JP2015124738A - 直噴エンジンの制御装置 - Google Patents

直噴エンジンの制御装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2015124738A
JP2015124738A JP2013271195A JP2013271195A JP2015124738A JP 2015124738 A JP2015124738 A JP 2015124738A JP 2013271195 A JP2013271195 A JP 2013271195A JP 2013271195 A JP2013271195 A JP 2013271195A JP 2015124738 A JP2015124738 A JP 2015124738A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
combustion
egr
operating condition
engine
fuel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2013271195A
Other languages
English (en)
Inventor
京太郎 西本
Kyotaro Nishimoto
京太郎 西本
大森 秀樹
Hideki Omori
秀樹 大森
田賀 淳一
Junichi Taga
淳一 田賀
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mazda Motor Corp filed Critical Mazda Motor Corp
Priority to JP2013271195A priority Critical patent/JP2015124738A/ja
Publication of JP2015124738A publication Critical patent/JP2015124738A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Exhaust-Gas Circulating Devices (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Abstract

【課題】圧縮自着火燃焼領域の内部EGR率が高い運転条件への減速時において、より確実に燃焼騒音の増大を抑制する。
【解決手段】燃焼室11内に直接燃料を噴射可能な燃料噴射装置15を備え、エンジン負荷が所定負荷よりも高い第1運転条件から、エンジン負荷が所定負荷よりも低くホットEGR率が第1運転条件での値より高く、かつ、圧縮自着火燃焼が実施される第2運転条件へと移行する減速時において、燃料噴射装置15により噴射される噴射量を、減速先の第2運転条件に対応する本来の噴射量よりも少なくする。
【選択図】図11

Description

本発明は、直噴エンジンの制御装置に関する。
従来より、燃費性能の向上等を目的として、エンジン本体の気筒に形成された燃焼室内で圧縮自着火燃焼を実施することが行われている。
圧縮自着火燃焼では、気筒内の混合気の温度を自着火可能な温度にまで高める必要がある。そのため、通常、圧縮自着火燃焼を実施する際には、EGRを実施して高温の既燃ガスを燃焼室内に残存させることにより混合気が昇温されている。そして、特許文献1に示されるように、この圧縮自着火燃焼が実施される領域では、エンジン負荷が低いほど混合気の温度が低くなりやすいことから、エンジン負荷が低いほどEGR率が高く設定されている。
特開2012−172665号公報
前記特許文献1のようにエンジン負荷が低いほどEGR率すなわち燃焼室内の全ガス量に占める高温の既燃ガスであるEGRガスの割合が高く設定されている場合等、高負荷側の方が低負荷側よりもEGR率が低くされている場合では、これらの運転条件間でエンジン負荷を下げる方向に減速するとともに減速先において圧縮自着火燃焼を実施したときに、燃焼騒音が増大するおそれがある。
具体的には、エンジン負荷が高いほど、発熱量は多く、これに伴い排ガス温度および燃焼室の壁面温度は高い。そして、エンジン負荷が高くこれら温度が高い運転条件からエンジン負荷を低下させた場合、これら温度はすぐに低下しない。そのため、減速時には、燃焼室の壁面温度およびEGRガスの温度が減速先の運転条件に対応した温度よりも高くなるとともに、この適正な温度よりも高温のEGRガスが増加される結果、混合気の温度および燃焼温度が過昇温して燃焼騒音が増大する。特に、減速先において圧縮自着火燃焼が実施される場合には、燃焼温度の過昇に伴って燃焼騒音が許容範囲を超えて増大する可能性が高い。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、圧縮自着火燃焼領域のEGR率が高い運転条件への減速時において、より確実に燃焼騒音の増大を抑制できる直噴エンジンの制御装置を提供する。
前記課題を解決するために、本発明は、気筒に形成された燃焼室内に燃料を噴射可能な燃料噴射装置を有し、前記燃焼室内で燃料と空気との混合気を燃焼させてピストンを往復運動させる直噴エンジンの制御装置であって、エンジンの運転状態を判定する判定手段と、既燃ガスを強制的に冷却することなく前記燃焼室内の混合気に混入させるEGRを実施するEGR手段と、エンジンの低負荷域を含む運転領域に設定された圧縮自着火燃焼領域での運転であることが前記判定手段により判定された場合に、前記EGR手段を駆動して前記高温に維持された既燃ガスであるホットEGRガスを前記混合気中に混入させつつ、前記燃料噴射装置から噴射させた燃料と空気との混合気を前記燃焼室内で自着火により燃焼させて、圧縮自着火燃焼を実施する燃焼制御手段とを備え、前記燃焼制御手段は、前記圧縮自着火燃焼領域での運転時に、前記燃焼室内の全ガス量に占める前記ホットEGRガス量の割合であるホットEGR率が、エンジン負荷が低いほど大きくなるように、前記EGR手段を制御するとともに、エンジン負荷の低下に伴い、所定負荷よりも高い第1運転条件から、前記圧縮自着火燃焼領域内で前記ホットEGR率が前記第1運転条件よりも高く設定された第2運転条件へと移行する減速時に、前記燃料噴射装置により噴射される燃料の噴射量を、前記第2運転条件に対応する本来の噴射量よりも一時的に少なくすることを特徴とする直噴エンジンの制御装置を提供する(請求項1)。
本発明によれば、EGR率が高く設定されて圧縮自着火燃焼が実施される第2運転条件への減速時において、噴射量を第2運転条件に対応する本来の量よりも低下させているため、高温のホットEGRガスの増加、EGRガスの温度および燃焼室の壁面温度の追従遅れに伴う混合気の過昇温に抗して、熱発生量を少なく抑えて燃焼温度の過昇温を抑制することができ、燃焼騒音の増大をより確実に抑制することができる。また、燃焼温度が低く抑えられることで、燃焼室の壁面温度およびEGRガスの温度が低く抑えられるため、より早期にこれらの温度状態ひいては混合気の温度を第2運転条件における適正な温度にすることができより適正な圧縮自着火燃焼を実現することができる。
本発明において、前記燃焼制御手段は、前記第1運転条件から前記第2運転条件へと移行する減速時において、複数サイクルにわたって前記噴射量を前記第2運転条件に対応する本来の噴射量よりも少なくするとともに、前記減速直後からの経過サイクル数が多いほど、前記噴射量を増大させるのが好ましい(請求項2)。
この構成によれば、複数サイクルにわたって噴射量が減量されるため、複数サイクルわたって燃焼温度を低く抑えて、燃焼騒音の増大をより確実に抑制できるとともにより早期に混合気の温度を第2運転条件における適正な温度にしてより早期に適正な圧縮自着火燃焼を実現することができる。また、経過サイクル数が多いほど噴射量が増大されるため、第2運転条件に対応する本来の噴射量により円滑に移行することができる。
本発明において、前記燃焼制御手段は、前記第1運転条件から前記第2運転条件へと移行する減速時において、前記EGR率が前記第2運転条件に対応する本来の値よりも一時的に低い値となるように、前記EGR手段を制御するのが好ましい(請求項3)。
このようにすれば、減速時にEGR率が増大して高温のホットEGRガスが導入されることに伴う燃焼温度の増大を抑制することができ、より確実に燃焼騒音の増大を抑制することができる。
前記構成において、記燃焼制御手段は、前記第1運転条件から前記第2運転条件へと移行する減速時において、複数サイクルにわたって前記EGR率が前記第2運転条件に対応する本来の値よりも低い値となるように、かつ、前記減速直後からの経過サイクル数が多いほど前記EGR率が高くなるように、前記EGR手段を制御するのが好ましい(請求項4)。
このようにすれば、複数サイクルにわたってEGR率が小さく抑えられて高温のEGRガスの導入が抑制され、これにより燃焼温度が低く抑えられるため、燃焼騒音の増大をより確実に抑制できるとともにより早期に混合気の温度を第2運転条件における適正な温度にしてより早期に適正な圧縮自着火燃焼を実現することができる。また、経過サイクル数が多いほどEGR率が増大されるため、第2運転条件に対応する本来のEGR率により円滑に移行することができる。
また、本発明は、気筒に形成された燃焼室内に燃料を噴射可能な燃料噴射装置を有し、前記燃焼室内で燃料と空気との混合気を燃焼させてピストンを往復運動させる直噴エンジンの制御装置であって、エンジンの運転状態を判定する判定手段と、既燃ガスを強制的に冷却することなく前記燃焼室内の混合気に混入させるEGRを実施するEGR手段と、
エンジンの低負荷域を含む運転領域に設定された圧縮自着火燃焼領域での運転であることが前記判定手段により判定された場合に、前記EGR手段を駆動して前記高温に維持された既燃ガスであるホットEGRガスを前記混合気中に混入させつつ、前記燃料噴射装置から噴射させた燃料と空気との混合気を前記燃焼室内で自着火により燃焼させて、圧縮自着火燃焼を実施する燃焼制御手段とを備え、前記燃焼制御手段は、前記圧縮自着火燃焼領域での運転時に、前記燃焼室内の全ガス量に占める前記ホットEGRガス量の割合であるホットEGR率が、エンジン負荷が低いほど大きくなるように、前記EGR手段を制御するとともに、エンジン負荷の低下に伴い、所定負荷よりも高い第1運転条件から、前記圧縮自着火燃焼領域内で前記ホットEGR率が前記第1運転条件よりも高く設定された第2運転条件へと移行する減速時に、前記ホットEGR率が前記第2運転条件に対応する本来の値よりも一時的に低くなるように前記EGR手段を制御することを特徴とする直噴エンジンの制御装置を提供する(請求項5)。
この装置によれば、EGR率が高く圧縮自着火燃焼が実施される第2運転条件への減速時において、EGR率を第2運転条件に対応する本来の値よりも低下させているため、EGRガスの温度および燃焼室の壁面温度の追従遅れに抗して、混合気の温度を低く抑えて燃焼温度の過昇温を抑制することができ、燃焼騒音の増大をより確実に抑制することができる。また、燃焼温度が低く抑えられることで、燃焼室の壁面温度およびEGRガスの温度が低く抑えられるため、より早期にこれらの温度状態ひいては混合気の温度を第2運転条件における適正な温度にすることができ、より適正な圧縮自着火燃焼を実現することができる。
ここで、EGR手段が既燃ガスを前記燃焼室内に残留させることで当該既燃ガスを前記燃焼室内の混合気に混入させる内部EGRを実施する場合では、EGRガスの温度が高く、減速時にこの高温のEGRガスが増加することに伴って燃焼騒音がより増大するおそれがある。そのため、本発明が、前記EGR手段が、既燃ガスを前記燃焼室内に残留させることで当該既燃ガスを前記燃焼室内の混合気に混入させる内部EGRを実施する場合に適用されれば、燃焼騒音の増大をより効果的に抑制することができる(請求項6)。
また、混合気の空気過剰率が1に設定された運転条件、すなわち、燃焼により生成される排ガスを三元触媒で浄化する必要があるような燃焼温度が高い運転条件からの減速時では、特に、燃焼温度の過昇温に伴い燃焼騒音が発生しやすい。そのため、本発明が、このような運転条件に適用されれば、より効果的である(請求項7)。
以上説明したように、本発明によれば、圧縮自着火燃焼領域のEGR率が高い運転条件への減速時において、より確実に燃焼騒音の増大を抑制することができる。
本発明の実施形態に係るエンジンシステムを示す概略図である。 図1に示すエンジンシステムの制御に係るブロック図である。 図1に示す燃焼室を拡大して示す断面図である。 (a)通常モードにおける排気弁のリフト特性を示した図である。(b)特殊モードにおける排気弁のリフト特性を示した図である。 エンジンの運転制御マップを例示する図である。 エンジン負荷と混合気に含まれるガスの割合を示した図である。 エンジン負荷と混合気に含まれるガスの割合を示した図である。 減速時に生じる問題点を説明するための図である。 図8に示した減速時における熱発生率を示した図である。 本実施形態に係る制御を実施した際の減速時の各パラメータの変化を示した図である。 図10に示した減速時における熱発生率を示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る直噴エンジンの制御装置が適用されたエンジンシステム100の概略構成図である。エンジンシステム100は、車両に搭載されて、エンジン本体1を有する。
エンジン本体1は、少なくともガソリンを含有する燃料が供給されるガソリンエンジンであり、4サイクルエンジン、すなわち、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程が順に実施されるエンジンである。エンジン本体1は、後述するように、インジェクタ(燃料噴射装置)15により燃料を気筒10(燃焼室11)内に直接噴射可能に構成された直噴エンジンである。また、エンジン本体1は、後述するように、圧縮自着火燃焼が実現されるエンジンである。
エンジン本体1は、気筒10が形成されたシリンダブロック12とシリンダヘッド13とを有する。本実施形態では、4つの気筒10がシリンダブロック12に直列に形成されている。各気筒10内には、コンロッドを介してクランクシャフトと連結されたピストン14が往復動可能に嵌挿されている。そして、各気筒10内には、気筒10の内側面とピストン14の冠面とシリンダヘッド13とによって囲まれた燃焼室11が形成されている。
以下、ピストン14の往復動方向を上下方向といい、シリンダブロック12に対してシリンダヘッド13が配置されている側を上側という。
本実施形態では、熱効率の向上や圧縮自着火燃焼の安定化等を目的として、エンジン本体1の幾何学的圧縮比は、15以上の比較的高い値に設定されている。エンジン本体1の幾何学的圧縮比は、これに限定されるものではないが、15以上20以下程度の範囲が好ましい。
ピストン14および燃焼室11は、図3に示すような構成を有する。ピストン14の冠面すなわち上面の径方向中央には、シリンダヘッド13および燃焼室11の天井から離間する方向すなわち下方に凹む凹状を有するキャビティ11aが形成されている。キャビティ11aは、その上端に、燃焼室11の天井向きすなわち上向きの開口部を有している。キャビティ11aの開口部の開口面積は、キャビティ11aの内部の各高さ位置での水平方向断面の面積の最大値よりも小さく設定されている。すなわち、キャビティ11aは、その開口部から所定深さまでの範囲において、上方に至るほど内径が狭くなるように上窄まり状になっている。
シリンダヘッド13には、気筒10毎に、燃焼室11内に燃料を直接噴射するインジェクタ15が取り付けられている。インジェクタ15は、図3に示すように、その噴口がキャビティ11aの径方向中央と対向するように、燃焼室11の天井面の径方向中央から燃焼室11内に臨むように配設されている。本実施形態では、インジェクタ15は、複数の噴口を有する多噴口型であり、インジェクタ15から噴射された燃料噴霧は、燃焼室11の径方向中央から下向き放射状に広がる。インジェクタ15は、燃料供給システム(不図示)により燃料タンク(不図示)から圧送された比較的高圧の燃料を燃焼室11内に噴射する。
シリンダヘッド13には、燃焼室11内の混合気に強制点火する点火プラグ16が気筒10毎に取り付けられている。各点火プラグ16は、その先端に設けられた電極部分がインジェクタ15の噴口近傍に位置するように配置されている。
シリンダヘッド13には、気筒10毎に、気筒10内に吸気を導入するための吸気ポート17および気筒10内から排気を排出するための排気ポート18がそれぞれ形成されている。吸気ポート17および排気ポート18には、これら各ポート17,18、詳細には、シリンダヘッド13に形成されたこれら各ポート17,18の開口をそれぞれ開閉する吸気弁21および排気弁22がそれぞれ配設されている。
排気弁22は、排気弁駆動機構(内部EGR手段、EGR手段)23によって駆動される。排気弁駆動機構23は、排気バルブリフト可変機構(以下、排気VVL(Variable Valve Lift)という)23aと、排気位相可変機構(以下、排気VVT(Variable Valve Timing)という)23bとを含む。
排気VVL23aは、排気弁22の作動モードを図4(a)に示す通常モードと、図4(b)に示す特殊モードとに切り替える。通常モードでは、排気弁22は主に排気行程中に開弁する(開弁開始から閉弁までの期間の大部分が排気行程と重なる)。排気弁22のバルブリフトは、開弁後徐々に増大していき、最大リフトに到達すると再び徐々に減少してゼロに至る。特殊モードでは、排気弁22のバルブリフトは、通常モードと同様に、第1の開弁期間t_1中は、開弁後徐々に増大し最大リフトに到達した後再び徐々に減少していくが、そのままゼロに至ることなく、そのリフト量すなわち第1の開弁期間t_1での最大リフトよりも低いリフトを第2の開弁期間t_2維持した後ゼロに至る。排気VVL23aは、これらのモードを実現するために、カム形状が互いに異なる第1カムと第2カムとを有する。第1カムは、図4(a)に示すリフト特性に対応した形状を有し、カム山を1つ有する。第2カムは、図4(b)に示すリフト特性に対応した形状を有し、カム山を2つ有する。排気VVL23aは、第1カムと第2カムの作動状態を選択的に排気弁22に伝達するロストモーション機構を含んでおり、第1カムの作動状態を排気弁22に伝達することで排気弁22の作動状態を通常モードとし、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達することで排気弁22の作動状態を特殊モードとする。排気VVL23aは、例えば油圧作動式である。
排気VVT23bは、クランクシャフト15に対する排気カムシャフトの回転位相を変更して排気弁22の開弁時期と閉弁時期とを変更する。なお、排気VVT23bは、通常モードおよび特殊モードの各モードで、それぞれ排気弁22の開弁期間を一定に維持したまま、排気弁22の開弁時期と閉弁時期とを変更する。排気VVT23bは、液圧式、電磁式又は機械式の公知の構造を適宜採用すればよく、その詳細な構造についての説明は省略する。
排気VVT23bは、排気弁22の作動状態が特殊モードとされている場合、排気弁22が排気行程に加えて吸気行程でも開弁するように、排気カムシャフトの回転位相を設定する。また、排気VVT23bは、排気弁22の作動状態が特殊モードとされている場合、第2の開弁期間t_2中に排気上死点(図4(b)のTDC)がくるように、すなわち排気上死点における排気弁22のバルブリフトが第2の開弁期間t_2中に実現される比較的小さい値となるように、排気カムシャフトの回転位相を設定する。このように、本実施形態では、排気弁22の作動状態が特殊モードとされることで、排気弁22が排気行程に加えて吸気行程中にも開弁する排気二度開きが実施される。特に、本実施形態では、排気弁22は、途中で閉弁することなく排気上死点を挟んで排気行程と吸気行程において連続して開弁する。ここで、このように排気弁22を排気上死点を挟んで連続して開弁させた場合には、排気弁22とピストン14とが干渉するおそれがある。これに対して、本実施形態では、前述のように、排気上死点付近での排気弁22のバルブリフト量が小さい値に抑えられるため、排気弁22とピストン14との干渉を回避することができる。排気二度開きすなわち特殊モードは、高温の既燃ガスすなわち内部EGRガスを燃焼室11内に残留させていわゆる内部EGRを行うために実施される。具体的には、排気二度開きが実施されて吸気行程中にも排気弁22が開弁していると、排気行程で一旦排気ポート18に排出された排気が吸気行程中に燃焼室11内に逆流して排気すなわち高温の既燃ガスが燃焼室11内に残留する。
そして、本実施形態では、排気二度開きが実施された状態で、排気VVT23bにより排気弁22の閉弁時期が変更されることで、燃焼室11内の全ガス量に占める内部EGRガス量の割合である内部EGR率が変更される。具体的には、排気VVT23bは、内部EGR率を低下したい場合には、排気弁22の閉弁時期を進角させて、吸気行程のより早い段階で排気弁22を閉弁させる。このように、本実施形態では、排気VVT23bによる排気弁22の閉弁時期の変更により内部EGR率が変更されるため、内部EGR率は早期に変更される。
吸気弁21は、吸気弁駆動機構24によって駆動される。吸気弁駆動機構24bの具体的構成は特に限定されないが、例えば、吸気弁21のバルブリフトを変更可能な吸気VVL24aと、吸気弁21の開弁時期と閉弁時期とを変更する吸気VVT24bとを含むものが挙げられる。
各吸気ポート17には、吸気通路30が接続されている。具体的には、吸気通路30の下流端には気筒10に対応して分岐する分岐通路が形成されており、これら分岐通路と各吸気ポート17とが接続されている。
吸気通路30には、上流側から順に、エアクリーナ31、スロットル弁32、サージタンク33が配設されている。
各排気ポート18には排気通路40が接続されている。具体的には、吸気通路30と同様に、排気通路40の上流端には気筒10に対応して分岐する分岐通路が形成されており、これら分岐通路と各吸気ポート18とが接続されている。
排気通路40には、排ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置が配設されている。本実施形態では、上流側から順に直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42とが設けられている。直キャタリスト41及びアンダーフットキャタリスト42は、三元触媒を含んでいる。
吸気通路30と排気通路40との間には、排気の一部を吸気に還流するため、すなわち、外部EGRを行うための外部EGR装置50が設けられている。外部EGR装置50は、EGR通路51と、EGRクーラ52とを含む。EGR通路51は、吸気通路30のうちのサージタンク33とスロットル弁32との間の部分と、排気通路40のうちの直キャタリスト41よりも上流側の部分とを接続している。EGRクーラ52は、EGR通路51を通過するガスを冷却するためのものであり、EGR通路51に介設されている。本実施形態では、EGR通路51を通過するガスは、EGRクーラ52により必ず強制的に冷却される。このように、本実施形態では、排気弁駆動機構23が、既燃ガスであるEGRガスを、強制的に冷却することなく温度のまま燃焼室内の混合気に混入させるEGR手段として機能し、外部EGR装置は、このEGR手段としては機能しない。そして、本実施形態では、EGR手段によって高温に維持されたまま混合気中に混入される既燃ガスであるホットEGRガスは、内部EGRガスのみで構成され、燃焼室内の全ガス量に占めるホットEGRガス量の割合であるホットEGR率は、内部EGR率と等価である。
EGR通路51には、このEGR通路51を通過する排気の流量を調整するEGR弁53が配設されている。以下、この外部EGR装置50を用いて排気の一部を吸気に還流することを、外部EGRを行うといい、この外部EGR装置50により吸気に還流された排気を外部EGRガスという場合がある。
前記各装置は、パワートレイン・コントロール・モジュール(制御手段、以下、PCMという)60によって制御される。PCM60は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。
PCM60には、図1,2に示すように、各種のセンサSW1〜SW11の検出信号が入力される。
センサSW1は、新気の流量を検出するエアフローセンサSW1である。センサSW2は、新気の温度を検出する吸気温度センサである。エアフローセンサSW1、吸気温度センサSW2は、吸気通路30のうちエアクリーナ31の下流側に配設されている。センサSW3は、外部EGRガスの温度を検出するためのEGRガス温センサである。EGRガス温センサSW3は、EGR通路51のうち吸気通路30との接続部分近傍に配置されている。センサSW4は気筒10内に流入する直前の吸気の温度を検出する吸気ポート温度センサである。吸気ポート温度センサSW4は、吸気ポート17に取り付けられている。センサSW5は、排気温度を検出する排気温センサである。センサSW6は、排気圧を検出する排気圧センサである。排気温センサSW5、排気圧センサSW6は、排気通路40のうちEGR通路51の接続部分近傍に配置されている。センサSW7は、排気中の酸素濃度を検出するリニアOセンサである。リニアOセンサSW7は、排気通路40のうち直キャタリスト41の上流側に配置されている。センサSW8は、排気中の酸素濃度を検出するラムダOセンサである。ラムダOセンサSW8は、直キャタリスト41とアンダーフットキャタリスト42との間に配置されている。センサSW9は、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサである。センサSW10は、クランクシャフトの回転角を検出するクランク角センサである。センサSW11は、車両のアクセルペダル(不図示)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサである。
PCM60は、各センサSW1〜11の検出信号に基づいて種々の演算を行う。PCM60は、これらの検出信号に基づいてエンジン本体1や車両の運転条件を判定する。PCM60は、運転条件に応じてインジェクタ15、点火プラグ16、燃料供給システム、吸気VVT24b、吸気VVL24a、排気VVT23b、排気VVL23a、各種の弁(スロットル弁32、EGR弁53)のアクチュエータへ制御信号を出力して、これらを制御する。このように、本実施形態では、PCM60が、エンジン回転数、エンジン負荷等からエンジンの運転状態を判定する判定手段、および、インジェクタ15や、点火プラグ16等を制御して、燃焼室11内での混合気の燃焼形態を制御し、後述するように、CI燃焼領域において圧縮自着火燃焼を実現させるとともに、排気VVT23bを制御して内部EGR率を変更する燃焼制御手段として機能する。
PCM60による制御内容について次に説明する。
図5は、横軸がエンジンの回転数、縦軸がエンジン負荷の制御マップである。エンジン負荷が予め設定された燃焼切替用負荷T1以上となるSI(Spark Ignition)燃焼領域で圧縮自着火燃焼を実施すると燃焼騒音が問題となるため、本エンジンシステム100では、このSI燃焼領域では、点火プラグ16による点火を行って混合気を燃焼させる火花点火燃焼を実施する。一方、燃焼騒音が小さく抑えられるエンジン負荷が燃焼切替用負荷T1未満の領域に設定されたCI(Compression Ignition)燃焼領域(圧縮自着火燃焼領域)では点火プラグ16により点火を行わずに混合気を自着火させて燃焼させる圧縮自着火燃焼を実施する。SI燃焼領域では、圧縮行程に燃料噴射が行われ、圧縮上死点付近で点火されることで、混合気は燃焼する。一方、CI燃焼領域では、吸気行程に燃料噴射が行われ、燃料と空気とが十分に混合された混合気が、圧縮上死点付近で自着火する。
エンジン負荷が予め設定されたストイキ切替用負荷T2以上となる高負荷領域では、燃焼により生じるNOx量を十分に小さく抑えることが困難になる。そのため、本エンジンシステム100では、ストイキ切替用負荷T2以上の領域では、混合気の空燃比を理論空燃比にする、すなわち、混合気の空気過剰率λをλ=1にする。
本実施形態では、ストイキ切替用負荷T2は、燃焼切替用負荷T1よりも小さく設定されている。そのため、SI燃焼領域全域に加えて、CI燃焼領域のうち高負荷側の領域である第3CI燃焼領域CI_3において、混合気の空気過剰率λはλ=1とされる。
(1)CI燃焼領域でのEGR制御
CI燃焼領域において、安定した圧縮自着火燃焼を実現するためには、混合気の温度を自着火可能な温度にまで高める必要がある。そこで、CI燃焼領域では、内部EGRを実施して高温の既燃ガスである内部EGRガスを燃焼室11内に残留させ、これにより燃焼室11内および混合気の温度を高める。具体的には、CI燃焼領域では、その全域において、排気弁22の作動状態を特殊モードとして排気二度開きを実施する。
ただし、CI燃焼領域のうちエンジン負荷がEGR切替用負荷T3よりも高い高負荷側の運転領域では、混合気の温度は十分に高く内部EGRガスを過剰に導入すると熱発生が急激に生じるすなわち熱発生率の最大値が過大となり燃焼騒音が許容範囲を超えるおそれがある。そのため、本実施形態では、エンジン負荷がEGR切替用負荷T3未満の第1CI燃焼領域CI_1では内部EGRのみを実施する。一方、エンジン負荷がEGR切替用負荷T3以上かつ燃焼切替用負荷T1未満に設定された領域では、内部EGRに加えて外部EGRを実施してEGRクーラ52で冷却された外部EGRガスを導入し、混合気の温度が過剰に上昇するのを抑制する。すなわち、エンジン負荷がEGR切替用負荷T3以上かつ燃焼切替用負荷T1未満に設定された領域では、排気弁22の作動状態を特殊モードとして排気二度開きを実施するとともにEGR弁53を開弁させる。
本実施形態では、EGR切替用負荷T3は、ストイキ切替用負荷T2よりも小さい値に設定されている。従って、エンジン負荷がEGR切替用負荷T3以上かつストイキ切替用負荷T2未満に設定された第2CI領域CI_2では、内部EGRおよび外部EGRが実施されるとともに混合気の空気過剰率λがλ>1のリーンとされつつ圧縮自着火燃焼が実施される。そして、エンジン負荷がストイキ切替用負荷T2以上かつ燃焼切替用負荷T1未満に設定された第3CI領域CI_3では、内部EGRおよび外部EGRが実施されるとともに混合気の空気過剰率λがλ=1とされつつ圧縮自着火燃焼が実施される。
CI燃焼領域において、混合気中の内部EGRガス量の割合である内部EGR率、外部EGRガス量の混合気中の割合である外部EGR率は、エンジン負荷に応じてそれぞれ適正な値に制御される。図5のエンジン回転数NE1におけるエンジン負荷に対するガス割合の変化を図6、図7に示す。図6は、横軸をエンジン負荷とし、縦軸を燃焼室11内に導入可能なガス量の最大量を100%として内部EGRガス、外部EGRガス、新気のそれぞれの割合を示したものである。一方、図7は、横軸をエンジン負荷とし、縦軸を燃焼室11内に導入されたトータルガス量すなわち内部EGRガス量と外部EGRガス量と新気量の合計量に対するこれらガスの割合を示したものである。ここで、内部EGR率、外部EGR率は、燃焼室11内に導入されたトータルガス量に対する各EGRガスの割合であり、図7に示される値である。
図6、7に示されるように、内部EGR率は、CI燃焼領域全域においてエンジン負荷が低くなるほど高くされる。エンジン負荷が低いほど混合気の温度も低くなりやすい。そのため、このように、エンジン負荷が低いほど高温の内部EGRガスの割合を増大させれば、混合気の温度を高めて着火性を良好に確保することができる。本実施形態では、内部EGR率は燃焼切替用負荷T1で0とされ、この負荷T1から特定の負荷T10までエンジン負荷の低下にほぼ比例して増大される。そして、この特定の負荷T10よりエンジン負荷が低い領域では、内部EGR率は高い値で一定に維持される。
外部EGR率は、外部EGRが導入されつつ混合気の空燃比がリーンとされる第3CI領域CI_3では、エンジン負荷に対してほぼ一定に維持される。第3CI領域CI_3よりもエンジン負荷の低い第2CI領域CI_2では、外部EGR率は、0から第3CI領域CI_3の外部EGR率の値に向かってエンジン負荷に比例して増大される。
(2)SI燃焼領域でのEGR制御
SI燃焼領域では、排気弁22の作動状態は通常モードとされ、内部EGRは停止される。一方、SI燃焼領域では、全負荷を除き、他の領域において外部EGRが実施される。
図7に示すように、SI燃焼領域において、外部EGR率は、エンジン負荷が高いほど小さい値とされる。本実施形態では、エンジン負荷が特定の負荷T20よりも低い領域では、エンジン負荷に対して外部EGR率は一定に維持され、この負荷T20よりもエンジン負荷が高い領域では、エンジン負荷に比例して減少される。
ここで、前述のように、SI燃焼領域では、混合気の空気過剰率λはλ=1とされ混合気の空燃比は理論空燃比に設定されている。そのため、SI燃焼領域のうち特定の負荷T20より低く外部EGR率がエンジン負荷によらずほぼ一定に維持される領域では、図6に示すように、エンジン負荷の低下に応じて、トータルガス量を低下させて新気量を負荷に応じた適正な値にする。具体的には、スロットル弁32を絞ることで新気量およびトータルガス量を低下させる。
以上の制御は、各運転条件において定常運転がなされて燃焼室11の壁面温度が安定した状態において、燃焼状態およびエンジン性能が好適な状態となるように設計されたものである。ここで、エンジン負荷が低いほど燃焼室11内での発熱量が低くなるため、定常運転時の燃焼室11の壁面温度は低くなる。そのため、エンジン負荷が低い側への減速時であって、減速先の運転条件が、内部EGR率の定常運転時の値が減速前よりも高くかつ圧縮自着火燃焼が実施される条件の場合において、前記定常運転時の制御をそのまま実施したのでは、燃焼室11の壁面温度が減速先の運転条件における定常運転時の温度にまで即座に低下しない等により、燃焼温度が過剰になり、燃焼騒音が増大するという問題がある。
この点について、図8を用いて詳細に説明する。
図8は、時刻t1において、定常運転時の内部EGR率が低い運転条件(第1運転条件)から定常運転時の内部EGR率が高く圧縮自着火燃焼が実施される運転条件(第2運転条件)へ移行する減速時に、定常運転時の制御をそのまま実施した場合、すなわち、運転条件の変化に応じて単純に制御を切り替えた場合の各パラメータの時間変化を示したものである。図8には、一例として、減速前の運転条件が、図5,6,7に示すSI領域の点X1であって、定常運転時の混合気の空燃比が理論空燃比、内部EGR率が0、外部EGR率が0より大きい値に設定されて、火花点火燃焼が実施される運転条件であり、減速後の運転条件が、図5,6,7に示す第1CI領域の点X2であって、定常運転時の混合気の空燃比が理論空燃比よりもリーン、外部EGR率が0、内部EGR率が0より大きい値に設定されて、圧縮自着火燃焼が実施される運転条件である場合を示している。図8には、上から順に、噴射量、EGR率、燃焼室の壁面温度(燃焼室壁温)、着火前温度すなわち着火前の所定タイミングにおける燃焼室内の混合気の温度、燃焼温度(燃焼時の最高温度)、エンジントルクの変化を示している。なお、図8では、EGR率の変化として、内部EGR率の変化と外部EGR率の変化とを合わせて示している。
図8において、時刻t1で減速されると、噴射量は減少され、内部EGR率は増大される。前述のように、本実施形態では、内部EGR率は、排気VVT23bによる排気弁22の閉弁タイミングの変更により早期に変更される。そのため、内部EGR率は、減速後即座に減速先の運転条件に対して設定された適正な値となる。燃焼室11の壁面温度は、減速後ゆるやかにしか低下していかず、減速後しばらくの間、減速先の運転条件の定常状態における適正温度(定常時温度)よりも高い温度となる。このように、燃焼室11の壁面温度が適正温度よりも高いことから、減速後において、着火前温度は、減速先の運転条件の定常状態における適正温度(定常時温度)よりも高くなる。さらに、前述のように、内部EGR率が減速直後から増大して高温の内部EGRガスが導入されるために、着火前温度は、減速前の着火前温度よりも高くなる。ここで、減速前の運転条件はエンジン負荷が高く排気温度は高い。そのため、内部EGR率の増大に伴い、この高温の内部EGRガスが多量に導入されることによって、着火前温度はより高温となる。ここで、外部EGR率は、減速先の目標値である0になるよう減速に伴って時刻t1でEGR弁53が閉弁されるものの、EGR弁53の駆動遅れや吸気側に残存している外部EGRガスが導入されることで、時刻t1後、徐々にしか低下していかない。そのため、この外部EGRガスの遅れにより、着火前温度の上昇はある程度は抑えられるものの、燃焼室の壁面温度や内部EGR率の影響が強く、着火前温度は過昇温する。
そして、このように着火前温度が減速先の定常運転時温度および減速前の温度よりも高い値にまで過昇温すること、また、燃焼室の壁面温度が高く燃焼室壁面への熱損失が少なくなることに伴い、燃焼温度も過昇温する。具体的には、減速後しばらくの間、燃焼温度は、減速先の定常運転時温度および減速前の温度、さらには、燃焼騒音が許容範囲以上となる燃焼騒音上限温度よりも高くなり、これにより、減速後しばらくの間、燃焼騒音が許容範囲を超えて増大してしまう。
また、着火前温度の過昇温に伴う着火遅れの短縮および熱損失の低下に伴い、エンジントルクも、減速先の定常運転時のトルク(定常時トルク)すなわち目標トルク以上のトルクとなる。そのため、適正な減速感を得られないという問題も生じる。
図9に、図8に示した例における、時刻t1(減速直後)の熱発生率を示す。また、図9には合わせて噴射パターンを示す。図9において、実線がこの減速直後の熱発生率を示し、破線が減速先の定常運転時の熱発生率を示す。図9に示すように、図8に示した定常時の制御をそのまま実施した場合では、減速直後において、着火前温度が高いために、吸気行程で噴射されて予混合された混合気が圧縮上死点近傍で激しく燃焼し、これに伴い燃焼騒音が大きくなる。また、減速直後において、熱発生量(熱発生率の積分量)が多くなるとともに熱発生率の重心が進角し、高いエンジントルクが生成される。
前記の問題を解決するべく、本エンジンシステム100では、エンジン負荷が高く内部EGR率が低い運転条件から、エンジン負荷が低く内部EGR率が高く設定され、かつ、圧縮自着火燃焼が実施される運転条件へと移行する減速時には、噴射量を減速先の運転条件に対応する本来の量すなわち減速先の運転条件の定常運転時の噴射量(以下、定常時噴射量という場合がある)よりも一時的に少なくする。さらに、内部EGR率の増加を遅らせる。すなわち、内部EGR率を減速先の運転条件に対応する本来の値すなわち減速先の運転条件の定常運転時の内部EGR率(以下、定常時内部EGR率という場合がある)よりも一時的に低くする。そして、この噴射量減量制御を、減速後複数サイクルにわたって実施する。このとき、噴射量は、定常運転時の量に向かって、減速直後からの経過サイクル数が増加するにしたがって増大させていく。なお、噴射は、定常運転時と同様に、吸気行程で実施し、噴射開始タイミングは、定常運転時と同じタイミングとする。
本実施形態では、定常運転時の量に対する噴射量の低減量は、エンジン回転数、エンジン負荷、燃焼室の壁面温度および着火前温度等に基づいて、燃焼騒音が発生しない値に設定される。なお、この低減後の噴射量は、NOxの生成を抑えて排気性能を良好に維持するべく、少なくとも減速直後において混合気の空気過剰率λがλ>2となるように設定されるのが好ましい。なお、燃焼室の壁面温度および着火前温度は、エンジン冷却水温、吸気温度、排気温度等の温度と、エンジン回転数、エンジン負荷等から推定すればよい。
また、本実施形態では、内部EGR率の増加の遅れは、いわゆるなまし処理を行うことで実現する。
以上の制御が実施された際の、噴射量、EGR率、燃焼室11の壁面温度(燃焼室壁面温度)、着火前温度の時間変化を図10に示す。図10は、図8に示した例と同じ減速条件での変化であり、図5に示すSI領域の点X1から第1CI領域の点X2への減速時に、前記制御を実施した際の変化である。図10には、対応する図8の各変化を破線で示している。
図10において、時刻t1での減速に伴い噴射量は減少する。このとき、噴射量は、定常時噴射量よりも減少される。そして、内部EGR率は、遅れ処理が実施されることで、時刻t1では、定常時内部EGR率よりも低いほぼ減速前の値(この例では0)とされる。
このように、内部EGR率の増加がほぼゼロに抑えられることで、時刻t1において、着火前温度は減速前の温度とほぼ同じ程度に抑えられる。これに伴い、より緩やかな燃焼が実現され、燃焼温度は、減速前の温度とほぼ同じ温度であって燃焼騒音が増大する燃焼騒音上限温度よりも低い温度に抑えられて、燃焼騒音が許容範囲内に抑えられる。また、前述のように、燃焼室11の壁面温度の追従遅れに伴い燃焼室壁面への熱損失は少なくなるが、噴射量が十分に少なくされていること、および、緩やかな燃焼が実現されることで、エンジントルクは十分に小さく抑えられ減速先の定常運転時のトルクにまで低下する。図11に、図10に示した例における、時刻t1(減速直後)での熱発生率を示す。この図11に示すように、減速直後において、熱発生は緩やかに生じている。なお、図11には合わせて噴射パターンを示している。
時刻t1後、噴射量および内部EGR率は徐々に増大するが、これらの値が定常運転時での値(定常時噴射量、定常時内部EGR率)よりも小さい値にされていることで、燃焼室11の壁面温度が定常時温度よりも高いにも関わらず、着火前温度、燃焼温度は、図8での値および燃焼騒音上限温度よりも低く抑えられ、燃焼騒音およびエンジントルクは適正な範囲とされる。また、前サイクルでの燃焼温度が低く抑えられることで、燃焼室11の壁面温度の低下および内部EGRガスの温度の低下は促進され、これによっても、着火前温度および燃焼温度は低く抑えられる。
このようにして、燃焼騒音および過剰なエンジントルクの発生が回避されつつ運転条件が低負荷側に移行される。そして、時刻t2において、燃焼室11の壁面温度が定常運転時の温度とされるのとほぼ同時期に噴射量は本来の噴射量すなわち定常運転時の噴射量とされる。ここで、前記のように、本制御では、燃焼温度が低く抑えられることに伴い、燃焼室11の壁面温度の低下が促進されるため、燃焼室11の壁面温度は、図8に示した場合に比べて早期に適正な定常時温度に低下させることができ、より早期に定常運転時の適正な制御に移行することができる。なお、本実施形態では、内部EGR率は、時刻t2よりも早期に本来の値すなわち定常運転時の値とされる。
特に、前述のように、サイクル数の増加に伴って噴射量および内部EGR率が増大されるため、これらの値を定常運転時の値に移行させるまでの間、トルク変動等が生じるのを抑制しつつスムーズに定常運転時の状態に移行させることができる。
以上のように、本実施形態に係るエンジンシステム100では、内部EGR率が低い運転条件から内部EGR率が高く圧縮自着火燃焼が実施される運転条件へ移行する減速時において、燃焼温度の過昇温を抑制して燃焼騒音の増大を抑制することができる。また、エンジントルクをより早期に減速先の値にまで低下させることができ、高い運転操作性を得ることができる。
ここで、前記実施形態では、噴射量を減少させる制御および内部EGR率の増加を抑制する制御を複数サイクルにわたって実施した場合について説明したが、これらの制御を減速直後のみに実施してもよい。ただし、複数サイクルにわたって実施した方が、燃焼室11の壁面温度の追従遅れが長い場合等において、より確実に燃焼騒音の増大を抑制することができる。
また、前記実施形態では、噴射量を減少させる制御と、内部EGR率の増加を抑制する制御とを同時に行った場合について説明したが、これら一方の制御のみを実施しても良い。ただし、これら制御を同時に行った方が、より確実に燃焼騒音の増大を抑制することができる。
また、前記実施形態では、SI燃焼領域からの減速時について説明したが、減速条件はこれに限らない。すなわち、内部EGR率が低い高負荷側の運転条件から内部EGR率が高く圧縮自着火燃焼が実施される低負荷側の運転条件へ移行する減速時であれば、SI燃焼領域からの減速に限らず、燃焼騒音が増大するおそれがあるため、この減速時に適用されればよい。
言い換えると、請求項に記載した「エンジン負荷の低下に伴い、所定負荷よりも高い第1運転条件から、前記CI燃焼領域内で内部EGRを実施する第2運転条件へと移行する減速時」という定義における「所定負荷」とは、内部EGR率がある程度低い値(ゼロを含む)に設定される負荷であればよく、その具体的な値は適宜設定可能である。前記実施形態のようにCI燃焼領域の高負荷側にSI燃焼領域が設定されている場合、「所定負荷」は、CI燃焼領域に含まれる負荷(T1未満の値)であってもよいし、CI燃焼領域より高負荷側のSI燃焼領域に含まれる負荷(T1以上の値)であってもよい。
ただし、燃焼により生成される排ガスを三元触媒で浄化する必要があるような燃焼温度が高い運転条件からの減速時では、特に、燃焼温度の過昇温に伴い燃焼騒音が発生しやすい。そのため、このような減速時に適用されれば効果的である。
また、前記実施形態では、排気弁駆動機構23が、排気二度開きを実施することで内部EGRを実現する場合について示したが、内部EGRを実施する手段はこれに限らない。また、内部EGRの実施により、既燃ガスであるEGRガスを強制的に冷却することなく高温のまま燃焼室内の混合気に混入させる場合について示したが、既燃ガスである排ガスを強制的に冷却することなく吸気に還流させることで、高温のまま混合気に混入させてもよい。例えば、前記実施形態において、EGRクーラ52で冷却させることなく、高温の既燃ガスをその温度を高く維持したまま混合気に混入させてもよい。
1 エンジン(エンジン本体)
10 気筒
11 燃焼室
15 インジェクタ(燃料噴射装置)
23 排気弁駆動機構(EGR手段、内部EGR手段)
60 PCM(判定手段、燃焼制御手段)

Claims (7)

  1. 気筒に形成された燃焼室内に燃料を噴射可能な燃料噴射装置を有し、前記燃焼室内で燃料と空気との混合気を燃焼させてピストンを往復運動させる直噴エンジンの制御装置であって、
    エンジンの運転状態を判定する判定手段と、
    既燃ガスを強制的に冷却することなく前記燃焼室内の混合気に混入させるEGRを実施するEGR手段と、
    エンジンの低負荷域を含む運転領域に設定された圧縮自着火燃焼領域での運転であることが前記判定手段により判定された場合に、前記EGR手段を駆動して前記高温に維持された既燃ガスであるホットEGRガスを前記混合気中に混入させつつ、前記燃料噴射装置から噴射させた燃料と空気との混合気を前記燃焼室内で自着火により燃焼させて、圧縮自着火燃焼を実施する燃焼制御手段とを備え、
    前記燃焼制御手段は、
    前記圧縮自着火燃焼領域での運転時に、前記燃焼室内の全ガス量に占める前記ホットEGRガス量の割合であるホットEGR率が、エンジン負荷が低いほど大きくなるように、前記EGR手段を制御するとともに、
    エンジン負荷の低下に伴い、所定負荷よりも高い第1運転条件から、前記圧縮自着火燃焼領域内で前記ホットEGR率が前記第1運転条件よりも高く設定された第2運転条件へと移行する減速時に、前記燃料噴射装置により噴射される燃料の噴射量を、前記第2運転条件に対応する本来の噴射量よりも一時的に少なくすることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載の直噴エンジンの制御装置であって、
    前記燃焼制御手段は、前記第1運転条件から前記第2運転条件へと移行する減速時において、複数サイクルにわたって前記噴射量を前記第2運転条件に対応する本来の噴射量よりも少なくするとともに、前記減速直後からの経過サイクル数が多いほど、前記噴射量を増大させることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の直噴エンジンの制御装置であって、
    前記燃焼制御手段は、前記第1運転条件から前記第2運転条件へと移行する減速時において、前記ホット率が前記第2運転条件に対応する本来の値よりも一時的に低い値となるように、前記EGR手段を制御することを特徴とする直噴エンジンの制御装置。
  4. 請求項3に記載の直噴エンジンの制御装置であって、
    前記燃焼制御手段は、前記第1運転条件から前記第2運転条件へと移行する減速時において、複数サイクルにわたって前記ホットEGR率が前記第2運転条件に対応する本来の値よりも低い値となるように、かつ、前記減速直後からの経過サイクル数が多いほど前記ホットEGR率が高くなるように、前記EGR手段を制御することを特徴とする直噴エンジンの制御装置。
  5. 気筒に形成された燃焼室内に燃料を噴射可能な燃料噴射装置を有し、前記燃焼室内で燃料と空気との混合気を燃焼させてピストンを往復運動させる直噴エンジンの制御装置であって、
    エンジンの運転状態を判定する判定手段と、
    既燃ガスを強制的に冷却することなく前記燃焼室内の混合気に混入させるEGRを実施するEGR手段と、
    エンジンの低負荷域を含む運転領域に設定された圧縮自着火燃焼領域での運転であることが前記判定手段により判定された場合に、前記EGR手段を駆動して前記高温に維持された既燃ガスであるホットEGRガスを前記混合気中に混入させつつ、前記燃料噴射装置から噴射させた燃料と空気との混合気を前記燃焼室内で自着火により燃焼させて、圧縮自着火燃焼を実施する燃焼制御手段とを備え、
    前記燃焼制御手段は、
    前記圧縮自着火燃焼領域での運転時に、前記燃焼室内の全ガス量に占める前記ホットEGRガス量の割合であるホットEGR率が、エンジン負荷が低いほど大きくなるように、前記EGR手段を制御するとともに、
    エンジン負荷の低下に伴い、所定負荷よりも高い第1運転条件から、前記圧縮自着火燃焼領域内で前記ホットEGR率が前記第1運転条件よりも高く設定された第2運転条件へと移行する減速時に、前記ホットEGR率が前記第2運転条件に対応する本来の値よりも一時的に低くなるように前記EGR手段を制御することを特徴とする直噴エンジンの制御装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の直噴エンジンの制御装置であって、
    前記EGR手段は、既燃ガスを前記燃焼室内に残留させることで当該既燃ガスを前記燃焼室内の混合気に混入させる内部EGRを実施することを特徴とする直噴エンジンの制御装置。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の直噴エンジンの制御装置であって、
    前記第1運転条件は、混合気の空気過剰率が1に設定された運転条件であることを特徴とする直噴エンジンの制御装置。
JP2013271195A 2013-12-27 2013-12-27 直噴エンジンの制御装置 Pending JP2015124738A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013271195A JP2015124738A (ja) 2013-12-27 2013-12-27 直噴エンジンの制御装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013271195A JP2015124738A (ja) 2013-12-27 2013-12-27 直噴エンジンの制御装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2015124738A true JP2015124738A (ja) 2015-07-06

Family

ID=53535607

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013271195A Pending JP2015124738A (ja) 2013-12-27 2013-12-27 直噴エンジンの制御装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2015124738A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017057770A (ja) * 2015-09-15 2017-03-23 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の制御装置
JP2017218950A (ja) * 2016-06-07 2017-12-14 マツダ株式会社 多気筒エンジンの排気構造

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009115025A (ja) * 2007-11-08 2009-05-28 Hitachi Ltd 圧縮自己着火式内燃機関の制御装置および制御方法
JP2011202590A (ja) * 2010-03-25 2011-10-13 Honda Motor Co Ltd 内燃機関の制御装置
JP2012172664A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Mazda Motor Corp 火花点火式ガソリンエンジンの制御装置
JP2012172665A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Mazda Motor Corp 火花点火式ガソリンエンジンの制御装置

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009115025A (ja) * 2007-11-08 2009-05-28 Hitachi Ltd 圧縮自己着火式内燃機関の制御装置および制御方法
JP2011202590A (ja) * 2010-03-25 2011-10-13 Honda Motor Co Ltd 内燃機関の制御装置
JP2012172664A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Mazda Motor Corp 火花点火式ガソリンエンジンの制御装置
JP2012172665A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Mazda Motor Corp 火花点火式ガソリンエンジンの制御装置

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017057770A (ja) * 2015-09-15 2017-03-23 トヨタ自動車株式会社 内燃機関の制御装置
JP2017218950A (ja) * 2016-06-07 2017-12-14 マツダ株式会社 多気筒エンジンの排気構造

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6011161B2 (ja) 火花点火式エンジン
JP5915472B2 (ja) 火花点火式直噴エンジン
US8838364B2 (en) Control device of spark-ignition gasoline engine
US9617945B2 (en) Control device of spark-ignition engine
JP6268965B2 (ja) 圧縮着火式エンジンの制御装置
JP5423717B2 (ja) 火花点火式ガソリンエンジン
JP5998751B2 (ja) 火花点火式直噴エンジン
JP6131840B2 (ja) 圧縮着火式エンジンの制御装置
WO2018101149A1 (ja) 予混合圧縮着火式エンジンおよび予混合圧縮着火式エンジンの制御方法
WO2015115115A1 (ja) 直噴ガソリンエンジンの制御装置
US9777694B2 (en) Control device of engine
JP2013194622A (ja) エンジンの制御装置
JP5907013B2 (ja) 火花点火式直噴エンジン
JP6213175B2 (ja) 圧縮着火式エンジンの制御装置
JP2014185624A (ja) 火花点火式エンジンの制御装置
JP2015124738A (ja) 直噴エンジンの制御装置
JP6225699B2 (ja) 直噴エンジンの制御装置
JP6244882B2 (ja) 直噴エンジンの制御装置
JP2014047644A (ja) 火花点火式直噴エンジン
JP6244881B2 (ja) 直噴エンジンの制御装置
JP2015086754A (ja) 圧縮着火式エンジンの制御装置
JP5910423B2 (ja) 火花点火式エンジン
JP2018172980A (ja) 予混合圧縮着火式エンジン
JP6131839B2 (ja) 圧縮着火式エンジンの制御装置
JP6131847B2 (ja) 直噴エンジンの制御装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160225

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20161013

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170321

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20170427

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20170926