JP2015020094A - 空気清浄化装置および空気清浄化方法 - Google Patents

空気清浄化装置および空気清浄化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】イオンを含む空気により、空気中に浮遊するカビや細菌等を破壊するだけでなく、空気中の浮遊微粒子を回収可能とし、これによりフィルタの清掃や交換などのメンテナンスの頻度を抑えつつあるいはフィルタを用いずに空気の清浄化を行うことでき、しかも、簡単な構成により低電圧かつ低損失で高い集塵能力を発揮することができる空気清浄化装置を得る。
【解決手段】空気清浄化装置1001において、外部から送入された空気を液体と接触させる気液接触処理を行う気液接触装置200と、気液接触処理により得られた、空気中の浮遊微粒子を含む液滴を帯電させる帯電器10と、帯電した液滴を静電吸着により捕獲する液滴捕獲部300とを備えた。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気清浄化装置および空気清浄化方法に関し、特に、空気と液体との気液接触により空気中の汚染微粒子を含む液滴を生成し、この液滴をさらに帯電させ、帯電した液滴を静電吸着により回収することにより、空気を清浄化する装置および方法に関するものである。
従来から空気調和機には、イオン発生装置を空気調和機内部の送風機近傍に設け、室内にプラスイオン及びマイナスイオンを拡散させることにより、室内のカビ、細菌等を除去できるようにしたもの(特許文献1など)がある。
図9は、この特許文献1に開示の空気調和機を説明する図であり、空気調和機の断面構造を示している。
この空気調和機30は、筐体の前面上部に吸入口34が開口し、前面下部に排出口35が開口している。筐体内には吸入口34と排出口35とを連結する空気流路が形成され、空気流路内には送風機(回転羽式空気流発生器)32が設けられている。吸入口34と送風機32との間にはエアフィルタ(以下、フィルタという。)33が設けられている。排出口35には風向を可変する風向板(ルーバ)33bが回転軸33aに回転可能に支持されており、排出口35の近傍にはイオンを発生するイオン発生装置20が配置されている。
空気調和機30では、フィルタ33が吸入口34の内側に設けられており、吸入口34から吸い込んだ室内空気がフィルタ33を通過して排出口35から室内へ吹き出すようになっている。このため、吸入口34から吸い込んだ空気中に浮遊する塵埃はフィルタ33により除去される。なお、図9中、31は熱交換器、31aはその下側に配置されたドレンパンである。
ところで、このフィルタ33に塵埃が付着すると、目詰まりが生じて通風抵抗が増加し、空気調和機30の処理能力が低下すると共に、消費電力が増大するという不都合が生じるため、フィルタ33は清掃を行う必要がある。
このため、空気調和機30は、室内の空調を行う室内空調モードと、筐体の内部を清浄する内部清浄モードとを備えている。
室内空調モードでは、吸入口34および排出口35が開かれて、熱交換器31、送風機32およびイオン発生装置20が駆動される。室内の空気は吸入口34から空気流路に流入し、空気に含まれた塵埃がフィルタ33により捕集される。フィルタ33により塵埃が除去された空気は熱交換器31により加熱あるいは冷却され、さらに、イオン発生装置20で発生したイオンとともに排出口35から送出される。排出口35から送出されたイオンを含む空気は室内の温度調節を行うと同時に、浮遊するカビや細菌等を破壊する。これにより、室温の調整とともに、室内の除塵および除菌が行われる。
内部清浄モードでは風向板33bの先端が吸入口34の方向に向けられ、熱交換器31は駆動されずに送風機32およびイオン発生装置20が駆動される。空気流路を流通する空気はイオン発生装置20により発生したイオンを含み、排出口35から送出される。排出口35から送出されたイオンを含む空気は、風向板33bにより吸入口34に導かれ、直ちに吸入口34から吸い込まれる。即ち、送風機32、イオン発生装置20、およびフィルタ34を含む最短の空気流循環経路内で強制的にイオンを含む空気を循環させる。これによりイオンを含む空気は、空気調和機30のフィルタ33および空気流路の内壁に付着した細菌等や空気流路内を浮遊する細菌等を効果的に破壊することとなり、フィルタ33および空気流路の除菌が行われる。
特開2003−156245号公報
しかしながら、従来の空気調和機では、内部清浄モードでは、吸入口34から空気調和機内の空気流路を介して排出口35に向かう経路と、排出口35から空気調和機の外表面に沿って吸入口34に戻る経路とからなる空気流循環経路で、イオンを含む空気を強制的に循環させているだけであるので、イオンを含む空気により、フィルタ33および空気流路の内壁に付着した細菌等や空気流路内を浮遊する細菌等を破壊することはできても、フィルタの除塵はほとんど行うことができない。従って、定期的にフィルタの清掃や交換などのメンテナンスを行わないと、フィルタに捕捉された塵埃の量が過多となり、フィルタ本来の塵埃の捕集機能が損なわれてしまうことがある。また、フィルタの目詰まりに起因して、送風機の動力が過大となり、消費電力が増大することもある。言い換えると、別途フィルタを定期的に清掃する必要があり、空気調和機の利便性が悪いという問題があった。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、イオンを含む空気により、空気中に浮遊するカビや細菌等を破壊するだけでなく、空気中の浮遊微粒子を回収可能とし、これによりフィルタの清掃や交換などのメンテナンスの頻度を抑えつつあるいはフィルタを用いずに空気の清浄化を行うことでき、しかも、簡単な構成により低電圧かつ低損失で高い集塵能力を発揮することができる空気清浄化装置および空気清浄化方法を得ることを目的とする。
本発明に係る空気清浄化装置は、空気を清浄化する空気清浄化装置であって、外部から送入された空気を液体と接触させる気液接触処理を行う気液接触装置と、該気液接触処理により得られた、空気中の浮遊微粒子を含む液滴を帯電させる帯電器と、帯電した該液滴を静電吸着により捕獲する液滴捕獲部とを備えたものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記液滴捕獲部は、前記外部から送入された空気の流通路内に電界を発生させることにより、帯電した前記液滴を静電吸着により捕獲する捕獲電極と、該捕獲電極で捕獲した該液滴を溜める液滴容器とを有することが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記気液接触装置は、前記外部から送入された空気の流通路の一部に水膜を、該流通路を通過する空気が該水膜を通り抜けるように形成する水膜形成器を含むことが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記帯電器は、前記外部から送入された空気の流通路に電子を放出することにより、該流通路を通過する該空気に含まれる前記液滴を帯電させる電子放出素子を含み、該電子放出素子は、第1電極と、該第1電極上に形成され、少なくとも絶縁性微粒子を含む電子加速層であって、該電子加速層内で電子を加速するための電子加速層と、該電子加速層上に形成された第2電極であって、ダイヤモンドの結晶構造とグラファイトの結晶構造とが混在した非晶質炭素膜を含む、第2電極とを備え、該第1電極と該第2電極との間への電圧の印加により該電子加速層で加速された電子が該第2電極の表面側から外部に放出するように構成されていることが好ましい。
本発明に係る空気清浄化方法は、空気を清浄化する空気清浄化方法であって、外部から送入された空気を液体と接触させる気液接触処理を行うステップと、該気液接触処理により得られた、空気中の浮遊微粒子を含む液滴を帯電させるステップと、帯電した該液滴を静電吸着により捕獲するステップとを含むものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記帯電器は、前記気液接触処理により得られた液滴を該帯電器により発生した電界内を前記空気とともに通過させる電界内通過処理により、該液滴が帯電するように構成されていることが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記電子放出素子における前記第1電極と前記第2電極との間に発生する電界の電界強度が、1V/m〜1E7V/mであることが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記気液接触装置、前記帯電器、および前記液滴捕獲部は、前記外部から送入された空気の流通路に沿って該流通路の上流側から下流側に向かって順次選択的に設置されている、ことが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記液滴捕獲部は、前記捕獲電極で捕獲した液滴を前記液滴容器に排出する液滴排出機構を備えていることが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記浮遊微粒子を含む空気を外部から前記空気清浄化装置内に送入するための空気送入口と、該浮遊微粒子の捕獲により清浄化された該空気を該空気清浄化装置から外部に放出するための空気放出口と、該外部の空気が該空気送入口から送入されて該空気放出口から放出されるように空気流を発生させる空気流発生器とをさらに備えていることが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記水膜形成器は、水を収容する密閉容器であって、該密閉容器の上面壁に複数の貫通孔を形成した密閉容器と、該密閉容器内に水を一定の水圧で供給する加圧供給部とを有し、該上面壁の複数の貫通孔から噴出する噴射水により前記水膜を、前記流通路と交差するように形成することが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記水膜形成器は、水を噴霧する複数の噴霧ノズルを有し、前記流通路内に前記水膜を、該流通路を通過する空気が該水膜を通り抜けるように該噴霧ノズルから水の噴霧により形成することが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記水膜形成器は、微細な噴射水を噴射する複数の微細ノズルを有し、前記流通路を横切る水膜を、該複数の微細ノズルからの噴射水により形成することが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記水膜を形成する微細水粒子の平均粒径が10〜100μmであることが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記液滴捕獲部と前記帯電器との離間距離が、100μm〜50cmであることが好ましい。
本発明は、上記空気清浄化装置において、前記液滴捕獲部は、アースに接続されていることが好ましい。
以上のように、本発明によれば、イオンを含む空気により、空気中に浮遊するカビや細菌等を破壊するだけでなく、空気中の浮遊微粒子を回収可能とし、これによりフィルタの清掃や交換などのメンテナンスの頻度を抑えつつあるいはフィルタを用いずに、空気の清浄化を行うことでき、しかも、簡単な構成により低電圧かつ低損失で高い集塵能力を発揮することができる空気清浄化装置および空気清浄化方法を実現することができる。
図1は、本発明の実施形態1による空気清浄化装置を説明する模式図であり、この空気清浄化装置の断面構造(図1(a))、およびこの空気清浄化装置を、空気清浄機を構成する複数の空気清浄ユニットとして用いた空気清浄機の構成例(図1(b))を示している。 図2は、本発明の実施形態1による空気清浄化装置を説明する斜視図であり、この空気清浄化装置で用いる水膜形成器の噴霧ノズルの外観(図2(a))および噴霧ノズルの配列(図2(b))を示している。 図3は、本発明の実施形態1による空気清浄化装置を説明する図であり、この空気清浄化装置で利用可能な水膜形成器の他の構成例を模式的に示す斜視図(図3(a))および断面図(図3(b))である。 図4は、本発明の実施形態2による空気清浄化装置を説明する模式図であり、この空気清浄化装置の断面構造(図4(a))、この空気清浄化装置を構成する液滴回収装置の電極の表面の構造(図4(b))およびこの電極の断面構造(図4(c))を示している。 図5は、本発明の実施形態3による空気清浄化装置を説明する模式図であり、この空気清浄化装置の断面構造(図5(a))、この空気清浄化装置を構成する液滴回収装置の電極の表面の構造(図5(b))およびこの電極の断面構造(図5(c))を示している。 図6は、本発明の実施形態4による空気清浄化装置を説明する模式図であり、この空気清浄化装置の断面構造を示している。 図7は、本発明の各実施形態による空気清浄化装置における帯電器として用いることができる電子放出装置を説明する図であり、この電子放出装置における電子放出素子の断面構造(図7(a))、その電子放出面の形状(図7(b))、および拡大した図7(a)のA部(図7(c))を示している。 図8は、本発明の各実施形態による空気清浄化装置における帯電器として用いることができる電子放出装置を説明する図であり、この電子放出装置における電子放出素子の断面構造(図8(a))、その電子放出面の形状(図8(b))を示している。 図9は、従来の空気清浄機を説明する図であり、特許文献1に開示の空気清浄機の断面構造を示している。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による空気清浄化装置を説明する模式図であり、この空気清浄化装置の断面構造(図1(a))を示している。
この実施形態1の空気清浄化装置1001は、空気を清浄化する空気清浄化装置であって、外部から空気が空気清浄化装置内に送入され、送入された空気が空気清浄化装置外に排出されるように空気流を発生させる回転羽式空気流発生器41と、外部から送入された空気を液体と接触させる気液接触処理を行う気液接触装置200とを有している。空気清浄化装置1001は、気液接触処理により得られた、空気中の浮遊微粒子を含む液滴を帯電させる帯電器10と、帯電した液滴(以下水滴ともいう。)を静電吸着により回収する液滴回収装置(以下、水滴回収装置という。)300とを有している。
ここで、回転羽式空気流発生器41は回転羽41aを有し、空気清浄化装置外部の空気を吸引することにより、空気清浄化装置内部に空気流を発生させるように構成されている。また、回転羽式空気流発生器41、気液接触処理装置200、帯電器10および液滴回収装置300は、空気清浄化装置内部で発生する空気流が通過する経路(空気流通路)Rtに沿って配置されている。
また、気液接触処理装置200は、空気と水との気液接触が行われるように空気流通路Rtの一部に水の微粒子からなる水膜Wcを形成する水膜形成器210と、水膜を形成するための水を溜めるタンク230と、このタンク230から水膜形成器210に水を供給するポンプ220とを有している。
図2は、本発明の実施形態1による空気清浄化装置を説明する斜視図であり、この空気清浄化装置で用いる水膜形成器の噴霧ノズルの外観(図2(a))および噴霧ノズルの配列(図2(b))を示している。
図2に示すように、水膜形成器210は、噴射水を噴射する複数の噴射ノズル201を有し、ポンプ220により一定圧力で水が供給されることにより噴射ノズル201から水を噴出するようになっている。噴射ノズルの噴霧口201aの内径は、水膜を形成する水の微細粒子の平均粒径が10〜100μmとなる程度のものが好ましい。
また、帯電器10は、空気流通路Rtの一部の電界形成領域Ap内に電子eを放出するものであり、電極eを放出する電子放出電極102と、電子放出電極102に電圧を印加する電源部(以下、単に電源ともいう。)11とを有し、液滴を含む空気がこの電界形成領域Ap内を通過している間に、液滴を帯電させるものである。
この電界形成領域Apは、対向するように配置された帯電器10と液滴回収装置300との間に形成されており、帯電器10は、電子eを放出する電子放出電極102の表面が、液滴回収装置300の電界を発生させる捕獲電極302の表面に対向するように配置されている。ここでは、電子放出電極102と捕獲電極302とは所定距離Dだけ離して配置されており、電界形成領域Apの一端側に空気が流入する送入口Apaが形成され、電界形成領域Apの他端側に空気が排出される排出口Apbが形成されている。
この液滴回収装置300は、帯電器10の電子放出電極102に対向するように配置された捕獲電極302と、捕獲電極302を保持する電極支持部材301と、帯電した液滴、空気分子などが捕獲電極302に吸着するように捕獲電極302に電圧を印加する捕獲用電源12とを有している。また、ここでは、液滴回収装置300と帯電器10とは、個別に電源に繋がっているが、これらの電源により液滴回収装置300と帯電器10との間に電位差が発生するようになっている。また、この液滴回収装置300は、静電吸着により捕獲電極302で捕獲した液滴を捕獲電極302から回収するための液滴容器303を有している。
なお、捕獲電極302における水滴を吸着する粒子吸着面は平坦であり、粒子吸着面に付着した汚染微粒子は簡単に拭き取ることができ、この捕獲電極302に吸着された汚染微粒子を含む水滴の除去は、フィルタなどのメンテナンスに比べると簡単である。このため、捕獲電極302から水滴を回収するための構成(液滴容器など)は、必ずしも必要ではない。また、この実施形態1の空気清浄化装置1001では、液滴回収装置300により汚染微粒子を水滴に含めて捕獲するため、空気流通路Rtには、図示しないエアフィルタを介して空気を流入するようにした場合でも、フィルタへの負担を軽くすることができる。
次に動作について説明する。
このような構成の実施形態1の空気清浄化装置1001では、回転羽式空気流発生器41を駆動して、装置外部の空気(汚染空気)A1を装置内の空気流通路Rtに導入する。これにより、空気清浄化装置に導入された汚染空気A1は水膜Wcおよび電界発生領域Apを通過し、清浄化された空気A2として外部に放出される。
つまり、回転羽式空気流発生器41の羽41aが回転することにより空気清浄化装置1001内で空気流が発生する。
また、ポンプ220が駆動されることで、タンク230内の水がポンプ220により水膜形成器210に供給されると、水膜形成装置210では、空気流通路Rtを横切る水膜Wcが、複数の噴霧ノズル201から噴射される噴射水Jwにより形成される。
従って、外部からの空気A1が水膜Wcを通過する間に、空気A1と水膜Wcの微小水滴との気液接触により空気中の汚染微粒子を含む水滴が形成される。この液滴は空気A1とともに、帯電器10と液滴回収装置300との間の電界Efが形成されている電界形成領域Apに送入され、帯電器10から放出された電子eにより帯電する。帯電した液滴はこの電界Efによって捕獲電極302側に移動する。
つまり、電子eは、液滴回収装置300と帯電器10との離間部に存在する、汚染空気中の浮遊微粒子を含む汚染水滴に衝突および付着することにより、浮遊微粒子を含む汚染水滴がイオン化される。そして、イオン化された浮遊微粒子を含む汚染水滴が、液滴回収装置300と帯電器10との間の電界Efに沿って移動することにより、イオン風が発生する。そして、そのイオンが液滴回収装置300の捕獲電極302に到達することにより、浮遊微粒子を含む空気分子が捕獲される。
これにより、液滴回収装置300は、電界形成領域Apにて帯電された、汚染空気中の浮遊微粒子を含む汚染水滴を静電吸着により回収する。
以下、気液接触について捕捉する。
水膜を空気が通過する際、水膜破裂を起す。このため、水滴、微細水滴、水クラスター等が発生し、浮遊微粒子を含む汚染空気中に存在する水溶性の成分は、水分に溶解される。また、水膜破裂により、正イオン、負イオン同価の静電電場が発生し、イオン中和反応が進行し、無荷電で粒子等は凝集して大きくなったり、汚染空気中に含まれる浮遊微粒子の一部に水分子が付着し、質量増加したりすることにより、汚染空気に含まれる浮遊微粒子の捕集効率が向上する。
このように実施形態1の空気清浄化装置1001では、浮遊微粒子を含む空気と水膜との気液接触により汚染微粒子を含む水滴を生成し、この水滴を帯電器10により帯電させて静電吸着により回収するので、塵埃を液滴回収装置300で回収することができる。このため、フィルタを用いるとしても、このように空気中の浮遊微粒子を液滴回収装置300で回収した後の空気をフィルタに通すことでフィルタに溜まる塵埃の量を減らすことができ、フィルタのメンテナンスの頻度を低減し、場合によってはフィルタを不要とできる。
なお、上記帯電器は、電子の放出により水滴をマイナスに帯電させるものに限定されず、正イオンにより水滴をプラスに帯電させるものでもよい。
また、水膜形成器210に供給するタンク230に水以外の液体、例えば消毒液や芳香を発する液体などを充填し使用してもよい。塩素系の液体などの消毒液を使用することで、除菌性能が向上する。加えて汚染水滴回収のための液滴容器303内で細菌の増殖を抑制することができる。
また、イオンが液滴回収装置300に到達するため、液滴回収装置300はチャージアップする。従って、空気清浄化装置では、このチャージアップを抑制するために、液滴回収装置300にアースを接続してもよい。これにより、液滴回収装置300における電極以外の領域が帯電することを防ぐことができる。
また、上記実施形態1では、水膜形成器210として、複数の噴霧ノズル201をその噴霧口201aが行列状に並ぶように配列したものを示したが、水膜形成器はこれに限定されるものではなく、単数の噴霧ノズルを用いてもよく、水膜形成器は、空気流通路Rtに微粒子状態の水滴からなる水膜を、流通路を横切って形成するものであればどのようなものでもよい。
また、ポンプ圧力もしくはノズル径や水膜形成器の数を調整することで、空気と水とを接触させる気液接触効率を変更することができるため、さまざまな用途により気液接触効率を変更することができる。
図3は、本発明の実施形態1による空気清浄化装置を説明する図であり、この空気清浄化装置で用いる水膜形成器の他の構成を模式的に示す斜視図(図3(a))および断面図(図3(b))である。
図3に示す水膜形成器210aは、内部に充填した水に水圧を掛けるための加圧容器211と、加圧容器内に水を一定の水圧で供給する加圧供給部(ポンプ)220aとを有している。この水膜形成器210aでは、加圧容器211の上面壁には複数の貫通孔(ピット)211aが形成されており、これらの複数の貫通孔211aから噴出する噴射水により、水膜Wcが空気清浄化装置1001における空気流通路Rtに交差するように形成される。なお、図3中、212は、ポンプ220aと加圧容器211とを連結する給水配管である。
また、ポンプ220aの給水圧力もしくは貫通孔(ピット)径や水膜形成器自体の個数を調整することで、空気と水とを接触させる気液接触効率を変更することができることから、水膜形成器を備えた気液接触処理装置では、さまざまな用途に応じて気液接触効率を変更することができる。
特に、本実施形態1の空気清浄化装置では、図2に示す水膜形成器210あるいは図3に示す水膜形成器210aにより液体が噴霧されているため、噴霧状態の液体中に臭気成分が溶解したり、さらに、空気中のオイルミスト等の汚染微粒子が帯電器によって正又は負の電荷に帯電されるため、帯電した汚染微粒子が液滴回収装置300の捕獲電極302に誘引されて物理的に捕捉されたりすることにより、空気清浄能力の更なる向上を見込むことができる。
また、この実施形態1の空気清浄化装置1001は、単独で用いるたけでなく、例えば空気流通路Rtの方向に沿って複数配置することにより1つの空気清浄機1000を構成することもできる。
図1(b)に示す空気清浄機1000は、ベース部材1上に空気流通路Rtの方向に沿って配置された複数の空気清浄ユニットを有しており、それぞれの空気清浄ユニットには、実施形態1の空気清浄化装置が用いられている。
また、本発明の空気清浄化装置は、汚染空気中に含まれる浮遊微粒子以外に、大気中の微量ガスを捕集あるいは濾過する構成としてもよい。ここでいう「大気中の微量ガス」とは、揮発性有機化合物(VOC(volatile organic compounds))やオゾン、水蒸気等を意味する。VOCとは、揮発性を有し、大気中で気体となる有機化合物の総称であり、トルエン、キシレン、酢酸エチルなど多種多様な物質が挙げられる。
さらに、上記実施形態1では、電源12により捕獲電極302に印加する電圧が、0Vよりも大きく、+10kV以下とし、電源11により電子放出電極102に印加する電圧より大きくすることで、電子の放射によりマイナスに帯電した水滴が液滴回収装置300に到達することができる。
さらに、上記実施形態1では、液滴回収装置300と帯電器10との間に発生する電界の電界強度が、1V/m〜1E7V/mとすることで、酸素の解離エネルギーである6エレクトロンボルトよりも低いエネルギーで、汚染空気中の浮遊微粒子を含む汚染水滴中の酸素分子に電子を与えることができる。このため、オゾンや窒素酸化物等の有害物質の発生を防ぐことができる。つまり、大気中での電子の平均自由行程が0.1μmであるため、例えば電界強度が1E7V/mである場合、電子のエネルギーは汚染空気中の浮遊微粒子を含む汚染水滴に衝突するまでに1エレクトロンボルトになる。したがって1E7V/mよりも低い電界強度にすることでオゾン、窒素酸化物の発生を防ぐことができる。
また、上記実施形態1の空気清浄化装置1001では、液滴回収装置300と帯電器10との離間距離を、100μm〜50cmとすることが好ましい。これにより、液滴回収装置300と帯電器10とを近づけることができ、集塵効果が高くなる。また、帯電器10を酸化しにくい材料で構成することで、高温物体の近傍においても長時間駆動することができる。
また、汚染水滴は液滴容器303に移すことで、簡便に汚染粒子を含む水ごと破棄することが可能となるため、汚染水滴を効率よく回収するには、液滴回収装置300の捕獲電極302の表面に微細な溝や勾配をつけてることが好ましく、以下本発明の実施形態2として、捕獲電極302の表面に微細な溝を形成し、捕獲電極302の表面を水平面に対して傾斜させたものについて説明する。
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2による空気清浄化装置を説明する模式図であり、この空気清浄化装置の断面構造(図4(a))、この空気清浄化装置を構成する液滴回収装置の捕獲電極の表面の構造(図4(b))およびこの捕獲電極の断面構造(図4(c))を示している。
この実施形態2による空気清浄化装置1002は、実施形態1の空気清浄化装置1001における液滴回収装置300とは異なる液滴回収装置300aを備えたものであり、この実施形態2のその他の構成は、実施形態1におけるものと同一である。
この実施形態2の空気清浄化装置1002では、液滴回収装置300aは、帯電器10の電子放出電極102に対して、捕獲電極312の表面を傾斜させて配置したものであり、帯電器10の電子放出電極102と液滴回収装置300aの捕獲電極312との間に形成される電界形成領域Apは、その導入口Apaの側が狭く、放出口Apb側が広い構造となっている。つまり、電子放出電極102と捕獲電極312との間隔は、電界形成領域Apの導入口Apa側では間隔D1であり、電界形成領域Apの放出口Apb側では間隔D2(>D1)である。
つまり、液滴回収装置300aの捕獲電極312の表面には、水平面に対する勾配が付いており、捕獲電極312の表面は空気の流れの下流側ほど低くなっている。また、この捕獲電極312の表面には、空気の流れの方向に沿って、水滴を流す複数の流水溝312aがストライプ状に形成されている。また、液滴容器303は捕獲電極312の空気流の下流側端に配置されている。
このような構成の捕獲電極312では、捕獲した水滴が捕獲電極312の流水溝312aに沿ってその下流側端に流れ落ちることとなり、捕獲電極312の空気流の下流側端に配置した液滴容器303では、汚染空気中の浮遊微粒子を含む汚染水滴を効率よく回収することができる。また、このように汚染水滴は液滴容器303に移すことで、簡便に汚染粒子ごと廃棄することが可能となる。
なお、捕獲電極312の勾配は、上記実施形態2で示したように、捕獲電極312の表面は空気の流れの下流側ほど低くしたものに限定されず、捕獲電極312の表面は空気の流れの上流側ほど低くしたものでもよい。
このような構成では、帯電器10の電子放出電極102と水滴回収装置300aの捕獲電極312とが形成する電界形成領域Apでは、空気の導入側から放出側にかけて、両電極間に印加される電界が徐々に強くなることから、電界形成領域Apでの空気流の流速が増加するのに合わせて、イオン風の勢いを増大させることができる。このため、ファンからの空気流を、より広い範囲(断面)にわたって取り込み、効率よく空気の清浄化を行うことが可能となる。
(実施形態3)
図5は、本発明の実施形態3による空気清浄化装置を説明する模式図であり、この空気清浄化装置の断面構造(図5(a))、この空気清浄化装置を構成する液滴回収装置の捕獲電極の表面の構造(図5(b))およびこの捕獲電極の断面構造(図5(c))を示している。
この実施形態3の空気清浄化装置1003は、実施形態1の空気清浄化装置1001における液滴回収装置として、捕獲電極の回転による遠心力により、捕獲電極で捕獲した液滴(水滴)を液滴容器に移す機構を備えたものである。
具体的には、この空気清浄化装置1003は、空気清浄化モードと液滴回収モードとを有し、これらのモードを切り替えて、空気清浄化モードで捕獲電極322で捕獲した液滴(水滴)を液滴回収モードで回収するように構成されている。
つまり、この空気清浄化装置1003は、実施形態1の空気清浄化装置1001の液滴回収装置300とは異なる構成の液滴回収装置300bを備えている。この液滴回収装置300bでは、捕獲電極322及びこれを支持する電極支持部材321は、回転支持機構42の回転シャフト42aにより回転可能に支持されている。この捕獲電極322の表面には、放射状に複数の溝322aが形成されている。
ここで、回転支持機構42は、回転力を与えるモータ40に接続されており、このモータ40の回転力により回転シャフト42aが回転するようになっている。回転可能に支持された捕獲電極322及び電極支持部材321の周囲には、捕獲電極322の回転により捕獲電極322の表面から飛散した水滴を収集して液滴容器303に導くためのガイドカバー部材304が設けられており、このガイドカバー部材304の底部には、収集した液滴を液滴容器303内に落下させる底部開口304aが形成されている。
また、この空気清浄化装置1003は、実施形態1の空気清浄化装置1001の電源12に代えて、捕獲電極322に印加する電圧の極性を変更可能な電源12aを備え、さらに、空気清浄化モードと微粒子回収モードとを切り替えるモード制御部31を備えている。
ここで、モード制御部31は、空気清浄化モードでは、制御信号C15により回転羽式空気流発生器41を駆動して空気流通路Rt内に空気流を発生させ、制御信号C14によりポンプ220を駆動して水膜形成器210に水膜Wcを形成させ、制御信号C11により電源11を制御して帯電器10から電子eを放出させ、さらに、制御信号C12により電源12aを制御して、帯電器10からの電子eの放出によりイオン化された空気を捕獲電極322に静電吸着により捕獲する。また、モード制御部31は、液滴回収モードでは、制御信号C11により電源11から帯電器10への電圧印加を停止し、さらに制御信号C15により回転羽式空気流発生器41を停止させ、制御信号C12により、電源12aが捕獲電極322に印加する電圧の極性を、液滴が捕獲電極322から離れる極性に変更し、さらに制御信号C14によりモータ40を駆動して採取電極322を回転させる。
これにより、捕獲電極322の表面に吸着していた液滴(水滴)は捕獲電極322の回転による遠心力により回転半径の方向に飛散し、飛散した液滴Wdは、捕獲電極322の周囲に配置されているガイドカバー部材304により収集されてこのガイドカバー部材304の底部開口304aを通ってその下側の液滴容器303に集められる。
このような構成の実施形態3の空気清浄化装置1003では、実施形態1の空気清浄化装置1001の電源12に代えて、捕捉電極322に印加する電圧の極性を変更可能な電源12aを備え、さらに、空気清浄化モードと微粒子回収モードとを切り替えるモード制御部31と、捕捉電極322を回転させる機構と、捕捉電極322の回転により飛散した汚染微粒子を収集して回収容器303に導くためのガイドカバー部材304とを備えているので、空気清浄化モードで捕獲電極322に吸着した液滴(水滴)を、液滴回収モードで液滴容器303に回収することができる。これにより、この実施形態3においても、実施形態1と同様に、メンテナンス作業としては、液滴容器303に液滴がある程度溜まった時点でこれを廃棄するという簡単な作業が必要なだけであり、液滴を吸着する捕獲電極322のメンテナンスは基本的に不要であり、また、フィルタを用いている場合でも、フィルタを空気流通路Rtの排出口側に配置することで、フィルタの汚れの進行を抑えることができ、メンテナンス頻度を低減できる。
このように本実施形態3の空気清浄化装置1003では、液滴回収装置300bに回転機構を付与することで、汚染水滴を遠心力もしくは向心力により効率よく回収することができる。このように汚染水滴Wdは液滴容器303に移すことで、簡便に汚染粒子ごと廃棄することが可能となる。また、捕獲電極322の表面に微細な溝322aが形成されているので、汚染水滴を効率よく回収することができる。
なお、捕獲電極322の表面には、その外周側ほど低くなるように勾配を付けてもよい。
また、ガイドカバー部材304は、必ずしも必要ではない。例えば、捕獲電極322で捕獲した、汚染微粒子を含む液滴の水分を蒸発させた後に、捕獲電極322の表面に付着した汚染微粒子を、捕獲電極322を回転させながら拭き取るような機構を備えた場合は、液滴の飛散の恐れがないため、ガイドカバー部材304は不要である。
(実施形態4)
図6は、本発明の実施形態4による空気清浄化装置を説明する模式図であり、この空気清浄化装置の断面構造を示している。
この実施形態4による空気清浄化装置1004は、実施形態1の空気清浄化装置1001において、液滴回収装置が帯電器10の空気流入側及び空気流出側にはみ出すように、電界形成領域Apに沿った液滴回収装置300cの長さを、電界形成領域Apに沿った帯電器10の長さより長くし、帯電器10の空気吸入側及び空気放出側に、液滴回収装置300cの捕獲電極332に対向するように吸入側回転羽式空気流発生器51及び放出側回転羽式空気流発生器52を配置したものである。また、この実施形態4の空気清浄化装置1004では、帯電器10の電子放出電極102は、液滴回収装置300cの捕獲電極332に対して、両電極の間隔が電界形成領域Apの吸入口Apa側で狭く、かつ両電極の間隔が電界形成領域Apの放出口Apb側で広くなるように傾けて配置されている。この実施形態4のその他の構成は、実施形態1におけるものと同一である。
つまり、この実施形態4の空気清浄化装置1004は、汚染空気に含まれる浮遊微粒子を集塵して汚染空気を清浄化するものであり、気液接触装置200と、帯電器10と、液滴回収装置300cとを備えている。また、帯電器10の電子放出面(電子放出電極102の表面)は、液滴回収装置300cの液滴捕獲面(捕獲電極332の表面)と対向して配置されている。この帯電器10は、液滴回収装置300cの表面と離間しており、この離間部の空気を介して、電子eを液滴回収装置300cに付与する。なお、帯電器の電子放出面と液滴回収装置の液滴捕獲面との間のスペース(空気流通路Rtにおける電界形成領域Ap)へは、上述した実施形態で説明したように図示しないエアフィルタを介して空気が導入してもよい。
このような構成の本実施形態4による空気清浄化装置1004では、回転羽式空気流発生器41の駆動により、装置外部の空気が装置内部に導入され、導入された空気が内部の空気流通路Rtを通過して装置外部に排出される。また、気液接触装置200のポンプ220の駆動により、貯水タンク230の清浄用水が水膜形成器210に供給され、これにより水膜形成器210は、空気流通路Rtに交差するように水膜Wcを形成する。さらに、帯電器10の電源11の起動により、電子放出電極102から空気流通路Rtの電界形成領域Ap内に電子eが放出される。また、液滴回収装置300cの電源12の起動により、帯電器10と液滴回収装置300cの間に電界が発生する。
帯電器10から放出された電子eは、液滴回収装置300cと帯電器10との離間部に存在する、浮遊微粒子を含む水滴に衝突し付着する。この衝突および付着により、浮遊微粒子を含む汚染水滴が、イオン化される。そして、イオン化された浮遊微粒子を含む汚染水滴が、液滴回収装置300cと帯電器10との間の電界Efに沿って移動することにより、イオン風が発生する。そして、イオン風が液滴回収装置300cに到達することにより、浮遊微粒子を含む汚染水滴が捕獲電極332により捕集される。
また、この実施形態4では、帯電器10から放出された電子eの衝突により発生したイオンは、回転羽式空気流発生器51および52により送風される空気流に乗って、液滴回収装置300cに到達することになる。つまり、イオンは、空気の流れによる抵抗がない状態で、液滴回収装置300cへ到達する。このことは、導入側補助空気発生器51および放出側補助空気発生器52で発生させた空気流により、イオン風による気流速度が不十分である場合でも、帯電した汚染水滴が液滴回収装置300cまで移動するのが促進されていると言える。つまり、この実施形態4では、イオン風は真空中ではなく空気中で発生させているので、イオン風の流速を空気流により増加させて集塵効果を高めることができる。その結果、この実施形態4では、風力が増加し、電荷を持った気流による集塵効果が増加するだけでなく、装置の小型化、低消費電力化することができる。
また、汚染水滴Wdは液滴容器303に移すことで、簡便に汚染粒子ごと破棄することが可能となる。また、汚染水滴を効率よく回収するために、液滴回収装置300cの捕獲電極332の表面に微細な溝や勾配をつけてもよい。
なお、上記液滴回収装置300cは、実施形態4で説明したものに限定されず、遊微粒子を含む汚染水滴を空気とともに吸引する除湿機構を設け、同時に吸引した汚染水滴と空気とに分離した後に汚染水滴を回収する構成でもよい。
また、汚染微粒子を廃棄する構成は、液滴容器303の上部にフィルターを設け、汚染微粒子を含む水滴を汚染微粒子と水滴に分離し、液滴容器303には濾過した水分のみを回収し、上部フィルターを交換若しくは洗浄することで汚染微粒子を廃棄する構成でもよい。
さらに、液滴容器は、捕獲電極から回収して貯留した汚染水滴により満水になると、フォロースイッチが作動して、捕獲電極から液滴を回収する除湿機構などの機構の運転を停止する制御を行ってもよい。また、液滴容器はこれが満水になると、ドレインに汚染水滴を掃き出すようにしたものでもよい。
さらには、上記実施形態4では、空気流通路Rtにおける電界形成領域Apはその入口側部分で狭く、その出口側部分で広くなっているが、帯電器10と液滴回収装置300cとは、電界形成領域Ap内では両者の離間距離は均一としてもよく、あるいは空気流通路Rtにおける電界形成領域Apではその入口側が広く、その出口側で狭くなるようにしてもよい。
〔電子放出装置〕
なお、上記各実施形態では帯電器は特に限定されるものではないが、以下、上述した各実施形態の空気清浄化装置を構成する帯電体に用いるのに好ましいと考えられる電子放出装置について説明する。
〔電子放出装置の第1の構成例〕
図7は、上述した本発明の各実施形態(実施形態1〜4)の空気清浄化装置で帯電器10として用いられる電子放出装置を説明する図であり、この電子放出装置における電子放出素子の断面構造(図7(a))、その電子放出面の形状(図7(b))、および拡大した図7(a)のA部(図7(c))を示している。
この電子放出装置10を構成する電子放出素子(以下、単に素子ともいう。)100は、この素子の内部で電子を加速して素子の表面から電子eを放出する面放出型の電子放出素子である。
この電子放出素子100は、素子の基板を兼ねる第1電極(以下、電極基板ともいう。)101と、第1電極101上に形成された電子加速層103と、電子加速層103上に形成された第2電極(以下、薄膜電極ともいう。)102とを有している。ここで、第2電極102は、電子加速層103上に形成された非晶質炭素膜110と、非晶質炭素膜110上に形成され、非晶質炭素膜110の仕事関数より小さい仕事関数を有する導電膜111とを含んでいる。ここで、第2電極102は、上記各実施形態による空気清浄化装置の帯電器10における電子放出電極となるものである。
ここで、第1電極101および第2電極102には電源部11により電圧が印加されるようになっている。この電源部11と電子放出素子100とは電子放出装置10を構成している。この電子放出素子100では、第2電極102を構成する非晶質炭素膜110は、ダイヤモンドの結晶構造(sp3結合)とグラファイトの結晶構造(sp2結合)とが混在したダイヤモンドライクカーボン膜(以下、DLC膜という。)である。
なお、電子放出素子100に印加する電圧は、直流電圧でも交流電圧でもどちらでもよいが、電子放出量が比較的安定している交流電圧の方が好ましい。以降の説明で、単に電圧と記述する際には交流電圧と直流電圧の両方を指すものとする。印加する電圧は10〜25Vの範囲が望ましい。
以下、この電子放出素子100の構成要素について詳しく説明する。
〔第1電極101〕
第1電極101は導体で形成された板状体である。この第1電極101は、電子放出素子100の支持体として機能すると共に、電極として機能するものである。このため、第1電極101は、ある程度の強度を有し、かつ適度な導電性を有するものであればよく、微細加工が容易なSi系の半導体基板を用いることができる。また、第1電極101は、ガラス基板またはプラスティック基板等の絶縁体基板上に、導電性膜を電極として形成してなる構造体であってもよい。また、絶縁体基板を導電性膜で被覆してなる構造の第1電極101では、導電性膜に強い機械的強度が要求されるため、この導電性膜は、複数の導電性膜の積層構造としてもよい。
例えば、第1電極101を構成する絶縁体基板を被覆する導電性膜には、絶縁体基板であるガラス基板表面にTi膜を膜厚20.0nmに形成し、その上にCu膜を膜厚10.00nmに形成してなる金属積層膜や、ガラス基板表面にMo膜を膜厚30nmに形成し、その上にAl膜を膜厚130nmに形成し、その上にMo膜を膜厚50nmに形成してなる金属積層膜を用いてもよい。金属積層膜を構成する金属材料や数値(膜厚)は上記のものに限定されることはない。なお、絶縁体基板の表面の導電性膜は、周知のフォトリソグラフィ技術やエッチングマスクを用いて方形等にパターニングしたものでもよい。
〔電子加速層103〕
電子加速層(絶縁性微粒子層)103は第1電極101上に形成されており、複数の絶縁性微粒子103aを含んでいる。この電子加速層103は、第1電極101から第2電極102へ向かう電子を加速させる機能を有する。電子加速層103は、主として、半導電性を有する絶縁性微粒子103aを含んで構成されているため、電子加速層103は電圧が印加されると、電子加速層103内に極弱い電流が流れる。電子加速層103の電圧電流特性は所謂バリスタ特性を示し、印加電圧の上昇に伴い急激に電流値を増加させる。この電子加速層103での電流の一部は、印加電圧が形成する電子加速層内の強電界により弾道電子となり、第2電極102を透過して電子放出素子100の外部へ放出される。また、弾道電子は、絶縁性微粒子103aによる電子加速層103の表面の凹凸の影響から生じる、電子加速層103と第2電極102との隙間(微細孔)をすり抜けて外部へ放出される場合もある。弾道電子の形成過程は、電子が電界方向に加速されつつエネルギー障壁をトンネルすることによるものと推測される。なお、電子加速層103は、薄いほど好ましい。なぜなら、電子加速層103は薄いほど、強電界がかかるため、低電圧印加で電子を加速させることができるからである。ただし、電子加速層103があまり薄すぎると、抵抗体としての機能が得られないこと、また、電子加速層103が厚すぎると電子の加速に高電圧の印加が必要となることから、電子加速層103の膜厚は0.1〜10.0μmの範囲であることが望ましい。
また、絶縁性微粒子の材料は、絶縁性を有する材料であれば特に制限なく用いることができる。例えば、絶縁性微粒子103aには、SiO、ZnO等の半導体酸化物、Al、TiO、CuO等の金属酸化物からなる絶縁性微粒子を用いることができる。また、これらの絶縁性微粒子は、単独で、あるいは複数種類組み合わせて用いることもできる。
また、電子加速層103は他の微粒子や材料を含んで構成されてもよい。例えば、電子加速層103には、絶縁性微粒子103aの粒径よりも小さい粒径を有する導電性微粒子103bが含まれていてもよい。なお、本願明細書において、粒径とは平均一次粒径を意味するものとする。電子加速層103に導電性微粒子103bを添加することによって、電子加速層103を流れる電流値(つまり電子放出量)を制御することができる。換言すると、電子加速層103中の導電性微粒子103bの含有量を調整して、電子加速層103の電気抵抗の値を任意の範囲に調整できる。導電性微粒子103bとしては、特に限定されないが、例えば、金、銀、白金、パラジウムおよびニッケルからなる導電性微粒子のうち少なくとも1種を含んでいてもよい。
なお、導電性微粒子103bの粒径が絶縁性微粒子103aの粒径と同等以上であると、電子加速層103が必要とする絶縁性が得られなくなるため、導電性微粒子103bの粒径は絶縁性微粒子103aの粒径よりも小さい必要がある。また、電子加速層103は絶縁性微粒子103aのみで構成されてもよい。さらに、電子加速層103には、バインダー成分として少量のシリコーン樹脂が含まれていてもよい。電子加速層103がシリコーン樹脂を含むことで、電子放出素子100の機械的強度を向上することができると共に、大気中の酸素および水分などによる素子劣化を防ぐことができ、長寿命化をより効果的に図ることができる。
この電子放出素子における電子加速層を図面を用いて具体的に説明する。図7(c)は、電子放出素子における電子加速層の要部(図7(a)のA部分)を拡大して示している。
同図に示されるように、電子加速層103には、絶縁性微粒子(第2の誘電体物質)と、導電性微粒子(周囲に第1の誘電体物質が存在する導電体からなる微粒子である金属微粒子)とが含まれている。このように、電子加速層103に含まれる微粒子は、2種類存在し、1つは絶縁性微粒子であり、もう1つは導電性微粒子(つまり、絶縁被覆された金属微粒子)である。ここで、絶縁被覆された金属微粒子の金属種としては、弾道電子を生成するという動作原理の上ではどのような金属種でも用いることができる。
ただし、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、酸化しにくい金属が好ましく、例えば、金、銀、白金、ニッケル、パラジウムといった材料が挙げられる。また、絶縁被覆された金属微粒子の絶縁被膜としては、弾道電子を生成するという動作原理の上ではどのような絶縁被膜でも用いることができる。ただし、絶縁被膜を金属微粒子の酸化被膜によって賄った場合、大気中での酸化劣化により酸化被膜の厚さが所望の膜厚以上に厚くなってしまうおそれがあるため、大気圧動作させた時の酸化劣化を避ける目的から、有機材料による絶縁被膜が好ましい。この電子加速層103での弾道電子の生成の原理については後段で詳しく記載するが、その原理に従って考えると、その絶縁被膜の厚さは薄いほうが有利であることが言える。
〔第2電極102の導電膜111〕
第2電極102は、第1電極101と対をなす電極を構成し、第1電極101と共に電子加速層103内に電界を発生させるための電極である。このため、第2電極102を構成する導電膜111は、電極として機能する程度の導電性を有する材料にて形成されればよい。ただし、第2電極102には、電子加速層103内で加速されて高エネルギーとなった電子をなるべくエネルギーのロスを抑制しつつ透過させて素子の外部に放出することが求められ、第2電極102を構成する導電膜111は、仕事関数が低く、かつ薄膜で形成することが可能な導電性材料で形成されることが好ましい。
このような材料としては、例えば、仕事関数が4〜5eVに該当する金、銀、タングステン、ニッケル、チタン、タンタル、アルミ、パラジウムなどが挙げられる。中でも大気圧中での動作を想定した場合、酸化物および硫化物の形成反応のない金が、最良な材料となる。また、酸化物形成反応の比較的小さい銀、パラジウム、タングステンなども問題なく実使用に耐える材料である。第2電極102を構成する導電膜111の膜厚は、電子放出素子100から外部へ電子eを効率良く放出させる条件として重要であり、この観点から10〜55nmが好ましい。第2電極102を平面電極として機能させるための導電膜111の最低膜厚は10nmであり、これより薄い膜厚では電気的導通を確保できない。一方、電子放出素子100から外部へ電子eを放出させるための導電膜111の最大膜厚は55nmであり、これより厚い膜厚では弾道電子の透過が起こらず、第2電極で弾道電子の吸収、あるいは反射による電子加速層への再捕獲が生じてしまう。このため、第2電極の導電膜111の膜厚は10〜55nmであることが好ましい。
〔第2電極102のDLC膜110〕
DLC膜110を構成する材料は、炭素元素を主成分として構成される非晶質組織であり、炭素元素のみからなるアモルファスカーボン、水素を含有する水素アモルファスカーボン、チタン等の金属元素を一部に含むメタルカーボンが挙げられるが、上記各実施形態の帯電器を構成する電子放出素子に用いるDLC膜としては、特にこれらに限定されるものではない。
以下、このDLC膜110の特性(a)〜(d)について具体的に説明する。
(a)DLC膜の比抵抗について
まず、DLC膜の比抵抗(電気抵抗率)は高く、つまり、DLC膜110は、第2電極102の導電膜111と電子加速層103との間の抵抗体として機能する。例えば、グラファイトの比抵抗が1E3Ω・cmであるのに対し、DLC膜の比抵抗は1E7Ω・cm〜1E9Ω・mである。なお、DLC膜110と導電膜111とからなる第2電極全体としては、その電気抵抗率が1E8Ω・cm以上と高いことが望ましい。
具体的に説明すると、電子放出素子の電子放出面からの電子の放出は面内で均一なものではなく、局所的な偏ったものであるため、この電子放出素子を長時間にわたる連続動作試験にかけると、一部の電子放出部分に電界が集中した状態が続くことになり、この電子放出素子は、局所的な電圧および電流の印加によるストレスや局所的な発熱による機械的なストレスに連続的に曝される。大きい電圧および電流によるストレスや発熱による機械的なストレスの印加が長時間続くと、電子加速層における第2電極の表面の電子放出領域に対応する部分に欠陥が生じる場合があり、欠陥数が増加すると電流のパスが生じてしまい、絶縁破壊につながる。
抵抗体としてのDLC膜110は、例えば、金、銀等からなる第2電極102の導電膜111と比較して電気的に高抵抗であるため、電子放出領域での電子放出強度を抑えることができ、これにより電子放出素子100での局所的かつ連続的な電圧および電流の印加によるストレス、さらに局所的な発熱による機械的なストレスが緩和されることになる。この結果、欠陥が生じ難く、絶縁破壊が生じ難くなる。
また、DLC膜の膜厚は、印加電圧、電子加速層の膜厚、第2電極の導電膜の材質等の条件にもよるが、前記条件の場合は5〜20nmが好ましい。DLC膜の膜厚が5nmより薄いとDLC膜が抵抗体として機能するには十分でなく、一方、膜厚が20nmより厚いと電子放出に必要な電圧が大きくなり好ましくない。
つまり、第2電極102の電子加速層103側の面にDLC膜110を形成することにより、適度な電圧で十分な電子を放出することができると共に、絶縁破壊が生じ難くし、かつ温度上昇を抑制することができるため、長時間の連続動作が可能となる。
また、DLC膜は内部応力が高いため、第2電極を、DLC膜の単層構造、もしくは、DLC膜と、金、銀、タングステン、タンタル、チタン、アルミ、ニッケル、パラジウムのうちの少なくとも1つの金属膜からなる導電膜との積層構造とした場合において、素子電極の剥離が起こることを抑制するために、DLC膜の表面粗さを1.0〜15nmとすることが好ましい。なお、この表面粗さの値は小さすぎると、実質的な密着性が得られず、大きすぎると、DLC膜の表面の凸凹により、このDLC膜上に導電膜を形成したときに局所的な応力が発生することとなる。
(b)DLC膜の熱伝導率などについて
DLCは、30〜500W/mK程度の熱伝導率をもち、この熱伝導率は、グラファイトの六角形環が広がる方向における値(1000〜2000W/mK)と比べると低いものの、同じ程度の抵抗値を有する材料に比べると高い熱伝導率である。また、DLCは非晶質であるために、その熱伝導に異方性はなく、その熱伝導は等方的であり、結晶方位によらずに熱を等方的に放熱することができる。DLCは、線熱膨張率が3×10−6〜5×10−6/Kと小さい。従って、DLCは、第2電極の構成材料として好適である。
(c)DLC膜の電子の放出しやすさ(仕事関数)について
一般に炭素素材物質の仕事関数は構造によって大きく異なるが、本発明の空気清浄化装置の帯電器で用いる電子放出素子のDLC膜は、グラファイト膜に比べて仕事関数が小さく、低い電界で電子を放出することができる。炭素系薄膜は一般的に電子を放出し易いが、窒素をドーピングしたDLC膜はさらに電子を放出し易いものとなる。
特に、DLC膜では、グラファイト膜とは異なり、水素や窒素のドーピング量やドーパントの種類を変えることにより電子放出特性を制御できる。例えば、DLC膜では、ドーピング量やドーパントの種類によりバンドギャップを変化させることができる。
しかも、DLC膜は、電気伝導率が高くなるにつれて、言い換えると、抵抗が小さくなるにつれて、電子放出電圧が低下する傾向にあり、電気伝導率によっても電子放出特性を制御できる。
(d)DLC膜の平坦性について
DLC膜は、グラファイト膜に比べて膜の表面が平坦であるため、DLC膜を含む積層構造では、DLC膜の表面での凹凸により局所的な応力が発生するのを抑制できる。
なお、DLC膜は、上述したように、ダイヤモンド構造に対応するsp3結合を有する炭素と、グラファイト構造に対応するsp2結合を有する炭素が不規則に混在したアモルファス構造の膜であり、DLC膜の物性値に幅がある。
簡単に説明すると、DLC膜を理解する概念図として、FerraiとRobertsonが3元相図を提案している。この3元相図に示される三角形の上の頂点がダイヤモンド、左下の頂点がグラファイト、右下の頂点が水素に相当する。DLC膜のヤング率、硬さおよび電気的性質はダイヤモンドと類似しており、熱伝導率はグラファイトに近い。DLC膜の物性値に幅があるのは、sp3結合とsp2結合の割合および水素含有量の違いで様々な組成や構造のDLC膜が存在し、物性が大きく変化するためである。
次に、電子放出の原理について簡単に説明する。
例えば、一般にシリカ(SiO)のような絶縁材料の表面において、結晶の欠陥や表面処理が施されることにより、シリカ表面に電気抵抗が低い部分が生じ、電子が流れると考えられる。
従って、本実施形態1による空気清浄化装置1001の帯電器10で用いる電子放出素子100の電子加速層103では、絶縁性微粒子の表面(つまり、シリカ表面)を電子がホッピング伝導のような形で流れて、エネルギーが高い弾性電子が形成され、第2電極102へ到達するが、このとき、第2電極を構成する材料の仕事関数を超えたエネルギーを得ている電子が、電子放出素子の外部へ放出されると考えられる。
〈製造方法〉
次に、図7を参照しながら電子放出素子100の製造方法について説明する。
上記のように構成された電子放出素子100は、第1電極上101に絶縁性微粒子103aを含んでなる電子加速層103を形成する工程と、電子加速層103上にDLC膜110を形成する工程と、DLC膜110に第2電極102を形成する工程とを含んでいる。
具体的に説明すると、電子加速層103の形成工程において、まず、溶剤に絶縁性微粒子103aが分散された絶縁性微粒子分散液を調製する。このとき、絶縁性微粒子分散液に導電性微粒子を混合し、必要であればバインダー成分を混合してもよい。絶縁性微粒子分散液に用いる溶剤としては、バインダー成分を溶解でき、かつ絶縁性微粒子103aや導電性微粒子103bを分散でき、かつ塗布後に乾燥することができれば、特に制限はなく、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、テトラデカン等を用いることができる。
次に、絶縁性微粒子分散液を第1電極101上にスピンコート法にて塗布する。続いて、第1電極101上の塗布膜を乾燥させることにより、電子加速層103を形成する。なお、電子加速層3が所望の膜厚となるまで、塗布および乾燥を繰り返してもよい。
次に、第2電極102のDLC膜110の形成工程において、電子加速層103上にDLC膜110を成膜する。DLC膜の成膜方法としては特に限定はなく、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法や熱CVD法、PVD(Physical Vapor Deposition)法、イオン化蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、プラズマイオン注入成膜法、ホローカソードアーク法、真空アーク蒸着法など各種公知の方法で成膜すればよく、またその膜厚は、電極内の放電に影響がない程度であればよいが、効果の点から、DLC膜は、例えば5〜20nm程度の厚さに成膜することが好ましい。
続いて、第2電極102の導電膜111の形成工程において、例えば、マグネトロンスパッタ法、インクジェット法、スピンコート法、蒸着法等を用いて、DLC膜110上に第2電極102の導電膜111を形成して、電子放出素子100が完成する。
そして、この電子放出素子100の第1電極101と第2電極102に、リード線を介して電源部11の負極と正極を電気的に接続することにより、電子放出装置10が完成する。
次に、この電子放出装置の動作について説明する。
例えば、図1に示す実施形態1の空気清浄化装置1001の帯電器10に電子放出装置を用いた場合は、回転羽式空気流発生器41を回転させて空気A1を空気清浄化装置1001の空気流通路Rt内に導入する。電源11により電子放出素子100の第1電極101と第2電極(電子放出電極)102との間に電圧を印加する。これにより、空気は空気流通路Rtの電界形成領域Ap内を通過する間に、電子放出素子100の第2電極102の表面から放出された電子eにより帯電することとなる。
つまり、この電子放出素子100では、第1電極101と第2電極102との間に電圧が印加されると、第1電極101から、第1電極と第2電極との間における電子加速層103中の絶縁性微粒子103aの表面に電子が移る。絶縁性微粒子103aの内部は高抵抗であるため、電子は絶縁性微粒子103aの表面を伝導していく。このとき、絶縁性微粒子の表面の不純物、絶縁性微粒子が酸化物である場合の酸素欠陥、あるいは絶縁性微粒子間の接点で、電子がトラップされる。このトラップされた電子は固定化された電荷として働く。その結果、電子加速層103の表面では、印加電圧と、トラップされた電子が作る電界とが合わさって強電界が発生し、その強電界によって電子が加速され、第2電極102から電子が放出される。なお、このとき、電子は主に、抵抗の低い導電性微粒子103bを経由して第1電極101から第2電極102に移動する。
この電子eが、液滴回収装置300と電子放出素子100bとの離間部(電界形成領域Ap)に存在する浮遊微粒子を含む汚染空気分子に衝突あるいは付着する。この衝突あるいは付着により、浮遊微粒子を含む空気分子がイオン化される。イオン化された浮遊微粒子を含む空気分子が、図1(a)中の矢印の方向に従って、つまり、電源12により液滴回収装置300と帯電器10の電子放出素子100との間に生ずる電界Efに沿って移動することにより、イオン風が発生する。そして、そのイオンが液滴回収装置300の捕獲電極302に到達することにより、浮遊微粒子を含む液滴が捕集される。これにより吸入された空気A1は、これに含まれる汚染微粒子が空気清浄化装置1001により回収されて、清浄な空気A2として排出される。
以下、実施形態1の空気清浄化装置1001で上記電子放出装置を用いた場合の効果について説明する。
このような空気清浄化装置1001では、浮遊微粒子を含む空気は帯電させられ、液滴回収装置300の捕獲電極302に静電吸着により、汚染微粒子を含む液滴(水滴)が捕獲されるので、塵埃を液滴回収装置300で回収することができる。このため、フィルタを用いるとしても、このように空気中の液滴を液滴回収装置300で回収した後の空気をフィルタに通すことでフィルタに溜まる塵埃の量を減らすことができ、フィルタのメンテナンスの頻度を低減し、場合によってはフィルタを不要とできる。
また、この実施形態1の空気清浄化装置1001では、帯電器として、内部電場、つまり素子の内部に発生させた電界により電子を放出する電子放出素子100を用いているので、大気中への安定な電子の供給によりイオン風を発生させて空気のイオン化を安定に行うことができる。これにより、帯電させた液滴を静電吸着により安定して捕獲電極302に引き寄せることが可能となり、優れた集塵性能が得られる。
さらに、実施形態1の空気清浄化装置1001では、外部の空気を電界形成領域Ap内に送り込む回転羽式空気流発生器41を備えているので、空気流通路Rtに送入された空気は、電界形成領域Apを形成する電子放出素子100の第2電極(電子放出電極)102の全面にすばやく広がることとなる。このため、捕獲電極302の表面の、電界形成領域Apの吸入口Apa側の部分に、汚染微粒子を含む液滴が局所的に付着するのを抑制できる。その結果、捕獲電極302の表面での局所的なダストの付着に起因する集塵性能の低下を抑え、長期に渡って高い集塵性能を得ることができる。
また、回転羽式空気流発生器41を、ダストを捕集あるいは濾過する機能を有する構成とすることで、確実に液滴回収装置の捕獲電極表面およびその吸入口側の領域におけるダストの付着を防止することができる。
また、電子放出装置(帯電器)10は、大気圧中で気流を発生させるようになっているため、イオン風の気流速度が増加し、集塵効果が増大する。
また、本実施形態1の空気清浄化装置1001の帯電器10に用いる電子放出素子100では、第2電極102は、単層の導電膜111と、この導電膜111の電子加速層側の面(内面)上に形成したDLC膜110aとの積層構造としている。このような構成では、DLC膜の抵抗が1E7Ωcm〜1E9Ωcm以上と高いことから、第2電極102の表面での局所的な電子の放出が生じても、放出強度を低く抑えることができる。また、DLC膜110は、導電膜111に対して抵抗層として働くため、エネルギーが一定値以下の電子の放出が阻止される。これによっても、放出される電子のエネルギーの範囲を狭い範囲に制限することができ、電子の放出の均一化を図ることができる。言い換えると、第2電極内での導電膜に沿った方向での電子の広がりや電子放出量のゆらぎを抑制することで、電子放出量を含む電子放出特性の向上も期待できる。
また、DLC膜110は、熱伝導率が30〜500W/mKと高いため、電子の放出領域が偏った場合でも、電子の放出に伴って発生した熱を効果的に放熱することができる。このため、局所的な電子放出による局所的な加熱に伴う第2電極の素子の破壊を抑え、これにより素子の長寿命化も期待できる。
また、第2電極102の導電膜111には、金、炭素、ニッケル、チタン、タングステン、およびアルミニウムのうちの少なくとも1つが含まれることによって、これら物質の仕事関数の低さから、電子加速層103で加速された電子を効率よくトンネルさせ、電子放出装置(帯電器)10の外部に高エネルギーの電子をより多く放出させることができる。
また、DLC膜110は、仕事関数は導電膜111より高いが、負の電子親和力(NEA:Negative Electron Affinity)を持つため、電子を効率よくトンネルさせることができる。このため、第2電極では、電子放出素子外に高エネルギーの電子をより多く放出させることができる。
このように、第2電極102を、電子放出特性に優れる膜(導電膜)111と、信頼性に優れる膜(DLC膜)110とを適切に形成した積層構造とすることにより、素子温度の適正化による電子放出特性の向上や素子寿命の向上が期待できる。
また、この電子放出素子100は、電子放出素子の第1電極と第2電極との間に電圧を印加する電源部11と組み合わせることにより、適度な電圧(例えば10〜25V)の印加により十分な電子放出量が得られると共に、長時間でも安定して連続動作可能な電子放出装置10を実現することができる。
また、第1電極101と第2電極102との間に、これらの間での電界の電界強度が、1V/m〜1E7V/mとなるように電圧を印加すれば、酸素の解離エネルギーである6エレクトロンボルトよりも低いエネルギーで、空気中の酸素分子に電子を与えることができる。このため、オゾンや窒素酸化物等の有害物質の発生を防ぐことができる。つまり、大気中での電子の平均自由行程が0.1μmであるため、例えば電界強度が1E7V/mである場合、電子のエネルギーは空気分子に衝突するまでに1エレクトロンボルトになる。したがって1E7V/mよりも低い電界強度にすることで電子放出時のオゾン及び窒素酸化物の発生を防ぐことができる。
また、DLC膜は、イオンビーム蒸着、スパッタ、プラズマCVD等、ICの製造プロセスで用いられる多くの方法により堆積できるため、DLC膜を含む電子放出素子を低コストで形成することができる。また、DLC膜はグラファイト膜に比べて一般に低温で形成することができ、DLC膜の形成処理の際に発生する熱により、先に形成した電子加速層などの特性が劣化するのを抑制できる。
また、電子加速層103の少なくとも一部を構成する絶縁体物質には、粒子形状の絶縁性微粒子が含まれているので、電子加速層における抵抗値の調整を行いやすくすることができる。
また、電子加速層103の少なくとも一部を構成する絶縁体物質は、SiO、Al、およびTiOのうちの少なくとも1つを含んでいる、あるいは有機ポリマーを含んでいるので、これらの物質の絶縁性が高いことにより、電子加速層の抵抗値を任意の範囲に調整することが可能となる。
なお、第2電極102を構成する導電膜111は、導電膜の単層構造に限定されるものではなく、上記のような金属材料のうちの異なる材料からなる複数の金属膜を積層した積層構造としてもよい。
さらに、第2電極102は、DLC膜110のみの単層構造としてもよい。この場合も、DLC膜110の抵抗が高く、かつ熱伝導性がよいという特性から、上述したように、電子放出量を含む電子放出特性の向上を図ることができる。
また、図7に示す電子放出素子では、導電性微粒子として、導電性微粒子の周囲に第1の誘電体物質が存在する構造のものについて説明したが、導電性微粒子は、この構成に限定されるものではない。電子放出素子においては、導電性微粒子は、その周囲を被覆する第1の誘電体物質を有しない構成、または第1の誘電体物質が導電性微粒子の周囲に、その全体を被覆せずに点在して付着した構成であってもよい。このような構成であっても、第1電極(電極基板)と第2電極(薄膜電極)との間、すなわち電子加速層で電子を加速し、第2電極(薄膜電極)から電子を放出させることができる。
また、上記電子加速層103は、少なくとも一部が絶縁体物質で構成されていればよく、導電性微粒子を含まない構成であってもよい。
〔電子放出素子の第2の構成例〕
図8は、本発明の各実施形態による空気清浄化装置で帯電器として用いられる電子放出装置の他の構成を説明する図であり、電子放出装置における電子放出素子の断面構造(図8(a))、その電子放出面の形状(図8(b))を示している。
図8に示す電子放出装置10aの電子放出素子100aは、図7に示す電子放出装置10の電子放出素子100において、その表面での電子の放出位置が表面全面に渡って分散するように第1電極101と電子加速層103との間に電子放出制御絶縁膜120を介在させたものである。
つまり、この電子放出素子100aは、素子の基板を兼ねる第1電極101と、第1電極101上に形成された電子放出制御絶縁膜120と、電子放出制御絶縁膜120上に形成された電子加速層103と、電子加速層103上に形成された第2電極102とを有している。ここで、第1電極101、第2電極102、および電子加速層103は、図7に示す電子放出素子100におけるものと同一のものである。
また、電子放出制御絶縁膜120は、膜厚方向に延びる複数の貫通孔(以下、小孔ともいう。)121を有し、この小孔121には、電子放出制御絶縁膜120上に形成された電子加速層103を構成する絶縁性微粒子103aおよび金属微粒子103bが埋め込まれている。ここで、複数の小孔121は縦横整然とマトリックス状に配置されている。ただし、この電子放出制御絶縁膜120に形成された複数の小孔121の配置に規則性はなくてもよく、複数の小孔121は、局所的に集中することがないように分散させて配置されていればよい。この電子放出制御絶縁膜120は、複数の小孔121を有することにより、電子放出素子100aでの電子放出をその電子放出面内で均一化する機能を有する。
このような電子放出素子100aでは、第1電極101と第2電極102との間に電圧を印加することにより、電子加速層103における電子放出制御絶縁膜120の小孔121に対応する部分でのみ電子が加速し、第2電極102の表面の、電子放出制御絶縁膜120の小孔121に対応する領域から電子が外部へ放出する。
以下、図8に示す電子放出素子100aの構成要素について詳しく説明する。
ただし、第1電極101、第2電極102、および電子加速層103は、図7に示す電子放出素子100におけるものと同一のものであるので、主に電子放出制御絶縁膜120について説明する。
〔電子放出制御絶縁膜120〕
この実施形態2の電子放出素子100aでは、電子放出制御絶縁膜120には、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン窒化酸化膜などの無機膜、シリコーン樹脂膜、アクリル系樹脂膜、ポリイミド系樹脂膜、エポキシ系樹脂膜、ポリエステル系樹脂膜、ポリウレタン系樹脂膜、ポリスチレン系樹脂膜などの有機膜等の絶縁膜が用いられる。
これらの絶縁膜の中でも、電子放出制御絶縁膜120としては、抵抗値、耐熱性、吸水率、機械的強度などの観点から、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコーン樹脂膜、アクリル樹脂膜およびポリイミド樹脂膜がより好ましい。
また、電子放出制御絶縁膜は、これら各種絶縁膜の単層構造としても、あるいは各種絶縁膜を組み合わせた積層構造としてもよい。また、電子放出制御絶縁膜に形成される複数の小孔のサイズ、形状、密度等は、隣接する小孔相互における電界が互いに干渉しない程度、つまり、隣接する小孔の一方における電界により加速された電子が、隣接する小孔の他方における電界により引き込まれることがない程度に、隣接する小孔における電界を分離できるものであればよい。
具体的に説明すると、電子放出制御絶縁膜120の小孔121のサイズは、例えば、一辺が1〜50.0μmの正方形内に収まるサイズであり、さらに具体的には、その内径が1〜50.0μmである。小孔121は、電子加速層103の層厚に対してその内径が小さすぎると、小孔内の電界が弱まり電子放出効率が低下しやすい傾向があり、また、逆にその内径が大きすぎると、複数の小孔を分散させて配置したことによる電子放出の均一化が達成されない傾向がある。
一方、小孔の形状は、特に限定されない。また小孔の大きさ、密度については、素子における局所的かつ連続的な電圧および電流によるストレス、あるいは加熱による機械的なストレスの緩和に関係し、サイズの小さい小孔を高密度に配置することが素子寿命の観点から好ましい。
この電子放出素子100aにおいて、小孔の平面視形状は、例えば、多角形(正三角形、正方形、長方形、菱形、五角形、六角形、正多角形等)、円形、楕円形等である。これらの形状の中で、電子が集中しやすい鋭利な頂点を持たない点で、短径に対する長径の長さの比が1〜2の形状が好ましく、この比を実現する楕円形がより好ましい。
また、このような小孔の平面視形状の中でも、同一面積で比較した場合に曲率が最も緩くなる円形がさらに好ましい。このとき、電子放出素子の第2電極の外表面から垂直方向に電子が安定して放出できるように、小孔の膜厚方向の断面形状は長方形または正方形であることが望ましい。また、小孔は、例えば5〜5000個/mmの密度で電子放出制御絶縁膜120に配置される。
なお、本明細書において電子放出制御絶縁膜120の小孔121の内径とは、小孔121の平面視形状が円形の場合、円の直径、楕円形の場合、長径、多角形の場合、最長となる対角線の長さである。また、本明細書において小孔121の短径とは、小孔の平面視形状が楕円形(長円)の場合の短径のみならず、小孔の平面視形状が多角形の場合における最短の対角線の長さを含む。長径についても同様であり、本明細書において小孔121の長径とは、小孔の平面視形状が楕円形(長円)の場合の長径のみならず、小孔の平面視形状が多角形の場合における最長の対角線の長さを含む。ここで、小孔の平面視形状が多角形の場合には、平面視多角形形状は、フォトリソ工程で形成され、多角形の頂点が円弧状となった形状も含まれる。
〈製造方法〉
次に、図8を参照しながら電子放出素子100aの製造方法について説明する。
上記のように構成された電子放出素子100aの製造方法は、第1電極上101に、膜厚方向に貫通した複数の小孔121を有する電子放出制御絶縁膜120を形成する工程と、電子放出制御絶縁膜120を覆うように第1電極上101に絶縁性微粒子103aおよび導電性微粒子103bを含んでなる電子加速層103を形成する工程と、電子加速層103上に第2電極102のDLC膜110を形成する工程と、DLC膜110上に第2電極102の導電膜111を形成する工程とを含んでいる。
この電子放出素子100aの製造方法は、電子放出制御絶縁膜120の形成工程を含む点でのみ図7に示す電子放出素子100のものと異なるので、以下電子放出制御絶縁膜120の形成工程についてのみ説明する。
まず、絶縁体材料としての例えばアクリル系樹脂を溶剤に溶かした塗液を第1電極101上にスピンコート法で塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を加熱乾燥し、その後、フォトリソグラフィーによって、乾燥した塗布膜(絶縁膜)に複数の小孔121を形成することにより、電子放出制御絶縁膜120を形成する。
絶縁体材料は、アクリル系樹脂以外にも、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などの有機ポリマーが挙げられる。また、これらの有機ポリマーは、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
また、絶縁体材料は、有機ポリマー以外にも、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの無機材料を用いて、例えば、スパッタ法、蒸着法、CVD法等によって電子放出制御絶縁膜120を形成してもよい。
また、小孔121の形成方法として、電子ビームリソグラフィ、プラズマエッチング、インクジェット等を用いてもよく、これらの方法に限定されるものではない。
その後は、図7に示す電子放出素子の製造方法と同様にして、電子加速層103を形成する。ただし、図8に示す電子放出素子では、電子放出制御絶縁膜120の小孔121内に絶縁性微粒子103aを満充するように絶縁性微粒子分散液における絶縁性微粒子103aの濃度は10〜50重量%に調整する。
さらに、上記電子放出素子100の製造方法と同様に、第2電極102のDLC膜110、および第2電極102の導電膜111を順次形成して、電子放出素子100aを完成する。
そして、この電子放出素子100aの第1電極101と第2電極102に、リード線を介して電源部11の負極と正極を電気的に接続することにより、電子放出装置10aを完成する。
次に作用効果について説明する。
この電子放出素子100aの電子放出のメカニズムについて説明する。
電子放出素子100aは、図7に示す電子放出素子100と同様に、第1電極101と第2電極102との間に電圧が印加されると、電子放出制御絶縁膜120の小孔121内で、第1電極101から、第1電極と第2電極との間における電子加速層103中の絶縁性微粒子130aの表面に電子が移る。絶縁性微粒子103aの内部は高抵抗であるため、電子は絶縁性微粒子の表面を伝導していく。このとき、絶縁性微粒子の表面の不純物、絶縁性微粒子が酸化物である場合の酸素欠陥、あるいは絶縁性微粒子間の接点で、電子がトラップされる。このトラップされた電子は固定化された電荷として働く。その結果、電子加速層103の表面では、印加電圧と、トラップされた電子が作る電界とが合わさって強電界が発生し、その強電界によって電子が加速され、第2電極から電子が放出される。
このとき、電子は主に、抵抗の低い導電性微粒子103bを経由して第1電極101から第2電極102に移動する。また、第1電極から放出される電子は、電子放出制御絶縁膜の小孔の位置における電子加速層で加速されて第2電極から外部へ放出させる。したがって、均一かつ制御性のよい電子の放出が行われ、素子内の局所的かつ連続的な電圧および電流の印加によるストレス、および局所的な加熱による機械的ストレスの緩和を実現することができる。
この電子放出のメカニズムをマクロな視点でとらえると、電子放出制御絶縁膜120には厚み方向に貫通する複数の小孔121が設けられているので、第1電極101から各小孔121内に入り込んだ電子加速層103に電子が移動し、前記メカニズムで電子が放出される。電子放出制御絶縁膜120では、電気抵抗が高く、第1電極101からの電子が電子放出制御絶縁膜120から上層に移動しないため、電子放出が起こらない。この結果、小孔部分でのみ電子が放出されることになり、素子全体に配置した小孔から電子が均一に放出される。また、電子放制御絶縁膜120の小孔の開口パターンにしたがって電子放出が生じる素子構造になっているので、電子の放出領域を分散させることができる。
このように図8に示す電子放出素子100aでは、第1電極101と電子加速層103との間に設けられた電子放出制御絶縁膜120を備え、電子放出制御絶縁膜120を、分散させて配置された複数の小孔121を有する構造とすることで、電子放出させる部分である小孔121と電子放出させない部分とが交互に配列した構造としているので、第2電極102の外表面から電子の放出が、小孔に対応した領域から行われることとなる。つまり、電子の放出が第2電極102の外表面上で分散して行われることとなり、電子の放出が均一化される。これにより素子内部での局所的かつ連続的な電圧および電流の印加によるストレス、および局所的かつ連続的な発熱による機械的ストレスを緩和することができ、その結果、素子寿命の延長を図ることができる。
また、電子放出素子100aでは、第1電極101と電子加速層103との間に電子放出制御絶縁膜120を設け、電子放出制御絶縁膜120を、分散させて配置された複数の小孔121を有する構造とすることで、DLC膜で生ずる内部応力を電子放出制御絶縁膜120により緩和することができ、第2電極102が電子加速層103から剥離するのを抑制することができる。
電子放出素子100あるいは100aでは、電子加速層の少なくとも一部を構成する絶縁体物質には、粒子形状の絶縁性微粒子が含まれているので、電子加速層における抵抗値の調整を行いやすくすることができる。前記絶縁体物質が、SiO、Al、およびTiOのうちの少なくとも1つを含んでいる、あるいは、有機ポリマーを含んでいると、これら物質の絶縁性が高いことにより、前記電子加速層の抵抗値を任意の範囲に調整することが可能となる。
電子放出電極(薄膜電極)102に、金、炭素、ニッケル、チタン、タングステン、およびアルミニウムのうちの少なくとも1つが含まれることによって、これら物質の仕事関数の低さから、電子加速層で加速された電子を効率よくトンネルさせ、帯電器(電子放出素子)外に高エネルギーの電子をより多く放出させることができる。
さらに、図7あるいは図8に示す電子放出素子として、第2電極を構成するDLC膜を、第2電極102を構成する導電膜111と電子加速層103との間に位置するように配置したものを示したが、本発明の各実施形態による空気清浄化装置の帯電器として用いる電子放出装置の電子放出素子は、第2電極を構成するDLC膜を、第2電極102を構成する導電膜111の、電子加速層103とは反対側の面上に形成したものでもよく、さらに、第2電極を構成するDLC膜として、第2電極102を構成する導電膜111と電子加速層103との間に配置した第1のDLC膜と、第2電極102を構成する導電膜111の、電子加速層103とは反対側の面上に形成した第2のDLC膜とを有するものでもよい。さらに、各実施形態による空気清浄化装置の帯電器として用いる電子放出装置の電子放出素子は、第2電極をDLC膜のみから構成したものでもよい。
また、この発明の空気清浄化方法は、空気清浄機、空気調和機、加湿機、除湿機、扇風機、ドライヤ、換気扇、冷蔵庫機に用いることができる。また、この発明の帯電器は、空気中での使用に限らず、液体中で用いても低電圧で電子放出が可能である。よって空気中に限らず、他の気体や液体等の流体中における浮遊物を吸着することが可能である。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明は、空気清浄化装置および空気清浄化方法の分野において、イオンを含む空気により、空気中に浮遊するカビや細菌等を破壊するだけでなく、空気中の浮遊微粒子を回収可能とし、これによりフィルタの清掃や交換などのメンテナンスの頻度を抑えつつあるいはフィルタを用いずに、空気の清浄化を行うことでき、しかも、簡単な構成により低電圧かつ低損失で高い集塵能力を発揮することができる空気清浄化装置および空気清浄化方法を実現することができる。
10、10a 電子放出装置(帯電器)
11、12 電源
31 モード制御部
40 モータ
41 回転羽式空気流発生器
100、100a 電子放出素子
101 第1電極
102 電子放出電極(第2電極)
103 電子加速層
103a 絶縁性微粒子
103b 導電性微粒子
110 非晶質炭素膜(DLC膜)
111 導電膜
200 気液処理装置
210,210a 水膜形成器
220,220a ポンプ
230 タンク
300、300a、300b 液滴回収装置(液滴捕獲部)
301、311、321 電極支持部材
302、312、322 捕獲電極
303 液滴容器
1001〜1004 空気清浄化装置
A1、A2 空気
Ap 電界形成領域
Apa 吸入口
Apb 放出口
e 電子
Rt 空気流通路

Claims (5)

  1. 空気を清浄化する空気清浄化装置であって、
    外部から送入された空気を液体と接触させる気液接触処理を行う気液接触装置と、
    該気液接触処理により得られた、空気中の浮遊微粒子を含む液滴を帯電させる帯電器と、
    帯電した該液滴を静電吸着により捕獲する液滴捕獲部と
    を備えた、空気清浄化装置。
  2. 前記液滴捕獲部は、
    前記外部から送入された空気の流通路内に電界を発生させることにより、帯電した前記液滴を静電吸着により捕獲する捕獲電極と、
    該捕獲電極で捕獲した該液滴を溜める液滴容器と
    を有する、請求項1に記載の空気清浄化装置。
  3. 前記気液接触装置は、
    前記外部から送入された空気の流通路の一部に水膜を、該流通路を通過する空気が該水膜を通り抜けるように形成する水膜形成器を含む、請求項1または請求項2に記載の空気清浄化装置。
  4. 前記帯電器は、前記外部から送入された空気の流通路に電子を放出することにより、該流通路を通過する該空気に含まれる前記液滴を帯電させる電子放出素子を含み、
    該電子放出素子は、
    第1電極と、
    該第1電極上に形成され、少なくとも絶縁性微粒子を含む電子加速層であって、該電子加速層内で電子を加速するための電子加速層と、
    該電子加速層上に形成された第2電極であって、ダイヤモンドの結晶構造とグラファイトの結晶構造とが混在した非晶質炭素膜を含む、第2電極と
    を備え、
    該第1電極と該第2電極との間への電圧の印加により該電子加速層で加速された電子が該第2電極の表面側から外部に放出するように構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空気清浄化装置。
  5. 空気を清浄化する空気清浄化方法であって、
    外部から送入された空気を液体と接触させる気液接触処理を行うステップと、
    該気液接触処理により得られた、空気中の浮遊微粒子を含む液滴を帯電させるステップと、
    帯電した該液滴を静電吸着により捕獲するステップと
    を含む、空気清浄化方法。
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