JP2015052183A - 電気絶縁紙及び電気絶縁紙の製造方法 - Google Patents

電気絶縁紙及び電気絶縁紙の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】安価な電気絶縁紙とする。
【解決手段】ポリフェニレンサルファイド繊維Pを10〜90質量%含む原料繊維を湿式抄紙して得た単層又は多層の電気絶縁紙であって、原料繊維が天然繊維を10〜90質量%含み、JIS P 8118に準拠して測定した密度が0.8〜1.3g/cm3である。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、モーター、コンデンサー、変圧器、ケーブル、液晶テレビ、プラズマテレビ、ノートパソコン、電子写真複写機、電池等に使用することができる電気絶縁紙及び電気絶縁紙の製造方法に関するものである。
現在、例えば、液晶テレビ等の機器を構成する基盤等を保護するために、電気絶縁紙が使用されている。この電気絶縁紙は、用途による違いは存在するが、例えば、17kV/mm以上の絶縁破壊強度を有することが求められる。そこで、電気絶縁性を有する合成繊維を用いた様々な電気絶縁紙の提案が行われている。
例えば、特許文献1は、ポリエステル繊維と、アラミド繊維、ポリフェニレンスルフィド(PPS)繊維、脂肪族ポリアミド繊維等の熱可塑性剛性繊維とを含んでなる湿式抄造紙を提案する。また、特許文献2は、メタ型及びパラ型芳香族ポリアミド短繊維と有機系樹脂バインダーとを主成分としてなるアミド繊維紙を提案する。さらに、特許文献3は、未延伸又は延伸倍率が5.0倍以下の芳香族ポリアミド短繊維を含む芳香族ポリアミド短繊維と、有機系バインダーとを主成分としてなる芳香族ポリアミド繊維紙を提案する。さらに、特許文献4は、単繊維断面の長径と短径との比(長径/短径)が1.5以上であるポリフェニレンサルファイド繊維からなる合成繊維紙を提案する。さらに、特許文献5は、フィブリル化したアラミド繊維とポリフェニレンサルファイド短繊維とを含む湿式不織布を提案する。
一方、特許文献6は、ポリフェニレンスルフィドからなる未延伸糸及び延伸糸を水に分散させて抄紙原液とし、この抄紙原液を抄紙し、温度150〜285℃、線圧0.01〜20kN/cmで熱プレスして未延伸糸により延伸糸間の空隙を埋めたポリフェニレンスルフィドからなる紙の製造方法を提案する。また、特許文献7は、ポリフェニレンスルフィドからなる未延伸糸及び延伸糸を水に分散させて抄紙原液とし、この抄紙原液を抄紙し、温度150〜285℃、線圧0.01〜20kN/cmで熱プレスして未延伸糸により延伸糸間の空隙を埋めた後に酸化剤を含む液体存在下で酸化反応処理してポリアリーレンスルフィド酸化物からなる紙の製造方法を提案する。
以上のように、電気絶縁紙及びその製造方法としては、既に様々な提案が行われている。しかしながら、いずれの提案も、種々工夫をして電気絶縁性を確保することを課題とするものであり、原料として高価な電気絶縁性を有する合成繊維を使用することを問題視するものではない。したがって、得られる電気絶縁紙が高価なものとなる。また、製造方法を提案する特許文献6,7も電気絶縁性を確保することを目的とするものであり、製造段階において製造コストの削減を図ろうとするものではない。
特開平6−128893号公報 特開平9−228289号公報 特開2004−156173号公報 特開2009−133033号公報 特開2009−277653号公報 特開2009−174090号公報 特開2009−174091号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、安価な電気絶縁紙及び電気絶縁紙の製造方法を提供することにある。
この課題を解決した本発明は、次の通りである。
〔請求項1記載の発明〕
ポリフェニレンサルファイド繊維を10〜90質量%含む原料繊維を湿式抄紙して得た単層又は多層の電気絶縁紙であって、
前記原料繊維が天然繊維を10〜90質量%含み、
JIS P 8118に準拠して測定した密度が0.8〜1.3g/cm3である、
ことを特徴とする電気絶縁紙。
(主な作用効果)
ポリフェニレンサルファイド繊維を10〜90質量%含む原料繊維を湿式抄紙して得た電気絶縁紙は、電気絶縁性、耐熱性及び耐薬品性を有する。また、天然繊維はポリフェニレンサルファイド繊維の5分の1〜20分の1の価格で取引されており、原料繊維が天然繊維を含むと、原料コストが下がる。さらに、ポリフェニレンサルファイド繊維はフィブリル化できないが、原料繊維が天然繊維を10〜90質量%含み、かつJIS P 8118に準拠して測定した密度を0.8〜1.3g/cm3とすることでポリフェニレンサルファイド繊維をフィブリル化できないことによる問題は解決される。この点、密度を0.8g/cm3未満とするには原料繊維の叩解を控える必要があるところ、叩解を控えると紙層が嵩高となり、繊維同士の結合力が弱くなる。結果、得られる電気絶縁紙の加工適性や絶縁破壊強度が低下するおそれがある。他方、密度を1.3g/cm3超とするには原料繊維の叩解を著しく進める必要があり、エネルギーコスト上の問題が生じる。
〔請求項2記載の発明〕
前記ポリフェニレンサルファイド繊維が、結晶化度30%未満の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維及び結晶化度30%〜60%の延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を含み、
前記未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の繊度が1〜10dtexであり、前記延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の繊度が0.5〜5dtexである、
請求項1記載の電気絶縁紙。
(主な作用効果)
ポリフェニレンサルファイド繊維が、結晶化度30%未満の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維及び結晶化度30%〜60%の延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を含むと、延伸ポリフェニレンサルファイド繊維が耐熱性や寸法安定性等を確保するための主体繊維としての役割を果たし、他方、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維がバインダー繊維としての役割(紙力強度の向上、高密度化等)を果たす。
また、ポリフェニレンサルファイド繊維は堅い(剛直な)繊維であり、延伸ポリフェニレンサルファイド繊維は主体繊維としての役割を果たすため、その形状が保持されるが、繊度が5dtex以下であると、相対的に柔らかくなる。したがって、天然繊維、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維との組み合わせにおいて、繊維間の隙間が形成され難くなり、高密度化する。
他方、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維は繊度が1dtex以上であり、細い繊維ではないが、非結晶性であるため軟化しやすく、その形状が保持されないため、繊維間の隙間形成が問題とならない。逆に、繊度が1dtex以上とされていることで、繊維間の隙間を埋める役割を果たし易くなる。
〔請求項3記載の発明〕
ポリフェニレンサルファイド繊維を含む原料繊維を湿式抄紙して単層又は多層の電気絶縁紙を製造する方法であって、
前記ポリフェニレンサルファイド繊維とともに天然繊維を含む前記原料繊維が分散された繊維懸濁液を、JIS P 8121に準拠して測定したフリーネスが50〜350ccとなるまで混合叩解する工程、前記繊維懸濁液から湿式抄紙する工程を有する
JIS P 8118に準拠して測定した全層の密度が0.8〜1.3g/cm3である電気絶縁紙の製造方法。
(主な作用効果)
請求項1記載の発明と同様の作用効果が奏せられるほか、ポリフェニレンサルファイド繊維とともに天然繊維を含む原料繊維が分散された繊維懸濁液を混合叩解するため、ポリフェニレンサルファイド繊維が短繊維化し、しかも天然繊維の叩解が進む。なお、ポリフェニレンサルファイド繊維は堅いため、繊維製造過程で短繊維化すると、切断刃の交換を頻繁に行う必要が生じ、製造コストが嵩む。他方、ポリフェニレンサルファイド繊維を単独で叩解すると、ポリフェニレンサルファイド繊維が一部粉末(破片の状態)又は微細繊維状(光学顕微鏡による目視寸法で繊維長が1mm未満の状態)になり、繊維としての役割を果たさなくなる問題が生じる。また、湿式抄紙において微細繊維化したポリフェニレンサルファイド繊維は、紙層中での歩留りが低下し製品コストを上げる要因となる。
このように、ポリフェニレンサルファイド繊維が粉末又は微細繊維状とならないように短繊維化する手段として、天然繊維とともに叩解することが、天然繊維がクッションとなりポリフェニレンサルファイド繊維の粉末又は微細繊維状化を抑制するため好ましい。また、硬いポリフェニレンサルファイド繊維と柔らかい天然繊維とが混在することで、叩解に必要とするエネルギーコストを低く抑えられる。
〔請求項4記載の発明〕
前記ポリフェニレンサルファイド繊維として、結晶化度30%未満の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維及び結晶化度30%〜60%の延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を使用し、
前記湿式抄紙後に60〜100℃の乾燥処理を行い、さらに100〜250℃の熱カレンダーでカレンダー処理する、
請求項3記載の電気絶縁紙の製造方法。
(主な作用効果)
ポリフェニレンサルファイド繊維として、結晶化度30%未満の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維及び結晶化度30%〜60%の延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を使用するとともに、温度100〜250℃の熱カレンダーでカレンダー処理することで、延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の主体繊維としての役割、及び未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維のバインダー繊維としての役割が確実に発揮される。
また、未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維は、天然繊維との混合叩解処理において、発熱により軟化し、塑性変形するため、ねじれや屈曲が生じやすく、天然繊維や延伸ポリフェニレンサルファイド繊維と絡み、微細化したポリフェニレンサルファイド繊維の紙層中への歩留りを向上させる。
さらに、ねじれや屈曲が生じた未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維は、温度100〜250℃の熱カレンダーでカレンダー処理されることで、ねじれや屈曲が是正され、得られる電気絶縁紙が高密度化する。
しかも、湿式抄紙後の乾燥処理は100℃以下で行うことで、熱カレンダー処理に先立って未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維に熱履歴が加わるおそれがなく、バインダー繊維としての役割がより確実に発揮され、高価な電気絶縁性を有する合成繊維の使用量を抑え、安価な電気絶縁紙を得ることができる。
本発明によると、安価な電気絶縁紙及び電気絶縁紙の製造方法となる。
電気絶縁紙の製造方法を示すフロー図である。
次に、発明を実施するための形態を説明する。
本形態の電気絶縁紙は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維及び天然繊維を原料繊維として含む。PPS繊維は、未延伸PPS繊維及び延伸PPS繊維のいずれをも使用することができるが、未延伸PPS繊維を使用するのが好ましく、未延伸PPS繊維及び延伸PPS繊維の両方を使用するのがより好ましい。
未延伸PPS繊維は、結晶化が進んでいない繊維であり、相対的に軟化しやすい。したがって、バインダー繊維としての機能を期待することができる。具体的には、後述する熱カレンダー処理(80)を行った際に未延伸PPS繊維が軟化して繊維間の隙間が埋まる。したがって、得られる電気絶縁紙が高密度化し、絶縁破壊強度が向上する。また、未延伸PPS繊維が軟化して延伸PPS繊維や天然繊維等を接着するため、紙力強度が向上する。
未延伸PPS繊維の結晶化度は、30%未満が好ましく、より好ましくは10%〜28%である。未延伸繊維の結晶化度は低い程、湿式抄紙(30)後の乾燥処理(50)、及び、熱カレンダー処理で繊維が軟化し易く、バインダー繊維としての機能が発揮され易いが、一方で低すぎると、加熱ロール(51)、熱カレンダー(61)、一対のロール(81)に貼り付き易くなり、工程通過性が悪化する。他方、未延伸PPS繊維の結晶化度が高過ぎ、軟化点が高過ぎると、熱カレンダー処理において当該未延伸PPS繊維が軟化せず、バインダー繊維としての機能が発揮されないおそれがある。
本発明において、結晶化度とは、DSC(示差走査熱量)測定装置を用い、下記計算式で算出した値である。なお、ポリフェニレンサルファイド繊維の飽和結晶化度は、60%とした。
結晶化度=(1−再結晶化発熱量)/(融解吸熱量)×60%
未延伸PPS繊維の繊度は、好ましくは1〜10dtex、より好ましくは1〜5dtex、特に好ましくは3dtexである。未延伸PPS繊維の繊度が細過ぎると、当該未延伸PPS繊維が軟化した際に、繊維間の隙間が十分に埋まらないおそれがある。また、未延伸PPS繊維の繊度が細過ぎると、当該未延伸PPS繊維を水に分散させて繊維懸濁液とする際に繊維同士が絡まり易く、得られる電気絶縁紙の地合が低下するおそれがある。他方、未延伸PPS繊維の繊度が太過ぎると、当該未延伸PPS繊維は軟化するとしても繊維としての形状が必要以上に保持され、繊維同士が重なり合う部分において隙間が形成されてしまうおそれがある。
未延伸PPS繊維の繊維長(叩解前)は、好ましくは1〜50mm、より好ましくは5〜30mm、特に好ましくは6mmである。未延伸PPS繊維の繊維長が短過ぎると、歩留りが悪く、原料コストの増加につながる。また、PPS繊維は堅い繊維であるため、繊維長を短くするためのコストが嵩み、この点でも原料コストの増加につながる。他方、未延伸PPS繊維の繊維長が長過ぎると、当該未延伸PPS繊維を水に分散させて繊維懸濁液とする際に繊維同士が絡まり易く、得られる電気絶縁紙の地合が低下するおそれがある。
一方、延伸PPS繊維は、結晶化が進んだ繊維であり、相対的に軟化しにくい。したがって、得られる電気絶縁紙に耐熱性や寸法安定性を付与する主体繊維としての機能を期待することができる。
延伸PPS繊維の結晶化度は、未延伸PPS繊維の結晶化度より高い割合、30%〜60%の範囲であるのが好ましく、40%〜50%であるのがより好ましい。延伸PPS繊維の結晶化度が低過ぎ、軟化点が低過ぎると、後述する熱カレンダー処理(80)において当該延伸PPS繊維が軟化してしまい、得られる電気絶縁紙に耐熱性や寸法安定性を付与できなくなるおそれがある。
延伸PPS繊維の繊度は、好ましくは0.5〜5dtex、より好ましくは0.5〜3dtex、特に好ましくは1dtexである。延伸PPS繊維の繊度が細過ぎると、当該延伸PPS繊維を水に分散させて繊維懸濁液とする際に繊維同士が絡まり易く、得られる電気絶縁紙の地合が低下するおそれがある。他方、延伸PPS繊維の繊度が太過ぎると、当該繊維は極めて堅いため、繊維間に大きな隙間が形成され易くなり、当該隙間は未延伸PPS繊維の軟化等によっても埋まらないおそれがある。
延伸PPS繊維の繊度は、未延伸PPS繊維の繊度よりも細いと好ましい。延伸PPS繊維の繊度が未延伸PPS繊維の繊度よりも細い場合は、未延伸PPS繊維を延伸することによって、延伸PPS繊維を製造することができる。したがって、PPS繊維製造工程の一部を共通化することができ、原料コストを削減することができる。また、延伸PPS繊維は主体繊維としての機能を有し、その形状が保持されるが、延伸PPS繊維をより細くし、より柔らかくすることによって、繊維間の隙間が形成され難くなり、得られる電気絶縁紙が高密度化する。他方、未延伸PPS繊維もPPS繊維の一種であり、太くなるとより堅くなるが、未延伸PPS繊維はバインダー繊維としての機能を有し、軟化するため、繊維間に隙間が形成される問題は相対的に小さなものとなる。逆に、未延伸PPS繊維が相対的に太くなると、繊維間の隙間を埋める機能を発揮し易くなる。
延伸PPS繊維の繊維長(叩解前)は、好ましくは1〜50mm、より好ましくは5〜30mm、特に好ましくは6mmである。延伸PPS繊維の繊維長が1mm未満と短過ぎると、歩留りが悪く、原料コストの増加につながる。また、PPS繊維は堅い繊維であるため、繊維長を短くするためのコストが嵩み、この点でも原料コストの増加につながる。他方、延伸PPS繊維の繊維長が長過ぎると、当該延伸PPS繊維を水に分散させて繊維懸濁液とする際に繊維同士が絡まり易く、得られる電気絶縁紙の地合が低下するおそれがある。
未延伸PPS繊維の繊維長と延伸PPS繊維の繊維長とは、実質的に同じであるのが好ましい。繊維長を同じとすることで、両繊維を水に分散させて繊維懸濁液とする際の分散性を制御し易くなる。また、両繊維は天然繊維とともに叩解して短繊維化するが、両繊維の繊維長が同じであると、天然繊維と同程度の繊維長となるまで短繊維化されることになり、湿式抄紙する際に、両繊維及び天然繊維が均等に抄網上に乗ることになる。
未延伸PPS繊維と延伸PPS繊維との配合質量比は、好ましくは10〜90:90〜10、より好ましくは30〜70:70〜30、特に好ましくは50:50である。未延伸PPS繊維の配合質量比が少な過ぎると、繊維間の隙間が軟化した未延伸PPS繊維によって十分に埋まらず、電気絶縁紙を高密度化するのが困難になるおそれがある。また、未延伸PPS繊維の配合質量比が少な過ぎると、延伸PPS繊維や天然繊維が十分に接着されず、紙力強度が低下するおそれがある。他方、延伸PPS繊維の配合質量比が少な過ぎると、得られる電気絶縁紙の耐熱性や寸法安定性が不十分になるおそれがある。
本形態においては、未延伸PPS繊維としては、例えば、東レ株式会社製のトルコン(TORCON(登録商標))や東洋紡株式会社製のプロコン(登録商標)等を使用することができる。また、延伸PPS繊維としても、例えば、東レ株式会社製のトルコン(TORCON(登録商標))や東洋紡株式会社製のプロコン(登録商標)等を使用することができる。
天然繊維としては、例えば、クラフトパルプ、機械パルプ、古紙パルプ等の木材パルプのほか、サイザル麻、マニラ麻、サトウキビ、コットン、シルク、竹、ケナフ等の非木材パルプも使用することができる。ただし、紙力強度や寸法安定性等の観点及び生産性の観点からは、木材パルプを使用するのが好ましい。
木材パルプを使用する場合、クラフトパルプとしては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)等の未晒クラフトパルプ、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)等の半晒クラフトパルプ、針葉樹亜硫酸クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸クラフトパルプ等の亜硫酸クラフトパルプ等を使用することができる。
また、機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等を使用することができる。
さらに、古紙パルプとしては、例えば、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙、茶古紙、クラフト封筒古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、上白古紙、ケント古紙、構造古紙、地券古紙等から製造された離解古紙パルプ、脱墨古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ、脱墨・漂白古紙パルプ等を使用することができる。
このように本形態においては、種々の木材パルプを使用することができるが、なかでもクラフトパルプがリグニン等の硬質樹脂を含まないため繊維が柔軟で好ましい。原料古紙の由来が不明な古紙パルプを使用すると、品質が不安定になるおそれや、金属等の導電性物質が混入するおそれがある。また、機械パルプを使用すると、元来剛直で紙層の嵩高に優れるため、得られる電気絶縁紙が比較的ポーラスになり、絶縁破壊強度が低下するおそれがある。
クラフトパルプを使用する場合、針葉樹クラフトパルプ(NKP)と広葉樹クラフトパルプ(LKP)との配合質量比は、針葉樹クラフトパルプ及び広葉樹クラフトパルプの一方のみを使用することもできるが、好ましくは10〜90:90〜10、より好ましくは30〜70:70〜30、特に好ましくは40:60〜60:40である。針葉樹クラフトパルプは広葉樹クラフトパルプと比べて繊維が柔らかで長いため、PPS繊維と絡み合い易く、紙力強度の向上を図るのに好適である。他方、広葉樹クラフトパルプは針葉樹クラフトパルプと比べて繊維長が短いためPPS繊維との絡み合いは劣るものの、繊維間の隙間を埋める作用、微細繊維の歩留り向上作用を有し、絶縁破壊強度の向上を図るのに好適である。ただし、針葉樹パルプの質量割合が90質量%を超えると、紙力強度は向上するものの繊維間に間隙が形成され易くなり、絶縁破壊強度が不十分になるおそれがある。他方、広葉樹パルプの質量割合が90質量%を超えると、紙層間の強度を含めて紙力強度が不十分になるおそれがある。
なお、本発明者らは、PPS繊維と組み合わせる天然繊維として針葉樹パルプ及び広葉樹パルプからなるクラフトパルプを使用することで、導電性を有する異物の混入が少なくなること、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプからなるクラフトパルプはPPS繊維と親和性を有すること、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプを上記の範囲で組合せ使用することで、紙力強度及び絶縁破壊強度がともに十分な安価な電気絶縁紙が得られることを知見している。
天然繊維とPPS繊維との配合質量比(天然繊維:PPS繊維)は、好ましくは90〜10:10〜90、より好ましくは80〜20:20〜80、特に好ましくは70:30である。本形態の電気絶縁紙は天然繊維の配合質量比を多くしても十分な電気絶縁性を有するものとなり、また、天然繊維の配合質量比を多くすることで、原料コストを削減することができる。
次に、図1を参照しながら、本形態の電気絶縁紙の製造方法を説明する。
本形態の電気絶縁紙を製造するにあたっては、まず、パルパー等の混合槽10に、水W、PPS繊維(P)、天然繊維(F)を含む原料繊維を投入し、混合してPPS繊維及び天然繊維が水に分散された繊維懸濁液(繊維スラリー)D1を得る。
水に対するPPS繊維及び天然繊維の投入順は特に限定されないが、PPS繊維は繊維濃度が高くなると絡まり易くなるとの特性を有する。したがって、まず、PPS繊維を投入し、次いで、天然繊維を投入するのが好ましい。
水に対してPPS繊維を分散させた段階での繊維濃度は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは1〜2質量%である。繊維濃度が高過ぎると、PPS繊維が絡まるおそれがある。他方、繊維濃度が低過ぎると、PPS繊維の絡まり具合に大きな変化がないにもかかわらず、製造効率が低下する。なお、未延伸PPS繊維及び延伸PPS繊維は、投入の順序が特に限定されず、いずれかを先に投入しても、両方を同時に投入してもよい。
PPS繊維に次いで天然繊維を分散させた段階での繊維濃度は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%、特に好ましくは2〜4質量%である。 繊維濃度が高過ぎても天然繊維に大きな問題は生じないが、PPS繊維が絡まるおそれがある。他方、繊維濃度が低過ぎると、PPS繊維の絡まり具合に大きな変化がないにもかかわらず、製造効率が低下し、また、後述する叩解工程においてDDR等の叩解刃に繊維が掛からず、叩解が十分に行われなくなるおそれがある。
本工程においては、PPS繊維を水に分散させるために、分散剤を使用するのが好ましい。この分散剤は、PPS繊維を投入するに先立って添加することも、PPS繊維の投入と同時に添加することも、PPS繊維の投入に次いで添加することも、天然繊維の投入後に添加することもできる。
ただし、PPS繊維は繊維濃度が高くなると絡まり易くなるとの特性を有し、また、天然繊維も叩解が進むと絡まり易くなるとの特性を有するため、分散剤としては、PPS繊維及び天然繊維の両方に効果的に作用するものを使用するのが好適である。また、分散剤の混合時においては気泡によりPPS繊維が分離するおそれがあるため、分散剤とともに消泡剤を添加するのも好適である。
PPS繊維及び天然繊維の両方に効果的に作用する分散剤としては、例えば、ゾンテスKV(三晶株式会社製)を代表例とするカチオン系界面活性剤を好適に使用することができる。また、消泡剤としては、例えば、高級アルコール系水中油型エマルションからなる消泡剤が好適に用いられ、フォームクリンM−2035(伯東株式会社製)等を使用することができる。この際、分散剤は、繊維懸濁液に対して、固形分基準で0.1〜2.0質量%の割合で添加するのが好ましい。また、消泡剤は、繊維懸濁液に対して、固形分基準で0.1〜2.0質量%の割合で添加するのが好ましい。さらに、分散剤及び消泡剤は同時に添加することもできるが、2段階に分けて添加するのが好ましい。
混合槽10に、水、PPS繊維及び天然繊維を投入し、分散剤、必要により消泡剤を添加したら、好ましくは1〜30分間、より好ましくは5〜20分間、特に好ましくは10分間、攪拌する。この撹拌により、PPS繊維及び天然繊維の分散が均一化される。
次に、PPS繊維及び天然繊維を水に分散させた繊維懸濁液D1は、例えば、ビーター、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)等の叩解装置20で叩解する。
本形態のように、PPS繊維及び天然繊維を混合した状態で叩解することで、PPS繊維を天然繊維と同程度まで、例えば1〜6mm、好ましくは1〜3mm、より好ましくは1mmまで短繊維化することができ、しかも天然繊維の叩解をより進めることができる。この点、PPS繊維は極めて堅い繊維であるため、繊維製造過程で短繊維化しようとすると、切断刃を頻繁に交換する必要等が生じ、製造コストが増加する。他方、PPS繊維を単独で叩解すると、PPS繊維が一部粉末又は微細繊維状になってしまう問題が有り、繊維としての役割が低下する問題が生じる。一方、上記したように、PPS繊維は極めて堅い繊維であるため、天然繊維とともに叩解すると、天然繊維の叩解を促進する役割を果たし、天然繊維が十分にフィブリル化される。つまり、本形態の製造方法においては、PPS繊維及び天然繊維を混合した状態で叩解することに大きな利点がある。
また、天然繊維として針葉樹パルプ及び広葉樹パルプからなるクラフトパルプを使用する場合は、以上の叩解において、まず、繊維長の相対的に長い針葉樹パルプの叩解が進み、当該針葉樹パルプが毛羽立ってPPS繊維と絡み合うため紙力強度が向上し、しかも繊維長の相対的に短い広葉樹パルプにより間隙が埋まるため絶縁破壊強度が向上する。
なお、本発明者等が、PPS繊維及び天然繊維を混合した状態で叩解し、得られたスラリーをマイクロスコープで観察したところ、PPS繊維が約1mm程度にまで短繊維化されていた。また、PPS繊維をビーターで叩解したところ、山椒の粉のような微粉末になった。
PPS繊維及び天然繊維(以下「原料繊維」ともいう。)の叩解は、JIS P 8121に準拠して測定したカナディアンスタンダードフリーネス(CSF)が、好ましくは50〜350ccとなるまで、より好ましくは75〜200ccとなるまで、特に好ましくは100〜150ccとなるまで行う。
この点、叩解前においては、PPS繊維のフリーネスが900cc前後であり、天然繊維のフリーネスが600cc前後であり、両者が合わさって680〜750cc前後のフリーネスとなる。このように構成される原料繊維を好ましくは50〜350ccまで叩解するのであるが、PPS繊維は疎水性であるため、叩解を行ってもフリーネスに大きな変化がない。そこで、親水性である天然繊維のフリーネスが極めて低くなるまで、例えば、30〜50ccとなるまで叩解して、原料繊維のフリーネスを好ましくは50〜350ccとすることになる。したがって、原料繊維のフリーネスが50ccを下回るまで叩解するには、天然繊維の叩解を更に進めなければならず、大きな負荷、時間等が必要になり、製造コストが増加する。この点、天然繊維のフリーネスが30〜50ccとなるまで叩解すること自体、通常であれば大きな負荷、時間等を伴うことになるが、本形態ではPPS繊維とともに叩解することで叩解の容易化を図っており、負荷、時間等の問題が生じない。
本発明者がDDRを使用して原料繊維の叩解試験を行ったところ、1〜2時間でフリーネスを350cc以下にすることができた。
叩解後の繊維懸濁液D2には、必要により、各種薬品や填料等の添加物Xを添加することができる。具体的には、例えば、得られる電気絶縁紙に着色が要求される場合は、本添加工程において、染料や顔料を添加することができる。
また、本工程においては、填料を添加することもできる。この填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、尿素−ホルマリン樹脂やポリスチレン樹脂、フェノール樹脂からなる微小中空粒子等を使用することができる。
ただし、填料の添加は省略するのが好ましく、他方、何らかの理由で添加する場合はタルクを使用するのが好ましく、酸化チタンを使用するのがより好ましく、マイカ(雲母)を使用するのが特に好ましい。酸化チタン及びマイカはリン片状であり、得られる電気絶縁紙の絶縁性が向上する。特に、マイカは難燃性であるため、得られる電気絶縁紙の難燃性も向上する。また、タルクは酸化チタンやマイカほどの絶縁性はないが、増量材(フィラー)としての機能を有するほか、安価であるため、原料コストを削減することができる。
なお、填料としては、カーボン、カーボンナノチューブ、金属粉等も存在するが、これらの導電物質を使用すると絶縁性が低下するため、使用しないのが好ましい。
さらに、本工程においては、乾燥紙力増強剤や湿潤紙力増強剤等の紙力増強剤を添加することができる。乾燥紙力増強剤の添加により、得られる電気絶縁紙の層間強度や引張強度等が向上する。乾燥紙力増強剤として、例えば、ポリアクリルアミド類の乾燥紙力増強剤を使用する場合は、好ましくは固形分基準で、1〜100kg/パルプトン、より好ましくは20〜70kg/パルプトン、特に好ましくは40kg/パルプトン添加する。
他方、湿潤紙力増強剤の添加により、例えば、後工程において難燃剤を含浸する際に断紙が生じるのを防止することができる。湿潤紙力増強剤として、例えば、ポリアミドエピクロルヒドリン類の湿潤紙力増強剤を使用する場合は、好ましくは固形分基準で1〜100kg/パルプトン、より好ましくは3〜50kg/パルプトン、特に好ましくは4〜10kg/パルプトン添加する。
乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤の添加の順序は特に限定されない。また、紙力増強剤は、天然繊維の水素結合を強めるが分散性を低下させるため、抄紙直前の種箱等において添加することもできる。
さらに、本工程においては、染料の定着剤や填料の定着剤を添加することができる。染料の定着剤としては、硫酸バンドが好適である。染料を添加しない場合は、この硫酸バンドの添加を省略することができる。
各種薬品や填料等の添加物Xを添加するにあたっては、繊維懸濁液D2を叩解装置20から他の貯留容器内に移すこともできるが、PPS繊維は極めて絡まり易いため、図1に示すように、叩解装置20内を流れる繊維懸濁液D2に対して添加物Xを添加する方が好ましい。なお、この添加物Xの添加に際しては、繊維懸濁液D2が叩解刃21間を通らないように調節するとよい。
本工程において、添加物Xを添加する順序は特に限定されないが、染料、填料、紙力剤、定着剤の順に添加するのが好ましい。特に、定着剤を最初に添加すると、染料や填料が分散する前に、つまり、染料や填料を添加した瞬間に繊維に定着してしまい、染料や填料の定着が不均一になるおそれがある。填料の定着剤及び染料の定着剤の添加の順序は特に限定されないが、通常、填料の定着剤、染料の定着剤の順である。
叩解や添加物の添加等を行った繊維懸濁液D3は、抄紙機を使用して抄紙する。この抄紙機としては、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機等を使用することができる。
本工程における抄紙は、絶縁破壊強度を高めるという観点から高坪量となるように行うのが好ましいが、PPS繊維を使用する本形態においては、坪量を高くすると地合が著しく低下する。これは、前述したように天然繊維のフリーネス(例えば30〜50ccであり、水持ちが極めてよい。)と、PPS繊維のフリーネス(例えば900cc前後であり、水持ちが極めて悪い。)とが著しく異なるため、原料繊維のフリーネスを通常の天然繊維のフリーネスと同様に考えることができず、繊維ウェブの脱水を制御するのが難しいためである。したがって、単層抄きとするよりも多層抄きとして各層の坪量が少なくなるように抄紙するのが好ましい。
この点、本発明者等が実機を使用してPPS繊維及び天然繊維をフリーネスが350ccを超える程度に混合叩解し、抄紙したところ、抄紙は可能であったものの絶縁破壊強度が7kVmm程度となり、電気絶縁紙としては全く使えないものとなった。
また、本発明における絶縁紙は単層でも製造可能であるが、多層抄きとする場合は、円網抄紙機を使用するのが好ましい。円網抄紙機は、図1に示すように、抄紙槽30を複数並べれば抄き合わせを行うことができ、容易に高坪量とすることができるとともに繊維の配向性が生じ難く、PPS繊維及び天然繊維を均一な分散状態で抄紙できるため寸法安定性に優れた電気絶縁紙を得ることができる。円網抄紙機を使用する場合は、例えば、6層抄きで坪量を600g/m2まで高めることができ、また、7層抄きで坪量を1400g/m2まで高めることができる。
円網抄紙機を使用する場合においては、坪量が多いと抄網31上における水抜けが悪く、クーチロール32をかけた際に地合が低下し易くなる。したがって、円網抄紙機を使用する場合は、JIS P 8124に準拠して測定した各層の坪量を10〜230g/m2とするのが好ましく、20〜80g/m2とするのがより好ましく、30〜60g/m2とするのが特に好ましい。
なお、地合が悪い電気絶縁紙は密度が不均一であり、密度が低い部位を電気が通り抜けるため、絶縁破壊強度が低下する。この点、後述する熱カレンダー処理(80)を行うことによって電気絶縁紙の表面を平滑にすることはできるが、密度の不均一を取り除くことはできない。また、特に抄紙機として円網抄紙機を使用した場合は、上記したようにPPS繊維及び天然繊維の配向性が生じ難く、均一な分散状態で抄紙されるため、地合の低下が防止され、得られる電気絶縁紙の密度が均一になる。
円網抄紙機を使用する場合において、地合を向上させるためには、例えば、抄網31内を強く減圧し、脱水性を向上させる方法によることができる。また、抄紙槽30の数を増やして一層あたりの坪量を減らし、脱水性を向上させる方法によることもできる。
円網抄紙機の抄網31は、30〜120メッシュのものを使用するのが好ましく、40〜100メッシュのものを使用するのがより好ましく、50〜80メッシュのものを使用するのが特に好ましい。円網抄紙機の抄網が30メッシュ以上であると、微細な天然繊維が留められ、得られる電気絶縁紙が高密度化する。また、円網抄紙機の抄網が120メッシュ以下であると、脱水処理に際する地合の低下が防止される。
メッシュが多くなると、つまり網目が細かくなると、水抜けが悪くなるためPPS繊維及び天然繊維の紙層内での均一性(均一な分散状態)が損なわれ、クーチロール32をかけた際に地合が低下する傾向がある。地合の低下は絶縁破壊強度の低下につながる。他方、メッシュが少なくなると、つまり網目が粗くなると、微細繊維が抜け易くなり、この場合もPPS繊維及び天然繊維の紙層内での均一性(均一な分散状態)が損なわれ、また、密度が低下して絶縁破壊強度が低下する傾向がある。このようなことから、抄網31のメッシュを上記範囲とするのが好ましい。なお、延伸PPS繊維は剛直であり、繊維間に隙間が形成され易いが、この隙間は未延伸PPS繊維の軟化によって埋められ、更に上記微細繊維によっても埋められる。したがって、本形態においては、微細繊維も重要な役割を有し、メッシュ数を少なくし過ぎないことが重要である。
円網抄紙機の抄網31は、各抄紙槽30とも同様のものを使用することもできるが、最表面層及び最裏面層を形成する抄網31のメッシュ数を多くして表面性を向上させることもできる。例えば、6層抄きとする場合は、第1層及び第6層を80〜120メッシュ、好ましくは80メッシュとし、第2層〜第5層を30〜50メッシュ、好ましくは50メッシュとすることができる。また、7層抄きとする場合は、第1層及び第7層を80〜120メッシュ、好ましくは80メッシュとし、第2層〜第6層を30〜50メッシュ、好ましくは50メッシュとすることができる。
また、抄網31のメッシュ数を変更することで、紙層内のPPS繊維及び天然繊維の均一性や紙層間強度を任意に調整することができ、さらに、中間層に安価な原料である古紙パルプを使用して製造コストの削減を図ることができる。
抄紙し、必要により抄き合わせて形成した繊維ウェブTは、公知の方法によって脱水及び乾燥することができる。ただし、脱水は、繊維ウェブTを一対のロール41間に通し、プレス圧及び吸引力を併用して脱水する脱水装置40を使用して行うのが好ましい。また、一対のロール41は、2段、3段(図示例)又はそれ以上の複数段(多段)備わるのが好ましい。
脱水した繊維ウェブTは、加熱ロール51を複数有する多筒(例えば、30筒。)の乾燥装置50で乾燥するのが好ましい。また、多筒の乾燥装置50を使用する場合は、乾燥温度を60〜100℃の範囲で段々と高くするのが好ましく、70〜100℃の範囲で段々と高くするのがより好ましく、80〜100℃の範囲で段々と高くするのが特に好ましい。乾燥温度が低過ぎると、乾燥不十分になるおそれや、乾燥時間が長くなるおそれがある。他方、乾燥温度が高過ぎると、未延伸PPS繊維に熱履歴が加わってしまうおそれがある。
以上のように、脱水及び乾燥は、線圧や乾燥温度等によって制御することができるが、繊維ウェブTの水分率を基準に制御するのが好ましい。また、繊維ウェブTの水分率を基準とする場合は、水分率が1〜10%となるように脱水及び乾燥するのが好ましく、3〜7%となるように脱水及び乾燥するのがより好ましく、4〜5%となるように脱水及び乾燥するのが特に好ましい。水分率を下げ過ぎても、水分率を上げ過ぎても繊維ウェブTが断紙するおそれがある。
水分率の制御は、例えば、水分率が上記範囲を下回る場合は、線圧を下げ、あるいは乾燥温度を下げることによって行うことができる。他方、水分率が上記範囲を上回る場合は、線圧を上げ、あるいは乾燥温度を上げることによって行うことができる。このように脱水の程度と乾燥の程度とを関連させることによって、未延伸PPS繊維に熱履歴が加わるのを確実に防止することができる。
繊維ウェブTの水分率を測定する方法は特に限定されないが、図示例では、熱カレンダー61の後段にセンサー62を設けており、このセンサー62によって繊維ウェブTの水分率を測定することができる。
本形態においては、乾燥装置50の後段に熱カレンダー61が設けられているが、この熱カレンダー61によって電気絶縁紙の表面平坦性を向上させることができるものの、より好適な形態として、本形態では使用しておらず、繊維ウェブTを素通りさせている。これは、熱カレンダー61で繊維ウェブTをプレス(加圧)すると、当該繊維ウェブTが高密度化してしまい、次いで説明する難燃剤Nが含浸し難くなるためである。したがって、得られる電気絶縁紙に難燃性が求められておらず、難燃剤Nの含浸を行わない場合は、当該熱カレンダー61によってカレンダー処理する。なお、このカレンダー処理は、後述する熱カレンダー80でのカレンダー処理と同様であるため、その際に説明する。
脱水及び乾燥を行った繊維ウェブTは、いったんリールR1に巻き取り、オフラインで以下に説明する難燃剤Nの含浸やカレンダー処理等を行う。なお、これらの処理は、オンラインで行うこともできる。
脱水及び乾燥を行った繊維ウェブTは、難燃剤Nを使用して難燃性を向上させることもできる。難燃剤Nとしては、例えば、三酸化アンチモン等のアンチモン系の難燃剤、酸化スズ、スズ酸化合物、酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、硼酸、硼酸亜鉛等を使用した難燃剤、ハロゲン系の難燃剤、リン酸グアニジン、リン酸アンモニウム等を使用したリン酸系の難燃剤、スルファミン酸グアニジン等のスルファミン酸塩、ポリホウ酸塩等を使用した非アンチモン系の難燃剤等を例示することができる。
ただし、アンチモン系の難燃剤やハロゲン系の難燃剤を使用すると、環境対策等の問題が生じる。また、リン酸系の難燃剤やスルファミン酸塩を使用した難燃剤は水分を吸収し易いため、これらの難燃剤を使用すると絶縁性が低下するおそれがある。したがって、ポリホウ酸塩を使用した難燃剤を使用するのが好ましい。ポリホウ酸塩を使用した難燃剤は、天然繊維等に対して難燃性を付与するほか、断熱性や絶縁性を付与する効果も有する。なお、ポリホウ酸塩としては、ホウ酸を脱水縮合したもの、ホウ酸塩を脱水縮合したもの、ホウ酸及びホウ酸塩を脱水縮合したもの等が存在する。
ポリホウ酸塩としては、例えば、ポリホウ酸ナトリウム、ポリホウ酸カルシウム、ポリホウ酸カリウム、ポリホウ酸バリウム、ポリホウ酸亜鉛等を例示することができる。ただし、含浸量の調節が容易であり、また、含浸を効率的に行うことができるという点で、ポリホウ酸ナトリウムを使用するのが好ましい。ポリホウ酸ナトリウムを含浸させた電気絶縁紙を燃焼しようとすると、ポリホウ酸ナトリウムが発泡して無機発泡構造を形成する。その結果、当該電気絶縁紙は、表面が炭化するものの、燃焼することはなく、黒煙や有害ガスを発生することもない。ポリホウ酸ナトリウムを使用した難燃剤Nとしては、例えば、株式会社トラストライフ製のファイアレスBパウダー等を使用することができる。
なお、三酸化アンチモンを使用した難燃剤は、燃焼の初期段階で溶融し、繊維表面に皮膜を形成するため、酸素を遮断する。また、内部吸熱反応によって炎の温度を下げ、自己消火性を発揮する。さらに、高温になった場合は、三酸化アンチモン自体がガス化して可燃性ガスを希釈する。しかも、三酸化アンチモンは水素イオンを含まないため、天然繊維の脱水炭化作用を促進し、燃焼継続のために必要なタールの生成を抑制する。このようなことから、電気絶縁紙に難燃性を付与するという観点では好ましいとされてきた。しかしながら、近年、例えば、日本国内では三酸化アンチモンが排水の要監視項目に指定されており、また、欧州においては発癌性が懸念され、電気製品を中心に含有量が規定されるに至っている。したがって、三酸化アンチモンを使用した難燃剤はできる限り使用しないのが好ましい。
上記各種難燃剤は2種以上を併用することもでき、特にポリホウ酸塩とスルファミン酸塩とを併用した難燃剤は好適である。この場合、ポリホウ酸塩100質量部に対するスルファミン酸塩の配合量は、好ましくは5〜40質量、より好ましくは10〜30質量、特に好ましくは15〜25質量部である。スルファミン酸塩の配合量が多くなると紙力強度は増すが、上記したように絶縁性が不十分になる傾向がある。他方、スルファミン酸塩の配合量が少なくなると、得られる電気絶縁紙の寸法安定性や柔軟性、紙力強度等が低下する傾向にある。
繊維ウェブTに対する難燃剤Nの含浸量は、3〜40質量%とするのが好ましく、4〜35質量%とするのがより好ましく、6〜30質量%とするのが特に好ましい。難燃剤Nの含浸量が少な過ぎると、難燃性が不十分になるおそれがある。他方、難燃剤Nの含浸量が多過ぎると、紙力強度が低下し、繊維ウェブTが破断するおそれがある。
難燃剤Nには、例えば、澱粉、ポリビニルアルコール、塩ビ・エチレン・酢ビ樹脂、塩化ビニリデン樹脂等のバインダー、ポリアクリルアミド等の保水剤、アルキルケテンダイマーやスチレン・アクリル系の表面サイズ剤等を必要により混合することができる。また、ポリホウ酸塩の定着性を向上させるために、浸透剤を混合することもできる。この浸透剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等のアルコールや、エチレングリコール、プロピレングリコール等のジオール、グリセリン等のトリオール、炭素数3〜11のアルジトール等のポリオール、ポリフェノール類、界面張力を低下させる界面活性剤等を使用することができる。
難燃剤Nを含浸させる方法は特に限定されず、例えば、スプレー、キスロール、アプリケーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、リバースロールコーター、フローコーター、刷毛等を使用した塗布によることができる。しかしながら、繊維ウェブTが高坪量(例えば150g/m2以上)である場合は、繊維ウェブT全体に難燃剤Nを浸透させるために、繊維ウェブTを難燃剤N中に浸漬させるのが好ましい。
この浸漬の方法は特に限定されず、例えば、図示例のように、リールR1から巻き出した繊維ウェブTを、難燃剤Nの水溶液を貯留させた貯槽70内に通す方法によることができる。
難燃剤Nによって難燃性を付与する場合、難燃性の程度をどの程度とするかは特に限定されないが、PPS繊維を使用した本形態の電気絶縁紙によると、UL規格(Underwriters Laboratories Inc.)94V−0を満足する。この点、難燃性の指標としては、限界酸素指数が存在し、この限界酸素指数とは所定の試験条件下において材料が燃焼を継続するのに必要な最低酸素濃度(容量%)を意味する。限界酸素指数21以下は可燃性、限界酸素指数22〜25は自己消火性、限界酸素指数26以上は難燃性とされるが、UL規格94V−0は限界酸素指数26以上であり、難燃性とされる。
難燃剤Nを含浸させた場合の繊維ウェブTは、乾燥装置75等を使用して乾燥する。この乾燥は、繊維ウェブTの表面が60〜100℃となるように行うのが好ましく、70〜100℃となるように行うのがより好ましく、80〜100℃となるように行うのが特に好ましい。乾燥温度が低過ぎると、乾燥不十分になるおそれや、乾燥時間が長くなるおそれがある。他方、乾燥温度が高過ぎると、未延伸PPS繊維に熱履歴が加わってしまうおそれがある。
難燃剤Nの含浸を行った繊維ウェブT又は難燃剤Nの含浸処理を施さない繊維ウェブTは、いったんリールR2に巻き取り、あるいは続けて熱カレンダー装置80によってカレンダー処理を行う。熱カレンダー装置80としては、一対のロール81が金属ロールと、ゴム、紙等を使用した弾性ロールとの組み合わせからなるソフトカレンダーを使用することもできるが、本形態では、高圧でニップする必要があるため、金属ロールと金属ロールとの組み合わせからなるハードカレンダーを使用するのが好ましい。ソフトカレンダーは金属ロールを高温にすることができず、未延伸PPS繊維が十分に軟化しないおそれがある。
一対のロール81の線圧は、好ましくは100〜300kg/cm、より好ましくは150〜200kg/cm、特に好ましくは180〜200kg/cmである。線圧が低過ぎると繊維ウェブTが十分に高密度化しないおそれがある。他方、線圧が高くても問題はないが、そのための特殊な装置を開発、使用する必要があり、製造コストの増加につながる。なお、高密度化を図るためには、図示例のように、複数ニップとするのが好適である。また、複数ニップとする場合は、線圧を順に高くするのが好ましい。
ハードカレンダーを使用する場合は、一対のロール81のいずれをも加熱して繊維ウェブTの両面から熱を加えるのが好ましい。この場合、ロール81の表面温度は、好ましくは100〜250℃、より好ましくは130〜230℃、特に好ましくは150〜230℃である。ロール81の表面温度が低過ぎると、線圧によって高密度化した繊維ウェブTの密度が復元してしまうおそれや未延伸PPS繊維が軟化しないおそれがある。他方、ロール81の表面温度が高過ぎると、天然繊維が炭化してしまうおそれや延伸PPS繊維が軟化してしまうおそれがある。なお、本工程において未延伸PPSに熱履歴が加わることによって、得られる電気絶縁紙Tの耐熱性が向上する。
熱カレンダー処理する際の繊維ウェブTの速度は、例えば、1〜20m/分、好ましくは3〜15m/分、より好ましくは5〜10m/分である。
カレンダー処理して形成された本形態の電気絶縁紙Tは、必要により、リールR3に巻き取り、出荷等に仕向けられる。得られた電気絶縁紙Tは、JIS C 2110−1に準拠して測定した絶縁破壊強度が、好ましくは10〜30kV/mm、より好ましくは15〜30kV/mm、特に好ましくは20〜30kV/mmである。また、JIS P 8124に準拠して測定した坪量が、好ましくは10〜1000g/m2、より好ましくは80〜400g/m2、特に好ましくは100〜300g/m2である。さらに、厚さは、好ましくは0.05〜1.0mm、より好ましくは0.08〜0.5mm、特に好ましくは0.1〜0.3mmである。そして、JIS P 8118に準拠して測定した密度は、好ましくは0.8〜1.3g/cm3、より好ましくは0.9〜1.3g/cm3、特に好ましくは1.0〜1.3g/cm3である。
次に、本発明の実施例及び比較例を説明することによって、本発明による作用効果を明らかにする。
原料繊維、添加薬品、製造方法等を種々変化させて、電気絶縁紙(試験片)を製造し、各試験片の物性を測定した。表1に原料繊維、添加薬品、製造方法、各試験片の物性を示した。また、詳細は、以下の通りとした。なお(R)は登録商標であることを示す。
(PPS繊維)
未延伸PPS繊維及び延伸PPS繊維のいずれとしても東レ(株)製のトルコン(R)を使用した。繊度(dtex)、繊維長(mm)は表1に示す通りである。
(繊維濃度)
水に天然繊維及びPPS繊維を分散させた段階での、当該天然繊維及びPPS繊維の濃度であり、質量基準である。
(乾燥紙力増強剤)
PAM(A):DS4395(星光PMC(株)製)である。
PAM(B):ポリストロン(R)117(荒川化学(株)製)である。
いずれも、原料繊維1tに対する添加量である。
(湿潤紙力増強剤)
エピクロロヒドリン:カイメン557H(理研グリーン(株)製)である。
エポキシ系:ハーマイドPY(ハリマ化成(株))である。
いずれも、原料繊維1tに対する添加量である。
(叩解方法)
混合叩解とは天然繊維及びPPS繊維を混合した状態で叩解した場合であり、別叩解とは天然繊維及びPPS繊維を各別に叩解した場合である。なお、比較例1、比較例6ではPPS繊維をDDRで30分間叩解した。また、比較例6では、別叩解した天然繊維とPPS繊維とを配合した原料繊維のフリーネスが表2の叩解後フリーネスとなるように天然繊維をDDRで叩解した。
(叩解後フリーネス)
叩解後の原料繊維について、JIS P 8121に準拠して測定した値である。
(熱カレンダー)
加熱ロールの表面温度である。
(難燃剤)
実施例22においては、電気絶縁紙に対しポリホウ酸ナトリウム(ファイアレスB((有)トラストライフ製))を6質量%含浸させた。この実施例22においては、熱カレンダー処理後に白色度の低下現象が生じず見栄えは維持できた。
(坪量)
JIS P 8124に準拠して測定した値である。
(密度)
JIS P 8118に準拠して測定した値である。
(絶縁破壊強度)
ヤマヨ試験器(有)製のYST-243−100RHOを使用し、JIS C 2110−1に準拠して測定した値である。
(結晶化度)
DSC(示差走査熱量)測定装置を用い、下記計算式で算出した。なお、ポリフェニレンサルファイド繊維の飽和結晶化度は、60%とした。
結晶化度=(1−再結晶化発熱量)/(融解吸熱量)×60%
Figure 2015052183
Figure 2015052183
Figure 2015052183
何れの実施例も、比較例1の高価なPPS繊維のみを用いて得られる電気絶縁紙と比較すると坪量当たりの製造コストが安価であり、天然繊維のみや密度が本発明の範囲を外れる電気絶縁紙は品質的に劣るものであった。
より具体的には、比較例1〜3は、天然繊維の混率が低く、得られる電気絶縁紙を安価とすることができないばかりではなく、得られた電気絶縁紙の密度が十分に高まらなかったため、絶縁破壊強度が劣る結果となった。一方、比較例4及び比較例5は、天然繊維の混率が高く、得られた電気絶縁紙の密度自体は十分に高まったが、PPS繊維の混率が低いが故に絶縁破壊強度が劣る結果となった。なお、特に記載はしていないが、比較例4は、PPS繊維を使用していないが故に得られた電気絶縁紙の紙力強度が不十分なものとなった。さらに、比較例6は、PPS繊維及び天然繊維の両方を使用したが、両者を別々に叩解したため、PPS繊維が粉末、あるいは微細繊維状になってしまい、得られた電気絶縁紙の密度自体は向上したものの、PPS繊維の役割が果たされず、絶縁破壊強度が劣る結果となった。
本発明は、例えば、モーター、コンデンサー、変圧器、ケーブル、液晶テレビ、プラズマテレビ、ノートパソコン、電子写真複写機、電池等に使用することができる電気絶縁紙及び電気絶縁紙の製造方法として適用可能である。
10…混合槽、20…叩解装置、21…叩解刃、30…抄紙槽、31…抄網、32…クーチロール、40…脱水装置、50…乾燥装置、61,80…熱カレンダー、62…水分率センサー、70…貯槽、75…乾燥装置、D1〜D3…繊維懸濁液、F…天然繊維、P…PPS繊維、T…繊維ウェブ(電気絶縁紙)。

Claims (4)

  1. ポリフェニレンサルファイド繊維を10〜90質量%含む原料繊維を湿式抄紙して得た単層又は多層の電気絶縁紙であって、
    前記原料繊維が天然繊維を10〜90質量%含み、
    JIS P 8118に準拠して測定した密度が0.8〜1.3g/cm3である、
    ことを特徴とする電気絶縁紙。
  2. 前記ポリフェニレンサルファイド繊維が、結晶化度30%未満の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維及び結晶化度30%〜60%の延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を含み、
    前記未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の繊度が1〜10dtexであり、前記延伸ポリフェニレンサルファイド繊維の繊度が0.5〜5dtexである、
    請求項1記載の電気絶縁紙。
  3. ポリフェニレンサルファイド繊維を含む原料繊維を湿式抄紙して単層又は多層の電気絶縁紙を製造する方法であって、
    前記ポリフェニレンサルファイド繊維とともに天然繊維を含む前記原料繊維が分散された繊維懸濁液を、JIS P 8121に準拠して測定したフリーネスが50〜350ccとなるまで混合叩解する工程、前記繊維懸濁液から湿式抄紙する工程を有する
    JIS P 8118に準拠して測定した全層の密度が0.8〜1.3g/cm3である電気絶縁紙の製造方法。
  4. 前記ポリフェニレンサルファイド繊維として、結晶化度30%未満の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維及び結晶化度30%〜60%の延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を使用し、
    前記湿式抄紙後に60〜100℃の乾燥処理を行い、さらに100〜250℃の熱カレンダーでカレンダー処理する
    請求項3記載の電気絶縁紙の製造方法。
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