JP2015097990A - 逆浸透膜の阻止率向上方法、逆浸透膜、及び水処理方法 - Google Patents

逆浸透膜の阻止率向上方法、逆浸透膜、及び水処理方法 Download PDF

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孝博 川勝
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Abstract

【課題】有機物汚染が激しいRO膜の阻止率向上処理に当たり、阻止率向上処理に先立ち汚染膜を効果的に洗浄して高い阻止率向上効果を得る方法を提供する。【解決手段】RO膜を阻止率向上剤と接触させて阻止率向上処理を行うに先立ち、RO膜に、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩、或いはクロラミン化合物を含む、pH10以上のアルカリ性溶液よりなる洗浄液を接触させて洗浄する逆浸透膜の阻止率向上方法。阻止率向上処理に先立ち、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩、或いはクロラミン化合物を含む、pH10以上のアルカリ性溶液を用いてRO膜を洗浄することにより、RO膜に付着している有機物を効率的に除去することができ、その後の阻止率向上処理において、阻止率向上成分の吸着による修復効果で、RO膜の阻止率を効果的に向上させることができる。【選択図】図1

Description

本発明は、逆浸透膜(RO膜)、特に芳香族ポリアミド系RO膜であって、特にその使用過程において阻止率が低下したRO膜に対して、透過流束を著しく低下させることなく、高い阻止率向上効果が得られる阻止率向上方法と、この阻止率向上方法によって処理されたRO膜と、このRO膜を用いる水処理方法に関する。
現在、全世界的な水供給の不足を補うために、海水・かん水の淡水化、水回収が、RO膜システムを用いて行われている。RO膜システムにおいては、バイオファウリング抑制のため、前処理工程において、原水(RO膜の被処理水)に塩素(次亜塩素酸ソーダなど)や過酸化水素などの酸化剤の添加が行われている。
しかし、これらの酸化剤は強力な酸化分解作用があるため、これらの酸化剤が添加された後、還元処理が不十分な状態で原水がRO膜に供給されると、RO膜が劣化することが知られている。
また、原水中の酸化剤を分解させるために、重亜硫酸ソーダなどの還元剤を原水に添加してRO膜に供給する場合も多いが、重亜硫酸ソーダが過剰に添加されている還元環境下では、原水中にCu、Coなどの金属が共存するとRO膜が劣化して阻止率が低下することも知られている(特許文献1、非特許文献1)。
本発明者らは、RO膜の透過流束を大きく低下させることなく、高い阻止率向上効果が得られる方法として、次のような方法を提案し、本出願人より先に特許出願した。
特許文献2:重量平均分子量2,000〜6,000のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液をRO膜に通水する方法
特許文献3:炭素数8以上の疎水性基を有しない親水性の高分子と、炭素数8以上の疎水性基を有する水溶性の高分子とを透過膜に接触させる方法
特許文献4:分子量200未満の第1の有機化合物と、分子量200以上500未満の第2の有機化合物と、分子量500以上の第3の有機化合物とを含む水溶液をRO膜に通水する方法
特許文献5,6:アミノ基を有する分子量1000以下の化合物を含む水溶液をRO膜に通水する方法
これらの阻止率向上方法は、いずれも、阻止率向上剤の有効成分(阻止率向上成分)の一部又は全部が、膜に吸着して、膜表面の劣化部分を修復するというメカニズムによりRO膜の阻止率を向上させるものである。
一方、純水製造や排水回収等に使用することにより、有機物により汚染されたRO膜の洗浄方法としては、pH10以上、望ましくはpH12以上のアルカリ洗浄を行うことが一般的であり、界面活性剤やキレート剤と併用する方法も採用されている(非特許文献2)。
また、汚染が激しい場合には、アルカリ洗浄、酸洗浄、アルカリ洗浄の順番で洗浄を行うことで洗浄効果が向上することも報告されている(特許文献7)。
特開平7−308671号公報 特開2007−289922号公報 特開2009−022886号公報 特開2012−187469号公報 特開2012−187468号公報 国際公開WO2011/040354号公報 特許第4631287号公報
M.Nagai et al.,Desalination,Vol.96(1994),291−301 「膜の劣化とファウリング対策 膜汚染防止・洗浄法からトラブルシューティングまで」(NTS発行)p142 2008
特許文献2〜5で提案された阻止率向上方法であれば、RO膜の阻止率を効果的に向上させることができるが、純水製造や排水回収に使用されて劣化したRO膜は有機物汚染しているケースが多く、洗浄が不十分なまま阻止率向上処理を行うと、所期の阻止率向上効果が得られないという問題があった。これは、膜表面の劣化部分に吸着すべき阻止率向上成分を、既に吸着している汚染物質である有機物が排除するため、阻止率向上成分の吸着による膜の修復効果が得られないことによると考えられる。
このため、このように有機物で汚染されたRO膜の阻止率向上処理に際しては、阻止率向上処理に先立ちRO膜の洗浄処理を行うことが考えられるが、有機物汚染が激しいと、非特許文献2や特許文献6で提案されているアルカリ洗浄を主体とする方法で洗浄を行っても十分な洗浄効果が得られず、その後の阻止率向上処理が不十分となるケースがあった。
本発明は、上記の問題点を解決し、有機物汚染が激しいRO膜の阻止率向上処理に当たり、阻止率向上処理に先立ち汚染膜を効果的に洗浄して高い阻止率向上効果を得る方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、阻止率向上処理に先立ち、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩、或いはクロラミン化合物を含む、pH10以上のアルカリ性溶液を用いてRO膜を洗浄することにより、RO膜に付着している有機物を効率的に除去することができ、その後の阻止率向上処理において、阻止率向上成分の吸着による修復効果で、RO膜の阻止率を効果的に向上させることができることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1] 逆浸透膜に阻止率向上剤を接触させる逆浸透膜の阻止率向上方法において、該逆浸透膜と阻止率向上剤との接触に先立ち、該逆浸透膜に、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩、或いはクロラミン化合物を含む、pH10以上のアルカリ性溶液よりなる洗浄液を接触させることを特徴とする逆浸透膜の阻止率向上方法。
[2] [1]において、前記洗浄液が、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩(以下「次亜塩素酸(塩)」と称す。)の水溶液をアルカリ剤と水で希釈混合して調製した次亜塩素酸(塩)のアルカリ水溶液であって、希釈前の前記次亜塩素酸(塩)水溶液の有効塩素濃度と希釈倍率とで計算により求められる該次亜塩素酸(塩)のアルカリ水溶液の有効塩素濃度が10mg/L以下であることを特徴とする逆浸透膜の阻止率向上方法。
[3] [1]において、前記洗浄液が、クロラミン化合物とアルカリ剤とを含む水溶液であることを特徴とする逆浸透膜の阻止率向上方法。
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、前記阻止率向上剤が以下の(1)〜(4)のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする逆浸透膜の阻止率向上方法。
(1) 重量平均分子量2,000〜6,000のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液
(2) 分子量200未満の第1の有機化合物と、分子量200以上500未満の第2の有機化合物と、分子量500以上の第3の有機化合物とを含む水溶液
(3) ポリフェノール、変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む水溶液、或いは、ポリフェノールを含む水溶液と変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上とを含む水溶液
(4) アミノ基を有する分子量1000以下の化合物を含む水溶液
[5] [1]ないし[4]のいずれかに記載の阻止率向上方法によって処理された逆浸透膜。
[6] [5]に記載の逆浸透膜を用いる水処理方法。
本発明によれば、RO膜の阻止率向上処理に当たり、予め次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩、或いはクロラミン化合物を含む、pH10以上のアルカリ性溶液を用いてRO膜を洗浄することにより、有機物汚染の激しいRO膜であっても、RO膜に付着している有機物を酸化、剥離して、効率的に洗浄除去することができる。このため、その後の阻止率向上処理において、阻止率向上成分を膜の劣化部分に直接接触させることができ、阻止率向上成分の吸着による本来の修復効果を十分に得ることができ、RO膜の阻止率を効果的に向上させることができる。
実施例で用いたRO膜試験装置を示す系統図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明においては、RO膜の阻止率向上処理に先立ち、RO膜を、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩(以下、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩を「次亜塩素酸(塩)」と称す。)、或いはクロラミン化合物を含む、pH10以上のアルカリ性溶液と接触させて洗浄する。
次亜塩素酸(塩)は、有機物を分解する酸化剤として高い効果を有するものの、酸化力が強いため、RO膜の素材として近年主流となっている芳香族ポリアミド系材料も酸化劣化させてしまい、阻止率の低下を引き起こしてしまう。このため、前述の通り、従来は重亜硫酸ソーダなどの還元剤によって、RO膜の被処理水の段階では酸化力がない状態に還元処理を行っている。1級アミンを有する化合物と次亜塩素酸(塩)を反応させることなどによって生じるクロラミン化合物は、遊離塩素を低減してRO膜の劣化を抑制することができるため、RO膜の被処理水に存在させる方法が採られる場合がある。しかし、クロラミン化合物は、被処理水中に存在させてバイオファウリングを抑制するために使用されるのが一般的であった。
本発明では、RO膜の洗浄に次亜塩素酸(塩)をpH10以上のアルカリ性条件で使用する。そうすることによって、酸化力の強いといわれるHClOの存在割合を極限まで低減することができ、酸化効果とアルカリ性条件による有機物の剥離効果を得ることができる。また、クロラミン化合物も同様の理由によりアルカリ性条件で使用することで、酸化力と剥離効果の高い洗浄剤として使用することが可能である。
[洗浄液及び洗浄方法]
まず、本発明において用いる次亜塩素酸(塩)、或いはクロラミン化合物を含むpH10以上のアルカリ性溶液よりなる洗浄液及びその洗浄方法について説明する。
本発明で用いる洗浄液としては、具体的には次の(i)又は(ii)が好ましい。
(i) 次亜塩素酸(塩)の水溶液をアルカリ剤と水で希釈混合して調製した次亜塩素酸(塩)のアルカリ水溶液であって、希釈前の前記次亜塩素酸(塩)水溶液の有効塩素濃度と希釈倍率とで計算により求められる該次亜塩素酸(塩)のアルカリ水溶液の有効塩素濃度が10mg/L以下であるもの(以下「洗浄液(i)」と称す。)
(ii) クロラミン化合物とアルカリ剤とを含む水溶液(以下「洗浄液(ii)」と称す。)
<洗浄液(i)及びその洗浄方法>
洗浄液(i)の洗浄剤成分として用いる次亜塩素酸(塩)、例えば次亜塩素酸は、以下の式(a)〜(f)に示されるような化学反応種を生成すると考えられている(植村 忠広、栗原 優(東レ)、日本海水学会誌、Vol.57、498−507(2003))。
HOCl+HCl⇔HO+Cl⇔HO+2Cl (a)
HOCl+H⇔HO+Cl (b)
HOCl⇔OH+Cl (c)
HOCl+OH⇔HO+OCl (d)
HOCl⇔Cl+OH (e)
HOCl⇔HCl+O (f)
上記反応のうち、式(a)〜(c)の反応は酸性条件で進行し、式(d)の反応はアルカリ条件で進行すると考えられる。従って、アルカリ条件では、強力な反応種であるCl、Cl、及びOHの生成は抑制され、次亜塩素酸(HOCl)の水中における存在形態は、pH10以上では、ほとんどがOClとなる。
本発明では、この点に着目して、アルカリ条件下における次亜塩素酸(塩)のRO膜洗浄への適用を可能とし、アルカリ条件での洗浄による有機物の剥離作用や加水分解作用に、次亜塩素酸(塩)による殺菌及び有機物分解作用を付加して、アルカリ洗浄効果を高め、汚染したRO膜の性能を効果的に回復させる。
次亜塩素酸(塩)は、通常、有効塩素(Cl)濃度0.25〜12重量%程度の水溶液として提供される。本発明においては、このような次亜塩素酸(塩)水溶液にアルカリ剤を添加すると共に、水で希釈して用いる。
なお、次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸のアルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸のアルカリ土類金属塩などを用いることができる。
次亜塩素酸(塩)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において、有効塩素濃度は、例えばJIS K0400−33−10;1999に規定されるOPD法で遊離塩素として測定されるものである。
洗浄液(i)のpH調整に用いるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前述の次亜塩素酸(塩)水溶液にアルカリ剤と水を添加して調製される洗浄液(i)は、pHが10以上であることを必須とする。洗浄液(i)のpHが10未満であると、十分な洗浄効果が得られない。また、特にpHが酸性側の場合には、前記式(a)〜(c)の反応が起こり、好ましくない。洗浄液(i)のpHは高い方が洗浄効果に優れるが、高過ぎると、洗浄液としての取り扱い性が悪くなり、アルカリによるRO膜劣化が起こることから、洗浄液(i)のpHは好ましくは12〜13である。
また、洗浄液(i)は、希釈前の次亜塩素酸(塩)水溶液の有効塩素濃度と希釈倍率とで計算により求められる有効塩素濃度(以下「理論有効塩素濃度」と称す場合がある。)が30mg/L以下であることを必須とする。洗浄液(i)の理論有効塩素濃度が30mg/Lより高いと、RO膜を劣化させ、洗浄によりRO膜の脱塩率を低下させてしまうおそれがある。洗浄液(i)の理論有効塩素濃度は、RO膜の劣化防止の面からは低い方が好ましく、洗浄効果の面では高い方が好ましい。洗浄液(i)の理論有効塩素濃度は特に0.1〜10mg/L、とりわけ1〜10mg/Lであることが好ましい。
従って、本発明では、上記pH及び理論有効塩素濃度となるように、次亜塩素酸(塩)水溶液にアルカリ剤と水を添加混合して洗浄液(i)として用いる。
洗浄液(i)には、その洗浄効果を損なわない範囲において、他の洗浄液成分を添加してもよい。
例えば、膜汚染物質の剥離効果を高めるために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコールビス(アミノエチルエーテル)四酢酸)、IDA(イミノ二酢酸)等のキレート剤や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムなどの界面活性剤の1種又は2種以上を添加してもよい。
また、洗浄液(i)によるRO膜洗浄に前後して、他の洗浄液によるRO膜洗浄を行ってもよく、他の洗浄液によるRO膜洗浄を組み合わせることにより洗浄効果をより一層高めることができる。
例えば、洗浄液(i)による洗浄に先立ち、或いは、洗浄液(i)による洗浄後に、次亜塩素酸(塩)を含まないアルカリ水溶液による洗浄を行うこともできる。このアルカリ水溶液のアルカリ剤としては、洗浄液(i)のアルカリ剤として前記したものを用いることができ、そのpHは、洗浄効果と取り扱い性の面から、pH10以上、特にpH12〜13であることが好ましい。
また、スケールや金属コロイド除去に有効な酸洗浄を行ってもよく、その酸洗浄には、塩酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸などの酸の1種又は2種以上を含む水溶液を用いることができる。この酸水溶液のpHは、洗浄効果と取り扱い性の面から、pH4以下、特にpH1〜3であることが好ましい。
洗浄液(i)を用いてRO膜を洗浄する方法としては、この洗浄液(i)にRO膜を接触させればよく、特に制限はないが、通常、RO膜モジュールの原水側に洗浄液(i)を導入して静置する浸漬洗浄が行われる。なお、この浸漬洗浄に際して、RO膜に接触している洗浄液(i)のpHが10以上、好ましくは12〜13で、理論有効塩素濃度が10mg/L以下、好ましくは1〜10mg/Lであることが重要である。
また、洗浄液(i)による洗浄の前後で、前述のアルカリ水溶液や酸水溶液を用いて洗浄を行う場合も、通常の場合、上記と同様の浸漬洗浄が採用される。
洗浄液(i)、その他の洗浄液による浸漬洗浄時間には特に制限はなく、目的とする膜性能の回復率が得られる程度であればよいが、通常2〜24時間程度である。
洗浄液(i)による洗浄と、アルカリ水溶液及び/又は酸水溶液による洗浄とを組み合わせて行う場合、その洗浄手順には特に制限はないが、酸水溶液による酸洗浄は、洗浄液(i)による洗浄前に行うことで、塩素に対して触媒効果を引き起こす可能性のある金属を低減・除去することができる。また、アルカリ水溶液によるアルカリ洗浄は、洗浄液(i)による洗浄の前に行ってもよく、後に行ってもよい。
ただし、洗浄液(i)による洗浄、アルカリ水溶液及び酸水溶液の3つの水溶液を組み合わせて洗浄する場合は、アルカリ水溶液を用いて洗浄した後、酸水溶液を用いて洗浄し、その後洗浄液(i)を用いて洗浄することが好ましい。これは、アルカリ水溶液で洗浄することで膜面に付着する有機物を粗取りし、その後の酸洗浄での金属性の付着物の剥離効果を向上させ、洗浄液(i)による洗浄での塩素と金属との触媒効果による膜劣化リスクを効果的に軽減することが可能なためである。
上記の洗浄液等による洗浄後は、通常、純水等の高純度水を通水して仕上げ洗浄を行って、次の阻止率向上処理に移行する。
<洗浄液(ii)及びその洗浄方法>
クロラミン化合物、例えば、以下の反応式(g),(h)に示すような反応で次亜塩素酸(HOCl)と1級アミノ基を有する化合物(XNH)とを反応させて得られる、アミノ基の水素原子が塩素原子に置換した化合物(XNHCl)であれば、RO膜に対する酸化作用が抑制されるため、塩素耐性の低い芳香族ポリアミド系RO膜であっても洗浄に用いることが可能となる。
XNH+HOCl⇔XNHCl+HO (g)
XNH+OCl⇔XNHCl+OH (h)
洗浄液(ii)は、上記の反応により、アルカリ条件下における塩素系洗浄液のRO膜の洗浄への適用を可能とし、アルカリ条件での洗浄による有機物の剥離作用や加水分解作用に、クロラミン化合物による殺菌及び有機物分解作用を付加して、アルカリ洗浄効果を高め、汚染したRO膜の性能を効果的に回復させる。
洗浄液(ii)に含まれるクロラミン化合物は、1級アミノ基を有する化合物、アンモニア、及びアンモニウム塩のいずれか(以下、これらを「1級アミノ基を有する化合物等」と称す場合がある。)と、次亜塩素酸(塩)とを混合することにより生成させることが好ましく、この場合、1級アミノ基を有する化合物としては、脂肪族アミン、芳香族アミン、スルファミン酸、スルファニル酸、スルファモイル安息香酸、アミノ酸などを挙げることができる。また、アンモニウム塩としては、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの1級アミノ基を有する化合物等の中でもスルファミン酸(NHSOOH)は、これを用いてモノクロロスルファミンを生成させると安定なクロラミン化合物となり、また、炭素を含まないため洗浄剤のTOC値を上げることもなく、アルカリ剤と併用することで、非常に有効な洗浄液となることから好ましい。
一方、1級アミノ基を有する化合物等と反応させる次亜塩素酸塩としては、次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸のアルカリ金属塩、次亜塩素酸カルシウム等の次亜塩素酸のアルカリ土類金属塩等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
1級アミノ基を有する化合物等と次亜塩素酸(塩)を混合してクロラミン化合物を生成させる場合、1級アミノ基を有する化合物等と次亜塩素酸(塩)とは、次亜塩素酸(塩)由来の有効塩素Clと、1級アミノ基を有する化合物等由来の炭素原子Nとのモル比Cl/Nモル比が、0.1〜1となるように用いることがクロラミンの生成効率と安定性の点において好ましい。Cl/Nモル比が上記上限よりも大きいと遊離塩素が生成する可能性があり、上記下限よりも小さいと使用した1級アミノ基を有する化合物等に対してクロラミンの生成効率が低くなる。
なおこの場合、次亜塩素酸(塩)の量が洗浄液(ii)中のクロラミン化合物量となる。
アルカリ剤としては、洗浄液(ii)としたときに可溶性を維持することができるものであり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
洗浄液(ii)は、pHが10以上であることを必須とする。洗浄液(ii)のpHが10未満であると、十分な洗浄効果を得ることができない。洗浄液(ii)のpHは高い方が洗浄効果に優れるが、高過ぎると、洗浄液としての取り扱い性が悪くなり、RO膜が劣化する危険性が高くなることから、洗浄液(ii)のpHは好ましくは12以上13未満である。
また、洗浄液(ii)中のクロラミン化合物濃度は0.001〜0.5Mであることが好ましく、特に0.01〜0.2Mであることが好ましい。洗浄液(ii)のクロラミン化合物濃度が低過ぎると十分な洗浄効果を得ることができず、高過ぎるとRO膜を劣化させるおそれがある。なお、クロラミン化合物濃度0.001〜0.5Mとは全塩素濃度で71〜35500mg−Cl/Lに相当する濃度である。なお、全塩素濃度はJIS K0400−33−10.1999等で規定するOPD法により測定することができる。
クロラミン化合物は、従来、透過膜のスライムコントロール剤として用いられており、スライムコントロール剤としてクロラミン化合物を使用する場合、通常、全塩素濃度として1〜50mg−Cl/L程度の低濃度で用いられる。また、その際のpHも10未満であるが、洗浄液(ii)では、クロラミン化合物を上記のような高濃度で用いると共に、pH10以上のアルカリ性の洗浄液とすることにより高い洗浄効果を得る。
洗浄液(ii)は、クロラミン化合物を含む洗浄剤(以下「洗浄剤(ii)」という。)を水(好ましくは純水)で希釈して上述のようなpH及びクロラミン化合物濃度の洗浄液(ii)に調製されたものであってもよい。
水(好ましくは純水)で希釈することにより、上述のようなpH及びクロラミン化合物濃度の洗浄液(ii)を調製するために、洗浄剤(ii)は、クロラミン化合物とアルカリ剤とを含むpH13以上、好ましくはpH13〜15で、クロラミン化合物濃度が0.2〜2M、特に1〜2Mで、アルカリ剤濃度1〜3Mの水溶液であることが好ましい。
以下洗浄剤(ii)の製造方法について説明する。
洗浄剤(ii)は、例えば前述のアルカリ剤の水溶液にスルファミン酸等の1級アミノ基を有する化合物等を添加して溶解し、得られた1級アミノ基を有する化合物等−アルカリ剤混合水溶液に、次亜塩素酸(塩)を添加して混合することにより調製することができる。上記アルカリ剤の水溶液は、水の量が50〜90重量%とすることが好ましい。
なお、スルファミン酸等の1級アミノ基を有する化合物は、塩の形で添加してもよく、この場合の使用可能な塩としては、クロラミン化合物含有アルカリ水溶液としたときに可溶性のものが挙げられ、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸カリウム、スルファミン酸アンモニウム等を用いることができる。1級アミノ基を有する化合物等は、洗浄剤(ii)中のクロラミン化合物濃度が上記濃度となるように添加される。1級アミノ基を有する化合物等の添加量は、アルカリ剤と1級アミノ基を有する化合物等との含有割合が、N/アルカリ金属(モル比)で0.5〜0.7とするのが好ましい。1級アミノ基を有する化合物等は、粉末状態で、あるいは水溶液の状態で添加することができる。1級アミノ基を有する化合物等としてスルファミン酸塩を用いる場合、スルファミン酸塩に含まれるアルカリ金属の量は、アルカリとして加算される。水溶液を用いる場合は、水溶液に含まれる水の量は、前記アルカリ水溶液の水の量として加算される。
一方、次亜塩素酸(塩)は、有効塩素(Cl)濃度として5〜20重量%、好ましくは10〜15重量%の水溶液として添加するのが好ましい。次亜塩素酸(塩)の添加量は、洗浄剤(ii)中のクロラミン化合物濃度として上記濃度となるように、また1級アミノ基を有する化合物等と次亜塩素酸(塩)との含有割合が、前述のCl/Nモル比となるように添加される。これにより発泡や塩素臭の発生はなく、反応性、安定性、取扱性、無塩素臭等に優れた水溶液製剤からなる洗浄剤(ii)を効率よく製造することができる。この場合でも、次亜塩素酸(塩)は徐々に添加して混合するのが好ましい。
洗浄液(ii)は、このようにして製造された洗浄剤(ii)を水、好ましくは純水でpH10以上で、前述の好適なクロラミン化合物濃度となるように希釈することにより製造される。ただし、洗浄液(ii)は洗浄剤(ii)を経ることなく、直接上記と同様の方法で製造することもできる。
洗浄液(ii)には、その洗浄効果を損なわない範囲において、他の洗浄剤成分を添加してもよい。
例えば、膜汚染物質の剥離効果を高めるために、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコールビス(アミノエチルエーテル)四酢酸)、IDA(イミノ二酢酸)等のキレート剤や、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウムなどの界面活性剤の1種又は2種以上を添加してもよい。
また、分子量1000以下、好ましくは分子量60〜1000のポリオール化合物を併用することにより、RO膜への浸透と汚染物質の溶解の作用で更に洗浄効果を高めることができる。ここで、ポリオール化合物の分子量が1000を超えるとRO膜汚染に寄与する可能性がある。分子量1000以下のポリオール化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(重合度2〜22)等を用いることができる。これらのポリオール化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
このようなポリオール化合物は、本発明の洗浄液(ii)に添加してもよく、以下のアルカリ水溶液や酸水溶液に添加して用いてもよい。
また、洗浄液(ii)によるRO膜の洗浄に前後して、他の洗浄液による膜洗浄を行ってもよく、他の洗浄液による膜洗浄を組み合わせることにより洗浄効果をより一層高めることができる。
例えば、洗浄液(ii)による洗浄に先立ち、或いは、洗浄液(ii)による洗浄後に、クロラミン化合物を含まないアルカリ水溶液による洗浄を行うこともできる。このアルカリ水溶液のアルカリ剤としては、洗浄液(ii)のアルカリ剤として前記したものを用いることができ、そのpHは、洗浄効果と取り扱い性の面から、pH10以上、特にpH12〜13であることが好ましい。
また、スケールや金属コロイド除去に有効な酸洗浄を行ってもよく、その酸洗浄には、塩酸、硝酸、クエン酸、シュウ酸などの酸の1種又は2種以上を含む水溶液を用いることができる。この酸水溶液のpHは、洗浄効果と取り扱い性の面から、pH4以下、特にpH1〜3であることが好ましい。
洗浄液(ii)を用いてRO膜を洗浄する方法としては、洗浄液(ii)にRO膜を接触させればよく、特に制限はないが、通常、RO膜モジュールの原水側に洗浄液(ii)を導入して静置する浸漬洗浄が行われる。なお、この浸漬洗浄に際して、RO膜に接触している洗浄液(ii)のpHが10以上、好ましくは12〜13でクロラミン化合物濃度が0.001〜0.5M、特に0.01〜0.2Mであることが重要である。
また、洗浄液(ii)による洗浄の前後で、前述のアルカリ水溶液や酸水溶液を用いて洗浄を行う場合も、通常の場合、上記と同様の浸漬洗浄が採用される。
洗浄液(ii)、その他の洗浄液による浸漬洗浄時間には特に制限はなく、目的とする膜性能の回復率が得られる程度であればよいが、通常2〜24時間程度である。
洗浄液(ii)による洗浄と、アルカリ水溶液及び/又は酸水溶液による洗浄とを組み合わせて行う場合、その洗浄手順には特に制限はないが、酸水溶液による酸洗浄は、洗浄液(ii)による洗浄前に行うと、塩素に対して触媒効果を引き起こす可能性のある金属の低減、除去を行うことができる。また、アルカリ水溶液によるアルカリ洗浄は、洗浄液(ii)による洗浄の前に行ってもよく、後に行ってもよいが、洗浄液(ii)による洗浄の後に行うと、膜劣化のリスクのない追加洗浄効果を得ることができる。
上記の洗浄液(ii)等による洗浄後は、通常、純水等の高純度水を通水して仕上げ洗浄を行って、次の阻止率向上処理に移行する。
[阻止率向上処理]
本発明において、上記のRO膜の洗浄処理後の阻止率向上処理に用いる阻止率向上剤としては特に制限はなく、従来RO膜の阻止率向上処理に使用されているものをいずれも好適に適用することができるが、例えば、以下の(1)〜(4)のような阻止率向上剤を用いることが好ましい。
(1) 重量平均分子量2,000〜6,000のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液(以下「阻止率向上剤(1)」と称す。)
(2) 分子量200未満の第1の有機化合物と、分子量200以上500未満の第2の有機化合物と、分子量500以上の第3の有機化合物とを含む水溶液(以下「阻止率向上剤(2)」と称す。)
(3) ポリフェノール、変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む水溶液、或いは、ポリフェノールを含む水溶液と変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上とを含む水溶液(以下「阻止率向上剤(3)」と称す。)
(4) アミノ基を有する分子量1000以下の化合物を含む水溶液(以下「阻止率向上剤(4)」と称す。)
なお、いずれの阻止率向上剤においても、トレーサーとして、食塩(NaCl)等の無機電解質やイソプロピルアルコールやグルコース等の中性有機物及びポリマレイン酸などの低分子ポリマーなどを添加してもよく、これにより、RO膜の透過水への食塩やグルコースの透過の程度を分析して、膜の修復の程度を確認することができる。
以下、各阻止率向上剤を用いる阻止率向上方法について説明する。
<阻止率向上剤(1)を用いる阻止率向上方法>
阻止率向上剤(1)を用いる化合物が有するポリアルキレングリコール鎖としては、例えば、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖、ポリトリメチレングリコール鎖、ポリテトラメチレングリコール鎖などを挙げることができる。これらのグリコール鎖は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフランなどの開環重合により形成することができる。ポリアルキレングリコール鎖は特にポリエチレングリコール鎖であることが好ましい。ポリエチレングリコール鎖を有する化合物は、水溶性が大きいので阻止率向上剤として取り扱いやすく、RO膜表面に対する親和性が高いので、処理後の経時的な性能低下が少ない。
ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物としては、多分岐構造の化合物、例えば、テトラヒドロフラン−3,4−ジオールの開環重合により得られる多分岐ポリエリスリトール、グリシドールの開環重合により得られる多分岐ポリグリセロールなどを挙げることができる。
該ポリアルキレングリコール鎖は、重量平均分子量が2,000〜6,000であり、好ましくは3,000〜5,000である。ポリアルキレングリコール鎖の重量平均分子量が2,000未満であると、RO膜の阻止率が十分に向上せず、処理後の定着性も低くなるおそれがある。ポリアルキレングリコール鎖の重量平均分子量が6,000を超えると、RO膜の透過流束が大きく低下するおそれがある。重量平均分子量は、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の水溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により分析し、得られたクロマトグラムからポリエチレンオキシド標準品の分子量に換算することにより求めることができる。
ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物として、ポリアルキレングリコール鎖にイオン性基が導入された化合物を用いることができる。イオン性基としては、例えば、スルホ基−SO3H、カルボキシル基−COOH、アミノ基−NH2、第四級アンモニウム基−N+3-などを挙げることができる。RO膜は、スケールの発生を防止するために、弱酸性条件で濾過操作を行うことが多く、その場合、アニオンリッチになることから、強アニオン性のスルホ基の導入が有効である。
阻止率向上剤(1)によるRO膜の阻止率向上方法においては、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の濃度が好ましくは0.01〜10mg/L、より好ましくは0.1〜5mg/Lの水溶液よりなる阻止率向上剤(1)を、RO膜に接触、好ましくは透過水が生じる操作圧力で通水する。操作圧力は、実使用時と同程度の圧力であることが好ましい。阻止率向上剤(1)のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の濃度は、濃度分極を考慮して適切な濃度を選択することができる。低濃度の水溶液を通水して、濾過操作を行うことにより、通水経路に効率的に薄い吸着層を形成し、透過流束の低下を最小限に抑えることができる。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の濃度が0.01mg/L未満であると、吸着層が不完全になって、阻止率が十分に向上しないおそれがある。ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の濃度が10mg/Lを超えると、吸着層が厚くなりすぎて、透過流束が大きく低下するおそれがある。
阻止率向上剤(1)によるRO膜の阻止率向上方法においては、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物とともに、炭素数8以上の疎水性基を有する水溶性の高分子からなる修飾剤を併用してもよい。該修飾剤は炭素数8以上の疎水性基を有する水溶性の高分子からなるが、炭素数8以上のアルキル基またはアルキレン基からなる疎水性基を有する修飾剤、特に炭素数8〜20のアルキル基またはアルキレン基からなる疎水性基を有する修飾剤が好ましい。ここで炭素数8以上、特に炭素数8〜20のアルキル基またはアルキレン基からなる疎水性基は疎水性が高く、有機物の疎水基との親和性が大きいため、その修飾により、純水製造において排除が求められる低分子の水溶性有機物成分の透過を阻止するのに適しているものと推測される。炭素数が8未満であると阻止率向上効果と安定性が十分でなく、炭素数が20を超えると水に溶けにくくなり、また透過流束の低下が大きい傾向にある。
修飾剤としては、親水基と疎水性基を有する界面活性物質が好ましく、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(またはアルケニル)フエニルエーテル、アルキル(またはアルケニル)グルコシド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキル(またはアルケニル)トリメチルアンモニウムクロリド、ジアルキル(またはアルケニル)ジメチルアンモニウムクロリド、アルキル(またはアルケニル)ピリジニウムクロリドなどが使用できる。
なお、これらの界面活性物質は阻止率向上剤(1)として使用することもできる。
修飾剤の分子量は特に制限されないが、重量平均分子量として500〜5,000が好ましい。重量平均分子量が小さすぎ、特に500未満であると、処理後の修飾剤の定着性が低くなり、RO膜の阻止率が十分に向上しない。重量平均分子量が大きすぎ、特に5,000を超えると、RO膜の透過流束が大きく低下するおそれがある。
修飾剤による処理は、阻止率向上剤(1)による処理と同時に行うか、阻止率向上剤(1)で処理した後に修飾剤で処理する。阻止率向上剤(1)による処理と修飾剤による処理を同時に行う場合は、阻止率向上剤(1)と修飾剤とを含む混合処理剤を用いて混合剤処理を行い、別に処理を行う場合は、阻止率向上剤(1)の処理を行った後に修飾剤処理を行う。阻止率向上剤(1)および修飾剤は、処理対象となるRO膜の材質、形態等に応じて適したものが選ばれる。混合剤処理を行う場合は、ポリアルキレングリコール鎖を有する化合物の濃度が修飾剤の濃度の2倍以上、好ましくは2〜100倍、さらに好ましくは2〜20倍とすることができる。
<阻止率向上剤(2)を用いる阻止率向上方法>
阻止率向上剤(2)において、分子量200未満の第1の有機化合物、分子量200以上500未満の第2の有機化合物としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
・ 芳香族アミノ化合物:例えば、アニリン、ジアミノベンゼンなどのベンゼン骨格とアミノ基を有するもの
・ 芳香族アミノカルボン酸化合物:例えば、3,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、2,4,6−トリアミノ安息香酸などのベンゼン骨格と2つ以上のアミノ基とアミノ基の数より少ないカルボキシル基を有するもの。
・ 脂肪族アミノ化合物:例えば、メチルアミン、エチルアミン、オクチルアミン、1,9−ジアミノノナン(C18(NH)等の炭素数1〜20程度の直鎖炭化水素基と1個又は複数のアミノ基を有するもの、及び、アミノペンタン(NH(CHCH(CH)、2−メチルオクタジアミン(NHCHCH(CH)(CHNH)等の炭素数1〜20程度の分岐炭化水素基と1個又は複数のアミノ基を有するもの。
・ 脂肪族アミノアルコール:モノアミノイソペンタノール(NH(CHCH(CH)CHOH)等の直鎖又は分岐の炭素数1〜20の炭化水素基にアミノ基と水酸基を有するもの。
・ 複素環アミノ化合物:テトラヒドロフルフリルアミン(下記構造式)などの複素環とアミノ基を有するもの。
Figure 2015097990
・ アミノ酸化合物:例えば、アルギニンやリシン等の塩基性アミノ酸化合物、アスパラギンやグルタミン等のアミド基を有するアミノ酸化合物、グリシンやフェニルアラニン等のその他アミノ酸化合物。
・ エチレンジアミン類:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリエチレンアミン
第1の有機化合物(分子量200未満)としては、これらのうちアミノ酸又はアミノ酸化合物(アミノ酸誘導体)が好適である。
例えば、塩基性アミノ酸である、アルギニン(分子量174)、リシン(分子量146)、ヒスチジン(分子量155)を第1の有機化合物として有効に用いることができる。また、ペプチドあるいはその誘導体として、例えば、フェニルアラニンとアスパラギン酸のジペプチドのメチルエステルであるアスパルテーム(分子量294)を第2の有機化合物として有効に用いることができる。その他、カルノシン(分子量:226)、Nα−(L−チロシル)−L−アルギニン(分子量:336)、ピリミジン−2,4,5,6−テトラアミン(分子量140)なども有効に用いられる。
これらの低分子量アミノ化合物は、水に対する溶解性が高く、安定な水溶液として逆浸透膜に通水することができ、膜のカルボキシル基と反応してRO膜に結合し、不溶性の塩を形成して、膜の劣化により生じた穴を塞ぎ、これにより膜の阻止率を高める。
これらの低分子量アミノ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。特に、分子量や骨格構造の異なる低分子量アミノ化合物を2種以上併用し、これらを同時にRO膜に透過させることにより、各々の化合物が膜を透過する際に互いに障害となり、膜内の劣化箇所に滞留する時間が長くなることにより、膜のカルボキシル基と低分子量アミノ化合物のアミノ基との接触確率が高くなり、膜の修復効果が高められるため好ましい。
阻止率向上剤(2)中の第1及び第2の有機化合物の含有量は、膜の劣化の度合により異なるが、過度に多いと透過流束を大きく低下させることがあり、過度に少ないと修復が不十分になるため、阻止率向上処理水中の第1及び第2の有機化合物の合計の濃度が、0.2〜500mg/L、特に1〜200mg/L程度となるようにすることが好ましい。
また、分子量500以上(好ましくは500〜500,000特に好ましくは500〜50,000)の第3の有機化合物としては、カルボキシル基、アミノ基、あるいはヒドロキシル基を有するものが好適である。例として、タンニン酸やペプチドを挙げることができる。タンニン酸としては、加水分解型の五倍子、没食子、縮合型のケブラチョ、ミモザなどを挙げることができる。ペプチドとしては、分子量500以上のポリグリシン、ポリリシン、ポリトリプトファン、ポリアラニンなどを挙げることができる。
阻止率向上剤(2)中における第3の有機化合物の濃度は0.1〜1000mg/L特に0.5〜100mg/L程度が好適である。
阻止率向上剤(2)をRO膜に通水するときの給水圧力は、過度に高いと劣化していない箇所への吸着が進むという問題があり、過度に低いと劣化箇所への吸着も進まないことから、当該RO膜の通常運転圧力の30〜150%、特に50〜130%とすることが好ましい。
阻止率向上剤(2)による阻止率向上処理は、常温、例えば10〜35℃程度の温度で行うことができ、また、その処理時間としては、RO膜中を各有機化合物が十分に透過して、透過水側に有機化合物が検出される程度の時間であれば良く、特に制限とりわけ上限はないが、通常0.5〜100時間、特に1〜50時間程度とすることが好ましい。
<阻止率向上剤(3)を用いる阻止率向上方法>
阻止率向上剤(3)を用いる阻止率向上処理は、ポリフェノール、変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む水溶液をRO膜に通水することによって行ってもよく、ポリフェノールを含む水溶液をRO膜に通水した後、変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む水溶液をRO膜に通水することにより行ってもよい。この場合において、変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む水溶液が、ポリフェノールを含んでいてもよい(以下、変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を「第2の阻止率向上成分」と称す場合がある。)。
この方法では、更に、分子量1000以下のアミノ基を有する有機化合物(低分子量アミノ化合物)を含む水溶液をRO膜に通水することが好ましい。
(ポリフェノール)
ポリフェノールとしては、RO膜表面を効果的に被覆し、且つ定着する点において、分子量500以上、特に分子量500〜500,000、とりわけ分子量500〜50,000のポリフェノールが好ましく、例えば、タンニン酸、リグニン、リグニン誘導体などを挙げることができる。タンニン酸としては、五倍子、没食子、ケブラチョ、ミモザなどのタンニン酸を挙げることができる。これらのポリフェノールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(第2の阻止率向上成分)
第2の阻止率向上成分としては、以下の変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸のうちの1種のみを用いてもよく、これらの2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<変性ポリビニルアルコール>
変性ポリビニルアルコールはビニルアルコールユニットと変性基が結合しているユニットとで構成され、場合により更に酢酸ビニルユニットを含む。
変性ポリビニルアルコール中の変性基が結合しているユニットのモル分率としては、0.1〜50モル%が好ましく、0.3〜40モル%がより好ましく、0.5〜30モル%が特に好ましい。この範囲よりも変性基が結合しているユニットのモル分率が低いと、変性基を導入することによるRO膜に対する吸着性の向上効果を十分に得ることができず、逆に多いと相対的にビニルアルコールユニットのモル分率が少なくなって阻止率向上効果が低減する。
また、変性ポリビニルアルコール中のビニルアルコールユニットのモル分率は、50〜99.9モル%が好ましく、60〜99.7モル%がより好ましく、70〜99.5モル%が特に好ましい。この範囲よりもビニルアルコールユニットのモル分率が少ないと、変性ポリビニルアルコール中の水酸基数が少なくなって、十分な阻止率向上効果が得られず、逆に、多いと相対的に変性基が結合しているユニットのモル分率が少なくなって、変性基を導入することによるRO膜に対する吸着性の向上効果を十分に得ることができないおそれがある。
また、変性ポリビニルアルコール中の酢酸ビニルユニットのモル分率は、0〜20モル%が好ましく、0〜10モル%がより好ましく、0〜5モル%が特に好ましい。
ポリビニルアルコールの性状を示す指標としてけん化度がある。けん化度はビニルアルコールユニットのモル分率をビニルアルコールユニットと酢酸ビニルユニットのモル分率の合計で除したものである。変性ポリビニルアルコールのけん化度は80%以上、特に85%以上、とりわけ95%以上であることが好ましい。けん化度が80%未満であると水酸基の数が少なく、親水性が低くなり、十分な阻止率向上効果、フラックス安定性が得られない傾向にある。
また、変性ポリビニルアルコールの重合度、即ち、上記のユニット数としては特に制限はないが、20〜20,000が好ましい。重合度が低すぎると膜への吸着性が悪くなり、重合度が大きすぎると、阻止率向上処理によるRO膜のフラックス低下が大きくなるため、好ましくない。
変性ポリビニルアルコールの変性基としては、イオン性基、ポリアルキレンオキサイド基(ポリオキシアルキレンオキサイト鎖を有する基)のいずれか、あるいは両方を含むものであることが好ましい。特に変性ポリビニルアルコールとして、4級アンモニウム基を有するものを選択すると、RO膜表面のカルボキシル基やポリフェノールとの相互作用が期待できる。また、変性ポリビニルアルコールとして、ポリエチレンオキサイド基を有するものを選択することで、ポリエチレングリコール鎖がポリアミド系RO膜に吸着することから、RO膜との相互作用が期待できる。
変性基としてカチオン性基を有するカチオン性ポリビニルアルコールは、例えば、酢酸ビニルなどのビニルエステルとカチオン性モノマーを共重合させた後、加水分解(けん化)して生成されるものが好適である。
カチオン性モノマーとしては、−NH、−NHR、−NRR’,−NH 、−NHR,−NHRR’、−NRR’R''を有するモノマー(R,R’,R''はそれぞれ炭化水素残基を示す。)が好適であり、具体的にはジアリルジメチルアンモニウム塩、アンモニウム基を有するアクリレートおよびメタクリレート、N置換メタクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルピリジン4級アンモニウム塩、ビニルイミダゾールなどが挙げられる。
カチオン性ポリビニルアルコールの市販品としては「C−506」、「CM−318」(以上、クラレ製)、「ゴーセファイマーK−210」(以上、日本合成化学工業製)が挙げられる。
変性基としてアニオン性基を有するアニオン性ポリビニルアルコールのアニオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられるが、経済性、製造のしやすさの点で、カルボキシル基、スルホン酸基が好ましい。
ポリビニルアルコールにカルボキシル基を導入した変性ポリビニルアルコールを製造する方法としては、酢酸ビニルなどのビニルエステルと共重合しうる不飽和塩基性酸、不飽和二塩基性酸、これらの無水物、またはこれらのエステルや塩、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などを共重合させて得られる共重合体をけん化する方法が挙げられる。
また、上記ビニルエステル類とアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの共重合体をけん化することによってもカルボキシル基変性ポリビニルアルコールを得ることができる。
また、グラフト重合による方法として、ポリビニルアルコールあるいはポリ酢酸ビニルなどのようなポリビニルエステルにアクリロニトリル、アクリルアミドなどをグラフト重合した後けん化する方法が挙げられる。また、ポリビニルアルコールの化学反応による方法として、ポリビニルアルコールに二塩基性酸、例えばマレイン酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、あるいはこれらの無水物を反応させる片エステル化反応によっても、ポリビニルアルコールにカルボキシル基を導入することができる。
ポリビニルアルコールにスルホン酸基を導入する場合には、ポリビニルアルコールと濃硫酸を反応させる方法、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、またはそれらのエステルや塩と酢酸ビニルとを共重合させた後、けん化することにより、スルホン酸基変性ポリビニルアルコールを得ることができる。
アニオン性ポリビニルアルコールの市販品としては、「KL−118」、「KL−318」、「KM−118」、「KM−618」、「SK−5102」(以上、クラレ製)、「ゴーセナールT−330」、「ゴーセナールT−330H」、「ゴーセナールT−350」、「ゴーセランL−3266」、「ゴーセランL−0301」、「ゴーセランL−0302」、「ゴーセランCKS−50」(以上、日本合成化学工業製)などが例示される。
ポリアルキレンオキサイド鎖を有する変性ポリビニルアルコールのポリアルキレンオキサイド鎖としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド等のアルキレン基の炭素数が2〜4のポリアルキレンオキサイド鎖が好適であり、ポリエチレンオキサイドが最も好適である。アルキレンオキサイドの繰り返し数は2〜300、特に10〜100であることが好ましい。この繰り返し数が小さ過ぎると、ポリアルキレンオキサイド鎖によるRO膜への吸着性の向上効果を十分に得ることができず、大きすぎると、阻止率向上処理によるRO膜のフラックスの低下が大きくなるため好ましくない。
このようなポリアルキレンオキサイド鎖を有する変性ポリビニルアルコールは、公知の合成方法で得ることができる。また、日本合成化学工業社製「エコマティWO−320N」、「エコマティWO−320R」といった市販品を用いることもできる。
ポリアルキレンオキサイド鎖を有する変性ポリビニルアルコールの合成方法としては、ポリアルキレンオキサイド鎖を有する単量体を酢酸ビニルと共に重合した後、酢酸ビニルの一部又は全てをけん化してビニルアルコールとする方法が好ましいが、その他の合成方法を用いてもよい。
上記のポリアルキレンオキサイド鎖を有する単量体としては、ポリエチレンオキサイドモノビニルエーテル、ポリプロピレンオキサイドモノビニルエーテル、ポリエチレンオキサイドモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノアクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<高分子多糖類>
高分子多糖類としては、特に食品添加物として使用される、分子量1万以上の高分子多糖類であって、RO膜に対する吸着性の高いものを好ましく用いることができる。高分子多糖類の分子量の上限は特になく、水溶性を示すものであれば使用できる。このような高分子多糖類としては、例えば、キサンタンガム(分子量:200万以上)、グアーガム(分子量:20〜30万)、カルボキシメチルセルロース及びその塩(分子量:5万以上)、アルギン酸及びその塩(分子量:1万以上)、キトサン(分子量:1万以上)などを挙げることができる。
これらの高分子多糖類は、通常、増粘剤として使用されており、RO膜に対して良好な吸着性を示す。即ち、例えば、日東電工(株)製芳香族ポリアミド系RO膜(ES20)にキサンタンガム1mg/Lの水溶液を0.75MPaで通水したところ、7日間で、透過流束が0.9m/m・dayから0.5m/m・dayに低下した。これは、キサンタンガムのRO膜に対する吸着性が高いために、膜の透過流束を低下させたと言える。また、グアーガムの場合も、同様の試験において、7日間で、透過流束が0.9m/m・dayから0.3m/m・dayに低下した。このように、通水によりRO膜の透過流束を低下させるものは、RO膜に対する吸着性が高いと言える。
これらの高分子多糖類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<ポリアミノ酸>
ポリアミノ酸としては、分子量1000以上、100万以下で、1種のアミノ酸の重合物であるポリリジン、ポリグリシン、ポリグルタミン酸などを用いることができ、また、2種以上のアミノ酸の重合物も用いることができる。特に塩基性アミノ酸の重合物であるポリリジン、ポリアルギニン、ポリヒスチジンを好適に用いることができる。特に、ポリリジンはポリフェノールとの静電的相互作用が強く、ポリフェノールとの併用で高い阻止率向上処理効果を得ることができ、好ましい。これらのポリアミノ酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(低分子量アミノ化合物)
阻止率向上剤(3)を用いる阻止率向上処理では、ポリフェノール及び第2の阻止率向上成分の他、更に分子量1000以下のアミノ基を有する有機化合物(低分子量アミノ化合物)を用いて阻止率向上処理を行ってもよく、低分子量アミノ化合物を併用することにより、より一層阻止率向上効果を高めることができる。
低分子量アミノ化合物としては、分子量1000以下、特に分子量500未満、例えば分子量70〜300のものが、RO膜の劣化部分の修復効果の点において好ましく、このような低分子量アミノ化合物としては、前述の阻止率向上剤(2)において用いる分子量200未満の第1の有機化合物及び分子量200以上500未満の第2の有機化合物として例示したものが挙げられる。これら低分子量アミノ化合物は1種類だけ用いてもよいし、2種類以上を使用してもよいが、種類が増えると作業が煩雑になる。
前述の通り、これら低分子量アミノ化合物は水に対する溶解性が高く、安定な水溶性としてRO膜に通水することができ、膜のカルボキシル基と反応してRO膜に結合し、不溶性の塩を形成して、膜の劣化により生じた穴をふさぐことができる。
(阻止率向上成分濃度)
ポリフェノールや第2の阻止率向上成分、更に上記低分子量アミノ化合物の阻止率向上剤(3)中の濃度については、これらのうちの1種のみが含まれている場合は、その濃度として、また、これらの2種以上が含まれている場合はその合計の濃度として、1.0〜5,000mg/L、特に1.0〜2,000mg/Lとすることが好ましい。この濃度が低すぎると長期間の処理が必要になり、好ましくない。また、この濃度が高すぎると、膜の表面で多層的に吸着し、劣化部位に到達しない化合物が増え、補修効率が悪くなるため、好ましくない。
また、ポリフェノールと第2の阻止率向上成分とを併用することによる効果をより有効に得るために、阻止率向上剤(3)中の濃度とRO膜に通水する水溶液量とで算出されるRO膜への合計の供給量として、ポリフェノールと第2の阻止率向上成分の重量比が、ポリフェノール:第2の阻止率向上成分=1:0.1〜5、特に1:0.1〜2の範囲となるように用いることが好ましい。
また、更に低分子量アミノ化合物を用いる場合、低分子量アミノ化合物は、阻止率向上剤(3)中の濃度とRO膜に通水する水溶液量とで算出されるRO膜への合計の供給量として、ポリフェノールと低分子量アミノ化合物の重量比が、ポリフェノール:低分子量アミノ化合物=1:0〜2、特に1:0.1〜1の範囲となるように用いることが好ましい。
(処理手順)
ポリフェノール及び第2の阻止率向上成分、更に低分子量アミノ化合物を併用する場合は、ポリフェノール、第2の阻止率向上成分及び低分子量アミノ化合物のRO膜への通水順序については特に制限はなく、これらを一つの水溶液に添加して1種類の阻止率向上剤(3)を用いて阻止率向上処理を行ってもよいし、これらを別々の水溶液としてRO膜に通水してもよい。
別々に処理を行う場合は、第2の阻止率向上成分による処理を最後に行うことが好ましい。即ち、第2の阻止率向上成分は、ポリフェノールや低分子量アミノ化合物を被覆してこれらの吸着安定性を高めるものであり、第2の阻止率向上成分をポリフェノールや低分子量アミノ化合物よりも先にRO膜に吸着させると、ポリフェノールや低分子量アミノ化合物のRO膜への吸着を阻害するおそれがあり、好ましくない。
具体的な通水順序としては、次のような態様が挙げられる。
(1) ポリフェノールと第2の阻止率向上成分とを含む水溶液をRO膜に通水する。
(2) ポリフェノールを含む水溶液をRO膜に通水した後第2の阻止率向上成分を含む水溶液をRO膜に通水する。
(3) ポリフェノールを含む水溶液をRO膜に通水した後、ポリフェノールと第2の阻止率向上成分を含む水溶液をRO膜に通水する。
(4) ポリフェノールと第2の阻止率向上成分と低分子量アミノ化合物とを含む水溶液をRO膜に通水する。
(5) ポリフェノールと低分子量アミノ化合物とを含む水溶液をRO膜に通水した後第2の阻止率向上成分を含む水溶液をRO膜に通水する。
(6) ポリフェノールと低分子量アミノ化合物とを含む水溶液をRO膜に通水した後、ポリフェノールと低分子量アミノ化合物と第2の阻止率向上成分を含む水溶液をRO膜に通水する。
阻止率向上剤(3)をRO膜に通水する際の圧力は、過度に高いとRO膜の劣化していない箇所への阻止率向上成分の吸着が進むことにより透過流束が低下するという問題があり、過度に低いとRO膜の劣化箇所への阻止率向上成分の接触効率が低下して目的とする阻止率向上効果が得られない場合がある。洗浄装置でRO膜の洗浄後にそのまま本発明を実施することが好ましい点を考慮すると、阻止率向上剤(3)の通水圧力(入口圧力)は、0.1〜0.5MPaであることが好ましい。当該RO膜の通常運転圧力と比較すると10〜150%、特に25〜100%であることが好ましい。阻止率向上処理時の透過流束は、圧力、水温、膜の形状等に関わってくるが、0.1〜1.0m/(md)あることが好ましい。その理由は上述と同様、過度に高いとRO膜の劣化していない箇所への吸着が進むという問題があり、過度に低いとRO膜の劣化箇所への接触効率が悪化するためである。
処理時間としてはそれぞれ1時間以上であれば、特に制限はないが、1時間以上48時間以内であることが好ましい。処理時間が1時間未満であると、阻止率向上成分の定着性が十分得られないまま処理を終了させることになり、RO膜に付着した阻止率向上成分が剥離してしまうことがあり、好ましくない。
処理中の温度(水温)は10〜35℃であることが好ましい。水温が低すぎると透過水量が低下し、阻止率向上成分とRO膜の接触効率が悪化する。水温が高くなりすぎると膜素材の変性等の問題が出てくることが考えられる。
<阻止率向上剤(4)を用いる阻止率向上処理>
阻止率向上剤(4)に用いるアミノ化合物は、アミノ基を有し、分子量1000以下の比較的低分子量のものであり、特に制限はないが、前述の阻止率向上剤(2)において用いる分子量200未満の第1の有機化合物及び分子量200以上500未満の第2の有機化合物として例示したものが挙げられる。
前述の低分子量アミノ化合物の中で、塩基性アミノ酸である、アルギニン(分子量174)、リシン(分子量146)、ヒスチジン(分子量155)を有効に用いることができる。また、ペプチドあるいはその誘導体として、例えば、フェニルアラニンとアスパラギン酸のジペプチドのメチルエステルであるアスパルテーム(分子量294)を有効に用いることができる。
これらの低分子量アミノ化合物は、前述の通り、水に対する溶解性が高く、安定な水溶液として透過膜に通水することができ、前述の如く、膜のカルボキシル基と反応して透過膜に結合し、不溶性の塩を形成して、膜の劣化により生じた穴を塞ぎ、これにより膜の阻止率を高める。
阻止率向上剤(4)で用いる低分子量アミノ化合物の分子量が1000より大きいと、微細な劣化箇所に侵入できないことがあり好ましくない。ただし、アミノ化合物の分子量が過度に小さいと膜の緻密層に留まり難くなる。従って、このアミノ化合物の分子量は、1000以下、特に500以下、とりわけ60〜300であることが好ましい。
これらの低分子量アミノ化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。特に、分子量や骨格構造の異なる低分子量アミノ化合物を2種以上併用し、これらを同時に透過膜に透過させることにより、各々の化合物が膜を透過する際に互いに障害となり、膜内の劣化箇所に滞留する時間が長くなることにより、膜のカルボキシル基と低分子量アミノ化合物のアミノ基との接触確率が高くなり、膜の修復効果が高められるため好ましい。
このため、分子量数十、例えば60〜300程度の低分子量アミノ化合物と分子量が数百、例えば200〜1000程度の低分子量アミノ化合物を併用したり、環状化合物と鎖状化合物を、更には直鎖化合物と分岐状化合物とを併用したりすることが好ましい。
その好ましい組み合わせ例としては、ジアミノ安息香酸と1,9−ジアミノノナン又はアミノペンタンとの併用、その他、アニリンと2−メチルオクタジアミンあるいは、アルギニンとアスパルテームとの併用などが挙げられる。
阻止率向上剤(4)中の低分子量アミノ化合物の含有量は膜の劣化の度合により異なるが、過度に多いと透過流束を低下させることがあり、過度に少ないと修復が不十分になるため、阻止率向上剤(4)中の低分子量アミノ化合物の濃度(2種以上の低分子量アミノ化合物を用いる場合は、その合計濃度)が、1〜1000mg/L、特に5〜500mg/L程度となるようにすることが好ましい。
また、2種以上の低分子量アミノ化合物を用いる場合、各々の低分子量アミノ化合物の濃度に大きな差異があると、これらの併用による効果を得難いことから、最も多く含まれる低分子量アミノ化合物の含有量に対して、最も少なく含まれる低分子量アミノ化合物の含有量が50%以上となるように配合することが好ましい。
阻止率向上剤(4)中に、上記の低分子量アミノ化合物以外の、分子量1000以下の低分子量の有機化合物、例えば、アルコール系化合物やカルボキシル基又はスルホン酸基を有する化合物、具体的にはイソブタノール、サリチル酸又はイソチアゾリン系化合物を、低分子量アミノ化合物と重合しないような程度の濃度、例えば0.1〜100mg/L程度に添加しても良く、これにより、緻密層における立体障害を上げて、目詰めの効果を上げることが期待される。
また、分子量1000〜10000のカルボキシル基、アミノ基、あるいはヒドロキシル基を有する高分子と併用することも有効である。例として、タンニン酸やペプチドを挙げることができる。タンニン酸としては、加水分解型の五倍子、没食子、縮合型のケブラチョ、ミモザなどを挙げることができる。ペプチドとしては、分子量1000以上のポリグリシン、ポリリシン、ポリトリプトファン、ポリアラニンなどを挙げることができる。
また、阻止率向上剤(4)をRO膜に通水するときの給水圧力は、過度に高いと劣化していない箇所への吸着が進むという問題があり、過度に低いと劣化箇所への吸着も進まないことから、当該RO膜の通常運転圧力の30〜150%、特に50〜130%とすることが好ましい。
阻止率向上剤(4)による阻止率向上処理は、常温、例えば10〜35℃程度の温度で行うことができ、その処理時間としては、供給する低分子量アミノ化合物の濃度にも依存し、特に制限とりわけ上限はないが、通常0.5〜100時間、特に1〜50時間程度とすることが好ましい。
[逆浸透膜]
逆浸透膜(RO膜)は、膜を介する溶液間の浸透圧差以上の圧力を高濃度側にかけて、溶質を阻止し、溶媒を透過する液体分離膜である。本発明が適用されるRO膜の膜構造としては、非対称膜、複合膜などの高分子膜などを挙げることができる。RO膜の素材としては、例えば、芳香族系ポリアミド、脂肪族系ポリアミド、これらの複合材などのポリアミド系素材、酢酸セルロースなどのセルロース系素材などを挙げることができる。これらの中で、芳香族系ポリアミド素材の透過膜であって、劣化することによりC−N結合の分断でカルボキシル基を多く有する膜に、本発明のRO膜の阻止率向上方法を特に好適に適用することができる。
また、特に、阻止率向上処理前のRO膜の脱塩率が90%以下である場合、本発明方法を適用するのに好適である。
RO膜のモジュール形式に特に制限はなく、例えば、管状膜モジュール、平面膜モジュール、スパイラル膜モジュール、中空糸膜モジュールなどを挙げることができる。
[水処理方法]
本発明の阻止率向上方法により処理された本発明のRO膜により、被処理水を透過させてRO膜処理を行う本発明の水処理方法では、RO膜の透過流束を高くした状態で阻止率が向上し、かつその高い状態を長く維持することができ、これにより有機物等の除去対象物質の除去効果が高く、長期間にわたって安定処理が可能である。
このため、本発明の阻止率向上方法で処理されたRO膜は、電子デバイス製造分野、半導体製造分野、その他の各種産業分野で排出される高濃度ないし低濃度TOC含有排水の回収・再利用のための水処理、あるいは工業用水や市水からの超純水製造、その他の分野の水処理に有効に適用される。
被処理水の供給、透過の操作は通常のRO膜処理と同様に行うことができるが、カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を含有する被処理水を処理する場合は、原水に分散剤、スケール防止剤、その他の薬剤を添加してもよい。処理対象とする被処理水は特に限定されるものではないが、有機物含有水に好適に用いることができ、例えばTOC=0.01〜100mg/L、好ましくは0.1〜30mg/L程度の有機物含有水の処理に好適に用いられる。このような有機物含有水としては電子デバイス製造工場排水、輸送機械製造工場排水、有機合成工場排水又は印刷製版・塗装工場排水など、あるいはそれらの一次処理水など挙げることができるが、これらに限定されない。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
以下の実施例及び比較例において、通水試験に供した劣化膜と、試験に用いた阻止率向上剤、洗浄液、性能評価水、及び性能評価装置は以下の通りである。
<劣化膜>
純水製造に3年間使用したハイドロノーティックス社製8インチRO膜エレメント「CPA3」
新膜の「CPA3」の透過流束、脱塩率、IPA除去率は、それぞれ、0.90m/(md)、99%、88%である。
なお、評価膜の透過流束、NaCl除去率(脱塩率)、IPA除去率はそれぞれ以下の式より算出した。
透過流束[m/(md)]=
透過液量[m/d]/膜面積[m]×温度換算係数[−]
NaCl除去率[%]=
{1−透過水導電率[mS/m]×2/(被処理水導電率[mS/m]
+濃縮水導電率[mS/m])}×100
IPA除去率[%]=
{1−透過水TOC[mg/L]×2/(被処理水TOC[mg/L]
+濃縮水TOC[mg/L])}×100
<阻止率向上剤>
阻止率向上剤Iの構成成分:10mg/Lアルギニン(味の素ヘルシーサプライ製)、10mg/Lアスパルテーム(味の素ヘルシーサプライ製)、10mg/Lタンニン酸AL(富士化学工業製)
阻止率向上剤IIの構成成分:2mg/Lポリエチレングリコール4000(和光純薬製)、0.5mg/Lポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(SIGMA−ALDRICH製)
<洗浄液>
洗浄液A:0.1mM次亜塩素酸ナトリウムのpH12.5水酸化ナトリウム水溶液(理論有効塩素濃度7mg/L)
洗浄液B:20mM次亜塩素酸ナトリウムと40mMアンモニアのpH11.5水溶液(クロラミン濃度20mM)
洗浄液C:20mM次亜塩素酸ナトリウムと40mMスルファミン酸のpH12.5水酸化ナトリウム水溶液(モノクロロスルファミン濃度20mM)
洗浄液D:80mM次亜塩素酸ナトリウムと160mMスルファミン酸のpH12.5水酸化ナトリウム水溶液(モノクロロスルファミン濃度80mM)
洗浄液E:pH12.5水酸化ナトリウム水溶液
<性能評価水>
NaCl500mg/L、イソプロピルアルコール(IPA)100mg/Lを純水に溶解したもの
<性能評価装置:図3に示すRO試験装置>
このRO試験装置は、8インチ劣化膜エレメント1本を装填するベッセル1の一次側(原水側)に、ポンプPにより被処理水を配管11より供給し、濃縮水を配管12より取り出し、透過水を配管13より取り出すものである。被処理水供給配管11と濃縮水排出配管12にはそれぞれ圧力計2,3が設けられており、濃縮水排出配管12には、圧力調整バルブ4が設けられている。
[実施例1]
洗浄液として洗浄液Aを用い、また、阻止率向上剤として阻止率向上剤Iを用いて、以下の〔1〕から〔6〕の手順で劣化膜を装填した性能評価装置に通水を行った。なお、いずれの工程も水温は25℃±2℃とした。
〔1〕 性能評価水の通水:操作圧力0.75MPa、通水時間2時間
〔2〕 洗浄液による洗浄:洗浄液を0.2MPaで30分通水、その後15時間
浸漬、その後純水に交換して0.2MPaで30分通水
〔3〕 純水通水:操作圧力0.75MPa、通水時間24時間
〔4〕 性能評価水通水:操作圧力0.75MPa、通水時間2時間
〔5〕 阻止率向上剤水溶液通水:操作圧力0.2MPa、通水時間15時間
〔6〕 性能評価水通水:操作圧力0.75MPa、通水時間2時間
〔1〕の性能評価水通水時の評価膜の透過流束、NaCl除去率及びIPA除去率を洗浄前の評価結果、〔4〕の性能評価水通水時の評価膜の透過流束、NaCl除去率及びIPA除去率を洗浄後の評価結果、〔6〕の性能評価水通水時の評価膜の透過流束、NaCl除去率及びIPA除去率を阻止率向上後の評価結果として、それぞれ結果を表1に示した。
[実施例2]
実施例1において、洗浄液として洗浄液Bを用いたこと以外は同様にして通水試験及び評価を行い、結果を表1に示した。
[実施例3]
実施例1において、洗浄液として洗浄液Cを用いたこと以外は同様にして通水試験及び評価を行い、結果を表1に示した。
[実施例4]
実施例1において、洗浄液として洗浄液Dを用いたこと以外は同様にして通水試験及び評価を行い、結果を表1に示した。
[実施例5]
実施例4において、阻止率向上剤として阻止率向上剤IIを用い、〔5〕の阻止率向上剤水溶液の通水時間を3時間としたこと以外は同様にして通水試験及び評価を行い、結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1において、〔2〕の洗浄液による洗浄〜〔4〕の性能評価水通水までの工程を行わなかったこと以外は同様にして通水試験及び評価を行い、結果を表1に示した。
[比較例2]
実施例1において、洗浄液として洗浄液Eを用いたこと以外は同様にして通水試験及び評価を行い、結果を表1に示した。
Figure 2015097990
表1より、阻止率向上処理前に本発明に従ってRO膜を洗浄することにより、透過流束は大きく向上し、また、阻止率も高い値が得られることが分かる。
1 ベッセル
2,3 圧力計
4 開閉バルブ

Claims (6)

  1. 逆浸透膜に阻止率向上剤を接触させる逆浸透膜の阻止率向上方法において、該逆浸透膜と阻止率向上剤との接触に先立ち、該逆浸透膜に、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩、或いはクロラミン化合物を含む、pH10以上のアルカリ性溶液よりなる洗浄液を接触させることを特徴とする逆浸透膜の阻止率向上方法。
  2. 請求項1において、前記洗浄液が、次亜塩素酸及び/又は次亜塩素酸塩(以下「次亜塩素酸(塩)」と称す。)の水溶液をアルカリ剤と水で希釈混合して調製した次亜塩素酸(塩)のアルカリ水溶液であって、
    希釈前の前記次亜塩素酸(塩)水溶液の有効塩素濃度と希釈倍率とで計算により求められる該次亜塩素酸(塩)のアルカリ水溶液の有効塩素濃度が10mg/L以下であることを特徴とする逆浸透膜の阻止率向上方法。
  3. 請求項1において、前記洗浄液が、クロラミン化合物とアルカリ剤とを含む水溶液であることを特徴とする逆浸透膜の阻止率向上方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記阻止率向上剤が以下の(1)〜(4)のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする逆浸透膜の阻止率向上方法。
    (1) 重量平均分子量2,000〜6,000のポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む水溶液
    (2) 分子量200未満の第1の有機化合物と、分子量200以上500未満の第2の有機化合物と、分子量500以上の第3の有機化合物とを含む水溶液
    (3) ポリフェノール、変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含む水溶液、或いは、ポリフェノールを含む水溶液と変性ポリビニルアルコール、高分子多糖類及びポリアミノ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上とを含む水溶液
    (4) アミノ基を有する分子量1000以下の化合物を含む水溶液
  5. 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の阻止率向上方法によって処理された逆浸透膜。
  6. 請求項5に記載の逆浸透膜を用いる水処理方法。
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