JP2015081317A - コーティング剤、コーティング膜、および、コーティング剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明のコーティング剤の一成分であるポリシラノール組成物は、上記メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシランとを加水分解縮合することによって得られる。なお、本明細書では、上記3種、またはそれぞれについて「原料アルコキシシラン」ということがある。なお、上記メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシラン以外のアルコキシシラン化合物は通常使用しなくてもよいが、本発明のコーティング剤およびそれから得られるコーティング膜の特性に悪影響を及ぼさない量であれば、加水分解縮合の際に併用しても構わない。
上記原料アルコキシシランの加水分解縮合は、原料アルコキシシランを極性有機溶媒に溶解し、水および酸触媒を加えて行うことができる。
上記原料アルコキシシランの加水分解縮合に用いられる水の量は、原料アルコキシシランが有するアルコキシシリル基のモル量の半分〜同量とすることが好ましい。
本発明のもう一つの成分であるアルミニウム系硬化触媒(加熱硬化触媒)は、コーティング膜の硬化を促進するために用いられる。アルミニウム系硬化触媒を使用することで、シラノール基同士の縮合およびエポキシ基同士の縮合に加えて、シラノール基とエポキシ基との付加反応が進行し、より強固なコーティング膜が得られることが期待される。
本発明のコーティング剤は、先のポリシラノール組成物およびアルミニウム系硬化触媒を含んでいる。アルミニウム系硬化触媒の含有量は、ポリシラノール組成物の固形分に対して、0.1〜10%であることが好ましい。0.1%未満であると、硬化が不十分となり、期待されるコーティング膜の物性が得られないおそれがある。また、10%を超えても、それに見合うだけのさらなる効果が期待できない。
本発明のコーティング剤は、上記方法によって得られるものであるが、本発明のコーティング剤の製造方法は、メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシランを、酸触媒として無機酸またはルイス酸を用いて加水分解縮合を行い、ポリシラノール組成物を得る工程、および、前記工程で得られたポリシラノール組成物にアルミニウム系硬化触媒、および、必要に応じてその他の成分を加える工程を含む。詳細については、すでに説明した内容がそれぞれ適用される。この製造方法によって得られたコーティング剤は、エポキシ基が残存しているので、優れた密着性および硬化性を有することが期待できる。
本発明のコート(コーティング膜)は、先のコーティング剤から得られるものである。
コート形成は、先のコーティング剤をアルミニウム合金上に乾燥膜厚1〜30μmになるように塗装を行い、60〜150℃で10〜120分間加熱することで行われる。塗装には、スピンコーター、スリットコーター、スプレー、ディップコーター等が使用される。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
メチルトリメトキシシラン408部をイソプロピルアルコール450部に溶解した。ここに、メトキシシリル基のモル数と同じモル数となる水162部と酸触媒として塩酸1部とを添加して、40℃で1時間攪拌し、さらに75℃で1時間攪拌を行った後、濃縮してメチルトリメトキシシランの加水分解縮合体を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。
フェニルトリメトキシシラン595部をイソプロピルアルコール200部とトルエン400部の混合液に溶解した。ここに、メトキシシリル基のモル数と同じモル数となる水162部と酸触媒として塩酸1部とを添加して、40℃で1時間攪拌し、さらに75℃で1時間攪拌を行った後、濃縮してフェニルトリメトキシシランの加水分解縮合体を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン460部をイソプロピルアルコール390部に溶解した。ここに、メトキシシリル基のモル数と同じモル数となる水105部と酸触媒として塩酸1部とを添加して、40℃で1時間攪拌し、さらに75℃で1時間攪拌を行った後、濃縮してグリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解縮合体を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。
メチルトリメトキシシラン47.7部、フェニルトリメトキシシラン69.4部、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン79.8部をイソプロピルアルコールとメチルイソブチルケトンとの2/1(質量比)混合物154部に溶解した。ここに、系内のメトキシシリル基のモル数と同じモル数となる水56.7部と酸触媒として塩酸1部とを添加して、40℃で2時間攪拌し、さらに80℃で3時間攪拌を行った後、濃縮してポリシラノール組成物を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。H−NMRによる分析で、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン由来のエポキシ基が残存していることを確認した。
実施例1において、メチルトリメトキシシランの量を143.1部に、水の量を94.5部に、および、塩酸の量を2部にそれぞれ変更すること以外は同様にして、ポリシラノール組成物を得た。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。H−NMRによる分析で、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン由来のエポキシ基が残存していることを確認した。
製造例1で得られたメチルトリメトキシシランの加水分解縮合体19部、製造例2で得られたフェニルトリメトキシシランの加水分解縮合体37部、製造例3で得られたグリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解縮合体47部を、テトラヒドロフランとエトキシエタノールとの1/4(質量比)混合物50部に加えて溶解後、さらにアルミニウム系硬化触媒としてアルミニウムトリスアセチルアセトネート5部を添加して、コーティング剤を得た。
製造例1で得られたメチルトリメトキシシランの加水分解縮合体100部をテトラヒドロフランとエトキシエタノールとの1/4(質量比)混合物50部に加えて溶解後、さらにアルミニウム系硬化触媒としてアルミニウムトリスアセチルアセトネート5部を添加して、比較用のコーティング剤を得た。
製造例2で得られたフェニルトリメトキシシランの加水分解縮合体100部をテトラヒドロフランとエトキシエタノールとの1/4(質量比)混合物50部に加えて溶解後、さらにアルミニウム系硬化触媒としてアルミニウムトリスアセチルアセトネート5部を添加して、比較用のコーティング剤を得た。
製造例1で得られたメチルトリメトキシシランの加水分解縮合体34部と製造例2で得られたフェニルトリメトキシシランの加水分解縮合体66部をテトラヒドロフランとエトキシエタノールとの1/4(質量比)混合物50部に加えて溶解後、さらにアルミニウム系硬化触媒としてアルミニウムトリスアセチルアセトネート5部を添加して、比較用のコーティング剤を得た。
製造例1で得られたメチルトリメトキシシランの加水分解縮合体29部と製造例3で得られたグリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解縮合体71部をテトラヒドロフランとエトキシエタノールとの1/4(質量比)混合物50部に加えて溶解後、さらにアルミニウム系硬化触媒としてアルミニウムトリスアセチルアセトネート5部を添加して、比較用のコーティング剤を得た。
実施例で得られたコーティング剤および比較例で得られた比較用のコーティング剤を#22バーコーターを用いて、サンディング、トルエン脱脂した厚さ5mmのアルミニウム板材(6063系(JIS))の片面に皮膜厚が5μm以下になるよう塗布、150℃で2時間加熱乾燥を行い、透明なコート(コーティング膜)をそれぞれ得た。
得られたコート(コーティング膜)は、下記の項目について評価を行った。結果を表1に表す。
JIS K 5600−5−4に準じて、斜め45度の角度に固定した鉛筆に真上から750gの荷重をかけ引っかき試験を行った。
JIS K 5600−5−6に準じて、調製した試験片にカッターにより1mm間隔の縦横6本ずつの切れ目を入れ、その上にセロハンテープを貼付してはがし、25個のます目のうち、残存したます目の数をカウントした(碁盤目試験、残ったます目数/全ます目数(25))。下記の耐蝕性試験前において、全てのます目が残る場合を合格とする。
試験片を電導度が1.0μs/cmのイオン交換水(40℃)に240時間浸漬し、試験後の密着性を測定した。試験後の碁盤目試験において、密着性の保持率が90%以上の場合を合格とする。表1においては、縦5横5の碁盤目に配置した25試験片中における密着性の保持率が90%以上の試験片数Xを、X/25と表示した。以下、耐塩水性試験、体水性塗料性試験においても同様である。
試験片を5%塩水(25℃)に240時間浸漬し、試験後の密着性を測定した。試験後の碁盤目試験において、密着性の保持率が90%以上の場合を合格とする。
試験片を水性塗料(例えば、水70%程度、有機溶剤20%程度、残りは顔料等)(45℃)に240時間浸漬し、試験後の密着性を測定した。試験後の碁盤目試験において、密着性の保持率が90%以上の場合を合格とする。また、コートの変化の程度を目視で判定した。コートの状態に変化が見られない場合を合格とする。水性塗料は、水だけでなく親水性の有機溶剤をも含むが、このような水性塗料に対しても密着性が確保されている。例えば、印刷装置本体のアルミニウム合金を本発明のコーティング剤によりコーティングすることで、印刷装置本体が水性塗料から十分に保護されるようになる
本発明の実施例のコーティング剤から得られたコート(コーティング膜)は、いずれも3H以上の鉛筆硬度を有しており、アルミニウム基材との密着性は良好であり、耐水性、耐塩水性、耐水性塗料性も良好であった。
Claims (5)
- メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシランとを加水分解縮合して得られるポリシラノール組成物と加熱硬化触媒とを含むコーティング剤。
- 前記ポリシラノール組成物がエポキシ基を有している請求項1記載のコーティング剤。
- 前記加熱硬化触媒は、アルミニウム系硬化触媒である請求項1または2に記載のコーティング剤。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のコーティング剤によって、アルミニウム合金の表面に形成されるコーティング膜。
- メチルトリメトキシシランとフェニルトリメトキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシランとを、酸触媒として無機酸またはルイス酸を用いて加水分解縮合を行い、ポリシラノール組成物を得る工程、および、前記工程で得られたポリシラノール組成物に加熱硬化触媒を加える工程を含む、コーティング剤の製造方法。
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