JP2015163730A - 加工硬化能が大きく一様伸びと溶接性に優れた低降伏比高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

加工硬化能が大きく一様伸びと溶接性に優れた低降伏比高強度鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐震安全性向上の観点から低降伏比を示すと共に加工硬化能が大きく一様伸びに優れ、かつ溶接性、特には耐溶接割れ性に優れて小入熱溶接であっても予熱低減可能な高強度鋼板を提供する。【解決手段】規定の鋼組成を満たし、規定のCeqが0.40%以上0.47%以下、かつ、規定のPcmが0.220%以下を満足し、板厚の1/4位置の組織が軟質相と硬質相の複相組織からなり、前記硬質相の分率が10〜20面積%であり、前記硬質相の硬さ:Hv310〜370と前記軟質相の硬さ:Hv160〜190を満たし、かつ、前記軟質相に、Nb、V、およびMoの合計量が析出物に占める割合で50質量%超、かつ円相当直径が5nm以上の炭化物と炭窒化物が、平均円相当直径:50nm以下かつ個数密度:10個/μm2以上を満たすように存在することを特徴とする、加工硬化能が大きく一様伸びと溶接性に優れた低降伏比高強度鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、加工硬化能が大きく一様伸びと溶接性に優れた低降伏比高強度鋼板およびその製造方法に関する。
土木、建築、橋梁などの溶接構造用の鋼板として、引張強さが590MPa以上の高強度鋼板が用いられる。該高強度を達成するため合金元素を多量に添加した鋼板が用いられることが多い。しかし、合金元素を多量に含む鋼板を用いて、仮付け溶接や吊り工具の溶接等の様に小入熱かつビード長さの短い溶接を行うと、溶接熱影響部が硬化しやすくなる。溶接熱影響部が硬いと低温割れや遅れ破壊などの危険がある。よって前記溶接には予熱が必要となる。しかし該予熱は時間・コストを要するため、耐溶接割れ性、耐溶接硬化性に優れて予熱を低減できることが求められる。
また主に建築構造物等に使用される場合には、耐震安全性の向上も要求される。具体的には、鋼板の塑性変形能確保のために低降伏比を示すことが要求される。更に、大地震発生時、万が一、設計強度を超えるような応力が鋼板に付加した場合に、該鋼板が、前記低降伏比を示すと共に、加工硬化能が大きく一様伸びが大きければ、変形時の吸収エネルギーを大きくすることができ、塑性変形能の確保にさらに有効である。
つまり前記建築構造物等に用いられる高強度鋼板には、低降伏比を示すと共に、加工硬化能が大きく一様伸び特性に優れ、かつ優れた耐溶接割れ性または耐溶接硬化性も兼備していることが求められる。
これまでに、前記耐溶接割れ性と溶接熱影響部の靭性を改善した低降伏比高強度厚鋼板が特許文献1〜6で提案されている。これらの技術では、化学成分組成を調整することにより上記特性を改善している。しかしこれらは、二相域焼入れを用いて低降伏比としているものの、変形時の吸収エネルギーを大きくすることに有効な一様伸びを向上させる技術が開示されたものではない。特に特許文献4、5では、ベイナイト主体組織を母相とし、マルテンサイトあるいは島状マルテンサイトを含む組織としているため、組織中の転位密度が高いと考えられ、低降伏比ではあるものの一様伸び特性は低いと考えられる。
特開2011−208213号公報 特開2009−235548号公報 特開2007−177325号公報 特開2006−291348号公報 特開2000−395305号公報 特開2009−235549号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐震安全性向上の観点から低降伏比を示すと共に加工硬化能が大きく一様伸びに優れ、かつ溶接性、特には耐溶接割れ性に優れて、小入熱溶接であっても予熱低減可能な、即ち溶接施工性に優れた高強度鋼板、およびその製造方法を提供することにある。
尚、前記「低降伏比高強度鋼板」とは、鋼板の板厚:12mm以上100mm以下であって、降伏強さ:440N/mm2以上かつ引張強さ:590N/mm2以上で、降伏比:80%以下を満たす鋼板をいう。また前記「耐溶接割れ性に優れ」たとは、溶接熱影響部の最高硬さがHv350以下であることをいう。更に、前記「加工硬化能が大きく一様伸びに優れる」とは、一様伸びが5%以上かつ加工硬化指数、即ち実施例で示すn値が0.20以上であることをいう。
上記課題を解決し得た本発明の加工硬化能が大きく一様伸びと溶接性に優れた低降伏比高強度鋼板は、成分組成が、質量%で、
C:0.05%以上0.10%以下、
Si:0%超0.50%以下、
Mn:1.00%以上1.60%以下、
P:0%超0.010%以下、
S:0%超0.003%以下、
Al:0.010%以上0.050%以下、
Mo:0.20%以上0.50%以下、
V:0.005%以上0.080%以下、
Nb:0.005%以上0.030%以下、
Ti:0.005%以上0.020%以下、
N:0.0040%以上0.0060%以下、および
Ca:0.0005%以上0.0030%以下
を含有し、残部は鉄および不可避不純物からなり、
下記式(1)で定義されるCeqが0.40%以上0.47%以下、かつ、
下記式(2)で定義されるPcmが0.220%以下を満足し、
板厚の1/4位置の組織が軟質相と硬質相の複相組織からなり、
前記硬質相の分率が10〜20面積%であり、
前記硬質相の硬さ:Hv310〜370と前記軟質相の硬さ:Hv160〜190を満たし、かつ、
前記軟質相に、Nb、V、およびMoの合計量が析出物に占める割合で50質量%超、かつ円相当直径が5nm以上の炭化物と炭窒化物が、平均円相当直径:50nm以下かつ個数密度:10個/μm2以上を満たすように存在するところに特徴を有する。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
…(1)
式(1)において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Vは、質量%での、鋼中の各元素の含有量を示す。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B …(2)
式(2)において、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは、質量%での、鋼中の各元素の含有量を示す。
前記成分組成は、更に、質量%で、
Cu:0%超0.50%以下、
Ni:0%超0.50%以下、および
Cr:0%超0.50%以下
よりなる群から選択される1種以上の元素を含んでいてもよい。
本発明には、前記加工硬化能が大きく一様伸びと溶接性に優れた低降伏比高強度鋼板の製造方法も含まれる。該製造方法は、前記鋼組成を満たす鋼片を1050℃以上に加熱して熱間圧延を行った後、Ar3変態点以上の温度から200℃以下までを3〜30℃/秒の平均冷却速度で冷却し、次いで720℃以上800℃以下の温度域に再加熱し、該温度域で5分以上60分以下保持してから焼入れを行い、その後、440℃以上560℃以下の温度で焼戻しを行うところに特徴を有する。
本発明には、前記鋼板の別の製造方法も含まれる。該製造方法は、前記成分組成を満たす鋼片の熱間圧延を行った後、Ac3変態点以上の温度に加熱する第1の再加熱を行ってから200℃以下までを3〜50℃/秒の平均冷却速度で冷却し、次いで、第2の再加熱として720℃以上810℃以下の温度域に加熱し、該温度域で5分以上60分以下保持してから焼入れを行い、その後、350℃以上560℃以下の温度で焼戻しを行うところに特徴を有する。
本発明によれば、鋼板の成分組成を制御していると共に、金属組織を規定の軟質相と硬質相の複相組織としているため、低降伏比を示すと共に加工硬化能が大きく一様伸びに優れて耐震安全性が高められ、かつ、優れた耐溶接割れ性を示し、小入熱溶接であっても予熱低減可能な高強度鋼板を提供できる。また上記鋼板を効率よく製造することのできる方法も提供できる。
本発明者は、上記の目的を達成するため、最適な組織とそのために必要な合金元素の種類についてまず鋭意研究を重ねた。その結果、低降伏比の達成に必要な組織として、軟質相と硬質相の複相組織とすること、加えて高強度を達成するには、前記軟質相と前記硬質相の硬さ、および前記硬質相の分率を規定することが有効であること見出した。更に、前記低降伏比と共に、加工硬化能が大きく一様伸びを高めるための手段についても検討した。その結果、軟質相の強化機構として析出分散強化を積極的に活用すること、具体的には、析出物のサイズと個数を精緻に制御し、引張変形時に硬質相よりも先に変形する軟質相において析出物による転位の増殖を促進させれば、加工硬化能が向上し、一様伸びが顕著に高まることを見出した。
本発明において「硬質相」とは、二相域に加熱時に生成する逆変態オーステナイト部を、その後、焼入れ焼戻しすることにより生成する相であり、逆変態時に炭素が濃縮しているため、セメンタイトが凝集している相である。具体的には、炭素濃度の高い、焼戻しベイナイト、焼戻しマルテンサイトのいずれか1以上の組織である。一方、前記「軟質相」とは、加熱、圧延および加速冷却により生成するベイナイトが、二相域加熱時にオーステナイトに逆変態せず、いわば、高温で焼戻された組織であり、セル状の転位を含んでいる。この相は、炭素の固溶量が非常に小さいため、組織観察上セメンタイトの存在しない相と定義され、前記硬質相と区別される。またこの相は、フェライト、即ち、ベイナイト変態時にせん断変態により導入される転位を含まない組織とも区別される。
本発明において組織は、具体的に、板厚の1/4位置のミクロ組織が、軟質相と硬質相の複相組織からなり;前記硬質相の分率が10〜20面積%であり;前記硬質相の硬さ:Hv310〜370と前記軟質相の硬さ:Hv160〜190を満たし、かつ;前記軟質相に、Nb、V、およびMoの合計量が析出物に占める割合で50質量%超、かつ円相当直径が5nm以上の炭化物と炭窒化物が、平均円相当直径:50nm以下かつ個数密度:10個/μm2以上を満たすように存在する;ことが必要である。
以下、板厚の1/4位置の組織を上記の通り規定した理由について詳述する。
[軟質相と硬質相の複相組織からなり、前記硬質相の硬さ:Hv310〜370かつ前記軟質相の硬さ:Hv160〜190]
本発明では、まず、低降伏比を得るために軟質相と硬質相の複相組織とする必要がある。また所望の強度と低降伏比を併せて確保するには、前記複相組織を構成する硬質相の硬さがHv310〜370、前記複相組織を構成する軟質相の硬さがHv160〜190を満たす必要がある。
前記硬質相の硬さがHv310を下回り不足する場合、複相組織の軟質相と硬質相の硬さ比が低下し、低降伏比を達成できない。前記硬質相の硬さは、好ましくはHv315以上、より好ましくはHv320以上である。一方、前記硬質相の硬さがHv370を超えて過剰な場合は、非常に脆い相となり母材靭性が低下する。前記硬質相の硬さは、好ましくはHv360以下、より好ましくはHv350以下、更に好ましくはHv340以下である。また、前記軟質相の硬さがHv160を下回り不足する場合、強度が不足する。前記軟質相の硬さは、好ましくはHv165以上、より好ましくはHv170以上である。一方、前記軟質相の硬さがHv190を超えて過剰な場合は、複相組織の軟質相と硬質相の硬さ比が低下し、低降伏比を達成できない。前記軟質相の硬さは、好ましくはHv185以下、より好ましくはHv180以下である。
[硬質相の分率:10〜20面積%]
高強度と低降伏比を併せて確保するには、上記硬さを有する硬質相の分率を10〜20面積%とする必要もある。前記硬質相の分率が10面積%を下回ると、強度不足や降伏比上昇を招く。前記硬質相の分率は、好ましくは12面積%以上、より好ましくは14面積%以上である。一方、前記硬質相の分率が20面積%を超えると、後述する再加熱時、即ち、二相域加熱時の成分濃縮が少なく、硬質相の硬さが低下する。そしてその結果、複相組織の軟質相と硬質相の硬さ比が低下し、降伏比が上昇するため好ましくない。前記硬質相の分率は、好ましくは18面積%以下、より好ましくは16面積%以下である。
[前記軟質相に、Nb、V、およびMoの合計量が析出物に占める割合で50質量%超、かつ円相当直径が5nm以上の炭化物と炭窒化物が、平均円相当直径:50nm以下かつ個数密度:10個/μm2以上を満たすように存在する]
鋼の強化機構には、固溶強化、転位強化、結晶粒微細化、析出強化などがあるが、本発明の加工硬化能が大きく一様伸びの高められた鋼板を得るには、軟質相の強化機構として、析出強化を活用し、引張変形時に硬質相よりも先に変形する軟質相にて、析出物による転位の増殖を促進させることが必要である。そのためには軟質相に、Fe3C以外の炭化物として、Nb、V、およびMoの合計量が析出物に占める割合で50質量%超、かつ円相当直径が5nm以上の炭化物と炭窒化物が、平均円相当直径:50nm以下かつ個数密度:10個/μm2以上を満たすように存在する必要がある。以下では、前記炭化物と炭窒化物を「(Nb、V、Mo)系炭・窒化物」ということがある。この平均円相当直径と個数密度の制御では、前記炭化物、炭窒化物のどちらか一方のみが析出している場合は、前記炭化物または前記炭窒化物が上記範囲を満たせばよく、前記炭化物と炭窒化物の両方が析出している場合は、前記炭化物と前記炭窒化物の合計が上記範囲を満たせばよい。本発明で、析出物として、前記(Nb、V、Mo)系炭・窒化物を析出させることとした理由は、後述する再加熱温度、つまり二相域加熱の温度でこれらの析出物が析出するためである。
前記(Nb、V、Mo)系炭・窒化物の平均円相当直径が50nmを超えて粗大になったり、前記(Nb、V、Mo)系炭・窒化物の個数密度が10個/μm2を下回ると、析出強化の効果や変形時の転位の増殖の効果が小さくなり、軟質相の硬さ低下による強度不足に加え、加工硬化能や一様伸び向上効果が小さくなる。前記平均円相当直径は、好ましくは40nm以下、より好ましくは35nm以下である。尚、前記平均円相当直径は小さいほど好ましくその下限は限定されないが、後述する製造条件等を考慮すると、前記平均円相当直径の下限はおおよそ10nm程度となる。また前記個数密度は、好ましくは15個/μm2以上、より好ましくは20個/μm2以上である。前記個数密度は、大きいほど好ましいが、軟質相の硬さを考慮すると、その上限を70個/μm2以下とすることが好ましい。
前記(Nb、V、Mo)系炭・窒化物は、後述する実施例に示す方法で同定でき、かつ後述する実施例に示す方法でその平均円相当直径や個数密度を求めることができる。
上記組織を形成すると共に、鋼板の強度や母材靭性等を確保するには、鋼板の成分組成を下記範囲とする必要がある。
[C:0.05%以上0.10%以下]
Cは、鋼板の強度を高める効果があるが、耐溶接割れ性等の溶接性を劣化させる元素でもある。C含有量が0.05%未満であると必要な強度を確保することが困難になる。よってC含有量は0.05%以上とする。C含有量は、好ましくは0.06%以上、より好ましくは0.07%以上である。一方、C含有量が0.10%を超えると、強度は確保しやすくなるが、耐溶接割れ性の劣化につながる。よってC含有量は0.10%以下とする。C含有量は、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.08%以下である。
[Si:0%超0.50%以下]
Siは、脱酸材として、また母材強度向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、Siを0.01%以上含有させることが好ましい。しかしSi含有量が過剰になると、母材靭性やHAZ靭性、溶接性が劣化するので、Si含有量は0.50%以下とする。Si含有量は、好ましくは0.35%以下、より好ましくは0.30%以下である。
[Mn:1.00%以上1.60%以下]
Mnは、オーステナイトを安定化させ、変態温度を低温化させることで、焼入れ性を向上させ、強度と靭性を確保する上で有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Mnを1.00%以上含有させる必要がある。Mn含有量は、好ましくは1.05%以上、より好ましくは1.20%以上である。しかしながらMnを過剰に含有させると、MnSが粗大化し、母材靭性が劣化するため、上限を1.60%とする。Mn含有量は、好ましくは1.55%以下、より好ましくは1.50%以下である。
[P:0%超0.010%以下]
不可避不純物であるPは、母材と溶接部の靭性に悪影響を及ぼす。こうした不都合を招かないように、その含有量を0.010%以下に抑制する必要がある。P含有量は、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.005%以下である。尚、工業上0%にすることは困難であり、下限は0.002%程度である。
[S:0%超0.003%以下]
Sは、靭性や鋼板の板厚方向の延性に悪影響を及ぼすので少ない方が好ましい。こうした観点から、S含有量は0.003%以下に抑制する必要がある。S含有量は好ましくは0.002%以下である。尚、工業上0%にすることは困難であり、下限は0.001%程度である。
[Al:0.010%以上0.050%以下]
Alは、脱酸に必要な元素であるとともに、鋼中のNを固定して、固溶Nによる母材靭性劣化を防ぐ効果もある。このような効果を発揮させるためには、Alを0.010%以上含有させる必要がある。Al含有量は、好ましくは0.015%以上、より好ましくは0.020%以上である。一方、Alが過剰に含まれると、アルミナ系の粗大な介在物が形成され母材靭性が低下するので、Al含有量は0.050%以下とする必要がある。Al含有量は、好ましくは0.045%以下、より好ましくは0.040%以下である。
[Mo:0.20%以上0.50%以下]
Moは、焼入れ性を高めるとともに、鋼中で炭化物を生成しやすい元素であり、本発明において重要な元素の1つである。これらの効果を得るには、Moを0.20%以上含有させる必要がある。Mo含有量は、好ましくは0.25%以上、より好ましくは0.30%以上である。一方、Moが過剰に含まれると焼入れ性が過剰となり、結果として耐溶接割れ性が劣化するので、Mo含有量は0.50%以下とする必要がある。Mo含有量は、好ましくは0.45%以下、より好ましくは0.43%以下である。
[V:0.005%以上0.080%以下]
Vは、炭化物、窒化物を形成して強度を向上させると共に、焼入れ性を高めるのに有効な元素であり、本発明においてはMoと共に重要な元素の1つである。これらの効果を得るにはVを0.005%以上含有させる必要がある。V含有量は、好ましくは0.020%以上、より好ましくは0.030%以上、更に好ましくは0.040%以上である。一方、Vが過剰に含まれると、二相域加熱時に軟質相へ析出する炭化物や炭窒化物が過多となり、軟質相の析出強化能が過剰となり、降伏比増大につながる。よって、V含有量は0.080%以下とする必要がある。V含有量は、好ましくは0.070%以下、より好ましくは0.060%以下である。
[Nb:0.005%以上0.030%以下]
Nbは、炭化物、炭窒化物を形成して強度を向上させるのに有効な元素であり、本発明においては前述のMo、Vと共に重要な元素の1つである。上記効果を得るには、Nbを0.005%以上含有させる必要がある。Nb含有量は、好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.014%以上である。一方、Nbが過剰に含まれると、Vの場合と同様に二相域加熱時に軟質相へ析出する炭化物や炭窒化物が過多となり、軟質相の析出強化能が過剰となり、降伏比増大につながる。よってNb含有量は0.030%以下とする必要がある。Nb含有量は、好ましくは0.025%以下、より好ましくは0.021%以下、更に好ましくは0.020%以下である。
[Ti:0.005%以上0.020%以下]
Tiは、Nと結合してTiNを形成し、熱間圧延前の加熱時におけるオーステナイト粒、即ちγ粒の粗大化を防止し、母材靭性の向上に寄与する元素である。また、鋼中のNを固定して、固溶Nによる母材靭性の劣化を防ぐ効果もある。これらの効果を発揮させるには、Tiを0.005%以上含有させる必要がある。Ti含有量は、好ましくは0.008%以上、より好ましくは0.010%以上である。一方、Ti含有量が過剰になると、TiNが粗大化して母材靭性が劣化するので、0.020%以下とする必要がある。Ti含有量は、好ましくは0.018%以下、より好ましくは0.015%以下である。
[N:0.0040%以上0.0060%以下]
Nは、TiN、AlNを生成し、熱間圧延前の加熱時、および溶接時におけるγ粒の粗大化を防止し、母材靭性やHAZ靭性を向上させるのに有効な元素である。Nの含有量が0.0040%未満であると、上記TiN等が不足し、上記γ粒が粗大になり、母材靭性が劣化する。よってN含有量は0.0040%以上とする必要がある。N含有量は、好ましくは0.0045%以上であり、より好ましくは0.0047%以上である。一方、N含有量が0.0060%を超えて過剰になると、固溶Nの増大により、母材靭性が劣化する。よって、N含有量は0.0060%以下とする。N含有量は、好ましくは0.0055%以下、より好ましくは0.0053%以下である。
[Ca:0.0005%以上0.0030%以下]
Caは、MnSの球状化に寄与し、母材靭性や板厚方向の延性の改善に有効な元素である。該効果を発揮させるには、Ca含有量を0.0005%以上とする必要がある。Ca含有量は、好ましくは0.0010%以上、より好ましくは0.0013%以上である。しかしながら、Ca含有量が0.0030%を超えて過剰になると、介在物が粗大化し、母材靭性が劣化する。よってCa含有量は0.0030%以下とする。Ca含有量は、好ましくは0.0025%以下、より好ましくは0.0020%以下である。
本発明の鋼板の成分組成は上記元素を含み、残部は鉄および不可避不純物からなる。また、上記元素に加えて、更に下記の元素を含有させることもでき、これらの元素を適量含有させることにより、強度や靭性等を更に高めることができる。以下、これらの元素について詳述する。
[Cu:0%超0.50%以下、Ni:0%超0.50%以下、およびCr:0%超0.50%以下よりなる群から選択される1種以上の元素]
Cu、Ni、Crは、いずれも溶接性、HAZ靭性に大きな悪影響を及ぼすことなく、焼入れ性を向上させ、母材の強度、靭性を向上させるのに有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、いずれの元素を含有させる場合も、各含有量を0.05%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.10%以上である。ただし、これらの元素が過剰に含まれると、原料コストの上昇の他、Pcmの上昇を招き、かえって溶接性に悪影響を及ぼす。よっていずれの元素を含有させる場合も、各含有量を0.50%以下とすることが好ましく、各含有量はより好ましくは0.45%以下である。
本発明の鋼板は、更に、CeqとPcmが下記の範囲内となるように調整する必要がある。
[Ceq:0.40%以上0.47%以下]
板厚が100mmの厚肉材を対象とする場合にも高強度を確保するには、下記式(1)で定義されるCeqが、0.40%以上を満たすようにする必要がある。前記Ceqは、好ましくは0.420%以上、より好ましくは0.430%以上である。一方、Ceqが0.47%を超えて多量の合金元素を含有する場合には、溶接性、特に耐溶接割れ性が低下する。よって、前記Ceqを0.47%以下とした。前記Ceqは、好ましくは0.465%以下、より好ましくは0.460%以下、更に好ましくは0.455%以下である。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
…(1)
式(1)において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Vは、質量%での、鋼中の各元素の含有量を示す。尚、式(1)に記載の元素が含まれない場合は、その元素をゼロとして計算する。
[Pcm:0.220%以下]
良好な耐低温割れ性を有し、板厚が100mmの厚肉材を対象とする場合であっても、ほぼ予熱を必要としない溶接性を確保するためは、下記式(2)で定義されるPcmを0.220%以下とする必要がある。Pcmが0.220%を超えて多量の合金元素が含まれる場合、溶接割れが多発する。このため、前記Pcmを0.220%以下とした。該Pcmは、好ましくは0.210%以下、より好ましくは0.200%以下である。尚、前記Pcmは、低ければ低いほど好ましいが、本発明で規定の成分組成を考慮すると、その下限はおおよそ0.17%程度となる。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B …(2)
式(2)において、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは、質量%での、鋼中の各元素の含有量を示す。尚、式(2)に記載の元素が含まれない場合は、その元素をゼロとして計算する。
次に、本発明の鋼板を製造する方法について説明する。該方法では、前記成分組成を満たす鋼片を1050℃以上に加熱して熱間圧延を行った後、Ar3変態点以上の温度から200℃以下まで3〜30℃/秒の平均冷却速度で冷却し、次いで、720℃以上800℃以下の温度域に再加熱し、該温度域で5分以上60分以下保持してから焼入れを行い、その後440℃以上560℃以下の温度で焼戻しを行う。以下、この方法を製造方法1ということがある。
また本発明の鋼板を製造する別の製造方法として、前記成分組成を満たす鋼片の熱間圧延を行った後、Ac3変態点以上の温度に加熱する第1の再加熱を行ってから200℃以下までを3〜50℃/秒の平均冷却速度で冷却し、次いで、第2の再加熱として720℃以上810℃以下の温度域に加熱し、該温度域で5分以上60分以下保持してから焼入れを行い、その後、350℃以上560℃以下の温度で焼戻しを行う方法も挙げられる。以下、この方法を製造方法2ということがある。
これらの製造条件を規定した理由について、以下、まずは製造方法1から説明する。
製造方法1について
[1050℃以上に加熱]
熱間圧延時の加熱温度が低いと、Nbが全固溶せず、後述する二相域での再加熱焼入れ時に、軟質相に炭化物や炭窒化物を十分に析出させることができない。その結果、本発明で規定の通り、軟質相の硬さを確保することができず、また軟質相に析出物を存在させることができず、強度不足や加工硬化能の低下、一様伸びの低下につながる。よって本発明では、前記加熱温度を1050℃以上とする。前記加熱温度は、好ましくは1100℃以上、より好ましくは1120℃以上である。前記加熱温度の上限は、本発明においては特に規定しないが、スケール疵防止等の観点からは、その上限を1250℃以下とすることが好ましい。
上記熱間圧延の完了温度は、特に限定されず、鋼板の表面温度で例えば850℃以上950℃以下とすることができる。
[Ar3変態点以上の冷却開始温度から200℃以下の冷却停止温度まで、3〜30℃/秒の平均冷却速度で冷却]
上記熱間圧延後は、Ar3変態点以上の冷却開始温度から200℃以下の冷却停止温度まで、3〜30℃/秒の平均冷却速度で冷却する。前記冷却開始温度が、Ar3変態点を下回ると、軟質な初析フェライトが過度に生成し、特に降伏強度が低下する。前記冷却開始温度は、好ましくはAr3変態点+30℃以上、より好ましくはAr3変態点+40℃以上であり、上限は前記熱間圧延の完了温度未満程度となる。
また前記平均冷却速度が遅いと、軟質相の硬さが低下し、強度、特に降伏強度が不足する。よって前記平均冷却速度は3℃/秒以上とする。好ましくは4℃/秒以上である。一方、平均冷却速度が過度に大きいと、軟質相の硬さが大きくなりすぎて、軟質相と硬質相の硬さ比が低下し、降伏比が上昇する。よって前記平均冷却速度は30℃/秒以下とする。好ましくは20℃/秒以下、より好ましくは15℃/秒以下である。
上記平均冷却速度での冷却は、冷却停止温度:200℃以下の温度まで行う。該冷却停止温度が200℃よりも高いと、軟質相の硬さが低下し、降伏強度が低下する。前記冷却停止温度は、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下であり、その下限は50℃程度である。
なお、上記Ar3変態点は以下の式(3)を用いて算出した。
Ar3=910−310×C−80×Mn−20×Cu−15×Cr−55×Ni−80×Mo+0.35×(t−8) …(3)
式(3)において、C、Mn、Cu、Cr、Ni、Moは、質量%での、鋼中の各元素の含有量を示し、tは、mmでの板厚を示す。尚、式(3)に記載の元素が含まれない場合は、その元素をゼロとして計算する。
[720℃以上800℃以下の温度域に再加熱し、該温度域で5分以上60分以下保持してから焼入れ]
前記冷却後は、再加熱温度として720℃以上800℃以下の温度域に再加熱する。該温度域は二相域の温度に該当する。よって以下では、この再加熱を二相域加熱という場合がある。上記再加熱温度が720℃を下回ると、逆変態分率が不足し、硬質相の分率が不足して高強度を達成できない。前記再加熱温度は、好ましくは740℃以上、より好ましくは760℃以上である。一方、再加熱温度が800℃を超えると、逆変態分率は増加するが、硬質相となる部分の成分濃縮が不足し、硬質相の硬さが低下して軟質相と硬質相の硬さ比が低下し、降伏比が上昇する。前記再加熱温度は、好ましくは790℃以下である。
また前記再加熱温度での保持時間が短いと、(Nb、V、Mo)系炭・窒化物の析出量が不足して、軟質相の硬さが不足し、析出強化の効果や変形時の転位の増殖の効果が小さくなる。その結果、軟質相の硬さ低下による強度不足に加え、加工硬化能や一様伸び向上効果も小さくなる。更に、逆変態分率も不足してしまい、硬質相の分率が低下して強度が低下する。よって前記保持時間は5分以上とする。好ましくは8分以上、より好ましくは10分以上である。一方、前記保持時間が60分を超えて長くなりすぎると、(Nb、V、Mo)系炭・窒化物が粗大化し、この場合も析出強化の効果や変形時の転位の増殖の効果が小さくなり、軟質相の硬さ低下による強度不足に加え、加工硬化能や一様伸び向上効果が小さくなる。よって前記保持時間は60分以下とする。好ましくは40分以下、より好ましくは30分以下である。
前記保持後は、ほぼ室温まで焼入れを行う。焼入れは、水焼入れや油焼入れ等を行うことができる。なお、前記二相域加熱によって逆変態したオーステナイトには、Cが高濃縮しているため、非常に焼入れ性が高い状態となっている。よって、焼入れ時の平均冷却速度が遅くとも硬質相となりえるが、硬質相の硬さを確実に高めるため、1℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。
[焼戻し温度:440℃以上560℃以下で焼戻し]
前記焼入れ後は、焼戻し温度:440℃以上560℃以下で焼戻しを行う。前記焼戻し温度が440℃を下回ると、硬質相が硬くなりすぎて脆くなり靭性が低下する。焼戻し温度は、好ましくは450℃以上、より好ましくは480℃以上である。一方、焼戻し温度が560℃を超えると、硬質相の硬さが低下し、強度不足となりやすく、軟質相と硬質相の硬さ比が低下して降伏比が上昇する。焼戻し温度は、好ましくは550℃以下、より好ましくは530℃以下である。
次に製造方法2について説明する。
製造方法2について
製造方法2では、熱間圧延について特に限定されない。前記成分組成を満たす鋼片を、例えば加熱温度1000〜1200℃に加熱した後、熱間圧延を行えばよい。熱間圧延の完了温度は、特に限定されず、鋼板の表面温度で例えば850℃以上950℃以下とすることができる。
[Ac3変態点以上の温度に加熱する第1の再加熱を行ってから200℃以下までを3〜50℃/秒の平均冷却速度で冷却]
前記熱間圧延後、第1の再加熱として、Ac3変態点以上の温度に加熱する。以下、このAc3変態点以上の温度を「第1再加熱温度」ということがある。尚、該第1再加熱温度までの平均加熱速度は特に問わないが、一般的な雰囲気加熱の場合、板厚にもよるが、例えば0.1〜2℃/秒程度とすることが挙げられる。
前記第1再加熱温度がAc3変態点を下回ると、オーステナイト単相に完全に逆変態せず、熱間圧延後の空冷中に生成したフェライトが一部残存してしまい、強度が低下するといった不具合が有する。よって、第1再加熱温度はAc3変態点以上とする。第1再加熱温度は、好ましくはAc3変態点+20℃以上であり、より好ましくはAc3変態点+40℃以上である。第1再加熱温度の上限は、おおよそAc3変態点+150℃程度である。
上記Ac3変態点以上の温度での保持は、オーステナイト単相に完全に逆変態すれば特に必要ないが、板内を均一に加熱する観点から約10分以下の範囲で加熱保持してもよく、例えば5分程度保持することが挙げられる。
なお、上記Ac3変態点は以下の式(4)を用いて算出した。
Ac3=908−223.7×C+30.5×Si−34.4×Mn+438.5×P−23×Ni+37.9×V+2×(100×C+6×Ni−54) …(4)
式(4)において、C、Si、Mn、P、Ni、Vは、質量%での、鋼中の各元素の含有量を示す。尚、式(4)の( )内の「100×C+6×Ni−54」が負の値となる場合、2×(100×C+6×Ni−54)はゼロとして計算する。また式(4)に記載の元素が含まれない場合は、その元素をゼロとして計算する。
前記第1再加熱温度から200℃以下までの平均冷却速度が遅いと、軟質相の硬さが低下し、強度、特に降伏強度が不足する。よって前記平均冷却速度は3℃/秒以上とする。好ましくは4℃/秒以上である。一方、平均冷却速度が過度に大きいと、軟質相の硬さが大きくなりすぎて、軟質相と硬質相の硬さ比が低下し、降伏比が上昇する。よって前記平均冷却速度は50℃/秒以下とする。該平均冷却速度は、好ましくは30℃/秒以下、より好ましくは15℃/秒以下である。
上記平均冷却速度での冷却は、冷却停止温度:200℃以下の温度まで行う。冷却停止温度が200℃を超えると、軟質相の硬さが低下し、降伏強度が低下する。前記冷却停止温度は、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下であり、その下限は50℃程度である。
[第2の再加熱として720℃以上810℃以下の温度域に加熱し、該温度域で5分以上60分以下保持してから焼入れ]
前記冷却後は、第2の再加熱として、720℃以上810℃以下の温度域に加熱する。以下、この720℃以上810℃以下の温度域を「第2再加熱温度」ということがある。該温度域は二相域の温度に該当する。よって以下では、この再加熱を二相域加熱という場合がある。上記第2再加熱温度が720℃を下回ると、逆変態分率が不足し、硬質相の分率が不足して強度が不足する。前記第2再加熱温度は、好ましくは740℃以上、より好ましくは760℃以上である。一方、第2再加熱温度が810℃を超えると、逆変態分率は増加するが、硬質相となる部分の成分濃縮が不足し、硬質相硬さが低下して軟質相と硬質相の硬さ比が低下し、降伏比が上昇する。前記第2再加熱温度は、好ましくは800℃以下である。
また前記第2再加熱温度での保持時間が短いと、(Nb、V、Mo)系炭・窒化物の析出量が不足して、軟質相硬さが不足し、析出強化の効果や変形時の転位の増殖の効果が小さくなる。その結果、軟質相の硬さ低下による強度不足に加え、加工硬化能や一様伸び向上効果も小さくなる。更に、逆変態分率も不足してしまい、硬質相分率が低下して強度が低下する。よって前記保持時間は5分以上とする。好ましくは8分以上、より好ましくは10分以上である。一方、前記保持時間が60分を超えて長くなりすぎると、(Nb、V、Mo)系炭・窒化物が粗大化し、この場合も析出強化の効果や変形時の転位の増殖の効果が小さくなり、軟質相の硬さ低下による強度不足に加え、加工硬化能や一様伸び向上効果が小さくなる。よって前記保持時間は60分以下とする。好ましくは40分以下、より好ましくは30分以下である。
前記保持後は、ほぼ室温まで焼入れを行う。焼入れは、水焼入れや油焼入れ等を行うことができる。なお、前記二相域加熱によって逆変態したオーステナイトには、Cが高濃縮しているため、非常に焼入れ性が高い状態となっている。よって、焼入れ時の平均冷却速度が遅くとも硬質相となりえるが、確実に硬質相硬さを満足するため、1℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。
尚、製造方法1におけるAr3変態点以上から200℃以下までの平均冷却速度の上限が30℃/秒であるのに対し、製造方法2では、第1再加熱温度から200℃以下までの平均冷却速度の上限が50℃/秒であり、前記製造方法1よりも上限が高い。また、製造方法1における二相域の加熱温度の上限が800℃であるのに対し、製造方法2における二相域の加熱温度の上限は810℃であり、前記製造方法1よりも上限が高い。
この様に製造方法2の方が製造方法1よりも製造条件が緩和されることは次の理由による。即ち、二相域加熱前の、NbやV、Moを含む析出物を一旦固溶させる加熱の温度が、製造方法1では、熱間圧延前の加熱温度:1050℃以上であるのに対し、製造方法2では、第1の再加熱の加熱温度:Ac3変態点以上であり、製造方法2の方が低めである。その結果、製造方法2の方が製造方法1よりも、前記加熱時のNbやV、Moを含む析出物の固溶量は少ない。製造方法2の方が、前記固溶量が少ない分、二相域加熱時に、微細な(Nb、V、Mo)系炭・窒化物が軟質相に析出する量も少なく、軟質相の硬さ上昇が抑えられる。その結果、製造方法2の方が製造方法1よりも規定の軟質相硬さを達成しやすいことによる。
[焼戻し温度:350℃以上560℃以下で焼戻し]
前記焼入れ後は、焼戻し温度:350℃以上560℃以下で焼戻しを行う。前記焼戻し温度が350℃を下回ると、硬質相が硬くなりすぎて脆くなり靭性が低下する。焼戻し温度は、好ましくは400℃以上、より好ましくは440℃以上である。一方、焼戻し温度が560℃を超えると、硬質相の硬さが低下し、軟質相と硬質相の硬さ比が低下して降伏比が上昇する。また強度不足にもなりやすい。前記焼戻し温度は、好ましくは550℃以下、より好ましくは530℃以下である。
尚、製造方法2における焼戻し温度の下限は、オンラインを想定した製造方法1における焼戻し温度の下限よりも低い。これは、製造方法2の方が、前記焼入れまでの工程で良好な靭性を示す微細な組織が得られており、靭性向上のために、焼戻し温度をより高める必要がないためである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1または表2に示す化学成分組成を満たし残部は鉄および不可避不純物である鋼片としてスラブを用意した。尚、表1および表2において、空欄は添加していないことを意味する。鋼No.1〜28、30、31、33〜35、および41〜64は、製造方法1を想定した実施例であり、鋼No.29、32、および36〜40は、製造方法2を想定した実施例である。鋼No.1〜28、30、31、33〜35、および41〜64では、表3または表4に示す加熱温度で加熱した後、熱間圧延および加速冷却を、表3または表4に示す条件、即ち表3または表4に示す圧延完了温度、冷却開始温度、平均冷却速度、および冷却停止温度で実施した。鋼No.29、32、および36〜40では、表3または表4に示す加熱温度で加熱した後、熱間圧延を行い、表3または表4に示す圧延完了温度から室温まで空冷とした。
次いで表3または表4に示す条件で再加熱と焼入れを行った。鋼No.1〜28、30、31、33〜35、および41〜64において、表3または表4の「二相域焼入れ温度」は、再加熱温度に相当するものである。また、鋼No.29、32、および36〜40において、表3または表4の「Ac3温度以上の温度」は、第1再加熱温度に相当し、表3または表4の「二相域焼入れ温度」は、第2再加熱温度に相当する。
その後、表3または表4に示す焼戻し温度で焼戻しを行い、表3または表4に示す板厚tの鋼板を得た。得られた鋼板を用いて、金属組織の観察、引張試験、シャルピー衝撃試験、および最高硬さ試験を、下記の要領で実施した。
なお、前記加熱温度、即ち熱間圧延のための加熱時の温度は、加熱炉の炉内雰囲気温度と在炉時間から差分法によりスラブ板厚方向の平均温度を算出したものである。また、前記再加熱温度と前記焼戻し温度は、鋼板の板厚中心部の温度であり、熱処理炉の炉内雰囲気温度と在炉時間から差分法により計算するか、実験炉を用いた場合は同板厚のダミー材に熱電対を差し込んで実測した温度である。
<金属組織の観察>
金属組織の観察、具体的に軟質相と硬質相の観察は以下の順に実施した。
(1)圧延方向に平行でかつ鋼板表面に対して垂直な、鋼板表裏面を含む板厚断面を観察できるよう上記鋼板からサンプルを採取した。
(2)湿式エメリー研磨紙(#150〜#1000)での研磨、またはそれと同等の機能を有する研磨として、例えばダイヤモンドスラリー等の研磨剤を用いた研磨等により、観察面の鏡面仕上を行った。
(3)研磨されたサンプルを、3%ナイタール溶液を用いて腐食し、結晶粒界を現出させた。
(4)板厚t/4部位において、現出させた組織を400倍の倍率で写真撮影した。本実施例では6cm×8cmの写真として撮影した。次に、撮影した写真にて、セメンタイトが凝集している部分を硬質相と判別し、黒く塗りつぶした。次に、前記写真を画像解析装置に取り込んだ。前記写真の領域は、倍率が前記400倍の場合150μm×200μmに相当する。画像解析装置への取り込みは、いずれの倍率の場合も、領域の合計が1mm×1mm以上となるよう取り込んだ。即ち、倍率が前記400倍の場合は上記写真を少なくとも35枚取り込んだ。
(5)画像解析装置において、写真毎に黒色の面積率を算出し、全ての写真の平均値を硬質相の分率とした。尚、軟質相の分率は、全体から前記硬質相の分率を差し引いた値となる。
<軟質相および硬質相の硬さの測定方法>
軟質相と硬質相の各相の硬さは、上記腐食されたサンプルを用い、マイクロビッカース硬度計を用いて測定した。測定荷重は0.03Nとした。軟質相の硬さは、セメンタイトが存在しない部分の硬さを測定し、硬質相の硬さはセメンタイトが凝集している部分の硬さを測定した。この測定は、板厚1/4部位にて少なくとも各相10点以上で行った。
<(Nb、V、Mo)系炭・窒化物の同定と、該(Nb、V、Mo)系炭・窒化物の平均円相当直径と個数密度の測定方法>
軟質相中のNb、V、Mo系の炭化物または炭窒化物は、透過型電子顕微鏡を用いて、抽出レプリカ法により観察した。倍率7500倍でセメンタイトが存在しない軟質相を確認し、更に該軟質相を倍率150000倍に拡大して5視野観察した。前記視野内に存在する析出物をEDX(Energy Dispersive X−ray spectroscopy)法により組成分析を行い、析出物におけるNb、V、およびMoの合計量が50質量%を超える炭化物と炭窒化物を測定対象とした。尚、観察できる析出物の円相当直径の下限値はおおよそ5nm程度である。
観察した写真データを用い、画像解析装置に取り込み、前記測定対象の(Nb、V、Mo)系炭・窒化物の平均円相当直径と1μm2あたりの個数、つまり個数密度を算出した。下記表3において、前記平均円相当直径は「軟質相析出物サイズ」、前記個数密度は「軟質相析出物個数密度」と示している。
<引張試験>
板厚t/4の部位から、試験片の長手方向が圧延方向と直角となるよう丸棒引張試験片を採取して、JIS Z 2241(2011)の要領で引張試験を行い、降伏強度、引張強度、降伏比、一様伸び、および加工硬化指数を測定した。そして、降伏強度が440MPa以上、引張強度が590MPa以上、降伏比が80%以下、一様伸びが5%以上、および加工硬化指数が0.20以上のものを、高強度かつ低降伏比であり、加工硬化能が大きく一様伸びに優れていると評価した。尚、下記表5および表6では、降伏強度、引張強度、降伏比、一様伸び、および加工硬化指数をそれぞれ、YS、TS、YR、UE、n値と示す。
<シャルピー衝撃試験>
板厚t/4の部位から、試験片の長手方向が圧延方向と平行となるようフルサイズのVノッチ試験片を採取して、JIS Z 2242(2005)の要領でシャルピー衝撃試験を行い、vTrsを測定した。なお、各試験温度での結果は3本の平均値を採用した。そしてvTrsが−20℃以下のものを衝撃特性に優れている、つまり母材靭性に優れていると評価した。
<最高硬さ試験>
JIS Z 3101(1990)に記載の要領で試験を行い、耐溶接割れ性を評価した。詳細には、鋼板表面黒皮を残した状態の、サイズが20mm厚×75mm幅×200mm長の試験片を各鋼No.につき1つ採取した。そして該試験片に対し、予熱温度を0℃として長さ50mmのストリンガビードを置いた。その後、JIS Z 3101(1990)の要領に従い、溶接熱影響部の最高硬さを測定した。そして、最高硬さがHv350以下であるものを耐溶接割れ性が優れていると評価した。
これらの結果を表5または表6に示す。
表1〜6から次のことがわかる。鋼No.1、2、7および15〜28、30〜35、37および39では、本発明で規定の化学成分組成を満たし、かつ規定の方法で製造し、規定の金属組織が得られているため、低降伏比を示すと共に加工硬化能が大きく一様伸びに優れ、かつ溶接熱影響部の最高硬さが抑えられており、溶接施工性向上の観点から予熱低減可能な高強度鋼板が得られた。
これに対し、上記以外の例では、規定の化学成分組成を満たしていないか、規定の方法で製造していないため、規定の金属組織が得られておらず、上記高強度、低降伏比、加工硬化能と一様伸び、耐溶接割れ性の少なくともいずれかが劣る結果となった。
詳細には、鋼No.3は、熱間圧延後の平均冷却速度3〜30℃/秒での冷却開始温度がAr3変態点を下回ったため、軟質な初析フェライトが過度に生成して、軟質相の硬さが低下し、高強度が得られなかった。
鋼No.4は、熱間圧延後の平均冷却速度が遅すぎたため、軟質相の硬さが低下し、高強度が得られなかった。一方、鋼No.14は、熱間圧延後の平均冷却速度が速すぎたため、軟質相の硬さが大きくなりすぎて、軟質相と硬質相の硬さ比が低下し、低降伏比を実現できなかった。
鋼No.5は、熱間圧延後の平均冷却速度3〜30℃/秒での冷却を200℃以下まで行わず、200℃よりも高い温度で終了したため、この場合も軟質相の硬さが低下し、高強度が得られなかった。
鋼No.6は、熱間圧延前の加熱温度が低すぎるため、Nbの固溶が不十分となり、軟質相の硬さが低くなった。
鋼No.8は、再加熱温度での保持時間が短すぎるため、硬質相の分率が低く、規定の(Nb、V、Mo)系炭・窒化物の析出量も不足して軟質相の硬さも低下し、その結果、高強度を達成できず、かつ加工硬化能や一様伸びも劣る結果となった。一方、鋼No.9は、再加熱温度での保持時間が長すぎるため、規定の(Nb、V、Mo)系炭・窒化物が粗大化し、軟質相の硬さが低下し、この場合も高強度を達成できず、かつ加工硬化能や一様伸びも劣る結果となった。
鋼No.10は、焼戻し温度が低すぎるため、硬質相の硬さが高すぎて、母材靭性が劣化した。鋼No.11は、焼戻し温度が高すぎるため、硬質相の硬さが低下し、軟質相と硬質相の硬さ比が低下して低降伏比を実現できなかった。
鋼No.12は、再加熱温度が低すぎたため、硬質相の分率が不足して、高強度を達成できなかった。鋼No.13は、再加熱温度が高すぎたため、硬質相の分率は確保できたものの、該硬質相の硬さが低くなり、軟質相と硬質相の硬さ比が低下して低降伏比を実現できなかった。
鋼No.29は、第1の再加熱後の平均冷却速度が遅すぎたため、軟質相の硬さが低下し、強度が低下した。
鋼No.36は、焼戻し温度が高すぎたため、硬質相の硬さが低下し、軟質相と硬質相の硬さ比が低下して抵降伏比を実現できなかった。
鋼No.38は、第2再加熱温度が高すぎるため、硬質相となる部分の成分濃縮が不足して硬質相が形成されず、降伏比が上昇した。
鋼No.40は、第1の再加熱後の平均冷却速度が速すぎたため、軟質相の硬さが大きくなりすぎて、軟質相と硬質相の硬さ比が低下し、降伏比が上昇した。
鋼No.41〜64は、規定の方法で製造した例であるが、化学成分組成が規定を外れる例である。
鋼No.41は、C含有量が過剰であるため、耐溶接割れ性に劣る結果となった。
鋼No.42は、Si含有量が過剰であるため、母材靭性が劣化した。鋼No.43は、Mn含有量が過剰であるため、母材靭性が劣化した。鋼No.44は、C含有量が不足しているため、高強度を確保できなかった。
鋼No.45は、Mn含有量が不足しているため、高強度を確保できなかった。鋼No.46は、P含有量が過剰であるため、母材靭性を確保できなかった。鋼No.47は、S含有量が過剰であるため、母材靭性が劣化した。
鋼No.48は、Mo含有量が不足しているため、高強度を確保できなかった。一方、鋼No.53は、Mo含有量が過剰であるため、焼入れ性が過剰となり、耐溶接割れ性が劣化した。
鋼No.49は、Al含有量が不足しているため、母材靭性が劣化した。また鋼No.50は、Al含有量が過剰であるため、この場合も母材靭性が劣化した。
鋼No.51はV含有量が不足しているため、また鋼No.52はNb含有量が不足しているため、いずれの場合も、規定の析出物を確保することができず、軟質相の硬さが低くなり、高強度を確保できず、また高い加工硬化能と高い一様伸びを確保することもできなかった。
鋼No.54はV含有量が過剰であるため、また鋼No.55はNb含有量が過剰であるため、いずれの場合も、析出する炭化物や炭窒化物が過多となり、軟質相の析出強化能が過剰となり、低降伏比を達成できなかった。
鋼No.56は、Ti含有量が不足しているため、母材靭性が低下した。また鋼No.57は、Ti含有量が過剰であるため、この場合も母材靭性が低下した。
鋼No.58は、Ca含有量が不足しているため、母材靭性が劣化した。また鋼No.59は、Ca含有量が過剰であるため、母材靭性が劣化した。
鋼No.60は、N含有量が不足しているため母材靭性が劣化した。一方、鋼No.61は、N含有量が過剰であるためこの場合も母材靭性が劣化した。
鋼No.62は、Ceqが規定の上限を超えているため、耐溶接割れ性が劣化した。鋼No.63は、Ceqが規定の下限を下回っているため、高強度を確保することができなかった。
鋼No.64は、Pcmが規定の上限を超えているため、耐溶接割れ性が劣化した。

Claims (4)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C:0.05%以上0.10%以下、
    Si:0%超0.50%以下、
    Mn:1.00%以上1.60%以下、
    P:0%超0.010%以下、
    S:0%超0.003%以下、
    Al:0.010%以上0.050%以下、
    Mo:0.20%以上0.50%以下、
    V:0.005%以上0.080%以下、
    Nb:0.005%以上0.030%以下、
    Ti:0.005%以上0.020%以下、
    N:0.0040%以上0.0060%以下、および
    Ca:0.0005%以上0.0030%以下
    を含有し、残部は鉄および不可避不純物からなり、
    下記式(1)で定義されるCeqが0.40%以上0.47%以下、かつ、
    下記式(2)で定義されるPcmが0.220%以下を満足し、
    板厚の1/4位置の組織が軟質相と硬質相の複相組織からなり、
    前記硬質相の分率が10〜20面積%であり、
    前記硬質相の硬さ:Hv310〜370と前記軟質相の硬さ:Hv160〜190を満たし、かつ、
    前記軟質相に、Nb、V、およびMoの合計量が析出物に占める割合で50質量%超、かつ円相当直径が5nm以上の炭化物と炭窒化物が、平均円相当直径:50nm以下かつ個数密度:10個/μm2以上を満たすように存在することを特徴とする、加工硬化能が大きく一様伸びと溶接性に優れた低降伏比高強度鋼板。
    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
    …(1)
    式(1)において、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Vは、質量%での、鋼中の各元素の含有量を示す。
    Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B …(2)
    式(2)において、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、V、Bは、質量%での、鋼中の各元素の含有量を示す。
  2. 前記成分組成は、更に、質量%で、
    Cu:0%超0.50%以下、
    Ni:0%超0.50%以下、および
    Cr:0%超0.50%以下
    よりなる群から選択される1種以上の元素を含む請求項1に記載の鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の鋼板の製造方法であって、前記成分組成を満たす鋼片を1050℃以上に加熱して熱間圧延を行った後、Ar3変態点以上の温度から200℃以下までを3〜30℃/秒の平均冷却速度で冷却し、次いで720℃以上800℃以下の温度域に再加熱し、該温度域で5分以上60分以下保持してから焼入れを行い、その後、440℃以上560℃以下の温度で焼戻しを行うことを特徴とする、加工硬化能が大きく一様伸びと溶接性に優れた低降伏比高強度鋼板の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の鋼板の製造方法であって、前記成分組成を満たす鋼片の熱間圧延を行った後、Ac3変態点以上の温度に加熱する第1の再加熱を行ってから200℃以下までを3〜50℃/秒の平均冷却速度で冷却し、次いで、第2の再加熱として720℃以上810℃以下の温度域に加熱し、該温度域で5分以上60分以下保持してから焼入れを行い、その後、350℃以上560℃以下の温度で焼戻しを行うことを特徴とする、加工硬化能が大きく一様伸びと溶接性に優れた低降伏比高強度鋼板の製造方法。
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