JP2015190022A - 一次再結晶集合組織の予測方法および方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

一次再結晶集合組織の予測方法および方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一次再結晶焼鈍鋼板の集合組織を予測する方法を提案するとともに、上記方法を用いた方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。【解決手段】mass%でC:0.002〜0.10%、Si:2.0〜8.0%およびMn:0.005〜1.0%を含有する鋼素材を熱間圧延し、冷間圧延し、一次再結晶焼鈍あるいは脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、上記一次再結晶焼鈍後の鋼板の磁気特性を、圧延方向に対する磁化方向および磁化力を種々に変えて測定し、その結果から一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織を予測し、該予測した集合組織が所定の目標範囲内となるよう、一次再結晶焼鈍の加熱過程における500〜700℃間の昇温速度を制御することにより低鉄損でかつバラつきのない方向性電磁鋼板を得る。【選択図】図4

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造技術に関し、具体的には、一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織の予測方法およびその方法を用いた方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、主にトランスの鉄心材料として用いられており、磁気特性に優れていること、特に鉄損特性に優れていることが求められる。そこで、方向性電磁鋼板は、仕上焼鈍において、二次再結晶を起こさせることで、製品鋼板中の結晶粒の方位を{110}<001>方位、いわゆる「Goss方位」に高度に揃えている。また、磁気特性をより向上するためには、一次再結晶後の鋼板の集合組織(一次再結晶集合組織)の方位を適正な状態に制御する、具体的には、{111}<112>(以降、「M方位」とも呼ぶ)や、{411}<148>(以降、「S方位」とも呼ぶ)の強度を高め、Goss粒がこれらの方位の粒を蚕食し、成長し易くしてやることが重要となる。
一次再結晶粒の集合組織を適正な状態に改善する方法としては、冷間圧延の温度を高めたり、冷間圧延前の粒径を大きくしたりする等、種々の方法があるが、前工程の製造条件の変動等によって、コイル全長にわたって高い値を得られないのが実情である。コイル内のM方位やS方位の密度の変動要因としては、例えば熱間圧延時の温度履歴や、冷間圧延速度の変化(コイル両端部における加減速や形状不良や耳割れなどに伴う速度変化)等がある。従って、コイル内で均一な磁気特性を得るためには、これらを一定に抑えなければならないが、熱延におけるコイル内の温度変化をなくしたり、冷間圧延における圧延速度を一定にしたりすることは、現状ではほぼ不可能である。
このような事情から、製造途中のいずれかの工程で、鋼板の何らかの特性を測定し、その結果をフィードバックしたりフィードフォワードしたりして製造条件を調整することで、製品品質を一定に維持しようとすることが種々検討されている。例えば、特許文献1には、連続焼鈍炉出側に、鋼板の結晶粒径をオンラインで測定可能なセンサーを、鋼板幅方向の2ヶ所以上に備えることで、一次再結晶粒径の幅方向における変動を測定し、その結果を上流工程にフィードバックする方法が、特許文献2には、脱炭焼鈍終了後から最終仕上焼鈍開始までの途中段階で一次再結晶粒径を測定し、その粒径の値を基にして、その後行われる脱炭焼鈍の熱処理条件を決定するフィードバック制御を行う方向性電磁鋼板の製造方法が、特許文献3には、一次再結晶焼鈍後鋼板の抗磁力を測定し、その測定値の目標値からの偏差に応じて、スラブの加熱条件、熱間圧延条件、熱延板焼鈍条件、中間焼鈍条件を含む冷間圧延条件、一次再結晶焼鈍条件、焼鈍分離剤の成分組成および二次再結晶焼鈍条件のうちの1以上を調整し、磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法が、特許文献4には、脱炭焼鈍後の段階で、鋼板表面をフーリエ変換赤外線吸収スペクトル法(FT−IR)により測定し、鋼板表面の少なくとも1つの化合物の赤外線透過率のピークを測定して吸光度を算出し、該算出値から最終製品の被膜密着性を評価する方法が開示されている。
さらに、特許文献5には、脱炭焼鈍前に脱脂処理を施した後、鋼中成分の鋼板表面における濃度を測定し、予め求めた表面濃度に対する脱炭焼鈍の雰囲気酸化度、焼鈍温度および焼鈍時間と脱炭焼鈍後の酸化量からなる関係式に上記測定値を代入し、所望の酸化量を得るための雰囲気酸化度、焼鈍温度、焼鈍時間を算出し、このうち少なくとも1つを制御し、脱炭焼鈍における酸化量を制御する方向性電磁鋼板の製造方法が、特許文献6には、方向性電磁鋼板の脱炭焼鈍工程において、加熱帯の雰囲気ガスを均熱帯と分離して制御し、焼鈍後の酸化膜を蛍光X線装置により評価しこれらの脱炭焼鈍雰囲気ガスを管理することで、被膜特性と磁気特性を安定して造りこむ方向性電磁鋼板の製造方法が、また、特許文献7には、冷間圧延のパス間もしくは最終パス後に鋼板の鉄損をオンライン計測し、その計測結果に基づいて、フィードバックあるいはフィードフォワードにて圧延条件を調整することで、製品における品質特性のばらつきを改善する方法が開示されている。
特開2007−146244号公報 特開平03−294426号公報 特開平08−283855号公報 特開2004−191217号公報 特開平11−106826号公報 特開平10−219359号公報 特開平10−195535号公報
しかしながら、特許文献1,2の技術は、主に一次再結晶粒径に基いて製造条件をオンライン制御するもの、特許文献3の技術は、一次再結晶焼鈍後鋼板の抗磁力に基いて一次粒径とインヒビター抑制力等を制御するもの、特許文献4の技術は、表層酸化物の形態に基いて最終製品の被膜密着性を評価するもの、特許文献5,6の技術は、脱炭焼鈍における酸素目付量を制御しようとするものであり、いずれも一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織について着目したものではない。
また、特許文献7の技術は、集合組織を一定にするために、冷間圧延のパス間もしくは最終パス後に鋼板の鉄損をオンライン計測し、圧延条件を制御するものであるが、実際に一次再結晶集合組織が形成されるのは一次再結晶焼鈍時点であり、冷間圧延工程だけで、前工程の製造条件の変動をすべて吸収することは難しい。そのため、得られる効果も限定的である。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織を精度よく予測する方法を確立するとともに、上記方法を用いてコイル内の一次再結晶集合組織を均一化し、磁気特性のバラツキが小さい方向性電磁鋼板を安定して製造する方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題の解決に向けて鋭意検討を重ねた。その結果、一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織を予測する方法としては、集合組織を表す指標と相関関係がある何らかの磁気特性を測定し、この磁気特性の測定結果から予測する方法が有効であること、また、上記予測した集合組織を所定の範囲内に制御する方法としては、一次再結晶焼鈍における加熱過程の昇温速度を調整することが有効であり、これによって、コイルの全長にわたって一次再結晶集合組織を好ましい均一なものとすることができ、その結果、コイルの全長にわたって二次再結晶後のGoss方位への集積度を高め、良好な磁気特性が得られることを見出し、本発明を開発するに至った。
すなわち、本発明は、一次再結晶焼鈍後の鋼板の磁気特性を測定し、その測定結果から一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織を予測することを特徴とする一次再結晶集合組織の予測方法を提案する。
本発明の一次再結晶集合組織の予測方法における上記磁気特性は、圧延方向に対する磁化方向および磁化力を種々に変えて測定した磁束密度であることを特徴とする。
また、本発明の一次再結晶集合組織の予測方法は、上記集合組織の指標に、M方位およびS方位のランダム強度比を用いることを特徴とする。
また、本発明は、C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍あるいは脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、上記一次再結晶焼鈍後の鋼板の磁気特性を測定し、その測定結果から一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織を予測し、該予測した集合組織が所定の目標範囲内となるよう、一次再結晶焼鈍の加熱過程における500〜700℃間の昇温速度を制御することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法における上記磁気特性は、鋼板の圧延方向に対する磁化方向および磁化力を種々に変えて測定した磁束密度であることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記昇温速度を、一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織の予測結果に基き、フィードバック制御することを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記一次再結晶焼鈍で700℃以上の温度に加熱した後、180℃以下まで冷却し、磁気特性を測定した後、均熱温度まで再加熱して一次再結晶焼鈍を完了させることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記集合組織の指標に、M方位およびS方位のランダム強度比を用いることを特徴とする。ここで、上記M方位は{111}<112>を、S方位は{411}<148>を示す。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記M方位のランダム強度比が5.0〜6.2、S方位のランダム強度比が3.4〜4.1の範囲となるよう一次再結晶焼鈍の昇温速度を制御することを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜500℃間のいずれかの温度で0.5秒以上5秒以下の時間保持する保定処理を施すことを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Al:0.010〜0.050mass%およびN:0.003〜0.020mass%を含有し、あるいは、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.003〜0.030mass%および/またはS:0.002〜0.03mass%を含有することを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記鋼素材は、不可避的不純物として、Al,N,SおよびSeをそれぞれAl:0.01mass%未満、N:0.0050mass%未満、S:0.0050mass%未満およびSe:0.0030mass%未満含有することを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法に用いる上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.0100mass%、Nb:0.0010〜0.0100mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする。
本発明によれば、一次再結晶焼鈍後の鋼板の何らかの磁気特性を測定し、その測定結果から集合組織を予測し、該予測した集合組織が所定の目標範囲に収まるように一次再結晶焼鈍の加熱過程における昇温速度を制御するので、コイル内の長手方向の一次再結晶集合組織をコイル全長に亘って均一化し、ひいては、磁気特性に優れかつバラツキのない方向性電磁鋼板を安定して製造することが可能となる。
鉄損特性に及ぼす冷間圧延速度と一次再結晶焼鈍の昇温速度の影響を示すグラフである。 M方位のランダム強度比およびS方位のランダム強度比に及ぼす冷間圧延速度と一次再結晶焼鈍の昇温速度の影響を示すグラフである。 本発明において磁気特性の測定に用いるセンサーを説明する図である。 M方位およびS方位のランダム強度比に及ぼす冷間圧延速度と一次再結晶焼鈍後鋼板の圧延方向から45°方向の磁束密度の影響を示すグラフである。
まず、本発明を開発する契機となった実験について説明する。
C:0.065mass%、Si:3.44mass%、Mn:0.08mass%、Al:0.024mass%およびN:0.008mass%を含有する鋼を溶製し、連続鋳造法で鋼スラブとした後、1410℃に再加熱し、熱間圧延して板厚2.4mmの熱延板とした後、1120℃×80秒の中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延により、最終板厚0.23mmの冷延板とした。この際、二次冷間圧延における圧延速度を600mpmと20mpmの2条件に振り分けた。
次いで、50vol%H−50vol%N、露点55℃の湿潤雰囲気下、840℃×100秒で脱炭を行う脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。この際、一次再結晶焼鈍の加熱過程における500〜700℃間の昇温速度を20〜350℃/sの範囲で種々に変化させた。
次いで、上記一次再結晶焼鈍後の各鋼板から試験片を採取し、集合組織の測定を行った。ここで、上記集合組織の測定は、板厚中心層のX線極点図を測定し、その測定データから3次元集合組織、具体的には、M方位のランダム強度比、および、S方位のランダム強度比を計算により求めた。
次いで、上記鋼板表面に、MgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布・乾燥した後、二次再結晶焼鈍と、1200℃×10hrの純化焼鈍からなる仕上焼鈍を施した。その後、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、絶縁被膜処理剤を塗布し、その焼き付けを兼ねて、800℃×60秒の平坦化焼鈍を施した。
上記のようにして得た各鋼板から試験片を採取し、JIS C2550に準じて鉄損W17/50を測定した。
図1は、上記鉄損の測定結果を、圧延速度と一次再結晶焼鈍の昇温速度との関係として示したものである。この図から、最終冷間圧延における圧延速度が600mpm、20mpmのいずれの場合も、最も低い鉄損値は約0.80W/kgで同程度であるが、最も低い鉄損を示す昇温速度は、圧延速度が20mpmでは100〜150℃/sの範囲、600mpmでは150〜200℃/sの範囲と異なることがわかる。
また、図2は、X線で測定した板厚中心層の集合組織に及ぼす、一次再結晶焼鈍の昇温速度と、圧延速度の影響を示したものであり、図2(a)は、集合組織の指標としてM方位のランダム強度比を、図2(b)は集合組織の指標としてS方位のランダム強度比を用いた例である。
図2(a)から、M方位のランダム強度比は、圧延速度が600mpmの方が、20mpmよりも高いこと、また、M方位のランダム強度比は、いずれの圧延速度でも、昇温速度が100℃/s以下では殆ど変化しないが、100℃/s以上では連続して低下する傾向があることがわかる。
また、図2(b)から、S方位のランダム強度比は、圧延速度が20mpmの方が、600mpmよりも僅かに高いこと、また、M方位のランダム強度比は、いずれの圧延速度でも、昇温速度が100℃/s以下では、昇温速度の上昇に伴い大きくなるが、100℃/s以上では、上昇傾向が小さくなることがわかる。
先述したように、熱間圧延において、コイル内の温度履歴や圧延履歴を一定とすることは難しい。また、最終冷間圧延では、圧延速度をコイル長手方法で一定として圧延することが望ましいが、コイル両端部では、加減速に伴う圧延速度の変動は、連続圧延でない限り、避けられない。また、コイル内に存在する形状不良部や耳割れ部等では、圧延速度を下げて圧延せざるを得ず、圧延速度の変動は避けられない。このようなコイル内での製造条件の変動は、集合組織の変化を介して最終製品の磁気特性に微妙に影響を及ぼす。
しかし、上記実験の結果から、最終冷間圧延の圧延速度により、M方位およびS方位のランダム強度比、すなわち、一次再結晶集合組織は変化するが、一次再結晶焼鈍の昇温速度によっても変化する。このことは、最終冷間圧延における圧延速度の変動に伴って一次再結晶集合組織が変化しても、一次再結晶焼鈍の昇温速度を調整することによって、集合組織を一定の範囲に制御し得る可能性があることを示している。
次に、上記の実験で得た一次再結晶焼鈍後の鋼板について磁気特性を測定し、上記集合組織(M方位およびS方位のランダム強度比)との関係を調べた。
ここで、上記磁気特性の測定には、特許文献1に開示された、コの字型のヨーク(コア)に励磁用一次コイルと出力用二次コイルを巻装した、図3に示したようなセンサーを用いて、鋼板表面上に5mmの高さに保持し、鋼板表面内での圧延方向に対する磁化方向(コアの長さ方向)の角度および磁化力を種々に変えて、磁束密度Bを測定した。なお、上記コの字形コアの幅(図3(b)のW)は300mm、コの字形コアの長さ(図3(a)のL)は300mmで、このセンサーによる測定領域は、上記W×Lの範囲となる。
上記種々の方向および磁化力で測定した磁束密度Bの測定結果について、M方位およびS方位のランダム強度比との間の相関関係を調査した。その結果、M方位のランダム強度比は、図4(a)に示したように、磁化方向を圧延方向から45°ずらしたときの磁束密度B(磁化力100A/mのときの磁束密度(T))と良い相関が認められた。そして、図1との対比から、製品板の鉄損が安定して低い値(W17/50≦0.82W/kg)を示している試験片のM方位のランダム強度比は5.0〜6.2の範囲内にあることがわかった。一方、S方位のランダム強度比は、図4(b)に示したように、磁化方向を圧延方向から45°ずらした方向の磁束密度B(磁化力500A/mのときの磁束密度(T))と良い相関が認められた。そして、図1との対比から、製品板の鉄損が安定して低い値(W17/50≦0.82W/kg)を示している試験片のS方位のランダム強度比は3.4〜4.1の範囲内にあることがわかった。
以上の結果から、方向性電磁鋼板の鉄損特性に影響する一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織の指標として、M方位およびS方位のランダム強度比を測定するとともに、一次再結晶焼鈍後の鋼板の磁気特性として、圧延方向に対する種々の方向、種々の磁化力における磁束密度を測定し、それらの間で最も良い相関がある磁気特性の測定条件を見出して、その条件で一次再結晶後の鋼板の磁気特性を測定すれば、該鋼板の集合組織を予測することが可能であること、さらに、予測した鋼板の集合組織に基いて、上記予測した鋼板の集合組織を鉄損特性が最良となる所定の範囲に収まるよう、一次再結晶焼鈍の昇温速度を調整してやれば、鉄損特性に優れる方向性電磁鋼板を安定して製造し得ることがわかった。
本発明は、上記の新規知見に基づき開発したものである。
なお、上記実験においては、集合組織の指標として、M方位およびS方位のランダム強度比を用いているが、磁気特性と相関がある集合組織の指標であれば、その他の指標を用いてもよい。
また、上記実験においては、一次再結晶後の鋼板の磁気特性として、圧延方向から45°方向の磁束密度BおよびB磁束密度を測定したが、上記磁束密度に限定されるものではなく、M方位およびS方位のランダム強度比等の集合組織を表す指標と関係ある限り、いずれの磁気特性を用いてもよい。
また、その磁気特性の測定に用いるセンサーも、図3に示した、コの字型のヨーク(コア)に励磁用一次コイルと出力用二次コイルを巻装したセンサーに限定されるものではなく、例えば、ソレノイドコイル式のセンサーを用いてもよく、さらに、他の種類のセンサーを用いてもよいことは勿論である。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材(スラブ)の成分組成について説明する。
C:0.002〜0.10mass%
Cは、0.002mass%に満たないと、Cの粒界強化効果が失われ、スラブに割れが生じるなど、製造に支障を来たすようになる。一方、0.10mass%を超えると、脱炭焼鈍で、磁気時効の起こらない0.005mass%以下に低減することが困難となる。よって、Cは0.002〜0.10mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.010〜0.080mass%の範囲である。
Si:2.0〜8.0mass%
Siは、鋼の比抵抗を高め、鉄損を低減するのに必要な元素である。上記効果は、2.0mass%未満では十分ではなく、一方、8.0mass%を超えると、加工性が低下し、圧延して製造することが困難となる。よって、Siは2.0〜8.0mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは2.5〜4.5mass%の範囲である。
Mn:0.005〜1.0mass%
Mnは、鋼の熱間加工性を改善するために必要な元素である。上記効果は、0.005mass%未満では十分ではなく、一方、1.0mass%を超えると、製品板の磁束密度が低下するようになる。よって、Mnは0.005〜1.0mass%の範囲とするのが好ましい。より好ましくは0.02〜0.20mass%の範囲である。
上記C,SiおよびMn以外の成分は、二次再結晶を生じさせるために、インヒビターを利用する場合と、しない場合とで異なる。
まず、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用する場合で、例えば、AlN系インヒビターを利用するときには、AlおよびNを、それぞれAl:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%の範囲で含有させるのが好ましい。また、MnS・MnSe系インヒビターを利用する場合には、S:0.002〜0.030mass%および/またはSe:0.003〜0.030mass%を含有させることが好ましい。それぞれの添加量が、上記下限値より少ないと、インヒビター効果が十分に得られず、一方、上限値を超えると、インヒビター成分がスラブ加熱時に未固溶にまま残存し、磁気特性の低下をもたらす。なお、AlN系とMnS・MnSe系のインヒビターは併用して用いてもよい。
一方、二次再結晶を生じさせるためにインヒビターを利用しない場合には、上述したインヒビター生成成分であるAl,N,SおよびSeの含有量は極力低減し、Al:0.01mass%未満、N:0.0050mass%未満、S:0.0050mass%未満およびSe:0.0030mass%未満に低減した鋼素材を用いるのが好ましい。
なお、本発明の方向性電磁鋼板に用いる鋼素材は、上記成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物であるが、磁気特性の改善を目的として、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.010mass%、Nb:0.0010〜0.010mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有していてもよい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の方向性電磁鋼板の製造に用いる鋼素材(スラブ)は、前述した成分組成を有する鋼を常法の精錬プロセスで溶製した後、従来公知の造塊−分塊圧延法または連続鋳造法で製造してもよいし、直接鋳造法で100mm以下の厚さの薄鋳片として製造してもよい。上記スラブは、常法に従い加熱炉等に装入して、インヒビター成分を含有する場合には1400℃程度の温度に再加熱し、一方、インヒビター成分を含有しない場合には1300℃以下の温度に再加熱した後、熱間圧延に供するのが好ましい。なお、インヒビター成分を含有しない場合には、連続鋳造後、再加熱することなく直ちに熱間圧延に供してもよい。また、薄鋳片の場合には、上記熱間圧延を省略し、そのまま以後の工程に進めてもよい。
次いで、熱間圧延した熱延板は、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。この熱延板焼鈍の温度は、良好な磁気特性を得るためには、800〜1150℃の範囲とするのが好ましい。800℃未満では、熱間圧延で形成されたバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなり、二次再結晶粒の発達が阻害される。一方、1150℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化し過ぎて、やはり、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなるからである。
熱延後あるいは熱延板焼鈍後の熱延板は、1回の冷間圧延または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。上記中間焼鈍の焼鈍温度は、900〜1200℃の範囲とするのが好ましい。900℃未満では、中間焼鈍後の再結晶粒が細かくなり、さらに、一次再結晶組織におけるGoss核が減少して製品板の磁気特性が低下する。一方、1200℃を超えると、熱延板焼鈍と同様、結晶粒が粗大化し過ぎて、整粒の一次再結晶組織を得ることが難しくなるからである。
また、最終板厚とする冷間圧延(最終冷間圧延)は、一次再結晶集合組織を改善し、磁気特性を向上するためには、冷間圧延時の鋼板温度を100〜300℃に上昇させて行う、いわゆる温間圧延としたり、冷間圧延の途中で100〜300℃の温度で時効処理を1回または複数回施したりすることが有効である。
最終板厚とした冷延板は、その後、一次再結晶焼鈍あるいは脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施す。この工程は、本発明において最も重要な工程であり、一次再結晶集合組織を所定の範囲内に制御するため、加熱過程における500〜700℃間の昇温速度を40〜300℃/sの範囲内において、一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織の測定結果に基いて適正な速度で急速加熱する必要がある。昇温速度が40℃/sよりも低いと、Goss方位粒の強度が低くなり過ぎ、一方、300℃/sを超えると、M方位のランダム強度比が低下し過ぎ、いずれの場合も良好な磁気特性が得られないからである。なお、上記一次再結晶焼鈍の焼鈍温度は750〜900℃の範囲が望ましく、また、脱炭焼鈍を兼ねる場合は、脱炭性を確保する観点からも750〜900℃の範囲とするのが望ましい。
上記一次再結晶焼鈍における急速加熱手段は、特に制限はないが、通電加熱方式または誘導加熱方式であれば、昇温速度を容易かつ迅速に変更することができるので好ましい。
ここで、本発明において重要なことは、上記一次再結晶焼鈍における焼鈍速度は、一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織におけるM方位およびS方位のランダム強度比を測定し、その値に応じて、予め実験等で求めておいた、昇温速度と鉄損との関係式、昇温速度とM方位およびS方位のランダム強度比との関係、および、一次再結晶焼鈍後の磁気特性とM方位およびS方位のランダム強度比との関係とから、M方位のランダム強度比が5.0〜6.2の範囲、S方位のランダム強度比が3.4〜4.1の範囲に収まるよう調整することが重要である。上記範囲に制御することにより、一次再結晶集合組織が向上し、製品板において良好な磁気特性が得られるからである。好ましくは、M方位のランダム強度比は5.0〜6.0の範囲、S方位のランダム強度比は3.7〜4.0の範囲である。
なお、上記一次再結晶焼鈍における焼鈍速度は、一次再結晶焼鈍後の鋼板の磁気特性の測定結果に基き予測した集合組織が所定の範囲に収まるよう、フィードバック制御するのが好ましい。ここで、上記所定の範囲とは、二次再結晶後の製品板の磁気特性が良好となる、一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織を表す指標の適正範囲のことをいう。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法では、上記一次再結晶焼鈍において、鋼板を700℃以上の温度に一旦加熱して一次再結晶させた後、180℃以下まで冷却し、磁気特性を測定し、その後、均熱温度まで再加熱して保定焼鈍し、一次再結晶焼鈍を完了させる方法を採用してもよい。これにより、後続する部位に短時間でフィードバック制御が掛けられるので、表面欠陥等による冷間圧延での一時的な減速等、前工程の短周期の変動に対しても応答性よく対応することができるようになる。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法では、上記一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜500℃の間のいずれかの温度で、0.5秒以上5秒以下の短時間保持する保定処理を施すことが好ましい。保定処理中の回復では、歪エネルギーが高い<111>//ND方位が優先的に回復を起こすため、<111>//ND方位の再結晶駆動力が選択的に低下し、それ以外の方位の再結晶が促されることになる。その結果、Goss方位の強度を高めることができる。上記保定時間が0.5秒未満では、保定処理の効果が得られない。一方、5秒を超えると、回復が進み過ぎ、M方位およびS方位が低下してしまうからである。なお、上記保定温度は、一定の温度に保持する必要はなく、上記保定温度に対して±10℃以内の変化であれば、一定と見做すことができる。
また、上記加熱過程を、常温から上記保定処理温度までの回復処理と、上記保定処理温度から700℃までの再結晶処理の2段階に分け、別々に加熱してもよい。この場合、保定温度を変更することで、500℃から700℃までの昇温速度を、ライン速度を一定に維持したまま、40〜300℃/sの範囲に変更することができる。
なお、上記一次再結晶焼鈍において脱炭焼鈍を行う場合には、以下の技術を組み合わせることも可能である。
(1)脱炭焼鈍を複数段に分け、最終段を還元雰囲気として表層の酸化物を還元し、被膜の保護性を高めて磁気特性や被膜を改善する。
(2)脱炭焼鈍の途中もしくは脱炭焼鈍後に窒化処理を施して、インヒビターの抑制力を補強し、磁気特性を改善する。
上記一次再結晶焼鈍した鋼板は、その後、鋼板表面にMgOを主体とする焼鈍分離剤を塗布し、コイルに巻き取った後、仕上焼鈍を施し、Goss方位に高度に集積した二次再結晶組織を発達させるとともに、フォルステライト被膜を形成させる。
なお、上記仕上焼鈍では、二次再結晶を発現のためには800℃以上の温度に、また、二次再結晶を完了させるためには、1100℃程度の温度まで加熱することが好ましい。さらに、その後、フォルステライト被膜を形成し、純化処理を施すためには、引き続き1200℃程度の温度まで加熱するのが好ましい。
上記仕上焼鈍後の鋼板は、その後、鋼板表面に付着した未反応の焼鈍分離剤を除去する水洗やブラッシング、酸洗等を行った後、形状矯正のための平坦化焼鈍を施すことが有効である。これは仕上焼鈍におけるコイルの巻き癖やバックリングなどの形状不良が原因で、鉄損特性が劣化している場合があるためである。
なお、本発明の方向性電磁鋼板を積層して使用する場合には、上記平坦化焼鈍と同時に、あるいは、その前もしくはその後の工程で、鋼板表面に絶縁被膜を被成するのが有効である。特に、鉄損の低減を図るためには、鋼板表面に張力を付与する張力付与型の絶縁被膜を適用するのが好ましい。なお、張力付与被膜の形成には、通常のフォルステライト質の下地被膜を形成させた後、珪リン酸塩系の張力絶縁被膜を塗布・焼付する方法の他に、物理蒸着法や化学蒸着法で無機物の被膜を鋼板表層に形成する方法を採用してもよい。
また、本発明の方向性電磁鋼板は、鉄損をより低減するため、磁区細分化処理を施すことが好ましい。磁区細分化の方法としては、一般的に実施されている方法、例えば、最終製品板の表面に電子ビームやレーザー、プラズマ等を照射し線状または点状にの熱歪領域や衝撃歪領域を形成する方法、最終製品板の表面にローラー等を用いて歪領域を形成する方法、最終板厚に冷間圧延した鋼板表面に、その後の中間工程においてエッチング加工を施して溝を形成する方法等を用いることができる。
C:0.070mass%、Si:3.43mass%、Mn:0.08mass%、Al:0.025mass%、Se:0.025mass%およびN:0.01mass%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1420℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して、板厚2.4mmの熱延板とし、1000℃×50秒の熱延板焼鈍を施した後、一次冷間圧延により1.8mmの中間板厚とし、1100℃×20秒の中間焼鈍を施した後、二次冷間圧延して最終板厚0.23mmの冷延板とした。
その後、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。この際、一次再結晶焼鈍の加熱条件は、下記に4条件とした。
・条件1:加熱過程の500〜700℃間の昇温速度を100℃/s(一定)として加熱後、60vol%H−40vol%N、露点60℃の湿潤雰囲気下、800℃×100秒で脱炭を行う脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施す。
・条件2:上記条件1で一次再結晶焼鈍終了後の磁気特性(磁束密度)を測定し、該測定結果から一次再結晶集合組織(M方位およびS方位のランダム強度比)を予測し、その予測結果と、予め求めておいた一次再結晶焼鈍の昇温速度とM方位およびS方位のランダム強度比との関係から、M方位のランダム強度比が5.0〜6.2、S方位のランダム強度比が3.4〜4.1の範囲内に収まるように、500〜700℃間の昇温速度を40〜300℃/sの範囲内でフィードバック制御する。
・条件3:上記条件2の加熱過程の途中の400℃の温度で1秒間保持する保定処理を施す。
・条件4:上記条件1で、常温から700℃まで加熱した後、一旦、100℃まで降温し、再度、昇温速度30℃/sで再加熱して800℃×100秒で脱炭を行う脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施す際、上記100℃まで降温したときに鋼板の磁気特性(磁束密度)を測定し、該測定結果から一次再結晶集合組織(M方位およびS方位のランダム強度比)を予測し、その予測結果と、予め求めておいた一次再結晶焼鈍の昇温速度とM方位およびS方位のランダム強度比との関係から、M方位のランダム強度比が5.0〜6.2、S方位のランダム強度比が3.4〜4.1の範囲内に収まるように、常温から700℃まで加熱する際の500〜700℃間の昇温速度を40〜300℃/sの範囲内でフィードバック制御する。
その後、スラリー状にしたMgO主体の焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布・乾燥し、コイルに巻き取った後、二次再結晶焼鈍と1200℃×10hrの純化焼鈍からなる仕上焼鈍を施した。なお、上記仕上焼鈍の雰囲気は、1200℃保定時はHガス、昇温時(二次再結晶焼鈍を含む)および降温時はNガスとした。その後、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、絶縁被膜液を塗布し、形状矯正を行う平坦化焼鈍ラインに通板し、800℃×1minの条件で焼き付けし、製品コイルとした。次いで、上記製品コイルを長さ方向に6等分割して、コイル先後端部および分割点の計7箇所から試験片を採取し、JIS C2550に準じた方法で鉄損W17/50を測定し、最大値(最悪値)および最小値(最良値)を求めた。
この結果を表1に示す。同表から、一次再結晶焼鈍後の集合組織を測定し、その結果に基いて一次再結晶焼鈍の昇温速度を調整し、一次再結晶焼鈍後の集合組織を所定の範囲内に収めることで、低鉄損でかつコイル内での鉄損のばらつきが小さい方向性電磁鋼板を安定して得ることができる。特に、上記条件の加熱途中において保定処理を施した場合には、より鉄損特性が改善されることがわかる。
Figure 2015190022
表2に記載の成分組成を有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを連続鋳造法で製造し、1380℃の温度に再加熱した後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とし、1030℃×10秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延して最終板厚が0.23mmの冷延板に仕上げた。
その後、加熱過程の500〜700℃間の昇温速度を100℃/s(一定)として加熱後、60vol%H−40vol%N、露点60℃の湿潤雰囲気下、840℃×100秒で脱炭を行う脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した。この際、一次再結晶焼鈍後の鋼板の磁気特性(磁束密度)を測定し、該測定結果から一次再結晶集合組織(M方位およびS方位のランダム強度比)を予測し、その予測結果と、予め求めておいた一次再結晶焼鈍の昇温速度とM方位およびS方位のランダム強度比との関係から、M方位のランダム強度比が5.0〜6.2、S方位のランダム強度比が3.4〜4.1の範囲内に収まるように、500〜700℃間の昇温速度を調整した。
その後、スラリー状にしたMgO主体の焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布、乾燥し、コイルに巻き取った後、二次再結晶焼鈍と1220℃×4hrの純化焼鈍からなる仕上焼鈍を施した。なお、仕上焼鈍の雰囲気は、1200℃保定時はHガス、昇温時(二次再結晶焼鈍を含む)および降温時はArガスとした。その後、未反応の焼鈍分離剤を除去した後、絶縁被膜液を塗布・乾燥し、形状矯正を行う平坦化焼鈍ラインに通板し、800℃×1minの条件で焼き付けし、製品板のコイルとした。次いで、上記製品コイルを長さ方向で6等分割して、コイル先後端部および分割点の計7箇所から試験片を採取し、JIS C2550に準拠して鉄損W17/50を測定し、最大値(最悪値)および最小値(最良値)を求めた。
上記測定の結果を表2に示した。これから、本発明に適合する成分組成を有する冷延板の一次再結晶焼鈍の加熱過程における昇温速度を、一次再結晶集合組織の予測結果に基いて、該集合組織が適正範囲に収まるよう調整することによって、低鉄損でかつコイル長手方向で均一な鉄損特性を有する方法性電磁鋼板が得られることがわかる。
Figure 2015190022
本発明の技術によれば、一次再結晶焼鈍後の鋼板集合組織の制御が可能となるので、例えば、自動車用鋼板や缶用鋼板等の集合組織制御にも適用することができる。

Claims (13)

  1. 一次再結晶焼鈍後の鋼板の磁気特性を測定し、その測定結果から一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織を予測することを特徴とする一次再結晶集合組織の予測方法。
  2. 上記磁気特性は、圧延方向に対する磁化方向および磁化力を種々に変えて測定した磁束密度であることを特徴とする請求項1に記載の一次再結晶集合組織の予測方法。
  3. 上記集合組織の指標に、M方位およびS方位のランダム強度比を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の一次再結晶集合組織の予測方法。ここで、上記M方位は{111}<112>を、S方位は{411}<148>を示す。
  4. C:0.002〜0.10mass%、Si:2.0〜8.0mass%およびMn:0.005〜1.0mass%を含有する鋼素材を熱間圧延して熱延板とし、熱延板焼鈍を施すことなくあるいは熱延板焼鈍を施した後、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、一次再結晶焼鈍あるいは脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布し、仕上焼鈍する一連の工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記一次再結晶焼鈍後の鋼板の磁気特性を測定し、その測定結果から一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織を予測し、該予測した集合組織が所定の目標範囲内となるよう、一次再結晶焼鈍の加熱過程における500〜700℃間の昇温速度を制御することを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 上記磁気特性は、鋼板の圧延方向に対する磁化方向および磁化力を種々に変えて測定した磁束密度であることを特徴とする請求項4に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 上記昇温速度を、一次再結晶焼鈍後の鋼板の集合組織の予測結果に基き、フィードバック制御することを特徴とする請求項4または5に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 上記一次再結晶焼鈍で700℃以上の温度に加熱した後、180℃以下まで冷却し、磁気特性を測定した後、均熱温度まで再加熱して一次再結晶焼鈍を完了させることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  8. 上記集合組織の指標に、M方位およびS方位のランダム強度比を用いることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。ここで、上記M方位は{111}<112>を、S方位は{411}<148>を示す。
  9. 上記M方位のランダム強度比が5.0〜6.2、S方位のランダム強度比が3.4〜4.1の範囲となるよう一次再結晶焼鈍の昇温速度を制御することを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  10. 上記一次再結晶焼鈍の加熱過程における200〜500℃間のいずれかの温度で0.5秒以上5秒以下の時間保持する保定処理を施すことを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  11. 上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Al:0.010〜0.050mass%およびN:0.003〜0.020mass%を含有し、あるいは、Al:0.010〜0.050mass%、N:0.003〜0.020mass%、Se:0.003〜0.030mass%および/またはS:0.002〜0.03mass%を含有することを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  12. 上記鋼素材は、不可避的不純物として、Al,N,SおよびSeをそれぞれAl:0.01mass%未満、N:0.0050mass%未満、S:0.0050mass%未満およびSe:0.0030mass%未満含有することを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  13. 上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、Ni:0.010〜1.50mass%、Cr:0.01〜0.50mass%、Cu:0.01〜0.50mass%、P:0.005〜0.50mass%、Sb:0.005〜0.50mass%、Sn:0.005〜0.50mass%、Bi:0.005〜0.50mass%、Mo:0.005〜0.100mass%、B:0.0002〜0.0025mass%、Te:0.0005〜0.0100mass%、Nb:0.0010〜0.0100mass%、V:0.001〜0.010mass%およびTa:0.001〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項11または12に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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