JP2015083868A - 環状シール部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡易な構成でありながら、密封性に優れ、且つ嵌合時におけるシール部の破断等が生じず、嵌合部への泥水等の浸入防止効果が長く維持される環状シール部材を提供する。
【解決手段】相対的に同心回転する2部材6,7の一方の部材6に嵌合される円筒部14、及び、該円筒部14の一端部14aから径方向に延びるよう形成されたフランジ部15を備える金属部材11と、円筒部14における嵌合方向dの後方側部の周面14ba(14d、14ea)であって前記嵌合に関与しない部位に周方向に沿って固着された環状リップ部16とを含み、環状リップ部16は、円筒部14にエラストマー剤を塗布して硬化させることにより固着され、当該環状リップ部16の円筒部14に対する固着幅aよりリップ高さbが大とされ、円筒部14が一方の部材6の所定位置に嵌合された際に当該一方の部材6に屈折変形を伴い弾性的に当接するように構成されていることを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】相対的に同心回転する2部材6,7の一方の部材6に嵌合される円筒部14、及び、該円筒部14の一端部14aから径方向に延びるよう形成されたフランジ部15を備える金属部材11と、円筒部14における嵌合方向dの後方側部の周面14ba(14d、14ea)であって前記嵌合に関与しない部位に周方向に沿って固着された環状リップ部16とを含み、環状リップ部16は、円筒部14にエラストマー剤を塗布して硬化させることにより固着され、当該環状リップ部16の円筒部14に対する固着幅aよりリップ高さbが大とされ、円筒部14が一方の部材6の所定位置に嵌合された際に当該一方の部材6に屈折変形を伴い弾性的に当接するように構成されていることを特徴とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、環状シール部材に関し、例えば、相対的に同心回転する軸受構成2部材の一方の部材に嵌合される金属部材に環状リップ部が固着され、この環状リップ部によって嵌合部への泥水等の浸入を防止するようにした環状シール部材に関する。
前記のような環状シール部材に用いられる金属部材としては、軸受の内輪と外輪とにより区画される環状の軸受空間の軸方向の端部に装着されるパックシールタイプのベアリングシールを構成するスリンガや、スリンガに弾接するシールリップが固着される芯金等が挙げられる。前記スリンガ或いは芯金は、いずれも円筒部と、その一端部から連成されたフランジ部とを有し、円筒部によって前記2部材のそれぞれに一体的に嵌合される。しかし、スリンガ或いは芯金と前記2部材とのそれぞれの嵌合部は、金属同士の嵌合であるので、これら各金属部材の加工精度や、表面の細かな傷の存在によって、嵌合部を通じて泥水が軸受内部に浸入することがある。このように、泥水が軸受内部に浸入すると、軸受の軌道面や転動体の表面が傷付き、軸受性能が著しく低下する。特許文献1〜5には、スリンガとドライブシャフト(回転軸)或いは内輪との嵌合部を通じた泥水等の軸受内部への浸入を防止する為に、スリンガに環状シール部を設けることが記載されている。
特許文献1には、軸受等の回転部材に嵌合される円筒部と一体の回転ディスク(フランジ部)に磁性粒子を含むエラストマーからなるコーダを取り付け、このコーダに前記シャフトに当接する唇状片(前記環状シール部に相当)を設けた例が記載されている。このように、唇状片が回転部材に当接することにより前記円筒部と回転部材との嵌合部への泥水等の浸入が阻止される。しかし、この唇状片は、多量の磁性粒子を含むエラストマーからなるコーダと一体に形成されているため弾性を充分に備えていないと考えられる。したがって、磁性粒子を含まないエラストマー等からなるリップが回転部材に対して弾性的に当接する場合に比べて、この唇状片による当接部の密封性は劣るものと考えられる。また、コーダ及び唇状片をどのようにして作製するかについては明示されていないが、エラストマーからなること及び図示された形状から成型によって作製されるものと解される。このように、成型によって唇状片と一体のコーダを成型する場合は、唇状片が回転ディスクより内径側に食み出すため成型用金型が大掛かりとなる。
また、特許文献2には、前記環状シール部に相当するものとして、第2シール環体(スリンガ)の円筒部と内輪の外周部との間をシールする為に、スリンガの円筒部からフランジ部にかけてのコーナー部に形成された第2シール層が示されている。この第2シール層は、ゴム等の弾性体をスリンガに焼き付けて形成されるものとされているが、具体的な形成方法の記載はない。そして、スリンガの円筒部における第2シール層の形成部位には段部が形成され、この段部に第2シール層が納まるよう構成されている。その為、スリンガの円筒部と内輪との間に介在される第2シール層は圧縮状態とならないと解され、したがって、スリンガと内輪との嵌合部の密封性がどの程度発揮されるのか定かではない。
特許文献3は、車輪用軸受装置のシールに関するもので、前記環状シール部に相当するものとして、スリンガの立板部(フランジ部)に設けられた遮蔽リップが示されている。この遮蔽リップは、ゴム等の弾性部材からなり、前記立板部に一体に加硫接着される。この遮蔽リップは内輪の端面に弾性的に接触して、雨水等が軸受内部に浸入し、或いは、内輪の露出した部位に発生する錆がスリンガに取付けられる磁気エンコーダに進展することを防止するべく機能するとされている。遮蔽リップは加硫接着によりスリンガに一体とされる為、金型内にスリンガを配し、ゴム材等を射出して加硫成型することにより遮蔽リップの形成がなされるものと解される。而して、このように加硫成型による場合は、磁気エンコーダと遮蔽リップを同時に成型するか、別々の工程で成型することになるため、装置が大掛かり(金型の複雑化も含む)となったり、加工工程(成型、接着剤の塗布)や使用金型が増加するため、成型設備・工程が煩雑となる上に、加工コストの増大を招くことになる。
さらに、特許文献4は、車輪用軸受装置のベアリングシールに関するもので、前記環状シール部に相当するものとして、スリンガの円筒部にコーティングされたゴム層による弾性部材、同円筒部に装着されるリング状ゴム部材からなる弾性部材等が示されている。前者のゴム層による弾性部材は、スリンガの円筒部と内方部材(内輪)との嵌合部に介在するため、嵌合時のせん断応力が作用して剥離等が生じることが懸念される。また、後者のリング状ゴム部材からなる弾性部材を円筒部に装着する例として、本特許文献では、3種類の装着例が示されている。しかし、いずれも製品仕様によって異なる装着部位の径に応じたリング状ゴム部材(例えば、Oリング)を準備する必要があり、部品管理の煩わしさを伴うことが予想される。また、嵌合部に介在させる場合は、嵌合時にリング状ゴム部材に捩れが生じたりすることも懸念される。
特許文献5は、本出願人に係るものであり、前記のような従来技術における問題点に着目し、嵌合部の嵌合方向後方側端部に、エラストマー剤の塗布・硬化により固着させた弾性環状シール部を、嵌合関係の2部材間に圧縮状態で介在させることを提案するものである。ここでの環状シール部は、いずれも、その厚みより固着幅の方が大であり、リップ形状ではない。本発明者等は、その後も鋭意研究を重ねた結果、エラストマー剤を塗布・硬化させたものでも、リップ形状とすることが可能であること、ゴム成型によるリップと同様に弾性変形を伴う復元弾力による当接によって優れた密封性を発揮することを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、簡易な構成でありながら、密封性に優れ、且つ嵌合時におけるシール部の破断等が生じず、嵌合部への泥水等の浸入防止効果が長く維持される環状シール部材を提供することを目的としている。
本発明に係る環状シール部材は、相対的に同心回転する2部材の一方の部材に嵌合される円筒部、及び、該円筒部の一端部から径方向に延びるよう形成されたフランジ部を備える金属部材と、前記円筒部における嵌合方向後方側部の周面であって前記嵌合に関与しない部位に周方向に沿って固着された環状リップ部とを含み、前記環状リップ部は、前記円筒部にエラストマー剤を塗布して硬化させることにより固着され、当該環状リップ部の円筒部に対する固着幅よりリップ高さが大とされ、前記円筒部が前記一方の部材の所定位置に嵌合された際に当該一方の部材に屈折変形を伴い弾性的に当接するように構成されていることを特徴とする。前記金属部材は、図2等に示すようなスリンガ状のものでも、図7に示すようなキャップ状のものでもよい。
本発明によれば、環状リップ部は、金属部材における円筒部の嵌合方向後方側部の周面に固着され、金属部材が軸受を構成する一方の部材に嵌合された時には、当該一方の部材に屈折変形を伴い弾性的に当接するから、嵌合部への泥水等の浸入が阻止される。しかも、環状リップ部は嵌合に関与しない部位に固着されているから、嵌合時の応力により剥離等が生じる懸念がない。また、環状リップ部は、一方の部材に対して当接はしても、摺接はしないから、摺接による摩耗や剥がれがなく、エラストマー剤を塗布して硬化させたものでも耐久性を有し、充分に密封性を発揮する。これにより、安価且つ簡易に環状リップ部を形成することができる。環状リップ部は、その固着幅よりリップ高さが大とされているから、前記当接による弾性的な屈曲変形が効果的になされる。
本発明において、前記円筒部における前記一端部が前記嵌合方向の後方側に位置するものとしても良い。
これによれば、円筒部の嵌合の際に、環状リップ部が嵌合部に介入することがない。
この場合、前記環状リップ部が、前記フランジ部における前記嵌合方向の後方側面よりも突出しないように形成されているものとしても良い。
これによれば、金属部材が一方の部材に対して限られた狭いスペース内で嵌合される場合でも、環状リップ部が一方の部材以外の他の部材に接触する懸念がない。したがって、当該他の部材と一方の部材とが互いに相対回転し合う関係であっても、環状リップ部が摺接によって摩耗したりすることがない。また、前記嵌合の際、環状リップ部が、嵌合の妨げになることがない。
これによれば、円筒部の嵌合の際に、環状リップ部が嵌合部に介入することがない。
この場合、前記環状リップ部が、前記フランジ部における前記嵌合方向の後方側面よりも突出しないように形成されているものとしても良い。
これによれば、金属部材が一方の部材に対して限られた狭いスペース内で嵌合される場合でも、環状リップ部が一方の部材以外の他の部材に接触する懸念がない。したがって、当該他の部材と一方の部材とが互いに相対回転し合う関係であっても、環状リップ部が摺接によって摩耗したりすることがない。また、前記嵌合の際、環状リップ部が、嵌合の妨げになることがない。
本発明の環状シール部材によれば、簡易な構成でありながら、密封性に優れ、且つ嵌合時におけるシール部の破断等が生じず、嵌合部への泥水等の浸入防止効果が長く維持される。
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の環状シール部材が採用された自動車の車輪(駆動輪)懸架用軸受装置を示す。図1に示す軸受装置1において、等速ジョイント2を介して自動車のドライブシャフト3が連結され、ドライブシャフト3の外周にはハブ輪4が一体にスプライン嵌合され、ナット3aによってハブ輪4の抜け止めがなされている。ハブ輪4にはボルト4aを介して不図示のタイヤホイール(車輪)が取付けられる。また、このハブ輪4の外径面には内輪部材5が一体に嵌装され、ハブ輪4とこの内輪部材5とにより軸受構成2部材の一方の部材としての内輪6が構成される。7は軸受構成2部材の他方の部材としての外輪であり、車体(不図示)に一体化され、この外輪7と内輪6(ハブ輪4、内輪部材5)との間に2列の転動体(玉)8…がリテーナ8aで保持された状態で介装されている。また、前記ドライブシャフト3の軸方向に沿った内外輪6,7間の両端部には、潤滑用グリースの漏出や泥水・塵埃等の浸入を防止する為の密封装置9、10が、相互の摺接関係を維持した状態で介装されており、これらによりアンギュラ型の軸受装置1が構成される。内外輪6,7間と両端の密封装置9、10とにより区画された環状の空間が、転動体8…の軌道面を含む軸受空間Sとされる。
以下では、本発明に係る環状シール部材が、車体側の密封装置10の一構成部材である例について述べるが、車輪側の密封装置9の一構成部材とすることも可能である。図2において、密封装置10は、パックシールタイプのベアリングシール(以下、ベアリングシール10と言う)である。このベアリングシール10は、内輪部材5の外径面5aに嵌合されるスリンガ(金属部材)11と、外輪7の内径面に嵌合される芯金12と、芯金12に固着されスリンガ11に弾接するシールリップ13a,13b,13cを有するシールリップ部材13とからなる。芯金12は、外輪7の内径面7aに嵌合される円筒部12aと、円筒部12aの嵌合方向(白抜矢印d参照)先側の一端部12aaより内径側(求心側)に延びるように形成された内向フランジ部12bとを備えている。シールリップ部材13は、芯金12における円筒部12aの内径面及び内向フランジ部12bの車体側面を覆って芯金12に固着一体とされるシールリップ基部130を有している。このシールリップ基部130は、円筒部12aの車体側の他端縁部12abを外径側に回り込む回り込み部130a、及び、内向フランジ部12bの内径側端縁部12baを軸受空間S側に回り込む回り込み部130bを、それぞれ有している。回り込み部130aは、原形状が2点鎖線で示すような環状の突条体とされ、外輪7に対する嵌合状態では2点鎖線部が圧縮されて、芯金12の円筒部12aと外輪7との間に圧縮状態で介在される。この回り込み部130aの圧縮状態での介在によって、車体側から、外輪7と芯金12との金属嵌合部への泥水等の軸受空間S内への浸入が防止される。また、シールリップ基部130には、3個のシールリップ13a,13b,13cが設けられ、これらシールリップ13a,13b,13cは、後記するスリンガ11の軸受空間S側に向く面に弾接する。シールリップ部材13は、ゴム等のエラストマー剤からなり、芯金12に対して加硫成型により一体に固着されている。
スリンガ11は、内輪6を構成する内輪部材5の外径面5aに嵌合される円筒部14と、円筒部14の嵌合方向(白抜矢印)dの後方側の一端部14aから径方向外径側(遠心側)に延びるよう形成された外向フランジ部(フランジ部)15とを有している。図例では、円筒部14における当該一端部14a側の部分が、車体側に向け漸次拡径するテーパ形状部14bとされ、外向フランジ部15は、このテーパ形状部14bにおける最大径部分を一端部14aとし、この一端部14aから連続して形成されている。スリンガ11は、ステンレス鋼によって形成される。シールリップ13aは、外向フランジ部15の軸受空間S側の面(車輪側面)15aに弾接するアキシャルリップ(サイドリップ)とされ、また、シールリップ13b,13cは、円筒部14の外径面14cに弾接するラジアルリップとされている。円筒部14の一部をなすテーパ形状部14bの内周面(周面)14baには、エラストマー剤を塗布して硬化させた環状リップ部16が形成されている。スリンガ11と環状リップ部16とにより、本実施形態の環状シール部材17が構成される。
本実施形態の環状シール部材17における環状リップ部16は、図2の拡大部で示すように、原形の断面形状(実線)が略三角形のリップ形状とされ、環状リップ部16の円筒部14(テーパ形状部14b)に対する固着幅aより、リップ高さbの方が大とされている。また、環状リップ部16は、その頂部が外向フランジ部15の車体側(嵌合方向dの後方側)面15bよりも後方側に突出しないように形成されている。前記エラストマー剤としては、例えば、シリコーン系エラストマー、ポリイソブチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、フッ素系エラストマー等が、より具体的には、二液硬化型シリコーンエラストマー、一液硬化型シリコーンエラストマー、或いは、一液硬化型フロロシリコーンエラストマー等が好ましく用いられる。
前記のように構成される環状シール部材17を備えるベアリングシール10は、軸受装置1における軸受空間Sの車体側端部に装着される。この時、芯金12は外輪7の内径面7aに、スリンガ11は内輪部材5(内輪6)の外径面5aに、それぞれ白抜矢印で示す嵌合方向dに沿って嵌合される。スリンガ11が嵌合される内輪部材5の外径面5aと車体側端面5bとの角部5cは斜めに面取りされている。環状シール部材17は、スリンガ11の円筒部14によって内輪部材5の外径面5aに嵌合されるが、環状リップ部16が、内輪部材5の面取りされた角部5cに当接し、図2の拡大部に示す2点鎖線のように弾性的に屈折変形する状態となるように嵌合される。環状シール部材17の所定の嵌合位置は、軸受空間Sの車体側端部であって、外輪7に嵌合される芯金12及びこれに固着一体とされるシールリップ部材13との相対位置関係で設計的に定められるものである。この所定位置では、環状リップ部16が内輪部材5角部5cに屈折変形した状態で当接するよう設計される。環状リップ部16は、円筒部14の嵌合方向dの後方側部に形成されているから、嵌合の際に円筒部14と内輪部材5との嵌合部に介入せず、また、このような嵌合状態では、環状リップ部16は、円筒部14と内輪部材5との嵌合に関与しない。したがって、環状リップ部16が、嵌合時のせん断応力を受けず、これによって剥離や破断等が生じる懸念がない。さらに、環状リップ部16が、外向フランジ部15における嵌合方向dの後方側面15bよりも後方側に突出しないように形成されているから、スリンガ11が内輪6に対して限られた狭いスペース内で嵌合される場合でも、環状リップ部16が内輪6以外の他の部材に接触する懸念がない。したがって、当該他の部材と内輪6とが互いに相対回転し合う関係であっても、環状リップ部16が摺接によって摩耗したりすることがない。また、前記嵌合の際、環状リップ部16が、嵌合の妨げになることがない。
そして、環状リップ部16は、スリンガ11のテーパ形状部14bと内輪部材5の面取りされた角部5cとの間で、弾性的に屈折変形した状態で介在するから、角部5cに対して屈折反力によって密着的に弾接する。これによって、円筒部14と内輪部材5との嵌合部の車体側端部が環状リップ部16によって封止され、この嵌合部及び嵌合部を通じた軸受空間S内への泥水等の浸入が阻止される。また、円筒部14と内輪部材5との金属同士の嵌合部の錆の進行も抑えられる。特に、円筒部14の内径面や内輪部材5の外径面5aは、加工精度にばらつきがあり、あるいは、表面に細かな傷があることが多々あるが、このような環状リップ部16による封止機能によって、嵌合部への泥水等の浸入が阻止され、このような加工上の影響を回避することができる。さらに、環状リップ部16は、円筒部14(テーパ形状部14b)に対する固着幅aよりリップ高さbが大とされているから、前記当接による弾性的な屈曲変形が効果的且つ安定的になされる。因みに、固着幅aよりリップ高さbが小さい場合は、環状リップ部16の弾性的な屈曲変形が充分になされなくなる傾向となる。さらにまた、内輪6と環状シール部材17とは、軸心L(図1参照)の回りに一体に回転し、環状リップ部16は、内輪部材5に当接はしても摺接はしないから、環状リップ部16に摺接による摩耗や剥がれが生じる懸念がない。したがって、環状リップ部16が、加硫成型のような大掛かりな装置によらず、後記するような簡易な塗布装置によって形成したものでありながらも、長期に亘り優れた密封性を発揮することができる。
図3は、前記実施形態の変形例を示す。この例の環状シール部材17Aにおいては、スリンガ11における円筒部14が前記のようなテーパ形状部14bを含まず、嵌合方向dの後方側の一端部14aにかけて直状に形成されている。そして、円筒部14における嵌合方向dの後方側であって、一端部14aの近傍の内周面14dに、断面形状が略三角形(図例では、略二等辺三角形)の前記と同様の環状リップ部16が、前記同様にエラストマー剤の塗布・硬化により形成されている。この場合の環状リップ部16も、スリンガ11の円筒部14に対する固着幅aより、リップ高さbが大とされ、また、外向フランジ部15における嵌合方向dの後方側面15bよりも後方側に突出しないように形成されている。この実施形態の環状シール部材17Aも、スリンガ11の円筒部14によって、内輪部材5の外径面5aにおける所定位置に嵌合される。この嵌合状態で、環状リップ部16は、嵌合に関与せず、内輪部材5の面取りされた角部5cに弾性的に屈折変形する状態(2点鎖線部参照)となるように嵌合される。その他の構成及び作用・効果は前記実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
図4は、前記実施形態の別の変形例を示す。この例の環状シール部材17Bにおいては、スリンガ11の円筒部14における嵌合方向dの後方側部分が径大の円筒部を含む段差形状部14eとされている。この段差形状部14eの嵌合方向dの後方側端部が一端部14aとされて、外向フランジ部15が前記と同様にこの一端部14aから外径側に延びるように形成されている。そして、段差形状部14eの内周面14eaに、舌片状の環状リップ部16が、前記と同様にエラストマー剤の塗布・硬化により形成されている。この場合の環状リップ部16も、スリンガ11の円筒部14に対する固着幅aより、リップ高さbが大とされ、また、フランジ部15における嵌合方向dの後方側面15bよりも突出しないように形成されている。この実施形態の環状シール部材17Bも、スリンガ11の円筒部14によって、内輪部材5の外径面5aの所定位置に嵌合される。この嵌合状態で、環状リップ部16は、嵌合に関与せず、内輪部材5の面取りされた角部5cに弾性的に屈折変形する状態(2点鎖線部参照)となるように嵌合される。この例では、円筒部14における段差形状部14eの内周面14eaと内輪部材5の角部5cとのスペースが大きいので、環状リップ部16の弾性的な屈折変形の逃げ部が大きく確保される。したがって、図2に示す環状シール部材17も同様であるが、本例の環状シール部材17Bは、内輪部材5の角部5cが面取加工されていない場合でも好適に適用される。その他の構成及び作用・効果は前記実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
次に、前記実施形態の環状シール部材における環状リップ部16を形成する要領を、図5を参照して略述する。図5は、便宜上、図3に示す例のスリンガ11に環状リップ部16を形成する例を示している。スリンガ11を不図示の回転治具に取付け、ディスペンサー装置(不図示)のノズル部20を、図に示すように、その先端部がスリンガ11における円筒部14の内周面に近接した状態となるよう配置する。図例のノズル部20は円筒形状であり、その先端部の対向位置に、2個の略三角形状の切欠20a,20bが形成されており、この切欠20a,20bがスリンガ11の周方向に沿うように位置付けられる。そして、スリンガ11をその軸心Lの回りのr方向に回転させながら、ノズル部20より液状の前記エラストマー剤を吐出させる。エラストマー剤は、円筒部14の内周面14dに切欠20aに倣った形状となるよう連続的に塗布され、もう一方の切欠20bが塗布開始部に至ると、ノズル20からのエラストマー剤の吐出が停止される。このように、2個の切欠20a,20bがスリンガ11の周方向に沿うよう位置付けられることによって、スリンガ11が1回転したとき、エラストマー剤の塗布開始位置地及び終了位置の塗布形状が連続した均一な形状とされる。塗布されたエラストマー剤は硬化され、図3に示すように、円筒部14の内周面14dの環状リップ部16が形成される。二液硬化型シリコーンエラストマーは、室温で短時間での硬化が可能で、作業性に優れる。また、一液硬化型シリコーンエラストマーは、加熱硬化或いは湿気硬化によって硬化させる必要があり、作業性は二液硬化型シリコーンエラストマーより劣るが、ポットライフが長く保存等には有利である。更に、一液硬化型フロロシリコーンエラストマーも、加熱硬化或いは湿気硬化によって硬化させる必要があり、作業性は二液硬化型シリコーンエラストマーより劣り、高価であるが、ポットライフが長く保存等には有利である。
例示のエラストマー剤以外のものでも、塗布して硬化させることによって環状シール部16を形成し得るものであれば、その性状等の適性を勘案して適宜選択採用することも可能である。前記エラストマー剤は、塗布作業性、性能、及び価格等を総合的に勘案して、適宜選択採用される。より具体的には、硬化したエラストマーの特性としては、硬度が、ShoreA;20〜90(望ましくは20〜70)、引張り強さ;0.3MPa以上、伸び;100%以上のものが採用される。また、本発明においては、耐熱性、耐低温性、耐水性、耐オゾン性、耐薬品性、耐熱衝撃性等の性能を勘案してエラストマー剤が選定される。前記エラストマー剤を塗布して硬化させる際において、環状シール部6の固着幅aや、リップ高さb等の調整は、ノズル20の径の変更、吐出量の変更、スリンガ11の回転速度の変更によってなされる。また、加熱により焼付硬化させる場合は、塗布してから焼付けを実施するまでの時間を変更することで、塗布されたエラストマー剤のダレによる変形状態が変わるので、この時間を変更することによって、環状シール部16の固着幅aや、リップ高さb等の調整を行うこともできる。そして、このようなディスペンサー装置によるエラストマー剤の塗布は、図2、図4及び後記する図6に示す例においても同様になされる。
図6は、本発明に係る環状シール部材の別の実施形態を示す。本実施形態の環状シール部材17Cは、スリンガ11が図3に示す例と同様の形状であるが、内輪部材5に嵌合させる向きが図3の例と逆である点で異なる。また、スリンガ11における円筒部14の嵌合方向dの後方側の他端部14fの近傍の内周面14dに環状リップ部16が形成されている点でも、前記各実施形態の環状シール部材17,17A,17Bと異なる。このスリンガ11に対して、その軸受空間S側(車輪側)に、前記と同様の芯金12及びこれに固着されたシーリップ部材13が配置され、パックシールタイプのベアリングシール10Aが構成される。シーリップ部材13のアキシャルリップ13aは、スリンガ11における外向フランジ部15の車輪側面15aに弾接し、ラジアルリップ13b,13cは内輪部材5の外径面5aに弾接する。そして、スリンガ11における円筒部14の他端部14fの近傍の内周面14dに、断面形状が略三角形(図例では、略二等辺三角形)の前記と同様の環状リップ部16が、前記同様にエラストマー剤の塗布・硬化により形成されている。この場合の環状リップ部16も、スリンガ11の円筒部14に対する固着幅aより、リップ高さbが大とされている。この実施形態の環状シール部材17Cも、スリンガ11の円筒部14によって、内輪部材5の外径面5aに嵌合される。この嵌合状態で、環状リップ部16は、嵌合に関与せず、内輪部材5の面取りされた角部5cに弾性的に屈折変形する状態(2点鎖線部参照)となるように嵌合される。その他の構成及び作用・効果は前記実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
なお、本発明の環状シール部材が適用される軸受装置として、図1に示すような自動車用のアンギュラ型軸受装置を例示したが、他の形態の自動車用軸受装置や他の産業機械用の軸受装置であって、金属嵌合部を有する軸受装置にも本発明の環状シール部材が適用可能である。また、図1に示す軸受装置は駆動輪用であるが、従動輪用の軸受装置であっても良い。例えば、その1つの実施形態として、図7に示すような外輪7の内周面に内嵌されるキャップ(金属部材11)に適用することも可能である。符号30は、不図示の磁気センサと組み合わされて磁気式ロータリーエンコーダを構成する環状磁性体である。さらに、実施形態では、軸受構成2部材の一方の部材が内輪で、他方の部材が外輪である例について述べたが、一方の部材を外輪とし、外輪に嵌合される芯金を本発明の環状シール部材の構成部とすることも可能である。この場合、シールリップ部材13のシールリップ基部130が、芯金12における円筒部12aの他端部12abにまで及ばず、回り込み部130aに代えて、環状リップ部を設けても良い。さらにまた、実施例では内輪を回転側、外輪を固定側としているが、これらが逆の関係であっても良い。加えて、環状リップ部の形状も図例のものに限定されず、リップ形状であって、弾性的に屈折変形し得る形状であれば他の形状のものも採用可能である。そして、この環状リップ部が弾性的に屈曲変形状態で当接する対象部位の形状は、図例のよう面取形状に限らず、嵌合部より径方向に窪んだ形状、例えば、R形状や、凹段差形状等であっても良い。
6 内輪(軸受構成2部材の一方の部材)
7 外輪(軸受構成2部材の他方の部材)
11 金属部材
14 円筒部
14a 一端部
14ba,14d,14ea 周面
15 フランジ部
16 環状リップ部
a 固着幅
b リップ高さ
d 嵌合方向
7 外輪(軸受構成2部材の他方の部材)
11 金属部材
14 円筒部
14a 一端部
14ba,14d,14ea 周面
15 フランジ部
16 環状リップ部
a 固着幅
b リップ高さ
d 嵌合方向
Claims (3)
- 相対的に同心回転する2部材の一方の部材に嵌合される円筒部、及び、該円筒部の一端部から径方向に延びるよう形成されたフランジ部を備える金属部材と、前記円筒部における嵌合方向後方側部の周面であって前記嵌合に関与しない部位に周方向に沿って固着された環状リップ部とを含み、
前記環状リップ部は、前記円筒部にエラストマー剤を塗布して硬化させることにより固着され、当該環状リップ部の円筒部に対する固着幅よりリップ高さが大とされ、前記円筒部が前記一方の部材の所定位置に嵌合された際に当該一方の部材に屈折変形を伴い弾性的に当接するように構成されていることを特徴とする環状シール部材。 - 請求項1に記載の環状シール部材において、
前記円筒部における前記一端部が前記嵌合方向の後方側に位置することを特徴とする環状シール部材。 - 請求項2に記載の環状シール部材において、
前記環状リップ部が、前記フランジ部における前記嵌合方向の後方側面よりも突出しないように形成されていることを特徴とする環状シール部材。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014181923A JP2015083868A (ja) | 2013-09-19 | 2014-09-08 | 環状シール部材 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013193744 | 2013-09-19 | ||
JP2013193744 | 2013-09-19 | ||
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Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2016200277A (ja) * | 2015-04-13 | 2016-12-01 | ズス・マイクロテック・リソグラフィ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングSuss MicroTec Lithography GmbH | ウエハ処理装置およびウエハ処理装置用のシーリングリング |
CN106801707A (zh) * | 2015-09-28 | 2017-06-06 | 斯凯孚公司 | 用于车轮轴承的密封单元 |
JP2018054095A (ja) * | 2016-09-30 | 2018-04-05 | 内山工業株式会社 | 密封装置 |
CN108700122A (zh) * | 2016-03-01 | 2018-10-23 | Ntn株式会社 | 带密封轴承 |
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-
2014
- 2014-09-08 JP JP2014181923A patent/JP2015083868A/ja active Pending
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