JP2015078976A - X線撮像システム - Google Patents
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Abstract
【課題】従来に比べて高分解能あるいは高速撮像が可能なX線撮像システムを提供する。
【解決手段】本発明によるX線撮像システムは、微小X線源アレが有するそれぞれの微小X線源をさらに微小な複数のX線源に変換するための線源格子と、前記線源格子を通過したX線を回折し干渉パターンを形成するビームスプリッター格子と、前記干渉パターンとのあいだでモアレを形成するパターンを有するアナライザー格子と、前記干渉パターンと前記アナライザー格子のパターンのあいだで形成されたモアレを画像化するX線検出器と、を有するX線撮像システムである。
【選択図】図3
【解決手段】本発明によるX線撮像システムは、微小X線源アレが有するそれぞれの微小X線源をさらに微小な複数のX線源に変換するための線源格子と、前記線源格子を通過したX線を回折し干渉パターンを形成するビームスプリッター格子と、前記干渉パターンとのあいだでモアレを形成するパターンを有するアナライザー格子と、前記干渉パターンと前記アナライザー格子のパターンのあいだで形成されたモアレを画像化するX線検出器と、を有するX線撮像システムである。
【選択図】図3
Description
本発明は、X線撮像システムに関する。
従来、被検体のX線透過率分布を検出することにより被検体の内部構造を観察する撮像手法が広く利用されている。一方近年では、X線が被検体を通過する際の位相シフト分布を検出することにより撮像を行う技術の研究開発が進められている。このような技術の一つにトールボット干渉法がある。
トールボット干渉法では、被検体とビームスプリッター格子を通過したX線の作る干渉パターンをアナライザー格子とX線検出器を用いて検出することで撮像を行う。被検体を透過したX線の位相シフト分布に従い、あるいは別の表現をすれば被検体を透過したX線の屈折の仕方に従い、干渉パターンに歪みが発生する。そのため、撮像されたパターンを解析することにより、被検体を透過したX線の位相分布などを得ることができる。
トールボット干渉法において干渉パターンを得るためには干渉性の高いX線を使用する必要があるため、例えば高出力のX線管などにより形成される実効サイズが数百μm以上となるようなX線源をそのままX線源として使用することは通常できない。
このため、特許文献1ではビームスプリッター格子の上流にもう一枚の格子を設置する方法を提案している。このもう一枚の格子のことを本明細書では線源格子と呼ぶことがある。線源格子は、線状又は点状に形成されたX線透過部とX線遮蔽部から成る。線源格子上の線状X線透過部の幅あるいは点状X線透過部の径は十分に小さいため、個々のX線透過部を通過したX線は高い干渉性を有することができ、ビームスプリッター格子による干渉パターンを形成することができる。さらに、X線透過部は一定の規則に従って配置されているため、これらを通過したX線の作る干渉パターンは互いにパターン周期の整数倍の位置ずれを持つ位置関係で重なり合う。これにより、X線源のサイズが大きい場合でも干渉パターンを得ることが可能となる。このような線源格子を使用するトールボット干渉計のことをトールボット・ロー干渉計と呼ぶことがある。
また、別の解決方法として、特許文献2では符号化線源イメージング(Coded Source Imaging)法を利用する方法を提案している。
符号化線源イメージング法は、X線源の形状を制御することにより、撮像システムの点拡がり関数(PSF(Point Spread Function)と呼ぶ)を制御し、撮像システムの空間分解能向上等を可能にする撮像方法である(非特許文献1)。符号化線源イメージング法におけるPSF制御の効果は、PSFのフーリエ変換の絶対値である変調伝達関数(MTF(Modulation Transfer Function)と呼ぶ)により評価できる。尚、本明細書においてMTFは周波数座標の原点における値を1として規格化した値を用いるものとする。また、符号化線源イメージング法において用いられるような特徴的なPSFによりコンボリューションされた被検体画像は通常そのままでは利用できない画像であるため、原則として何らかのデコンボリューション処理を施した上で最終的な被検体画像を取得する。このような符号化線源イメージング法におけるデコンボリューション処理のことを復号処理と呼ぶこともある。トールボット干渉計においては画像形成の過程が通常のX線撮像とは異なりより複雑であるものの、符号化線源イメージング法の原理を近似的に用いることができる。
符号化線源イメージング法は、X線源の形状を制御することにより、撮像システムの点拡がり関数(PSF(Point Spread Function)と呼ぶ)を制御し、撮像システムの空間分解能向上等を可能にする撮像方法である(非特許文献1)。符号化線源イメージング法におけるPSF制御の効果は、PSFのフーリエ変換の絶対値である変調伝達関数(MTF(Modulation Transfer Function)と呼ぶ)により評価できる。尚、本明細書においてMTFは周波数座標の原点における値を1として規格化した値を用いるものとする。また、符号化線源イメージング法において用いられるような特徴的なPSFによりコンボリューションされた被検体画像は通常そのままでは利用できない画像であるため、原則として何らかのデコンボリューション処理を施した上で最終的な被検体画像を取得する。このような符号化線源イメージング法におけるデコンボリューション処理のことを復号処理と呼ぶこともある。トールボット干渉計においては画像形成の過程が通常のX線撮像とは異なりより複雑であるものの、符号化線源イメージング法の原理を近似的に用いることができる。
また、符号化線源イメージング法において用いられるX線源の形状として一般的なのは
、多数の微小なX線源の集合から成るような形状である。このようなX線源は例えば多数の微小なピンホールを有するX線遮蔽マスクを用いることにより得ることができる。尚、このような多数の微小なピンホールを有するX線遮蔽マスクのことを符号化開口マスクと呼ぶことがある。
、多数の微小なX線源の集合から成るような形状である。このようなX線源は例えば多数の微小なピンホールを有するX線遮蔽マスクを用いることにより得ることができる。尚、このような多数の微小なピンホールを有するX線遮蔽マスクのことを符号化開口マスクと呼ぶことがある。
前述の特許文献2では、特許文献1における線源格子の代わりに符号化開口マスクを用いることで、符号化線源イメージング法の原理により干渉パターン形成に関するMTFを高め、干渉パターンの情報を伝達する方法を提案している。ただし、ここで問題となっているMTFは、符号化線源の形状が所謂幾何学的不鋭の効果によりアナライザー格子上における干渉パターン形成に関して与える影響を表現したMTFである。トールボット干渉計では干渉パターンをアナライザー格子との間に発生するモアレに変換し、干渉パターンを直接取得できるような空間分解能を持たない検出器により検出することが多い。この場合、最終的に検出される画像においては干渉パターンの基本周波数成分も含む一定以上の高周波数成分は失われることになる。よって、特許文献2が問題としているMTFは、撮像システム全体に関するMTFとは正確には異なる。
A. L. Damato et al., "Coded Source Imaging for Neutrons and X−Rays" 2006 IEEE Nuclear Science Symposium Conference Record, 199‐203
一般に、トールボット干渉法では被検体とビームスプリッター格子は近接していることが望ましい。また、被検体及びビームスプリッター格子の位置とアナライザー格子とは数百mm以上離れていることが望ましい。このため、結果として被検体とX線検出器とは数百mm以上離れていることが一般的である。これにより、X線源が有限の大きさを持つことに起因する幾何学的不鋭の効果により、被検体に対する干渉計の空間分解能が低下することがあった。
幾何学的不鋭の効果による空間分解能の低下はよりサイズの小さいX線源を使用することで低減することができるが、これは単位時間当たりのX線発生量の低下を伴うため、撮像時間の増大を招く。これとは逆に、よりサイズの大きいX線源を用いることで高速撮像が可能となるが、これは幾何学的不鋭の効果の増大を伴い、空間分解能の低下を招いてしまう。
特許文献2に記載の方法では、符号化線源イメージング法の原理を用いて干渉パターンの情報を伝達可能にすると同時に、通常の線源格子を用いる場合に比べて被検体画像の取得に関する撮像システムの空間分解能を向上させることも原理的には可能である。
しかしながら、干渉パターンの周期とX線検出器の画素サイズとでは通常後者の方が大きく、その大きさの比は一桁程度であることが多い。より具体的には、干渉パターンの周期が通常数μmであるのに対し、画素サイズは数十μmであることが多い。
よって、干渉パターンの形成のためには数μm周期に対応する周波数成分が十分に伝達されることが重要であり、一方、最終的に検出される画像の鮮鋭度や撮像システムの空間
分解能を有意に向上させるためには、通常は画素サイズの数倍に相当する数十〜数百μm周期に対応する周波数成分が十分に伝達されることが重要であることが本発明の発明者によって分かった。
しかしながら、干渉パターンの周期とX線検出器の画素サイズとでは通常後者の方が大きく、その大きさの比は一桁程度であることが多い。より具体的には、干渉パターンの周期が通常数μmであるのに対し、画素サイズは数十μmであることが多い。
よって、干渉パターンの形成のためには数μm周期に対応する周波数成分が十分に伝達されることが重要であり、一方、最終的に検出される画像の鮮鋭度や撮像システムの空間
分解能を有意に向上させるためには、通常は画素サイズの数倍に相当する数十〜数百μm周期に対応する周波数成分が十分に伝達されることが重要であることが本発明の発明者によって分かった。
したがって、ショットノイズを始めとするノイズの存在下において干渉パターン情報を伝達しながら被検体に対する空間分解能をも有意に向上させるには、被検体の情報を含む周期パターンの像形成に関して、数μmの周期と数十〜数百μmの周期付近に対応するMTF(Modulation Transfer Function)値を同時かつ十分に向上させる必要がある。このようなMTFを実現するには、例えばランダムアレイなどの一般的な符号化開口パターンを持つ符号化開口マスクでは十分ではないことが多いことが本発明の発明者の検討により分かった。
そこで本発明は、上述のような課題を解決し、従来に比べて高分解能あるいは高速撮像が可能なX線撮像システムを提供することを目的とする。
本発明は、微小X線源アレイが有するそれぞれの微小X線源を、さらに微小な複数のX線源に変換するための線源格子と、前記線源格子を通過したX線を回折し干渉パターンを形成するビームスプリッター格子と、前記干渉パターンとのあいだでモアレを形成するパターンを有するアナライザー格子と、前記干渉パターンと前記アナライザー格子のパターンのあいだで形成されたモアレを画像化するX線検出器と、を有するX線撮像システムを提供する。
本発明によれば、従来に比べて高分解能あるいは高速撮像が可能なX線撮像システムを提供することができる。
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
本発明は、トールボット干渉法を利用したX線撮像システムにおいて、符号化線源イメージング法を利用することで、従来に比べて高分解能あるいは高速撮像が可能なシステムを提供することを目的としている。
ただし上述のように、線源格子を符号化開口マスクにより置き換えたとしても、ショットノイズを始めとするノイズの存在下において干渉パターン情報を伝達しながら被検体に対する空間分解能をも有意に向上させるのは難しいことが、本発明の発明者によって分か
った。少なくともランダムアレイなどの一般的な符号化線源パターンでは、そのような目的を達成できない。以下ではまず、簡単な例を用いてこれを説明する。
ただし上述のように、線源格子を符号化開口マスクにより置き換えたとしても、ショットノイズを始めとするノイズの存在下において干渉パターン情報を伝達しながら被検体に対する空間分解能をも有意に向上させるのは難しいことが、本発明の発明者によって分か
った。少なくともランダムアレイなどの一般的な符号化線源パターンでは、そのような目的を達成できない。以下ではまず、簡単な例を用いてこれを説明する。
図1(A)〜図1(C)は、典型的なランダムアレイ状の符号化線源パターンを表している。ここでは、正方格子を基本構造とし、その格子点上に1/2の確率で円形の微小線源(白色部)が配置された構造を想定している。また、円形線源の径は格子周期の1/2としている。また、図1(A)〜図1(C)の全体サイズは等しく、それぞれ4×4、8×8、16×16の格子点が収まるような形でパターンが形成されている。
幾何学的不鋭の効果を表すPSFは、被検体の配置される位置に径の十分に小さい(ただし、回折の影響が顕著に生じない程度に大きい)単一のピンホールを配置してX線を照射した際に形成されるX線強度分布に実質的に等しい形状を持つ関数であると言える。このため、PSFの形状と符号化線源の形状とは実質的に同じである。したがって、ここでは図1(A)〜(C)に示した符号化線源パターンによりもたらされる幾何学的不鋭の効果を表すPSFは、それぞれの符号化線源パターンと同一のパターンを有すると近似的に考えられる。
また一般に、符号化線源イメージング法では微小線源の径により空間分解能が決定されるとされている。これは、個々の微小線源に対応するPSF像中の個々の明部の径により、MTF値が概ねゼロに至る空間周波数(以下、カットオフ周波数と呼ぶことがある)が概ね決定されるということに由来している。これに従えば、例えば図1(A)〜図1(C)のパターンの比較において最も高いカットオフ周波数が期待できるのは図1(C)のパターンである。
図2は図1(A)〜図1(C)のパターンをPSFとみなした際の、それぞれに対応するMTF曲線の一部を表している。ここでD´はPSF全体の幅(点が分布している正方形領域のおおよその幅)であり、表示しているのは周波数座標の原点を通る1ライン上のMTF値である。各曲線における空間周波数4/D´、8/D´、16/D´の位置における高いピークは、各PSFにおいて基本構造となっている正方格子の基本空間周波数に相当するピークである。
上述のように図1(A)〜図1(C)のパターンの中で最も高いカットオフ周波数が期待できるのは図1(C)のパターン(16×16)であるが、これは図2におけるMTF曲線の比較からもある程度見てとれる。したがって、検出される画像データのSN比(シグナルノイズ比)が十分に高い場合、図1(A)〜図1(C)のパターンの中で最も高い空間分解能が期待できるのは図1(C)のパターンである。
しかしながら、検出される画像データのSN比が十分に高くない場合、一定以上のシグナル量と高いMTF値を持つ周波数領域でしか十分なSN比が得られなくなる。したがってこのような場合、空間分解能は前述の定義に基づくカットオフ周波数だけでは決まらず、低周波領域におけるMTF値の高低も重要な意味を持つ。
ここで、図2における各MTF曲線を再度比較すると、カットオフ周波数の最も高い図1(C)のパターン(16×16)の低周波領域におけるMTF値は図1(A)のパターン(4×4)のMTF値に比べ大きく劣っていることが分かる。
この比較から類推できるように、一般に符号化線源パターンにおいて個々の線源を微小化し、同時にそれを補う分だけ微小線源の数を増やした場合、カットオフ周波数は高くなる一方、低周波数領域におけるMTF値は低下する傾向があると言える。したがって、例えば図1(C)のパターンは図1(A)のパターンなどに比べて潜在的には高い空間分解
能を実現できる可能性を持っているものの、一定以上のノイズの存在下において空間分解能を有意に向上させることはかえって難しいと言える。
能を実現できる可能性を持っているものの、一定以上のノイズの存在下において空間分解能を有意に向上させることはかえって難しいと言える。
つまり、比較的低周波数の領域におけるMTF値を大きく高めるためには図1(A)のような粗いパターンが必要となるが、このような粗いパターンでは高周波数領域のMTF値を大きく高めることができない。一方、高周波数領域のMTF値を大きく高めるためには図1(C)のような微小なパターンが必要となるが、このような微小なパターンでは低周波数領域のMTF値を大きく高めることができない。このように、ランダムアレイ等の一般的な符号化線源パターンを用いて広範な周波数領域にわたりMTF値を大きく高めることは一般に困難である。
したがって、前述のように微細な周期を持つ干渉パターン情報の伝達と被検体に対する空間分解能の向上を同時に実現することは、両者にとって重要となる空間周波数領域が一桁程度異なることにより、通常は難しいと言える。
本発明の実施形態に係るトールボット干渉計は、符号化X線源と線源格子の両方を備える。線源格子は、トールボット効果による干渉パターンを形成するために、微小なX線透過部を1次元または2次元に一定周期で配置した構成とする。このような線源格子を用いることで、微細な周期を持つ干渉パターン情報の伝達を可能にする。一方の符号化X線源は、撮像システムの空間分解能を向上すべく、そのPSF(MTF)が所望の形状をもつように(いろいろな空間周波数成分を含むように)複数の微小X線源のサイズや配置がデザインされた構成とする。典型的には、線源格子のX線透過部のサイズ及び周期は、符号化X線源の各微小X線源のサイズよりも、十分小さくするとよい。言い換えると、符号化X線源の各微小X線源が、線源格子によって、更に小さい複数の超微小X線源に分割されるとよい。具体的には、線源格子の周期が、符号化X線源の微小X線源のサイズの1/5
倍以下であることが好ましく、1/10倍以下であることがより好ましい。
倍以下であることが好ましく、1/10倍以下であることがより好ましい。
図3(A)は、本発明の実施形態のトールボット干渉計の構成を模式的に示している。本干渉計は符号化X線源1と、線源格子2と、ビームスプリッター格子3と、アナライザー格子4と、X線検出器5と、画像処理装置6と、ビームスプリッター格子移動手段7を有している。符号化X線源は、微小X線源のアレイであり、線源格子2は、符号化X線源1をさらに微小な複数のX線源に変換するための格子である。また、ビームスプリッター格子3は、線源格子2(および被検体)を通過したX線を回折し干渉パターンを形成する格子であり、アナライザー格子4は、干渉パターンとのあいだでモアレを形成するパターンを有する格子である。線源格子は、X線透過部とX遮蔽部とが配列した格子である。X線透過部は、あるX線透過部を透過したX線がビームスプリッター格子により回折されて形成する干渉パターンの明部と暗部のそれぞれが、別のX線透過部を透過したX線がビームスプリッター格子により回折されて形成する干渉パターンの明部と暗部の夫々と重なり合うように配置されている。ビームスプリッター格子は回折格子であり、周期的にX線の位相を変調する位相型の回折格子(位相格子)でも、周期的にX線の振幅を変調する振幅型の回折格子(遮蔽格子)でも良いが、X線の損失が少ないため、位相格子が用いられることが多い。アナライザー格子としては、X線透過部と遮蔽部とが配列したX線遮蔽格子が用いられることが多い。X線検出器は、X線を検出することができれば特に問わないが、撮像範囲を広くするために、2次元の強度分布が取得できるX線検出器を用いることが望ましい。画像処理装置は例えばプロセッサ、メモリ、記憶装置、入出力装置などを有するコンピュータ、または、論理回路であり、両方を併用しても良い。
尚、これら3枚の格子の形状、X線検出器、画像処理装置の構成、これらの配置は、良く知られているトールボット・ロー干渉計の設計手法に従って設計すれば良い。
なお、各格子は1次元状の周期構造を有していても良いし、2次元状の周期構造を有していても良い。また、8は被検体を表している。
尚、これら3枚の格子の形状、X線検出器、画像処理装置の構成、これらの配置は、良く知られているトールボット・ロー干渉計の設計手法に従って設計すれば良い。
なお、各格子は1次元状の周期構造を有していても良いし、2次元状の周期構造を有していても良い。また、8は被検体を表している。
この構成によれば、微細な干渉パターンを形成する機能は線源格子2が担うことから、符号化X線源1のパターンは干渉パターンを形成する機能とは独立して自由に選ぶことができる。
またここまでの議論から明らかなように、空間分解能の向上のために必要とされる以上に、符号化X線源の微小X線源の径を小さくし、数を増やすと、低周波数の領域のMTFを高めることが難しくなるため好ましくない。
ここで、微小X線源の径をdS、符号化X線源1と被検体8との間の距離をL1、被検体8とX線検出器5との間の距離をL2とすると、検出器5上における被検体像の形成に関するPSFにおいて個々の極大部分(ローブ)の径dLはdL=(L2/L1)×dSと概ね表せる。検出器5により像を検出する際、画素サイズ(画素ピッチ)の2倍の周期に相当するナイキスト周波数を超える周波数は通常検出できないことから、例えば画素サイズよりもdLを小さくすることは空間分解能の向上にほとんど寄与しないと考えられる。したがって、検出器5の画素サイズをdPとすると、dL>dPが成立することが望ましい。すなわち、
dS>(L1/L2)×dP (式1)
であることが望ましい。
dS>(L1/L2)×dP (式1)
であることが望ましい。
また、本構成により幾何学的不鋭の効果による空間分解能の低下を低減できることから、通常よりも高拡大率の撮像系が利用しやすくなる。ここで拡大率は通常(L1+L2)/L1により決定されるが、拡大率向上のために例えばL1<L2となるように設計しても良い。
一方、トールボット干渉計においては線源格子2からアナライザー格子4までの距離が長く、ビームスプリッター格子3が被検体に近接していることが微分位相計測に関する感度の観点から望ましい。
したがって、本発明では一般的な設計のトールボット・ロー干渉計を利用することもできるが、L1<L2となるような高拡大率系に対しては、線源格子2からビームスプリッター格子3までの距離がビームスプリッター格子3からアナライザー格子4までの距離よりも短い設計がより適している。このような設計は、インバース配置とも呼ばれる。このような撮像系の利点は、高い空間分解能が得やすいことと、アナライザー格子4の周期が相対的に大きくなることにより、通常最大の面積が要求されるアナライザー格子4の作製難度を緩和できることである。尚、図3(A)はこのようなインバース配置のトールボット・ロー干渉計を想定して描かれている。
したがって、本発明では一般的な設計のトールボット・ロー干渉計を利用することもできるが、L1<L2となるような高拡大率系に対しては、線源格子2からビームスプリッター格子3までの距離がビームスプリッター格子3からアナライザー格子4までの距離よりも短い設計がより適している。このような設計は、インバース配置とも呼ばれる。このような撮像系の利点は、高い空間分解能が得やすいことと、アナライザー格子4の周期が相対的に大きくなることにより、通常最大の面積が要求されるアナライザー格子4の作製難度を緩和できることである。尚、図3(A)はこのようなインバース配置のトールボット・ロー干渉計を想定して描かれている。
以下、第1実施形態では符号化開口マスクを利用して符号化X線源1を形成する場合について説明する。また、第2実施形態では符号化開口マスクと線源格子2を一体化する場合について説明する。また、第3実施形態では特殊な構造のX線管により符号化X線源1を構成する場合について説明する。また、第4実施形態では通常と異なる復号方法を利用する場合について説明する。
〔第1実施形態〕
本実施形態では符号化開口マスクを利用して符号化X線源1を形成する。例えば、符号化X線源1は、X線管と、X線管におけるX線発生部のごく近くに設置した符号化開口マスクにより構成される。符号化開口マスクは、X線管のX線発生部から放射されるX線を部分的に遮ることで、仮想的に所望のパターンの微小X線源のアレイを形成する。符号化開口マスクは、複数の開口が設けられたX線遮蔽部を有するマスクである。複数の開口のそれぞれは、ピンホールであることが望ましい。符号化X線源は、このように、仮想的な
微小X線源のアレイであっても良い。
本実施形態では符号化開口マスクを利用して符号化X線源1を形成する。例えば、符号化X線源1は、X線管と、X線管におけるX線発生部のごく近くに設置した符号化開口マスクにより構成される。符号化開口マスクは、X線管のX線発生部から放射されるX線を部分的に遮ることで、仮想的に所望のパターンの微小X線源のアレイを形成する。符号化開口マスクは、複数の開口が設けられたX線遮蔽部を有するマスクである。複数の開口のそれぞれは、ピンホールであることが望ましい。符号化X線源は、このように、仮想的な
微小X線源のアレイであっても良い。
本実施形態において符号化X線源1における個々の微小X線源の径dSは符号化開口マスクの個々の開口の径dHに一致する。そのため、撮像系が式(1)を満たすことで符号化線源イメージング法の効果を有効に利用するためにはdH>(L1/L2)×dPを満たすことが望ましい。
トールボット干渉計では通常、ビームスプリッター格子3により形成された干渉パターンとアナライザー格子4のパターンとのあいだで発生するモアレをX線検出器5により画像化する。本実施形態では符号化X線源1により符号化されたモアレ画像が得られる。このモアレ画像はX線強度分布を表す情報である。X線検出器5で得られた符号化モアレ画像は、画像処理装置6の復号処理により、単一の微小X線源により撮像されるものに近いモアレ画像に変換される。ただし、トールボット干渉計における画像形成過程は通常のX線撮像よりも複雑であるため、単純なデコンボリューション処理により正しい画像が復元されないことがありうる。例えば、モアレパターンの周期が幾何学的不鋭の規模と同程度に小さいような場合、正確な画像の復元が困難となることがある。この問題は、例えば「被検体の無い場合のモアレの周期」を「PSFが所定値以上の値を持つ領域の幅」よりも3倍以上大きくすることで低減することができる。「PSFが所定値以上の値を持つ領域の範囲」は、符号化X線源1全体の実効的径をDとすれば(L2/L1)×Dと表すことができる。したがって、「被検体の無い場合のモアレ周期」をdMとすれば、dM>3×(L2/L1)×Dを満たすことが望ましい。
復号処理は画像処理装置6により行われる。具体的には、例えばPSFの推定値あるいは実測値の情報に基づいたデコンボリューション計算などによりモアレ画像の復号を行うことができる。
画像処理装置6はさらに、取得した復号後のモアレ画像を元に位相回復などの解析処理を行っても良い。本実施形態では前述のようにモアレの周期が一定以上大きいことが望ましいことから、空間分解能がモアレ周期の影響を受けて低下しない解析法が望ましい。このような解析法として例えば位相シフト法がある。位相シフト法を使用するためにはモアレの位相の異なる複数のモアレ画像を取得する必要がある。本実施形態においてはビームスプリッター格子を移動させる移動部7によりビームスプリッター格子を面内方向に移動させることによりモアレ位相をシフトさせることができる。ビームスプリッター格子を移動させる移動部としてアクチュエータを用いることができる。また、干渉パターンとアナライザー格子との相対位置を変化させればモアレの位相がシフトするため、移動部は、ビームスプリッター格子の代わりに、線源格子を移動させて干渉パターンを移動させても良いし、アナライザー格子を移動させても良い。尚、位相シフト法のアルゴリズムの詳細については干渉計に関する多くの書籍、例えば、Daniel Malacara編“Optical Shop Testing”第3版の第14章、などに記載されているのでここでは説明を省略する。モアレ画像の解析からは、主として被検体8によるX線の吸収率分布、被検体8を透過したX線の微分位相分布、及び被検体8によるX線の小角散乱能分布(モアレパターンのビジビリティ分布)の3つの像を得ることができる。
〔第2実施形態〕
第2実施形態のX線撮像システムに係るトールボット干渉計では、符号化開口マスクと一体化した線源格子により符号化X線源を形成する。つまり、線源格子が、本来の機能に加え、第1実施形態における符号化開口マスクの機能を同時に有する。
第2実施形態のX線撮像システムに係るトールボット干渉計では、符号化開口マスクと一体化した線源格子により符号化X線源を形成する。つまり、線源格子が、本来の機能に加え、第1実施形態における符号化開口マスクの機能を同時に有する。
図4は、本実施形態のトールボット干渉計の構成を模式的に示している。本実施形態においてX線源9は線源格子2の存在により符号化X線源として機能する。このような線源
格子2は、例えば符号化開口マスクと線源格子を密着させることで構成しても良いし、あるいはそれと等価な透過率分布を持つ一枚のX線遮蔽マスクであっても良い。また、本実施形態では通常のトールボット・ロー干渉計とは異なり、線源格子2をX線源9のごく近くに配置する必要がある。
格子2は、例えば符号化開口マスクと線源格子を密着させることで構成しても良いし、あるいはそれと等価な透過率分布を持つ一枚のX線遮蔽マスクであっても良い。また、本実施形態では通常のトールボット・ロー干渉計とは異なり、線源格子2をX線源9のごく近くに配置する必要がある。
尚、本実施形態における符号化開口マスクの機能を有する線源格子2は、線源格子の機能を有する符号化開口マスクの一種とみなすこともできる。例えば図2のMTF曲線にも見られているように、符号化線源のパターンを反映したPSFのパターンにおける基本構造の周期に相当する空間周波数においてはMTF曲線が高いピークを持つ場合がある。したがってこの基本構造の周期と干渉パターンの周期を一致させることで干渉パターンを形成し易くすることができる。このように、MTF曲線における顕著なピークを利用して干渉パターンを形成することは、符号化開口パターンに線源格子の機能を持たせることに相当する。
前述のように、この方法を用いたとしてもランダムアレイのような符号化線源パターンでは低周波数領域のMTFを向上させることは難しい。しかしながら本実施形態のように、符号化線源パターンが線源格子パターンと、より粗い符号化線源パターンとの重ね合わせとみなせるようなパターンであり、かつ、分離された粗い符号化線源パターンが例えば式(1)を満たすような十分に粗いパターンであった時には、低周波数領域のMTF向上効果も同時に得られる可能性は高くなる。符号化線源パターンが、線源格子パターンと、より粗い符号化線源パターンとの重ね合わせとみなせるようなパターンを持つとき、その符号化線源パターンのPSFをフーリエ変換すると、干渉パターンの空間周波数と一致する位置にピークが現れる。
そのほか、モアレ画像の取得、復号処理、解析処理などについては第1実施形態と同様に行うことができる。
そのほか、モアレ画像の取得、復号処理、解析処理などについては第1実施形態と同様に行うことができる。
〔第3実施形態〕
第3実施形態では特殊な構造のX線管により符号化X線源1を形成する。図5は本実施形態におけるX線管構造の一例を示している。図5では回転陽極型のX線管を想定しており、101は回転陽極(ターゲット)、102はターゲット101の回転軸、103はターゲットに入射する電子線、104はターゲットから出射されるX線を表している。尚、図5で描かれているのはターゲット101の断面図であり、ターゲット101は回転軸102に対して回転対称となる形状を有している。また、電子線103は紙面に垂直な方向に対しては十分に薄く分布しているものとする。
第3実施形態では特殊な構造のX線管により符号化X線源1を形成する。図5は本実施形態におけるX線管構造の一例を示している。図5では回転陽極型のX線管を想定しており、101は回転陽極(ターゲット)、102はターゲット101の回転軸、103はターゲットに入射する電子線、104はターゲットから出射されるX線を表している。尚、図5で描かれているのはターゲット101の断面図であり、ターゲット101は回転軸102に対して回転対称となる形状を有している。また、電子線103は紙面に垂直な方向に対しては十分に薄く分布しているものとする。
図5では、電子線入射部に複数の溝を形成したターゲット101を示している。尚、上述のようにターゲット101は回転軸102に対して回転対称となる形状を有しているため、この溝はターゲットの回転軸102を軸として同心円状に形成されている。図5に示すように、ターゲット表面のうち溝の部分からはX線は出射されず、溝と溝のあいだの部分(溝間の隔壁(突条)の頂部)だけがX線の出射に寄与する。これによりターゲットの表面(電子線入射面)が複数のX線出射面に細かく分断され、1次元状のパターンを持つ符号化X線源1が形成できる。複数のX線出射面は回転軸102の径方向に分離して形成されることとなる。
ここでX線出射面の径(幅と呼ぶこともできる)dTを図中に示したような位置の寸法として定義し、X線出射面と、当該X線出射面からX線検出器(被検体)に向けて出射するX線ビームの中心線とのなす角(所謂X線取り出し角)をθとする。そうすると、個々のX線出射面により形成される実効的な微小X線源の径dSは概ねdT×sinθに一致する。したがって、撮像系が式(1)を満たすことで符号化線源イメージング法の効果を有効に利用するためにはdT×sinθ>(L1/L2)×dPを満たすことが望ましい
。ここで、L1は、ターゲット101のX線出射面と被検体のあいだの距離であり、L2は、被検体とX線検出器のあいだの距離であり、dPは、X線検出器の画素サイズである。
。ここで、L1は、ターゲット101のX線出射面と被検体のあいだの距離であり、L2は、被検体とX線検出器のあいだの距離であり、dPは、X線検出器の画素サイズである。
尚、X線出射面の径dTや溝の中心間隔は必ずしも一様でなくても良い。また、図5に示したようにターゲット上の電子線入射面に凹凸を形成する方法のほかにも、電子線入射面をX線発生効率の異なる複数のターゲット材料を組み合わせることで、複数のX線出射面を形成できる。あるいは、ターゲットに対して、空間的に分離した複数の電子線を入射させる構成によっても、複数のX線出射面を形成できる。さらに、ターゲットの回転も必須ではなく、固定型のターゲットを用いても良い。
そのほか、格子の配置、モアレ画像の検出、復号処理、解析処理などについては第1実施形態と同様に行うことができる。
そのほか、格子の配置、モアレ画像の検出、復号処理、解析処理などについては第1実施形態と同様に行うことができる。
〔第4実施形態〕
第1〜第3実施形態では検出されるモアレ画像に対して復号処理を行う方法について説明した。しかしながら前述のように、トールボット干渉計における画像形成過程は通常のX線撮像よりも複雑であることから、特にモアレ周期の小さい場合において復号の正確さに対して悪影響が表れることがあった。
第1〜第3実施形態では検出されるモアレ画像に対して復号処理を行う方法について説明した。しかしながら前述のように、トールボット干渉計における画像形成過程は通常のX線撮像よりも複雑であることから、特にモアレ周期の小さい場合において復号の正確さに対して悪影響が表れることがあった。
この問題に対処するため、本実施形態ではモアレ画像自体に対しては復号処理を行わない。すなわち、画像処理装置6は符号化された状態で取得されたモアレ画像を元に解析処理を先に行い、得られる被検体8のX線吸収率分布、透過X線微分位相分布、及びX線小角散乱能分布などに対してデコンボリューション等の方法による復号処理を行う。
本実施形態では第1〜第3実施形態のようにモアレ画像に対して復号処理を行った場合に比較して復号の精度が低下する場合がある一方、モアレの周期によらず一定の性能の復号処理を行えるという利点がある。
尚、本実施形態の画像処理手法は、第1〜第3実施形態で説明したいずれの構成のトールボット干渉計にも適用することができる。
尚、本実施形態の画像処理手法は、第1〜第3実施形態で説明したいずれの構成のトールボット干渉計にも適用することができる。
また、本実施形態ではモアレの周期を小さくすることが可能であることから、フーリエ変換法によりモアレ画像解析を行う場合などにも適している。フーリエ変換法の詳細は、Mitsuo Takeda et al., “Fourier−transform
method of fringe−pattern analysis for computer−based topography and interferometry” Journal of the Optical Society of America, Vol. 72, No. 1, 156−160 (1982)、に記載されているのでここでは説明を省略する。フーリエ変換法を行う場合、モアレの周期を画素サイズの数倍とすることが多く、モアレの周期がこの程度の場合は本実施形態のようにモアレの解析処理の後で複合処理を行うことが好ましい。
method of fringe−pattern analysis for computer−based topography and interferometry” Journal of the Optical Society of America, Vol. 72, No. 1, 156−160 (1982)、に記載されているのでここでは説明を省略する。フーリエ変換法を行う場合、モアレの周期を画素サイズの数倍とすることが多く、モアレの周期がこの程度の場合は本実施形態のようにモアレの解析処理の後で複合処理を行うことが好ましい。
以下、各実施形態のより具体的な実施例について記述する。
(実施例1)
実施例1は第1実施形態の具体的な実施例である。図3(A)は実施例1のX線撮像システムの全体構成を模式的に示しており、図3(B)は実施例1の符号化X線源1の構成を模式的に示している。
実施例1は第1実施形態の具体的な実施例である。図3(A)は実施例1のX線撮像システムの全体構成を模式的に示しており、図3(B)は実施例1の符号化X線源1の構成を模式的に示している。
符号化X線源1はX線管111と、X線管111のX線出射部のごく近くに設置した符号化開口マスク112により構成される。X線管111はモリブデンターゲットを有する
X線管であり、17.5keVの位置に特性X線ピークを持つエネルギースペクトルを有するX線を出射する。
X線管であり、17.5keVの位置に特性X線ピークを持つエネルギースペクトルを有するX線を出射する。
図6(A)は符号化線源マスク112のパターンを示している。図6(A)における個々の開口(ピンホール)の径dHは120μmである。また、X線遮蔽部は厚さ50μmの金である。符号化X線源1のX線出射部全体の実効的径Dは、符号化開口マスク112上でピンホールが分布している領域全体の径に相当することから、およそ600μmとなる。
尚、本実施例では被検体が無い場合のモアレ周期dMが実質的に無限大になるように各格子の位置や角度を調整して撮像を行う。したがって、前述のdM>3×(L2/L1)×Dが満たされ、モアレ画像の正確な復号が期待できる。
図6(B)は線源格子2のパターンを示している。線源格子2はX線遮蔽マスク上に線状のX線透過部が等間隔に並んだ構造を有している。X線透過部の中心間隔は10.3μm、幅は5.15μmである。また、X線遮蔽部は厚さ50μmの金であり、X線透過部は開口である。
ビームスプリッター格子3は位相変調型回折格子であり、線状の位相進行部と位相遅延部が交互に並んだ構造を有している。位相進行部と位相遅延部の幅は共に6.87μmである。格子の材料はシリコンであり、位相進行部の厚さが位相遅延部の厚さに比べ22.3μm厚いことにより、17.5keVのX線に対して透過時にπradの位相差を与えることができる。
アナライザー格子4は線源格子2と同様にX線遮蔽マスク上に線状のX線透過部が等間隔に並んだ構造を有している。X線透過部の中心間隔は20.6μm、幅は10.3μmである。また、X線遮蔽部は厚さ50μmの金であり、X線透過部は開口である。
線源格子2は符号化X線源1の付近に配置される。また、線源格子2とビームスプリッター格子3の間の距離と、ビームスプリッター格子3とアナライザー格子4の間の距離はそれぞれ500mm、998mmに調整される。被検体8はビームスプリッター格子3のごく近くに配置され、X線検出器5はアナライザー格子4のごく近くに配置される。尚、X線検出器5の画素サイズdPは50μmである。
また、以上の設計値からこの撮像系はdH>(L1/L2)×dPを満たすため、符号化線源イメージング法の効果を有効に利用できるものと期待できる。
以下では、本撮像系を用いて検出されるモアレ画像を想定した画像データと、これを用いて復号やモアレ解析を行った結果を用いて本実施例を説明する。
図7(A)〜図7(C)は、モアレの位相を2π/3radずつシフトさせて検出した、符号化されているモアレ画像を表している。ここでは被検体8として2個の球形の物体を用いている。また、前述のように被検体が無い場合のモアレ周期が実質的に無限大になるような場合を想定している。さらに、一定の規模のショットノイズの存在を想定している。
図7(D)〜図7(F)は、図7(A)〜図7(C)のモアレ画像それぞれに対して画像処理装置6により復号処理を行った結果を示している。復号処理の結果、単一の微小X線源により撮像したモアレ画像に近い画像が得られていることが分かる。
図8(A)〜図8(C)は、図7(D)〜図7(F)を元に位相シフト法のアルゴリズムに基づく解析を行った結果を示している。また図8(A)〜図8(C)はそれぞれ、X線透過率分布、X線微分位相分布、X線小角散乱能分布を示している。図から分かるように、単一の微小X線源により得られる各解析結果に近い解析結果を比較的高い空間分解能により得ることができる。
(実施例2)
実施例2は第2実施形態の具体的な実施例である。
本実施例では符号化開口マスクの機能を有する線源格子2により符号化X線源を形成する。図9は本実施例における線源格子2のパターンを示している。ここでは実質的に実施例1における符号化開口マスクと線源格子2を密着させたものと等価となるようなパターンを想定している。すなわち、図9における円形のスリット分布領域の径は120μm、スリット中心間隔は10.3μm、幅は5.15μmである。また、X線遮蔽部は厚さ50μmの金であり、X線透過部は開口である。また、本実施例では線源格子2はX線管のX線出射部のごく近くに配置することが望ましい。
実施例2は第2実施形態の具体的な実施例である。
本実施例では符号化開口マスクの機能を有する線源格子2により符号化X線源を形成する。図9は本実施例における線源格子2のパターンを示している。ここでは実質的に実施例1における符号化開口マスクと線源格子2を密着させたものと等価となるようなパターンを想定している。すなわち、図9における円形のスリット分布領域の径は120μm、スリット中心間隔は10.3μm、幅は5.15μmである。また、X線遮蔽部は厚さ50μmの金であり、X線透過部は開口である。また、本実施例では線源格子2はX線管のX線出射部のごく近くに配置することが望ましい。
その他、X線管、各格子、X線検出器等に関する詳細および配置は実施例1と同様とする。このような符号化開口マスクの機能を有する線源格子2を用いても、実施例1において説明したのと同様のモアレ画像の検出、復号、及び解析を行うことができる。
(実施例3)
実施例3は第3実施形態の具体的な実施例である。
本実施例では図5に示したのと同様の構造のX線管により符号化X線源1を構成する。これにより、微小X線源が1次元状に配列したようなパターンの符号化線源を得ることができる。
実施例3は第3実施形態の具体的な実施例である。
本実施例では図5に示したのと同様の構造のX線管により符号化X線源1を構成する。これにより、微小X線源が1次元状に配列したようなパターンの符号化線源を得ることができる。
本実施例における回転ターゲット101の材料はモリブデンであり、ターゲット101上には同心円状に等間隔の溝が形成されている。溝の幅は240μm、深さは200μmであり、中心間隔は480μmとする。すなわち、X線出射面の径dTは240μmとなる。また、X線取り出し角θは30°とする。したがって、実効的な符号化X線源1は、概ね120μmの径を持つ微小X線源が240μm周期で一次元状に配列したようなパターンを有するものとなる。
その他、各格子やX線検出器等に関する詳細および配置は実施例1と同様とする。
その他、各格子やX線検出器等に関する詳細および配置は実施例1と同様とする。
尚、以上の設計値からこの撮像系はdT×sinθ>(L1/L2)×dPを満たすため、符号化線源イメージング法の効果を有効に利用できるものと期待できる。
このような特殊な構造のX線管により符号化X線源1を構成しても、実施例1において説明したのと同様のモアレ画像の検出、復号、及び解析を行うことができる。
このような特殊な構造のX線管により符号化X線源1を構成しても、実施例1において説明したのと同様のモアレ画像の検出、復号、及び解析を行うことができる。
(実施例4)
実施例4は第4実施形態の具体的な実施例である。
第4実施形態は画像処理装置6による復号及び解析処理の部分を除いて他の実施形態との違いは無いので、実施例4では画像処理装置6以外の構成は実施例1と同様とする。ただし、ここでは格子の相対的な面内回転により被検体が無い場合のモアレ周期dMが一定程度小さくなっている場合を例に説明を行う。
実施例4は第4実施形態の具体的な実施例である。
第4実施形態は画像処理装置6による復号及び解析処理の部分を除いて他の実施形態との違いは無いので、実施例4では画像処理装置6以外の構成は実施例1と同様とする。ただし、ここでは格子の相対的な面内回転により被検体が無い場合のモアレ周期dMが一定程度小さくなっている場合を例に説明を行う。
図10(A)〜図10(C)は、モアレの位相を2π/3radずつシフトさせて検出した、符号化されているモアレ画像を表している。ここでは実施例1と同様に、被検体8として2個の球形の物体を用いた。さらに、一定の規模のショットノイズの存在を想定している。
図11(A)〜図11(C)は、図10(A)〜(C)を元に位相シフト法のアルゴリズムに基づく解析を行った結果を示している。また図11(A)〜図11(C)はそれぞれ、X線透過率分布、X線微分位相分布、X線小角散乱能分布を示している。図から分かるようにこれらの解析結果は、単一微小X線源による撮像により得られるべきそれぞれの解析結果を、符号化線源パターンを反映したPSFによりコンボリューションしたものに近いような画像となる。
図11(D)〜(F)は、図11(A)〜(C)の暫定的解析結果に対して画像処理装置6により復号処理を行った結果を示している。図から分かるように、概ね妥当とみなせる解析結果を比較的高い空間分解能により得ることができる。
このように、モアレ画像自体ではなくモアレの暫定的解析結果に対して復号処理を行うことで、モアレ周期の小さい場合でも符号化線源イメージング法を有効に利用することができる。
このように、モアレ画像自体ではなくモアレの暫定的解析結果に対して復号処理を行うことで、モアレ周期の小さい場合でも符号化線源イメージング法を有効に利用することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。また、本発明及び本明細書において撮像とは、被検体の情報に基づく画像を取得することに限定されず、被検体に照射されたX線の強度を、複数の位置において検出すること全般を被検体の撮像と呼ぶ。
本発明によれば、従来に比べて高分解能あるいは高速撮像が可能なX線撮像システムを提供することができる。
1 符号化X線源
2 線源格子
3 ビームスプリッター格子
4 アナライザー格子
5 X線検出器
6 画像処理装置
2 線源格子
3 ビームスプリッター格子
4 アナライザー格子
5 X線検出器
6 画像処理装置
Claims (15)
- 微小X線源アレイが有するそれぞれの微小X線源を、さらに微小な複数のX線源に変換するための線源格子と、
前記線源格子を通過したX線を回折し干渉パターンを形成するビームスプリッター格子と、
前記干渉パターンとのあいだでモアレを形成するパターンを有するアナライザー格子と、
前記干渉パターンと前記アナライザー格子のパターンのあいだで形成されたモアレを画像化するX線検出器と、を有する
X線撮像システム。 - 前記微小X線源アレイは、X線源と、前記X線源から出射するX線を部分的に遮る符号化開口マスクとを有する請求項1に記載のX線撮像システム。
- 前記符号化開口マスクは、前記複数の微小X線源にそれぞれ対応する複数の開口が形成されたX線遮蔽マスクである
ことを特徴とする請求項2に記載のX線撮像システム。 - 前記符号化開口マスクに形成された開口の径dHは、前記X線源と被検体とのあいだの距離をL1、前記被検体と前記X線検出器とのあいだの距離をL2、前記X線検出器の画素サイズをdPとしたとき、dH>(L1/L2)×dPを満たす大きさである
請求項3に記載のX線撮像システム。 - 前記線源格子と前記符号化開口マスクが一体化している
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のX線撮像システム。 - 前記微小X線源アレイは、電子線源と、前記電子線源からの電子線が入射することによりX線を出射するターゲットを備え、前記ターゲットは複数のX線出射面を有する
請求項2に記載のX線撮像システム。 - 前記ターゲットは回転軸を中心に回転するものであり、
前記複数のX線出射面は、前記回転軸の径方向に分離して形成されている
請求項6に記載のX線撮像システム。 - 前記ターゲットの電子線の入射面に凹凸を設けることにより、前記複数のX線出射面が形成されている
請求項6または7に記載のX線撮像システム。 - 前記ターゲットの電子線の入射面をX線発生効率の異なる複数の材料を組み合わせて構成することにより、前記複数のX線出射面が形成されている
ことを特徴とする請求項6または7に記載のX線撮像システム。 - 前記電子線源は、前記ターゲットの電子線の入射面に対して、空間的に分離した複数の電子線を入射させることにより、前記複数のX線出射面が形成されている
ことを特徴とする請求項6または7に記載のX線撮像システム。 - 前記複数のX線出射面のうち少なくとも一つのX線出射面の径dTは、X線出射面と、当該X線出射面から前記X線検出器に向けて出射するX線ビームの中心線とのなす角度をθ、前記X線出射面と被検体とのあいだの距離をL1、前記被検体と前記X線検出器との
あいだの距離をL2、前記X線検出器の画素サイズをdPとしたとき、
dT×sinθ>(L1/L2)×dP
を満たす大きさである
請求項6乃至10のいずれか1項に記載のX線撮像システム。 - 前記線源格子と前記ビームスプリッター格子とのあいだの距離が、前記ビームスプリッター格子と前記アナライザー格子とのあいだの距離よりも短い
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のX線撮像システム。 - 被検体が無い場合に形成される前記モアレの周期dMが、前記X線源と被検体とのあいだの距離をL1、前記被検体と前記X線検出器とのあいだの距離をL2、前記符号化線源におけるX線出射部全体の実効的径をDとしたとき、
dM>3×(L2/L1)×D
を満たす大きさである
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のX線撮像システム。 - 前記X線検出器により得られたモアレ画像に対して復号処理を行う画像処理装置をさらに有する
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のX線撮像システム。 - 前記X線検出器により得られたモアレ画像を解析することにより得られた、被検体のX線の吸収率分布、被検体を透過したX線の微分位相分布、および、モアレのビジビリティ分布のうち少なくともいずれかの分布に対して復号処理を行う画像処理装置をさらに有する
請求項1乃至13のいずれか1項に記載のX線撮像システム。
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