JP2015169520A - 脱進機、時計用ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】脱進機1は、第一衝撃つめ石46と、第二衝撃つめ石48と、第一停止つめ石47と、第二停止つめ石49とを有し、アンクル真43周りに回動可能なアンクル40と、動力が伝達され、第一衝撃つめ石46が接触可能とされるとともに、第一停止つめ石47が係脱可能な第一がんぎ歯車14を有する第一がんぎ車10と、第二衝撃つめ石48が接触可能とされるとともに第二停止つめ石49が係脱可能な第二がんぎ歯車24を有し、第一がんぎ車10と噛合される第二がんぎ車20と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図2
Description
振り座は、アンクルと接触する振り石を備えており、ひげぜんまいに蓄えられた動力により、てんぷとともに回動する。アンクルは、がんぎ車の歯部に対して係脱可能な入りつめ石および出つめ石を備えており、ひげぜんまいの動力が振り石を介して伝達されて、アンクル真周りに回動する。
この細いてんぷのほぞに、衝突等による衝撃が加わると、てんぷのほぞが変形したり、または破断して、てんぷの精度が悪化したり、最悪の場合にはてんぷの動作が停止してしまうおそれがあった。
かかる衝撃によるてんぷのほぞの変形や破断を防止する為に、てんぷの軸受には耐振軸受が採用されている。この耐振軸受は、てんぷに衝撃が加わった場合、てんぷのほぞを、軸方向および径方向へ移動させることにより、てんぷに加わる衝撃を吸収または緩和するようになっている。
例えば、特許文献1には、互いに噛み合う第一がんぎ車および第二がんぎ車と、第一がんぎ車および第二がんぎ車から交互に衝撃が与えられる第一衝撃つめ石および第二衝撃つめ石と、を備え、第一衝撃つめ石および第二衝撃つめ石がてんぷの振り石に設けられた時計用の脱進機が記載されている。特許文献1に記載の脱進機では、香箱車のぜんまいから付与される動力は、第一がんぎ車および第二がんぎ車からてんぷの第一衝撃つめ石および第二衝撃つめ石に直接伝達される(いわゆる直接衝撃型)。
また、特許文献1に記載の直接衝撃型の脱進機でも、耐振軸受が採用されており、てんぷのほぞに強い衝撃が加わった場合、てんぷが移動してしまい、最悪時には第一がんぎ車および第二がんぎ車と第一衝撃つめ石および第二衝撃つめ石との係合が解除されるおそれがある。したがって、脱進機の安定した動作の確保や、動力の伝達ができないおそれがある。
また、アンクルは、第一衝撃つめ石と、第二衝撃つめ石と、第一停止つめ石と、第二停止つめ石とを有しているので、各つめ石の大きさや形状等を適宜設定することにより、第一がんぎ歯車および第二がんぎ歯車に対する各つめ石の係合量を所望に調節できる。また、特許文献2に記載の技術と比較して、アンクルの設計自由度が向上するので、アンクルの大きさを適宜設定することにより、アンクルの第一停止つめ石および第二停止つめ石と、第一がんぎ歯車および第二がんぎ歯車との係合を解除する際のトルクを所望の大きさに設定できる。したがって、動力の伝達効率に優れた脱進機とすることができる。
また、本発明の時計は、上述の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする。
また、アンクルは、第一衝撃つめ石と、第二衝撃つめ石と、第一停止つめ石と、第二停止つめ石とを有しているので、各つめ石の大きさや形状等を適宜設定することにより、第一がんぎ歯車および第二がんぎ歯車に対する各つめ石の係合量を所望に調節できる。また、特許文献2に記載の技術と比較して、アンクルの設計自由度が向上するので、アンクルの大きさを適宜設定することにより、アンクルの第一停止つめ石および第二停止つめ石と、第一がんぎ歯車および第二がんぎ歯車との係合を解除する際のトルクを所望の大きさに設定できる。したがって、動力の伝達効率に優れた脱進機とすることができる。
以下では、実施形態に係る機械式の時計について説明したあと、実施形態に係る脱進機の詳細について説明する。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側、すなわち文字板と反対の側をムーブメントの「表側」と称する。
)を表側からみた平面図である。なお、図1では、てんぷ5のてん輪5aを二点鎖線で図示している。
図1に示すように、時計100は、ムーブメント101を備えている。ムーブメント101は、基板を構成する地板102を有している。地板102には、巻真案内孔103が形成されている。巻真案内孔103には、巻真104が回転可能に組み込まれている。ムーブメント101の表側(図1における紙面手前側)には、表輪列105を構成する四番車106、三番車107、二番車108および香箱車110が配置されているとともに、表輪列105の回転を制御する脱進機1が配置されている。
二番車108は、三番車107と噛合している。二番車108が回転すると、三番車107が回転するように構成されている。
三番車107は、四番車106と噛合している。三番車107が回転すると、四番車106が回転するように構成されている。
四番車106が回転することにより脱進機1および調速機2が駆動する。脱進機1については、後に詳述する。
てんぷ5は、回動軸であるてん真31と、てん真31に外嵌固定されているてん輪5aと、後述の振り座30と、不図示のひげぜんまいとを有している。
そして、脱進機1および調速機2が駆動することにより、四番車106が1分間に1回転するように制御されるとともに、二番車108が1時間に1回転するように制御される。
図2は、実施形態に係る脱進機1の斜視図である。なお、図2において、紙面上側がムーブメント101の表側となっており、紙面下側がムーブメント101の裏側となっている。
図3は、実施形態に係る脱進機1の平面図である。なお、図3において、紙面手前側がムーブメント101の表側となっており、紙面奥側がムーブメント101の裏側となっている。また、図3では、後述の振り座30のうち小つば39と振り石36のみを図示している。
ここで、図2および図3では、後述のアンクル40が回動範囲の中間部に位置する状態を図示している。
図2および図3に示すように、本実施形態に係る脱進機1は、主に振り座30と、アンクル40と、第一がんぎ車10と、第二がんぎ車20と、を備えている。以下に、脱進機1を構成する各部品について詳細に説明する。
大つば32は、円板状の部材であり、大つば32の軸方向に貫通する貫通孔33を有している。貫通孔33には、振り石36が例えば圧入固定されている。
振り石36は、例えばルビー等により、軸方向から見て径方向の外側に平坦面を有するとともに、径方向の内側に弧状面を有する半円形状に形成されている。振り石36は、軸方向に沿って設けられており、大つば32からムーブメント101の裏側に向かって突出している。振り石36は、後述するアンクル40に対して接触可能とされる。
アンクル体41には、アンクル真43とは反対側の他方端部に、平面視略U字状に形成されたクワガタ44が設けられている。クワガタ44の内側は、振り座30が回動することにより振り石36が係脱可能なアンクルハコ44aとなっている。
また、クワガタ44の内側には、振り座30の小つば39に向かって突出する剣先44bが設けられている。剣先44bの先端は、振り座30の回動時において、小つば39の外周面のうち、ツキガタ39aを挟んで周方向の両側の一部領域と摺接する。これにより、振り石36がアンクルハコ44aから離脱した状態であっても、アンクル40が回動するのを防止できる。
なお、本実施形態では、第一衝撃つめ石保持部42aおよび第一停止つめ石保持部42bと、第二衝撃つめ石保持部42cおよび第二停止つめ石保持部42dとは、アンクル体41を挟んで対称形状に形成されるようになっているが、かかる対称形状に限定されず、任意の形状に形成することができる。この場合、形状に応じて、第一がんぎ車10と第二がんぎ車20とでそれぞれの歯数を変更し、それに併せて、第一衝撃つめ石保持部42a、第一停止つめ石保持部42b、第二衝撃つめ石保持部42cおよび第二停止つめ石保持部42dの形状を変更するようにすればよい。
第一衝撃つめ石保持部42a、第一停止つめ石保持部42b、第二衝撃つめ石保持部42cおよび第二停止つめ石保持部42dには、それぞれスリットが形成されている。
第一歯車11は、外周面に歯部11aを複数備えている。第一歯車11の歯部11aは、後述の第二がんぎ車20の第二歯車21の歯部21aと噛合している。
がんぎかな12は、表輪列105を構成する四番車106(図1参照)と噛合している。がんぎかな12には、二番車108、三番車107および四番車106を介して、香箱車110内のぜんまい111(いずれも図1参照)の動力が伝達される。これにより、第一がんぎ車10は、中心軸Q1周りに時計回り方向に回転する。
第二歯車21は、外周面に歯部21aを複数備えている。第二歯車21の歯部21aは、第一がんぎ車10の第一歯車11の歯部11aと噛合している。第二歯車21には、二番車108、三番車107、四番車106および第一がんぎ車10を介して香箱車110内のぜんまい111(いずれも図1参照)の動力が伝達される。これにより、第二がんぎ車20は、中心軸Q2周りに反時計回り方向に回転する。
図4から図7は、脱進機1の動作説明図である。
続いて、上述のように構成された脱進機1の作用について、図4から図7を用いて説明する。
以下では、てんぷ5(図1参照)の自由振動にともない振り座30が中心軸O周りに反時計回り方向に回動する場合について、順を追って説明する。また、以下の説明における動作開始状態では、図4に示すように、アンクル40のアンクル体41が第二がんぎ車20側のドテピン45bに当接しているとともに、アンクル40の第二停止つめ石49が第二がんぎ車20の第二停止用がんぎ歯車26と係合している。このとき、第二がんぎ車20および第二がんぎ車20と噛合する第一がんぎ車10は、回転が停止している。
続いて、上述と同様の動作により、第一停止つめ石47と第一停止用がんぎ歯車16の第一停止用歯部16aとの係合が解除されて、第一がんぎ車10が時計回り方向に回転する。また、第一がんぎ車10が時計回り方向に回転すると、第一衝撃用がんぎ歯車15の第一衝撃歯部15aと第一衝撃つめ石46とが衝突する。これにより、香箱車110内のぜんまい111(いずれも図1参照)の動力は、第一がんぎ車10およびアンクル40を介して振り座30(すなわちてんぷ5、図1参照)の回転力として付与されて、振り座30がさらに時計回り方向に回動する。また、アンクル40が回動すると、第二停止つめ石49は、第二がんぎ車20に接近する方向に移動する。
以降、上述の動作を繰返すことにより、実施形態の脱進機1は、第二がんぎ車20と第二停止つめ石49との係脱および第一がんぎ車10と第一停止つめ石47との係脱を交互に繰り返し行うとともに、アンクル40を介しててんぷ5(図1参照)に動力を付与する、いわゆる間接衝撃型の脱進機1として動作することができる。
実施形態によれば、第一衝撃つめ石46と第二衝撃つめ石48とを備えたアンクル40と、第一衝撃つめ石46が接触可能とされる第一がんぎ歯車14を有する第一がんぎ車10と、第二衝撃つめ石48が接触可能とされる第二がんぎ歯車24を有する第二がんぎ車20と、を備えているので、アンクル40を介しててんぷ5に動力を伝達する、いわゆる間接衝撃型の脱進機1とすることができるので、安定した動作および動力の伝達を確保することができる。
また、アンクル40は、第一衝撃つめ石46と、第二衝撃つめ石48と、第一停止つめ石47と、第二停止つめ石49とを有しているので、各つめ石(第一衝撃つめ石46、第二衝撃つめ石48、第一停止つめ石47および第二停止つめ石49)の大きさや形状等を適宜設定することにより、第一がんぎ歯車14および第二がんぎ歯車24に対する各つめ石の係合量を所望に調節できる。また、特許文献2に記載の技術と比較して、アンクル40の設計自由度が向上するので、アンクル40の大きさを適宜設定することにより、アンクル40の第一停止つめ石47および第二停止つめ石49と、第一がんぎ歯車14および第二がんぎ歯車24との係合を解除する際のトルクを所望の大きさに設定できる。したがって、動力の伝達効率に優れた脱進機1とすることができる。
なお、第一実施形態においては、第一がんぎ車10には、香箱車110内のぜんまい111の動力が伝達されるようになっている。しかし、第一がんぎ車10に伝達される動力はこれに限定されず、例えば、香箱車110以外に設けられたぜんまいから、第一がんぎ車10に動力が伝達されるようにしてもよい。
図8は、実施形態の変形例に係る脱進機1の平面図である。
続いて、実施形態の変形例に係る脱進機1について説明する。
実施形態では、第一がんぎ車10の第一がんぎ歯車14は、第一衝撃用がんぎ歯車15と、第一停止用がんぎ歯車16と、により二層に形成されていた。また、第二がんぎ車20の第二がんぎ歯車24は、第二衝撃用がんぎ歯車25と、第二停止用がんぎ歯車26と、により二層に形成されていた(図2参照)。
これに対して、図8に示すように、実施形態の変形例では、第一衝撃用がんぎ歯車15と第一停止用がんぎ歯車16とが第一がんぎ歯車14として一体形成され、第二衝撃用がんぎ歯車25と第二停止用がんぎ歯車26とが第二がんぎ歯車24として一体形成されている点で、実施形態とは異なっている。なお、以下では、実施形態と同様の構成部分については説明を省略する。
第二がんぎ車20は、第二がんぎ歯車24を備えている。第二がんぎ歯車24は、複数の第二がんぎ歯部24aを有している。第二がんぎ歯車24の第二がんぎ歯部24aは、第二衝撃つめ石48が接触可能とされるとともに、第二停止つめ石49が係脱可能とされている。すなわち、実施形態の変形例に係る第二がんぎ歯車24は、実施形態に係る第二衝撃用がんぎ歯車25および第二停止用がんぎ歯車26として機能する。
実施形態の変形例によれば、複数層に分けて歯車を形成する必要がないので、容易に第一がんぎ車10および第二がんぎ車20を製造できる。
また、振り石36や第一衝撃つめ石46、第一停止つめ石47、第二衝撃つめ石48、第二停止つめ石49等の固定方法は、実施形態および実施形態の変形例に限定されない。
Claims (4)
- 第一衝撃つめ石と、第二衝撃つめ石と、第一停止つめ石と、第二停止つめ石とを有し、アンクル真周りに回動可能なアンクルと、
動力が伝達され、前記第一衝撃つめ石が接触可能とされるとともに、前記第一停止つめ石が係脱可能な第一がんぎ歯車を有する第一がんぎ車と、
前記第二衝撃つめ石が接触可能とされるとともに前記第二停止つめ石が係脱可能な第二がんぎ歯車を有し、前記第一がんぎ車と噛合される第二がんぎ車と、
を備えたことを特徴とする脱進機。 - 請求項1に記載の脱進機であって、
前記第一がんぎ車の前記第一がんぎ歯車は、前記第一衝撃つめ石が接触可能とされる第一衝撃用がんぎ歯車と、前記第一停止つめ石が係脱可能な第一停止用がんぎ歯車と、により二層に形成され、
前記第二がんぎ車の前記第二がんぎ歯車は、前記第二衝撃つめ石が接触可能とされる第二衝撃用がんぎ歯車と、前記第二停止つめ石が係脱可能な第二停止用がんぎ歯車と、により二層に形成されていることを特徴とする脱進機。 - 請求項1または2に記載の脱進機を備えたことを特徴とする時計用ムーブメント。
- 請求項3に記載の時計用ムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
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