JP2014234330A - 多孔質酸化亜鉛単結晶及び同単結晶を使用するデバイス - Google Patents
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Abstract
【課題】高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料を提供する。【解決手段】酸化亜鉛を主成分として含んでなる単結晶の内部に複数の気孔を導入し、多孔質酸化亜鉛単結晶とする。前記気孔の平均径は0.01μm以上且つ1μm以下とし、真密度Dr及び嵩密度Dbに基づいて式P=(1−Db/Dr)?100によって規定される気孔率P[%]を1%以上且つ40%以下とする。【選択図】なし
Description
本発明は、酸化亜鉛単結晶に関する。より具体的には、本発明は、多孔質酸化亜鉛単結晶に関する。更に、本発明は、同単結晶を使用する熱電変換素子、発光素子、光センサー等のデバイスにも関する。
酸化亜鉛(ZnO)は、3.3乃至3.4eV程度のバンドギャップを有する半導体材料であり、埋蔵量が豊富で安価な材料として知られており、その半導体特性を利用した熱電変換素子、各種発光素子、各種センサー等への応用が検討されている。
熱電発電デバイスは、従来の発電技術に比べて、例えば、構造が簡単で、堅牢であり、耐久性が高く、可動部材が存在せず、小型化(マイクロ化)が容易であり、メンテナンス不要で信頼性が高く、寿命が長く、騒音及び汚染が発生せず、低温の廃熱を利用可能である等、多くの利点がある。そのため、熱電発電デバイスは、例えば、体温で作動する腕時計、僻地用電源、宇宙用電源又は軍事用電源等として、一部で実用化されている。
かかる熱電変換材料の性能を評価する指数としては、下式(1)によって表される無次元性能指数ZTが用いられている。
上式中、Sはゼーベック係数、σは導電率、κは熱伝導率、及びTは絶対温度を表す。熱電発電用の熱電変換素子材料としては、これまで、PbTe系、Bi2Te3系等が使用されているが、発電用の材料としてはコスト及び毒性の面において問題がある。
一方、酸化亜鉛は、上述したような優れた特性に加え、酸化雰囲気下での優れた耐熱性を有する材料であり、熱電変換材料として好適である。熱電変換材料に用いられる亜鉛系材料としては、例えば、Zn1−xAlxO(例えば、特許文献1を参照)、亜鉛酸化物、Ni及びMgを含有する亜鉛系複合酸化物からなる熱電変換材料(例えば、特許文献2を参照)が提案されている。また、当該技術分野においては、配向酸化亜鉛焼結体を使用する熱電変換材料も提案されている(例えば、特許文献2を参照)。実用化できるレベルの熱電変換性能に相当する無次元性能指数ZTの値としては、使用温度にもよるが、理想的には1.0を超えることが望ましいとされている。しかしながら、これらの材料においては現時点では0.3を超える無次元性能指数ZTを達成することも困難であるのが実情である。
一方、酸化亜鉛の単結晶は、酸化亜鉛の焼結体と比べて、キャリアの移動度を高めて、高い導電性を達成することができる。このため、酸化亜鉛単結晶を用いることにより、高い出力因子(S2σ)を達成することが期待される。しかしながら、実際には、導電性の向上に伴って熱伝導率も上昇するため、無次元性能指数ZTが向上しないという問題がある。従って、熱電変換性能を向上させるためには、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料が必要とされている。
また、上述したような優れた特性を有する酸化亜鉛は、各種発光素子及び各種センサーにおいて用いられる材料として期待される材料である。但し、各種発光素子においては、透光性及び光散乱性を有する単結晶基板が必要とされている。更に、例えば、紫外線(UV)センサー等の各種センサーにおいても同様の高い品質を有する単結晶が必要とされている。
以上のように、当該技術分野においては、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料に対する要求が存在する。また、透光性及び光散乱性を有する酸化亜鉛材料は、各種発光素子及び各種センサーにおいて用いられる材料として期待される。
上述のように、当該技術分野においては、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料に対する要求が存在する。本発明は、かかる要求に応えるために為されたものである。即ち、本発明は、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料を提供することを1つの目的とする。また、透光性及び光散乱性を有する酸化亜鉛材料を提供することをもう1つの目的とする。
本発明の上記目的は、
酸化亜鉛を主成分として含んでなる単結晶であって、
内部に複数の気孔を含んでなり、
前記気孔の平均径が0.01μm以上且つ1μm以下であり、
下式(2)によって規定される気孔率P[%]が1%以上且つ40%以下であり、
酸化亜鉛を主成分として含んでなる単結晶であって、
内部に複数の気孔を含んでなり、
前記気孔の平均径が0.01μm以上且つ1μm以下であり、
下式(2)によって規定される気孔率P[%]が1%以上且つ40%以下であり、
上式中、Drは真密度、Dbは嵩密度を表す、
多孔質酸化亜鉛単結晶によって達成される。
多孔質酸化亜鉛単結晶によって達成される。
本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶によれば、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料を提供することができる。また、透光性及び光散乱性を有する酸化亜鉛材料を提供することができる。
前述のように、当該技術分野においては、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料に対する要求が存在する。加えて、透光性及び光散乱性を有する酸化亜鉛材料に対する要求が存在する。本発明は、かかる要求に応えるために為されたものである。即ち、本発明は、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料を提供することを1つの目的とする。また、透光性及び光散乱性を有する酸化亜鉛材料を提供することをもう1つの目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、酸化亜鉛を主成分として含んでなる単結晶の内部に所定の大きさを有する複数の気孔を導入し、当該単結晶の気孔率を所定の範囲に収めることにより、所望の特性を備える酸化亜鉛材料を提供することができることを見出し、本発明を想到するに至ったものである。
即ち、本発明の第1の実施態様は、
酸化亜鉛を主成分として含んでなる単結晶であって、
内部に複数の気孔を含んでなり、
前記気孔の平均径が0.01μm以上且つ1μm以下であり、
下式(2)によって規定される気孔率P[%]が1%以上且つ40%以下であり、
酸化亜鉛を主成分として含んでなる単結晶であって、
内部に複数の気孔を含んでなり、
前記気孔の平均径が0.01μm以上且つ1μm以下であり、
下式(2)によって規定される気孔率P[%]が1%以上且つ40%以下であり、
上式中、Drは真密度、Dbは嵩密度を表す、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
上記のように、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、酸化亜鉛(ZnO)を主成分として含んでなる。これにより、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、高い導電性を達成することができる。尚、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、本発明の目的を達成することが可能である限りにおいて、酸化亜鉛(ZnO)以外の副成分、不純物等を含んでいてもよい。
また、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、内部に複数の気孔を含んでなる。更に、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶においては、前記気孔の平均径が0.01μm以上且つ1μm以下であり、上記式(2)によって規定される気孔率P[%]が1%以上且つ40%以下である。これにより、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、低い熱伝導率を達成することができる。加えて、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、透光性及び光散乱性を発揮することができる。
真密度Drは、例えば、市販の酸化亜鉛単結晶試料の密度を、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)によって測定することにより求めることができる。嵩密度Dbもまた、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の密度を、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)によって測定することにより求めることができる。但し、真密度Drの測定方法は上記に限定されるものではない。例えば、市販のノンドープ酸化亜鉛単結晶試料の試料寸法と重量とを測定した結果に基づき、真密度Drを算出してもよい。
尚、上述したように、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶において、気孔率Pは1%以上且つ40%以下であることが望ましい。気孔率Pが1%未満であると、気孔の導入による熱伝導率の低減効果が殆ど認められないので望ましくない。逆に、気孔率Pが40%を超えると、多孔質酸化亜鉛単結晶の機械的強度が低下するので望ましくない。
本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に含まれる気孔の平均径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)等により結晶の断面を観察し、観察された複数の気孔の直径を平均することにより測定することができる。また、観察される気孔の断面形状が真円でない場合は、例えば、気孔の断面形状の等価円直径を平均径として求めたり、長辺と短辺との平均値を平均径として求めたりすることができる。
尚、上述したように、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に含まれる気孔の平均径は0.01μm以上且つ1μm以下であることが望ましい。気孔の平均径が0.01μm未満であると、気孔の導入による熱伝導率の低減効果及び光散乱性が殆ど認められないので望ましくない。逆に、気孔の平均径が1μmを超えると、多孔質酸化亜鉛単結晶の導電率が低下したり、光散乱性が低下したりするので望ましくない。
尚、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法は特に限定されるものではなく、また具体的な手法については後に詳述するので、ここで詳細な説明を割愛するが、一例としては、例えば、固相エピタキシャル成長法を挙げることができる。例えば、エアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)等の粉末法、液相析出法、ディッピング法、スピンコーティング法等の溶液法、物理蒸着(PVD)法、及び化学蒸着(CVD)法等の種々の方法から選ばれる何れかの成膜法により酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質を主成分として含んでなる膜を種基板の表面上に形成し、斯くして種基板の表面上に形成された膜を加熱して、固相エピタキシャル成長法によって単結晶を成長させることにより、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を製造することができる。
また、例えば、上記加熱処理の際に昇華及び/又は熱分解等によって一部又は全てが揮発する添加物を上記膜中に混入させたり、並びに/あるいは上記加熱処理の際に反応して揮発する反応生成物を生ずる添加物を上記膜中に混入させたりすることができる。加熱処理の際に反応して揮発する反応生成物を生ずる添加物としては、例えば、加熱処理の際に添加物同士が反応するもの、上記膜の主成分である酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質と反応して揮発する反応生成物を生じるものを挙げることができる。これらの添加物の大きさ及び/又は含有量を制御することにより、加熱処理後の結晶内部に所望の気孔を含ませることができる。
また、成膜方法によっては、上記膜中に所望の大きさの気孔を適宜導入することができる。膜中に導入した気孔の平均径及び/又は気孔率を制御することにより、加熱処理後の結晶内部にも所望の気孔を含ませることができる。
また、成膜方法によっては、上記膜中に所望の大きさの気孔を適宜導入することができる。膜中に導入した気孔の平均径及び/又は気孔率を制御することにより、加熱処理後の結晶内部にも所望の気孔を含ませることができる。
ところで、冒頭に述べたように、酸化亜鉛(ZnO)は、3.3乃至3.4eV程度のバンドギャップを有する半導体材料であり、その半導体特性を利用した熱電変換素子、各種発光素子、各種センサー等への応用が検討されている。この際、例えば、n型ドーパント、p型ドーパント等のドーパントを本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶にドーピングしてもよい。これにより、例えば、導電性等の電気特性を調整することができる。
即ち、本発明の第2の実施態様は、
本発明の前記第1の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
n型ドーパント及びp型ドーパントの何れか一方又は両方がドーピングされた、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
本発明の前記第1の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
n型ドーパント及びp型ドーパントの何れか一方又は両方がドーピングされた、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
上記のように、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶には、n型ドーパント及びp型ドーパントの何れか一方又は両方がドーピングされる。より具体的には、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶には、n型ドーパント及びp型ドーパントの何れか一方のみがドーピングされていてもよく、あるいはこれらの両方がドーピングされていてもよい。後者の場合、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、例えば、n型ドーパント及びp型ドーパントの何れか一方のドーパントのみがドーピングされた多孔質酸化亜鉛単結晶からなる部分と、他方のドーパントのみがドーピングされた多孔質酸化亜鉛単結晶からなる部分と、を含んでいてもよい。
ところで、上記n型ドーパント及びp型ドーパントとして本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶にドーピングされる物質は特に限定されない。n型ドーパントの具体例としては、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、硼素(B)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びシリコン(Si)からなる群から選択される少なくとも1種以上を挙げることができる。また、p型ドーパントの具体例としては、例えば、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、カーボン(C)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群から選択される少なくとも1種以上を挙げることができる。
即ち、本発明の第3の実施態様は、
本発明の前記第2の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記n型ドーパントが、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、硼素(B)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びシリコン(Si)からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
本発明の前記第2の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記n型ドーパントが、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、硼素(B)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びシリコン(Si)からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
また、本発明の第4の実施態様は、
本発明の前記第2の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記p型ドーパントが、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、カーボン(C)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
本発明の前記第2の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記p型ドーパントが、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、カーボン(C)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群から選択される少なくとも1種以上の元素である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
これらの中では、n型ドーパントとしてアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、硼素(B)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びシリコン(Si)が望ましく、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)が特に望ましい。尚、例えば高い導電性(低い電気抵抗)等、目的とする所望の特性を得るためには、これらのドーパントの含有率は0.02at%以上、より好ましくは0.1at%以上であることが望ましい。
ところで、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の結晶格子に酸素欠陥を導入することにより、熱伝導率を更に低減することができる。
従って、本発明の第5の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第4の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記単結晶に酸素欠陥が導入されている、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
本発明の前記第1乃至前記第4の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記単結晶に酸素欠陥が導入されている、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
上記のように、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶においては、酸素欠陥の導入によって熱伝導率を更に低減することができるので、例えば、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子において、熱電変換性能を更に高めることができる。尚、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入するための具体的な方法は特に限定されないが、例えば、単結晶化のための加熱処理の際に酸化亜鉛(ZnO)中の酸素と反応して酸化亜鉛(ZnO)の結晶格子から酸素を奪うことができる添加物(例えば、カーボンブラック等のカーボン粒子、有機物粒子等)を酸化亜鉛(ZnO)の単結晶の材料に混入させることにより、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入することができる。あるいは、単結晶化のための加熱処理を還元雰囲気中(例えば、水素又はアンモニア等を含むガス中)にて実行することにより、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入してもよい。あるいは、還元雰囲気中(例えば、水素又はアンモニア等を含むガス中)で加熱処理して酸素欠陥を予め導入した酸化亜鉛含有原料を用いて成膜し、単結晶化のための加熱処理を行ってもよい。
尚、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶における酸素欠陥の導入率としては、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を組成式ZnOxによって表す場合、xが0.5以上且つ0.98未満となるように制御することが望ましい。xが0.98以上では、酸素欠陥の導入率が低すぎるため、熱伝導率の低減効果を十分に達成することができないので望ましくない。逆に、xが0.5未満では、酸素欠陥の導入率が高すぎ、熱伝導率が却って増大してしまうので望ましくない。尚、上記のように酸素欠陥の導入によって熱伝導率が低下するメカニズムは不明である。また、その導入率が過大である場合に熱伝導率が増大するメカニズムも不明だが、この場合は結晶格子を構成しない亜鉛原子(Zn)が増大することが影響しているものと推定される。
ところで、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入すると、上記のように熱伝導率を低減する効果のみならず、n型キャリアの増大という効果もまた得ることができる。従って、例えば、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶にn型ドーパントがドーピングされている場合、酸素欠陥の導入に伴うn型キャリアの増大により、導電性を更に高めることもできる。
ところで、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の結晶格子を構成する全ての金属元素が必ずしも亜鉛(Zn)である必要は無い。換言すれば、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶において、結晶格子を構成する金属元素の一部が亜鉛(Zn)以外の金属元素に置き換わっていてもよい。即ち、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、酸化亜鉛(ZnO)と他の金属酸化物との混晶であってもよい。
従って、本発明の第5の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第5の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記単結晶が、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カドミウム(CdO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、及び酸化銅(CuO)から選ばれる1種以上の化合物と酸化亜鉛(ZnO)との混晶である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
本発明の前記第1乃至前記第5の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記単結晶が、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カドミウム(CdO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、及び酸化銅(CuO)から選ばれる1種以上の化合物と酸化亜鉛(ZnO)との混晶である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
上記のように、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の結晶格子を構成する金属元素の一部は亜鉛(Zn)以外の金属元素に置き換わっている。これにより、例えば、用途に応じたバンドギャップの調整等を容易に行うことができる。尚、上記化合物の少なくとも1種と酸化亜鉛(ZnO)との混晶は、例えば、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の主成分たる酸化亜鉛(ZnO)及び/又は酸化亜鉛(ZnO)の前駆物質を主成分として含んでなる膜を形成する材料に、混晶を形成させようとする上記化合物の少なくとも1種を混入させることによって得ることができる。
ところで、冒頭において述べたように、当該技術分野においては、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料に対する要求が存在する。例えば、熱電変換素子における用途においては、かかる酸化亜鉛材料の25℃における導電率は100S/cm以上であることが望ましい。
従って、本発明の第7の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第6の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
25℃における導電率が100S/cm以上である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
本発明の前記第1乃至前記第6の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
25℃における導電率が100S/cm以上である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
上記のように、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の25℃における導電率は100S/cm以上である。これにより、例えば、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子において、優れた熱電変換性能を発揮することができる。逆に、25℃における導電率が100S/cm未満であると、例えば、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子において、十分な熱電変換性能を発揮することができないので望ましくない。本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の25℃における導電率は、好ましくは1000S/cm以上、より好ましくは1800S/cm以上であることが望ましい。25℃の導電率が上記の範囲となる多孔質酸化亜鉛単結晶を用いることにより、広い温度範囲、例えば100〜1100℃において良好な熱電特性を得ることができる。
また、冒頭において述べたように、当該技術分野においては、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料に対する要求が存在する。例えば、熱電変換素子等における用途においては、かかる酸化亜鉛材料の25℃における熱伝導率は30W/(m・K)以下であることが望ましい。
従って、本発明の第8の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第7の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
25℃における熱伝導率が30W/(m・K)以下である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
本発明の前記第1乃至前記第7の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
25℃における熱伝導率が30W/(m・K)以下である、
多孔質酸化亜鉛単結晶である。
上記のように、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の25℃における熱伝導率は30W/(m・K)以下である。これにより、例えば、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子において、優れた熱電変換性能を発揮することができる。逆に、25℃における熱伝導率が30W/(m・K)よりも大きいと、例えば、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子において、十分な熱電変換性能を発揮することができないので望ましくない。本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の25℃における熱伝導率は、好ましくは20W/(m・K)以下、より好ましくは10W/(m・K)以下であることが望ましい。25℃の熱伝導率が上記の範囲となる多孔質酸化亜鉛単結晶を用いることにより、広い温度範囲、例えば100〜1100℃において良好な熱電特性を得ることができる。
ところで、冒頭で述べたように、当該技術分野においては、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができ、並びに/又は透光性及び光散乱性を達成することができる酸化亜鉛材料が、熱電変換素子、各種発光素子、及び各種センサーにおいて用いられる材料として期待されている。従って、本発明の上述した種々の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子もまた、本発明の1つの実施態様として含まれる。
即ち、本発明の第9の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第8の何れか1項に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する、熱電変換素子である。
本発明の前記第1乃至前記第8の何れか1項に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する、熱電変換素子である。
これまで説明してきたように、本発明の上述した種々の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料である。従って、かかる多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子は、優れた熱電変換性能を発揮することができる。
尚、前述したように、当該技術分野において、かかる熱電変換材料の熱電変換性能を評価する指数として、下式(1)によって表される無次元性能指数ZTが用いられている。下式中、Sはゼーベック係数、σは導電率、κは熱伝導率、及びTは絶対温度を表す。
前述したように、実用化できるレベルの熱電変換性能に想到する無次元性能指数ZTの値としては、理想的には1.0を超えることが望ましいとされているが、酸化亜鉛系材料においては現時点では0.3を超える無次元性能指数ZTを達成することも困難であるのが実情である。しかしながら、上述してきたように、本発明の種々の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる酸化亜鉛材料である。このため、本発明の種々の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子においては、従来達成することが困難であった、より高いレベルの無次元性能指数ZTを達成することができる。
上記のように、本実施態様に係る熱電変換素子は、本発明の種々の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する。これらの多孔質酸化亜鉛単結晶は、上述してきたように、高い導電性を達成すると同時に低い熱伝導率を達成することができる。その結果、本実施態様に係る熱電変換素子は、酸化亜鉛系材料において従来達成することが困難であった、より高いレベルの無次元性能指数ZTを達成することができる。従って、本実施態様に係る熱電変換素子は、従来技術に係る酸化亜鉛材料を使用する熱電変換素子と比較して、より高い熱電変換性能を発揮することができる。
ところで、前述したように、本発明の種々の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、その結晶の内部に含む複数の気孔の平均径及びその結晶における気孔率が所定の数値範囲に入る。具体的には、本発明の種々の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶においては、気孔の平均径が0.01μm以上且つ1μm以下であり、下式(2)によって規定される気孔率P[%]が1%以上且つ40%以下である。下式中、Drは真密度、Dbは嵩密度を表す。
このように、本発明の種々の実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、可視光波長以下の長さに相当する平均径を有する気孔をその内部に所定量含む。従って、これらの多孔質酸化亜鉛単結晶は、可視光以下の波長を有する光を適度に散乱させることができる。冒頭において述べたように、かかる材料は、各種発光素子及び各種センサー(特に、紫外線(UV)センサー等の光センサー)において用いられる材料として期待される。
即ち、本発明の第10の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層を含んでなり、光源(例えば発光層)から発した光が当該層を通過するように構成されている、発光素子である。
本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層を含んでなり、光源(例えば発光層)から発した光が当該層を通過するように構成されている、発光素子である。
上記のように、本実施態様に係る発光素子は、本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層を含んでなる。加えて、本実施態様に係る発光素子は、光源(例えば、発光層)から発した光が当該層を通過するように構成されている。即ち、本実施態様に係る発光素子においては、本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層が、例えば、当該発光素子において光源となる構成要素(例えば、発光層)から発した光が当該発光素子の外部に到達するまでの経路の途中に配設される。一方、当該層を構成する本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、上述したように、可視光波長以下の長さに相当する平均径を有する気孔をその内部に所定量含む。従って、これらの多孔質酸化亜鉛単結晶は、可視光以下の波長を有する光を適度に散乱させることができる。その結果、光源となる構成要素(例えば、発光層)から発する光の強度に斑がある場合においても、当該光を適度に散乱させて、当該発光素子から外部に放射される光の強度の斑を低減することができる。
上記のように、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、可視光以下の波長を有する光を適度に散乱させることができる。この光散乱効果は、可視光以下の波長を有する光を受ける素子(例えば、紫外線(UV)センサー等の光センサー)においても有用な効果をもたらす。
即ち、本発明の第11の実施態様は、
本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層を含んでなり、検出対象となる紫外線が当該層に入射するように構成されている、紫外線センサーである。
本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層を含んでなり、検出対象となる紫外線が当該層に入射するように構成されている、紫外線センサーである。
上記のように、本実施態様に係る紫外線センサーは、本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層を含んでなる。加えて、本実施態様に係る紫外線センサーは、検出対象となる紫外線が当該層に入射するように構成されている。即ち、本実施態様に係る紫外線センサーにおいては、本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層が、例えば、検出対象となる紫外線が、少なくとも当該紫外線センサーが備える検出領域付近、及び/又は検出領域に到達するまでの経路の途中に配設される。一方、当該層を構成する本発明の前記第1乃至前記第8の実施態様の何れか1つに係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、上述したように、可視光波長以下の長さに相当する平均径を有する気孔をその内部に所定量含む。従って、これらの多孔質酸化亜鉛単結晶は、可視光以下の波長を有する光を適度に散乱させることができる。その結果、検出領域付近では入射光の強度が均質化され、例えば、当該紫外線センサーの検出感度を高めることができる。
ところで、前述したように、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、固相エピタキシャル成長法等の種々の方法により、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を製造することができる。それぞれの製造方法の一例を以下に列挙する。
《製造方法1》
例えば、エアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)等の粉末法によって酸化亜鉛単結晶種基板上に酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質からなる膜を成膜し、例えば、大気中、不活性雰囲気中、又は真空中にて、赤外線ランプ等の熱源を用いて、上記種基板の側から上記膜を加熱(一方向加熱)することにより単結晶化させて、酸化亜鉛単結晶を得ることができる。
例えば、エアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)等の粉末法によって酸化亜鉛単結晶種基板上に酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質からなる膜を成膜し、例えば、大気中、不活性雰囲気中、又は真空中にて、赤外線ランプ等の熱源を用いて、上記種基板の側から上記膜を加熱(一方向加熱)することにより単結晶化させて、酸化亜鉛単結晶を得ることができる。
上記方法においては、例えば、上記加熱処理の際に昇華及び/又は熱分解等によって一部又は全てが揮発する添加物を上記膜中に混入させたり、並びに/あるいは上記加熱処理の際に反応して揮発する反応生成物を生ずる添加物を上記膜中に混入させたりすることにより、結果として得られる酸化亜鉛単結晶を多孔質とすることができる。加熱処理の際に反応して揮発する反応生成物を生ずる添加物としては、例えば、加熱処理の際に添加物同士が反応するもの、上記膜の主成分である酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質と反応して揮発する反応生成物を生じるものを挙げることができる。上記添加物の大きさ及び添加量は、所望の気孔の平均径及び気孔率に対応して適宜選択することができる。例えば、加熱処理の際に昇華及び/又は熱分解する添加物の場合、平均径は0.1μm以上且つ1μm以下、添加量は1〜40体積%とすることができる。加熱処理の際に反応して揮発する反応生成物を生ずる添加物の場合においても、加熱中の反応の結果として形成される気孔の平均径等に基づいて添加物の大きさ及び/又は添加量を制御することができる。
また、上記添加物は、単結晶化温度(例えば、1100〜1400℃)付近、又はそれ以下の温度において一部又は全てが揮発する添加物あるいは添加物同士の反応及び/又は上記膜の主成分である酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質との反応により上記加熱時に揮発(蒸発又は昇華)する反応生成物を生ずる添加物であれば特に限定されない。かかる添加剤の具体例としては、例えば、単結晶化温度以下の沸点(昇華点)を有する金属粒子(例えば、Mg、Al、Ga、In、Sn等)、カーボンブラック等のカーボン粒子、有機物粒子、少なくとも亜鉛を含有する水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の各種塩、及びそれらの水和物等を挙げることができる。ここで有機物粒子の材質は単結晶化温度以下で燃焼、熱分解、昇華等により揮発する反応生成物を生じるものであれば特に限定は無く、メチルセルロース、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、メラミン等の炭水化物、樹脂、ポリマー等としてもよい。また、かかる添加剤を2種類以上組み合わせて使用してもよい。
上記のように単結晶化温度(例えば、1100〜1400℃)以下で揮発する添加物の更なる具体例としては、例えば、氷を挙げることができる。この場合、例えば、液体窒素冷却装置等によってAD法による成膜(AD成膜)時の基板の周囲温度を0℃以下に保ちつつ、湿度が10%以上の室温大気をキャリアガスとして使用してAD成膜する。これにより、AD成膜された膜(AD膜)を構成する粒子の界面に微小な(例えば、平均径≦1μm以下。以降「ナノサイズ」と称する場合がある)の氷が析出する。その後、単結晶化の際に0℃以上に昇温することにより当該添加物としての氷が昇華し、AD膜中にナノサイズの気孔が形成され、単結晶化後も当該気孔が残留する。
成膜方法によっては、上記膜中に所望の大きさの気孔を適宜導入することができ、結果として得られる酸化亜鉛単結晶を多孔質とすることができる。例えばAD成膜等の粉末法によって種基板上に成膜される膜の原料粉末として、例えば、0.1〜2μmの1次粒径を有する粒子が凝集してなる1〜10μmの2次粒径を有する凝集粒子を主成分として含んでなる酸化亜鉛(若しくは、その前駆物質)を用いることにより、AD膜中にナノサイズの気孔が導入され、単結晶化後にもそれらの気孔が残留する。
加熱方法によっては、結果として得られる酸化亜鉛単結晶を多孔質とすることができる。例えば、粉末法によって成膜された膜(例えば、AD膜)を大気炉熱処理(1150〜1450℃×10分〜5時間)によって上記膜を均質加熱することにより、ナノサイズの閉気孔を残留させつつ単結晶化することができる。
《製造方法2》
この場合は、溶液法にて酸化亜鉛前駆物質膜を成膜する。溶液法の具体例としては、例えば、液相析出法、ディッピング法、スピンコーティング法等を挙げることができる。その後、例えば、大気中、不活性雰囲気中、又は真空中における赤外線ランプによる一方向加熱により単結晶を得ることができる。酸化亜鉛前駆物質として、加熱によって脱ガスしつつ酸化亜鉛となる化合物を採用することにより、脱ガスした部分がナノサイズの気孔として、単結晶化後もそれらの気孔を残留させることができる。
この場合は、溶液法にて酸化亜鉛前駆物質膜を成膜する。溶液法の具体例としては、例えば、液相析出法、ディッピング法、スピンコーティング法等を挙げることができる。その後、例えば、大気中、不活性雰囲気中、又は真空中における赤外線ランプによる一方向加熱により単結晶を得ることができる。酸化亜鉛前駆物質として、加熱によって脱ガスしつつ酸化亜鉛となる化合物を採用することにより、脱ガスした部分がナノサイズの気孔として、単結晶化後もそれらの気孔を残留させることができる。
《製造方法3》
また、前述したように、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入することにより、熱伝導率を更に低減してもよい。これにより、例えば、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子において、熱電変換性能を更に高めることができる。尚、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入するための具体的な方法は特に限定されないが、例えば、上述した固相エピタキシャル成長法による単結晶化のための加熱処理の際に酸化亜鉛(ZnO)中の酸素と反応して酸化亜鉛(ZnO)の結晶格子から酸素を奪うことができる添加物(例えば、カーボンブラック等のカーボン粒子、有機物粒子等)を酸化亜鉛(ZnO)の単結晶の材料に混入させることにより、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入することができる。
また、前述したように、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入することにより、熱伝導率を更に低減してもよい。これにより、例えば、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する熱電変換素子において、熱電変換性能を更に高めることができる。尚、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入するための具体的な方法は特に限定されないが、例えば、上述した固相エピタキシャル成長法による単結晶化のための加熱処理の際に酸化亜鉛(ZnO)中の酸素と反応して酸化亜鉛(ZnO)の結晶格子から酸素を奪うことができる添加物(例えば、カーボンブラック等のカーボン粒子、有機物粒子等)を酸化亜鉛(ZnO)の単結晶の材料に混入させることにより、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入することができる。
あるいは、単結晶化のための加熱処理を還元雰囲気中(例えば、水素又はアンモニア等を含むガス中)にて実行することにより、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶に酸素欠陥を導入してもよい。更に、上述した粉末法による成膜に使用する原料を還元雰囲気中(例えば、水素又はアンモニア等を含むガス中)で例えば500〜1000℃の温度にて熱処理することにより酸素欠陥を有する酸化亜鉛粒子を得て、斯くして得られた酸化亜鉛粒子を粉末法による成膜に使用してもよい。
以上のように、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は種々の製造方法によって製造することができる。それらの中で、より好ましい実施形態につき、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法として、以下に改めて列挙する。
先ず、本発明の第12の実施態様は、
酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質を主成分として含んでなる膜を種基板の表面上に形成する成膜ステップ、及び
前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱して単結晶を得る加熱ステップ、
を含む多孔質酸化亜鉛単結晶製造方法であって、
前記成膜ステップにおいて形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における厚みである膜厚が100μm以下であること、
前記加熱ステップにおいて前記膜が前記種基板の側から加熱されること、
前記加熱ステップにおける前記膜の昇温速度が30℃/分以上であること、並びに
前記加熱ステップにおいて揮発する添加物を前記膜が含んでなるか、及び/又は前記加熱ステップにおいて反応して揮発する反応生成物を生ずる添加物を前記膜が含んでなるか、及び/又は前記膜に気孔が導入されていること、
を特徴とする多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法である。
酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質を主成分として含んでなる膜を種基板の表面上に形成する成膜ステップ、及び
前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱して単結晶を得る加熱ステップ、
を含む多孔質酸化亜鉛単結晶製造方法であって、
前記成膜ステップにおいて形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における厚みである膜厚が100μm以下であること、
前記加熱ステップにおいて前記膜が前記種基板の側から加熱されること、
前記加熱ステップにおける前記膜の昇温速度が30℃/分以上であること、並びに
前記加熱ステップにおいて揮発する添加物を前記膜が含んでなるか、及び/又は前記加熱ステップにおいて反応して揮発する反応生成物を生ずる添加物を前記膜が含んでなるか、及び/又は前記膜に気孔が導入されていること、
を特徴とする多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法である。
上記のように、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法においては、先ずは所定値以下の厚みを有する膜を種基板上に成膜し、斯くして得られた膜を種基板側から所定値以上の昇温速度にて加熱する。具体的には、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法においては、上述のように、先ず成膜ステップにおいて、種基板の表面に直交する方向における厚みである膜厚が100μm以下である膜を種基板の表面上に形成し、次に加熱ステップにおいて、種基板の表面上に形成された膜を種基板の側から加熱して、30℃/分以上の昇温速度にて膜を昇温させる。本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法においては、前記膜が、加熱ステップにおいて揮発する添加物を含んでなるか、及び/又は加熱ステップにおいて反応し、揮発する反応生成物を生ずる添加物を含んでなるか、及び/又は膜中に気孔が導入されているか、により、気孔率及び気孔の平均径を制御しつつ高品質な単結晶を高い生産性にて作製することができる。尚、本実施態様に係る単結晶製造方法によって単結晶を得る物質の主成分は、酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質である。また、前述したように、加熱ステップにおいて反応し、揮発する反応生成物を生ずる添加物は、加熱処理の際に添加物同士が反応するものであってもよく、上記膜の主成分である酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質と反応して揮発する反応生成物を生じるものであってもよい。
ところで、上記のように所定値以下の厚みを有する膜を所定値以上の昇温速度にて加熱することにより、単結晶が得られる詳細なメカニズムについては未だ解明されていない。しかしながら、上記のように所定値以下の厚みを有する膜を所定値以上の昇温速度にて加熱することにより、膜内に適度な温度勾配が生じ、膜内の粒成長を抑えつつ膜と種基板との界面から固相成長が順次進むため、高品質な単結晶を得ることができるものと考えられる。
尚、本実施態様に係る単結晶製造方法に含まれる成膜ステップにおいて種基板の表面上に形成される膜の(種基板の表面に直交する方向における厚みである)膜厚は100μm以下であることが望ましく、より好ましくは30μm以下であることが望ましい。また、本実施態様に係る単結晶製造方法に含まれる加熱ステップにおける膜の昇温速度は30℃/分以上であることが望ましく、より好ましくは300℃/分以上であることが望ましい。
更に、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法に含まれる成膜ステップにおいて種基板の表面上に膜を形成する方法は、種基板との良好な密着性を有し且つ膜内に所望の気孔以外の意図せぬ気孔を含まない膜を種基板上に形成することが可能である限り、特に限定されるものではない。具体的には、本発明に係る単結晶製造方法に含まれる成膜ステップにおいては、例えば、対象となる基板等に向けて粉末を噴射して当該基板上に当該粉体を固化させることにより成膜する粉末法、原料となる酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質を含む溶液を対象となる基板上に塗布したり、かかる溶液から酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質を析出させたりすることにより成膜する溶液法、物理蒸着(PVD)法、及び化学蒸着(CVD)法からなる群より選ばれる何れの方法によって、種基板の表面上に膜を形成してもよい。上記粉末法の具体例としては、例えば、エアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)等を挙げることができる。また、上記溶液法の具体例としては、例えば、液相析出法、ディッピング法、スピンコーティング法等を挙げることができる。更に、上記物理蒸着(PVD)法の具体例としては、例えば、スパッタ法等を挙げることができる。また更に、化学蒸着(CVD)法としては、例えば、ミストCVD法及びレーザーCVD法等を挙げることができる。
上記実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法においては、前記成膜ステップにおいて前記種基板の表面上に前記膜を形成する方法として、粉末法、溶液法、物理蒸着(PVD)法、及び化学蒸着(CVD)法からなる群より選ばれる何れかの方法が採用される。その結果、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法によれば、種基板との良好な密着性を有し且つ膜内に所望の気孔以外の意図せぬ気孔を含まない膜を種基板上に確実に形成することができる。より好ましくは、前記粉末法がエアロゾルデポジション法(AD法)及びパウダージェットデポジション法(PJD法)からなる群より選ばれる何れかの方法であり、前記溶液法が液相析出法、ディッピング法、スピンコーティング法からなる群より選ばれる何れかの方法であり、前記物理蒸着(PVD)法がスパッタ法であり、前記化学蒸着(CVD)法がミストCVD法及びレーザーCVD法からなる群より選ばれる何れかの方法である。尚、上記成膜方法の各々の詳細については当業者に周知であるので、本明細書においては説明を省略する。
ところで、本発明に係る単結晶製造方法に含まれる加熱ステップにおいて膜を加熱する方法は、上述した昇温速度を実現可能である限り、特に限定されるものではない。かかる観点からは、例えば、赤外線ランプ(例えば、近赤外線ランプ等)、各種レーザー(例えば、CO2レーザー、YAGレーザー、エキシマーレーザー、半導体レーザー等)等を熱源とする光加熱、高周波加熱装置等が望ましい。
ところで、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法は、エピタキシャル成長法による多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法であるが、当該製造方法によって作製される単結晶の主成分(即ち、酸化亜鉛)と種基板の主成分とは、同じであっても、あるいは異なっていてもよい。換言すれば、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法は、ホモエピタキシャル成長法であっても、あるいはヘテロエピタキシャル成長法であってもよい。本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法がホモエピタキシャル成長法である場合、当該製造方法によって作製される単結晶の主成分(即ち、酸化亜鉛)と種基板の主成分とは同じである。この場合、例えば、種基板の表面上に形成される膜の主成分は酸化亜鉛(ZnO)であるので、種基板の主成分もまた酸化亜鉛(ZnO)である。一方、本発明に係る加工室酸化亜鉛単結晶の製造方法がヘテロエピタキシャル成長法である場合、当該製造方法によって作製される単結晶の主成分(即ち、酸化亜鉛)と種基板の主成分とは異なる。この場合、例えば、種基板の表面上に形成される膜の主成分は酸化亜鉛(ZnO)であるので、種基板の主成分は酸化亜鉛(ZnO)ではない物質である。尚、種基板の主成分として使用可能な、酸化亜鉛(ZnO)ではない物質の具体例としては、例えば、窒化ガリウム(GaN)、及びサファイアを挙げることができる。また、種基板に酸化亜鉛の種結晶層を成膜した基板を用いてもよい。こうすることにより、例えば、ヘテロエピタキシャル成長させたときに単結晶の結晶性等を向上させることができる。
上記実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法においては、前記種基板の主成分が、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、及びサファイアからなる群より選ばれる何れか1種の材料である。種基板の表面上に形成される膜の主成分は酸化亜鉛(ZnO)であるので、種基板の主成分が酸化亜鉛(ZnO)である場合、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法はホモエピタキシャル成長法となる。一方、種基板の主成分が酸化亜鉛(ZnO)以外である場合、本実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法はヘテロエピタキシャル成長法となる。
ところで、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法は、前述のように、種基板の表面上に膜を形成する成膜ステップにおいて、前記種基板の表面に直交する方向における厚みである膜厚が100μm以下である前記膜を形成し、次いで、前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱して単結晶を得る加熱ステップにおいて、前記膜を前記種基板の側から加熱して、30℃/分以上の昇温速度にて昇温させることにより、所望の気孔以外の意図せぬ気孔を含まない高品質な単結晶を高い生産性にて作製することを可能とする。
即ち、上記のように、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法を1サイクルのみ実行する場合は、得られる単結晶膜の厚みは100μm以下、より好ましくは30μm以下となる。従って、例えば、単結晶ウェハー等、より大きい厚みを有する単結晶を作製しようとする場合には、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法を複数サイクルに亘って繰り返し実行することが必要である。
上記実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法によれば、これまで説明してきた種々の実施態様を始めとする本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法を複数サイクルに亘って繰り返し実行することにより、所望の厚みを有する多孔質酸化亜鉛単結晶を得ることができる。
以下、本発明の幾つかの実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の構成等につき更に詳しく説明する。但し、以下に述べる説明はあくまでも例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されるものと解釈されるべきではない。
1.各種評価用単結晶の作製
(1)種基板及び成膜用原料粉の調製
本実施例においては、何れの実験例についても、ZnO単結晶基板(30mm×30mm平方、厚さ0.5mm、c面)を種基板として用いた。
(1)種基板及び成膜用原料粉の調製
本実施例においては、何れの実験例についても、ZnO単結晶基板(30mm×30mm平方、厚さ0.5mm、c面)を種基板として用いた。
アルミニウム(Al)が固溶している酸化亜鉛(ZnO)を以下のようにして調製した。先ず、酸化亜鉛(ZnO)粉末(体積基準メジアン径(D50)=0.8μm)と酸化アルミニウム(Al2O3)粉末(体積基準D50=0.5μm)とを、アルミニウム(Al)の原子モル比率が0.2at%となるように秤量し、混合した。斯くして得られた混合粉末を、ポットミルにて湿式混合した。このようにして湿式混合した粉末を、大気中で1400℃において5時間に亘って焼成し、アルミニウム(Al)が固溶している酸化亜鉛(ZnO)粉末を合成した。斯くして得られた合成粉末を、体積基準D50が2.6μmとなるように、ポットミル中で、ジルコニアボールを用いて、5時間に亘って湿式粉砕した。
次に、上記のようにして得られた、アルミニウム(Al)が0.2at%固溶している酸化亜鉛(ZnO)に、体積基準メジアン径(D50)=0.4μmの市販のカーボンブラック、又は体積基準メジアン径(D50)=0.3μmの市販のポリメタクリル酸メチル粒子をそれぞれ表1の比率となるように秤量し、混合した。斯くして得られた混合粉末を、ポットミルにて湿式混合させた後、乾燥させ、成膜用原料とした。但し、比較例に係る実験例C1についてはカーボンブラック、ポリメタクリル酸メチル粒子は混合せず、また実施例C3については、カーボンブラック、ポリメタクリル酸メチル粒子に代えて、市販の黒鉛粉末をポットミルにて粉砕して体積基準メジアン径(D50)=1.5μmに調整した黒鉛粉末を表1の比率となるように秤量し、混合した。
(2)成膜ステップ
本実施例においては、何れの実験例についても、図1に示す成膜装置20を使用して、AD法により、上記各種成膜用粉体をそれぞれの種基板上に堆積させた。図1は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法において使用される成膜装置の構成を表す模式図である。この成膜装置20は、原料成分を含む原料粉末のエアロゾルを生成するエアロゾル生成部22と、成膜粉を種基板21に噴射して原料成分を含む膜を形成する成膜部30とを備えている。
本実施例においては、何れの実験例についても、図1に示す成膜装置20を使用して、AD法により、上記各種成膜用粉体をそれぞれの種基板上に堆積させた。図1は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法において使用される成膜装置の構成を表す模式図である。この成膜装置20は、原料成分を含む原料粉末のエアロゾルを生成するエアロゾル生成部22と、成膜粉を種基板21に噴射して原料成分を含む膜を形成する成膜部30とを備えている。
エアロゾル生成部22は、成膜粉12を収容しガスボンベ(図示せず)からのキャリアガス11の供給を受けてエアロゾルを生成するエアロゾル生成室23と、生成したエアロゾルを成膜部30へ供給する原料供給管24と、エアロゾル生成室23及びその中のエアロゾルに10〜100Hzの振動数で振動を付与する加振器25とを備えている。成膜部30は、種基板21にエアロゾルを噴射する成膜チャンバ32と、成膜チャンバ32の内部に配設され種基板21を固定する種基板ホルダ34と、種基板ホルダ34をX軸−Y軸方向に移動するX−Yステージ33とを備えている。また、成膜部30は、先端にスリット37が形成されエアロゾルを種基板21へ噴射する噴射ノズル36と、成膜チャンバ32を減圧する真空ポンプ38とを備えている。
図1に示す成膜装置20においては、窒素(N2)ガスを6L/分の流量にてキャリアガス11として流し、エアロゾル生成室23の圧力は50〜70kPaとし、成膜チャンバ32内の圧力は0.1kPa以下とし、成膜用粉体の噴射ノズル36に備えられたスリット37の開口サイズは30mm×0.8mmとした。また、成膜時のノズルの走査方法としては、35mmの走査距離を、ノズル走査速度1mm/秒にて、成膜と同時に240回走査した。
斯くして得られた各種膜の厚みは、成膜の際に基板の一部にマスキングを施すことにより基板上に成膜部と非成膜部とを形成させ、成膜部と非成膜部との段差を測定することにより膜の厚みを求めた。尚、膜の厚みの測定には、小型形状粗さ測定機(Taylor−Hobson社製、「Form Talysurf plus」)を使用した。各実験例に係る各種膜の厚みもまた表1に列挙した。
(3)加熱ステップ
本実施例においては、何れの実験例についても、図2に示す加熱装置を使用して、上記各種膜を加熱した。図2は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法において使用される加熱装置の構成を表す模式図である。図2に示す加熱装置においては、光加熱のための光源として近赤外線ランプ206を使用した。尚、上記各種膜は近赤外線の吸収係数が低いため、種基板202の膜201が堆積した面とは反対側の面に白金板203を配設し、種基板202の膜201が堆積した面と同じ側から近赤外線を照射して、当該近赤外線を上記白金板203に吸収させることにより、膜201を種基板202側から加熱した。種基板202及び白金板203は石英製台座204上に設置し、熱電対205にて膜201の温度を計測した。
本実施例においては、何れの実験例についても、図2に示す加熱装置を使用して、上記各種膜を加熱した。図2は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法において使用される加熱装置の構成を表す模式図である。図2に示す加熱装置においては、光加熱のための光源として近赤外線ランプ206を使用した。尚、上記各種膜は近赤外線の吸収係数が低いため、種基板202の膜201が堆積した面とは反対側の面に白金板203を配設し、種基板202の膜201が堆積した面と同じ側から近赤外線を照射して、当該近赤外線を上記白金板203に吸収させることにより、膜201を種基板202側から加熱した。種基板202及び白金板203は石英製台座204上に設置し、熱電対205にて膜201の温度を計測した。
尚、何れの実験例についても、大気雰囲気下にて、加熱温度1250℃、昇温速度400℃/分、及び保持時間10分として加熱を行った。但し、本発明に係る実験例E3については、4vol%の水素ガス(H2)を含有するアルゴン(Ar)雰囲気下(即ち、還元雰囲気下)にて加熱を行った。尚、何れの試料においても、加熱ステップの前後での膜厚の変化は認められなかった。
(4)繰り返し
上述した(2)及び(3)の成膜ステップ及び加熱ステップを表1に記載した回数繰り返して、それぞれの実験例に係る単結晶を作製した。得られた単結晶の種基板の表面に直交する方向における厚みもまた表1に記載した。
上述した(2)及び(3)の成膜ステップ及び加熱ステップを表1に記載した回数繰り返して、それぞれの実験例に係る単結晶を作製した。得られた単結晶の種基板の表面に直交する方向における厚みもまた表1に記載した。
2.各種評価用単結晶の評価
(1)面内ロッキングカーブ(XRC)測定
各種評価用単結晶のC面につき、多機能高分解能X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、D8 DISCOVER)を、以下の条件下で使用して、面内ロッキングカーブ(XRC)測定を行った。その結果、何れの実験例に係る単結晶においても(100)ピークが検出され、単結晶が良好に得られたと判断した。
(1)面内ロッキングカーブ(XRC)測定
各種評価用単結晶のC面につき、多機能高分解能X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、D8 DISCOVER)を、以下の条件下で使用して、面内ロッキングカーブ(XRC)測定を行った。その結果、何れの実験例に係る単結晶においても(100)ピークが検出され、単結晶が良好に得られたと判断した。
・管電圧:40kV
・管電流40mA
・アンチスキャッタリングスリット:3°
・ステップ幅:0.001°
・スキャンスピード:0.5秒/ステップ
・入射角:1°
・管電流40mA
・アンチスキャッタリングスリット:3°
・ステップ幅:0.001°
・スキャンスピード:0.5秒/ステップ
・入射角:1°
(2)気孔率の測定
各種評価用単結晶につき、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)を用いて嵩密度を測定し、下式(2)を用いて気孔率P[%]を算出した。下式中、Drは真密度、Dbは嵩密度を表す。尚、真密度については、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)によって測定した市販の酸化亜鉛単結晶試料の密度(5.70g/cm3)を使用した。斯くして得られた各種評価用単結晶の気孔率を表2に示す。
各種評価用単結晶につき、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)を用いて嵩密度を測定し、下式(2)を用いて気孔率P[%]を算出した。下式中、Drは真密度、Dbは嵩密度を表す。尚、真密度については、アルキメデス法(JIS R 1634準拠)によって測定した市販の酸化亜鉛単結晶試料の密度(5.70g/cm3)を使用した。斯くして得られた各種評価用単結晶の気孔率を表2に示す。
(3)気孔の平均径の測定
各種評価用単結晶を切断して断面を作製し、更に鏡面研磨を施した。これらの断面の任意の部分につき、高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S−4700)にて観察を行い、気孔の長辺d1と短辺d2とを測定し、d1及びd2の平均値を気孔径dとして求めた。上記のようにして計50個の気孔について気孔径dを測定し、測定した気孔径dの平均値を試料の各種評価用単結晶の気孔の平均径(平均気孔径)として求めた。斯くして得られた平均気孔径も表2に示す。
各種評価用単結晶を切断して断面を作製し、更に鏡面研磨を施した。これらの断面の任意の部分につき、高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製S−4700)にて観察を行い、気孔の長辺d1と短辺d2とを測定し、d1及びd2の平均値を気孔径dとして求めた。上記のようにして計50個の気孔について気孔径dを測定し、測定した気孔径dの平均値を試料の各種評価用単結晶の気孔の平均径(平均気孔径)として求めた。斯くして得られた平均気孔径も表2に示す。
(4)四探針法による抵抗率測定
各種評価用単結晶につき、25℃にて、低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、ロレスタ−AX、ロレスタ用四探針PSPプローブ(MCP−TP06P))を用いて四探針法による導電率測定を行った。JIS K 7194に概ね準拠して測定を行ったが、電極間隔は1.5mm、試料面積は10mm×10mmとし、測定箇所は試料中央部のみとした。導電率は以下の式(3)に基づいて算出した。
各種評価用単結晶につき、25℃にて、低抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、ロレスタ−AX、ロレスタ用四探針PSPプローブ(MCP−TP06P))を用いて四探針法による導電率測定を行った。JIS K 7194に概ね準拠して測定を行ったが、電極間隔は1.5mm、試料面積は10mm×10mmとし、測定箇所は試料中央部のみとした。導電率は以下の式(3)に基づいて算出した。
上式中、σは導電率[S/cm]、Fは抵抗率補正係数、tは膜厚[cm]、及びRは抵抗[Ω]をそれぞれ表す。尚、抵抗率補正係数Fは、JIS K 7194に記載されている式を用いて計算した。斯くして得られた導電率も表2に示す。
(5)熱伝導率の測定
各種評価用単結晶につき、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(ULVAC理工製、TC−7000)、DSC法(NETZSCH製、DSC404F3 pegasus)を用いて25℃における熱伝導率を求めた(JIS R 1611に準拠)。斯くして得られた熱伝導率もまた表2に示す。
各種評価用単結晶につき、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(ULVAC理工製、TC−7000)、DSC法(NETZSCH製、DSC404F3 pegasus)を用いて25℃における熱伝導率を求めた(JIS R 1611に準拠)。斯くして得られた熱伝導率もまた表2に示す。
3.各種評価用単結晶の評価結果
上記加熱ステップを経た各種評価用試料についての上記評価方法(2)乃至(5)の結果を、以下の表2に列挙する。
上記加熱ステップを経た各種評価用試料についての上記評価方法(2)乃至(5)の結果を、以下の表2に列挙する。
表2に示された評価結果からも明らかであるように、実験例E1乃至E4においては、気孔率が1%以上且つ40%以下であり、平均気孔径が0.01μm以上且つ1μm以下である。即ち、実験例E1乃至E4に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は何れも、本発明の要件を満足している。その結果、これらの多孔質酸化亜鉛単結晶は何れも、非多孔質の比較例である実験例C1に係る酸化亜鉛単結晶と比較して、ほぼ同等の導電率を維持しつつ、低い熱伝導率を達成している。一方、気孔率が1%未満と不十分な実験例C2に係る酸化亜鉛単結晶においては熱伝導率の低減効果が不十分であり、また平均気孔径が1.6μmと過大な実験例C3に係る酸化亜鉛単結晶においては導電率が低下してしまった。
これに対し、本発明に係る各種多孔質酸化亜鉛単結晶の中で更に詳しく検討すると、還元雰囲気下での単結晶化を行った点を除いて実験例E2と全く同じ構成を有する実験例E3は、実験例E2と比較して、導電率の増大及び熱伝導率の低減が認められた。これは、実験例E3においては、還元雰囲気下での単結晶化を行ったため、酸化亜鉛の単結晶中に酸素欠陥が導入された結果であると考えられる。
4.各種評価用単結晶を用いるデバイスの評価
(1)熱電特性評価
上述した各種評価用単結晶から、長さ15mm、幅3mm、厚み3mmの単結晶試料を切り出し、熱電特性評価装置(ULVAC理工製、ZEM−3M10)により、1000℃における電気伝導度及びゼーベック係数を測定した。また、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(ULVAC理工製、TC−7000)、DSC法(NETZSCH製、DSC404F3 pegasus)を用いて1000℃での熱伝導率を測定し、下式(1)に従って無次元性能指数ZTを算出した。下式中、Sはゼーベック係数、σは導電率、κは熱伝導率、及びTは絶対温度を表す。斯くして得られた結果を表3に示す。
(1)熱電特性評価
上述した各種評価用単結晶から、長さ15mm、幅3mm、厚み3mmの単結晶試料を切り出し、熱電特性評価装置(ULVAC理工製、ZEM−3M10)により、1000℃における電気伝導度及びゼーベック係数を測定した。また、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(ULVAC理工製、TC−7000)、DSC法(NETZSCH製、DSC404F3 pegasus)を用いて1000℃での熱伝導率を測定し、下式(1)に従って無次元性能指数ZTを算出した。下式中、Sはゼーベック係数、σは導電率、κは熱伝導率、及びTは絶対温度を表す。斯くして得られた結果を表3に示す。
表3に示された評価結果からも明らかであるように、本発明に係る実験例E1乃至E4においては、1000℃における無次元性能指数ZTが0.3を上回る大きい値を示し、特に実験例E3及びE4においては、熱電変換素子としての実用化の目安となる1.0を超える値を得ることができた。
(2)面発光素子の作製と特性評価
上述した各種評価用単結晶から、30mm角、厚さ0.5mmの単結晶試料を切り出し、当該試料の両面を鏡面研磨して、基板311とした。この基板311の一方(図3に向かって上側)の表面に、n型層312a、多重量子井戸(MQW)構造を有する発光層312b、及びp型層312cからなる発光機能層312を配設し、この発光機能層312の上に電極兼反射層313を形成した。また、基板311の発光機能層312とは反対側の表面に蛍光体層314を形成して、図3に示される面発光素子310を作製した。各層の形成方法は以下の通りである。
上述した各種評価用単結晶から、30mm角、厚さ0.5mmの単結晶試料を切り出し、当該試料の両面を鏡面研磨して、基板311とした。この基板311の一方(図3に向かって上側)の表面に、n型層312a、多重量子井戸(MQW)構造を有する発光層312b、及びp型層312cからなる発光機能層312を配設し、この発光機能層312の上に電極兼反射層313を形成した。また、基板311の発光機能層312とは反対側の表面に蛍光体層314を形成して、図3に示される面発光素子310を作製した。各層の形成方法は以下の通りである。
RS−MBE(ラジカルソース分子線成長)装置を用いて発光機能層312の成膜を行った。この際、金属材料である亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、アルミニウム(Al)をクヌーセンセルにおいて照射し、基板に供給した。ガス材料である酸素(O)と窒素(N)は、RFラジカル発生装置にて、それぞれO2ガス及びNOガスを原料とし、酸素ラジカル及び窒素ラジカルとして供給した。各種原料の純度はZnが7N、O2が6N、NOガスは5Nのものを用いた。
先ず、抵抗加熱ヒータを用いて基板311を700℃に加熱し、膜中のAl濃度が5×1018/cm3となり、且つZn、Alの原子濃度の合計とO濃度の合計が1対1となるようにガスソースのフラックスを制御しながら、厚さ700nmのn型層312aを作製した。
次に、抵抗加熱ヒータを用いて基板311を700℃に加熱し、ガスソースのフラックスを制御しながら、Cd0.1Zn0.9Oからなるバリア層とCd0.2Zn0.8Oからなる量子井戸層とを交互に形成し、3層の多重量子井戸構造(MQW)からなる発光層312bを作製した。バリア層は膜厚10nm、量子井戸層は膜厚1.5nmとした。
更に、抵抗加熱ヒータを用いて基板311を750℃に加熱し、膜中の窒素濃度が1×1020cm−3となるように、各種ガスソースのフラックスを制御しながら、厚さ100nmのp型層312cを成膜した。
次いで、p型層312c上に、電子ビーム蒸着法にてAlを300nm面状に成膜して電極兼反射層313を形成した。
次いで、p型層312c上に、電子ビーム蒸着法にてAlを300nm面状に成膜して電極兼反射層313を形成した。
そして、基板311の発光機能層312とは反対側に、蛍光体層314を形成すべく、蛍光成分として(Ca,Sr)5(PO4)3Cl:Eu、BaMgAl10O17:Eu,Mn、Y2O3S:Euを分散含有させたシリコーン樹脂を、約5μmの厚みに塗布した。
何れの試料についても、基板311と電極313に通電してI−V測定を行ったところ整流性が確認され、良質なp−n接合が形成されたことが確認できた。各試料の発光機能層からは波長約400nmの紫外発光が生じ、基板311、蛍光体層314を通じて白色発光した。発光機能層312上方へ放射された光も電極兼反射層313で反射され、蛍光体層314側に放射された。
各試料の蛍光体層の発光状態を評価したところ、本発明に係る実験例E1乃至E4においては蛍光体層全域から均質な白色発光が観察された。一方、比較例に係る実験例C1乃至C3においては部分的に発光している様子が観察され、発光強度に斑があることが認められた。この理由として、発光機能層312からの発光強度に斑があり、本発明に係る実験例E1乃至E4の面発光素子においては紫外光が基板311を通過する際に、基板を構成する酸化亜鉛単結晶内に導入された気孔によって光が散乱され均質となったのに対し、比較例に係る実験例C1乃至C3においては気孔が無い若しくは少なく、又は紫外光波長よりも大きい平均径を有する気孔が形成されていたために、紫外光が有効に散乱されず、紫外光の強度が均質化されなかったためと考えられる。
以上のように、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、発光素子の構成要素としても有用であることが確認された。
(3)ショットキー型紫外線センサーの作製と特性評価
上述した各種評価用単結晶から、10mm角、厚さ0.5mmの単結晶試料を切り出して試料の両面を鏡面研磨し、基板421とした。この基板421の一方(図4に向かって上側)の表面に、ショットキー電極層422及びコンタクト用電極423を、この順序で作製した。また、基板421のショットキー電極422とは反対側にオーミック電極424及び425を形成し、紫外線センサー420を作製した。各層の形成方法は以下の通りである。
上述した各種評価用単結晶から、10mm角、厚さ0.5mmの単結晶試料を切り出して試料の両面を鏡面研磨し、基板421とした。この基板421の一方(図4に向かって上側)の表面に、ショットキー電極層422及びコンタクト用電極423を、この順序で作製した。また、基板421のショットキー電極422とは反対側にオーミック電極424及び425を形成し、紫外線センサー420を作製した。各層の形成方法は以下の通りである。
ショットキー電極422はPtを電子ビーム蒸着法にて厚さ3nmの面状に成膜して形成した。コンタクト用電極423はレジストマスクを設け、Ptを電子ビーム蒸着法にてφ10μm、厚さ100nmの面状に成膜して形成した。オーミック電極424はTi、オーミック電極425はAuを、電子ビーム蒸着法にてそれぞれ厚さ20nm、50nmの面状に成膜して形成した。
本センサーはショットキー電極422と基板421がショットキー接触することにより基板421中に空乏層が形成され、空乏層に紫外線が入射して生じた電子−正孔対による光電流を測定するものである。各種評価用単結晶から作製した紫外線センサーの検出感度を、波長380nmのUV−LEDを用いて評価したところ、本発明に係る実験例E1乃至E4の単結晶を用いて作製したセンサーは0.12〜0.16A/Wの検出感度を示した。これに対し、比較例に係る実験例C1乃至C3の単結晶を用いて作製したセンサーは何れも0.08A/W以下の非常に弱い検出感度を示した。この理由としては、本発明に係る実験例E1乃至E4においては紫外光が基板421の気孔によって散乱され、本センサーの検出領域である基板421中に形成された空乏層に効率的に作用したのに対し、比較例に係る実験例C1乃至C3においては気孔が無い若しくは少なく、又は紫外光波長よりも大きい平均径を有する気孔が形成されていたために、紫外光が有効に散乱されず、上記効果が得られなかったためと考えられる。
尚、気孔による光散乱に起因する効果は上記ショットキー型光センサーに限定されず、酸化亜鉛単結晶中に検出領域を設けるセンサー、例えば光導電型、pn接合型等の光センサーおいても同様の効果が得られる。
尚、気孔による光散乱に起因する効果は上記ショットキー型光センサーに限定されず、酸化亜鉛単結晶中に検出領域を設けるセンサー、例えば光導電型、pn接合型等の光センサーおいても同様の効果が得られる。
以上のように、本発明に係る多孔質酸化亜鉛単結晶は、紫外線(UV)センサー等の光センサーの構成要素としても有用であることが確認された。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成有する幾つかの実施態様について説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができることは言うまでも無い。
11…キャリアガス、12…成膜粉、20…成膜装置、21…種基板、22…エアロゾル生成部、23…エアロゾル生成室、24…原料供給管、25…加振器、30…成膜部、32…成膜チャンバ、33…X−Yステージ、34…種基板ホルダ、36…噴射ノズル、37…スリット、38…真空ポンプ、201…膜、202…種基板、203…白金板、204…石英製台座、205…熱電対、206…近赤外線ランプ、310…面発光素子、311…基板、312…発光機能層、312a…n型層、312b…発光層、312c…p型層、313…電極兼反射層、314…蛍光体層314、420…紫外線センサー、421…基板、422…ショットキー電極層、423…コンタクト用電極、424…オーミック電極、及び425…オーミック電極。
Claims (12)
- 請求項1に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
n型ドーパント及びp型ドーパントの何れか一方又は両方がドーピングされた、
多孔質酸化亜鉛単結晶。 - 請求項2に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記n型ドーパントが、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、硼素(B)、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びシリコン(Si)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素である、
多孔質酸化亜鉛単結晶。 - 請求項2に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記p型ドーパントが、窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、カーボン(C)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、銀(Ag)、及び銅(Cu)からなる群より選ばれる少なくとも何れか1種以上の元素である、
多孔質酸化亜鉛単結晶。 - 請求項1乃至4の何れか1項に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記単結晶に酸素欠陥が導入されている、
多孔質酸化亜鉛単結晶。 - 請求項1乃至5の何れか1項に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
前記単結晶が、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カドミウム(CdO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、及び酸化銅(CuO)から選ばれる1種以上の化合物と酸化亜鉛(ZnO)との混晶である、
多孔質酸化亜鉛単結晶。 - 請求項1乃至6の何れか1項に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
25℃における導電率が100S/cm以上である、
多孔質酸化亜鉛単結晶。 - 請求項1乃至7の何れか1項に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶であって、
25℃における熱伝導率が30W/(m・K)以下である、
多孔質酸化亜鉛単結晶。 - 請求項1乃至8の何れか1項に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶を熱電変換材料として使用する、熱電変換素子。
- 請求項1乃至8の何れか1項に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層を含んでなり、光源から発した光が当該層を通過するように構成されている、発光素子。
- 請求項1乃至8の何れか1項に記載の多孔質酸化亜鉛単結晶からなる層を含んでなり、検出対象となる紫外線が当該層に入射するように構成されている、紫外線センサー。
- 酸化亜鉛及び/又は酸化亜鉛の前駆物質を主成分として含んでなる膜を種基板の表面上に形成する成膜ステップ、及び
前記種基板の表面上に形成された前記膜を加熱して単結晶を得る加熱ステップ、
を含む多孔質酸化亜鉛単結晶製造方法であって、
前記成膜ステップにおいて形成される前記膜の前記種基板の表面に直交する方向における厚みである膜厚が100μm以下であること、
前記加熱ステップにおいて前記膜が前記種基板の側から加熱されること、
前記加熱ステップにおける前記膜の昇温速度が30℃/分以上であること、並びに
前記加熱ステップにおいて、その一部又は全てが揮発する添加物を前記膜が含んでなるか、及び/又は前記加熱ステップにおいて反応して揮発する反応生成物を生ずる添加物を前記膜が含んでなるか、及び/又は前記膜中に気孔が導入されていること、
を特徴とする多孔質酸化亜鉛単結晶の製造方法。
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JP2013117536A Pending JP2014234330A (ja) | 2013-06-04 | 2013-06-04 | 多孔質酸化亜鉛単結晶及び同単結晶を使用するデバイス |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2014234330A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN105244434A (zh) * | 2015-10-13 | 2016-01-13 | 北京科技大学 | 一种C掺杂ZnO热电材料的制备方法 |
CN106065493A (zh) * | 2016-07-29 | 2016-11-02 | 中山大学 | 一种高电阻率单晶氧化锌及其制备方法和应用 |
WO2021169234A1 (zh) * | 2020-02-27 | 2021-09-02 | 北京大学 | 一种超高导电多层单晶压合铜材料的制备方法及铜材料 |
CN113745361A (zh) * | 2021-07-20 | 2021-12-03 | 五邑大学 | 一种多孔GaN窄带紫外光电二极管及其制备方法 |
CN114436639A (zh) * | 2020-11-04 | 2022-05-06 | 天津理工大学 | 一种具有高热电性能ZnO基热电陶瓷及其制备方法 |
-
2013
- 2013-06-04 JP JP2013117536A patent/JP2014234330A/ja active Pending
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