JP2015186823A - 多電極片面サブマージアーク溶接方法 - Google Patents

多電極片面サブマージアーク溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶接作業性および溶接品質に優れるとともに、継手終端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる多電極片面サブマージアーク溶接方法を提供する。【解決手段】タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、Q’/Q=0.60〜1.30となるように溶接することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法に関する。
多電極片面サブマージアーク溶接は、板継ぎ溶接として造船を中心に、広い分野に適用されている高能率の溶接施工方法である。多電極片面サブマージアーク溶接方法を用いた板継溶接では、基本的に溶接開始から溶接終了まで同じ溶接施工条件で溶接する。なお、ギャップや開先精度不良などによっては溶接条件を変更する場合があるが、これは溶接品質のビード形状を良好にすることを主目的とする調整であり、大幅な溶接条件の変更はしない。
ここで、多電極片面サブマージアーク溶接では、継手始端部および継手終端部に溶接金属の割れ(縦割れ)が発生しやすいという問題がある。特に、継手終端部は割れ(一般的には終端割れと称される)の発生が極めて高く、その防止策として種々の提案がされている。
例えば、シーリングカスケード法に関するものとして、特許文献1〜3には、複数層からなるシーリングカスケードビードを用いた技術が記載されている。
特許文献1には、4電極を用いる高速片面サブマージアーク溶接法において、溶接終了時に健全なビードを形成する終端処理方法に関して記載されている。
また、特許文献2には、特に3電極以上の片面サブマージアーク溶接の継手終端部に発生する割れを防止することができる多電極サブマージアーク溶接法における終端処理方法に関して記載されている。
また、特許文献3には、溶接される板材の板厚に拘わらず、スラグ巻き込み等の欠陥及び終端割れの発生を防止することができる4電極片面サブマージアーク溶接方法に関して記載されている。
さらに、特許文献4、5には、スリットを形成したタブを用いた技術が記載されている。
特許文献4には、エンドタブの小型化及び軽量化が可能であり、作業性を改善することができる片面サブマージアーク溶接の終端割れ防止方法に関して記載されている。
特許文献5には、高速片面サブマージアーク溶接により、継手終端部まで健全な溶接部を得ることができる片面サブマージアーク溶接方法に関して記載されている。
その他、溶接母材の両端から溶接し、クレータを溶接母材内部で重ねるクレータ会合法(溶接線の両端から中心に向かってそれぞれ溶接長の約1/2ずつを溶接し,両側のクレータを重ねる方法)を用いる場合もある。
特許第2581485号公報 特開平8−99177号公報 特開平11−277239号公報 特開平7−88650号公報 特開平8−257753号公報
しかしながら、従来の技術においては以下の問題がある。
シーリングカスケードビードを用いた技術では、シーリングカスケードビードで継手終端部の回転変形を抑制するため割れ防止率は高い。しかし、継手終端部には裏ビードを形成させないため、溶接後に手直しをする必要が生ずる。また、予めシーリングカスケードビードを形成させる必要があるため、手間を要する。
スリットを形成したタブを用いた技術では、厚板を溶接した場合、溶接入熱が大きくなり、それに伴って、発生する熱変形が大きくなる。そのため、板材に対する拘束力が不足して変形を十分に抑制することができずに、終端割れが発生する場合がある。このように、スリットを形成したタブを用いた技術では、適用される板材の板厚の範囲が限定されるという問題がある。また、タブの効果を得るためには、タブ板を大きくする必要があり、また、スリットの長さを調節する必要もある。このように、スリットを形成したタブを用いた技術では、タブ板形状を工夫する必要がある。
クレータ会合法を用いた場合は、1つの継手において方向を変えて2回の溶接をする必要があり、また、会合部の手直しをする必要が生ずる。また、会合法を用いた場合、大型の溶接装置では、溶接を行う際に溶接機をバックさせるが、バックさせる際に電極配置やワイヤ径を変える必要がある。さらには、継手終端部に溶接後の角変形が発生するという問題がある。
また、継手始端部に関しては、溶接金属の割れ(始端割れ)を防止するためには、タブ板形状やタブ板の取り付け方法を工夫する必要がある。また、このようなタブを用いた場合であっても、溶接後の角変形が発生するため、その歪取り作業に多大の時間を要する。
また、多電極片面サブマージアーク溶接においては、溶接品質に関し、ビードについて健全な溶接金属とすることも必要である。
そこで、本発明の課題は、溶接作業性および溶接品質に優れるとともに、継手終端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる多電極片面サブマージアーク溶接方法を提供することにある。
また、本発明の課題は、溶接作業性および溶接品質に優れるとともに、継手始端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる多電極片面サブマージアーク溶接方法を提供することにある。
また、本発明の課題は、溶接作業性および溶接品質に優れるとともに、継手始端部および継手終端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる多電極片面サブマージアーク溶接方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の事項を見出した。
多電極片面サブマージアーク溶接(以下、適宜、サブマージアーク溶接という)において、従来の溶接速度の速い溶接条件では、鋼板の内側から外側に向けて回転変形が生じる開口変形となる。これに対し、溶接速度を所定以下の遅い条件とすると、鋼板の外側から内側に向けて回転変形が生じる収縮変形となる。したがって、回転変形により割れが生じやすい継手終端部または継手始端部、あるいはその両方において、溶接速度を所定以下の遅い条件とすることで、終端割れまたは始端割れ、あるいはその両方の割れを防止できることを見出した。さらには、溶接速度を所定以下の遅い条件とすることで、溶接後の角変形を抑制できることを見出した。
すなわち、本願に関わる多電極片面サブマージアーク溶接方法(以後、適宜、サブマージアーク溶接方法、あるいは、溶接方法という)は、タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、Q’/Q=0.60〜1.30となるように溶接することを特徴とする。
かかる溶接方法によれば、鋼板の終端側の所定領域の溶接速度を規定することで、鋼板の終端側の所定領域で収縮変形が生じる。また、Q’/Qの値を規定することで、鋼板の終端側の所定領域で収縮変形が生じるとともに、健全な溶接金属が得られる。そして、これらにより、終端割れが防止されるとともに、溶接後の角変形が抑制される。
また、本発明の溶接方法は、タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、Q’/Q=0.60〜1.30となるように溶接することを特徴とする。
かかる溶接方法によれば、鋼板の始端側の所定領域の溶接速度を規定することで、鋼板の始端側の所定領域で収縮変形が生じる。また、Q’/Qの値を規定することで、鋼板の始端側の所定領域で収縮変形が生じるとともに、健全な溶接金属が得られる。そして、これらにより、始端割れが防止されるとともに、溶接後の角変形が抑制される。
また、本発明の溶接方法は、タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接、および、前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、Q’/Q=0.60〜1.30となるように溶接することを特徴とする。
かかる溶接方法によれば、鋼板の始端側の所定領域および鋼板の終端側の所定領域の溶接速度を規定することで、鋼板の始端側の所定領域および終端側の所定領域で収縮変形が生じる。また、Q’/Qの値を規定することで、鋼板の始端側の所定領域および終端側の所定領域で収縮変形が生じるとともに、健全な溶接金属が得られる。そして、これらにより、始端割れおよび終端割れが防止されるとともに、溶接後の角変形が抑制される。
本発明の溶接方法は、前記本溶接の溶接速度が、400〜1500mm/minであることが好ましい。
本溶接速度をこのように規定すれば、板厚8〜40mmの範囲でより安定して溶接品質を確保することができる。
本発明の溶接方法は、前記70%以下の溶接速度は、200mm/min以上であることが好ましい。
前記70%以下の溶接速度をこのように規定すれば、溶接能率を著しく阻害することがなく、また、ビード外観がより良好となる。さらには、アーク持続可能な電流値を採用した場合は、表および裏ビードの溶接品質が確保できる。
本発明の溶接方法は、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱を、電流、電圧、および溶接速度のうちの1つ以上で調整することができる。
また、本発明の溶接方法は、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱を、作動させる電極数を減らして調整することができる。
本発明の溶接方法は、2〜4電極で行うことが好ましい。
かかる溶接方法によれば、厚板鋼板の溶接に適用でき、また、高能率化と溶接品質とをより両立しやすくなる。
本発明の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、継手終端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる。また、継手終端部において、表および裏ビード共に健全な溶接金属を得ることができ、溶接品質にも優れたものとなる。さらには、溶接作業性を向上させることができる。
本発明の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、継手始端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる。また、継手始端部において、表および裏ビード共に健全な溶接金属を得ることができ、溶接品質にも優れたものとなる。さらには、溶接作業性を向上させることができる。
本発明の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、継手始端部および継手終端部において、溶接金属の割れを防止し、かつ溶接後の角変形を抑制することができる。また、継手始端部および継手終端部において、表および裏ビード共に健全な溶接金属を得ることができ、溶接品質にも優れたものとなる。さらには、溶接作業性を向上させることができる。
本発明の多電極片面サブマージアーク溶接方法に用いる溶接装置の断面図である。 本発明の多電極片面サブマージアーク溶接方法で溶接する鋼板の変形方向を説明するための平面図である。 多電極片面サブマージアーク溶接を行う際の様子を示す鋼板周辺の断面図である。 多電極片面サブマージアーク溶接を行う際の様子を示す鋼板周辺の断面図である。 本溶接速度のままで鋼板を溶接した際の変形方向および変形量測定位置を示す平面図である。 本溶接速度のままで鋼板を溶接した際の継手終端部の変形量を示すグラフである。 本溶接速度のままで鋼板を溶接した際の継手始端部の変形量を示すグラフである。 実施例における始端側の溶接条件の移行状態を示す平面図である。 実施例における終端側の溶接条件の移行状態を示す平面図である。 実施例における角変形量の測定位置を示す平面図である。 実施例における角変形量の測定について説明するための、図10の矢印方向から見た側面図である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[第1の溶接方法]
本発明の第1の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法である。そして、この溶接方法は、前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うものである。さらには、この溶接方法は、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」となるように溶接するものである。
まず、本発明の溶接方法に用いる溶接装置の主要部の概略および鋼板について説明する。
(溶接装置)
図1に示すように、溶接装置100は、架台フレーム11と、溶接機12と、溶接機ビーム13と、を主に備える。
架台フレーム11は、鋼製の角材を枠組みして、断面視凹状を呈するように形成されており、上方が開放され、内部に図3、4に示す裏当装置50aあるいは裏当装置50bが支持されている。そして、裏当装置50aの裏当銅板55あるいは裏当装置50bの耐火性キャンバス56上に鋼板20が載置されている。
溶接機ビーム13は、溶接機12を鋼板20の長手方向に沿って移動させるものである。
溶接機12は、架台フレーム11の上方(鋼板20の上方)に配置され、鋼板20の溶接開先部M(図2参照)の表側から鋼板20を溶接するものである。溶接機12は、ここでは4本の電極(溶接トーチ)15を備える。溶接機12は、溶接機ビーム13に沿って所定速度で移動しながら、溶接開先部Mの表側から電極15によって片面サブマージアーク溶接により鋼板20を溶接する。電極15はここでは4本としているが、2本以上であればよい。厚板鋼板の溶接に適用でき、また、高能率化と溶接品質とをより両立しやすくする観点から、電極は2〜4本であることが好ましい。
ここで、多電極片面サブマージアーク溶接方法とは、図3、4に示すように、突き合わされた鋼板20,20の裏面から、裏当銅板55上に層状に散布した裏当フラックス52、あるいは、耐火性キャンバス56内に収容された裏当フラックス52をエアホース59などの押上機構により押圧して溶接する方法である。多電極片面サブマージアーク溶接方法では、鋼板20の表側から表フラックス51を用いてサブマージアーク溶接を行い、鋼板20の表面と裏面に同時にビードを形成する。なお、図3、4において、符号53はスラグ、符号54は溶接金属、符号57はフラックス袋、符号58は下敷フラックスである。
(鋼板)
鋼板20としては、例えば造船用鋼板が挙げられ、その長さは、例えば10〜30mである。図2に示すように、この鋼板20には、鋼板20同士を突き合わせ、溶接開先部Mの位置で、断続あるいは連続した面内仮付がなされている。面内仮付が断続してなされているとは、鋼板20同士の接合箇所(溶接箇所)の全てで面内仮付がなされているのではなく、接合箇所(溶接箇所)の数箇所で面内仮付がなされていることを意味する。そして、その箇所数は溶接において特に問題が生じない範囲で設定すればよい。また、面内仮付が連続してなされているとは、鋼板20同士の接合箇所(溶接箇所)の全てで面内仮付がなされていることを意味する。なお、連続した面内仮付がなされているものは、1層のみからなるシーリングビードと同等のものであり、2層以上からなるシーリングカスケードビードとは異なるものである。ここで、シーリングカスケードビードとは、2層以上(多層)で、かつ段状になっているものをいう。面内仮付は、従来公知の仮付溶接の方法により行えばよい。
この鋼板20の始端31および終端32には、クレータを処理するためのタブ21,22が取り付けられている。なお、本発明に用いるタブ21,22には、スリットなどは特に設けない。
そして、本発明の溶接方法では、鋼板20の終端手前1000mm以上の位置から終端32までの溶接を、本溶接の溶接速度(以下、適宜、本溶接速度という)に対して70%以下の溶接速度(以下、適宜、減速溶接速度という)で行う。また、本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」とする。なお、本溶接速度に対する、減速させた後の速度のパーセンテージを減速後の速度率というものとする。すなわち、本発明は、減速後の速度率が70%以下である。
鋼板20の溶接は、鋼板20の始端31から終端32にかけて行う。この溶接の際、溶接速度の速い本溶接速度では、鋼板20の内側から外側に向けて回転変形が生じる開口変形αとなる。ここで、「本溶接」とは、仮付溶接がなされた鋼板20に対して行う溶接である。また、「本溶接速度」とは、従来において通常行われるサブマージアーク溶接の速度である。すなわち、本発明のように、継手終端部(あるいは継手始端部)において減速溶接速度を規定しない場合の溶接速度である。本溶接速度としては、例えば、400〜1500mm/minである。
ここで、通常、本溶接での溶接速度は一定となるが、溶接処理の都合上、溶接箇所によっては、速度がやや低下する場合がある。したがって、溶接速度の減速後の速度率は、例えば、本溶接の最高速度を基準に規定することができる。なお、通常は、本溶接速度の最高速度は、本溶接条件の最適速度、すなわち予め設定した本溶接速度となる。
また、鋼板20の始端31とは、溶接を開始する側の最端部のことであり、鋼板20とタブ21との接続部位を意味する。鋼板20の終端32とは、溶接が終了する側の最端部のことであり、鋼板20とタブ21との接続部位を意味する。
また、継手始端部とは、サブマージアーク溶接において一般的に認識されている部位であり、始端31およびその周辺を意味する。継手始端部は、例えば鋼板20の長さが10〜30mのとき、例えば鋼板20の始端31から500mmまでの範囲の部位とすることができる。
また、継手終端部とは、サブマージアーク溶接において一般的に認識されている部位であり、終端32およびその周辺を意味する。継手終端部は、例えば鋼板20の長さが10〜30mのとき、例えば鋼板20の終端手前1000mmの位置から終端32までの範囲の部位とすることができる。
(溶接条件の変更範囲:鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端まで)
図5に示すように、本溶接速度で一定のまま始端31から終端32まで溶接した場合は、終端32側には開口変形αが認められる。そして、終端32側の変形量測定位置F2で変形量を測定すると、図6に示すように、終端32から約2000mmの位置から変形が始まっている。なお、変形量測定位置F2および変形量測定位置F1はおよその位置として図示している。そして、この約2000mmの位置から終端32に向かうにつれて変形量Tが大きくなる。本発明では、溶接条件(溶接速度)の変更は、変形量Tが十分に小さい位置である、終端32から1000mmの位置までに行う必要がある。溶接条件の変更が、鋼板20の終端手前1000mm未満の位置では、継手終端部の変形量Tが大きいため終端割れが発生する。また、継手終端部の角変形が大きくなる。したがって、溶接条件の変更範囲は、鋼板20の終端手前1000mm以上の位置とする。変形量がより小さい位置から溶接条件を変更させる観点から、溶接条件の変更位置は、好ましくは鋼板20の終端手前1200mm以上の位置、より好ましくは1500mm以上の位置、さらに好ましくは2000mm以上の位置とする。なお、上限については特に規定されるものではないが、溶接の効率をより向上させる観点から、溶接条件の変更位置は、鋼板20の終端手前2500mm以下の位置が好ましく、2000mmの位置がより好ましい。
(溶接速度の減速後の速度率:本溶接速度に対して70%以下)
終端32側の所定領域において、溶接速度の減速後の速度率を本溶接速度に対して70%以下とすることで、終端32側の所定領域は収縮変形βとなる。減速後の速度率が本溶接速度に対して70%を超えると、終端32側の所定領域は開口変形αのままであり、終端割れが生じる。また、継手終端部の角変形が大きくなる。したがって、溶接速度の減速後の速度率は、本溶接速度に対して70%以下とする。終端32側の所定領域をより収縮変形βにしやすくする観点から、減速後の速度率は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%である。なお、減速後の速度率が40%以上であれば、溶接能率を著しく阻害することがない。また、減速後の速度率が40%以上であれば、健全な溶接金属を確保するための電流値が高くなり、アークを持続するのが困難とならずビード外観がより良好となる。さらに、減速後の速度率が40%以上であれば、アーク持続可能な電流値を採用した場合は、表および裏ビードの溶接品質が確保できる。したがって、溶接速度の減速後の速度率は40%以上とすることが好ましい。
また、本溶接速度としては、具体的には、400〜1500mm/minであることが好ましい。本溶接速度が400〜1500mm/minであれば、板厚8〜40mmの範囲でより安定して溶接品質を確保することができる。したがって、本溶接速度は、400〜1500mm/minとすることが好ましい。なお、好ましくは600mm/min以上、さらに好ましくは800mm/以上である。
また、減速溶接速度は、200mm/min以上であることが好ましい。減速溶接速度が200mm/min以上であれば、溶接能率を著しく阻害することがない。また、減速溶接速度が200mm/min以上であれば、健全な溶接金属を確保するための電流値が高くなり、アークを持続するのが困難とならずビード外観がより良好となる。さらに、減速時の溶接速度が200mm/min以上であれば、アーク持続可能な電流値を採用した場合は、表および裏ビードの溶接品質が確保できる。したがって、減速溶接速度は、200mm/min以上とすることが好ましい。
(溶接条件の移行範囲)
次に、溶接条件の移行範囲について図2を参照して説明する。
図2に示す符号aは本溶接条件(本溶接速度)の範囲、符号b1、b2は低速条件(減速溶接速度)の範囲、符号c1、c2は溶接条件移行範囲である。図2に示すように、本発明の溶接方法では、本溶接条件から、減速後の速度率が70%以下である低速条件に移行するための移行範囲(溶接条件移行範囲)c2が存在してもよい。この移行範囲c2は、本溶接条件よりも低速であり、かつ減速後の速度率が70%を超えるものである。
すなわち、鋼板20の溶接において、予め設定した鋼板20の終端手前1000mm以上の位置よりもやや始端31側である移行範囲c2に電極15がきたときに、徐々に減速をはじめ、予め設定した鋼板20の終端手前1000mm以上の位置に電極15がきたときに、減速後の速度率を70%以下とするものである。この移行範囲c2の長さは特に規定されるものではないが、例えば、50〜500mmである。ただし、溶接装置100の設定等によっては、予め設定した鋼板20の終端手前1000mm以上の位置に電極15がきたときに、本溶接条件から、急速に減速後の速度率を70%以下とするものであってもよい。
なお、この移行範囲c2については、始端31側、すなわち、減速後の速度率が70%以下である低速条件から、本溶接条件に移行する範囲(移行範囲c1)についても同様である。始端31側の移行範囲c1の長さは特に規定されるものではないが、例えば、50〜500mmである。
(溶接入熱)
鋼板20の溶接において、溶接速度のみを変化させた場合、過剰な入熱となり低速による収縮変形βの効果と溶接品質の確保は困難となる。つまり減速溶接速度での溶接の総入熱が本溶接の総入熱に対して1.30倍を超えると、収縮変形βは認められず、終端割れが生じ、また、継手終端部の角変形が大きくなる。さらには、溶接品質についても裏ビードの余盛が過剰となり、健全な溶接金属にはならない。一方、減速溶接速度での溶接の総入熱が本溶接の総入熱に対して0.60倍未満では、収縮変形βは認められるものの、アークを持続することが困難となり表および裏ビード共に健全な溶接金属を得ることができない。したがって、本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、減速溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」とする。
なお、健全な溶接金属をより得やすくする観点から、Q’/Qの値は、好ましくは0.70以上、より好ましくは0.80以上とする。また、終端32側の所定領域をより収縮変形βにしやすくし、かつ健全な溶接金属をより得やすくする観点から、Q’/Qの値は、好ましくは1.20以下とする。
なお、総入熱Qは、下記計算式で算出することができる。
Figure 2015186823
前記式において、Qは総入熱(kJ/mm)、Eiは電圧(V)、Iiは電流(A)、viは溶接速度(mm/min)、i=1,2,3,…n、iは各電極のことを示す。
前記式については、Q’についても同様である。また、ここでの総入熱とは、各電極15の入熱の合計を意味する。また、総入熱は上記計算式で算出した値でもよいが、実測値(計測値)であってもよい。
減速溶接速度での溶接の総入熱は、電流、電圧、および、溶接速度のうちの1つ以上で調整することができる。すなわち、電極15に供給する電流、電極15に供給する電圧、溶接速度において、これらのうちいずれか1つで調整してもよく、2つあるいは3つを同時に用いて調整してもよい。
また、減速溶接速度での溶接の総入熱は、作動させる電極数を減らして調整することができる。
電極数を減らす場合は、例えば、本溶接で2〜4本の電極15を用いる場合に、作動させる電極数を1〜3本に減らすことで減速溶接速度での溶接の総入熱を調整することができる。すなわち、本溶接で作動させる電極数よりも、減速溶接速度での溶接で作動させる電極数を減らして調整する。なお、作動させる電極とは、電流を供給してアークを発生させる電極を意味する。このように調整することによって、電極15に供給する電流の制御がより容易となり、溶接能率がより向上する。
また、本発明の溶接方法は、2〜4本の電極15、すなわち2〜4電極で行うことが好ましい。電極15が1電極では、厚板鋼板の溶接に不向きであり、5電極以上では、溶接の高能率化が可能となるものの、溶接品質との両立のさらなる改善の余地が生じる。電極15が2電極以上であれば、厚板鋼板の溶接に適用できる。一方、電極数が4電極以下であれば、溶接の高能率化を図ることができ、かつ溶接品質もより良好なものとなる。このように、2〜4電極とすることで、厚板にも適用でき、高能率化と溶接品質とをより両立しやすくなる。したがって、本発明の溶接方法は、2〜4電極で行うことが好ましい。
[第2の溶接方法]
本発明の第2の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法である。そして、この溶接方法は、前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うものである。さらには、この溶接方法は、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」となるように溶接するものである。
前記説明した第1の溶接方法が鋼板の終端側に着目したものであるのに対し、本発明の第2の溶接方法は、鋼板の始端側に着目したものである。本発明の第2の溶接方法においては、前記説明した第1の製造方法と異なることについてのみ説明する。
(溶接条件の変更範囲:鋼板の始端から500mm以上の位置まで)
図5に示すように、本溶接速度で一定のまま始端31から終端32まで溶接した場合は、始端31側には開口変形αが認められる。そして、始端31側の変形量測定位置F1で変形量Tを測定すると、図7に示すように、変形量Tは、溶接開始位置Gから、始端31から約1000mmの位置まで増大し、それ以降は急激に増大したのちに小さくなる。すなわち、溶接開始位置Gから、始端31から約1000mmの位置まで所定の変形量Tの開口変形が認められ、それ以降は変形量Tの急激な増大を伴う開口変形を示したのちに収縮変形となる。このため、低速条件(減速溶接速度)から本溶接条件(本溶接速度)への変更は、開口変形が生じ、かつ、割れの生じやすい位置である、始端31から500mm未満の位置よりも終端32側で行う必要がある。始端31から500mm未満の位置では、本溶接条件とした場合、割れの生じやすい継手始端部で開口変形αが生じ、始端割れが発生する。また、継手始端部の角変形が大きくなる。したがって、溶接条件(溶接速度)の変更範囲は、鋼板20の始端31から500mm以上の位置までとする。変形量Tがより大きくなる位置まで低速条件として始端割れの発生をより抑制する観点から、溶接条件の変更位置は、好ましくは鋼板20の始端31から700mm以上の位置まで、より好ましくは1000mm以上の位置までとする。なお、上限については特に規定されるものではないが、溶接の効率をより向上させる観点から、溶接条件の変更位置は、鋼板20の始端31から1300mm以下の位置が好ましく、1000mmの位置がより好ましい。
(溶接速度の減速後の速度率:本溶接速度に対して70%以下)
始端31側の所定領域において、溶接速度の減速後の速度率を本溶接速度に対して70%以下とすることで、始端31側の所定領域は収縮変形βとなる。減速後の速度率が本溶接速度に対して70%を超えると、始端31側の所定領域は開口変形αのままであり、始端割れが生じる。また、継手始端部の角変形が大きくなる。したがって、溶接速度の減速後の速度率は、本溶接速度に対して70%以下とする。始端31側の所定領域をより収縮変形βにしやすくする観点から、減速後の速度率は、好ましくは60%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%である。なお、減速後の速度率が40%以上であれば、溶接能率を著しく阻害することがない。また、減速後の速度率が40%以上であれば、健全な溶接金属を確保するための電流値が高くなり、アークを持続するのが困難とならずビード外観がより良好となる。さらに、減速後の速度率が40%以上であれば、アーク持続可能な電流値を採用した場合は、表および裏ビードの溶接品質が確保できる。したがって、溶接速度の減速後の速度率は40%以上とすることが好ましい。
(溶接入熱)
溶接入熱に関しては、第1の溶接方法と同様であるので、説明を省略する。
[第3の溶接方法]
本発明の第3の多電極片面サブマージアーク溶接方法は、タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法である。そして、この溶接方法は、前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接、および、前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うものである。さらに、この溶接方法は、前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」となるように溶接するものである。
前記説明した第1の溶接方法は鋼板の終端側に着目したものであり、前記説明した第2の溶接方法は鋼板の始端側に着目したものである。本発明の第3の溶接方法は、鋼板の始端側と終端側の両方に着目したものである。すなわち、本発明の第3の溶接方法は、前記した第1の溶接方法、および、前記した第2の溶接方法を合わせたものである。したがって、本発明の第3の製造方法は、前記した第1および第2の製造方法で説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
次に、本発明の溶接方法を用いた多電極片面サブマージアーク溶接の概略について図1〜3を参照して説明する。
(準備工程)
準備工程では、まず、タブ21,22が取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板20,20を準備する。次に、裏当装置50aの裏当銅板55上面、あるいは、裏当装置50bの耐火性キャンバス56内のフラックス袋57上面に、図示しないフラックス供給手段により裏当フラックス52を供給する。そして、鋼板20,20を溶接装置100にセットし、裏当装置50aあるいは裏当装置50bの上方に鋼板20,20によって形成された溶接開先部Mを配置させる。そして、図示しない駆動装置を作動させて溶接開先部Mの直下に裏当銅板55あるいは耐火性キャンバス56が位置するように微調整を行う。次に、エアホース59に圧縮空気を導入し、エアホース59を膨張させて裏当銅板55あるいはフラックス袋57を溶接開先部Mの裏側に押圧し、溶接開先部Mの裏面に裏当フラックスを押し当てる。
(溶接工程)
溶接工程では、まず、溶接装置100の溶接機12を溶接開始の位置に移動させる。次に、電極15に電流を供給し、溶接機12を作動させる。そして、鋼板20の始端31から終端32に向かって溶接機ビーム13に沿って溶接機12を所定速度で移動させながら、表フラックス51を供給しながら鋼板20,20を溶接する。
この溶接工程での溶接は、前記説明したように、鋼板20の始端31から500mm以上の位置まで、および、鋼板20の終端32手前1000mm以上の位置から終端32まで、のいずれか一方、あるいは両方の溶接を前記した所定条件で行う。
次に、溶接速度の変更の一例について説明する。
ここでの溶接方法では、本溶接において3または4本の電極15を採用して溶接するものとする。鋼板20の始端31から500mm以上の位置までの範囲(低速条件範囲b1)、および、鋼板20の終端手前1000mm以上の位置から終端32までの範囲(低速条件範囲b2)において、作動させる電極15として1または2本の電極15を採用するものとする。そして、低速条件範囲b1において、溶接速度が、予め設定した本溶接速度の70%以下となるように、作動させた電極15の溶接電流や電圧を適宜調整する。この減速した溶接速度で、鋼板20の始端31から500mm以上の所望の位置まで溶接する。次に、溶接条件移行範囲c1で、3または4本の電極15を作動させたり、作動させた電極15の溶接電流や電圧を適宜調整したりして溶接速度を徐々に上げていく。そして、本溶接条件の範囲aを本溶接速度で溶接する。次に、溶接条件移行範囲c2で、1または2本の電極15を作動させたり、作動させた電極15の溶接電流や電圧を適宜調整したりして溶接速度を徐々に下げていく。そして、鋼板20の終端手前1000mm以上の位置から終端32までの範囲(低速条件範囲b2)において、本溶接速度の70%以下となるように、作動させた電極15の溶接電流や電圧を適宜調整する。この減速した溶接速度で、鋼板20の終端手前1000mm以上の所望の位置から終端32までの範囲を溶接する。なお、溶接速度の調整とともに、本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、減速溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、「Q’/Q=0.60〜1.30」となるように、作動させた電極15の溶接電流や電圧、溶接速度、作動させる電極数などを適宜調整する。なお、溶接速度の変更や総入熱の調整は、例えば、溶接装置の設定による自動制御や手動にて行えばよい。
このように本発明は、複数層からなるシーリングカスケードビードを形成する必要がなく、タブ板形状やタブ板の取り付け方法を工夫する必要がなく、また、溶接後の手直しも必要ないことなどから、従来技術に比べ、溶接作業性に優れたものである。
以下、本発明の範囲に入る実施例について、その効果を本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
端面に斜面を形成した2枚の鋼板について、端面を相互に対向させて突合せてY字形開先を形成した。このY字形開先は、開先角が50°、開先の深さが17mm、ルートギャップが0mmである。また、鋼板の長さは20m、鋼板の厚さは20mmであり、この鋼板は、船級認定鋼板DH36である。この鋼板について溶接を行った。
本実施例では、電極を4本備える溶接装置を用いた。そして、本溶接の条件を表1に示す条件に設定し、溶接開始位置および継手始端部の溶接条件を表2に示す条件に設定し、継手終端部の溶接条件を表3に示す条件に設定した。図8、9に溶接条件の移行状態を示す。ここで、符号Gは溶接開始位置、符号Hは溶接終了位置である。また、符号aは本溶接条件の範囲、符号b1、b2は低速条件の範囲、符号c1、c2は溶接条件移行範囲である。なお、溶接条件以外の条件は従来公知の条件であり、すべて同一条件とした。
Figure 2015186823
Figure 2015186823
Figure 2015186823
そして、表4に示すNo.1〜16の条件で多電極片面サブマージアーク溶接を行い、以下の評価を行った。なお、表4中、「−」は評価を行なわなかったものである。また、本発明の範囲を満たさないものは数値に下線を引いて示す。
(始端割れ、終端割れ)
始端割れ、終端割れについては、割れの有無を目視にて観察して評価した。
(角変形量)
角変形量は、図10、11に示すように、鋼板20の継手始端部および継手終端部について、鋼板20の設置面からの角変形量tを測定することにより評価した。図11の角変形量tは、図10の符号Pで示した部位における、始端31あるいは終端32の矢印の方向から見たものである。なお、継手始端部についての試験は、始端31の角変形量tについて評価し、継手終端部についての試験は終端32の角変形量tについて評価し、両方についての試験は両方の角変形量tについて評価した。
角変形量tは、
1:7mm以上
2:4mm以上7mm未満
3:1mm以上4mm未満
4:0mm以上1mm未満
とし、4mm未満のものを合格とした。
(溶接品質)
溶接品質は、表ビードおよび裏ビードを目視にて観察して評価した。表ビードおよび裏ビードは、余盛が過少もしくは過剰、アンダーカットが多発したもの、あるいはビード外観が不良となったものを不良とした。
これらの結果を表4に示す。
Figure 2015186823
表4に示すように、本発明の範囲を満足するNo.1〜6は、すべての評価項目において良好であった。
一方、本発明の範囲を満足しないNo.7〜16は、以下の結果となった。
No.7は、減速後の速度率および低速条件の長さが本発明の範囲を満たさないため、始端割れが生じ、また、角変形量が多かった。No.8は、低速条件の長さが本発明の範囲を満たさないため、始端割れが生じ、また、角変形量が多かった。No.9は、低速条件の長さが本発明の範囲を満たさないため、始端割れが生じ、また、角変形量が多かった。No.10は、総入熱の関係が下限値未満のため、溶接品質に劣った。No.11は、総入熱の関係が上限値を超えるため、始端割れが生じ、また、角変形量が多かった。さらに、裏ビードについて溶接品質に劣った。
No.12は、低速条件の長さが本発明の範囲を満たさないため、終端割れが生じ、また、角変形量が多かった。No.13は、低速条件の長さが本発明の範囲を満たさないため、終端割れが生じ、また、角変形量が多かった。No.14は、総入熱の関係が下限値未満のため、溶接品質に劣った。No.15は、総入熱の関係が上限値を超えるため、終端割れが生じ、また、角変形量が多かった。さらに、裏ビードについて溶接品質に劣った。No.16は、減速後の速度率および低速条件の長さが本発明の範囲を満たさないため、終端割れが生じ、また、角変形量が多かった。
以上、本発明について実施の形態および実施例を示して詳細に説明したが、本発明の趣旨は前記した内容に限定されることなく、その権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈しなければならない。なお、本発明の内容は、前記した記載に基づいて広く改変・変更等することが可能であることはいうまでもない。
11 架台フレーム
12 溶接機
13 溶接機ビーム
15 電極
20 鋼板
21,22 タブ
31 始端
32 終端
50a,50b 裏当装置
51 表フラックス
52 裏当フラックス
53 スラグ
54 溶接金属
55 裏当銅板
56 耐火性キャンバス
57 フラックス袋
58 下敷フラックス
59 エアホース
100 溶接装置
F1,F2 変形量測定位置
G 溶接開始位置
H 溶接終了位置
M 溶接開先部
P 角変形量の測定部位の概略
α 開口変形
β 収縮変形

Claims (8)

  1. タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、
    前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、
    前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、
    Q’/Q=0.60〜1.30
    となるように溶接することを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  2. タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、
    前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、
    前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、
    Q’/Q=0.60〜1.30
    となるように溶接することを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  3. タブが取り付けられ、断続あるいは連続した面内仮付がされた鋼板を溶接する多電極片面サブマージアーク溶接方法であって、
    前記鋼板の始端から500mm以上の位置までの溶接、および、前記鋼板の終端手前1000mm以上の位置から終端までの溶接を、本溶接の溶接速度に対して70%以下の溶接速度で行うとともに、
    前記本溶接の総入熱をQ(kJ/mm)、前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱をQ’(kJ/mm)としたとき、
    Q’/Q=0.60〜1.30
    となるように溶接することを特徴とする多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  4. 前記本溶接の溶接速度は、400〜1500mm/minであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  5. 前記70%以下の溶接速度は、200mm/min以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  6. 前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱を、電流、電圧、および溶接速度のうちの1つ以上で調整することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  7. 前記70%以下の溶接速度での溶接の総入熱を、作動させる電極数を減らして調整することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
  8. 2〜4電極で行うことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の多電極片面サブマージアーク溶接方法。
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