは、電解処理によって形成され、樹脂組成物との優れた樹脂密着性を有する酸化皮膜のことである。本発明者らは、TEM(透過型電子顕微鏡)、SEM(走査電子顕微鏡)及びFT―IR(赤外吸収分光法)等により酸化皮膜の性状評価を行った。その結果、従来技術におけるアルカリ交流電解処理によって形成される酸化処理皮膜において以下に示す要件を達成することにより、ろう付後においても酸化処理皮膜の前記ポア構造が維持され、易接着性酸化処理皮膜としての特性を保持することが可能であることを見出した。
すなわち、本発明に係る易接着性酸化処理皮膜は、表面側に形成されたポア構造層と、素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア層とを備える。バリア層厚さが3nm未満ではアルミ素地との結合が十分でなく樹脂密着性が低下し、30nmを超えるとその緻密性ゆえに、酸化膜自体が凝集破壊を生じやすくなり、樹脂密着性が低下する。また、ポア構造層には、5〜30nm(円相当直径)の小孔が表面側から見て1000〜10000個/μm存在する。この存在密度が、1000個/μm未満の場合には樹脂との接触面積が十分に確保できず、10000個/μmを超えると酸化皮膜自身の強度が失われることによる凝集破壊が発生し易くなり、またろう付加熱時にクラックが発生し易くなる。小孔の円相当直径を5〜30nmに限定した理由は、5nm未満のものでは樹脂との接触面積が十分に確保できず、30nmを超えるものは酸化皮膜自身の強度が失われることによる凝集破壊が発生し易くなり、またろう付加熱時にクラックが発生し易くなる。更に、ポア構造層とバリア層とを加えた易接着性酸化処理皮膜の総厚さは50〜400nmである。50nm未満ではポア構造の厚さが十分でないことから樹脂密着性が不十分となり、400nmを超えると、ろう付加熱時にクラックが生じ、ろう付後に易接着性酸化処理皮膜の特性を損なう。
D.易接着性酸化処理皮膜の製造方法
本発明における易接着性酸化処理皮膜を有するアルミニウム材は、これを一の電極として、これと対極を用いたアルカリ交流電解法によって製造される。電解条件は、pH9〜13で液温35℃〜80℃のアルカリ性水溶液を電解溶液としは、周波数20〜100Hz、電流密度4〜50A/dm、電解時間5秒〜60秒が採用される。なお、対電極とには黒鉛電極等が用いられる。上記電解条件の範囲外でアルカリ交流電解を行った場合、前記の易接着性酸化処理皮膜の構造を得ることができず、樹脂密着性が低下してしまう虞がある。
交流電解処理工程において、電解溶液として用いるアルカリ水溶液は、りん酸ナトリウム、りん酸水素カリウム、ピロりん酸ナトリウム、ピロりん酸カリウム及びメタりん酸ナトリウム等のりん酸塩や;水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩や;水酸化アンモニウム;或いは、これらの混合物の水溶液を用いることができる。後述するように電解溶液のpHを特定の範囲に保つ必要があることから、バッファー効果の期待できるりん酸塩系物質を含有するアルカリ水溶液を用いるのが好ましい。このようなアルカリ成分の濃度は、電解溶液のpHが所望の値になるように調整されるが、通常、1×10−4〜1モル/リットルである。なお、これらのアルカリ性水溶液には、汚れ成分に対する除去能力の向上のために界面活性剤を添加してもよい。
電解溶液のpHは9〜13とする必要があり、9.5〜12とするのが好ましい。pHが9未満の場合には、電解溶液のアルカリエッチング力が不足するため多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となる。一方、pHが13を超えると、アルカリエッチング力が過剰になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層が成長し難くなり、更にバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成も阻害される。
電解溶液温度は35〜80℃とする必要があり、40〜70℃とするのが好ましい。電解溶液温度が35℃未満では、アルカリエッチング力が不足するため多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造が不完全となる。一方、80℃を超えるとアルカリエッチング力が過剰になるため、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層ともに成長が阻害される。
アルカリ交流電解においては、多孔性アルミニウム酸化皮膜層とバリア型アルミニウム酸化皮膜層を含めた酸化皮膜全体の厚さは、電気量、すなわち電流密度と電解時間の積によって制御され、基本的に電気量が多いほど酸化皮膜全体の厚さが増加する。このような観点から、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の交流電解条件は以下の通りとする。
用いる周波数は20〜100Hzである。20Hz未満では、電気分解としては直流的要素が高まる結果、多孔性アルミニウム酸化皮膜層の多孔質構造の形成が進行せず、緻密構造となってしまう。一方、100Hzを超えると、陽極と陰極の反転が速過ぎるため、酸化皮膜全体の形成が極端に遅くなり、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層ともに、所定の厚さを得るには極めて長時間を要することになる。
電流密度は4〜50A/dmとする必要がある。電流密度が4A/dm未満では、バリア型アルミニウム酸化皮膜層のみが優先的に形成されるために多孔性アルミニウム酸化皮膜層が得られない。一方、50A/dmを超えると、電流が過大になるため多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の厚さ制御が困難となり処理ムラが起こり易い。
電解時間は5〜60秒とする必要がある。5秒未満の処理時間では、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層の形成が急激過ぎるため、いずれの酸化皮膜層も十分に形成されず、不定形のアルミニウム酸化物から構成される酸化皮膜となるためである。一方、60秒を超えると、多孔性アルミニウム酸化皮膜層及びバリア型アルミニウム酸化皮膜層が厚くなり過ぎたり再溶解する虞があるだけでなく、生産性も低下する。
本発明では、前記易接着性酸化処理皮膜はアルミニウム材の少なくとも一方の側に形成される。アルミニウム材としてアルミニウム板を用い、この片面にのみろう材層がクラッドされたブレージングシートとした場合には、ろう材面には易接着性酸化処理皮膜が形成されず、ろう材層の反対側にのみ易接着性酸化処理皮膜が形成される。易接着性酸化処理皮膜を形成する面は、用途等に応じて適宜選択される。
E.ろう付
本発明のろう付構造体は、非酸化性雰囲気中でフラックスろう付によって製造されることを特徴とする。非酸化性雰囲気としては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスといった不活性ガス;水素、アンモニア、一酸化炭素などの還元性ガス;ならびに、これらの混合ガスが用いられる。コストの点から、窒素ガスを用いるのが好ましい。非酸化性雰囲気は、ろう付け加熱時には減圧を伴わず、通常は大気圧とされる。また、ろう付温度は特に規定するものではないが580〜620℃が好適である。
本発明のろう付構造体を非酸化性雰囲気中でフラックスろう付によって製造する際に用いるフラックスについて説明すると、通常のフラックスの機能を得るために用いるフラックスとしては、KAlF、KAlF、KAlF・HO、KAlF、AlF、KZnF、KSiFなどのフッ化物系フラックス;CsAlF、CsAlF・2HO、CsAlF・HOなどのセシウム系フラックス;などが挙げられる。
フラックスの塗布部分は、一方のアルミニウム材のうち、ろう付後に樹脂組成物との接着下地としての易接着性酸化処理皮膜を残す部分を除いた部分に選択的に塗布しなければならない。すなわち、一方のアルミニウム材における易接着性酸化処理皮膜を残す部分以外の部分、ならびに、他方のアルミニウム材の少なくともいずれかにフラックスを塗布する。ろう付後において樹脂組成物との接着下地としての易接着性酸化処理皮膜を残す部分にフラックスを塗布した場合、フラックスの作用により易接着性酸化処理皮膜が破壊されてしまい、ろう付後に接着下地が得られない。
フラックスの塗布量は、好ましくは0.5〜5.0g/m、より好ましくは1.0〜4.0g/mである。この塗布量はフラックスの質量を、塗布した部材面積で除して算出している。塗布量が0.5g/m未満ではフラックスの作用が不十分であり、ろう付け性が低下する。一方、5.0g/mを超えると、ろう付時にフラックスが広がり過ぎ、ろう付後に維持すべき易接着性酸化処理皮膜まで破壊してしまう虞がある。
F.ろう付構造体
図1に、本発明に係るろう付構造体の一実施形態の断面図を示す。この実施態様では、一方のアルミニウム板1の片面には易接着性酸化処理皮膜2が残っており、他面には他方のアルミニウム材3がろう付されている。易接着性酸化処理皮膜2が残っている部分を接着下地として樹脂組成物と接着することができる。
図2に、本発明に係るろう付構造体の他の実施形態の断面図を示す。この実施態様では、一方のアルミニウム材1の片面に他方のアルミニウム材3がろう付されており、当該片面のろう付部分を除いた部分に易接着性酸化処理皮膜2が残っている。この場合、ろう付部から5mm以内の易接着性酸化処理皮膜は、フラックスの作用により破壊されている虞があるので、樹脂組成物との接着下地としては、ろう付部分から5mm離れた部分から利用することが望ましい。
図3に、本発明に係るろう付構造体の更に他の実施形態の断面図を示す。この実施態様では、一方のアルミニウム材1の片面には易接着性酸化処理皮膜2bが残っており、他面には他方のアルミニウム材3がろう付されている。更に、この他面において、ろう付部分を除いた部分に易接着性酸化処理皮膜2aが残っている。これらの易接着性酸化処理皮膜2a、2bは上記二つの実施態様と同様に接着下地として用いられる。
図4に、本発明に係るろう付構造体の更に他の実施形態の断面図を示す。この実施態様では、一方のアルミニウム材1の両面において、他方のアルミニウム材3a、3bがそれぞれろう付されている。そして、これら両面のそれぞれにおいて、ろう付部を除いた部分に、ろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜2a、2bを接着下地として残している。なお、易接着性酸化処理皮膜は、一方のアルミニウム材1の両面ではなくいずれか一方の面にのみ残っていてもよい。
G,アルミニウム−樹脂複合構造体
図5に、本発明に係るろう付構造体に樹脂組成物を接着したアルミニウム−樹脂複合構造体の一例を示す。この例は、ろう付構造体23に樹脂組成物としての絶縁層25を接着したものである。ろう付構造体23は、一方のアルミニウム材である基板21の片面に易接着性酸化処理皮膜24を設けて、これを接着下地として絶縁層25を接着し、基板21の他面には、他方のアルミニウム材である放熱フィン22をろう付した構造を有する。
更に、図6に、図5のアルミニウム−樹脂複合構造体の絶縁層25に導体用金属部品26を接合したものを示す。図6において、導体用金属部品26として銅線を用いる場合には、プリント配線板を構成する。
図7に、本発明に係るろう付構造体に樹脂組成物を接着したアルミニウム−樹脂複合構造体の他の例を示す。この例もまた、ろう付構造体23に樹脂組成物としての絶縁層25を接着したものである。ろう付構造体23は、一方のアルミニウム材である基板21の片面に易接着性酸化処理皮膜24を設けて、これを接着下地として絶縁層25を接着し、基板21の当該片面に、他方のアルミニウム材である放熱フィン22をろう付した構造を有する。
更に、図8に、図7のアルミニウム−樹脂複合構造体の絶縁層25に導体用金属部品26を接合したものを示す。図6において、導体用金属部品26として銅線を用いる場合には、プリント配線板を構成する。
本発明のろう付構造体の易接着性酸化処理皮膜面と樹脂組成物との接着によるアルミニウム−樹脂複合構造体としては、プリント配線基板の用途に限定されるものではない。例えば、樹脂組成物として樹脂成形体を用いたものや、樹脂組成物としての接着剤を用いて他の部材とを接着したもの、樹脂組成物として樹脂コーティングを用いたものなどが挙げられる。
本発明のろう付構造体が有する易接着性酸化処理皮膜に樹脂組成物を接着させる方法としては、特に限定されず、射出成形、押し出し成形、加熱プレス成形、圧縮成形、トランスファーモールド成形、注型成形、レーザー溶着成形、反応射出成形(RIM成形)、リム成形(LIM成形)、溶射成形等の樹脂成形方法が採用できる。また、アルミニウム材表面に樹脂コーティングを設けたアルミニウム−樹脂複合構造体を製造する場合は、溶剤に樹脂組成物を溶解又は分散させて塗布するコーティング法や、その他の各種塗装方法を用いることができる。その他の塗装方法として、焼き付け塗装、電着塗装、静電塗装、粉体塗装、紫外線硬化塗装等を用いることもできる。
本発明のろう付構造体が有する易接着性酸化処理皮膜との接着に使用できる樹脂組成物としては特に限定されるものではなく、種々の熱可塑性樹脂組成物や熱硬化性樹脂組成物から用途に応じて選択することができる。また、これらの樹脂組成物の他に、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂等を含む光硬化性樹脂組成物;ゴム、エラストマー等を含む反応硬化性樹脂組成物;などの各種の樹脂組成物を挙げることができる。
以下、本発明に係るろう付構造体の製造における実施例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
実施例1
一方のアルミニウム材として、板厚1.0mm、幅10mm、長さ130mmのJIS3003合金板を使用した。このアルミニウム合金板を電極に用い(対電極には黒鉛電極を用い)、ピロりん酸ナトリウムを主成分とするアルカリ水溶液を電解溶液として用いた。ピロりん酸ナトリウムなどのアルカリ成分の濃度は表1に示すpHになるように適宜調整した。そして、表1に示す電解条件にて交流電解処理を実施し、アルミニウム合金板の両面に易接着性酸化処理皮膜を形成した。
Figure 2015202503
上記アルカリ電解処理によって作成したサンプルの表面分析結果を、表2に示す。具体的には、易接着性酸化処理膜の構造として、(1)その全体厚さ及びバリア層厚さ、(2)ポア構造における小孔の直径と密度を、以下のようにして測定した。表2では、同一試料について、10箇所測定した算術平均値を記載した。
Figure 2015202503
(1)易接着性酸化処理膜の全体厚さ及びバリア層厚さ
易接着性酸化処理膜の全体厚さ及びバリア層厚さは、TEMにより酸化皮膜層の断面観察から測定した。ウルトラミクロトームを用いて供試材から断面観察用薄片試料を作製した。次に、この薄片試料において観察視野(1μm×1μm)中の任意の10点を選択して、酸化皮膜層の厚さを測定した。
(2)ポア構造における小孔の直径と密度
ポア構造における小孔の直径と密度は、FE―SEM(電界放出形走査電子顕微鏡)を用いて、電解処理後のサンプルの酸化処理膜の表面の観察から測定した。観察視野(400nm×400nm)中のポア構造の最表面に見える任意の小孔10点を選択して小孔の直径を測定した。また、任意に観察した10点の観察視野(400nm×400nm)内の最表面に見える小孔の数を測定し、密度を計算した。
なお、比較例1−11は無処理材のアルミニウム合金板を使用し、比較例1−12ではアルカリ交流電解処理に代わって、従来技術に基づいた硫酸アルマイト処理(厚さ1.0μm)を実施した。
本発明例1−1〜1−10では、易接着性酸化処理膜の全体厚さ、ポア構造における小孔の直径と密度、ならびに、バリア層厚さが、本発明の規定範囲を満たしていた。
一方、比較例1−1では、酸化処理膜の全体厚さがが50nm未満となり、易接着性酸化処理皮膜が形成されなかった。
比較例1−2では、酸化処理膜の全体厚さが400nmを超え、易接着性酸化処理皮膜が形成されなかった。
比較例1−3では、ポア構造における小孔の直径が5nm未満となり、小孔の密度が10000個/μmを超えたため、易接着性酸化皮膜が形成されなかった。
比較例1−4では、ポア構造における小孔の直径が30nmを超え、小孔の密度が1000個/μm未満となったため、易接着性酸化皮膜が形成されなかった。
比較例1−5では、ポア構造が形成されなかったため、易接着性酸化皮膜が形成されなかった。
比較例1−6では、ポア構造及びバリア層が形成されなかったため、易接着性酸化皮膜が形成されなかった。
比較例1−7では、ポア構造が形成されなかったため、易接着性酸化皮膜が形成されなかった。
比較例1−8では、酸化処理膜の全体厚さが400nmを超え、易接着性酸化処理皮膜が形成されなかった。
比較例1−9では、ポア構造が形成されなかったため、易接着性酸化皮膜が形成されなかった。
比較例1−10では、小孔の直径が30nm未満となり、小孔の密度が1000個/μm未満のため、易接着性酸化皮膜が形成されなかった。
比較例1−11、1−12では、バリア層とポア構造からなる易接着性酸化皮膜が形成されなかった。
次に、Siを10%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるろう材と、JIS3003合金を心材として、常法に従って、片面ブレージングシート(厚さ0.1mm)を作製した。ろう材の層厚は、それぞれ0.02mm(クラッド率20%)とした。これを巾10mmに切断し、コルゲート加工して作製されたコルゲートフィンを長さ50mmとなるように切断した。
次に、図9に示すようにミニコア37を組み付けた。まず、上記片面ブレージングシートのコルゲートフィン35(33:ろう材、34:心材)を脱脂処理し、アセトンでスラリー状に希釈したノコロックフラックス(KFとAlFを基本組成とするフッ化物系フラックス)を塗布し、自然乾燥させた。フラックスの塗布量は3g/mとし、塗布量の値は塗布前後の試験片の質量を電子天秤で測定し、質量差を塗布面積で除した値とした。コルゲートフィン35のろう材33と、上記の両面に易接着性酸化処理皮膜32a、32bを設けたアルミニウム合金板31の一方の面の易接着性酸化処理皮膜面32aとを合わせ、コルゲートフィン35の心材34をステンレス板36に合わせて、コルゲートフィン35をアルミニウム合金板材31とステンレス板36で挟み、不図示のステンレス製ワイヤーで固定することにより、ミニコア7を作製した。なお、また、比較例1−13では、アルミニウム合金板31として表1、2の本発明例1−10のものを用い、アルミニウム合金板材31の易接着性酸化処理皮膜面32bにもフラックスを3g/m塗布した。
ミニコア37のろう付加熱には、非酸化性ガスとして窒素ガスを導入したろう付炉を使用した。ミニコア37の到達温度が600℃に達した後、3分間保持して室温まで冷却し、ろう付を完了した。ろう付完了後に、ステンレス製ワイヤーをはずし、ステンレス板36をミニコア37から取り外した。
(フィン接合率)
ろう付後のサンプル(ミニコア37)について、アルミニウム合金板31からコルゲートフィン35を剥がし、フィン接合率を測定した。フィン接合率は、コルゲートフィン35の接合長さをコルゲートしたフィンの山数の総和に相当する接合長さで割って算出した。本発明例1―1〜1−9及び比較例1−1〜1−13のいずれも95%以上のフィン接合率が得られ、良好なろう付が確認された。
(Tピール剥離試験)
ろう付後のミニコア37のアルミニウム合金板31について、ろう付部を除いて長さ80mmに切断したものを2枚準備した。そして、幅10mm、長さ50mm、厚さ3mmのPP樹脂を2枚のアルミニウム合金板31で、易接着性酸化処理皮膜面32bがPP樹脂と接触するように三辺を揃えて挟み込み、ホットプレス機によって圧力1MPa、温度230℃で1分間保持して接着した。ホットプレス機から取り外して空冷後、アルミニウム合金板31からはみ出したPP樹脂をカッターナイフで除去した。内側にPP樹脂が存在せず、対向しているアルミニウム合金板部分をそれぞれ外側に90°折り曲げてT字型とした。次いで、折り曲げ部を引張試験機にて引張速度100mm/分で引張ってTピール剥離試験を行った。結果を表3に示す。
Figure 2015202503
表3から明らかなように、本発明例1−1〜1−9では、本発明要件を満たす易接着性酸化処理皮膜が形成されているため、ろう付後のTピール剥離試験にて高い強度を示した。また、アルミニウム合金板とPP樹脂との剥離は生じず、PP樹脂の凝集破壊が生じていることを確認した。すなわち、本発明例1−1〜1−9の易接着性酸化処理皮膜は、ろう付後においても良好な樹脂接着性が維持されており、PP樹脂との強固な接着がなされていた。
これに対して、比較例1−1では、酸化処理皮膜の全体の厚さが50nm未満であったため、ポア構造の厚さが十分でないことから、PP樹脂とはほとんど接着されておらず低いTピール強度を示し、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−2では、酸化処理皮膜の全体の厚さが400nm超であったため、ろう付加熱時にクラックが生じた。その結果、Tピール強度が低くPP樹脂とはほとんど接着されておらず、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−3では、ポア構造における小孔の直径が5nm未満であるために、樹脂がポア構造に十分に取り込まれず、また、小孔の密度が10000個/μm超えたため、酸化皮膜自身の強度が失われた。その結果、低いTピール強度を示し、アルミニウ合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−4では、ポア構造における小孔の直径が30nmを超え、小孔の密度が1000個/μm未満であるため、酸化皮膜自身の強度が失われ、また樹脂との接触面積が十分に確保できなかった。その結果、P樹脂とはほとんど接着されておらず低いTピール強度を示し、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−5では、ポア構造が形成されていなかったために、Tピール強度が低くPP樹脂とはほとんど接着されておらず、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−6では、ポア構造及びバリア層が形成されていなかったために、Tピール強度が低くPP樹脂とはほとんど接着されておらず、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−7では、ポア構造が形成されていなかったために、Tピール強度が低くPP樹脂とはほとんど接着されておらず、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−8では、酸化処理皮膜の全体の厚さが400nm超であったため、ろう付加熱時にクラックが生じた。その結果、Tピール強度が低くPP樹脂とはほとんど接着されておらず、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−9では、ポア構造が形成されていなかったために、Tピール強度が低くPP樹脂とはほとんど接着されておらず、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−10では、ポア構造における小孔の直径が30nmを超え、小孔の密度が1000個/μm未満であるため、酸化皮膜自身の強度が失われ、また樹脂との接触面積が十分に確保できなかった。その結果、P樹脂とはほとんど接着されておらず低いTピール強度を示し、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−11では、アルミニウム合金材を無処理材としたため、Tピール強度が低くPP樹脂とはほとんど接着されておらず、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−12では、アルミニウム合金材に硫酸アルマイト処理を施したものであるため、ろう付後には樹脂接着性を維持できず低いTピール強度示し、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
比較例1−13は、接着下地としての易接着性酸化処理皮膜にフラックスを塗布したことで、ろう付時に易接着性酸化処理皮膜が破壊された。その結果、PP樹脂とはほとんど接着されておらず低いTピール強度を示し、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
実施例2
一方のアルミニウム材として、Siを10%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるろう材と、JIS3003合金を心材とし、常法に従って、片面ろう材のブレージングシート(厚さ1mm)を作製した。ろう材の層厚は、それぞれ0.1mm(クラッド率10%)とした。上記ブレージングシートを幅10mm、長さ130mmに切断したものを電極に用い(ブレージングシートにおけるろう材がクラッドされていない側の心材表面が、対電極である黒鉛電極と対面するように)、ピロりん酸ナトリウムを主成分とするアルカリ水溶液を電解溶液として用いた。ピロりん酸ナトリウムなどのアルカリ成分の濃度は表4に示すpHになるように適宜調整した。その他の電解条件は、電解浴の温度を60℃、電流密度を10A/dmとし、周波数と電解時間は表4に示す条件にて交流電解処理を実施し、ろう材がクラッドされていない側の心材表面に易接着性酸化処理皮膜が形成されたアルミニウム材としてのブレージングシートを作製した。
Figure 2015202503
上記アルカリ電解処理によって作成したサンプルの表面分析結果を、表5に示す。
Figure 2015202503
本発明例2−1〜2−6では、易接着性酸化処理膜の全体厚さ、ポア構造における小孔の直径と密度、ならびに、バリア層厚さが、本発明の規定範囲を満たしていた。一方、比較例2−1〜2−6では、易接着性酸化処理皮膜が形成されなかった。
次に、厚さ0.1mmのJIS3003合金を巾10mmに切断し、コルゲート加工して作製したコルゲートフィンを長さ50mmとなるように切断した。
次に、図10に示すようにミニコア47を組み付けた。まず、上記コルゲートフィン45を脱脂処理し、アセトンでスラリー状に希釈したノコロックフラックス(KFとAlFを基本組成とするフッ化物系フラックス)を塗布し、自然乾燥させた。フラックスの塗布量は3g/mとし、塗布量の値は塗布前後の試験片の質量を電子天秤で測定し、質量差を塗布面積で除した値とした。コルゲートフィン45と、易接着性酸化処理皮膜44を配したブレージングシート43(41:ろう材、42:心材)のろう材41とを合わせ、コルゲートフィン45をブレージングシート43とステンレス板46で挟み、不図示のステンレス製ワイヤーで固定することにより、ミニコア47を作製した。
ミニコア47のろう付加熱は、実施例1と同様に行った。
(フィン接合率)
ろう付後のサンプル(ミニコア47)について、実施例1と同様にブレージングシート43とコルゲートフィン45との接合状況を観察し、フィン接合率を測定した。本発明例2−1〜2−6および比較例2−1〜2−6では95%以上のフィン接合率が得られ、良好なろう付が確認された。
(Tピール剥離試験)
ろう付後のミニコア47のブレージングシート43について、ろう付部を除いて長さ80mmに切断したものを2枚準備し、実施例1と同様に、PP樹脂を2枚のブレージングシート41で、易接着性酸化処理皮膜面44がPP樹脂と接触するように挟み込んで接着した後、Tピール剥離試験を行った。結果を表6に示す。
Figure 2015202503
表6から明らかなように、本発明例2−1〜2−6では、本発明要件を満たす易接着性酸化処理皮膜が形成されているため、ろう付後のTピール剥離試験にて高い強度を示した。また、アルミニウム合金板とPP樹脂との剥離は生じず、PP樹脂の凝集破壊が生じていることを確認した。すなわち、本発明例2−1の易接着性酸化処理皮膜は、ろう付後においても良好な樹脂接着性が維持されており、PP樹脂との強固な接着がなされていた。
一方で、比較例2−1〜2−6では、本発明要件を満たす易接着性酸化処理皮膜が形成されていないため、ろう付後のTピール剥離試験にてTピール強度が低くPP樹脂とはほとんど接着されておらず、アルミニウム合金板とPP樹脂が剥離した。
樹脂密着性に優れた接着下地を有するろう付構造体の製造方法、これによって製造されるろう付構造体、アルミニウム−樹脂複合構造体及び前記製造方法に用いるアルミニウム材を提供できる。
1・・・易接着性酸化処理皮膜
2、2a、2b・・・一方のアルミニウム材
3、3a、3b・・・他方のアルミニウム材
21・・・基板
22・・・放熱フィン
23・・・ろう付構造体
24・・・易接着性酸化処理皮膜
25・・・絶縁層
26・・・導体用金属部品
31・・・アルミニウム合金板
32a、32b・・・易接着性酸化処理皮膜
33・・・ろう材
34・・・心材
35・・・コルゲートフィン
36・・・ステンレス板
37・・・ミニコア
41・・・ろう材
42・・・心材
43・・・ブレージングシート
44・・・易接着性酸化処理皮膜
45・・・コルゲートフィン
46・・・ステンレス板
47・・・ミニコア

Claims (9)

  1. 一方のアルミニウム材と他方のアルミニウム材とを非酸化性雰囲気中でフラックスろう付する工程を備えるろう付構造体の製造方法であって、前記一方のアルミニウム材がその表面の少なくとも一部に厚さ50〜400nmの易接着性酸化処理皮膜を有し、当該易接着性酸化処理皮膜は表面側に形成されたポア構造層と、素地側に形成された厚さ3〜30nmのバリア層とを備え、前記ポア構造層には、5〜30nmの小孔が表面側から見て1000〜10000個/μm存在し、ろう付加熱された前記易接着性酸化処理皮膜の少なくとも一部を樹脂組成物に対する接着下地として用いることを特徴とするろう付構造体の製造方法。
  2. 前記ろう付工程において、前記接着下地としての易接着性酸化処理皮膜の部分にはフラックスを塗布せず、一方のアルミニウム材の他の部分及び他方のアルミニウム材の少なくともいずれかにフラックスを塗布してろう付する、請求項1に記載のろう付構造体の製造方法。
  3. 前記易接着性酸化処理皮膜が、前記ろう付工程の前において、前記一方のアルミニウム材をアルカリ水溶液中で交流電解することにより形成される、請求項1又は2に記載のろう付構造体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるろう付構造体において、前記一方のアルミニウム材の片面の少なくとも一部にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が前記接着下地として存在し、前記一方のアルミニウム材の他面が他方のアルミニウム材とろう付されていることを特徴とするろう付構造体。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるろう付構造体において、前記一方のアルミニウム材の片面が他方のアルミニウム材とろう付されており、当該片面のろう付部を除いた部分にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が前記着下地として存在することを特徴とするろう付構造体。
  6. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるろう付構造体において、前記一方のアルミニウム材の片面の少なくとも一部にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が接着下地として存在し、前記一方のアルミニウム材の他面が他方のアルミニウム材とろう付されており、当該他面のろう付部を除いた部分にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が前記接着下地として存在することを特徴とするろう付構造体。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されるろう付構造体において、前記一方のアルミニウム材の片面及び他面がそれぞれ他方のアルミニウム部材とろう付されており、当該片面及び他面のろう付部を除いた部分にろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜が前記着下地として存在することを特徴とするろう付構造体。
  8. 請求項4〜7のいずれか一項に記載のろう付構造体のろう付加熱された易接着性酸化処理皮膜を前記接着下地として用いて、当該接着下地において樹脂組成物がろう付構造体に接着されていることを特徴とするアルミニウム−樹脂複合構造体。
  9. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法に用いる一方のアルミニウム材であって、前記易接着性酸化処理皮膜を片面に有し、5〜13mass%のSiを含有するろう材層を他面に有するブレージングシートから構成されることを特徴とするアルミニウム材。
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