以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る音発生器である振動スピーカの外観斜視図である。本実施の形態に係る音発生器は振動スピーカ10として機能し、圧電振動部60a及び圧電振動部60bと、弾性部材70とを有する。後述するように、振動スピーカ10は、圧電振動部60a及び圧電振動部60bに荷重を与える錘(音発生器の錘)として作用するものである。振動スピーカ10は、外観形状が概略長方形状を成す筐体20を備える。圧電振動部60a及び圧電振動部60bと、弾性部材70とは、筺体20の一面である振動スピーカ10の底面20aに形成されている。
本実施の形態に係る音発生器は、振動スピーカ10の筐体20の一方の長辺の底面20a側に、音発生器用の圧電振動部60a及び圧電振動部60bと、シート状の弾性部材70とを備える。弾性部材70は、例えばゴム、シリコーン、ポリウレタン等から成る。振動スピーカ10は、底面20a側を下方にして机等の水平な載置面上に載置された際に、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び弾性部材70によって載置面上に3点で支持される。圧電振動部60a、圧電振動部60b及び弾性部材70の配置については、後に詳述する。
図2は、図1の振動スピーカの圧電振動部60aの概略斜視図である。なお、図2では、圧電振動部60aの構成を示すが、圧電振動部60bの構成も同様である。本実施の形態に係る振動スピーカ10は、筐体20の底面側に、圧電振動部60a及び圧電振動部60bを収納保持する保持部を備える。保持部は、筐体20の長手方向に沿って延在する。
すなわち、本実施の形態に係る振動スピーカ10では、圧電振動部60a及び圧電振動部60bは、図3に示されるように、筐体20の底面20a側で、圧電振動部60a及び圧電振動部60bを構成する圧電素子の伸縮方向に垂直な仮想平面T上に配置されている。図3は、図1の振動スピーカの概略断面図である。
圧電振動部60aは、圧電素子610aと、防水用のOリング62と、被覆部材である絶縁性のキャップ63とを備える。圧電素子610aは、電気信号(電圧)を印加することで、構成材料の電気機械結合係数に従い伸縮または屈曲する素子である。これらの素子は、例えばセラミックや水晶からなるものが用いられる。圧電素子610aは、ユニモルフ、バイモルフまたは積層型圧電素子であってよい。積層型圧電素子には、バイモルフを積層した(例えば16層または24層積層した)積層型バイモルフ素子や、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる複数の誘電体層と、該複数の誘電体層間に配置された電極層との積層構造体から構成されるスタックタイプのものがある。ユニモルフは電気信号が印加されると伸縮し、バイモルフは電気信号が印加されると屈曲し、スタックタイプの積層型圧電素子は電気信号が印加されると積層方向に沿って伸縮する。
本実施の形態では、圧電素子610aがスタックタイプの積層型圧電素子からなる。積層型圧電素子610aは、例えば、図4(a)及び(b)に拡大した断面図及び平面図を示すように、例えばPZT等のセラミックスからなる誘電体61aと、断面櫛歯状の内部電極61bとが交互に積層されて構成される。内部電極61bは、第1側面電極61cと接続されるものと、第2側面電極61dに接続されるものとが交互に積層されて、それぞれ第1側面電極61c又は第2側面電極61dに電気的に接続される。
図4(a)及び(b)に示した積層型圧電素子610aは、一方の端面に、第1側面電極61cに電気的に接続された第1リード接続部61eと、第2側面電極61dに電気的に接続された第2リード接続部61fとが形成されている。第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fには、それぞれ第1リード線61g及び第2リード線61hが接続される。また、第1側面電極61c、第2側面電極61d、第1リード接続部61e、及び第2リード接続部61fは、第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fに、それぞれ第1リード線61g及び第2リード線61hが接続された状態で、絶縁層61iで覆われている。
積層型圧電素子610aは、積層方向の長さが例えば5mm〜120mmである。また、積層型圧電素子610aの積層方向と直交する方向の断面形状は、例えば2mm角〜10mm角の略正方形状や、正方形状以外の任意の形状とすることができる。なお、積層型圧電素子610aの積層数や断面積は、錘となる振動スピーカ10の重量(携帯電子機器の場合は、例えば80g〜800g)に応じて、圧電振動部60aが接触する机等の接触面から発生する音の音圧あるいは音質が十分確保できるように、適宜決定される。
積層型圧電素子610aには、後述する圧電素子駆動部120を介して、制御部130から音信号(再生音信号)が供給される。換言すれば、積層型圧電素子610aには、圧電素子駆動部120を介して、制御部130から音信号に応じた電圧が印加される。制御部130から印加される電圧が交流電圧の場合には、第1側面電極61cに正の電圧が印加されるときには、第2側面電極61dには負の電圧が印加される。反対に、第1側面電極61cに負の電圧が印加されるときには、第2側面電極61dには正の電圧が印加される。第1側面電極61c及び第2側面電極61dに電圧が印加されると、誘電体61aに分極が起こり、積層型圧電素子610aは電圧が印加されない状態から伸縮する。積層型圧電素子610aの伸縮の方向は、誘電体61aと内部電極61bの積層方向にほぼ沿っている。あるいは、積層型圧電素子610aの伸縮方向は、誘電体61aと内部電極61bの積層方向とほぼ一致している。積層型圧電素子610aは、積層方向にほぼ沿って伸縮するため、伸縮方向の振動伝達効率がよいという利点がある。
このような積層型圧電素子610aは、従来より自動車の燃料噴射制御等に用いられていた。本発明者は、このような積層型圧電素子610aが、音発生器が机等に接触する接触面から音響を発生させるための振動素子として十分有効に動作することを、今回実験により確認した。
なお、図4(a)及び(b)において、第1側面電極61c及び第2側面電極61dは、内部電極61bに交互に接続され、かつ第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fにそれぞれ接続されたスルーホールとすることもできる。また、図4(a)及び(b)において、第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fは、図5に示すように、積層型圧電素子610aの一端部において第1側面電極61c及び第2側面電極61dに形成してもよい。図5は、本発明に係る音発生器に適用できる積層型圧電素子の変形例の概略図である。
また、積層型圧電素子610aは、図6に部分拡大断面図を示すように、第1リード接続部61e及び第2リード接続部61fを有する一端部側面が、筐体20の保持部100のスリット101に接着剤102(例えば、エポキシ樹脂)を介して固定される。また、積層型圧電素子610aの他端部には、キャップ63が挿入されて、接着剤102により固定される。
キャップ63は、積層型圧電素子610aによる伸縮振動を、机等の載置面(接触面)に確実に伝達できる材質、例えば硬質プラスチック等により形成される。なお、載置面の傷つきを抑制したい場合には、キャップ63は、硬質プラスチックではなく、比較的軟らかいプラスチックであっても良い。キャップ63には、積層型圧電素子610aに装着された状態で、スリット101内に位置する進入部と、筐体20から突出する突出部とが形成されており、スリット101内に位置する進入部の外周に防水用のOリング62が配置される。Oリング62は、例えばシリコーンによって形成される。Oリング62によって、スリット101の内部に水又は塵が侵入しにくくなる。また、突出部は、先端部が半球形状に形成されている。なお、突出部の先端部は、半球形状に限らず、机等の載置面(接触面)に確実に点接触又は面接触して、積層型圧電素子610aによる伸縮振動を伝達できる形状であれば任意の形状とすることができる。また、図6において、Oリング62と、積層型圧電素子610aのスリット101への接着部との間の隙間に、ゲル等を充填して防水効果をより高めることもできる。圧電振動部60aは、保持部100に装着され、筐体20にバッテリリッドが装着された状態で、キャップ63の突出部が筐体20の底面20aから突出する。また、キャップ63の突出部63bは、筐体20の底面20aと対向する面である対向面63cを有する。図6に示すように、積層型圧電素子610aに電圧が印加されておらず積層型圧電素子610aが伸縮しない状態で、対向面63cは、底面20aから長さdだけ離間している。
図7は、本実施の形態に係る振動スピーカ10の要部の機能ブロック図である。振動スピーカ10は、ユーザによる指などの接触位置を静電容量の変化などにより検知するパネル30、再生指示などの操作を入力する入力部40、画像や動作状態などを表示する表示部50及び積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bの他に、無線通信部110、圧電素子駆動部120、制御部130、メモリ140、検出スイッチ170及び拡声スピーカ160を備える。パネル30、入力部40、表示部50、無線通信部110、圧電素子駆動部120、メモリ140、検出スイッチ170及び拡声スピーカ160は、制御部130に接続される。積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bは、圧電素子駆動部120を介して制御部130に接続される。上記パネル30と表示部50とは一体となって、タッチパネルを構成する。
無線通信部110は、公知の構成からなり、近距離の離無線通信規格や赤外線等を介して他の端末や通信ネットワークに無線接続される。制御部130は、振動スピーカ10の全体の動作を制御するプロセッサである。制御部130は、圧電素子駆動部120を介して積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bに再生音信号(通話相手の音声または着信メロディもしくは音楽を含む楽曲等の再生音信号に応じた電圧)を印加する。なお、再生音信号は、内部メモリに記憶された音楽データに基づくものでもよいし、外部サーバ等に記憶されている音楽データがネットワークを介して再生されるものであってもよい。
圧電素子駆動部120は、例えば図8に示すように、信号処理回路121、昇圧回路122及びローパスフィルタ(LPF)123を備える。信号処理回路121は、例えばイコライザやA/D変換回路等を有するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)等で構成され、制御回路130からのデジタル信号に対して、イコライジング処理やD/A変換処理等の所要の信号処理を行って、アナログの再生音信号を生成し、昇圧回路122に出力する。なお、信号処理回路121の機能は、制御回路130に内蔵させてもよい。
メモリ140は、制御部130で利用される各種プログラムやデータなどを格納する。検出スイッチ170は、たとえば照度センサや、赤外線センサや、メカニカルスイッチなどで構成され、振動スピーカ10が机、テーブルなどの載置面におかれたことを検知して、その出力を制御部130に出力する。制御部130は、検出スイッチ170の検出結果に基づいて、たとえば積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bの動作のオンオフを制御する。拡声スピーカ160は、制御部130の制御により、音声を出力するスピーカである。
昇圧回路122は、入力されたアナログの再生音信号の電圧を昇圧して、LPF123を介して積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bに印加する。ここで、昇圧回路122により積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bに印加する再生音信号の最大電圧は、例えば1Vpp〜500Vppとすることができるが、かかる範囲に限定されず、振動スピーカ10の重量や積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bの性能に応じて適宜調整可能である。なお、積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bに印加される再生音信号は、直流電圧がバイアスされてもよく、そのバイアス電圧を中心に最大電圧が設定されてもよい。
また、積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bに限らず、圧電素子は、一般に高周波ほど電力損失が大きいため、LPF123は、10kHz〜50kHz程度以上の周波数成分の少なくとも一部を減衰又はカットする周波数特性、あるいは漸次に又は段階的に減衰率が高くなる周波数特性を有するように設定される。図9は、一例として、カットオフ周波数を約20kHzとした場合のLPF123の周波数特性を示す。このように高周波成分を減衰又はカットすることにより、消費電力を抑制できると共に、積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bの発熱を抑制することができる。
また、拡声スピーカ160は、制御部130の制御により駆動され、再生音信号が入力されて音声を発生する。この音声信号は、積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bに印加される再生音信号と同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。また、拡声スピーカ160は、積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bに再生音信号が印加された際に同時に音再生信号が印加され、積層型圧電素子610a及び積層型圧電素子610bと同時に駆動されるとしても良い。
次に、図10を用いて、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び弾性部材70の配置について説明する。図10は、振動スピーカ10が、底面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置された様子を示す。ここで、机は、本発明の被接触部材の一例であり、載置面150は、音発生器が接触する接触面(載置面)の一例である。図10に示すように、振動スピーカ10は、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び弾性部材70によって載置面150上に2点で支持される。点Gは、振動スピーカ10の重心である。すなわち、点Gは、音発生器の錘の重心である。なお、図10では、簡単のため、圧電振動部60bは不図示としているが以下の説明は、圧電振動部60bについても同様にあてはまる。
図10において、弾性部材70は、最下端部701を有する。最下端部701は、弾性部材70のうち、振動スピーカ10が底面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたとき載置面150と当接する箇所である。
圧電振動部60aは、最下端部601を有する。最下端部601は、圧電振動部60aのうち、振動スピーカ10が底面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたとき載置面150と当接する箇所である。最下端部601は、例えばキャップ63の先端部である。
振動スピーカ10は、最下端部101を有する。最下端部101は、振動スピーカ10のうち、振動スピーカ10が底面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたときに、圧電振動部60aが存在しないと仮定した場合に載置面150と当接する箇所である。振動スピーカ10の最下端部101は、例えば筐体20の角部であるが、これに限られない。底面20aに、底面20aから突出する突出部が設けられている場合には、その突出部が振動スピーカ10の最下端部101となってもよい。突出部は、例えばサイドキー又はコネクタキャップ等である。
図10において、点線Lは、振動スピーカ10が底面20a側を下方にして机等の水平な載置面150上に載置されたとき、振動スピーカ10の重心Gを通り載置面150に垂直な線(仮想の線)である。また、一点鎖線Iは、圧電振動部60aが存在しないと仮定した場合に、弾性部材70の最下端部701と振動スピーカ10の最下端部101とを結ぶ線(仮想の線)である。
図10において、領域R1は、振動スピーカ10において点線Lによって区切られる一方側の領域である。また、領域R2は、振動スピーカ10において点線Lによって区切られる他方側の領域である。弾性部材70は、底面20aにおいて、領域R1側に設けられる。また、圧電振動部60aは、底面20aにおいて、領域R2側に設けられる。
圧電振動部60aは、底面20aの領域R2側において、点線Lにできるだけ近い位置に設けられることが好ましい。これにより、圧電振動部60aにかかる荷重が、圧電振動部60aが底面20aの領域R2側において点線Lから離間した位置に設けられる場合に比べて、大きくなる。これにより、振動スピーカ10を音発生器の錘として有効に活用することができる。
弾性部材70は、底面20aの領域R1側において、点線Lからできるだけ遠い位置に設けられることが好ましい。これにより、圧電振動部60aを点線Lにできるだけ近い位置に設けた場合にも、弾性部材70と圧電振動部60aとの間の距離が十分確保され、音発生器を安定して載置面150に載置することができる。
圧電振動部60aの最下端部601は、積層型圧電素子610aに電圧が印加されず積層型圧電素子610aが伸縮しない状態から最も伸びたとき或いは積層型圧電素子610aの最大振幅時に、一点鎖線Iよりも載置面150側に位置するとよい。すなわち、最下端部601は、積層型圧電素子610aに電圧が印加されず積層型圧電素子610aが伸縮しない状態から最も伸びたとき或いは積層型圧電素子610aの最大振幅時に、一点鎖線Iよりも載置面150側に突出しているとよい。これにより、圧電振動部60aにより載置面150を適切に振動させることができる。
また、圧電振動部60aの最下端部601は、積層型圧電素子610aに電圧が印加されず積層型圧電素子610aが伸縮しない状態から積層型圧電素子610aが最も縮んだとき或いは積層型圧電素子610aの最小振幅時に、一点鎖線Iよりも載置面150側に位置するとよい。すなわち、最下端部601は、積層型圧電素子610aに電圧が印加されず積層型圧電素子610aが伸縮しない状態から積層型圧電素子610aが最も縮んだとき積層型圧電素子610aの最小振幅時に、一点鎖線Iよりも載置面150側に突出しているとよい。これにより、振動スピーカ10の最下端部101が載置面150に接触しにくくなり、例えば、筐体20の塗装の種類によっては、塗装が剥がれにくくなる。また、最下端部101と載置面150との間で異音が発生しにくくなる。
なお、振動スピーカ10は、例えば筐体20に市販のスタンド等が取り付けられて、底面20a側を下方にして机等の載置面上に立てられてもよい。この場合、振動スピーカ10は、底面20aが圧電振動部60a及び弾性部材70により2点支持され、さらに、スタンドによって支持される。
図11(a)、(b)及び(c)は、本実施の形態に係る振動スピーカ10による音発生器としての動作を説明するための概略図である。なお、以下の説明では圧電振動部60aを例に説明するが、圧電振動部60bにも同様の説明があてはまる。振動スピーカ10を音発生器として機能させる場合、振動スピーカ10は、図11(a)に示すように、筐体20の底面20a側を下方にして、圧電振動部60aのキャップ63及び弾性部材70が机等の載置面(接触面)150に接触するように横置きに立てて載置される。これにより、圧電振動部60aには、振動スピーカ10の重量が荷重として与えられる。つまり、振動スピーカ10は、本発明に係る音発生器の錘として作用する。なお、図11(a)に示す状態では、積層型圧電素子610aは、電圧が印加されていないため、伸縮しない。
その状態で、圧電振動部60aの積層型圧電素子610aが再生音信号により駆動されると、積層型圧電素子610aは、図11(b)及び(c)に示すように、弾性部材70の載置面(接触面)150への接触部分を支点として、キャップ63が載置面(接触面)150から離間することなく、再生音信号に応じて伸縮振動する。なお、下端部101が載置面150に接触して異音が発生する等の不都合がなければ、多少離間してもよい。積層型圧電素子610aの最も伸びたときの長さと最も縮んだときの長さとの差は、例えば0.05μm〜100μmである。これにより、積層型圧電素子610aの伸縮振動がキャップ63を通して載置面150に伝達されて載置面150が振動し、載置面150が振動スピーカとして機能して載置面150から音が発生する。なお、最も伸びたときの長さと最も縮んだときの長さとの差が0.05μm未満だと、載置面を適切に振動させられないおそれがあり、一方、100μmを超えると、周波数による振動が大きくなり音発生器ががたつくおそれがある。また、100μmより少なくても、荷重と周波数の関係によりがたつく可能性もある。
ここで、上述したように、キャップ63の先端部は、積層型圧電素子610aが最も伸びたときに、圧電振動部60aが存在しないと仮定した場合に、弾性部材70の最下端部701と振動スピーカ10の最下端部101とを結ぶ線(図10の一点鎖線I)よりも載置面150側に位置するとよい。また、キャップ63の先端部は、積層型圧電素子610aが最も縮んだときに、上記仮想線よりも載置面150側に位置するとよい。
また、図6に示す底面20aとキャップ63の対向面63cとの間の距離dは、積層型圧電素子610aに電圧が印加されておらず積層型圧電素子610aが伸縮しない状態から最も縮んだ状態となったときの変位量よりも長いとよい。これにより、積層型圧電素子610aが最も縮んだ状態(図11(c)に示す状態)でも、筐体20の底面20aとキャップ63とが接触しにくくできる。したがって、キャップ63が圧電素子610aから脱落しにくくなる。
圧電素子部60の底面20aにおける配置箇所、積層型圧電素子610aの積層方向の長さ、キャップ63の寸法等は、上記の条件を満たすように適宜決定される。
本実施の形態に係る音発生器としての振動スピーカによると、圧電素子を振動源として利用しているので、ダイナミックスピーカ構造を有する従来の振動発生装置と比較して、部品点数を削減でき、少ない部品点数で簡便に構成できる。また、圧電素子として、スタックタイプの積層型圧電素子610aを用いて、再生音信号により積層方向に沿って伸縮振動させ、その伸縮振動を載置面(接触面)150に伝達するので、載置面(接触面)150に対する伸縮方向(変形方向)の振動伝達効率が良く、載置面(接触面)150を効率良く振動させることができる。しかも、キャップ63を介して積層型圧電素子610aを載置面(接触面)150に接触させるので、積層型圧電素子610aの破損も防止できる。また、振動スピーカ10を横置きに立てて、圧電振動部60aのキャップ63を載置面(接触面)150に接触させると、キャップ63に振動スピーカ10の重量が荷重としてかかるので、キャップ63を載置面(接触面)150に確実に接触させて、圧電振動部60aの伸縮振動を載置面(接触面)150に効率良く伝達することができる。
また、本実施の形態に係る音発生器としての振動スピーカは、主として積層型圧電素子の振動を直接的に接触面(載置面)に伝達させることができるため、積層型圧電素子の振動を他の弾性体に伝える従来技術と異なり、音を発生させる際に他の弾性体が振動可能な高周波側の限界周波数に依存することがない。なお、他の弾性体が振動可能な高周波側の限界周波数は、他の弾性体が圧電素子により変形させられてから再度変形可能な状態に戻るまでの時間のうち最も短い時間の逆数となる。このことを考慮すると、本実施の形態に係る音発生器の錘は、圧電素子の変形により湾曲変形をしない程度の剛性(曲げ強度)を有するものであるとよい。
また、本実施の形態に係る音発生器は、圧電振動部が、圧電振動部60a及び圧電振動部60bの2つを、圧電振動部60a及び圧電振動部60bを構成する圧電素子の伸縮方向に垂直な仮想平面上に備えているため、圧電振動部が1つの場合と比較して、ストロークは1倍であり、出力パワーを2倍とすることができる。また、2つの、圧電振動部60a及び圧電振動部60bを備えているため、それぞれの振動部に右用と左用の音入力することによりステレオ音声とすることができる。
また、積層型圧電振動素子610aを保持部100に対して固定する構造は、図6に示すものに限られない。例えば、図12(a)〜(c)に示すように、積層型圧電振動素子610aを保持部100に保持してもよい。なお、以下の説明では積層型圧電振動素子610aを例に説明するが、積層型圧電振動素子610bにも同様の説明があてはまる。図12(a)に示す保持部100は、底面20aに開口する幅広のスリット101aと、該スリット101aに連続する幅狭のスリット101bとを有する。積層型圧電素子610aは、一端部が幅狭のスリット101bに配置されて側面が接着剤102を介してスリット101bに固定される。また、幅広のスリット101aには、積層型圧電素子610aとの隙間に、積層型圧電素子610aの伸縮動作の妨げとならないシリコーンゴムやゲル等の充填剤103が充填される。このように圧電振動部60aを保持部100に保持すれば、Oリング等の防水パッキンを用いることなく、振動スピーカ10をより確実に防水することができる。また、積層型圧電素子610aの底面20aから突出する部分に絶縁性のキャップを被せることにより、積層型圧電素子610aの絶縁も確実に行うことができる。
図12(b)に示す保持部100は、底面20aに向けて拡開するテーパ状スリット101cと、該テーパ状スリット101cに連続する幅狭のスリット101dとを有する。積層型圧電素子610aは、一端部が幅狭のスリット101dに配置されて側面が接着剤102を介してスリット101dに固定される。また、テーパ状スリット101cには、積層型圧電素子610aとの隙間に、積層型圧電素子610aの伸縮動作の妨げとならないシリコーンゴムやゲル等の充填剤103が充填される。このように構成すれば、図12(a)の保持部100と同様の効果が得られる他、テーパ状スリット101cを有しているので、積層型圧電素子610aの保持部100への組み付けが容易にできる利点がある。
図12(c)に示す保持部100は、上記実施の形態と同様に、一様な幅のスリット101を有するが、積層型圧電素子610aは、一端部側の端面が接着剤102を介してスリット101に固定されている。また、スリット101内で積層型圧電素子610aの適宜の箇所には、防水用のOリング62が配置されている。このような積層型圧電素子610aの保持態様は、特に、積層型圧電素子610aが、図5に示したように、リード線の接続部が側面電極に形成されている場合に、リード線の引き回し等の点で有利となる。
また、上記実施の形態や図12(a)〜(c)の変形例において、圧電振動部60aは、キャップ63を省略し、積層型圧電素子610aの先端面を直接、あるいは絶縁部材等からなる振動伝達部材を介して接触面に接触させてもよい。また、圧電素子は、上述したスタックタイプの積層型圧電素子に限らず、ユニモルフ、バイモルフあるいは積層型バイモルフ素子を用いてもよい。図13は、バイモルフを用いた場合の要部の概略構成を示す図である。バイモルフ65は、長尺の矩形状をなし、筐体20の底面20aに一方の表面65aが露出して長尺の両端部が保持部100に保持される。保持部100は、バイモルフ65を保持する開口部101eを有し、開口部101eのバイモルフ65の裏面65b側の内面が湾曲して形成される。かかる構成によれば、バイモルフ65が載置面に接触するように筐体20を載置面に載置して、バイモルフ65を再生音信号により駆動すると、バイモルフ65が屈曲(湾曲)振動する。これにより、バイモルフ65の振動が載置面(接触面)に伝達されて、載置面(接触面)が振動スピーカとして機能して載置面(接触面)から再生音が発生する。なお、バイモルフ65の表面65aには、ポリウレタン等の被覆層が形成されていてもよい。
更に、図8において、信号処理回路121と昇圧回路122との間に、LPF123と同様の特性を有するLPFを設けてもよい。また、図8において、LPF123の機能を信号処理回路121のイコライザ等に持たせて、LPF123を省略してもよい。
また、上記の実施形態では、圧電振動部60a及び圧電振動部60bが筐体20の底面20aに配置され底面20aから突出する例を示したが、本発明はこれに限定されない。筐体20の寸法及び圧電振動部60a及び圧電振動部60bの寸法によっては、圧電振動部60aは、例えば、筺体の側面やバッテリリッドから突出していてもよい。
また、上記の実施形態では、被接触部材が机であり、接触面が机の水平な載置面であるとして説明を行ったが、本発明はこれに限定されない。接触面は水平な面でなくともよい。接触面は、例えば机の地面に垂直な面であってもよい。地面に垂直な面を有する被接触
部材としては、例えば空間を区切るためのパーティションが挙げられる。
また、上記実施の形態では、音発生器として振動スピーカ10を例に説明して、振動スピーカ10を錘として機能させたが、錘はこれに限られない。例えば、携帯電話機、携帯型ミュージックプレイヤ、据え置き型テレビ、電話会議システム、ノートパソコン、プロジェクタ、壁掛け時計/壁掛けテレビ、目覚まし時計、フォトフレーム等の多岐にわたる任意の電子機器を錘として、音発生器を構成することもできる。また、錘は電子機器に限らず、例えば花瓶、椅子等であってもよい。さらに、本発明は、音発生器に限らず、圧電素子を有する音発生器用圧電振動部として構成することもできるし、音発生器と該音発生器が接する接触面を有する被接触部材とを備える音発生システムとしても構成することができ、これらも本発明の範囲に包含されるものと理解されたい。
(変形例1)
次に、本発明に係る音発生器の変形例1について、図14を参照して説明する。図14は、本発明に係る音発生器の変形例1である振動スピーカの概略断面図である。以下、図1から図13を参照して説明した実施形態と異なる点のみを説明する。
本変形例では、図14に示されるように、本実施の形態に係る振動スピーカ10では、圧電振動部60a及び圧電振動部60bは、筐体20の底面側に圧電振動部60a及び圧電振動部60bを構成する圧電素子の伸縮方向に平行な仮想直線L上に配置されている。
このように、本実施の形態に係る音発生器は、圧電振動部が、圧電振動部60a及び圧電振動部60bの2つを、圧電振動部60a及び圧電振動部60bを構成する圧電素子の伸縮方向に平行な仮想直線上に配置しているため、圧電振動部が1つの場合と比較して、ストロークは2倍であり、出力パワーを1倍とすることができる。
(変形例2)
次に、本発明に係る音発生器の変形例2について、図15を参照して説明する。図15は、本発明に係る音発生器の変形例2である振動スピーカの概略断面図である。以下、図1から図13を参照して説明した実施形態と異なる点のみを説明する。
本変形例では、図15に示されるように、本実施の形態に係る振動スピーカ10では、圧電振動部60a及び圧電振動部60bは、筐体20の底面側に圧電振動部60a及び圧電振動部60bを構成する圧電素子の伸縮方向に垂直な仮想平面T上に配置され、その間の距離が図3に示される実施例よりも大きくなっている。すなわち、本変形例2では、圧電振動部60a及び圧電振動部60bは、それぞれ筐体20の底面側端部に配置されている。
このように、本実施の形態に係る音発生器は、圧電振動部が、圧電振動部60a及び圧電振動部60bの2つを、圧電振動部60a及び圧電振動部60bを構成する圧電素子の伸縮方向に垂直な仮想平面上に備えているため、圧電振動部が1つの場合と比較して、ストロークは1倍であり、出力パワーを2倍とすることができる。また、2つの、圧電振動部60a及び圧電振動部60bを備えているため、それぞれの振動部に右用と左用の音入力することによりステレオ音声とすることができる。さらに、本変形例2では、圧電振動部60a及び圧電振動部60bは、それぞれ筐体20の底面側端部に配置されているため、図3に示される実施例よりも、よりステレオ音声の音質を向上させることができる。
(変形例3)
次に、本発明に係る音発生器の変形例3について、図16、図17を参照して説明する。図16、図17は、本発明に係る音発生器の変形例3である振動スピーカの概略断面図である。以下、図1から図13を参照して説明した実施形態と異なる点のみを説明する。
本変形例では、図16、17に示されるように、本実施の形態に係る振動スピーカ10では、圧電振動部は、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び圧電振動部60cの3つ配置されている。また、それぞれ圧電振動部60a、圧電振動部60b及び圧電振動部60cは、筐体20の底面側であって、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び圧電振動部60cを構成する圧電素子の伸縮方向に垂直な仮想平面T上に配置されている。また、本変形例3では、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び圧電振動部60cは、筐体20の底面側で、正三角形の頂点に配置されるような位置に形成されている。もちろん、本発明では、3つの圧電振動部の配置関係はそれぞれかせ正三角形の頂点にある場合に限定されるのではなく、その他適宜な位置にあるとして良い。
このように、本実施の形態に係る音発生器は、圧電振動部が、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び圧電振動部60cの3つを、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び圧電振動部60cを構成する圧電素子の伸縮方向に垂直な仮想平面上に備えているため、圧電振動部が1つの場合と比較して、ストロークは1倍であり、出力パワーを3倍とすることができる。また、3つの、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び圧電振動部60cを備えているため、さらに、本変形例3では、圧電振動部60a、圧電振動部60b及び圧電振動部60cの3つにより振動スピーカ10を支えることができるため、上記実施例、変形例のように、2本の圧電振動部60では倒れ防止のために別の足が必要であったものを、その必要がなくなり、全質量を3つの圧電振動部で支えることができるため、安定して支えることが可能になるとともに、別の足などの必要がなくなり効率が良い。
なお、上記実施例及び各変形例では、圧電振動部が2つまたは3つの場合を例示したが、本発明の音発生器では、圧電振動部の数は4つ以上の個数であってもよい。