JP2015196700A - 懸濁重合用安定剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】懸濁重合時の重合安定性に優れ、かさ比重が高いビニル系重合体を得ることができ、かつ重合後の排水中におけるPVAの残存量を低減できる懸濁重合用安定剤の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、ビニルアルコール系重合体(A)を含有する懸濁重合用安定剤であって、上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である懸濁重合用安定剤である。
【選択図】なし

Description

本発明は、懸濁重合用安定剤に関する。
成形材料、接着剤、塗料等の様々な用途に用いられる塩化ビニル等のビニル系重合体の製造方法として、温度調整及び重合体の単離が容易である懸濁重合法が多く用いられている。この懸濁重合法では、一般的に疎水性基及び親水性基を有し優れた界面活性能を示すビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある)等の安定剤が添加される。また、この懸濁重合により得られる粒子状のビニル系重合体には、貯蔵時の省スペース化、輸送効率の向上、押出成形時の処理量の向上等の観点から、かさ比重が高いことが求められている。
このような要請に対し、懸濁重合用安定剤として1種又は2種以上のPVAとヒドロキシプロピルメチルセルロースとを組み合わせて用いる技術(特許文献1及び特許文献2参照)、不飽和二重結合を有する変性PVAを用いる技術(特許文献3及び特許文献4参照)等が開発されている。
しかしながら、従来の懸濁重合用安定剤では、懸濁重合時の重合安定性が不十分であるため、粗粒のビニル系重合体粒子が形成され、ビニル系重合体粒子の粒度の分布にばらつきが生じるという不都合がある。また、ビニル系重合体のかさ比重も十分に制御されていない。さらに、ビニル系重合体を懸濁重合した後の排水中に多くのPVAが残存し、排水処理のコストが増加するという不都合もある。
特開2003−238606号公報 特開2005−281680号公報 特開2007−63369号公報 特開2009−108218号公報
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、懸濁重合時の重合安定性に優れ、かさ比重が高いビニル系重合体を得ることができ、かつ重合後の排水中におけるPVAの残存量を低減できる懸濁重合用安定剤の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、ビニルアルコール系重合体(A)を含有する懸濁重合用安定剤であって、上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である懸濁重合用安定剤である。
当該懸濁重合用安定剤は、それに含まれるビニルアルコール系重合体(A)の上記割合(Mw(A)/Mn(A))及び上記ビニルアルコール系重合体(A)を特定の条件下でアルカリ処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の上記割合(Mw(B)/Mn(B))を上記範囲とすることで、懸濁重合時の重合安定性に優れ、かさ比重が高いビニル系重合体を得ることができ、かつ重合後の排水中におけるビニルアルコール系重合体の残存量を低減できる。
上記ビニルアルコール系重合体(A)が、単量体(a)の存在下でビニルエステル系単量体を重合後、けん化及び加熱処理することにより得られるものであり、上記単量体(a)が、不飽和二重結合を有するカルボン酸、不飽和二重結合を有するカルボン酸のアルキルエステル、不飽和二重結合を有するカルボン酸の酸無水物、不飽和二重結合を有するカルボン酸の塩、及び不飽和二重結合を有するシリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種であるとよい。上記ビニルアルコール系重合体(A)が、単量体(a)の存在下でビニルエステル系単量体を重合して得られたビニルエステル系重合体を用いて得られたものであることにより、ビニルアルコール系重合体(A)が単量体(a)に由来する親水性のカルボキシル基あるいはシリル基を有する。これによりビニルアルコール系重合体(A)を含む懸濁重合用安定剤の親水性が向上し、懸濁重合時の重合安定性に優れ、高いかさ比重を有するビニル系重合体が得られる。また、加熱処理により、このカルボキシル基あるいはシリル基とヒドロキシル基とがエステル結合し、全体として分岐構造を形成することができるため、当該懸濁重合用安定剤を用いて得られるビニル系重合体のかさ比重が向上し、かつ重合後の排水におけるビニルアルコール系重合体の残存量が低減すると考えられる。
また、当該懸濁重合用安定剤は水をさらに含有するとよい。このように水を含有することで、ビニルアルコール系重合体(A)が水中で分散又は溶解し、その結果当該懸濁重合用安定剤はビニル系単量体の重合をより容易かつ確実に行うことができる。
以上説明したように、本発明の懸濁重合用安定剤によれば、懸濁重合時の重合安定性に優れ、かさ比重が高いビニル系重合体を得ることができる。また、重合後の排水中におけるビニルアルコール系重合体の残存量を低減できる。従って、当該懸濁重合用安定剤によれば、高品質のビニル系重合体を低コストで得ることができる。
<懸濁重合用安定剤>
当該懸濁重合用安定剤は、ビニルアルコール単位(−CH−CHOH−)を含むビニルアルコール系重合体(A)(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある。)を含有する。また、水をさらに含有することが好ましく、本発明の効果を妨げない範囲でPVA(A)以外のPVA等のその他の成分を含有してもよい。当該懸濁重合用安定剤を用いることで、ビニル系単量体からビニル系重合体を得ることができる。
[PVA(A)]
PVA(A)は、数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下である。当該割合の下限としては、3.2が好ましく、3.4がより好ましく、3.6がさらに好ましく、また、当該割合の上限としては、6が好ましく、5がより好ましい。
PVA(B)は、上記PVA(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られる。この処理としては、JIS−K6726における平均重合度の欄に記載された完全けん化の方法を採用することができ、具体的には、以下のようにして得られる。すなわち、PVA(A)約10gを共通すり合わせ三角フラスコに量り採り、メタノール200mLを加えた後、12.5モル/L水酸化ナトリウム溶液を、PVA(A)のけん化度が97モル%以上の場合は3mL、PVA(A)のけん化度が97モル%未満の場合は10mL加えて、かき混ぜ、40℃の水浴中で1時間加熱し、次に、フェノールフタレインを指示薬として加え、アルカリ性反応を認めなくなるまでメタノールで洗浄して水酸化ナトリウムを除去し、最後に、時計皿に移しメタノールがなくなるまで105℃で1時間乾燥させる方法によって得ることができる。
上記PVA(B)は、数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である。上記割合の下限としては、2.1が好ましく、2.2がより好ましく、また、上記割合の上限としては、2.9が好ましく、2.8がより好ましい。
本発明の懸濁重合用安定剤に含まれる上記PVA(A)は、(Mw(A)/Mn(A))及び(Mw(B)/Mn(B))が上記範囲であることで、PVA(A)はPVA鎖が互いに結合して分岐構造を形成していると考えられる。そして、この分岐構造により、PVA(A)を含む懸濁重合用安定剤は、懸濁重合時の重合安定性に優れたものとなると考えられる。
なお、上記のPVA(A)及びPVA(B)における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリメタクリル酸メチル換算値として求めることができ、より具体的な方法としては、以下を採用することができる。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
移動相として使用されるヘキサフルオロイソプロパノールには、GPCカラム充填剤への試料の吸着を抑制するために、トリフルオロ酢酸ナトリウムなどの塩を添加するのが好ましい。塩の濃度としては、通常、1mmol/L〜100mmol/L、好ましくは5mmol/L〜50mmol/Lである。
PVA(B)の重量平均分子量(Mw)に対するPVA(A)の重量平均分子量(Mw)の割合(Mw(A)/Mw(B))は特に制限されないが、その下限としては、1.4が好ましく、1.5がより好ましい。一方、上記割合(Mw(A)/Mw(B))の上限としては、3.0が好ましく、2.5がより好ましい。上記割合(Mw(A)/Mw(B))が上記下限以上であることにより、当該懸濁重合用安定剤の懸濁重合時の重合安定性がより向上する。一方、上記割合(Mw(A)/Mw(B))が上記上限以下であることにより、得られるビニル系重合体のかさ比重がより向上し、重合排水におけるPVAの残存量がより低減する。
PVA(A)としては、ビニルエステル系重合体をけん化することにより得られるものを用いることができる。PVA(A)はビニルアルコール単位のみからなるものであってもよいが、単量体(a)に由来する単位をさらに含むことが好ましい。
ビニルエステル系重合体の製造に使用されるビニルエステル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。これらの中で、経済的観点から酢酸ビニルが好ましい。
上記単量体(a)は、不飽和二重結合を有するカルボン酸、そのカルボン酸のアルキルエステル、そのカルボン酸の酸無水物、そのカルボン酸の塩及び不飽和二重結合を有するシリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の単量体である。
上記の不飽和二重結合を有するカルボン酸、そのカルボン酸のアルキルエステル、そのカルボン酸の酸無水物及びそのカルボン酸の塩としては、例えば、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、無水マレイン酸、シトラコン酸、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラコン酸ジメチルエステル、シトラコン酸ジエチルエステル、無水シトラコン酸、フマル酸、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸ジメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、フマル酸ジエチルエステル、イタコン酸、イタコン酸モノメチルエステル、イタコン酸ジメチルエステル、イタコン酸モノエチルエステル、イタコン酸ジエチルエステル、無水イタコン酸、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
上記の不飽和二重結合を有するシリル化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン等の不飽和二重結合とトリアルコキシシリル基とを有する化合物などが挙げられる。
これらの単量体(a)の中でも、マレイン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、ビニルトリメトキシシランが好ましく、マレイン酸モノメチルエステル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、ビニルトリメトキシシランがより好ましい。
PVA(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率の下限としては、PVA(A)を構成する全単量体単位のモル数に基づき、0.02モル%が好ましく、0.05モル%がより好ましく、0.1モル%がさらに好ましい。一方、PVA(A)における上記単量体(a)に由来する単位の含有率の上限としては、PVA(A)を構成する全単量体単位のモル数に基づき、5モル%が好ましく、2モル%がより好ましく、1モル%がさらに好ましい。この含有率が上記下限以上であることにより、当該懸濁重合用安定剤の懸濁重合時の重合安定性がより向上する。一方、この含有率が上記上限以下であることにより、得られるビニル系重合体のかさ比重がより向上し、重合排水におけるPVAの残存量がより低減する。
単量体(a)に由来する単位の含有率は、PVA(A)の前駆体であるビニルエステル系重合体のH−NMRから求めることができる。例えば、単量体(a)としてマレイン酸モノメチルを用いた場合、上記含有率は以下の手順により求められる。すなわち、n−ヘキサン/アセトンでビニルエステル系重合体の再沈精製を3回以上十分に行った後、50℃の減圧下で乾燥を2日間行い、分析用のサンプルを作製する。このサンプルをCDClに溶解させ、500MHzのH−NMR(日本電子社の「GX−500」)を用い室温で測定する。ビニルエステル系重合体における、ビニルエステル単位のメチン構造に由来するピークα(4.7〜5.2ppm)と、単量体(a)に由来する単位のメチルエステル部分のメチル基に由来するピークβ(3.6〜3.8ppm)とから、下記式を用いて、単量体(a)に由来する単位の含有率Sを算出することができる。
S(モル%)={(βのプロトン数/3)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3))}×100
また、PVA(A)は本発明の趣旨を損なわない範囲で、ビニルアルコール単位及び単量体(a)に由来する単位以外の他の単量体に由来する単位を含んでいてもよい。上記他の単量体に由来する単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン等のα−オレフィン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパン等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリル等のアリル化合物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニルなどに由来する単位が挙げられる。PVA(A)における上記他の単量体に由来する単位の含有率は、PVA(A)を構成する全単量体単位のモル数に基づいて、例えば、15モル%以下とすることができる。
PVA(A)におけるビニルアルコール単位、単量体(a)に由来する単位及び上記他の単量体に由来する単位の配列順序に特に制限はなく、ランダム、ブロック、交互のいずれであってもよい。
PVA(A)の一次構造は、H−NMRにより定量することができる。H−NMR測定時の溶媒としては、CDClを用いればよい。
PVA(A)のけん化度(PVA(A)におけるヒドロキシル基とエステル結合との合計に対するヒドロキシル基のモル分率)は、JIS−K6726に準じて測定される。けん化度の下限としては、20モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましく、80モル%が特に好ましく、87モル%が最も好ましい。PVA(A)のけん化度が上記下限以上であることにより、当該懸濁重合用安定剤の懸濁重合時の重合安定性及び得られるビニル系重合体のかさ比重がより向上し、重合排水におけるPVAの残存量がより低減する。
PVA(A)の粘度平均重合度の上限としては、5,000が好ましく、4,000がより好ましい。一方、PVA(A)の粘度平均重合度の下限としては、100が好ましく、500がより好ましく、1,000がさらに好ましい。PVA(A)の粘度平均重合度が上記下限以上であることにより、当該懸濁重合用安定剤の懸濁重合時の重合安定性がより向上する。一方、PVA(A)の粘度平均重合度が上記上限以下であることにより、PVA(A)の生産性が向上する。そのため、より低コストでPVA(A)を製造することが可能となる。
PVA(A)の粘度平均重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVA(A)を完全にけん化し、精製した後、単量体(a)に由来する単位を含むPVA(A)については30℃の塩化ナトリウム水溶液(0.5モル/L)中で極限粘度[η](単位:デシリットル/g)を測定し、単量体(a)に由来する単位を含まないPVA(A)については30℃の水溶液中で極限粘度[η](単位:デシリットル/g)を測定する。この極限粘度[η]から次式によりPVA(A)の粘度平均重合度(P)が求められる。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
また、PVA(B)はPVA(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるものであるため、PVA(B)の粘度平均重合度は、PVA(A)の粘度平均重合度と実質的に同じ値となる。
当該懸濁用重合安定剤はPVA(A)に加え水を含有することが好ましい。また、当該懸濁重合用安定剤が含有してもよい他の成分としては、例えばPVA(A)以外のPVA、水溶性セルロースエーテル、水溶性ポリマー、油溶性乳化剤、水溶性乳化剤等の添加剤、溶媒などが挙げられる。
当該懸濁重合用安定剤は水を含有することで、上記PVA(A)の分散液又は溶液とすることができる。その結果、当該懸濁重合用安定剤はビニル系単量体の懸濁重合をより容易かつ確実に行うことができる。当該懸濁重合用安定剤がPVA(A)の分散液又は溶液である場合におけるPVA(A)の含有量の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。一方、上記PVA(A)の含有量の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。PVA(A)の含有量が上記上限を超えると、PVA(A)の分散又は溶解が不十分となるおそれがある。逆に、上記下限未満の場合、懸濁重合反応が十分に起こらなくなるおそれがある。
上記PVA(A)以外のPVAとしては、けん化度が70mol%以上98.5mol%未満、粘度平均重合度が500〜3500であるPVA、けん化度が20mol%以上60mol%未満、粘度平均重合度が200〜600であるPVA等が挙げられる。
上記水溶性セルロースエーテルとしては、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。上記水溶性ポリマーとしては、例えばゼラチン等が挙げられる。
上記油溶性乳化剤としては、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロックコポリマー等が挙げられる。上記水溶性乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウム等が挙げられる。
これらの添加剤の添加量については特に制限は無いが、ビニル系化合物100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
上記溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
<懸濁重合用安定剤の製造方法>
当該懸濁重合用安定剤の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ビニルエステル系単量体を含む単量体を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)、この重合工程により得られたビニルエステル系重合体をけん化する工程(以下、「けん化工程」ともいう)とを備える。また、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)をさらに備えることが好ましい。
[重合工程]
本工程では、ビニルエステル系単量体を含む単量体の重合を行い、ビニルエステル系重合体を合成する。ビニルエステル系単量体を含む単量体としては、ビニルエステル系単量体のみを含むものであっても、上記したように、ビニルエステル系単量体と、単量体(a)及び/又は上記他の単量体とを含むものであってもどちらでもよい。
ビニルエステル系単量体を含む単量体の重合方式としては、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよい。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知の任意の方法を採用することができる。これらの中で、無溶媒又はアルコール等の溶媒中で重合を進行させる塊状重合法又は溶液重合法が、通常採用される。高重合度のビニルエステル系重合体を得る場合には、乳化重合法の採用が選択肢の一つとなる。溶液重合法の溶媒は特に限定されないが、例えばアルコール等が挙げられる。溶液重合法の溶媒に使用されるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール等の低級アルコールである。溶媒は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。重合系における溶媒の使用量は、目的とするPVA(A)の重合度等に応じて溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよく、例えば溶媒がメタノールの場合、溶媒と重合系に含まれる全単量体との質量比{=(溶媒)/(全単量体)}にして0.01〜10の範囲、好ましくは0.05〜3の範囲から選択すればよい。
かかる重合に使用される重合開始剤としては、公知の重合開始剤、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等から重合方法に応じて適宜選択すればよい。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられる。過酸化物系開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシデカネート等のパーエステル化合物;過酸化アセチル;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等が挙げられる。上記開始剤に過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を組み合わせて開始剤としてもよい。レドックス系開始剤としては、例えば上記の過酸化物系開始剤と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤とを組み合わせたものが挙げられる。
重合開始剤の使用量は、重合触媒などにより異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて適宜選択すればよい。例えば重合開始剤に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル又は過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系単量体に対して0.01〜0.2モル%が好ましく、0.02〜0.15モル%がより好ましい。
重合工程における温度の下限としては、0℃が好ましく、30℃がより好ましい。重合温度の上限としては、200℃が好ましく、140℃がより好ましい。重合温度が上記下限以上であることにより、重合速度が向上する。一方、重合温度が上記上限以下であることにより、例えば単量体(a)を用いる場合においてもPVA(A)中の単量体(a)に由来する単位の含有率を適切な割合に保つことが容易になる。重合温度を上記範囲内に制御する方法としては、例えば、重合速度を制御することで、重合により生成する熱と反応器の表面からの放熱とのバランスをとる方法や、適当な熱媒を用いた外部ジャケットにより制御する方法等が挙げられるが、安全性の観点から後者の方法が好ましい。
上記重合は、本発明の趣旨を損なわない範囲で連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。連鎖移動剤としては、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;2−ヒドロキシエタンチオール等のメルカプタン類;トリクロロエチレン、パークロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;ホスフィン酸ナトリウム1水和物等のホスフィン酸塩類などが挙げられる。これらのうち、アルデヒド類及びケトン類が好ましい。重合系への連鎖移動剤の添加量としては、添加する連鎖移動剤の連鎖移動係数及び目的とするPVA(A)の重合度等に応じて決定することができ、一般にビニルエステル系単量体100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
なお、高温下で上記重合を行った場合、ビニルエステル系単量体の分解に起因するPVA(A)の着色等が見られることがある。この場合には、着色防止の目的で重合系に酒石酸のような酸化防止剤をビニルエステル系単量体に対して1〜100ppm程度添加するとよい。
[けん化工程]
本工程では、ビニルエステル系重合体をけん化する。この重合体をけん化することにより、重合体中のビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。
ビニルエステル系重合体のけん化に用いる反応としては、特に制限されないが、溶媒中に上記重合体が溶解した状態で行われる公知のアルコール分解反応又は加水分解反応を採用することができる。
けん化に使用する溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコール;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中で、メタノール、メタノールと酢酸メチルとの混合溶液が好ましい。
けん化に使用する触媒としては、例えばアルカリ金属の水酸化物(水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、ナトリウムアルコキシド(ナトリウムメトキシド等)等のアルカリ触媒;p−トルエンスルホン酸、鉱酸等の酸触媒などが挙げられる。これらの中で、水酸化ナトリウムを使用すると簡便であるため好ましい。
けん化を行う温度としては、特に限定されないが、20℃〜60℃が好ましい。けん化の進行に従ってゲル状の生成物が析出してくる場合には、生成物を粉砕し、さらにけん化を進行させるのがよい。その後、得られた溶液を中和することで、けん化を終了させ、洗浄、乾燥して、PVAを得ることができる。けん化方法としては、上述した方法に限らず、公知の方法を採用できる。
[加熱工程]
本工程では、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する。具体的には、けん化工程と同時に加熱することによりビニルエステル系重合体を加熱するか、けん化工程終了後に得られたPVAを加熱する。この加熱により分岐構造が形成されたPVA(A)を容易に得ることができ、当該懸濁重合用安定剤の懸濁重合時の重合安定性、得られるビニル系重合体のかさ比重がより向上し、重合排水におけるPVAの残存量がより低減する。加熱処理は、空気または窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、加熱工程はけん化後のPVAに対して行われることが好ましい。
加熱工程における加熱温度の下限としては、70℃が好ましく、90℃がより好ましい。上記加熱温度の上限としては、150℃が好ましく、130℃がより好ましい。加熱工程における加熱時間の下限としては、30分が好ましく、1時間がより好ましく、2時間がさらに好ましい。上記加熱時間の上限としては、10時間が好ましく、7時間がより好ましく、5時間がさらに好ましい。加熱温度及び加熱時間を上記範囲内とすることで、本発明の規定を満たすPVA(A)を容易に得ることができ、当該懸濁重合用安定剤の懸濁重合時の重合安定性、得られるビニル系重合体のかさ比重がさらに向上し、重合排水におけるPVAの残存量がさらに低減する。
上記の製造方法により得られたPVA(A)及び任意成分を適宜混合することにより当該懸濁重合用安定剤を製造することができる。
<ビニル系重合体>
ビニル系重合体は、ビニル系単量体を懸濁重合することにより得ることができる。また、ビニル系単量体以外の単量体をさらに共重合させてもよい。この懸濁重合には当該懸濁重合用安定剤を好適に用いることができる。当該懸濁重合用安定剤の使用量は特に限定されないが、ビニル系単量体100質量部に対し0.008質量部以上0.025質量部以下が好ましい。
上記ビニル系単量体としては、例えば塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸塩、メタクリル酸塩;マレイン酸、フマル酸、マレイン酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸塩、フマル酸塩;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
ビニル系単量体以外の単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
これらの中で、塩化ビニルを用いることが好ましく、塩化ビニルを単独で重合することがより好ましい。
上記懸濁重合に用いる重合開始剤としては、従来から塩化ビニル単量体等の重合に使用されているものを用いることができる。この重合開始剤としては、油溶性または水溶性の重合開始剤が挙げられる。重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
上記油溶性の重合開始剤としては、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、α−クミルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。
上記水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
上記懸濁重合の際の温度としては、20℃程度の低温としてもよく、90℃を超える高温としてもよい。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、リフラックスコンデンサー付の重合器を用いることも好ましい実施態様の一つである。
また、懸濁重合の際、当該懸濁重合用安定剤に加え、懸濁重合において通常使用される他の添加剤を添加してもよい。この添加剤としては、上述の当該懸濁重合用安定剤が含有してもよいその他の添加剤として例示したものと同様の添加剤等が挙げられる。これらの添加剤の添加量については特に制限は無いが、ビニル系化合物100質量部に対して0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましい。
以下、実施例及び比較例により、本発明を詳細に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において「部」及び「%」は、特に断りのない限り質量を基準とする。
下記実施例及び比較例のPVAの物性値について、以下の方法に従って測定した。
[重合度]
各実施例又は比較例において、PVA(A)の粘度平均重合度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
[けん化度]
各PVA(A)のけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
[変性率]
各PVAの変性率(PVA(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率)は、PVA(A)の前駆体であるビニルエステル系重合体を用いて、上述のH−NMRを用
いた方法により求めた。
[PVA(B)の調製]
PVA(A)約10gを共通すり合わせ三角フラスコに量り採り、メタノール200mLを加えた後、12.5モル/L水酸化ナトリウム溶液を10mL加えて、かき混ぜ、40℃の水浴中で1時間加熱した。次に、フェノールフタレインを指示薬として加え、アルカリ性反応を認めなくなるまでメタノールで洗浄して水酸化ナトリウムを除去した。最後に、時計皿に移しメタノールがなくなるまで105℃で1時間乾燥させてPVA(B)を調製した。
[PVA(A)及びPVA(B)における数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(M
w)]
ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリメタクリル酸メチル換算値として求めた。具体的には、以下の条件を採用した。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール(トリフルオロ酢酸ナトリウムを20mmo
l/Lの濃度で含有)
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
[合成例1](PVA−1の製造)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル740部及びメタノール260部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また単量体(a)としてマレイン酸モノメチルを選択し、マレイン酸モノメチルのメタノール溶液(濃度20%)を窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部を添加し重合を開始した。上記反応器に、上記マレイン酸モノメチルのメタノール溶液を滴下して重合溶液中の単量体組成比を一定に保ちながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止までに加えた単量体(a)の総量は0.9部であり、重合停止時の固形分濃度は33.3%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の単量体の除去を行い、ビニルエステル系重合体のメタノール溶液(濃度35%)を得た。次に、このメタノール溶液にさらにメタノールを加えて調製したビニルエステル系重合体のメタノール溶液790.8部(溶液中の上記重合体200.0部)に、水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液9.2部を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の上記重合体濃度25%、上記重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.01)。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加後約15分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500部を加え残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。この白色固体にメタノール2,000部を加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機にて120℃で4.5時間加熱処理してPVA(A)(PVA−1)を得た。PVA−1の物性を表2に示す。
[合成例2〜17](PVA−2〜PVA−17の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用する単量体(a)の種類や添加量等の重合条件;けん化時におけるビニルエステル系重合体の濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件;並びに加熱処理条件を表1に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様の方法により各種のPVA(A)を製造した。各PVA(A)及びそれから得られるPVA(B)の物性を表2に示す。なお、合成例13においては、PVA−13a及びPVA−13bの2種のPVA(A)を製造したのち、PVA−13aを45部に対しPVA−13bを55部となるように2種のPVA(A)を混合した。
Figure 2015196700
Figure 2015196700
[実施例1]
(懸濁重合用安定剤の調製)
PVA−1 0.188質量部及びPVA−L−10(クラレ社、けん化度が72.5モル%、4%水溶液の粘度が6mPa・s)0.564質量部を脱イオン水60質量部に溶解させ、懸濁重合用安定剤を調製した。
(塩化ビニル重合体の製造)
5Lのオートクレーブに上記懸濁重合用安定剤、クミルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液0.65部及びt−ブチルパーオキシネオドデカネートの70%トルエン溶液1.05部を仕込み、オートクレーブ内の圧力が0.0067MPaとなるまで脱気し酸素を除いた後、塩化ビニル単量体940部を添加した。塩化ビニル単量体に対するPVA−1の含有量は200ppmであり、塩化ビニル単量体に対するPVA−L−10の含有量は600ppmであった。次いで、オートクレーブの内容物が57℃となるように昇温し、撹拌下で塩化ビニル単量体の重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.80MPaであった。重合を開始してから3.5時間経過後、オートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を除去し、重合反応物を取り出した。この重合反応物を65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体を得た。
[実施例2〜10及び比較例1〜9]
上記用いたPVA(A)の種類及び添加量を表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル重合体を製造した。なお、比較例2及び比較例4においては、PVA−10及びPVA−12が脱イオン水に完溶せず、塩化ビニル重合体を得ることができなかった。
<評価>
実施例及び比較例の塩化ポリ酢酸ビニル重合体について、粒度分布、かさ比重及び重合排水中の残存PVA量の程度を以下の方法に従い評価した。評価結果を表3に示す。
[粒度分布]
粒度分布は、塩化ビニル重合体をJIS−Z8801−1の公称目開き幅250μmのふるいにかけ、ふるい上に残存したものの割合を求め、以下の基準により評価した。なお、ふるい上の残存物の量が少ないほど粗大粒子が少なく粒度分布がシャープであり、懸濁重合時の重合安定性に優れていることを示している。
A:5質量%未満
B:5質量%以上10質量%未満
C:10質量%以上
[かさ比重]
かさ比重は、JIS−K6720−2に従い測定し、以下の基準で判断した。
A:0.54g/mL以上
B:0.48g/mL以上0.54g/mL未満
C:0.48g/mL未満
[重合排水中の残存PVA]
重合排水中の残存PVAは、上記重合反応物を取り出した後の重合排水を肉眼で観察し、発泡の度合いにより以下の基準で判断した。なお、発泡の度合いが小さいほど、重合排水中の残存PVAが少ないことを示す。
A:発泡していない。
B:わずかに発泡している。
C:発泡している。
Figure 2015196700
表3に示されるように、実施例1〜10の懸濁重合用安定剤によれば、懸濁重合時の重合安定性に優れ及びかさ比重が高い塩化ビニル重合体が得られた。さらに、重合排水中の残存PVAの量も低減されていた。特に、実施例9及び10の懸濁重合用安定剤では、少ない使用量で高い効果を得ることができ、塩化ビニル重合体の製造コストをより低減できた。
一方、比較例1〜9の懸濁重合用安定剤では、懸濁重合時の重合安定性、かさ比重及び残存PVAの全てを十分に満足できなかった。特に比較例2及び4におけるPVAは、懸濁重合用安定剤として用いることができないものであった。
本発明の懸濁重合用安定剤によれば、懸濁重合時の重合安定性に優れ、かさ比重が高いビニル系重合体を得ることができる。また、重合後の排水中におけるビニルアルコール系重合体の残存量を低減できる。従って、当該懸濁重合用安定剤によれば、高品質のビニル系重合体を低コストで得ることができる。

Claims (3)

  1. ビニルアルコール系重合体(A)を含有する懸濁重合用安定剤であって、
    上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、
    上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である懸濁重合用安定剤。
  2. 上記ビニルアルコール系重合体(A)が、単量体(a)の存在下でビニルエステル系単量体を重合後、けん化及び加熱処理することにより得られるものであり、
    上記単量体(a)が、不飽和二重結合を有するカルボン酸、不飽和二重結合を有するカルボン酸のアルキルエステル、不飽和二重結合を有するカルボン酸の酸無水物、不飽和二重結合を有するカルボン酸の塩、及び不飽和二重結合を有するシリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の懸濁重合用安定剤。
  3. 水をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載の懸濁重合用安定剤。
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