JP2015157588A - アルミダイカスト製ステアリングコラム - Google Patents

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雄一 遠藤
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Abstract

【課題】強度の低下やバラツキを抑え、基地強度をより向上させたアルミダイカスト製のステアリングコラムを提供する。
【解決手段】自動車用ステアリングのイグニッションスイッチ付きステアリングロックに使用されるアルミダイカスト製ステアリングコラムを、Cu、Si、Mgを必須成分として特定量含有し、任意成分としてZn、Fe、Mn、Ni以下、Ti、Pb、Sn、Cr、Sr、Ca、Naを含み、残部がAl及び不可避的不純物であるアルミダイカスト製とし、その鋳肌面の硬さをHRB57.5以上にする。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車用ステアリングのイグニッションスイッチ付きステアリングロックに使用されるアルミダイカスト製ステアリングコラムに関する。
自動車の盗難防止のため、イグニッションスイッチのキーを抜いた場合にエンジンを停止させるだけでなく、ステアリングホイールを回転不能とするステアリングロック装置が使用されている。ステアリングロック装置の本体及び取付部であるステアリングコラムは、堅ろうで容易に破壊できないものである必要があり、例えばJIS D 5812ではステアリングシャフトをロック状態にして200Nmのトルクをステアリングシャフトに加えても機能に異常なきことと規定されている。
一方で、ステアリングの構造が従来の油圧式からEPS式へと変化し、構成部品にかかるトルクも厳しいものとなり、ステアリングコラムにも高強度化が求められている。ステアリングコラムは、軽量化のため例えばアルミニウム合金のような軽金属のダイカストで作製される場合が多い(例えば、特許文献1参照)。ダイカスト法は様々な工法が知られているが、ステアリングコラムに適用されている工法としては、金型をダイカストマシンに取り付けて金型内にアルミニウム合金の溶湯を高圧で注入し、凝固させた後、金型から取り出す普通ダイカスト法が汎用されている。また、巣対策として金型のキャビティー内を真空引きして減圧する真空ダイカスト法が適用される場合もある。
しかし、普通ダイカスト法や真空ダイカスト法では、鋳造欠陥を有しているため過大なトルクが付加されると破断してしまう恐れがあり、いかにして強度を確保するかが重要となる。この鋳造欠陥には鋳巣、破断チル層、粗大α相などの様々な欠陥があり、普通ダイカスト法や真空ダイカスト法ではこれらの欠陥を完全に制御して強度バラツキがない製品を得ることは困難であった。また、従来のJIS規定鋳造用アルミニウム合金では、真空ダイカスト法などの特殊ダイカスト法を用いても製品強度の向上代が顕著に優れたものではなく、製品適用用途は軽荷重用途の構造部材などに限られていた。
特開2008−265358号公報
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、強度の低下やバラツキを抑え、基地強度をより向上させたアルミダイカスト製のステアリングコラムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明は、下記のアルミダイカスト製ステアリングコラムを提供する。
(1)自動車用ステアリングのイグニッションスイッチ付きステアリングロックに使用されるアルミダイカスト製ステアリングコラムにおいて、
材料組成が、質量%で、Cu:5.0%以下、Si:6.5〜12.0%、Mg:0.1〜0.6%を必須成分とし、任意成分としてZn:1.0%以下、Fe:1.3%以下、Mn:0.6%以下、Ni:0.05%以下、Ti:0.5%以下、Pb:0.2%以下、Sn:0.2%以下、Cr:0.05%以下、Sr:0.2%以下、Ca:0.2%以下、Na:0.2%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、かつ、鋳肌面の硬さがHRB57.5以上であることを特徴とするアルミダイカスト製ステアリングコラム。
(2)引張強度σBが280MPa以上で、伸びが4.0%以上であることを特徴とする上記(1)記載のアルミダイカスト製ステアリングコラム。
本発明によれば、Cu及びSi、Mgを必須成分とし、更にTiやSr、Ca、Na等を任意成分として含有する鋳造用アルミニウム合金を用いることにより、強度の低下やバラツキが抑えられ、基地強度がより向上されたアルミダイカスト製のステアリングコラムが提供される。
ステアリングコラムの一例を示す斜視図である。 試験片の形状及び各部の寸法を示す側面図である。
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
図1は、ステアリングコラムの一例を示す斜視図である。このステアリングコラム1は中空の筒体であり、キー穴部2が形成されている。そして、内部にステアリングシャフト(図示せず)が挿通されており、ステアリングコラム1のキー穴部2にキーを差込み、ステアリングシャフトをロックする。
本発明では、ステアリングコラム1を、Cu、Si及びMgを必須成分として含むアルミダイカスト製とする。以下にこれら必須成分について説明するがそれぞれの含有量は、何れもアルミニウム合金全量に対する質量%である。
Cuは機械的強度を高めるのに有効な元素であるが、含有量が5.0%を超えると、粒界にCuAl等の金属間化合物が多量に晶出したり、析出したりして破断伸び等を低下させる。そのため、Cu含有量は5%以下とする。尚、下限には制限はないが、機械的強度の向上を確保するためには0.1%以上必要である。好ましいCu含有量は、3.5〜5.0%である。
Siは、Cuと同様に機械的強度を高めるとともに、硬さ及び流動性を高めるために添加される。機械的強度、硬さ及び流動性を確保するためには、含有量を6.5%以上にする必要がある。但し、12.0%を超えると伸びが低下するようになるため、12.0%以下とする。好ましいSi含有量は、6.5〜8.0%である。
Mgは、引張強度や硬さを高めるのに有効な元素であるが、含有量が0.1%未満ではこのような効果を発揮することができない。但し、含有量が0.6%を超えると、靭性が低下するようになる。好ましいMg含有量は、0.4〜0.6%である。
また、何れも任意ではあるが、表面硬さや引張強度、伸び等を更に向上して品質向上を図るために、Znを1.0%以下(好ましくは0.3%以下)、Feを1.3%以下(好ましくは0.5%以下)、Mnを0.6%以下(好ましくは0.5%以下)、Niを0.05%以下(好ましくは0.04%以下)、Tiを0.5%以下(好ましくは、0.2〜0.5%)、Pbを0.2%以下(好ましくは0.05%以下)、Snを0.2%以下(好ましくは0.05%以下)、Crを0.05%以下(好ましくは0.04%以下)、Srを0.2%以下(好ましくはSr:0.02〜0.2%、)、Caを0.2%以下(好ましくはCa:0.02〜0.2%)、Naを0.2%以下(好ましくは0.02〜0.2%)添加することもできる。尚、これら任元素の含有量の下限は0%である。
これら任意元素は、その目的に応じて添加されるものであり、例えば、Sr添加により、板状Siが球状化して靭性や伸びを向上させることができる。また、Ti添加により、結晶粒微細化が進み、CaやNa添加により板状Siの球状化が進む。これら任意成分は、それぞれ単独でも、2種以上を混合して添加してもよい。
尚、上記合金組成のアルミニウム合金として、JIS H5202のAl−Si−Mg系アルミニウム合金であるAC4CやAC4CH、JIS H5302のAl−Si−Cu系アルミニウム合金であるADC10やADC12、あるいはこれらにCuやMg、更には任意成分を所定量添加した材料を用いることもできる。
上記のアルミニウム合金をダイカスト鋳造することにより、例えば図1に示す形状のステアリングコラムに鋳造される。ダイカスト法としては、スリーブ法の半凝固ダイカスト鋳造法(以下、「スリーブ法」)を用いる。
このスリーブ法では、一般的なダイカストマシンのキャビティにスリーブを連結した装置を用い、型締めが完了した時点でスリーブの注湯口から上記のアルミニウム合金の溶湯を注入し、プランジャによる射出を行う。そして、型開きを行い、鋳造品(ステアリングコラム)を金型から取り出す。
スリーブ法では他のダイカスト法に比べて細かい粒径の成形体を得ることができるが、そのためには、より大きな過冷却度(大きな冷却速度)を達成すること、より多くの核を生成させることが必要と考えられており、そのためには、注湯温度、スリーブ寸法、スリーブ温度、スリーブ充填率及び冷却速度を最適化する必要があり、中でもスリーブ充填率の影響が大きい。スリーブ充填率とは、スリーブの長手方向に垂直な断面での断面積(S)と、注湯後における注湯の断面積(A)との比率(A/S×100(%))である。このスリーブ充填率が小さくなることにより、溶湯とスリーブとの接触面積が大きくなる。そのため、スリーブ充填率を小さくするとともに、ショットタイムラグ(スリーブに注湯してから射出するまでの時間)を長くすることにより、スリーブ内冷却速度を大きくして、核生成を促進することができる。
尚、スリーブ法について、国際公開第2013/039247号公報を参考することができる。
そして、このようなスリーブ法において、スリーブ充填率を小さくしたり、ショットタイムラグを長くしたり、更には注湯温度やスリーブ寸法、スリーブ温度などを調整することにより、得られるステアリングコラム1の鋳肌面の硬さを、HRB57.5以上にすることができる。この硬さがHRB57.5未満では十分な機械的強度や耐久性、寸法安定性が得られない。好ましくは、HRB62.0以上とする。
更には、ステアリングコラム1の品質をより高めるために、引張強度σBが280MPa以上、好ましくは315MPa以上で、伸びが4.0%以上、好ましくは7.0%以上とする。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(実施例1〜16、比較例1〜16)
JIS H5202のAl−Si−Mg系アルミニウム合金であるAC4CまたはAC4CH、JIS H5302のAl−Si−Cu系アルミニウム合金であるADC10またはADC12、あるいはこれらにCuやMg、更にはSrやTi等の任意成分を所定量添加して、表1に示す実施例及び比較例の各アルミニウム合金を用意した。
そして、アルミニウム合金を用い、実施例並びに比較例2〜4、比較例6〜8、比較例10〜12、比較例14〜16ではスリーブ法により、鋳造条件を表記のように変えて図1に示すステアリングコラムをダイカスト鋳造した。また、比較例1、5、8,13では普通ダイキャスト法により同形状のステアリングコラムを得た。そして、ステアリングコラムキーロック周辺部から図2に示す形状及び各部の寸法の試験片を切り出し、下記の条件にて試験を行い、試験後の試験片つかみ部のロックウェル硬さHRBを測定した。このときの測定面は鋳肌面とした。結果を表1に示す。
(試験条件)
試験機:インストロン引張圧縮試験機
引張速度:0.5mm/min
ビデオ伸び計による試験片伸び測定
Figure 2015157588
実施例に示すように、本発明に従う合金組成で、スリーブ法で鋳造した試験片は、何れも鋳肌面の硬さがHRB57.5以上であり、更には引張強度が280MPa以上、伸びが4.0%以上である。
また、実施例1、5、9、13と、比較例1、5、9、13との比較から、同一材料を用いても、スリーブ法にて鋳造することにより、普通ダイカスト法にて鋳造した場合に比べて、硬さ・引張強度・伸びにより優れるようになることがわかる。
実施例2、6、10、14のようにCu及びSrを添加すると、実施例1、5、9、13よりも硬さ・引張強度・伸びが優れるようになる。これは、Cu添加による硬さ及び基地強度の向上と、Sr添加による板状Siの球状化により靭性・伸びが向上したためである。
実施例3、7、11、15のように、実施例2、6、10、14の材料にMgを添加することにより、更に硬さ・強度・伸びが向上する。これは、Mg添加により、強度が向上する一方で、伸びの向上が阻害されるが、Sr添加により伸びが向上するため、Mg添加による懸念は払拭される。
実施例4、8、12、16のように、実施例3、7、11、15の材料にTi、Ca、Naを添加することにより、硬さ・引張強度・伸びの向上代は最も大きくなる。これは、Ti添加による結晶粒微細化、CaやNa添加による板状Siの球状化が進むためである。
これに対し、比較例2〜4、6〜8、10〜12、14〜16では、材料成分が本発明範囲外であり、スリーブ法を適用しても硬さ・引張強度・伸びの向上は少ない。
1 ステアリングコラム
2 キー穴部2

Claims (2)

  1. 自動車用ステアリングのイグニッションスイッチ付きステアリングロックに使用されるアルミダイカスト製ステアリングコラムにおいて、
    材料組成が、質量%で、Cu:5.0%以下、Si:6.5〜12.0%、Mg:0.1〜0.6%を必須成分とし、任意成分としてZn:1.0%以下、Fe:1.3%以下、Mn:0.6%以下、Ni:0.05%以下、Ti:0.5%以下、Pb:0.2%以下、Sn:0.2%以下、Cr:0.05%以下、Sr:0.2%以下、Ca:0.2%以下、Na:0.2%以下を含み、残部がAl及び不可避的不純物であり、かつ、鋳肌面の硬さがHRB57.5以上であることを特徴とするアルミダイカスト製ステアリングコラム。
  2. 引張強度σBが280MPa以上で、伸びが4.0%以上であることを特徴とする請求項1記載のアルミダイカスト製ステアリングコラム。
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