以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第一実施形態]
図2は、第一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための模式的な構成図である。第一実施形態の基板処理装置1は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板Wは、この実施形態では、半導体ウエハのような円形基板である。
図2を参照すると、基板処理装置1は、隔壁で区画された1つ又は複数の処理室2を有する。各処理室2内には、1枚の基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック3(基板保持機構、基板保持回転機構)と、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に処理液を供給するための処理液ノズル4と、を備えている。
スピンチャック3は、鉛直な方向に延びる回転軸の上端に水平に取り付けられた円盤状のスピンベース8(保持ベース)と、このスピンベース8上に配置された複数個の挟持部材6と、前記回転軸に結合されたチャック回転駆動機構7とを備えている。スピンベース8は、たとえば、基板Wよりも直径が大きな円盤状の部材である。スピンベース8の上面(保持ベースの表面)は、基板Wよりも直径が大きな円形の平面にされている。
複数個の挟持部材6は、スピンベース8の上面において互いに協働して1枚の基板Wを水平な姿勢で挟持(保持)することができる。チャック回転駆動機構7の駆動力により、挟持部材6で保持された基板Wがその中心を通る鉛直な回転軸線まわりに回転される。
処理液ノズル4は、洗浄処理あるいはエッチング等の目的の処理液をスピンチャック3に保持された基板Wの上面に吐出することができる。処理液ノズル4は、水平に延びるノズルアーム19の先端部に取り付けられている。処理液ノズル4は、その吐出口が下方に向けられた状態で、スピンチャック3よりも上側に配置されている。
ノズルアーム19には、鉛直方向に沿って延びる支持軸20が結合されている。支持軸20は、その中心軸線まわりに揺動可能とされている。支持軸20には、たとえばモータ等で構成されたノズル揺動駆動機構が結合されている。ノズル揺動駆動機構の駆動力により、処理液ノズル4およびノズルアーム19が、支持軸20の中心軸線まわりに一体的に水平移動させられる。これにより、スピンチャック3に保持された基板Wの上方に処理液ノズル4を配置したり、スピンチャック3の上方から処理液ノズル4を退避させたりすることができる。また、スピンチャック3によって基板Wを回転させた状態で、処理液ノズル4からの処理液の液滴を基板Wの上面に供給しつつ、当該処理液ノズル4を所定の角度範囲で揺動させることにより、基板Wの上面における処理液の供給位置を移動させることができる。
処理液ノズル4には、中空構造のノズルアーム19および支持軸20の中を通って処理液供給管27が接続されている。
処理液供給管27には、処理液ノズル4への処理液の供給および供給停止を切り換えるための処理液バルブ28が介装されている。
さらに、ガス供給管39が処理室2内に挿通されている。不活性ガスの一例である窒素ガスがガス供給管39から処理室2内に供給される。これにより、基板Wの上の空間に存在する空気を不活性ガスで置換することができる。このため、該不活性ガスは、スピンチャック3に保持された基板Wの周囲、特に、処理液ノズル4とスピンチャック3の間の空間に供給されることが好ましい。
ガス供給管39には、当該隙間への不活性ガスの供給および供給停止を切り換えるためのガスバルブ41と、当該隙間への不活性ガスの供給流量を調整するガス流量調整バルブ18とが介装されている。
前述した処理液バルブ28とガスバルブ41とガス流量調整バルブ18の各々の開閉動作は制御ユニット5によって制御されるようになっている。
さらに本願発明では、図3に示すように、超純水製造装置のサブシステム9(詳しくは図1参照)からの処理液(超純水)が、基板処理装置1の各処理室2(洗浄機構)に供給される。サブシステム9の処理液出口9aと各基板処理装置1の処理液入口1aとは、半導体製造ラインに主に使われるPVCやPFA、PTFEなどのフッ素樹脂からなるメイン配管10を介して接続されている。各メイン配管10は、各基板処理装置1内を延び、かつ分岐されて、当該基板処理装置1内の各処理室2の処理液ノズル4に連通する処理液供給管27と接続されている。処理液供給管27もまた、PVCやPFA、PTFEなどのフッ素樹脂からなる。
再び図2を参照すると、メイン配管10における処理液入口1a直近の部位、または、当該処理液入口1aから各処理室2へ向かうメイン配管10の最初の分岐点10aまでの間に、触媒ユニット21と膜分離ユニット22とが介装されている。
メイン配管10から触媒ユニット21へ供給する処理液は、溶存水素濃度が50μg/L以上有る水素溶解処理液に調整されている。サブシステム9からメイン配管10へ出水される処理液は、サブシステム9が有する水素溶解処理装置(図1参照)によって処理された、所定の溶存水素濃度を有する水素溶解水である。しかし、図2の触媒ユニット21の直前の位置で、当該水素溶解水の溶存水素濃度が50μg/Lに満たない場合は、当該水素溶解水に水素を添加して当該水素溶解水の溶存水素濃度が50μg/L以上に調整されている。この場合、触媒ユニット21の直前の配管部分に水素ガス導入装置(不図示)が設けられる。
触媒ユニット21は、触媒ユニット21を通して得た水素溶解処理液における溶存酸素濃度を2μg/L以下、過酸化水素濃度を2μg/L以下に減じる白金族系金属触媒を充填した態様を有する。例えば、パラジウム触媒を充填した触媒ユニットや、パラジウム触媒をモノリスに担持した触媒ユニットが挙げられるが、当該白金族系金属触媒のより詳細な具体例については後で記載することにする(第三実施形態を参照)。
膜分離ユニット22は、触媒ユニット21から最初の分岐点10aまでの配管部分に配置され、精密濾過膜(MF)、限外濾過膜(UF)、またはナノフィルター(NF)を含む。
本発明態様によれば、次のような課題を解決できる。
サブシステム9によって溶存酸素が減少した水素溶解水が調製されても、その水素溶解水がサブシステム9から長い配管を介して基板処理装置1へ送液される過程で空気が配管を透過して、該配管内の水素溶解水における溶存酸素量が増えてしまう。この水素溶解水を基板処理液として使用すると、被処理基板の表面に露出した配線が腐食(すなわち金属の溶出や酸化)するという問題が生じる。近年のパターン寸法の微細化により、銅、タングステン、モリブテン等からなる配線の膜厚も薄膜化しているため、わずかな腐食でも半導体回路素子の性能に多大な影響を及ぼすことが想定される。
こうした問題に鑑み、本発明態様では、基板処理装置1の水素溶解水入水口もしくは内部(被処理基板Wが配置された処理室2に極力近い処理液供給管27)に上記の触媒ユニット21および膜分離ユニット22を設け、かつ処理室2内に不活性ガスを充填する機構(ガス供給管39、ガスバルブ41等)を設けることにより、被処理基板の表面における酸素ガス濃度が所定値以下に低減した処理室2内において、酸素および過酸化水素が所定値以下に低減された水素溶解処理液を用いて被処理基板を処理することができる。このため、被処理基板の表面に露出した配線の腐食を従来の基板処理装置に比べて一層抑制することができる。
<変形態様1>
上述した図2の態様は、触媒ユニット21と膜分離ユニット22とを含む手段を用いて水素溶解水から溶存酸素と過酸化水素を除去した後、それらが除去された水素溶解処理液を各々の処理室2へ送るようになっているが、本発明は図4の態様を採ることも出来る。図4の態様では、触媒ユニット21と膜分離ユニット22とを含む手段が、各処理室2に配設される処理液供給管27ごとに設置されている。この態様によると、触媒ユニット21と膜分離ユニット22とを含む手段を、図2の態様に比べて処理室2の近くに配置できる。このため、当該手段の膜分離ユニット22から処理室2の処理液ノズル4までの配管も短くなり、したがって、処理室2内の基板に吐出させる処理液に酸素が含まれてしまう確率をより下げることが出来る。
さらに、図4の態様では、膜分離ユニット22から処理液バルブ28までの配管部分に排水管23が接続されている。排水管23には、排水および排水停止を切り換えるための排水バルブ24が介装されている。排水バルブ24の開閉動作もまた、制御ユニット5により制御されるようになっている。図4の態様のように処理室2の処理液ノズル4から触媒ユニット21までの距離が短くなると、処理室2での基板処理を停止している間触媒ユニット21に水素溶解処理液が停滞することがあり、その場合不純物が処理液供給管27に溶出するおそれがある。このため、処理室2での基板処理が一定時間停止した場合は、処理液供給管27内の水素溶解処理液を排水管23より排水(ブロー)してから基板Wへ新しい水素溶解処理液を供給するようにされている。
処理液供給管27に溶出した不純物を排出する他の方法としては、処理液ノズル4の位置を基板Wの上部から外した状態で処理液バルブ28を開き、処理液供給管27内に滞留した水素溶解処理液を排出する方法を用いることもできる。この場合、排水管23および排水バルブ24は不要である。
<変形態様2>
上述した図2の態様では、触媒ユニット21と膜分離ユニット22とを含む手段を用いて水素溶解水から溶存酸素と過酸化水素を除去した後、それらが除去された水素溶解処理液を各々の処理室2へ送っているが、本発明は図5の態様を採ることも出来る。すなわち、溶存酸素と過酸化水素が除去された水素溶解処理液に薬液を混合して希釈水を調製し、処理液ノズル4に供給する態様である。これは触媒ユニット21に通せない薬液を用いる場合に有効である。
図5を参照すると、薬液調製ユニット51が、図2に示した態様における処理液供給配管27に追加されている。
薬液調製ユニット51は、触媒ユニット21と膜分離ユニット22とを含む手段を用いて溶存酸素と過酸化水素が除去された水素溶解処理液と、薬液原液と、をその内部で混合することができる配管としての混合部52(マニホールド)を具備する。
混合部52には、薬液原液を供給する第一の薬液供給管53が接続されている。第一の薬液供給管53には、薬液バルブ54と薬液流量調整バルブ55が介装されている。
“薬液原液”とは、不活性ガス溶存水との混合前の薬液を意味する。薬液原液の例としては、フッ化水素酸(HF)、塩酸(HCL)、IPA(イソプロピルアルコール)、フッ化水素酸とIPA(イソプロピルアルコール)の混合液、フッ化アンモニウム(NH4F)を例示できる。エッチング目的の薬液原液としてフッ化水素酸を用いた場合には、混合部52において、フッ化水素酸と水素溶解処理液とが所定の割合で混合(調合)され、希フッ酸(DHF)が生成される。
薬液バルブ54を開くことにより、薬液流量調整バルブ55で調整された所定流量の薬液原液を混合部52に供給することができる。処理液バルブ28を開いた状態で、薬液バルブ54を開くことにより、混合部52内を流通している水素溶解処理液に薬液原液を注入(インジェクション)して、薬液原液と水素溶解処理液とを混合させることができる。
したがって、混合部52に対する薬液原液の供給量と水素溶解処理液の供給量とを調整することにより、所定の割合に希釈された薬液を調製することができる。
また、薬液バルブ54を開かずに、処理液バルブ28のみを開くことにより、混合部52に対して水素溶解処理液のみを供給することができる。これにより、水素溶解処理液に薬液原液を混合させることなく、当該水素溶解処理液をリンス液としてそのまま処理液ノズル4に供給することができる。
第一の薬液供給管53の端部は、薬液原液を貯留する薬液タンク56の内部に挿入されている。薬液タンク56は密閉容器からなるものであり、薬液タンク56の内部空間は、その外部空間から遮断されている。第一の薬液供給管53には、薬液バルブ54と薬液タンク56の間にポンプ57が介装されている。さらに第一の薬液供給管53にはポンプ57の下流側に、図示しないフィルタと脱気ユニットが介装されていることが好ましい。なお、第一の薬液供給管53はポンプ57の下流で、薬液バルブ54や混合部52へ向かう経路と他の処理室へ向かう経路とに2分岐している。
また、薬液タンク56には、第二の薬液供給管75が接続されている。薬液タンク56には、薬液供給管75を介して、図示しない薬液原液供給源からの薬液原液が供給される。第二の薬液供給管75には、薬液タンク56への薬液原液の供給および供給停止を切り換えるための薬液バルブ76が介装されている。薬液タンク56には、たとえば、薬液タンク56内の液量が所定量以下になった場合に未使用の薬液原液が供給されるようになっている。これにより、薬液タンク56に未使用の薬液原液を補充することができる。
さらに、薬液タンク56には、不活性ガス供給管77が接続されている。薬液タンク56には、不活性ガス供給管77を介して、図示しない不活性ガス供給源からの不活性ガスが供給される。不活性ガス供給管77には、薬液タンク56への不活性ガスの供給および供給停止を切り換えるための不活性ガスバルブ78が介装されている。薬液タンク56には、たとえば常時、不活性ガスが供給されるようになっている。この変形態様では、不活性ガス供給管77および不活性ガスバルブ78により不活性ガス供給手段が構成されている。
薬液タンク56に不活性ガスを供給することにより、薬液タンク56内から空気を追い出すことができる。したがって、薬液タンク56内の空気に含まれる酸素が、薬液タンク56内に貯留された薬液原液に溶け込んで、当該薬液原液中の溶存酸素量が増加することを抑制または防止することができる。また、不活性ガスによって薬液タンク56内を加圧することにより、薬液タンク56内に貯留された薬液原液を第一の薬液供給管53に圧送することも可能である。
薬液タンク56内の薬液原液は、不活性ガスによる圧力や、ポンプ57による吸引力により、薬液タンク56から汲み出されて、第一の薬液供給管53に送られる。このとき、ポンプ57のすぐ下流にフィルタと脱気ユニットが設けられていると、ポンプ57で汲み出された薬液原液はフィルタを通過して液中の異物が除去される。さらに、該フィルタを通過した薬液原液は、脱気ユニットによって脱気され、溶存酸素量が低減される。この結果、混合ユニット52に、溶存酸素量が低減された薬液原液を供給することができ、本発明の効果をより高められる。
なお、この変形態様2を、図4に示した変形態様1に適用してもよい。この場合は、当該変形態様1における触媒ユニット21と膜分離ユニット22の間の配管部分に、薬液調製ユニット51が構成されることが好ましい。
<変形態様3>
前述した図5の態様では、処理液供給管27の一部である混合部52内を流通している水素溶解処理液に薬液原液を注入して、薬液原液と水素溶解処理液とを混合させているが、本発明は図6の態様を採ることも出来る。すなわち、処理液供給管27を流通させる水素溶解処理液と、薬液原液とをタンク内に導入して、その薬液原液を水素溶解処理液で希釈し、処理液ノズル4に供給する態様である。これは、触媒ユニット21に通せない薬液を用いる場合であって、かつ、図5の態様(配管内の混合ユニット)では目標の希釈倍率を実現しにくい場合に有効である。
図6を参照すると、薬液調製ユニット81が、図2に示した態様における処理液供給配管27に追加されている。
薬液調製ユニット81は、触媒ユニット21と膜分離ユニット22とを含む手段を用いて溶存酸素と過酸化水素が除去された水素溶解処理液と、薬液原液と、を受容して希釈薬液を調製する薬液希釈タンク82を具備する。薬液希釈タンク82は密閉容器からなるものであり、薬液希釈タンク82の内部空間は、その外部空間から遮断されている。
薬液希釈タンク82内には希釈薬液を供給する希釈薬液供給管83の一端が挿入されている。希釈薬液供給管83の他端は、処理液バルブ28より下流側にある処理液供給管27の部分に接続されている。希釈薬液供給管83には、処理液供給管27への希釈薬液の供給および供給停止を切り換えるための希釈薬液バルブ84が介装されている。
さらに希釈薬液供給管83には、希釈薬液バルブ84と薬液希釈タンク82の間にポンプ57が介装されている。ポンプ57の下流側にある希釈薬液供給管83の部分には、図示しないフィルタと脱気ユニットが介装されていることが好ましい。なお、希釈薬液供給管83はポンプ57の下流で、希釈薬液バルブ84へ向かう経路と他の処理室へ向かう経路とに2分岐している。
また、薬液希釈タンク82内には、水素溶解処理液を供給する第二の処理液供給管85の一端が挿入されている。第二の処理液供給管85の他端は、処理液バルブ28より上流側にある処理液供給管27の部分に接続されている。第二の処理液供給管85には、薬液希釈タンク82への水素溶解処理液の供給および供給停止を切り換えるための処理液バルブ86と、薬液希釈タンク82へ供給される水素溶解処理液を所定の流量に調整する処理液流量調整バルブ87と、が介装されている。
薬液希釈タンク82には薬液供給管75が接続されている。薬液希釈タンク82内に、薬液供給管75を介して、図示しない薬液原液供給源からの薬液原液が供給される。薬液供給管75には、薬液希釈タンク82への薬液原液の供給および供給停止を切り換えるための薬液バルブ76と、薬液希釈タンク82へ供給される薬液原液を所定の流量に調整する薬液流量調整バルブ79と、が介装されている。
さらに、薬液希釈タンク82には、不活性ガス供給管77が接続されている。薬液希釈タンク82には、不活性ガス供給管77を介して、図示しない不活性ガス供給源からの不活性ガスが供給される。不活性ガス供給管77には、薬液希釈タンク82への不活性ガスの供給および供給停止を切り換えるための不活性ガスバルブ78が介装されている。薬液タンク56には、たとえば常時、不活性ガスが供給されるようになっている。不活性ガス供給管77および不活性ガスバルブ78により不活性ガス供給手段が構成されている。
この態様では、処理液バルブ28を開かずに、別の処理液バルブ86を開くことにより、処理液流量調整バルブ87で調整された所定流量の水素溶解処理液を薬液希釈タンク82に供給することができる。また、処理液バルブ28を開かずに、薬液原液バルブ76を開くことにより、薬液流量調整バルブ79で調整された所定流量の薬液原液を薬液希釈タンク82に供給することができる。これらの操作により、薬液希釈タンク82内において薬液原液と水素溶解処理液とを混合させることができる。したがって、処理液流量調整バルブ87と薬液流量調整バルブ79とを用いて薬液原液の供給量と水素溶解処理液の供給量とを調整することにより、所定の割合に希釈された薬液を薬液希釈タンク82内で調製することができる。そして、処理液バルブ28を開かずに、希釈薬液バルブ84のみを開くことにより、処理液ノズル4に希釈薬液を供給することができる。
他方、希釈薬液バルブ84を開かずに、処理液バルブ28のみを開くことにより、処理室2に対して水素溶解処理液のみを供給することができる。これにより、水素溶解処理液に薬液原液を混合させることなく、当該水素溶解処理液をリンス液としてそのまま処理液ノズル4に供給することができる。
また、不活性ガス供給管77を用いて薬液希釈タンク82に不活性ガスを供給することにより、薬液希釈タンク82内から空気を追い出すことができる。したがって、薬液希釈タンク82内の空気に含まれる酸素が、薬液希釈タンク82内に貯留された希釈薬液に溶け込んで、当該希釈薬液中の溶存酸素量が増加することを抑制または防止することができる。また、不活性ガスによって薬液希釈タンク82内を加圧することにより、薬液希釈タンク82内の希釈薬液を希釈薬液供給管83に圧送することも可能である。
薬液希釈タンク82内の希釈薬液は、不活性ガスによる圧力や、ポンプ57による吸引力により、薬液希釈タンク82から汲み出されて、希釈薬液供給管83に送られる。このとき、ポンプ57のすぐ下流にフィルタと脱気ユニットが設けられていると、ポンプ57で汲み出された希釈薬液はフィルタを通過して液中の異物が除去される。さらに、該フィルタを通過した希釈薬液は、脱気ユニットによって脱気され、溶存酸素量が低減される。この結果、処理液供給管27に、溶存酸素量が低減された希釈薬液を供給することができ、本発明の効果をより高められる。
なお、この変形態様3を、図4に示した変形態様1に適用してもよい。この場合は、当該変形態様1における触媒ユニット21と膜分離ユニット22の間の配管部分に、薬液調製ユニット81を配置することが好ましい。
さらに、この変形態様3では、水素溶解処理液の他の処理液(例えばオゾン水などの、水素添加を必要としない処理水)を処理液ノズル4に供給する他の処理液供給管90が、処理液バルブ28より下流側にある処理液供給管27の部分に接続されていてもよい。処理液供給管90には、処理液ノズル4への他の処理液の供給および供給停止を切り換えるための処理液バルブ91が介装されている。制御ユニット5によって、処理液バルブ28、処理液バルブ91、および希釈薬液バルブ84の各々の開閉動作を切り替えることにより、処理液を選択することが出来る。
<変形態様4>
上述した各種態様の処理液ノズル4はノズルアーム19および支持軸20に保持されているが、図7に示す態様であってもよい。ノズルアーム19および支持軸20に保持された処理液ノズル4に替わって、図7の態様は遮断板11を備えている。
図7を参照すると、遮断板11は、厚みがほぼ一定の円板状の部材である。遮断板11の直径は、基板Wより大きくされている。遮断板11は、遮断板11は、その中心軸線がスピンチャック3の回転軸線と共通の軸線上に位置するように、スピンチャック3の上方で水平に配置されている。
遮断板11の外周部は、全周にわたって下方に折り曲げられている。遮断板11の外周部は、筒状の周壁部32を形成している。遮断板11において周壁部32の内側の部分が、円形をなす平板部33を形成している。平板部33の下面は、平面に形成されており、スピンチャック3に保持された基板Wの上面に平行となっている。この平板部33の下面が、スピンチャック3に保持された基板Wに対向する基板対向面34となっている。基板対向面34は、スピンチャック3に保持された基板Wに対向するとともに、スピンベース8の上面に対向している。周壁部32は、基板対向面34の周囲からスピンチャック3に向かって突出している。
遮断板11の中央部は、その遮断板11を支持する中空構造の支軸31を有し、支軸31内に処理液供給管27が挿通されている。遮断板11には1つ又は複数の吐出口(不図示)が形成されて、支軸31の内部空間に連通している。支軸31の内部空間に処理液供給管27を介して処理液が供給される。これにより、遮断板11に形成された吐出口から、スピンチャック3に保持された基板Wの上面部に向けて処理液を吐出させることができる。
さらに、ガス供給管39が支軸31内に挿通されている。不活性ガスの一例である窒素ガスがガス供給管39から支軸31の内部空間に供給される。支軸31の内部空間に供給された不活性ガスは、遮断板11に形成された吐出口(不図示)から下方に向けて吐出される。このため、遮断板11と、スピンチャック3に保持された基板Wとの間の空間(隙間)に、不活性ガスを供給することができる。
ガス供給管39には、当該隙間への不活性ガスの供給および供給停止を切り換えるためのガスバルブ41と、当該隙間への不活性ガスの供給流量を調整するガス流量調整バルブ18とが介装されている。
また、支軸31には、遮断板昇降駆動機構(遮断部材移動機構)および遮断板回転駆動機構が結合されている。その遮断板昇降駆動機構の駆動力により、支軸31および遮断板11を、基板対向面34がスピンベース8の上面に接近した処理位置と、スピンベース8の上面から大きく離反した退避位置との間で一体的に昇降させることができる。さらに、その遮断板回転駆動機構の駆動力により、支軸31および遮断板11を、基板Wと共通の軸線まわりに一体的に回転させることができる。これにより、たとえば、スピンチャック3による基板Wの回転にほぼ同期させて(あるいは若干回転速度を異ならせて)支軸31および遮断板11を回転させることができる。
図7の態様では、スピンチャック3に基板Wが保持された状態で遮断板11を処理位置に位置させ、さらに、基板対向面34に位置する吐出口から不活性ガスを吐出させると、当該不活性ガスは、スピンチャック3に保持された基板Wの上面と基板対向面34との間の空間を外方に向かって広がっていく。したがって、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間に存在する空気は、不活性ガスによって外方に押し出され、周壁部32の先端縁とスピンベース8の上面との間に形成された隙間から排出される。これにより、基板Wの上面と基板対向面34との間の雰囲気を不活性ガスで置換することができる。
さらに、スピンチャック3に基板Wが保持された状態で遮断板11を処理位置に位置させると、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間を周壁部32によって取り囲むことができるので、当該空間の外周部にその周囲の空気が進入することを抑制または防止することができる。これにより、基板Wの上面と基板対向面34との間の雰囲気が不活性ガス雰囲気に置換された後に、基板Wの上面と基板対向面34との間の空間に空気が進入して、当該空間の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。
<変形態様5>
これまで説明してきた各種態様は、基板Wを保持したスピンチェック3の上方に処理液ノズル4が配置されるノズル態様か、あるいは、処理液の吐出口が形成された遮断板11がスピンチェック3の上方に配置される遮断板態様のいずれかであった。しかし本発明は、図8に示す態様のように前記ノズル態様と遮断板態様の両方を備えていてもよい。
また、処理液ノズルは1つだけでなく、洗浄やエッチング等の処理の目的ごと、または処理液の種類ごとに設けられていてもよい。例えば図8に示すように、基板Wの周端部を洗浄するための処理液ノズル4aが処理室2内に設置されてもよい。遮断板11、特に基板対向面34を洗浄するための処理液ノズル(不図示)が設けられていてもよい。あるいは、基板保持機構であるスピンチャック3の内部に処理液供給管27を通して、基板Wの下面に処理液を供給するといった態様も採ることが出来る。
また、処理液ノズルは、たとえば、ノズル内に供給された処理液と不活性ガスを混合させて処理液の液滴を生成する二流体ノズルであってもよい。
<変形態様6>
図9は、本発明に係る基板処理装置1に用いられる配管の好ましい態様を示す図である。
上述した、触媒ユニット21から処理液ノズル4または遮断板11に形成された吐出口へ至る配管、触媒ユニット21から薬液希釈タンク82へ至る配管、薬液希釈タンク82から処理液ノズル4または遮断板11に形成された吐出口へ至る配管のいずれか、またはすべてが、図9に示す態様にされていることが好ましい。ここでの説明では、全ての配管を総称して「配管100」とする。
図9を参照すると、配管100は、2重構造にされており、処理液が流通する内側配管101と、この内側配管101を取り囲む外側配管102とを有している。内側配管101は、外側配管102の内部において、内側配管101と外側配管102との間に介在する支持部材(図示せず)によって支持されている。内側配管101は、外側配管102に対して非接触状態で支持されている。内側配管101と外側配管102との間には筒状の空間が形成されている。内側配管101は、たとえば耐薬液性および耐熱性に優れたPFA、PTFEなどのフッ素樹脂製である。フッ素樹脂は、酸素を透過させることができる。外側配管は、たとえば、PVC製やフッ素樹脂製の管を用いることができる。
また、外側配管102には、不活性ガスバルブ103が介装された不活性ガス供給管104と、排気バルブ105が介装された排気配管106とが接続されている。不活性ガスバルブ103を開くことにより、不活性ガス供給管104を介して、図示しない不活性ガス供給源(たとえば、窒素ガス)からの不活性ガスを外側配管102の内部に供給することができる。これにより、内側配管101と外側配管102との間に不活性ガスを充填することができる。不活性ガスバルブ103と不活性ガス供給管104により不活性ガス充填手段が構成されている。また、排気バルブ105を開くことにより、内側配管101と外側配管102との間から気体を排気させることができる。
排気バルブ105を開いた状態で、不活性ガスバルブ103を開くことにより、内側配管101と外側配管102との間から空気を追い出して、この間の雰囲気を不活性ガス雰囲気に置換することができる。これにより、内側配管101を不活性ガスにより包囲することができる。そして、内側配管101と外側配管102との間の雰囲気が不活性ガス雰囲気に置換された後、不活性ガスバルブ103と排気バルブ105を閉じることにより、内側配管101が不活性ガスによって包囲された状態を維持することができる。
内側配管101を不活性ガスにより包囲することにより、内側配管101の管壁を介して内側配管101の内部に進入する酸素の量を低減することができる。これにより、内側配管101内を流通する処理液に酸素が溶け込んで、当該処理液中の酸素濃度が上昇することを抑制または防止することができる。
[第二実施形態]
上述した第一実施形態の処理室2は枚葉式の洗浄機構を備えるものであったが、本発明に含まれる処理室はこれに限らず、バッチ式の洗浄機構を備えた処理室であってもよい。
図10に、図5の態様(変形態様2)の処理室を、バッチ式の洗浄機構を備えた処理室に替えた例を示す。しかし、この図は一例であり、当該バッチ式の洗浄機構を備えた処理室2には、上述した変形態様2だけでなく、上述した他の変形態様1〜6の各々又はすべてを適用することが出来る。なお、第一実施形態と同じ構成要素には同一符号を付して、その構成要素の説明は第一実施形態と同じなので割愛する。
図10を参照すると、第二実施形態の基板処理装置1の処理室2は、処理液を貯留していて当該処理液で基板Wを洗浄処理するための処理槽201を有する。処理槽201の外周には、処理槽201から溢れた処理液を受容するオーバフロー部202が設けられている。
処理室2内には、基板Wを処理槽201内に搬送するための基板搬送機構(不図示)も備えられている。基板搬送機構としてはリフタとチャックが用いられる。チャックは、複数枚の基板Wを一括して保持した状態で、処理室2の外から処理槽201の上方まで搬送するものである。リフタは、処理槽201の上方において該チャックから複数枚の基板Wを受け取り、これらの複数枚の基板Wを一括して支持した状態で下降し、処理槽201に貯留された処理液中に浸漬するものである。
処理槽201の底部には、処理槽201内に処理液を供給する処理液ノズル203が配設されている。各々の処理液ノズル203には、処理液供給管27から分岐した配管が接続されている。各処理液ノズル203には、処理液を基板Wに向けて噴出する多数の噴出口が形成されている。
処理液は、第一実施形態で説明したように、触媒ユニット21と膜分離ユニット22とを含む手段を用いて溶存酸素と過酸化水素とが除去された水素溶解処理液である。
噴出した処理液が処理槽201内に貯留されていき、処理槽201の上端部よりオーバフローする。基板Wは、このときの処理液の上昇流によって均一に洗浄される。
基板Wの洗浄処理に供され、処理槽201の上端部からオーバフローした処理液は、処理槽201の外周に形成されたオーバフロー部202に一時的に貯留される。オーバフロー部202の底部には、比抵抗計205を有する排水管206が接続されている。このため、オーバフロー部202に一時的に貯留された純水は、比抵抗計205を通過した後、基板処理装置1の外へ排出される。
この比抵抗計205は、基板Wの洗浄に供された処理液の比抵抗値を測定することにより、処理液の清浄度を測定し、この測定値に基づいて基板Wの洗浄度を判断する目的で使用される。
また、処理槽201内に貯留された処理液を急速に排出するために、処理槽201の底部には比較的大径の排出口204が形成されている。排出口204には、処理液を基板処理装置1の外へ排出する排水管207が接続されている。排水管207には、制御ユニット5によって開閉動作される排水バルブ208が介装されている。
処理槽201の上方に、処理槽201の開口を開閉可能に作動する一対の蓋部材209が配設されている。各蓋部材209には吐出口が開口しており、該吐出口に、ガス供給管39から分岐した配管が接続されている。これにより、蓋部材209で蓋をされた処理槽201内に不活性ガスを供給して、処理槽201内における処理液の上方の空間を不活性ガスでパージすることが出来る。
このように、処理槽201内に不活性ガスを供給するノズルを設けることなく、蓋部材209に不活性ガスの吐出口を形成することにより、処理槽201と蓋部材209からなる上下方向のスペースを小さくすることができ、基板処理装置1全体が大型化することを防止することが可能となる。また、処理槽201に貯留される処理液の液面と蓋部材209の下面との距離を小さくすることが可能となるので、処理槽201内に供給する不活性ガスの量をより少なくすることが可能となる。
[第三実施形態]
上述した基板処理装置1の触媒ユニット21に使用される、溶存酸素除去と過酸化水素除去のための触媒の具体例について詳述する。
<溶存酸素除去と過酸化水素除去のための触媒>
当該触媒としては、白金族金属が担持された粒状のイオン交換樹脂、金属イオン型の粒状の陽イオン交換樹脂、白金族金属が担持された非粒状の有機多孔質体又は白金族金属が担持された非粒状の有機多孔質イオン交換体が挙げられる。
<白金族金属担持非粒状有機多孔質体、白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体>
白金族金属担持非粒状有機多孔質体としては、非粒状有機多孔質体に、平均粒子径1〜1000nmの白金族金属の微粒子が担持されており、非粒状有機多孔質体が、連続骨格相と連続空孔相からなり、連続骨格の厚みは1〜100μm、連続空孔の平均直径は1〜1000μm、全細孔容積は0.5〜50ml/gであり、白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%である白金族金属担持非粒状有機多孔質体が挙げられる。
また、白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体としては、非粒状有機多孔質イオン交換体に、平均粒子径1〜1000nmの白金族金属の微粒子が担持されており、非粒状有機多孔質イオン交換体は、連続骨格相と連続空孔相からなり、連続骨格の厚みは1〜100μm、連続空孔の平均直径は1〜1000μm、全細孔容積は0.5〜50ml/gであり、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量は1〜6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、白金族金属の担持量が、乾燥状態で0.004〜20重量%である白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体が挙げられる。
なお、非粒状有機多孔質体又は非粒状有機多孔質イオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定され、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。また、非粒状有機多孔質体又は非粒状有機多孔質イオン交換体の構造、及び連続骨格の厚みは、SEM観察により求められる。非粒有機多孔質体又は非粒状有機多孔質イオン交換体に担持されている白金族金属のナノ粒子の粒子径は、TEM観察により求められる。
上記の白金族金属担持非粒状有機多孔質体又は白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体は、非粒状有機多孔質体又は非粒状有機多孔質イオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属が担持されているので、高い過酸化水素分解触媒活性を示し、且つ、200〜20000h−1好ましくは2000〜20000h−1の空間速度(SV)で被処理水を通水させることができる。
白金族金属担持非粒状有機多孔質体において、白金族金属が担持されている担体は、非粒状有機多孔質体であるが、この非粒状有機多孔質交換体とは、モノリス状有機多孔質交換体である。また、白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体において、白金族金属が担持されている担体は、非粒状有機多孔質イオン交換体であるが、この非粒状有機多孔質イオン交換体とは、モノリス状有機多孔質イオン交換体であり、モノリス状有機多孔質体にイオン交換基が導入されたものである。
モノリス状有機多孔質体は、骨格が有機ポリマーにより形成されており、骨格間に反応液の流路となる連通孔を多数有する多孔質体である。そして、モノリス状有機多孔質イオン交換体は、このモノリス状有機多孔質体の骨格中にイオン交換基が均一に分布するように導入されている多孔質体である。なお、本明細書中、「モノリス状有機多孔質体」を単に「モノリス」と、「モノリス状有機多孔質イオン交換体」を単に「モノリスイオン交換体」とも言い、また、モノリスの製造における中間体(前駆体)である「モノリス状有機多孔質中間体」を単に「モノリス中間体」とも言う。
このようなモノリス又はモノリスイオン交換体の構造例としては、特開2002−306976号公報や特開2009−62512号公報に開示されている連続気泡構造や、特開2009−67982号公報に開示されている共連続構造や、特開2009−7550号公報に開示されている粒子凝集型構造や、特開2009−108294号公報に開示されている粒子複合型構造等が挙げられる。
上記モノリス、すなわち、白金族金属粒子の担体となるモノリスの形態例(以下、モノリス(1)とも記載する。)及び上記モノリスイオン交換体、すなわち、白金族金属粒子の担体となるモノリスイオン交換体の形態例(以下、モノリスイオン交換体(1)とも記載する。)としては、特開2009−67982号公報に開示されている共連続構造を有するモノリス及びモノリスイオン交換体が挙げられる。
つまり、モノリス(1)は、イオン交換基が導入される前のモノリスであり、全構成単位中、架橋構造単位を0.1〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが乾燥状態で1〜100μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で1〜1000μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜50ml/gである有機多孔質体であるモノリスである。
また、モノリスイオン交換体(1)は、全構成単位中、架橋構造単位を0.1〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが乾燥状態で1〜100μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で1〜1000μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、乾燥状態での全細孔容積が0.5〜50ml/gであり、イオン交換基を有しており、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しているモノリスイオン交換体であるモノリスイオン交換体である。
モノリス(1)又はモノリスイオン交換体(1)は、平均太さが乾燥状態で1〜100μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が乾燥状態で1〜1000μm、好ましくは15〜180μm、特に好ましくは20〜150μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。共連続構造とは、連続する骨格相と連続する空孔相とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造である。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがない。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
三次元的に連続した空孔の平均直径が乾燥状態で1μm未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、1000μmを超えると、反応液とモノリス又はモノリスイオン交換体との接触が不十分となり、その結果、触媒活性が不十分となるため好ましくない。また、骨格の平均太さが乾燥状態で1μm未満であると、高流速で通液した際にモノリス又はモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリス又はモノリスイオン交換体との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくない。一方、骨格の太さが100μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、通液時の圧力損失が増大するため好ましくない。
乾燥状態のモノリス(1)の開口の平均直径、モノリスイオン交換体(1)の開口の平均直径及び以下に述べるモノリスの製造のI処理で得られる、乾燥状態のモノリス中間体(1)の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定され、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値を指す。また、モノリス(1)又はモノリスイオン交換体(1)の骨格の乾燥状態での平均太さは、乾燥状態のモノリス(1)又はモノリスイオン交換体(1)のSEM観察により求められる。具体的には、乾燥状態のモノリス(1)又はモノリスイオン交換体(1)のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、それらの平均値を平均太さとする。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
また、モノリス(1)又はモノリスイオン交換体(1)の乾燥状態での重量当りの全細孔容積は、0.5〜50ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通液時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過量が小さくなり、処理量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が50ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通液した際にモノリス又はモノリスイオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、反応液とモノリス(1)又はモノリスイオン交換体(1)との接触効率が低下するため、触媒効率も低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、反応液との接触が極めて均一で接触面積も大きく、かつ低圧力損失下での通液が可能となる。
モノリス(1)又はモノリスイオン交換体(1)において、骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.1〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.1モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリビニルトルエン、ポリビニルベンジルクロライド、ポリビニルビフェニル、ポリビニルナフタレン等が挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、イオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および、酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
モノリスイオン交換体(1)において、導入されているイオン交換基は、モノリスの表面のみならず、モノリスの骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「イオン交換基が均一に分布している」とは、イオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。イオン交換基の分布状況は、EPMAを用いることで簡単に確認される。また、イオン交換基が、モノリスの表面のみならず、モノリスの骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
モノリスイオン交換体(1)に導入されているイオン交換基は、カチオン交換基又はアニオン交換基である。カチオン交換基としては、カルボン酸基、イミノ二酢酸基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基等が挙げられる。アニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基や、第三スルホニウム基、ホスホニウム基等が挙げられる。
モノリスイオン交換体(1)は、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1〜6mg当量/gのイオン交換容量を有する。モノリスイオン交換体(1)は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのイオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。重量当りのイオン交換容量が上記範囲にあることにより、触媒内部のpHなど触媒活性点の周りの環境を変えることができ、これにより触媒活性が高くなる。モノリスイオン交換体(1)がモノリスアニオン交換体の場合は、モノリスアニオン交換体(1)には、アニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのアニオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。また、モノリスイオン交換体(1)がモノリスカチオン交換体の場合は、モノリスカチオン交換体(1)には、カチオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのカチオン交換容量は、1〜6mg当量/gである。
モノリス(1)は、特開2009−67982号公報に開示されているモノリス状有機多孔質体の製造方法を行うことにより得られる。つまり、当該製法は、イオン交換基を含まない油溶性モノマー、界面活性剤及び水の混合物を撹拌することにより油中水滴型エマルジョンを調製し、次いで油中水滴型エマルジョンを重合させて全細孔容積が16ml/gを超え、30ml/g以下の連続マクロポア構造のモノリス状の有機多孔質中間体(以下、モノリス中間体(1)とも記載する。)を得るI処理、芳香族ビニルモノマー、一分子中に少なくとも2個以上のビニル基を有する全油溶性モノマー中、0.3〜5モル%の架橋剤、芳香族ビニルモノマーや架橋剤は溶解するが芳香族ビニルモノマーが重合して生成するポリマーは溶解しない有機溶媒及び重合開始剤からなる混合物を調製するII処理、II処理で得られた混合物を静置下、且つI処理で得られたモノリス中間体(1)の存在下に重合を行い、共連続構造体である有機多孔質体であるモノリス(1)を得るIII処理、を含む。
白金族金属担持非粒状有機多孔質体又は白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体には、白金族金属が担持されている。白金族金属とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金である。これらの白金族金属は、一種類を単独で用いても、二種類以上の金属を組み合わせて用いても良く、更に、二種類以上の金属を合金として用いても良い。これらの中で、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金は触媒活性が高く、好適に用いられる。
白金族金属担持非粒状有機多孔質体又は白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体に担持されている白金族金属粒子の平均粒子径は、1〜1000nmであり、好ましくは1〜200nm、更に好ましくは1〜20nmである。平均粒子径が1nm未満であると、白金族金属粒子が担体から脱離する可能性が高くなるため好ましくなく、一方、平均粒子径が1000nmを超えると、金属の単位質量当たりの表面積が少なくなり触媒効果が効率的に得られなくなるため好ましくない。なお、白金族金属粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)分析により得られるTEM画像を、画像解析することにより求められる。
白金族金属担持非粒状有機多孔質体又は白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体中の白金族金属粒子の担持量((白金族金属粒子/乾燥状態の白金族金属担持触媒)×100)は、0.004〜20重量%、好ましくは0.005〜15重量%である。白金族金属粒子の担持量が0.004重量%未満であると、触媒活性が不十分になるため好ましくない。一方、白金族金属粒子の担時量が20重量%を超えると、水中への金属溶出が認められるようになるため好ましくない。
白金族金属担持非粒状有機多孔質体又は白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体の製造方法には特に制約はない。公知の方法により、モノリス又はモノリスイオン交換体に、白金族金属の微粒子を担持させることにより、白金族金属担持触媒が得られる。非粒状有機多孔質体又は非粒状有機多孔質イオン交換体に白金族金属を担持する方法としては、例えば、特開2010−240641号公報に開示されている方法が挙げられる。例えば、乾燥状態のモノリスイオン交換体を酢酸パラジウム等の白金族金属化合物のメタノール溶液に浸漬し、パラジウムイオンをイオン交換によりモノリスイオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤と接触させてパラジウム金属微粒子をモノリスイオン交換体に担持する方法や、モノリスイオン交換体をテトラアンミンパラジウム錯体等の白金族金属化合物の水溶液に浸漬し、パラジウムイオンをイオン交換によりモノリスイオン交換体に吸着させ、次いで、還元剤と接触させてパラジウム金属微粒子をモノリスイオン交換体に担持する方法である。
白金族金属が担持された粒状のイオン交換樹脂は、粒状のイオン交換樹脂に、白金族金属が担持されたものである。白金族金属の担体となる粒状のイオン交換樹脂としては、特に制限されず、例えば、強塩基性アニオン交換樹脂等が挙げられる。そして、粒状のイオン交換樹脂に、公知の方法により白金族金属が担持されて、白金族金属が担持された粒状のイオン交換樹脂が得られる。
金属が担持された金属イオン型の粒状の陽イオン交換樹脂は、粒状の陽イオン交換樹脂に、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、クロムイオン、コバルトイオンなどの金属が担持されたものである。担体となる粒状の陽イオン交換樹脂としては、特に制限されず、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂等が挙げられる。そして、粒状の陽イオン交換樹脂に、公知の方法により鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、クロムイオン、コバルトイオンなどの金属が担持されて、金属イオン型の粒状の陽イオン交換樹脂が得られる。
以下に、本発明に使用される触媒ユニット21の触媒を、より具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
<白金族金属担持非粒状有機多孔質イオン交換体の製造>
(モノリス中間体の製造(I処理))
スチレン9.28g、ジビニルベンゼン0.19g、ソルビタンモノオレエート(以下SMOと略す)0.50gおよび2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.25gを混合し、均一に溶解させた。次に、当該スチレン/ジビニルベンゼン/SMO/2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)混合物を180gの純水に添加し、遊星式撹拌装置である真空撹拌脱泡ミキサー(イーエムイー社製)を用いて減圧下撹拌して、油中水滴型エマルションを得た。このエマルションを速やかに反応容器に移し、密封後静置下で60℃、24時間重合させた。重合終了後、内容物を取り出し、メタノールで抽出した後、減圧乾燥して、連続マクロポア構造を有するモノリス中間体を製造した。このようにして得られたモノリス中間体(乾燥体)の内部構造をSEMにより観察した。SEM画像から、隣接する2つのマクロポアを区画する壁部は極めて細く棒状であるものの、連続気泡構造を有しており、水銀圧入法により測定したマクロポアとマクロポアが重なる部分の開口(メソポア)の平均直径は40μm、全細孔容積は18.2ml/gであった。
(モノリスの製造)
次いで、スチレン216.6g、ジビニルベンゼン4.4g、1-デカノール220g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを混合し、均一に溶解させた(II処理)。次に上記モノリス中間体を反応容器に入れ、当該スチレン/ジビニルベンゼン/1-デカノール/2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)混合物に浸漬させ、減圧チャンバー中で脱泡した後、反応容器を密封し、静置下50℃で24時間重合させた。重合終了後内容物を取り出し、アセトンでソックスレー抽出した後、減圧乾燥した(III処理)。
このようにして得られたスチレン/ジビニルベンゼン共重合体よりなる架橋成分を1.2モル%含有したモノリス(乾燥体)の内部構造を、SEMにより観察した。SEM観察から、当該モノリスは骨格及び空孔はそれぞれ3次元的に連続し、両相が絡み合った共連続構造であった。また、SEM画像から測定した骨格の平均太さは20μmであった。また、水銀圧入法により測定した、当該モノリスの三次元的に連続した空孔の平均直径は70μm、全細孔容積は4.4ml/gであった。なお、空孔の平均直径は、水銀圧入法により得られた細孔分布曲線の極大値から求めた。
(モノリスアニオン交換体の製造)
上記の方法で製造したモノリスをカラム状反応器に入れ、クロロスルホン酸1600gと四塩化スズ400g、ジメトキシメタン2500mlからなる溶液を循環・通液して、30℃、5時間反応させ、クロロメチル基を導入した。反応終了後、クロロメチル化モノリスをTHF/水=2/1の混合溶媒で洗浄し、更にTHFで洗浄した。このクロロメチル化モノリスにTHF1600mlとトリメチルアミン30%水溶液1400mlを加え、60℃、6時間反応させた。反応終了後、生成物をメタノールで洗浄し、次いで純水で洗浄してモノリスアニオン交換体を得た。
得られたモノリスアニオン交換体のアニオン交換容量は、乾燥状態で4.2mg当量/gであり、四級アンモニウム基が定量的に導入されていることを確認した。また、SEM画像から測定した乾燥状態での骨格の太さは20μmであり、水銀圧入法による測定から求めた、当該モノリスアニオン交換体の三次元的に連続した空孔の乾燥状態での平均直径は70μm、乾燥状態での全細孔容積は4.4ml/gであった。
次に、モノリスアニオン交換体中の四級アンモニウム基の分布状態を確認するため、モノリスアニオン交換体を塩酸水溶液で処理して塩化物型とした後、EPMAにより塩化物イオンの分布状態を観察した。その結果、塩化物イオンはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも均一に分布しており、四級アンモニウム基がモノリスアニオン交換体中に均一に導入されていることが確認できた。
(白金族金属の担持)
上記モノリスアニオン交換体をCl形にイオン交換した後、乾燥状態で円柱状に切り出し、減圧乾燥した。乾燥後のモノリスアニオン交換体の重量は、1.2gであった。この乾燥状態のモノリスアニオン交換体を、塩化パラジウム100mgを溶解した希塩酸に24時間浸漬し、塩化パラジウム酸形にイオン交換した。浸漬終了後、モノリスアニオン交換体を純水で数回洗浄し、ヒドラジン水溶液中に24時間浸漬して還元処理を行った。塩化パラジウム酸形モノリスアニオン交換体が茶色であったのに対し、還元処理終了後のモノリスアニオン交換体は黒色に着色しており、パラジウム微粒子の生成が示唆された。還元後の試料は、数回純水で洗浄した後、検圧乾燥により乾燥させた。
パラジウムの担持量をICP発光分光分析法で求めたところ、パラジウム担持量は3.9重量%であった。モノリスカチオン交換体に担持されたパラジウムの分布状態を確認するため、EPMAによりパラジウムの分布状態を観察した。パラジウムはモノリスアニオン交換体の骨格表面のみならず、骨格内部にも分布しており、内部の方か濃度が若干高いものの、比較的均一に分布していることが確認できた。また、担持されたパラジウム粒子の平均粒子径を測定するため、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行った。パラジウム微粒子の平均粒子径は、8nmであった。
以下では、基板処理装置1により基板Wを処理することにより得られた測定結果について説明する。
[処理される基板(サンプル)]
4インチのシリコンウエハにモリブデンを200nmの厚みとなるようにスパッタリングで成膜した試験ウエハを使用した。近年、MOS型素子のゲート電極用の高融点金属としてモリブデンが基板上に使われており、モリブデンの腐食について評価した。
[評価方法]
4端子プローブ型シート抵抗測定器を用いて洗浄処理前後のシート抵抗を測定し、その差を記録した。金属が溶出し膜厚が減少するとシート抵抗は増加する。
[基板処理装置(洗浄装置)]
基板処理装置としてはオルガノ社製バッチ式洗浄装置を用いた。不活性ガスとしては99.999%の窒素ガスを用い、処理槽での試験ウエハの処理時間は120分とした。
[原水(超純水)]
超純水については、オルガノ株式会社開発センター内に設置されている超純水製造装置の二次純水を使用した。超純水製造装置の出口での水質は次の表1のとおりである。なお、超純水製造装置の出口から基板処理装置(洗浄装置)の入口までは約50mの配管で接続されており、洗浄装置入口での溶存酸素濃度は8μg/Lであった。
[評価する処理水]
過酸化水素除去水については、上記の超純水をパラジウム担持モノリスに通水して得た。このとき、過酸化水素濃度は2μg/L以下であった。
水素水については、上記の超純水に中空糸膜を介して水素を添加して得た。水素濃度について、東亜ディーケーケー社製溶存水素計DHDI−1で測定した。水素濃度は中空糸膜へ供給する水素ガス量をマスフローコントローラーで制御した。
酸素および過酸化水素が除去された水については、上記の水素水をパラジウム担持モノリスに通水して得た。溶存酸素濃度について、オービスフェア製model410型を用いて測定した。
[参考例1]
上記の試験ウエハを上記超純水に24時間浸漬させた後、処理水中の過酸化水素濃度を測定した。この結果を示したのが次の表2である。モリブデンは酸素と接触すると過酸化水素を生成することを見出した。
[実施例1]
上記バッチ式洗浄装置の洗浄室内の酸素ガス濃度を2%以下とした状態にて、上記の試験ウエハを処理した。この結果(シート抵抗増分)を次の表3に示す。
この表3の評価結果から、上記の超純水から過酸化水素を除去することでモリブデンの腐食を抑制できることが分かった。このときのシート抵抗増分は上記の水素水の場合とほぼ同じである。さらに、過酸化水素除去水に水素を所定濃度以上添加することにより得た水を、低酸素雰囲気で基板の処理に使用すると、シート抵抗を検出限界以下とすることができた。
また評価結果から、モリブテンの処理水としては、少なくとも過酸化水素濃度が2μg/L以下であることが好ましく、さらに、溶存酸素濃度が2μg/L以下、過酸化水素濃度が2μg/L以下で、かつ溶存水素濃度が10μg/Lを超え、好ましくは50μg/L以上、に調整されていると最も効果があることが表3から分かる。
[実施例2]
上記バッチ式洗浄装置の洗浄室内の酸素ガス濃度を調整し、酸素および過酸化水素が除去された水を用い、その調整した酸素ガス濃度の下で、試験ウエハを処理した結果を、次の表4に示す。
上記実施例2の処理を行う処理室内の酸素ガス濃度を0.1%以下とすれば、完全にモリブデンの腐食を抑制できた。
この評価結果から、次の事が分かる。上記の超純水から酸素および過酸化水素を除去し、酸素と過酸化水素とが除去された超純水に水素を添加して得た処理水を用い、その処理水で基板処理を行う処理室内の酸素ガス濃度は2%以下にすると、基板表面に露出したモリブテンの溶出を完全に抑制できることが分かった。
したがって、上述した各種の態様の基板処理装置1のように触媒ユニット21および分離膜ユニット22を備えることは、モリブテンの溶出を完全に抑制する効果があると言える。
[実施例3]
試験ウエハとして、前述したサンプル(モリブデン露出基板)を用意し、上記バッチ式洗浄装置の洗浄室内のガス成分を調整し、過酸化水素が除去された水を用い、その成分調整されたガス雰囲気下で、試験ウエハを処理した後、基板表面の接触角を測定した結果を、次の表5に示す。
この評価結果から、次の事が分かる。過酸化水素を除去した超純水で処理した基板は、過酸化水素を含む超純水で処理した基板に比べ、接触角が大きくなる。すなわち、より疎水性の表面となる。これは、過酸化水素による基板表面の酸化が抑制された効果であると考えられる。また、窒素雰囲気下で処理した基板は、空気雰囲気下で処理した基板に比べ、接触角が大きくなる。すなわち、より疎水性の表面となる。これは、空気中に含まれる酸素による基板表面の酸化が抑制された効果であると考えられる。
超純水からの過酸化水素の除去および/または酸素濃度を減じた雰囲気下での処理は、モリブデン露出基板の予期せぬ酸化反応を抑止する効果があるといえる。
[参考例]
試験ウエハとしてn型シリコンウエハを用意し、上記の実施例3とは処理水の条件を変えて、接触角を測定した。すなわち、上記バッチ式洗浄装置の洗浄室内のガス成分を調整し、過酸化水素が除去された水および過酸化水素を50μg/L添加した水を用い、その成分調整されたガス雰囲気下で、試験ウエハを処理した後、基板表面の接触角を測定した結果を、次の表6に示す。
この評価結果から、次の事が分かる。過酸化水素を除去した超純水で処理した基板は、過酸化水素を含む超純水で処理した基板に比べ、接触角が大きくなる。すなわち、より疎水性の表面となる。これは、過酸化水素による基板表面の酸化が抑制された効果であると考えられる。また、窒素雰囲気下で処理した基板は、空気雰囲気下で処理した基板に比べ、接触角が大きくなる。すなわち、より疎水性の表面となる。これは、空気中に含まれる酸素による基板表面の酸化が抑制された効果であると考えられる。
超純水からの過酸化水素の除去および/または酸素濃度を減じた雰囲気下での処理は、シリコン基板の濡れ性、すなわち酸化状態に影響があることが分かる。