JP2014527040A - 抗−線維化ペプチド並びに線維化を特徴とする疾患及び障害を治療するための方法における該抗−線維化ペプチドの使用 - Google Patents
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Abstract
【選択図】 図1
Description
本出願は、先の米国仮出願第61/509,340号(2011年7月19日出願)の出願日の利益を主張するものであり、その記載内容は参照により本明細書中に組み込まれるものとする。また本出願は、先の米国仮出願第61/662,337号(2012年6月20日出願)の出願日の利益を主張するものでもあり、その記載内容は参照により本明細書中に組み込まれるものとする。本明細書中で引用又は参照した全ての文献、並びに本明細書中で引用した文献中で引用又は参照されている全ての文献、並びに本明細書中に記述した、又は参照により本明細書中に組み込まれるあらゆる文献中の、あらゆる製品に関するあらゆる製造業者の説明書、解説書、製品仕様書、及び製品シートは、参照により本明細書中に組み込まれるものとし、かつ本発明の実施に際して採用しうるものとする。
本発明は、線維化及び/又は線維化に関する状態を治療するための組成物、該組成物の製造の方法、並びに線維化及び/又は線維化に関する状態を治療するための方法に関する。本発明はさらに、上皮間葉転換(EMT)過程の逆転及び/又は阻害を含む、線維化及び/又は線維化を生じる基礎状態の治療のためのポリペプチド又はペプチドの設計、調製、及び使用に関する。
本発明は、後述する本発明の実施形態の詳細な説明及び本明細書中に含まれる実施例を参照することで、より容易に理解されるであろう。本発明の方法及び技術を開示及び記載する前に、本発明は具体的な分析又は合成方法に限定されるものではなく、それら自体は当然変更しうることを理解されたい。同様に、本明細書中で使用した用語は単に特定の実施形態を説明するためのものであって、限定を意図したものではないということも理解されたい。他に定義しない限り、本明細書中で使用する全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の熟練者が通常理解している意味を有する。
線維化疾患は、線維芽細胞の活性化、コラーゲン及びフィブロネクチンの産生増加、並びに収縮性筋線維芽細胞への分化転換を特徴とする。この過程は通常は数ヶ月及び数年かけて生じるものであり、また臓器機能不全又は死をもたらす可能性がある。線維化疾患の具体例としては、糖尿病性腎症、肝硬変、特発性肺線維症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、心臓線維症及び強皮症(全身性硬化症;SSc)が挙げられる。線維化疾患は有効な治療法が存在しない最大の障害群の1つであり、またそれ故に、線維化疾患は未だ満たされない重要な医療ニーズの象徴である。多くの場合、線維症を患う患者にとって唯一の救済策は臓器移植であり;臓器の供給量は需要を満たすには不十分であるため、患者は適切な臓器を受け取るのを待つ間に死亡することが多い。肺の線維化はそれだけでも強皮症肺疾患、特発性肺線維症、放射線-及び化学療法-誘導肺線維症における死亡並びに塵粒子の職業性吸入により引き起こされる状態における死亡の主な原因となりうる。主に線維化疾患の病因が本質的に不明であるという理由から、適当な抗-線維化療法の不在が生じる。線維化疾患において正常組織の修復がどのように制御され、かつこの過程がいかにして不首尾に終わるのかを理解することが不可欠であろう。
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)及び結合組織増殖因子(CTGF)などの線維化誘導タンパク質は、線維化疾患に関与することが示唆されている。TGF-βは線維芽細胞がECMを合成しかつ収縮させるよう誘導するので、このサイトカインは線維化反応の中心的なメディエーターであると長く信じられてきた(1)。ヒト内皮細胞により分泌されるタンパク質として10余年前に発見されたCTGF(2)は、TGF-βにより誘導されるものであり、また線維芽細胞に対するTGF-βの作用の下流のメディエーターと考えられている(3,4)。同様に、TGF-βは、フィブロネクチン転写物の選択的スプライシングを通じて生じるフィブロネクチンの変異体である、基質タンパク質フィブロネクチンのED-A型(ED-A FN)の発現を誘導する(5)。このED-A FNの誘導は、TGF-β1により誘発されるα-SMA及びI型コラーゲンの発現増強に必要である(6)。このため、TGF-βは、肺(7)及び腎臓(文献参照)を含む多くの組織における線維化の誘導の「マスタースイッチ」であるとされている。この点に関して、TGF-βはIPFを患う患者の肺、又はCKD患者の腎臓においてアップレギュレートされ、またラットの肺又は腎臓における活性TGF-βの発現は劇的な線維化反応を誘導し、一方でTGF-β1に応答する能力の欠如はブレオマイシン誘導性の線維化(8)又は腎間質線維化(30)からの保護を与える。
十分に分化した上皮細胞が間葉表現型へと転換されて線維芽細胞及び筋線維芽細胞を生じるその過程であるEMTは、上皮傷害後の修復及び瘢痕形成において重要な役割を果たしていると次第に認識されつつある。この過程が肺及び他の臓器における傷害後の線維化に寄与するその程度は、活発な調査の対象である。近年、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βがin vitro及びin vivoで肺胞上皮細胞(AEC)においてEMTを誘導すること、並びに上皮及び間葉マーカーが特発性肺線維症(IPF)を患う患者由来の肺組織のII型過形成(AT2)細胞に共局在していることが実証され、AECが肺線維化において極端な可塑性を呈しかつ線維芽細胞及び/又は筋線維芽細胞の供給源としての役割を果たしうることが示唆された。TGF-β1は、正常な***上皮細胞におけるEMTのインデューサーとして最初は記載され(9)、またその後に幾つかの異なる上皮細胞系(例えば、腎近位尿細管、水晶体、及び直近では肺胞上皮細胞)においてin vitroでEMTを仲介することが示された(10〜14)。
EMTの逆転を生じさせるために幾つかの治療介入が行われている。BMP-7(骨形成タンパク質-7)は、TGF-β-誘導Smad3-依存性EMTを直接中和することにより成体の尿細管上皮細胞においてTGF-β1-誘導EMTを逆転させ、またEMTを介して起こる腎線維化の逆転の証拠がin vivoで示された(20)。BMP-7はSmad2のダウン-レギュレーションを伴って水晶体上皮におけるEMTを遅延させることが可能であり、一方、抑制性Smad7の過剰発現はEMTを予防し、かつSmad2及びSmad3の核移行を減少させた(21)。EMTはSmad3ノックアウトマウスで改善され(15,16)、またTGF-βシグナル伝達のアンタゴニストであるSmad7、又はSmad依存的な様式で作用する骨形成タンパク質-7(BMP-7)は腎及び水晶体の上皮における線維化を逆転させるか又は遅延させることができる(21、22)。さらに、HGFは、転写的に不活性なSnoN/Smad複合体の形成をもたらし、それによってTGF-β1の作用をブロックするSmad転写コリプレッサーSnoNのアップレギュレーションにより、ヒト腎臓上皮細胞においてEMTをブロックする(23)。これらの研究により、TGF-βのEMTを誘導する作用を中和するための戦略としてSmad活性をモジュレートすることの実現可能性が示唆される。TGF-β-誘導EMT及び他のシグナル伝達経路とのその相互作用を仲介する正確な分子メカニズムの知識は、TGF-βシグナル伝達の有益な作用を乱すことなくEMTを阻害する/逆転させる戦略を開発するために重要である。
骨形成タンパク質(BMP)は、細胞の増殖、分化、移動及び生存を制御する、トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)スーパーファミリーのメンバーである。BMPはI型及びII型として知られる2つの異なる種類のセリン/トレオニンキナーゼ受容体を通じて作用する。II型受容体はBMPにより占有されるとリン酸化され、その後ALKとも称されるI型受容体をリン酸化する。リン酸化されたI型受容体が今度は特異的な細胞内シグナル伝達経路を仲介し、またそれ故に、このリン酸化されたI型受容体が下流シグナル伝達の特異性を決定する。構造的に類似した3種類のI型受容体ALK2、ALK3(BMPR-IA)及びALK6(BMPR-IB)が同定されている。重要なことに、I型及びII型受容体は共に同種及び異種複合体を形成する。標的細胞のBMP-刺激は細胞表面で受容体複合体の再構成を引き起こし、これが2つの下流BMPシグナル伝達経路である標準Smad-依存性経路(Smad1/5/8経路)及び非標準Smad-非依存的シグナル伝達経路(例えばp38マイトジェン-活性化プロテインキナーゼ経路、MAPK)の活性化に影響を与える。Smad1/5/8経路は、閉塞により腎傷害が誘導された後の腎臓の修復を促進することが示されている(Manson SR, Niederhoff RA, Hruska KA, Austin PF., J Urol. 85:2523-30, 2011)。対照的に、p38MAPK経路が糖尿病及び虚血/再灌流に関連する腎損傷を促進する上で重要な役割を果たすことを示唆する証拠がある(Evans Jら、(2002) EndocrinRev 5:599-622, 2002;Furuichi Kら、Nephrol Dial Transplant 17:399-407, 2002)。従って、Smad1/5/8シグナル伝達を誘導しかつp38 MAPKリン酸化を阻害する化合物は、幅広い治療能力を備えた、魅力的な抗-炎症標的及び抗-線維化標的である。
ある態様では、本発明は、EMT過程を阻害するため、線維化を阻害するため、並びにEMT過程及び/又は線維化に関連する疾患及び障害、例えば、腎線維化を治療するために使用されるペプチド並びにこれらのペプチドを含む医薬組成物を提供する。
(H)-CY[YF][DN][ND][SN]S[SNQ]V[LI]CK[RK]YRS-(OH)
に示す一般構造を有する。
標準1文字アミノ酸は、20種の天然に存在するアミノ酸を符号化したものである。
DYFDDSSNVLX11KKYRS (配列番号2)(配列中のX11はDapである)
でありうる。
X1YFDDSSNVLDKKYRS (配列番号3)(配列中のX1はDapである)
でありうる。
CYYDNSSSVLCKRX14RS (配列番号4)(配列中のX14はD-Tyrである)
でありうる。
X1YYDNSSSVLDKRYRS (配列番号9)(配列中のX1はDapである)
でありうる。
CYX3X4X5X6SX8VX10CKX13YRS (配列番号55)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYYX4X5X6SX8VX10CKX13YRS (配列番号56)(配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYFX4X5X6SX8VX10CKX13YRS (配列番号57)(配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3NX5X6SX8VX10CKX13YRS (配列番号58)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3DX5X6SX8VX10CKX13YRS (配列番号59)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4NX6SX8VX10CKX13YRS (配列番号60)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4DX6SX8VX10CKX13YRS (配列番号61)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4X5SSX8VX10CKX13YRS (配列番号62)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4X5NSX8VX10CKX13YRS (配列番号63)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4X5X6SSVX10CKX13YRS (配列番号64)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4X5X6SNVX10CKX13YRS (配列番号65)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4X5X6SQVX10CKX13YRS (配列番号66)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4X5X6SX8VLCKX13YRS (配列番号67)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4X5X6SX8VICKX13YRS (配列番号68)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX13はLys又はArgである)
でありうる。
CYX3X4X5X6SX8VX10CKRYRS (配列番号69)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuである)
でありうる。
CYX3X4X5X6SX8VX10CKKYRS (配列番号70)(配列中のX3はPhe又はTyrであり;配列中のX4はAsp又はAsnであり;配列中のX5はAsp又はAsnであり;配列中のX6はAsn又はSerであり;配列中のX8はAsn、Gln又はSerであり;配列中のX10はIle又はLeuである)
でありうる。
別の態様では、本発明は、配列番号1〜77(その縮重変異体を含む)、又は本明細書中に含まれるかもしくは本明細書中で意図されるあらゆるBMPアゴニストペプチドをコードする1種又はそれ以上のポリヌクレオチド又は核酸分子も含む。
別の態様では、本発明は、本発明のペプチドを作製するための方法に関する。かかる方法としては、一般に、かかる課題を遂行するための当分野で公知のあらゆる適切な方法、例えば、合成ペプチド化学、適当な原核生物もしくは真核生物の宿主細胞及び発現系を使用した本発明のペプチドの組換え発現、又は体細胞遺伝子導入の特徴としての該ペプチドの組換え発現、すなわち、治療部位の投与レジメンの一環としての発現を挙げることができる。
本発明のペプチド及び/又は核酸分子、並びにその誘導体、断片、類似体及びホモログは、投与に適した医薬組成物に組み込むことができる。かかる組成物は、典型的には、薬学的に許容しうる担体と共に、又は該担体無しで、核酸分子、ポリペプチド、又は抗体を含む。本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容しうる担体」は、医薬調製品の投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌化合物、等張及び吸収遅延化合物などを含むものとする。適切な担体は、当分野の標準的な参照テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciencesの最新版(本文献は参照により本明細書中に組み込まれるものとする)に記載されている。かかる担体又は希釈剤の好適な具体例としては、水、食塩水、リンガー液、デキストロース液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソーム及び非水ビヒクル、例えば不揮発性油を使用してもよい。医薬活性物質のためのかかる媒質及び化合物の使用は当分野で周知である。従来の任意の媒質又は化合物が活性化合物と不適合である場合を除き、前記組成物におけるその使用が意図される。補足的な活性化合物もまた、前記組成物に組み入れることができる。
本発明は、線維化に関連する障害のリスクがある(すなわち、該障害を起こしやすい)か又は該障害を有する対象を治療する、予防的かつ治療的な方法を提供する。本発明の方法及びペプチドは、病因が何であろうと、又は線維化を生じる疾患もしくは障害が何であろうと、あらゆる線維化状態に対して有効である。ある特定の実施形態では、本発明の方法及びペプチドは、少なくとも部分的にEMTにより引き起こされる線維化に対して有効であり、そのため、本発明の方法及びペプチドはEMTの阻害及び/又は逆転を生じ、またその結果として線維化の阻害及び/又は逆転を生じる。
本発明はさらに、本明細書中に開示した方法を実践する際に使用しうる試薬又は成分に関するキット及び医薬パッケージも意図する。該キットには、本明細書中で検討した、又は本明細書中に開示した方法の実施において必要であるかもしくは有益であると理解されるであろう、あらゆる材料又は材料の組み合わせを含めることができる。例えば、該キットに、本発明のペプチド、又は1種もしくはそれ以上の追加の活性薬剤を含めてもよい。加えて、キットには、その治療及び/又は診断目的のために、該キットの成分を使用するための説明書一式を含めることもできる。
上皮間葉転換(EMT)又は腹膜中皮細胞の中皮間葉転換は、初期の線維化メカニズムであると考えられてきた。EMTは、上皮細胞層が極性及び細胞間接触を喪失して細胞骨格の劇的なリモデリングを受けるその過程である。上皮細胞接着及び細胞骨格成分の喪失と同時に、EMTを起こしている細胞は間葉成分の発現を獲得し、また移動性の表現型を示す。高濃度のグルコースが、E-カドヘリンの発現減少とα-平滑筋アクチン、フィブロネクチン、及びI型コラーゲンの発現増加、並びに細胞移動の増加により示唆される、HPMCの上皮間葉転換(EMT)を誘導することが示されている。TGF-βシグナル伝達の活性化は、培養上皮細胞においてEMTを誘導するには十分である(Miettinen PJら、J Cell Biol 127:2021-2036, 1994)。腎疾患において尿細管萎縮及び筋線維芽細胞の外観にEMTが果たす役割は、数年前に初めて提唱された(Strutz Fら、Exp Nephrol 4:267-270, 1996)。しかしながら、TGF-βが腎尿細管EMTのメディエーターであるという証拠は最近になってようやく報告された(Oldfield MDら、J Clin Invest 108:1853-1863, 2001;Fan JMら、Kidney Int 56:1455-1467, 1999)。例えば、終末糖化産物(AGE)はin vitroで、及び糖尿病ラットにおいて、TGF-βシグナル伝達の活性化によりEMTを誘導することが見出されており、このことは、糖尿病性腎症の進行にこのTGF-β誘導反応が果たす重要な役割を示している(Oldfield MDら、J Clin Invest 108:1853-1863, 2001)。様々な種類の上皮細胞においてEMTを誘導するための、TGF-βにより活性化されるシグナル伝達経路の近年の研究を基に、この反応に特異的なTGF-β及びBMPシグナル伝達経路のモデルが生み出されている。
図17に概要を示したマウスSTZ試験で得られた、図18〜22のH&E及びマッソン三色染色時の線維化の分析。in vitro EMT実験のE-カドヘリン蛍光を定量化するために上記で使用したものと同じ画像の比色分析方法を利用して、画像を定量化し、その結果を図23に示した。
タンパク質FSP1は間葉組織のマーカーである。線維化の指標として、蛍光組織免疫学を利用してFSP1の存在を測定した。図24に見られるように、5ヶ月にわたる間葉組織の純増は正常動物について観察された純増の27倍であり、また6ヶ月にわたる純増は正常動物について観察された純増の29倍であった。これらの間葉組織の純増は、STZ-誘導糖尿病が上皮細胞の間葉細胞への転換を引き起こしたということの有力な証拠を示すものである。5ヶ月間のBMP7による処理は6ヶ月での純増を3分の1まで減少させたが、最終月のみの間の配列番号1による処理は増加を、配列番号1処理の開始時に存在するレベルをはるかに下回るたった2分の1にまで減少させた。これもまた、EMT過程の逆転の証拠を示すものである。この逆転は、例えば、損傷した尿細管の割合(図25)及び間質容積の増加(図26)といった尿細管間質組織の他の形態計測パラメーターにも反映されていた。
近位尿細管上皮細胞の分化転換は腎線維化の発生における重要な段階であり、しかもこの分化転換は上皮表現型マーカーであるE-カドヘリン発現の消失と関連していることが示されている。これにより、ヒト腎近位尿細管上皮(HK-2)細胞においてE-カドヘリン発現の消失を誘導するために高濃度のD-グルコース(50〜100 mM)を使用し、かつ化合物をE-カドヘリン発現の消失を回復させるそれらの能力について試験する、細胞ベースのスクリーニングアッセイの開発のための基礎が提供される。
A.アッセイプロトコル
材料:
・ヒト近位尿細管上皮細胞HK-2(ATCC #CRL-2190)
・無血清ケラチノサイト培地(GIBCO #17005-042, K-SFM)
・表皮成長因子(EGF:5 ng/mL)
・ウシ下垂体抽出物(BPE:40μg/mL)
・一次抗体、マウスIgG抗-E-カドヘリン(R&D Systems # MAB1838)
・BSA[Sigma #A7030]
・二次抗体、FITC結合ヤギ抗-マウスIgG(Fab2)フラグメント(Sigma-Aldrich # F-2653)
・パラホルムアルデヒド(10%))
・トリトンX-100(Sigma # T- 9284)
・PBS(Fisher Scientific #BP399-1)
・D-PBS(Invitrogen # 14190-144)
・ポリプロピレン製チップ(Axygen, Inc. 0.5〜10μL, cat # T-300-L-R;1-200μL, Cat # T-200-L-R;1〜1000μL, Cat # T-1000-C-L-R)
・50 mLポリプロピレン製培養試験管(Fisher Scientific, cat # 06-443-18)
・24-ウェルCoster細胞培養プレート(Fisher Scientific # 07-200-84)
試薬及び試験試料:
・陽性対照:BMP-7、濃度0.1及び1μg/mLでアッセイ
・試験化合物(ペプチド):各々最終濃度100μM及び200μMで試験
細胞培養アッセイのためのアッセイ手順:
・24-ウェル培養プレートでアッセイを行う。
・HK-2細胞を37℃で24時間インキュベートし、細胞をプレートに付着させる
・翌日の午後、最初の2つの対照ウェル以外の全てのウェルにおいて培地を栄養補助剤無添加K-SFM培地(無血清培地)と交換する。
・培地を全ウェルから吸い出し、さらに細胞をPBSで2回洗浄する。
・細胞をPBSで1回洗浄する
・細胞をPBS中2%のBSAで室温にて1時間ブロッキングする。
・細胞を、希釈した一次抗体と共に室温で1時間インキュベートする。
・二次抗体(FITC標識ヤギ抗マウスIgG)を、PBS中1%のBSAを使用して1:20に希釈する
・細胞を希釈した二次抗体と共に室温で1時間インキュベートする
・細胞をPBSで2回洗浄する
・細胞をPBS(1 mL/ウェル)に入れる
・細胞を蛍光顕微鏡により可視化し、その後直ちに写真を撮る。
恐らくは経験豊富な研究者である場合を除き、試験化合物がどの程度活性であるかを、E-カドヘリンの細胞性蛍光の画像を(培地単独と比較して)見ることにより判断するのは困難である。シグナルの強さは、上皮表現型(すなわち、E-カドヘリン発現)の消失が試験処理により逆転するその程度である。蛍光強度は見てすぐにわかるシグナルであろうが、何らかの内部基準なしに正確に測定することを難しくする外的特性を持つという欠点がある。一方、色などの内的特性は強度に依存しない。画素領域に関してRGB強度ヒストグラムに反映される色ずれ(内的特性)が存在することが見出された。CRTの色は、3つの発光色:レッド、グリーン及びブルー(RGB)から構成されている。その強度レベルは一般的には1バイト幅(0〜255)であり、そのため画素の色は3つの量{R, G, B}として符号化される。白{255, 255, 255}から黒{0, 0, 0}までの様々なグレーの色合いの場合、R=G=Bである。一方で、紫は{200, 100, 200}である。これがつまり、in vitro抗-線維化活性を測定するための定量的基準を提供するために採用した、E-カドヘリン蛍光写真の画像解析の基礎である。
蛍光領域をデジタル写真上で選択し、その画素のRGB統計値をコンピューターで算出した。各画素に関連するこれら3つの値R、G及びBは、三次元の色-強度ベクトルと考えることができる。このベクトルの長さはL=√(R2+G2+B2)である。色ベクトル{ρ,γ,β}は単位ベクトル(長さ=1.0)である、すなわち、{ρ,γ,β}≡{R/L, G/L, B/L}={R/L, G/L, B/L)であって、従って強度とは無関係であるため、内的特性である。色ベクトルは単位球面の表面(全成分が正である場合のみ第1象限)上の点と考えることができる。画像フィールドの色ベクトルを算出する最良の方法は平均ベクトルと同じであるが、一般的には代わりにPhotoshop(Adobe Systems)などの画像解析プログラムから、(例えば、PhotoShopで画像/ヒストグラム画像解析機能を使用して)ヒストグラムとして各R、G及びB成分の統計値を取得する。これらのヒストグラムはガウス型となる傾向があるが、裾を有するため、選択した画像領域を表す色強度ベクトル全般の成分値としては各ヒストグラムの平均値よりも中央値を使用するのが一番よい。
は、それぞれ、D-グルコースで処理した(線維化)細胞及び無処理(培地のみ)細胞に対する色ベクトルである。それらの色ベクトルは、
のベクトル積、ベクトル
に垂直な全ての点で構成される大円上に位置している。色ベクトル
はデータ点(試験物質で処理した細胞の画像領域に対する色ベクトル)であり、
の間のシグナルアークの付近に位置することが予想されるが、正確にその上に位置しているとは限らない。シグナルアーク上に位置する、
の成分であるベクトル
を見つけるために、本発明者らは先ず、
の両方を含む大円を描くベクトル積
を計算した。ベクトル
はこれら2つの大円の2つの交点のうちの1つであり、ベクトル積
で与えられる。つまり、色ベクトル
に関連するシグナルは、
の角度を
の角度で割った比である。
=(-0.662, -0.231, 0.713)である。実験化合物の画像はRGB中央値(1, 105, 75)を有し、色ベクトル{ρ,γ,β}?%=(0.008, 0.814, 0.581)を与える。成分ベクトル
は(0.158, 0.887, 0.434)と計算される。
の角度は+17.0°であるため、このシグナルは17.0°/28.4°=59.8%である。
色ベクトルがシグナルアークから遠く離れすぎている可能性を疑うべきである。シグナルアークからの距離は、色ベクトル
がなす角度で与えられる。点がシグナルアークから離れて位置するその距離の尺度として、本発明者らは、
がなす角度と、
がなす角度との比を利用した。該比の0.1よりも大きい値は、懸念すべき合理的な基準である。
線維化疾患は、線維芽細胞の活性化、コラーゲン及びフィブロネクチンの産生増加、並びに収縮性筋線維芽細胞への分化転換を特徴とする。この過程は通常は数ヶ月及び数年かけて生じるものであり、また臓器機能不全又は死をもたらす可能性がある。線維化疾患の具体例としては、糖尿病性腎症、肝硬変、特発性肺線維症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、心臓線維症及び強皮症(全身性硬化症;SSc)が挙げられる。線維化疾患は有効な治療法が存在しない最大の障害群の1つであり、またそれ故に、線維化疾患は未だ満たされない重要な医療ニーズの象徴である。多くの場合、線維症を患う患者にとって唯一の救済策は臓器移植であり;臓器の供給量は需要を満たすには不十分であるため、患者は適切な臓器を受け取るのを待つ間に死亡することが多い。肺の線維化はそれだけでも強皮症肺疾患、特発性肺線維症、放射線-及び化学療法-誘導肺線維症における死亡並びに塵粒子の職業性吸入により引き起こされる状態における死亡の主な原因となりうる。主に線維化疾患の病因が不明であるという理由から、適当な抗-線維化療法の不在が生じる。線維化疾患において正常組織の修復がどのように制御され、かつこの過程がいかにして不首尾に終わるのかを理解することが不可欠である。
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)及び結合組織増殖因子(CTGF)などの線維化誘導タンパク質は、線維化疾患に関与することが示唆されている。TGF-βは線維芽細胞がECMを合成し収縮させるよう誘導するので、このサイトカインは線維化反応の中心的なメディエーターであると長く信じられてきた(1)。ヒト内皮細胞により分泌されるタンパク質として10余年前に発見されたCTGF(2)は、TGF-βにより誘導されるものであり、またTGF-βが線維芽細胞に与える作用の下流のメディエーターと考えられている(3、4)。同様に、TGF-βは、フィブロネクチン転写物の選択的スプライシングを通じて生じるフィブロネクチンの変異体である、基質タンパク質フィブロネクチンのED-A型(ED-A FN)の発現を誘導する(5)。このED-A FNの誘導は、TGF-β1により誘発されるα-SMA及びI型コラーゲンの発現増強に必要である(6)。このため、TGF-βは、例えば肺(7)及び腎臓(文献参照)を含む多くの組織における線維化の誘導の「マスタースイッチ」であるとされている。この点に関して、TGF-βはIPFを患う患者の肺、又はCKD患者の腎臓においてアップレギュレートされ、またラットの肺又は腎臓における活性TGF-βの発現は劇的な線維化反応を誘導し、一方でTGF-β1に応答する能力の欠如はブレオマイシン誘導性の線維化(8)又は腎間質線維化(30)からの保護を与える。
十分に分化した上皮細胞が間葉表現型へと転換されて線維芽細胞及び筋線維芽細胞を生じる過程であるEMTは、上皮傷害後の修復及び瘢痕形成において重要な役割を果たしていると次第に認識されつつある。この過程が肺及び他の臓器における傷害後の線維化に寄与するその程度は、活発な調査の対象である。近年、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βがin vitro及びin vivoで肺胞上皮細胞(AEC)においてEMTを誘導すること、並びに上皮及び間葉マーカーが特発性肺線維症(IPF)を患う患者由来の肺組織のII型過形成(AT2)細胞に共局在していることが実証され、AECが肺線維化において極端な可塑性を呈しかつ線維芽細胞及び/又は筋線維芽細胞の供給源としての役割を果たしうることが示唆された。TGF-β1は、正常な***上皮細胞におけるEMTのインデューサーとして最初は記載され(9)、またその後に幾つかの異なる上皮細胞系(例えば、腎近位尿細管、水晶体、及び直近では肺胞上皮細胞)においてin vitroでEMTを仲介することが示された(10〜14)。
動物モデルにおけるTGF-β-依存性Smad経路のモジュレーションは、in vivoでの線維化EMTにおけるTGF-βの役割の有力な証拠を提供する。傷害後のin vivoでの水晶体上皮細胞のEMTはSmad3ヌルマウスで完全に予防され、さらにTGF-βで処理したSmad3-/-水晶体上皮細胞の初代培養物はEMTから保護される(15)。同様に、腎臓の場合、Smad3ヌルマウスは実験的に誘導した尿細管間質線維化から保護されるとともに低減されたEMT及びコラーゲンの蓄積を示し、一方で、Smad3-/-動物から得た腎尿細管上皮細胞の培養物はEMTのブロック及びTGF-β1の自己誘導の減少を示した(16)。ヒト近位尿細管上皮細胞の場合、CTGFの増加及びE-カドヘリンの増加はSmad3-依存性であり、MMP-2の増加はSmad2-依存性であり、またα-SMAの増加はその両方に依存性を示した(17)。ドミナントネガティブな手段を利用した、近年の正常なマウス及びヒト上皮細胞におけるTGF-β-誘導EMTのトランスクリプトーム解析により、Smadシグナル伝達は全被験標的遺伝子の調節に不可欠であることが示された(18)。TGF-β-依存性EMTに関与する非-Smad-依存性経路としては、RhoA、Ras、p38 MAPK、PI3キナーゼ、Notch及びWntシグナル伝達経路が挙げられる。大抵の場合、完全なEMTの誘導に必要であるが十分ではない場合もありうる、主要経路を占める複数のSmadによるこれらの協同性経路の刺激により、特定の組織内でのEMT誘導の背景及び詳細が提供される(19)。
EMTの逆転を生じさせるために多くの治療介入が行われている。BMP-7は、TGF-β-誘導Smad3-依存性EMTを直接中和することにより成体尿細管上皮細胞においてTGF-β1-誘導EMTを逆転させ、EMTを介して起こる腎線維化の逆転の証拠がin vivoで示された(20)。BMP-7はSmad2のダウン-レギュレーションを伴って水晶体上皮におけるEMTを遅延させることが可能であり、一方、抑制性Smad7の過剰発現はEMTを予防し、またSmad2及びSmad3の核移行を減少させた(21)。EMTはSmad3ノックアウトマウスで改善され(15,16)、またTGF-βシグナル伝達のアンタゴニストであるSmad7、又はSmad依存的な様式で作用する骨形成タンパク質-7(BMP-7)は腎及び水晶体の上皮における線維化を逆転させるか又は遅延させることができる(21、22)。さらに、HGFは、転写的に不活性なSnoN/Smad複合体の形成をもたらし、それによってTGF-β1の作用をブロックするSmad転写コリプレッサーSnoNのアップレギュレーションにより、ヒト腎臓上皮細胞においてEMTをブロックする(23)。これらの研究により、TGF-βのEMTを誘導する作用を中和するための戦略としてSmad活性をモジュレートすることの実現可能性が示唆される。TGF-β-誘導EMT及び他のシグナル伝達経路とのその相互作用を仲介する正確な分子メカニズムに関する知識は、TGF-βシグナル伝達の有益な作用を乱すことなくEMTを阻害する/逆転させる戦略を開発するために重要である。
EMTの調査には、EMTプロファイルを説明するマーカーのパネルの利用が必要である。上皮表現型の消失は、特定の上皮タンパク質の発現、例えば、接着関連タンパク質(例えば、E-カドヘリン)、サイトケラチン、及び頂端部アクチン-結合膜貫通タンパク質-1(MUC-1)の発現の消失により明確に定義されうる。特に、E-カドヘリンの消失は、開始刺激とは関係のないEMTの普遍的な特徴であり(24)、また場合によっては、E-カドヘリンが産生されると浸潤性の間葉表現型の逆転が観察されることがある(25)。高血糖状態はヒト腎上皮細胞においてEMTを誘導する可能性があり、該細胞はより伸長し、基質への接着が低下してそれらの頂端-基底極性を喪失することが示されている。この過程で、該細胞は、より線維芽細胞に近い表現型と一致する特徴である、TGFβのde novo発現の増加、E-カドヘリン発現の消失(26)並びにフィブロネクチン及びコラーゲンなどの細胞外マトリックス分子の合成を示す。筋線維芽細胞の活性化は、細胞接着、アクチン再構成、及び慢性腎線維化の亢進された細胞進行の過程において重要な役割を果たす。特発性肺線維症(IPF)は、EMT過程を通じた上皮細胞及び線維芽細胞のマトリックス分泌筋線維芽細胞への分化を伴い、かつ肺の瘢痕化を生じる、肺胞上皮傷害に対する慢性の調節不全反応である。この過程で、細胞は、筋線維芽細胞活性化及びコラーゲン産生を引き起こし、その結果として肺線維化を生じる、TGFβのde novo発現の増加及びE-カドヘリン発現の消失を示す(27、28、29)。
セリン-トレオニン・シグナル伝達経路は、受容体と細胞内メッセンジャー分子との、少なくとも2つの競合する組み合わせからなる。TGF-β側ではTGF-βのII型受容体、I型受容体ALK2及び3並びにSMAD1及び5がEMT過程及び線維形成を促進するように働き、一方、BMP側ではBMPのII型受容体、I型受容体ALK2、3及び6、並びにSMAD1、5及び8が分化した上皮状態を促進するように働く。さらに、これら2つの状態は、反対の状態のシグナル伝達物質をダウンレギュレートすることによって安定する傾向がある。TGF-β側による細胞の刺激にはBMP、BMP受容体及びSMAD1、5及び8の発現をダウンレギュレートする作用があり、逆の場合も同様である。従って、これら2つの経路は双安定生化学的スイッチとして働く。線維化を治療する、及び/又は逆転させるための戦略は、TGF-β側を阻害することを目的としたもの(TGF-βのアンタゴニスト及び阻害剤、例えば、抗-TGF-β抗体、デコイ受容体及びTGF-β結合タンパク質)であってもよく、又はBMP-7もしくはBMP経路の他のアゴニスト、例えばこれらのペプチドを使用してBMP側を刺激することを目的としたものであってもよい。
A.in vitroアッセイ(理論)
目的:
化合物を、ヒト気管支上皮細胞(HBEC)を使用し、抗-線維化活性(EMT過程の阻害又は逆転)についてin vitroでスクリーニングした。本アッセイでは、試験化合物がE-カドヘリン発現(上皮マーカー)のTGF-β-仲介ダウン-レギュレーション、並びに幾つかの間葉マーカー、すなわち、ビメンチン及びα-平滑筋アクチン(α-SMA)のTGF-β-仲介アップ-レギュレーションを阻害するその能力を測定した。さらに、同じ細胞を使用することにより、試験化合物によるEMTの阻害/逆転がBMPシグナル伝達メカニズムにおけるSmad依存性の一次過程であるかどうかを調べた。
細胞培養:
ヒト気管支上皮細胞(HBEC;Lonza, MD, USA)を、加湿インキュベーター内で5%CO2の存在下、37℃でBEGM培地(Lonza)にて維持した。HBECを用いたさらなる実験は全て、他に指示しない限り、BEGM培地のみで実施した。
HBECを、1:100 BEGM:BEBM(6ウェルプレート)に106個の細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を1日付着させた後、5 ng/mLのTGF-β1(R&D Systems, MN, USA)を含有する培地と交換した。該HBECをその後3〜5日間分化させた。ヒトBMP7組換えタンパク質は、本アッセイにおいては陽性対照として使用することが可能であった。試験化合物の存在下でのEMTアッセイのために、HBECを、EMT誘導に先立って1時間、漸増濃度(1〜200μM)の試験化合物と共にインキュベートし、EMT誘導をTGF-β1(5 ng/mL)の添加と48時間又は3〜5日間のインキュベーションにより開始した。Smad経路阻害剤SB431542(10μM, Sigma-Aldrich)及びERK経路阻害剤PD98059(10μM, Calbiochem)もまた参照阻害剤として使用することが可能であった。
TGF-β1の存在下でインキュベートしたHBECは、位相差顕微鏡法により評価することが可能であった。TGF-βによる処理は、一般的に、緩い細胞間接触と、よりまばらになりかつ伸長した線維芽細胞形態へと変化する細胞を生じる。抗-線維化化合物はこれらの形態変化を予防することが予想された。
上記のように、HBEC細胞をウェルに播き、48時間又は3〜5日間のTGF-β1(5 ng/mL)の添加(EMT誘導)に先だって1時間試験化合物に曝露した。該細胞を洗浄し、1:1アセトン:メタノール混合液で室温(RT)にて2分間固定し、さらに1%ヤギ血清及び1%BSAを含有するPBSでRTにて7分間ブロックした。リン酸化SMAD1/5/8及び/又はリン酸化SMAD2/3の存在、並びに細胞核内へのそれらの移行を同定するために、該細胞をその後、最初はリン酸化SMAD1/5/8又はリン酸化SMAD2/3に特異的な一次ウサギ抗体、その次にウサギIgGに対するFITC-標識二次抗体を用いて免疫染色した。免疫染色した細胞を、倒立蛍光顕微鏡(Axiovert;Carl Zeiss)を使用し、倍率200×(20×対物レンズと10×接眼レンズ)で可視化及び撮影した。
上皮及び間葉マーカーのアップ又はダウン-レギュレーションを判定するために、次の抗体:E-カドヘリン(Abcam, MA, USA)、N-カドヘリン(Zymed, CA, USA)、ビメンチン(Abcam)、α-SMA(Sigma)、MMP-2(R&D Systems)、pSmad2(Cell Signaling, MA, USA)、及びpSmad1/5/8(Cell Signaling)をウェスタンブロット・フォーマットで使用した。インキュベートした細胞を、1%NP-40、150 mM NaCl、50 mM Tris pH 8.0、1 mM オルトバナジウム酸ナトリウム、5 mM NaF及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma, NY, USA)を含有するTRIS緩衝液で溶解させた。細胞溶解物を次に4〜10%勾配アクリルアミドゲル上でSDS PAGEに供した。電気泳動したタンパク質バンドをその後PVDF膜に転写し、さらにTris緩衝食塩水(TBS)、0.1%Tween-20、5%脱脂粉乳で室温(RT)にて1時間ブロックした。ブロットを次にTBS 0.1%Tween(TBS-T)で3回洗浄し、さらにRTで1時間、西洋ワサビペルオキシダーゼ-標識二次抗体(Invitrogen)と共にインキュベートした。TBS-Tでの洗浄を繰り返した後、化学発光(ECL;Pierce, L, USA)により製造業者の説明書に従って免疫反応性タンパク質を検出した。GAPDHに対する抗体をローディング対照として使用することが可能であった。
試験化合物に対するHBEC細胞の用量関連抗-線維化反応は、ELISAアッセイより、上皮マーカーE-カドヘリン(#7886, Cell Signaling Technology, Inc., MA, USA)に対する抗体を使用し、また間葉マーカーを検出するためにはMMP-2(DMP200, R&D Systems, MN, USA)、MMP-9(DY911, R&D Systems, MN, USA)、αSMA(ACTA2, antibodies-online Inc, Atlanta, GA 30346, USA)、N-カドヘリン(ABIN867238, antibodies-online Inc, Atlanta, GA, USA)、ヒト・ビメンチン(ABIN869687, antibodies-online Inc, Atlanta, GA, USA)、又はヒトI型コラーゲン・α1(COL1A1)(ABIN512856, antibodies-online Inc, Atlanta, GA, USA)に対する抗体を使用して判定することが可能であった。
データにより、初代ヒト気管支上皮細胞(HBEC)は、典型的な形態変化、並びにウェスタンブロット法及び定量的ELISA法によるEMTマーカーのそのタンパク質レベルでの進行により明らかとなったように、トランスフォーミング増殖因子-β1(TGF-β1)に応答してEMTを起こす能力があることが示された。N-カドヘリン、ビメンチン、MMP-2を含む幾つかの間葉マーカー及び筋線維芽細胞マーカーa-SMAの増加発現がタンパク質レベルで検出された。対照的に、上皮マーカーE-カドヘリンのダウン-レギュレーション、並びにメタロプロテアーゼMMP-2の増強発現がTGF-β1の存在下で観察された。この作用は、主にSMAD2/3依存性のメカニズムを介して仲介されることも示されており、またBMP経路活性化によりさらにモジュレートされる可能性もある。
本発明の化合物(複数可)もまたHBECにおいてEMTをモジュレートすることにより気道の線維化発症に関与する場合があるかどうかを判定するために、HBECを試験化合物のみと共に、又はEMT誘導前にTGF-β1と共に、インキュベートした。かかる試験化合物(複数可)は、TGF-β1により誘導されるI型コラーゲンの発現を阻害することが見出された。その上、TGF-β1により誘導されるメタロプロテアーゼMMP-2及びMMP-9の過剰発現は、該試験化合物(複数可)により阻害された。該試験化合物がMMP2タンパク質のTGF-β1-仲介アップレギュレーションに与える拮抗作用は、位相差顕微鏡法を使用して細胞形態を評価することによりさらに確認された。該試験化合物は、N-カドヘリン、ビメンチン、MMP-2を含む幾つかの間葉マーカー及び筋線維芽細胞マーカーa-SMAのTGFβ誘導増加発現を阻害するのに有効であった。このことは、上皮表現型E-カドヘリンの著しい回復と関連していた。BMPシグナル伝達が該試験化合物の存在下で進行していることを保証するために、BMPシグナル伝達の下流エフェクターであるSmad1、5及び8のリン酸化形態と交差反応する抗体を使用した。Smad1/5/8のリン酸化の増加(TGF-β1を同時に添加すれば無効にできるであろう作用)が該試験化合物の存在下で認められた。これらの結果により、HBECにおけるEMT時のTGF-β及びその経路に対する、試験化合物(複数可)による反作用が示唆された。
目的:
上記in vitro肺線維化アッセイにおいて活性を示すことが見出された試験化合物を、次に、ブレオマイシンの単回気管内投与によりマウスに肺線維化を誘導した動物モデルにおいて試験した。このモデルでのエンドポイントは、生存、及び肺組織における線維化の程度の組織形態計測評価とした。本研究はAnimal Welfare Act Regulation, 9 CFR 1-4のガイドラインに従って実施した。
試験化合物の製剤化:
凍結乾燥形態の前記試験化合物を、50 mM 酢酸緩衝液、pH 4.5に20 mg/mLの初濃度で溶解した。このストック溶液を次に幾つかの1 mLアリコートに分割し、急速冷凍してから、使用するまで-70℃で保存した。使用の当日には、各アリコートを解凍し、さらに必要な使用濃度までPBS(pH 7.5)で希釈した。該使用濃度は、意図する用量(mg/kg体重)及び経口用量から決定した。
1.体重が21〜26 gのBALB/cマウス(Charles River Laboratories, Cambridge)
2.ブレオマイシン(Blenoxane, Sigma, St. Louis, MO)
3.シクロホスファミド(一水和物としてSigma-Aldrichから入手、St. Louis, MO)。
動物モデル:
試験化合物(配列番号1〜11)がブレオマイシン誘導肺線維化を和らげることができるその程度を評価するための研究を、標準的な動物舎条件下、普通食で維持したBALB/cマウス(Charles River)に対して実施した。肺線維化を開始させるために、マウスを12.5 mg/mLケタミン250μLの腹腔内注射により麻酔し、続いて50μLの滅菌PBS中2 U/kg体重のブレオマイシン(Blenoxane, Sigma, St. Louis, MO)の気管内注入を行った。さらに、該マウスにシクロホスファミド(150 mg/kg体重)の単回腹腔内注射を施した。ブレオマイシン及びシクロホスファミドを投与したこの動物を、各群最低でも6匹の動物を有する2つの群に分けた。ビヒクル処理群(第1群)には1日経口用量のPBS(pH 7.5)を与えた。化合物処理群処理群(第2群)には、試験する化合物を、予備試験では1日経口用量5 mg/kgだけ与え、また追跡試験では用量反応を確立するため、及び最小有効量を決定するために典型的には0.03、0.1、0.3及び1.0 mg/kgの用量レベルで与えた。これらの処理をブレオマイシン投与後最長16日間継続した。第3のマウス対照群には、ブレオマイシン及びシクロホスファミドではなくPBSを気管内に与えた。
生前試験の終了後、前記動物を安楽死(メトキシフルラン麻酔)させてから、その肺に氷冷ハンクス平衡塩類溶液を灌流させることにより血液由来の細胞を除去し、さらにその後30 cm H2Oの定圧下で10%中性緩衝ホルマリン(NBF)を用いて膨張させた。肺を気管部で結紮し、一塊として取り出し、さらにNBFに24時間浸漬した。その後、組織試料を70%アルコールに移してからパラフィン包埋を行い、続いて切片を作成してから、ヘマトキシリン、エオジン及びマッソン三色で染色した。コラーゲンの蓄積(マッソン三色)の程度を判定することにより肺線維化を評価するために、切片を顕微鏡的に解析した。
リン酸化Smad1, 5, 8(BMPシグナル伝達)又はリン酸化SMAD2/3(TGF-βシグナル伝達)のレベルを測定するために、各群のマウスから得たスライドを個別に染色した。切片を脱パラフィン処理し、再水和させて、さらに抗原回復に供した。続いて、内因性ペルオキシダーゼを3%H2O2で失活させてから、50%ヤギ血清で20分間ブロックした。一次リン酸化Smad1,5,8又はリン酸化Smad2,3抗体(ウサギポリクローナル、Cell Signaling Technology, Danvers, MA)を各切片群に添加し、さらに25%ヤギ血清にて4℃で一晩インキュベートした。切片を次にビオチン化ヤギ抗-ウサギ二次抗体(Vector Labs Burlingame, CA)と共に60分間インキュベートし、続いてストレプトアビジン-HRP(Dako, Mississauga, ON)で10分間処理した。目的の抗原を、褐色色原体3,3-ジアミノベンジジン(Dako, Mississauga, ON)を使用することにより可視化し、さらにハリス・ヘマトキシリン液(Sigma, Oakville, ON)で対比染色した。
上皮及び/又は間葉マーカーの存在を評価するために、肺組織切片を脱ろう処理し、再水和させて、10%ヤギ血清で室温にて60分間ブロックし、さらにα-SMA又はビメンチン(間葉マーカー)又はE-カドヘリン(上皮マーカー)について免疫蛍光的に染色した。切片を4℃で一晩、抗-α-SMA抗体もしくは抗-ビメンチン抗体と共にインキュベートするか、又は抗-E-カドヘリン抗体と共インキュベートし、その後、必要に応じて、ヤギ抗-マウスIgG-TRITC抗体又はヤギ抗-ウサギIgG-FITC抗体と共に1時間インキュベートした。核を同定するために、DAPI(95%エタノール中500 ng/mL)を使用することにより核を20秒間染色し、さらに80%グリセロールを用いてカバーガラスを載せた。デジタルカメラを備えた蛍光顕微鏡を使用してスライドを調べた。
アポトーシス細胞を、TUNEL検出キット(In Situ Cell Death Detection Kit, Roche Applied Science)により検出した。組織切片を脱パラフィン処理し、再水和させて、さらに蒸留脱イオン水で洗浄した。プロテイナーゼKによる処理後、断片化DNAを、ターミナルトランスフェラーゼを使用してフルオレセイン-dUTPで標識した。スライドにDAPI含有Vectashieldを滴下した。切片を、蛍光検出系を備えた蛍光顕微鏡を使用して解析した。4,000個又はそれ以上の細胞を1細胞群として、TUNEL+細胞のマニュアル計数によりアポトーシス割合を得た。
コラーゲンアッセイ:
全マウス群から得た肺を、コンプリート・プロテアーゼ・インヒビター(Roche Diagnostics Corp, Indianapolis, Indiana, USA)に入れてホモジナイズした。ホモジネートを900 x gで10分間遠心分離してから、解析時まで凍結した。
動物死亡率:
ビヒクル処理マウス(第1群)の場合、ブレオマイシン及びシクロホスファミドを投与してから8日後までの死亡率は100%であった。ブレオマイシン+シクロホスファミドを投与した化合物処理マウス(第2群)の場合、生存は、線維化の開始から16日後(生前試験の終了)の時点で80%もの高さであったが、ビヒクル処理マウスは8日までに100%の死亡率を示した。
肺線維化は、マッソン三色で染色されたコラーゲン蓄積肺切片を含む視野の割合を判定することにより組織形態計測学的に評価した。ブレオマイシン及びシクロホスファミドによる処理の10日後、ビヒクル処理動物は31%のスコアの増加した肺線維化を示した。このことは、これらの動物全ての死亡と関連していた。しかし、THR-123を経口的に与えた場合、THR-123はブレオマイシン+シクロホスファミド誘導肺線維化を16日までに16%まで低減し、全マウスが生き残った。
ブレオマイシン処理マウスの肺は、肺組織切片におけるEMTマーカーの進行によって明らかにされたように、EMT過程を示した。N-カドヘリン、ビメンチンを含む幾つかの間葉マーカー及び筋線維芽細胞マーカーa-SMAの増加発現が観察された。対照的に、上皮マーカーE-カドヘリンのダウン-レギュレーション、並びにメタロプロテアーゼMMP-2の増強発現がこれらの切片で観察された。本発明者らは、この効果が主にSMAD2/3依存性のメカニズムを介して仲介されるものであり、またBMP経路活性化によりさらにモジュレートされうるものであることにも注目した。
BMP及びTGFβなどのTGFβスーパーファミリーに関連する分子は、炎症、アポトーシス及び細胞変化の重要な調節因子である。ここで、BMP7受容体であるアクビチン様キナーゼ3(Alk-3)は腎臓傷害に応答して有意に上昇すること、及び腎尿細管上皮におけるその特異的欠失は加速されたTGFβ/Smad3シグナル伝達、尿細管上皮傷害及び腎臓線維化を招くことが実証され、Alk-3仲介シグナル伝達の腎保護的な役割が示唆された。この活性を治療的に利用するために、Alk-3受容体への特異的結合を示す経口的に摂取可能な小環状BMPペプチド模倣物を構築する目的で有機合成化学を利用することにより、ALK-3/BMPリガンド-受容体複合体の構造-機能解析を実施した。スクリーニングにより、幾つかの異なるin vitro及びin vivo実験において炎症、アポトーシス及び上皮間葉転換プログラムを阻害したペプチド、THR-123(表1の配列番号1)が同定された。THR-123は5つの異なるマウスモデルにおいて腎傷害及び線維化を抑制しかつ逆転させ、またTHR-123とアンギオテンシン-変換酵素阻害剤カプトプリルの組み合わせは、腎臓線維化を制御する上で相加的な治療効果を呈した。本発明者らの結果により、THR-123が、クリニックにおいて線維化を逆転させるための潜在的有用性を有する新規抗-線維化剤であることが実証された。
トランスフォーミング増殖因子(TGF)-βスーパーファミリーのメンバーである骨形成タンパク質-7(BMP7)は、TGF-β-仲介線維形成活性のアンタゴニストとして機能する1〜3。BMP7は、異なる細胞型においてアクビチン様キナーゼ(Alk)-2、-3、-6に結合して別個の活性を示し4、抗-炎症機能及び抗-アポトーシス機能を呈し、さらに骨形成を促進する5,6。機能的観点から見れば、BMP7の抗-線維化活性はクリニックで試験するための魅力的な候補であるが、異なる受容体を介したその複数の活性(特に骨形成)はある特定の臨床開発課題を生み出している。この点については、様々な研究により、BMP7の骨形成作用はAlk-6を介してのみ仲介されること、またその抗-線維化作用は恐らくAlk-3を介して、また場合によってはAlk-2を介して仲介されることが示唆されている7〜12。BMPシグナルはSmad1/5を介するが、TGFβシグナルはSMAD2/3を介する4。
(A) 尿細管上皮細胞のAlk-3受容体は線維化の負の調節因子としての役割を果たす
腎保護特性及び抗-線維化作用は、BMP7に関しては様々な腎疾患モデルにおいて実証されている2,18〜20。幾つかの研究により、BMP7発現は急性及び慢性の腎臓傷害において抑制されることが示唆されている21〜24。本発明者らは、BMP7により調節される幾つかの分子の発現レベルについて、慢性の腎傷害を有するマウスにおいて異なる時点でスクリーニングした。評価した、BMP7により調節された13種類の分子の中で、Alk-3の発現だけが腎臓傷害の1週間後にピークに達した(図42 A)。3〜6週の間は、Alk-3の発現は対照腎臓と比較すると高いままであった(図42 A)。9週では、Alk-3の発現は対照腎臓と比較すると減少した(図42 A)。BMP7の発現レベルは腎臓傷害後に試験した全分子の中で最も減少し、傷害後3週間でその最低レベルに達し、また9週目まで低いままであった(図42 A)。
BMPシグナル伝達経路の環状ペプチドアゴニストは、側鎖の溶媒露出度を、一直線に並べた複数のTGF-βスーパーファミリー配列の最も高い可変性を有する領域31と比較し、受容体相互作用に関与している可能性が最も高いTGF-β2 29,30及びBMP7 31の3D構造の領域を同定することにより、設計した。目的の領域をさらに改良するために、各位置における物理化学的残基特性をそれらの活性との相関関係に基づいて比較検討する構造-変化解析(SVA)プログラム32を使用した。目標は、受容体-結合領域を同定し、その後その配列を特異的BMP活性に関して最適化することとした。次に、最も高いスコアが付いた残基の位置をBMP-7の3-D構造31に対応付けた。同定された3つの構造領域31のうち、フィンガー2ループを中心に設計したペプチドが最も有望であることが判明した。これらは、BMP7(図45 A)のフィンガー2ループと立体配座が類似したループを安定化するために1番目の残基位置と11番目の残基位置の間のジスルフィド結合を介して環化されている、約20 kDaの分子量をもつ16残基長のペプチドであった。
最適化のための予備スクリーニングは、ヒト腎尿細管上皮細胞系(HK-2)を使用するin vitro細胞ベースアッセイにおける抗炎症性の効能に基づくものとした。該アッセイでは、腫瘍壊死因子(TNF)-αによる前記細胞の刺激の結果によって生じたサイトカインIL-6の産生の増加を逆転させる化合物の能力を試験した。配列-活性解析を、前記SVAプログラムを利用して実施した。6回の最適化サイクル後、THR-123(図2A)がリード化合物として浮上し、これを他の関連のある抗-線維化アッセイ(下記参照)でさらに評価した。
炎症は腎線維化の重要な特徴である。BMP7は抗-炎症活性を示し5,33、従ってヒト腎尿細管上皮細胞系(HK-2細胞)における幾つかの炎症誘発性サイトカインの発現に対するTHR-123の効果に関する調査を促した。BMP7及びTHR-123は用量依存的な様式でTNF-α誘導IL-6産生を阻害した(図47 A)。THR-123はHK-2細胞においてTNF-α-誘導IL-8(図47 B)及びICAM-1(図47 C)産生もまた阻害し、このことは、BMP7の機能と同様に、THR-123が抗-炎症特性を呈することを示唆していた。
急性腎傷害に対するTHR-123の効果を、マウスにおいて虚血再灌流傷害(IRI)モデルを使用して解析した。IRIの7日後、対照マウスは、尿細管拡張及び好酸性で均一な細胞質を有する扁平な上皮細胞を特徴とする急性腎尿細管壊死と一致する腎臓形態を呈した(図55 A, C)。THR-123処理マウスは、対照マウスと比較して、IRI腎臓に有意に少ない尿細管の損傷を示した(図55 A〜C)。血中尿素窒素レベルは両群同程度であった(図55 D)。
THR-123はAlk-3受容体に結合してBMP7を模倣する作用を誘導した(上記参照)。上記の実験はいずれも、THR-123が炎症、アポトーシス及びEMTプログラムを阻害することにより腎傷害及び線維化を抑制する働きをすることを示唆している。マウスにおいてかかる腎保護活性を発揮する上でのTHR-123の標的の妥当性を機能的に確認するために、腎傷害を発症させたAlk-3欠失マウスにおけるTHR-123の効力を試験した(図42 K)。Alk-3欠失マウス及びその同腹(対照)マウスにIRIを発症させた。Alk-3が欠損しているマウスは、対照マウスと比較して、加速された急性腎傷害を呈した(図76 A〜D)。THR-123は対照マウスにおいて腎傷害を阻害したが、Alk-3欠失マウスにおいては治療効果を呈しなかった(図76 A〜D)。対照マウスにおけるTHR-123Alk-3依存性作用は、マクロファージ蓄積の減少(図77)及び尿細管アポトーシスの増加(図78)と関連していた。
TGFスーパーファミリータンパク質は腎線維化の発症にかなりの影響を与えている38。殆どの場合、このファミリー内の分子の多くが、最も重要なことにはTGFβ1及びTGFβ2が、筋線維芽細胞を動員し、EMTプログラムを促進し、炎症に影響を与え、さらに上皮細胞アポトーシスを誘導するそれらの能力のために、線維化の正の調節因子として同定されている2,5,22,33。線維化におけるTGFβ1の役割にかなり注目が集まっているものの、過去10年間の多くの研究により、BMP-7(TGFスーパーファミリー内の他の分子)が線維化を阻害しかつ逆転させる働きをすることも確認されている2。BMP-7の作用は、その抗-炎症作用、抗-アポトーシス作用及びEMT抑制作用を介して理解される2,5,22,33。BMP-7はSmad-依存性経路を介してTGFβ1の作用を相殺する2。
試薬
E-カドヘリンに対するモノクローナル抗体はBD Biosciences (Franklin Lakes, NJ)から購入した。FSP1に対するポリクローナル抗体は、Dr. Eric Neilson, Vanderbilt University Medical Centerにより提供された。Mac-1抗体はAbD Serotec (Oxford, United Kingdom)から購入した。リン酸化Smad1/5抗体はCell Signaling Technology (Beverly MA)から購入した。BUNの測定は、QuantiChrom(商標) Urea Assay Kit (BioAssay System, Hayward, CA)又は比色キットDIUR-500 QuantiChrom(商標) Urea Assay Kit (Gentaur, Kampenhout Belgium)により実施した。IL-6、IL-8及びICAM-1用のElisaキットはR&D system (Minneapolis, MN)から購入した。
完全フロイントアジュバント中の正常なヒツジIgG(200μg)の皮下注射(1日目)とその後の腎毒性血清注射液の静脈内注射(50μL、5〜7日目)により予備免疫を行うことで、C57BL6マウスにNTNを誘導した。マウスをNTNの誘導後1、3、6、9週目に犠牲死させた。全RNAは、トリゾール/InvitrogenのRNA抽出用PureLink RNA Mini Kitにより腎臓から単離した。10ナノグラムの全RNAを、TaqMan One-Step RT-PCR Master Mix (Applied Biosystems, Foster City, CA)を使用して相補的cDNAを作製するために使用した。定量的PCRを、ABIprism 7000(Applied Biosystems)使用し、BMP7、BMP受容体Alk2、Alk-3、Alk6及びBMPR II、並びにBMP-結合タンパク質chordin、crim1、fibrillin1、follistatin、KCP、USAG1、gremlin及びnogginの遺伝子発現プロファイルを解析するために実施した(表:プライマー配列(下記))。
Alk-3 floxマウスはDr. Yuji Mishina, National Institutes of Healthにより物質移動合意書と共に提供された。γGT-CreマウスはDr. Eric Neilson, Vanderbilt University Medical Centeから提供された。NTNは上記の方法により誘導した。
8週齢のC57Bl6マウスを本研究に使用した。マウスにケタミンとキシラジンの混合物を用いて麻酔をかけ、その後左腎茎を25分間クランプした。手術後の同日にTHR-123処理(p.o. 5 mg/Kg/日)又はビヒクル処理を開始した。手術の7日後にマウスを犠牲死させた。
マウスにケタミンとキシラジンの混合物を用いて麻酔をかけた。尿管を周辺組織から調製し、さらに2本の結紮糸を約5 mm離して左腎の尿管の上部3分の2の所に取り付けることにより、確実な閉塞を得た。手術後の同日に、マウスにBMP7(300μg i.p./Kg/隔日)、THR-123(p.o. 5 mgもしくは15 mg/Kg/日、i.p. 5 mg/Kg/日)又は対照としてのPBS(i.p.)による処理を開始した。マウスを手術後5〜7日目に犠牲死させた。
NTNを上記の方法によりCD1マウスに誘導した。NTN誘導の6週間後、THR-123(p.o. 5 mg/Kg/日)を9週まで開始した。マウスを1週目、3週目、6週目及び9週目に犠牲死させた。
8週齢COL4A3-/-マウスをTHR-123(p.o. 5 mg/Kg/日)又はビヒクルで処理した。COL4A3-/-マウスを16週齢で犠牲死させた。
8週齢の雄CD-1マウスを全ての糖尿病実験で使用した。マウスにストレプトゾトシン(STZ:200 mg/Kg)の単回腹腔内(i.p.)注射を実施した。糖尿病の誘導は、STZ注射の2週間後までに血糖値が>16 mMとなることと定義した。糖尿病の誘導から1ヶ月後、マウスを3つの群(BMP7処理、ビヒクル処理及び無処理)に分けてBMP7(i.p. 300μg/kg/隔日)又はビヒクル注射を開始した。糖尿病の誘導から5ヶ月後、THR-123(p.o. 5 mg/Kg/日)投与を糖尿病マウスで開始した。マウスを糖尿病の誘導から5(処理前)又は6ヶ月後に犠牲死させた。
腎臓切片をヘマトキシリン-エオジン、マッソン三色、及び過ヨウ素酸-シッフで染色した。腎傷害の程度を、尿細管間質性傷害及び糸球体損傷の形態計測評価により推定した。相対的間質容積は、顕微鏡にはめ込まれた10-mm2 グラティキュールを使用して形態計測解析により評価した。5〜10箇所のランダムに選択した皮質領域を各動物について評価した。300〜500の尿細管を、それらの拡張した内腔及び肥厚した基底膜について評価することにより、萎縮尿細管の割合を推定した。この方法をUUO、COL4A3KO及び糖尿病の研究のために使用した。
-Creを有するか又は有していない6週齢のR26Rstop LacZ floxマウス27から得た腎臓試料(1 mm2)を、4%パラホルムアルデヒドで4℃にて4時間固定した。試料をPBS pH 7.3で3回洗浄し、その後LacZ染色用緩衝液(PBS中、1 mg/mL X-gal、35 mM フェロシアン化カリウム、35 mM フェリシアン化カリウム、2 mM MgCl2、0.02%NP-40、0.01%デオキシコール酸ナトリウム)を用いて37℃で一晩染色した。PBS pH 7.3による洗浄後、試料をパラフィンに包埋した。切片(10μm)をその後脱パラフィン処理し、さらにエオジンで対比染色した。
EMTを、3 ng/mLの組換えヒトTGF-β1との48時間のインキュベーションによりNP1細胞又はMCT細胞に誘導した。EMTが起きた場合、培地を除去してDMEM中のTHR-123(10μM)又は組換えヒトBMP7(100 ng/mL)と交換した。48時間後、該細胞を、以前に記載したようにE-カドヘリンに対する一次モノクローナル抗体(2.5 g/mL)及びローダミン-結合二次抗体(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)を使用して免疫細胞化学により特徴付けた。染色を蛍光顕微鏡法により可視化し、さらにSpot Advanced Software(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)を使用して代表的な写真を記録した。また、タンパク質及び全RNAを実験の終了時に回収した。EMTの形態計測解析の場合、明視野写真中の細胞の長さ/幅をimage Jソフトウェアにより測定した。長さ/幅の比を算出した。
ヒト近位尿細管上皮細胞-由来HK-2細胞を24-ウェルプレート(30,000個の細胞/ウェル)で培養した。細胞をK-SFM培地単独又はTNF-β(5 ng/mL)に曝露した。TNF-αインキュベーションの24時間後、細胞を温めておいた培養培地で2回洗浄し、さらにその後、細胞を様々な濃度のTHR-123又はBMP7と共に60時間インキュベートした。インキュベーション終了時に、培養培地を回収し、IL-6、IL-8及びICAM-1についてELISA分析を実施した。
HK-2細胞を24-ウェルプレート(25,000〜30,000個の細胞/ウェル)に継代した。細胞をウェルに付着させた後、細胞をK-SFM培地単独又はTHR-123含有K-SFM培地に曝露した。BMP7を実験の陽性対照とした。インキュベーションの2時間後、細胞をシスプラチンに60時間曝露した。アポトーシスをアネキシンV-FITCによる染色とその後の蛍光顕微鏡法により判定した。最終濃度:THR-123 250μM、BMP7 1μg/mL、シスプラチン10μM。
データは平均±s.e.mとして表記した。分散分析(ANOVA)と、その後のマウス試料の多重比較のためのBonferroni/Dunnの検定を利用することにより、有意と判定した。統計的有意性はP<0.05と定義した。Graph-pad Prismソフトウェアを統計解析のために使用した。
本出願を通じて引用した全ての参考文献、特許、係属中の特許出願及び公開特許の記載内容は、参照により明確に本明細書中に組み込まれるものとする。
当業者であれば、通常の実験のみを利用して、本明細書中に記載した本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を理解するか、又は確認することができるであろう。かかる等価物は添付の特許請求の範囲により包含されるものとする。
Claims (16)
- 線維化を特徴とする疾患又は障害を有する対象を治療する方法であって、該対象に、有効量の配列番号1〜77のペプチドセットを投与し、それによって該対象を治療することを含む前記方法。
- 前記ペプチドが配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
- 前記ペプチドが配列番号1に対して少なくとも90%の同一性を有する、請求項1記載の方法。
- 前記ペプチドを、薬学的に許容しうる担体と共に製剤化する、請求項1記載の方法。
- 前記ペプチドを対象に経口的に投与する、請求項1記載の方法。
- 前記ペプチドを対象に局所的に、経腸的に、又は非経口的に投与する、請求項1記載の方法。
- 前記の疾患又は障害が、糖尿病性腎症、肝硬変、特発性肺線維症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、心臓線維症、全身性硬化症、腎炎、及び強皮症である、請求項1記載の方法。
- 前記の疾患又は障害が慢性腎疾患(CKD)である、請求項1記載の方法。
- 1日あたり0.0001〜10,000 mg/kg体重の用量を対象に投与する、請求項1記載の方法。
- 前記の投与する用量が1日あたり1〜100 mg/kg体重である、請求項9記載の方法。
- 配列番号55のアミノ酸配列を含む、線維化を特徴とする疾患又は障害を治療するためのペプチド。
- 配列番号1〜77のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項11記載のペプチド。
- 配列番号1〜54のいずれか1つのアミノ酸配列からなる、請求項11記載のペプチド。
- 請求項11〜13のいずれか1項記載のペプチド及び薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物。
- 請求項11〜13のいずれか1項記載のペプチド及び使用説明書を含むキット。
- 請求項14記載の医薬組成物及び使用説明書を含むキット。
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