以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
(画像形成装置)
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の全体構成及び動作について説明する。
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタである。このカラーレーザープリンタの本体中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6を有する。その他、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
また、各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3は、中間転写体としての中間転写ベルト30と、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31と、二次転写手段としての二次転写ローラ36を備える。その他、転写装置3は、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34、ベルトクリーニング装置35を備える。
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、上記一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、図示しない廃トナー収容器の入り口部に接続されている。
プリンタ本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には、補給用のトナーを収容する4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間には、図示しない補給路が設けてあり、この補給路を介して各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
一方、プリンタ本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けてある。なお、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
プリンタ本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、搬送タイミングを計って用紙Pを二次転写ニップへ搬送するタイミングローラとしての一対のタイミングローラ12が配設されている。
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着トナー画像を定着するための定着装置20が配設されている。さらに、定着装置20よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、プリンタ本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
続いて、図1を参照して、本実施形態に係るプリンタの基本的動作について説明する。作像動作が開始されると、各作像部4Y,4M,4C,4Kにおける各感光体5が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体5の表面が帯電装置6によって所定の極性に一様に帯電される。
帯電された各感光体5の表面には、露光装置9からレーザー光がそれぞれ照射されて、各感光体5の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体5に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように各感光体5上に形成された静電潜像に、各現像装置7によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
また、作像動作が開始されると、二次転写バックアップローラ32が図の反時計回りに回転駆動し、中間転写ベルト30を図の矢印で示す方向に周回走行させる。また、各一次転写ローラ31に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ31と各感光体5との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。
その後、各感光体5の回転に伴い、感光体5上の各色のトナー画像が一次転写ニップに達したときに、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、各感光体5上のトナー画像が中間転写ベルト30上に順次重ね合わせて転写される。かくして、中間転写ベルト30の表面にフルカラーのトナー画像が担持される。
また、中間転写ベルト30に転写しきれなかった各感光体5上のトナーは、クリーニング装置8によって除去される。そして、各感光体5の表面が図示しない除電装置によって除電され、表面電位が初期化される。
プリンタの下部では、給紙ローラ11が回転駆動を開始し、給紙トレイ10から用紙Pが搬送路Rに送り出される。搬送路Rに送り出された用紙Pは、タイミングローラ12によって搬送が一旦停止される。
その後、所定のタイミングでタイミングローラ12の回転駆動を開始し、中間転写ベルト30上のトナー画像が二次転写ニップに達するタイミングに合わせて、用紙Pを二次転写ニップへ搬送する。このとき、二次転写ローラ36には、中間転写ベルト30上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。
そして、この転写電界によって、中間転写ベルト30上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。また、このとき用紙Pに転写しきれなかった中間転写ベルト30上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置35によって除去され、除去されたトナーは図示しない廃トナー収容器へと搬送され回収される。
その後、用紙Pは定着装置20へと搬送され、定着装置20によって用紙P上のトナー画像が当該用紙Pに定着される。そして、用紙Pは、排紙ローラ13によって装置外へ排出され、排紙トレイ14上にストックされる。
以上の説明は、用紙上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作である。このフルカラー画像以外に、例えば4つの作像部4Y,4M,4C,4Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
(定着装置)
図2は、本実施形態の定着装置の断面図である。以下、図2に基づき、定着装置20の構成について説明する。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21と、定着ベルト21の外周面に当接する対向部材としての加圧ローラ22を備える。また、定着ベルト21を加熱する加熱源としてのハロゲンヒータ23と、定着ベルト21の内周側から加圧ローラ22に当接してニップ部Nを形成するニップ形成部材24を備える。
また、ニップ形成部材24を支持する支持部材としてのステー25と、ハロゲンヒータ23からの熱を定着ベルト21へ反射する反射部材26を備える。また、ハロゲンヒータ23からの熱を遮蔽する遮蔽部材27と、定着ベルト21の温度を検知する第一温度検知手段としての温度センサ28と、媒体検知手段としての媒体検知センサ29等を備える。
前記遮蔽部材27を設ける理由は次の通りである。定着装置では、ニップ部を通過する用紙によって定着部材の熱が奪われるので、温度センサなどによって定着部材が適切な温度に維持されるように管理されている。
一方、用紙が通過しない非通紙領域では、定着部材の熱が奪われにくい傾向にある。このため、特に、用紙を連続通紙した場合に、非通紙領域において定着部材が過昇温するといった問題があった。
そこで、この問題を解決するため、特許文献2−4では、定着部材の非通紙領域において加熱源からの熱を遮蔽する遮蔽部材を設けた定着装置が提案されている。これらの定着装置においては、遮蔽部材が移動可能に構成されており、遮蔽部材を用紙サイズに応じて適切な位置に配設することで、必要な範囲において熱を遮蔽すると共に、用紙幅に対応した加熱領域を確保できるようにしている。
遮蔽部材27を設ける理由は以上の通りである。このような遮蔽部材27を設けた定着装置では、遮蔽部材27の位置を決定するため、その基準となる位置(初期位置)を何らかの形で設定する必要がある。
ところが、画像形成装置では、前述したようにジャム等の異常発生により画像形成装置が緊急停止する場合がある。そのような異常発生時にも、通常停止時と同様に遮蔽部材27を初期位置に復帰させていたのでは、定着装置の停止が遅れ、定着装置を構成する定着部材等の構成要素がダメージを受けるおそれがある。
以下に説明する定着装置の実施形態では、ジャム等の異常発生により画像形成装置が緊急停止する場合、遮蔽部材27を初期位置に復帰させることはせず、異常発生時の位置で停止させ、他所へは移動させないようにしている。これにより、異常発生に伴って定着ベルト21が変形した場合でも、定着ベルト21と遮蔽部材27が互いに摺動する事態を防止することができる。そして、当該相互摺動の防止により、定着ベルト21、遮蔽部材27、さらには遮蔽部材27の駆動機構が受けるダメージを軽減することができる。
上記定着ベルト21は、薄肉で可撓性を有する無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。詳しくは、定着ベルト21は、内周側の基材と、外周側の離型層によって構成されている。内周側の基材は、ニッケルもしくはSUS等の金属材料又はポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成されている。外周側の離型層は、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
また、弾性層が無い場合は、熱容量が小さくなり定着性が向上するが、未定着トナーを押しつぶして定着させるときにベルト表面の微小な凹凸が画像に転写されて画像のベタ部に光沢ムラが生じる可能性がある。これを防止するには、厚さ100μm以上の弾性層を設けることが望ましい。厚さ100μm以上の弾性層を設けることで、弾性層の弾性変形により微小な凹凸を吸収することができるので、光沢ムラの発生を回避することができるようになる。
本実施形態では、定着ベルト21の低熱容量化を図るために、定着ベルト21を薄くかつ小径化している。具体的には、定着ベルト21を構成する基材、弾性層、離型層のそれぞれの厚さを、20〜50μm、100〜300μm、10〜50μmの範囲に設定し、全体としての厚さを1mm以下に設定している。
また、定着ベルト21の直径は、20〜40mmに設定している。さらに低熱容量化を図るためには、望ましくは、定着ベルト21全体の厚さを0.2mm以下にするのがよく、さらに望ましくは、0.16mm以下の厚さとするのがよい。また、定着ベルト21の直径は、30mm以下とするのが望ましい。
上記加圧ローラ22は、芯金22aと、芯金22aの表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る弾性層22bと、弾性層22bの表面に設けられたPFA又はPTFE等から成る離型層22cによって構成されている。加圧ローラ22は、後述するニップ圧切換手段60によって定着ベルト21側へ加圧され、定着ベルト21を介してニップ形成部材24に当接している。
この加圧ローラ22と定着ベルト21とが圧接する箇所では、加圧ローラ22の弾性層22bが押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。なお、定着ベルト21と加圧ローラ22は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わず単に接触させるだけの構成とすることも可能である。
また、加圧ローラ22は、プリンタ本体に設けられた図示しない定着モータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ22が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト21に伝達され、定着ベルト21が従動回転するようになっている。
本実施形態では、加圧ローラ22を中実のローラとしているが、中空のローラであってもよい。その場合、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータ等の加熱源を配設してもよい。また、弾性層22bはソリッドゴムでもよいが、加圧ローラ22の内部に加熱源が無い場合は、スポンジゴムを用いてもよい。スポンジゴムの方が、断熱性が高まり定着ベルト21の熱が奪われにくくなるのでより望ましい。
上記ハロゲンヒータ23は、定着ベルト21の内周側で、かつ、ニップ部Nの用紙搬送方向の上流側に配設されている。詳しくは、図2において、ニップ部Nの用紙搬送方向の中央Qと、加圧ローラ22の回転中心Oを通る仮想直線をLとすると、ハロゲンヒータ23はこの仮想直線Lよりも用紙搬送方向の上流側(図2の下側)に配設されている。
ハロゲンヒータ23は、プリンタ本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、上記温度センサ28による定着ベルト21の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このようなハロゲンヒータ23の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。
なお、定着ベルト21の温度を検知する温度センサの代わりに、加圧ローラ22の温度を検知する温度センサを設け、その温度センサで検知した温度により、定着ベルト21の温度を予測するようにしてもよい。
本実施形態では、ハロゲンヒータ23は2本設けられているが、プリンタで使用する用紙のサイズ等に応じて、ハロゲンヒータ23の本数を1本又は3本以上としてもよい。また、定着ベルト21を加熱する加熱源として、ハロゲンヒータ以外に、IH、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いることも可能である。
上記ニップ形成部材24は、ベースパッド241と、ベースパッド241の定着ベルト21と対向する面に設けられた低摩擦性の摺動シート240とを有する。ベースパッド241は、定着ベルト21の軸方向又は加圧ローラ22の軸方向に渡って長手状に配設されている。
ベースパッド241が加圧ローラ22の加圧力を受けることで、ニップ部Nの形状が決まる。本実施形態では、ニップ部Nの形状が平坦状であるが、凹形状やその他の形状としてもよい。
摺動シート240は、定着ベルト21が回転する際の摺動摩擦を低減するために設けられている。なお、ベースパッド241自体が低摩擦性の部材で形成されている場合は、摺動シート240を有しない構成としてもよい。
ベースパッド241は、耐熱温度200℃以上の耐熱性材料で構成されている。かかる構成により、トナー定着温度域で熱によるニップ形成部材24の変形を防止し、安定したニップ部Nの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。
また、ベースパッド241は、強度確保のために相応の剛性が求められる。以上の条件を満たすベースパッド241の材料としては、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの樹脂を用いることが可能である。この他、金属やセラミックでベースパッド241を形成することもできる。
また、ベースパッド241は、ステー25によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ22による圧力でニップ形成部材24に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ22の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。ステー25は、ニップ形成部材24の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましい。
上記反射部材26は、ハロゲンヒータ23と対向するようにステー25に固定支持されている。この反射部材26によって、ハロゲンヒータ23からの輻射熱を定着ベルト21へ反射することで、熱がステー25等に伝達されるのを抑制し、定着ベルト21を効率良く加熱すると共に省エネルギー化を図っている。反射部材26の材料としては、アルミニウムやステンレス等が用いられる。特に、アルミニウム製の基材に輻射率の低い(反射率の高い)銀を蒸着したものを用いた場合、定着ベルト21の加熱効率を向上させることが可能である。
上記遮蔽部材27は、厚さ0.1mm〜1.0mmの金属板を、定着ベルト21の内周面に沿った円弧状の断面形状に形成して構成されている。また、遮蔽部材27は、定着ベルト21とハロゲンヒータ23の間を周方向に移動可能となっている。
これにより、本実施形態では、図3に示すように、定着ベルト21の周方向領域に、ハロゲンヒータ23に直接加熱される加熱領域αと、ハロゲンヒータ23によって直接加熱されされない非加熱領域βとが形成される。加熱領域αはハロゲンヒータ23の正面に対向している。非加熱領域βは、ハロゲンヒータ23との間に、側板等に固定された他部材(反射部材26、ステー25、ニップ形成部材24等)が介在するため、ハロゲンヒータ23によって直接加熱されない。
定着ベルト21をハロゲンヒータ23から熱遮蔽する必要がある場合は、図2に示すように、遮蔽部材27を被加熱領域α側の一箇所もしくは複数個所に設定された遮蔽位置に配設する。一方、熱遮蔽の必要がない場合は、図3に示すように、遮蔽部材27を非加熱領域β側に移動させ、遮蔽部材27の全体を反射部材26やステー25の裏側へ退避させることが可能となっている。
このように遮蔽部材27を回転させることで、定着ベルト21の被加熱領域αの面積を変更して、ハロゲンヒータ23から定着ベルト21に照射される輻射熱の熱量を調整するようになっている。遮蔽部材27は耐熱性を要するため、その素材には、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属材料、又はセラミックを用いることが好ましい。
媒体検知センサ29は、ニップ部Nよりも、記録媒体としての用紙の搬送方向下流側に配置される。この媒体検知センサ29は、用紙の有無を検知するものであり、例えばフォトインタラプタ等で構成することができる。
図4は、本実施形態の定着装置の斜視図である。図4に示すように、定着ベルト21の両端部の内周には、それぞれベルト保持部材としてのフランジ部材40が挿入されており、定着ベルト21はこのフランジ部材40によって回転可能に保持されている。また、各フランジ部材40、ハロゲンヒータ23及びステー25は、定着装置20の図示しない一対の側板に固定支持されている。
図5は、遮蔽部材の支持構造を示す図である。図5に示すように、遮蔽部材27は、フランジ部材40に取り付けられた円弧状のスライド部材41を介して支持されている。
具体的には、遮蔽部材27の端部に設けられた突起27aが、スライド部材41に設けられた孔部41aに挿入されることで、遮蔽部材27がスライド部材41に取り付けられている。また、スライド部材41には凸部41bを設けてある。その凸部41bがフランジ部材40に設けられた円弧状の溝部40aに挿入されることで、スライド部材41は溝部40aに沿ってスライド移動可能となっている。
これにより、遮蔽部材27は、スライド部材41と一体的に、フランジ部材40の周方向に回転移動可能となっている。また、本実施形態では、フランジ部材40及びスライド部材41は、樹脂で構成されている。
なお、図5では、片方の端部の支持構造のみ示しているが、他方の端部も同様に、スライド部材41を介して回転移動可能に保持されている。
図6は、遮蔽部材の駆動機構を示す図である。図6に示すように、本実施形態では、遮蔽部材27の駆動機構として、駆動源であるモータ42と、複数のギヤ43,44,45からなるギヤ列を有する動力伝達機構46とを備える。
ギヤ列のうち、一端側のギヤ43はモータ42に連結され、他端側のギヤ45はスライド部材41の周方向に設けられたギヤ部41cに連結されている。モータ42が駆動すると、その駆動力がギヤ列を介してスライド部材41に伝達される。そして遮蔽部材27が正方向(非加熱領域βから被加熱領域αに向う回転方向)および逆方向(被加熱領域αから非加熱領域βに向う回転方向)に回転移動するようになっている。モータ42は例えばステッピングモータで構成することができる。この場合の遮蔽部材27の位置制御は、駆動パルス数を変更することで行うことができる。なお、モータ42としては、ステッピングモータに代えてDCモータ等を使用することもできる。
(遮蔽部材)
図7は、遮蔽部材の形状とハロゲンヒータの発熱部と用紙サイズとの関係を示す図である。まず、図7に基づき、遮蔽部材27の形状について詳しく説明する。
図7に示すように、本実施形態の遮蔽部材27は、ハロゲンヒータ23からの熱を遮蔽するために両端部に設けられた一対の遮蔽部48と、遮蔽部48同士を連結する連結部49とを有する。また、両遮蔽部48の間は、ハロゲンヒータ23からの熱を遮蔽せずに放出する開口部50となっている。また、各遮蔽部48の互いに対向する内縁には、遮蔽部材27の回転方向に対して平行なストレート部51と、その回転方向に対して傾斜する傾斜部52とが形成されている。
図7において、遮蔽部材27が遮蔽位置へ回転移動する側を遮蔽側Yとすると、各傾斜部52はストレート部51の遮蔽側Yに連続して設けられており、内縁相互間の間隔が遮蔽側Yほど離れるように傾斜している。これにより、開口部50は、その遮蔽側Yに向かって、ストレート部51間で同じ幅に形成され、傾斜部52間では幅が広がるように形成されている。
次に、ハロゲンヒータの発熱部と用紙サイズとの関係について説明する。図7に示すように、本実施形態では、用紙サイズに応じて加熱領域を変更するため、各ハロゲンヒータ23の発熱部の長さや配設位置を異ならせている。
2本のハロゲンヒータ23のうち、一方(図の下側)のハロゲンヒータ23の発熱部23aは、長手方向中央部側に配設され、他方(図の上側)のハロゲンヒータ23の発熱部23bは、長手方向両端部側にそれぞれ配設されている。この例では、中央部側の発熱部23aは、中サイズの通紙幅W2に対応した範囲に配設されており、両端部側の発熱部23bは、中サイズの通紙幅W2以上で、大サイズ及び特大サイズの通紙幅W3,W4を含む範囲に配設されている。
また、遮蔽部材27の形状と用紙サイズとの関係では、各ストレート部51が、大サイズの通紙幅W3の端部に対して幅方向内側近傍に配設され、各傾斜部52が、大サイズの通紙幅W3の端部を跨ぐ位置に配設されている。
なお、本実施形態における用紙サイズの例としては、例えば、中サイズがレターサイズ(通紙幅215.9mm)又はA4サイズ(通紙幅210mm)である。大サイズがダブルレターサイズ(通紙幅279.4mm)又はA3サイズ(通紙幅297mm)である。そして、特大サイズとしてA3ノビ(通紙幅329mm)などが挙げられる。ただし、用紙サイズの例はこれに限定されるものではない。また、ここでいう、中サイズ、大サイズ、特大サイズは、各サイズの相対的な関係を示すものであり、小サイズ、中サイズ、大サイズなどであっても構わない。
次に、用紙サイズごとのハロゲンヒータの制御と遮蔽部材の制御について説明する。まず、図7に示す中サイズ用紙P2を通紙する場合は、中央部側の発熱部23aのみを発熱させることにより、中サイズの通紙幅W2に対応した範囲のみを加熱する。また、特大サイズ用紙P4を通紙する場合は、中央部側の発熱部23aに加え、両端部側の発熱部23bも発熱させ、特大サイズの通紙幅W4に対応した範囲を加熱する。
ところが、本実施形態では、ハロゲンヒータ23の加熱範囲は中サイズの通紙幅W2と特大サイズの通紙幅W4にしか対応していない。このため、大サイズ用紙P3を通紙する場合、中央部側の発熱部23aのみを発熱させると、必要な範囲が加熱されず、中央部側と両端部側の各発熱部23a,23bを発熱させると、加熱される範囲が大サイズの通紙幅W3を超えてしまう。
仮に、中央部側と両端部側の各発熱部23a,23bを発熱させた状態で、そのまま大サイズ用紙P3を通紙すると、大サイズの通紙幅W3よりも外側の非通紙領域において定着ベルト21の温度が過度に上昇するといった問題がある。
そこで、本実施形態では、大サイズ用紙P3を通紙する際、図8に示すように、遮蔽部材27を遮蔽位置へ移動させる。これにより、両端部側の遮蔽部48によって大サイズの通紙幅W3の端部近傍から外側の範囲を覆うことができるので、非通紙領域において定着ベルト21の温度上昇を抑えることができる。このように、必要に応じて遮蔽部材27を遮蔽位置に移動させることで、通紙速度を落としたりすることなく良好な定着を行うことができる。
また、定着処理を終えた場合、又は、定着ベルト21の非通紙領域の温度が所定の閾値以下になった場合など、熱遮蔽する必要がなくなった場合は、遮蔽部材27を非加熱領域βに戻す。
また、本実施形態では、遮蔽部48に傾斜部52を設けているので、遮蔽部材27の回転位置を変更することにより、遮蔽部48によって発熱部23bを覆う範囲を調整することが可能である。通紙枚数や通紙時間が増えると、非通紙領域における定着ベルト21の温度が上昇しやすい傾向にある。そこで、例えば通紙枚数が所定枚数に達した際、又は通紙時間が所定時間に達した際に、両端部側の発熱部23bを覆い隠す方向に遮蔽部材27を回転させる。これにより、より高度に温度上昇を抑制することが可能となる。
なお、定着ベルト21の温度を検知する温度センサ28は、定着ベルト21の軸方向における温度上昇が顕著な領域に配設される。本実施形態の場合は、特に、大サイズの通紙幅W3よりも外側の領域において温度上昇しやすいので、大サイズの通紙幅W3よりも外側に温度センサ28を配設することが望ましい(図7参照)。
また、本実施形態では、2本のハロゲンヒータ23のうち、上記温度上昇に大きく起因するのは、両端部側に発熱部23bを有するハロゲンヒータ23である。従って、このハロゲンヒータ23の発熱部23bと対向する位置に温度センサ28を配設することが望ましい。図7では通紙幅の両端に温度センサ28を配置した場合を例示しているが、どちらか一方の温度センサ28を省略することもできる。
また、図示した場所以外に温度センサ28を配置することもできる(例えば通紙幅の中央部)。温度センサ28の設置数は任意であり、定着ベルト21の軸方向の3箇所以上に配置することもできる。
図9に、遮蔽部材の他の実施形態を示す。図9に示す遮蔽部材27では、両端部側の遮蔽部48が、それぞれ2つの段差部を有する形状に形成されている。
すなわち、各遮蔽部48は、長手方向幅の小さい小遮蔽部48aと、長手方向幅の大きい大遮蔽部48bとで構成されている。大遮蔽部48b同士は、連結部49を介して連結されており、小遮蔽部48aは、大遮蔽部48bの遮蔽側Yに連続して設けられている。
また、小遮蔽部48aの互いに対向する内縁、及び大遮蔽部48bの互いに対向する内縁は、遮蔽側Yに向かって互いに離れるように傾斜する傾斜部52a,52bとなっている。図9の遮蔽部材27では、上記図7に示す遮蔽部材27のようなストレート部51は形成されていない。
図9に示す実施形態では、小サイズ用紙P1、中サイズ用紙P2、大サイズ用紙P3及び特大サイズ用紙P4の少なくとも4種類の用紙を用いる。この実施形態における用紙サイズの例としては、例えば、小サイズがはがきサイズ(通紙幅100mm)である。また、中サイズがA4サイズ(通紙幅210mm)である。また、大サイズがA3サイズ(通紙幅297mm)である。そして、特大サイズとしてA3ノビ(通紙幅329mm)などが挙げられる。ただし、用紙サイズの例はこれに限定されるものではない。
ここで、小サイズ用紙P1の通紙幅W1は、中央部側の発熱部23aの長さよりも小さい範囲となっている。また、遮蔽部材27の形状との関係では、大遮蔽部48bの各傾斜部52bが、小サイズの通紙幅W1の端部を跨ぐ位置に配設され、小遮蔽部48aの各傾斜部52aは、大サイズの通紙幅W3の端部を跨ぐ位置に配設されている。なお、小サイズ以外の用紙サイズ(中、大、特大)と、各発熱部23a,23bとの位置関係は、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
小サイズ用紙P1を通紙する場合、中央部側の発熱部23aのみを発熱させる。しかし、この場合、中央部側の発熱部23aで加熱される範囲は、小サイズの通紙幅W1を超えてしまうので、図10に示すように、遮蔽部材27を遮蔽位置に移動させる。これにより、両大遮蔽部48bによって小サイズの通紙幅W1の端部近傍から外側の範囲を覆うことができるので、非通紙領域において定着ベルト21の温度上昇を抑えることができる。
なお、その他のサイズの用紙(中、大、特大)を通紙する際のハロゲンヒータ23と遮蔽部材27の制御は、上記実施形態と同様である。この場合、上記実施形態における遮蔽部48としての機能は、小遮蔽部48aが果たす。
また、図9に示す実施形態の場合も、上記実施形態の遮蔽部48と同様に、小遮蔽部48aと大遮蔽部48bにそれぞれ傾斜部52a,52bを設けている。このため、遮蔽部材27の回転位置(遮蔽位置)を変更することで、各遮蔽部48a,48bによって各発熱部23a,23bを覆う範囲を調整することが可能である。
(ニップ部の加圧・脱圧切り替え機構)
図11(a)(b)は、ニップ部Nを加圧状態と脱圧状態に切り替えるニップ圧切換手段60の概略構成を示す側面図である。このニップ圧切換手段60は、加圧ローラ22を定着ベルト21に押圧することで、ニップ部Nを加圧状態にし、加圧ローラ22を定着ベルト21から離反させることでニップ部Nを脱圧状態にする機構である。
このニップ圧切換手段60は、ニップ部Nが加圧状態であるか脱圧状態であるかを検出する機能も有する。ニップ圧切換手段60は、レバー部材61、カム62、弾性部材63、被検知部材としてのフィラー64、および検出手段としての検知センサ65を主要な構成要素としている。
レバー部材61は、その一端に設けた支軸O1を中心として回転可能に支持されており、レバー部材61の他端にカム62のカム面が当接している。加圧ローラ22の軸端部には芯金22aが突出しており、この芯金22aがレバー部材61の中間部と当接している。
カム62は、偏心位置に設けた支軸O2を中心として回転可能に支持され、図示しないモータ(加圧・脱圧モータ)等の駆動源により回転駆動される。レバー部材61は、引張ばね等からなる弾性部材63の弾性力でカム62のカム面に押し付けられている。
加圧ローラ22は、定着ベルト21に対して接近および離反可能となるように、図中の水平方向にスライド移動可能に支持されている。図11(a)に示すように、カム62の小径カム面がレバー部材61に当接した状態では、レバー部材61は、弾性部材63の弾性力により加圧ローラ22の芯金22aから離れる方向に付勢される。
そのため、加圧ローラ22が定着ベルト21から離反する方向に移動し、ニップ部が脱圧状態となる。その一方で、図11(b)に示すように、カム62の大径カム面がレバー部材61に当接した状態では、カム62から受ける押圧力でレバー部材61が加圧ローラ22の芯金22aを定着ベルト21に対する接近側に押し込む。これによってニップ部Nが加圧状態となる。
フィラー64は略半円状の部材に形成されており、支軸O2を中心としてカム62と連動して回転するように構成される。検知センサ65は、図11(a)に示すように、加圧ローラ22が脱圧状態となった時にフィラー64で遮光される位置に配置されている。
検知センサ65は、例えばフォトインタラプラで構成することができる。検知センサ65の発光部と受光部の間にフィラー64が進入して光が遮断されると(遮光状態)、検知センサ65がHighの信号を発する。
発光部と受光部の間からフィラー64の端部が抜け出て光が透過されると(透光状態)、検知センサ65がLowの信号を発する。以上から、検知センサ65の出力がHighであればニップ部Nが脱圧状態であると認識することができ、検知センサ65の出力がLowであればニップ部が加圧状態であると認識することができる。
(遮蔽部材の回転位置検知手段)
既に述べたように、遮蔽部材27は、用紙サイズ等に応じて適切な遮蔽位置に配設される。これを実現するには、遮蔽部材27の回転位置を検知する位置検知手段を設け、その回転位置を管理する必要がある。本実施形態では、遮蔽部材27の回転位置を検知する位置検知手段として、図12(a)に示す構成を採用している。
この位置検知手段は、被検知部である1つのフィラー54と、被検知部の位置を検知する二つの検知センサ55,56とを備える。フィラー54は、略扇形に形成されており、図示しないリンク機構を介して遮蔽部材27と連動して正方向X1および逆方向X2に回転するように構成されている。
2つの検知センサ55,56は、フィラー54の回転方向に離間され、何れも図示しないフレームなどに固定されている。この検知センサ55,56は、例えば発光部と受光部を有するフォトインタラプタで構成することができる。
2つのセンサ55,56のうち、一方(図12(a)の上側)は、遮蔽部材27の初期位置を検知する初期位置検知用センサ55であり、他方は回転角制御用センサ56である。初期位置検知用センサ55は、遮蔽部材27が初期位置にある時に、その発光部と受光部間にフィラー54の逆方向X2のエッジが進入し、発光部と受光部間が遮光されるような位置に配置される。回転角制御用センサ56は、初期位置検知用センサ55との間の回転方向の位相角が、扇形フィラー54の中心角よりも大きくなるような位置に配置されている。
ここでの初期位置は、ハロゲンヒータ23が遮蔽部材27によって遮蔽されず、定着ベルト21の被加熱領域αの面積が最大となるような位置に定められる(図3参照)。また、初期位置は、遮蔽部材27の移動範囲のうち、逆方向側の端部となっている。従って、印刷動作中に遮蔽部材27が初期位置を越えて逆方向X2に回転することはない。
以上の構成において、初期位置検知用センサ55の出力信号がLowからHighに切り換われば、その時点で、遮蔽部材27が初期位置にあると判定することができる(この時、回転角制御用センサ56の出力信号はLowである)。
一方、遮蔽部材27が初期位置から正方向X1に回転すると、図12(b)に示すように、フィラー54の正方向のエッジが回転角制御用センサ56を通過する。これにより、その発光部と受光部の間が透光状態から遮光状態に切り替わる(回転角制御用センサ56の出力がLowからHighになる)。
この時の遮蔽部材27の位置を基準位置(ゼロ点)とし、その後、ステッピングモータ42を規定パルス分だけ正方向に回転させることで、遮蔽部材27を狙いの遮蔽位置に配置することができる(図12(c)参照)。基準位置の設定のための条件は、次の2つの条件から決めることができる。第1の条件は、初期位置よりも正方向X1側に位置することである。第2の条件は、初期位置と基準位置間の正逆方向移動時に、遮蔽部材27が基準位置に到達したこと、および初期位置に到達したことを、それぞれ上記位置検知手段で検出できることである。
このように、基準位置を基準として、そこからの距離(回転角)に基づいて遮蔽部材27の移動終点を定めるようにすれば(開ループ制御)、位置検知手段の構成を簡略化することができる。これに対して閉ループ制御は、遮蔽部材27の位置情報をモータ42にフィードバックし、遮蔽部材27が遮蔽位置に達したことを検知してから遮蔽部材27を停止させる。このため、定着ベルト21の被加熱領域αの面積を変更するのに、遮蔽部材27の位置情報を検出するセンサや、フィードバック制御シーケンスが必要になるから構成が複雑化する。
遮蔽部材27は、その正方向X1の回転で定着ベルト21の被加熱領域αを遮蔽する面積が増大するように取り付けられている。つまり、遮蔽部材27が正方向X1に回転するほど定着ベルト21の被加熱領域αの面積が縮小する。
遮蔽部材27が初期位置と基準位置間を移動する間は、遮蔽部材27による被加熱領域αの遮蔽面積が実質的に0となる。遮蔽部材27が基準位置から少しでも正方向X1に回転すれば、被加熱領域αの面積が縮小する。遮蔽部材27を正方向X1に回転させながら各遮蔽位置で停止させれば、被加熱領域αの面積を段階的に縮小させることができる。
次に作像が開始されるまでの定着装置各部の動作順序を説明する。画像形成装置の制御装置が作像開始の信号を受けると、遮蔽部材27が初期位置にあるか否かの判定が行われる。
この際、上記のとおり初期位置検知用センサ55がHigh(遮光状態)で回転角制御用センサ56がLow(透光状態)であれば、遮蔽部材27が初期位置にあると判定される。また、ニップ部Nが脱圧状態から加圧状態に切り替えられる。この加圧状態に切り替え完了後にハロゲンヒータ23がONとなり、ハロゲンヒータ23による定着ベルト21の加熱が開始される。
ハロゲンヒータONの後、遮蔽部材27を正方向に回転させる。この正方向の回転においては、回転角制御用センサ56で検出した基準位置(図12(b))から目標の遮蔽位置に対応するパルス数だけステッピングモータ42を駆動するとで、遮蔽部材27を狙いの遮蔽位置に移動させる。
その後、図2の矢印A1で示すように、未定着のトナー画像Tを定着ベルト21側に向けて用紙Pをニップ部Nに送入する。そして、用紙Pを定着ベルト21と加圧ローラ22で加熱・加圧することで、トナー画像Tの定着が行われ、作像が終了する。
トナー画像Tが定着された用紙Pは、ニップ部Nから図2中の矢印A2方向に搬出される。このとき、用紙Pの先端が図示しない分離部材の先端に接触することにより、用紙Pが定着ベルト21から分離される。その後、分離された用紙Pは、上述のように、排紙ローラによって機外に排出され、排紙トレイにストックされる。
次に作像終了後の定着装置各部の動作順序を図13のタイミングチャートに基づいて説明する。 画像形成装置の制御装置は、最終用紙の後端がニップ部Nから脱出するタイミングで定着装置に停止信号を送信する。
停止信号の受信後は先ずハロゲンヒータ23がOFFとなり、次いでヒータリレーがOFFとなる。次に遮蔽部材27が初期位置(HP)に戻る。
ここまで定着ベルト21の回転は継続しているが、遮蔽部材27が初期位置に戻ってから所定時間t1だけ経過した後で、定着モータを停止させる。定着モータの停止後、図11(a)(b)に示すニップ圧切換手段60でニップ部Nを脱圧させる。
遮蔽部材27が初期位置に戻ってから時間t1だけ定着ベルト21の回転を継続させているのは、定着ベルト21が余熱で局所的に加熱されて定着ベルトに温度偏差が生じるのを防止するためである。この時間t1は、定着ベルト21が均熱化される時間を見込んで設定される。例えば温度センサ28で検知した温度情報からt1の終期を定めることができ、あるいは予め定めた一定時間が経過した時点をt1の終期とすることもできる。
以上は作像動作が正常に終了した場合の動作順序である。しかし、作像中(画像信号が入力されてから定着後の用紙が排紙トレイに排出されるまでの間)は、搬送路R(図1参照)でのジャムの発生、あるいは画像形成装置内の各部の異常により、画像形成装置が緊急停止する場合がある。
このような作像動作の異常発生時でも、作像動作の正常終了と同様に遮蔽部材27を初期位置に復帰させる制御を行うと、それに伴って定着装置の停止が遅れてしまう。そうすると、定着ベルト21が余熱で加熱され、温度斑が発生して定着ベルト21が部分的に変形するおそれがある(図14の領域Q参照)。あるいは定着装置内でジャムが生じた場合、ジャム紙が定着ベルト21を内側に押し込む場合もある。
このような状況下で、遮蔽部材27を回転させて初期位置に戻すと、遮蔽部材27が定着ベルト21の内周面の近傍で移動することもあって、変形した定着ベルト21の内周面と遮蔽部材27とが摺動する。そうすると、遮蔽部材27と定着ベルト21が互いを傷つけ合い、あるいはモータ42が過剰負荷を受けて故障するおそれがある。
以上の問題に鑑み、本実施形態では作像動作の異常発生時には、遮蔽部材27を異常発生時の位置で停止させ、他所へは移動させないこととする。これにより、異常発生に伴って定着ベルト21が変形した場合でも、定着ベルトと遮蔽部材27が摺動する事態を防止することができ、定着ベルト21、遮蔽部材27、さらには遮蔽部材27の駆動機構が受けるダメージを軽減することができる。
異常発生時の定着装置各部の動作順序は、図2に示す媒体検知センサ29が用紙を検知するか否かによって、以下の二通りに分かれる。
(異常発生時に媒体検知センサが「用紙有り」の判定をした場合の動作)
先ず異常発生時に媒体検知センサ29が用紙有りと判定した場合の定着装置各部の動作順序を、図15のタイミングチャートに基づいて説明する。
画像形成装置から異常検出信号が送信されると、ハロゲンヒータ23がOFFとなり、次いでヒータリレーがOFFとなる。ヒータリレーのOFF後に作像線速をスローダウンして低速線速に切り替え、低速状態で定着ベルト21を所定時間Taだけ正転させる。
時間Taの経過後に定着ベルト21を停止し、その後、ニップ圧切換手段60を有する場合には、ニップ部Nを脱圧状態に切り替える。これらの動作が完了した後、画像形成装置に設けられた報知手段(操作パネルへの表示、異常表示ランプの点灯、アラーム音の発生等)で、外部に異常発生を報知する。異常発生の報知後は定着装置の使用を禁止する。以上の一連の動作中は、遮蔽部材27が異常発生時の位置で停止している。
このように媒体検知センサ29が「用紙有り」と判定した場合、用紙先端は、ニップ部Nを通過して定着ベルト21から分離した状態にあると考えられる。この場合、定着ベルト21をさらに正転(用紙を搬送方向下流側に送り出す方向の回転)させても用紙が定着ベルトに巻き付くことはないため、上記の手順ではヒータOFF後の定着ベルト21の動作として、より安定的な正転を選択している。
このヒータOFF後の定着ベルト21の正転中は、定着ベルトの被加熱領域αのうち、遮蔽部材27で遮蔽されていない領域がハロゲンヒータ23の余熱で加熱されることとなる。この際、定着ベルト21の正転に伴って用紙Pがニップ部Nを通過し、定着ベルト21の熱が用紙に奪われるため、定着ベルトに大きな温度偏差が生じることはない。
従って、定着ベルト21での温度斑の発生、さらには定着ベルト21の変形といった事態に至ることを防止することができる。この正転時間Taは、定着ベルト21の全周がニップ部Nを通過して定着ベルト21の熱を記録媒体に移動させ、さらに記録媒体通過後は熱を加圧ローラ22に移動させるのに十分な時間に設定する必要がある。
目安としては、定着ベルト21が一回転する程度の時間が好ましい。定着ベルト21の正転中の回転線速を低速に切り替える目的は、定着ベルト21の熱を用紙Pに効率よく移動させることで、定着ベルト21に生じる温度偏差を極力小さくするためである。
(異常発生時の電力供給)
ここで、異常発生時の電力供給について図19と図20Aにより説明する。前述したように、一般に画像形成装置は、ユーザーが危険状態に晒されないように、各種のインターロック回路を備えている。当該インターロック回路の一例を図19により簡単に説明する。図19は、商用周波数のAC電圧が、コンセント80から装置のAC入力プラグを介してノイズ・フィルタ81に入力される構成を示している。
この商用AC電圧は、ノイズ・フィルタ81でノイズ除去された後に、装置本体に備えられた第1電源としての直流電源82で直流電圧に変換される。そして、当該直流電圧が、接点を有する外装ドアスイッチ83を介して、駆動回路84と高圧電源85に入力される。
従って、外装ドアスイッチ83の開閉により、駆動回路84と高圧電源85の両方の電源ラインが開閉される。駆動回路84には、定着装置の駆動回路の他、感光ドラムを駆動するモータやその他のモータMの駆動回路、クラッチ類CLの駆動回路が含まれる。また、高圧電源85は各種プロセス制御に使用される。
定着装置の加熱源としてのハロゲンヒータ23は、商用AC電圧をインバータ駆動回路でデューティ制御することで通電制御される。当該インバータ駆動回路は、図20Aの加熱源制御部に対応する。
外装ドアが開かれると、前記外装ドアスイッチ83が開いて直流電源82が強制的に遮断され、駆動モータ等への電力供給が強制的に遮断される他、加熱源制御部への電力供給も遮断される。このため、ハロゲンヒータ23への通電も停止される。
画像形成装置が正常に動作しているときの電力は、図20A(a)で示されるように、加熱源に対しても定着モータに対しても、商用電源をソースとして第1電源から電力供給される。定着装置では、電源が遮断されても加熱源に余熱がある。このため、外装ドアスイッチ83が開かれることで定着ベルト21が停止したままでは、定着ベルト21が局所的に加熱される。
そして、定着ベルト21がこの局所的加熱により温度班や変形のダメージを受ける。このようなダメージを防止するために、本実施形態においては図20Aのように第2電源を備えている。
そして、例えば異常発生直後に外装ドアが開かれ、第1電源からの電力供給が遮断された場合に、図20A(b)に示すような第2電源による電力供給系統にする。第1電源(直流電源82)から第2電源への切り換えは、電源切換手段PSで行う。
このような電源切換手段PSは、例えば公知の電気リレーを使用することで容易に構築することができる。これにより、外装ドアが開かれた状態でも、少なくとも定着モータの駆動を継続し、異常発生時に稼働中であった定着ベルト21の正転動作を継続することができる。
ここで、第2電源は定着モータやそれに付随する駆動源を動作できる最低限の容量を有していれば良く、大型の蓄電池等を用いる必要はない。このように本実施形態により、異常時に外装ドアを開けられるなどしても定着ベルト21の所望の正転動作を継続することが可能となり、定着ベルト21の温度斑の発生や変形を防止することが可能となる。
(異常発生時に媒体検知センサが「用紙無し」の判定をした場合の動作)
次に、異常発生時に媒体検知センサ29が「用紙無し」と判定した場合の定着装置各部の動作順序を、図16のタイミングチャートに基づいて説明する。
画像形成装置から異常検出信号が送信されると、ハロゲンヒータ23がOFFとなり、次いでヒータリレーがOFFとなる。ヒータリレーのOFF後に定着モータにブレーキ制御を行い、定着ベルト21を停止させる。
所定時間Tcだけ定着モータを強制停止させた後、定着モータを逆転方向に切り替え、定着ベルト21を所定時間Tdだけ逆転駆動した後に定着モータを停止する。その後、ニップ圧切換手段60を有する場合には、ニップ部Nを脱圧状態に切り替える。この定着ベルト21の逆転駆動も、図15により正転駆動で前述したのとまったく同様に、電力供給を第2電源による電力供給系統に切り換えて行う。
これらの動作が完了した後、画像形成装置に設けられた報知手段で、外部に異常発生を報知する。異常発生の報知後は定着装置の使用を禁止する。以上の一連の動作中も、遮蔽部材27は異常発生時の位置で停止している。
ヒータOFF後に定着ベルト21を逆転させるようにしたのは、正転させると用紙が定着ベルト21に巻き付くおそれがあるためである。定着ベルト21に用紙が巻き付くと、ユーザーによるジャム処理が困難となり、あるいは厚紙などのコシの強い用紙が巻き付くことで定着ベルト21が破損するおそれがある。ヒータOFF後に定着ベルト21を逆転させることで、かかる不具合を防止することができる。
定着モータの逆転中は、媒体検知センサ29が「用紙有り」と判定した場合と同様に、定着ベルトの被加熱領域αのうち、遮蔽部材27で遮蔽されていない領域がハロゲンヒータ23の余熱で加熱される。しかし、この場合もブレーキ制御および定着ベルト21の逆転に伴って用紙Pがニップ部Nを逆方向(用紙搬送方向上流側)に通過するため、定着ベルト21の熱が用紙に奪われる。従って、定着ベルトに大きな温度偏差が生じることはなく、温度斑の発生、さらには定着ベルト21の変形を防止することができる。
媒体検知センサ29が「用紙有り」と判定した場合で述べたのと同様の理由から、逆転時間Tdは、定着ベルト21が一回転する程度の時間に設定するのが好ましい。定着ベルト21の逆転中の回転線速を低速に切り替えるのも、媒体検知センサ29が「用紙有り」と判定した場合で述べたのと同様の理由による。
なお、図16に示す動作手順では、定着モータの逆転前にブレーキ制御および強制停止を行っているが、これは正転から逆転に切り替える際の定着モータの破損を防止するためである。ブレーキ制御や強制停止を必要とせず、いきなり正転から逆転へ切り替えることが可能な定着モータを使用する場合には、ブレーキ制御および強制停止を行う必要はない。
以上に述べた動作順序(図15および図16)を採用することにより、画像形成装置の異常発生時に、短時間で定着装置および画像形成装置を停止させることができる。この停止に要する時間は、媒体検知センサ29による用紙の有無の判定結果がいずれであっても同程度の短時間である。従って、画像形成装置の各部が受けるダメージを軽減することができる。
また、定着ベルト21での温度斑の発生や定着ベルトの変形も防止することが可能となる。仮に定着ベルト21が変形しても、遮蔽部材27が停止状態にあるので、定着ベルト21と遮蔽部材27の無用な摺動を回避することができ、これらの部材の損傷を防止することができる。
次に、異常発生時のニップ圧切換手段60に対する電力の供給について、図20Bを用いて説明する。正常に動作しているときの電力は、図20B(a)で示されるように、加熱源に対しても加圧・脱圧モータに対しても、第1電源をソースとして電力供給される。
異常発生時は、図20B(b)に示すような第2電源による電力供給系統となり、少なくとも加圧・脱圧モータの駆動を継続する。これにより、異常発生時の脱圧動作を、例えば外装ドアが開かれた場合にも継続することができる。第2電源は加圧・脱圧モータやそれに付随する駆動源を動作できる最低限の容量を有していれば良く、大型の蓄電池等を用いる必要はない。
このように、本実施形態による脱圧動作により、ニップ部Nが加圧状態のままでジャム処理が行われるのを防止することができる。このため、ニップ部Nに挟まれた用紙が引き抜かれることにより、定着ベルト21や加圧ローラ22に傷が付いたり、あるいは用紙が千切れてユーザーによるジャム処理が困難になったりすることを防止することができる。なお、図20Bに図20Aの構成を組み合わせてもよいことは勿論である。
(第2電源としての充電式電池)
前述のように、第2電源は定着モータ、加圧・脱圧モータやそれに付随する駆動源を動作できる最低限の容量を有していれば良い。従って、第2電源として大型電池は必ずしも必要ではなく、小型電池でも十分に対応することができる。
また、第2電源として充電式電池を用いても良い。図20Cは当該充電式電池を用いた実施形態である。充電式電池は、商用電源をソースとする第1電源によって充電可能に構成された電池である。充電式電池の容量が低下すると、充電装置を介して、第1電源からの電力によって充電式電池が充電される。第2電源として充電式電池を用いることにより、第2電源として通常の電池を用いた場合の電池の交換作業が不要になる。なお、図20Cに図20Bの構成を組み合わせてもよいことは勿論である。
(定着ベルトの冷却装置)
次に、定着ベルトの冷却装置を備えた画像形成装置の実施形態について説明する。図21に示すように、図1の画像形成装置に対して、定着ベルト21を冷却する冷却手段としての冷却装置200が設置されている。冷却装置200以外は、図1の画像形成装置と同様である。
この冷却装置200は、具体的に例えば定着ベルト21に対向して配設された冷却ファンである。冷却ファンによって、定着ベルト21に大きな温度偏差が生じるのを防止し、定着ベルト21の温度斑の発生や変形を防止する。
図示は省略するが、冷却装置200は、定着ベルト21を効率よく冷却する目的と設置スペースを鑑みて、長手方向や周方向に複数個を並設しても良い。なお、定着ベルト21に対するトナーの高温オフセットを防止するために配設された既設の冷却手段を冷却装置200と兼用することも可能である。
この冷却装置200は、正常時は図22Aの(a)のように、第1電源から電力が供給されて作動されるが、異常発生時は図22Aの(b)のように、第1電源とは異なる第2電源から電力が供給されて作動する。すなわち、異常発生時に第1電源からの電力供給が遮断された場合には、冷却装置200は第2電源から電力が供給され、ファン制御部によって制御されて所定のタイミングで定着ベルト21を冷却する。第1電源(直流電源82)から第2電源への切り換えは、電源切換手段PSで行う。
異常発生時に外装ドアが開かれる等して第1電源からの電力供給が遮断された場合でも、前述した定着ベルト21の正逆転動作に加え、冷却装置200で定着ベルト21を冷却することで、更に効率良く、短時間で定着ベルトに大きな温度偏差が生じることを防止することができる。これにより、定着ベルト21の温度斑の発生や変形を防止することが可能となる。なお、図22Aの構成に、図20A−図20C構成を組み合わせてもよいことは勿論である。
ここで、定着装置の温度により、冷却装置200の動作を実施するか否かの判断を行ってもよい。定着ベルト21に温度斑の発生や変形が発生する温度は定着装置固有であるので、図2の温度センサ28からの温度情報を基に、図23A又は図23Bのフローのように冷却装置200の制御を行ってもよい。
すなわち、図23Aと図23Bに示すように、ステップS1で異常の発生リスクが高い温度(X℃以上)であると判定されれば、ステップS2で冷却装置200の動作を開始する。また、異常の発生リスクのない温度(X℃未満)であると判定されれば、冷却装置200を停止したままにする。
ステップS2で冷却装置200を作動後、図23Aのように異常の発生リスクのない温度(X℃未満)に低下するまで冷却を継続するか、図23BのようにX℃未満となる所定時間が経過するまで冷却を継続する。その後、ステップS4で冷却装置200の動作を停止する。
また、以上に述べた動作順序では、定着ベルト21が停止してからニップ部Nを脱圧状態に切り替えている。この理由は、ニップ部Nが加圧状態のままでジャム処理を行うと、ニップ部Nに挟まれた用紙が引き抜かれることにより、定着ベルト21や加圧ローラ22に傷が付くからである。
また、用紙が千切れてユーザーによるジャム処理が困難となるおそれがあるためである。また、定着ベルト21の回転停止前からニップ部を脱圧状態にすると、定着ベルト21がスリップして定着ベルトが部分的に昇温し、定着ベルト21が変形するおそれがあるためである。
さらに、以上に述べた動作順序で、図15および図16に示す各部の操作が全て完了してから、報知手段で異常発生を報知するようにしたのは、以下の理由による。すなわち、報知手段により異常発生が報知されると、ユーザーは外装ドアを開放してジャム処理等、異常発生の原因を除去する処理を開始する。
一般に外装ドアを開放すると、安全性の観点からインターロックスイッチがOFFとなり、これによって定着モータを含む全ての駆動源が強制停止されることになる。ヒータOFFの直後に異常発生を外部に報知すると、定着モータの正転や逆転による放熱が開始される前に外装ドアが開放されて定着ベルト21が強制停止されるおそれがある。そうすると、定着ベルト21に大きな温度偏差を生じることとなる。
また、ニップ部も加圧状態のままで強制停止されるため、加圧状態のニップ部に用紙が存在する場合には、この用紙を無理に引き抜くことで、定着ベルト21や加圧ローラが傷付くおそれがある。さらに、ユーザーによるジャム処理自体が不能となるおそれもある。
これ対し、ヒータOFF、定着ベルト21の正転もしくは逆転、およびニップ部の加圧状態から脱圧状態への切り替え、この各動作が全て完了してから異常発生を外部に報知することにより、以上に述べた不具合を回避することが可能となる。
ジャム処理等により異常発生の要因が解消した後は、画像形成装置の立ち上げ(リカバリー)が行われる。この立ち上げ時の定着装置の各部は、図17のタイミングチャートで示す順序で動作を始める。
すなわち、リカバリー信号を受信すると、先ず遮蔽部材27を初期位置に戻し、併せてニップ部Nを加圧状態に切り替える。その後、定着モータを起動して定着ベルト21を回転(正転)させ、次いでヒータリレーおよびハロゲンヒータ23をONにすることで、画像形成装置をレディー状態に移行させる。
この動作順序において、ヒータONの前に遮蔽部材27を初期位置に移動させるのは、定着ベルト21の温度偏差を抑制するためである。すなわち、遮蔽部材27が異常発生時の停止位置のままでヒータをONにすると、定着ベルト21の被加熱領域の一部が遮蔽された状態となる。
このため、定着ベルト21の温度偏差が大きくなって定着ベルトに温度斑が生じ、あるいは定着ベルトが変形するおそれがある。遮蔽部材27を初期位置に復帰させた後にヒータをONにすれば、被加熱領域αの全体をむらなく加熱することができるため、前述した問題を回避することができる。
なお、図17のタイミングチャートでは、遮蔽部材27の初期位置への復帰とニップ部Nの加圧状態の切り替えを同時に行っているが、これらの動作は、定着モータの回転開始前であれば必ずしも同時に開始する必要はない。どちらか一方の動作を先行させて開始することが可能である。
図18に、この立ち上げに伴って、遮蔽部材27を初期位置に復帰させる際の制御フローを示す。図示のように、リカバリー信号の受信後、遮蔽部材27を逆方向X2に回転させて初期位置HPに復帰させる。
ここで、初期位置検知用センサ55の出力がHighであるか否かの判定を行う。所定の設定時間が経過しても初期位置検知用センサ55がLowのままであれば異常と判断し、アラート信号を送信して報知手段で外部に異常発生を報知する。
なお、異常発生のタイミングによっては、遮蔽部材27が初期位置に待機している段階で異常が発生する場合もある。その際も遮蔽部材27は、異常発生時の初期位置で停止させておく。この場合、画像形成装置のリカバリー時には、遮蔽部材27を移動させる必要がなく、早期に初期位置の検出が終了するので、素早く立ち上げることが可能となる。
次に、画像形成装置を使用するユーザーの保護のための構成について説明する。ユーザーが画像形成装置の外装ドアを開いた場合に、インターロック回路により第1電源が強制的に遮断され、加熱源や各駆動モータへの電力の供給が強制的に遮断され、動作が停止することは前述の通りである。
本実施形態では、画像形成装置の外装ドアを開いた場合でも、電源切換手段によって第1電源から第2電源に切り換えることで、定着モータ、加圧・脱圧モータ等を後処理シーケンスのため継続駆動可能にしている。この後処理シーケンスは長くても1〜2秒で完了する。従って、異常発生直後にユーザーが外装ドアを開けて内部の駆動部や高電圧部にアクセスするまでの最短時間よりも前に後処理シーケンスを完了することができる。
しかし、さらなる安全のために、以下のような手段を講じておくのが望ましい。なお、これらの手段は一般的な画像形成装置に既に装備されているものである。
・外装ドアを開いただけでは直接触れられないような位置に駆動部をレイアウトする。
・駆動部に簡易的なカバー等を設け、ユーザーが直接触れることができない構成にしておく。
・上記に加え、定着装置をネジ止めで画像形成装置に固定する構成とし、時間的に駆動動作中には定着装置が取り外せないようにする。
・また、万一、定着装置が取り外された場合には、駆動を停止するなどの安全装置を備えておく。
なお、第1電源からの電力供給が遮断されるケースは、ユーザーによって外装ドアが開けられるケースに限定されない。定着装置以外の装置で発生した故障等で画像形成装置が自動的に強制停止する場合などでも、第1電源からの電力供給が遮断される場合がある。
このような場合に備えて、外装ドアの開閉機構にロック手段を設け、第1電源からの電力供給が遮断された場合には、当該ロック手段を自動的にロック作動させ、外装ドアの開閉機構をロックすることができる。図24は当該ロック手段の例を示すものである。
図24(a)のように、画像形成装置1の前面に、左ドア100aと右ドア100bを有する観音開き式の外装ドア100が設けられている。左右のドア100a、100bの上部には取手101が設けられ、右ドア100bの取手101にLED表示部102が設けられている。そしてロック手段がロック作動中はLED表示部102が点灯するようになっている。
図27(b)に示すように、右ドア100bの内側に近接してロック手段としてのドアロックユニット103が本体側に設けられている。このドアロックユニット103に内蔵されたソレノイド104がONにされると、それに連動してレバー部材105が引き上げられるようになっている。レバー部材105の先端のカギ部105aは、通常は右ドア100bの内壁に取り付けられたL字型金具106の開口部106aに挿入されていて、これにより右ドア100bが開放不能にロックされている。また、図27(c)に示すように左ドア100aから右ドア100bの内側に延びたストッパ部107によって、右ドア100bを開放しないと左ドア100aが開かない構造になっている。
ドアロックユニット103のロック作動(ソレノイドのOFF、LED表示部102の点灯)は、例えば画像形成装置の強制停止により作動する所定のインターロック回路の電気リレーと連動させればよい。また、当該ロック機構と併せて、画像形成装置の操作パネルに、「外装ドアを開けないでください」等の表示をするようにしてもよい。こうすることで、前述した安全装置と同様に、ユーザーの安全性を向上させることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、定着部材として、定着ベルトの代わりに中空(筒状)又は中実の定着ローラを用いてもよい。
また、遮蔽部材の形状は、上述の実施形態に限定されることはない。使用する紙サイズに応じて、遮蔽部材が3つ以上の段差部を有する形状に形成してもよい。また、本発明に係る定着装置を搭載する画像形成装置も、図1に示すようなプリンタに限らず、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等とすることが可能である。