しかしながら、特許文献1や特許文献2のように、リアドアストライカやリアシートストライカの取付の台座となるリンフォースが平板状であると、ストライカからの荷重を面で受けることとなるため、リンフォースの変形が生じやすくなってしまう。このため、平板状のリンフォースでは、板厚を厚くすることによって剛性を確保せざるを得ず、それによる重量の増加により、リアピラーひいては車両の軽量化を妨げてしまう。また走行時にリアドアの振動によってリアピラーも振動すると車室内音が増大するため、それらの振動を低減させる必要がある。このため、リアピラーにおいても振動に耐えうる剛性を確保する必要があるが、特許文献1や特許文献2のような平板状のリンフォースであると、振動の低減に寄与することができない。
本発明は、このような課題に鑑み、リアドアストライカリンフォース、リアシートストライカリンフォース、およびそれらが取り付けられるリアピラーにおいて高い剛性を確保することができ、それらの部材ひいては車両の軽量化を図ることが可能なリアピラー構造を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明にかかるリアピラー構造の代表的な構成は、車両後部の側面外側を構成する外面部材と、外面部材の内側に配置され車両後部の側面内側を構成する内面部材とを含み、リアドア用開口部の後方側の縁となるリアピラー構造であって、内面部材の外側の面に接合されリアドアストライカが取り付けられるリアドアストライカリンフォースと、内面部材の外側の面に接合されリアシートストライカが取り付けられるリアシートストライカリンフォースとを更に含み、リアドアストライカリンフォースは、車幅方向外側に向かって立設されリアドアストライカの取付面となる基本面と、基本面の上端および下端から後方に延びる上面および下面とを有し、リアシートストライカリンフォースは、リアドアストライカリンフォースの基本面、上面および下面によって囲まれる領域に配置されることを特徴とする。
上記構成によれば、リアドアストライカリンフォースは、基本面、上面および下面によって側方視の断面がコの字形状となる。これにより、上面および下面が、内面部材とリアドアストライカリンフォースの基本面との間で筋交いとして機能するため、リアドアストライカリンフォースの剛性が向上し、その変形を抑制することができる。このように、リアドアストライカリンフォースにおいて高い剛性が得られることにより、板厚を低減することができ、軽量化に寄与することが可能となる。
またリアドアストライカリンフォースの上面および下面が筋交いとして機能することにより、内面部材においてそれらが接合されている領域の剛性が向上される。したがって、振動への耐性(耐振動性能)を高めることができ、内面部材の板厚の低減ひいてはリアピラーの軽量化を図ることも可能となる。更に、リアドアストライカリンフォースの基本面、上面および下面によって囲まれる領域、すなわちコの字形状の内部にリアシートストライカが配置されていることで、リアシートストライカリンフォースはリアドアストライカリンフォースによって包囲されている状態となるため、その変形をより好適に防ぐことが可能となる。
上記リアドアストライカリンフォースは、基本面、上面および下面の少なくとも1つに、内面部材と当接している側の縁から延びるフランジを有し、リアドアストライカリンフォースのフランジ、リアシートストライカリンフォース、および内面部材は、3枚打ちで接合されているとよい。
上述したようにリアドアストライカリンフォースの3つの面によって囲まれた領域にリアシートストライカリンフォースが配置され、リアドアストライカリンフォースにフランジが設けられていることで、それらと内面部材とを3枚打ちで接合(溶接)することが可能となる。したがって、リアドアストライカからの荷重がリアドアストライカリンフォースを介してリアシートストライカリンフォースにも伝わり、荷重を分散することができ、リアシートストライカからの荷重がリアシートストライカリンフォースを介してリアドアストライカリンフォースにも伝わるため、荷重を分散することができる。また、接合箇所ひいては接合作業を減らすことができ、作業工程の簡略化を図ることが可能となる。
上記内面部材は、車両内側に向かって膨らみ車両高さ方向に延びる段差部を有し、リアドアストライカリンフォースの上面および下面のいずれか一方または両方が段差部を跨いで内面部材に接合されているとよい。かかる構成により、リアドアストライカリンフォースによって内面部材の段差部の変形を防ぐことができ、ひいてはリアピラーの変形を防ぐことが可能となる。
上記段差部は、車両高さ方向で前記リアドアストライカリンフォースの上面および下面の間で、下方に向かうにしたがって車両後方に傾斜する傾斜面を有し、リアシートストライカリンフォースは、傾斜面に沿うように配置される後端を有するとよい。このようにリアシートストライカリンフォースが内面部材の傾斜面にも至っていることで、複数の剥離方向の力(荷重)に耐えることができ、接合強度を高めることが可能となる。
上記内面部材のリアシートストライカリンフォースが配置される領域は、リアシートストライカリンフォースの形状に沿う形状を有し、中央に向かうにしたがって車幅方向内側に向かって膨らむ膨出形状を有するとよい。これにより、内面部材がリアシートストライカリンフォースのほぼ全面に接する形状となるため、リアシートストライカにかかった荷重を、リアシートストライカリンフォースを通じて内面部材に伝達することが可能となる。
本発明によれば、リアドアストライカリンフォース、リアシートストライカリンフォース、およびそれらが取り付けられるリアピラーにおいて高い剛性を確保することができ、それらの部材ひいては車両の軽量化を図ることが可能なリアピラー構造を提供することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
図1および図2は、本実施形態にかかるリアピラー構造を有する車両100aの後方斜視図である。図1は、左後方から車両100aの後部を観察した斜視図である。図2(a)は、右後方から車両100aの後部の側面を観察した図であり、図2(b)は、図2(a)の円内拡大図である。なお、理解を容易にするために、図2では外面部材であるサイドボディアウタパネル110(図1参照)を不図示としている。また車両後部では両側面ともに同様の構成を有するため、本実施形態では車両後部の右側面の構成を例示して説明するが、左側面の構成においても本発明を適用可能である。
図1に示すように、車両100aでは、その後部に、リアドア用開口部100b(リアドアは不図示)の後方側の縁となるリアピラー構造(以下、リアピラー100と称する)が設けられている。本実施形態のリアピラー100は、車両後部の側面外側を構成する外面部材であるサイドボディアウタパネル110と、その内側に配置され車両後部の側面内側を構成する内面部材であるクォータインナパネル120とを含んで構成される。
図2(a)に示すように、本実施形態のリアピラー100では、その内面部材であるクォータインナパネル120の外側の面に、リアドアストライカリンフォース130およびリアシートストライカリンフォース140が接合される。リアドアストライカリンフォース130は、リアドアのラッチ(ともに不図示)の受けとなるリアドアストライカ130a(図3(a)参照)をリアピラー100(厳密にはクォータインナパネル120)に取り付ける際の台座となる部材である。リアシートストライカリンフォース140は、折畳み式の後部シートのシートバック(ともに不図示)を支持するリアシートストライカ140a(図1参照)をリアピラー100(厳密にはクォータインナパネル120)に取り付ける際の台座となる部材である。
図3は、図2(b)の詳細図であり、図3(a)は図2(b)のリアドアストライカリンフォース130にリアドアストライカ130aを取り付けた状態を示していて、図3(b)は図2(b)のクォータインナパネル120からリアドアストライカリンフォース130を取り外した状態を図示している。本実施形態の特徴として、リアドアストライカリンフォース130は、図2(b)に示すように、基本面132、上面134および下面136を有する。詳細には、基本面132(図2(b)では破線にて図示)は、クォータインナパネル120に対して車幅方向外側に向かって立設され、図3(a)に示すようにリアドアストライカ130a、特にストライカ部130bの座面となるベース部130cの取付面となる。この基本面132の上端および下端から上面134および下面136が後方に延びている。
また本実施形態では、基本面132には、クォータインナパネル120と当接している側の縁から車両前方に向かって延びる前フランジ132a(図2(b)では破線にて図示)が形成されている。また上面134には、クォータインナパネル120と当接している側の縁から上方に向かって延びる上フランジ134aが形成されていて、下面には、同様に下方に向かって延びる下フランジ136aが形成されている。そして、これらの前フランジ132a、上フランジ134aおよび下フランジ136aにおいてスポット溶接されることで、リアドアストライカリンフォース130がクォータインナパネル120に接合される。
上記構成によれば、リアドアストライカリンフォース130は、側方視において、基本面132、上面134および下面136からなるコの字形状の断面を有することとなる。したがって、平板状のリンフォースに比して高い剛性が得られるため、変形を抑制しつつ板厚を低減することができ、軽量化および低コスト化を図ることが可能となる。また上面134および下面136が、クォータインナパネル120(内面部材)とリアドアストライカリンフォース130の基本面132との間で筋交いとして機能するため、クォータインナパネル120においてリアドアストライカリンフォース130が取り付けられた領域の剛性が向上する。これにより、クォータインナパネル120の耐振動性能が高まるため、その板厚の低減、ひいてはリアピラー100の軽量化を図ることが可能となる。
ここで、図2(a)に示すように、クォータインナパネル120には、その前端よりも車両後方側に、車両内側に向かって膨らみ車両高さ方向に延びる段差部122が設けられている。そして本実施形態では特に、図2(b)および図3(a)に示すように、リアドアストライカリンフォース130の上面134およびそこに設けられた上フランジ134aを、段差部122を跨ぐようにクォータインナパネル120に接合している。これにより、段差部122、ひいてはリアピラー100の変形を好適に防ぐことが可能となる。
なお、本実施形態では、上面134がクォータインナパネル120を跨ぐように接合される構成を例示したが、これに限定するものではない。上面134および下面136は、少なくとも一方が段差部122を跨ぐように接合されればよく、更に好ましくはその両方が段差部122を跨ぐように接合されるとよい。
図4は、図3(a)の断面図であり、図4(a)は図3(a)のA−A断面図であり、図4(b)は図3(a)のB−B断面図である。図4(a)および(b)に示すように、リアシートストライカリンフォース140は、中央に向かうにしたがって車幅方向内側に向かって膨らむ膨出形状142を有する。これにより、リアシートストライカリンフォース140においても、平板状であるときよりも高い剛性を得ることができる。したがって、変形を抑制しつつ、板厚の低減ひいては軽量化を図ることが可能となる。
特に本実施形態では、図4(a)および(b)に示すように、クォータインナパネル120(内面部材)において、リアシートストライカリンフォース140が配置される領域を、リアシートストライカリンフォース140の形状に沿う形状にしている。換言すれば、クォータインナパネル120のうち、リアシートストライカリンフォース140が配置される領域では、リアシートストライカリンフォース140の膨出形状142に沿う膨出形状126が設けられている。
上記構成により、リアシートストライカリンフォース140の膨出形状142と、クォータインナパネル120の膨出形状126とのほぼ全面が接触した状態となる。したがって、リアシートストライカ140aにかかった荷重を、リアシートストライカリンフォース140を通じてクォータインナパネル120に伝達することができ、リアシートストライカ140aからの荷重を好適に分散することが可能となる。
また本実施形態の特徴として、図3(a)に示すように、リアシートストライカ140aは、クォータインナパネル120において、リアドアストライカリンフォース130の基本面132、上面134および下面136によって囲まれる領域、すなわちそれらによるコの字形状の内部に配置(接合)される。これにより、リアシートストライカ140aはリアドアストライカリンフォース130によって包囲されている状態となり、またクォータインナパネル120においてもその領域はリアドアストライカリンフォース130によって剛性が高められているため、リアシートストライカリンフォース140の変形を好適に防ぐことが可能となる。
図5は、リアドアストライカ130aからの荷重について説明する図である。折畳み式の後部シートのシートバック(不図示)を起こしたり倒したりすると、図5に示すように、リアシートストライカ140aには、それを車両前後方向に振動させる力(荷重)がかかる。このとき、従来のように平面状のリンフォースであると、その力を面で受けることによる変形が生じがちであった。
上記に対し、本実施形態のリアシートストライカリンフォース(図4参照)は、上述したように、膨出形状142を有することに加え、リアドアストライカリンフォース130のコの字形状の内部に配置されている。このため、リアシートストライカ140aからの荷重を受けても、リアドアストライカリンフォース130の上面134および下面136(筋交い形状)が突っ張り棒として機能し、コの字形状の内部の領域のリアドアストライカリンフォース130およびそれが接合されているクォータインナパネル120の変形が抑制される。
図6は、図3(a)のリアピラー100を車室内側から観察した図である。なお、理解を容易にするために、図6では、リアドアストライカリンフォース130およびリアシートストライカリンフォース140の車室内側に配置されるクォータインナパネル120を不図示としている。図6に示すように、本実施形態では、リアシートストライカリンフォース140の膨出形状142の前方にフランジ144を設けている。そして、本実施形態では、リアシートストライカリンフォース140のフランジ144と、リアドアストライカリンフォース130の基本面132の前方に延びる前フランジ132aと、クォータインナパネル120(図4(a)参照)とを3枚打ちで接合(スポット溶接)している。
上記構成のように、リアドアストライカリンフォース130とリアシートストライカリンフォース140とを近接させ、それらにフランジ144および前フランジ132aを設けることで、クォータインナパネル120との3枚打ちでの接合が可能となる。これにより、リアドアストライカ130aからの荷重がリアドアストライカリンフォース130を介してリアシートストライカリンフォース140にも伝わり、荷重を分散することができ、リアシートストライカ140aからの荷重がリアシートストライカリンフォース140を介してリアドアストライカリンフォース130にも伝わるため、荷重を分散することができる。また、接合箇所を減らすことができるため、接合作業を軽減し、作業工程の簡略化を図ることができる。またリアドアストライカリンフォース130とリアシートストライカリンフォース140とが近接していることで、リアピラー100の構造を簡素化することも可能となる。
なお、本実施形態では、リアドアストライカリンフォース130の前フランジ132aとリアシートストライカリンフォース140のフランジ144とにおいて120との3枚打ちを行う構成を例示したが、これに限定するものではない。例えば、リアシートストライカリンフォース140の膨出形状142の上部や下部にフランジを設け、リアドアストライカリンフォース130の上フランジ134aや下フランジ136aと3枚打ちをする構成としてもよい。またリアドアストライカリンフォース130においても、本実施形態のように基本面132、上面134および下面136のすべてにフランジを設ける必要はなく、リアシートストライカリンフォース140との3枚打ちに要する箇所のみにフランジを設ける構成とすることも可能である。
ここで、上述したようにクォータインナパネル120には段差部122が設けられている。本実施形態では、図3(a)および(b)に示すように、この段差部122において、車両高さ方向でリアドアストライカリンフォース130の上面134および下面136の間で、下方に向かうにしたがって車両後方に傾斜する傾斜面124を設けている。この傾斜面124は、それより上方の段差部122よりも車幅方向の幅が広くなっている。
本実施形態において、上記のリアシートストライカリンフォース140の後端146は、段差部122の傾斜面124に沿うように配置され、かかる後端146は傾斜面124に接合(スポット溶接)される。これにより、リアシートストライカリンフォース140は、リアドアストライカリンフォース130のコの字形状の内部の面、およびそれとは傾斜(角度)が異なる傾斜面124の両方においてクォータインナパネル120に接合されることとなる。したがって、より多くの剥離方向の力に耐えることができ、接合強度を高めることが可能となる。
上記説明したように、本実施形態にかかるリアピラー100(リアピラー構造)によれば、リアドアストライカリンフォース130およびリアシートストライカリンフォース140の剛性が向上され、更にリアドアストライカリンフォース130によってクォータインナパネル120ひいてはリアピラー100の剛性を高めることができる。したがって、リアドアストライカリンフォース130、リアシートストライカリンフォース140およびクォータインナパネル120の板厚を低減することができ、高い剛性を確保しつつリアピラー100の軽量化を図ることが可能となる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。