JP2015138179A - 微細構造体および微細構造体の製造方法 - Google Patents

微細構造体および微細構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基材のエッチングレートに制限されず、エッチング条件が多少ばらついたとしても、目的とする性能を充分に発現し、耐久性にも優れた微細突起を備えた微細構造体と、その製造方法を提供する。【解決手段】基材11と、該基材11上の少なくとも一部に形成され、微細凹凸形状が表面に形成された表面凹凸層12とを有する反射防止構造体(微細構造体)10であって、表面凹凸層12は、基材11との接触面12aから、該接触面12aとは反対側の表面凹凸層12の表面12bに向かって、屈折率が連続的に小さくなっている。【選択図】図1

Description

本発明は、反射防止構造体として好適に用いられる微細構造体と、該微細構造体の製造方法に関する。
例えばパソコンなどのディスプレイの表面には、視認性向上のためのフィルム状の反射防止構造体が設けられることが多い。このような反射防止構造体として、円錐状の微細突起からなる微細凹凸パターンが表面に形成された構造体が知られている。該構造体においては、微細突起の配列ピッチが可視光の波長以下とされ、これにより、見た目上、屈折率が深さ方向に連続的に変化し、微細突起側から入射しようとする入射光のフレネル反射が抑制される。
このような反射防止構造体においては、優れた反射防止能を発現させるために、微細突起の形状を円錐状に精度よく形成することが求められる。微細凹凸パターンの形成方法としては、マスクパターンを介して対象面をエッチングする方法がある(特許文献1参照)。
国際公開第2008/001670号
しかしながら、エッチングにより微細凹凸パターンを形成する方法は、エッチング対象の基材がエッチングレートの低い材質である場合、生産性が悪い。また、エッチングレートが適度な場合でも、微細突起の形状を円錐状に精度よく形成する必要があり、そのため、エッチング条件を厳密にコントロールしなくてはいけなかった。また、微細突起を精度よく円錐状に形成できたとしても、円錐状の微細突起はその形状に起因して、先端の耐久性(耐擦傷性)が不充分であった。
また、エッチングレートが低い材料をエッチングする場合には、十分な高さの微細突起を形成することは非常に困難であり、必要な光学性能(反射防止能)を得ることが難しかった。すなわち、微細突起を十分な高さに形成しようとすると、マスクパターンの膜厚を大きくするか、または、マスクパターンの材質として、エッチング対象の材料よりもエッチングレートの低い材質を選択する必要がある。しかしながら、マスクパターンの膜厚を大きくすることには製膜条件等において限界がある。また、エッチング対象の材料のエッチングレートが低い場合、そのような材料よりもさらにエッチングレートの低い材質のマスクパターンを用いることは現実的には困難である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、基材のエッチングレートに制限されず、エッチング条件が多少ばらついたとしても、目的とする光学性能を充分に発現し、耐久性にも優れた微細突起を備えた微細構造体と、その製造方法の提供を課題とする。
本発明は以下の構成を有する。
[1]基材と、該基材上の少なくとも一部に形成され、微細凹凸形状が表面に形成された表面凹凸層とを有する微細構造体であって、前記表面凹凸層は、前記基材との接触面から、該接触面とは反対側の前記表面凹凸層の表面に向かって、屈折率が連続的に小さくなっていることを特徴とする微細構造体。
[2]前記表面凹凸層は、ケイ素と酸素と窒素とを含有し、前記接触面から前記表面凹凸層の前記表面に向かって、前記窒素の含有量が連続的に小さくなっている、[1]の微細構造体。
[3]前記基材における前記表面凹凸層が形成された表面は、JIS B0601に記載の中心線平均粗さRaが30nm以下である、[1]または[2]に記載の微細構造体。
[4]前記基材は、YAGからなる、[1]〜[3]のいずれかに記載の微細構造体。
[5]スパッタリングガスでターゲットをスパッタリングして、基材上に表面層を形成する製膜工程と、マスクパターンを介して前記表面層をエッチングして、前記表面層を表面凹凸層とするエッチング工程とを有し、前記製膜工程では、前記表面層の膜厚方向の屈折率が、前記基材と前記表面層との接触面から、該接触面とは反対側の前記表面層の表面に向かって連続的に小さくなるように、前記表面層を形成することを特徴とする微細構造体の製造方法。
[6]前記製膜工程では、前記スパッタリングガスとして希ガスと反応性ガスとの混合ガスを用い、前記混合ガスのガス組成を連続的に変化させることにより、形成される前記表面層の膜厚方向の組成を連続的に変化させる、[5]に記載の微細構造体の製造方法。
[7]前記製膜工程では、前記ターゲットとしてケイ素を用いるとともに、前記反応性ガスとして酸素と窒素を用い、前記混合ガス中の前記窒素の比率を連続的に減少させる、[6]に記載の微細構造体の製造方法。
[8]前記製膜工程では、前記ターゲットとして二酸化ケイ素を用いるとともに、前記反応性ガスとして窒素を用い、前記混合ガス中の前記窒素の比率を連続的に減少させる、[6]に記載の微細構造体の製造方法。
本発明によれば、基材のエッチングレートに制限されず、エッチング条件が多少ばらついたとしても、目的とする光学性能を充分に発現し、耐久性にも優れた微細突起を備えた微細構造体と、その製造方法を提供できる。
本発明の微細構造体の一実施形態例である反射防止構造体を示す縦断面図である。 (a)従来の微細突起の形状の模式図、(b)図1の微細構造体の有する微細突起の形状の模式図である。 微細構造体の製造方法についての説明図であり、基材の片面に表面層を形成した状態を示す縦断面図である。 微細構造体の製造方法についての説明図であり、(a)エッチングの初期を示す模式図、(b)エッチングが進行し、各粒子に対応する位置にそれぞれ円柱が現れた後、各円柱上の粒子も徐々にエッチングされて小さくなった状態を示す模式図、(c)各粒子がエッチングにより消失して、釣鐘状の微細突起が形成された状態を示す模式図、である。 表面凹凸層(表面層)の屈折率分布を示すグラフ(屈折率分布曲線)である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<微細構造体>
図1は、本発明の微細構造体の一実施形態例であるフィルム状の反射防止構造体を示す縦断面図である。
この例の反射防止構造体10は、板状の基材11と、該基材11の片面全面に形成された表面凹凸層12とを有する。表面凹凸層12は、露出している側の表面(基材11との接触面12aとは反対側の表面。)12bに微細凹凸形状が形成されている。該表面凹凸層12は、反射防止層として機能する層であり、円形底面を有する釣鐘状の微細突起13を多数有している。
この例の基材11は、蛍光体であって波長変換を行う材料であるYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)からなり、少なくとも表面凹凸層12が形成された側の表面11aは、JIS B0601に記載の中心線平均粗さRaが30nm以下の平滑面とされている。また、YAGは、エッチング自体がほとんど進行しないエッチングレートが低い材料である。基材11の厚みは、表面凹凸層12の製膜作業の簡便性の点から、例えば10〜10000μmが好ましく、50〜2000μmがより好ましい。
本発明では、透明基材、半透明基材、不透明基材のいずれをも使用できる。透明基材および半透明基材は、光学吸収が低いものほど好ましい。光学吸収が低い基材であれは、基材内部に進入した光の光学吸収を抑制でき、最終的な光取り出し効率を高くできる。
なお、透明基材、半透明基材の場合、光学吸収を考慮した光取り出し効率は以下の近似式(1)で表される。
Figure 2015138179
式中の略号は以下の意味を示す。
:表面凹凸層の表面反射率(%)
:基材の表面反射率(%)
:単位長あたりの表面凹凸層の光学吸収率(%);材料による固有値。
:単位長あたりの基材の光学吸収率(%);材料による固有値。
:表面凹凸層中を進む光の光路長(mm);表面凹凸層の厚さに相当。
:基材中を進む光の光路長(mm);基材の厚さに相当。
:基材の波長変換効率;材料による固有値、波長変換を行なわない材料の場合は1.0とする。
表面反射率は、例えば、日本分光社製「V−670分光光度計」等の分光光度計により、5°正面反射の測定により実測できる。例えば、後述の実施例1のように、Rを0%と考える場合、表面凹凸層が形成された基材の裏面に光吸収テープ(例えば、テックワールド社製、「スーパーブラックIR」)を貼り付けて裏面吸光処理したうえで、表面凹凸層の表面の反射率を測定することにより、Rが得られる。裏面吸光処理は、透明または半透明の基材を有する微細構造体について表面反射率を測定する場合において、光源から発せられ基材に入射した後、基材の裏面と空気との界面で反射した光が、微細構造体の表面の反射光に混入することを防ぐために行う。
一方、不透明基材(全反射)の場合、光学吸収を考慮した光取り出し効率は以下の近似式(2)で表される。
Figure 2015138179
式中の略号の意味は、式(1)と同じである。
上記の各式から、表面反射率R及びRが低いほど光取り出し効率が高いことがわかる。また、表面凹凸層の光学吸収率Aが低いほど光取出し効率が高いことがわかる。また、透明基材・半透明基材の場合は、その基材の光学吸収率Aが低いほど光取り出し効率が高いことがわかる。
表面凹凸層12の有する微細凹凸形状の最頻ピッチPおよび最頻高さHは、微細構造体の用途により異なるが、この例の微細構造体は反射防止構造体10であるため、微細突起13の頂部間の距離を示すピッチが、最頻ピッチPとして、可視光の波長(400nm〜750nm程度)よりも小さい300nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下である。150nm以下であれば、可視光領域での回折光を減少させることができる。波長750nm程度〜10000nm以下の赤外領域において使用する場合には、最頻ピッチPは5000nm以下であることが好ましい。
微細凹凸形状の最頻ピッチPは、具体的には次のようにして求められる。
まず、微細凹凸形状が形成された表面凹凸層12の表面12bにおける無作為に選択された領域で、一辺が最頻ピッチPの30〜40倍に相当する正方形の領域について、走査型顕微鏡(SEM)イメージを得る。例えば、最頻ピッチPが300nm程度の場合、9μm×9μm〜12μm×12μmの領域のイメージを得る。そして、このイメージをフーリエ変換により波形分離し、FFT像(高速フーリエ変換像)を得る。次いで、FFT像のプロファイルにおける0次ピークから1次ピークまでの距離を求める。こうして求められた距離の逆数がこの領域における最頻ピッチPである。このような処理を無作為に選択された合計25カ所以上の同面積の領域について同様に行い、各領域における最頻ピッチを求める。こうして得られた25カ所以上の領域における最頻ピッチP〜P25の平均値が最頻ピッチPである。なお、この際、各領域同士は、少なくとも1mm離れて選択されることが好ましく、より好ましくは5mm〜1cm離れて選択される。
微細凹凸形状の最頻高さH(=最頻ピッチP×アスペクト比)は、反射防止構造体10の場合には、微細突起13のアスペクト比が好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは2.0以上となる値である。アスペクト比が前記下限値以上であれば、反射防止性をより高くすることができる。
最頻高さHは、具体的には次のようにして求められる。
まず、走査型顕微鏡(SEM)イメージから、任意の方向と位置における長さ1mmの線に沿った図1のような縦断面図を得る。この断面から、微細突起13を30個抽出し、その中に含まれる各微細突起13について、その頂点の高さH1と、当該微細突起13に隣接する2つの微細突起13とで形成される2つの谷部の高さのうち、高さが低い方の高さH2との差を求め、得られた値を有効桁数2桁で丸め各微細突起13の高さとし、その最頻値を最頻高さHとする。
この例では、微細凹凸形状を有する表面凹凸層12は、無機材料からなっている。具体的には、ケイ素と酸素と窒素を含有する組成からなっている。そして、その膜厚方向(微細突起13の高さ方向。)の組成が、基材11との接触面12aから、該接触面12aとは反対側の表面12bに向かって、連続的に変化している。具体的には、基材11との接触面12a側は窒素の含有量(比率)が多い組成A(Si−O−N)であり、該接触面12aとは反対側の表面12bに近づくにつれて窒素の含有量(比率)が連続的に減少し、該表面12bでは、ケイ素と酸素のみからなる組成B(Si−O)となっている。
表面凹凸層12は、このように膜厚方向に組成が変化しているため、該組成変化にともなって、表面凹凸層12の膜厚方向の屈折率は、接触面12aから表面12bに向かって連続的に小さくなっている。
例えば、この例で基材11にはYAGが用いられており、YAGの屈折率は1.83である。よって、表面凹凸層12における基材11との接触面12aの組成は、基材11であるYAGと屈折率が同じか、屈折率がYAGと近い組成であることが、基材11と表面凹凸層12との界面での反射を防ぐ観点から好ましい。具体的には、基材11の屈折率をnとした場合、表面凹凸層12における基材11との接触面12aの屈折率niiは、|n−nii|<0.1を満たすことが好ましい。例えば、原子比でケイ素:酸素:窒素=5:1:5であるSiONは、屈折率がYAGと同じ1.83である。よって、基材11がYAGである場合、表面凹凸層12における基材11との接触面12aの組成としては、SiONが好適である。一方、ケイ素と酸素のみからなる組成としては通常SiOであり、その屈折率は、1.45である。
このように図1の反射防止構造体10の具備する表面凹凸層12は、表面12bに反射防止能を発揮する微細凹凸形状が形成されているだけでなく、その膜厚方向の屈折率が、基材11との接触面12aから、該接触面12aとは反対側の表面12bに向かって、連続的に小さくなっている。すなわち、表面凹凸層12を形成している材料そのものの屈折率が変化している。そのため、微細凹凸形状を有するものの、その材料としての屈折率は膜厚方向に一定である従来の表面凹凸層に比べて、優れた反射防止能を発揮する。また、屈折率が膜厚方向に変化する層と、屈折率が膜厚方向に一定である表面凹凸層とを積層させる形態よりも、簡便な工程で製造でき、かつ、トータルの膜厚を薄くしつつ、高い反射防止能を発揮させることができる。
本発明においては、表面凹凸層12を構成する成分が厚さ方向(膜厚方向)に連続的に変化するため、屈折率もそれに連動して厚さ方向に連続的に変化する。ここで屈折率の変化が「連続的」であるとは、段階的ではなく、また、離散的ではなく、下記に定義する「局所変化率」が、表面凹凸層12の厚み方向の任意の位置において、下記に定義する「全体の平均の変化率」の±50%の範囲内であることをいう。なお、「局所変化率」の「厚さ方向の変化量(距離)」は10nmとする。また、「表面凹凸層の空気側と基材側の屈折率の差」とは、表面凹凸層12の表面12bの屈折率と接触面12aの屈折率との差である。
局所変化率は、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)を用いる方法により、簡便に求められる。すなわち、TOF−SIMSによって、厚さ方向にアルゴンイオンビームなどで表面凹凸層12をイオンミリングしながら、気化された成分の元素分析を行う。そして、厚さ方向の成分分布曲線を得て、さらに該成分分析曲線から厚さ方向の屈折率分布曲線を得て、それにより、屈折率の変化量を求める。成分分布から屈折率分布を得る際には、あらかじめ作製しておいた成分(組成)と屈折率との関係を示す検量線を用いることができる。
Figure 2015138179
また、従来のように、材料の屈折率が膜厚方向に一定である微細凹凸形状を有する表面凹凸層の場合には、反射防止能の観点からの微細突起の最適形状は、図2(a)に示すような先細りの円錐状であった。このような従来の微細突起13”の先細りの形状は、先端の耐久性(耐擦傷性)が不充分であった。これに対して、図1の反射防止構造体10の有する微細突起13は、上述のとおり、その材料の屈折率が表面12b側に近づくにしたがって連続的に小さくなっているため、反射防止能の観点からの微細突起13の最適形状は、図2(b)に示すように、先端が丸い、いわゆる釣鐘状となる。このような釣鐘状の微細突起13は、図2(a)に示すような先細りの円錐状の微細突起13”に比べて、先端の耐久性(耐擦傷性)に優れる。
また、図2(a)に示すような先細りの円錐状の微細突起13”の場合、これをエッチングで形成しようとすると、エッチング条件の厳密な制御が必要であった。例えば、先端が細いため、エッチングガスがプラズマ化する際に要する時間が多少変動するなどして、エッチング条件がわずかにばらついただけでも、先端の細い部分がエッチングで削られてしまうなどして、所望の先細り形状にならない場合があった。これに対して、図2(b)に示すように先端が丸い釣鐘状の微細突起13であれば、多少エッチング条件がばらついたとしても、その形状に大きな影響が及ぶことがない。また、仮に多少形状が変わったとしても、表面凹凸層12を構成している材料そのものの屈折率を、反射防止能の発現に適するように、微細突起13の高さ方向に連続的に変化させているため、形状が変わったことによる悪影響をカバーできる。
<微細構造体の製造方法>
次に図1の反射防止構造体(微細構造体)10の製造方法について説明する。
(製膜工程)
まず、スパッタリングガスでターゲットをスパッタリングして、図3に示すように、基材11の片面に表面層12’を形成する製膜工程を行う。ここで形成される表面層12’は、微細凹凸形状が形成されていない平らな層である。
具体的には、真空状態において、スパッタリングガスを導入しつつ、ターゲットと基材11との間に電圧をかけ、スパッタリングガスをターゲットに衝突させる。すると、ターゲットを構成する原子が飛び出して基材11上に堆積し、表面層12’を形成する。ここでターゲットとして、ケイ素を用いると、ケイ素がターゲットから飛び出し、基材11上に堆積していくが、その際にスパッタリングガスとして、アルゴン(希ガス)と酸素(反応性ガス)と窒素(反応性ガス)との混合ガスを用いると、希ガスであるアルゴンは表面層12’に取り込まれないが、反応性ガスである酸素と窒素は表面層12’に取り込まれる。そのため、基材11上には、ターゲットに由来するケイ素と、反応性ガスである酸素と窒素とからなる化合物(Si−O−N)が、まず堆積する。
ここでアルゴンと酸素と窒素との初期の比率等を適宜調整して、表面層12’における基材11との接触面12a’の組成が、上述のとおり、基材11であるYAGと屈折率が同じか、屈折率がYAGに近い組成となるようにすることが好ましい。この場合、基材11と、後に表面層12’から形成される表面凹凸層12との界面での反射を好適に防止できる。YAGの屈折率は1.83であり、その場合、初期のアルゴンと酸素と窒素の比率(Ar/O/N)をモル比として2:1:2とすると、表面層12’における基材11との接触面12a’の組成を、屈折率が1.83である上述のSiONに制御しやすい。
そして、導入する混合ガス(スパッタリングガス)のガス組成、具体的には、アルゴンと酸素と窒素との比率を、窒素が連続的に減少するように制御しつつ、スパッタリングを継続する。
すると、スパッタリングの初期には、基材11上に、上述のように組成(Si−O−N)の材料が堆積するが、混合ガス中の窒素の比率が減少するのにともなって、堆積物中の窒素も減少していく。そして、最終的に混合ガス中の窒素の量を例えばゼロにした場合には、表面層12’の表面12b’は、ケイ素と酸素のみからなる組成(主にSiO)となる。
混合ガスにおいて、アルゴンと酸素と窒素との比率を窒素が連続的に減少するように制御する具体的方法としては、混合ガスの流量を一定にして、アルゴンと酸素を増やしつつ窒素を減らす方法;アルゴンと酸素の流量を一定にして窒素の流量を減らす方法;窒素の流量を一定にしてアルゴンと酸素の流量を増やす方法;窒素の比率が連続的に減少するように、アルゴンと酸素と窒素の流量を同時に変化させる方法;等があるが、表面層12’を安定に製膜できる点、ガス流量の制御が容易である点等から、アルゴンと酸素の流量を一定にして窒素の流量を減らす方法が好ましい。また、混合ガス中の窒素の比率は、連続的に減少させる限り、最終的にゼロまで減少させてもよいし、ゼロまで減少させなくてもよい。
また、希ガスとしては、スパッタ効率の点からはアルゴンが好ましいが、アルゴン以外の希ガス(ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン)も使用でき、これらを混合して用いてもよい。
表面層12’を、膜厚方向に連続的に窒素が減る組成とするためのスパッタリング条件としては、混合ガスのメインバルブの開閉度合いを調整して、これにより製膜圧力を0.5〜10Paにする。混合ガス流量として、製膜初期のアルゴンガス流量40sccm、酸素ガス流量20sccm、窒素ガス流量40sccmの条件(アルゴンと酸素と窒素の比率(Ar/O/N)をモル比として2:1:2)から、窒素ガスを最終的に0sccmまで減らす。これらの条件のなかでも、混合ガス組成の比率が特に重要である。
なお、1sccm(Standard Cubic Centimeter per Minutes)は、1.69×10−3Pa・m/secに相当する。
このような製膜工程により、基材11との接触面12a’から、該接触面12a’とは反対側の表面12b’に向かって、窒素の含有量が減るように組成が連続的に変化し、それにより、基材11との接触面12a’から、該接触面12a’とは反対側の表面12b’に向かって、屈折率が連続的に小さくなる表面層12’を形成できる。
表面層12’の膜厚は、10〜5000nmが好ましく、300〜500nmが好ましい。表面層12’の膜厚は、製膜工程の時間、必要となる膜平坦性、膜厚均一性などにより制御される。
(エッチング工程)
上述の製膜工程で形成された表面層12’は、微細凹凸形状を有していない平らな層である。そこで、該表面層12’上にマスクパターンを配置し、該マスクパターンを介して表面層12’をエッチングし、微細凹凸形状を形成する。これにより、表面層12’が表面凹凸層12に変換される。
ここで用いるマスクパターンは、例えば特許文献1などに記載されている公知のコロイダルリソグラフィ法等による単粒子膜マスクを用いることが好ましい。また、図1のような反射防止構造体10を製造する場合には、反射防止能の点から、単粒子膜マスクを構成する粒子として、動的光散乱法により求めた平均粒径が3〜5000nmのものを使用することが好ましい。粒子の平均粒径と形成される微細突起13の各円形底面の直径とはほぼ同じ値となる。また、平均粒径が3nm以上のものを使用すると、入射光が通過する屈折率の傾斜した空間の距離を充分に確保でき、いわゆるサブ波長格子による消光効果を良好に得ることができる。
また、単粒子膜マスクを構成する粒子は、粒径の変動係数(標準偏差を平均値で除した値)が20%以下であるものが好ましく、10%以下であるものがより好ましく、5%以下のものがさらに好ましい。このように粒径の変動係数、すなわち、粒径のばらつきが小さい粒子を使用すると、粒子が存在しない欠陥箇所が生じにくくなる。欠陥箇所のない単粒子膜マスクを用いると、入射光に対して均一な屈折率傾斜効果を与える反射防止構造体が得られやすい。
粒子の材質としては、Al、Au、Ti、Pt、Ag、Cu、Cr、Fe、Ni、Siなどの金属、SiO、Al、TiO、MgO、CaOなどの金属酸化物、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子などの他、半導体材料、無機高分子などのうち1種以上を採用できる。
エッチングとしては、気相エッチングを採用することが好ましい。マスクパターンを介してエッチングガスによりエッチングを開始すると、まず図4(a)に示すように、単粒子膜マスクFを構成している各粒子Pの隙間をエッチングガスが通り抜けて表面層12’の表面に到達し、その部分に溝が形成され、各粒子Pに対応する位置にそれぞれ円柱13’が現れる。引き続き気相エッチングを続けると、各円柱13’上の粒子Pも徐々にエッチングされて小さくなり、同時に、表面層12’の溝もさらに深くなっていく(図4(b))。そして、最終的には各粒子Pはエッチングにより消失し、それとともに表面層12’の表面に多数の釣鐘状の微細突起13が形成され、平坦な表面層12’から表面凹凸層12に変換される(図4(c))。
ここで形成される微細凹凸形状の最頻ピッチPは、単粒子膜マスクFを構成する粒子の平均粒径により主に制御される。また、最頻高さH(=最頻ピッチP×アスペクト比)は、粒子の平均粒径及びエッチング条件により制御される。
気相エッチングに使用するエッチングガスとしては、例えば、Ar、SF、F、CF、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、C、Cl、CCl、SiCl、BCl、BCl、BC、Br、Br、HBr、CBrF、HCl、CH、NH、O、H、N、CO、COなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
気相エッチングは、表面層12’の水平方向よりも垂直方向のエッチング速度が大きくなる異方性エッチングで行う。使用可能なエッチング装置としては、反応性イオンエッチング装置、イオンビームエッチング装置などの異方性エッチングが可能なものであって、最小で20W程度のバイアス電場を発生できるものであれば、プラズマ発生の方式、電極の構造、チャンバーの構造、高周波電源の周波数等の仕様には特に制限ない。
異方性エッチングをするためには、単粒子膜マスクFと表面層12’のエッチング速度が異なる必要があり、エッチング選択比(表面層のエッチング速度/単粒子膜のエッチング速度)が好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上となるようにエッチングの各条件(単粒子膜マスクFを構成する粒子の材質、エッチングガスの種類、バイアスパワー、アンテナパワー、ガスの流量と圧力、エッチング時間など)を設定することが好適である。
また、図1の反射防止構造体10は、上述のとおり、形成される表面凹凸層12の材料の屈折率が表面12b側に近づくにしたがって連続的に小さくなっているため、反射防止能の観点からの微細突起13の最適形状は、図2(b)に示すように、先端が丸い、いわゆる釣鐘状である。釣鐘状の微細突起13を形成するためには、エッチング工程において、微細突起13の側壁のエッチング(水平方向のエッチング)を抑制することが必要となる。そのため、エッチング工程では、突起の側壁を保護する側壁保護ガス(デポガス)を導入しながら、エッチングを行うことが好ましい。
側壁保護ガスとしては、C、C、C、C、C、CHF、CH、CHF、Cをはじめとするフロン系のガスが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。これらのガスは、プラズマ状態で分解された後、分解物同士が結合することで高分子化し、保護膜として作用する堆積膜をエッチング対象物の表面に形成する。このように側壁保護ガスを適宜選択してエッチング工程を行うことにより、釣鐘状の微細突起13を形成できる。
このようにスパッタリングするターゲットとしてケイ素を採用し、かつ、希ガスと併用する反応性ガスとして窒素および酸素を採用し、混合ガスのガス組成を変化させながら表面層 12’を形成すると、表面凹凸層12における基材11との接触面12aを例えばSiONとして、その屈折率を1.83とすることができる。一方、表面凹凸層12の表面をSiOとすれば、その屈折率を1.45とすることができる。すなわちこの系であれば、例えば1.45〜1.83の範囲で、屈折率を変化させることができる。
このようにして製造された反射防止構造体10は、その表面凹凸層12が、表面に反射防止能を発揮する微細凹凸形状が形成されているだけでなく、表面凹凸層12の膜厚方向の屈折率が、基材11との接触面12aから、該接触面12aとは反対側の表面12bに向かって、連続的に小さくなっていて、表面凹凸層12を形成している材料そのものの屈折率が変化している。そのため、優れた反射防止能を発揮する。
また、表面凹凸層12を形成している材料そのものの屈折率が上述のように変化しているため、反射防止能の観点からの微細突起の最適形状は、図2(a)に示すような先細りの円錐状ではなく、図2(b)に示すように、先端が丸い釣鐘状である。釣鐘状の微細突起13は、先端の耐久性(耐擦傷性)に優れ、また、エッチング条件が多少変動しても、形成される形状が変化しにくい。また、仮に多少形状が変わったとしても、表面凹凸層12を構成している材料そのものの屈折率を微細突起13の高さ方向に傾斜させているため、形状が変わったことによる悪影響をカバーできる。
<その他の形態>
以上の例では、基材11としてYAGを挙げたが、YAGに限定されず、以下の材料も使用できる。基材の材質としては、例えば以下のものが挙げられる。なお、屈折率nも併せて記載する。
ソーダライムガラス((アルカリガラス)、n=1.51)、硼珪酸ガラス((無アルカリガラス)、n=1.51〜1.54(ただしレンズ用の場合。))、SF(重フリント)系高屈折率ガラス(n=1.64〜1.84、(例えばSFはn=1.80(ただしレンズ用の場合。))などのガラスが挙げられる。
また、ITO(酸化インジウムスズ、n=1.8)、IZO(酸化インジウム亜鉛、n=2.07)、GaN(n=2.4)、TiO(n=2.52)、Al(n=1.76)、MgO(n=1.76)、CaO(n=1.83)、サファイア(n=1.76)などの無機材料が挙げられる。
また、ポリエチレンテレフタレート(n=1.65)、ポリメタクリル酸メチル(n=1.48〜1.50)などの樹脂材料が挙げられる。
これらのなかでガラスは、エッチング可能であるものの、エッチングが進行するのに伴って残渣が発生し、発生した残渣によりエッチングの進行が妨げられる。よって、実質的にはエッチングは困難である。また、YAGは、上述のとおり、エッチング自体がほとんど進行しないエッチングレートが低い材料である。本発明の微細構造体の製造方法は、基材11をエッチングするのではなく、基材11上に設けた表面層12’をエッチングする方法である。そのため、ガラスやYAGのように、エッチング困難な材料を基材に用いても、微細凹凸形状をエッチングにより形成できる。
また、エッチングにより、表面層12’を直接加工するため、微細凹凸形状を所望の形状に厳密に制御しやすい。ここで仮に、基材をエッチングしてその表面を微細凹凸形状とし、その上に蒸着、スパッタリングなどで表面層を形成していくことで、表面層にも微細凹凸形状を発現させる方法であると、エッチングにより形成された基材の表面形状が表面層の表面形状に精密に反映されず、表面層の微細凹凸形状がやや平坦化する可能性が生じる。このような場合、入射角の角度によっては、充分な反射防止能を発現できなくなる。
また、反射防止構造としては、ナノインプリント法によって微細凹凸を形成した樹脂層をYAGからなる基材上に設ける方法も考えられる。しかしながら、樹脂と基材とでは屈折率差を少なくすることが難しいため、この界面における反射率を低減することは困難である。よって、ナノインプリント法では、本発明のように、基材から空気側までの屈折率の傾斜構造を形成することは困難である。
以上の例では、スパッタリングするターゲットとしてケイ素を採用し、かつ、希ガスと併用する反応性ガスとして酸素と窒素を採用することにより、表面層12’および表面凹凸層12の組成をケイ素と酸素と窒素とを含有する組成とした。そして、表面層12’および表面凹凸層12の組成を、基材11との接触面12a’,12aから、該接触面12a’,12aとは反対側の表面12b’,12bに向かって、窒素の含有量が連続的に小さくなるように変化させた。
しかしながら、表面層12’および表面凹凸層12の膜厚方向の屈折率を、基材との接触面から、該接触面12a’,12aとは反対側の表面12b’,12bに向かって、連続的に小さく形成できるかぎり、使用するターゲットおよびガスの種類や、ターゲットおよびガスにより形成される表面層12’および表面凹凸層12の組成は制限されない。例えば、表面層12’および表面凹凸層12の組成をケイ素と酸素と窒素とを含有する組成とする場合、ターゲットとして二酸化ケイ素を用いるとともに、反応性ガスとして窒素を用い、混合ガス中の窒素の比率を連続的に減少させる方法も好ましい。
また、スパッタリングするターゲットとして、SiOおよびTiOを併用し、これら各ターゲットに加える電圧をコントロールしつつ希ガスでスパッタリングする方法も挙げられる。これにより、表面層および表面凹凸層の組成を、基材との接触面側では例えばTiO(n=2.70)とし、該接触面とは反対側の表面では例えばSiO(n=1.45)として、基材との接触面から、該接触面とは反対側の表面に向かって、含まれるチタンの量が減少し、ケイ素の量が増加するように連続的に変化させることで、屈折率が連続的に小さくなるように制御できる。すなわちこの系であれば、最大で2.70〜1.45の範囲で、屈折率を変化させることができる。
このように製膜工程で用いるターゲットの種類、スパッタリングガスの種類、組成等を変更するなどして、表面層および表面凹凸層の組成の系を適宜選択することにより、表面凹凸層の取り得る屈折率の範囲を調整することができる。そのため、使用する基材の屈折率等に応じて、ターゲットの種類、スパッタリングガスの種類、組成等を適宜選択することが好ましい。ただし、ターゲットを複数使用して各ターゲットに加える圧力をコントロールしつつスパッタリングする方法よりも、スパッタリングガスにおけるガス組成を変化させつつスパッタリングする方法の方が、設備構造が簡易、操作が簡便である点で好ましい。
なお、表面凹凸層は、基材上の少なくとも一部、すなわち、基材の表面の少なくとも一部に形成されていればよく、基材の片面全面の他、基材の片面の一部、基材の端面などに形成されていてもよい。また、基材の形状は板状に限定されず、立体形状でもよいし、表面層が形成される基材の表面が、JIS B0601に記載の中心線平均粗さRaが30nm以下であるかぎり、レンズのような曲面表面を有する基材でもよい。
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。
<実施例1>
まず、ケイ素をターゲットとしたスパッタリングにより、YAGからなる基材(表面は中心線平均粗さRaが30nm以下。)上に表面層を形成した(製膜工程)。スパッタリングガスのモル比は、スパッタリング初期のAr:O:N2=2:1:2から、最終的にはAr:O:N=2:1:0まで変化させた。この際、ArとOの流量は一定にし、Nの流量を連続的に減少させた。
このようなスパッタリングで形成される表面層の組成は、基材との接触面から基材との接触面とは反対側の表面(空気側)へと、窒素が多い組成から酸素が多い組成になる。そのため、スパッタリングで形成された表面層の屈折率は、基材との接触面から基材との接触面とは反対側の表面(空気側)に向かって連続的に小さくなる。具体的には、基材(YAG)の屈折率n=1.83、表面層における基材との接触面の屈折率n=1.83(組成はSiON)、表面層における基材との接触面とは反対側の表面(空気側)の屈折率n=1.45であった。各屈折率は、SCI社製FilmTEK4000を使用し測定した。
該製膜工程で形成された表面層は、微細凹凸形状を有していない平らな層である。そこで、表面層上にシリカ粒子の単粒子膜からなるマスクパターンを配置し、該マスクパターンを介して表面層をエッチングし、微細凹凸形状が表面に形成された表面凹凸層を形成した(エッチング工程)。
該表面凹凸層においては、基材との接触面から基材との接触面の反対側の表面(空気側)に向かって連続的に屈折率が小さくなり、微細突起の先端は、酸素が多いSiO(屈折率n=1.45)であった。
このように表面凹凸層が形成された微細構造体について、表面の反射率の測定、光取り出し効率の算出(上記式(1)参照。)等を行った。結果を表1に示す。
なお、表面の反射率の測定は、測定波長λ=380〜780nmにおいて行い、その平均値を表1に記載した。
<比較例1>
スパッタリングガスのモル比をAr:O:N=2:1:2に維持して製膜した以外は、実施例1と同様にして製膜工程を行った。これにより、膜厚方向に屈折率が一定(YAGと等しいn=1.83)であるSiONからなる表面層を形成した。
その後、表面層上に、実施例1で用いたものと同様のシリカ粒子の単粒子膜からなるマスクパターンを配置し、該マスクパターンを介して表面層をエッチングし、微細凹凸形状が表面に形成された表面凹凸層を形成した(エッチング工程)。そして、実施例1と同様にして、表面の反射率の測定、光取り出し効率の算出等を行った。結果を表1に示す。
<比較例2>
YAGからなる基材(表面凹凸層を有しない。)の反射率(表面の反射率)の測定等を行った。また、光取り出し効率の算出を行った。結果を表1に示す。
Figure 2015138179
表面凹凸層の厚さdは、図1のようなSEMイメージから、微細突起を30個抽出し、次のように求めた。まず、各微細突起について、その頂点から表面凹凸層と基材との界面までの距離を測定した。また、30個の微細突起の間の29か所の各谷部について、該谷部から表面凹凸層と基材との界面までの距離を測定した。得られた測定値(データ数:59)の平均値を求め、dとした。
また、微細突起先端の曲率半径(nm)は、図1のようなSEMイメージから、微細突起を30個抽出し、各先端部分の最小曲率半径を測定し、その平均値を求め、表1に記載した。
実施例1では、表面凹凸層の基材との接触面の屈折率は、YAGと同じであるため、Rは0%となる。比較例1も同様である。一方、比較例2は、表面凹凸層を有しないため、R(YAGと空気との界面の反射率)は10.20%(実測値)であった。
また、実施例1では、表面凹凸層の組成が連続的に変化しているため、表面凹凸層の組成を、基材との接触面側の組成と、該接触面とは反対側の組成との平均組成とみなし、該平均組成に基づいて、Aの値を決定した。
は、表面凹凸層の厚さ500nm(=0.0005mm)に相当し、dは基材の厚さ1mmに相当する。
は、基材の材質による固有性質であり、YAGの場合は26%である。
各例の光取り出し効率は、以下のように計算した。
実施例1:(1−0.005)×(1−0)×(1−0.002×0.0005)×(1−0.015×1)×0.26=0.2548;すなわち、25.48%
比較例1:(1−0.039)×(1−0)×(1−0.002×0.0005)×(1−0.015×1)×0.26=0.2460;すなわち、24.60%
比較例2:(1−0)×(1−0.1020)×(1−0×0)×(1−0.015×1)×0.26=0.2299;すなわち、22.99%
反射率実測方法:日本分光社製「V−670分光光度計」を使用し、5°正面反射の測定を行った。R測定時には、光吸収テープ(テックワールド社製、「スーパーブラックIR」)により裏面吸光処理した上で測定した。
なお、図5に表面凹凸層の屈折率分布曲線を示すように、実施例1の表面凹凸層の屈折率は、基材との接触面からの高さが大きくなるのに伴って、連続的に小さくなっていた。そして、表面凹凸層の任意の位置における屈折率の「局所変化率」(式(3);距離=10nm)は、「全体の平均の変化率」(式(4))を100%としたとき、±5%の範囲内であった。)。これに対して、比較例1の表面層の屈折率は、一定であった。
図5の屈折率分布曲線は、次のように得た。
まず、SiOにおけるxとyの比を変化させた複数のサンプル(各サンプルにおいては、組成の傾斜はなし。)を得て、該サンプルの屈折率を測定することにより、組成(SiO)−屈折率の検量線を得た。この際、複数のサンプルの膜厚を測定するために触針式段差計を使用し、屈折率を測定するために分光エリプソメーターを使用した。ついで、実施例1において、製膜工程で形成された表面層(エッチング工程を行っていない層。)について、TOF−SIMSにより、アルゴンイオンビームによるイオンミリングで、表面から深さ500nmまでの領域を約10nmずつ徐々に掘り進みながら、原子の質量分析を行うことで原子を同定した。これにより、表面層の表面から深さ方向の各位置において、SiOのxとyを求め、組成を求めた。そして、上述の検量線を用いて、各位置の組成から屈折率を求め、図5を得た。比較例1についても、同様に行った。
<考察>
表1の結果から、光取り出し効率は、実施例1、比較例1、比較例2の順で低下していることがわかる。同様に、表面の反射率も、実施例1、比較例1、比較例2の順で増大し、反射防止性能が低下していることがわかる。
比較例1は、微細凹凸構造を有するため、比較例2よりは、反射率が低下しているが、充分ではない。これに対して、実施例1は、光取り出し効率、反射防止能のいずれもが優れていた。
また、実施例1の微細突起は、比較例1の微細突起よりも先端の曲率半径が大きく、先端が丸い形状であるが、反射防止性能に優れていた。このことから、実施例1の微細構造体は、反射防止性能だけでなく、耐擦傷性にも優れていることが示唆された。
10 反射防止構造体
11 基材
12 表面凹凸層
12’ 表面層

Claims (8)

  1. 基材と、該基材上の少なくとも一部に形成され、微細凹凸形状が表面に形成された表面凹凸層とを有する微細構造体であって、
    前記表面凹凸層は、前記基材との接触面から、該接触面とは反対側の前記表面凹凸層の表面に向かって、屈折率が連続的に小さくなっていることを特徴とする微細構造体。
  2. 前記表面凹凸層は、ケイ素と酸素と窒素とを含有し、前記接触面から前記表面凹凸層の前記表面に向かって、前記窒素の含有量が連続的に小さくなっている、請求項1に記載の微細構造体。
  3. 前記基材における前記表面凹凸層が形成された表面は、JIS B0601に記載の中心線平均粗さRaが30nm以下である、請求項1または2に記載の微細構造体。
  4. 前記基材は、YAGからなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微細構造体。
  5. スパッタリングガスでターゲットをスパッタリングして、基材上に表面層を形成する製膜工程と、
    マスクパターンを介して前記表面層をエッチングして、前記表面層を表面凹凸層とするエッチング工程とを有し、
    前記製膜工程では、前記表面層の膜厚方向の屈折率が、前記基材と前記表面層との接触面から、該接触面とは反対側の前記表面層の表面に向かって連続的に小さくなるように、前記表面層を形成することを特徴とする微細構造体の製造方法。
  6. 前記製膜工程では、前記スパッタリングガスとして希ガスと反応性ガスとの混合ガスを用い、前記混合ガスのガス組成を連続的に変化させることにより、形成される前記表面層の膜厚方向の組成を連続的に変化させる、請求項5に記載の微細構造体の製造方法。
  7. 前記製膜工程では、前記ターゲットとしてケイ素を用いるとともに、前記反応性ガスとして酸素と窒素を用い、前記混合ガス中の前記窒素の比率を連続的に減少させる、請求項6に記載の微細構造体の製造方法。
  8. 前記製膜工程では、前記ターゲットとして二酸化ケイ素を用いるとともに、前記反応性ガスとして窒素を用い、前記混合ガス中の前記窒素の比率を連続的に減少させる、請求項6に記載の微細構造体の製造方法。
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