JP2014237078A - 排ガス浄化用触媒及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コバルト含有酸化物を含む新規の排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供する。【解決手段】コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物上に0nm超10nm以下の平均粒径を有する貴金属粒子を複数担持してなることを特徴とする排ガス浄化用触媒が提供される。前記複合酸化物の前駆体を形成する工程、前記前駆体を仮焼して複合酸化物を形成する仮焼工程、並びに前記複合酸化物に貴金属含有溶液を含浸させ、前記仮焼工程よりも高い温度で本焼成する本焼成工程を含むことを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法がさらに提供される。【選択図】図3

Description

本発明は、排ガス浄化用触媒及びその製造方法、より詳しくはコバルト含有酸化物を含む排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。
従来、自動車の排ガス浄化用触媒としては、排ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化と窒素酸化物(NOx)の還元とを同時に行う三元触媒が用いられている。このような触媒としては、アルミナ(Al23)等の多孔質酸化物担体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)等の白金族元素を担持させたものが広く知られている。
しかしながら、これらの白金族元素は、自動車の排ガス規制の強化とともに使用量が増加しており、それゆえ資源の枯渇が懸念されている。このため、白金族元素の使用量を減らすとともに、将来的には、当該白金族元素の役割を他の金属等で代替することが必要とされている。
そこで、白金族元素の使用量を減らすための又はそれに代わる触媒成分について多くの研究が行われている。このような触媒成分の1つにコバルト又はその酸化物等があり、これらを用いた排ガス浄化用触媒について幾つかの提案がなされている。
例えば、特許文献1では、実質的にペロブスカイト型結晶構造を有し、Aα1-xB’x3-δ(ここで、Aは実質的にBa及びSrから選択される1種の元素又は2種の元素の組み合わせを表し、Bは実質的にFe及びCoから選択される1種の元素又は2種の元素の組み合わせを表し、B’は実質的にNb、Ta、及びTiから選択される1種の元素又は2種以上の元素の組み合わせを表し、αは0.95以上1.05以下であり、xは0.05以上0.3以下であり、δは電荷中性条件を満たすように決まる値である。)で表される複合酸化物に、少なくともPt、Pd、及びRhから選ばれた1種又は2種以上の元素が担持されてなることを特徴とする排ガス浄化用触媒が記載されている。
特許文献2では、AB24で表されるスピネル型の複合金属酸化物からなる触媒粒子を含有し、Aサイト元素がFe、Cr、Co、及びCuから選ばれる少なくとも1つであり、Bサイト元素がMn、Fe、Cr、Co、及びAlから選ばれる少なくとも1つである(但し、Aサイト元素とBサイト元素が同じ元素のもの、Aサイト元素がFeでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCrでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCoでありかつBサイト元素がAlであるものを除く)ことを特徴とする排ガス浄化触媒が記載されている。また、特許文献2では、上記触媒粒子の表面にMn、Fe、Cr、Co、Cuの少なくとも1つの金属元素を含む酸化物微粒子が存在している排ガス浄化触媒がさらに記載されている。そして、特許文献2では、上記の排ガス浄化用触媒によれば、貴金属を用いなくとも十分に排ガスを浄化できるので低コストで製造でき、さらに当該排ガス浄化用触媒は複合金属酸化物からなるため、酸化されることがなく、貴金属等からなる排ガス浄化用触媒に比べて、酸化による触媒活性の低下を防止できる旨が記載されている。
特開2007−160149号公報 特開2013−027858号公報
特許文献1では、コバルトを含有するペロブスカイト型酸化物を用いた排ガス浄化用触媒について具体的に開示されている。しかしながら、このようなペロブスカイト型酸化物は、当該特許文献1の実施例において実証されているように、少なくともPt、Pd、及びRhから選ばれた1種又は2種以上の元素が担持されて初めて排ガス浄化用触媒としての性能を発揮し、当該ペロブスカイト型酸化物単独では、排ガス浄化用触媒としての性能が非常に低いという問題がある。それゆえ、当該特許文献1に記載の排ガス浄化用触媒では、その触媒性能に関して依然として改善の余地があった。
特許文献2では、排ガス浄化用触媒におけるコバルトを含有するスピネル型複合酸化物の使用について記載されているものの、特許文献2に記載の排ガス浄化用触媒では、HCの酸化活性について必ずしも十分な触媒性能を達成できない場合がある。それゆえ、当該特許文献2に記載の排ガス浄化用触媒では、その触媒性能に関して依然として改善の余地があった。
そこで、本発明は、コバルト含有酸化物を含む新規の排ガス浄化用触媒であって、排ガスの浄化活性、特にはHC酸化活性が改善された排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は下記にある。
(1)コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物上に0nm超10nm以下の平均粒径を有する貴金属粒子を複数担持してなることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
(2)前記添加金属元素が、前記複合酸化物をリートベルト解析法によって解析したときに、前記添加金属元素を含有しないコバルト含有酸化物と比較して、前記複合酸化物のスピネル型構造におけるMTET−O結合の距離を伸張させ、及び/又は前記複合酸化物のスピネル型構造におけるMOCT−O結合の距離を収縮させるようなものであることを特徴とする、上記(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)前記添加金属元素が、銅、銀、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の排ガス浄化用触媒。
(4)前記添加金属元素が銅であることを特徴とする、上記(3)に記載の排ガス浄化用触媒。
(5)前記貴金属粒子の平均粒径が0nm超5nm以下であることを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(6)前記貴金属が、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の排ガス浄化用触媒。
(7)前記貴金属が、パラジウム、白金、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、上記(6)に記載の排ガス浄化用触媒。
(8)コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物の前駆体を形成する工程、
前記前駆体を仮焼して複合酸化物を形成する仮焼工程、並びに
前記複合酸化物に貴金属含有溶液を含浸させ、前記仮焼工程よりも高い温度で本焼成する本焼成工程
を含むことを特徴とする、排ガス浄化用触媒の製造方法。
(9)前記添加金属元素が、前記複合酸化物をリートベルト解析法によって解析したときに、前記添加金属元素を含有しないコバルト含有酸化物と比較して、前記複合酸化物のスピネル型構造におけるMTET−O結合の距離を伸張させ、及び/又は前記複合酸化物のスピネル型構造におけるMOCT−O結合の距離を収縮させるようなものであることを特徴とする、上記(8)に記載の方法。
(10)前記添加金属元素が、銅、銀、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、上記(8)又は(9)に記載の方法。
(11)前記添加金属元素が銅であることを特徴とする、上記(10)に記載の方法。
(12)前記前駆体が、コバルト塩、添加金属元素の塩、錯化剤、及び1つ又は複数の溶媒を含有する混合溶液を加熱することによって形成され、前記錯化剤が少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基を有する有機酸であることを特徴とする、上記(8)〜(11)のいずれか1つに記載の方法。
(13)前記混合溶液が多価アルコールをさらに含有することを特徴とする、上記(12)に記載の方法。
(14)前記前駆体が共沈合成法によって形成されることを特徴とする、上記(8)〜(11)のいずれか1つに記載の方法。
(15)前記仮焼工程が200℃以上500℃以下の温度で実施されることを特徴とする、上記(8)〜(14)のいずれか1項に記載の方法。
本発明によれば、コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物上に貴金属粒子が高分散に担持された排ガス浄化用触媒を得ることができる。また、このような排ガス浄化用触媒によれば、複合酸化物と貴金属の組み合わせにより、当該複合酸化物を単独で使用した排ガス浄化用触媒と比較して高い排ガス浄化活性が達成できるだけでなく、触媒成分として貴金属のみを含む従来公知の排ガス浄化用触媒と比較しても非常に少ない貴金属担持量で以って当該排ガス浄化用触媒と同等か又はそれ以上の排ガス浄化活性、特には低温下におけるCO及びHC酸化活性を達成することができる。
スピネル型構造を有する金属酸化物の模式図である。 例D〜例Fの各排ガス浄化用触媒におけるHC50%浄化温度を示すグラフである。 例G〜例Kの各排ガス浄化用触媒におけるHC50%浄化温度を示すグラフである。 例Gの排ガス浄化用触媒の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。
<排ガス浄化用触媒>
本発明の排ガス浄化用触媒は、コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物上に0nm超10nm以下の平均粒径を有する貴金属粒子を複数担持してなることを特徴としている。
先に記載したとおり、白金族元素の使用量を減らすという観点から、白金族元素以外の金属元素又はその酸化物等を触媒成分として使用した排ガス浄化用触媒についてこれまで多くの研究が行われており、このような触媒成分の1つにコバルト含有酸化物がある。このコバルト含有酸化物の中でも、例えば、四酸化三コバルト(Co34)は、酸化物イオンの立方最密充填単位格子の八面体間隙にCo3+イオンが配置され、さらに四面体間隙にCo2+イオンが配置されたスピネル型構造を有する金属酸化物であり、そのCo3+イオンの存在のために高い酸化活性を有することが一般的に知られている。
しかしながら、このようなコバルト含有酸化物、特には四酸化三コバルト(Co34)等を排ガス浄化用触媒の触媒成分として単に使用したとしても、必ずしも十分な酸化活性を達成することができない場合があり、特に低温下における酸化活性については依然として改善の余地がある。
本発明者は、四酸化三コバルトに添加金属元素を加えた複合酸化物を調製し、これを貴金属と組み合わせて使用することにより、より詳しくはコバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物上に貴金属を担持することにより、従来公知の三元触媒と比較して非常に少ない貴金属担持量で以って当該三元触媒と同等か又はそれ以上の排ガス浄化活性、特にはCO及びHC酸化活性を達成できることを見出した。
[複合酸化物]
本発明によれば、上記の複合酸化物としては、コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物が使用される。
本発明における複合酸化物としてコバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物を使用することで、このような添加金属元素によって四酸化三コバルト(Co34)のスピネル型結晶構造に歪みを生じさせることができる。その結果として、以下で説明するとおり、排ガス浄化用触媒のより高い酸化活性、特にはより高いCO及びHC酸化活性を達成することが可能となる。
なお、本発明において「複合酸化物」とは、2種以上の金属酸化物が少なくとも部分的に固溶している材料を意味し、それゆえ、当該「複合酸化物」には、いわゆる個々の金属酸化物の単純な物理混合物は包含されない。
したがって、例えば、本明細書において「コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素との複合酸化物」と記載される場合には、酸化コバルトと添加金属元素の酸化物とが少なくとも部分的に固溶し、特にはコバルトと添加金属元素とが少なくとも部分的にスピネル型構造の酸化物を互いに形成していることを意味する。例えば、添加金属元素が銅である場合には、「コバルトと銅の複合酸化物」とは、酸化コバルトと酸化銅とが固溶している部分だけでなく、酸化コバルトと酸化銅とがそれぞれ単独で存在している部分を含んでいてもよい。
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、触媒成分としてスピネル型構造を有するコバルト酸化物、すなわち四酸化三コバルトを使用した排ガス浄化用触媒においては、活性種である四酸化三コバルトの結晶格子中に存在する酸素を如何にして反応に寄与させるかということが極めて重要であると考えられる。というのも、反応の際、四酸化三コバルトからその結晶格子中の酸素が放出されると、このような酸素種は不対電子を有するいわゆる酸素ラジカルであると考えられ、気相中の酸素と比較して非常に不安定でありすなわち反応性が高いからである。
一方で、四酸化三コバルトにコバルトとは異なる添加金属元素を導入又はドープした複合酸化物では、イオン半径の相違やヤーンテラー効果等に基づいてスピネルの結晶構造に歪みを生じさせることができ、その結果として、このような添加金属元素を含まないコバルト酸化物と比較して、結晶格子中の酸素がより放出されやすい状態になると考えられる。したがって、本発明において上記の複合酸化物を使用することで、当該複合酸化物からより多く放出されるこのような反応性の高い酸素種によって排ガス浄化用触媒のCO及びHC酸化活性を顕著に改善することが可能であると考えられる。
図1は、スピネル型構造を有する金属酸化物の模式図である。図1を参照すると、四面体酸素の中心位置に2価金属(MTET)原子が存在し、一方で、八面体酸素の中心位置に3価金属(MOCT)原子が存在していることがわかる。ここで、図中のMTET−Oとは、2価金属(MTET)原子とそれに配位する酸素(O)原子との間の結合を表し、一方で、MOCT−Oとは、3価金属(MOCT)原子とそれに配位する酸素(O)原子との間の結合を表す。本発明について言えば、コバルトと添加金属元素との複合酸化物においてこれらのMTET−O結合及び/又はMOCT−O結合の距離を測定すること、より具体的にはこれらの結合の伸張及び/又は収縮を測定することによって当該複合酸化物における結晶構造の歪みを定量的に評価することが可能である。
そして、本発明者は、コバルトと添加金属元素とからなるスピネル型構造を有する複合酸化物において、当該複合酸化物をリートベルト解析法によって解析したときに、添加金属元素を含有しないコバルト含有酸化物と比較して、MTET−O結合の距離が伸張し及び/又はMOCT−O結合の距離が収縮しているときに、得られる排ガス浄化用触媒のCO酸化活性等が改善されることを見出した。
したがって、本発明において上記の複合酸化物に導入される添加金属元素としては、当該複合酸化物をリートベルト解析法によって解析したときに、添加金属元素を含有しないコバルト含有酸化物と比較して、当該複合酸化物のスピネル型構造におけるMTET−O結合の距離を伸張させ、及び/又は当該複合酸化物のスピネル型構造におけるMOCT−O結合の距離を収縮させることができる任意の金属元素を使用することが可能である。
一般的には、本発明における添加金属元素としては、上記の複合酸化物をリートベルト解析法によって解析したときに、添加金属元素を含有しないコバルト含有酸化物と比較して、当該複合酸化物のスピネル型構造におけるMTET−O結合の距離を0.002Å以上、0.005Å以上、0.01Å以上、0.02Å以上、0.03Å以上、0.04Å以上、0.05Å以上伸張させるようなものであることが好ましい。また、このような伸張は、一般的には、0.15Å以下、0.10Å以下、0.09Å以下、0.08Å以下、0.07Å以下、又は0.06Å以下であることが好ましい。
加えて又はその代わりに、本発明における添加金属元素としては、上記の複合酸化物をリートベルト解析法によって解析したときに、添加金属元素を含有しないコバルト含有酸化物と比較して、当該複合酸化物のスピネル型構造におけるMOCT−O結合の距離を0.002Å以上、0.005Å以上、0.01Å以上、0.02Å以上、又は0.03Å以上収縮させるようなものであることが好ましい。また、このような収縮は、一般的には、0.10Å以下、0.09Å以下、0.08Å以下、0.07Å以下、0.06Å以下、又は0.05Å以下であることが好ましい。
具体的には、本発明における添加金属元素としては、銅(Cu)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、又はそれらの組み合わせを使用することができ、好ましくは銅(Cu)を使用することができる。これらの添加金属元素を使用することで、本発明における複合酸化物をリートベルト解析法によって解析したときに、これらの添加金属元素を含まないコバルト含有酸化物と比較して、例えばMTET−O結合の距離を伸張させることができるか、及び/又はMOCT−O結合の距離を収縮させることができるので、最終的に得られる排ガス浄化用触媒の酸化活性、特には低温下におけるCO及びHC酸化活性を確実に改善することが可能である。
なお、リートベルト解析法においては、測定されたX線回折の強度データ、及びスピネル結晶の構造モデルを入力値として与え、格子定数、原子の分率座標、原子の各サイトでの占有率、原子変位パラメータ等の構造パラメータなどを動かすことで、計算された回折強度と測定された回折強度ができるだけ一致するように精密化される。また、バックグラウンド、ゼロ点シフト、試料変位パラメータ、試料透過パラメータ、表面粗さパラメータ、プロファイルの対称性に関するパラメータ等の測定方法や試料の状態や装置に由来するパラメータについても精密化される。
また、上記複合酸化物中におけるコバルトと添加金属元素の割合は、得られる複合酸化物がスピネル構造を形成することができ、かつ当該スピネルの結晶構造に歪みを生じさせることができる範囲において適宜選択すればよく特に限定されないが、一般的には、コバルト(Co)と添加金属元素(M)とのモル比(Co:M)が、1:0.1〜1、好ましくは1:0.3〜0.8、より好ましくは1:0.4〜0.7、最も好ましくは1:0.5となるような範囲において適宜選択することができる。
なお、本発明において「コバルト(Co)と添加金属元素(M)とのモル比(Co:M)」とは、コバルトと添加金属元素との複合酸化物を合成する際に導入されるコバルト及び添加金属元素の各塩中に含まれるコバルトと添加金属元素とのモル比を言うものである。
[貴金属粒子]
本発明によれば、上記の複合酸化物上に貴金属粒子が担持される。当該複合酸化物上に貴金属粒子を担持することで、当該複合酸化物を単独で使用した場合に比べて、排ガスの浄化活性、特にはCO及びHC酸化活性が改善され、さらには従来公知の三元触媒と比較しても非常に少ない貴金属担持量で以ってそのような排ガス浄化活性を達成することができる。
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、本発明の排ガス浄化用触媒においては、貴金属粒子は、活性種として作用し得るだけでなく、他の活性種であるコバルトと添加金属元素との複合酸化物による排ガス浄化の促進剤としても作用すると考えられる。より詳しく説明すると、貴金属は酸素や炭化水素を解離する能力を有することが一般的に知られている。一方で、排ガス中のHCの酸化は、炭化水素中のC−H結合を切断する必要があることから、C−O結合の切断を必ずしも必要としないCOの酸化に比べて困難であることが一般的に知られている。このような場合に、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、複合酸化物上に貴金属粒子が存在することで、当該貴金属粒子によって気相中の酸素を解離して非常に反応性の高い酸素種(すなわちO2-)を生成させることができるので、このような反応性の高い酸素種と活性種である複合酸化物とによって排ガス中のHCを比較的容易に酸化浄化することができると考えられる。
加えて、複合酸化物上に存在する貴金属粒子によって炭化水素中のC−H結合を切断することも可能であり、このような解離反応が生じた場合には、不対電子を有する不安定なラジカルが生成することになる。このような不安定なラジカルは、貴金属粒子に近接して存在する活性種の複合酸化物によって比較的容易に酸化浄化されると考えられる。したがって、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、複合酸化物と貴金属の組み合わせにより、当該複合酸化物を単独で使用した触媒や、触媒成分として貴金属のみを含む従来の排ガス浄化用触媒と比較した場合に、特にHCの酸化に対してより高い酸化活性を達成することが可能である。
本発明によれば、貴金属としては、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)又はそれらの組み合わせを使用することができ、好ましくは白金族元素、すなわちパラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)又はそれらの組み合わせを使用することができ、より好ましくはパラジウム(Pd)、白金(Pt)又はそれらの組み合わせを使用することができる。とりわけ、パラジウムはHCの解離能が高いことから、本発明における貴金属としてパラジウムを使用した場合には、得られる排ガス浄化用触媒のHC酸化活性を顕著に改善することが可能である。また、銀については、本発明における貴金属として使用できるとともに、先に記載したとおり、複合酸化物における添加元素としても使用することが可能である。
本発明によれば、上記の複合酸化物上に担持される貴金属粒子は0nm超10nm以下の平均粒径を有する。
貴金属粒子の平均粒径が10nmよりも大きくなると、貴金属粒子が凝集して粗大な粒子を形成し、その結果としてコバルトと添加金属元素との複合酸化物に対する貴金属粒子の分散性が低下する。この場合には、当該複合酸化物と貴金属を組み合わせたことによる本発明の上記効果、特には貴金属粒子による炭化水素や気相酸素の活性化及び当該活性化された種を利用した複合酸化物による炭化水素の酸化等を十分に達成できない場合がある。また、貴金属粒子がこのような比較的大きな平均粒径を有する場合には、貴金属粒子自体が持つ触媒活性も低下する。したがって、本発明の排ガス浄化用触媒においては、貴金属粒子は、一般的には0nm超10nm以下の平均粒径を有し、好ましくは0nm超8nm以下、0nm超6nm以下、0nm超5nm以下、0nm超4nm以下、又は0nm超3nm以下の平均粒径を有する。このような平均粒径を有する貴金属粒子を複合酸化物上に担持することで、当該複合酸化物に対する貴金属粒子の分散性を高めてそれらを組み合わせたことによる効果を十分に発揮させ、その結果として排ガス浄化活性、特には低温下におけるCO及びHC酸化活性が顕著に改善された排ガス浄化用触媒を得ることができる。
ここで、本発明において「平均粒径」とは、特に断りのない限り、透過型電子顕微鏡(TEM)及び走査型電子顕微鏡(SEM)等の電子顕微鏡を用いて、無作為に選択した100個以上の粒子の定方向径(Feret径)を測定した場合のそれらの測定値の算術平均値を言うものである。
なお、貴金属粒子は、従来公知の三元触媒等と比較してより少ない担持量において複合酸化物上に担持することができる。特に限定されないが、例えば、貴金属粒子は、複合酸化物に対して、一般的に0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上若しくは1質量%以上、及び/又は10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下若しくは2質量%以下となるような範囲において当該複合酸化物上に担持することができる。
[触媒担体]
本発明の排ガス浄化用触媒では、貴金属粒子が担持された上記の複合酸化物は、一般に触媒担体として知られる任意の金属酸化物上に担持して使用してもよい。複合酸化物を触媒担体上に担持して使用することで、複合酸化物と触媒担体との間の相互作用により、高温下での当該複合酸化物のシンタリングによる粒成長を抑制することができる。その結果として、排ガス浄化用触媒の排ガス浄化性能を高い状態のまま維持することが可能である。
上記の複合粒子を触媒担体に担持して使用する場合には、当該触媒担体としては、特に限定されないが、排ガス浄化用触媒の技術分野において一般に触媒担体として知られる任意の金属酸化物を使用することができる。このような触媒担体としては、例えば、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al23)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。好ましくは、このような触媒担体としては、少なくともセリア(CeO2)を含有するセリア系酸化物を使用することができ、当該セリア系酸化物としては、例えば、セリア(CeO2)、セリア−ジルコニア(CeO2−ZrO2)複合酸化物、セリア−チタニア(CeO2−TiO2)複合酸化物、セリア−シリカ(CeO2−SiO2)複合酸化物、又はそれらの組み合わせ等が挙げられる。
<排ガス浄化用触媒の製造方法>
本発明では、上記の複合酸化物上に貴金属粒子を複数担持してなる排ガス浄化用触媒の製造方法がさらに提供され、当該製造方法は、コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物の前駆体を形成する工程、前記前駆体を仮焼して複合酸化物を形成する仮焼工程、並びに前記複合酸化物に貴金属含有溶液を含浸させ、前記仮焼工程よりも高い温度で本焼成する本焼成工程を含むことを特徴としている。
一般に、触媒担体等の金属酸化物に貴金属を担持してなる排ガス浄化用触媒を製造する方法としては、貴金属をその塩を含む溶液を用いて金属酸化物上に単に含浸担持するいわゆる含浸法が公知である。しかしながら、このような従来公知の含浸法では、本発明におけるコバルトと添加金属元素との複合酸化物上に貴金属粒子を高分散に担持することは極めて困難である。また、このような方法によって得られた排ガス浄化用触媒では、貴金属が10nm超、場合により数十nm程度の平均粒径を有する比較的大きな粒子として複合酸化物上に存在し、よって当該複合酸化物に対する貴金属粒子の分散性も低い。このような場合には、複合酸化物と貴金属を組み合わせたことによる本発明の効果を十分に発揮させることができないため、得られる排ガス浄化用触媒において十分な排ガス浄化活性を達成することができない。
本発明者は、コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物の前駆体を比較的低温下で仮焼して複合酸化物を形成した後、それを比較的高温下で本焼成する前に、貴金属含有溶液を導入した場合に、当該複合酸化物上に貴金属粒子が高分散に担持され、その結果として、排ガス浄化活性、特には低温下におけるCO及びHC酸化活性が顕著に改善された排ガス浄化用触媒を得ることができることを見出した。
[複合酸化物の前駆体の形成]
コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物の前駆体は、例えば、共沈合成法、ゾル−ゲル法等の従来公知の方法を用いて調製することが可能である。しかしながら、上記の複合酸化物においてコバルトと添加金属元素とが少なくとも部分的に固溶することを確実にするためには、以下に説明するようなクエン酸合成法を使用することが特に好ましい。
[クエン酸合成法]
クエン酸合成法では、まず、コバルト塩、添加金属元素の塩、錯化剤(特にはクエン酸)、及び1つ又は複数の溶媒を含有する混合溶液が調製され、次いで、当該混合溶液が所定の温度で加熱される。
このような方法によれば、コバルトイオン及び添加金属元素のイオンを錯化剤により錯化(キレート化)することで、コバルトと添加金属元素との部分的又は完全な固溶を促進させることができる。したがって、最終的に得られる排ガス浄化用触媒においてより高い酸化活性、特にはより高いCO及びHC酸化活性を達成することができる。
より詳しく説明すると、クエン酸合成法を利用した本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法では、まず、コバルト塩、並びに添加金属元素の塩、例えば、先に説明した銅、銀、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される添加金属元素の塩、好ましくは銅塩が1つ又は複数の溶媒、例えばエタノール等のアルコールや水に導入され、そして十分に攪拌及び混合されて金属塩溶液が調製される。
ここで、コバルト塩及び添加金属元素の塩としては、特に限定されないが、例えば、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩等を使用することができる。なお、コバルト塩及び添加金属元素の塩は、コバルト(Co)と添加金属元素(M)とのモル比(Co:M)が1:0.1〜1であるような範囲において導入され、金属塩溶液中のコバルトイオン等の各金属イオンの合計濃度は0.01M〜0.2Mの範囲内であることが好ましい。
次に、錯化剤と任意選択でエステル化剤が1つ又は複数の溶媒、例えば、エタノール等のアルコールや水に導入され、そして十分に攪拌及び混合されて錯化剤溶液が調製される。
ここで、錯化剤としては、少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基を有する有機酸を使用することができ、クエン酸以外にも、例えば、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸等を使用することができる。また、当該錯化剤は、例えば、コバルトイオン等の各金属イオンの合計に対して、モル比で1〜10倍、又は1〜5倍の量で使用することができる。なお、任意選択のエステル化剤としては、多価アルコール、例えばエチレングリコールを使用することができ、当該エステル化剤は、錯化剤の場合と同様に、コバルトイオン等の各金属イオンの合計に対して、モル比で1〜10倍、又は1〜5倍の量で使用することができる。
次に、上記の金属塩溶液と錯化剤溶液を室温下で十分に攪拌及び混合した後、この混合溶液を50℃〜90℃の温度で所定の時間にわたって加熱してキレート化反応を促進させる。そしてエステル化剤を含む場合には、さらに100℃〜160℃の温度で所定の時間にわたって加熱してエステル化反応を促進させて、最終的にコバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物の前駆体が形成される。
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、多価アルコール等のエステル化剤を使用した場合には、錯化剤によって形成された錯体と当該多価アルコールとが反応し(エステル重合)、それによって形成されたポリマーのネットワーク中に各金属元素を組み込むことができる。したがって、最終的に得られる排ガス浄化用触媒においてコバルトと添加金属元素との部分的又は完全な固溶をより促進させることができると考えられる。
[共沈合成法]
一方で、共沈合成法を利用した場合には、上記複合酸化物の前駆体は、例えば以下のようにして形成することができる。まず、コバルト塩、添加金属元素の塩、例えば、先に説明した銅、銀、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される添加金属元素の塩、好ましくは銅塩、並びに1つ又は複数の溶媒、例えば水を含有する金属塩溶液を調製し、次いで当該金属塩溶液に中和剤を添加する。その後、吸引ろ過や遠心分離などによってスラリーを洗浄して、コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物の前駆体が形成される。
ここで、コバルト塩及び添加金属元素の塩としては、クエン酸合成法の場合と同様に、例えば、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩等を使用することができる。なお、コバルト塩及び添加金属元素の塩は、コバルト(Co)と添加金属元素(M)とのモル比(Co:M)が1:0.1〜1であるような範囲において導入され、金属塩溶液中のコバルトイオン等の各金属イオンの合計濃度は0.01M〜0.2Mの範囲内であることが好ましい。
中和剤としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア(NH3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等の無機塩基性化合物を使用することができる。また、中和剤として、例えば、ピリジン、(ポリ)エチレンジアミン化合物等の有機塩基性化合物を使用することもでき、好ましくは(ポリ)エチレンジアミン化合物を使用することができる。
なお、(ポリ)エチレンジアミン化合物としては、エチレン単位を1〜10個有するもの、特にエチレン単位を1〜6個有するものを挙げることができる。具体的には、好ましいポリエチレンジアミン化合物としては、エチレンジアミン(EDA:H2NCH2CH2NH2)、ジエチレントリアミン(DETA:H2NCH2CH2NHCH2CH2NH2)、トリエチレンテトラミン(TETA:H2NCH2CH2NHCH2CH2NHCH2CH2NH2)、テトラエチレンペンタミン[TEPA:H2N(CH2CH2NH)3CH2CH2NH2)]、ペンタエチレンヘキサミン[PEHA:H2N(CH2CH2NH)42CH2NH2]、特にエチレンジアミン(DDA)を挙げることができる。
1つ又は複数の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、又は水を使用することができ、好ましくは水を使用することができる。
中和剤を添加する際、溶液のpHは6〜11の範囲に調整することが好ましい。pHが低すぎると、コバルト等の析出反応が起こらず、一方で、pHが高すぎると、析出した前駆体が溶解することがある。
上記の金属塩溶液は、分散剤、例えばピロリドンンカルボン酸ナトリウム(PAA−Na)やポリビニルピロリドン(PVP)をさらに含んでもよい。
一方、上記のクエン酸合成法や共沈合成法を利用した方法と比較して、従来公知のいわゆる含浸法等を利用した方法では、コバルトと添加金属元素との部分的又は完全な固溶を十分に促進させることができないと考えられる。その結果として、コバルトと添加金属元素との間で適切な複合酸化物が形成されず、最終的に得られる排ガス浄化用触媒において高いCO及びHC酸化活性を達成することができない。
[仮焼工程]
本発明の方法によれば、上記のようにして得られた複合酸化物の前駆体を必要に応じて乾燥等した後、例えば減圧下又は常圧下において約50℃〜約200℃の温度で約1時間〜約10時間にわたって乾燥した後、仮焼工程において当該前駆体を仮焼して複合酸化物が形成される。
上記の仮焼は、各金属塩の塩部分等を分解除去し、クエン酸合成法の場合にはさらに錯化剤、任意選択のエステル化剤等を分解除去しかつ各金属を酸化して複合酸化物を形成するのに十分な温度及び時間において実施することができる。このような仮焼は、特に限定されないが、一般的には酸化性雰囲気中、例えば空気中において最大約500℃、例えば約200℃以上約500℃以下、好ましくは約250℃以上約450℃以下、より好ましくは約300℃以上約400℃以下の温度で約2時間〜約15時間にわたって実施することができる。
[本焼成工程]
本発明の方法によれば、上記の仮焼工程において得られた複合酸化物に、次の本焼成工程において貴金属粒子が含浸担持される。具体的には、貴金属源として貴金属、特には白金族元素、好ましくはパラジウム又は白金を陽イオンとして含む化合物(例えば、貴金属の硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩等)又は当該貴金属の錯体(例えばアンミン錯体等)が用いられる。そして、当該化合物又は錯体を所定濃度で含有する貴金属含有溶液を、先の仮焼工程において得られた複合酸化物に含浸させ、次いで、当該仮焼工程よりも高い温度でかつ貴金属粒子を複合酸化物に担持するのに十分な温度及び時間において本焼成される。このような本焼成は、特に限定されないが、一般的には酸化性雰囲気中、例えば空気中において最大約800℃、例えば約500℃超約800℃以下、好ましくは約500℃超約700℃以下、より好ましくは約550℃以上約650℃以下の温度で約1時間〜約10時間にわたって実施するができる。
なお、本発明の方法においては、仮焼後でかつ本焼成前の複合酸化物に貴金属含有溶液を含浸させることが極めて重要である。というのも、仮焼工程前や本焼成工程後の複合酸化物に貴金属含有溶液を導入して当該複合酸化物に貴金属粒子を担持した場合には、最終的に得られる排ガス浄化用触媒において必ずしも十分な排ガス浄化活性、特にはCO及びHC酸化活性を達成することができないことがあるからである。
何ら特定の理論に束縛されることを意図するものではないが、例えば、仮焼工程では比較的低い温度での熱処理によって複合酸化物が形成されるため、このような仮焼によって形成された複合酸化物は、本焼成後の複合酸化物と比較して非常に高い比表面積を有している(例えば、本焼成後のCo−Cu複合酸化物の比表面積が9.0m2/gであるのに対し、仮焼後のCo−Cu複合酸化物の比表面積は65.0m2/gである)。したがって、この段階において貴金属含有溶液を導入した場合には、貴金属を複合酸化物全体に均一に付着させることができ、その後の本焼成によって幾らかのシンタリング又は凝集等が生じたとしても、貴金属粒子を微粒子の状態、例えば10nm以下、特には5nm以下の平均粒径を有する微粒子の状態で複合酸化物上に高分散に担持することができると考えられる。
これに対し、本焼成後の複合酸化物は、仮焼後の複合酸化物と比較してその比表面積が非常に小さい。それゆえ、当該複合酸化物に貴金属含有溶液を導入しても貴金属の一部は複合酸化物にうまく付着することができない場合があり、あるいは、たとえ貴金属が複合酸化物に付着したとしても、貴金属同士が凝集して非常に大きな粒子を形成することがある。このような場合には、貴金属粒子を微粒子の状態で複合酸化物上に高分散に担持することができないために、得られる排ガス浄化用触媒において高い排ガス浄化活性を達成することができない。
一方で、仮焼工程前の段階、例えば複合酸化物の前駆体を調製する段階において貴金属含有溶液を導入した場合には、その後の熱処理過程において当該前駆体が複合酸化物へと相変化する際に、貴金属粒子の一部が当該複合酸化物に内包されてしまい、表面に出てこなくなると考えられる。あるいはまた、貴金属含有溶液を導入した後の熱処理すなわち仮焼及び本焼成によって貴金属のシンタリングが生じてしまうことがある。このような場合には、貴金属を添加したことによる効果を十分に発揮することができないため、最終的に得られる排ガス浄化用触媒において高い排ガス浄化活性を達成することができない。また、例えば、仮焼工程の直前、すなわち前駆体を乾燥処理した直後に貴金属含有溶液を導入した場合には、複合酸化物中に不純物として残留している有機物に貴金属が付着しやすく、その後の熱処理過程で当該不純物とともに貴金属が除去されてしまう可能性も考えられる。
最後に、上記のようにして得られた本発明の排ガス浄化用触媒は、必要に応じて、例えば、高圧下でプレスしてペレット状に成形するか、又は所定のバインダ等を加えてスラリー化し、これをコージェライト製ハニカム基材等の触媒基材上に塗布することにより使用することができる。
なお、本明細書では、自動車の排ガスを浄化するための排ガス浄化用触媒について詳しく説明したが、本発明の排ガス浄化用触媒は、このような特定の技術分野に何ら限定されるものではなく、工場排ガスの浄化等、特には低温でのCO及び/又はHCの浄化が必要とされる任意の技術分野において幅広く適用することが可能である。
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<例A〜例C(参考例)>
例A〜例Cでは、コバルト塩及びコバルトとは異なる添加金属元素の塩を用いて排ガス浄化用触媒を調製し、添加金属元素の種類及び排ガス浄化用触媒の製造方法が当該排ガス浄化用触媒の性能に与える影響について検討した。
[例A(参考例):クエン酸合成法を利用した排ガス浄化用触媒の製造]
例Aでは、添加金属元素として、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、及びマンガン(Mn)のいずれか1種を使用し、具体的には以下のようにしてクエン酸合成法を利用して排ガス浄化用触媒を製造した。また、比較のために、添加金属元素を含まない排ガス浄化用触媒についても同様に製造した。
1.金属塩溶液の調製
硝酸コバルト及び添加金属元素の硝酸塩を、コバルト(Co)と添加金属元素(M)のモル比(Co:M)が1:0.5になるようにして純水に溶解し、十分に撹拌及び混合して金属塩溶液を得た。
2.錯化剤溶液の調製
錯化剤としてのクエン酸(CA)及びエステル化剤としてのエチレングリコール(EG)を、金属塩溶液のコバルト(Co)及び添加金属元素(M)の合計に対するクエン酸(CA)及びエチレングリコール(EG)のモル比(Co+M:CA:EG)が1:3:3になるようにして純水に加え、十分に撹拌及び混合して錯化剤溶液を得た。
3.担持
金属塩溶液及び錯化剤溶液を室温において十分に撹拌して原料混合溶液を得た。この原料混合溶液に触媒担体としてのセリア−ジルコニア複合酸化物(CZ:CeO2−ZrO2)粉末(株式会社キャタラー製、ACTALYS LISA)を当該セリア−ジルコニア複合酸化物粉末に対するコバルトの金属換算担持量が5質量%になる量において加え、室温で十分に撹拌した後、エバポレーターにて70℃で2時間にわたって減圧下で還流を行い、次いで140℃で4時間にわたって加熱することによりゲル状前駆体生成物を得た。
4.乾燥及び焼成
得られたゲル状前駆体生成物を電気炉において9時間にわたって400℃まで段階的に加熱し、次いで焼成炉において600℃で4時間にわたって焼成して触媒粉末を得た。
5.ペレット化
得られた触媒粉末を1トンの圧力の冷間等方圧プレス(CIP)によりペレット状に成形して例Aの排ガス浄化用触媒を得た。なお、個々のペレットは0.17cm3の体積を有していた。
[例B(参考例):共沈合成法を利用した排ガス浄化用触媒の製造]
例Bでは、添加金属元素として、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、及びマンガン(Mn)のいずれか1種を使用し、具体的には以下のようにして共沈合成法を利用して排ガス浄化用触媒を製造した。また、比較のために、添加金属元素を含まない排ガス浄化用触媒についても同様に製造した。
1.スラリーの調製
例Bでは、例Aと同様にして得られた金属塩溶液に、当該金属塩溶液のpHが9になるまでピペットで水酸化ナトリウム溶液を滴下し、得られたスラリーをろ過により水洗した。
2.担持
上記のスラリーを、例Aで使用したのと同じセリア−ジルコニア複合酸化物粉末に含浸させ、120℃で乾燥した後、600℃で焼成して触媒粉末を得た。
3.ペレット化
得られた触媒粉末を、例Aと同様にして、ペレット状に成形して例Bの排ガス浄化用触媒を得た。
[例C(参考例):含浸合成法を利用した排ガス浄化用触媒の製造]
例Cでは、添加金属元素として、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、及びマンガン(Mn)のいずれか1種を使用し、具体的には以下のようにして含浸合成法を利用して排ガス浄化用触媒を製造した。また、比較のために、添加金属元素を含まない排ガス浄化用触媒についても同様に製造した。
1.担持
例Cでは、例Aと同様にして得られた金属塩溶液を、例Aで使用したのと同じセリア−ジルコニア複合酸化物粉末に含浸させ、120℃で乾燥した後、600℃で焼成して触媒粉末を得た。
2.ペレット化
得られた触媒粉末を、例Aと同様にして、ペレット状に成形して例Cの排ガス浄化用触媒を得た。
<触媒の評価>
例A〜例Cの各排ガス浄化用触媒について、下記の条件で評価ガス温度を600℃まで昇温し、COの浄化率が50%になる温度(CO50%浄化温度:T50)を調べた。
評価ガス組成:
CO:0.65mol%
36:0.05mol%(1500ppmC)
2:0.58mol%
2:残部
使用触媒量: 約0.75g
ガス流量: 1リットル/分
空燃比(A/F): 15.02
空間速度(SV): 90,000h-1
<評価の整理1:添加金属元素の種類に基づく評価結果の整理>
例A(クエン酸合成法)、例B(共沈合成法)、及び例C(含浸合成法)を利用して製造した各排ガス浄化用触媒に関する評価結果を下表1に示す。
表1から理解されるように、例A(クエン酸合成法)及び例B(共沈合成法)を利用して製造した排ガス浄化用触媒では、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、及び亜鉛(Zn)を添加金属元素として使用した場合に、CO浄化性能を改善することができた。
また、例A(クエン酸合成法)を利用して製造した排ガス浄化用触媒では、例B(共沈合成法)を利用して製造した排ガス浄化用触媒と比較しても優れたCO浄化性能を達成することができた。しかしながら、例A(クエン酸合成法)及び例B(共沈合成法)を利用して排ガス浄化用触媒を製造した場合であっても、鉄及びマンガンを添加金属元素として使用した場合には、添加金属元素を含まない触媒と比較してCO浄化性能は改善されなかった。なお、例C(含浸合成法)を利用して製造した排ガス浄化用触媒では、例A(クエン酸合成法)及び例B(共沈合成法)を利用して製造した排ガス浄化用触媒とは異なる傾向を示した。これは、含浸合成法では、コバルトと添加金属元素との間で適切な複合酸化物が形成されにくいことによるものと考えられる。一方で、特に図示しないが、添加金属元素として銅を使用し、クエン酸合成法及び共沈合成法を利用して製造した排ガス浄化用触媒について、当該排ガス浄化用触媒をエネルギー分散型X線分析装置付走査透過型電子顕微鏡(STEM−EDX)によって分析したところ、酸化コバルトと酸化銅とが固溶していることが確認された。
<評価の整理2:結晶構造の歪みの大きさに基づく評価結果の整理>
セリア−ジルコニア複合酸化物粉末を使用しなかったこと以外は例B(共沈合成法)と同様にして得られた酸化物粒子をX線回折によって分析した。そして、X線回折の分析結果に基づいて、リートベルト解析法により、得られた酸化物のスピネル型構造におけるMTET−O結合の距離及びMOCT−O結合の距離を求めた。
また、添加金属元素として銅を使用し、セリア−ジルコニア複合酸化物粉末を使用しなかったこと以外は例A(クエン酸合成法)と同様にして得られた酸化物粒子についても同様に評価した。さらに、添加金属元素として銅を使用し、例Cと同様にして得られた触媒粉末についても同様に評価した。それらの結果を下表2に示す。
表2の結果から、コバルト(Co)を含有するスピネル型酸化物のCO浄化性能は、MTET−O結合の距離及びMOCT−O結合の距離に対して相関を有していることがわかる。すなわち、添加金属元素を含有しない酸化コバルト(Co34)と比較して、添加金属元素を含有する酸化コバルトのスピネル型構造におけるMTET−O結合の距離が伸張している場合、及び/又はMOCT−O結合の距離が収縮している場合には、優れたCO浄化性能を達成することができた。
表2の例Bに関する結果をより詳しく考察すると、添加金属元素としてCuを使用した場合には、MTET−O結合の伸張及びMOCT−O結合の収縮が最も大きく、それに比例して最も低いCO50%浄化温度T50が得られ、したがって最も高いCO浄化性能を達成することができた。
一方で、添加金属元素としてAgを使用した場合には、Agは一般に固溶しない系であるにもかかわらず、共沈合成法を利用することで、添加金属元素を含有しない酸化コバルト(Co34)と比較して、当該酸化コバルトのスピネル型構造におけるMTET−O結合の距離を約0.0165Å伸張させ、及びMOCT−O結合の距離を約0.0168Å収縮させることができた。この結果から、添加金属元素としてAgを使用した場合には、酸化コバルトと酸化銀の少なくとも一部が固溶して、CoとAgが部分的にスピネル型構造の酸化物を互いに形成していると考えられる。
<例D〜例F(比較例)>
例D〜例Fでは、例A〜例Cにおいて最も高いCO酸化活性を示したCo−Cu複合酸化物に関し、当該Co−Cu複合酸化物の前駆体調製時に種々の貴金属を添加した場合の効果について詳しく調べた。
[例D(比較例):クエン酸合成法を利用した排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)の製造]
1.金属塩溶液の調製
硝酸コバルト及び硝酸銅を、例A〜Cと同様にコバルト(Co)と添加金属元素である銅(Cu)のモル比(Co:Cu)が1:0.5になるようにして純水に溶解し、十分に撹拌及び混合して金属塩溶液を得た。
2.錯化剤溶液の調製
錯化剤としてのクエン酸(CA)を、金属塩溶液のコバルト(Co)及び銅(Cu)の合計に対するクエン酸(CA)のモル比(Co+Cu:CA)が1:3になるようにして純水に加え、十分に撹拌及び混合して錯化剤溶液を得た。
3.パラジウム含有溶液の調製
パラジウム(Pd)の薬液を所定量秤量し、蒸留水100mLに溶解してパラジウム含有溶液を得た。
4.錯形成
金属塩溶液、錯化剤溶液、及びパラジウム含有溶液を室温において十分に混合した後、還流装置を用いて70℃で2時間攪拌し、クエン酸が金属塩混合物に配位した錯体を形成し、次いで120℃で所定の時間にわたり乾燥処理した。
5.仮焼
得られた前駆体生成物を電気炉において9時間にわたり400℃まで段階的に加熱して複合酸化物粉末を得た。
6.本焼成
仮焼した複合酸化物粉末を解砕した後、焼成炉において600℃で4時間にわたって空気焼成して触媒粉末を得た。
7.ペレット化
得られた触媒粉末を1トンの圧力の冷間等方圧プレス(CIP)によりペレット状に成形して例Dの排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)を得た。なお、個々のペレットは0.17cm3の体積を有していた。
[例E(比較例):クエン酸合成法を利用した排ガス浄化用触媒(Pt/Co−Cu複合酸化物)の製造]
パラジウム含有溶液の代わりに白金含有溶液を使用したこと以外は例Dと同様にして、ペレット状に成形された例Eの排ガス浄化用触媒(Pt/Co−Cu複合酸化物)を得た。
[例F(比較例):クエン酸合成法を利用した排ガス浄化用触媒(Rh/Co−Cu複合酸化物)の製造]
パラジウム含有溶液の代わりにロジウム含有溶液を使用したこと以外は例Dと同様にして、ペレット状に成形された例Eの排ガス浄化用触媒(Rh/Co−Cu複合酸化物)を得た。
<触媒の評価>
例D〜例Fの各排ガス浄化用触媒について、下記の条件で評価ガス温度を600℃まで25℃/分で昇温し、HCの浄化率が50%になる温度(HC50%浄化温度)を調べた。その結果を図2に示す。
評価ガス組成:
CO:0.08mol%
36:0.04mol%(1200ppmC)
NO:0.01mol%
2:10mol%
2:残部
空燃比(A/F): 663
空間速度(SV): 150,000h-1
図2は、例D〜例Fの各排ガス浄化用触媒におけるHC50%浄化温度を示すグラフである。図2は、横軸にCo−Cu複合酸化物に対する貴金属の担持量(質量%)を示し、縦軸にHC(C36)50%浄化温度(℃)を示している。なお、参考として、触媒担体としてのセリア−ジルコニア複合酸化物(CZ:CeO2−ZrO2)粉末(株式会社キャタラー製、ACTALYS LISA)にパラジウム(Pd)を含浸担持したPd/CZ触媒(Pd担持量:0.5質量%、1質量%及び2質量%)に関するHC50%浄化温度を図中に示している。
図2を参照すると、Pd及びPtを担持した例D及び例Eの各排ガス浄化用触媒では、Pd及びPtを担持することで担持量に依存してHC50%浄化温度が低下し、それゆえHC酸化活性が向上する傾向が見られた。例えば、Pd担持量0.5質量%の例Dの排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)では、同じPd担持量のPd/CZ触媒と比較して非常に高いHC酸化活性を示した。しかしながら、Pd担持量が1質量%では、例Dの排ガス浄化用触媒とPd/CZ触媒の間に顕著な触媒活性の差異は見られなかった。また、Rhを担持した排ガス浄化用触媒(Rh/Co−Cu複合酸化物)では、Rhの担持量に依存して触媒活性が幾分低下する傾向が見られた。
<例G〜例K>
例G〜例Kでは、例D〜例Fにおいて最も高いHC酸化活性を示した例Dの排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)に関し、複合酸化物の前駆体の調製方法やPdの担持方法について検討した。
[例G:クエン酸合成法を利用した排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)(仮焼後Pd担持)の製造]
1.金属塩溶液の調製
硝酸コバルト及び硝酸銅を、例A〜Cと同様にコバルト(Co)と添加金属元素である銅(Cu)のモル比(Co:Cu)が1:0.5になるようにして純水に溶解し、十分に撹拌及び混合して金属塩溶液を得た。
2.錯化剤溶液の調製
錯化剤としてのクエン酸(CA)を、金属塩溶液のコバルト(Co)及び銅(Cu)の合計に対するクエン酸(CA)のモル比(Co+Cu:CA)が1:3になるようにして純水に加え、十分に撹拌及び混合して錯化剤溶液を得た。
3.錯形成
金属塩溶液及び錯化剤溶液を室温において十分に混合した後、還流装置を用いて70℃で2時間攪拌し、クエン酸が金属塩混合物に配位した錯体を形成し、次いで120℃で所定の時間にわたり乾燥処理した。
4.仮焼
上記3.で得られた前駆体生成物を電気炉において9時間にわたり400℃まで段階的に加熱してCo−Cu複合酸化物粉末を得た。なお、仮焼後のCo−Cu複合酸化物の比表面積は65.0m2/gであった。
5.パラジウム含有溶液の調製
パラジウム(Pd)の薬液を所定量秤量し、蒸留水100mLに溶解してパラジウム含有溶液を得た。
6.含浸担持
上記5.で得られたパラジウム含有溶液と、上記4.で得られたCo−Cu複合酸化物粉末を300mLのビーカーに導入した後、ホットスターラー上において90℃で加熱することにより蒸発乾固させ、Pd担持Co−Cu複合酸化物粉末を得た。
7.本焼成
得られたPd担持Co−Cu複合酸化物粉末を解砕した後、焼成炉において600℃で4時間にわたって空気焼成して触媒粉末を得た。
8.ペレット化
得られた触媒粉末を1トンの圧力の冷間等方圧プレス(CIP)によりペレット状に成形して例Gの排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)を得た。なお、個々のペレットは0.17cm3の体積を有していた。また、Pd担持量は0.5質量%であった。
[例H:共沈合成法を利用した排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)(仮焼後Pd担持)の製造]
Co−Cu複合酸化物の前駆体をクエン酸合成法ではなく、共沈合成法により調製したこと以外は例Gと同様にして、ペレット状に成形された例Hの排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)を得た。
[例I(参考例):クエン酸合成法を利用した排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)(本焼成後Pd担持)の製造]
600℃での本焼成後にパラジウム含有溶液を導入してPdを含浸担持し、その後120℃で乾燥したこと以外は例Gと同様にして、ペレット状に成形された例Iの排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)を得た。なお、本焼成後のCo−Cu複合酸化物の比表面積は9.0m2/gであった。
[例J(比較例):クエン酸合成法を利用した排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)(前駆体調製時Pd導入)の製造]
Co−Cu複合酸化物の前駆体調製時にパラジウム含有溶液を導入したこと以外は例Gと同様にして、ペレット状に成形された例Jの排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)を得た。
[例K(比較例):クエン酸合成法を利用した排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)(乾燥処理後Pd担持)の製造]
Co−Cu複合酸化物の前駆体を調製し、それを120℃で乾燥処理した後にパラジウム含有溶液を導入してPdを含浸担持したこと以外は例Gと同様にして、ペレット状に成形された例Kの排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物)を得た。
<触媒の評価>
例G〜例Kの各排ガス浄化用触媒を例D〜例Fの場合と同じ評価条件において評価し、HCの浄化率が50%になる温度(HC50%浄化温度)を調べた。その結果を図3に示す。
図3は、例G〜例Kの各排ガス浄化用触媒におけるHC50%浄化温度を示すグラフである。なお、参考として、図2と同様に触媒担体としてのセリア−ジルコニア複合酸化物(CZ:CeO2−ZrO2)粉末にパラジウム(Pd)を含浸担持したPd/CZ触媒(Pd担持量:0.5質量%、1質量%及び2質量%)に関するHC50%浄化温度を図中に示している。
図3を参照すると、クエン酸合成法を利用して複合酸化物の前駆体を調製しそして仮焼後でかつ本焼成前にPdを含浸担持した例Gの排ガス浄化用触媒(Pd/Co−Cu複合酸化物、Pd担持量0.5質量%)において最も高いHC酸化活性を示し、4倍のPd担持量を有する従来のPd/CZ触媒(Pd担持量2.0質量%)と比較しても優れたHC酸化活性を達成することができた。また、共沈合成法を利用して複合酸化物の前駆体を調製し同様に仮焼後でかつ本焼成前にPdを含浸担持した例Hの排ガス浄化用触媒においても、従来のPd/CZ触媒(Pd担持量2.0質量%)に比べて高いHC酸化活性を達成することができた。
なお、例Gの排ガス浄化用触媒において例Hの排ガス浄化用触媒よりも高い触媒活性が得られたのは、表1及び2に示すようにCo−Cu複合酸化物自体の触媒活性が共沈合成法よりもクエン酸合成法によって製造した場合に高いことに起因するものと考えられる。また、クエン酸合成法を利用して複合酸化物の前駆体を調製しそして本焼成後にPdを含浸担持した例Iの排ガス浄化用触媒においても、従来のPd/CZ触媒(Pd担持量2.0質量%)に比べて高いHC酸化活性を達成できた。しかしながら、例Gの排ガス浄化用触媒と比べるとそのHC酸化活性は低下した。これは、例Iの排ガス浄化用触媒では、例Gの排ガス浄化用触媒と比較してCo−Cu複合酸化物に対するPdの分散性が低いことに起因するものと考えられる。また、前駆体調製時や乾燥処理後にPdを含浸担持した例J及びKの排ガス浄化用触媒では、同じPd担持量のPd/CZ触媒と比較すると高いHC酸化活性を示したものの、本発明の例G及びHの排ガス浄化用触媒と比較した場合にはその活性は大きく低下した。
次に、本発明の例Gの排ガス浄化用触媒について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定を行った。その結果を図4に示す。図4を参照すると、約10nm以下、特には約5nm又はそれよりも小さい平均粒径を有する非常に微細なPd粒子が高分散にCo−Cu複合酸化物上に担持されていることがわかる。なお、特に図示していないが、本焼成後にPdを含浸担持した例I及び乾燥処理後にPdを含浸担持した例Kの各排ガス浄化用触媒についても同様にTEM観察を行った。その結果によると、これらの排ガス浄化用触媒では、図4の場合とは異なり、Pd粒子の存在を必ずしも明確には確認することができず、確認できたものについてもシンタリングや凝集によると思われる数十nmの非常に大きな粒子の存在が観察された。

Claims (15)

  1. コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物上に0nm超10nm以下の平均粒径を有する貴金属粒子を複数担持してなることを特徴とする、排ガス浄化用触媒。
  2. 前記添加金属元素が、前記複合酸化物をリートベルト解析法によって解析したときに、前記添加金属元素を含有しないコバルト含有酸化物と比較して、前記複合酸化物のスピネル型構造におけるMTET−O結合の距離を伸張させ、及び/又は前記複合酸化物のスピネル型構造におけるMOCT−O結合の距離を収縮させるようなものであることを特徴とする、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
  3. 前記添加金属元素が、銅、銀、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
  4. 前記添加金属元素が銅であることを特徴とする、請求項3に記載の排ガス浄化用触媒。
  5. 前記貴金属粒子の平均粒径が0nm超5nm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
  6. 前記貴金属が、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、金、銀、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の排ガス浄化用触媒。
  7. 前記貴金属が、パラジウム、白金、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項6に記載の排ガス浄化用触媒。
  8. コバルトと該コバルトとは異なる添加金属元素とを含みかつスピネル型構造を有する複合酸化物の前駆体を形成する工程、
    前記前駆体を仮焼して複合酸化物を形成する仮焼工程、並びに
    前記複合酸化物に貴金属含有溶液を含浸させ、前記仮焼工程よりも高い温度で本焼成する本焼成工程
    を含むことを特徴とする、排ガス浄化用触媒の製造方法。
  9. 前記添加金属元素が、前記複合酸化物をリートベルト解析法によって解析したときに、前記添加金属元素を含有しないコバルト含有酸化物と比較して、前記複合酸化物のスピネル型構造におけるMTET−O結合の距離を伸張させ、及び/又は前記複合酸化物のスピネル型構造におけるMOCT−O結合の距離を収縮させるようなものであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  10. 前記添加金属元素が、銅、銀、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記添加金属元素が銅であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
  12. 前記前駆体が、コバルト塩、添加金属元素の塩、錯化剤、及び1つ又は複数の溶媒を含有する混合溶液を加熱することによって形成され、前記錯化剤が少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのカルボキシル基を有する有機酸であることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記混合溶液が多価アルコールをさらに含有することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
  14. 前記前駆体が共沈合成法によって形成されることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記仮焼工程が200℃以上500℃以下の温度で実施されることを特徴とする、請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法。
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