JP2015134138A - 歯科矯正用ワイヤー、歯科矯正用ワイヤーの製造方法、歯科矯正用セットおよび歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー - Google Patents

歯科矯正用ワイヤー、歯科矯正用ワイヤーの製造方法、歯科矯正用セットおよび歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー Download PDF

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Abstract

【課題】歯科矯正治療に使用することにより、三次元的な歯体移動が可能となることにより、歯根吸収をほぼ完全に防止することができ、しかも組織にダメージをほとんど与えることがない歯科矯正用ワイヤーを提供する。【解決手段】歯科矯正用ワイヤー11は、第一部分11a、第二部分11b、アーチ状の第三部分11c、第四部分11dおよび第五部分11dを有し、(0.41?0.05mm)?(0.56?0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーからなる。第一、第五部分はほぼ第一平面内に、第二、第四部分はほぼ第二平面内に、第三部分はほぼ第三平面内に位置する。ステンレス鋼製ワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ第一、第二および第三平面に平行である。第一平面は第二平面に対して12?以上25?以下傾斜し、第三平面は第二平面に対して第一平面と同じ側に12?以上25?以下傾斜している。【選択図】図1

Description

この発明は、歯科矯正用ワイヤー、歯科矯正用ワイヤーの製造方法、歯科矯正用セットおよび歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーに関し、特に、歯科医師が歯科矯正治療を行う際に用いて好適な歯科矯正用ワイヤー、その製造方法およびその製造に用いて好適な歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーならびにその歯科矯正用ワイヤーとブラケットとからなる歯科矯正用セットに関する。
歯科矯正治療においては、ブラケットなどの矯正装置を歯の歯冠部に装着し、この矯正装置に、必要なベンドを施した歯科矯正用ワイヤーを取り付け、その両端を固定源に固定することで、この歯科矯正用ワイヤーにより歯に力を加えて移動させるのが一般的である(例えば、非特許文献1、2参照。)。
近代歯科矯正治療が初めて行われてから約160年程度経過している。その間に種々の矯正用の材料が開発され、矯正理論も発展し、ある程度の治療の合理化は図られてきたと考えられる。しかしながら、現在一般的に行われている歯科矯正治療の全ての内容が、安全で合理性の高い治療として確立されたものに至っているかと言えば疑問がある。結論から言えば、今現在一般的に行われている歯科矯正治療は、力学的見地から安全で合理性の高い治療とは到底考えられない。何より、「これが全てにおいて正しい」と言える確実な治療理論はなく、100%信頼できる完全マニュアルと言える本もなく、個々の矯正歯科医がそれぞれ正しいと信じた理論や安易なテクニックを利用して治療を行っているに過ぎないのが現状と言える。
本来、歯科矯正治療とは「口腔内で組織に害を与えず、歯を安全に移動させて咬合関係を確立する治療」であるはずであるが、あらゆる方面から考えても、組織に害を与えず、安全に、そして確実に歯を移動させる方法が確立されているとは言えない。
このような現状では、いつでも安全な歯科矯正治療がなされているとは言えるはずもなく、歯根吸収、顎関節症状、咬合不全などの医源的トラブルがある一定の確率で起こっていると考えられる。
特に歯根吸収に関しては、重症なケースを除いては治療後に顕著な自覚症状はなく、一見すると外見上は歯が綺麗に配列されたかのように見えるため、治療後にX線撮影を行って確認しなければ分からない、とても分かりにくいトラブルである。しかしながら、歯根吸収の程度によっては、将来とても大きなトラブルとなり得る。
現在の歯科矯正理論に基づいて治療が行われた場合、それは組織学的、力学的バランスの不完全な理論であるため、歯根の根尖3分の1の部分に歯根吸収がいつ起きても仕方がないとあきらめられており、もし歯根吸収が起きていなければ幸運と言わざるを得ないのが現状である。
歯根吸収が多少起きても歯自体は直ぐに駄目になることはないので、多くの矯正歯科医は、ある程度の歯根吸収が起きても止むを得ないと考えている。全ての症例が歯根吸収を起こす訳ではないが、現在施行されている多くの歯科矯正テクニックのメカニズム自体が、必ず数パーセントの確率で歯根吸収を起こしてしまうのは止むを得ないと考えられてきた。
しかしながら、歯科矯正治療で起こる歯根吸収は実は大きな問題である。すなわち、極度の歯根吸収が起きると、歯が抜けやすくなってしまう。また、若いうち(もしくは治療後すぐ)は大丈夫でも将来、歯周病が進行し、歯茎が弱くなった時はその影響を受け、抜けやすくなる。そうなってしまった場合、対処方法としては抜歯しかない。
歯根吸収のメカニズムについて詳細に説明する。歯根吸収のメカニズムはいくつかあると考えられる。先天的(病的)に歯根吸収を起こす場合もあるが、実際は歯科矯正治療により人為的に起こされるケースが圧倒的に多い。人為的に起こされるケースとしては以下の二つのパターンが考えられる。
一つは、矯正力が強すぎる場合である。歯科矯正治療のメカニズムとして、必ず機械的な矯正装置によって歯に力が加えられるが、実は歯科矯正治療は、持続的な力を歯から組織に伝え、ある種の新陳代謝を利用して歯を移動させる治療である。ただし、歯を移動させる力には許容範囲があり、力が強すぎても弱すぎても、適切に移動しない。この力が許容範囲を超えて強すぎる場合、歯根吸収の原因となる。
もう一つは、ジグリング(ごますり運動)による歯根吸収である。歯の移動メカニズムには歯体移動と傾斜移動とがあるが、現在行われている矯正治療のほとんどが、小さなジグリングまたは大きなジグリングを行いながら歯を傾斜して移動させる傾斜移動を行っている。この傾斜移動も歯根吸収を起こす大きな原因で、もし歯を傾斜させない歯体移動が可能になれば歯根吸収のほとんどが避けられると考えられる。
これまでに完璧な歯体移動が実現しなかった理由について説明する。その大きな壁は解剖学的な歯の構造と力学的な構造とに原因がある。すなわち、図39に示すように、歯501は歯冠部501aと歯根部501bとが歯根膜502を介して歯槽骨503に植立している。歯冠部501aと歯根部501bとの高さの比は約1:1.5であるが、個人差がある。矯正装置は、歯根部501bに装着することが不可能であるから、歯冠部501aに装着されるのであるが、実は移動させたいのは歯根部501bである。正にこれが、力学的に無理の生じる点である。すなわち、通常のメカニズムで矯正力を働かせた場合、力点と作用点との位置の関係から、歯根部501bが動くとき、根尖1/3の付近が支点となる。すなわち、根尖1/3はジグリングを繰り返しながら移動する。そのため、移動し終わった頃には確実に歯501にダメージが加わってしまうことになる。
上記のような背景の下で、本発明者は、新しい概念に基づく歯科矯正治療システム(3次元的ライトフォーススライディングテクニック(3D−LST)と呼ばれる)を提唱している(非特許文献3、4参照。)。非特許文献3には、歯科矯正治療に際して、必要以上の負荷がかからない細いワイヤーを選択し、そのワイヤーの4箇所に特殊ベンド(ティップバックベンドとトルクホールディングベンドとがそれぞれ2箇所、15°〜20°のハイベンド)を付けることで歯体移動を可能とし、結果として安全にそして合理的に治療を行うことができることが記載されている。非特許文献4には、022×028インチスロットブラケットにメインアーチが016×022もしくは017×025を使用すること、細いワイヤーでの3次元的歯の移動によりトルク、アンギュレーションのコントロールが可能であること(トルクホールディングベンド《15度から20度》)、ティップバックハイベンド《15度から20度》を用いることが記載されている。しかしながら、非特許文献3、4に記載された「トルクホールディングベンド」は本発明者による造語であり、トルクホールディングベンドの意味については何ら記載されておらず、ワイヤーのどこにティップバックベンドおよびトルクホールディングベンドを付けるかについても何ら記載されていない。
William R. Proffit著(高田健治訳)「新版 プロフィトの現代歯科矯正学」(クインテッセンス出版株式会社、2004年6月10日発行) 石川晴夫、古賀正忠著「プリアジャステッドブラケットシステム・ストレートワイヤーテクニック」(クインテッセンス出版株式会社、1997年1月25日発行) [平成25年11月21日検索]、インターネット〈URL:http://www.cat-ortho.jp/treatment/categories/t01.html 〉 [平成25年11月21日検索]、インターネット〈URL:http://www.japos.jp/purpose/index.html〉
上述のように、従来の歯科矯正治療では、歯を傾斜移動(ジグリング)させるのが一般的であるため、歯根吸収が起きることは避けられなかった。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、歯科矯正治療に使用することにより、三次元的な歯体移動が可能となることから、歯根吸収をほぼ完全に防止することができ、しかも組織にダメージをほとんど与えることがない歯科矯正用ワイヤーおよびこの歯科矯正用ワイヤーとブラケットとからなる歯科矯正用セットを提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、上記の歯科矯正用ワイヤーを容易に製造することができる歯科矯正用ワイヤーの製造方法を提供することである。
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記の歯科矯正用ワイヤーを容易に製造することができる歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを提供することである。
本発明者は、従来の多くの歯科矯正治療では歯根吸収が起こっていると考えられる状況の中で、歯根吸収のメカニズムを徹底的に研究した結果、特定の位置に特殊なベンドを施した細い歯科矯正用ワイヤーを用いることにより、強すぎない適正な矯正力を用いて、前歯の歯根(あるいは歯軸)を移動させたい方向に直線的かつ三次元的に移動、すなわち並進移動させることができることを見出し、この発明を案出するに至った。このような歯体移動の実現により歯科矯正治療により歯根吸収を起こすことがなくなったことが多くの症例で確認されている。
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、
一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
上記第一平面は上記第二平面に対して12°以上25°以下傾斜し、
上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に12°以上25°以下傾斜し、
上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有することを特徴とする歯科矯正用ワイヤーである。
この歯科矯正用ワイヤーは、第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う際に用いて好適なものである。すなわち、この歯科矯正用ワイヤーは、患者の上顎歯の歯科矯正を行う際には、あらかじめ左側および右側の第一小臼歯が抜歯された状態において、第二部分および第四部分に対して第一部分、第三部分および第五部分を上にした状態で、第一部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、第二部分が左側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、第四部分が右側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第五部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着される。また、患者の下顎歯の歯科矯正を行う際には、あらかじめ左側および右側の第一小臼歯が抜歯された状態において、第二部分および第四部分に対して第一部分、第三部分および第五部分を下にした状態で、第一部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、第二部分が右側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、第四部分が左側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第五部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着される。また、この歯科矯正用ワイヤーは、必要に応じて、例えば、左側の第一小臼歯を抜歯するとともに、右側の第二小臼歯を抜歯し、あるいはその逆に、左側の第二小臼歯を抜歯するとともに、右側の第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う際に用いることもでき、取り分け、前歯を後方に移動させる(後方に下げる)場合に用いて好適なものである。具体的には、この歯科矯正用ワイヤーは、患者の上顎歯の歯科矯正を行う際には、例えば、あらかじめ左側の第一小臼歯が抜歯され、右側の第二小臼歯が抜歯された状態において、第二部分および第四部分に対して第一部分、第三部分および第五部分を上にした状態で、第一部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、第二部分が左側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、第四部分が右側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第五部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着される。あるいは、この歯科矯正用ワイヤーは、あらかじめ左側の第二小臼歯が抜歯され、右側の第一小臼歯が抜歯された状態において、第二部分および第四部分に対して第一部分、第三部分および第五部分を上にした状態で、第一部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、第二部分が左側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、第四部分が右側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第五部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着される。また、この歯科矯正用ワイヤーは、患者の下顎歯の歯科矯正を行う際には、例えば、あらかじめ左側の第一小臼歯が抜歯され、右側の第二小臼歯が抜歯された状態において、第二部分および第四部分に対して第一部分、第三部分および第五部分を下にした状態で、第一部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、第二部分が右側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、第四部分が左側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第五部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着される。あるいは、この歯科矯正用ワイヤーは、あらかじめ左側の第二小臼歯が抜歯され、右側の第一小臼歯が抜歯された状態において、第二部分および第四部分に対して第一部分、第三部分および第五部分を下にした状態で、第一部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、第二部分が右側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、第四部分が左側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第五部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着される。
歯科矯正用ワイヤーにステンレス鋼製ワイヤーを用いる場合には、その横断面の長方形の寸法は(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)の範囲内で必要に応じて選ばれる。横断面の長方形の寸法が(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)の範囲内のステンレス鋼製ワイヤーであれば、必要に応じて第一平面の第二平面に対する傾斜角度や第三平面の第二平面に対する傾斜角度を調整することにより、横断面の長方形の寸法が0.41mm×0.56mmのステンレス鋼製ワイヤーを用いた場合と同様な効果を得ることが可能である。また、歯科矯正用ワイヤーには、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質(ヤング率、ねじれ剛性など)を有する限り、ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーを用いてもよく、その場合には、ワイヤーの材料に応じて、(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有するようにする。こうすることで、ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーを用いても、必要に応じて第一平面の第二平面に対する傾斜角度や第三平面の第二平面に対する傾斜角度を調整することにより、横断面の長方形の寸法が0.41mm×0.56mmのステンレス鋼製ワイヤーを用いた場合と同様な効果を得ることが可能である。ステンレス鋼以外の材料としては、例えば、ステンレス鋼以外の各種の金属(単体金属および合金)、各種の繊維強化プラスチック(FRP)、二種類以上の金属の複合金属材料、金属と他の材料、例えば繊維強化プラスチックなどとの複合材料などを用いることができる。ステンレス鋼以外の金属としては、例えばニッケルが挙げられる。繊維強化プラスチックとしては、例えば、炭素繊維強化プラスチック、炭化珪素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックなどが挙げられる。ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーは、均一な材料からなるワイヤーだけでなく、例えば、金属からなる芯材とこの芯材を被覆する金属または繊維強化プラスチックからなる被覆層とからなるものであってもよい。好適には、(0.41±0.02mm)×(0.56±0.02mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーが用いられ、最も典型的な一例を挙げると、0.41mm×0.56mm(0.016”×0.022”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーが用いられる。以上のような細いステンレス鋼製ワイヤーまたはステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーを用いることにより、強すぎない適正な矯正力を歯に加えることができるため、歯根吸収を有効に防止することができる。具体的には、例えば、この歯科矯正用ワイヤーを取り付けたとき、患者の上顎歯または下顎歯の両側の中切歯に第三平面に対して垂直方向に100±30g重の力が加わり、両側の側切歯に同じく200±50g重の力が加わり、両側の犬歯に同じく250±50g重の力が加わるようにすることができる。
この歯科矯正用ワイヤーは、典型的には、一本のステンレス鋼製ワイヤーまたはステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの四箇所を折り曲げ加工することによって製造される。すなわち、一本のステンレス鋼製ワイヤーまたはステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの四箇所を折り曲げ加工することにより、第一部分、第二部分、第三部分、第四部分および第五部分が形成される。この歯科矯正用ワイヤーにおいては、第一部分と第二部分との境界の折れ曲がり部および第五部分と第四部分との境界の折れ曲がり部は、左側および右側の第一大臼歯を遠心に傾斜させ、すなわちティップバック(tip back)し、近心に傾斜するのを防止するためのもので、以下においてはティップバックベンド(tip back bend)部と称する。また、第二部分と第三部分との境界の折れ曲がり部および第四部分と第三部分との境界の折れ曲がり部は、この歯科矯正用ワイヤーをブラケットを用いて上顎歯または下顎歯に取り付けた場合に、前歯に唇舌側に傾斜させる回転方向のトルクを加え、後述のように歯科矯正用ワイヤーが前歯に装着されたブラケットのスロット内でロックされたとき、そのときのトルクを保持するためのものであり、以下においてはトルクホールディングベンド(torque holding bend)部と称する。第一平面の第二平面に対する傾斜角度および第三平面の第二平面に対する傾斜角度は、12°以上25°以下の範囲内で、使用するワイヤーの材質および横断面の長方形の寸法などに応じて適宜選ばれるが、好適には12°以上23°以下、典型的には15°以上22°以下、例えば20°である。
典型的には、この歯科矯正用ワイヤーは、第三部分を二等分し、かつ第二平面に垂直な平面に関してほぼ対称である。また、この歯科矯正用ワイヤーは、典型的には、患者の上顎前歯または下顎前歯の歯冠部の前面に装着したブラケットに取り付けたとき、この歯科矯正用ワイヤーの長手方向の一つの稜がブラケットのスロットの底面に点接触または線接触し、この稜を挟んだ両側の稜がブラケットのスロットの両側面にそれぞれ点接触または線接触する。これによって、歯科矯正用ワイヤーとブラケットとの間に働く摩擦力を極めて小さくすることができることから、小さな矯正力でも歯体移動が可能であり、患者の歯に与える負担の大幅な低減が可能となる。ブラケットのスロットの断面形状は一般的にはほぼ長方形である。
また、この発明は、
歯科矯正用ワイヤーとこの歯科矯正用ワイヤーを取り付けるためのブラケットとからなる歯科矯正用セットであって、
上記歯科矯正用ワイヤーは、
一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
上記第一平面は上記第二平面に対して12°以上25°以下傾斜し、
上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に12°以上25°以下傾斜し、
上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有し、
上記ブラケットは、
幅が0.56±0.05mmの長方形の断面形状を有するスロットまたは幅が(0.56±0.05mm)×pの長方形の断面形状を有するスロットを有する
ことを特徴とする歯科矯正用セットである。
この歯科矯正用セットを用いることにより、この発明による歯科矯正用ワイヤーを用いて歯科矯正を行うことによる効果を最も確実に得ることができる。この歯科矯正用セットにおいては、好適には、歯科矯正用ワイヤーは(0.41±0.02mm)×(0.56±0.02mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:pで相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、第一平面は第二平面に対して15°以上22°以下傾斜し、第三平面は第二平面に対して第一平面と同じ側に15°以上22°以下傾斜し、ブラケットは幅が0.56±0.02mmまたは(0.56±0.02mm)×pの長方形の断面形状を有するスロットを有する。
また、この発明は、
一本のステンレス鋼製ワイヤーまたはステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの四箇所を折り曲げ加工することによって、
一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
上記第一平面は上記第二平面に対して12°以上25°以下傾斜し、
上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に12°以上25°以下傾斜し、
上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有する歯科矯正用ワイヤーを製造することを特徴とする歯科矯正用ワイヤーの製造方法である。
この歯科矯正用ワイヤーの製造方法の発明においては、上記の歯科矯正用ワイヤーの発明に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.43±0.05mm)×(0.64±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
上記第一平面は上記第二平面に対して7°以上20°以下傾斜し、
上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に7°以上20°以下傾斜し、
上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有することを特徴とする歯科矯正用ワイヤーである。
この歯科矯正用ワイヤーは、第二小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う際に用いて好適なものである。すなわち、この歯科矯正用ワイヤーは、患者の上顎歯の歯科矯正を行う際には、あらかじめ左側および右側の第二小臼歯が抜歯された状態において、第二部分および第四部分に対して第一部分、第三部分および第五部分を上にした状態で、第一部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、第二部分が左側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、第四部分が右側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第五部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着される。また、患者の下顎歯の歯科矯正を行う際には、あらかじめ左側および右側の第二小臼歯が抜歯された状態において、第二部分および第四部分に対して第一部分、第三部分および第五部分を下にした状態で、第一部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、第二部分が右側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、第四部分が左側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、第五部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着される。また、この歯科矯正用ワイヤーは、必要に応じて、例えば、左側の第一小臼歯を抜歯するとともに、右側の第二小臼歯を抜歯し、あるいはその逆に、左側の第二小臼歯を抜歯するとともに、右側の第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う際に用いることもでき、取り分け、第一大臼歯を近心に移動させる場合に用いて好適なものである。この場合のこの歯科矯正用ワイヤーの具体的な使用方法は、第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う際に用いて好適な先に述べた歯科矯正用ワイヤーの使用方法と同様である。
この歯科矯正用ワイヤーにステンレス鋼製ワイヤーを用いる場合には、その横断面の長方形の寸法は(0.43±0.05mm)×(0.64±0.05mm)の範囲内で必要に応じて選ばれる。横断面の長方形の寸法が(0.43±0.05mm)×(0.64±0.05mm)の範囲内のステンレス鋼製ワイヤーであれば、必要に応じて第一平面の第二平面に対する傾斜角度や第三平面の第二平面に対する傾斜角度を調整することにより、横断面の長方形の寸法が0.43mm×0.64mmのステンレス鋼製ワイヤーを用いた場合と同様な効果を得ることが可能である。また、歯科矯正用ワイヤーには、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質(ヤング率、ねじれ剛性など)を有する限り、ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーを用いてもよく、その場合には、ワイヤーの材料に応じて、(0.43±0.05mm)×(0.64±0.05mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有するようにする。こうすることで、ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーを用いても、必要に応じて第一平面の第二平面に対する傾斜角度や第三平面の第二平面に対する傾斜角度を調整することにより、横断面の長方形の寸法が0.43mm×0.64mmのステンレス鋼製ワイヤーを用いた場合と同様な効果を得ることが可能である。好適には、(0.43±0.02mm)×(0.64±0.02mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーが用いられ、最も典型的な一例を挙げると、0.43mm×0.64mm(0.017”×0.025”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーが用いられる。
第一平面の第二平面に対する傾斜角度および第三平面の第二平面に対する傾斜角度は、7°以上20°以下の範囲内で、使用するワイヤーの材質および横断面の長方形の寸法などに応じて適宜選ばれるが、好適には8°以上18°以下、典型的には10°以上17°以下、例えば15°である。
この歯科矯正用ワイヤーの上記以外のことは、その性質に反しない限り、第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に適用して好適な上記の歯科矯正用ワイヤーに関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
前端に顎部を有し、後端側に握り柄を有する第一アームと、
前端に顎部を有し、後端側に握り柄を有する第二アームとを有し、
上記第一アームと上記第二アームとは連結軸によって、この連結軸の周りに回転可能な状態で互いにX字状に連結され、
上記第一アームの上記顎部の、上記第二アームの上記顎部と対向する面に、上記第一アームに沿う方向に延在する三角柱状の凸部が設けられ、
上記第二アームの上記顎部の、上記第一アームの上記顎部と対向する面に、上記第二アームに沿う方向に延在する三角柱状の凹部が設けられ、
上記第一アームの上記顎部の上記凸部の長手方向に垂直な断面における三角形の頂角は155°以上173°以下であり、
上記第二アームの上記顎部の上記凹部の長手方向に垂直な断面における三角形の頂角は155°以上173°以下であり、
上記第一アームと上記第二アームとを上記連結軸の周りに回転させて上記第一アームの上記顎部と上記第二アームの上記顎部とを閉じたとき、上記第一アームの上記顎部の上記凸部と上記第二アームの上記顎部の上記凹部とが互いにはまり合うように構成されていることを特徴とする歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーである。
ここで、第一アームの顎部の凸部と第二アームの顎部の凹部とは、それらの間に1本あるいは複数本のワイヤーを挟んで折り曲げることができるようにそれらの長さが決められる。
この発明による歯科矯正用ワイヤーによれば、上顎前歯または下顎前歯などに装着したブラケットならびに左側および右側の第一大臼歯に装着したボンダブルチューブを用いて取り付け、さらにこれらのブラケットに適正矯正力を考慮して選択されるパワーチェーンを引き伸ばしながら引っ掛けるとともに、左側および右側の第一大臼歯に装着したボンダブルチューブにパワーチェーンの両端を固定する。そして、一定期間その状態を維持すると、トルクホールディングベンド部を中心に第三部分がそれぞれ下側または上側に折り曲げられることにより発生する、第三平面に垂直でほぼ鉛直方向の矯正力と、歯科矯正用ワイヤーの両端を左側および右側の第一大臼歯に固定し、さらにパワーチェーンを取り付けたことにより発生するほぼ水平方向の矯正力との合力が、左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯に対して働く。その結果、最終的にこれらの歯の歯根の中心軸(あるいは歯軸)の延長線の交点として設定される仮設的な点に向かってこれらの歯の歯根が整列するようこれらの歯を三次元的に歯体移動させることができる。この際、ジグリングを行わないので、歯根吸収を有効に防止することができる。また、トルクホールディングベンド部のベンド角が、第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適な歯科矯正用ワイヤーでは12°以上25°以下、第二小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適な歯科矯正用ワイヤーでは7°以上20°以下と大きいことにより、この歯科矯正用ワイヤーの太さが小さくて済むことから、強すぎない適正な矯正力を得ることができ、それによって矯正に際して組織のダメージを最小限に抑えることができる。また、この発明による歯科矯正用ワイヤーの製造方法によれば、折り曲げ加工により上記の歯科矯正用ワイヤーを容易に製造することができる。さらに、この発明による歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーによれば、ワイヤーの折り曲げ加工を容易に行うことができ、それによって上記の歯科矯正用ワイヤーを容易に製造することができる。
この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを示す平面図、右側面図、左側面図、正面図および拡大断面図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの製造方法の第一例を示す略線図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの製造方法の第二例を示す略線図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの製造に用いて好適な歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを示す側面図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの製造に用いて好適な歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを示す斜視図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの製造に用いて好適な歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを示す斜視図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの製造に用いて好適な歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを示す側面図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの製造に用いて好適な歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを示す正面図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの製造に用いて好適な歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを示す断面図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを用いて製造する方法を示す斜視図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを用いて製造する方法を示す斜視図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーを用いて製造する方法を示す断面図である。 上顎歯および下顎歯にブラケットにより歯科矯正用ワイヤーを取り付けた状態を示す平面図である。 上顎歯および下顎歯にブラケットにより歯科矯正用ワイヤーを取り付けた状態を示す斜視図である。 上顎歯に用いられるブラケットおよびボンダブルチューブの一例を示す斜視図である。 上顎歯にブラケットにより歯科矯正用ワイヤーが取り付けられた状態を示す斜視図である。 下顎歯にブラケットにより歯科矯正用ワイヤーが取り付けられた状態を示す斜視図である。 上顎歯に装着されたブラケットにより歯科矯正用ワイヤーが取り付けられた状態を示す展開図および歯科矯正用ワイヤーの各部の横断面図である。 図18Aに示す歯科矯正用ワイヤーの上顎右側第一小臼歯から上顎右側犬歯にかけての部分を拡大して示す略線図である。 上顎歯に装着されたブラケットに取り付けられた状態の歯科矯正用ワイヤーの平面図である。 上顎右側中切歯に装着されたブラケットおよびこのブラケットのスロット内に通された歯科矯正用ワイヤーを示す断面図である。 上顎右側側切歯に装着されたブラケットおよびこのブラケットのスロット内に通された歯科矯正用ワイヤーを示す断面図である。 上顎右側犬歯に装着されたブラケットおよびこのブラケットのスロット内に通された歯科矯正用ワイヤーを示す断面図である。 上顎右側第一小臼歯に装着されたブラケットおよびこのブラケットのスロット内に通された歯科矯正用ワイヤーを示す断面図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーにより可能になる歯体移動を説明するための略線図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの使用方法の具体例を示す略線図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーの使用方法の他の具体例を示す略線図である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った一例を説明するための図面代用写真である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った一例を説明するための図面代用写真である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った一例を説明するための図面代用写真である。 図30に示した歯科矯正用ワイヤーおよびパワーチェーンを撮影した写真を示す図面代用写真である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った一例を説明するための図面代用写真である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った一例を説明するための図面代用写真である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った一例を説明するための図面代用写真である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った一例を説明するための図面代用写真である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った一例を説明するための図面代用写真である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った患者の治療開始前のパノラマX線写真を示す図面代用写真である。 この発明の一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーを使用して実際に歯科矯正治療を行った患者の治療完了後のパノラマX線写真を示す図面代用写真である。 従来の歯科矯正治療により歯根吸収が起こるメカニズムを説明するための略線図である。
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」と言う。)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
[歯科矯正用ワイヤー]
[歯科矯正用ワイヤーの製造方法]
[歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー]
[歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーの使用方法]
[歯科矯正用ワイヤーの使用方法]
[歯科矯正用ワイヤー]
まず、歯科矯正治療において用いる、一実施の形態による歯科矯正用ワイヤーについて説明する。
図1A〜Dにこの歯科矯正用ワイヤー11を示す。ここで、図1Aは平面図、図1Bは右側面図、図1Cは左側面図、図1Dは正面図である。
図1A〜Dに示すように、この歯科矯正用ワイヤー11は、一端から他端に向かって、ほぼ直線状の第一部分11a、ほぼ直線状の第二部分11b、中央のアーチ状の第三部分11c、ほぼ直線状の第四部分11dおよびほぼ直線状の第五部分11eを有し、長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状の金属ワイヤーからなる。この金属ワイヤーの横断面の長方形の短辺の長さはa、長辺の長さはb(b>a)である。図1Aに示す第一部分11aのE−E線に沿う横断面形状を図1Eに示す。第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適な歯科矯正用ワイヤー11においては、この金属ワイヤーは、a×b=(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の金属からなるワイヤーからなる。一方、第二小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適な歯科矯正用ワイヤー11においては、この金属ワイヤーは、a×b=(0.43±0.05mm)×(0.64±0.05mm)のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の金属からなるワイヤーからなる。ここで、第一部分11aおよび第五部分11eはほぼ第一平面内に位置し、第二部分11bおよび第四部分11dはほぼ第二平面内に位置し、第三部分11cはほぼ第三平面内に位置する。金属ワイヤーの横断面の長方形の長辺は、第一平面、第二平面および第三平面にほぼ平行である。この場合、第一部分11aおよび第五部分11eが位置する第一平面は、第二部分11bおよび第四部分11dが位置する第二平面に対して角度θ1 傾斜している。また、第三部分11cが位置する第三平面は、第二部分11bおよび第四部分11dが位置する第二平面に対して、第一部分11aおよび第五部分11eが位置する第一平面と同じ側に角度θ2 傾斜している。第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適な歯科矯正用ワイヤー11においては、θ1 およびθ2 は12°以上25°以下であり、典型的には15°以上22°以下、例えば20°である。典型的にはθ1 =θ2 であるが、これに限定されるものではない。一方、第二小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適な歯科矯正用ワイヤー11においては、θ1 は7°以上20°以下であり、典型的には10°以上17°以下、例えば15°である。典型的にはθ1 =θ2 であるが、これに限定されるものではない。必要に応じて、歯科矯正用ワイヤー11の左側半分のθ1 と右側半分のθ1 とを互いに異ならせてもよく、左側半分のθ2 と右側半分のθ2 とを互いに異ならせてもよい。第一部分11aは、歯科矯正治療を行う患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さL1 を有する。第二部分11bは、左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さL2 を有する。第三部分11cは、前歯の全体に張り渡すことができる長さL3 を有する。第四部分11dは、左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さL4 を有する。第五部分11eは、左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さL5 を有する。L1 〜L5 は、歯科矯正治療を行う患者に応じて適宜選択されるが、具体例を挙げると、第一部分11aの長さL1 および第五部分11eの長さL5 は例えば5mm以上18mm以下、第二部分11bの長さL2 および第四部分11eの長さL4 は例えば7mm以上20mm以下、第三部分11cの長さL3 は例えば40mm以上80mm以下である。第一部分11aと第二部分11bとの境界の折れ曲がり部はティップバックベンド部BTB、第二部分11bと第三部分11cとの境界の折れ曲がり部はトルクホールディングベンド部BTHである。同様に、第五部分11eと第四部分11dとの境界の折れ曲がり部はティップバックベンド部BTB、第四部分11dと第三部分11cとの境界の折れ曲がり部はトルクホールディングベンド部BTHである。
この歯科矯正用ワイヤー11を構成する長方形の横断面形状を有する金属ワイヤーは、最も好適には、歯科矯正用ワイヤー11が第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適なものである場合には、a×b=0.016”×0.022”(0.41mm×0.56mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤー、歯科矯正用ワイヤー11が第二小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適なものである場合には、a×b=0.017”×0.025”(0.43mm×0.64mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーが用いられるが、これに限定されるものではない。
[歯科矯正用ワイヤーの製造方法]
この歯科矯正用ワイヤー11の製造方法の第一例について説明する。
図2Aに示すように、歯科矯正用ワイヤー11と同じ長方形の横断面形状を有し、あらかじめアーチ状に湾曲した金属ワイヤー20を用意する。
次に、図2Bに示すように、この金属ワイヤー20を一端から長さL1 のA点でこの金属ワイヤー20の横断面の長方形の長辺に対して垂直方向に角度θ1 折り曲げ、第一部分11aを形成する。
次に、図2Cに示すように、この金属ワイヤー20をA点から長さL2 のB点で同様にして角度θ2 折り曲げ、第二部分11bを形成する。
次に、図2Dに示すように、同様にして、金属ワイヤー20を他端から長さL5 のC点で角度θ1 折り曲げ、第五部分11eを形成する。
次に、図2Eに示すように、この金属ワイヤー20をC点から長さL4 のD点で同様にして角度θ2 折り曲げ、第四部分11dを形成する。この金属ワイヤー20の第二部分11bと第四部分11dとの間の部分が第三部分11cとなる。
こうして、図2Fに示すように、目的とする歯科矯正用ワイヤー11が製造される。
この歯科矯正用ワイヤー11の製造方法の第二例について説明する。
図3Aに示すように、歯科矯正用ワイヤー11の全長に相当する長さを有し、歯科矯正用ワイヤー11と同じ長方形の横断面形状を有する直線状の金属ワイヤー20を用意する。
次に、図3Bに示すように、この金属ワイヤー20を一端から長さL1 のA点でこの金属ワイヤー20の横断面の長方形の長辺に対して垂直方向に角度θ1 折り曲げ、第一部分11aを形成する。
次に、図3Cに示すように、この金属ワイヤー20をA点から長さL2 のB点で同様にして角度θ2 折り曲げ、第二部分11bを形成する。
次に、図3Dに示すように、同様にして、この金属ワイヤー20を他端から長さL5 の点で角度θ1 折り曲げて第五部分11eを形成し、さらにその点から長さL4 の点で角度θ2 折り曲げて第四部分11dを形成する。この金属ワイヤー20の第二部分11bと第四部分11dとの間の部分が第三部分11cとなる。
次に、図3Eに示すように、こうして四箇所で折り曲げられた金属ワイヤー20の全体をアーチ状に湾曲させる。
以上により、目的とする歯科矯正用ワイヤー11が製造される。
この歯科矯正用ワイヤー11の製造方法の第三例について説明する。
この製造方法においては、直線状の金属ワイヤー20をアーチ状に湾曲させてから、図2A〜Eに示す製造方法と同様にしてA点、B点、C点およびD点の四箇所で折り曲げることにより歯科矯正用ワイヤー11を製造する。
この歯科矯正用ワイヤー11の製造方法の第四例について説明する。
この製造方法においては、アーチ状または直線状の金属ワイヤー20を用意し、この金属ワイヤー20を所定の金型を用いてプレス成形することによりA点、B点、C点およびD点の四箇所で一度に折り曲げて、歯科矯正用ワイヤー11を製造する。
[歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー]
歯科矯正用ワイヤー11を折り曲げ加工により製造する際に用いて好適な、一実施の形態による歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーについて説明する。
この歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー100の一側面図を図4に、互いに異なる二つの方向から見た斜視図を図5および図6に、顎部を閉じた状態の側面図を図7に、顎部を閉じた状態の正面図を図8に示す。
図4〜図8に示すように、この歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー100は、第一アーム101および第二アーム102を有する。第一アーム101および第二アーム102は、全体として緩やかな曲線からなるほぼS字状に湾曲した形状を有する。図4においては、第一アーム101および第二アーム102が開いた状態が示されている。第一アーム101および第二アーム102は、連結軸103によって、この連結軸103の周りに回転可能な状態で互いにX字状に連結されている。連結軸103は、第一アーム101の第二アーム102と対向する面に設けられた円柱状の凸部からなり、この凸部が第二アーム102の第一アーム101と対向する面に設けられた円柱状の穴に嵌合している。
第一アーム101は、前端に顎部104を有し、後端側に握り柄105を有する。握り柄105の外面は例えばチューブ状のプラスチック成形品からなるグリップ106で覆われている。同様に、第二アーム102は、前端に顎部107を有し、後端側に握り柄108を有する。握り柄108の外面は例えばプラスチック成形品からなるグリップ109で覆われている。第一アーム101および第二アーム102の材質は、ステンレス鋼製ワイヤーなどの金属ワイヤーの折り曲げ加工が可能な、十分に高い機械的強度を有する材料であれば特に限定されないが、例えば鉄鋼材料(炭素工具鋼、機械構造用炭素鋼など)である。
第一アーム101の顎部104の先端側には挟持部110が内側に向かって少し突出した状態で設けられている。同様に、第二アーム102の顎部107の先端側には挟持部111が内側に向かって少し突出した状態で設けられている。図9Aは第一アーム101の顎部104の挟持部110の横断面図(図4のA−A線に沿っての拡大断面図)、図9Bは第二アーム102の顎部107の挟持部111の横断面図(図4のB−B線に沿っての拡大断面図)、図9Cは顎部104および顎部107が閉じた状態の挟持部110および挟持部111を示す断面図である。図4〜図8および図9Aに示すように、第一アーム101の顎部104の挟持部110の、第二アーム102の顎部107の挟持部111と対向する面に、第一アーム101に沿う方向に延在して三角柱状の凸部112(図5参照)が設けられている。また、図4〜図8および図9Bに示すように、第二アーム102の顎部107の挟持部111の、第一アーム101の顎部104の挟持部110と対向する面に、第二アーム102に沿う方向に延在する三角柱状の凹部113(図6参照)が設けられている。図9Aに示すように、第一アーム101の顎部104の挟持部110の凸部112の長手方向に垂直な断面における三角形の頂角φ1 は155°以上173°以下であり、この範囲から製造する歯科矯正用ワイヤー11のθ1 、θ2 に応じて決められる。同様に、図9Bに示すように、第二アーム102の顎部107の挟持部111の凹部113の長手方向に垂直な断面における三角形の頂角φ2 は155°以上173°以下であり、典型的には、第一アーム101の顎部104の挟持部110の凸部112の長手方向に垂直な断面における三角形の頂角φ1 と同じに選ばれる。第一アーム101と第二アーム102とを連結軸103の周りに回転させて第一アーム101の顎部104と第二アーム102の顎部107とを閉じたとき、第一アーム101の顎部104の挟持部110の凸部112と第二アーム102の顎部107の挟持部111の凹部113とが互いにはまり合うように構成されている。図9Cに第一アーム101の顎部104の挟持部110の凸部112と第二アーム102の顎部107の挟持部111の凹部113とが互いにはまり合った状態を示す。
[歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤーの使用方法]
上記の歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー100の使用方法について説明する。ここでは、アーチ状の金属ワイヤーを用いて歯科矯正用ワイヤーを製造する場合を考えるが、直線状の金属ワイヤーを用いた場合も同様である。
図10および図11に示すように、歯科矯正用ワイヤー11を製造する者が、アーチ状の金属ワイヤー20を一方の手(図示せず)で持ち、もう一方の手(図示せず)で歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー100の第一アーム101の握り柄106と第二アーム102の握り柄109とを持つ。次に、第一アーム101の顎部104と第二アーム102の顎部107とを少し開いた状態で、顎部104の挟持部110の凸部112と顎部107の挟持部111の凹部113との間に金属ワイヤー20を通す。金属ワイヤー20を通す方向は、第一アーム101と第二アーム102とにより形成される平面と直交し、かつ、凸部112および凹部113の延在方向と直交する方向である。次に、第一アーム101の握り柄106と第二アーム102の握り柄109とを握って顎部104と顎部107とを閉じ、凸部112と凹部113との間に金属ワイヤー20を挟む。この状態を図12Aに示す。次に、第一アーム101の握り柄106と第二アーム102の握り柄109とをより強く握って顎部104と顎部107とをより閉じると、図12Bに示すように、凹部113の両端で支持された金属ワイヤー20の中央部が凸部112の先端部で押されることにより金属ワイヤー20が折れ曲がり始める。第一アーム101と第二アーム102とをさらに強く握って顎部104と顎部107とを限界まで閉じ、金属ワイヤー20を凸部112の斜面と凹部113の斜面との間に完全に挟まれた状態で接触させる。この状態を一定時間継続した後、第一アーム101の握り柄106と第二アーム102の握り柄109との間を広げて顎部104と顎部107とを開き、折り曲げ加工が終わった金属ワイヤー20を取り出す。この後、金属ワイヤー20の長手方向の位置をずらして上述と同様な折り曲げ加工を行い、図1A〜Eに示すように、目的とする歯科矯正用ワイヤー11を製造する。
[歯科矯正用ワイヤー11の使用方法]
歯科矯正治療における歯科矯正用ワイヤー11の使用方法について説明する。歯科矯正用ワイヤー11の使用に際しては、事前に、抜歯を行うか否か、どの歯を抜歯するかについて判断し、必要な抜歯を行う。また、歯科矯正治療を行う上顎歯および/または下顎歯のレベリングやアライメント、歯列弓形態の修正、捻転歯のある程度の修正(約80%)などを行う。
こうして、上顎歯および/または下顎歯が、歯科矯正用ワイヤー11を使用した歯科矯正治療を開始するのに適切な状態となったら、歯科矯正用ワイヤー11を使用した歯科矯正治療を行う。この状態では通常、各歯の歯冠部はある程度整列した状態にあるものの、歯軸の方向はばらばらである。
図13Aは上顎歯を口腔内から上側に見た図、図13Bは下顎歯を口腔内から下側に見た図である。図13AおよびBにおいて、符号1Lおよび1Rはそれぞれ左側および右側の中切歯、2Lおよび2Rはそれぞれ左側および右側の側切歯、3Lおよび3Rはそれぞれ左側および右側の犬歯、4Lおよび4Rはそれぞれ左側および右側の第一小臼歯、5Lおよび5Rはそれぞれ左側および右側の第二小臼歯、6Lおよび6Rはそれぞれ左側および右側の第一大臼歯、7Lおよび7Rはそれぞれ左側および右側の第二大臼歯、8Lおよび8Rはそれぞれ左側および右側の第三大臼歯を示す。ただし、図13AおよびBでは、各歯がほぼ理想的に配列している場合が図示されている。
図13Aに示すように、上顎の中切歯1Lおよび1R、側切歯2Lおよび2R、犬歯3Lおよび3R、第一小臼歯4Lおよび4Rならびに第二小臼歯5Lおよび5Rの歯冠部の前面のほぼ中央部に歯科用接着剤を用いてブラケット201をそれぞれ接着し、第一大臼歯6Lおよび6Rの歯冠部の前面のほぼ中央部にはボンダブルチューブ202を同様に接着する。ただし、実際には、第一小臼歯4Lおよび4Rまたは第二小臼歯5Lおよび5Rが抜歯される。そして、歯科矯正用ワイヤー11の第二部分11bおよび第四部分11dに対して第一部分11a、第三部分11cおよび第五部分11eを上にし、第一部分11a、第三部分11cおよび第五部分11eを第二部分11bおよび第四部分11dに対して下側に曲げ、水平に近くなった状態で、これらのブラケット201のスロット内に歯科矯正用ワイヤー11の第二部分11b、第三部分11cおよび第四部分11dを通し、歯科矯正用ワイヤー11の第一部分11aおよび第五部分11eをボンダブルチューブ202に通し、ボンダブルチューブ202から後方に出た第一部分11aおよび第五部分11eの先端部を折り曲げて第一部分11aおよび第五部分11eをボンダブルチューブ202に固定する。これによって、第一部分11aが左側の第一大臼歯6Lの歯冠部の前面に装着され、第二部分11bが左側の第一小臼歯4Lおよび第二小臼歯5L(実際には、第一小臼歯4Lおよび第二小臼歯5Lのうちの一方)の歯冠部の前面に装着され、第三部分11cが左側および右側の中切歯1Lおよび1R、側切歯2Lおよび2Rならびに犬歯3Lおよび3Rの歯冠部の前面に装着され、第四部分11dが右側の第一小臼歯4Rおよび第二小臼歯5R(実際には、第一小臼歯4Rおよび第二小臼歯5Rのうちの一方)の歯冠部の前面に装着され、第五部分11eが右側の第一大臼歯6Rの歯冠部の前面に装着される。この後、適正矯正力を考慮して適正な水平方向の矯正力が働くように選択されたパワーチェーン(図示せず)の一端を、第一大臼歯6Lおよび6Rの一方に装着したボンダブルチューブ202のフック(図15F参照)に引っ掛けて固定し、パワーチェーンを引き伸ばしながら上顎前歯などに装着した各ブラケット201に引っ掛け、第一大臼歯6Lおよび6Rの他方に装着したボンダブルチューブ202のフックにパワーチェーンの他端を引っ掛けて固定する。図13Bに示すように、下顎歯にも同様にして歯科矯正用ワイヤー11を取り付け、パワーチェーンを引っ掛ける。適正な水平方向の矯正力は、具体的には、例えば、0.41mm×0.56mm(0.016”×0.022”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーを用い、前歯を後方に移動させる(後方に下げる)場合には、一般的には100〜200g重の力、0.43mm×0.64mm(0.017”×0.025”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーを用い、第一大臼歯6Lおよび6Rを近心に移動させる場合には、一般的には300〜400g重の力である。
図14は上顎歯および下顎歯に歯科矯正用ワイヤー11が取り付けられた状態を示す斜視図である。ただし、図14においては、上顎歯および下顎歯とも、歯肉で覆われておらず外部に露出している部分のみ示されている。
ブラケット201のトルク角、アンギュレーション(angulation) 角、オフセット角およびスパン(左側および右側のウィングの外側の側面間の距離)は各歯ごとに決められる。ブラケット201の一例として、上顎右側中切歯用、上顎右側側切歯用、上顎右側犬歯用、上顎右側第一小臼歯用および上顎右側第二小臼歯用のブラケット201をそれぞれ図15A〜Eに示す。また、第一大臼歯6Lおよび6R用のボンダブルチューブ202の一例を図15Fに示す。一例として、株式会社トミーインターナショナル製の「マイクロアーチ フォーミュラーR(ロスタイプ)上顎」を用いる場合について説明すると、次の通りである。図15Aに示す上顎中切歯用のブラケット201のトルク角は12°、アンギュレーション角は5°、オフセット角は0°、スパンは3.4mm、図15Bに示す上顎側切歯用のブラケット201のトルク角は8°、アンギュレーション角は9°、オフセット角は0°、スパンは2.6mm、図15Cに示す上顎犬歯用のブラケット201のトルク角は−2°、アンギュレーション角は10°、オフセット角は4°、スパンは2.6mm、図15DおよびEに示す上顎右側第一小臼歯用および上顎右側第二小臼歯用のブラケット201のトルク角は−7°、アンギュレーション角は0°、オフセット角は2°、スパンは2.6mmである。図15A〜Eにおいて、符号201aはブラケット201のスロットを示す。スロット201aの断面形状は一般的にはほぼ長方形である。ボンダブルチューブ202のトルク角は−14°、アンギュレーション角は0°、オフセット角は14°、スパンは4.0mmである。
歯科矯正用ワイヤー11の使用により、組織にダメージをほとんど与えることなく三次元的な歯体移動が可能となることは、本発明者が長年にわたって歯科矯正治療を行った結果により実証済みである。歯科矯正用ワイヤー11の使用により三次元的な歯体移動が可能となるメカニズムは現時点では未だ理論的に完全に解明されていないが、以下においては、このメカニズムの理論的説明を試みる。
既に述べたように、歯科矯正用ワイヤー11は、図1A〜Dに示すように、第一部分11aと第二部分11bとの境界にティップバックベンド部BTB、第二部分11bと第三部分11cとの境界にトルクホールディングベンド部BTH、第五部分11eと第四部分11dとの境界にティップバックベンド部BTB、第四部分11dと第三部分11cとの境界にトルクホールディングベンド部BTHを有する。このため、歯科矯正用ワイヤー11は、各ブラケット201のスロット201aおよびボンダブルチューブ202に通されたとき、第三部分11cは、トルクホールディングベンド部BTHを中心として、第二部分11bおよび第四部分11dに対して、上顎歯用の歯科矯正用ワイヤー11にあっては図16に示すように下側に折れ曲がり、下顎歯用の歯科矯正用ワイヤー11にあっては図17に示すように上側に折れ曲がる。また、第一部分11aおよび第五部分11eは、ティップバックベンド部BTBを中心として、第二部分11bおよび第四部分11dに対して、上顎歯用の歯科矯正用ワイヤー11にあっては図16に示すように下側に折れ曲がり、下顎歯用の歯科矯正用ワイヤー11にあっては図17に示すように上側に折れ曲がる。この結果、第一部分11aおよび第五部分11eと第三部分11cとは互いにほぼ同一平面内に位置するようになる。一方、第二部分11bおよび第四部分11dは、第三部分11cがトルクホールディングベンド部BTHを中心として第二部分11bおよび第四部分11dに対して折れ曲がっている結果、上顎歯用の歯科矯正用ワイヤー11にあっては図16に示すように上側に山形状に湾曲し、下顎歯用の歯科矯正用ワイヤー11にあっては図17に示すように下側に山形状に湾曲する。第二部分11bおよび第四部分11dの湾曲を無視すると、歯科矯正用ワイヤー11は全体としてほぼ同一平面内に位置する。このとき、歯科矯正用ワイヤー11の弾性により、上顎歯用の歯科矯正用ワイヤー11にあっては第三部分11cに対して一点鎖線で示す元の位置に復元するような力が図16中矢印で示すように第三平面に対して垂直上向きに働き、下顎歯用の歯科矯正用ワイヤー11にあっては第三部分11cに対して一点鎖線で示す元の位置に復元するような力が図17中矢印で示すように第三平面に対して垂直下向きに働き、いずれの場合も結果として前歯を唇舌側に傾斜させる回転方向のトルクが加わる。この力がほぼ鉛直方向の矯正力となる。この力はトルクホールディングベンド部BTHに近い程大きく、中切歯、側切歯、犬歯の順に大きくなり、その様子を図16および図17中の垂直方向の矢印の長さで示す。一例を挙げると、歯科矯正用ワイヤー11として、0.41mm×0.56mm(0.016”×0.022”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーを用いた場合、上顎中切歯および下顎中切歯には100±30g重の力が加わり、上顎側切歯および下顎側切歯には200±50g重の力が加わり、上顎犬歯および下顎犬歯には250±50g重の力が加わる。一方、各ブラケットおよびボンダブルチューブには既に述べたようにパワーチェーンが引っ掛けられていることにより、歯科矯正用ワイヤー11には、ほぼ水平方向の矯正力が舌側に働く。
図18Aは、上顎左側および右側中切歯1Lおよび1R、上顎左側および右側側切歯2Lおよび2R、上顎左側および右側犬歯3Lおよび3Rならびに上顎左側および右側第一小臼歯4Lおよび4Rにそれぞれ装着されたブラケット201のスロット201aに歯科矯正用ワイヤー11が通された状態の一例を示し、歯列弓を前頭面に平行な平面に展開して歯科矯正用ワイヤー11がその平面内に位置するようにした図である。なお、図18A中、符号201b、201cはブラケット201のそれぞれ近心側および遠心側のウィングを示す。また、図18B〜Iは、それぞれ上顎右側第一小臼歯4R、上顎右側犬歯3R、上顎右側側切歯2R、上顎右側中切歯1R、上顎左側中切歯1L、上顎左側側切歯2L、上顎左側犬歯3Lおよび上顎左側第一小臼歯4Lにそれぞれ装着されたブラケット201のスロット201a内の歯科矯正用ワイヤー11の拡大した横断面図であり、各図の左側が前側である。ここで重要なことは、歯科矯正用ワイヤー11は、第一小臼歯4Lおよび4Rの部分では、横断面の長方形の長辺がほぼ水平方向であるのに対し、上顎左側および右側中切歯1Lおよび1R、上顎左側および右側側切歯2Lおよび2Rならびに上顎左側および右側犬歯3Lおよび3Rの部分では、歯科矯正用ワイヤー11の中心軸の周りに回転して捩じれており、横断面の長方形の長辺、従って歯科矯正用ワイヤー11の上面が水平方向に対して内側が低くなるように傾斜していることである。図19にこの状態の歯科矯正用ワイヤー11の上顎第一小臼歯4Rから上顎右側犬歯3Rにかけての部分を拡大して示す。また、この状態の歯科矯正用ワイヤー11の平面図を図20に示す。
歯科矯正用ワイヤー11を取り付けてから一定期間は、上顎左側および右側中切歯1Lおよび1R、上顎左側および右側側切歯2Lおよび2Rならびに上顎左側および右側犬歯3Lおよび3Rに装着されたブラケット201のスロット201a内の歯科矯正用ワイヤー11は通常、スロット201aの底面あるいは側面に面接触している。歯科矯正用ワイヤー11を取り付けてからある時間経過すると、歯科矯正用ワイヤー11にトルクホールディングベンド部BTHが設けられていることにより第三平面に垂直方向に継続的に力が働き、さらにパワーチェーンにより水平方向の矯正力が働き、それによって上顎左側および右側中切歯1Lおよび1R、上顎左側および右側側切歯2Lおよび2Rならびに上顎左側および右側犬歯3Lおよび3Rが移動する結果、歯科矯正用ワイヤー11は、ブラケット201のスロット201aの底面および両側面に点接触または線接触するようになり、以後はこの状態に固定される。すなわち、歯科矯正用ワイヤー11は、言わば、ブラケット201のスロット201aの底面および両側面に点接触または線接触した状態にロックされる。この状態を図21〜図23に示す。すなわち、図21は上顎右側中切歯1Rに装着されたブラケット201のスロット201aに歯科矯正用ワイヤー11が通された状態を示す断面図である。図22は上顎右側側切歯2Rに装着されたブラケット201のスロット201aに歯科矯正用ワイヤー11が通された状態を示す断面図である。図23は上顎右側犬歯3Rに装着されたブラケット201のスロット201aに歯科矯正用ワイヤー11が通された状態を示す断面図である。ブラケット201のスロット201aの断面形状および寸法は、使用する歯科矯正用ワイヤー11に応じて適宜決められる。例えば、第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に歯科矯正用ワイヤー11として0.41mm×0.56mm(0.016”×0.022”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーを用いる場合、スロット201aは0.56mm(幅)×0.71mm(深さ)(0.022”×0.028”)の長方形の断面形状を有する。第二小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に歯科矯正用ワイヤー11として0.43mm×0.64mm(0.017”×0.025”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーを用いる場合も同様なスロット201aを有するブラケット201が用いられる。図21〜図23に示すように、歯科矯正用ワイヤー11は長方形の断面形状のスロット201aに対して角度Θ回転した状態で収容されており、歯科矯正用ワイヤー11の一つの陵E1 がスロット201aの底面と点接触または線接触し、この陵E1 の両側の二つの陵E2 、E3 がスロット201aの両側面と点接触または線接触している。Θは典型的にはθ2 とほぼ等しく、例えば、θ2 が20°であればΘもほぼ20°である。図21〜図23において、例えばF1 とF2 とが同程度の大きさである場合には、F1 とF2 との合力Fが水平方向となす角は概ね例えば45°前後の角度になる。以上のことは、上顎左側中切歯1L、上顎左側側切歯2Lおよび上顎左側犬歯3Lについても同様である。一方、図24は第一小臼歯4Rに装着されたブラケット201のスロット201aに歯科矯正用ワイヤー11が通された状態を示す断面図である。図24に示すように、歯科矯正用ワイヤー11は、ほぼ水平な状態でスロット201a内に収容されており、いずれかの部分がスロット201aの側面または底面に接触している。この場合、歯科矯正用ワイヤー11はスロット201a内で遊びを持っており、ロックされていない。以上のことは、上顎左側第一小臼歯についても同様であり、上顎左側および右側第二小臼歯についても同様であり、さらには、下顎左側および右側第一小臼歯および第二小臼歯についても同様である。
図21〜図23に示すように、歯科矯正用ワイヤー11の一つの陵E1 がスロット201aの底面と点接触または線接触し、この陵E1 の両側の二つの陵E2 、E3 がスロット201aの両側面と点接触または線接触した状態にロックされた後は、上顎右側中切歯1R、上顎右側側切歯2Rおよび上顎右側犬歯3Rに装着された各ブラケット201には、歯科矯正用ワイヤー11によりほぼ水平方向の矯正力F1 および第三平面に垂直でほぼ鉛直方向の矯正力F2 が働き、その結果、F1 とF2 との合力Fが各ブラケット201、ひいてはこのブラケット201が装着された歯の歯冠部に加わる。図13AおよびBに示すように、ほぼ水平方向の矯正力F1 は、最終的に設定される、歯列弓が湾曲していることを反映した仮設的な点P(例えば、歯列弓が位置する水平面内かつ正中面内の一点)を向いている。ただし、点Pは、厳密な点を意味するものではなく、一定の広がりを持った領域、例えば直径1〜10mm程度の円状の領域を意味する。そして、上顎右側中切歯1R、上顎右側側切歯2Rおよび上顎右側犬歯3Rに合力Fが加わる結果、最終的にこれらの歯の歯根の中心軸(あるいは歯軸)の延長線の交点として設定される仮設的な点(ここでは集合点(gathering point)GPと呼ぶものとする)に向かってこれらの歯の歯根が整列するようにこれらの歯が三次元的に歯体移動する。ただし、集合点GPは、厳密な点を意味するものではなく、一定の広がりを持った領域、例えば直径1〜10mm程度の球状の領域を意味する。上述のように歯科矯正用ワイヤー11がスロット201aに対して点接触または線接触しているため、この歯体移動の際には、歯科矯正用ワイヤー11とスロット201aとの間の摩擦力を大幅に低減することができ、それによって歯科矯正用ワイヤー11はスロット201a内でスムーズに移動することができる。この結果、水平方向の矯正力が小さくて済むだけでなく、より速くスムーズで安全な歯の移動が可能になる。以上のことは、上顎左側中切歯1L、上顎左側側切歯2Lおよび上顎左側犬歯3Lについても同様であり、さらには、下顎左側および右側中切歯、下顎左側および右側側切歯および下顎左側および右側犬歯についても同様である。以上により、前歯について三次元的な歯体移動が可能であり、最終的に各歯の歯根を集合点GPに向かって放射状に整列させることができる。
このようにして三次元的な歯体移動が起きる様子を図25に示す。図25において、符号301は歯槽骨、302は歯根膜、303は歯を示す。上述のように、ブラケットにより歯303にほぼ水平方向の矯正力F1 とほぼ鉛直方向の矯正力F2 とが働き、その合力であるFが歯303に加わる結果、歯303は一点鎖線で示すように三次元的に歯体移動する。この際、ジグリングを行わないので、歯303の歯根吸収を有効に防止することができる。
一方、図24に示すように、第一小臼歯4Rに装着されたブラケット201には、歯科矯正用ワイヤー11がほぼ水平な状態でスロット201a内に収容されていることによりほぼ水平方向の矯正力F1 が働く。これに加えて、第一小臼歯4Rに装着されたブラケット201には、図16に示すように歯科矯正用ワイヤー11の第二部分11bおよび第四部分11dが上側に山形状に湾曲していることにより、ほぼ上向きの力(F3 とする)が働く。この結果、第一小臼歯4Rに装着されたブラケット201、ひいては第一小臼歯4Rの歯冠部には、F1 とF3 との合力が加わる。この合力が加わる結果、最終的に、第一小臼歯4Rは、その歯根の中心軸の延長線が集合点GPに向かうように歯体移動を行う。以上のことは、上顎左側第一小臼歯についても同様であり、上顎左側および右側第二小臼歯についても同様であり、さらには、下顎左側および右側第一小臼歯および第二小臼歯についても同様である。
上顎歯の歯科矯正治療を行う場合を例にとって、歯科矯正用ワイヤー11を用いた歯科矯正治療を行う方法をより具体的に説明する。下顎歯の歯科矯正治療を行う場合も同様である。
(1)第一小臼歯を抜歯して歯科矯正治療を行う場合
この場合、図26Aに示すように、0.41mm×0.56mm(0.016”×0.022”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーからなり、θ1 =θ2 =20°の歯科矯正用ワイヤー11を用いる。このとき、第四部分11dの長さL4 は、右側の第二小臼歯5Rと第一大臼歯6Rとの境界部と、犬歯3Rの歯冠部の前面に取り付けられたブラケット201の遠心側の端面から3〜5mm遠心した位置との間の距離にほぼ等しく選ばれる。同様に、第二部分11bの長さL2 は、左側の第二小臼歯5Lと第一大臼歯6Lとの境界部と、左側の犬歯3Lの歯冠部の前面に取り付けられたブラケット201の遠心側の端面から3〜5mm遠心した位置との間の距離にほぼ等しく選ばれる。
まず、患者の上顎前歯および小臼歯の各歯の歯冠部の前面にブラケット201をそれぞれ接着し、第一大臼歯6Rの歯冠部の前面にはボンダブルチューブ202を接着し、既に述べた方法でこれらのブラケット201およびボンダブルチューブ202に歯科矯正用ワイヤー11を装着する。こうして、歯科矯正用ワイヤー11をこれらのブラケット201およびボンダブルチューブ202を用いて上顎歯に固定する。この後、既に述べたように、これらのブラケット201およびボンダブルチューブ202にパワーチェーン(図示せず)を引っ掛ける。図26Bは歯科矯正用ワイヤー11が装着された歯列弓を右側から見た様子を示す。この際、第一部分11aと第二部分11bとの境界のティップバックベンド部BTBは左側の第二小臼歯5Lと第一大臼歯6Lとの境界部に、第二部分11bと第三部分11cとの境界のトルクホールディングベンド部BTHは左側の犬歯3Lの歯冠部の前面に取り付けられたブラケット201の遠心側の端面から3〜5mm遠心した位置に、第五部分11eと第四部分11dとの境界のティップバックベンド部TBは右側の第二小臼歯5Rと第一大臼歯6Rとの境界部に、第四部分11bと第三部分11cとの境界のトルクホールディングベンド部BTHは右側の犬歯3Rの歯冠部の前面に取り付けられたブラケット201の遠心側の端面から3〜5mm遠心した位置にそれぞれ来るようにする。
上述のようにして患者の上顎歯に歯科矯正用ワイヤー11を装着すると、最終的に、前歯がそれらの歯根の中心軸の延長線が集合点GPに向かうように三次元的に歯体移動し、第二小臼歯5Lおよび5Rも同様にそれらの歯根の中心軸の延長線が集合点GPに向かうように歯体移動する。そして、こうして前歯ならびに第二小臼歯5Lおよび5Rが歯体移動を行う過程で、第一小臼歯の抜歯により形成されたスペースが閉じられる(あるいは埋められる)。この際、図26Bに示すように、歯科矯正用ワイヤー11の第二部分11bおよび第四部分11dは上側に山形状に湾曲しているが、第二小臼歯5Lおよび5Rの歯冠部の前面に取り付けられたブラケット201のスロット201a内に歯科矯正用ワイヤー11が収容されたとき、歯科矯正用ワイヤー11の上側への湾曲がスロット201aにより制限されるため、歯科矯正用ワイヤー11は、近心側のウィング201bのスロット201aの上側の側面と遠心側のウィング201cのスロット201aの下側の側面とに接触した状態となる。この結果、第二小臼歯5Lおよび5Rには、鉛直方向に対して後方に少し傾斜した方向の上向きの力F3 が加わる。この場合、第一大臼歯6Lおよび6Rのティップバックは、第二小臼歯5Lおよび5Rを支点として、歯科矯正用ワイヤー11の第一部分11aおよび第五部分11eにより第一大臼歯6Lおよび6Rに力が加わることにより行われるが、この際、支点となる第二小臼歯5Lおよび5Rには上述のように上向きの力F3 が加わるため、第二小臼歯5Lおよび5Rが挺出するのを防止することができる。加えて、歯科矯正用ワイヤー11の第二部分11bおよび第四部分11dはブラケット201のスロット201a内で遊びを持っていてロックされていないため、第二小臼歯5Lおよび5Rと下顎の第二小臼歯5Lおよび5Rとの咬合関係が損なわれるのを防止することができる。以上のようにして、歯科矯正が行われる。
(2)第二小臼歯を抜歯して歯科矯正治療を行う場合
この場合、図27Aに示すように、0.43mm×0.64mm(0.017”×0.025”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーからなり、θ1 =θ2 =15°の歯科矯正用ワイヤー11を用いる。このとき、第四部分11dの長さL4 は、右側の犬歯3Rと第一小臼歯4Rとの境界部と、右側の第一大臼歯6Rの近心側の側面との間の距離にほぼ等しく選ばれる。同様に、第二部分11bの長さL2 は、左側の犬歯3Lと第一小臼歯4Lとの境界部と、左側の第一大臼歯6Lの近心側の側面との間の距離にほぼ等しく選ばれる。第一大臼歯6Rの近心側の側面とこの第一大臼歯6Rの歯冠部の前面に取り付けられたボンダブルチューブ202の近心側の端面との間の距離は3〜5mmである。同様に、第一大臼歯6Lの近心側の側面とこの第一大臼歯6Lの歯冠部の前面に取り付けられたボンダブルチューブ202の近心側の端面との間の距離は3〜5mmである。
次に、歯科矯正用ワイヤー11をブラケット201およびボンダブルチューブ202を用いて上顎歯に固定する。この後、既に述べたように、これらのブラケット201およびボンダブルチューブ202にパワーチェーン(図示せず)を引っ掛ける。図27Bは歯科矯正用ワイヤー11が装着された歯列弓を右側から見た様子を示す。この際、第一部分11aと第二部分11bとの境界のティップバックベンド部BTBは左側の第一大臼歯6Lの近心側の側面に、第二部分11bと第三部分11cとの境界のトルクホールディングベンド部BTHは左側の犬歯3Lと第一小臼歯4Lとの境界部に、第五部分11eと第四部分11dとの境界のティップバックベンド部B2 は右側の第一大臼歯6Rの近心側の側面に、第四部分11bと第三部分11cとの境界のトルクホールディングベンド部BTHは右側の犬歯3Rと第一小臼歯4Rとの境界部にそれぞれ来るようにする。
上述のようにして患者の上顎歯に歯科矯正用ワイヤー11を装着すると、最終的に、前歯がそれらの歯根の中心軸の延長線が集合点GPに向かうように三次元的に歯体移動し、第一小臼歯4Lおよび4Rも同様にそれらの歯根の中心軸の延長線が集合点GPに向かうように歯体移動する。加えて、後述のように、第一大臼歯6Lおよび6Rは近心に移動する。そして、こうして前歯ならびに第二小臼歯5Lおよび5Rが歯体移動を行うとともに、第一大臼歯6Lおよび6Rが近心に移動する過程で、第二小臼歯の抜歯により形成されたスペースが閉じられる(あるいは埋められる)。この際、図27Bに示すように、歯科矯正用ワイヤー11の第二部分11bおよび第四部分11dは上側に山形状に湾曲しているが、第一小臼歯4Lおよび4Rの歯冠部の前面に取り付けられたブラケット201のスロット201a内に歯科矯正用ワイヤー11が収容されたとき、歯科矯正用ワイヤー11の上側への湾曲がスロット201aにより制限されるため、歯科矯正用ワイヤー11は、遠心側のウィング201cのスロット201aの上側の側面と近心側のウィング201bのスロット201aの下側の側面とに接触した状態となる。この結果、第一小臼歯4Lおよび4Rには、鉛直方向に対して前方に少し傾斜した方向の上向きの力F3 が加わる。この鉛直方向に対して前方に少し傾斜した方向の力F3 が加わることにより、この第一小臼歯4Lおよび4Rが固定源となって第一大臼歯6Lおよび6Rを近心に移動させる。一方、この場合、第一大臼歯6Lおよび6Rのティップバックは、第一小臼歯4Lおよび4Rを支点として、歯科矯正用ワイヤー11の第一部分11aおよび第五部分11eにより第一大臼歯6Lおよび6Rに力が加わることにより行われるが、この際、支点となる第一小臼歯4Lおよび4Rには既に述べたように上向きの力が加わるため、第一小臼歯4Lおよび4Rが挺出するのを防止することができる。加えて、歯科矯正用ワイヤー11の第二部分11bおよび第四部分11dはブラケット201のスロット201a内で遊びを持っていてロックされていないため、第一小臼歯4Lおよび4Rと下顎の第一小臼歯4Lおよび4Rとの咬合関係が損なわれるのを防止することができる。以上のようにして、歯科矯正が行われる。
歯科矯正用ワイヤー11を使用して実際に歯科矯正治療を行った具体例について説明する。
図28A〜Cは、歯科矯正治療を行う前の患者の初診時の上下顎歯を正面、右側および左側から撮影した写真である。図28A〜Cに示すように、この状態では、上顎前突で上顎歯列が前方にかなり突出しているだけでなく、歯並びが悪い。
図29A〜Cは、歯科矯正用ワイヤー11の使用を開始する前に、上顎歯および下顎歯のレベリングやアライメント、歯列弓形態の修正、捻転歯のある程度の修正(約80%)などを行うために、上下顎歯の左側および右側第一小臼歯の抜歯を行った上で、従来より歯科矯正治療の初期に一般的に用いられている形状記憶合金(NiTi)製超弾性歯科矯正用ワイヤーを上顎歯および下顎歯に取り付けた状態を示す。ただし、図29A〜Cは上下顎歯を正面、右側および左側から撮影した写真である。
図30A〜Cは、超弾性歯科矯正用ワイヤーを上顎歯および下顎歯に取り付けてから約1カ月と1週間経過後の患者の上下顎歯を正面、右側および左側から撮影した写真である。図30A〜Cに示すように、この状態では、下顎歯はまだ歯並びが悪いが、上顎歯は歯並びがかなり良くなっていて、歯科矯正用ワイヤー11の使用を開始することができる状態となった。そこで、図30A〜Cに示すように、下顎歯には超弾性歯科矯正用ワイヤーを取り付けたままの状態で、既に述べたようにして、歯科矯正用ワイヤー11を上顎歯に取り付けた。この時点では、左側および右側の犬歯3Lおよび3Rがアングルの不正咬合第II級の状態にあることから、これらの犬歯3Lおよび3Rをアングルの不正咬合第I級の状態に移動させるために、パワーチェーンは、左側の犬歯3Lに装着されたブラケット201と左側の第一大臼歯6Lに装着にされたボンダブルチューブ202との間および右側の犬歯3Rに装着されたブラケット201と左側の第一大臼歯6Rに装着にされたボンダブルチューブ202との間に引っ掛けた。ブラケット201およびボンダブルチューブ202としては、株式会社トミーインターナショナル製の「マイクロアーチ フォーミュラーR(ロスタイプ)上顎」を使用した。ブラケット201のスロット201aは0.56mm×0.71mm(0.022”×0.028”)の長方形の断面形状を有する。使用した歯科矯正用ワイヤー11の写真を図31Aに示す。この歯科矯正用ワイヤー11は、0.41mm×0.56mm(0.016”×0.022”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーであり、θ1 =θ2 =20°である。また、パワーチェーンとしては、デンツサプライ三金株式会社製の「プロチェーン(歯科矯正用エラストメトリックチェーン)品番505−0036 ミディアムフォース Mスペース」を用いた。使用したパワーチェーンの写真を図31Bに示す。このパワーチェーンは熱硬化性ポリウレタンを使用したもので、引き伸ばされていない初期の状態では、内径約1.2mm、外径約3mmのリングがピッチ約3.7mmで数珠繋ぎとなった厚さ約0.5mmのものである。
図32A〜Cは、歯科矯正用ワイヤー11を上顎歯に取り付けてから約2ヶ月と2週間経過後の患者の上下顎歯を正面、右側および左側から撮影した写真である。図32A〜Cに示すように、上顎歯の左側および右側の犬歯3Lおよび3Rがアングルの不正咬合第I級の状態に移動している。また、図32A〜Cに示すように、下顎歯の歯並びもかなり良くなっていて、歯科矯正用ワイヤー11の使用を開始することができる状態となった。そこで、図32A〜Cに示すように、歯科矯正用ワイヤー11を下顎歯に取り付けた。この時点では、左側および右側の犬歯3Lおよび3Rがアングルの不正咬合第II級の状態にあることから、これらの犬歯3Lおよび3Rをアングルの不正咬合第I級の状態に移動させるために、パワーチェーンは、左側の犬歯3Lに装着されたブラケット201と左側の第一大臼歯6Lに装着にされたボンダブルチューブ202との間および右側の犬歯3Rに装着されたブラケット201と左側の第一大臼歯6Rに装着にされたボンダブルチューブ202との間に引っ掛けた。ブラケット201およびボンダブルチューブ202としては、株式会社トミーインターナショナル製の「マイクロアーチ フォーミュラーR(ロスタイプ)下顎」を使用した。ブラケット201のスロット201aは0.56mm×0.71mm(0.022”×0.028”)の長方形の断面形状を有する。使用した歯科矯正用ワイヤー11は図31に示す通りである。この歯科矯正用ワイヤー11は、0.41mm×0.56mm(0.016”×0.022”)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーであり、θ1 =θ2 =20°である。パワーチェーンとしては、既に述べたものを用いた。
図33A〜Cは、歯科矯正用ワイヤー11を下顎歯にも取り付けてから約6ヶ月経過後の患者の上下顎歯を正面、右側および左側から撮影した写真である。図33A〜Cに示すように、下顎歯の左側および右側の犬歯3Lおよび3Rがアングルの不正咬合第I級の状態に移動している。また、図33A〜Cに示すように、上顎前歯も下顎前歯も歯体移動により整列し始めており、左側および右側第一小臼歯の抜歯により形成されたスペースがかなり閉じられていることが分かる。この時点でパワーチェーンの取り付け方を変更し、パワーチェーンを、上顎歯、下顎歯とも、前歯および第二小臼歯にそれぞれ装着されたブラケット201に引っ掛け、両端を第一大臼歯に装着にされたボンダブルチューブ202に固定した。
図34A〜Cは、歯科矯正用ワイヤー11を上顎歯および下顎歯に取り付けてからさらに約5ヶ月と2週間経過後の患者の上下顎歯を正面、右側および左側から撮影した写真である。図34A〜Cに示すように、上顎前歯も下顎前歯もさらに良好に整列を続けており、左側および右側第一小臼歯の抜歯により形成されたスペースがほぼ完全に閉じられていることが分かる。この時点で、上顎歯、下顎歯とも歯科矯正用ワイヤー11を取り外し、仕上げのレベリングを行うために、上顎歯および下顎歯にそれぞれ上記の超弾性歯科矯正用ワイヤーを取り付けた。
図35A〜Cは、超弾性歯科矯正用ワイヤーを上顎歯および下顎歯に取り付けてからさらに約3ヶ月と4週間経過後の患者の上下顎歯を正面、右側および左側から撮影した写真である。図35A〜Cに示すように、上顎歯も下顎歯もレベリングが良好に行われたことが分かる。
図36A〜Cは、超弾性歯科矯正用ワイヤーを上顎歯および下顎歯に取り付けてからさらに約2ヶ月と2週間経過後に、上顎歯および下顎歯にそれぞれ取り付けた超弾性歯科矯正用ワイヤーを取り外し、患者の上下顎歯を正面、右側および左側から撮影した写真である。図36A〜Cに示すように、上顎前歯も下顎前歯も良好に整列し、第一小臼歯の抜歯により形成されたスペースが完全に閉じられたことが分かる。
以上により、歯科矯正用ワイヤー11を使用した歯科矯正治療を終了する。
図37は歯科矯正治療の開始前に撮影した患者のパノラマX線写真を示す。また、図38は歯科矯正治療の終了後に撮影した患者のパノラマX線写真を示す。図38を図37と比較すれば明らかなように、歯科矯正治療後に歯根吸収は起きていない。また、上顎前歯も下顎前歯も良好に整列しており、第一小臼歯の抜歯により形成されたスペースが完全に閉じられていることが分かる。
以上のように、この一実施の形態によれば、新規な歯科矯正用ワイヤー11を実現することができる。この歯科矯正用ワイヤー11を上顎歯または下顎歯にブラケット201およびボンダブルチューブ202を用いて装着したとき、トルクホールディングベンド部BTHを中心に第三部分11cがそれぞれ下側または上側に折り曲げられることにより発生するほぼ鉛直方向の矯正力F2 と歯科矯正用ワイヤー11の両端を第一大臼歯に固定することにより発生するほぼ水平方向の矯正力F1 との合力Fが左側および右側の中切歯1Lおよび1R、側切歯2Lおよび2Rならびに犬歯3Lおよび3Rに対して働く結果、最終的に、これらの歯の歯根の中心軸が集合点GPに向かって放射状に整列するようにこれらの歯を三次元的に歯体移動させることができる。この際、ジグリングを行わないので、歯根吸収を有効に防止することができる。また、トルクホールディングベンド部BTHのベンド角が、第一小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適な歯科矯正用ワイヤー11では12°以上25°以下、第二小臼歯を抜歯して歯科矯正を行う場合に使用して好適な歯科矯正用ワイヤー11では7°以上20°以下と大きいことにより、この歯科矯正用ワイヤー11に用いる金属ワイヤーの太さが小さくて済むことから、強すぎない適正な矯正力を得ることができ、それによって矯正に際して組織のダメージを最小限に抑えることができる。さらに、この歯科矯正用ワイヤー11の第一部分11aおよび第五部分11eは左側および右側の第一大臼歯に固定されるが、この歯科矯正用ワイヤー11は、第二小臼歯と第一大臼歯との境界部あるいは第一大臼歯の近心側の側面の位置にベンド角θ1 が12°以上25°以下あるいは7°以上20°以下のティップバックベンド部BTBを有することにより、これらの第一大臼歯は遠心にティップされるため、第一大臼歯は挺出せず、遠心咬頭のみが圧下して歯槽骨内に斜めに楔状に食い込むことから、中程度までの固定源を得ることができ、この固定源を利用して水平方向の矯正力を得ることができる。また、この歯科矯正用ワイヤー11の製造方法によれば、折り曲げ加工により上記のような優れた歯科矯正用ワイヤー11を容易にかつ低コストで製造することができる。さらに、歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー100によれば、金属ワイヤーの折り曲げ加工を容易に行うことができ、それによって上記の優れた歯科矯正用ワイヤー11を容易にかつ低コストで製造することができる。
歯科矯正用ワイヤー11の使用により得られる効果について付言する。すなわち、三次元的な歯の移動を可能にするためには、歯科矯正用ワイヤー11が適度な剛性と柔軟性とを有することが必要となる。この点に関し、歯科矯正用ワイヤー11は、a×b=(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)のステンレス鋼製ワイヤーまたはこれと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の金属からなるワイヤー、あるいは、a×b=(0.43±0.05mm)×(0.64±0.05mm)のステンレス鋼製ワイヤーまたはこれと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の金属からなるワイヤーからなるため、この条件を満たしている。複雑な形の歯根を移動させるためには、歯科矯正用ワイヤー11の剛性と柔軟性とが重要な要素となる。この歯科矯正用ワイヤー11を使用して歯科矯正治療を行うことにより、歯冠部に加えられた力が歯根全体に伝えられる。この際、歯には無理な力も無駄な力も働かず、歯の移動に最適な力(適正矯正力は歯根面積に比例する)が常に発生し、結果として最適な形で骨の置換が行われる。より詳細には、人体の組織学正常反応である、破骨細胞と骨芽細胞とによる歯槽骨の転換作用が促進され、これによって理想的な歯の移動が行われ、結果として理想的な歯科矯正治療を行うことが可能である。この歯科矯正治療によれば、治療による痛みや歯根吸収も起きない。
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態などにおいて挙げた数値、構造、形状、材質、製造方法などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、形状、材質、製造方法などを用いてもよい。
例えば、上述の実際に歯科矯正治療を行った具体例において、パワーチェーンとして、デンツサプライ三金株式会社製の「プロチェーン(歯科矯正用エラストメトリックチェーン)品番504−0036 ライトフォース Mスペース」を用いてもよい。また、上下顎歯の左側および右側の第一小臼歯ではなく、第二小臼の抜歯を行って歯科矯正治療を行う場合には、パワーチェーンとして、例えば、デンツサプライ三金株式会社製の「プロチェーン(歯科矯正用エラストメトリックチェーン)品番505−0030 ミディアムフォース sスペース」あるいは「プロチェーン(歯科矯正用エラストメトリックチェーン)品番506−0030 ヘビーフォース sスペース」を用いることができる。
また、歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー100の第一アーム101の顎部104の挟持部110の凸部112の長手方向に垂直な断面における三角形の頂角φ1 および第二アーム102の顎部107の挟持部111の凹部113の長手方向に垂直な断面における三角形の頂角φ2 は、θ1 、θ2 が25°を超え、あるいは7°を下回る歯科矯正用ワイヤーを製造する場合には、155°未満あるいは173°より大きな角度としてもよく、例えば150°以上176°以下としてもよい。
11…歯科矯正用ワイヤー、11a…第一部分、11b…第二部分、11c…第三部分、11d…第四部分、11e…第五部分、20…金属ワイヤー、100…歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー、101…第一アーム、102…第二アーム、103…連結軸、104、107…顎部、110、111…挟持部、112…凸部、113…凹部、201…ブラケット、201a…スロット、201b、201c…ウィング

Claims (16)

  1. 一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
    上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
    上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
    上記第一平面は上記第二平面に対して12°以上25°以下傾斜し、
    上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に12°以上25°以下傾斜し、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有することを特徴とする歯科矯正用ワイヤー。
  2. 患者の上顎歯の歯科矯正を行う際には、あらかじめ左側および右側の第一小臼歯が抜歯された状態において、上記第二部分および上記第四部分に対して上記第一部分、上記第三部分および上記第五部分を上にした状態で、上記第一部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第二部分が左側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、上記第四部分が右側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第五部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、患者の下顎歯の歯科矯正を行う際には、あらかじめ左側および右側の第一小臼歯が抜歯された状態において、上記第二部分および上記第四部分に対して上記第一部分、上記第三部分および上記第五部分を下にした状態で、上記第一部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第二部分が右側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、上記第四部分が左側の第二小臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第五部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着されることを特徴とする請求項1記載の歯科矯正用ワイヤー。
  3. 上記歯科矯正用ワイヤーは、(0.41±0.02mm)×(0.56±0.02mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、上記第一平面は上記第二平面に対して15°以上22°以下傾斜し、上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に15°以上22°以下傾斜していることを特徴とする請求項1または2記載の歯科矯正用ワイヤー。
  4. 一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.43±0.05mm)×(0.64±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
    上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
    上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
    上記第一平面は上記第二平面に対して7°以上20°以下傾斜し、
    上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に7°以上20°以下傾斜し、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有することを特徴とする歯科矯正用ワイヤー。
  5. 患者の上顎歯の歯科矯正を行う際には、あらかじめ左側および右側の第二小臼歯が抜歯された状態において、上記第二部分および上記第四部分に対して上記第一部分、上記第三部分および上記第五部分を上にした状態で、上記第一部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第二部分が左側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、上記第四部分が右側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第五部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、患者の下顎歯の歯科矯正を行う際には、あらかじめ左側および右側の第二小臼歯が抜歯された状態において、上記第二部分および上記第四部分に対して上記第一部分、上記第三部分および上記第五部分を下にした状態で、上記第一部分が右側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第二部分が右側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第三部分が左側および右側の中切歯、側切歯および犬歯の歯冠部の前面に装着され、上記第四部分が左側の第一小臼歯の歯冠部の前面に装着され、上記第五部分が左側の第一大臼歯の歯冠部の前面に装着されることを特徴とする請求項4記載の歯科矯正用ワイヤー。
  6. 上記歯科矯正用ワイヤーは、(0.43±0.02mm)×(0.64±0.02mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、上記第一平面は上記第二平面に対して10°以上17°以下傾斜し、上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に10°以上17°以下傾斜していることを特徴とする請求項4または5記載の歯科矯正用ワイヤー。
  7. 上記歯科矯正用ワイヤーは一本のステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの四箇所を折り曲げ加工することによって製造されたものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の歯科矯正用ワイヤー。
  8. 上記歯科矯正用ワイヤーは、上記第三部分を二等分し、かつ上記第二平面に垂直な平面に関してほぼ対称であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の歯科矯正用ワイヤー。
  9. 患者の上顎前歯または下顎前歯の歯冠部の前面に装着したブラケットに上記歯科矯正ワイヤーを装着したとき、上記歯科矯正用ワイヤーの長手方向の一つの稜が上記ブラケットのスロットの底面に点接触または線接触し、この稜を挟んだ両側の稜が上記ブラケットのスロットの両側面にそれぞれ点接触または線接触することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載の歯科矯正用ワイヤー。
  10. 歯科矯正用ワイヤーとこの歯科矯正用ワイヤーを取り付けるためのブラケットとからなる歯科矯正用セットであって、
    上記歯科矯正用ワイヤーは、
    一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
    上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
    上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
    上記第一平面は上記第二平面に対して12°以上25°以下傾斜し、
    上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に12°以上25°以下傾斜し、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有し、
    上記ブラケットは、
    幅が0.56±0.05mmの長方形の断面形状を有するスロットまたは幅が(0.56±0.05mm)×pの長方形の断面形状を有するスロットを有する
    ことを特徴とする歯科矯正用セット。
  11. 上記歯科矯正用ワイヤーは(0.41±0.02mm)×(0.56±0.02mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
    上記第一平面は上記第二平面に対して15°以上22°以下傾斜し、
    上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に15°以上22°以下傾斜し、
    上記ブラケットは幅が0.56±0.02mmまたは(0.56±0.02mm)×pの長方形の断面形状を有するスロットを有することを特徴とする請求項10記載の歯科矯正用セット。
  12. 歯科矯正用ワイヤーとこの歯科矯正用ワイヤーを取り付けるためのブラケットとからなる歯科矯正用セットであって、
    上記歯科矯正用ワイヤーは、
    一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.43±0.05mm)×(0.64±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
    上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
    上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
    上記第一平面は上記第二平面に対して7°以上20°以下傾斜し、
    上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に7°以上20°以下傾斜し、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有し、
    上記ブラケットは、
    幅が0.56±0.05mmの長方形の断面形状を有するスロットまたは幅が(0.56±0.05mm)×pの長方形の断面形状を有するスロットを有する
    ことを特徴とする歯科矯正用セット。
  13. 上記歯科矯正用ワイヤーは(0.43±0.02mm)×(0.64±0.02mm)の長方形の横断面形状を有するステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
    上記第一平面は上記第二平面に対して10°以上17°以下傾斜し、
    上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に10°以上17°以下傾斜し、
    上記ブラケットは幅が0.56±0.02mmまたは(0.56±0.02mm)×pの長方形の断面形状を有するスロットを有することを特徴とする請求項12記載の歯科矯正用セット。
  14. 一本のステンレス鋼製ワイヤーまたはステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの四箇所を折り曲げ加工することによって、
    一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.41±0.05mm)×(0.56±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
    上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
    上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
    上記第一平面は上記第二平面に対して12°以上25°以下傾斜し、
    上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に12°以上25°以下傾斜し、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有する歯科矯正用ワイヤーを製造することを特徴とする歯科矯正用ワイヤーの製造方法。
  15. 一本のステンレス鋼製ワイヤーまたはステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの四箇所を折り曲げ加工することによって、
    一端から他端に向かってほぼ直線状の第一部分、ほぼ直線状の第二部分、中央のアーチ状の第三部分、ほぼ直線状の第四部分およびほぼ直線状の第五部分を有し、(0.43±0.05mm)×(0.64±0.05mm)の長方形の横断面形状を有する全体としてアーチ状のステンレス鋼製ワイヤーまたはこのステンレス鋼製ワイヤーの横断面形状と相似比1:p(ただし、0.9≦p≦1.1)で相似した横断面形状を有し、このステンレス鋼製ワイヤーと同等の機械的性質を有するステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーからなり、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ第一平面内に位置し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ第二平面内に位置し、
    上記第三部分はほぼ第三平面内に位置し、
    上記ステンレス鋼製ワイヤーまたは上記ステンレス鋼以外の材料からなるワイヤーの横断面の長方形の長辺はほぼ上記第一平面、上記第二平面および上記第三平面に平行であり、
    上記第一平面は上記第二平面に対して7°以上20°以下傾斜し、
    上記第三平面は上記第二平面に対して上記第一平面と同じ側に7°以上20°以下傾斜し、
    上記第一部分および上記第五部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一大臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第二部分および上記第四部分はほぼ患者の上顎または下顎の左側または右側の第一小臼歯および第二小臼歯に張り渡すことができる長さを有し、
    上記第三部分はほぼ患者の上顎または下顎の前歯の全体に張り渡すことができる長さを有する歯科矯正用ワイヤーを製造することを特徴とする歯科矯正用ワイヤーの製造方法。
  16. 前端に顎部を有し、後端側に握り柄を有する第一アームと、
    前端に顎部を有し、後端側に握り柄を有する第二アームとを有し、
    上記第一アームと上記第二アームとは連結軸によって、この連結軸の周りに回転可能な状態で互いにX字状に連結され、
    上記第一アームの上記顎部の、上記第二アームの上記顎部と対向する面に、上記第一アームに沿う方向に延在する三角柱状の凸部が設けられ、
    上記第二アームの上記顎部の、上記第一アームの上記顎部と対向する面に、上記第二アームに沿う方向に延在する三角柱状の凹部が設けられ、
    上記第一アームの上記顎部の上記凸部の長手方向に垂直な断面における三角形の頂角は155°以上173°以下であり、
    上記第二アームの上記顎部の上記凹部の長手方向に垂直な断面における三角形の頂角は155°以上173°以下であり、
    上記第一アームと上記第二アームとを上記連結軸の周りに回転させて上記第一アームの上記顎部と上記第二アームの上記顎部とを閉じたとき、上記第一アームの上記顎部の上記凸部と上記第二アームの上記顎部の上記凹部とが互いにはまり合うように構成されていることを特徴とする歯科矯正用ワイヤー製造用プライヤー。
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