以下、給送装置を備えたプリンターの一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、電子機器の一例としてのプリンター11は、一例としてモバイル型のインクジェット式カラープリンターであって、薄型の略直方体形状を有する装置本体12を備える。この装置本体12の前面(図1では右面)には、ユーザーの入力操作等に用いられる操作パネル13が設けられている。操作パネル13には、例えば液晶パネルよりなる表示部14及び複数の操作スイッチからなる操作部15が設けられている。操作部15には、電源スイッチ15a、表示部14のメニュー画面上で所望の選択項目を選択する際に操作される選択スイッチ15b及びキャンセルスイッチ15c等が含まれる。なお、操作パネル13のうち少なくとも一部は、装置本体12の薄型化のためにその上面に設けてもよいし、不使用時に装置本体12に収納できる収納式又は折畳み式としてもよい。また、表示部14は、装置本体12にコネクターを介して接続する外付け方式でもよい。
図1に示すように、プリンター11は、装置本体12の背面部側に延出する給送トレイ16上に一対のエッジガイド16aで幅方向に位置決めされた状態でセットされた媒体の一例としての用紙Pを1枚ずつ装置本体12内へ給送可能な給送装置の一例としての自動給送装置17を備えている。なお、自動給送装置17は、この種の給送トレイ16を備えた給送方式に限らず、装置本体12に挿抜可能に装着された給送カセットにセットされた用紙群から一枚ずつ用紙が給送されるカセット給送方式でもよい。
図1に示すように、装置本体12内には、キャリッジ21が、ガイド軸22に案内されて走査方向Xに往復移動可能な状態で設けられている。キャリッジ21の下部には、自動給送装置17から給送された用紙Pにインク滴を噴射可能な記録ヘッド23が取り付けられている。印刷中の用紙Pは走査方向Xと交差する搬送方向Yに間欠的に搬送され、各搬送の合間にキャリッジ21が走査方向Xに移動する過程で記録ヘッド23からインクが噴射されて1走査分の印刷が施されることで、用紙Pに文書や画像が印刷される。装置本体12の前面の排出口12aから排出された印刷済みの用紙Pは、延出状態とされたスライド式の排出スタッカー24(排紙トレイ)上に積載される。
また、装置本体12の前面側端部(図1では一例として右端部)には、USBポート25とカードスロット26と不図示の無線LANインターフェイス(例えば「Wi−Fi」(登録商標))とが設けられている。USBポート25に接続された外部記憶装置(例えばUSBメモリー)やカードスロット26に接続されたメモリーカードから画像データ等を読み込んだり、無線LANインターフェイスを介して携帯型のホスト装置(例えばスマートフォンや携帯電話)から画像データ等を無線で受信したりして、プリンター11に画像等を印刷させることが可能である。
また、装置本体12には、商用電源30(図3参照)のコンセント(アウトレット)に差込み可能な電源プラグ27aを有するACアダプター27の出力側の給電プラグを接続可能な電源ジャック(いずれも図示せず)が設けられている。ACアダプター27によって商用電源30からの交流が直流に変換された所定電圧の電力がプリンター11に供給される。また、装置本体12内には、プリンター11の携帯時等に使用可能な電源としてバッテリー28が収容されている。本実施形態のバッテリー28は、プリンターの小型化を図るために比較的容量の小さい小型なものである。このため、バッテリー28が供給できる電力Wb(バッテリー供給電力)は、ACアダプター27を介して供給できる電力Wac(AC電源電力)よりも小さくなっている(Wb<Wac)。もちろん、バッテリー28を少し大型にはなるものの、ACアダプター27によるAC電源供給電力Wacと同じ値のバッテリー供給電力Wbを出力可能なものとしてもよい。
次に、図2を参照してプリンター11の内部構成について説明する。図2に示すように、プリンター11において上側と前側が開口する略四角箱状の本体フレーム31において図2における左右の側壁間に架設されたガイド軸22には、前述のキャリッジ21が走査方向Xに往復移動可能な状態で設けられている。本体フレーム31の背板内面に取着された一対のプーリー33には無端状のタイミングベルト34が巻き掛けられており、キャリッジ21はタイミングベルト34の一部に固定されている。図2における右側のプーリー33はキャリッジモーター35の駆動軸(出力軸)に連結されており、キャリッジモーター35が正逆転駆動されることにより正転又は逆転するタイミングベルト34を介してキャリッジ21は走査方向Xに往復移動する。
キャリッジ21の上部には、例えば黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクがそれぞれ収容された複数個(例えば4個)のインクカートリッジ37が装填されている。各インクカートリッジ37から供給されたインクは、記録ヘッド23の下面に開口するインク色別のノズル群からそれぞれ噴射される。また、キャリッジ21の移動経路の下方には、記録ヘッド23と用紙Pとの間隔(ギャップ)を規定する支持台38が走査方向Xに沿って延びるように設けられている。なお、記録ヘッド23が噴射可能なインク色は4色に限らず、3色、5〜8色でもよく、さらに黒1色でもよい。
また、本体フレーム31には、キャリッジ21の移動量に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー39が、キャリッジ21の移動経路に沿って延びるように設けられている。プリンター11では、リニアエンコーダー39から出力されるパルス信号に基づいて、キャリッジ21の位置制御及び速度制御と、記録ヘッド23のインク噴射タイミングの制御とが行われる。
また、本体フレーム31の図2における右端下部に設けられた給送モーター41は、給送トレイ16(図1参照)にセットされた複数枚の用紙Pを1枚ずつ給送する給送ローラー20(図3参照)を駆動する。搬送モーター42は、搬送方向Yに支持台38を挟んだその上流側と下流側にそれぞれ設けられた搬送ローラー対43と排出ローラー対44とを駆動する。各ローラー対43,44は、搬送モーター42の動力で回転する駆動ローラー43a,44aと、駆動ローラー43a,44aに当接して連れ回りする従動ローラー43b,44bとから構成される。用紙Pは、搬送モーター42の動力によって回転する両ローラー対43,44に二箇所で挟持(ニップ)された状態で搬送方向Yに搬送される。なお、本実施形態では、給送トレイ16にセットされた用紙Pを印刷開始位置まで給送する給送ローラー20及び搬送ローラー対43により給送機構の一例が構成される。また、給送機構の一例を構成する給送ローラー20及び搬送ローラー対43の動力源である給送モーター41及び搬送モーター42により、モーターの一例が構成される。つまり、本実施形態は、給送機構の動力源であるモーターが複数(本例では2つ)備えられた例である。
シリアル式のプリンター11では、キャリッジ21を走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド23のノズルから用紙Pにインクを噴射する印字動作と、用紙Pを搬送方向Yに次の記録位置までの搬送量だけ搬送する送り動作とを交互に繰り返すことで、用紙Pに文書や画像等が印刷される。なお、本実施形態では、給送系の給送モーター41と送り系の搬送モーター42とにより第1モーターの一例が構成される。このように本実施形態は、第1モーターが二つ設けられた例である。また、キャリッジモーター35により第2モーターの一例が構成される。
図2においてキャリッジ21の移動経路上の一端位置(図2では右端位置)が、キャリッジ21が非印刷時に待機するホーム位置(ホームポジション)となっている。ホーム位置に配置されたキャリッジ21の直下には、記録ヘッド23のメンテナンスを行うメンテナンス装置45が配設されている。なお、本実施形態の搬送モーター42は、メンテナンス装置45の動力源ともなっている。
図3に示すように、本体背面部に斜状に配置された給送トレイ16の上面側にはホッパー18が上端部の軸18aを中心として所定角度の範囲を傾動可能な状態に支持されている。ホッパー18は、ホッパー18と給送トレイ16との間に介装された圧縮バネ19によって、給送トレイ16から離間する方向(図3における左上方向)に付勢されている。ホッパー18の下端付近には、給送ローラー20が回転軸20aを中心に回転可能に支持されている。ホッパー18は、セットされた用紙Pが給送ローラー20から離間する図3(a)に示す退避位置と、セットされた用紙Pが給送ローラー20に接触可能な図3(b),(c)に示す給送位置との間を往復動する。
給送トレイ16の用紙給送方向下流側(図3における左側)の端部上面における給送ローラー20と対向する箇所には、給送ローラー20が送り出す際の用紙をガイドする案内部16bが設けられている。また、案内部16bの近傍位置には、給送ローラー20と対向する位置にリタードローラー46が配置されている。リタードローラー46は、トルクリミッター等のトルク制限機構によって一定の回転負荷が付与された状態で従動回転可能かつ給送ローラー20に対し接近・離間可能に設けられている。ホッパー18及びリタードローラー46は連動して動作し、ホッパー18が図3(b)に示す給送位置に配置されているとき、給送される用紙Pは給送ローラー20とリタードローラー46との間に挟持される。また、自動給送装置17には、ホッパー18上の用紙Pの有無を検知する第2センサーの一例である紙有無センサー47が設けられている。
ホッパー18が給送位置へ上動して用紙Pが接触した状態にある給送ローラー20が図3における時計方向に回転すると、そのうち最上位の1枚の用紙Pのみが給送ローラー20とリタードローラー46とに挟持された状態で給送される。この給送過程において最上位の用紙Pは、リタードローラー46により他の用紙から分離される。
図3に示すように、給送ローラー20と搬送ローラー対43との間の位置には、用紙搬送経路に沿って給送される用紙Pを検出可能な第1センサーの一例である紙検出センサー48が設けられている。紙検出センサー48は、その下端が用紙搬送経路に達する長さで延出するレバー48aと、レバー48aの上端部を検知対象とする光学式のセンサー部48bとを備えている。紙検出センサー48は、その検知域に検知対象となる用紙Pが無い状態ではレバー48aが不図示のバネの付勢力で図3(a),(b)に示す原位置に復帰してオフしており、給送された用紙Pの先端がレバー48aの下端を押してこれを図3(c)に示すように傾動させるとオンする。プリンター11においては紙検出センサー48が用紙Pの先端を検知してオンした際の用紙位置を基準(例えば原点)として搬送方向Yにおける用紙Pの位置が管理される。そして、位置が管理された用紙Pはその先端が記録ヘッド23による印刷が開始される印刷開始位置に到達するまで給送され、この給送過程の途中で用紙Pが搬送経路を対して斜めに傾くスキュー(斜行)を取り除ための後述するスキュー取り動作が行われる。
また、キャリッジ21における記録ヘッド23よりも搬送方向Y上流側の位置には、紙幅センサー49が設けられている。この紙幅センサー49は、キャリッジ21と共に移動可能な光学式センサーであり、キャリッジ21の走査方向Xへの移動時に、給送された用紙Pの走査方向X(幅方向)の側端を検知可能であるとともに、キャリッジ21が用紙Pの搬送経路幅内に位置する状態で、用紙Pが給送されてくるのを待つことで用紙Pの先端を検知可能である。なお、リタードローラー46及びホッパー18は、用紙Pを印刷開始位置まで給送する頭出しが終わった時に、次に給送すべき次ページの用紙があるうちは、図3(b),(c)に示す給送位置に配置され、給紙すべき次ページがない場合に退避位置へ復帰する。
次に用紙Pが搬送経路に対して斜めに傾くスキュー(斜行)を取り除くために給送過程の途中で行われるスキュー取り動作について説明する。スキュー取り動作には、「逆転突き当て動作」と「喰付き吐出し動作」との主に2種類がある。そして、給紙モードには、給送途中に第1のスキュー取り動作の一例として「逆転突き当て動作」が行われる第1給送モードと、給送途中に第2のスキュー取り動作の一例として「喰付き吐出し動作」が行われる第2給送モードと、給送途中にスキュー取り動作を含まない第3給送モードとがある。
また、第1〜第3給送モードとは別に、給送過程におけるモーター41,42の駆動速度を規定する速度モードが用意されている。速度モードには、例えば高速モード、中速モード及び低速モードの三種類が用意されている。速度モードは、一例として、電源モードと媒体の種類とにより決められる。AC電源モードでかつ媒体の種類が普通紙及び普通紙に準じる紙種を含む相対的に負荷の小さな第1媒体種の場合、高速モードが設定される。ここで、第1媒体種とは、給送機構に対する負荷が普通紙と同程度に小さな媒体種を指す。また、バッテリーモードでかつ媒体の種類が第1媒体種の場合、中速モードが設定される。さらにAC電源モード又はバッテリーモードでかつ媒体の種類が専用紙及び専用紙に準じる紙種を含む相対的に負荷の大きな第2媒体種の場合、低速モードが設定される。ここで、第2媒体種とは、給送機構に対する負荷が専用紙と同程度に大きな媒体種を指す。
高速モードに設定された第1速度U1は、一例として5〜20ipc(inch per second)の範囲内の値である。中速モードの設定された第2速度U2は、一例として3〜30ipcの範囲内の値である。さらに低速モードの設定された第3速度U3は、一例として1〜5ipcの範囲内の値である。但し、第1〜第3速度U1〜U3は、U1>U2>U3の関係にある。なお、速度モードの速度の種類の数は適宜変更でき、3種類以外に2種類、4種類、5種類以上であってもよい。また、速度の決め方も、電源モードと媒体種とに応じて規定されることに限定されない。例えば電源モードに応じて速度が規定されてもよいし、媒体種に応じて速度が規定されてもよい。この場合、電源モードがAC電源モードよりもバッテリーモードの方が、より低速な速度が設定される。また、媒体種が第1媒体種よりも第2媒体種の方がより低速な速度が設定される。
以下、図4及び図5を参照して、これらのスキュー取り動作について順番に説明する。まず図4を参照して逆転突き当て動作を含む第1給送モードの給送動作について説明する。逆転突き当て動作を伴う給送動作は、図4(a),(b)に示すスキュー取り動作と、図4(c),(d)に示す頭出し動作とを含む。
図4(a),(b)に示すように、給送モーター41を用紙送り出し方向である正転方向に回転駆動させて給送ローラー20を正転方向に回転させることで用紙Pを給送経路に沿って給送する。用紙Pの先端が搬送ローラー対43に到達する前に、事前に搬送モーター42を逆転駆動することで搬送ローラー対43を用紙Pの搬送時の方向とは逆方向に回転させた状態とする。これにより、図4(a),(b)に示すように、用紙Pの搬送方向の先端が、逆回転する搬送ローラー対43に突き当てられ、その先端辺が搬送ローラー対43の軸線方向と平行になることで、搬送方向Yに対して用紙Pが傾くスキューが解消される。すなわち、図4(b)に示すように、斜行した用紙Pはその先端の角部が逆回転する搬送ローラー対43に突き当てられ、その突き当たった角部を支点にして用紙Pが実線矢印に示す方向に回動することで、同図に二点鎖線で示す位置まで回動し、用紙Pのスキューが取り除かれる。
この逆転突き当て動作は、想定される最大のスキュー量で斜行した用紙Pの先端の角部が搬送ローラー対43に突き当てられた時点から、その角部を支点として用紙Pが回動してその最大のスキュー量の斜行の解消に必要な給送ローラー20の回転量に少しのマージンを加えた所定回転量の間だけ実施される。なお、逆転突き当て動作は、用紙Pが専用紙(写真紙等)などの比較的厚く硬いものである場合や、用紙Pの高速な給送動作が要求される印刷モードの際に採用することが好ましい。
そして、逆転突き当て動作を終了すると、搬送モーター42の回転方向が逆転から正転に切り換えられ、図4(c),(d)に示すように、それまで逆回転していた搬送ローラー対43の回転が正転方向に切り換えられる。この回転方向の切り換えによってスキュー取り動作から頭出し動作に切り換わり、この頭出し動作により、スキューが取り除かれた用紙Pは印刷開始位置まで給送される。
次に図5を参照して、第2のスキュー取り動作の喰付き吐出し動作について説明する。この喰付き吐出し方式の給送動作は、喰付き動作と吐出し動作と頭出し動作との3つの動作からなる。
図5(a),(b)に示すように、給送モーター41及び搬送モーター42を用紙送り出し方向である正転方向に回転駆動させて給送ローラー20及び搬送ローラー対43を正転方向に回転させることで用紙Pを給送経路に沿って給送する。用紙Pの先端が搬送ローラー対43に到達してこれに挟持された後、さらに用紙Pが搬送されてその先端部が搬送ローラー対43に対して搬送方向Yの下流側に所定量(喰付き量)だけ突出する位置に到達すると、給送モーター41及び搬送モーター42の駆動を停止させる。
次に図5(c),(d)に示すように、給送モーター41が停止状態の下で搬送モーター42を逆転方向に駆動させる。これにより給送ローラー20が停止状態の下で、搬送ローラー対43が用紙Pの搬送時の方向と逆方向に回転し、用紙Pの先端部が搬送ローラー対43のニップ位置よりも搬送方向上流側へ吐き出される。この吐出し動作が給送ローラー20の停止状態の下で行われるため、図5(c),(d)に示すように、用紙Pは給送ローラー20に押さえられた箇所よりも搬送方向下流側の部分で撓むことになる。そして、撓んだ用紙Pが元に戻ろうとする力で用紙Pが回動し、用紙Pの搬送方向Yに対するスキューが解消される。
そして、吐出し動作分を終えると、搬送モーター42が正転方向への駆動に切り換えられるとともに給送モーター41の正転方向の駆動が再開され、図4(c),(d)と同様に給送ローラー20の正転と搬送ローラー対43の正転とにより頭出し動作が開始され、スキューが取り除かれた用紙Pは印刷開始位置まで搬送される。
次に図6を参照してプリンター11の電気的構成について説明する。図6に示すように、プリンター11に備えられたコントローラー50は、電源装置51、コンピューター52(マイクロコンピューター)、表示駆動回路53、ヘッド駆動回路54及びモーター駆動回路55〜57を備える。コンピューター52には、入力系として、操作部15、紙有無センサー47、紙検出センサー48、紙幅センサー49、リニアエンコーダー39及びエンコーダー58,59等が接続されている。また、コンピューター52には、出力系として、表示駆動回路53、ヘッド駆動回路54及びモーター駆動回路55〜57が接続されている。各駆動回路53〜57には、それぞれ表示部14、記録ヘッド23、キャリッジモーター35、給送モーター41及び搬送モーター42が接続されている。
図6に示す電源装置51は、商用電源30からの交流電圧がACアダプター27を介して変圧・整流等された所定電圧(一次電圧)の直流を入力し、入力した直流をモーター35,41,42の駆動に必要な所定電圧に昇圧する。そして、電源装置51は、その昇圧した所定電圧を、一の系統でモーター駆動回路55〜57を介してモーター35,41,42に供給するとともに、他の系統で複数種の所定電圧に降圧し、記録ヘッド23、表示部14、コンピューター52及び入力系等にそれぞれ必要とされる所定電圧を供給する。
また、電源装置51には、装置本体12内に収容されたバッテリー28が電気的に接続される。コンピューター52は、電源装置51内の所定箇所の電圧を検出し、その検出電圧を基にACアダプター27の接続及びバッテリー28の接続を検出する機能を有する。このため、コンピューター52は、その時々の電力供給元の電源が、ACアダプター27(つまり商用電源30)であるか、バッテリー28であるかを認識可能となっている。コンピューター52は、ACアダプター27の接続を検出しているときは電源モードを「AC電源モード」とし、ACアダプター27の接続が非検出でかつバッテリー28の接続を検出しているときは電源モードを「バッテリーモード」とする。
バッテリー28の供給電力は、ACアダプター27を介する供給電力よりも小さい。このため、バッテリーモード時の電源(バッテリー28)の供給電力は、AC電源モード時の電源(ACアダプター27)の供給電力よりも小さくなっている。バッテリーモード時は、例えばモーター41,42の各消費電力が大きくなってプリンター11の消費電力がバッテリー28の供給電力を超えてしまうと、電源の供給電圧が降下してシステムダウン等を招く虞がある。そのため、本実施形態のコンピューター52は、プリンター11の消費電力がバッテリー28の供給電力を超えて、電源の供給電圧の降下(以下「電圧降下」ともいう。)を検出した際に、モーター35,41,42の総消費電力を低減する制御を行う。本実施形態では、商用電源30から入力した交流を直流に変換するACアダプター27がAC電源部の一例に相当する。そして、AC電源部とバッテリー28とがそれぞれ電源部の一例を構成している。
また、コンピューター52は、用紙Pを印刷開始位置まで給送する給送動作中に、プリンター11の消費電力が電源部の供給電力を上回り、電源の電圧降下を検出したときには、給搬送系のモーター41,42のうちそのとき駆動中のいずれか一方の駆動を停止させることで、システムダウンを防止する。
コンピューター52が各モーター駆動回路55〜57に各々の指令値を出力することにより、モーター35,41,42に指令値に応じた駆動電圧が印加される。本例では、指令値として例えばPWM(pulse width modulation)信号が出力され、各モーター35,41,42にはPWM信号のデューティ比(PWM信号の周期に対するパルス幅の比)に応じた電流が流れる。コンピューター52は、モーター駆動回路55〜57に指令値を個別に出力することによりモーター35、41,42をそれぞれ駆動制御する。コンピューター52は、指令値によりモーター35、41,42を速度制御し、例えば指令値を「0」(零)にすることで、モーター35、41,42のうち対応するモーターへの電流を遮断することが可能である。また、コンピューター52がモーター駆動回路55に出力する方向指示信号に応じてキャリッジモーター35は正転又は逆転する。
また、図6に示す紙有無センサー47は、給送トレイ16(図3参照)上の用紙Pの有無を検知可能な光学式又は接触式のセンサーである。また、紙検出センサー48は、給送経路上の所定位置で用紙Pの先端を検知し、その先端が検知されたときの位置が用紙Pの搬送方向Yの位置(搬送位置)を計測する際の基準位置に用いられる。さらに紙幅センサー49は、支持台38上の用紙Pに向かって検知光を照射しながらキャリッジ21と共に走査方向Xに移動して用紙Pの側端を検出可能な反射型の光学式センサーである。紙幅センサー49の検出信号に基づき用紙Pの幅又は記録ヘッド23の走査方向Xにおける印刷開始位置(インク噴射開始位置)が求められる。
リニアエンコーダー39は、キャリッジモーター35の回転量に比例する数のパルスを有するパルス信号を出力する。また、エンコーダー58は、給送モーター41の回転量に比例する数のパルスを有するパルス信号を出力する。さらにエンコーダー59は、搬送モーター42の回転量に比例する数のパルスを有するパルス信号を出力する。各エンコーダー58,59は、それぞれ対応するモーター41,42の駆動軸又はこの駆動軸の回転を伝達する動力伝達系の回転軸の端部に回転入力可能な状態で連結されたロータリーエンコーダーにより構成される。
図6に示すように、コンピューター52は、CPU61、ASIC62(Application Specific IC(特定用途向けIC))、RAM63及び不揮発性メモリー64を備えている。CPU61は、不揮発性メモリー64に記憶された制御プログラム(例えばファームウェア用プログラム)を実行することにより、印刷系・操作系・表示系等の各種制御を司る。特に本実施形態では、CPU61が不揮発性メモリー64に記憶された図14にフローチャートで示す給送制御プログラムを実行することにより、電源装置51への電力供給元の電源部の違いに応じたAC電源モードかバッテリーモードかに応じたモーター制御を行う。また、RAM63には、印刷データ及びCPU61の演算結果などが一時的に記憶される。
また、図6に示すように、不揮発性メモリー64には、モーター35,41,42を速度制御する指令値を取得する際にCPU61が参照する制御テーブルTD1、及び電圧降下の検出時に変更するべき給送動作モードと給送速度モードとを決める際にCPU61が参照する参照テーブルTD2が記憶されている。制御テーブルTD1は、モーター35,41,42ごとに用意され、モーターに対応する一つの制御テーブルTD1が使用される。
また、コンピューター52は、表示駆動回路53を介して表示部14に接続されている。コンピューター52は、プリンター11の状態や操作部15の操作の有無を監視し、発生した表示イベントに応じたメニューや印刷条件の選択項目、警告メッセージを含む各種のメッセージ等を、表示駆動回路53を介して表示部14に表示させる。
コンピューター52はヘッド駆動回路54を介して記録ヘッド23に接続されている。コンピューター52は、ホスト装置(図示せず)から受信した印刷データ、あるいはUSBメモリー又はメモリーカードから読み込んだ画像データを基に生成した印刷データ(ドットデータ)を、ヘッド駆動回路54に出力して記録ヘッド23における印刷データ中のドットに対応するノズルからインク滴を噴射させる。なお、ホスト装置としては、例えばスマートフォンや携帯電話、タブレットPC、携帯情報端末(PDA(Personal Digital Assistants))等の携帯端末、あるいはパーソナルコンピューター等が挙げられる。
コンピューター52は、リニアエンコーダー39からのパルス信号を基にキャリッジ21の走査方向Xの位置、移動開始位置から距離及び速度を取得し、キャリッジ21の移動開始位置からの距離を基にキャリッジ用の制御テーブルTD1を参照して指令値を逐次取得する。また、コンピューター52は、エンコーダー58からのパルス信号を基に用紙Pの給送開始位置からの距離を取得し、この距離を基に給送用の制御テーブルTD1を参照して指令値を逐次取得する。さらにコンピューター52は、エンコーダー59からのパルス信号を基に用紙Pの給送開始位置又は送り開始位置からの距離を取得し、この距離を基に給送用又は送り用の制御テーブルTD1を参照して指令値を取得する。そして、コンピューター52は、各指令値をモーター駆動回路55〜57に出力すること各モーター35,41,42を速度制御する。
なお、制御テーブルTD1には、給送モーター41と搬送モーター42のそれぞれに、その時々のモードに応じて使い分けされる低速用及び高速用の加減速テーブルが含まれている。ここでいうモードには、印刷速度と印刷品質とを規定する複数の印刷モードと、使用される電源別に用意された複数の電源モードと、給紙中に実施されるスキュー取り動作を規定する給送動作モードと、給紙中のモーター41,42の駆動速度を規定する給送速度モードとが含まれる。詳しくは、印刷モードには「ドラフトモード」(高速低品質モード)と「きれいモード」(低速高品質モード)とがあり、これらの印刷モードごとにAC電源モード用の高速対応の加減速テーブルと、バッテリーモード用の低速対応の加減速テーブルとが用意されている。また、コンピューター52は、定速度(最高速度)の異なる複数の加減速テーブルのうちからそのとき要求される用紙Pの移動量(給送量又は送り量)に応じた一つを選択する。このため、同じモードであれば、用紙Pの搬送距離が長いほど、搬送モーター42の速度制御の際に参照される加減速テーブルとして、定速度のより高速な加減速テーブルが選択される。また、キャリッジ21の移動距離が長いほど、キャリッジモーター35の速度制御の際に参照される加減速テーブルとして、定速度のより高速な加減速テーブルが選択される。
また、給送動作モードは、給紙中に実施されるスキュー取り動作を規定するモードである。本実施形態では、給送動作モードには、一例として、第1給送モード、第2給送モード及び第3給送モードの三種類がある。第1給送モードは、第1のスキュー取り動作を含む給送動作を規定するモードである。第1のスキュー取り動作は、一例として逆転突き当て動作である。また、第2給送モードは、第2のスキュー取り動作を含む給送動作を規定するモードである。第2のスキュー取り動作は、一例として喰付き吐出し動作である。さらに第3給送モードは、スキュー取り動作を含まない給送動作を規定するモードである。
ここで、第1のスキュー取り動作は、複数のモーター41,42の駆動を必要とするスキュー取り動作である。このため、第1給送モードで駆動されるモーター41,42の総消費電力は相対的に高い。また、第2のスキュー取り動作は、モーター41,42のうち一方の駆動のみで済むスキュー取り動作である。このため、第2給送モードで駆動されるモーター41,42の総消費電力は相対的に低い。さらに第3給送モードはスキュー取り動作を含まないため、第3給送モードで駆動されるモーター41,42の総消費電力は、三つの給送動作モードのうちで一番低い。
また、本実施形態では、給送速度モードには、一例として、高速モード、中速モード及び低速モードの三種類がある。高速モードでは、用紙Pを最高速度U1で給送可能な駆動速度で給送モーター41及び搬送モーター42が駆動される。また、中速モードでは、用紙Pを最高速度U2で給送可能な駆動速度で給送モーター41及び搬送モーター42が駆動される。さらに低速モードでは、用紙Pを最高速度U3で給送可能な駆動速度で給送モーター41及び搬送モーター42が駆動される。ここで、速度U1〜U3は、給送動作モードによって値が決まる関数で示され、同じ給送動作モードであれば、U1>U2>U3の大小関係にある。
このように給紙動作は、給送動作モードと給送速度モードによって決められる。そして、図6に示す参照テーブルTD2には、電圧降下検出時に変更するべき給送動作モードが、設定を変更する際の優先順位と共に設定されている。また、図6に示す参照テーブルTD2には、電圧降下検出時に変更するべき給送速度モードが、設定を変更する際の優先順位と共に設定されている。本実施形態では、電圧降下検出の度に、前回の給送動作モード(第1〜第3給送モード)よりもモーター41,42の消費電力が1段階小さい給送動作モードを選択する。本実施形態では、電圧降下検出の度に、前回の給送速度モード(高速・中速・低速モードのうちいずれか)よりも1段階小さい給送動作モードを選択する。
図7に示すように、電源装置51は、装置本体12の電源ジャックに接続されたACアダプター27の電源プラグ27aと電気的に接続される入力端子51aを備える。電源装置51には、ACアダプター27が商用電源30からの交流電圧(例えば100V〜240Vの範囲内の値)を変圧・整流等した所定電圧Vac(一次電圧(例えば15〜30Vの範囲内の値))の直流がACアダプター27から入力端子51aを介して入力される。
また、電源装置51は、装置本体12内に収容されたバッテリー28の出力端子(プラス端子)との電気的な接続が可能な入力端子51bを備える。電源装置51には、バッテリー28からの所定電圧Vb(例えば3〜6Vの範囲内の値)が入力端子51bを介して入力される。
電源装置51は、入力端子51bを介してバッテリー28の出力端子と電気的に接続される第1昇圧回路71を備えている。第1昇圧回路71はバッテリー28からの所定電圧Vbの直流を所定電圧V1(例えば8〜15Vの範囲内の値)に昇圧して出力する。電源装置51は、入力した所定電圧Vac又はV1の直流を所定電圧V2(二次電圧(例えば30〜60Vの範囲内の値))に昇圧する第2昇圧回路72を備えている。この所定電圧V2は、モーター35,41,42の駆動に必要な駆動電圧である。第2昇圧回路72が昇圧した所定電圧V2の直流は、ヘッド駆動回路54及びモーター駆動回路55〜57に供給される。なお、所定電圧V2は、不図示の降圧回路により複数種の所定電圧に降圧された後、表示駆動回路53、コンピューター52、センサー47〜49及びエンコーダー39,58,59等(図6参照)に、それぞれの駆動に必要な各直流電圧として供給される。なお、ヘッド駆動回路54には所定電圧V2を降圧した所定電圧が供給される構成でもよい。
また、図7に示すように、電源装置51は、バッテリー28から入力される所定電圧Vbを検出するバッテリー監視用マイクロコンピューター(以下「バッテリーマイコン73」という。)を備えている。バッテリーマイコン73はバッテリー28の接続・取外しを監視するとともに、接続状態にあるバッテリー28の残量等を管理する。バッテリーマイコン73はCPU61と双方向通信可能であり、バッテリー28の接続・取外しに関する情報及び残量情報等を定期的に又はCPU61からの要求に応じてCPU61に送信する。
また、CPU61は、ACアダプター27と電気的に接続可能な入力端子51aの電圧を検出可能に構成されている。CPU61は、入力端子51aの電圧と、バッテリーマイコン73を通じて取得した入力端子51bの電圧とに基づいて、ACアダプター27の接続及びバッテリー28の接続を検出する。このため、CPU61は、その時々の電力供給元の電源が、ACアダプター27であるかバッテリー28であるかを認識する。さらにCPU61は、入力端子51aの電圧に基づいてACアダプター27を介した商用電源30との接続の遮断を検出する。例えば電源プラグ27aのコンセントからの引き抜き及び給電プラグの電源ジャックからの引き抜きによって、プリンター11と商用電源30との接続が遮断される。なお、以下の説明では、電源プラグ27aのコンセントからの引き抜きと給電プラグの電源ジャックからの引き抜きとを総称して、プラグの引き抜きと称す場合がある。
また、CPU61は、第2昇圧回路72とモーター駆動回路55〜57との間における電源線上の所定箇所に設けられたセンサー74により電圧を検出する。CPU61は、センサー74により検出される電圧Vdを監視することで、プリンター11の総消費電力が電源の供給電力を上回った際に発生する電圧降下を検出する。なお、センサー74が電圧降下を検出する箇所は、ACアダプター27からの直流とバッテリー28からの直流とが合流する合流点51cと、各モーター駆動回路55〜57への直流の入力点とを含む合流点51cと入力点との間における電源線上の位置であればどこでもよい。センサー74が電圧Vdを検出する検出箇所を上記の範囲内の位置に設定した理由は、電源モードがAC電源モードとバッテリーモードとのいずれであっても、センサー74による一箇所の電圧の検出により、共通に電圧降下の検出が可能だからである。
図8は、図14に示す給送制御プログラムを実行するコンピューター52内に構築される機能ブロックを示す。図8に示すように、コンピューター52は、主制御部80、モーター制御部81、設定部82、表示制御部83及びヘッド制御部84を備えている。なお、本実施形態では、主制御部80、モーター制御部81及び設定部82等により、制御部の一例が構成される。
図8に示す主制御部80は、プリンター11の印刷系、操作系、表示系などの各種制御を統括的に司る。主制御部80は、電源装置51内の入力端子51a,51b(図7参照)の電圧を検出し、その検出電圧に基づいて電力供給元の電源がAC電源部であるかバッテリー28であるかを判別する。入力端子51aの電圧がACアダプター27を介して商用電源30に接続されているときの値であれば、主制御部80は、電源がAC電源部であると認識する。また、入力端子51aの電圧がACアダプター27を介して商用電源30に接続されていないときの値であり、入力端子51bの電圧がバッテリー28に接続されているときの値であれば、主制御部80は、電源がバッテリー28であると認識する。
また、図8に示す主制御部80は、印刷モード及び電源モードを管理するモード管理部91を備えている。モード管理部91は、電源がAC電源部である場合に電源モードをAC電源モードとし、バッテリー28である場合に電源モードをバッテリーモードとして管理する。本実施形態では、プリンター11の小型化の要請から小型で比較的容量が小さく、AC電源部の供給電力よりも供給電力の小さなバッテリー28を使用している。このため、電源モードに応じてモーター35,41,42の駆動速度を変えている。詳しくは、AC電源モードがモーター35,41,42を相対的に高速に駆動させる高速駆動モード、バッテリーモードがモーター35,41,42を相対的に低速に駆動させる低速駆動モードとなっている。例えば電源がAC電源部からバッテリー28に切り換わり、電源モードがAC電源モードからバッテリーモードに切り換わった場合、そのとき駆動中のモーターは高速駆動されているため、特にそのとき駆動中のモーターが複数であった場合、電源の供給電力よりもプリンター11の総消費電力が相対的に大きくなり易い。例えばプリンター11の駆動中に電源モードがAC電源モードからバッテリーモードに切り換わる例としては、ユーザーによるプラグの引き抜きが挙げられる。
また、モード管理部91は、主制御部80が印刷データ中の印刷条件情報又は操作部15の操作で入力設定された印刷条件情報に基づき特定した印刷モードを管理し、印刷モードが例えば高速低品質モード(例えば「ドラフトモード」)であるか低速高品質モード(例えば「きれいモード」)であるかを管理する。そして、主制御部80は、モード管理部91が管理するその時の電源モード及び印刷モードに応じたモーター35,41,42の速度制御をモーター制御部81に指示する。さらにモード管理部91は、給送動作モードと給送速度モードとを管理する。給送動作モードと給送速度モードは、電源モード及び印刷モードから決まる。AC電源モードであれば、給送動作モードは、例えば逆転突き当て動作を伴う第1給送モードに決まり、給送速度モードは高速モードに決定される。また、例えばバッテリーモードであれば、給送動作モードは、喰付き吐出し動作を伴う第2給送モードに決まり、給送速度モードは中速モードに決定される。
また、図8に示す主制御部80は、電源装置51内のセンサー74(図7参照)が検出した電圧Vd(以下「検出電圧Vd」ともいう。)を取得し、この検出電圧Vdが閾値Vshを下回る電圧降下を検出する検出部92を備えている。主制御部80は、検出部92が電圧降下を検出すると、モーター制御部81に対して駆動中のモーターを停止させる指示を行う。さらに主制御部80は、モーターの停止をモーター制御部81に指示したときが給紙中であれば、その後、再び同様の電圧降下の発生を回避するべくモーター41,42の制御条件(給送動作モード及び給送速度モード)をモーター41,42の総消費電力が1段階低くなる側へ変更し、その変更後の制御条件の設定値を設定部82に設定する。
また、主制御部80は、操作部15が操作されたときなど表示イベント発生時に表示制御部83に対して表示部14へのメニュー画面や各種メッセージ等の表示を指示する。また、主制御部80は、ヘッド制御部84に対して記録ヘッド23のノズルからインクを噴射する噴射制御に必要な印刷画像データを、例えばキャリッジ21の1回の走査に相当する1パス(ラスターライン)単位ごとに送信する。ヘッド制御部84は、印刷画像データを展開してヘッド駆動回路54に出力することで記録ヘッド23に印刷画像データ中のドットに対応するノズルからインク滴を噴射させることで用紙Pへの印刷が行われる。
図8に示すモーター制御部81は、キャリッジ21の位置及び移動距離を管理するCRカウンター94、給送モーター41による用紙Pの給送位置(給送距離)を管理するASFカウンター95、及び搬送モーター42による用紙Pの搬送位置(搬送距離)を管理するPFカウンター96を備えている。
CRカウンター94は、キャリッジ21が原点位置にあるときにリセットされ、リニアエンコーダー39からのパルス信号を基にキャリッジ21の往動時にパルスエッジ数を加算し、その復動時にパルスエッジ数を減算することにより、キャリッジ21の走査方向Xにおける位置を示す計数値を計数する。また、CRカウンター94は、リセットされた状態からキャリッジモーター35の駆動開始後のパルスエッジ数を計数することで、キャリッジ21の移動距離に相当する計数値も計数する。
また、ASFカウンター95は、給送モーター41の駆動開始時点のリセット状態からエンコーダー58のパルスエッジ数を計数することで、用紙Pの給送距離に相当する計数値を計数する。また、PFカウンター96は、搬送モーター42の駆動開始時点のリセット状態からエンコーダー59のパルスエッジ数を計数することで、用紙Pの搬送距離に相当する計数値を計数する。また、PFカウンター96は、給送中に紙検出センサー48が用紙Pの先端を検知した際にリセットされ、それ以後のエンコーダー59のパルスエッジ数を計数することで、用紙Pの搬送位置に相当する計数値も計数する。この計数値によりモーター制御部81は、印刷中における用紙Pの搬送位置を認識する。
モーター制御部81は、各カウンター94〜96の計数値で示される距離を基に制御テーブルTD1を参照して目標速度を取得し、検出速度を目標速度に近づけるフィードバック制御演算を行って指令値(例えばPWM指令値)を取得する。そして、モーター制御部81は、各指令値をモーター駆動回路55〜57に出力し、モーター35,41,42をそのときの印刷モード及び電源モードに応じた速度プロファイルで速度制御する。なお、フィードバック制御に替え、フィードフォワード制御を行ってもよい。
図9は、モーターが1回駆動された際の回転速度U(rpm)(速度プロファイル)とそのときの電流値Iを示す。図9に示すグラフにおいて、横軸がモーターの駆動開始から移動対象(キャリッジ21又は用紙P)が移動した距離D、縦軸がモーター回転速度U(rpm)となっている。速度プロファイルは、モーター回転速度Uが0(零)から定速度Ucに達するまでの加速領域(加速プロファイル)と、モーター回転速度Uが定速度Ucに保持される定速領域と、モーター回転速度Uを定速度Ucから移動対象が距離Deの目標位置で停止する速度0(零)まで減速させる減速領域(減速プロファイル)とからなる。
電源モードごとに定速度Ucの異なる複数の速度プロファイルが設定されている。例えばAC電源モード用の速度プロファイルは、バッテリーモード用の速度プロファイルよりも定速度Ucがより高速に設定されている。これは、バッテリー28の供給電力がAC電源部の供給電力よりも小さいことによる。特に本実施形態では、プリンター11がモバイルプリンターであって、その小型化を図るために容量の比較的小さい小型のバッテリー28を搭載する関係上、バッテリー28の供給電力が相対的に小さくなっている。そして、バッテリーモードで、AC電源モードと同じ定速度Ucでモーターを駆動させようとすると、プリンター11の消費電力がバッテリー28の供給電力を超えてシステムダウンを招く虞がある。これを回避するため、バッテリーモードの定速度UcをAC電源モードの定速度Ucよりも低く抑え、これによりバッテリーモード時のモーターの消費電力を小さく抑えている。このような各電源モードの速度プロファイルがモーター35,41,42ごとに設定されている。例えば給送モーター41用に定速度の異なる複数種の給送速度プロファイルが設定され、搬送モーター42用に定速度の異なる複数種の搬送速度プロファイルが設定されている。
図10は、各モーター35,41,42を速度制御する際にコンピューター52が参照する制御テーブルTD1を示す。制御テーブルTD1には、加速プロファイルを決める図10(a)に示す加速テーブルATと、減速プロファイルを決める図10(b)に示す減速テーブルDTとが含まれる。加速テーブルATは、加速開始位置(距離0の位置)からの距離D(距離D=0,1,…,Da)と周期CTとの対応関係を示すテーブルよりなる。また、減速テーブルDTは、減速開始位置(距離Ddの位置)からの距離D(距離D=0,1,…,Ds(=De−Dd))と周期CTとの対応関係を示すテーブルよりなる。
ここで、距離Dとしては、前述のCRカウンター94、ASFカウンター95及びPFカウンター96の計数値を用いる。また、周期CTはモーター回転周期を指すが、本例ではエンコーダー39,58,59のパルスエッジの周期を代用し、エンコーダー39,58,59のパルスエッジ間に入力されるクロック信号のパルスエッジ数を計数した計数値(時間に相当)を、周期CTとして取得する。本例では、モーター回転速度Uの逆数である周期CTを制御対象とすることでモーターの速度制御を行うが、モーター回転速度Uを制御対象としてモーターの速度制御を行ってもよい。このような制御テーブルTD1が、モーター35,41,42ごとに、各モードに応じた複数個ずつ用意され、特に搬送モーター42用には搬送距離に応じて定速度の異なる複数個ずつの制御テーブルがさらに用意されている。
コンピューター52は、モーター別にそのときのモードに応じた定速度Uc(目標速度)が設定された制御テーブルTD1を不揮発性メモリー64から読み込む。そして、コンピューター52は、カウンターの計数値で示される距離Dを基に制御テーブルTD1を参照して目標周期CTtを取得する。そして、コンピューター52は、エンコーダー39,58,59から入力したパルスエッジ間の時間を計時して取得される検出周期(実周期)を、その時々の距離Dに応じた目標周期CTtに近づけるフィードバック制御演算を行ってモーター35,41,42ごとに指令値を取得する。各指令値がコンピューター52からモーター駆動回路55〜57に出力されることで、各モーター35,41,42は図5に示す速度プロファイルに沿って速度制御される。各モーター駆動回路55〜57は、例えばスイッチング回路を備えており、指令値に応じたPWM信号に基づいてスイッチング回路内のスイッチング素子をオン・オフさせることで、各モーター35,41,42には、指令値に応じたモーター電流が流れる。
図9に示すように、加速領域では、モーター回転速度Uを設定加速度で加速させるためにモーター電流を急激に立ち上げ、定速度Ucに達する手前(加速領域)で電流ピークIpが出現する。その後、電流値Iを保持電流Icまで落として定速度Ucに達し、定速領域ではほぼ保持電流Icに保持される。そして、減速開始位置Ddから下降を開始した電流値Iは徐々に低下しその値が零になるとモーターが停止する。図9のグラフから分かるように、加速領域に出現する電流ピークIpでモーターの消費電力が最大となる。なお、減速プロファイルは、減速過程で電流の向きを一旦逆向きに切り換えることで制動を加え、その後、電流の向きを元に戻してから零に下げることで、モーターの停止位置精度を高めるようにしてもよい。
図11は、逆転突き当て動作を伴う第1給送モードにおける給送動作の速度プロファイル及び電流値Iを示し、図12は、喰付き吐出し動作を伴う第2給送モードにおける給送動作の速度プロファイル及び電流値Iを示す。これらの図において上段のグラフには、給送過程で駆動される給送モーター41と搬送モーター42とのそれぞれの回転速度Ua,Ubが示され、下段のグラフには、給送モーター41と搬送モーター42とのそれぞれの電流値Ia,Ibが示されている。なお、図11及び図12ではバッテリーモード時の例を示すが、AC電源モードにおいても基本的にバッテリーモード時よりも高速に速度設定されている他、給送モーター41と搬送モーター42とが同時に駆動開始される。また、各図の上段に示す速度プロファイルのグラフにおいて、両モーター41,42の駆動速度が異なっているのは、動力伝達系のギヤ比等の違いによるもので、給送ローラー20と搬送ローラー対43とがそれぞれ用紙Pを同速度で搬送可能な回転速度で回転することが可能な駆動速度で給搬送系の各モーター41,42は駆動される。
まず図11を参照して、逆転突き当て動作を伴う第1給送モードでの給送動作を説明する。まず給送モーター41の駆動が開始され、給送動作のうち突き当て動作が開始される。搬送モーター42は給送モーター41の駆動開始から少し遅れて逆転駆動を開始する。このように給送モーター41と搬送モーター42との駆動開始時期をずらすことで、モーター41,42の各々の電流ピークIpの発生時期をずらしている。この結果、モーター41,42の総消費電力が過大にならず電圧降下が発生しにくい。時刻T1〜T2の区間で給送ローラー20の回転により用紙Pは搬送方向Yの下流側へ給送される。また、搬送モーター42の逆転駆動により搬送ローラー対43が逆転する。そして、時刻T2に用紙Pの先端が搬送ローラー対43に達し、逆転中の搬送ローラー対43に突き当てられる(図4(a),(b))。
例えば図11における時刻T2〜T3の区間で、この逆転突当て状態が所定時間に亘って維持され、用紙Pのスキューを取り除く第1のスキュー取り動作(逆転突き当て動作)が行われる。この時刻T2〜T3のスキュー取り区間において、同図の実線は給送モーター41の負荷なしのときの電流値を示す。このスキュー取り区間で、同図に二点鎖線で示す電流I11が、用紙Pが普通紙であるときのもので、この電流I11の値は許容範囲内に収まる。一方、ユーザーが普通紙をセットすべきところ間違えて写真紙又は厚紙をセットした場合、このスキュー取り区間で、同図に二点鎖線で示す過大な電流I12が流れる。この場合、バッテリー28の電圧降下が発生して電圧降下の検出の可能性が高まる。
そして、逆転突当て状態が所定時間に亘って維持されると、時刻T3で両モーター41,42の駆動が停止される。詳しくは、用紙Pの先端が紙検出センサー48に検出された位置から計数を開始したPFカウンター96の計数値が、用紙Pの先端が搬送ローラー対43に突き当たりさらにそのときの条件に応じた想定の最大スキュー量を除去できる所定の逆転突き当て量だけ搬送ローラー対43が回転した際の値になると、両モーター41,42の駆動が停止される。
次に給送モーター41と搬送モーター42とが共に正転駆動され、給送ローラー20及び搬送ローラー対43の回転によって、用紙Pを搬送方向Yの印刷開始位置まで搬送する頭出し動作が行われる(図4(c),(d))。なお、この頭出し動作の途中でキャリッジモーター35の駆動が開始され、キャリッジ21がホーム位置から用紙Pへの1パス目の走査動作を開始し、頭出し動作が停止すると同時にキャリッジ21が印刷開始位置に到達し記録ヘッド23による印刷(インクの噴射)が開始される。
次に図12を参照して喰付き吐出し動作を伴う第2給送モードにおける給送動作について説明する。給送動作のうちまず初期喰付き動作を開始するべく、給送モーター41と搬送モーター42の駆動が開始される。このとき各モーター41,42が正転駆動されることで、用紙Pの先端部が搬送ローラー対43から搬送方向Yの下流側へ所定の喰付き量だけ突出する位置まで用紙Pを給送する初期喰付き動作が行われる。この初期喰付き動作の途中で用紙Pの先端が紙検出センサー48に検出された位置からPFカウンター96が計数を開始し、その計数値が所望の喰付き量に相当する値になると、両モーター41,42の駆動が停止される。図12において時刻T11〜T12の区間で、搬送ローラー対43に達した用紙Pの先端部が搬送ローラー対43にニップされつつその搬送方向Yの下流側へ所定の喰付き量だけ突出するまで搬送される喰付き動作が行われる(図5(a),(b)参照)。
図12に示すように、時刻T12で両モーター41,42の駆動が停止して初期喰付き動作が終わると、次に給送モーター41は停止状態のまま、時刻T12〜T13の区間で搬送モーター42が所定回転量だけ逆転駆動される。これにより搬送ローラー対43を吐出し量だけ逆転させることで、用紙Pの先端部を搬送ローラー対43の搬送方向Yの上流側へ吐き出す吐出し動作が行われる。この吐出し動作(スキュー取り動作)によって用紙Pは搬送ローラー対43と給送ローラー20との間の部分で湾曲状に撓みつつその先端が吐き出された瞬間に、その撓みの復元力で元に戻るときに用紙Pのスキューが取り除かれる(図5(c),(d)参照)。
この吐出し動作区間では、用紙Pを湾曲させる過程で用紙Pから受ける反力により搬送モーター42に比較的大きな負荷が加わり、その負荷に逆らって実速度を目標速度に近づけるべく搬送モーター42に比較的大きな電流が流れる。図12の下段のグラフ中の吐出し区間において実線が負荷なしのときの電流値を示し、二点鎖線で示す電流I21が、喰付き吐出し方式のスキュー取り動作に適した種類の用紙P(例えば普通紙)で吐出し動作を行ったときの電流値を示す。このときのプリンター11の消費電力はバッテリー28の供給電力の範囲内で収まる。一方、ユーザーが普通紙をセットすべきところ間違えて写真紙又は厚紙をセットした場合、用紙Pを湾曲させる過程で、二点鎖線で示す過大な電流I22が流れる。この場合、バッテリー28の電圧降下が検出される可能性が高まる。
そして、時刻T13で搬送モーター42の逆転駆動が停止されて吐出し動作が終わると、次に給送モーター41と搬送モーター42とが共に正転駆動され、給送ローラー20及び搬送ローラー対43の回転によって、用紙Pを搬送方向Yの印刷開始位置まで搬送する頭出し動作が行われる。この頭出し動作の途中でキャリッジモーター35の駆動が開始され、キャリッジ21が例えばホーム位置HPから用紙Pの1パス目の走査を開始し、頭出し動作の停止と同時に記録ヘッド23が走査方向Xの印刷開始位置に到達してそのノズルからのインク滴の噴射を開始することで1走査分の印刷が開始される。
図13は、検出部92がセンサー74から取得した検出電圧Vdに基づいて電圧降下を検出する際のグラフを示す。このグラフにおいて横軸は時間T、縦軸は検出電圧Vdである。例えばAC電源モードでプリンター11の印刷駆動中に電源プラグ27aがコンセントから引き抜かれ、電源部がAC電源部からバッテリー28に切り換わって、プリンター11の消費電力がバッテリー28の供給電力を上回ることになると、図7のグラフに示す電圧降下が発生する。すなわち、検出電圧Vdが、時刻Tdから、それまでの電圧Vs(例えば所定電圧V2)から降下し時刻Tshで閾値Vshを下回ると、検出部92は電圧降下が発生したと判定する。こうして検出部92が電圧降下を検出すると、そのとき駆動中のモーターが複数ある場合、本実施形態では、駆動中のそれら複数のモーターのうち少なくとも1つを停止させる。少なくとも一つのモーターが停止されることでプリンター11の消費電力がバッテリー28の供給電力を下回るように低下する。このため、図7のグラフに示すように、時刻Trで電圧Vrまで降下した電圧は上昇し元の正常な電圧Vsに復帰する。例えば電圧降下の発生時に電圧が復帰することなくそのまま降下し続けると(同図のグラフ中の二点鎖線)、電圧がCPU61の駆動電圧Vcをも下回り、コンピューター52の一切の制御が不能となってシステムダウンに陥る。本実施形態では、閾値VshがCPU61の駆動電圧Vcよりも大きな値に設定されている(Vsh>Vc)。検出電圧Vdが閾値Vshを下回ると、駆動中のモーターを停止させて、プリンター11のシステムダウンを回避する。
ここで、電圧降下時に電圧は比較的瞬時(例えば3〜20ms)に降下するため、モーターを停止する場合に減速を伴って停止させる余裕はなく、モーター電流を即座に遮断する必要がある。この場合、即座に停止するモーターをキャリッジモーター35にすると、キャリッジ21の比較的大きな慣性による停止時の大きな停止衝撃によって、キャリッジ駆動系の構造物(部品)の破損や衝撃音による比較的大きな騒音が問題になる。これに対して、給送モーター41及び搬送モーター42は、駆動対象の給送ローラー20及びローラー対43,44の慣性が比較的小さいことから、停止時の停止衝撃は比較的小さい。このため、本実施形態では、電圧降下の検出時に複数のモーター35,41,42のうち二つ以上のモーターが駆動中である場合は、給搬送系のモーター41,42のうち駆動中のものを停止させ、キャリッジモーター35の駆動は停止させない制御を採用する。
次にプリンター11の作用を説明する。以下、図14を参照して、コンピューター52が給送制御プログラムを実行して行われる給送制御について説明する。コンピューター52は、印刷データの受信又は操作部15の操作により印刷実行命令を受け付けると、指定された印刷条件から印刷モードを取得するとともに、モード管理部91によりAC電源モードかバッテリーモードかを判定する。主制御部80は、印刷モードと電源モードとの組合せに応じた印刷条件を設定部82に設定し、モーター制御部81に設定内容に応じた印刷制御を指令する。印刷条件には、給送動作中のスキュー取り動作の種類を規定する給送動作モード、及び給送動作中のモーター駆動速度を規定する給送速度モードが含まれる。そして、設定部82には、今回の給送動作モードと給送速度モードの情報が例えば2ビットのフラグ値で設定される。コンピューター52は、図14で示される給送制御プログラムを実行し、記録ヘッド23及びモーター35,41,42を駆動制御する。
印刷が開始されると、まず給送過程で給送モーター41及び搬送モーター42が駆動され、給送トレイ16上の用紙Pが給送ローラー20の回転及び搬送ローラー対43の回転により搬送方向Yに印刷開始位置まで給送される。給紙の途中でスキュー取り動作が行われる。スキュー取り動作は、給送ローラー20及び搬送ローラー対43を用紙Pにスキューを取り除くための外力を加えるために通常の回転とは異なる回転を行わせるため、モーター41,42に比較的大きな負荷がかかり、モーター41,42の総消費電力が相対的に高くなる。例えばAC電源モードでは電源の供給電力が相対的に大きいので、用紙種の情報等に応じた適切な種類のスキュー取り動作が選択される。一方、バッテリーモードでは電源の供給電力が相対的に小さいので、電源の電圧降下による給送の失敗を招かないためにも、複数のモーター41,42の駆動が必要な第1のスキュー取り動作(逆転突き当て動作)は選択されず、一つのモーター42の駆動で足りる第2のスキュー取り動作(喰付き吐出し動作)が選択される。コンピューター52は、図14に示す給送制御プログラムを所定サイクルタイム毎に実行してプリンター11の給送制御を行う。
まずステップS11では、電圧降下が検出されたか否かを判断する。主制御部80は、ACアダプター27とバッテリー28との出力の合流点51cとモーター駆動回路55〜57との間の位置で電源線の電圧を検出するセンサー74からの検出電圧Vdに基づいて電圧降下が検出されたか否かを判断する。この判断は検出部92が行う。検出部92は、検出電圧Vdが閾値Vshを下回ると、電圧降下が検出されたと判断する。電圧降下が検出されればステップS12に進み、電圧降下が検出されなければ当該ルーチンを終了する。
例えばユーザーが印刷条件の1つである用紙種に「普通紙」を設定したにも拘わらず、間違えて厚紙を給送トレイ16にセットしたり、これとは逆に、厚紙を給送トレイ16にセットしているにも拘わらず、用紙種に間違えて「普通紙」を入力設定したりする場合がありうる。これらの場合、給送機構に対する負荷が相対的に小さな「普通紙」に適用されるスキュー取り動作が選択される。しかし、実際には給送機構に対する負荷の大きな厚紙に対して負荷の相対的に小さな用紙種に適用されるスキュー取り動作が行われてしまう。
例えば図11に示す逆転突き当て動作が適用された場合、給送された用紙Pの先端が時刻T2で逆転中の搬送ローラー対43に突き当たると、そのとき斜行している用紙Pは搬送ローラー対43に突き当たった先端角部を中心に回動することでスキューが取り除かれる(図4(a),(b))。この用紙Pが回動するスキュー取り期間では給送機構に加わる負荷が相対的に大きくなり、スキュー取りが完了して用紙Pが回動すらできなくなると、モーター41,42の負荷が急激に増大する。このため、図11に示すように時刻T2〜時刻T3のスキュー取り期間で、図11中の二点鎖線で示すように電流I11が大きくなる。それでも普通紙の電流I11は許容範囲内にある。しかし、厚紙の場合、この期間にモーター41に図11に二点鎖線で示す過大な電流I12が流れるため、モーター41の消費電力が過大となる。この結果、プリンター11の消費電力が電源の供給電力を上回ることになって電源の電圧降下が発生し、検出部92により電圧降下が検出される。
一方、例えば図12に示す喰付き吐出し動作が適用された場合、給送された用紙Pの先端が時刻T11で搬送ローラー対43に到達して搬送ローラー対43にニップされる。さらに搬送ローラー対43により送られた用紙Pの先端部の搬送ローラー対43からの突出長が所定長さに達すると、その時の時刻T12でモーター41,42の駆動が停止される(図5(a),(b)参照)。その後、図12に示すように、時刻T12〜時刻T13の区間で搬送ローラー対43が逆転駆動されて、用紙Pが搬送ローラー対43と給送ローラー20との間の部分で湾曲する。この湾曲する過程で搬送ローラー対43が用紙Pから受ける負荷が増大し、搬送モーター42に比較的大きな電流I22が流れる。それでも普通紙の場合、搬送モーター42の電流I21は許容範囲内にある。しかし、厚紙の場合、搬送モーター42に過大な電流I22が流れるため、モーター41の消費電力が過大になり、プリンター11の消費電力が電源の供給電力を上回ることになって、電源の電圧降下が発生し、検出部92により電圧降下が検出される。
図14に戻って、ステップS12では、駆動中のモーターを停止させる。主制御部80はモーター制御部81にモーターの停止を指示する。指示を受け付けたモーター制御部81は、現在実行中のシーケンスから把握している駆動中のモーター41,42を停止させる。例えば給紙中であれば、用紙Pは給送経路の途中で停止する。このとき、モーター41,42の駆動停止によりプリンター11の消費電力がその分低下するので、図13に示すように、一旦は閾値Vsh未満に降下した検出電圧Vdは、モーター41,42の駆動停止と同時(時刻Tr)に上昇側に反転し、図13に示すように正常な値まで復帰する。この結果、プリンター11のシステムダウンが回避される。
次のステップS13では、給紙中であるか否かを判定する。主制御部80は、モーター制御部81から給紙シーケンス終了の旨の通知を受け付ける前であれば、給紙中であると判定する。給紙中であればステップS14に進み、給紙中でなければ当該ルーチンを終了する。
ステップS14では、紙検出センサーがONしているか否かを判定する。つまり、用紙Pの先端が紙検出センサー48の検知対象位置を通過したか否かを判定する。紙検出センサーがON状態にあればステップS15に進み、紙検出センサーがON状態になければ、つまりOFF状態であればステップS16に進む。
ステップS15では、白紙排出を行う。すなわち、用紙Pを白紙のまま排出(排紙)する。この処理は、モーター制御部81が搬送モーター42を駆動させ、搬送ローラー対43及び排出ローラー対44を回転させることによって用紙Pを搬送方向Y下流側へ搬送することにより行われる。給送トレイ16上に用紙Pが無ければ、ユーザーは白紙排出された用紙P又は他の用紙Pを給送トレイ16にセットする。
ステップS16では、前回の給送動作モードを確認する。主制御部80は、設定部82に設定された前回の給送動作モードに関する情報(例えばフラグ値)を読み出し、その読み出したフラグ値から前回の給送動作モードを確認する。本例では、給送動作モードには、第1給送モード(逆転突き当て動作あり)、第2給送モード(喰付き吐出し動作あり)及び第3給送モード(スキュー取り動作なし)の三種類あるため、これらのうちの一つのモードが前回の給送動作モードとして確認される。
ステップS17では、前回が第1給送モードであるか否かを判定する。第1給送モードであればステップS18に進み、第1給送モードでなければステップS19に進む。
ステップS18では、第2給送モードを設定する。つまり、設定部82が次回の給送動作モードとして、第2のスキュー取り動作(喰付き吐出し動作)を伴う第2給送モードを設定する。
ステップS19では、前回が第2給送モードであるか否かを判定する。第2給送モードであればステップS20に進み、第2給送モードでなければステップS21に進む。
ステップS20では、第3給送モードを設定する。つまり、設定部82が次回の給送動作モードとしてスキュー取り動作なしの第3給送モードを設定する。なお、前回が第3給送モードの場合は、そのまま第3給送モードの設定が維持される。
こうして前回の給送動作モードが既に一番負荷の小さな第3給送モードである場合を除き、次回の給送動作モードが前回の給送動作モードよりもモーター41,42の総消費電力が小さく済む例えば1段階負荷の小さな他の給送動作モードに変更される。
ステップS21では、前回の給送速度モードを確認する。主制御部80は、設定部82に設定された前回の給送速度モードに関する情報(例えばフラグ値)を読み出し、その読み出したフラグ値から前回の給送速度モードを確認する。本例では、給送速度モードには、高速モード、中速モード及び低速モードの三種類あるため、これらのうちの一つのモードが前回の給送速度モードとして確認される。
ステップS22では、前回が高速モードであるか否かを判定する。高速モードであればステップS23に進み、高速モードでなければステップS24に進む。
ステップS23では、中速モードを設定する。つまり、設定部82は、前回が高速モードである場合、次回の給送速度モードとして、速度モードで前回よりも例えば1段階負荷の小さな中速モードを設定する。
ステップS24では、前回が中速モードであるか否かを判定する。中速モードであればステップS25に進み、中速モードでなければステップS26に進む。
ステップS25では、低速モードを設定する。つまり、設定部82は、前回が中速モードである場合、次回の給送速度モードとして、速度モードで前回よりも例えば1段階負荷の小さな低速モードを設定する。なお、前回が低速モードの場合は、そのまま低速モードの設定が維持される。
こうして前回の給送速度モードが、既にモーター41,42にとって一番負荷の小さな低速モードである場合を除き、次回の給送速度モードが、前回の給送速度モードよりもモーター41,42の総消費電力が小さく済む給送速度モードに変更される。
こうして次回の給送動作モードと給送速度モードとが、モーター41,42の総消費電力がより小さく済む設定に変更された後、ステップS26において、給紙を再開する。つまり、用紙Pの給送動作をリトライする。主制御部80は、給送トレイ16に既に用紙Pがセットされた状態にあって紙有無センサー47が検知状態にあれば、モーター制御部81に給送動作を指示する。また、給送トレイ16に用紙Pがセットされておらず紙有無センサー47が非検知状態にあれば、ユーザーが給送トレイ16に用紙Pをセットして紙有無センサー47が検知状態になったことをもって、モーター制御部81に給送動作を指示する。指示を受け付けたモーター制御部81は、設定部82に設定された今回の給送動作モード及び給送速度モードに従ってモーター41,42を駆動制御する。
この結果、モーター41,42の総消費電力が前回より小さく済む給送動作モード及び給送速度モードで用紙Pの給送動作がリトライされる。例えば前回の給送動作中のスキュー取り動作が、複数のモーター41,42の駆動を必要とする逆転突き当て動作であった場合、今回リトライする給送動作では、一つのモーター42の駆動で済む喰付き吐出し動作が行われる。また、例えば前回の給送動作中のスキュー取り動作が一つのモーター42を駆動させる喰付き吐出し動作であった場合、今回リトライする給送動作では、スキュー取り動作が行われない。なお、例えば前回の給送動作モードが第3給送モードであった場合、今回リトライする給送動作では、同じ第3給送モードでスキュー取り動作なしでモーター41,42が駆動される。この場合も、給送速度モードが1段階低速側のものに変更されていれば、前回よりもモーター41,42の総消費電力が小さく済み、リトライ時の給送で電圧降下が検出されることはない。
さらに例えば前回の給送動作で駆動されるモーター41,42の駆動速度を規定する給送速度モードが高速モードであった場合、今回リトライする給送動作では、中速モードでモーター41,42が駆動される。また、例えば前回の給送速度モードが中速モードであった場合、今回リトライする給送動作では、低速モードでモーター41,42が駆動される。なお、例えば前回の給送速度モードが低速モードであった場合、今回リトライする給送動作では、同じ低速モードでモーター41,42が駆動される。この場合も、給送動作モードが1段階低負荷側のものに変更されていれば、前回よりもモーター41,42の総消費電力が小さく済み、リトライ時の給送で電圧降下が検出されることはない。
こうしてリトライ時の給送動作の途中で電圧降下が検出される虞が大幅に減り、今回リトライする給送動作によって、給送トレイ16にセットされた用紙Pは印刷開始位置まで給送される。
また、前回の給送動作の途中で停止した用紙Pが紙検出センサー48に検知されていれば、白紙排出されるので、給送トレイ16にセットされた位置から用紙Pの給送動作がやり直しされる。一方、前回の給送動作の途中で停止した用紙Pが紙検出センサー48に検知されていなければ、白紙排出されることなく、その給送経路上の途中の位置から用紙Pの給送動作がやり直しされる。このため、給送動作をリトライした際は、用紙Pは給送の途中で紙検出センサー48に検知され、その検知された位置を基準に用紙Pの給送位置を正しく把握できるので、印刷開始位置に正確に給送できる。例えば用紙Pの給送動作のリトライを紙検出センサー48に検知されている位置から開始すると、前回の給送途中で紙検出センサー48に検出された前回の位置を基準に、リトライ時の給送位置を把握することになる。しかし、電圧降下検出時の異常停止によって用紙Pの位置がずれた場合は、給送位置の精度の信頼性が低いので、給送動作のリトライで給送されて印刷開始位置で停止した用紙Pの停止位置精度の信頼性が低くなる。これに対して本実施形態では、リトライ時の給送動作の途中で紙検出センサー48により用紙Pが検知され、その検知された位置を基準に用紙Pを印刷開始位置に停止させる制御が行われるので、用紙Pを印刷開始位置に位置精度よく停止させることができる。
また、リトライの給送動作の途中で電圧降下が検出されて再び給送動作を失敗した場合、前回の給送動作モードよりもモーター41,42の消費電力が小さく済む給送動作モードが設定されるとともに、前回の給送速度モードよりもモーター41,42の消費電力が小さく済む給送速度モードが設定される。このため、リトライの給送動作が失敗しても、その度にモーター41,42への負荷のより小さなモードが再設定されるので、給送動作の失敗が繰り返される頻度を低減できる。なお、本実施形態では、給送動作のリトライでも失敗し、給送動作を二回連続して失敗した場合、主制御部80は、表示制御部83に指示して、表示部14に例えば用紙種の間違いの可能性がある旨をユーザーに報知するエラーメッセージを表示させる。
また、給送動作に失敗して、給送動作モード及び給送速度モードの設定を変更した場合、同じ印刷ジョブのうちは変更後の設定が維持される。例えば同じ印刷ジョブ中の後続の用紙Pの給送動作時に、給送動作モード及び給送速度モードを元に設定に戻すと、同じ印刷ジョブの残りのページの給送動作の度に毎回エラーが発生し、その都度設定を変更して余分なリトライの給送動作が増えることになる。しかし、本実施形態では、同じ印刷ジョブのうちは給送動作モード及び給送速度モードの変更した設定が維持されるので、同じ印刷ジョブの残りのページの給送動作時にエラーが発生しにくい。
また、本実施形態では、電圧降下検出時のモードが第1モードとなり、この第1モードを給送系のモーター41,42の総消費電力がより小さく済む次回の給送リトライ時のモードが第2モードとなる。このように第1モード及び第2モードは相対的に決まるものである。例えば給送動作モードの場合、電圧降下検出時のモードが逆転突き当て動作を伴う第1給送モードであり、給送リトライ時のモードが喰付き吐出し動作を伴う第2給送モードであったとする。この場合、第1給送モードが第1モードに相当し、第2給送モードが第2モードに相当する。また、逆転突き当て動作が第1のスキュー取り動作に相当し、喰付き吐出し動作が第2のスキュー取り動作に相当する。また、電圧降下検出時のモードが喰付き吐出し動作を伴う第2給送モードであり、給送リトライ時のモードがスキュー取り動作なしの第3給送モードであったとする。この場合、第2給送モードが第1モードに相当し、第3給送モードが第2モードに相当する。
さらに例えば給送速度モードの場合、電圧降下検出時のモードが高速モードであり、給送リトライ時のモードが中速モードであったとする。この場合、高速モードが第1モードに相当し、中速モードが第2モードに相当する。また、電圧降下検出時のモードが中速モードであり、給送リトライ時のモードが低速モードであったとする。この場合、中速モードが第1モードに相当し、低速モードが第2モードに相当する。また、本実施形態のように、給送動作モードと給送速度モードの両方を採用する場合、第1モードと第2モードは、給送動作モードと給送速度モードの両方の要素をそれぞれ含む。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)用紙Pを第1モードで給送するモーター41,42の駆動中に、電源部からモーター41,42へ供給される電圧の降下を検出すると、モーター41,42の駆動を停止させる。この結果、給紙は失敗となるものの、プリンター11のシステムダウンは回避できる。その後、第1モードよりも低電力である第2モードに変更してモーター41,42を駆動させることにより用紙Pの給送をリトライさせる。第2モードによる用紙Pの給送は第1モードに比べモーター41,42の総消費電力が低いので、リトライ時に電圧降下が発生しにくく、用紙Pを印刷開始位置まで給送して印刷を開始することができる。よって、用紙Pの給送をやり直しても給送の失敗が繰り返される頻度を低減できる。
(2)第1及び第2モードは、用紙Pの給送途中に行われる用紙Pのスキューを取り除くスキュー取り動作を規定するモードである。電圧降下を検出すると、用紙Pの給送途中に第1のスキュー取り動作を含む第1モードが、第1スキュー取り動作よりもモーター41,42の総消費電力が低く済む第2のスキュー取り動作を含む第2モードに変更されて用紙Pの給送がリトライされる。よって、電圧降下による用紙Pの給送の失敗が繰り返し続くことを回避し、用紙Pを給送することができる。
(3)第1及び第2モードは、給送中のモーター41,42の駆動速度を規定するモードである。給送中におけるモーター41,42の駆動速度が、第1モードよりも第2モードの方がより低速なため、第2モードでの用紙Pの給送中に電圧降下が一層発生しにくくなり、電圧降下による用紙Pの給送の失敗が繰り返し続くことを回避し、用紙Pを給送することができる。
(4)第1モードから第2モードに変更したときは、第2モードに変更した際のジョブが終わるまでは第2モードに維持される。よって、同一ジョブ中の後続の用紙Pの給送の失敗を抑制できる。よって、同じジョブの間に用紙Pの給送が用紙Pごとに毎回リトライされることによる印刷のスループットの低下を抑制できる。
(5)第1のスキュー取り動作では複数のモーター41,42を駆動させ、第2のスキュー取り動作では第1のスキュー取り動作よりも少ない数のモーター42を駆動させる。よって、複数のモーター41,42が駆動される第1のスキュー取り動作で電圧降下が検出されて用紙Pの給送が失敗しても、第1のスキュー取り動作よりも少ない数のモーター42が駆動される第2のスキュー取り動作が行われる第2モードで給送のリトライが行われる。このため、電圧降下による用紙Pの給送の失敗が繰り返される頻度を低減し、なるべく少ないリトライ回数で用紙Pを印刷開始位置まで給送することができる。
(6)プリンター11は、用紙Pを給送経路の途中で検出する紙検出センサー48(第1センサーの一例)を備える。第1モードでの用紙Pの給送中にモーター41,42の駆動を停止したときに、紙検出センサー48が用紙Pを検知していなければ、用紙Pを排出せずに給送途中で停止した位置からの用紙Pの給送をリトライし、紙検出センサー48が用紙Pを検知していれば、用紙Pを排出した後に次の用紙Pの給送をリトライする。このため、いずれの場合も、リトライ時の給送途中に用紙Pを紙検出センサー48により検知でき、その検知した位置を基準にして用紙Pを目標位置に位置精度よく給送することができる。この結果、給送後に高品質な印刷を行うことができる。
(7)給送トレイ16(載置部の一例)にセットされた用紙Pの有無を検知する紙有無センサー47(第2センサーの一例)を備え、紙有無センサー47による用紙Pの検知をもって、給送トレイ16にセットされた用紙Pの給送のリトライを開始する。つまり、給送トレイ16に用紙Pがセットしてあれば紙有無センサー47が検知状態にあれば、第2モードでの用紙Pの給送のリトライが開始され、一方、給送トレイ16に用紙Pがセットしていなければ、ユーザーが用紙Pをセットしてそれが紙有無センサー47に検知されたときに、第2モードでの用紙Pの給送のリトライが開始される。このため、第1モードでの用紙Pの給送を失敗したとき、第2モードでの用紙Pの給送が開始されるので、ユーザーは印刷の指示を再度行う必要がない。
(8)プリンター11は、商用電源30のコンセントに差し込まれた電源プラグ27aを介して給電された交流を直流に変換して出力するACアダプター27とバッテリー28との間で電源を切り換え可能な電源装置51を備えている。電源プラグ27aがコンセントから引き抜かれたことにより、電源がACアダプター27からバッテリー28に切り換えられたために電圧降下が検出され、モーター41,42の駆動が停止されても、その後、モーター41,42の総消費電力が低く済む給送動作モード及び給送速度モードでモーター41,42が駆動されることで給紙がリトライされる。よって、電源プラグ27aがコンセントから引き抜かれた場合のシステムダウンを防止できるうえ、給送の失敗が繰り返される頻度を低減することができる。
(9)コンピューター52は、ACアダプター27とバッテリー28との各出力の合流点51cと、モーター駆動回路55〜57との間における電源線上の位置で電圧をセンサー74により監視して電圧降下を検出する。よって、ACアダプター27とバッテリー28との間で電源が切り換えられてモーター41,42に電力が供給される構成でも、電圧降下を検出するための電圧の監視箇所が1箇所で済む。特にACアダプター27とバッテリー28との各出力を昇圧する第2昇圧回路72とモーター駆動回路55〜57との間における電源線上の位置で昇圧された電圧をセンサー74で監視するので、電圧降下の検出感度が良くなる。
(10)バッテリー28の電力でモーター41,42を駆動させてそのときの給送動作モード及び給送速度モードで用紙Pを給送する給送中に電圧降下を検出してモーター41,42の駆動を停止させたときは、第2モードでモーター41,42を駆動させて用紙Pの給送をリトライする。よって、供給電力が相対的に小さいバッテリー28を電源とし電圧降下が相対的に発生し易い給送中に、電圧降下が発生しそのときの給送動作モード及び給送速度モードでの用紙Pの給送を失敗しても、モーター41,42の消費電力のより低いモードで用紙Pの給送を行うことができる。
(11)プリンター11は自動給送装置17により用紙Pを給送するときにそのときのモード(第1モード)で電圧降下が発生して用紙Pの給送に失敗しても、モーター41,42の消費電力がより小さく済むモード(第2モード)で用紙Pの給送をリトライするので、用紙Pの給送を再度失敗する頻度を低減できる。
なお、上記実施形態は以下のような形態に変更することもできる。
・電圧降下検出時の給送動作失敗の際に変更するモードは、給送動作モードと給送速度モードとのうち一方だけでもよい。例えば給送速度モードを廃止し給送動作モードだけを変更する構成としたり、逆に給送動作モードを廃止し給送速度モードだけを変更する構成としたりしてもよい。また、給送動作モードと給送速度モードの両モードを採用する場合、各モードを同時に変更するのではなく、複数のモードを一方ずつ変更してもよい。例えば1回目の給送の失敗時にスキュー取り動作を変更し、次の1回目のリトライでも給送を失敗した場合は給送速度モードを変更し、さらに2回目のリトライで給送を失敗した場合にスキュー取り動作なしに変更し、さらに3回目のリトライで給送を失敗した場合に2回目の速度モードの変更を行う。
・また、電圧降下検出時の給送動作の失敗の際に変更するモードは、印刷モード又は電源モードでもよい。例えば高速低品質モード(「ドラフトモード」)で給送動作に失敗した場合に低速高品質モード(「きれいモード」)に変更してもよい。この場合、印刷動作はモードを変更せず給送動作のみ変更後のモードでリトライすれば、給送動作を成功したうえで、所望の品質の印刷画像を取得できる。また、電源モードについても同様に、AC電源モードで給送に失敗した際にバッテリーモードに変更し、リトライ時の給送動作のみバッテリーモードで行えば、リトライ時の給送を成功したうえで高速印刷を実現できる。
・スキュー取り動作は他の方法でもよい。例えば給送ローラー20で給送した用紙Pの先端を停止中の搬送ローラー対43に突き当ててスキューを取り除く突き当て方式(突き当て動作)を採用してもよい。例えば突き当て動作を伴う給送動作モードを第3給送モードとし、スキュー取り動作なしを第4給送モードとしてもよい。なお、上記の突き当て動作は、複数のモーター41,42のうち一つのモーター41の駆動で済む第2のスキュー取り動作に相当する。
・第1のスキュー取り動作(例えば逆転突き当て動作)を伴うモード(第1モード)での給送を電圧降下の検出を理由に失敗した場合、次のリトライ時の給送動作のモード(第2モード)はスキュー取り動作なしのモードに変更してもよい。例えば逆転突き当て動作時も喰付き吐出し動作時も共に給送を失敗した場合は、次のリトライ時の給送の設定をスキュー取り動作なしとしてもよい。
・電圧降下検出時の給送動作の失敗の際は、常に用紙を白紙排出してもよい。また、常に白紙排出はせずに給送動作失敗時の停止位置から給送動作を再開させてもよい。
・第1モーターを、給送モーター41と搬送モーター42との二つ備える構成に替え、給送系と搬送系で共通の一つのモーター(例えば搬送モーター)としてもよい。
・AC電源とバッテリー28のうち一方のみを電源として使用可能な走査装置でもよい。例えばAC電源のみを電源として使用可能な印刷装置、又はバッテリーのみを電源として使用可能な印刷装置でもよい。なお、AC電源で駆動可能な走査装置の場合、ACアダプター27に替え、商用電源からの交流を直流に変換するAC変換部が装置本体12に内蔵された構成でもよい。
・載置部は、給送トレイ16に限定されず、複数の用紙Pを収容した状態に載置できる給送カセットでもよい。さらに自動給送装置17の給送トレイ16ではなく、手差しトレイでもよい。この場合、給送カセット又は手差しトレイにセットされた用紙Pの有無を検知する紙有無センサー47を備えることが好ましい。
・制御部を構成する各機能部は、プログラムを実行するCPUによりソフトウェアで実現したり、ASIC等の電子回路によりハードウェアで実現したり、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現したりしてもよい。
・給送機構は、ローラー式給送機構に限定されず、媒体をベルトに載せて搬送するベルト式給送機構でもよい。
・媒体は用紙に限定されず、樹脂製のフィルム、金属箔、金属フィルム、樹脂と金属の複合体フィルム(ラミネートフィルム)、織物、不織布、セラミックシート等でもよい。
・電子機器の一例であるプリンター(印刷装置)は、用紙等の媒体に印刷できるものであれば、インクジェット式プリンターに限定されず、ドットインパクトプリンターやレーザープリンターでもよい。また、印刷装置は、印刷機能だけを備えたプリンターに限定されず、スキャナー機能やコピー機能等を備えた複合機でもよい。さらに、印刷装置は、シリアルプリンターに限らず、ラインプリンター又はページプリンターでもよい。また、印刷装置はモバイルプリンターに限定されず、小型、中型及び大型のプリンターでもよい。例えばビジネス用プリンターや大判プリンターでもよい。さらに印刷装置は捺染プリンターでもよい。
・電子機器は、プリンター(印刷装置)に限定されない。例えばスキャナー装置でもよい。例えば媒体の一例である原稿を給送する給送機構(例えば原稿給送装置(オートドキュメントフィーダー))を備え、原稿の給送過程における電源の電圧降下検出による給送失敗時にモードを変更して給送をリトライする構成としてもよい。この種のスキャナー装置であっても、媒体(原稿)の給送の失敗が繰り返される頻度を低減できる。その他、媒体を給送する給送装置を備えた電子機器の給送装置に適用できる。