JP2015110841A - 圧力リング用線材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高圧縮比のエンジンの熱負荷の高い環境で使用することが可能な、熱伝導性と耐熱ヘタリ性に優れ、且つ価格競争力のある圧力リングの製造に使用される圧力リング用線材を提供することを課題とする。また、その製造方法を提供することを課題とする。【解決手段】基本的には合金元素量の少ないJIS登録材料を使用するが、300℃の高温でも優れた耐熱ヘタリ性を発揮するように顕微鏡組織を調製する。具体的には、JIS G 4801に規定される材料記号SUP10なる鋼材を用い、ピストンリング線材をオイルテンパー処理する前に、焼鈍し、平均粒径0.1〜1.5μmの球状化セメンタイトを焼戻マルテンサイトマトリックス中に分散させることによって、300℃においても転位の移動やクリープを抑制し、耐熱ヘタリ性を向上させる。【選択図】図3

Description

本発明は、自動車エンジン用ピストンリング用線材に関し、特に高圧縮比のエンジンの熱負荷の高い環境に晒される圧力リングに使用される圧力リング用線材及びその製造方法に関する。
近年、自動車エンジンは、環境対応のため、燃費の向上、低エミッション化、高出力化が図られ、エンジン仕様は、高圧縮比化、高負荷化の傾向にある。ところが、一般に圧縮比を高くすると、燃焼室温度も高くなりノッキングが発生し易くなる。通常のノッキング対策は点火時期(進角)を遅らせることで対応されているが、それでは高い熱効率を維持できないため、燃焼室壁温度を下げる方向の検討も行われている。燃焼室壁温度の低下には、ピストン冠面温度を下げることが有効で、それにはピストンの熱を冷却されたシリンダー壁へ圧力リングを経て逃れさせることが最も効果的である。すなわち、ピストンリングの三つの基本機能であるガスシール機能、熱伝導機能、オイルコントロール機能のうちの熱伝導機能を利用することになる。熱伝導機能は、母材や表面処理層の熱伝導率、形状等に密接に関係するので、これらを最適化すれば良い一方、材料の選定にあたっては、熱伝導率の他に、約300℃程度の熱的環境に晒されてもリング特性を維持できる耐熱ヘタリ性や疲労強度も要求される。
また、ピストンがアルミニウム(以下「アルミ」という。)製の場合、燃焼室温度の上昇に伴いアルミが軟化し、ピストンのリング溝内で、圧力リングによる高温での叩きと摺動により疲労破壊を起こし、リング溝摩耗や圧力リングへのアルミ凝着が発生しやすくなる。この点からも熱伝導の高い圧力リングを用いてリング溝温度を下げることが要求される。
上記のような要求に対して、例えば特許文献1には、熱伝導性と耐熱ヘタリ性に優れ、圧力リングとして適用可能なピストンリングとして、C、Si、Mn、Crの適正成分範囲を所定のパラメータに規定したピストンリング組成が提案されている。
しかしながら、例えば、熱伝導率が35 W/m・K以上、熱ヘタリ率(リングの接線張力減退度)が4%以下を目標とすれば、その目標を達成するのは困難な状況にある。
さらに、ピストンリングのような自動車部品では、優れた特性だけでなく、競争力のある価格も要求されている。すなわち、いかにコストを低減できるかも重要な課題である。
特開2009−235561号公報
本発明は、高圧縮比のエンジンの熱負荷の高い環境で使用することが可能な、熱伝導性と耐熱ヘタリ性に優れ、且つ価格競争力のある圧力リングの製造に使用される圧力リング用線材を提供することを課題とする。また、上記圧力リング用線材の製造方法を提供することを課題とする。
表1に、ピストンリングに使用されている鋼材A〜Gの組成と200℃における熱伝導率を示す。各鋼材の熱伝導率と合金元素の組成和との関係を整理すると図6のようになる。すなわち、合金元素量が少ない材料ほど熱伝導率が高い。
しかし、実際には、合金元素量が少なくなると、耐熱ヘタリ性に劣り、熱負荷の高い環境では圧力リングとしての使用に供せなくなる。また、鋼材のコストは、一般に合金元素量が少ないほど安価であるが、それに加えて、市場経済の観点からは、市場で使用されている量が多いほど、すなわち、JIS(日本工業規格)登録材料のように大量生産されている鋼材ほど安価である。よって、本発明では、基本的には合金元素量の少ないJIS登録材料を使用するが、300℃の高温でも優れた耐熱ヘタリ性を発揮するように顕微鏡組織を調製することとする。本発明者は、鋭意研究の結果、具体的には、JIS G 4801に規定される材料記号SUP10なる鋼材を用い、ピストンリング線材をオイルテンパー処理する前に、焼鈍し、球状化セメンタイトを析出させ、かつオイルテンパー処理条件を最適化することにより焼戻マルテンサイトマトリックス中に球状化セメンタイトを適量分散させ、300℃においても転位の移動やクリープを抑制し、耐熱ヘタリ性を向上させることができることに想到した。
すなわち、本発明の圧力リング用線材は、質量%で、C:0.45〜0.55、Si:0.15〜0.35、Mn:0.65〜0.95、Cr:0.80〜1.10、V:0.15〜0.25、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成を有し、焼戻マルテンサイトマトリックス中に平均粒径0.1〜1.5μmの球状化セメンタイトが分散し、熱伝導率が35 W/m・K以上、熱ヘタリ率が4.4%以下である圧力リングの製造に使用されることを特徴とする。球状化セメンタイトは平均粒径0.5〜1.0μmが好ましい。また、球状化セメンタイトの分散量は、顕微鏡組織観察面において、1〜6面積%とすることが好ましい。
さらに、本発明の圧力リング用線材は、熱伝導率が38 W/m・K以上、熱ヘタリ率(リングの接線張力減退度)が4%以下である圧力リングの製造に使用されることが好ましい。
また、本発明の圧力リング用線材の製造方法は、質量%で、C:0.45〜0.55、Si:0.15〜0.35、Mn:0.65〜0.95、Cr:0.80〜1.10、V:0.15〜0.25、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成を有し、焼戻しマルテンサイトマトリックス中に平均粒径0.1〜1.5μmの球状化セメンタイトが分散している圧力リング用線材を製造する方法であって、圧力リング成形前のオイルテンパー処理工程以前に球状化セメンタイトを形成するための球状化焼鈍を含むことを特徴とする。球状化焼鈍は、温度600〜720℃で行われることが好ましく、オイルテンパー処理工程は、焼入温度820〜980℃、焼戻温度400〜500℃で行われることが好ましい。
本発明の圧力リング用線材を用いて製造した圧力リングは、高熱伝導率と高い耐熱ヘタリ性を両立させており、高圧縮比エンジンのような熱負荷の高い環境での使用においても、リングの張力を減退させることなくピストンヘッドの熱を効率良く冷却されたシリンダー壁に逃すことができるため、点火時期を遅らすような調整をすることなくノッキングを抑制でき、高熱効率を維持できる。また同様に、アルミピストンのリング溝の温度を下げることもでき、アルミ凝着やリング溝摩耗を抑制することができる。さらに、本発明の製造方法によれば、JISに規定され大量生産されている鋼材を使用しているので、コストを低減することができる。
実施例1の断面の走査電子顕微鏡による二次電子像写真を示した図である。 比較例1の断面の走査電子顕微鏡による二次電子像写真を示した図である。 実施例1、5及び比較例1、2、5の熱伝導率と熱ヘタリ率との関係を示した図である。 アルミ凝着試験を模式的に示した図である。 実施例1〜3及び比較例2〜4のアルミ凝着試験結果を示す図である。 ピストンリングに使用されている鋼材の合金元素の組成和と熱伝導率との関係を示す図である。
本発明の圧力リング用線材は、質量%で、C:0.45〜0.55、Si:0.15〜0.35、Mn:0.65〜0.95、Cr:0.80〜1.10、V:0.15〜0.25、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成を有し、焼戻マルテンサイトマトリックス中に平均粒径0.1〜1.5μmの球状化セメンタイトが分散している。上記組成は、基本的に、JIS G 4801に規定される材料記号SUP10の鋼材組成であり、CrとVを僅かに含むが合金元素の総量が少ないため、熱伝導率が高い。しかし、耐熱ヘタリ性は充分ではない。本発明では、比較的大きな球状化したセメンタイトを焼戻マルテンサイトマトリックス中に分散する。この球状化セメンタイトは、オイルテンパー処理するバネ鋼では残留セメンタイトとして知られており、応力集中源にもなるため、鋼線の機械的性質を低下させる要因として見られているものであるが、ピストンリングの圧力リングに使用した場合、優れた耐熱ヘタリ性を実現している事実からは、オイルテンパー後のマトリックス中に残った球状化セメンタイトの存在によって、結晶格子の歪みをつくるため、300℃でも転位を動きにくくするものと推量できる。本発明において、球状化セメンタイトは平均粒径0.1μm以上である。0.1μm程度以下の残留セメンタイトは、オイルテンパー処理の溶体化処理においてオーステナイト中に溶け込むため、平均粒径0.1μm未満の球状化セメンタイトとしては観測されない。また平均粒径が1.5μmを超えると疲労破壊の起源となって疲労強度を低減するので好ましくない。好ましくは平均粒径0.5〜1.0μmとする。
また、球状化セメンタイトの分散量は、顕微鏡組織観察面において、1〜6面積%とすることが好ましい。さらにこの範囲の分散量であれば、熱伝導率が35 W/m・K以上となり、熱ヘタリ率(JIS B 8032-5に基づく接線張力減退度)も4%以下となり好ましい。通常使用されているSi-Cr鋼の熱伝導率は31 W/m・K程度であり、35 W/m・K程度の熱伝導率は、優れた熱伝導率を示す従来の片状黒鉛鋳鉄ピストンリングの熱伝導率に匹敵する。金属においては、熱伝導率は主に結晶粒内の自由電子の運動に支配されるため、固溶元素の少ないほど熱伝導率は向上する。本発明に使用するSUP10は、Si-Cr鋼に比べて固溶強化元素であるSiが特に少ないこと、また球状化セメンタイトを形成することも固溶Cを低減して熱伝導率の向上につながると考えられる。また、熱ヘタリ率は、JIS B 8032-5では、スチールリングの場合300℃×3時間の試験条件で接線張力減退度8%以下と規定されているが、小さければ小さいほど好ましく、材料開発における目標値としてSi-Cr鋼と同レベルの4%程度とした。
鋼製圧力リングは、通常、耐摩耗性、耐スカッフ性の観点から、外周摺動面には様々な表面処理が行われている。熱伝導率が優先されるならCrめっきが好ましいが、耐摩耗性、耐スカッフ性を重視するならイオンプレーティングによるCrN皮膜、アルミシリンダーにはDLC皮膜が適しており、同じ圧力リングでも摺動相手材や使用環境等によって適した表面処理を選択することができる。もちろん、窒化処理も含まれる。
圧力リングの製造に使用される本発明の線材は、質量%で、C:0.45〜0.55、Si:0.15〜0.35、Mn:0.65〜0.95、Cr:0.80〜1.10、V:0.15〜0.25、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成の鋼材(SUP10)を溶製後、熱間圧延により線材とし、線材から通常はパテンチング−酸洗−伸線−パテンチング−酸洗−伸線−オイルテンパー(オイル焼入−焼戻)からなる一連の処理を経て所定の断面形状の線材としているところ、一部のパテンチングの処理の代わりに球状化焼鈍を行うことにより調製される。パテンチング処理とは、ライン熱処理において連続的に恒温変態又は冷却変態させて微細なパーライト組織にする熱処理法であり、具体的にはほぼ900から600℃の温度範囲で行われる。また、本発明において、このパテンチング処理の代わりに行われる球状化焼鈍は、Fe-C状態図のAC1点以下の温度600〜720℃の温度で30〜240分間行うのが好ましい。球状化焼鈍によって形成された所定の粒径の球状化セメンタイトは、その後の熱処理の影響を受け、またその後の伸線に影響するため、最後のオイルテンパー処理の直前に行うことが好ましい。従って、二回目のパテンチング処理の代わりに球状化焼鈍を行うことが好ましいが、その場合、球状化焼鈍はバッチ処理にせざるを得ず、すなわち従来の製造ラインの連続処理の途中にバッチ処理を挟むことになり生産性を落とさざるを得ない。生産性を優先し、一回目のパテンチング処理の代わりに行ってもよいが、球状化セメンタイトの粒径が所定の範囲にはいるよう注意が必要である。オイルテンパー処理は、いわゆる油焼入−焼戻処理であるが、球状化炭化物が全て溶け込まないような、すなわち好ましい面積率となるような温度と時間に設定する必要がある。本発明では、焼入工程は820〜980℃の温度で数十秒〜数分(例えば、30秒〜3分)の加熱をした後に行い、焼戻工程は、400〜500℃の温度で数十秒〜数分(例えば、30秒〜3分)程度行うのが好ましい。各熱処理温度と時間については、熱処理炉のサイズ、処理物の断面積により異なるため、球状化セメンタイトの粒径、面積率が好ましい範囲にはいるよう適宜調整する必要がある。
圧力リングは、所定の断面形状に伸線された本発明の上記線材から、通常はカム成形機を用いてリングの自由形状に成形され、歪取り熱処理を行い、側面、外周、合口等を研削し、所定のリング形状に加工して得られる。もちろん、必要に応じて、めっきやPVD等の表面処理が施される。
実施例1〜3(J1〜J3)
直径8 mmφに圧延したSUP10鋼材から、加熱(900℃)−パテンチング(600℃)−酸洗−伸線−加熱(900℃)−パテンチング(600℃)−酸洗−伸線−オイルテンパーからなる伸線工程において、二回目のパテンチング処理の代わりに700℃、60分の焼鈍工程を導入して、最終的に厚さ1.0 mm、幅2.3 mmの断面形状が矩形の線材を準備した。ここで、オイルテンパー処理としては、930℃、45秒の加熱後、60℃のオイル中に焼入する焼入工程と、470℃、60秒の焼戻工程からなる処理を行った。図1に線材の走査電子顕微鏡による顕微鏡組織を示すが、焼戻マルテンサイト中に分散する白色の微細な球状セメンタイトが観察される。また、この組織を拡大し、画像解析により球状セメンタイトの平均粒径と面積率を測定した結果、平均粒径は0.8μm、面積率は2.4%であった。
実施例4〜5(J4〜J5)
SUP10鋼材を用いて、実施例1〜3と同様の方法で、二回目のパテンチング処理の代わりに、700℃での焼鈍を行い厚さ1.0 mm、幅2.3 mmの矩形の線材を製造した。但し、焼戻マルテンサイトマトリックス中に分散する球状化セメンタイトを調製するため、オイルテンパー処理の焼入前の加熱温度を、実施例4では980℃、実施例5では820℃とした。実施例1と同様に線材の走査電子顕微鏡による顕微鏡組織から画像解析により球状セメンタイトの平均粒径と面積率を測定した結果、実施例4及び5において、平均粒径が0.4μm及び1.2μm、面積率は0.3%及び5.3%であった。
上記実施例1〜5にかかる厚さ1.0 mm、幅2.3 mmの断面形状が矩形の線材から、呼称径73 mmφの圧力リングを成形し、表2に示す皮膜処理を施した。すなわち、外周面にイオンプレーティングによるCrN皮膜、側面にはリン酸亜鉛系皮膜(実施例2)、リン酸マンガン系皮膜(実施例3)を施した。
比較例1〜5(C1〜C5)
実施例1〜5の伸線工程で、焼鈍工程を導入しない従来のパテンチング処理を2回行う伸線工程で製造した厚さ1.0 mm、幅2.3 mmの断面形状が矩形の線材から成形した圧力リングを比較例1、比較例1のSUP10鋼材の代わりにSi-Cr鋼(JIS SWOSC-V)を使用して比較例1と同様の方法で製造した厚さ1.0 mm、幅2.3 mmの断面形状が矩形の線材から成形し、実施例1〜5と同様に、表2に示す表面処理を施した圧力リングを比較例2〜4、比較例1のSUP10鋼材の代わりに硬鋼線(JIS SWRH62A)を使用して比較例1と同様の方法で製造した厚さ1.0 mm、幅2.3 mmの断面形状が矩形の線材から成形した圧力リングを比較例5とした。比較例1〜5の外周面に全てCrN皮膜を施し、比較例3の側面にリン酸亜鉛系皮膜、比較例4の側面にリン酸マンガン系皮膜を施した。
図2に比較例1の線材の走査電子顕微鏡による顕微鏡組織を示すが、均一な焼戻マルテンサイトが観察されるのみで、実施例1のような微細な球状セメンタイトは観察されなかった。
熱ヘタリ試験
熱ヘタリ試験は、JIS B 8032-5に基づく。最初に張力を測定し、呼称径にリングを閉じて300℃で3時間加熱した後、再度張力を測定して、その減退率(JISでは接線方向張力減退度)を評価することによって行われる。試験は、実施例1、4及び5並びに比較例1、2及び5について5回行い、その結果の平均値を表2示す。実施例1は平均値でほぼ同じ熱伝導率の比較例1よりも24%、実施例4は4%、実施例5は26%優れた耐熱ヘタリ性を示し、実施例1と5では目標とした4%以下を達成した。なお、バラツキも小さかった。
熱伝導率測定
熱伝導率は、実施例1、4、5、比較例1、2、5について、レーザーフラッシュ法により測定した。結果を表2に示す。実施例1の熱伝導率はSi-Cr鋼の比較例2よりも高かったが、硬鋼線の比較例5よりは低かった。すなわち、合金元素量に依存することが確認された。
熱ヘタリ率と熱伝導率の関係を図3に示すが、比較例1、2、5を見る限り、熱伝導率が上がれば熱ヘタリ率も上がる。しかし、実施例1、5は三つの比較例が示すラインよりも下側にあり、同じ熱伝導率でも熱ヘタリ率が低減し、すなわち耐熱ヘタリ性が向上したことが確認できた。
アルミ凝着試験
アルミ凝着試験は、図4に示す装置(例えば、リケン製トライボリックIV)を用い、リング(圧力リング)を低速で回転する軸上に同軸に載置し、所定の温度に調節したピストン材(AC8A材)を一定の周期で軸方向に往復動させ、リングとピストン材とに面圧荷重を周期的に発生させて、アルミ凝着が発生するまで継続する試験である。アルミ凝着が発生すれば回転軸のトルクが変動し、また温度も上昇する。そのときの負荷サイクル数で寿命を評価する。試験条件としては、試験温度240℃、面圧負荷触れ幅0〜1.1MPa、面圧負荷サイクル数3.3Hz、リング回転速度3.3m/sec(一方向回転)とし、さらに潤滑剤として無添加ベースオイルSAE30をリング表面に0.08cc塗布した。その結果を表2及び図5に示す。耐アルミ凝着寿命は、実施例1の表面処理なし(生材)の場合は、比較例2に比べて51%、実施例2のリン酸亜鉛系皮膜の場合は、比較例3に比べて43%向上した。一方、実施例3のリン酸マンガン系皮膜の場合は、母材の違いによる耐アルミ凝着寿命に差は認められなかった。これはリン酸マンガン系皮膜自体の表面粗さが影響するためと考えられる。
1 球状化セメンタイト
2 回転軸
3 リング(圧力リング)
4 ピストン材
5 ヒーター
6 熱電対
7 温度調節器

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.45〜0.55、Si:0.15〜0.35、Mn:0.65〜0.95、Cr:0.80〜1.10、V:0.15〜0.25、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成を有し、焼戻しマルテンサイトマトリックス中に平均粒径0.1〜1.5μmの球状化セメンタイトが分散し、熱伝導率が35 W/m・K以上、熱ヘタリ率が4.4%以下である圧力リングの製造に使用される圧力リング用線材。
  2. 前記球状化セメンタイトの分散量が、顕微鏡組織観察面において、1〜6面積%である請求項1に記載の圧力リング用線材。
  3. 熱伝導率が38 W/m・K以上、熱ヘタリ率が4%以下である圧力リングの製造に使用される請求項1又は2に記載の圧力リング用線材。
  4. 質量%で、C:0.45〜0.55、Si:0.15〜0.35、Mn:0.65〜0.95、Cr:0.80〜1.10、V:0.15〜0.25、残部が鉄及び不可避的不純物からなる組成を有し、焼戻しマルテンサイトマトリックス中に平均粒径0.1〜1.5μmの球状化セメンタイトが分散している圧力リング用線材を製造する方法であって、圧力リング成形前のオイルテンパー処理工程以前に球状化セメンタイトを形成するための球状化焼鈍を含むことを特徴とする圧力リング用線材の製造方法。
  5. 前記球状化焼鈍が温度600〜720℃で行われることを特徴とする請求項4に記載の圧力リング用線材の製造方法。
  6. 前記オイルテンパー処理工程が焼入温度820〜980℃、焼戻温度400〜500℃で行われることを特徴とする請求項4又は5に記載の圧力リング用線材の製造方法。
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