JP2015080996A - インホイールモータ駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 耐久性を確保し、小型かつ軽量で、NVH特性の良好なインホイールモータ駆動装置を提供する。【解決手段】 偏心部25a,25bを有する減速機入力軸25をモータ部Aで回転駆動し、減速機入力軸25の回転を減速部Bで減速して減速機出力軸28に伝達するインホイールモータ駆動装置21において、減速部Bは、減速機入力軸25と、この減速機入力軸25の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う曲線板26a,26bと、この曲線板26a,26bの自転運動を生じさせる外ピン27と、減速機出力軸28に保持された内ピン31を、曲線板26a,26bの貫通孔30aに挿入して針状ころ軸受31aを介して曲線板26a,26bに係合させることにより、曲線板26a,26bの自転運動を、減速機入力軸25の回転軸心を中心とする回転運動に変換して減速機出力軸28に伝達する運動変換機構とを備え、針状ころ軸受31aを構成する外輪38は、その外径面38bにクラウニングが施されている。【選択図】 図1
Description
本発明は、例えば、電動モータの出力軸と車輪用軸受とを減速機を介して連結したインホイールモータ駆動装置に関する。
従来のインホイールモータ駆動装置は、例えば、特許文献1に開示された構造のものがある。この特許文献1に開示されたインホイールモータ駆動装置101は、図14に示すように、懸架装置(サスペンション)を介して車体に取り付けられるケーシング102の内部で駆動力を発生させるモータ部103と、車輪に接続される車輪用軸受部104と、モータ部103の回転を減速して車輪用軸受部104に伝達する減速部105とで主要部が構成されている。
前述の構成からなるインホイールモータ駆動装置101において、装置のコンパクト化の観点から、モータ部103には、低トルクで高回転型のモータが採用されている。一方、車輪用軸受部104には、車輪を駆動するために大きなトルクが必要となる。そのため、減速部105には、コンパクトで高い減速比が得られるサイクロイド減速機が採用されている。
このサイクロイド減速機を採用した減速部105は、偏心部106a,106bを有する減速機入力軸106と、その減速機入力軸106の偏心部106a,106bに配置される曲線板107a,107bと、その曲線板107a,107bの外周面に係合して曲線板107a,107bに自転運動を生じさせる複数の外ピン109と、曲線板107a,107bの貫通孔115a,115bの内径面に針状ころ軸受114を介して係合して曲線板107a,107bの自転運動を減速機出力軸110に伝達する複数の内ピン111とで主要部が構成されている。
減速機入力軸106は、ケーシング102および減速機出力軸110に玉軸受112a,112bによって回転自在に支持されている。曲線板107a,107bは、減速機入力軸106の偏心部106a,106bに玉軸受108a,108bによって回転自在に支持されている。曲線板107a,107bの外周面に係合する複数の外ピン109は、その両端部が針状ころ軸受113a,113bによってケーシング102に回転自在に支持されている。減速機出力軸110に保持された内ピン111は、外輪および針状ころで構成されて内輪がないタイプの針状ころ軸受114が組み込まれており、この針状ころ軸受114を介して曲線板107a,107bと転がり接触している。
ところで、前述した従来のインホイールモータ駆動装置101は、ホイールの内部にユニットを収めなければならず、また、ばね下重量を押さえる必要があり、さらに、広い客室スペースを確保するために、小型化が必須の要件となる。そのため、モータ部103は小型のものを使用する必要があり、小型低トルクのモータ部103から必要な出力を得るために15,000min-1以上の高速回転が要求される。このような過酷な使用環境やサイクロイド減速機の機構的な特殊性およびばね下重量となるインホイールモータ駆動装置101の特性が絡んで、減速部105の内部に組み込まれるころ軸受としての針状ころ軸受114には改善すべき点を残している。
そこで、本発明は前述の改善点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、耐久性を確保し、小型かつ軽量で、NVH(Noise Vibration Harshness)特性の良好なインホイールモータ駆動装置を提供することにある。
本発明は、前述の目的を達成するために、インホイールモータ駆動装置の内部の潤滑機構や冷却機構を含めて種々検討した結果、減速部内に組み込まれるころ軸受について見出された以下の知見に基づいている。
減速部では、減速機出力軸に保持された内ピンと、減速機入力軸に回転自在に支持された曲線板には、ミスアライメントが発生することがあり、その場合、内ピンは針状ころ軸受を介して曲線板から大きな荷重を受けることになる。そのため、曲線板と転がり接触する針状ころ軸受の外輪および針状ころは、ラジアル荷重やモーメント荷重が負荷されて過大応力が発生し易い状況下におかれていることが判明した。また、減速部では、曲線板の振れ回りによる振動や、その曲線板と外ピンおよび内ピンの当たりによる音および振動が発生することが判明した。
以上のようなラジアル荷重やモーメント荷重の負荷状態に加えて、ばね下重量となるインホイールモータ駆動装置という条件が重畳することにより、NVH特性に悪影響を及ぼし、運転者および搭乗者に不快感を与えることが判明した。さらに、減速部では内ピンが高速回転で駆動されるため、その内ピンに組み込まれた針状ころ軸受自体も小型化しなければ、減速部の径方向寸法をモータ部の径方向寸法内に収めることができず、インホールモータ駆動装置として成立しないことが判明した。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、モータ部、減速部および車輪用軸受部を保持するケーシングを備え、モータ部が偏心部を有する減速機入力軸を回転駆動し、減速部が減速機入力軸の回転を減速して減速機出力軸に伝達し、車輪用軸受部が減速機出力軸に連結されたインホイールモータ駆動装置であって、減速部は、減速機入力軸と、この減速機入力軸の偏心部に回転自在に保持されて、減速機入力軸の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う公転部材と、この公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外ピンと、公転部材の自転運動を、減速機入力軸の回転軸心を中心とする回転運動に変換して減速機出力軸に伝達する運動変換機構と、減速部に潤滑油を供給する減速部潤滑機構とを備え、運動変換機構は、減速機出力軸に保持された内ピンを、公転部材に形成された貫通孔に挿入してころ軸受を介して公転部材に係合させた構造を備え、ころ軸受を構成する軌道輪は、その反軌道面にクラウニングが施されていることを特徴とする。
本発明における軌道輪は、その反軌道面の軸方向中央位置から軸方向外側へ5mmの位置にある測定点で1〜35μmの径方向変位量を持ち、軌道輪の軸方向全域に亘って形成されたフルクラウニングが施されていることが望ましい。なお、軌道輪の反軌道面とは、軌道面が形成される周面と反対側の周面、つまり、外輪の外径面あるいは内輪の内径面を意味する。
このように、ころ軸受を構成する軌道輪にクラウニングが施されていることにより、ラジアル荷重やモーメント荷重が負荷されて過大応力が発生し易い状況下にあっても、ミスアライメント負荷時に軌道輪の端部における局所的な荷重が発生し難くなり、ころ軸受の破損を未然に防止して軸受寿命を確保することができる。その結果、耐久性を確保しつつ、小型かつ軽量で、NVH特性の良好なインホイールモータ駆動装置を実現することができる。
本発明における軌道輪は、公転部材の貫通孔の内壁面に係合し、内径面に外側軌道面を有する外輪であり、ころ軸受は、前述の外輪と、内ピンの外径面に直接形成された内側軌道面と、その内側軌道面と外側軌道面の間に配置される複数のころとで構成されていることが望ましい。このように、ころ軸受に内輪がないタイプを採用すれば、ころ軸受自体もさらに小型化でき、インホイールモータ駆動装置の小型化および軽量化により一層好適である。
本発明におけるころ軸受は針状ころ軸受であることが望ましい。このように、ころ軸受に針状ころ軸受を採用すれば、内ピンに組み込まれるころ軸受自体も小型化でき、インホイールモータ駆動装置の小型化および軽量化に寄与する。
本発明によれば、ころ軸受を構成する軌道輪にクラウニングが施されていることにより、ラジアル荷重やモーメント荷重が負荷されて過大応力が発生し易い状況下にあっても、ミスアライメント負荷時に軌道輪の端部における局所的な荷重が発生し難くなり、ころ軸受の破損を未然に防止して軸受寿命を確保することができる。その結果、耐久性を確保しつつ、小型かつ軽量で、NVH特性の良好なインホイールモータ駆動装置を実現することができる。
本発明に係るインホイールモータ駆動装置21の実施形態を、図1〜図13を参照しながら以下に詳述する。
図12は、インホイールモータ駆動装置21を搭載した電気自動車11の概略構成を示す平面図で、図13は、電気自動車11を後方から見たものである。図12に示すように、電気自動車11は、シャーシ12と、操舵輪としての前輪13と、駆動輪としての後輪14と、その後輪14に駆動力を伝達するインホイールモータ駆動装置21とを装備する。図13に示すように、後輪14は、シャーシ12のホイールハウジング12aの内部に収容され、懸架装置(サスペンション)12bを介してシャーシ12の下部に固定されている。
懸架装置12bは、左右に延びるサスペンションアームによって後輪14を支持すると共に、コイルスプリングとショックアブソーバとを含むストラットによって、後輪14が地面から受ける振動を吸収してシャーシ12の振動を抑制する。さらに、左右のサスペンションアームの連結部分には、旋回時などの車体の傾きを抑制するスタビライザが設けられている。懸架装置12bは、路面の凹凸に対する追従性を向上させ、駆動輪の駆動力を効率よく路面に伝達するために、左右の車輪を独立して上下させることができる独立懸架式としている。
電気自動車11は、ホイールハウジング12aの内部に、左右それぞれの後輪14を駆動するインホイールモータ駆動装置21を設けることによって、シャーシ12上にモータ、ドライブシャフトおよびデファレンシャルギヤ機構などを設ける必要がなくなるので、客室スペースを広く確保でき、かつ、左右の後輪14の回転をそれぞれ制御することができるという利点を有する。電気自動車11の走行安定性およびNVH特性を向上させるためにばね下重量を抑える必要があり、さらに、広い客室スペースを確保するためにインホイールモータ駆動装置21の小型化が求められる。
そこで、図1〜図11に示す構造のインホイールモータ駆動装置21を採用している。なお、図1はインホイールモータ駆動装置21の概略構成を示す断面図、図2は図1のO−O線に沿う断面図、図3は図1の減速部を示す拡大断面図、図4は図1の減速部の内ピンに組み込まれた針状ころ軸受を示す断面図、図5は曲線板に作用する荷重を示す説明図、図6は図4の外輪を示す要部拡大断面図、図7は図4の針状ころを示す要部拡大断面図、図8は図1のP−P線に沿う断面図、図9は図1のQ−Q線に沿う断面図、図10は図1のR−R線に沿う断面図、図11は図1の回転ポンプを示す断面図である。
図1に示すように、インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bからの出力を駆動輪14(図12および図13参照)に伝達する車輪用軸受部Cとを備え、モータ部Aと減速部Bはケーシング22に収納されて、図12に示すように、電気自動車11のホイールハウジング12a内に取り付けられる。
モータ部Aは、ケーシング22に固定されているステータ23aと、ステータ23aの内側に径方向の隙間をもって対向する位置に配置されたロータ23bと、ロータ23bの内側に連結固定されてロータ23bと一体回転するモータ回転軸24aとを備えたラジアルギャップモータである。中空構造のモータ回転軸24aは、ロータ23bの内径面に嵌合固定されて一体回転すると共に、モータ部A内で軸方向一方側端部(図1の右側)を転がり軸受36aに、軸方向他方側端部(図1の左側)を転がり軸受36bによって回転自在に支持されている。
減速機入力軸25は、図3に示すように、その軸方向一方側略中央部(図1の右側)が転がり軸受37aに、軸方向他方側端部(図1の左側)を転がり軸受37bによって、減速機出力軸28に対して回転自在に支持されている。一方の転がり軸受37aは、減速機出力軸28に固定された内ピン31の軸端部に連結固定されたスタビライザ31bの円筒部31dの内径面に嵌合されている。他方の転がり軸受37bは、減速機出力軸28のフランジ部28aの内径面に嵌合されている。
減速機入力軸25は、減速部B内に偏心部25a,25bを有する。2つの偏心部25a,25bは、偏心運動による遠心力を互いに打ち消し合うために、180°位相をずらして設けられている。この減速機入力軸25は、転がり軸受37a,37bによって減速機出力軸28に対して回転自在に支持されている。モータ回転軸24aと減速機入力軸25とは、図1に示すように、セレーション嵌合によって連結され、モータ部Aの駆動力が減速部Bに伝達される。このセレーション嵌合部は、減速機入力軸25がある程度傾いても、モータ回転軸24aへの影響を抑制するように構成されている。
減速部Bは、偏心部25a、25bに回転自在に保持される公転部材としての曲線板26a,26bと、ケーシング22上の固定位置に保持され、曲線板26a,26bの外周部に係合する複数の外ピン27と、曲線板26a,26bの自転運動を減速機出力軸28に伝達する運動変換機構と、偏心部25a,25bに隣接する位置にカウンタウェイト29とを備える。また、減速部Bには、潤滑油を供給するための減速部潤滑機構が設けられている。減速機出力軸28は、フランジ部28aと軸部28bとを有する。フランジ部28aには、減速機出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に複数の内ピン31が等間隔に固定されている。また、軸部28bはハブ輪32に嵌合連結され、減速部Bの出力を車輪14に伝達する。
図2および図3に示すように、曲線板26a,26bは、外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される複数の波形を有し、一方側端面から他方側端面に貫通する貫通孔30a,30bを有する。貫通孔30aは、曲線板26a,26bの自転軸心を中心とする円周上に等間隔に複数個設けられており、内ピン31を受け入れる。また、貫通孔30bは、曲線板26a,26bの中心に設けられており、偏心部25a,25bに嵌合する。曲線板26a,26bは、転がり軸受41によって偏心部25a,25bに対して回転自在に支持されている。
転がり軸受41は、偏心部25a,25bの外径面に嵌合し、その外径面に内側軌道面42aを有する内輪42と、曲線板26a,26bの貫通孔30bの内径面に直接形成された外側軌道面43と、内側軌道面42aと外側軌道面43の間に配置される複数の円筒ころ44と、円筒ころ44を保持する保持器45とを備える円筒ころ軸受である。また、内輪42は、内側軌道面42aの軸方向両端部から径方向外側に突出する鍔部42bを有する。ここで、転がり軸受41は、内輪42を別体で形成したものを例示したが、これに限ることなく、外側軌道面43と同様に、偏心部25aの外径面に内側軌道面を直接形成してもよい。
外ピン27は、減速機入力軸25の回転軸心を中心とする円周上に等間隔に設けられている。曲線板26a,26bが公転運動すると、曲線形状の波形と外ピン27とが係合して、曲線板26a,26bに自転運動を生じさせる。外ピン27は、針状ころ軸受27aを介して回転自在に外ピンハウジング60に保持され、この外ピンハウジング60がケーシング22(図1参照)に回り止め状態(図示省略)で取り付けられている。これにより、曲線板26a,26bとの間の接触抵抗を低減することができる。なお、外ピン27は針状ころ軸受27aを介してケーシング22に直接保持する構造にしてもよい。
カウンタウェイト29は、略扇形状で、減速機入力軸25と嵌合する貫通孔を有し、曲線板26a,26bの回転によって生じる不釣合い慣性偶力を打ち消すために、偏心部25a,25bと隣接する位置に偏心部25a,25bと180°位相をずらして配置される。図3に示すように、2枚の曲線板26a,26b間の回転軸心方向の中心点をGとすると、その中心点Gの右側について、中心点Gと曲線板26aの中心との距離をL1、曲線板26a、転がり軸受41および偏心部25aの質量の和をm1、曲線板26aの重心の回転軸心からの偏心量をε1とし、中心点Gとカウンタウェイト29との距離をL2、カウンタウェイト29の質量をm2、カウンタウェイト29の重心の回転軸心からの偏心量をε2とすると、L1×m1×ε1=L2×m2×ε2を満たす関係となっている。L1×m1×ε1=L2×m2×ε2の関係は、不可避的に生じる誤差を許容する。中心点Gの左側の曲線板26bとカウンタウェイト29との間にも同様の関係が成立する。
運動変換機構は、減速機出力軸28に保持された内ピン31を、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aに挿入してころ軸受としての針状ころ軸受31aを介して曲線板26a,26bに係合させた構造を備えている。なお、この実施形態では、針状ころ軸受31aを例示するが、円筒ころ軸受などの他のころ軸受であってもよい。貫通孔30aは、複数の内ピン31それぞれに対応する位置に設けられ、貫通孔30aの内径寸法は、内ピン31の外径寸法(針状ころ軸受31aを含む最大外径)より所定寸法大きく設定されている。内ピン31は、減速機出力軸28の回転軸心を中心とする円周上に等間隔に設けられており、その軸方向一方側端部が減速機出力軸28に固定されている。減速機出力軸28は減速機入力軸25と同軸上に配置されているので、曲線板26a,26bの自転運動を、減速機入力軸25の回転軸心を中心とする回転運動に変換して減速機出力軸28に伝達する。内ピン31に組み込まれた針状ころ軸受31aが、曲線板26a,26bの貫通孔30aの内壁面に当接することにより、曲線板26a,26bとの摩擦抵抗を低減する。
内ピン31の軸方向他方側端部には、スタビライザ31bが設けられている。スタビライザ31bは、円環形状の円環部31cと、円環部31cの内径面から軸方向に延びる円筒部31dとを含む。複数の内ピン31の軸方向他方側端部は、スタビライザ31bの円環部31cに固定されている。曲線板26a,26bから一部の内ピン31に負荷される荷重はスタビライザ31bを介して全ての内ピン31によって支持されるため、内ピン31に作用する応力を低減させ、耐久性を向上させることができる。また、内ピン31の軸方向一方側端部が減速機出力軸28に保持され、その軸方向他方側端部がスタビライザ31bに保持された両端支持構造となっていることから、剛性の向上とモーメント荷重の低減が図れる。
この内ピン31に組み込まれた針状ころ軸受31aは、図4に示すように、曲線板26a,26bの貫通孔30a(図3参照)の内壁面に係合し、内径面に外側軌道面38aを有する外輪38と、内ピン31の外径面に直接形成された内側軌道面38cと、内側軌道面38cと外側軌道面38aの間に配置される複数の針状ころ39とで構成されている。複数の針状ころ39は、保持器のない、いわゆる単列総ころ状態で配設されている。なお、内ピン31の軸方向に沿って並設された二つの針状ころ軸受31aは、減速機出力軸28のフランジ部28aとスタビライザ31bの円環部31cとの間でスペーサ40a,40bを介在させることにより、内ピン31に対する軸方向位置が規制されている。
このように、ころ軸受に針状ころ軸受31aを採用することにより、内ピン31に組み込まれるころ軸受自体も小型化でき、インホイールモータ駆動装置21の小型化および軽量化に寄与する。また、針状ころ軸受31aに内輪がないタイプを採用することにより、針状ころ軸受31a自体もさらに小型化でき、インホイールモータ駆動装置21の小型化および軽量化により一層好適である。
曲線板26a,26bに作用する荷重の状態を図5に基づいて説明する。偏心部25aの軸心O2は減速機入力軸25の軸心Oから偏心量eだけ偏心している。偏心部25aの外周には、曲線板26aが取り付けられ、偏心部25aは曲線板26aを回転自在に支持するので、軸心O2は曲線板26aの軸心でもある。曲線板26aの外周は波形曲線で形成され、径方向に窪んだ波形の凹部33を周方向等間隔に有する。曲線板26aの周囲には、凹部33と係合する外ピン27が、軸心Oを中心として周方向に複数配設されている。
図5において、減速機入力軸25と共に偏心部25aが紙面上で反時計周りに回転すると、偏心部25aは軸心Oを中心とする公転運動を行うので、曲線板26aの凹部33が、外ピン27と周方向に順次当接する。この結果、矢印で示すように、曲線板26aは、複数の外ピン27から荷重Fiを受けて、時計回りに自転する。
また、曲線板26aには貫通孔30aが軸心O2を中心として周方向に複数配設されている。各貫通孔30aには、軸心Oと同軸に配置された減速機出力軸28と結合する内ピン31が挿通する。貫通孔30aの内径は、内ピン31の外径よりも所定寸法大きいため、内ピン31は曲線板26aの公転運動の障害とはならず、内ピン31は曲線板26aの自転運動を取り出して減速機出力軸28を回転させる。このとき、減速機出力軸28は、減速機入力軸25よりも高トルクかつ低回転数になり、図5に矢印で示すように、曲線板26aは、複数の内ピン31から荷重Fjを受ける。これらの複数の荷重Fi,Fjの合力Fsが減速機入力軸25にかかる。
合力Fsの方向は、曲線板26aの波形形状、凹部33の数などの幾何学的条件や遠心力の影響により変化する。具体的には、自転軸心O2と軸心Oとを結ぶ直線Yと直角であって自転軸心O2を通過する基準線Xと、合力Fsとの角度αは概ね30°〜60°で変動する。上記の複数の荷重Fi、Fjは、減速機入力軸25が1回転(360°)する間に荷重の方向や大きさが変り、その結果、減速機入力軸25に作用する合力Fsも荷重の方向や大きさが変動する。そして、減速機入力軸25が1回転すると、曲線板26aの波形の凹部33が減速されて1ピッチ時計回りに回転し、図5の状態になり、これを繰り返す。
このため、内ピン31に組み込まれる針状ころ軸受31aには、荷重の方向と大きさが変動するラジアル荷重およびモーメント荷重が負荷されることになる。その結果、軸受温度の上昇や内側軌道面と外側軌道面の温度差が予想以上に大きくなることを検証した。そこで、針状ころ軸受31aは、図6に示すように、外輪38の外径面38bに、その軸方向中央位置から軸方向外側へ5mm(=S)の位置にある測定点GP1で1〜35μmの径方向変位量Tを持つクラウニング(クラウニング長さCL、クラウニング半径CR)が施されている。外輪38の軸方向全域に亘って形成されたフルクラウニングとなっている。なお、図4および図6では、クラウニングを誇張して示している。
このように、外輪38の外径面38bにクラウニングを施すことにより、減速機出力軸28に保持された内ピン31と、減速機入力軸25に回転自在に支持された曲線板26a,26bに、ミスアライメントが発生しても、外輪38の端部における局所的な荷重が発生し難くなり、外輪38の破損を未然に防止して軸受寿命を確保することができる。
この外輪38の外径面38bのクラウニングにおいて、前述の径方向変位量Tが1μmよりも小さいと、内ピン31と曲線板26a,26bのミスアライメント時に外輪38の端部における局所的な荷重が発生し易くなる。また、径方向変位量Tが35μmよりも大きいと、曲線板26a,26bの姿勢が不安定となって、音および振動の発生につながる。
また、前述した外輪38の外径面38bだけでなく、針状ころ軸受31aは、図7に示すように、針状ころ39の外径面39bに、ころ端面39aから軸方向内側へ0.7mm(=M)の位置にある測定点GP2で1〜10μmの径方向変位量Nを持つクラウニングが施されている。なお、図4および図7では、クラウニングを誇張して示している。
このように、針状ころ39の外径面39bにクラウニングを施すことにより、減速機出力軸28に保持された内ピン31と、減速機入力軸25に回転自在に支持された曲線板26a,26bに、ミスアライメントが発生しても、そのミスアライメント時に針状ころ39の端部における局所的な荷重が発生し難くなり、針状ころ軸受31aの破損を未然に防止して軸受寿命を確保することができる。
この針状ころ39の外径面39bのクラウニングにおいて、前述の径方向変位量Nが1μmよりも小さいと、内ピン31と曲線板26a,26bのミスアライメント時に針状ころ39の端部における局所的な荷重が発生し易くなる。また逆に、径方向変位量Nが10μmよりも大きいと、針状ころ39の姿勢が不安定となって、音および振動の発生につながる。
図1に示すように、車輪用軸受部Cは、減速機出力軸28に連結されたハブ輪32と、ハブ輪32をケーシング22に対して回転自在に支持する車輪用軸受33とを備える。ハブ輪32は、円筒形状の中空部32aとフランジ部32bとを有する。フランジ部32bにはボルト32cによって駆動輪14(図12および図13参照)が連結固定される。減速機出力軸28の軸部28bの外径面にはスプラインが形成されており、このスプラインをハブ輪32の中空部32aの内径面に形成されたスプライン穴に嵌合させてトルク伝達可能に連結されている。
車輪用軸受33は、ハブ輪32およびそのハブ輪32の小径段部に嵌合された内輪33aからなる内側軸受部材と、ケーシング22の内径面に嵌合固定された外側軸受部材33bと、ハブ輪32および内輪33aの外径面に形成された内側軌道面33f,33gと外側軸受部材33bの内径面に形成された外側軌道面33h,33iとの間に配置された転動体としての複数の玉33cと、隣接する玉33cの間隔を保持する保持器33dと、車輪用軸受33の軸方向両端部を密封するシール部材33eとを備えた複列アンギュラ玉軸受である。
次に減速部潤滑機構を説明する。減速部潤滑機構は、減速部Bに潤滑油を供給するものであって、図1および図3に示す潤滑油路25c、潤滑油供給口25d,25e,25f、スタビライザ31b内の潤滑油路31e、内ピン31内の潤滑油路31f、潤滑油排出口22b、潤滑油貯留部22d、潤滑油路22e、回転ポンプ51および循環油路45とで主要部が構成されている。なお、減速部潤滑機構内に付した白抜き矢印は潤滑油の流れる方向を示す。
潤滑油路25cは、減速機入力軸25の内部を軸線方向に沿って延びている。潤滑油供給口25d,25eは、潤滑油路25cから減速機入力軸25の外径面に向って延び、潤滑油供給口25fは、減速機入力軸25の軸端部から回転軸心方向に軸端面に向って延びている。減速部Bの位置におけるケーシング22の少なくとも1箇所には、減速部B内部の潤滑油を排出する潤滑油排出口22bが設けられている。そして、潤滑油排出口22bと潤滑油路25cとを接続する循環油路45がケーシング22の内部に設けられている。潤滑油排出口22bから排出された潤滑油は、循環油路45を経由して潤滑油路25cに還流する。
図1および図8〜図10に示すように、循環油路45は、ケーシング22の内部を軸方向に延びる軸方向油路45aと、軸方向油路45aの軸方向一端部(図1の右側)に接続されて径方向に延びる径方向油路45cと、軸方向油路45aの軸方向他端部(図1の左側)に接続されて径方向に延びる径方向油路45bとで構成される。径方向油路45bは回転ポンプ51から圧送された潤滑油を軸方向油路45aに供給し、軸方向油路45aから径方向油路45cを経て潤滑油を潤滑油路25cに供給する。
潤滑油貯留部22dに接続する潤滑油路22eと循環油路45との間には、回転ポンプ51が設けられており、潤滑油を強制的に循環させている。図11に示すように、回転ポンプ51は、減速機出力軸28(図1参照)の回転を利用して回転するインナーロータ52と、インナーロータ52の回転に伴って従動回転するアウターロータ53と、ポンプ室54と、潤滑油路22eに連通する吸入口55と、循環油路45の径方向油路45bに連通する吐出口56とを備えるサイクロイドポンプである。
インナーロータ52は、外径面にサイクロイド曲線で構成される歯形を有する。具体的には、歯先部分52aの形状がエピサイクロイド曲線、歯溝部分52bの形状がハイポサイクロイド曲線となっている。インナーロータ52は、スタビライザ31bの円筒部31d(図1および図3参照)の外径面に嵌合して内ピン31(減速機出力軸28)と一体回転する。
アウターロータ53は、内径面にサイクロイド曲線で構成される歯形を有する。アウターロータ53は、ケーシング22に回転自在に支持されている。インナーロータ52は、回転中心c1を中心として回転する。一方、アウターロータ53は、インナーロータ52の回転中心c1と異なる回転中心c2を中心として回転する。インナーロータ52の歯数をnとすると、アウターロータ53の歯数は(n+1)となる。なお、この実施形態においては、n=5としている。
インナーロータ52とアウターロータ53との間の空間には、複数のポンプ室54が設けられている。そして、インナーロータ52が減速機出力軸28の回転を利用して回転すると、アウターロータ53は従動回転する。このとき、インナーロータ52およびアウターロータ53はそれぞれ異なる回転中心c1,c2を中心として回転するので、ポンプ室54の容積は連続的に変化する。これにより、吸入口55から流入した潤滑油が吐出口56から径方向油路45bに圧送される。
なお、前述の構成からなる回転ポンプ51の回転中にインナーロータ52が傾くと、ポンプ室54の容積が変化して潤滑油を適切に圧送することができなかったり、インナーロータ52とアウターロータ53とが接触してスムーズな回転を阻害するおそれがある。そこで、図1に示すように、インナーロータ52には、段付部52cが設けられている。この段付部52cは、その外径面(案内面)がケーシング22の内径面に当接して、車輪14からのラジアル荷重によってインナーロータ52が傾くのを防止している。
潤滑油排出口22bと回転ポンプ51との間には、潤滑油を一時的に貯留する潤滑油貯留部22dが設けられている。これにより、高速回転時においては、回転ポンプ51によって圧送しきれない潤滑油を一時的に潤滑油貯留部22dに貯留しておくことができる。その結果、減速部Bのトルク損失の増加を防止することができる。一方、低速回転時においては、潤滑油排出口22bに到達する潤滑油量が少なくなっても、潤滑油貯留部22dに貯留されている潤滑油を潤滑油路25cに還流することができる。その結果、減速部Bに安定して潤滑油を供給することができる。なお、減速部B内部の潤滑油は、遠心力に加えて重力によって外側に移動する。従って、潤滑油貯留部22dがインホイールモータ駆動装置21の下部に位置するように、電気自動車11に取り付けるのが望ましい。
前述の構成からなる減速部Bにおける潤滑油の流れを説明する。まず、潤滑油路25cを流れる潤滑油は、減速機入力軸25の回転に伴う遠心力および圧力によって潤滑油供給口25d、25e,25fから減速部Bに流出する。その後、減速部B内の各転がり軸受へ潤滑油が次のように流れてゆく。
潤滑油供給口25e,25fから流出した潤滑油は、遠心力の作用により、減速機入力軸25を支持する転がり軸受(深溝玉軸受)37a,37bに供給される。さらに、潤滑油供給口25eから流出した潤滑油は、スタビライザ31b内の潤滑油路31eへ導かれて内ピン31内の潤滑油路31fへ至り、この潤滑油路31fから針状ころ軸受31aに供給される。さらに、潤滑油は、遠心力により、曲線板26a,26bと内ピン31との当接部分や曲線板26a,26bと外ピン27との当接部分、外ピン27を支持する針状ころ軸受27a、減速機出力軸28(スタビライザ31b)を支持する転がり軸受46などを潤滑しながら径方向外側に移動する。
一方、潤滑油供給口25dから流出した潤滑油は、曲線板26a,26bを支持する転がり軸受(円筒ころ軸受)41の内輪42に設けた供給孔42c(図3参照)から軸受内部へ供給される。これにより、円筒ころ44、内側軌道面42aおよび外側軌道面43が潤滑される。さらに、潤滑油は、潤滑油供給口25e,25fから流出した潤滑油と同様に、遠心力により、曲線板26a,26bと内ピン31との当接部分および曲線板26a,26bと外ピン27との当接部分等を潤滑しながら径方向外側に移動する。
前述のような潤滑油の流れによって、減速部B内の各転がり軸受が潤滑される。ケーシング22の内壁面に到達した潤滑油は、潤滑油排出口22bから排出されて潤滑油貯留部22dに貯留される。潤滑油貯留部22dに貯留された潤滑油は、潤滑油路22eを通って吸入口55から回転ポンプ51に供給され、吐出口56から循環油路45に圧送される。これにより、潤滑油は、循環油路45の径方向油路45bから軸方向油路45a、径方向油路45cを経由して潤滑油路25cに還流する。循環油路45を流れる潤滑油の一部は、ケーシング22とモータ回転軸24aとの間から転がり軸受36aを潤滑する。転がり軸受36bは、回転ポンプ51の段付部52cとケーシング22の間からの潤滑油により潤滑される。
潤滑油排出口22bからの潤滑油の排出量は、減速機入力軸25の回転数に比例して多くなる。一方、インナーロータ52は減速機出力軸28と一体回転するので、回転ポンプ51の吐出量は、減速機出力軸28の回転数に比例して多くなる。そして、潤滑油排出口22bから減速部Bに供給される潤滑油量は、回転ポンプ51の吐出量に比例して多くなる。すなわち、減速部Bへの潤滑油の供給量および排出量は、いずれもインホイールモータ駆動装置21の回転数によって変化するので、常にスムーズに潤滑油を循環させることができる。
このように、減速機入力軸25から減速部Bに潤滑油を供給することにより、減速機入力軸25周辺の潤滑油不足を解消することができる。また、回転ポンプ51をケーシング22内に配置することによって、インホイールモータ駆動装置21全体としての大型化を防止することができる。
前述の構成からなるインホイールモータ駆動装置21の全体的な作動原理を説明する。
モータ部Aは、例えば、ステータ23aのコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石又は磁性体によって構成されるロータ23bが回転する。これにより、モータ回転軸24aに連結された減速機入力軸25が回転すると、曲線板26a,26bは減速機入力軸25の回転軸心を中心として公転運動する。このとき、外ピン27が、曲線板26a,26bの曲線形状の波形と係合して、曲線板26a,26bを減速機入力軸25の回転とは逆向きに自転回転させる。
貫通孔30aに挿通する内ピン31は、曲線板26a,26bの自転運動に伴って貫通孔30aの内壁面と当接する。これにより、曲線板26a,26bの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26a,26bの自転運動のみが減速機出力軸28を介して車輪用軸受部Cに伝達される。このとき、減速機入力軸25の回転が減速部Bによって減速されて減速機出力軸28に伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪14に必要なトルクを伝達することが可能となる。
この減速部Bの減速比は、外ピン27の数をZA、曲線板26a、26bの波形の数をZBとすると、(ZA−ZB)/ZBで算出される。図2に示す実施形態では、ZA=12、ZB=11であるので、減速比は1/11と非常に大きな減速比を得ることができる。このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、外ピン27および内ピン31に針状ころ軸受27a,31a(図3参照)を設けたことにより、曲線板26a,26bとの間の摩擦抵抗が低減されるので、減速部Bの伝達効率が向上する。
この実施形態においては、潤滑油供給口25dを偏心部25a,25bに設け、潤滑油供給口25e,25fを減速機入力軸25の途中位置および軸端に設けた例を示したが、これに限ることなく、減速機入力軸25の任意の位置に設けることができる。ただし、転がり軸受41,37a,37bに安定して潤滑油を供給する観点からは、潤滑油供給口25dは偏心部25a,25bに、潤滑油供給口25e,25fは、減速機入力軸25の途中位置および軸端に設けるのが望ましい。
また、回転ポンプ51を減速機出力軸28の回転を利用して駆動した例を示したが、回転ポンプ51は減速機入力軸25の回転を利用して駆動することもできる。しかし、減速機入力軸25の回転数は減速機出力軸28と比較して大きい(この実施形態では11倍)ので、回転ポンプ51の耐久性が低下するおそれがある。また、減速された減速機出力軸28に接続しても十分な排出量を確保することができる。これらの観点から、回転ポンプ51は減速機出力軸28の回転を利用して駆動することが望ましい。回転ポンプ51としてサイクロイドポンプの例を示したが、これに限ることなく、減速機出力軸28の回転を利用して駆動するあらゆる回転型ポンプを採用することができる。さらには、回転ポンプ51を省略して、遠心力のみによって潤滑油を循環させるようにしてもよい。
減速部Bの曲線板26a,26bを180°位相をずらして2枚設けた例を示したが、この曲線板の枚数は任意に設定することができ、例えば、曲線板を3枚設ける場合は、120°位相をずらして設けるとよい。運動変換機構は、減速機出力軸28に固定された内ピン31と、曲線板26a,26bに設けられた貫通孔30aとで構成された例を示したが、これに限ることなく、減速部Bの回転をハブ輪32に伝達可能な任意の構成とすることができる。例えば、曲線板26a,26bに固定された内ピンと減速機出力軸28に形成された穴とで構成される運動変換機構であってもよい。
この実施形態における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから駆動輪14に伝達される。したがって、前述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。また、モータ部Aに電力を供給してモータ部を駆動させ、モータ部Aからの動力を駆動輪14に伝達させる場合を示したが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、駆動輪14側からの動力を減速部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電してもよい。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、後でモータ部Aを駆動させたり、車両に備えられた他の電動機器などの作動に用いてもよい。
この実施形態の構成にブレーキを加えることもできる。例えば、図1の構成において、ケーシング22を軸方向に延長してロータ23bの図中右側に空間を形成し、ロータ23bと一体的に回転する回転部材と、ケーシング22に回転不能にかつ軸方向に移動可能なピストンとこのピストンを作動させるシリンダとを配置して、車両停止時にピストンと回転部材とによってロータ23bをロックするパーキングブレーキとしてもよい。また、ロータ23bと一体的に回転する回転部材の一部に形成されたフランジおよびケーシング22側に設置された摩擦板をケーシング22側に設置されたシリンダで挟むディスクブレーキであってもよい。さらに、この回転部材の一部にドラムを形成すると共に、ケーシング22側にブレーキシューを固定し、摩擦係合およびセルフエンゲージ作用で回転部材をロックするドラムブレーキを用いることができる。
この実施形態においては、モータ部Aにラジアルギャップモータを採用した例を示したが、これに限ることなく、任意の構成のモータを適用可能である。例えば、ケーシングに固定されるステータと、ステータの内側の軸方向の隙間を開けて対向する位置に配置されるロータとを備えるアキシャルギャップモータであってもよい。さらに、図12および図13に示した電気自動車11は、後輪14を駆動輪とした例を示したが、これに限ることなく、前輪13を駆動輪としてもよく、4輪駆動車であってもよい。なお、本明細書中で「電気自動車」とは、電力から駆動力を得る全ての自動車を含む概念であり、例えば、ハイブリッドカー等をも含むものとして理解すべきである。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
21 インホイールモータ駆動装置
22 ケーシング
25 減速機入力軸
25a,25b 偏心部
26a,26b 公転部材(曲線板)
28 減速機出力軸
30a 貫通孔
31 運動変換機構(内ピン)
31a ころ軸受(針状ころ軸受)
38 軌道輪(外輪)
38a 外側軌道面
38b 外径面
38c 内側軌道面
39 ころ(針状ころ)
A モータ部
B 減速部
C 車輪用軸受部
22 ケーシング
25 減速機入力軸
25a,25b 偏心部
26a,26b 公転部材(曲線板)
28 減速機出力軸
30a 貫通孔
31 運動変換機構(内ピン)
31a ころ軸受(針状ころ軸受)
38 軌道輪(外輪)
38a 外側軌道面
38b 外径面
38c 内側軌道面
39 ころ(針状ころ)
A モータ部
B 減速部
C 車輪用軸受部
Claims (5)
- モータ部、減速部および車輪用軸受部を保持するケーシングを備え、前記モータ部が偏心部を有する減速機入力軸を回転駆動し、前記減速部が前記減速機入力軸の回転を減速して減速機出力軸に伝達し、前記車輪用軸受部が前記減速機出力軸に連結されたインホイールモータ駆動装置であって、
前記減速部は、前記減速機入力軸と、この減速機入力軸の偏心部に回転自在に保持されて、前記減速機入力軸の回転に伴ってその回転軸心を中心とする公転運動を行う公転部材と、この公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外ピンと、前記公転部材の自転運動を、前記減速機入力軸の回転軸心を中心とする回転運動に変換して前記減速機出力軸に伝達する運動変換機構と、減速部に潤滑油を供給する減速部潤滑機構とを備え、
前記運動変換機構は、減速機出力軸に保持された内ピンを、前記公転部材に形成された貫通孔に挿入してころ軸受を介して前記公転部材に係合させた構造を備え、前記ころ軸受を構成する軌道輪は、その反軌道面にクラウニングが施されていることを特徴とするインホイールモータ駆動装置。 - 前記軌道輪は、その反軌道面の軸方向中央位置から軸方向外側へ5mmの位置にある測定点で1〜35μmの径方向変位量を持つクラウニングが施されている請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
- 前記軌道輪は、軌道輪の軸方向全域に亘って形成されたフルクラウニングが施されている請求項1又は2に記載のインホイールモータ駆動装置。
- 前記軌道輪は、前記公転部材の貫通孔の内壁面に係合し、内径面に外側軌道面を有する外輪であり、前記ころ軸受は、前記外輪と、前記内ピンの外径面に直接形成された内側軌道面と、その内側軌道面と外側軌道面の間に配置される複数のころとで構成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のインホイールモータ駆動装置。
- 前記ころ軸受が針状ころ軸受である請求項1〜4のいずれか一項に記載のインホイールモータ駆動装置。
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- 2014-10-09 WO PCT/JP2014/077045 patent/WO2015060135A1/ja active Application Filing
Also Published As
Publication number | Publication date |
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WO2015060135A1 (ja) | 2015-04-30 |
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