JP2015196700A - 懸濁重合用安定剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、ビニルアルコール系重合体(A)を含有する懸濁重合用安定剤であって、上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である懸濁重合用安定剤である。
【選択図】なし
Description
当該懸濁重合用安定剤は、ビニルアルコール単位(−CH2−CHOH−)を含むビニルアルコール系重合体(A)(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある。)を含有する。また、水をさらに含有することが好ましく、本発明の効果を妨げない範囲でPVA(A)以外のPVA等のその他の成分を含有してもよい。当該懸濁重合用安定剤を用いることで、ビニル系単量体からビニル系重合体を得ることができる。
PVA(A)は、数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下である。当該割合の下限としては、3.2が好ましく、3.4がより好ましく、3.6がさらに好ましく、また、当該割合の上限としては、6が好ましく、5がより好ましい。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
S(モル%)={(βのプロトン数/3)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3))}×100
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
当該懸濁重合用安定剤の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、ビニルエステル系単量体を含む単量体を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)、この重合工程により得られたビニルエステル系重合体をけん化する工程(以下、「けん化工程」ともいう)とを備える。また、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)をさらに備えることが好ましい。
本工程では、ビニルエステル系単量体を含む単量体の重合を行い、ビニルエステル系重合体を合成する。ビニルエステル系単量体を含む単量体としては、ビニルエステル系単量体のみを含むものであっても、上記したように、ビニルエステル系単量体と、単量体(a)及び/又は上記他の単量体とを含むものであってもどちらでもよい。
重合開始剤の使用量は、重合触媒などにより異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて適宜選択すればよい。例えば重合開始剤に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル又は過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系単量体に対して0.01〜0.2モル%が好ましく、0.02〜0.15モル%がより好ましい。
本工程では、ビニルエステル系重合体をけん化する。この重合体をけん化することにより、重合体中のビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。
本工程では、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する。具体的には、けん化工程と同時に加熱することによりビニルエステル系重合体を加熱するか、けん化工程終了後に得られたPVAを加熱する。この加熱により分岐構造が形成されたPVA(A)を容易に得ることができ、当該懸濁重合用安定剤の懸濁重合時の重合安定性、得られるビニル系重合体のかさ比重がより向上し、重合排水におけるPVAの残存量がより低減する。加熱処理は、空気または窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、加熱工程はけん化後のPVAに対して行われることが好ましい。
ビニル系重合体は、ビニル系単量体を懸濁重合することにより得ることができる。また、ビニル系単量体以外の単量体をさらに共重合させてもよい。この懸濁重合には当該懸濁重合用安定剤を好適に用いることができる。当該懸濁重合用安定剤の使用量は特に限定されないが、ビニル系単量体100質量部に対し0.008質量部以上0.025質量部以下が好ましい。
各実施例又は比較例において、PVA(A)の粘度平均重合度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
各PVA(A)のけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
各PVAの変性率(PVA(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率)は、PVA(A)の前駆体であるビニルエステル系重合体を用いて、上述の1H−NMRを用
いた方法により求めた。
PVA(A)約10gを共通すり合わせ三角フラスコに量り採り、メタノール200mLを加えた後、12.5モル/L水酸化ナトリウム溶液を10mL加えて、かき混ぜ、40℃の水浴中で1時間加熱した。次に、フェノールフタレインを指示薬として加え、アルカリ性反応を認めなくなるまでメタノールで洗浄して水酸化ナトリウムを除去した。最後に、時計皿に移しメタノールがなくなるまで105℃で1時間乾燥させてPVA(B)を調製した。
w)]
ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリメタクリル酸メチル換算値として求めた。具体的には、以下の条件を採用した。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール(トリフルオロ酢酸ナトリウムを20mmo
l/Lの濃度で含有)
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル740部及びメタノール260部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また単量体(a)としてマレイン酸モノメチルを選択し、マレイン酸モノメチルのメタノール溶液(濃度20%)を窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部を添加し重合を開始した。上記反応器に、上記マレイン酸モノメチルのメタノール溶液を滴下して重合溶液中の単量体組成比を一定に保ちながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止までに加えた単量体(a)の総量は0.9部であり、重合停止時の固形分濃度は33.3%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の単量体の除去を行い、ビニルエステル系重合体のメタノール溶液(濃度35%)を得た。次に、このメタノール溶液にさらにメタノールを加えて調製したビニルエステル系重合体のメタノール溶液790.8部(溶液中の上記重合体200.0部)に、水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液9.2部を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の上記重合体濃度25%、上記重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.01)。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加後約15分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500部を加え残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。この白色固体にメタノール2,000部を加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機にて120℃で4.5時間加熱処理してPVA(A)(PVA−1)を得た。PVA−1の物性を表2に示す。
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用する単量体(a)の種類や添加量等の重合条件;けん化時におけるビニルエステル系重合体の濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件;並びに加熱処理条件を表1に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様の方法により各種のPVA(A)を製造した。各PVA(A)及びそれから得られるPVA(B)の物性を表2に示す。なお、合成例13においては、PVA−13a及びPVA−13bの2種のPVA(A)を製造したのち、PVA−13aを45部に対しPVA−13bを55部となるように2種のPVA(A)を混合した。
(懸濁重合用安定剤の調製)
PVA−1 0.188質量部及びPVA−L−10(クラレ社、けん化度が72.5モル%、4%水溶液の粘度が6mPa・s)0.564質量部を脱イオン水60質量部に溶解させ、懸濁重合用安定剤を調製した。
5Lのオートクレーブに上記懸濁重合用安定剤、クミルパーオキシネオデカノエートの70%トルエン溶液0.65部及びt−ブチルパーオキシネオドデカネートの70%トルエン溶液1.05部を仕込み、オートクレーブ内の圧力が0.0067MPaとなるまで脱気し酸素を除いた後、塩化ビニル単量体940部を添加した。塩化ビニル単量体に対するPVA−1の含有量は200ppmであり、塩化ビニル単量体に対するPVA−L−10の含有量は600ppmであった。次いで、オートクレーブの内容物が57℃となるように昇温し、撹拌下で塩化ビニル単量体の重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.80MPaであった。重合を開始してから3.5時間経過後、オートクレーブ内の圧力が0.70MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を除去し、重合反応物を取り出した。この重合反応物を65℃にて16時間乾燥を行い、塩化ビニル重合体を得た。
上記用いたPVA(A)の種類及び添加量を表3に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして塩化ビニル重合体を製造した。なお、比較例2及び比較例4においては、PVA−10及びPVA−12が脱イオン水に完溶せず、塩化ビニル重合体を得ることができなかった。
実施例及び比較例の塩化ポリ酢酸ビニル重合体について、粒度分布、かさ比重及び重合排水中の残存PVA量の程度を以下の方法に従い評価した。評価結果を表3に示す。
粒度分布は、塩化ビニル重合体をJIS−Z8801−1の公称目開き幅250μmのふるいにかけ、ふるい上に残存したものの割合を求め、以下の基準により評価した。なお、ふるい上の残存物の量が少ないほど粗大粒子が少なく粒度分布がシャープであり、懸濁重合時の重合安定性に優れていることを示している。
A:5質量%未満
B:5質量%以上10質量%未満
C:10質量%以上
かさ比重は、JIS−K6720−2に従い測定し、以下の基準で判断した。
A:0.54g/mL以上
B:0.48g/mL以上0.54g/mL未満
C:0.48g/mL未満
重合排水中の残存PVAは、上記重合反応物を取り出した後の重合排水を肉眼で観察し、発泡の度合いにより以下の基準で判断した。なお、発泡の度合いが小さいほど、重合排水中の残存PVAが少ないことを示す。
A:発泡していない。
B:わずかに発泡している。
C:発泡している。
Claims (3)
- ビニルアルコール系重合体(A)を含有する懸濁重合用安定剤であって、
上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、
上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満である懸濁重合用安定剤。 - 上記ビニルアルコール系重合体(A)が、単量体(a)の存在下でビニルエステル系単量体を重合後、けん化及び加熱処理することにより得られるものであり、
上記単量体(a)が、不飽和二重結合を有するカルボン酸、不飽和二重結合を有するカルボン酸のアルキルエステル、不飽和二重結合を有するカルボン酸の酸無水物、不飽和二重結合を有するカルボン酸の塩、及び不飽和二重結合を有するシリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の懸濁重合用安定剤。 - 水をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載の懸濁重合用安定剤。
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