JP2015071706A - ポリアミド樹脂の製造方法 - Google Patents

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浩介 大塚
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Abstract

【課題】ジカルボン酸としてセバシン酸を用いて、所望する比較的高分子量のポリアミド樹脂を効率よく製造する方法を提供する。【解決手段】ジアミンと、モノカルボン酸を0モル%を超え6モル%未満含有するセバシン酸を含むジカルボン酸とを用いて重合反応を行うことによって、ジアミン単位と、セバシン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有し、かつ、所望の数平均分子量を有するポリアミド樹脂を製造する方法であって、モノカルボン酸をβモル%含有するセバシン酸を用いたときの、所定のアミノ基又はカルボキシル基の反応率PA又はPCにおける、前記所望の数平均分子量Mnを有するポリアミド樹脂を得るためのジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αを求め、該αとなるようにジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を制御して重縮合反応を行う、ポリアミド樹脂の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂の製造方法に関し、詳しくは、ジカルボン酸としてセバシン酸を用いたポリアミド樹脂の製造方法に関する。
ナイロン6、ナイロン66等に代表されるポリアミド樹脂は、靭性、耐薬品性、電気特性等の優れた特性や、溶融成形加工の容易性から、衣料用繊維やエンジニアリングプラスチック等として様々な用途に利用されている。
近年、ジカルボン酸としてセバシン酸を用いて得られるポリアミド樹脂が注目されている(特許文献1〜3を参照)。このポリアミド樹脂は、吸水性が低く、寸法安定性に優れるという特性を有し、電気電子部品等の用途への適用が期待されている。また、セバシン酸は、ひまし油から得られる植物由来原料であるため、環境保全の観点からも注目されている。
セバシン酸は、通常、純度97〜99.5%のものが入手可能である。
特開2013−87369号公報 特開2011−57930号公報 特開2010−253803号公報
ジカルボン酸としてセバシン酸を用いたポリアミド樹脂の重合の際に重合度を上げようとしても十分に上がらず、所望する分子量のポリアミド樹脂を製造できないことがある。特に固相重合により分子量を高めようとした際に顕著である。
本発明が解決しようとする課題は、ジカルボン酸としてセバシン酸を用いたポリアミド樹脂の重合において、所望する比較的高分子量のポリアミド樹脂を効率よく製造する方法を提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、セバシン酸中に含まれる微量のモノカルボン酸が、ポリアミドの重合反応におけるジアミンとジカルボン酸とのモルバランスを乱しており、重合反応において無視できない影響を与えていることを見出した。そして、このモノカルボン酸の含有量を考慮してジアミンとジカルボン酸とのモル比を決定することで、ポリアミド樹脂の分子量を制御でき、所望する比較的高分子量のポリアミド樹脂を効率よく製造できることを見出した。本発明は、このような知見に基づき完成するに至ったものである。
本発明は、下記のポリアミド樹脂の製造方法及びポリアミド樹脂の分子量の制御方法に関する。
<1>ジアミンと、モノカルボン酸を0モル%を超え6モル%未満含有するセバシン酸を含むジカルボン酸とを用いて重合反応を行うことによって、ジアミン単位と、セバシン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有し、かつ、所望の数平均分子量を有するポリアミド樹脂を製造する方法であって、
下式(A)又は(B)に基づいて、モノカルボン酸をβモル%含有するセバシン酸を用いたときの、所定のアミノ基又はカルボキシル基の反応率PA又はPCにおける、前記所望の数平均分子量Mnを有するポリアミド樹脂を得るためのジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αを求め、
求められたαとなるように、下式(1)に基づいて、ジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を制御して重縮合反応を行う、ポリアミド樹脂の製造方法。
Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2−M4A)−(M1−M2)(β/100)+M1)]/(2−α(2−β/100)(2PA−1)) ・・・(A)
Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2)−(M1−M2−M4C)(β/100)+M1−2M4C)]/((α−2PC)(2−β/100)+2) ・・・(B)
(重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合は式(A)が適用され、また、重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合は式(B)が適用される。
式(A)及び(B)中、βは、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表し、0モル%を超え6モル%未満である。M1は、重合反応に関与するジカルボン酸の分子量を表し、M2は、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の分子量を表し、M3は、重合反応に関与するジアミンの分子量を表し、M4は、水の分子量を表し、PAは、アミノ基の反応率を表し、PCは、カルボキシル基の反応率を表す。)
α=2X/(2Y−(β/100)Y) ・・・(1)
(式中、Xは、仕込むジアミンの分子数(モル)を表し、Yは、仕込むジカルボン酸の分子数(モル)を表す。βは、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表し、0モル%を超え6モル%未満である。)
<2>前記数平均分子量Mnが10000〜50000である、上記<1>に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
<3>前記反応率PA又はPCが、モノカルボン酸を含有しないセバシン酸を用いて得られたポリアミドから求められる、上記<1>又は<2>に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
<4>ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に連続的に加え、常圧下又は加圧下で重縮合させる、上記<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアミド樹脂の製造方法。
<5>前記の溶融状態のジカルボン酸が、反応槽に導入される前にろ過されたものである、上記<4>に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
<6>前記ジアミン単位の70モル%以上が、キシリレンジアミン及び/又はビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来する、上記<1>〜<5>のいずれかに記載のポリアミド樹脂の製造方法。
<7>前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物である、上記<6>に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
<8>前記ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン又はこれらの混合物である、上記<6>に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
<9>前記ジカルボン酸単位がすべてセバシン酸に由来する、上記<1>〜<8>のいずれかに記載のポリアミド樹脂の製造方法。
<10>ジアミンと、モノカルボン酸を0モル%を超え6モル%未満含有するセバシン酸を含むジカルボン酸とを用いて重合反応を行う際に、ジアミン単位と、セバシン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有するポリアミド樹脂の数平均分子量Mnを制御する方法であって、
下式(A)又は(B)に基づいて、モノカルボン酸をβモル%含有するセバシン酸を用いたときの、所定のアミノ基又はカルボキシル基の反応率PA又はPCにおける、目的とする数平均分子量Mnを有するポリアミド樹脂を得るためのジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αを求め、
求められたαとなるように、下式(1)に基づいて、ジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を調節して重縮合反応を行う、ポリアミド樹脂の分子量の制御方法。
Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2−M4A)−(M1−M2)(β/100)+M1)]/(2−α(2−β/100)(2PA−1)) ・・・(A)
Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2)−(M1−M2−M4C)(β/100)+M1−2M4C)]/((α−2PC)(2−β/100)+2) ・・・(B)
(重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合は式(A)が適用され、また、重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合は式(B)が適用される。
式(A)及び(B)中、βは、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表し、0モル%を超え6モル%未満である。M1は、重合反応に関与するジカルボン酸の分子量を表し、M2は、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の分子量を表し、M3は、重合反応に関与するジアミンの分子量を表し、M4は、水の分子量を表し、PAは、アミノ基の反応率を表し、PCは、カルボキシル基の反応率を表す。)
α=2X/(2Y−(β/100)Y) ・・・(1)
(式中、Xは、仕込むジアミンの分子数(モル)を表し、Yは、仕込むジカルボン酸の分子数(モル)を表す。βは、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表し、0モル%を超え6モル%未満である。)
本発明の方法によれば、ジカルボン酸としてセバシン酸を用いて、数平均分子量が10000〜50000程度の範囲の所望する比較的高分子量のポリアミド樹脂を効率よく製造することができる。特に、本発明の方法によれば、純度の低い安価なセバシン酸を用いても、所望の分子量に制御されたポリアミド樹脂を効率よく製造することが可能となる。
図1は、アミノ基又はカルボキシル基の反応率が1.000の場合に式(A)又は(B)に基づいて算出される、セバシン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量βモル%と、数平均分子量Mnが10000、20000又は50000のポリアミド樹脂を得るためのジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αとの関係を示すグラフである。
本発明は、ジアミンと、モノカルボン酸を0モル%を超え6モル%未満含有するセバシン酸を含むジカルボン酸とを用いて重合反応を行うことによって、ジアミン単位と、セバシン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有し、かつ、所望の数平均分子量を有するポリアミド樹脂を製造する方法であって、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を考慮して、重合反応に関与するジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を制御して重縮合反応を行う方法である。すなわち、上記重合反応を行う際に、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を考慮して、重合反応に関与するジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を調節することで、目的とする数平均分子量Mnとなるようにポリアミド樹脂の分子量を制御する方法である。ここで、ジアミン単位とは、ジアミンに由来するポリアミド樹脂の構成単位を意味し、ジカルボン酸単位とは、ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂の構成単位を意味する。
(ジカルボン酸)
本発明に用いられるジカルボン酸は、吸水性が低く、寸法安定性に優れるポリアミド樹脂を製造する観点から、ジカルボン酸100モル%中、セバシン酸を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは実質100モル%含む。セバシン酸は、ひまし油から得られる植物由来原料であるため、環境保全の観点からも注目されている。
本発明に用いられるジカルボン酸としては、得られるポリアミドの機械物性や成型加工性、耐熱性等の目的に応じて、セバシン酸以外のジカルボン酸を含んでもよい。そのようなジカルボン酸としては、セバシン酸以外の直鎖脂肪族ジカルボン酸、分岐状脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸あるいはこれらの混合物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
セバシン酸以外の直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸等が挙げられる。中でも炭素数6〜18の直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸及びドデカン二酸からなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、アジピン酸が特に好ましい。
分岐状脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、3,3−ジエチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2,4−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸等が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸の具体例としては、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
(ジアミン)
本発明に用いられるジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、あるいはこれらの混合物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
脂肪族ジアミンの具体例としては、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等が挙げられる。
脂環式ジアミンの具体例としては、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。ビス(アミノメチル)シクロヘキサンとしては、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが例示される。
芳香族ジアミンの具体例としては、キシリレンジアミン等が挙げられる。キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンが例示される。
本発明に用いられるジアミンとしては、目的とするポリアミドの物性に応じて適宜選択される。
例えば、得られるポリアミドの耐熱性の観点からは、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミンが好ましい。この中でも、更に環境保全を考慮する場合には、ひまし油から得られる植物由来原料である1,10−デカンジアミンがより好ましい。
一方、得られるポリアミドの機械物性(強度、弾性率)及びガスバリア性の観点からは、キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが好ましい。この場合、ジアミン100モル%中、キシリレンジアミン及び/又はビス(アミノメチル)シクロヘキサンを好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、より更に好ましくは実質100モル%含む。
キシリレンジアミンは、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物であることが好ましく、得られるポリアミドのガスバリア性の観点からはメタキシリレンジアミンがより好ましく、得られるポリアミドの耐熱性、寸法安定性の観点からはパラキシリレンジアミンがより好ましい。
(ジアミンとジカルボン酸との仕込みモル比)
ジカルボン酸として使用されるセバシン酸は、通常、純度97〜99.5%のものが入手可能である。従来、ジカルボン酸としてセバシン酸を用いたポリアミド樹脂の重合の際に重合度が十分に上がらず、所望の分子量のポリアミド樹脂を製造できないことがあったが、本発明者らは、その原因が、セバシン酸中に含まれる微量のモノカルボン酸によってポリアミドの重合反応におけるジアミンとジカルボン酸とのモルバランスが乱されていることにあることを見出した。
したがって、本発明の方法では、セバシン酸中に含まれる微量のモノカルボン酸を考慮して、ジアミン及びジカルボン酸の仕込み量を制御して重縮合反応を行う。具体的には、まず、後述する式(A)又は(B)に基づいて、モノカルボン酸をβモル%含有するセバシン酸を用いたときの、所定のアミノ基又はカルボキシル基の反応率PA又はPCにおける、前記所望の数平均分子量Mnを有するポリアミド樹脂を得るためのジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αを求める。次いで、求められたαとなるように、下式(1)に基づいて、ジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を制御して重縮合反応を行う。
α=2X/(2Y−(β/100)Y) ・・・(1)
(式中、Xは、仕込むジアミンの分子数(モル)を表し、Yは、仕込むジカルボン酸の分子数(モル)を表す。βは、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表し、0モル%を超え6モル%未満である。)
式(1)における分子は、重合反応に関与するアミノ基の数を意味し、分母は、重合反応に関与するカルボキシル基の数を意味する。ジアミン1モルにおいてアミノ基は2個存在するので、仕込むジアミンがXモルの場合、重合反応に関与するアミノ基の数は「2X」である。一方、ジカルボン酸1モルにおいてカルボキシル基は2個存在するので、仕込むジカルボン酸がYモルの場合、重合反応に関与するカルボキシル基の数は、理論上は「2Y」である。しかし、ジカルボン酸中には、重合反応を阻害するモノカルボン酸がβモル%含まれているので、ジカルボン酸Yモルに含まれるモノカルボン酸の含有量「(β/100)Y」を、重合反応に関与するカルボキシル基の数「2Y」から除外し、実際に重合反応に関与するカルボキシル基の数は「2Y−(β/100)Y」である。なお、本発明では、ジアミンは工業的に精製された純度が高いジアミンを用いるため、重合反応の分子量制御という点において、ジアミン中の不純物については無視できる。
ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表すβは、0モル%を超え6モル%未満である。βが0モル%の場合は、本発明の方法によらずともポリアミド樹脂の分子量を制御することができるため本発明から除外される。βが6モル%以上の場合は、重合反応を阻害するモノカルボン酸が多すぎるため、重合度を上げようとしても十分に上がらず、所望する分子量のポリアミド樹脂を製造することができない。
本発明におけるβは、好ましくは0モル%を超え2.6モル%以下である。当該範囲内であれば、ジカルボン酸中にモノカルボン酸を含有しないとき(βが0モル%のとき)のジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αが0.970を超え0.987以下又は1.013以上1.030未満のときに得られるポリアミド樹脂と同等の分子量のポリアミド樹脂を製造することができる。
また、本願発明におけるβは、より好ましくは0モル%を超え1.0モル%以下である。当該範囲内であれば、ジカルボン酸中にモノカルボン酸を含有しないとき(βが0モル%のとき)のジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αが0.970を超え0.995未満又は1.005以上1.030未満のときに得られるポリアミド樹脂と同等の分子量のポリアミド樹脂を製造することができる。
また、本願発明におけるβは、更に好ましくは0モル%を超え0.3モル%以下である。当該範囲内であれば、ジカルボン酸中にモノカルボン酸を含有しないとき(βが0モル%のとき)のジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αが0.970を超え0.9985以下又は1.0015以上1.030未満のときに得られるポリアミド樹脂と同等の分子量のポリアミド樹脂を製造することができる。
ジカルボン酸中のモノカルボン酸の含有量β(モル%)は、ガスクロマトグラフィーによって測定される。このとき、検出感度を向上させるため、ジカルボン酸中のジカルボン酸とモノカルボン酸との全量をメチルエステル化した後、ガスクロマトグラフィーに供することが好ましい。
(ポリアミド樹脂の数平均分子量Mn)
本発明の方法で得られるポリアミド樹脂の数平均分子量Mnは、10,000〜50,000の範囲であることが好ましく、12,000〜40,000の範囲であることがより好ましく、14,000〜30,000の範囲であることが更に好ましい。Mnを上記範囲にすることで、成形品とした場合の機械的強度が安定し、また成形性の上でも加工性良好となる適度な溶融粘度を持つものとなる。なお、ポリアミド樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
本発明の方法で得られるポリアミド樹脂の数平均分子量Mnは、式(1)で表されるα、ジカルボン酸中のモノカルボン酸の含有量β(モル%)、並びにアミノ基又はカルボキシル基の反応率PA又はPCに基づいて制御することができる。ポリアミド樹脂の数平均分子量は、重合時間を長くすることである程度上げることは可能であるが、重合中に樹脂が劣化したり、生産性の低下を招いたりすることがある。これに対して、本発明の方法によれば、分子量を上げるために重合時間を過度に長くすることなく、原料バランスを調節することで効率的に所望する分子量のポリアミド樹脂を製造することができる。
なお、反応率PA又はPCは、モノカルボン酸を含有しないセバシン酸を用いて得られたポリアミドから求めることができ、重合温度や重合時間等の重合条件により適宜設定することができる。
ポリアミド樹脂の数平均分子量Mnは、下式(A)又は(B)に基づいて求められ、10000≦Mn≦50000の範囲で決定されることが好ましい。
Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2−M4A)−(M1−M2)(β/100)+M1)]/(2−α(2−β/100)(2PA−1)) ・・・(A)
Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2)−(M1−M2−M4C)(β/100)+M1−2M4C)]/((α−2PC)(2−β/100)+2) ・・・(B)
(式中、M1は、重合反応に関与するジカルボン酸の分子量を表し、M2は、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の分子量を表し、M3は、重合反応に関与するジアミンの分子量を表し、M4は、水の分子量を表し、PAは、アミノ基の反応率を表し、PCは、カルボキシル基の反応率を表す。)
まず、式(A)について説明する。
ポリアミド樹脂の総質量W(g)は、(重合反応に関与するジカルボン酸の総質量)+(ジカルボン酸に含まれるモノカルボン酸の総質量)+(重合反応に関与するジアミンの総質量)−(縮合水の質量)で表される。
重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合、ポリアミド樹脂の総質量Wは下式(2)で表される。
W=M1(1−β/100)Y+M2(β/100)Y+M3X−M4(2XPA) ・・・式(2)
(式中、M1は、重合反応に関与するジカルボン酸の分子量を表し、M2は、ジカルボン酸に含まれるモノカルボン酸の分子量を表し、M3は、重合反応に関与するジアミンの分子量を表し、M4は、水の分子量を表す。X、Y及びβは式(1)におけるX、Y及びβと同義である。PAは、アミノ基の反応率を表す。)
重合反応に関与するジカルボン酸の総質量は「M1(1−β/100)Y」で表され、ジカルボン酸に含まれるモノカルボン酸の総質量は「M2(β/100)Y」で表され、重合反応に関与するジアミンの総質量は「M3X」で表される。なお、上記のとおり、本発明ではジアミン中の不純物については無視でき、仕込むジアミンの分子数が重合反応に関与するジアミンの分子数であるとして扱う。重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合の重縮合反応はジアミンの量に依存するので、縮合水の質量は「M4(2XPA)」で表される。
また、ポリアミド樹脂におけるポリマー末端の総数a(モル)は、(末端カルボキシル基数)+(モノカルボン酸由来の末端アルキル基数)+(末端アミノ基数)で表される。
重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合、ポリマー末端の総数aは下式(3)で表される。
a={(2Y−(β/100)Y)−2XPA}+(β/100)Y+2X(1−PA
=X(2−4PA)+2Y ・・・式(3)
(式中、X、Y及びβは式(1)におけるX、Y及びβと同義であり、PAは式(2)におけるPAと同義である。)
重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合の重縮合反応はジアミンの量に依存するので、末端カルボキシル基数は、ジカルボン酸のカルボキシル基数から反応に寄与したジアミンのアミノ基数を差し引いた値であり「(2Y−(β/100)Y)−2XPA」で表される。モノカルボン酸由来の末端アルキル基数は「(β/100)Y」で表される。末端アミノ基数は、カルボキシル基と反応せずに残ったアミノ基数であり、「2X(1−PA)」で表される。
ここで、ポリアミド樹脂の数平均分子量Mnは、末端基定量法によって求めることができ、下式(4)で表すことができる。
Mn=W/(a/2) ・・・式(4)
当該式(4)に上記式(2)及び(3)を代入し、分子及び分母をそれぞれYで除すると、数平均分子量Mnは下式(5)で表される。
Mn=2[{M1(1−β/100)+M2(β/100)+(M3−M4(2PA))(X/Y)}]/{(2−4PA)(X/Y)+2} ・・・式(5)
ここで、式(1)からX/Yは下式(6)で表される。
X/Y=(α/2)(2−β/100) ・・・式(6)
当該式(6)を上記式(5)に代入すると、重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合の数平均分子量Mnは上記式(A)で表される。
次に、式(B)について説明する。
上述のとおり、ポリアミド樹脂の総質量W(g)は、(重合反応に関与するジカルボン酸の総質量)+(ジカルボン酸に含まれるモノカルボン酸の総質量)+(重合反応に関与するジアミンの総質量)−(縮合水の質量)で表される。
重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合、ポリアミド樹脂の総質量Wは下式(7)で表される。
W=M1(1−β/100)Y+M2(β/100)Y+M3X−M4(2−β/100)YPC ・・・式(7)
(式中、M1、M2、M3及びM4は、は式(2)におけるM1、M2、M3及びM4と同義である。X、Y及びβは式(1)におけるX、Y及びβと同義である。PCは、カルボキシル基の反応率を表す。)
重合反応に関与するジカルボン酸の総質量は「M1(1−β/100)Y」で表され、ジカルボン酸に含まれるモノカルボン酸の総質量は「M2(β/100)Y」で表され、重合反応に関与するジアミンの総質量は「M3X」で表される。重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合の重縮合反応はジカルボン酸の量に依存するので、縮合水の質量は「M4(2−β/100)YPC」で表される。
また、上述のとおり、ポリアミド樹脂におけるポリマー末端の総数a(モル)は、(末端カルボキシル基数)+(モノカルボン酸由来の末端アルキル基数)+(末端アミノ基数)で表される。
重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合、ポリマー末端の総数aは下式(8)で表される。
a={(2−(β/100))Y(1−PC)}+(β/100)Y+(2X−(2−(β/100))YPC
=2X+2Y−2(2−(β/100))YPC ・・・式(8)
(式中、X、Y及びβは式(1)におけるX、Y及びβと同義であり、PCは式(7)におけるPCと同義である。)
重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合の重縮合反応はジカルボン酸の量に依存するので、末端アミノ基数は、ジアミンのアミノ基数から反応に寄与したジカルボン酸のカルボキシル基数を差し引いた値であり「2X−(2−(β/100))YPC」で表される。モノカルボン酸由来の末端アルキル基数は「(β/100)Y」で表される。末端カルボキシル基数は、アミノ基と反応せずに残ったカルボキシル基数であり、「(2−(β/100))Y(1−PC)」で表される。
ここで、上述のとおり、ポリアミド樹脂の数平均分子量Mnは、末端基定量法によって求めることができ、上記式(4)で表すことができる。
式(4)に上記式(7)及び(8)を代入し、分子及び分母をそれぞれYで除すると、数平均分子量Mnは下式(9)で表される。
Mn=2[(M1(1−β/100)+M2(β/100)+M3(X/Y)−(2−β/100)M4C)]/(2(X/Y)+2−2(2−(β/100))PC) ・・・式(9)
ここで、上述のとおり、式(1)からX/Yは式(6)で表されるため、式(6)を上記式(9)に代入すると、重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合の数平均分子量Mnは上記式(B)で表される。
なお、上記式(A)及び(B)において、重合反応に関与するジカルボン酸が複数種存在するときは、ジカルボン酸の分子量M1に代えて、ジカルボン酸の数平均分子量M1’を用いる。すなわち、ジカルボン酸の数平均分子量M1’は下式で表される。
1’=ΣMAnAn
同様に、複数種のモノカルボン酸(B1,B2,B3,・・・,Bn)が存在するときは、モノカルボン酸の分子量M2に代えて、モノカルボン酸の数平均分子量M2’を用いる。M2’は、複数種のモノカルボン酸(B1,B2,B3,・・・,Bn)の分子量をそれぞれMB1,MB2,MB3,・・・,MBn、モノカルボン酸全体における各モノカルボン酸の含有率をそれぞれNB1,NB2,NB3,・・・,NBn(mol/mol)としたとき、下式で表される。
2’=ΣMBnBn
また、複数種のジアミン(C1,C2,C3,・・・,Cn)が存在するときは、ジアミンの分子量M3に代えて、ジアミンの数平均分子量M3’を用いる。M3’は、複数種のジアミン(C1,C2,C3,・・・,Cn)の分子量をそれぞれMC1,MC2,MC3,・・・,MCn、ジアミン全体における各ジアミンの含有率をそれぞれNC1,NC2,NC3,・・・,NCn(mol/mol)としたとき、下式で表される。
3’=ΣMCnCn
上記式(A)及び(B)のうち、重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合は式(A)が適用され、また、重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合は式(B)が適用される。すなわち、式(A)はα≦1のときに有効であり、式(B)はα>1のときに有効である。
なお、式(A)に基づいて求められるαが1を超える場合又は式(B)に基づいて求められるαが1以下の場合には、不純物が多すぎて完全な制御をすることができず、目的の分子量と同等の分子量を得ることができない。ただし、そのような場合でも、α=1となるように、ジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を制御してから重縮合反応を行うことで、目的の分子量に最大限近づけることは可能である。
上記式(A)及び(B)の計算例を図1に示す。図1は、アミノ基又はカルボキシル基の反応率が1.000の場合に式(A)又は(B)に基づいて算出される、セバシン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量βモル%と、数平均分子量Mnが10000、20000又は50000のポリアミド樹脂を得るためのジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αとの関係を示すグラフである。各グラフは、式(A)及び(B)において、重合反応に関与するセバシン酸の分子量M1=202.2475、セバシン酸に含まれるヘプタン酸の分子量M2=130.1849、重合反応に関与するメタキシリレンジアミンの分子量M3=136.1943、水の分子量M4=18.01528、アミノ基の反応率PA=1.000、カルボキシル基の反応率PC=1.000として算出している。
図1中、黒い丸印で示されたデータ系列の直線は、数平均分子量Mnが10000のときに式(A)で算出されるαとβとの関係式であり、白抜きの丸印で示されたデータ系列の直線は、数平均分子量Mnが10000のときに式(B)で算出されるαとβとの関係式である。黒い四角印で示されたデータ系列の直線は、数平均分子量Mnが20000のときに式(A)で算出されるαとβとの関係式であり、白抜きの四角印で示されたデータ系列の直線は、数平均分子量Mnが20000のときに式(B)で算出されるαとβとの関係式である。黒い三角印で示されたデータ系列の直線は、数平均分子量Mnが50000のときに式(A)で算出されるαとβとの関係式であり、白抜きの三角印で示されたデータ系列の直線は、数平均分子量Mnが50000のときに式(B)で算出されるαとβとの関係式である。
具体的には、例えば数平均分子量Mnが20000のポリアミド樹脂を所望する場合において、セバシン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量βが2モル%の場合、図1の式(A)のグラフからαが約0.995、式(B)のグラフからαが約1.005として求められる。求められたα(=約0.995又は約1.005)となるように上記式(1)に基づいてジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を調節し、アミノ基の反応率PA=1.000又はカルボキシル基の反応率PC=1.000として重縮合反応を行うことで、所望する数平均分子量Mnが20000のポリアミド樹脂を効率よく製造することができる。
(リン原子含有化合物、アルカリ金属化合物)
ポリアミド樹脂の重縮合においては、アミド化反応を促進する観点から、ポリアミドの重縮合系内にリン原子含有化合物を添加することが好ましい。リン原子含有化合物を添加することで、重縮合反応の触媒として作用し、また、重縮合系内に存在する酸素によるポリアミドの着色を防止することができる。
リン原子含有化合物としては、次亜リン酸のアルカリ金属塩、次亜リン酸のアルカリ土類金属塩、亜リン酸のアルカリ金属塩、亜リン酸のアルカリ土類金属塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属塩、ピロリン酸のアルカリ金属塩、ピロリン酸のアルカリ土類金属塩、メタリン酸のアルカリ金属塩及びメタリン酸のアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、本発明で使用できるリン原子含有化合物はこれらの化合物に限定されない。
リン原子含有化合物の具体例としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸水素カリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸水素リチウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸水素マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素二マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素二カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リン酸水素二リチウム、リン酸二水素リチウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸リチウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸リチウム、あるいはこれらの混合物が例示できる。これらの中でも、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウムが好ましく、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウムがより好ましい。なお、これらのリン原子含有化合物は水和物であってもよい。
リン原子含有化合物の添加量は、ポリアミド化合物中のリン原子濃度換算で0.1〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは1〜600ppmであり、さらに好ましくは5〜400ppmである。0.1ppm以上であれば、重合中にポリアミド化合物が着色しにくく透明性が高くなる。1000ppm以下であれば、ポリアミド化合物がゲル化しにくく、また、リン原子含有化合物に起因すると考えられるフィッシュアイの成形品中への混入も低減でき、成形品の外観が良好となる。
また、ポリアミド化合物の重縮合系内には、リン原子含有化合物と併用してアルカリ金属化合物を添加することが好ましい。重縮合中のポリアミド化合物の着色を防止するためには十分な量のリン原子含有化合物を存在させる必要があるが、場合によってはポリアミド化合物のゲル化を招くおそれがあるため、アミド化反応速度を調整するためにもアルカリ金属化合物を共存させることが好ましい。
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属酢酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が好ましい。本発明で用いることのできるアルカリ金属化合物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムプロポキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、リチウムメトキシド、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、これらの化合物に限定されることなく用いることができる。なお、リン原子含有化合物とアルカリ金属化合物の比率は、重合速度制御の観点や、黄色度を低減する観点から、リン原子含有化合物/アルカリ金属化合物=1.0/0.05〜1.0/1.5の範囲が好ましく、より好ましくは、1.0/0.1〜1.0/1.2、さらに好ましくは、1.0/0.2〜1.0/1.1である。
(重縮合方法)
ポリアミド樹脂の重縮合方法としては、加圧塩法、常圧滴下法、加圧滴下法、反応押出法等が挙げられるが、これらに限定されない。
<加圧塩法>
加圧塩法では、ナイロン塩を原料として加圧下にて溶融重縮合を行う方法である。具体的には、ジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩水溶液を調製した後、該水溶液を濃縮し、次いで加圧下にて昇温し、縮合水を除去しながら重縮合させる。缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド樹脂の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド樹脂を回収する。
<常圧滴下法>
常圧滴下法では、常圧下にて、加熱溶融したジカルボン酸に、ジアミンを連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。なお、生成するポリアミド樹脂の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。
常圧滴下法は、前記加圧塩法と比較すると、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、また、原料成分の気化・凝縮を必要としないため、反応速度の低下が少なく、工程時間を短縮できる。
<加圧滴下法>
加圧滴下法では、まず、重縮合缶にジカルボン酸を仕込み、溶融混合する。次いで、缶内を好ましくは0.3〜0.4MPaG程度に加圧しながら加熱溶融したジカルボン酸にジアミンを連続的に滴下し、縮合水を除去しながら重縮合させる。この際、生成するポリアミド樹脂の融点よりも反応温度が下回らないように、反応系を昇温しながら重縮合反応を行う。設定モル比に達したらジアミンの滴下を終了し、缶内を徐々に常圧に戻しながら、ポリアミド樹脂の融点+10℃程度まで昇温し、保持した後、更に、0.02MPaGまで徐々に減圧しつつ、そのままの温度で保持し、重縮合を継続する。一定の撹拌トルクに達したら、缶内を窒素で0.3MPaG程度に加圧してポリアミド樹脂を回収する。
加圧滴下法は、揮発性成分をモノマーとして使用する場合に有用である。また、加圧滴下法は、加圧塩法に比べて、塩を溶解するための水を使用しないため、バッチ当たりの収量が大きく、常圧滴下法と同様に反応時間を短くできることから、ゲル化等を抑制し、黄色度が低いポリアミド樹脂を得ることができる。
<反応押出法>
反応押出法では、ジアミン及びジカルボン酸からなるポリアミドのオリゴマーを押出機で溶融混練して反応させる方法である。十分に反応させるためには、反応押出に適したスクリューを用い、L/Dの大きい2軸押出機を用いるのが好ましい。
製造コストの観点からは、常圧滴下法又は加圧滴下法が好ましい。すなわち、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に連続的に加え、常圧下又は加圧下で重縮合させる方法が好ましい。
常圧滴下法又は加圧滴下法を適用する場合の好ましい反応条件としては、0.1〜0.5MPaAにおいて、溶融状態のジカルボン酸を150〜200℃まで昇温し、続いてジアミンを1.5〜3時間かけて滴下しながら220〜300℃まで緩やかに昇温する。ジアミンの滴下が進むに従って融点が上昇するため、このときの温度は常に融点より5℃以上高い温度を保持する。滴下完了後、0.5〜2時間かけて0.08MPaAまで緩やかに減圧し、0〜2時間の減圧状態を保持する。
また、常圧滴下法又は加圧滴下法を適用する場合、溶融状態のジカルボン酸が反応槽に導入される前にろ過されたものであることが好ましい。溶融状態のジカルボン酸をろ過することによって不溶物を除去することで、得られるポリアミド樹脂におけるフィッシュアイを低減することができる。ろ過する手段としては特に限定されず、メンブランフィルタ、焼結金属フィルタ、ガラス繊維フィルタ等のフィルタを用いることができる。
<重合度を高める工程>
上記重縮合方法で製造されたポリアミド樹脂は、そのまま使用することもできるが、更に重合度を高めるための工程を経てもよい。更に重合度を高める工程としては、押出機内での反応押出や固相重合等が挙げられる。固相重合で用いられる加熱装置としては、連続式の加熱乾燥装置やタンブルドライヤー、コニカルドライヤー、ロータリードライヤー等と称される回転ドラム式の加熱装置およびナウタミキサーと称される内部に回転翼を備えた円錐型の加熱装置が好適に使用できるが、これらに限定されることなく公知の方法、装置を使用することができる。特にポリアミド樹脂の固相重合を行う場合は、上述の装置の中で回転ドラム式の加熱装置が、系内を密閉化でき、着色の原因となる酸素を除去した状態で重縮合を進めやすいことから好ましく用いられる。
(ポリアミド樹脂)
本発明の方法で得られたポリアミド樹脂は、ジアミン単位とジカルボン酸単位とを含有し、ジカルボン酸単位の50モル%以上がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂である。
本発明の方法で得られるポリアミド樹脂のジカルボン酸単位は、ジカルボン酸単位100モル%中、セバシン酸単位を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは実質100モル%含む。ジカルボン酸単位がすべてセバシン酸に由来することが好ましい。セバシン酸単位以外のジカルボン酸単位を構成しうる化合物としては、セバシン酸以外のジカルボン酸が挙げられ、ジカルボン酸として説明したものと同様である。
本発明の方法で得られるポリアミド樹脂のジアミン単位を構成しうる化合物としては、ジアミンとして説明したものが挙げられ、目的とするポリアミドの物性に応じて適宜選択される。
例えば、ポリアミドの機械物性(強度、弾性率)及びガスバリア性の観点からは、本発明の方法で得られるポリアミド樹脂のジアミン単位の好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、より更に好ましくは実質100モル%が、キシリレンジアミン及び/又はビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来する。
本発明の方法で得られるポリアミド樹脂の好ましい具体例としては、ポリテトラメチレンセバカミド(ナイロン410)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリメタキシリレンセバカミド(ナイロンMXD10)、ポリパラキシリレンセバカミド(ナイロンPXD10)、ポリメタキシリレンセバカミド/ポリパラキシリレンセバカミドコポリマー(ナイロンMP10)等が挙げられる。
(ポリアミド樹脂組成物)
本発明の方法で得られたポリアミド樹脂は、本発明のポリアミド樹脂に要求される性能に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、高分子材料に一般に用いられている各種添加剤を配合してポリアミド樹脂組成物とすることができる。添加剤の具体例としては、酸化防止剤、着色剤、光安定化剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、結晶化核剤、可塑剤、ナノフィラー等の充填剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、離型剤等を例示できるが、これらに限定されることなく、種々の材料を混合してもよい。
ポリアミド樹脂に添加剤や樹脂を配合する方法は特に限定されず、所望の方法で行うことができる。例えば、添加剤をポリアミド樹脂の重縮合反応時に添加してもよく、また、ポリアミド樹脂に添加剤及び樹脂を所定量配合して溶融混練したり、ドライブレンドしたりすることもできる。
溶融混練には従来公知の方法で行うことができる。例えば単軸や2軸の押出機、ニーダー、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ベント式押出機又はこれに類似した装置を用いて、加熱下に溶融混練する方法が例示できる。一括で押出機根元から全ての材料を投入して溶融混練してもよいし、先ず樹脂成分を投入して溶融しながらサイドフィードした繊維状充填材と混練する方法により、ペレットを製造してもよい。また、異なる種類のコンパウンド物をペレット化した後にペレットブレンドしてもよいし、一部の粉末成分や液体成分を別途ブレンドする方法でもよい。
(成形品)
本発明の方法で得られたポリアミド樹脂及びこれを含む樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、延伸、真空成形等の公知の成形方法により、所望の形状の成形体を製造することができる。エンジニアリングプラスチックとして成形体のみならず、フィルム、シート、中空容器、繊維、チューブ等の形態にも成形可能であり、産業資材、工業材料、家庭用品等に好適に使用することができる。
本発明の方法で得られたポリアミド樹脂及びこれを含む樹脂組成物を含んでなる成形品としては、電気電子部品、摺動部品、吹込成形品、自動車部品等の種々の用途に好適に用いることができる。
電気電子部品の具体例としては、コネクタ、スイッチ、ICやLEDのハウジング、ソケット、リレー、抵抗器、コンデンサ、キャパシタ、コイルボビン等のプリント基板に実装する電気電子部品が挙げられる。
摺動部品の具体例としては、軸受け、歯車、ブッシュ、スペーサー、ローラー、カム等の各種摺動材が挙げられる。
自動車用部品の具体例としては、エンジンマウント、エンジンカバー、トルクコントロールレバー、ウィンドレギュレータ、前照灯反射板、ドアミラーステイ等が挙げられる。
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において各種測定は以下の方法により行った。
(1)ジカルボン酸中のモノカルボン酸の含有量
濃塩酸1.0mlを、メタノールを用いて100mlに希釈することで、塩酸メタノール液を調整した。セバシン酸100mgを塩酸メタノール液10mlに溶解させ、密閉したバイアル内で100℃、1時間加熱した。冷却後の溶液をガスクロマトグラフィーに供した。ガスクロマトグラムのジカルボン酸やモノカルボン酸に由来するピークの面積比をもとに、ジカルボン酸中のモノカルボン酸の含有量を定量した。
(2)アミノ基及びカルボキシル基の反応率
ポリアミド樹脂のアミノ基およびカルボキシル基の反応率は、次の式から求めた。
A=[NH2]×W/(2X)
C=[COOH]×W/(2Y−(β/100)Y)
(式中、X、Y及びβは、式(1)におけるX、Y及びβと同義であり、PA及びWは式(2)におけるPA及びWと同義であり、PCは式(7)におけるPCと同義である。また、[NH2]はポリアミド樹脂中の末端アミノ基濃度(モル/g)、[COOH]はポリアミド樹脂中の末端カルボキシル基濃度(モル/g)を表す。)
末端アミノ基濃度は、ポリアミド樹脂0.3gを30mlのフェノール/エタノール(4:1)混合溶液に20〜30℃で撹拌溶解し、0.01Nの塩酸で滴定して測定した。
末端カルボキシル基濃度は、ポリアミド樹脂0.2gを30mlのベンジルアルコールに190℃で撹拌溶解し、100℃に冷却した後、メタノール5mlを加え、0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定して測定した。
(3)ポリアミド樹脂の数平均分子量Mn
ポリアミド樹脂の数平均分子量Mnは、昭和電工社製のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)「Shodex(登録商標) GPC SYSTEM−11」(商品名)により測定した。溶媒にはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、サンプルのポリアミド10mgを10gのHFIPに溶解させて測定に用いた。測定条件は、測定カラムとして、同社製GPC標準カラム(カラムサイズ300×8.0mmI.D.)の「HFIP−806M」(商品名)を2本、リファレンスカラム「HFIP−800」(商品名)を2本用い、カラム温度40℃、溶媒流量1.0mL/minとした。標準試料としてポリメタクリル酸メチルを使用し、データ処理ソフトとして同社製「SIC−480II」(商品名)を使用して、ポリアミド樹脂の数平均分子量Mnを求めた。
参考例1
使用するセバシン酸をガスクロマトグラフィーで分析した結果、モノカルボン酸は検出されなかった(β=0.0モル%)。このセバシン酸15.000kgを反応缶内で0.4MPaAにおいて170℃にて加熱し溶融した後、内容物を撹拌しながら、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンのモル比が7:3の混合ジアミン(MPXDA)9.980kgを2時間かけて徐々に滴下し、温度を250℃まで上昇させた(α=0.9880)。温度上昇後、1時間かけて圧力を0.08MPaAまで緩やかに低下させ、0.5時間保持した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットは、アミノ基反応率PA=0.995、数平均分子量13800のポリアミド樹脂であった。また、得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧化で固相重合した結果、PA=0.998、数平均分子量18900のポリアミド樹脂を得た。
実施例1
使用するセバシン酸をガスクロマトグラフィーで分析した結果、不純物としてヘプタン酸が2.0モル%含まれていた(β=2.0モル%)。このセバシン酸の使用にあたり、前記式(A)に基づいて、アミノ基反応率PA=0.995における数平均分子量13800のポリアミド樹脂を得るときのαを算出したところ、α=0.9981であった。また、前記式(B)に基づいて、カルボキシル基反応率PC=0.995とした場合における数平均分子量13800のポリアミド樹脂を得るときのαを算出したところ、α=1.0019であった。そこで、混合ジアミンMPXDAの用いる量を10.053kgに変えることでα=0.9981に調整し、その他の条件は参考例1と同様に製造した。その結果、反応缶から取り出したペレットとして、アミノ基反応率PA=0.995、数平均分子量13700のポリアミド樹脂が得られた。また、固相重合品としてPA=0.998、数平均分子量18800のポリアミド樹脂を得た。
このように、βに応じてαを調整することで、純度が高いセバシン酸を用いた参考例1と同等の分子量を得ることができ、十分な分子量制御が可能であった。
比較例1
使用するセバシン酸をガスクロマトグラフィーで分析した結果、不純物としてヘプタン酸が2.0モル%含まれていた(β=2.0モル%)。このセバシン酸を用いたこと以外は参考例1と同様に製造した。すなわち、ジアミン及びジカルボン酸の使用量は変更せず、参考例1における各使用量と同様とした。その結果、反応缶から取り出したペレットとして、アミノ基反応率PA=0.995、数平均分子量10400のポリアミド樹脂を得た。また、固相重合品として、PA=0.998、数平均分子量13000のポリアミド樹脂を得た。なお、このときのαを前記式(1)に従って算出したところ、0.9909であった。
このように、βに応じたαの調整を行わなかった場合、純度が高いセバシン酸を用いた参考例1と同等の分子量を得ることができず、十分な分子量制御ができなかった。
比較例2
使用するセバシン酸をガスクロマトグラフィーで分析した結果、不純物としてヘプタン酸が3.0モル%含まれていた(β=3.0モル%)。このセバシン酸を用いたこと以外は参考例1と同様に製造した。すなわち、ジアミン及びジカルボン酸の使用量は変更せず、参考例1における各使用量と同様とした。その結果、反応缶から取り出したペレットとして、アミノ基反応率PA=0.995、数平均分子量9200のポリアミド樹脂を得た。また、固相重合品として、PA=0.998、数平均分子11200のポリアミド樹脂を得た。なお、このときのαを前記式(1)に従って算出したところ、0.9923であった。
このように、βに応じたαの調整を行わなかった場合、純度が高いセバシン酸を用いた参考例1と同等の分子量を得ることができず、十分な分子量制御ができなかった。
実施例2
使用するセバシン酸をガスクロマトグラフィーで分析した結果、不純物としてヘプタン酸が3.0モル%含まれていた(β=3.0モル%)。このセバシン酸の使用にあたり、前記式(A)に基づいて、アミノ基反応率PA=0.995における数平均分子量13800のポリアミド樹脂を得るときのαを算出したところ、α=1.0032であり、前記式(A)が有効であるαの上限値1を超えた。また、前記式(B)に基づいて、カルボキシル基反応率PC=0.995とした場合における数平均分子量13800のポリアミド樹脂を得るときのαを算出したところ、α=0.9967であり、前記式(B)が有効であるαの下限値1を下回った。そこで、混合ジアミンMPXDAの用いる量を10.057kgに変えることでα=1.0000に調整し、その他の条件は参考例1と同様に製造した。その結果、反応缶から取り出したペレットとして、アミノ基反応率PA=0.995、数平均分子量12000のポリアミド樹脂が得られた。また、固相重合品として、PA=0.998、数平均分子量15800のポリアミド樹脂を得た。
βが大きかったため、αを最大限に調節しても、純度が高いセバシン酸を用いた参考例1と同等の分子量を得ることができなかったが、αの調整を行わなかった比較例2よりは参考例1に近い分子量のポリアミド樹脂を得ることができ、αの調整によって分子量制御が可能であった。
Figure 2015071706
本発明の方法によれば、ジカルボン酸としてセバシン酸を用いて、数平均分子量が10000〜50000程度の分子量のポリアミド樹脂を効率よく製造することができる。セバシン酸の純度の影響を考慮して重合を行うことができるため、純度の低い安価なセバシン酸を用いても所望の分子量に制御されたポリアミド樹脂を効率よく製造することが可能となる。
本発明の方法で得られるポリアミド樹脂は、吸水性が低く寸法安定性に優れるという特性を有するため、自動車部品、電気電子機器部品、機械部品等の産業、工業及び家庭用品に好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. ジアミンと、モノカルボン酸を0モル%を超え6モル%未満含有するセバシン酸を含むジカルボン酸とを用いて重合反応を行うことによって、ジアミン単位と、セバシン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有し、かつ、所望の数平均分子量を有するポリアミド樹脂を製造する方法であって、
    下式(A)又は(B)に基づいて、モノカルボン酸をβモル%含有するセバシン酸を用いたときの、所定のアミノ基又はカルボキシル基の反応率PA又はPCにおける、前記所望の数平均分子量Mnを有するポリアミド樹脂を得るためのジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αを求め、
    求められたαとなるように、下式(1)に基づいて、ジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を制御して重縮合反応を行う、ポリアミド樹脂の製造方法。
    Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2−M4A)−(M1−M2)(β/100)+M1)]/(2−α(2−β/100)(2PA−1)) ・・・(A)
    Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2)−(M1−M2−M4C)(β/100)+M1−2M4C)]/((α−2PC)(2−β/100)+2) ・・・(B)
    (重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合は式(A)が適用され、また、重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合は式(B)が適用される。
    式(A)及び(B)中、βは、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表し、0モル%を超え6モル%未満である。M1は、重合反応に関与するジカルボン酸の分子量を表し、M2は、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の分子量を表し、M3は、重合反応に関与するジアミンの分子量を表し、M4は、水の分子量を表し、PAは、アミノ基の反応率を表し、PCは、カルボキシル基の反応率を表す。)
    α=2X/(2Y−(β/100)Y) ・・・(1)
    (式中、Xは、仕込むジアミンの分子数(モル)を表し、Yは、仕込むジカルボン酸の分子数(モル)を表す。βは、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表し、0モル%を超え6モル%未満である。)
  2. 前記数平均分子量Mnが10000〜50000である、請求項1に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  3. 前記反応率PA又はPCが、モノカルボン酸を含有しないセバシン酸を用いて得られたポリアミドから求められる、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  4. ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に連続的に加え、常圧下又は加圧下で重縮合させる、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  5. 前記の溶融状態のジカルボン酸が、反応槽に導入される前にろ過されたものである、請求項4に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  6. 前記ジアミン単位の70モル%以上が、キシリレンジアミン及び/又はビス(アミノメチル)シクロヘキサンに由来する、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  7. 前記キシリレンジアミンが、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン又はこれらの混合物である、請求項6に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  8. 前記ビス(アミノメチル)シクロヘキサンが、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン又はこれらの混合物である、請求項6に記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  9. 前記ジカルボン酸単位がすべてセバシン酸に由来する、請求項1〜8のいずれかに記載のポリアミド樹脂の製造方法。
  10. ジアミンと、モノカルボン酸を0モル%を超え6モル%未満含有するセバシン酸を含むジカルボン酸とを用いて重合反応を行う際に、ジアミン単位と、セバシン酸単位を50モル%以上含むジカルボン酸単位とを含有するポリアミド樹脂の数平均分子量Mnを制御する方法であって、
    下式(A)又は(B)に基づいて、モノカルボン酸をβモル%含有するセバシン酸を用いたときの、所定のアミノ基又はカルボキシル基の反応率PA又はPCにおける、目的とする数平均分子量Mnを有するポリアミド樹脂を得るためのジアミン及びジカルボン酸の仕込みモル比αを求め、
    求められたαとなるように、下式(1)に基づいて、ジカルボン酸及びジアミンの仕込み量を調節して重縮合反応を行う、ポリアミド樹脂の分子量の制御方法。
    Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2−M4A)−(M1−M2)(β/100)+M1)]/(2−α(2−β/100)(2PA−1)) ・・・(A)
    Mn=2[(α(2−β/100)(M3/2)−(M1−M2−M4C)(β/100)+M1−2M4C)]/((α−2PC)(2−β/100)+2) ・・・(B)
    (重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量以下である場合は式(A)が適用され、また、重合反応に関与するジアミンが、重合反応に関与するジカルボン酸の当量を超える場合は式(B)が適用される。
    式(A)及び(B)中、βは、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表し、0モル%を超え6モル%未満である。M1は、重合反応に関与するジカルボン酸の分子量を表し、M2は、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の分子量を表し、M3は、重合反応に関与するジアミンの分子量を表し、M4は、水の分子量を表し、PAは、アミノ基の反応率を表し、PCは、カルボキシル基の反応率を表す。)
    α=2X/(2Y−(β/100)Y) ・・・(1)
    (式中、Xは、仕込むジアミンの分子数(モル)を表し、Yは、仕込むジカルボン酸の分子数(モル)を表す。βは、ジカルボン酸中に含まれるモノカルボン酸の含有量を表し、0モル%を超え6モル%未満である。)
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