JP2015005396A - 有機el素子製造方法、有機el素子、表示装置及び照明装置 - Google Patents

有機el素子製造方法、有機el素子、表示装置及び照明装置 Download PDF

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茂樹 長尾
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Abstract

【課題】本発明は、塗布ヘッドの幅が被塗布領域よりも狭く、被塗布領域を複数の領域に分けて塗布する場合において、塗布境界部が平坦である膜を効率よく形成する手段を提供する。
【解決手段】発光層形成用組成物を、基板上の被塗布領域に塗布して発光層を形成する発光層形成工程を含む有機EL素子製造方法であって、該発光層形成用組成物がポリシロキサンを含み、該発光層形成工程は、該発光層形成用組成物を吐出するノズルを有する塗布ヘッドを、第1の走査方向に走査させながら、該塗布領域内の第1の領域に該発光層形成用組成物を吐出する第1工程と、該被塗布領域内の該第1の領域に隣接する第2の領域において、該塗布ヘッドを、該第1の走査方向と同じ方向、または該第1の走査方向と180度逆向きの方向に走査させながら、該第2の領域に該発光層形成用組成物を吐出する第2工程をこの順に含むことを特徴とする、有機EL素子製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機EL素子製造方法、有機EL素子、表示装置及び照明装置に関する。
有機ELディスプレイパネルの製造においては、各画素をバンクと呼ばれる隔壁で区画し、バンク内の微小な領域に、有機EL素子の有機機能層を形成するための塗布液をインクジェット法にて吐出し、成膜する方法を用いることが一般的である。この際、塗布液に種々の添加剤を混合することにより、バンクで囲まれた領域内において、より平坦な膜を得る技術が提案されている(特許文献1〜4)。
特許文献1においては、均一な成膜を行うために、発光層形成用組成物に特定の高分子化合物を含有させることが記載されている。特定の高分子化合物の一例としてはポリシロキサンが挙げられており、インクジェット法にてバンク内に成膜し、均一な膜が形成されることが開示されている。
特許文献2においては、発光層形成用塗液に、特定量のレベリング剤、特にシリコン系化合物もしくはフッ素系化合物からなるレベリング剤を含有することによって、隔壁に囲まれた領域において平坦な膜が得られることが開示されている。
特許文献3においては、インクジェット法により吐出された微小な液滴の乾燥速度が速いことに起因する膜のムラを解決するために、液滴内に気液界面吸着剤を混入させることが示されている。気液界面吸着剤としてはシリコーンオイルなどが挙げられており、複数の液滴をバンクで囲まれた領域内に離間して形成し、乾燥過程において液滴どうしがつながって平坦な膜が形成されることが開示されている。
特許文献4においては、バンク内に有機半導体溶液を塗布する際、バンク壁面に塗布された有機半導体溶液をバンク内に完全に流下させることを目的に、有機半導体溶液にポリシロキサン化合物を含有させることが開示されている。
これらの特許文献に開示されている、バンクで区画された領域の膜の平坦性を改善する技術は、ディスプレイの画素領域をバンクで囲って形成した比較的狭い領域、通常、1辺が数百μm〜数十μmで囲まれた領域が対象であり、バンクで区画された1つの領域に対しては、通常はインクジェット法にて1回の走査で液滴を塗布する。そのため、バンクで区画された1つの領域に対しては、液滴を1回または複数回連続して吐出して液膜を形成するのが通常であった。バンク内に吐出された液滴は着弾すると液膜となり、溶媒の揮発が始まるが、隣接する液膜どうしは乾燥の程度がほとんど同じであり、実質的に同じ固形分濃度の液滴を隣接させていたため、隣接する液滴どうしは速やかに混合し、バンクで区画された1つの領域に対しては、均一な膜を形成しやすかった。
一方、近年においては、有機EL照明パネルの開発が盛んに行われている。有機EL照明パネルにおいては有機ELディスプレイパネルとは異なり、高々数百μmサイズのバンクで区画された画素に対してではなく、数cm〜数10cm、あるいはそれ以上の広い面積の領域に均一な膜を成膜する技術が求められている。
基板上に塗布液を塗布する際、塗布ヘッドを基板に対して相対的に走査しながら塗布する方法においては、被塗布領域がより広い面積である場合、すなわち、塗布ヘッドの幅よりも被塗布領域の幅の方が広い場合、一度の塗布ヘッドの走査によって被塗布領域全面に塗布液を塗布できないため、塗布ヘッドを複数回走査することが必要である。この場合、特許文献1〜4のように、1回の塗布ヘッドの走査によって形成される被塗布領域と、次の走査によって形成される隣接する被塗布領域の境界がバンクで区切られている場合はよ
いが、上記2つの被塗布領域の境界がバンクではなく発光領域であって略平坦である場合、隣接する液膜同士が均一につながるようにする必要がある。
このように、被塗布領域全域を仮想的に複数の個別の領域に分けて各個別の領域ごとに塗布ヘッドを走査して塗布し、各個別の領域間の液膜がつながるように塗布する場合、各個別の領域間の境界部分がムラになるという問題がある。
個々の領域への塗布は、通常、塗布ヘッドが1回、基板に対して相対的に走査することによってなされる。しかしながら、塗布ヘッドの1回の走査にかかる時間の間に、塗布液から揮発する溶媒量が無視できない量であるため、隣接する個別の領域の境界近傍では、それぞれの液膜の乾燥状態が大きく異なる。そのため、均一な境界とはならず、微小な凹凸を有する境界領域が発生する。この理由は、隣接する液膜領域において、第1の液膜を形成した領域では溶媒の揮発が進んでおり、特に液膜端部ではほとんど溶媒が揮発して局所的には固体に近い状態になっている。そのため、隣接する個別の領域に塗布された塗布液と均一になじまず、膜厚ムラが生じてしまう。
また、条件によっては被塗布領域の端部が平坦にならず、異常に盛り上がった、いわゆるコーヒーステイン形状が形成されることもある。これは、被塗布領域に広がった液膜の端部においては、溶媒の蒸発量が多いため、それを補うように塗布液が外周に向かって流れ、その結果、端部の固形分が多くなり、乾燥後、盛り上がった膜が形成されることによる。
端部が固体に近い状態、場合によっては端部のみが局所的に盛り上がった形状の膜に第2の液膜を隣接させて形成する場合、まず、第1の液膜端部に第2の液膜が濡れ広がりつつ固体に近い部分を再溶解する。再溶解によって第2の液膜端部は局所的に固形分濃度が高くなって粘度と表面張力が上昇し、そのため十分に濡れ広がらず、乾燥後に膜厚の凹凸が発生すると考えられる。また、第1の液膜の端部が盛り上がっている場合、完全には再溶解されず、その形状が乾燥後の膜形状に維持され、凸部を有する膜厚ムラになることもある。
この凹凸の高低差は約5nm程度と非常に小さい場合もある。しかしながら、有機EL素子における有機機能層は数10nm〜100nm程度と非常に薄いため、5nm程度の凹凸であっても発光面にはその影響が顕著に現れる。すなわち、膜厚が薄い領域では電流が集中して流れてより明るく発光し、膜厚が厚い領域では電流が流れにくくより暗い発光となる。その結果、発光面に、より明るい領域とより暗い領域が隣接するため、コントラストが強くなり、輝度ムラとして認識されやすい発光面になる、という問題があった。
特許文献1〜4においては、レベリング性の向上、すなわち、固形分濃度のほぼ同じ組成物どうしをより均一に混合することによって均一な塗布膜を得ることを目的としたものであり、濃度が異なる液体同士の混合や、固体状態の膜が存在する場合の解決策は示されていなかった。
特許文献5においては、隣接する液膜領域の境界を均一にするために、n回目の走査とn+1回目の走査との境界領域近傍において、塗布ヘッドのノズルが重複するような位置関係とし、境界領域近傍において、n回目の走査にて液滴を吐出する位置と、n+1回目の走査にて液滴を吐出する位置とを混在させる方法が提案されている。しかしながら、バンクで区画された1つの領域内に対しては、1回の塗布ヘッドの走査で塗布を行うため、乾燥状態の異なる液体同士の混合や、局所的な固体状態の膜が存在する場合の解決策は示されていなかった。
特許文献6においては、n回目の走査とn+1回目の走査との境界付近において、インクジェットヘッドのノズルの位置によって液滴を吐出しないノズルを設け、インクの塗布
量を低減して膜厚を均一にするというものであるが、境界付近におけるインクの塗布量を精密に制御する必要があった。また、乾燥状態の異なる液体どうしの混合や、局所的な固体状態の膜が存在する場合の解決策は示されていなかった。
また、いずれの場合も、n回目の走査とn+1回目の走査でヘッドが重複している領域の分だけ、1回の走査により塗布可能な面積が狭くなり、生産性が劣るという問題点があった。
国際公開第2010/104183号 特開2002−056980号公報 特開2005−103392号公報 特表2005−514726号公報 特開2004−327241号公報 特開2011−129337号公報
本発明は、塗布ヘッドの幅が被塗布領域よりも狭く、被塗布領域を複数の領域に分けて塗布する場合において、第1の領域に塗布ヘッドを走査させて液滴を吐出成膜した後、第1の領域に隣接する第2の領域に塗布ヘッドを走査させて液滴を吐出成膜した場合においても、第1の領域と第2の領域の塗布境界部が平坦である膜を効率よく形成する手段を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、塗布ヘッドの幅が被塗布領域よりも狭く、被塗布領域を複数の領域に分けて塗布する場合においても、隣接する領域の塗布境界部が平坦な膜が形成される方法を見出した。
本発明の要旨は以下の通りである。
<1>低分子電荷輸送材料、低分子発光材料および溶媒を含む発光層形成用組成物を、基板上の被塗布領域に塗布して発光層を形成する発光層形成工程を含む有機EL素子製造方法であって、該発光層形成用組成物が更にポリシロキサンを含み、該発光層形成工程は、該発光層形成用組成物を吐出するノズルを有する塗布ヘッドを、第1の走査方向に走査させながら、該被塗布領域内の第1の領域に該発光層形成用組成物を吐出する第1工程と、該被塗布領域内の該第1の領域に隣接する第2の領域において、該第1の領域と該第2の領域の境界の少なくとも一部が発光領域であって、該塗布ヘッドを、該第1の走査方向と同じ方向、または該第1の走査方向と180度逆向きの方向に走査させながら、該第2の領域に該発光層形成用組成物を吐出する第2工程をこの順に含むことを特徴とする、有機EL素子製造方法。
<2>前記発光層形成用組成物が、分子量5000以下の前記低分子電荷輸送材料を0.01重量%以上、50重量%以下含み、分子量5000以下の前記低分子発光材料を0.001重量%以上、50重量%以下含むことを特徴とする、前記<1>に記載の有機EL素子製造方法。
<3>前記ポリシロキサンが下記式(1)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物であることを特徴とする、前記<1>または<2>に記載の有機EL素子製造方法。
Figure 2015005396
(上記式(1)中、RおよびRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基、フロロアルキル基又は芳香族炭化水素基を表す。)
<4>前記ポリシロキサンが下記式(2)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物であることを特徴とする、前記<3>に記載の有機EL素子製造方法。
Figure 2015005396
(上記式(2)中、Rは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、フロロアルキル基又は芳香族炭化水素基を表す。m及びnは、0〜2500の整数を表す。nが2以上の場合、一鎖中に複数含まれるRは、互いに異なっていてもよい。)
<5>前記発光層形成用組成物が、前記ポリシロキサンを0.0001重量%以上、0.1重量%以下含むことを特徴とする、前記<1>乃至前記<4>のいずれか1に記載の有機EL素子製造方法。
<6>前記基板上の前記被塗布領域に隔壁が形成されていることを特徴とする、前記<1>乃至前記<5>のいずれか1に記載の有機EL素子製造方法。
<7>前記隔壁がストライプ状に形成されており、前記第1の走査方向がストライプの長
手方向に平行ではないことを特徴とする前記<6>に記載の有機EL素子製造方法。
<8>前記第1の走査方向が、前記隔壁の長手方向に略直交する方向であることを特徴とする、前記<7>に記載の有機EL素子製造方法。
<9>前記ノズルがインクジェット用ノズルであり、前記塗布ヘッドが複数の前記インクジェット用ノズルを有することを特徴とする、前記<1>乃至前記<8>のいずれか1に記載の有機EL素子製造方法。
<10>前記ノズルが、長手方向にスリット状の組成物吐出孔であることを特徴とする、前記<1>1乃至前記<8>のいずれか1に記載の有機EL素子製造方法。
<11>前記<1>乃至前記<10>のいずれか1に記載の有機EL素子製造方法で製造されたことを特徴とする、有機EL素子。
<12>前記<11>に記載の有機EL素子を用いた表示装置。
<13>前記<12>に記載の有機EL素子を用いた照明装置。
本発明にかかる有機EL素子製造方法によれば、塗布ヘッドの幅が被塗布領域よりも狭く、被塗布領域を複数の領域に分けて塗布する場合において、第1の領域に塗布ヘッドを走査させて液滴を吐出成膜した後、第1の領域に隣接する第2の領域に塗布ヘッドを走査させて液滴を吐出成膜した場合においても、第1の領域と第2の領域の塗布境界部が平坦である膜を効率よく形成することができる。
本発明の発光層形成工程の内容を示す概念図である。 塗布ヘッドが複数のインクジェット用ノズルを有する場合を示す概念図である。 塗布ヘッドがスリット状のノズルを有する場合の一例を示す概念図である。 塗布ヘッドがスリット状のノズルを有する場合の一例を示す概念図である。 実施例の発光層形成工程を説明するための概念図である。
以下、図面を参照しながら本発明の有機EL発光装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。また、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。
(発光層形成工程)
図1は、本発明の発光層形成工程の内容を示す概念図である。
基板1上には、発光層形成用組成物を塗布すべき、被塗布領域2があらかじめ定められている。ここで、基板1上とは、基板1と発光層との間に他の層を有していてもよいことを意味する。例えば、後述するように、基板1と発光層の間には、陽極、正孔注入層および正孔輸送層等が形成されていても良い。正孔輸送層等が形成されている場合、発光層形成用組成物は、正孔輸送層等の上に塗布される。発光層形成用組成物の詳細については後述する。
被塗布領域2は、被塗布領域2の外側に発光層形成用組成物が濡れ広がらないように、被塗布領域2を囲む部材を有することが好ましい。被塗布領域2を囲む部材は、例えば、基板1から突出した構造物、例えばバンクや隔壁、あるいは被塗布領域2よりも撥液性の高い表面を有する部材を設けることが好ましい。
図1は、1回目の塗布ヘッド3の走査によって発光層形成用組成物を塗布すべき第1の領域4と、2回目の塗布ヘッド3の走査によって発光層形成用組成物を塗布すべき第2の領域5とを図示している。矢印は塗布ヘッド3の走査方向を示しており、図1の例では、第1の領域4における第1の走査方向41は下向き、第2の領域5における第2の走査方向51は上向きである。
本発明では、塗布ヘッド3の走査方向に対する幅が、被塗布領域2よりも狭く、被塗布領域2を複数の領域に分けて塗布する場合を想定している。従って、被塗布領域2は少なくとも第1の領域4と第2の領域5に分けられることになる。以下、発光層形成工程について詳述する。
まず、第1の領域4において、発光層形成用組成物を吐出可能なノズルを有する塗布ヘッド3を、第1の走査方向41に走査しながら、発光層形成用組成物を吐出することにより、第1の領域4を含む領域に発光層形成用組成物からなる第1の液膜を形成する。この工程を第1工程とする。第1の液膜は、被塗布領域2を囲む部材に接していない辺では、第1の領域4の外に発光層形成用組成物が濡れ広がる。第1の領域4と、第1工程で発光層形成用組成物が濡れ広がった領域を合わせた領域を、第1の液膜領域とする。
次いで、第1の領域4に隣接する第2の領域5において、塗布ヘッド3を第2の領域5の塗布開始位置に平行移動させ、第1の走査方向と180度逆向きの方向である第2の走査方向51に走査しながら、該第2の領域5に発光層形成用組成物を吐出することにより、発光層形成用組成物からなる第2の液膜を形成する。この工程を第2工程とする。
図1においては、第2の走査方向51は第1の走査方向41と180度反対向きとしているが、第1工程終了後、塗布ヘッド3を第1の走査における塗布開始位置側に移動させ
て、第2の走査方向51と第1の走査方向41を同じ向きにして第2工程を実施してもよい。
このとき、第1の領域4と第2の領域5の境界部6において、第1の液膜と第2の液膜とは接するか、または端部が重なるように形成される。
本発明においては、境界部6の少なくとも一部は有機EL素子の発光領域である。前述の通り、2つの被塗布領域の境界がバンクではなく略平坦な発光領域である場合に、隣接する液膜同士が均一につながるようにすることが本発明の目的であるからである。
また、基板上の被塗布領域内に隔壁が形成されていてもよい。また、前記隔壁がストライプ状に形成されていてもよい。この場合、第1の走査方向がストライプの長手方向に平行でなくても良く、隔壁の長手方向に略直交する方向であることが、ヘッドの走査制御およびノズルからのインク吐出制御がしやすく好ましい。
本発明者らは鋭意検討の結果、低分子電荷輸送材料、低分子発光材料、溶媒を含む発光層形成用組成物に、更にポリシロキサンを含有させることにより、第1の液膜と第2の液膜とが境界部6で均一に混合し、乾燥後の膜表面に凹凸の少ない、平坦な発光層が形成されることを見出した。
この理由は、次のように推察される。第1の液膜の端部付近は、端部に近いほど溶媒の揮発が多く、固体に近い状態になっていると考えられる。液膜はポリシロキサンを含んでいることから、固体に近い状態になっている端部においては、単位体積辺りのポリシロキサン濃度が高くなる。また、一般的に、発光層形成用組成物中に含まれるポリシロキサンは、溶媒の揮発とともに速やかに表面に浮き出てくると考えられているので、溶媒の揮発が第2の液膜より進んでいると考えられる第1の液膜端部においては、膜表面にポリシロキサンが相対的に多く存在していると考えられる。このようなポリシロキサンが多く存在している膜の上に、ポリシロキサンを含む組成物を塗布した場合、ポリシロキサンを含まない膜上への塗布、またはポリシロキサンを含まない組成物による塗布に比べて、より速やかに液膜が濡れ広がるとともに、第1の液膜端部表面のポリシロキサンは速やかに第2の液膜に移動し、入れ替わりに第2の液膜の溶剤が第1の液膜端部のポリシロキサンが抜けた位置に置換し、結果的に第1の液膜端部の再溶解が促進されると考えられる。その結果、第1の液膜端部では第2の液膜との混合が速やかに起こり、均一な塗布面が形成され、乾燥後の膜も平坦な面になると考えられる。
次に、個々の領域における、塗布ヘッド3が有するノズルの位置関係について説明する。図2には、塗布ヘッド3が、複数のノズル7を有する場合を示している。図2においては、ノズル7はインクジェット用のノズルであり、微小な液滴を吐出可能な構造を有する。インクジェット用のノズルとしては、従来公知のものを使用可能である。
隣接するノズル7の間隔は、図2に示すようにすべて等しいことが好ましい。各ノズル7からの吐出量を一定とすることで、単位面積当たりの液滴の量を均一にしやすく、均一な液膜が得やすいからである。図2のように隣接するノズル7の間隔が全て等しい場合、走査方向におけるこの間隔の幅をノズルピッチ71とする。図2では塗布ヘッド3のノズル7の並びは、第1の走査方向41に対して直交してはいないが、直交していてもよい。被塗布領域2の第1の領域4と第2の領域5を合わせた複数の領域間におけるノズルの位置関係については、第1の領域4の走査時において最も第2の領域5側に位置するノズル7の走査位置と、第2の領域5の走査時において最も第1の領域4側に位置するノズル7の走査位置の間の距離72が、ノズルピッチ71と同等以上であることが好ましい。前記距離72がノズルピッチ71より狭いと、境界部6に存在する液膜の量が、各領域の中央部における液膜の量よりも増えてしまい、膜厚が大きくなってしまう可能性があるためである。液膜の濡れ性が高く広がりやすい場合は、ノズルピッチ71より前記距離72を広くすることが好ましい。
次に、図3、4を用いて、ノズル7が、塗布ヘッド3の長手方向にスリット状の組成物吐出孔である場合について説明する。
図3は、ノズル7から吐出された発光層形成用組成物が、スリット幅73よりも広い着液幅42で着液している場合の模式図である。図3(a)は上面から見た図であり、図3(b)は断面図である。図3中の記号8は、発光層形成用組成物が着液するイメージを示している。塗布ヘッド3内で発光層形成用組成物が加圧された状態でノズル7から吐出される場合はこのようになることが多い。この場合、第1の領域4を走査する場合のノズル7の第2の領域5側の端部の位置と、第2の領域5を走査する場合のノズル7の第1の領域4側の端部の位置とは、発光層形成用組成物の広がり具合に応じて間隔74を設けることが好ましい。前記間隔74を調節することで、境界部6の膜厚の均一性を高めることができる。
図4は、塗布ヘッド3内で発光層形成用組成物を加圧する圧力が低いか、ほとんど加圧せずにノズル7から吐出する場合の模式図である。図4(a)は上面から見た図であり、図4(b)は断面図である。図4中の記号8は、発光層形成用組成物が着液するイメージを示している。この場合、発光層形成用組成物は重力による吐出、および/または、基板1に塗布された液膜からの表面張力によって引かれてノズル7から吐出されることになる。ノズル7から吐出された発光層形成用組成物は、その表面積を極小にするよう表面張力が働くため、先細り形状となり、スリット幅73よりも狭い幅の領域に着液する。この場合、第1の領域4の走査方向に直交する方向における着液幅42は、スリット幅73よりも狭くなることになる。従って、第1の領域4を走査する場合のノズル7の第2の領域5側の端部の位置と、第2の領域5を走査する場合のノズル7の第1の領域4側の端部の位置とは、発光層形成用組成物の狭まり具合に応じて重なり幅75を設けることが好ましい。前記重なり幅75を調節することで、境界部6の膜厚の均一性を高めることができる。
被塗布領域2の全域に液膜を形成した後は、乾燥工程により液膜内の溶媒を除去し、発光層を形成する。乾燥工程は、減圧、加熱、または減圧および加熱を組み合わせて行うことが出来る。時間短縮のためには、加熱工程を含むことが好ましい。使用する加熱手段の例としては、クリーンオーブン、ホットプレート、あるいは赤外線照射など公知の方法を用いることができるが、これらに限定されない。
(有機EL素子)
本発明にかかる有機EL素子は、少なくとも基板上に一対の電極および、電極間に発光層を有する。また、電極と発光層との間に、1または複数の電荷輸送層、電荷阻止層、その他の中間層を設けてもよい。具体的には基板上に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子注入層、陰極をこの順に含んだものが例示できる。しかし、層の構成はこれらに限定されるものではなく、公知の有機EL素子を適宜用いることができる。本発明にかかる発光層は、湿式成膜法で形成されるため、基板上の電極と発光層との間に設けられる層は、湿式成膜法で形成され、不溶化されていることが好ましい。
<基板>
本発明において、基板は無機ガラスや各種樹脂を用いることができる。例えば、無アルカリガラス、青板ガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等の無機ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)セルロースアセテートプロピオネート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂が挙げられる。また、金属板、金属箔等も使用することができる。好ましくは無機ガラスおよび樹脂である。
基板の厚みは、通常、0.01mm以上、好ましくは0.05mm以上、さらに好まし
くは0.1mm以上である。また、通常、10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは1mm以下である。
<陽極>
基板上には陽極が設けられる。陽極は発光層側の層(正孔注入層、正孔輸送層又は発光層など)への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属、インジウム及び/又はスズの酸化物などの金属酸化物、ヨウ化銅などのハロゲン化金属、カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子などにより構成される。
陽極の形成は通常、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることが多い。また、銀などの金属微粒子、ヨウ化銅などの微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末などを用いて陽極を形成する場合には、適当なバインダー樹脂溶液に分散させて、基板上に塗布することにより陽極を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板上に導電性高分子を塗布して陽極を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
陽極は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、好ましくは80%以上とすることが望ましい。この場合、陽極の厚みは通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また通常1000nm以下、好ましくは500nm以下程度である。不透明でよい場合は陽極の厚みは任意であり、陽極は基板と同一でもよい。また、さらには上記の陽極の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
陽極に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的に、陽極表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることが好ましい。
<正孔注入層>
正孔注入層は、陽極から発光層へ正孔を輸送する層であり、通常、陽極上に形成される。本発明においては、正孔注入層の上に正孔輸送層または発光層を湿式成膜法にて積層塗布するため、本発明に係る正孔注入層は、高分子からなる正孔注入層を湿式成膜法により形成することが好ましい。正孔注入層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
湿式成膜により正孔注入層を形成する場合、通常は、正孔注入層を構成する材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層形成用組成物)を調製し、この正孔注入層形成用組成物を適切な手法により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
<<正孔輸送性化合物>>
正孔注入層形成用組成物は、通常、正孔注入層となる正孔輸送性化合物を含有する。また、湿式成膜法の場合は、通常、更に溶剤も含有する。正孔注入層形成用組成物は、正孔輸送性が高く、注入された正孔を効率よく輸送できるのが好ましい。このため、正孔移動度が大きく、トラップとなる不純物が製造時や使用時等に発生し難いのが好ましい。また、安定性に優れ、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光に対する透明性が高いことが好
ましい。特に、正孔注入層が発光層と接する場合は、発光層からの発光を消光しないものや発光層とエキサイプレックスを形成して、発光効率を低下させないものが好ましい。
正孔輸送性化合物としては、陽極から正孔注入層への電荷注入障壁の観点から、4.5eV〜6.0eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物が好ましい。正孔輸送性化合物の例としては、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物系化合物、キナクリドン系化合物等が挙げられる。
上述の例示化合物のうち、非晶質性及び可視光透過性の点から、芳香族アミン化合物が好ましく、芳香族三級アミン化合物が特に好ましい。ここで、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は、特に制限されないが、表面平滑化効果により均一な発光を得やすい点から、重量平均分子量が1000以上1000000以下の高分子化合物(繰り返し単位が連なる重合型化合物)を用いるのが好ましい。
<<電子受容性化合物>>
正孔注入層には、正孔輸送性化合物の酸化により、正孔注入層の導電率を向上させることができるため、電子受容性化合物を含有していることが好ましい。
電子受容性化合物としては、酸化力を有し、上述の正孔輸送性化合物から一電子受容する能力を有する化合物が好ましく、具体的には、電子親和力が4eV以上である化合物が好ましく、電子親和力が5eV以上である化合物が更に好ましい。
このような電子受容性化合物としては、例えば、トリアリールホウ素化合物、ハロゲン化金属、ルイス酸、有機酸、オニウム塩、アリールアミンとハロゲン化金属との塩、アリールアミンとルイス酸との塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物等が挙げられる。具体的には、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩;塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報);ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物;トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;(国際公開2005/089024号パンフレット)記載のイオン化合物;フラーレン誘導体及びヨウ素等が挙げられる。
<正孔輸送層>
正孔輸送層は、陽極側から発光層側に正孔を輸送する機能を担う層である。正孔輸送層は、陽極から発光層に正孔を輸送する機能を強化する点では、この層を用いるのが好ましい。正孔輸送層を用いる場合、通常、正孔輸送層は、陽極と発光層の間に形成される。また、上述の正孔注入層がある場合は、正孔注入層と発光層の間に形成される。
本発明においては、正孔注入層の上に正孔輸送層または発光層を湿式成膜法にて積層塗布するため、本発明に係る正孔注入層は、高分子からなる正孔注入層を湿式成膜法により形成することが好ましい。正孔輸送層の膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上であり、また、一方、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
正孔輸送層を形成する材料としては、正孔輸送性が高く、かつ、注入された正孔を効率よく輸送することができる材料であることが好ましい。そのために、イオン化ポテンシャルが小さく、可視光に対して透明性が高く、正孔移動度が大きく、安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時や使用時に発生しにくいことが好ましい。また、多くの場合、発光層に接するため、発光層からの発光を消光したり、発光層との間でエキサイプレックス
を形成して効率を低下させたりしないことが好ましい。
<発光層>
発光層は、一対の電極間に電界が与えられた時に、陽極から注入される正孔と陰極から注入される電子が再結合することにより励起され、発光する機能を担う層である。発光層は、陽極と陰極の間に形成される層であり、発光層は、陽極の上に正孔注入層がある場合は、正孔注入層と陰極の間に形成され、陽極の上に正孔輸送層がある場合は、正孔輸送層と陰極の間に形成される。
本発明における発光層は、低分子電荷輸送材料、低分子発光材料、ポリシロキサンおよび溶媒を含む発光層形成用組成物を、前述の発光層形成工程によって基板の上の被吐出領域に塗布して形成される。本発明の発光層形成用組成物は、低分子電荷輸送材料、低分子発光材料、ポリシロキサンおよび溶媒を含む。
<<低分子電荷輸送材料>>
本発明の発光層形成用組成物に含まれる低分子電荷輸送材料は、正電荷(正孔)又は負電荷(電子)輸送性を有する材料であり、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、公知の発光材料を適用可能である。電荷輸送性材料は、従来、有機電界発光素子の発光層に用いられている化合物等を用いることができ、特に、発光層のホスト材料として使用されている化合物が好ましい。
電荷輸送性材料としては、具体的には、芳香族アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポルフィリン系化合物、オリゴチオフェン系化合物、ポリチオフェン系化合物、ベンジルフェニル系化合物、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン系化合物、シラザン系化合物、シラナミン系化合物、ホスファミン系化合物、キナクリドン系化合物等の正孔注入層の正孔輸送性化合物として例示した化合物等が挙げられる他、アントラセン系化合物、ピレン系化合物、カルバゾール系化合物、ピリジン系化合物、ピリミジン系化合物、トリアジン系化合物、フェナントロリン系化合物、オキサジアゾール系化合物、シロール系化合物等の電子輸送性化合物等が挙げられる。
また、例えば、4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェ
ニルで代表わされる2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4',4''−トリス(1
−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン系化合物(J.Lumin.,72−74巻、985頁、1997年)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン系化合物(Chem.Commun.,2175頁、1996年)、2,2',7,7'−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9'
−スピロビフルオレン等のフルオレン系化合物(Synth.Metals,91巻、209頁、1997年)、4,4'−N,N'−ジカルバゾールビフェニルなどのカルバゾール系化合物等の正孔輸送層の正孔輸送性化合物として例示した化合物等も好ましく用いることができる。
電荷輸送材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5000以下、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。電荷輸送材料の分子量が上記下限以上であると、耐熱性が高くなり、塗布後の乾燥時の熱で分解したり昇華したりせず、膜を形成した際の膜質の低下が起こりにくいこと、および、乾燥時にポリシロキサンが表面にマイグレーションする際に膜質の低下が起こりにくく好ましい。一方、電荷輸送材料の分子量が上記上限以下であると、有機化合物の精製が容易で高純度に精製できる
こと、および、組成物中でポリシロキサンが電荷輸送材料とともに均一に混合されるため好ましい。
<<低分子発光材料>>
低分子発光材料は、蛍光発光材料でも、燐光発光材料でもよいが、発光効率が良好である材料が好ましく、内部量子効率の観点から燐光発光材料が好ましい。
蛍光発光材料としては、例えば、以下の材料が挙げられる。
青色発光を与える蛍光発光材料(青色蛍光発光材料)としては、例えば、ナフタレン、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、クリセン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光発光材料(緑色蛍光発光材料)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、Al(CNO)などのアルミニウム錯体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光発光材料(黄色蛍光発光材料)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光発光材料(赤色蛍光発光材料)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
燐光発光材料としては、例えば、長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第7〜11族から選ばれる金属を中心金属として含むウェルナー型錯体又は有機金属錯体などが挙げられる。
周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられ、中でもより好ましくはイリジウム又は白金である。
錯体の配位子としては、(ヘテロ)アリールピリジン配位子、(ヘテロ)アリールピラゾール配位子などの(ヘテロ)アリール基とピリジン、ピラゾール、フェナントロリンなどが連結した配位子が好ましく、特にフェニルピリジン配位子、フェニルピラゾール配位子が好ましい。ここで、(ヘテロ)アリールとは、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
燐光発光材料として、具体的には、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、トリス(2−フェニルピリジン)ルテニウム、トリス(2−フェニルピリジン)パラジウム、ビス(2−フェニルピリジン)白金、トリス(2−フェニルピリジン)オスミウム、トリス(2−フェニルピリジン)レニウム、オクタエチル白金ポルフィリン、オクタフェニル白金ポルフィリン、オクタエチルパラジウムポルフィリン、オクタフェニルパラジウムポルフィリン等が挙げられる。
低分子発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5000以下、好ましくは4000以下、より好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。低分子発光材料の分子量が上記下限以上であると、耐熱性が高くなり、塗布後の乾燥時の熱で分解したり昇華したりせず、膜を形成した際の膜質の低下が起こりにくいこと、および、乾燥時にポリシロキサンが表面にマイグレーションする際に膜質の低下が起こりにくく好ましい。一方、低
分子発光材料の分子量が上記上限以下であると、有機化合物の精製が容易で高純度に精製できること、および、組成物中でポリシロキサンが電荷輸送材料とともに均一に混合されるため好ましい。
<<ポリシロキサン>>
本発明の発光層形成用組成物に含まれるポリシロキサンは、具体的には下記式(1)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物である。
Figure 2015005396
上記式(1)中、RおよびRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基、フロロアルキル基又は芳香族炭化水素基を表す。
アルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基があげられ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシ
ル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜18の芳香族炭化水素基があげられ、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、テトラリル基、トリフェニリル基、クリセン基、ピレン基、ペリレン基、ペンタセン基、メチルフェニル基、ベンジル基、トリル基、アルキルナフチル基、などが挙げられる。
アラルキル基としては炭素数7〜30のアラルキル基があげられ、例えばベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルイソプロピル基、フェニルブチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルプロピル基、ナフチルブチル基等が挙げられる。
フロロアルキル基としては、炭素数1〜8のフッ素置換されたアルキル基があげられ、アルキル基の水素が全てフッ素で置換されていても良いし、位置部置換されていてもよい。
本発明における、シロキサン結合からなる高分子化合物は、上記式(1)で表される繰り返し単位を2種以上含んでいてもよい。
本発明における、シロキサン結合からなる高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、通常500以上、好ましくは700以上であり、通常100,000以下、好ましくは10,000以下、特に好ましくは5,000以下である。この範囲内であると組成物の溶媒に均一に溶解し、塗布した際に表面に出て来やすく好ましい。
上記式(1)中、熱的に極めて安定であるという点から、下記式(2)で表される高分子化合物であることが更に好ましい。
Figure 2015005396
ここで、上記式(2)中、Rは、前記式(1)と同様である。m及びnは、0〜2500の整数を表す。尚、nが2以上の場合、一鎖中に複数含まれるRは、互いに異なっていてもよい。
これらの高分子化合物の好ましい具体例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、環状ポリシロキサンなどのポリシロキサン;アルキル変性ポリシロキサン、アラルキル変性ポリシロキサン、フロロアルキル変性ポリシロキサンなどのシリコーンオイルが挙げられる。
さらに好ましくは、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、アラルキル変性ポリシロキサン、フロロアルキル変性ポリシロキサンであり、特に好ましくはポリジメチルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンフロロアルキル変性ポリシロキサンであり、最も好ましくはポリジメチルシロキサンである。
これらのポリシロキサンは、置換基として非極性基のみを有するため、本発明における低分子電荷輸送材料および本発明における低分子発光材料との相互作用が少なく、ポリシロキサンと低分子電荷輸送材料または低分子発光材料との会合体や凝集体を形成せず、組成物中で均一に溶解して好ましく、また、塗布乾燥した際、速やかにポリシロキサンが膜表面に出てきて好ましい。特に、ポリジメチルシロキサンは置換基の大きさが最も小さいため、最も膜表面に出て来やすく好ましい。
本発明の発光層形成用組成物に含まれるポリシロキサンの好ましい含有量は、好ましくは、0.0001重量%以上、さらに好ましくは、0.0005重量%以上であり、好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.05重量%以下である。
0.0001重量%未満の場合、塗布領域端部が平坦にならず、異常に盛り上がった、いわゆるコーヒーステイン形状が形成され、好ましくない。これは、基板に広がった液膜の外縁の蒸発量が多いため、それを補うように液が外周に向かって流れ、その結果、乾燥後、外縁で盛り上がった膜が形成されることによる。
0.0001重量%以上であれば、液膜のレベリング性が向上することによって、コーヒーステインの形成が抑制されると推測される。
0.1重量%より多い場合、隣接する2つの塗布領域の塗布境界部が平坦にならない。この理由は、ポリシロキサン濃度が高い場合、液膜表面のポリシロキサン濃度が高くなり、ポリシロキサンの分離が顕在化し、溶媒が蒸発する際の対流によって、ポリシロキサン量が局所的に多い領域と少ない領域が形成され、そのため溶媒の蒸発の早い領域と遅い領域が発生し、その結果、膜厚が不均一になることが原因であると推測される。
0.1重量%以下であれば、ポリシロキサンが分離することなく均一に混合した液膜として存在し、均一に乾燥して平坦な膜を得ることができると推測される。
<<溶剤>>
本発明における発光層形成用組成物には溶媒が含まれる。溶媒としては、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、含ハロゲン有機溶媒、アミド系溶媒などを用いることができ、エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒が、溶解性が高くかつ残留溶媒の悪影響が少ないため好ましく、芳香族エステル系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が、さらに溶解性が高く好ましく、芳香族炭化水素系溶媒がさらに安定性が高く特に好ましい。
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル及び酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル
、安息香酸エチル、安息香酸プロピル及び安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチシレン、シクロヘキシルベンゼン、3−イソプロピルビフェニル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン及びメチルナフタレン等が挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)等の脂肪族エーテル、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル等のエーテル系溶媒などが挙げられる。
含ハロゲン有機溶媒としては、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン及びo−ジクロロベンゼン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種類を単独で用いても、2種類以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
また、前記溶媒の沸点は通常75℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上であり、通常350℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下である。
この下限値以上であれば、有機電界発光層の加熱・焼成を行う前に、塗布膜が乾燥によって、膜が均一でなくなってしまうおそれがない。また、この上限値以下であれば、乾燥によって溶媒を十分に除去することができ、有機電界発光層の所望の特性を得ることができる。また溶媒の除去も短時間で達成でき、生産性が向上する。
発光層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、膜に欠陥が生じ難い点では厚い方が好ましく、また、一方、薄い方が低駆動電圧としやすい点で好ましい。このため、3nm以上であるのが好ましく、5nm以上であるのが更に好ましく、また、一方、通常200nm以下であるのが好ましく、100nm以下であるのが更に好ましい。
<<発光層形成用組成物の組成>>
本発明の発光層形成用組成物に含まれる低分子電荷輸送材料の含有率は、0.01重量%以上が好ましく、さらに好ましくは0.1重量%以上である。また、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。本発明の発光層形成用組成物に含まれる低分子電荷輸送材料の含有率がこの範囲であると、組成物の液物性が適正な範囲であり、組成物のノズルからの吐出性が優れ、かつ、被塗布面への濡れ性に優れ、好ましい。
また、本発明の発光層形成用組成物に含まれる低分子発光材料の含有率は、0.001重量%以上が好ましい。また、好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
また、本発明の発光層形成用組成物に含まれる低分子発光材料の、本発明の発光層形成用組成物に含まれる低分子電荷輸送材料に対する配合率は、0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がさらに好ましい。また、好ましくは100重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。
本発明の発光層形成用組成物に含まれる低分子発光材料の含有率がこの範囲であると、
発光層中において、低分子電荷輸送材料から低分子発光材料への電荷移動またはエネルギー移動による低分子発光材料の励起確率が高く、かつ、励起された低分子発光材料が濃度消光を起こさずに発光し、その結果発光効率が高くなり好ましい。
<正孔阻止層>
発光層と後述の電子注入層との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、発光層の上に、発光層の陰極側の界面に接するように積層される層である。
この正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔を陰極に到達するのを阻止する役割と、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送する役割とを有する。正孔阻止層6を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。
このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005/022962号パンフレットに記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。
正孔阻止層の形成方法に制限はない。従って、湿式成膜法、蒸着法や、その他の方法で形成できる。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上であり、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
<電子輸送層>
電子輸送層は素子の電流効率をさらに向上させることを目的として、発光層と電子注入層との間に設けられる。
電子輸送層は、電界を与えられた電極間において陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる化合物より形成される。電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、陰極又は電子注入層からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物であることが必要である。
電子輸送層に用いる電子輸送性化合物は、通常、陰極又は電子注入層からの電子注入効率が高く、注入された電子を効率よく輸送できる化合物が好ましい。電子輸送性化合物としては、具体的には、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−ヒドロキシフラボン金属錯体、5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛
、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。
電子輸送層の膜厚は、通常1nm以上、好ましくは5nm以上であり、また、一方、通常300nm以下、好ましくは100nm以下である。
電子輸送層は、前記と同様にして湿式成膜法、或いは真空蒸着法により正孔阻止層上に積層することにより形成される。通常は、真空蒸着法が用いられる。
<電子注入層>
電子注入層は、陰極から注入された電子を効率よく、電子輸送層又は発光層へ注入する役割を果たす。
電子注入を効率よく行うには、電子注入層を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送材料に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことも、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。
膜厚は通常、5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
電子注入層は、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、発光層又はその上の正孔阻止層上に積層することにより形成される。
<陰極>
陰極は、発光層側の層(電子注入層又は発光層など)に電子を注入する役割を果たす。
陰極の材料としては、前記の陽極に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なう上では、仕事関数の低い金属を用いることが好ましく、例えば、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の金属又はそれらの合金などが用いられる。具体例としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数の合金電極などが挙げられる。
素子の安定性の点では、陰極の上に、仕事関数が高く、大気に対して安定な金属層を積層して、低仕事関数の金属からなる陰極を保護するのが好ましい。積層する金属としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が挙げられる。
陰極の膜厚は通常、陽極と同様である。
<その他の層>
本発明の有機EL素子は、本発明の効果を著しく損なわなければ、更に他の層を有していてもよい。すなわち、陽極と陰極との間に、上述の他の任意の層を有していてもよい。
<その他の素子構成>
なお、上述の説明とは逆の構造、即ち、基板上に陰極、発光層、陽極の順に形成することも可能である。
<有機EL表示装置>
本発明の有機EL表示装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL表示装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
例えば、「有機ELディスプレイ」(オーム社、平成16年8月20日発行、時任静士、安達千波矢、村田英幸著)に記載されているような方法で、本発明の有機EL表示装置を形成することができる。
<有機EL照明装置>
本発明の有機EL照明装置は、上述の本発明の有機電界発光素子を用いたものである。本発明の有機EL照明装置の型式や構造については特に制限はなく、本発明の有機電界発光素子を用いて常法に従って組み立てることができる。
本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
以下の手順で有機EL素子を作製した。
ガラス基板上に、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜をスパッタ成膜により堆積したものを、界面活性剤水溶液による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄、超純水による水洗の順で洗浄後、圧縮空気と接触させることにより乾燥させてから、紫外線オゾン洗浄を行った。
次に、フォトレジストにて、420μmピッチのストライプ状の隔壁を形成した。隔壁の幅は170μm、開口幅は250μmとした。
次に、以下の構造式(HI−1)に示すアリールアミンポリマー、構造式(HI−2)に示すアリールアミンポリマー、構造式(A1)に示す化合物および安息香酸エチルを含有する正孔注入層形成用塗布液を調製した。この塗布液を陽極を形成したガラス基板上にインクジェット法により成膜し、膜厚30nmの正孔注入層を形成した。
Figure 2015005396
<正孔注入層形成用塗布液>
塗布液濃度 HI−2:1.5重量%
HI−3:0.5
A1 :0.3重量%
乾燥条件 230℃、1時間
引き続き、以下の(HT−1)に示す構造式の化合物およびシクロヘキシルベンゼンを含有する正孔輸送層形成用塗布液を調製し、これを正孔注入層上にインクジェット法により成膜し、正孔輸送層を形成した。
Figure 2015005396
<正孔輸送層形成用塗布液>
塗布液濃度 HT−1:0.5重量%
乾燥条件 230℃、1時間
次に、以下の(EMH−1)(Mw=854.3)、(EMH−2)(Mw=890.4)、(EMD−1)(Mw1177.6)の構造式の化合物および、ポリジメチルシロキサン(信越シリコーン製、KF−96、10cps)を含有する発光層形成用組成物を調製し、インクジェット法により成膜し、平均膜厚50nmの発光層を正孔輸送層上に形成した。ここで、(EMH−1)及び(EMH−2)が低分子電荷輸送材料、(EMD−1)が低分子発光材料に相当する。
(EMH−1)
Figure 2015005396
<発光層形成用組成物>
溶媒 シクロヘキシルベンゼン
塗布液濃度 EMH−1:1.0重量%
EMH−2:3.0重量%
EMD−1:0.40重量%
ポリジメチルシロキサン:0.01重量%
<発光層の成膜条件>
塗布方法 インクジェット法
加熱条件 130℃、20分
発光層を成膜する際のインクジェット法は、次のようにして塗布した。
<インクジェット塗布条件>
ノズルピッチ: 141μm
塗布ヘッドのノズル数: 113ノズル
1回のヘッド操作における塗布幅: 15.9mm
ヘッド走査方向のインク吐出ピッチ:
ヘッド走査距離: 約80mm
被塗布領域: 約80mm×80mm
図1に示すように、基板上の被塗布領域を第1の領域、第2の領域、・・・に仮想的に分割し、1回の主走査において1つの分割された被塗布領域に発光層形成用組成物を塗布する。まず、第1の領域の端部から第1の走査方向に向けて塗布ヘッドを相対的に走査しながら第1の領域に発光層形成用組成物を塗布した。このとき、まず一番端の開口部にインクを塗布した後、次とその次の開口部には塗布せず、更にその次の開口部に塗布し、順次2開口部おきに塗布しながら反対側の端までヘッドを走査して塗布した。次いで塗布ヘッドを副走査方向に約15.9(=141μm×113)mm相対的に動かして第2の領域の端部に移動させた。すなわち、この移動によって、各領域内での副走査方向における液滴の着弾間隔と、隣接する各領域端部の間の液滴の着弾間隔は同じになるようにした。次いで、第1の走査方向と180度逆向きの第2の走査方向にヘッドを相対的に走査しながら発光層形成用組成物を第2の領域に塗布した。以降は同様の走査を繰り返して基板上の被塗布領域全体に発光層形成用組成物を塗布した。次に基板を真空乾燥機内に入れ、減圧して溶媒を揮発させた。次いで基板をホットプレートにて130℃で20分間加熱し、乾燥した。そして、隣接する領域間の塗布境界部の段差を、VertScan(菱化システム製)を用いて、phaseモードにて測定した。測定は8箇所行い、結果を表1に記した。
(比較例1)
発光層形成用組成物に、ポリジメチルシロキサンを用いなかった以外は実施例1と同様にして成膜し、第1の領域と第2の領域との境界部の段差を、VertScan(菱化システム製)にて測定した。段差は8箇所行い、結果を表1に記した。
(境界部の段差の評価結果)
Figure 2015005396
実施例1における境界部の段差は、比較例1の場合に比べ明らかに小さいことが判る。比較例1における段差の平均値3.3nmは、発光層の平均膜厚50nmに対して6%以上と非常に大きい。有機EL素子の発光層がこのような膜厚の段差を有している場合、発光層段差近傍において、発光層が厚い方には電流が流れにくく輝度が低下し、発光層が薄い方には電流が集中して輝度が高くなり、輝度ムラが発生する。
さらに、比較例1においては、測定箇所全てにおいて段差が確認されており、測定箇所8点中6箇所、すなわち75%が、段差3nm以上、すなわち発光層膜厚に対する割合が6%以上である。つまり、境界部はほぼ全域にわたって段差が形成されていると考えられる。一方、実施例1においては、境界部のほとんどが段差の無い平坦面になっているといえる。
1 基板
2 被塗布領域
3 塗布ヘッド
4 第1の領域
41 第1の走査方向
42 着液幅
5 第2の領域
51 第2の走査方向
6 境界部
7 ノズル
71 ノズルピッチ
72 走査位置の間の距離
73 スリット幅
74 間隔
8 発光層形成用組成物が着液するイメージ

Claims (13)

  1. 低分子電荷輸送材料、低分子発光材料および溶媒を含む発光層形成用組成物を、基板上の被塗布領域に塗布して発光層を形成する発光層形成工程を含む有機EL素子製造方法であって、
    該発光層形成用組成物が更にポリシロキサンを含み、
    該発光層形成工程は、
    該発光層形成用組成物を吐出するノズルを有する塗布ヘッドを、第1の走査方向に走査させながら、該被塗布領域内の第1の領域に該発光層形成用組成物を吐出する第1工程と、
    該被塗布領域内の、該第1の領域に隣接する第2の領域において、該第1の領域と該第2の領域の境界の少なくとも一部が発光領域であって、
    該塗布ヘッドを、該第1の走査方向と同じ方向、または該第1の走査方向と180度逆向きの方向に走査させながら、該第2の領域に該発光層形成用組成物を吐出する第2工程をこの順に含むことを特徴とする、有機EL素子製造方法。
  2. 前記発光層形成用組成物が、分子量5000以下の前記低分子電荷輸送材料を0.01重量%以上、50重量%以下含み、分子量5000以下の前記低分子発光材料を0.001重量%以上、50重量%以下含むことを特徴とする、請求項1に記載の有機EL素子製造方法。
  3. 前記ポリシロキサンが下記式(1)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の有機EL素子製造方法。
    Figure 2015005396
    (上記式(1)中、RおよびRは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アラルキル基、フロロアルキル基又は芳香族炭化水素基を表す。)
  4. 前記ポリシロキサンが下記式(2)で表される繰り返し単位からなる高分子化合物であることを特徴とする、請求項3に記載の有機EL素子製造方法。
    Figure 2015005396
    (上記式(2)中、Rは、水素原子、アルキル基、アラルキル基、フロロアルキル基又は芳香族炭化水素基を表す。m及びnは、0〜2500の整数を表す。nが2以上の場合、一鎖中に複数含まれるRは、互いに異なっていてもよい。)
  5. 前記発光層形成用組成物が、前記ポリシロキサンを0.0001重量%以上、0.1重量%以下含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の有機EL素子製造方法。
  6. 前記基板上の前記被塗布領域に隔壁が形成されていることを特徴とする、請求項1乃至
    請求項5のいずれか1項に記載の有機EL素子製造方法。
  7. 前記隔壁がストライプ状に形成されており、前記第1の走査方向がストライプの長手方
    向に平行ではないことを特徴とする請求項6に記載の有機EL素子製造方法。
  8. 前記第1の走査方向が、前記隔壁の長手方向に略直交する方向であることを特徴とする、請求項7に記載の有機EL素子製造方法。
  9. 前記ノズルがインクジェット用ノズルであり、前記塗布ヘッドが複数の前記インクジェット用ノズルを有することを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の有機EL素子製造方法。
  10. 前記ノズルが、前記塗布ヘッドの長手方向にスリット状の組成物吐出孔であることを特徴とする、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の有機EL素子製造方法。
  11. 請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の有機EL素子製造方法で製造されたことを特徴とする、有機EL素子。
  12. 請求項11に記載の有機EL素子を用いた表示装置。
  13. 請求項12に記載の有機EL素子を用いた照明装置。
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