以下、本発明に係る無線通信システムの実施形態について、図面を用いて説明する。
例えば警備システムなどの無線通信システムでは、無線伝送される画像の画質及び通信チャネルを無線伝送環境に応じて動的に制御するときは、受信側で画像を参照する利用者がどのような使い方をするかということを考慮することが好ましい。例えば住宅などで利用される警備システムで画像の監視をする場合は、警備室又は監視センタで監視員が監視画像を監視するための警備システムとは異なり、監視区域となる住宅の屋外などに設置されたカメラ周辺の状況が気になる場合に利用者が極短時間だけそのカメラからの画像を確認するような使い方が主となる。したがって、住宅などで利用される警備システムでは、時間コストをかけて高精細な画像を伝送するより、多少低い画質であってもすぐに伝送できる方が好まれる傾向にある。このため、警備システムのような無線通信システムでは、無線伝送環境に応じて通信チャネルを変更する処理を頻繁に行うと、無線通信できないブランク時間が頻繁に発生し、利用者の使い勝手が著しく低下することになる。
そこで、本実施形態の無線通信システムは、第1の時間内における無線送信機から無線コントローラへの伝送量に応じて画像データの画質を調整し、第1の時間より長い第2の時間内に無線コントローラで受信された信号の品質に応じて通信チャネルを変更する。すなわち、無線通信システムでは、通信チャネルの変更を判定するときの無線伝送環境の監視時間を、画質の調整を判定するときの無線伝送環境の監視時間より長くする。これにより、無線通信システムでは、無線送信機と無線コントローラの間の通信効率が低下している場合であっても、画質の調整を優先的に行って、極力通信チャネルを変更せずに無線通信を継続させることを図る。
図1は、警備システム1の概略構成図である。警備システム1は、監視区域2となる住宅などに設置され、監視区域2内の異常の有無を監視する。警備システム1は、画像表示装置10と、複数のカメラユニット20とを有する。警備システム1は無線通信システムの一例であり、画像表示装置10及び複数のカメラユニット20は、無線LANなどの無線ネットワークを介して互いに無線通信可能である。以下では、警備システム1による監視区域2が住宅である場合を例として説明するが、監視区域2は、店舗又は事業所などの住宅以外の場所でもよい。
画像表示装置10は、無線コントローラの一例であり、住宅内の壁面などに設置される。画像表示装置10は、カメラユニット20から画像データを受信して表示する。また、画像表示装置10は、インターネットなどの通信回線網50を介して監視センタ40内のセンタ装置41に接続されている。画像表示装置10は、例えば、監視区域2に設置された図示しない防犯センサから侵入者などの異常を検知したことを示す検知信号を受信すると遠隔のセンタ装置41に異常信号を送信する警備装置である。あるいは、画像表示装置10は、インターホン又は画像監視モニタなどであってもよい。
カメラユニット20は、無線送信機の一例であり、監視区域2である住宅の外周などの各所に設置される。カメラユニット20は、撮影した画像データを画像表示装置10に送信する。
監視センタ40は、警備会社などが運営するセンタ装置41を備えた施設であり、管制員が監視区域2を常時監視している。センタ装置41は、一つ又は複数のコンピュータで構成されている。監視センタ40では、画像表示装置10からセンタ装置41が受信した異常信号に基づいて、対処すべき監視区域2の情報が表示部42に表示され、利用者に対する確認処理又は監視区域2への警備員の対処指示などの必要な措置がとられる。
図2は、画像表示装置10の概略構成図である。画像表示装置10は、無線通信部11と、センタ通信部12と、表示部13と、操作部14と、記憶部15と、制御部16とを有する。
無線通信部11は、例えばIEEE802.11諸規格のいずれかに準拠したいわゆる無線LANのアクセスポイントとして構成される。無線通信部11は、IEEE802.11諸規格のいずれかに従って、カメラユニット20と無線通信を行う。
センタ通信部12は、通信回線網50に接続され、通信回線網50を介してセンタ装置41に非常通報などを行う。センタ通信部12によるセンタ装置41との通信には、予め画像表示装置10に固有に設定された識別情報が付加される。
表示部13は、液晶ディスプレイにて構成される表示デバイスである。表示部13は、例えば操作部14と一体化された液晶タッチパネルディスプレイにより構成される。表示部13は、カメラユニット20から受信された画像データ、及び操作設定用の画面などを表示する。
操作部14は、例えば表示部13と一体化された液晶タッチパネルディスプレイにより構成され、液晶タッチパネルディスプレイ上に操作シンボルとして表示される各種の入力用のアイコンを有する。操作部14は、画像を確認する対象のカメラユニット20の選択又は非常通報の操作などに際し、利用者により操作される。利用者によりアイコンが選択されると、操作部14は、対応する信号を制御部16に入力する。
例えば、利用者が操作部14を操作してある特定のカメラユニット20を選択することで、そのカメラユニット20から無線通信部11を介して画像データが取得され、現在の撮影画像が液晶タッチパネルディスプレイに表示される。また、操作部14は録画/停止のアイコンを有し、画像データが表示されている間に利用者がこれを操作すると、表示されている画像データの記録又は記録停止が行われる。また、操作部14は非常通報のアイコンを有し、利用者がこれを操作するとセンタ装置41に非常通報が行われる。
記憶部15は、ROM、RAM又はHDDにて構成され、自己を特定するための識別情報と各種プログラムなどを記憶しており、さらに、画像表示装置10を動作させるための各種情報を記憶する。例えば、記憶部15は、操作部14から記録指示のあった画像データと、予め設定された無線通信部11のネットワーク名(ESSID)及び認証情報などの設定情報と、無線通信部11による通信で使用される通信情報とを記憶する。
通信情報は、例えば、カメラユニット20ごとに前回までの通信時における画像パラメータと通信した時間を示す時間情報とを対応付けた画像パラメータ履歴、及び警備システム1が使用可能な無線LANの通信チャネル(無線周波数の帯域)を記録したチャネルテーブルなどの情報である。画像パラメータは、例えば、空間的な画質調整である精細度(画像サイズと圧縮率)、及び時間的な画質調整であるフレームレート(カメラユニット20による撮影間隔)などの設定情報である。例えば、精細度とフレームレートは、それぞれ、警備システム1において使用可能な値の範囲内で離散的に定められたいずれかの値に設定される。本実施形態では、精細度とフレームレートのことを合わせて「画質」と呼ぶ。
制御部16は、CPU、ROM及びRAMなどを含むマイクロコンピュータ並びにその周辺回路で構成され、上述した各部を制御する。
図3は、画像表示装置10の制御部16の機能ブロック図である。制御部16は、上記のマイクロコンピュータ及びマイクロコンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムによって実現される機能モジュールとして、画像受信処理部161と、受信監視部162と、画質調整判定部163と、チャネル変更判定部164と、チャネル変更処理部165とを有する。
画像受信処理部161は、操作部14によりカメラユニット20が指定されると、そのカメラユニット20に画像要求信号を送信して、カメラユニット20との間の画像受信処理を開始する。このとき、画像受信処理部161は、記憶部15に記憶されている画像パラメータ履歴を参照して、そのカメラユニット20について例えば直前回の画像受信処理で使用された画像パラメータのうち画質が最も低い画像パラメータを抽出する。そして、画像受信処理部161は、対象のカメラユニット20がその画像パラメータを使用するように指示するための画質調整指示を、そのカメラユニット20に送信する。また、画像受信処理部161は、操作部14により画像受信処理の終了が指示されると、画像伝送中のカメラユニット20に画像停止信号を送信して、カメラユニット20との間の画像受信処理を終了する。
受信監視部162は、画像受信処理の実行中にカメラユニット20から受信された画像データのデータ量をカウントする。そして、受信監視部162は、後述する画質調整処理と通信品質判定処理をそれぞれ画質調整判定部163とチャネル変更判定部164に実行させることにより、画像表示装置10が適切に画像データを受信できているか否かを監視する。
受信監視部162は、図示しないタイマーにより経過時間をカウントし、例えば、現在指定されている画像データのフレームレートから、単位時間T1(例えば5秒)内に画像表示装置10が受信すべき画像フレーム数(すなわち、フレームレート×T1)に対する単位時間T1内に実際に受信された画像フレーム数の比率を求める。この比率のことを、以下では「フレーム受信率」という。そして、受信監視部162は、単位時間T1ごとにそのフレーム受信率を画質調整判定部163に出力し、カメラユニット20の画像パラメータを変更するための画質調整処理を画質調整判定部163に実行させる。このように、受信監視部162は、単位時間T1内に画像データを受信できた相対的な度合いに応じて、画質調整判定部163に画像パラメータを変更させる。
また、受信監視部162は、単位時間T2(例えば15秒)内にカメラユニット20から実際に受信された画像フレーム数をカウントする。単位時間T2は、画質調整処理についての単位時間T1より長い時間に設定される。そして、受信監視部162は、単位時間T2ごとにその画像フレーム数をチャネル変更判定部164に出力し、チャネル変更判定部164に通信品質判定処理を実行させる。このように、受信監視部162は、単位時間T2内に実際に画像データを受信した量に応じて、チャネル変更判定部164にチャネル変更の要否を判定させる。
なお、受信監視部162は、無線通信のビットレートから、単位時間T1内に画像表示装置10が受信すべき総データ量(すなわち、ビットレート×T1)に対する単位時間T1内に実際に受信された画像データのデータ量の比率を求め、フレーム受信率に代えてこの比率を画質調整判定部163に出力してもよい。また、受信監視部162は、単位時間T2内にカメラユニット20から実際に受信された画像データのデータ量(バイト数)の値をチャネル変更判定部164に出力してもよい。
画質調整判定部163は、単位時間T1(例えば5秒)ごとに画質調整処理を実行する。単位時間T1は、第1の時間の一例である。画質調整処理では、画質調整判定部163は、単位時間T1内にカメラユニット20から受信された画像データのデータ量と画質調整閾値との比較結果に応じた画質調整指示を、カメラユニット20に出力する。そのために、画質調整判定部163は、まず、受信監視部162から取得した上記のフレーム受信率(すなわち、単位時間T1内に画像表示装置10が受信すべき画像フレーム数に対する実際に受信された画像フレーム数の比率)を画質調整閾値と比較して、画質調整の要否を判定する。
画質調整判定部163は、画質調整閾値として、例えば、以下で説明する上調整閾値、下調整閾値及び最低閾値を使用する。上調整閾値は、画質を向上させる画質調整指示を出力するか否かを判定するためのフレーム受信率についての閾値である。上調整閾値は、第1の画質調整閾値の一例であり、カメラユニット20から送信された画像データのほとんどを画像表示装置10が受信できている状態に対応する例えば0.9などの高い値に設定される。下調整閾値は、第2の画質調整閾値の一例であり、画質を低下させる画質調整指示を出力するか否かを判定するためのフレーム受信率についての閾値である。下調整閾値は、上調整閾値より小さく、送信された画像データをあまり受信できていない状態に対応する例えば0.5などの値に設定される。また、最低閾値は、画質を設定可能な最低のものに低下させる画質調整指示を出力するか否かを判定するためのフレーム受信率についての閾値である。最低閾値は、下調整閾値より小さく、送信された画像データをほとんど受信できていないことに対応する例えば0.25などの値に設定される。
例えば、画質調整判定部163は、上記のフレーム受信率が上調整閾値以上(例えば0.9以上)であれば、画質を向上させる調整を行うと判定する。このとき、画質調整判定部163は、現在設定されている精細度又はフレームレートを1段階上げたものを、新たな画像パラメータとして決定する。
画質調整判定部163は、画質を向上させるときの新たな画像パラメータを、例えば次のような手順で決定する。まず、フレームレートが設定可能な範囲内で最大でないならば、精細度は変化させず、フレームレートを1段階上げる。フレームレートは最大であるが精細度は設定可能な範囲内で最大でないならば、フレームレートは変化させず、精細度を1段階上げる。フレームレートと精細度の両方が最大であるならば、画質はこれ以上上げられないので、フレームレートと精細度は両方とも変化させない。上記の手順では、精細度よりフレームレートを優先的に大きくしているが、逆に、フレームレートより精細度を優先的に大きくしてもよい。
また、画質調整判定部163は、上記のフレーム受信率が最低閾値より大きくかつ下調整閾値以下(例えば0.25より大きく0.5以下)であれば、画質を低下させる調整を行うと判定する。このとき、画質調整判定部163は、現在設定されている精細度又はフレームレートを1段階下げたものを、新たな画像パラメータとして決定する。
画質調整判定部163は、画質を低下させるときの新たな画像パラメータを、例えば次のような手順で決定する。まず、精細度が設定可能な範囲内で最小でないならば、フレームレートは変化させず、精細度を1段階下げる。精細度は最小であるがフレームレートは設定可能な範囲内で最小でないならば、精細度は変化させず、フレームレートを1段階下げる。フレームレートと精細度の両方が最小であるならば、画質はこれ以上下げられないので、フレームレートと精細度は両方とも変化させない。上記の手順では、フレームレートより精細度を優先的に小さくしているが、逆に、精細度よりフレームレートを優先的に小さくしてもよい。
また、画質調整判定部163は、上記のフレーム受信率が最低閾値以下(例えば0.25以下)であれば、画質を設定可能な最低のものに低下させる調整を行うと判定する。このとき、画質調整判定部163は、設定可能な範囲内で最低の精細度及びフレームレートを、新たな画像パラメータとして決定する。
そして、画質調整判定部163は、新たな画像パラメータをカメラユニット20が使用するように指示するための画質調整指示をカメラユニット20に送信するとともに、新たな画像パラメータを記憶部15の画像パラメータ履歴に記憶する。
一方、画質調整判定部163は、上記のフレーム受信率が下調整閾値より大きくかつ上調整閾値未満(例えば0.5より大きく0.9未満)であれば、画質を調整しないと判定し、そのまま画質調整処理を終了する。
チャネル変更判定部164は、単位時間T2(例えば15秒)ごとに通信品質判定処理を実行する。単位時間T2は、第1の時間より長い第2の時間の一例である。通信品質判定処理では、チャネル変更判定部164は、単位時間T1より長い単位時間T2内に画像表示装置10で受信された信号の品質に基づき、カメラユニット20と画像表示装置10の間の通信チャネルを変更するか否かを判定する。例えば、チャネル変更判定部164は、単位時間T2内にカメラユニット20から受信された画像データのデータ量とチャネル変更閾値との比較結果に基づき、通信チャネルを変更するか否かを判定する。そのために、チャネル変更判定部164は、まず、受信監視部162から取得した単位時間T2内の画像フレーム数をチャネル変更閾値と比較して、通信チャネル変更の要否を判定する。
チャネル変更閾値は、画像表示装置10が画像データを全く受信できていないに等しい状態にあるか否かをチャネル変更判定部164が判定するための画像フレーム数についての閾値であり、例えば0に設定される。チャネル変更閾値は、上記の3つの画質調整閾値のうちで最小である最低閾値よりも小さい画像フレーム数に対応する閾値である。
例えば、チャネル変更判定部164は、単位時間T2内に受信された画像フレーム数がチャネル変更閾値(例えば0)以下であれば、通信チャネル変更の予備状態と判定する。チャネル変更判定部164は、画像表示装置10が画像データを全く受信できていない状態であっても、直ちに通信チャネルを変更すると判定するのではなく、一旦その状態を通信チャネル変更の予備状態と判定する。そして、チャネル変更判定部164は、予備状態との判定回数が予め定められた回数を超えたとき(すなわち、長期的に見ても画像データを受信できていない状態が改善していないとき)に初めて、通信チャネルを変更すると判定する。
単位時間T2内に受信された画像フレーム数がチャネル変更閾値以下であれば、チャネル変更判定部164は、例えば表示部13に「接続中」などと表示させて、カメラユニット20からのフレーム受信率が低下している現在の伝送状況を利用者に報知する。このとき、チャネル変更判定部164は、現在の画像パラメータが最低画質になっていなければ、最低画質に低下させる画質調整指示をカメラユニット20に送信するとともに、最低画質の画像パラメータを記憶部15の画像パラメータ履歴に記憶する。また、チャネル変更判定部164は、現在実行中の画像受信処理が開始されてから通算で予備状態と判定した回数をカウントする。あるいは、チャネル変更判定部164は、警備システム1が起動してから通算で予備状態と判定した回数をカウントしてもよい。
そして、チャネル変更判定部164は、予備状態との判定回数が予め定められた回数で割り切れるか否か、すなわち、予備状態との判定が予め定められた回数だけなされているか否かを判定する。現在の画像受信処理が開始されてからの予備状態の判定回数をチャネル変更判定部164がカウントする場合は、上記の予め定められた回数は、例えば20回に設定される。警備システム1が起動してからの予備状態の判定回数をチャネル変更判定部164がカウントする場合は、上記の予め定められた回数は、より大きな例えば100回に設定される。そして、予備状態との判定回数が予め定められた回数で割り切れる場合に、チャネル変更判定部164は、通信チャネルを変更すると判定する。なお、このとき、チャネル変更判定部164は、予備状態と判定した回数のカウントをリセットしてもよい。
一方、チャネル変更判定部164は、単位時間T2内に受信された画像フレーム数がチャネル変更閾値より大きければ(例えば1回以上であれば)、通信チャネルを変更しないと判定し、そのまま通信品質判定処理を終了する。
なお、チャネル変更判定部164は、例えば、画像表示装置10が受信する信号についてのSINR(Single to Interference and Noise Ratio:信号対干渉雑音比)の値を基準に、通信チャネルを変更するか否かを判定してもよい。SINRは、カメラユニット20から画像表示装置10への信号が受ける干渉及び雑音の影響の度合いを示す情報であり、SINRの値が大きいほど画像表示装置10が受信する信号の品質は良いことを示す。そこで、チャネル変更判定部164は、通信品質判定処理において、予備状態と判定された回数に基づきチャネル変更の判定を行うことに代えて、単位時間T2ごとに受信信号のSINRを算出し、その値が予め定められた閾値を下回ったときに通信チャネル変更の予備状態と判定してもよい。
チャネル変更処理部165は、チャネル変更判定部164が通信チャネルを変更すると判定すると、その判定結果に従って通信チャネルを変更する。チャネル変更処理部165は、画像表示装置10の電源投入時又は一定時間ごとに、各チャネル(無線周波数の各帯域)を走査して受信される電波強度を測定するキャリアセンスを実行し、使用可能な(すなわち、干渉レベルの低い)通信チャネルを記憶部15のチャネルテーブルに記憶している。あるいは、チャネル変更処理部165は、チャネル変更判定部164が通信チャネルを変更すると判定したときにキャリアセンスを行ってもよい。チャネル変更処理部165は、記憶部15のチャネルテーブルを参照して、無線通信部11が使用する通信チャネルを、現在使用中の通信チャネル以外で使用可能なものに変更する。
図4は、カメラユニット20の概略構成図である。カメラユニット20は、設定情報記憶部21と、無線子機通信部22と、画像取得部23と、画質調整部24と、画像記憶部25と、制御部26とを有する。
設定情報記憶部21は、自己を識別するための機器IDと各種プログラムなどを記憶しており、さらに、カメラユニット20を動作させるための各種情報を記憶する。例えば、設定情報記憶部21は、無線LANアクセスポイントである画像表示装置10の無線通信部11が設定するネットワーク名(ESSID)と認証情報を予め記憶している。また、設定情報記憶部21は、画像表示装置10から受信された画質調整指示に含まれるフレームレート及び精細度などの画像パラメータを記憶する。
無線子機通信部22は、無線通信処理部の一例であり、無線LANクライアント機能を有する。無線子機通信部22は、起動すると無線周波数の各帯域を走査して、無線LANアクセスポイントである画像表示装置10の無線通信部11を探索する。無線子機通信部22は、画像表示装置10の無線通信部11が出している制御信号(ビーコン)から、使用する通信チャネルを判別する。そして、無線子機通信部22は、設定情報記憶部21に記憶されているネットワーク名(ESSID)と認証情報を用いて画像表示装置10に接続する。無線子機通信部22は、画像表示装置10から画像要求信号を受信すると、画像取得部23にて取得され画質調整部24にて画質が調整された画像データを画像表示装置10に順次送信する。また、無線子機通信部22は、画像表示装置10から画像停止信号を受信すると、画像データの送信を終了する。
画像取得部23は、カメラユニット20が設置された住宅の外周などにおける監視区域2の画像データを取得する。画像取得部23は、撮像素子231と、光学系232とを有する。
撮像素子231は、CCD素子又はC−MOS素子など、近赤外光又は可視光に感度を有する光電変換器で構成された2次元検出器である。撮像素子231は、制御部26が生成するタイミング信号に応じた撮影間隔で、監視区域2の画像信号を取得する。この撮影間隔は、画像表示装置10からの画質調整指示によって指示されたフレームレートに応じて、制御部26により設定される。
光学系232は、監視区域2の像を撮像素子231に結像するレンズなどの結像光学系である。
画質調整部24は、画像表示装置10からの画質調整指示に応じて、画像取得部23が取得する画像データの画質を調整する。画質調整部24は、A/D変換器241と、画像圧縮回路242とを有する。
A/D変換器241は、一定の撮影間隔で撮像素子231から入力されるアナログの画像信号を、アナログ/デジタル変換してデジタルの画像信号(画像データ)に変換する。
画像圧縮回路242は、画像表示装置10からの画質調整指示により指定された精細度(画像サイズと圧縮率)の画像パラメータに応じて、例えば画像圧縮符号化方式としてH.264/MPEG−4AVC規格に従って、A/D変換器241から入力される画像データを圧縮する。そのために、画像圧縮回路242は、画像表示装置10からの画質調整指示によって設定された精細度が低いほど、撮像素子231により得られた画像を縮小して、より少ない画素数の画像データを出力する。
あるいは、画像圧縮回路242は、A/D変換器241から入力される画像データを圧縮して、最終的に画質が調整された画像データを出力する。画像圧縮回路242が画像データを圧縮するときの圧縮率は、画像表示装置10からの画質調整指示によって指示された精細度に応じて、制御部26により設定されてもよい。画像圧縮回路242は、設定された精細度が高いほど、相対的に大きなデータ量になるように、低い圧縮率でA/D変換器241からの画像データを圧縮する。
なお、画像圧縮回路242は、画像圧縮符号化方式として、MPEG2Video規格などの他の規格に従ってもよい。あるいは、画像圧縮回路242は、JPEG規格などに従って、静止画の画像データを生成してもよい。また、警備システム1では、カメラユニット20ごとに異なる画像圧縮符号化方式を採用して、互いに異なる画像圧縮符号化方式を使用する複数のカメラユニット20を無線LAN上に混在させてもよい。あるいは、一つのカメラユニット20が複数の画像圧縮符号化方式を切り替えて使用してもよい。
画像記憶部25は、画像取得部23にて取得された画像データを予め定められた画像フレーム数だけ保持するバッファである。画像記憶部25に保持された画像データは、予め定められたバッファ期間を経過すると順次消去される。
制御部26は、CPU、ROM及びRAMなどを含むマイクロコンピュータ並びにその周辺回路で構成され、上述した各部を制御してカメラユニット20として動作させる。
制御部26は、撮像素子231を駆動して、画像表示装置10からの画質調整指示により指定されたフレームレートに対応する撮影間隔で、監視区域2の画像信号を取得させる。フレームレートを変化させる画質調整指示をカメラユニット20が画像表示装置10から受信すると、制御部26は、その画質調整指示に応じて撮像素子231の撮影間隔を変化させることにより、カメラユニット20で取得される画像データのフレームレートを変化させる。
また、制御部26は、画像圧縮回路242が出力する画像データの画像サイズを、画像表示装置10からの画質調整指示により指定された精細度に応じて設定してもよい。この場合、精細度を変化させる画質調整指示をカメラユニット20が受信すると、制御部26は、画像圧縮回路242に設定されている画像サイズを、その画質調整指示に応じて変化させる。例えば、制御部26は、複数の段階に分けられた精細度が1段階ずつ低くなるにつれて、画像圧縮回路242が出力する画像データの画素数を所定量だけ減少させてもよい。
また、制御部26は、画像圧縮回路242による画像データの圧縮率を、画像表示装置10からの画質調整指示により指定された精細度に応じて設定してもよい。この場合、精細度を変化させる画質調整指示をカメラユニット20が受信すると、制御部26は、画像圧縮回路242に設定されている圧縮率を、その画質調整指示に応じて変化させる。例えば、制御部26は、複数の段階に分けられた精細度が1段階ずつ高くなるにつれて、画像圧縮回路242による圧縮率を所定量だけ減少させてもよい(圧縮後のデータ量が大きくなるようにする)。
制御部26は、精細度を上下させる画質調整指示が受信された場合に、画像サイズと圧縮率のどちらを優先して変化させてもよい。例えば、制御部26は、圧縮率を一定に保ったまま、精細度の上下に応じて画像サイズを増減させてもよいし、画像サイズを一定に保ったまま、精細度の上下に応じて圧縮率を増減させてもよい。あるいは、制御部26は、精細度の上下に応じて画像サイズと圧縮率の両方を1段階ずつ増減させてもよい。
なお、上記では、画質を向上又は低下させるときの新たなフレームレートと精細度(画像パラメータ)は画質調整判定部163が決定すると説明したが、この新たなフレームレートと精細度は制御部26が決定してもよい。この場合、画質を向上させる画質調整指示をカメラユニット20が受信すると、制御部26は、例えば精細度を一定に保ったまま、フレームレートが設定可能な範囲内で最大になるまで、フレームレートを優先的に大きくしてもよい。逆に、画質を低下させる画質調整指示をカメラユニット20が受信すると、制御部26は、例えばフレームレートを一定に保ったまま、精細度が設定可能な範囲内で最小になるまで、精細度を優先的に小さくしてもよい。
図5は、画像受信処理の動作例を示したフローチャートである。操作部14によりカメラユニット20が指定されると、画像受信処理部161は、そのカメラユニット20との間で、図5に示した画像受信処理を開始する。
まず、画像受信処理部161は、記憶部15に記憶されている画像パラメータ履歴を参照して、対象のカメラユニット20について直前回の画像受信処理で使用された画像パラメータのうち、画質が最も低い画像パラメータを抽出する(ステップS1)。そして、画像受信処理部161は、対象のカメラユニット20に画像データを要求するための画像要求信号と、ステップS1で抽出された画像パラメータをカメラユニット20が使用するように指示するための画質調整指示を、対象のカメラユニット20に送信する(ステップS2)。指示した画像パラメータは、記憶部15の画像パラメータ履歴に現在時間とともに記憶される。
画像受信処理が開始されると、受信監視部162は、図示しないタイマーにより経過時間をカウントし、単位時間T1(例えば5秒)ごとの画質調整タイミングになったか否かを判定する(ステップS3)。現在の経過時間が画質調整タイミングであるとき(ステップS3でYes)は、受信監視部162は、画質調整判定部163に画質調整処理を実行させる(ステップS4)。
現在の経過時間が画質調整タイミングでない(ステップS3でNo)か、又はステップS4の画質調整処理が終了したときは、受信監視部162は、単位時間T2(例えば15秒)ごとの通信品質判定タイミングになったか否かを判定する(ステップS5)。現在の経過時間が通信品質判定タイミングであるとき(ステップS5でYes)は、受信監視部162は、チャネル変更判定部164に通信品質判定処理を実行させる(ステップS6)。
現在の経過時間が通信品質判定タイミングでない(ステップS5でNo)か、又はステップS6の通信品質判定処理が終了したときは、画像受信処理部161は、操作部14により画像受信処理の終了が指示されたか否かを判定する(ステップS7)。画像受信処理の終了が指示されていないとき(ステップS7でNo)は、処理はステップS3に戻る。一方、画像受信処理の終了が指示されたとき(ステップS7でYes)は、画像受信処理部161は、画像受信中のカメラユニット20に画像停止信号を送信する(ステップS8)。これにより、画像受信処理部161は、カメラユニット20との間における画像受信処理を終了する。画像受信処理が終了すると、画像受信処理部161は、記憶部15の画像パラメータ履歴に、画像受信処理を行っていたときの時間情報を記憶する。
図6は、画質調整処理の動作例を示したフローチャートである。図5のステップS3で現在の経過時間が画質調整タイミングであると判定されると、図5のステップS4において、画質調整判定部163は、図6に示した画質調整処理を開始する。
まず、画質調整判定部163は、単位時間T1内のフレーム受信率を受信監視部162から取得する(ステップS21)。そして、画質調整判定部163は、取得された単位時間T1内のフレーム受信率を画質調整閾値と比較する(ステップS22)。
ステップS21で取得されたフレーム受信率が上調整閾値以上であれば、画質調整判定部163は、画質を向上させる調整を行うと判定する(ステップS23)。このとき、画質調整判定部163は、現在設定されている精細度又はフレームレートを1段階上げたものを、新たな画像パラメータとして決定する(ステップS24)。
また、ステップS21で取得されたフレーム受信率が最低閾値より大きくかつ下調整閾値以下であれば、画質調整判定部163は、画質を低下させる調整を行うと判定する(ステップS25)。このとき、画質調整判定部163は、現在設定されている精細度又はフレームレートを1段階下げたものを、新たな画像パラメータとして決定する(ステップS26)。
また、ステップS21で取得されたフレーム受信率が最低閾値以下であれば、画質調整判定部163は、画質を設定可能な最低のものに低下させる調整を行うと判定する(ステップS27)。このとき、画質調整判定部163は、設定可能な範囲内で最低の精細度及びフレームレートを、新たな画像パラメータとして決定する(ステップS28)。
そして、画質調整判定部163は、新たな画像パラメータをカメラユニット20が使用するように指示するための画質調整指示をカメラユニット20に送信する(ステップS29)。それとともに、画質調整判定部163は、新たな画像パラメータと現在時間を記憶部15の画像パラメータ履歴に記憶する(ステップS30)。以上で、画質調整判定部163は画質調整処理を終了する。
一方、ステップS21で取得されたフレーム受信率が下調整閾値より大きくかつ上調整閾値未満であれば、画質調整判定部163は、画質を調整する判定をせずにそのまま画質調整処理を終了する。
図7は、通信品質判定処理の動作例を示したフローチャートである。図5のステップS5で現在の経過時間が通信品質判定タイミングであると判定されると、図5のステップS6において、チャネル変更判定部164は、図7に示した通信品質判定処理を開始する。
まず、チャネル変更判定部164は、単位時間T2内に受信された画像フレーム数を受信監視部162から取得する(ステップS41)。そして、チャネル変更判定部164は、取得された単位時間T2内の画像フレーム数をチャネル変更閾値と比較する(ステップS42)。
単位時間T2内の画像フレーム数がチャネル変更閾値以下であれば(ステップS42でYes)、チャネル変更判定部164は、例えば表示部13に「接続中」などと表示させて、カメラユニット20からのフレーム受信率が低下している現在の伝送状況を利用者に報知する(ステップS43)。
このとき、チャネル変更判定部164は、現在の画像パラメータが最低画質になっているか否かを判定する(ステップS44)。現在の画像パラメータが最低画質になっていなければ(ステップS44でNo)、最低画質への画質調整指示をカメラユニット20に送信するとともに、最低画質の画像パラメータと現在時間を記憶部15の画像パラメータ履歴に記憶する(ステップS45)。一方、現在の画像パラメータが最低画質になっていれば(ステップS44でYes)、チャネル変更判定部164はステップS45を実行せずに、次のステップS46に進む。
また、チャネル変更判定部164は、現在の状態を通信チャネル変更の予備状態と判定し、現在の画像受信処理が開始されてから予備状態と判定した回数のカウントを1増やす(ステップS46)。そして、チャネル変更判定部164は、予備状態との判定回数が予め定められた回数で割り切れるか否か、すなわち、予備状態との判定が予め定められた回数だけなされているか否かを判定する(ステップS47)。予備状態との判定回数が予め定められた回数で割り切れないならば(ステップS47でNo)、チャネル変更判定部164は通信チャネルを変更しないと判定し、そのまま通信品質判定処理を終了する。
一方、予備状態との判定回数が予め定められた回数で割り切れるならば(ステップS47でYes)、チャネル変更判定部164は通信チャネルを変更すると判定し、チャネル変更処理部165に通信チャネルを変更させる(ステップS48)。このとき、チャネル変更判定部164は、予備状態との判定回数のカウントをリセットした上で(ステップS49)、通信品質判定処理を終了する。
また、チャネル変更判定部164は、ステップS41で取得された単位時間T2内の画像フレーム数がチャネル変更閾値より大きければ(ステップS42でNo)、通信チャネルを変更しないと判定し、そのまま通信品質判定処理を終了する。
なお、画質調整判定部163の機能は、カメラユニット20の制御部26で実現してもよい。この場合、受信監視部162が単位時間T1内における画像表示装置10でのフレーム受信率を求めて画質調整判定部163に画質調整処理を実行させる代わりに、カメラユニット20の制御部26が、単位時間T1内に画像表示装置10に送信された画像データのデータ量と上記の画質調整閾値との比較結果に応じた画質調整指示を、画質調整部24に出力する。
そのために、受信監視部162が単位時間T1内における画像表示装置10でのフレーム受信率を求めることに代えて、制御部26は、例えば、単位時間T1内にカメラユニット20が送信すべき画像フレーム数に対する単位時間T1内に実際に画像表示装置10に送達された画像フレーム数の比率(「フレーム送信率」という)を求める。そして、画質調整判定部163が単位時間T1内ごとに図6の画質調整処理を実行することに代えて、制御部26は、フレーム送信率を用いて図6と同様の画質調整処理を行う。これにより、制御部26は、新たな画像パラメータを決定し、画質調整部24がその画像パラメータを使用するように指示するための画質調整指示を画質調整部24に出力する。そして、画質調整部24が、制御部26から出力された画質調整指示に従い、画像取得部23で取得された画像データの画質を調整する。
画質調整処理がカメラユニット20で行われる場合、図5のステップS1、S3及びS4は、画像表示装置10における画像受信処理ではなく、カメラユニット20における制御部26の処理として実行される。ただし、画質調整処理がカメラユニット20で行われる場合であっても、通信チャネルを変更するか否かは画像表示装置10の側で判定されるため、図7の通信品質判定処理は、上記と同じくチャネル変更判定部164により実行される。
以上説明したように、警備システム1は、単位時間T1内におけるカメラユニット20から画像表示装置10への伝送量に応じて画像データの画質を調整し、単位時間T1より長い単位時間T2内に画像表示装置10で受信された信号の品質に応じて通信チャネルを変更する。特に、警備システム1は、画像表示装置10が画像データを全く受信できていない状態であっても、通信チャネル変更の予備状態と判定された回数が予め定められた回数を超えるまでは、画質調整処理によって画像パラメータを調整することで画像データを受信できる状態に復元することを試みて、通信チャネルを頻繁に変更しないようにする。これにより、警備システム1では、カメラユニット20と画像表示装置10の間の通信効率が低下している場合であっても、画像表示装置10における表示画像の欠損を極力防止しつつ、無線通信できないブランク時間の発生を抑制することができる。