JP2015188431A - 生物時計の電気化学的検出 - Google Patents

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晃一 西尾
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Abstract

【課題】生物時計を電気化学的に検出するための電子伝達分子を提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、遺伝子改変に依らずに生物時計を検出することができる電子伝達分子、該電子伝達分子を用いた生物時計を検出するシステム及び方法を提供する。本発明の電子伝達分子は、細胞外電極と細胞内の酸化還元活性分子との間での電子交換を実現させるための適切な酸化還元電位を有し、生物時計に伴う体内の酸化還元状態の周期的変動を培地の開放電位へと伝達させ、こうした開放電位の電気化学的計測を介して、生物時計を検出することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、生物時計を電気化学的に検出するための電子伝達分子、該電子伝達分子を用いた生物時計を検出するシステム及び方法に関する。
地球上の生物が環境に適応するために用いている、約24時間周期という概日リズムを維持するための生物時計(概日時計又はサーカディアン・クロックともいう)は、個体の代謝や遺伝子発現に大きな影響を及ぼす生命現象の一つである。生物の生理機能は、昼/夜の光や温度の変化に対応して変化している。例えば、植物の開花、休眠の他、鳥又はミツバチに見られる方向感覚も上記のリズムによって制御されているといえる。
このように生物の生理機能は生物時計の刻む概日リズムによって制御されているが、現代社会では、特に、ヒトは自らの概日リズムに反する生活を強いられ、不眠症や時差ボケに悩まされることが多い。また、うつ病や神経症などの疾患も概日時計の異常との関連が深い。このように、生物時計の崩壊は、概日リズム障害及び各種疾患をもたらす。生物の持つこうした概日リズムを生じさせる基本振動は生物の細胞中で発生することは知られている。しかしながら、この基本振動の発生やそれが生物の活動に反映される機構については十分に解明されていない。
これまで、細胞レベルにおいて、生物時計を調節し得る可能性のある遺伝子が見出されつつあり、細胞における概日リズムの調節について検討されてきた(特許文献1)。しかしながら、生物時計の計測は、主に、発光遺伝子を導入するといった遺伝子操作が用いられるため、遺伝子操作で発光株を作成するために、対象種の遺伝情報が既知である必要がある。
生物時計において、上記のような遺伝子発現と関連した遺伝子の時計と同期して、生体内での酸化還元状態(代謝)が概日リズムを刻むことが分かってきた。また、この酸化還元状態の概日リズムは、生物種(例えば、シアノバクテリア、菌類、藻類、植物、哺乳動物)を超えて普遍的に存在することも分かってきた。こうした背景を鑑みると、ある物質あるいはシステムの酸化還元状態の自在制御が可能である電気化学的手法は、生物時計の制御および計測の観点から非常に有力なツールとなる。これまで、ビタミンKなどの酸化還元活性分子が電子伝達分子として機能し、細胞外電極との間の(細胞外)電子移動(EC−EET)によって、微生物の酸化還元状態を制御できることが見出された(非特許文献1)。しかしながら、ビタミンKの脂溶性により、タンパク質吸着、細胞膜内蓄積、又は高濃度キノン分子の細胞毒性により、細胞活性の低下や細胞の寿命の低下化が指摘されていた(非特許文献2)。
一方、本発明者らは、電子伝達分子として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とビニルフェロセンの共重合体であるポリ(MPC−co−VF)(PMF)を開発した。これにより、生細胞内の酸化還元状態、及び生物時計が、電子伝達分子を用いた細胞外電子移動(EC−EET)によって制御され得ることを見出した(非特許文献3及び4)。より具体的には、概日リズムを刻む生物時計を単細胞レベルで有する、シアノバクテリアの一種の光合成細菌シネココッカス・エロンガタス(Synechococcus elongatus)をモデル系として用いて、インビボにおけるクロロフィル蛍光のモニタリングの結果、プラストキノンプールの酸化還元状態が、電極電位を単純に変化させることによってEC−EETを用いて制御され得ることが見出されている。しかしながら、使用したPMFの固有の酸化還元電位が高く、細胞から電子を周期的に引き抜くことによって生物時計を制御できるが、細胞外から細胞内に電子を入れるための電子伝達分子として機能しておらず、生物時計を検出するには至っていない。
特開2009−183197号公報
Rabinowitz, D. J., et al., J. Am. Chem. Soc., 120, 2464-2473 (1998) Sikkema, J., et al., Microbiol. Rev., 59, 201-222 (1995) Nishio, K., et al., ChemPhysChem, 14, 2159-2163 (2013) Lu, Y., et al., Angew. Chem. Int. Ed., 53, 2208-2211 (2014)
本発明は、対象生物種に依存しない、生物時計を電気化学的に検出するための電子伝達分子、該電子伝達分子を用いた生物時計を検出するシステム及び方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、細胞外電極と細胞内の酸化還元活性分子との間での電子交換を実現させるための適切な酸化還元電位を有する電子伝達分子を作製し、これにより生物時計に伴う体内の酸化還元状態の周期的変動を培地の開放電位へと伝達させ、こうした開放電位の電気化学的計測を介して、生物時計を検出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
[1]生物時計に伴う生体内の酸化還元状態の周期的変動を測定するための電子伝達分子であって、該分子内にフェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン錯体、フェナジンメトサルフェート(「PMS」)誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー及び2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(「DCPIP」)誘導体からなる群から選択される酸化還元分子を1種以上含む電子伝達分子。
[2]生物時計に伴う生体内の酸化還元状態の周期的変動を測定するための電子伝達分子であって、下記:
(i)フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン誘導体、PMS誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー、又はDCPIPを側鎖に有する、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体;及び
(ii)アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体
を重合してなる共重合体である電子伝達分子。
下記一般式(I):
Figure 2015188431
(式中、
〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
Xは、C1−6アルキル基、ハロC1−6アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、qは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
Yは、単結合、−C(=O)NR−、−C(=O)O−、−O−、−NR−、−O(C=S)NR−、−NR(C=O)O−、−NR(C=S)O−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR、−NRSO−、−NRSO−、−NRSONR−、及び−NRSONR−(ここで、Rは水素原子又はC1−6アルキル基である)からなる群から選択され;
Lは、単結合、式−(A)−(式中、Aは、独立して、−C(R10−、−CR10=CR10−、−C≡C−、又は−C(R10C(=O)O−(ここで、R10は水素原子又はC1−6アルキルである)、及びrは1〜20の整数である)を有する合成リンカー基であり;
mは、10〜10,000の整数を表し;並びに
nは、10〜10,000の整数を表す)
で表される、上記[1]に記載の電子伝達分子。
[4]前記式(I)において、R〜Rがメチル基であり、Xがメチル基であり、Yが−C(=O)NH−であり、及びLがメチレン基である、上記[3]に記載の電子伝達分子。
[5]上記請[1]〜[4]のいずれか一つに記載の電子伝達分子を用いて生物時計を電気化学的に検出するためのシステムであって、
(i)作用極及び対極を内部に具備したセル;及び
(ii)上記セル内で培養される細胞からの電位を測定するための測定手段
を備えたシステム。
本発明は、遺伝子改変に依らず、また生物種を問わずに可逆的な生物リズムを検出することができる。これにより、本技術は、生物機能の産業的利用や創薬研究に直接的又は間接的に応用することができる。
本発明の生物時計検出システムを用いて測定した、シネココッカス・エロンガタス(PCC7942)を含む培地の開放電位(細胞内の酸化還元状態を反映)の周期的変動を示す結果である。縦軸は対極に対する作用電極の電位(mv)を示す。
本発明は、対象生物種に依存しない、生物時計、すなわち細胞内の酸化還元状態を電気化学的に検出するための電子伝達分子、該電子伝達分子を用いた生物時計を検出するシステム及び方法に関する。以下、本発明の説明のために、好ましい実施形態に関して詳述する。
1.生物時計と酸化還元状態
本明細書で使用する「生物時計」とは、当業者に周知である一般的な意味から逸脱するものではなく、普遍的に保存された内因性生化学ペースメーカーであって、24時間リズムを有する生物学的プロセスを制御して得る概念である。また、この生物時計は、シアノバクテリア、菌類、藻類、植物、及び哺乳動物などの様々な生物に見出されている。環境変動への内因性サーカディアンリズムの同調には、生物種によって変化に富む多数の細胞機構成分が関与する分子時間調節機構が必要とされる。特に、細胞内の酸化還元状態は、種々の生物学的プロセスに影響を及ぼし、サーカディアンリズムと密接に関係していることが知られている。例えば、哺乳動物における内因性サーカディアンリズムの主要なペースメーカーである視交叉上核(SCN)の酸化還元状態は、SCNニューロン活動に直接影響を及ぼす昼/夜変化を示す。さらに、ほぼ全ての生物において見出される酵素であるペルオキシレドキシンは、広範な細胞型(ヒト血球などの核及びDNAを持たない細胞も含む)における酸化/還元の日周リズムを有する。複数の系における新たな証拠によれば、細胞の酸化還元状態は、生物時計の機能に本質的であることが示唆されている。
本発明は、電子伝達分子によって誘起される、細胞外電極と細胞内の間の細胞外電子移動(EC−EET)に基づいて、細胞内の酸化還元状態(具体的には、酸化還元電位)を測定することを本質とする。ここで、本明細書で使用するとき、「細胞外電子移動(EET)」とは、生細胞の細胞内電子が細胞膜を横切って、細胞外の電極に授受されるプロセスを指す。このプロセスを媒介する分子を電子伝達分子又は電子メディエーターと称する。電子伝達分子の存在下、EETプロセスのための細胞外の電子供与体/受容体として電極を利用することができる。電子移動の方向(電子の流入と放出)及び速度は、単に加電圧を変化させることによって制御可能である。上記の通り、細胞内の酸化還元状態が酸化還元種の交換によって決定されるため、このような電気化学的手法によるEET(EC−EET)を用いることによって、酸化還元状態、すなわち生物時計の外部制御を行うことができる。
生物時計(細胞内の酸化還元状態)を検出するためのモデル実験系として、シアノバクテリアの一種であるシネココッカス・エロンガタス(PCC7942)を用いることができる。当業者に知られているように、S.エロンガタス細胞のサーカディアンリズムは、3つの生物時計タンパク質(KaiA、KaiB、及びKaiC)の結合機能に起因している。KaiA及びKaiBタンパク質は、KaiCの自己リン酸化活性を増強/軽減することによって、サーカディアンペースメーカーを調節する。最近、酸化型(還元型ではない)キノンが、KaiA機能を抑制することによって時計の位相をリセットすることが報告されている。細胞内キノンの酸化還元平衡が環境の光強度によって影響を受けるため、KaiAの酸化還元反応性リン酸化機能は、環境の明/暗サイクルと内因性の分子振動を橋渡しする。酸化型キノンが熱的摂動と同様にして時計をリセットし得ることが示されているが、この作用は一時的である。これまで、生物時計の連続的制御を目的として、本発明者らは、電子伝達分子(電子メディエーター)として、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とビニルフェロセンの共重合体であるポリ(MPC−co−VF)(PMF)を開発したが、PMF固有の酸化還元電位の高さにより、生物時計を検出することができない。そこで、本発明者らは、以下に詳述するように、PMFよりも固有の酸化還元電位が低い電子伝達分子を製造することによって、生物時計を検出することに成功した。
2.生物時計の検出対象
本発明は、後述する本発明の電子伝達分子及びシステムを用いることにより、対象生物種に依存せずに、生物時計を検出することができる。よって、検出対象は、限定されないが、シアノバクテリア、菌類の細胞、藻類の細胞、植物細胞、哺乳動物細胞(ヒト細胞を含む)が挙げられる。なお、哺乳動物細胞には、生物時計が存在することが知られている、核を有しない赤血球が含まれる。上記した通り、シアノバクテリアの一種の光合成細菌シネココッカス・エロンガタス(Synechococcus elongatus)は、概日リズムを刻む生物時計を単細胞レベルで有することで知られ、本発明の電子伝達分子及びシステムの有効性を検証するために適したモデル系として使用することができる。また、別の一態様として、検出対象は、細胞レベルに限定されず、上記細胞等を含む生体自体であってもよい。
3.生物時計を検出するためのシステム
本発明によれば、生物時計に伴う生体内の酸化還元状態の周期的変動を測定するために使用されるシステムを提供することができる。本発明のシステムは、細胞内の酸化還元状態を反映し得る培地の開放電位の周期的変動を検出することができる限り、該システムを構成する手段及び部材は限定されない。検出対象が細胞である場合、細胞を含む液体試料(細胞培養液、血液など)及び電子伝達分子を注入するためにセルなどの容器を用意し、セルに具備された電極を用いて細胞内の酸化還元状態を測定してもよい。別の態様として、電子伝達分子が予めコーティングされたチップを用いて、該チップ上に上記の液体試料を添加し、電極を用いて細胞内の酸化還元状態を測定してもよい。さらに別の態様では、電子伝達分子が予めコーティングされた電極を皮膚に接触させることによって、生体の酸化還元状態を測定してもよい。
本発明のシステムの典型例を以下に示す。一実施形態において、本発明は、後述する電子伝達分子を用いて生物時計を電気化学的に検出するためのシステムであって、
(i)作用極及び対極を内部に具備したセル;及び
(ii)上記セル内で培養される細胞からの電位を測定するための測定手段
を備えたシステムを提供することができる。
電極を具備したセルは、酸化還元状態を測定中に液体試料を維持できる形状及び部材のものであればよい。絶縁性部材で作製されていることが好ましく、バイオセンサーで一般に使用され得るものであってよい。このような絶縁性部材として、限定されないが、シリコン、ガラス、ガラスエポキシ、セラミック、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、及びポリイミドが挙げられる。
本発明において使用されるセルは、作用極及び対極を内部に具備した二極系電気化学セルであってもよく、場合により、参照極を備えた三極系電気化学セルであってもよい。本明細書で使用するとき、「作用極」とは、本システムにおいて、所望の反応を起こさせる電極を指す。作用極としては、限定されないが、透明電極tin−doped−I2O3(ITO)、白金、炭素などを用いることができる。「対極」とは、作用極に対して、電流を流す相手となる別の電極を指す。対極としては、限定されないが、Pt線、Ag|AgCl電極、SCE電極などを用いることができる。本発明のシステムには、作用極と対極間の電位差を測定するための測定手段を備える。該測定手段は、限定されず、一般的に使用されているロガー、ポテンシオスタットなどを用いることができる。
本発明によれば、生物時計は、電位差の測定のみならず、電流の測定によっても検出することができる。この場合、上記セル内に電位印加装置を具備することが好ましい。電流を測定する場合、参照極を備えた三極系電気化学セルを用いることがより好ましい。
本発明のさらなる実施形態において、本発明のシステムは、細胞及び培養液をセル内に注入する注入手段、及び/又はセル内に配置される調節部等を含んでもよい。ここで、本発明のシステムに使用される「調節部」とは、生物時計の検出を支援するための、セル内に配置された制御手段等を備えた機器類を意味する。具体的には、調節部は、限定されないが、セル内で培養細胞を維持するための手段であって、培養液の温度及び/又はpHを制御するための制御手段、並びにセル内の圧力/CO濃度を調節するための調節手段を含むことができ、さらに、細胞内の酸化還元状態の周期的変動を測定するために使用される電子伝達分子を培地内に供給するための供給手段を含んでもよい。上記制御手段及び調節手段は、細胞を培地中で維持するための一般的な培養条件を提供することができるものであってよく、当業者が周知の手段、装置等を使用することができる。また、上記供給手段は、電子伝達分子を適切な時期に所定量を供給するために使用される手段であって、電子伝達分子を貯留するための容器、セル内に電子伝達分子を適切な時期に所定量を添加するための制御機器類を含んでもよい。セル内に添加される電子伝達分子の濃度は、限定されないが、0.1〜2g/Lであり、好ましくは0.2〜1g/Lである。
本発明によれば、上記システムを用いて生物(細胞)の生物時計を検出することができる。生物時計の検出は、基本的には、電子伝達分子及び電極を用いる電気化学的手法に基づくものであるが、以下に、検出原理を簡単に説明する。上述したように、シネココッカス・エロンガタスにける生物時計は、生物時計の主要タンパク質であるKaiCのリン酸化及び脱リン酸化に基づくが、このKaiCのリン酸化及び脱リン酸化の制御は、プラストキノンの酸化状態にのみ結合するKaiAの働きによる。プラストキノンの還元型(昼)と酸化型(夜)の24時間周期でリズムを刻んでいる。そのため、培地内にEETプロセスを実現する電子伝達分子を加えることによって、プラストキノンの酸化還元状態の変動が、培地の酸化還元状態の変化を引き起こすため、培地内に設置した細胞外電極により培地の酸化還元状態の変化を検出することができる。最終的には、KaiCによる生物時計を検出することができるようになる。
本発明者らが従前開発したPMFの固有の酸化還元電位は+0.5V vs.SHEと高いため、細胞内にPMFが入ったとしても、PMFが、細胞内の電子伝達に関与するチトクロムb6f複合体(Cyt b/f)(酸化還元電位:+0.36V)やプラストシアニン(PC)(酸化還元電位:+0.4V)から電子を引き抜くことはできるが、電子を受容した後のPMFが電極に電子を与えることはできない。これに対して、実施例1に詳述する本発明の電子伝達分子であるMe−PMFは、酸化還元電位が+0.2Vと低いため、上記のCyt b/f(+0.36V)やPC(+0.4V)に電子を与え、反対に、プラストキノン(PQ)(+0.1V)から電子を引き抜くことができる。すなわち、本発明の電子伝達分子においては、その酸化還元電位の低さゆえに、プラストキノンの酸化還元状態の変動が、培地の開放電位の変動へと伝えられる。したがって、培地の開放電位の変動を細胞外電極により計測することによって、細胞内の酸化還元状態の変動、すなわち概日時計を検出することができる。
4.電子伝達分子
本発明の生物時計に伴う生体内の酸化還元状態の周期的変動を測定するために使用される電子伝達分子は、上記測定を可能にする電子メディエーターとして機能するものであれば特に限定されない。本発明の一実施形態として、本発明の電子伝達分子としては、限定されないが、フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン錯体、フェナジンメトサルフェート(「PMS」)誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー及び2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(「DCPIP」)誘導体からなる群から選択される酸化還元分子を1種以上含む化合物が挙げられる。本発明の電子伝達分子に含まれる酸化還元分子は、好ましくは、フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体である。錯体形成の可能な金属イオンとしては、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+が挙げられる。なお、上記に列挙した誘導体が、電子メディエーターとして機能し得るためには金属錯体であり得る。また、本発明によれば、上述したシクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導などを含む大環状化合物もまた、本発明の検出システムにおいて使用することができる。
フェロセン誘導体には、限定されないが、フェロセン、アセチルフェロセン、ベンゾイルフェロセン、n−ブチルフェロセン、フェロセン モノカルボン酸、ブチリルフェロセン、シクロヘキシルフェロセン、シクロペンテニルフェロセン、ジメチルアミノメチル フェロセン、エチルフェロセン、ヘキサノイルフェロセン、ヘキシルフェロセン、オクタノイルフェロセン、ペンタノイルフェロセン、ペンチルフェロセン、プロピオニルフェロセン、プロピルフェロセン、1,1’−ジアセチル フェロセン、1,1’−ジブチル フェロセン、1,1’−ジブチリルフェロセン、1,1’−ジエチルフェロセン、1,1’−ジヘキサノイルフェロセン、1,1’−ジヘキシルフェロセン、1,1’−ジプロピルフェロセン、4−フェロセノイル酪酸、4−フェロセノイル酪酸エステル、3−フェロセノイルプロピオン酸、3−フェロセノイルプロピオン酸エステル、フェロセニル酢酸、フェロセニルアセトニトリル、4−フェロセニル酪酸、4−フェロセニル酪酸エステル、フェロセニルカルボキシアルデヒド、フェロエニルカルボン酸、フェロセニルエタノール、フェロセニルメタノール、5−フェロセニル吉草酸、5−フェロセニル吉草酸エステル、カトセン−(2,2ビス(エチルフェロセニル)プロパン、アミノフェロセン、ホルムアミドフェロセン、イソシアノフェロセン、イソチオシアナトフェロセン、及びジホスフィン−1;1’ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが挙げられる。
一態様では、フェロセン誘導体として、上記の具体的な誘導体を基本骨格とし、さらに適切な置換基で置換された任意の誘導体を用いることができる。例えば、フェロセンを基本骨格とした場合、下記式:
Figure 2015188431
で表される誘導体を使用することができる。ここで、上記式中、R〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基であってもよい。
シクラム誘導体には、限定されないが、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(「シクラム」)、メチルシクラム、1,8−ビス(ピリジルメチル)シクラム、1,11−ビス(ピリジルメチル)シクラム、4−[1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカ−1−イル]−メチル安息香酸(「CPTA」)、及びジオキシシクラムが挙げられる。なお、上述の通り、電子メディエーターとして機能し得るためには金属錯体であり得る。一態様では、シクラム誘導体として、上記の具体的な誘導体を基本骨格とし、さらに適切な置換基で置換された任意の誘導体を用いることができる。例えば、シクラム金属錯体を基本骨格とした場合、下記式:
Figure 2015188431
で表される誘導体を使用することができる。ここで、上記式中、R〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基であってもよい。また、Mは、金属イオンを表し、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+であってもよい。
ポルフィリン誘導体は、化学的構造の一部分としてポリピロール環を含む分子であって、限定されないが、ポルフィリン、2,3−ジヒドロポルフィリン、2,3,7,8−テトラヒドロポルフィリン、5,10,15,20,22,24−ヘキサヒドロポルフィリン、5,10,15,20−テトラアザポルフィリンが挙げられる。なお、上述の通り、電子メディエーターとして機能し得るためには金属錯体であり得る。一態様では、ポルフィリン誘導体として、上記の具体的な誘導体を基本骨格とし、さらに適切な置換基で置換された任意の誘導体を用いることができる。例えば、ポルフィリン金属錯体を基本骨格とした場合、下記式:
Figure 2015188431
で表される誘導体を使用することができる。ここで、上記式中、R〜R12は、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基であってもよい。また、Mは、金属イオンを表し、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+であってもよい。
ピリジン誘導体は、電子メディエーターとして機能し得るために金属錯体を形成し得るものであれば特に限定されない。例えば、ピリジン誘導体の金属錯体としては、下記式:
Figure 2015188431
Figure 2015188431
で表される構造を有するものが挙げられる。ここで、上記式中、R〜R16は、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基であってもよい。また、Mは、金属イオンを表し、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+であってもよい。
サイクレン誘導体は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(「サイクレン」)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(「DOTA」)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトライルテトラキスメチレンテトラキスホスホン酸が挙げられる。なお、上述の通り、電子メディエーターとして機能し得るためには金属錯体であり得る。一態様では、サイクレン誘導体として、上記の具体的な誘導体を基本骨格とし、さらに適切な置換基で置換された任意の誘導体を用いることができる。例えば、サイクレン金属錯体を基本骨格とした場合、下記式:
Figure 2015188431
で表される構造を有するものが挙げられる。ここで、上記式中、R〜R12は、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミノ基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基であってもよい。また、Mは、金属イオンを表し、限定されないが、Fe2+、Fe3+、Co2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Al3+であってもよい。
上記で具体的に定義した電子伝達分子以外の誘導体及び錯体については、一般的な定義に従うものとし、当業者であれば容易に理解し得るものである。
本発明の電子伝達分子としては、上述した酸化還元分子を1種以上側鎖に有する重合体を用いることができる。酸化還元分子を導入するために使用される、官能基(ピリジル基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基等)を有する単量体としては、例えば、以下のものから選択される:
(1)親水性単量体、例えば、
− 少なくとも1つのカルボン酸又はスルホン酸官能性を含むエチレン性不飽和単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、及びこれらの塩;
− 少なくとも1つの第3級アミン官能性を有するエチレン性不飽和単量体、例えば、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、及びこれらの塩;
− 式CH=C(CH)−COOR(式中、Rは、メチル、エチル、プロピル又はイソブチル基等の1〜4個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基を表し、該アルキル基は、ヒドロキシル基(例えば、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート)及びハロゲン原子(Cl、Br、I又はF)(例えば、トリフルオロエチルメタクリレート)から選択される1以上の置換基で置換されている)のメタクリレート;
− 式CH=C(CH)−COOR(式中、Rは、O、N及びSから選択される1以上のヘテロ原子が任意に介在する直鎖又は分岐C−C12アルキル基を表し、該アルキル基は、ヒドロキシル基及びハロゲン原子(Cl、Br、I又はF)から選択される1以上の置換基で置換されている)のメタクリレート;
− 式CH=CHCOOR(式中、Rは、ヒドロキシル基(例えば、2−ヒドロキシプロピルアクリレート及び2−ヒドロキシエチルアクリレート)及びハロゲン原子(Cl、Br、I又はF)から選択される1以上の置換基で置換されている直鎖又は分岐C−C12アルキル基を表し、あるいは、Rは、例えばメトキシ−POE等の5〜30のオキシエチレン単位の繰り返しを有する(C−C12)アルキル−O−POE(ポリオキシエチレン)を表し、あるいは、Rは、5〜30のエチレンオキシド単位を含むポリオキシエチレン化基を表す)のアクリレート;
(2)1以上のケイ素原子を含むエチレン性不飽和単量体、例えば、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及びメタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン、及びこれらの混合物。
一態様では、酸化還元分子を側鎖に有する重合体は、上記単量体の側鎖上の官能基と反応して結合し得る官能基(以下、「対応官能基」という)を有するように酸化還元分子を修飾し、その後、該単量体と重合させることによって得ることができる。ここで、対応官能基の例としては、単量体の側鎖上の官能基が酸性基(例えば、カルボキシル基、リン酸基)である場合には、酸化還元分子には、置換基として、塩基性基(例えば、第一級又は第二級アミン、好ましくはエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基)が導入されていることが好ましい。なお、上記酸性基と塩基性基からアミド結合を形成させるために、縮合剤(例えば、エチル(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等)を用いてもよい。
他の態様では、酸化還元分子を側鎖に有する重合体は、上述した第3級アミン官能性を有するエチレン性不飽和単量体のうち4−ビニルピリジン又は2−ビニルピリジンを側鎖に有する重合体を用いることができる。例えば、側鎖に4−ビニルピリジンを有する場合、該ピリジン環上の窒素原子が、酸化還元分子に配位した金属イオンに配位結合することによって、実質的に酸化還元分子を側鎖に有する重合体を合成することができる。
別の態様では、酸化還元分子を側鎖に有する重合体は、上述した単量体のうちの少なくとも2つ以上を構成単位として有する共重合体であってもよい。このような共重合体の例としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとフェロセン誘導体との共重合体、アクリル酸と4−ビニルピリジンとの共重合体にさらに酸化還元分子が配位した共重合体などが挙げられる。
より具体的には、本発明の電子伝達分子は、下記:
(i)フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン誘導体、PMS誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー、又はDCPIPを側鎖に有する、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体;及び
(ii)アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体
を重合してなる共重合体であってもよい。なお、上記(i)に示される側鎖に酸化還元分子を有する単量体の調製は、一般的なカップリング反応を用いて行ってもよい。例えば、主鎖としてアクリル酸を用いる場合、アクリル酸の側鎖であるカルボキシル基と、酸化還元分子中の置換基の1つであるC1−6アルキルアミノ基とを適切な縮合剤を用いて結合させることによって、酸化還元分子を側鎖に有する単量体を得ることができる。
本発明の電子伝達分子として、上記(i)の単量体と(ii)の単量体を重合させて共重合体を製造する場合、製造方法は限定されず、一般的な重合法に従って所望の共重合体を得ることができる。したがって、所望の共重合体を目的とする場合、(ii)の単量体を重合化し、その後、側鎖に酸化還元分子を導入してもよい。
酸化還元分子の導入率(重合度)は、重合条件(単量体量、溶媒、重合温度、重合時間など)を適宜調整することによって変更することができる。本発明の共重合体は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などの公知の方法を用いて、重合温度0〜100℃にて、重合時間10分〜72時間の条件下で重合させるによって得ることができる。なお、得られる共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
一般的に、重合開始剤としては、特に限定されないが、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチルアミド二水和物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ターシャリブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ターシャリブチルペルオキシピバレート、ターシャリブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などが挙られる。これらの重合開始剤を1種又は2種以上を用いてもよい。また、重合開始剤の使用量は、全不飽和単量体に対して0.01から5重量%が好ましく使用される。共重合体の精製は、再沈殿法、透析法、限外濾過法などの一般的な精製法により行うことができる。なお、本発明の好ましい態様としての2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とオクタメチルビニルフェロセンとの共重合体(以下、単に「Me−PMF」と記載することがある)の製造は、後述する実施例1を参照されたい。
本発明の共重合体を溶液重合によって合成する場合、溶媒として、限定されないが、エタノール、テトラヒドロフラン、メタノール、エーテル、ベンゼン、DMSO、DMFなどを用いてもよい。
本発明に使用する共重合体の重合度は、特に限定されないが、20〜200,000であることが好ましい。ここで、共重合体を他の素材にコーティングして使用する場合、共重合体を溶媒に溶解して用いることができ、この場合、共重合体溶液の粘度の関係から共重合体の重合度は100〜50,000であることがより好ましく挙げられる。
典型的な例として、本発明によれば、下記の一般式(I)で表される共重合体を用いることができる。
Figure 2015188431
上記式(I)中、「n」及び「m」は、それぞれ、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とビニルフェロセン誘導体の重合度を表す。具体的には、mは10〜10,000の整数を意味する。「m」は、好ましくは10〜5,000であり、より好ましくは20〜2,000であり、さらに好ましくは20〜1,000である。一方、「n」は、好ましくは10〜5,000であり、より好ましくは20〜2,000であり、さらに好ましくは20〜1,000である。
上記式(I)中、R〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミン基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基を表す。
上記式(I)中、Xは、C1−6アルキル基、ハロC1−6アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、qは、1〜6の整数である)からなる群から選択される置換基を表す。種々の置換基の定義については、上述した通りである。
上記式(I)中、Yは、単結合、−C(=O)NR−、−C(=O)O−、−O−、−NR−、−O(C=S)NR−、−NR(C=O)O−、−NR(C=S)O−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR、−NRSO−、−NRSO−、−NRSONR−、及び−NRSONR−(ここで、Rは水素原子又はC1−6アルキル基である)からなる群から選択される基を表す。
上記式(I)中、Lは、単結合、式−(A)−(式中、Aは、独立して、−C(R10−、−CR10=CR10−、−C≡C−、又は−C(R10C(=O)O−(ここで、R10は水素原子又はC1−6アルキルである)、及びrは1〜20の整数である)を有する合成リンカー基である。
本発明の典型的な一態様として、本発明は、上記式(I)において、R〜Rがメチル基であり、Xがメチル基であり、Yが−C(=O)NH−であり、及びLがメチレン基である、下記式(II):
Figure 2015188431
で表される電子伝達分子が提供される。なお、上記式(I)における置換基に限らず、上述した全ての式中の置換基における具体的な各置換基の定義は、以下の通りである。
本明細書で使用するとき、「C1−6アルキル基」とは、炭素数1〜6個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、1−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基が挙げられる。好ましくは、メチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基、より好ましくはメチル基である。
本明細書で使用するとき、「C1−6アルキルアミン基」とは、炭素数1〜4個の直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味し、例えば、 メチルアミン基、エチルアミン基、n−プロピルアミン基、イソプロピルアミン基、n−ブチルアミン基、イソブチルアミン基、sec−ブチルアミン基、tert−ブチルアミン基、ジメチルアミン基、トリメチルアミン基、ジエチルアミン基、トリエチルアミン基、ジイソプロピルエチルアミン基が挙げられる。好ましくは、n−プロピルアミン基である。
本明細書で使用するとき、「ハロC1−6アルキル基」とは、同一若しくは異なった1個〜置換可能な最大数のハロゲン原子で置換されているC1−6アルキル基であり、例えば、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、モノブロモメチル基、モノヨードメチル基又は2,2,2−トリフルオロエチル基等が挙げられる。
本明細書で使用するとき、「C1−6アルキルオキシ基」とは、上記C1−6アルキル基が酸素原子に結合した基を意味する。具体的には、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基が挙げられる。
本明細書で使用するとき、「ハロC1−6アルキルオキシ基」とは、同一であるか又は異なっていてもよい1〜5個のハロゲン原子が前記C1−6アルキルオキシ基に結合した基を意味し、例えば、トリフルオロメチルオキシ基、2−フルオロエチルオキシ基、2−クロロエチルオキシ基、2−ブロモエチルオキシ基、3−フルオロプロピルオキシ基、3−クロロプロピルオキシ基、4−フルオロブチルオキシ基、4−クロロブチルオキシ基、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ基、3,3,3−トリフルオロプロピルオキシ基、ペンタフルオロエチルオキシ基、2,2,2−トリフルオロ−1−トリフルオロメチルエチルオキシ基である。好ましくは、トリフルオロメチルオキシ基、2−フルオロエチルオキシ基、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ基であり、より好ましくは、トリフルオロメチルオキシ基、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ基である。
本明細書で使用するとき、「C1−6アルキレン基」とは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を意味する。具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、s−ブチレン基、t−ブチレン基等が挙げられる。
なお、その他の置換基については、当業者が認識する一般的な定義に従うものとする。
以下、製造例及び実験例を挙げて本発明の構成及び効果をより明確に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例1:ポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−co−オクタメチルビニルフェロセン)(Me −PMF)の製造
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)は、石原一彦教授(東京大学)から提供された。下記のスキーム1に従って、Me−PMF(「S6」)を合成した。
Figure 2015188431
オクタメチルフェロセン(「S1」)を含む他の化合物については、Sigma−Aldrich、又はWako Chemicalsから購入し、さらに精製することなしに使用した。
(1)オクタメチルフェロセンカルボアルデヒド(「S2」)の合成
S2は、若干の変更を伴うが、Zou,C.& Wrighton,M.S.,J.Am.Chem.Soc.,112,7578−7584(1990)に記載の手法に従って合成した。具体的には、オクタメチルフェロセン(5.00g、16.8mmol)、乾燥CHCl(100mL)、及び乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(6.5mL、84mmol)を窒素雰囲気下で撹拌しながら、100mLの二口丸底フラスコに添加した。次に、塩化ホスホリル(7.8mL、84mmol)を添加した。混合物を還流しながら一晩撹拌した。得られた溶液を氷を用いて0℃に冷却し、酢酸カリウム水溶液(15%、50mL)を滴下した。この混合物を大気中で30分間撹拌し続けた。CHClと水を用いて混合物を抽出した。有機溶媒を蒸発させ、3時間、真空乾燥させて、暗紫色の粉末として表題オクタメチルフェロセンカルボアルデヒド(5.13g、93%)を得た。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ (ppm): 10.0 (s, 1H, CHO), 3.45 (s, 1H, Cp), 2.04 (s, 6H, Me), 1.84 (s, 6H, Me), 1.70 (s, 6H, Me), 1.65 (s, 6H, Me).
(2)オクタメチルフェロセニルメチルアミン(「S3」)の合成
S3は、若干の変更を伴うが、Baramee,A,et al.,Bioorg.Med.Chem.,14,1294−1302(2006)に記載の手法に従って合成した。エタノール(100mL)中のS2(5.11g、15.7mmol)、水酸化ナトリウム(3.8g、94mmol)、及び水酸化塩化ヒドロキシルアミン(2.2g、32mmol)の混合物を100mLの二口丸底フラスコで、窒素雰囲気下で還流しながら3時間撹拌した。得られた溶液を室温まで温めた。この溶液をCHClと水を用いて抽出した。有機層をNaSO上で乾燥させた。溶媒を蒸発させ、オクタメチルフェロセニルカルボアルデヒドオキシムを橙色の粉末として得た。
合成されたオクタメチルフェロセニルカルボアルデヒドオキシムを窒素雰囲気下で乾燥THF(40mL)に溶解した。この溶液を窒素雰囲気下で撹拌しながら、乾燥THF(60mL)中のLiAlH4(2.3g、61mmol)の懸濁液に滴下した。混合物を還流しながら一晩撹拌した。この混合物を氷を用いて0℃以下にし、水を添加して加水分解した。次に、ジエチルエーテルを用いて抽出した。有機層をNaSO上で乾燥させ、有機溶媒を蒸発させて、表題オクタメチルフェロセニルメチルアミンを橙色粉末として得た(4.31g、83%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ (ppm): 3.50 (s, 2H, CH2), 3.27 (s, 1H, Cp), 1.82 (s, 6H, Me), 1.76 (s, 6H, Me), 1.73 (s, 6H, Me), 1.67 (s, 6H, Me).
(3)オクタメチルフェロセニルメチル・メタクリルアミド(「S4」)の合成
オクタメチルフェロセニルメチルアミン(1.70g、5.00mmol)および乾燥CHCl(40mL)を窒素雰囲気下で撹拌しながら、50mLの二口丸底フラスコに添加した。還流下でモレキューラーシーブを用いて乾燥させたトリエチルアミンを混合溶液に添加した。0℃に冷却し、メタクリロイルクロリド(0.94mL、10mmol)をこの混合溶液に添加した。得られた溶液を室温まで温め、2時間放置した。反応物を外気に晒し、水性NaCO(10%)をゆっくり添加し、氷を用いて0℃以下で反応を停止させた。飽和NaCl水溶液を用いて有機溶液を連続的に洗浄し、水で10倍に希釈した。NaSO上で有機層を乾燥させ、真空中で溶媒を除去した。残渣をCHClとヘキサンの混合物中に溶解した。再結晶させ、表題オクタメチルフェロセニルメチル・メタクリルアミドを黄色粉末として得た(1.31g、65%)。1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ (ppm): 5.60 (s, 1H, C=CH2), 5.51 (s, 1H, -NH-), 5.26 (s, 1H, C=CH2), 4.19 (d, 2H, -CH2-), 3.33 (s, 1H, Cp), 1.92 (s, 3H, MeC=CH2), 1.80 (s, 6H, MeCp), 1.76 (s, 6H, MeCp), 1.74 (s, 6H, MeCp), 1.69 (s, 6H, MeCp).
(4)Me−PMF(「S6」)の合成
重合開始剤としてα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を用いたフリーラジカル重合によってMe−PMFを合成した。MPC(0.22g、0.75mmol)、オクタメチルフェロセニルメチル・メタクリルアミド(0.20g、0.5mmol)およびAIBN(5mg、0.025mmol)を窒素雰囲気下でエタノール(5mL)中に溶解し、還流しながら48時間撹拌した。合成した重合体は、ジエチルエーテル中で再沈殿させ、次に、濾過して回収した。真空乾燥後、この重合体を水に溶解させ、0.2μmのメンブレンフィルターで濾過した。溶液を再生セルロースメンブレン(MWCO:1000)を用いて4日間透析した。その後、この重合体を凍結乾燥させ、得られた緑色粉末(0.034g,8%)を以下の実験に使用した。合成した重合体のMPCとオクタメチルフェロセンの比率は、UV−Vis吸収スペクトルによって特徴付けられた。10mMの臭化リチウムを含む、メタノールと水(70/30 v/v)の混合物中で、ゲル浸透クロマトグラフィーによって分子量を測定した。ポリ(エチレンオキシド)を本システムの較正のための標準試料として用いた。
実施例2:シネココッカス・エロンガタスの細胞培養
シネココッカス・エロンガタス(PCC7942)を30℃にて振とうしながら、2000luxで日周明/暗(12時間/12時間)サイクルとして、BG11培地中で規定通りに前培養した。シネココッカス・エロンガタス(PCC7942)は、ニュートラルサイトIにPkaiBC−luxABとニュートラルサイトIIにPpsbAI−luxCDEを有し、従来報告されているように生物発光測定のために使用した。
実施例3:電気化学的測定
単一チャンバーの三極システムを全ての電気化学的測定に使用した。このシステムにおいて、インジウムスズ酸化物(ITO:3cm)を作用極としてリアクターの底部に配置した。さらに、Ag/AgCl(sat.KCl)を対極として使用した。電気化学的測定を行うために、実施例1で作製した電子伝達分子(1g/LのMe−PMF)を添加した4mLのBG11をこのシステムチャンバーに添加し、N/CO(98/2 vol/vol)ガスを5分間、50mL/分にて充填した。次に、シネココッカス・エロンガタス細胞をシステムに注入し、730nmでの吸光度は2であった。電気化学培養は、特に記述がなければ、30℃にて行われた。撹拌せずに測定した。
上記のシステムチャンバーを用いてシネココッカス・エロンガタス細胞を電気培養した結果、作用極−参照極に電圧の周期的変動に応じて、測定した作用極−対極間の電位(mV)の周期的変動が生じた。これにより、システム内に添加した電子伝達分子により細胞外電子移動系が構築され、細胞の酸化還元状態を制御できるだけでなく、該システムによって、細胞の酸化還元状態、すなわち生物時計を検出することができた。
遺伝子改変に依らずに、また生物種を問わずに可逆的な生物リズムを検出することができ、生物機能の産業的利用や創薬研究に直接的又は間接的に応用することができる。
本明細書に引用する全ての刊行物及び特許文献は、参照により全体として本明細書中に援用される。なお、例示を目的として、本発明の特定の実施形態を本明細書において説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の改変が行われる場合があることは、当業者に容易に理解されるであろう。

Claims (5)

  1. 生物時計に伴う生体内の酸化還元状態の周期的変動を測定するための電子伝達分子であって、該分子内にフェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン錯体、フェナジンメトサルフェート(「PMS」)誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー及び2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(「DCPIP」)誘導体からなる群から選択される酸化還元分子を1種以上含む電子伝達分子。
  2. 生物時計に伴う生体内の酸化還元状態の周期的変動を測定するための電子伝達分子であって、下記:
    (i)フェロセン誘導体、シクラム誘導体、ポルフィリン誘導体、ピリジン誘導体、サイクレン誘導体、キノン誘導体、フェリシアン化カリウム、オスミウム錯体、ルテニウム錯体、フェノチアジン誘導体、PMS誘導体、p−アミノフェノール錯体、メルドーラブルー、又はDCPIPを側鎖に有する、アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体;及び
    (ii)アクリル酸、メタクリル酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、クロトン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、ビニル安息香酸、ビニルリン酸、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、及びジメチルアミノプロピルメタクリルアミドからなる群から選択される1種以上の単量体
    を重合してなる共重合体である電子伝達分子。
  3. 下記一般式(I):
    Figure 2015188431
    (式中、
    〜Rは、独立して、H;C1−6アルキル基;C1−6アルキルアミン基;ハロC1−6アルキル基;C1−6アルキルオキシ基;ハロC1−6アルキルオキシ基;C1−6アルキレン基;並びにハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、C1−6アルキル基、C3−6シクロアルキル基、ハロC1−6アルキル基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、pは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
    Xは、C1−6アルキル基、ハロC1−6アルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、窒素原子に1個以上のC1−6アルキル基を有していてもよいカルバモイル基、C1−6アルコキシ基、C1−6アルコキシカルボニル基、C1−6アシル基、C6−10アリール基及び5〜10員複素環式基からなる群から選択される1個以上の置換基で置換されてもよいフェニル基、5〜6員複素環式基又はフェニル−(CH−基(ここで、qは、1〜6の整数である)からなる群から選択され;
    Yは、単結合、−C(=O)NR−、−C(=O)O−、−O−、−NR−、−O(C=S)NR−、−NR(C=O)O−、−NR(C=S)O−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR、−NRSO−、−NRSO−、−NRSONR−、及び−NRSONR−(ここで、Rは水素原子又はC1−6アルキル基である)からなる群から選択され;
    Lは、単結合、式−(A)−(式中、Aは、独立して、−C(R10−、−CR10=CR10−、−C≡C−、又は−C(R10C(=O)O−(ここで、R10は水素原子又はC1−6アルキルである)、及びrは1〜20の整数である)を有する合成リンカー基であり;
    mは、10〜10,000の整数を表し;並びに
    nは、10〜10,000の整数を表す)
    で表される、請求項1に記載の電子伝達分子。
  4. 前記式(I)において、R〜Rがメチル基であり、Xがメチル基であり、Yが−C(=O)NH−であり、及びLがメチレン基である、請求項3に記載の電子伝達分子。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子伝達分子を用いて生物時計を電気化学的に検出するためのシステムであって、
    (i)作用極及び対極を内部に具備したセル;及び
    (ii)上記セル内で培養される細胞からの電位を測定するための測定手段
    を備えたシステム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019142813A (ja) * 2018-02-21 2019-08-29 周次 中西 細胞増殖抑制用医薬組成物
CN111239110A (zh) * 2020-02-10 2020-06-05 西北师范大学 一种具有聚集诱导发光性能的卟啉衍生物应用于电化学发光体系的构建方法

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